JP2002187861A - 芳香族ジヒドロキシ化合物の製造方法 - Google Patents

芳香族ジヒドロキシ化合物の製造方法

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JP2002187861A
JP2002187861A JP2000387541A JP2000387541A JP2002187861A JP 2002187861 A JP2002187861 A JP 2002187861A JP 2000387541 A JP2000387541 A JP 2000387541A JP 2000387541 A JP2000387541 A JP 2000387541A JP 2002187861 A JP2002187861 A JP 2002187861A
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aromatic dihydroxy
dihydroxy compound
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catalyst
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Yoshio Motoyama
吉夫 元山
Satoru Inoki
哲 猪木
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Mitsui Chemicals Inc
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 本発明は、反応温度が制御しやすく、効率的
で且つ低コストで芳香族ジヒドロキシ化合物を製造する
ことができる製造方法を提供する。 【解決手段】 反応槽1では溶媒中において、固体触媒
の存在下に懸濁床式でフェノール類を過酸化水素と反応
させ芳香族ジヒドロキシ化合物を生成し、沈降槽3で反
応液より沈降分離操作によって固体触媒を分離し反応槽
1に返送し、蒸留塔4、5では分離液より溶媒および原
料を分離して反応工程に返送し、さらに蒸留塔6で分離
液より、生成物としての芳香族ジヒドロキシ化合物を分
離し、分離された生成物をタンク7、8にて精製し、芳
香族ジヒドロキシ化合物を製造する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は芳香族ジヒドロキシ
化合物の製造方法、詳しくはフェノール類を過酸化水素
でヒドロキシル化し、対応する芳香族ジヒドロキシ化合
物を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】固体触媒を用いてフェノール類を過酸化
水素でヒドロキシル化し、対応する芳香族ジヒドロキシ
化合物を製造するため、古くから様々な触媒を用いた反
応が報告されている。この反応に使用する触媒として
は、例えば、活性白土(特開昭52−118436号公
報)、架橋頁岩(特開昭64−34937号公報)、二
酸化チタン触媒(特公平6−67862号公報)、チタ
ノゼオライト(特開平1−149744号公報)、ゲル
マノゼオシライト(特開平2−36139号公報、特公
平5−41614)、錫やジルコニウム含有ゼオライト
(特開平4−231321号公報)、チタノシリケート
(特開平5−170684号公報、EP20026
0)、結晶性ジルコノチタノシリケート(特開平6−4
0978号公報)、結晶性アルミノチタノシリケート
(特開平6−40977号公報)等が報告されている。
【0003】これら触媒を用いる場合、通常、触媒を固
定床に充填した反応器を用いて反応が行われる。また反
応は連続式で行われ、例えば、USP5493061の
実施例6には、3つの直列型充填塔反応器が用いられ、
それぞれの反応器には、Si/Ti比の異なるチタノシリケ
ート触媒が充填され反応する方法が開示されている。し
かし、このように固定床式を用いた場合、触媒と過酸化
水素が最初に接触する部位でかなりの発熱を伴うため
に、反応器に入る溶液の温度を下げる等の対処が必要と
なる。しかし、大量生産時においては局部的な発熱は避
けられず、バッチ反応と比べて、反応成績、例えば過酸
化水素基準の選択率が悪化する。
【0004】そこで、懸濁床式を用いた芳香族ジヒドロ
キシ化合物の製造方法が検討されている。特開平6−2
63670号公報には、チタノシリケート(TS−1)
触媒を使用し、濾過フィルターを備えた反応器で連続的
に反応を行い、反応混合物を濾過によって触媒を除き、
芳香族ジヒドロキシ化合物を含有する反応液を得る技術
が開示されている。また特開平7−2714号公報で
は、チタノシリケート(TS−1)触媒を使用し、濾過
フィルターを備えた反応器で連続的に反応を行い、反応
混合物を濾過して触媒を除いた後、反応混合物を大量の
有機溶媒で抽出した後、蒸留によって芳香族ジヒドロキ
シ化合物を分離生成する方法が開示されている。このよ
うな懸濁床式の反応においては、供給する過酸化水素が
反応器全体に拡散するために、発熱の制御がしやすい。
【0005】しかし、上述した懸濁床法は触媒が微細で
あり、且つ反応系で粘性を持つため、全ての触媒をフィ
ルターで取り除こうとすると、すぐにフィルターが目詰
まりを起こすため運転が困難になるといった問題が生じ
る。
【0006】さらに、本発明者らが特開平7−2714
号公報に開示された懸濁床式による反応を行い、芳香族
ジヒドロキシ化合物を蒸留によって得たところ、芳香族
ジヒドロキシ化合物は黄色に着色し不純物を含んでお
り、製品品質に問題があることが分かった。この方法で
得られる芳香族ジヒドロキシ化合物の品質については上
記特開平6−263670号公報や特開平7−2714
号公報には何の記載も考慮もされていない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、ハイ
ドロキノン類やカテコール類等の芳香族ジヒドロキシ化
合物の製造方法において、反応温度が制御しやすく、効
率的で且つ低コストで高純度の芳香族ジヒドロキシ化合
物を製造することができる製造方法を提案することであ
る。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は次の芳香族ジヒ
ドロキシ化合物の製造方法である。 (1) 溶媒中において、固体触媒の存在下に懸濁床式
でフェノール類を過酸化水素と反応させ芳香族ジヒドロ
キシ化合物を生成する反応工程と、反応工程の反応液よ
り、沈降分離および遠心分離からなる群より選ばれる少
なくとも一種の分離操作によって固体触媒を分離し反応
工程に返送する触媒分離工程と、触媒分離工程の分離液
より、溶媒および原料を分離して反応工程に返送する溶
媒および原料分離工程と、溶媒および原料分離工程の分
離液より、生成物としての芳香族ジヒドロキシ化合物を
分離する生成物分離工程と、分離された生成物を精製す
る精製工程とを有する芳香族ジヒドロキシ化合物の製造
方法。 (2) チタンとシリコンの複合酸化物を固体触媒とし
て使用する上記(1)記載の芳香族ジヒドロキシ化合物
の製造方法。 (3) チタンとシリコンの複合酸化物が結晶性チタノ
シリケートである上記(2)記載の芳香族ジヒドロキシ
化合物の製造方法。 (4) 反応工程では、直列に連結された複数段の反応
器で連続的に反応を行う上記(1)ないし(3)のいず
れかに記載の芳香族ジヒドロキシ化合物の製造方法。
【0009】本発明の反応工程では、フェノール類を過
酸化水素で酸化し、芳香族ジヒドロキシ化合物を生成す
る。この反応は、溶媒中において固体触媒の存在下にお
いて懸濁床式で行われる。原料化合物として用いられる
フェノール類とは、無置換のフェノール及び置換フェノ
ールを意味する。ここで置換フェノールとは、例えばメ
チル基、エチル基、イソプロピル基、ブチル基、ヘキシ
ル基等の炭素数1から6の直鎖または分枝アルキル基あ
るいはシクロアルキル基で置換されたアルキルフェノー
ルをあげることができる。
【0010】フェノール類の具体的なものとしては、フ
ェノール、2−メチルフェノール、3−メチルフェノー
ル、2,6−ジメチルフェノール、2,3,5−トリメ
チルフェノール、2−エチルフェノール、3−イソプロ
ピルフェノール、2−ブチルフェノール、2−シクロヘ
キシルフェノールなどがあげられるが、この中でも特
に、フェノールが好ましい。なお、フェノール類の2位
と6位の両方に置換基を有している化合物を用いる場合
には、生成される芳香族ジヒドロキシ化合物はハイドロ
キノン誘導体のみとなる。
【0011】過酸化水素は、通常過酸化水素水の状態で
添加される。過酸化水素水の濃度は特に限定されず、通
常の30重量%程度の水溶液を用いても良いし、また高
濃度の過酸化水素水を反応系において不活性な媒体で希
釈して用いても良い。希釈に用いる媒体としては、アセ
トニトリル、エタノール、メタノール、水などが挙げら
れる。反応媒体を用いる場合、その使用量は特に制限さ
れないが、原料化合物100重量部に対して通常10〜
200重量部、好ましくは20〜150重量部とするの
が望ましい。過酸化水素の使用量は、原料化合物である
フェノール類1モルに対して、0.5モル以下、好まし
くは0.3モル以下の割合とするのが望ましい。
【0012】触媒はこの反応に活性な固体触媒なら特に
制限されず、例えば、チタン系化合物、活性白土、架橋
頁石、ゲルマノゼオライト、ジルコニウム含有ゼオライ
トなどをあげることができ、その中でも固体触媒として
チタンとシリコンの複合酸化物が好ましく、特に好まし
くは結晶性チタノシリケートが望ましい。結晶性チタノ
シリケートの組成は(SiO2)x・(TiO2(1-x)
で示される。この場合x/(1−x)の値、すなわちS
i/Tiの原子比は特に限定されないが、好ましくは5
〜1000、さらに好ましくは10〜500のものが望
ましい。結晶性チタノシリケートはMFI構造を有する
MFI型結晶性チタノシリケートが好ましい。
【0013】結晶性チタノシリケートは公知の方法によ
り製造することができる。例えば、ケイ素源、チタン
源、窒素源、および水からなる反応混合物を調整して、
水熱合成により製造することができる。前記ケイ素源と
しては、ケイ素のアルコキシド、コロイド状シリカなど
があげられる。前記チタン源としては、チタンのアルコ
キシド、ハロゲン化チタン、チタン酸、硫化チタンなど
があげられる。前記窒素源としてはテトラプロピルアン
モニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩などの4級ア
ンモニウム塩などの含窒素化合物があげられる。
【0014】結晶性チタノシリケートの具体的な製造方
法としては、次の方法が例示できる。前記ケイ素源、チ
タン源、窒素源、および水を、pHを適当に調整しなが
ら混合し、ゲル状の沈殿物を得る。この沈殿物を100
〜250℃の加熱下に1〜100時間水熱合成し、固体
生成物を得る。この固体生成物をイオン交換水で洗浄
し、続いて乾燥した後、空気中で400〜600℃の温
度で焼成することにより結晶性チタノシリケートを得る
ことができる。このような製造方法において、窒素源と
してテトラプロピルアンモニウム塩を用いた場合、MF
I構造の結晶性チタノシリケートを容易に得ることがで
きる。結晶性チタノシリケートの製造方法は、特開昭5
6−96720号(対応USP 4410501)、特開平4−6
6546号等に記載されており、これらの方法に従って
製造した結晶性チタノシリケートを用いることもでき
る。また結晶性チタノシリケートとしては市販品を使用
することもできる。なおMFI型結晶性チタノシリケー
トもx/(1−x)が所定の範囲のものであれば、市販
品を使用することができる。
【0015】結晶性チタノシリケートの使用量は原料化
合物(反応混合物)100重量部に対して、0.5〜3
0重量部、好ましくは1〜20重量部であるのが望まし
い。0.5〜30重量部の範囲で用いると、添加した過
酸化水素が消失して反応が完結するための時間が短くな
り、生産性が高くなる。
【0016】溶媒は特に制限されないが、脂肪族エーテ
ル類が好ましく、その中でも脂肪族ポリエーテル類が特
に好ましい。好ましく用いられる脂肪族ポリエーテル類
としては、エチレングリコールジメチルエーテル、エチ
レングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコー
ルジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチル
エーテル等の鎖状エーテルを例示することができる。特
にその中でもエチレングリコールジメチルエーテルが好
ましい。脂肪族エーテルの使用量としては、原料である
フェノール類100gに対し、1g〜100gの範囲、
好ましくは10g〜80gの範囲が特に好ましい。この
範囲よりも小さい場合、十分な添加効果がみられず、ま
た、大きい場合はエーテルの回収量が増えるため好まし
くない。また脂肪族ポリエーテル類を用いる場合は水と
の混合物で使用することが好ましい。例えば、エチレン
グリコールジメチルエーテルの場合においては、エーテ
ルと水との重量比は、5/5から9/1が好ましく、特
に6/4から8/2の間が好ましい。
【0017】本発明の反応工程においては、上記溶媒中
において上記固体触媒を懸濁床で使用し、フェノール類
と過酸化水素とを反応させ、芳香族ジヒドロキシ化合物
を得る。この反応は懸濁床式で行い、好ましくは連続的
に行われる。ただし、回分式で行ってもよい。連続的に
行う場合は、直列に連結された複数段の反応器で連続的
に反応を行うことが好ましい。例えば直列に2段以上の
反応器を連結させる場合、1段目の反応器にフェノール
と過酸化水素を供給し、2段目以降の反応器にはフェノ
ールは供給しないが過酸化水素は供給してもよい。この
場合、各反応器からの反応液の抜き出しはオーバーフロ
ー方式でもかまわないが、反応器の中間部から抜き出す
と、各反応器内の固体触媒の濃度を一定にできるので好
ましい。また反応液の抜き出しは連続的、あるいは間欠
的に行うことができる。1段目から抜き出した反応液の
2段目以降への供給方法は、ポンプによって送液しても
良いし、また重力によって送液しても良い。
【0018】ここで用いる各反応器の種類は特に制限さ
れないが、撹拌機の付いている反応器が好ましい。反応
器の材質は、過酸化水素およびフェノール類に対して安
定なものであれば特に制限されない。
【0019】反応温度としては、30〜130℃、好ま
しくは40〜100℃の範囲であるのが望ましい。30
〜130℃の範囲にある場合、添加した過酸化水素水が
焼失して反応が完結するまでの時間が短く、生産性が高
くなる。また反応生成物の収率が高くなる傾向がある。
反応を複数段で行う場合、反応温度を維持するために一
段目の反応器には熱交換器やジャケット等の装置を設け
ることが好ましい。反応が進行すると発熱するので、こ
れら装置はその冷却にも使用する。2段目以降にも同様
の装置を取り付けても良いが、過酸化水素を供給しない
反応器には設けなくてもよい。本発明では懸濁床で反応
を行うので、固定床式で反応を行う場合と比べて反応温
度の制御がしやすく、安全性が高い。反応圧力は特に制
限されず、減圧条件から常圧条件、加圧条件まで可能で
ある。
【0020】反応液の反応器内の滞留時間は、反応温度
及び触媒量、原料量等の反応条件に影響を受けるが、通
常10分から10時間であり、好ましくは0.5〜5時
間、さらに好ましくは1〜3時間であることが望まし
い。反応を複数段で行う場合、1段目における滞留時間
は通常5分から10時間、2段目以降の滞留時間は通常
5分から10時間であり、1段目から最終段までの総滞
留時間が10分以上となるように調節することが好まし
い。
【0021】以上のようにして反応工程で生成される芳
香族ジヒドロキシ化合物の具体的なものとしては、ヒド
ロキノン、カテコール、2−メチルヒドロキノン、3−
メチルカテコール、4−メチルカテコール、3−メチル
ヒドロキノン、2,5−ジメチルヒドロキノン、2,4
−ジメチルカテコール、3,5−ジメチルカテコール、
2,3−ジメチルヒドロキノン、3,4−ジメチルカテ
コール、1,2,4−ベンゼントリオール、4,4’−
ジヒドロキシフェニルエーテル、イソプロピル−4−ヒ
ドロキシフェノール等をあげることができる。
【0022】以上のようにして反応工程で得られた反応
液は、反応によって生成された芳香族ジヒドロキシ化合
物、水、触媒、溶媒、未反応のフェノール、分解生成物
等を含んでおり、次の触媒分離工程へ送られる。
【0023】触媒分離工程では、沈降分離および遠心分
離からなる群より選ばれる少なくとも一種の分離操作に
よって反応工程の反応液から固体触媒を分離回収する。
この中でも、沈降分離による方法が好ましく、特に好ま
しくは触媒粒子によるエロージョンを考慮した沈降槽を
用い、固体触媒を沈殿させて分離回収する方法が望まし
い。
【0024】触媒を分離させるための触媒分離装置は反
応工程の反応器の後方に設けられ、1段または2段以上
の多段で設けることができる。反応工程において複数の
反応器を用い反応を複数段で行う場合、触媒分離装置は
各反応器の後方に設置しても良く、最終段の反応器の後
方にのみ設置しても良い。触媒分離装置における温度は
特に限定しないが、触媒分離装置が連絡する反応器出口
の反応液の温度以下であってもよい。触媒分離装置の接
液部の材質は、フェノール類および芳香族ジヒドロキシ
化合物に安定であれば良く、過酸化水素が分解するよう
なものであってもかまわない。
【0025】沈降槽を用いる場合、固体触媒を沈降させ
て沈降槽底部から触媒を回収する。沈降槽に導入された
反応液は、固体触媒のほぼ全てが沈降するまで沈降槽内
に滞留させることが好ましい。固体触媒を効果的に沈降
させるために沈降槽内に邪魔板等を取り付けることがで
きる。また沈降槽底部からの触媒回収を容易にするた
め、沈降槽にはスクレーパー等を取り付けてもよい。沈
降槽底部に沈降した触媒は、ポンプを用いて反応器へ連
結した配管を通して間欠的あるいは連続的に反応工程の
反応器へ送られてリサイクルされる。このとき触媒は一
部の反応混合液と共に反応器へ送られてもよい。なお反
応工程において、反応を複数段で行っている場合には、
回収された触媒は一段目の反応器へ送られることが好ま
しい。また沈降槽を用いて触媒分離を行う場合、沈降槽
の液上部付近から反応液を抜き出して、触媒を含有しな
い分離液を得ることが好ましい。
【0026】触媒分離工程において反応液から分離され
た分離液は、固体触媒を殆ど含んでおらず、芳香族ジヒ
ドロキシ化合物、溶媒、未反応のフェノール類、水分等
を含有しており、次の溶媒および原料分離工程へ送られ
る。このとき搬送される分離液は、微量ではあるが触媒
を含有している可能性が高いので、溶媒および原料回収
工程へ搬送する途中においてフィルターを通過させるこ
とが好ましい。フィルターの材質は、フェノール類およ
び芳香族ジヒドロキシ化合物に安定であれば良く、過酸
化水素が分解するようなものであってもかまわない。フ
ィルターは並列に2器以上設置することが好ましく、こ
の場合、常にどちらか一つのフィルターを使用し、使用
しているフィルターの目詰まりが起こったら、他のフィ
ルターに切り替えて使用する。使用していないフィルタ
ーは常にフェノール類および/または溶媒で逆洗し、詰
まった触媒を取り除く作業を行うことができる。逆洗し
た液は反応工程の反応器等へ送り、原料として使用する
ことができる。
【0027】溶媒および原料分離工程においては、分離
液から蒸留によって溶媒と原料であるフェノール類等を
分離して回収し、分離された溶媒と原料は反応工程へ返
送する。このとき、使用している溶媒の沸点とフェノー
ル類の沸点により回収する順番が異なる。以下に例とし
て、溶媒の沸点が使用するフェノール類よりも低い場合
について記載するが、溶媒の沸点がフェノール類よりも
高い場合には、フェノール類を分離回収した後に、溶媒
を回収することとなる。
【0028】溶媒の回収においては、溶媒を分離液から
常圧、あるいは、減圧下で留出し、反応工程の反応器へ
返送することが好ましい。留出には蒸留塔を使用するこ
とができ、またフラッシュドラム等を使用することもで
きる。この場合、溶媒留分に未反応のフェノール類が混
入していても、反応工程でリサイクルされるので問題は
ない。また溶媒を完全に回収できない場合、未反応のフ
ェノール類の回収においてフェノール類とともに回収し
てもかまわない。また分離液には、過酸化水素に含まれ
ていた水分、反応により生成する水分、溶媒の一部とし
て添加された水分等の過剰分の水分が含まれているの
で、溶媒とともにこの水分を回収することができる。水
分は溶媒とともに反応工程へ送られ、または過剰な水分
は廃棄することができる。さらに、分離液が溶媒が分解
して生成した軽沸点成分を含有する場合においても、分
離液から分離して廃棄してもよい。
【0029】フェノール類の回収においては、溶媒を留
去した分離液から未反応のフェノール類を分離回収す
る。フェノール類の回収は常圧でも可能であるが、エネ
ルギー的には減圧下に実施することが好ましい。フェノ
ール類の沸点と生成物である芳香族ジヒドロキシ化合物
の沸点差が大きい場合にはフラッシュドラム等を使用す
ることが出来るが、沸点差が小さい場合には、蒸留塔を
使用することが好ましい。回収したフェノール類は、反
応工程の反応器へと送られて、原料の一部としてリサイ
クル使用される。
【0030】以上のようにして固形触媒、溶媒、未反応
のフェノール類、水分等が除去された分離液は生成物分
離工程へ送られ、生成物としての芳香族ジヒドロキシ化
合物を分離回収する。このとき芳香族ジヒドロキシ化合
物は、低沸点のものと高沸点のものとを、沸点の差によ
って別々に分離することができる。芳香族ジヒドロキシ
化合物の具体的な分離回収方法としては、以下の方法が
挙げられる。
【0031】生成物分離工程では、溶媒および原料分離
工程の分離液をまず低沸点芳香族ジヒドロキシ化合物蒸
留塔へ送り、低沸点の芳香族ジヒドロキシ化合物を蒸留
塔トップ部あるいはトップのサイドカット部から回収す
ることができる。次に、高沸点芳香族ジヒドロキシ化合
物蒸留塔に低沸点の芳香族ジヒドロキシ化合物を留去し
た反応液を供給し、高沸点の芳香族ジヒドロキシ化合物
を蒸留塔トップ部あるいはトップのサイドカット部から
回収することができる。高沸点芳香族ジヒドロキシ化合
物蒸留塔のリボイラーの代わりに薄膜蒸留装置を設置し
てもかまわない。また芳香族ジヒドロキシ化合物の回収
率を高めるため、蒸留塔のボトム液の一部をこの蒸留塔
に供給される分離液へ添加して再度蒸留してもかまわな
い。蒸留条件は、留出させる芳香族ジヒドロキシ化合物
の融点以上の温度となる条件で実施することが好まし
い。
【0032】生成物分離工程は次の方法でも行うことが
できる。フェノール類を留去した反応液はフェノール類
の蒸留条件以下の減圧に設定した蒸留塔でボトム部から
高沸点物を除去しながらトップ部から芳香族ジヒドロキ
シ化合物の混合物を留出させる。蒸留塔の代わりに薄膜
蒸留装置を設置してもよい。芳香族ジヒドロキシ化合物
の混合物は蒸留塔に送られ、トップ部またはトップのサ
イドカット部から低沸点の芳香族ジヒドロキシ化合物
を、蒸留塔下部付近から高沸点の芳香族ジヒドロキシ化
合物をそれぞれ留出させることができる。また、ボトム
液は蒸留塔へ循環させて再度蒸留してもよい。以上のよ
うにして生成物分離工程で分離された芳香族ジヒドロキ
シ化合物の低沸点留分と高沸点留分は、次の精製工程へ
送られて精製される。
【0033】精製工程では、例えば分離されたカテコー
ルやハイドロキノン等の芳香族ジヒドロキシ化合物の留
分は、副生したベンゾキノン由来と考えられる黄色味を
帯びることが多い。精製工程においてこのような副生物
等の不純物を取り除く。精製方法としては、水添触媒で
還元処理した後に再結晶する方法や亜硫酸水素ナトリウ
ムで処理する方法等を用いることができるが、精製した
芳香族ジヒドロキシ化合物中への硫黄化合物の混入がな
い点から水添触媒を用いる方法が好ましい。
【0034】精製工程において水添触媒を用いる場合、
芳香族ジヒドロキシ化合物を含む留分を水素化触媒とと
もに溶媒中で水素加圧下で反応させることにより、留分
に含まれるベンゾキノン等の副生物が水添処理されて還
元され、精製された芳香族ジヒドロキシ化合物を効率的
に得ることができる。本発明の精製方法では亜硫酸水素
ナトリウムを使用しないので、精製された芳香族ジヒド
ロキシ化合物は硫黄成分を含まない。したがって、精製
された芳香族ジヒドロキシ化合物は医薬品や農薬など安
全性を必要とする分野においても使用可能である。また
本発明の精製方法では触媒の活性が失われにくいので、
芳香族ジヒドロキシ化合物を工業的に大量に且つ効率よ
く精製することができる。
【0035】使用される水素化触媒は、担体に金属が担
持されたものである。金属を担持するための担体として
は、アルミナやシリカ・アルミナを使用する。シリカ・
アルミナはシリカ(SiO2)とアルミナ(Al23
が任意の割合での結合したものであり、Si/Al比が
2〜10のものが好ましい。これらの担体に担持される
金属成分としては、具体的にPd、Rh、Pt、Ru、
Ni、Ir、Fe、Co等のVIII族金属をあげるこ
とができるが、これらの中でもPd、Pt、Rh等の白
金族が好ましく、特にPdが好ましい。金属成分の担体
への担持量は担体に対して0.1〜20重量%、好まし
くは0.5〜10重量%であることが望ましい。
【0036】水素化触媒の使用量は、芳香族ジヒドロキ
シ化合物を主として含む留分、例えばハイドロキノンあ
るいはカテコールの蒸留留分100gに対して、0.0
05〜10g、好ましくは0.01〜1gであることが
望ましい。反応に用いられる溶媒は、具体的にはメタノ
ール等の脂肪族アルコール化合物、水、アセトニトリル
等の脂肪族ニトリル化合物およびジオキサン等の脂肪族
エーテル化合物等を用いることができるが、この中でも
アルコール類が好ましい。使用量は、芳香族ジヒドロキ
シ化合物を主として含む留分100gに対し、100〜
3000g、好ましくは500〜2000gであること
が望ましい。
【0037】水添処理は、担体に担持された水素化触
媒、留分および溶媒の混合物を充填した反応器内に、水
素ガスを供給して行う。反応時に添加される水素ガスの
分圧は、0.1〜10MPa、好ましくは0.3〜5M
Paであることが望ましい。水素ガスの量は、反応成分
の5倍モル以上、好ましくは10倍モル以上で供給する
ことが望ましい。また水添処理をするための反応温度は
0〜200℃、好ましくは25〜100℃であることが
望ましい。
【0038】水添処理を行うための反応器は、反応器の
内部に水素化触媒を充填し、溶媒と留分との混合物が接
触した状態で水素を供給できるものであればその形状、
構造等は制限されない。好ましい反応器としては、固形
の水素化触媒を充填して固定層を形成し、これに溶媒と
留分の混合物を通過するように導入路および導出路を有
し、さらに水素を供給できるように水素供給路を有する
ものが好ましい。混合物は上向流でもよいが、下向流通
液するように導入路が反応器の上部に、導出路が反応器
の下部に連絡するのが好ましく、水素は上部から供給す
るように、反応器上部に連絡するのが好ましい。
【0039】上記水添処理では、副生物であるベンゾキ
ノン等の不純物が水添されることによって還元され、芳
香族ジヒドロキシ化合物となる。したがって、上記反応
後、水素化触媒を除去し、溶媒を留去すると、副生物で
あるベンゾキノンが含まれない無色の高純度の芳香族ジ
ヒドロキシ化合物を得ることができる。
【0040】精製工程を芳香族ジヒドロキシ化合物の留
分を亜硫酸水素ナトリウム水溶液処理した後に再結晶す
る方法によって行う場合、亜硫酸水素ナトリウム水に芳
香族ジヒドロキシ化合物の留分を溶解させ、一定時間加
熱処理して再結晶させると、無色の芳香族ジヒドロキシ
化合物の結晶が得ることができる。この時の亜硫酸水素
ナトリウムの濃度は0.001〜0.5wt%であり、
加熱温度は25〜100℃であり、また、処理時間は5
分〜60分である。
【0041】以上のようにして得られるヒドロキノンや
カテコールなどの芳香族ヒドロキシ化合物は種々の有機
合成中間体または原料物質として有用であり、還元剤、
ゴム薬、染料、医薬、農薬、重合禁止剤、酸化抑制剤等
の分野に利用される。
【0042】
【発明の効果】以上の通り、本発明の芳香族ジヒドロキ
シ化合物の製造方法では、反応温度制御がしやすい懸濁
床式で反応を行うにもかかわらず、使用した触媒を容易
に分離して触媒をリサイクルできる。また、溶媒や未反
応の原料フェノール類を回収して再利用することができ
る。したがって、効率的且つ低コストで芳香族ジヒドロ
キシ化合物を工業的に製造することができる。さらに、
留出された芳香族ジヒドロキシ化合物を精製工程におい
て精製するので、純度の高い芳香族ジヒドロキシ化合物
を得ることができる。
【0043】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面
により説明するが、本発明はこれらに限定されるもので
はない。図1は本発明の実施形態の製造方法のフロー図
である。図1において、1は1段目の反応槽、2は2段
目の反応槽、3は沈降槽、4は溶媒回収用の蒸留塔、5
は未反応フェノール類回収用の蒸留塔、6は芳香族ジヒ
ドロキシ化合物の蒸留塔、7はカテコール精製処理タン
ク、8はハイドロキノン精製処理タンクである。
【0044】反応工程において、1段目の反応槽1に連
絡している原料供給路L1から、原料のフェノール類と
してフェノール、溶媒、触媒として結晶性チタノシリケ
ートが供給され、さらに過酸化水素供給路L1aが原料
供給路L1に連絡しており、過酸化水素水が供給され
る。1段目の反応槽1には、このように原料混合物を供
給し、フェノールの酸化反応を懸濁床式で行う。このと
き、必要に応じて供給物を1段目の反応槽1へ補充す
る。反応混合物は、1段目の反応槽1の中部から伸びる
連絡路L2から2段目の反応槽2へ送液される。このと
き、連絡路L2には電磁弁等の弁を取り付け、間欠的に
送液するようにしてもよい。2段目の反応槽2へ導入さ
れた反応混合物は、反応がさらに進み、オーバーフロー
した反応液は連絡路L3を通って、触媒分離工程の沈降
槽3へ送られる。
【0045】触媒分離工程の沈降槽3では、反応液中の
固体触媒が沈降し、沈降した固体触媒は沈降槽3のボト
ム部から延びる触媒リサイクル路L10を通って1段目
の反応槽1へポンプ等を用いて送られ、再利用される。
このとき回収される固形触媒は、少量の反応液を含んで
いてもよい。また沈降槽3の上部から延びる連絡路L4
より固体触媒を殆ど含まない分離液が溶媒回収用の蒸留
塔4へ送られる。このとき連絡路L4上にはフィルター
9が設けられており、反応混合液中に残留している固体
触媒を取り除く。
【0046】溶媒および原料分離工程のうち、溶媒の分
離を行う溶媒回収用の蒸留塔4では、固体触媒が完全に
除去された反応液が蒸留され、溶媒が留出される。留出
された溶媒は、蒸留塔4から延びる溶媒リサイクル路L
11を通って1段目の反応槽1へ送られ、再利用され
る。このとき留出される溶媒中には、溶媒の他に原料で
あるフェノールや水が含まれていてもよい。溶媒が除去
された反応液は、蒸留塔4から延びる連絡路L5を通っ
て未反応フェノール類回収用の蒸留塔5へ送られる。
【0047】溶媒および原料分離工程のうち、原料の分
離を行う未反応フェノール類回収用の蒸留塔5では、反
応液中の未反応のフェノールが留出される。留出された
未反応のフェノールは、蒸留塔5から延びるフェノール
類リサイクル路L12を通って1段目の反応槽1へ送ら
れ、再利用される。このとき留出されるフェノール中に
は、溶媒回収用の蒸留塔4で留出しきれなかった溶媒や
水分が含まれていてもよい。このようにして溶媒と未反
応のフェノールが除去されて得られら分離液は、芳香族
ジヒドロキシ化合物を主として含み、蒸留塔5から延び
る連絡路L6を通って、芳香族ジヒドロキシ化合物を分
離する生成物分離工程の蒸留塔6へ送られる。
【0048】芳香族ジヒドロキシ化合物の蒸留塔6で
は、芳香族ジヒドロキシ化合物として、沸点が互いに異
なるカテコールと、ハイドロキノンとが蒸留によって分
離回収される。まず、低沸点のカテコールが留出されて
蒸留塔6から延びる連絡路L7を通ってカテコール精製
処理タンク7へと送られる。次に、高沸点のハイドロキ
ノンが留出されて蒸留塔6から延びる連絡路L8を通っ
てハイドロキノン精製処理タンク8へと送られる。な
お、このとき留出されなかった沸点が互いに異なる芳香
族ジヒドロキシ化合物の混合物は、蒸留塔6のボトム部
から延びる再蒸留路L13を通って蒸留塔16へ連絡す
る連絡路L6へ供給され、再度蒸留塔6へ供給されて留
出操作が行われる。
【0049】次に精製工程において、得られた芳香族ジ
ヒドロキシ化合物を精製処理する。精製処理タンク7に
は、カテコールを含む留分が連絡路L7から供給され、
また溶媒と水素化触媒が連絡路L7に連絡する溶媒供給
路L7aから連絡路L7を通ってタンク7へ供給され
る。そして水素供給路L15から水素を加圧して添加し
反応させることにより、留分に含まれるベンゾキノン等
の副生物が水添処理されて還元され、取出路L17より
副生物が含まれないカテコールが得られる。このカテコ
ールを再結晶することにより、精製されたカテコールの
最終製品を得ることができる。
【0050】同様にハイドロキノン精製処理タンク8に
おいても、連絡路L8からハイドロキノンを含む留分が
供給され、溶媒と水素化触媒が連絡路L8に連絡する溶
媒供給路L8aから連絡路L8を通ってタンク8へ供給
される。そして水素供給路L16bから水素を加圧して
添加し反応させ、取出路L17より副生物が含まれない
ハイドロキノンが得られる。このハイドロキノンを再結
晶することにより、精製されたハイドロキノンの最終製
品を得ることができる。
【0051】上記のようにして、効率的に低コストで純
度の高い芳香族ジヒドロキシ化合物を工業的に大量に得
ることができる。なお、図1に示した製造方法では、溶
媒の回収の後に、未反応フェノール類の回収を行ってい
るが、溶媒の沸点が未反応フェノール類より高い場合、
先に未反応フェノール類を回収した後、溶媒の回収を行
うことができる。
【0052】
【実施例】実施例1 攪拌器、温度計、コンデンサーを備えたガラス製の内容
積1000mlの反応器2器を直列に並べ、それぞれ1段目
の反応器、2段目の反応器とした。この2段目の反応器
の後ろにガラス製の内容積1000mlの触媒の沈降槽を設置
した。窒素雰囲気下、1段目の反応器にチタノシリケー
ト(TS−1)触媒25gを仕込み、70℃に加熱した。
これに予め調製した次の組成の原料液(フェノール/35
%H22/エチレングリコールジメチルエーテル/水=4
4.7/10.4/20.5/26.9:wt%)を定量ポンプで700ml/h
rの速度で供給した。
【0053】1段目の反応器内の反応液容積が700mlに
到達したところで、反応液を1段目の反応器中部より、
2段目の反応器に送液した。反応液の送液管には、電磁
弁を取付け、レベル計で間欠的に開閉を行った。触媒
は、反応液抜き出し開始から5分ごとに2.1gづつ1
段目の反応器に補充した。2段目の反応器において700m
lをオーバーフローした反応液を同様に、次の沈降槽に
送液した。沈降槽の上部から反応液を600ml/hの速度で
オーバーフローによって抜き出し、沈降した触媒は、リ
サイクルのため反応液と共に100ml/hの速度でポンプを
用いて1段目の反応器に供給した。触媒のリサイクルを
開始した時点で5分ごとの触媒補充を終了した。以上の
反応を24時間継続し、反応液を集めた。なお、反応の
温度調節は油浴に浸漬して行い、70〜80℃になるよ
うに設定した。この温度調節は容易に行うことができ
た。
【0054】上記のようにして得られた反応液の一部を
ガスクロマトグラフィーで未反応フェノールと反応生成
物をそれぞれ定量し、チオ硫酸ナトリウムの電位差滴定
で未反応過酸化水素を定量した。反応成績は、フェノー
ル及び過酸化水素の転化率がそれぞれ13.8%,9
9.0%であり、フェノール基準のハイドロキノン及び
カテコールの選択率がそれぞれ62%(39%)、30
%(19%)であった(但し、( )内はH22
準)。
【0055】次いで、触媒を除去した反応混合液11k
gを減圧濾過した後、濾液の内10kgを5Lフラスコ
を付きのビグロー型蒸留塔(2インチ径、20cm)に
断続的に供給し、常圧下で蒸留した。フラスコの温度は
130℃まで上昇させた。ここで、エチレングリコール
ジメチルエーテル、水及びフェノールの混合物4.95
kg(エチレングリコールジメチルエーテル/水/フェ
ノールの比は31/68/1)を回収した。このときエ
チレングリコールジメチルエーテルと水は85/15の
比で共沸するので、余分の水を除くことができた。ま
た、この留分には、構造未確認の軽沸化合物が0.5%
(GC面積比)含まれていた。
【0056】さらに、減圧下(0.0200MPa(150mmHg))
で蒸留してエチレングリコールジメチルエーテルと水と
フェノールの混合物380g(エチレングリコールジメ
チルエーテル/水/フェノールの比は21/52/2
7)を回収した。フラスコの温度は120℃まで上昇さ
せた。さらに減圧度を高め(0.0067MPa(50mmHg))、
フェノールの主留分を3.7kg回収した。この留分は
僅かではあるが水とカテコールを含んでいた。
【0057】冷却後、フラスコに残っている固体の内8
50g(約95%)を2Lのフラスコ付きのオルダーシ
ョ型蒸留塔(20段、径25mm)に移し、減圧蒸留
(0.0054MPa)を行い、フェノールを主成分とするカテコ
ールとの混合物(カテコール12%)30g、カテコー
ルの主留分220g(トップ温度:170−180℃、
ハイドロキノン15%含有)とハイドロキノンの主留分
360g(トップ温度:180℃以上、カテコール5%
含有)を得た。
【0058】上記のようにして得られたカテコール留分
とハイドロキノン留分は、いずれも若干の黄色味を帯び
ており、これらについて精製処理を行った。ハイドロキ
ノン留分10gをマグネチックスターラーを備えた300m
lオートクレーブに仕込み、さらに、3%Pd/アルミナ1
00mg、メタノール100mlを仕込み、水素ガスを1.5MPaに
加圧して50℃に0.5hr加熱した。冷却後、触媒をろ過
して分離したところ溶液の色は無色であった。メタノー
ルを留去し、水を加え再結晶したところ、全く着色のな
いハイドロキノンが9.65g得られた。精製されたハイド
ロキノンの色調は以下の通りであった。なお、色調の測
定方法は、ハイドロキノン5gを5%の酢酸水溶液10
0mlに溶解し、その溶液の色調をハーゼン標準色と比
色して、目視にて判定した。また吸光度は波長380n
mにおける吸光度を測定した。 APHA(酢酸溶解液): 10 吸光度(380nm): 0.031
【0059】ハイドロキノン留分と同様にカテコール留
分を処理したところ、最終的に溶液は無色であった。ま
たメタノールを留去し、水を加え再結晶したところ、全
く着色のないカテコールが9.05g得られた。カテコール
の色調は以下の通りであった。なお、各測定方法は上記
ハイドロキノンの場合と同じ方法を用いた。 APHA(酢酸溶解液): 10 吸光度(380nm): 0.033
【0060】以上のように、実施例では反応工程の触媒
をリサイクルして効率的に芳香族ヒドロキシ化合物を製
造することができた。また精製工程によって芳香族ジヒ
ドロキシ化合物は純度が高いものを得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態の芳香族ジヒドロキシ化合物の製造方
法を示すフロー図である。
【符号の説明】
1 1段目の反応槽 2 2段目の反応槽 3 沈降槽 4 溶媒回収用の蒸留塔 5 未反応フェノール類回収用の蒸留塔 6 芳香族ジヒドロキシ化合物の蒸留塔 7 カテコール精製処理タンク 8 ハイドロキノン精製処理タンク 9 フィルター L1 原料供給路 L1a 過酸化水素供給路 L2、L3、L4、L5、L6、L7、L8 連絡路 L7a、L8a 溶媒供給路 L10 触媒リサイクル路 L11 溶媒リサイクル路 L12 フェノール類リサイクル路 L13 再蒸留路 L15、L16 水素供給路 L17、L18 取出路
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4H006 AA02 AC42 BA10 BA30 BA33 BD20 BD33 BD35 BD36 BD52 BE32 FC52 FE13 4H039 CA60 CC30

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 溶媒中において、固体触媒の存在下に懸
    濁床式でフェノール類を過酸化水素と反応させ芳香族ジ
    ヒドロキシ化合物を生成する反応工程と、 反応工程の反応液より、沈降分離および遠心分離からな
    る群より選ばれる少なくとも一種の分離操作によって固
    体触媒を分離し反応工程に返送する触媒分離工程と、 触媒分離工程の分離液より、溶媒および原料を分離して
    反応工程に返送する溶媒および原料分離工程と、 溶媒および原料分離工程の分離液より、生成物としての
    芳香族ジヒドロキシ化合物を分離する生成物分離工程
    と、 分離された生成物を精製する精製工程とを有する芳香族
    ジヒドロキシ化合物の製造方法。
  2. 【請求項2】 チタンとシリコンの複合酸化物を固体触
    媒として使用する請求項1記載の芳香族ジヒドロキシ化
    合物の製造方法。
  3. 【請求項3】 チタンとシリコンの複合酸化物が結晶性
    チタノシリケートである請求項2記載の芳香族ジヒドロ
    キシ化合物の製造方法。
  4. 【請求項4】 反応工程では、直列に連結された複数段
    の反応器で連続的に反応を行う請求項1ないし3のいず
    れかに記載の芳香族ジヒドロキシ化合物の製造方法。
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