JP2002175950A - 電気二重層キャパシタ用電極体の製造方法 - Google Patents

電気二重層キャパシタ用電極体の製造方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】容量密度が大きくかつ内部抵抗の小さい電気二
重層キャパシタを得るために、高密度、低抵抗の電極層
が集電体上に形成された電極体を提供する。 【解決手段】炭素質材料と結合材とを含むシート状成形
体を、導電性接着剤が塗工され当該接着剤中の溶剤の少
なくとも一部が除去された金属集電体の上に載置して積
層体を形成し、当該積層体をロール圧延してシート状成
形体の厚さを5〜60%減少させる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は電気二重層キャパシ
タ用の電極体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】分極性電極と電解質界面で形成される電
気二重層を利用した電気二重層キャパシタ、特にコイン
型形状のものは、メモリバックアップ電源として近年急
速に需要が伸びている。一方、例えば電気自動車用電源
等の大容量を必要とされる用途に対しても、単位体積あ
たりの容量(以下、容量密度という。)が大きく内部抵
抗が低い高エネルギ密度かつ高出力密度の電気二重層キ
ャパシタの開発が望まれている。また、メモリバックア
ップ向けの電気二重層キャパシタについても内部抵抗の
低減が望まれている。
【0003】内部抵抗を低減するためには、電極の構成
材料に低抵抗の材料を使用するとともに、効率良く集電
することが必要である。そのため、通常、導電材を含有
させたシート状電極を低抵抗の集電体箔の表面に接合し
て使用しているが、シート状電極の厚さが厚いと抵抗を
充分に低くできないため、薄膜のシート状電極を得る必
要がある。また、容量密度は、電気二重層形成の主体と
なる電極材料(高比表面積の炭素質材料等)の、電極の
単位体積あたりに存在する量が多いほど高い。したがっ
て、シート状電極の密度を高めることが必要である。
【0004】電気二重層キャパシタの電極は、例えば活
性炭粉末を硫酸等の電解液の溶媒を用いてスラリ状に混
練し、加圧プレスにより成形して得られる(米国特許3
288641)。しかし、この方法で得られる電極は剛
性の多孔性構造を有し、亀裂や破壊が生じやすく長期の
使用に耐えない。これに対し、活性炭粉末と電解液の混
合物に必要に応じてポリテトラフルオロエチレン(以下
PTFEという)のバインダを加えた粘稠物よりなるカ
ーボンペースト電極が提案されている(特公昭53−7
025、特公昭55−41015)。この電極は、可撓
性であり耐亀裂性や耐破壊性は有するが、形状保持性が
不充分であり、使用するには強度を補うための特別な構
造のセルが必要である。
【0005】また耐亀裂性や耐破壊性を有し、形状保持
性に優れた電極を得るために、炭素質材料とPTFE等
のバインダと液状潤滑剤からなる混練物を予備成形した
後、延伸又は圧延してシート状に成形された電極を得る
方法が提案されている(特開昭63−107011、特
開平2−235320)。しかし、この方法では、混練
することによりPTFEはランダムに繊維化し、また繊
維化部分と非繊維化部分が生じる。繊維化部分と非繊維
化部分では硬さが異なるため、シート電極が例えば0.
2mm以下の厚さの薄膜シートとなるように成形しよう
とすると、表面が凹凸になりやすく、穴が空きやすい問
題がある。したがって、電気二重層キャパシタの容量密
度を大きくできず、また内部抵抗も大きい問題がある。
【0006】上記問題の解決方法として、炭素質材料と
PTFEと液状潤滑剤との混合物をペースト押出し成形
又はスクリュー押出し成形した後、圧延してシート状に
成形された電極を得る方法が提案されている(特開20
00−235938、特開平11−283887)。こ
れらの方法によれば高強度の薄膜シートは得られるが、
圧延によりシート状電極はスムーズに薄膜化されるた
め、シート状電極の密度を高められない。そのため、容
量密度を充分に高められない問題がある。
【0007】一方、活性炭粉末とPTFEを混合してペ
ースト化し、集電体に塗工し乾燥した後、PTFEの融
点以上に加熱し、プレス成形して電極を薄膜化し、密度
を上げる方法も提案されている(特開平9−3600
5)。しかし、この方法では製造工程が複雑で連続化が
困難であり、また、PTFEが一部融解するため内部抵
抗が高い問題がある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は前述した従来
の問題点を解決すべくなされたものであり、高密度かつ
低抵抗の電極層が集電体上に形成された電極体の製造方
法を提供することにより、容量密度が大きくかつ内部抵
抗の小さい電気二重層キャパシタ、特に大容量、高出力
が必要とされる用途向けの電気二重層キャパシタを提供
することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は、金属集電体箔
の少なくとも片面に炭素質材料と第1の結合材とを含む
電極層が形成された電気二重層キャパシタ用電極体の製
造方法であって、下記工程A〜Dを含むことを特徴とす
る電気二重層キャパシタ用電極体の製造方法を提供す
る。 工程A:金属集電体箔の少なくとも片面に、導電性粉末
と第2の結合材と溶剤とを含む導電性接着剤を塗工する
工程。 工程B:前記導電性接着剤が塗工された金属集電体箔を
乾燥し、前記溶剤の少なくとも一部を除去し、導電性接
着層を形成する工程。 工程C:前記炭素質材料と前記第1の結合材とを含むシ
ート状成形体を作製する工程。 工程D:前記シート状成形体を前記導電性接着層の上に
載置して前記金属集電体箔と前記シート状成形体との積
層体を形成し、該積層体を圧延することにより、前記シ
ート状成形体の厚さを5〜60%減少させ、前記シート
状成形体からなる電極層を形成する工程。
【0010】なお、本明細書においては、金属集電体箔
の片面又は両面に電極層が形成され、金属集電体箔と電
極層が一体化したものを電極体という。当該電極体を正
極側に使用する場合は正極体、負極側に使用する場合は
負極体という。
【0011】電気二重層キャパシタは、電極材料と電解
液との界面に電気二重層を形成し、該電気二重層に電荷
を蓄えることを原理としている。本発明では電極材料と
して炭素質材料を使用するが、当該炭素質材料として
は、活性炭、ポリアセン、カーボンブラック等の粉末が
好ましく、カーボンファイバ、カーボンウィスカ、グラ
ファイト等の繊維又は粉末も好ましく使用できる。活性
炭としてはフェノール系、レーヨン系、アクリル系、ピ
ッチ系又はヤシガラ系等が使用できる。
【0012】上記炭素質材料は、細孔容積0.7〜1.
2cm/gかつ比表面積900〜2300m/gで
あることが好ましい。比表面積は特に1500〜230
0m /gであることが好ましく、さらに細孔容積0.
75〜1.1cm/gかつ比表面積1700〜210
0m/gであるとより好ましい。細孔容積や比表面積
が小さいと、炭素質材料自体の単位体積あたりの質量容
量が小さいため、電気二重層キャパシタの容量密度を高
められない。一方、細孔容積や比表面積が大きすぎる
と、シート状電極の密度を高めにくくなり電気二重層キ
ャパシタの容量密度を高めにくい。
【0013】本発明では、上記物性の炭素質材料に加
え、カーボンブラック等の導電性の高い炭素質材料を、
導電材として他の炭素質材料と混合して使用してもよ
い。導電材の比表面積としては200〜1500m
g、特には500〜1200m/gが好ましく、導電
材は電極中に2〜20%含まれることが好ましい。導電
材が多すぎると相対的に高比表面積の炭素質材料が少な
くなるため容量が小さくなり、導電材が少なすぎると電
極の内部抵抗を低減する効果がほとんど現れない。導電
材が上記含有率で含まれる、上記高比表面積の炭素質材
料と上記導電材と第1の結合材とからなる電極は、内部
抵抗が低くかつ容量も高く維持できるので好ましい。
【0014】工程Aにおいて使用される導電性接着剤と
しては、導電性粉末と第2の結合材と溶剤とからなる接
着剤が使用される。導電性粉末としては、カーボンブラ
ック、黒鉛等炭素系の導電性粉末が好ましい。第2の結
合材としては、耐熱性が高く、耐薬品性、機械的性質、
寸法安定性等に優れる樹脂又はその前駆体であることが
好ましい。特に、電気二重層キャパシタの電解液として
非水系電解液を使用する場合は、水の分解電圧より高い
電圧を印加して作動させるので製造工程においてセル内
の水分を充分に除去する必要があり、そのために電極体
の加熱処理等が必要である。
【0015】したがって、非水系電解液を使用する場合
は、上記樹脂は耐熱温度が200℃以上であることが好
ましい。なお、ここで樹脂の前駆体とは、加熱等により
反応して当該樹脂となるものをいう。上記樹脂として
は、具体的にはポリイミド、ポリアミドイミド、ポリフ
ッ化ビニリデン、セルロース、ポリビニルアルコール
等、又はこれらの前駆体が好ましい。特に非水系電解液
を使用する場合はポリイミド、ポリアミドイミド、ポリ
フッ化ビニリデン等が好ましい。
【0016】導電性接着剤中の固形分濃度(導電性粉末
とバインダの合量)は、導電性接着剤全質量の10〜4
0%、特に20〜35%であることが好ましい。濃度が
低すぎると除去する溶剤の量が多くなり工程上の効率が
悪い。一方、濃度が高すぎると粘度が高く塗工が困難と
なったり必要以上に導電性接着層が厚くなる。また、得
られる導電性接着層中の導電性粉末の割合は、30〜9
0%であることが、接着層の導電性と接合強度の両方の
観点から好ましい。
【0017】導電性接着剤の金属集電体箔への塗工方法
は特に限定されず、滴下、刷毛塗り、スプレー法、ドク
ターブレード法等各種の方法が使用できる。金属集電体
箔にリード部の役割も担わせる場合は、導電性接着剤は
リード部となる金属集電体箔の部分には塗工せず、シー
ト状成形体を接合する部分のみに塗工すればよい。
【0018】本発明では、導電性接着剤を金属集電体箔
に塗工後、工程Bに移り、乾燥して導電性接着剤中の溶
剤の少なくとも一部を除去、好ましくは溶剤が導電性接
着層全質量の20%以下となるまで、より好ましくは1
0%以下、さらに好ましくは5%以下となるまで溶剤を
除去する。導電性接着層中に溶剤が大量に存在する状態
で別途工程Cで作製するシート状成形体を載置し、得ら
れた積層体を圧延すると、導電性接着層中の溶剤がシー
ト状成形体の空隙部に侵入し、炭素質材料の細孔にまで
侵入するおそれがある。
【0019】溶剤の種類と電気二重層キャパシタの電解
液の組み合わせにもよるが、導電性接着層中の溶剤がシ
ート状成形体中に残存すると、電圧を印加したときに当
該溶剤と炭素質材料又は電解液との間で何らかの反応が
起こり、電気二重層キャパシタの出力が低下したり長期
に使用すると性能が劣化したりすることがある。そのた
め、溶剤はシート状成形体中に残存しないように加熱等
により充分に除去する必要があるが、炭素質材料の細孔
にまで侵入した溶剤は加熱等では充分には除去しきれな
いことがある。
【0020】一方、本発明では、導電性接着層中の溶剤
の少なくとも一部を除去してからシート状成形体をその
上に載置しているので、当該溶剤がシート状成形体中に
侵入するのを防止でき、電気二重層キャパシタの性能劣
化を防止できる。特に溶剤が導電性接着層全質量の20
%以下となるまで溶剤を除去すればその効果が高くな
る。
【0021】導電性接着層中の溶剤の少なくとも一部を
除去した後、工程Dに移り、シート状成形体を導電性接
着層の上に載置し、金属集電体箔とシート状成形体との
積層体を作製する。金属集電体箔の両面にシート状成形
体を接合する場合は、工程Bにおいて金属集電体箔の両
面に導電性接着層を形成しておき、2枚のシート状成形
体で金属集電体箔を挟めばよい。なお、シート状成形体
は、工程Cにより別途作製しておくものであり、工程A
と工程C、及び工程Bと工程Cはそれぞれどちらを先に
行ってもよい。工程Cについては、後述する。
【0022】ここで得られた積層体は次いで圧延ロール
を通して圧延する。このとき、シート状成形体の厚さ
が、圧延前の厚さより5〜60%減少するように圧延す
る(以下、この数値を圧下率という)。固定せずにシー
ト状成形体のみを圧延する場合は、シート状成形体の厚
さは薄くなるが面積が拡大するため、シート状成形体の
密度はほとんど高まらない。一方、本発明ではシート状
成形体を金属集電体箔に導電性接着層を介して積層し、
シート状成形体を金属集電体箔上に固定して圧延してい
るため、シート状成形体の面積の広がりは金属集電体箔
の伸びの範囲に依存することとなる。そのため圧延によ
りシート状成形体の厚さが薄くなるものの面積はあまり
拡大せず、シート状成形体の密度が高まることになる。
【0023】ここで、圧下率が5%より小さいような圧
延では、充分にシート状成形体の密度が高まらず、ま
た、金属集電体箔とシート状成形体との充分な密着も得
られない。一方、圧下率が60%を超えるような圧延を
すると、金属集電体箔が追従しきれず、金属集電体箔が
切れたり、クラックが発生するおそれがある。圧下率
は、特に5〜50%であることが好ましく、さらには2
0〜50%であることが好ましい。
【0024】また、上記圧延の際のシート状成形体及び
金属集電体箔の伸び率は、1〜40%、特に5〜25%
であることが好ましい。この伸び率が高すぎると、シー
ト状成形体の密度が充分に高くならない。伸び率が低す
ぎる場合は、シート状成形体にクラックが発生しやす
い。
【0025】本発明では、工程Dの操作によりシート状
成形体は密度が2〜50%、特には5〜30%増加する
ように圧延することが好ましい。工程Dの操作はシート
状成形体の密度を高めることを目的として行っており、
用いるシート状成形体の圧延前の密度にもよるが、密度
の増加率が圧延前に比べて2%未満では、工程Dを行う
メリットが少なく、電気二重層キャパシタの容量密度を
充分には高められない。一方、密度を50%超増加させ
ようとすると、シート状成形体に負荷がかかりクラック
が発生するおそれがある。
【0026】金属集電体箔は、軽量で高導電性であるこ
とからアルミニウム又はアルミニウム合金からなること
が好ましい。また、金属集電体箔は、あらかじめ化学的
方法又は機械的方法により表面処理されていて、表面処
理されている面に導電性接着剤が塗工されてシート状成
形体と接合されることが好ましい。化学的方法として
は、交流エッチング、直流エッチング、化学エッチング
等の方法が挙げられ、機械的方法としてはサンドブラス
ト、やすりがけ、模様が形成されたロールにて圧延する
ことによる凹凸の転写等の方法が挙げられる。サンドブ
ラストとしては粒子が媒体に分散したスラリを用いるウ
ェットブラスト法、粒子を圧縮空気等を用いて吹き付け
るドライブラスト法のいずれも使用できる。
【0027】金属集電体箔として表面処理されたものを
使用することにより、電気二重層キャパシタは長期間使
用したときの性能劣化が少なくなり、長期信頼性が高ま
る。この理由は必ずしも明確ではないが、以下の2つの
いずれかの現象が起こっていると考えられる。(1)表
面処理により金属集電体箔の表面が粗面化されて、シー
ト状成形体との導電性接着層を介しての接触面積が大き
くなるため接合強度が高まった。(2)表面処理により
金属集電体箔の表面官能基の状態が変わり、結果として
金属集電体箔が化学的に安定した。
【0028】また、本発明において使用する金属集電体
箔としては、厚さが10〜100μm、特に20〜50
μmであることが好ましく、引張強さが10〜250N
/mm、特に50〜100N/mmであることが好
ましく、破断伸びが1.5〜25%、特に2〜6%であ
ることが好ましい。厚さが薄すぎると金属集電体箔は強
度が弱く、製造工程において取扱いにくい。一方、厚す
ぎると電気二重層キャパシタ単位セル中に金属集電体箔
が占める割合が大きくなり、キャパシタの容量密度が低
くなる。
【0029】また、金属集電体箔の引張強さが低すぎた
り、破断伸びが高すぎると、シート状成形体を積層して
圧延する際に、シート状成形体の密度が高まりにくい。
一方、引張強さが高すぎたり、破断伸びが低すぎると、
上記圧延時にシート状成形体にクラックが入りやすい。
なお、ここで引張強さと破断伸びは、JIS−Z224
1に規定される方法に準じて室温で測定した値をいう。
また、金属集電体箔がアルミニウムのような比較的低融
点の金属からなる場合、例えば導電性接着層を乾燥処理
するなどの目的で比較的低温(〜300℃)で熱処理し
ても焼き鈍し効果が生じ、引張り強さや破断伸び等の物
性値が変化する。したがって、本発明においては、これ
らの物性値は、工程Dに入る直前における金属集電体箔
の物性値とする。
【0030】次に工程Cについて説明する。工程Cは、
下記工程E〜Gを含む工程であることが好ましい。 工程E:前記炭素質材料と、前記第1の結合材としての
PTFEと、加工助剤と、を含む混合物を押出し成形す
る工程。 工程F:工程Eにおいて得られた押出し成形物を、圧延
ロールでシート状に成形する工程。 工程G:工程Fで得られたシート状物から、前記加工助
剤の少なくとも一部を除去し、前記シート状成形体を得
る工程。
【0031】本発明における第1の結合材はPTFEで
あることが好ましく、工程E〜Gを含む工程でシート状
成形体を作製する場合は、PTFEを使用する。工程
E、Fにおいて、押出し方向と圧延する方向とを調整す
ることにより、縦横に網目状にPTFEを繊維化させる
ことができ、高強度のシート状成形体が得られる。特に
押出し成形法としてスクリュー押出し成形法を用いる場
合は、PTFEはスクリュー押出し成形により押出し方
向と垂直に繊維化し、圧延では圧延ロールを通す方向に
繊維化するので、長尺状のシートであって、押出し成形
方向と圧延方向を同じにする場合でも縦横に網目状に繊
維化でき好ましい。
【0032】ここでPTFEとしてはテトラフルオロエ
チレンの単独重合体だけでなく、テトラフルオロエチレ
ンに対して他の単量体を0.5モル%以下加えて共重合
させて得られる共重合体も含まれる。他の単量体が0.
5モル%以下であれば、PTFEに溶融流動性が付与さ
れず、テトラフルオロエチレン単独重合体同様に繊維化
して高強度かつ低抵抗のシート状成形体を作製できる。
他の単量体としては、ヘキサフルオロプロピレン、クロ
ロトリフルオロエチレン、パーフルオロ(アルキルビニ
ルエーテル)、トリフルオロエチレン、(パーフルオロ
アルキル)エチレン等が例示される。
【0033】PTFEは、低分子量のものであると液状
又はゲル状となり繊維化しにくいので、標準比重から計
算される分子量が1×10以上の固体を50質量%以
上含んでいることが好ましい。また、PTFEは、乳化
重合により得られるものが繊維化しやすいので好まし
い。
【0034】工程Eにおいて使用する加工助剤は、PT
FEが適度に繊維化及び塑性変形するように加えるもの
であり、PTFEに容易に湿潤しかつ成形されたシート
状電極から容易に除去できる液体であればいずれも使用
できる。具体的には、エチルアルコール、メチルアルコ
ール、イソプロピルアルコール、灯油、ソルベントナフ
サ、ホワイトナフサ、エチレングリコール、プロピレン
グリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン等が
挙げられる。また、PTFE水性ディスパージョンも加
工助剤として使用でき、単独で使用しても他の加工助剤
と併用してもよい。
【0035】工程Eにおける混合物中に、PTFEは炭
素質材料に対して1〜20質量%、さらには5〜10質
量%含まれることが好ましい。PTFEが1質量%未満
であると電極の強度が弱く、20質量%を超えると電極
の内部抵抗が増大しやすい。
【0036】また、工程Eにおける混合物中に、加工助
剤は炭素質材料に対して20〜200質量%、特に40
〜100質量%含まれることが好ましい。加工助剤が2
0質量%未満であると押出し流動性が不足し、成形が困
難となる。200質量%を超えると押出し圧力が上がら
ず、PTFEが充分に繊維化されない。また、押出し中
に加工助剤の浸み出しが起こりやすい。加工助剤の添加
は、炭素質材料とPTFEとを混合した後でも混合する
と同時でもよい。混合時に、炭素質材料とPTFEと加
工助剤との混合物が造粒物となることもあるが、押出し
成形に影響することはない。
【0037】炭素質材料とPTFEと加工助剤との混合
物は、あらかじめ予備成形された後、押出し機に入れて
押出し成形され、ロッド、シート、チューブ等の形状の
成形物となる。次いで工程Fに移り、押出し成形物をロ
ール圧延によってシート状に成形する。このとき、圧延
ロールの温度は20〜350℃、特には60〜120℃
であることが好ましい。圧延ロールの温度が20℃未満
ではPTFEが充分に繊維化されず脆いシートとなりや
すい。圧延ロールの温度が350℃を超えると加工助剤
の蒸発が激しいため、シート表面にヒビ割れ、剥離等が
生じやすい。また、同様の理由で、工程Dにおける圧延
時の圧延ロールの温度も上記と同じ範囲であることが好
ましい。
【0038】次いで工程Gに移り、シート状成形体から
加工助剤の少なくとも一部を除去するために乾燥する。
乾燥温度は加工助剤の沸点以上で、PTFEの融点以下
の温度が好ましい。また、乾燥後又は加工助剤を一部除
去した半乾燥後のシート状成形体を、延伸処理したり、
再び圧延してもよい。加工助剤の少なくとも一部を除去
すると、加工助剤が締めていた空間が空隙となるため、
その後に圧延するとこの空隙が押し縮められ、シート状
成形体の密度が増大するので好ましい。
【0039】延伸処理する場合、その延伸倍率は1.1
〜5.0倍が好ましく、延伸は一軸方向に行っても多軸
方向に行ってもよい。また、延伸処理は乾燥工程前に行
ってもよい。延伸処理することによりPTFEの繊維化
が促進され、高強度、低抵抗の薄膜シートが得られる
が、延伸処理するときの温度を30〜350℃、特に2
00〜320℃とすると、PTFEの繊維化がより促進
されるので好ましい。
【0040】このようにして得られたシート状成形体
は、PTFEが繊維化して三次元的網目構造を有してい
るため、PTFEが加わることによる電極層の抵抗の増
大が少ない。また、導電材としてカーボンブラックを加
えている場合は、押出し成形、ロール圧延の両工程にお
いてカーボンブラックが強圧で加圧されるので、少量の
カーボンブラックでも電気的に接続して電極層は低抵抗
となる。
【0041】上述のようにして作製したシート状成形体
は、工程A及びBを経た金属集電体箔と積層され、工程
Dが行われる。ここで、シート状成形体は、金属集電体
箔に積層する前に必要に応じて焼成しておいてもよい。
この場合、PTFEの融点以上の温度における完全焼成
であっても、PTFEの融点未満の温度における不完全
焼成であってもよい。
【0042】工程Cにより得られるシート状成形体は、
厚さが100〜400μm、特に150〜250μmで
あることが好ましく、密度が0.4〜0.7g/c
、特に0.5〜0.7g/cmであることが好ま
しい。金属集電体とともに圧延する前の厚さが薄すぎる
と工程Dにおいてシート状成形体が切れやすくなり、厚
すぎると得られる電極層の厚さが厚くなって電極層の抵
抗が高くなる。また、密度が低すぎると、工程Dの操作
を行っても充分に電極層の密度を高められず、一方工程
E〜Gの操作によりシート状成形体を得る場合は密度を
0.70g/cm超とするのは困難である。
【0043】本発明では、工程E〜Gにより得られたシ
ート状成形体を用いて工程Dを行うことにより、電極層
を薄膜かつ高密度にすることができる。電気二重層キャ
パシタは、出力密度を高めるためには電極の抵抗が低い
ことが好ましく、電極層の厚さは薄いことが好ましい。
しかし、薄すぎると、電気二重層キャパシタセル内にお
いて電極層が占める体積割合が低くなり、その結果電気
二重層キャパシタの容量密度が低くなるので好ましくな
い。したがって、工程Dの終了後得られる電極層の厚さ
は80〜300μm、特に100〜200μmであるこ
とが好ましい。
【0044】また、電極層の密度は、0.5〜1.0g
/cm、特に0.6〜0.85g/cmとすること
が好ましい。電極層の密度が低いと電気二重層キャパシ
タの容量密度を充分には高められない。一方、密度が高
すぎると電極層中の空隙部が少なくなり、電解液が電極
層内部まで充分に浸透せず逆に容量密度が低くなるおそ
れがある。
【0045】本発明の方法により得られる電極体は、電
気二重層キャパシタの正極側にも負極側にも使用でき
る。本発明による電気二重層キャパシタは、上記電極体
を正極体及び負極体とし、該正極体と該負極体とを間に
セパレータを介して対向させて素子を形成し、該素子に
電解液を含浸させケースに収容することにより得られ
る。単位セルで高容量を得るためには、例えば正極体と
負極体とは複数交互に積層して電解液とともにケースに
収容してもよいし、長尺状の正極体と負極体とをセパレ
ータを介して対向させた後巻回して素子を形成し、該素
子を電解液とともに円筒型のケースに収容してもよい。
【0046】セパレータは、厚さが15〜200μm程
度、特に50〜100μmであることが好ましく、多孔
質のシート状のもの、例えばセルロース、ガラス繊維等
からなるシートが好ましく使用できる。電解液としては
水系の電解液も非水系の電解液も使用できるが、エネル
ギが電圧の2乗に比例することから、耐電圧の高い非水
系の電解液を使用することが好ましい。具体的には、プ
ロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、エチル
メチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチル
カーボネート、アセトニトリル、スルホラン等の溶媒
と、4級アンモニウム塩、4級ホスホニウム塩等の電解
質とからなる電解液が好ましい。
【0047】
【実施例】[例1]比表面積1800m/g、細孔容
積0.8cm/gの高純度活性炭粉末とケッチェンブ
ラックとPTFE粉末とを質量比で8:1:1の割合で
混合した混合物に、プロピレングリコールを活性炭粉末
に対して66質量%加え混合した。この混合物をバレル
内径40mmの一軸押出し機にてスクリュー圧縮比1.
6のフルフライトスクリューと、押出し物形状が筒状
(外径102mm、内径86mm)となるようにされた
ノズルを用い、バレル温度80℃、ノズル温度90℃に
てスクリュー押出し成形を行った。
【0048】得られた筒状の押出し物を筒の高さ方向
(押出し方向)に切り、開いて平らにした後、ロール温
度80℃で押出し方向と同じ方向にロール圧延し、25
0℃で60分間乾燥してプロピレングリコールを除去し
て厚さ200μm、密度0.5g/cmのシートを得
た。このシートから4cm×6cmのシート状成形体を
切り抜いた。
【0049】リード端子を有する幅4cm、高さ6c
m、厚さ30μmの矩形の純度99.9%のアルミニウ
ム箔の片面に、導電性接着剤を塗工した。この導電性接
着剤は、カーボンブラックとポリアミドイミド樹脂の前
駆体とを質量比で2:1の割合で含み、溶剤がN−メチ
ル−2−ピロリドンからなり、固形分濃度が20質量%
である。
【0050】次に、導電性接着剤を塗工したアルミニウ
ム箔を260℃で30分乾燥し、導電性接着層を形成し
た。なお、この導電性接着層の厚さは5μmであり、導
電性接着層中の溶剤の含有量は0.1質量%であった。
また、ここで使用したアルミニウム箔と同じアルミニウ
ム箔に対し、導電性接着剤を塗工せずに上記と同じ条件
(260℃で30分)熱処理し、熱処理後の機械的性質
をJIS−Z2241に規定される方法に準じて引張試
験機にて測定したところ、引張強さが80N/mm
あり、破断伸びが2.5%であった。
【0051】次に、上記シート状成形体をこの導電性接
着層の上に載置し、アルミニウム箔と積層した。得られ
た積層体を、ロール温度150℃でロール圧延した後、
電極層が形成された部分が4cm×6cmの面積となり
リード部が残るように切り抜いて電極体を得た。この電
極体の電極層の厚さは145μmであり、電極層の密度
は0.7g/cmであり、電極体全体の厚さは178
μmであった。すなわち、シート状成形体の圧下率は2
8%、伸び率は18%、密度の増加率は40%であっ
た。
【0052】上記電極体を2枚作製し、2枚の電極体の
電極層の面を対向させ、40μmの厚さのセルロース繊
維製セパレータを挟んで厚さ2mm、幅5cm、高さ7
cmの2枚のガラス製挟持板で挟持し、素子とした。2
枚の電極体とセパレータとの合計の厚さは0.4mmで
あった。
【0053】電解液としてはプロピレンカーボネートに
1.5モル/Lのトリエチルモノメチルアンモニウムテ
トラフルオロボレートを溶解した溶液を用いた。上記素
子を200℃で3時間真空加熱することにより素子の不
純分を除去し、電解液を真空含浸させてポリプロピレン
製の角型有底筒状容器に収容し、電気二重層キャパシタ
を作製した。電流密度20mA/cmで直流抵抗と容
量を測定し、単位体積あたりの容量(容量密度)と単位
体積あたりの抵抗を算出した。結果を、電極層の密度と
ともに表1に示す。
【0054】[例2]シート状成形体の圧下率を10
%、伸び率を6%、密度の増加率を30%に変更した以
外は例1と同様にして、厚さ180μm、密度0.65
g/cmの電極層を有する厚さ214μmの電極体を
得た。この電極体を用いた以外は例1と同様にして電気
二重層キャパシタを作製し、例1と同様の評価を行っ
た。結果を表1に示す。
【0055】[例3(比較例)]シート状成形体の圧下
率を1%、伸び率を0%、密度の増加率を1%に変更し
た以外は例1と同様にして、厚さ198μm、密度0.
51g/cmの電極層を有する厚さ233μmの電極
体を得た。電極体を得た。この電極体を用いた以外は例
1と同様にして電気二重層キャパシタを作製し、例1と
同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0056】[例4(比較例)]例1において得られた
シート状成形体をさらに圧延し、厚さ145μm、密度
0.58g/cmのシート状成形体を得た。厚さ30
μmのアルミニウム箔に、例1で用いた導電性接着剤を
塗工し、その上に上記シート状成形体を載置して260
℃で30時間加熱し、これを電極体とした。電極体の厚
さは180μmであった。この電極体を用いた以外は例
1と同様にして電気二重層キャパシタを作製し、例1と
同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0057】[例5]ロール圧延の条件を変更した以外
は、例1と同様にスクリュー押出し成形及び圧延を行
い、厚さ250μm、密度0.5g/cmのシートを
得た。このシートから4cm×6cmのシート状成形体
を切り抜いた。リード端子を有する幅4cm、高さ6c
m、厚さ30μmの矩形の純度99.9%のアルミニウ
ム箔の片面に、例1と同様にして導電性接着剤を塗工し
た。
【0058】次に、導電性接着剤を塗工したアルミニウ
ム箔を200℃で40時間乾燥し、導電性接着層を形成
した。導電性接着層の厚さは5μmであり、導電性接着
層中の溶剤の含有量は0.01質量%であった。また、
ここで使用したアルミニウム箔と同じアルミニウム箔に
対し、導電性接着剤を塗工せずに上記と同じ条件(20
0℃で40時間)熱処理し、熱処理後の機械的性質を例
1と同様に測定したところ、引張強さが60N/mm
であり、破断伸びが4.8%であった。
【0059】次に、上記シート状成形体をこの導電性接
着層の上に載置し、例1と同様にして電極体を得た。こ
の電極体の電極層の厚さは138μmであり、電極層の
密度は0.67g/cmであり、電極体全体の厚さは
166μmであった。すなわち、シート状成形体の圧下
率は45%、伸び率は23%、密度の増加率は34%で
あった。
【0060】この電極体を用いた以外は例1と同様にし
て電気二重層キャパシタを作製し、例1と同様の評価を
行った。結果を表1に示す。
【0061】
【表1】
【0062】
【発明の効果】本発明の製造方法によれば、高密度かつ
低抵抗の薄い電極層が集電体上に形成された電極体が得
られるので、当該電極体を用いた電気二重層キャパシタ
は、内部抵抗を低く保って、容量密度を高められる。特
に、第1の結合材としてPTFEを用い、炭素質材料と
PTFEと加工助剤との混合物を押出し成形した後に圧
延してシート状成形体を得る場合は、当該シート状成形
体はPTFEが繊維化して三次元的網目構造を有するた
め強度が高く、耐破壊性、形状保持性に優れ、抵抗が低
い。
【0063】また、シート状成形体の密度を高める操作
と、金属集電体箔とシート状成形体とを接合する操作と
を工程Dにより同時に行っており、電気二重層キャパシ
タの生産性を高めることができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 篠崎 泰夫 神奈川県横浜市神奈川区羽沢町1150番地 旭硝子株式会社内 Fターム(参考) 5E082 AB09 BC30 BC39 EE03 LL21 MM22 PP03 PP06 PP10

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】金属集電体箔の少なくとも片面に炭素質材
    料と第1の結合材とを含む電極層が形成された電気二重
    層キャパシタ用電極体の製造方法であって、下記工程A
    〜Dを含むことを特徴とする電気二重層キャパシタ用電
    極体の製造方法。 工程A:金属集電体箔の少なくとも片面に、導電性粉末
    と第2の結合材と溶剤とを含む導電性接着剤を塗工する
    工程。 工程B:前記導電性接着剤が塗工された金属集電体箔を
    乾燥し、前記溶剤の少なくとも一部を除去し、導電性接
    着層を形成する工程。 工程C:前記炭素質材料と前記第1の結合材とを含むシ
    ート状成形体を作製する工程。 工程D:前記シート状成形体を前記導電性接着層の上に
    載置して前記金属集電体箔と前記シート状成形体との積
    層体を形成し、該積層体を圧延することにより、前記シ
    ート状成形体の厚さを5〜60%減少させ、前記シート
    状成形体からなる電極層を形成する工程。
  2. 【請求項2】前記工程Bにおいて、前記導電性接着層全
    質量に対する前記溶剤含有量が20質量%以下となるま
    で前記溶剤を乾燥除去する請求項1に記載の電極体の製
    造方法。
  3. 【請求項3】前記工程Dにおいて前記積層体を圧延する
    ことにより、前記シート状成形体は密度が2〜50%増
    加する請求項1又は2に記載の電極体の製造方法。
  4. 【請求項4】前記工程Cは、下記工程E〜Gを含む工程
    である請求項1、2又は3に記載の電極体の製造方法。 工程E:前記炭素質材料と、前記第1の結合材としての
    ポリテトラフルオロエチレンと、加工助剤と、を含む混
    合物を押出し成形する工程。 工程F:工程Eにおいて得られた押出し成形物を、圧延
    ロールでシート状に成形する工程。 工程G:工程Fで得られたシート状物から、前記加工助
    剤の少なくとも一部を除去し、前記シート状成形体を得
    る工程。
  5. 【請求項5】前記工程Gにおいて、前記加工助剤の少な
    くとも一部を除去した後、圧延ロールで圧延して前記シ
    ート状成形体を得る請求項4に記載の電極体の製造方
    法。
  6. 【請求項6】前記炭素質材料は細孔容積が0.7〜1.
    2cm/gかつ比表面積が900〜2300m/g
    であり、前記混合物中に前記第1の結合材は前記炭素質
    材料に対して1〜20質量%、前記加工助剤は前記炭素
    質材料に対して20〜200質量%含まれる請求項4又
    は5に記載の電極体の製造方法。
  7. 【請求項7】前記工程Dにおいて、温度20〜350℃
    に保持された圧延ロールにより前記積層体を圧延する請
    求項4、5又は6に記載の電極体の製造方法。
  8. 【請求項8】前記金属集電体箔は、アルミニウム又はア
    ルミニウム合金からなる請求項1〜7のいずれかに記載
    の電極体の製造方法。
  9. 【請求項9】前記金属集電体箔を、化学的方法及び/又
    は機械的方法により表面処理した後に、表面処理された
    面に前記導電性接着剤を塗工する請求項1〜8のいずれ
    かに記載の電極体の製造方法。
  10. 【請求項10】請求項1〜9のいずれかに記載の方法に
    より得られた電極体を正極体及び負極体とし、該正極体
    と該負極体とをセパレータを介して対向させて素子を形
    成し、該素子に電解液を含浸させることを特徴とする電
    気二重層キャパシタの製造方法。
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