JP2002173739A - 耐水素脆化特性の優れた高強度鋼 - Google Patents

耐水素脆化特性の優れた高強度鋼

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JP2002173739A JP2000367431A JP2000367431A JP2002173739A JP 2002173739 A JP2002173739 A JP 2002173739A JP 2000367431 A JP2000367431 A JP 2000367431A JP 2000367431 A JP2000367431 A JP 2000367431A JP 2002173739 A JP2002173739 A JP 2002173739A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 耐水素疲労特性及び耐遅れ破壊特性の良好な
強度が1300MPa以上の高強度鋼を提供する。 【解決手段】 質量%で、C:0.2〜0.6%、S
i:0.01〜2%、Mn:0.05〜0.6%、M
o:0.8〜3%、Al:0.005〜0.1%を含有
し、必要に応じV:0.05〜0.5%、Mg:0.0
002〜0.005%の1種又は2種を含有し、又はM
o/Mnの質量%比率が2以上であり、残部がFe及び
不可避的不純物よりなり、引張強さが1300MPa以
上であり、疲労限界拡散性水素量が0.7ppm以上及
び/又は遅れ破壊限界拡散性水素量が0.5ppm以上
であることを特徴とする耐水脆化特性の優れた高強度
鋼。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、自動車用、各種産
業機械用や橋梁用に使用されているボルト、ポール・パ
イルおよび建築、橋梁などのプレストレストコンクリー
ト構造物の補強材として広く使われているPC鋼棒なら
びに各種機械部品などの高強度鋼に関わるものであり、
特に引張強さが1300MPa以上であり且つ耐水素疲
労特性と耐遅れ破壊特性の優れた高強度鋼に関するもの
である。
【0002】
【従来の技術】自動車や各種産業機械の軽量化、高性能
化あるいは橋梁の建設費削減のために、高強度ボルトの
ニーズが高まっている。高強度ボルトは、例えばJIS
G4105で規定されているSCM435やSCM4
40などの低合金鋼を使い、焼入れ・焼戻し処理によっ
て製造されている。しかし、引張強さが1300MPa
を超えると遅れ破壊が発生しやすくなる問題点があっ
た。また、ポール、パイルおよび建築、橋梁等のプレス
トレストコンクリート構造物の補強材として広く使われ
ているPC鋼材は、通常、JIS G 3536に規定
されているPC鋼線およびPC鋼より線、JIS G
3109に規定されているPC鋼棒が使われている。P
C鋼線に用いられる材料はJIS G 3502に適合
したピアノ線材であり、パテンティング処理をした後、
伸線加工することにより製造される。一方、PC鋼棒
は、例えば特公平5−41684号公報に記載されてい
るように、C量が0.25〜0.35%の中炭素鋼を用
いて焼入れ・焼戻し処理をすることによって製造されて
いる。「プレストレストコンクリート設計施工規準・同
解説」(日本建築学会編集、丸善、昭和62年1月25
日 第3版発行)の43〜45頁に記載されているよう
に、引張強さが1275MPa(130kgf/m
2)を超えるような高強度PC鋼棒は、PC鋼線に比
べて耐遅れ破壊特性(応力腐食破壊)が劣っているとい
う課題があった。
【0003】一方、本発明者らは、実環境下で生じた実
際のボルトやPC鋼棒の破断状況を詳細に解析した結
果、遅れ破壊以外に水素疲労による破壊例もかなりの頻
度で発生していることが明確になった。即ち、ボルトや
PC鋼棒には所定の荷重以外に変動荷重が負荷され、ボ
ルト、PC鋼棒などが腐食すると鋼材中に水素が侵入す
る。変動荷重がかかり、水素が侵入する環境下では、遅
れ破壊以外に水素に起因する疲労破壊の頻度が増加する
ことを見い出した。更に、変動荷重がかかる産業機械用
の高強度機械部品では、潤滑油が分解することによって
水素が発生し、水素が部品中に侵入し、水素起因の疲労
破壊が生じていることが明らかとなった。
【0004】高強度鋼の耐遅れ破壊特性を向上させる従
来の知見として、例えば、特公平5−59967号公報
ではP、S含有量を低減することが有効であり、また、
特公平5−41684号公報ではSi、Mn含有量を規
制するとともに焼入れ処理後、焼戻し工程中で曲げ加工
または引き抜き加工を施す技術が提案されている。更
に、特開平7−70695号公報、特開平8−6029
1号公報、特開平11−236617号公報には、合金
元素に着目した耐遅れ破壊特性向上技術がそれぞれ提案
されている。
【0005】これらの技術によって、高強度鋼の耐遅れ
破壊特性は、ある程度向上するものの、抜本的な解決に
は至っていない。更に、耐水素疲労特性と耐遅れ破壊特
性を両立させる技術は未だに確立されていない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記の如き実
状に鑑みなされたものであって、耐水素疲労特性と耐遅
れ破壊特性の良好な強度が1300MPa以上の高強度
鋼を実現することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、まず焼入
れ・焼戻し処理によって製造した種々の強度レベルの高
強度を用いて、水素による疲労破壊を詳細に解析した。
ここで、疲労試験は下記の条件で行った。
【0008】まず、高強度鋼の回転曲げ疲労試験(平
滑試験片)を行い、107サイクルの疲れ限度を求め
る。
【0009】電解水素チャージにより種々のレベルの
拡散性水素量を含有させた後、疲労試験中に試料から大
気中に水素が抜けることを防止するためにCdめっきを
施し、次いで回転曲げ疲労試験を行い、疲労破壊までの
疲労寿命(繰返し数)と拡散性水素量の関係を求める。
ここで、疲労試験の応力は「で求めた疲れ限度の0.
9倍」の一定にしている。
【0010】図1に引張強さが1514MPaの場合の
疲労寿命と拡散性水素量について解析した一例を示す。
横軸の繰返し数で例えば、1.E+04は1×104
表す。試料中に含まれる拡散性水素量が少なくなるほど
疲労寿命が長くなり、拡散性水素量がある値以下では繰
返し数が107サイクルでも疲労破壊が発生しなくな
る。107サイクルで疲労破壊しない水素量の上限を
「疲労限界拡散性水素量」と定義する。疲労限界拡散性
水素量が高いほど高強度鋼の耐水素疲労破壊特性は良好
であり、鋼材の成分、熱処理等の製造条件によって決ま
る鋼材固有の値である。なお、試料中の拡散性水素量は
ガスクロマトグラフで容易に測定することができる。
【0011】また、高強度の耐遅れ破壊特性の評価は、
遅れ破壊が発生しない「遅れ破壊限界拡散性水素量」を
求めることにより評価した。この方法は、電解水素チャ
ージにより種々のレベルの拡散性水素量を試料に含有さ
せた後、遅れ破壊試験中に試料から大気中に水素が抜け
ることを防止するためにCdめっきを施し、その後、大
気中で所定の荷重を負荷し、遅れ破壊が発生しなくなる
拡散性水素量を評価するものである。ここで、遅れ破壊
試験片は図2に示すような形状の切欠き付きのものであ
り、遅れ破壊試験の荷重は最大引張荷重の0.9倍であ
る。図3に拡散性水素量と遅れ破壊に至るまでの破断時
間の関係について解析した一例を示す。試料中に含まれ
る拡散性水素量が少なくなるほど遅れ破壊に至るまでの
時間が長くなり、拡散性水素量がある値以下では遅れ破
壊が発生しなくなる。6000分(100時間)で遅れ
破壊しない水素量の上限を「遅れ破壊限界拡散性水素
量」と定義する。遅れ破壊限界拡散性水素量が高いほど
鋼材の耐遅れ破壊特性は良好であり、鋼材の成分、熱処
理等の製造条件によって決まる鋼材固有の値である。
【0012】そこで、高強度鋼の疲労限界拡散性水素量
および遅れ破壊限界拡散性水素量を増加させる手段、即
ち耐水素疲労破壊特性と耐遅れ破壊特性を両立させるべ
く、種々検討を重ねた。この結果、 A;従来鋼種よりもMn量を低下させMo量を増加させ
るとともにMoとMnの質量%添加比率(Mo/Mn)
を2以上とする。 B;Aに加えてVあるいはMg、もしくは両方を添加す
る。ことが疲労および遅れ破壊限界拡散性水素量を大幅
に増加させるという全く新たな知見を見出した。
【0013】以上の検討結果に基づき、鋼材組成を最適
に選択すれば、耐水素疲労破壊特性と耐遅れ破壊特性の
優れた高強度鋼を実現できるという結論に達し、本発明
をなしたものである。
【0014】本発明は以上の知見に基づいてなされたも
のであって、その要旨とするところは、次の通りであ
る。
【0015】(1) 質量%で、C:0.2〜0.6%、
Si:0.01〜2%、Mn:0.05〜0.6%、M
o:0.8〜3%、Al:0.005〜0.1%を含有
し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、且つ引
張強さが1300MPa以上であることを特徴とする耐
水素脆化特性の優れた高強度鋼。
【0016】(2) 質量%で、V:0.05〜0.5
%、Mg:0.0002〜0.005%の1種または2
種を含有することを特徴とする(1)記載の耐水素脆化
特性の優れた高強度鋼。
【0017】(3) MoとMnの質量%比率(Mo/
Mn)が2以上であることを特徴とする(1)または
(2)記載の耐水素脆化特性の優れた高強度鋼。
【0018】(4) 質量%で、Ni:0.05〜3
%、Cu:0.05〜1%、Nb:0.005〜0.1
%、Ti:0.002〜0.05%、B:0.0003
〜0.005%の1種または2種以上を含有することを
特徴とする(1)〜(3)の何れか1項に記載の耐水素
脆化特性の優れた高強度鋼。
【0019】(5) 質量%で、Cr:1%以下を含有す
ることを特徴とする(1)〜(4)の何れか1項に記載
の耐水素脆化特性の優れた高強度鋼。
【0020】(6) 疲労限界拡散性水素量が0.7p
pm以上であることを特徴とする(1)〜(5)の何れか
1項に記載の耐水素脆化特性の優れた高強度鋼。
【0021】(7) 遅れ破壊限界拡散性水素量が0.5
ppm以上であることを特徴とする(1)〜(6)の何
れか1項に記載の耐水素脆化特性の優れた高強度鋼。
【0022】
【発明の実施の形態】次に、本発明の実施の形態につい
て説明する。
【0023】まず、本発明の対象とする鋼の成分の限定
理由について述べる。
【0024】C:Cは所定の引張強さを得る上で必須の
元素であるが、0.2%未満では所要の強度が得られな
いため、下限を0.2%に限定した。引張強さをより高
める点で好ましい下限は、0.3%である。一方、0.
6%を超えて添加しても上記の効果が飽和するため、上
限を0.6%に制限した。
【0025】Si:Siは固溶体硬化作用によって引張
強さを高める作用がある。0.01%未満では前記作用
が発揮できず、一方、2%を超えても添加量に見合う効
果が期待できないため、0.01〜2%の範囲に制限し
た。
【0026】Mn:Mnは脱酸、脱硫のために必要であ
るばかりでなく、マルテンサイト組織を得るための焼入
性向上に対して有効な元素であるが、0.05%未満で
は上記の効果が得られず、一方0.6%を超えると疲労
および遅れ破壊限界拡散性水素量が低下するため、0.
05〜0.6%の範囲に制限した。なお、焼入性と疲労
および遅れ破壊限界拡散性水素量を両立させる好ましい
範囲は、0.1〜0.4%である。
【0027】Mo:Moは強い焼戻し軟化抵抗を有し、
後述する所定の焼戻し温度条件による熱処理後の引張強
さを高めるために有効な元素である。更に、MoとMn
の質量%添加比率Mo/Mnが特定の範囲では、耐水素
疲労特性と耐遅れ破壊特性が著しく向上する。ここで、
Moが0.8%未満では耐水素疲労特性および耐遅れ破
壊特性を向上させる効果が少なく、一方、3%を超えて
添加しても製造コストの点で添加量に見合う効果を得る
ことが困難であるため、0.8〜3%に制限した。耐水
素疲労特性および耐遅れ破壊特性と製造コストの点で好
ましい範囲は、1〜2%である。
【0028】Mo/Mn:耐水素疲労特性を著しく向上
させるためには、MnとMo量は上記に加えて、Mo/
Mnの質量%添加比率が2以上であることが必要であ
る。図4に高強度鋼の疲労限界拡散性水素量とMo/M
nの質量%比率の関係について解析した一例を示す。ま
た、図5に遅れ破壊限界拡散性水素量とMo/Mnの質
量%比率の関係について解析した一例を示す。引張強さ
は、いずれも1550MPa前後に調整した高強度鋼の
場合である。図4および図5から明らかなように、Mo
/Mn比率が2未満では疲労および遅れ破壊限界拡散性
水素量の向上効果が少なく、2を超える領域で著しい効
果がある。このため、Mo/Mn比率の下限を2に限定
した。Mo/Mn比率が3以上で疲労および遅れ破壊限
界拡散性水素量を向上させる効果が特に顕著なことか
ら、好ましい下限は3である。Mo/Mn比率の上限は
特に限定しないものの、比率が高くなると製造コストが
増加するため、製造コストの点で好ましい上限は8であ
る。
【0029】Al:Alは脱酸および熱処理時において
AlNを形成することによりオーステナイト粒の粗大化
を防止する効果とともにNを固定し焼入性および耐遅れ
破壊特性の向上に有効な固溶Bを確保する効果も有して
いるが、0.005%未満ではこれらの効果が発揮され
ず、0.1%を超えても効果が飽和するため0.005
〜0.1%の範囲に限定した。
【0030】V:Vは焼入れ処理時において炭窒化物を
生成することによりオーステナイト粒を微細化させると
ともに本発明の目的とする耐水素疲労特性を向上させる
効果がある。0.05%未満では前記作用の効果が得ら
れず、一方0.5%を超えても効果が飽和するため0.
05〜0.5%に限定した。
【0031】Mg:MnとMoの添加が前述したような
限定範囲では、極微量のMg添加を行うと疲労および遅
れ破壊限界拡散性水素量が更に向上することを見出し
た。図6に疲労限界拡散性水素量とMg添加量および図
7に遅れ破壊限界拡散性水素量とMg添加量について解
析した一例を示す。ここで、試料の引張強さは1550
MPa前後に調整した高強度鋼であり、Mo/Mnの質
量%比率は図6では6.8前後、図7では7.2前後の
場合である。図6および7から明らかなように、Mg添
加量が0.0002%を超えると疲労および遅れ破壊限
界拡散性水素量を向上させる効果を発揮する。このた
め、Mgの下限を0.0002%に制限した。また、
0.005%を超えて添加しても効果が飽和するため、
上限を0.005%に限定した。
【0032】以上が本発明の対象とする鋼の基本成分で
あるが、本発明においては、必要に応じて、 Ni:0.05〜3% Cu:0.05〜1% Nb:0.005〜0.1% Ti:0.002〜0.05% B:0.0003〜0.005% の1種または2種以上を含有しても、耐水素疲労特性お
よび耐遅れ破壊特性を損なうことがない。上記の成分の
限定理由は下記の通りである。
【0033】Ni:Niは高強度化に伴って劣化する延
性を向上させるとともに熱処理時の焼入性を向上させて
引張強さを増加させるために添加されるが、0.05%
未満ではその効果が少なく、一方3%を超えても添加量
に見合う効果が発揮できないため、0.05〜3%の範
囲に制限した。
【0034】Cu:Cuは焼戻し軟化抵抗を高めるため
に有効な元素であるが、0.05%未満では効果が発揮
できず、1%を超えると熱間加工性が劣化するため、
0.05〜1%に制限した。
【0035】Nb:NbもVと同様に炭窒化物を生成す
ることによりオーステナイト粒を微細化させるために有
効な元素である。0.005%未満では上記効果が不十
分であり、一方0.1%を超えるとこの効果が飽和する
ため0.005〜0.1%に制限した。
【0036】Ti:Tiは脱酸およびTiNを形成する
ことによりオーステナイト粒の粗大化を防止する効果と
ともにNを固定し耐水素疲労特性の向上に有効な固溶B
を確保する効果を有しているが、0.002%未満では
これらの効果が発揮されず、0.05%を超えても効果
が飽和するため0.002〜0.05%の範囲に限定し
た。
【0037】B:Bは、耐水素疲労特性を向上させる効
果があり、更にオーステナイト粒界に偏析することによ
り焼入性を著しく高める効果も有しているが、Bが0.
0003%未満では前記の効果が発揮されず、0.00
5%を超えても効果が飽和するため0.0003〜0.
005%に制限した。
【0038】また、本発明は更に質量%で、Cr:1%
以下を含有させることができる。Crは焼入性の向上に
有効な元素であるが、一方で疲労限界拡散性水素量を低
下させる作用がある。焼入性の向上のために添加する場
合は、Crが1%を超えると疲労限界拡散性水素量の低
下が著しいため、上限を1%に限定した。なお、好まし
い上限は0.8%であり、更に好ましい上限は0.5%
である。
【0039】P、Sについては特に制限しないものの、
高強度鋼の耐遅れ破壊特性を向上させる観点から、それ
ぞれ0.015%以下が好ましい範囲である。また、N
はAl、V、Nb、Tiの窒化物を生成することにより
オーステナイト粒の細粒化効果があるが、0.015%
を超えると延性が低下するため、0.003〜0.01
5%が好ましい範囲である。
【0040】次に疲労限界拡散性水素量と遅れ破壊限界
拡散性水素量の限定理由について説明する。
【0041】疲労限界拡散性水素量:疲労限界拡散性水
素量が0.7ppm未満の高強度鋼では、腐食あるいは
潤滑油などから鋼材中に侵入する水素によって疲労破壊
する頻度が増加するため、下限を0.7ppmに限定し
た。本発明の鋼材組成であれば、疲労限界拡散性水素量
は0.7ppm以上となる。なお、水素疲労破壊の頻度
を極力低下させるという観点では、疲労限界拡散性水素
量の好ましい下限は1.0ppmである。疲労限界拡散
性水素量の上限は特に定めることなく本発明の効果を得
ることができる。
【0042】遅れ破壊限界拡散性水素量:遅れ破壊限界
拡散性水素量が0.5ppm未満の高強度鋼では、腐食
あるいは潤滑油などから鋼材中に侵入する水素によって
遅れ破壊が発生する頻度が増加するため、下限を0.5
ppmに限定した。鋼材中に水素が侵入しやすい環境、
即ち、腐食が著しい環境などでは、遅れ破壊限界拡散性
水素量の好ましい下限は0.7ppmである。遅れ破壊
限界拡散性水素量の上限は特に定めることなく本発明の
効果を得ることができる。
【0043】拡散性水素量は、前述したようにガスクロ
マトグラフによる昇温水素分析法で測定することができ
る。本発明では、昇温速度が100℃/時間であり、室
温から400℃までに試料から放出される水素量を拡散
性水素量と定義している。
【0044】本発明の高強度鋼は焼入れ・焼戻し処理に
よって所定の強度を得るものであり、焼戻しマルテンサ
イトが主体の組織である。その他の組織として、フェラ
イト、ベイナイト、パーライトの1種または2種以上を
面積率で10%以下を含有しても良い。フェライト、ベ
イナイト、パーライトの面積率は、試料の横断面のd/
4部(dは高強度鋼の線径)2mm2以上を光学顕微鏡
(500倍)で観察することによって、測定できる。ま
た、疲労限界拡散性水素量と遅れ破壊限界拡散性水素量
を高める好ましい製造条件は、下記の通りである。 加熱温度:900〜1000℃ 焼入れ:水冷または油冷 焼戻し温度:550℃〜650℃
【0045】
【実施例】以下、実施例により本発明の効果を更に具体
的に説明する。
【0046】表1に示す化学成分を有する供試材を10
50〜1200℃に加熱し、通常の熱間圧延条件で圧延
した。その後、水冷または油冷により焼入れ処理を行
い、本発明の鋼は575〜630℃で、比較例の鋼は3
50℃〜630℃で焼戻し処理を施して、引張試験片、
平滑の疲労試験片および図2に示す切欠き遅れ破壊試験
片に機械加工した。ミクロ組織は、いずれも焼戻しマル
テンサイトが面積率で96〜100%であり、残部はフ
ェライト、ベイナイト、パーライトの1種または2種以
上であった。
【0047】上記の試料を用いて、機械的性質、疲労限
界拡散性水素量および遅れ破壊限界拡散性水素量を評価
した。結果を表1に併せて示す。表1の試験No.1〜
25が本発明例で、試験No.26〜37が比較例であ
る。同表に見られるように本発明例は、いずれも疲労限
界拡散性水素量が0.7ppm以上であるとともに遅れ
破壊限界拡散性水素量が0.5ppm以上であり、耐水
素疲労特性と耐遅れ破壊特性の優れた1300MPa以
上の高強度鋼が実現されている。
【0048】
【表1】
【0049】これに対して比較例であるNo.26〜3
0は、いずれも従来の代表的な鋼材を用いて高強度鋼を
製造したものである。即ち、No.26はSCM43
5、No.27はSCM440であり、No.28はS
CM440をベースにVを、No.29はSCM440
をベースにNiを添加した鋼であり、また、No.30
はSCM435をベースにCr量を増加させた鋼であ
る。いずれもMn含有量が高くてMo添加量が少なく、
更にCr含有量が1%を超えているため、疲労限界拡散
性水素量と遅れ破壊限界拡散性水素量が低い例である。
【0050】比較例であるNo.31〜33は、いずれ
もMn含有量が低いもののMo添加量が少ないためにM
o/Mnの質量%比率が2未満であり、更にNo.31
および33ではCr含有量が1%を超えているため、疲
労および遅れ破壊限界拡散性水素量の向上が少なく、耐
水素脆化特性の改善効果が少なかった例である。
【0051】比較例であるNo.34〜36は、いずれ
もMo添加量が適正であるもののMn含有量が高いため
に、更にNo.36ではCr量が1%を超えているため
に、本発明で目的とする高い疲労限界拡散性水素量と遅
れ破壊限界拡散性水素量に達しなかった例である。
【0052】また、比較例のNo.37は、Mnおよび
Mo含有量が適正でMo/Mnの質量%比率が2を超え
ており、疲労限界拡散性水素量と遅れ破壊限界拡散性水
素量が良好であるものの、C量が0.2%未満であるた
めに目的とする1300MPa以上の高強度鋼が製造で
きなかった例である。
【0053】
【発明の効果】以上の実施例からも明かなごとく、本発
明はMn量を所定量以下とし、Moを添加し、更に必要
に応じてMo/Mnの質量%比率を最適にし、Vおよび
/またはMgを添加することによって、高強度鋼の疲労
限界拡散性水素量と遅れ破壊限界拡散性水素量を大幅に
向上させることが可能となる。この結果、引張強さが1
300MPa以上の高強度鋼の耐水素疲労特性および耐
遅れ破壊特性を著しく向上させることができ、産業上の
効果は極めて顕著なものがある。
【図面の簡単な説明】
【図1】水素疲労試験における拡散性水素量と疲労寿命
(破断までの繰返し数)の関係について解析した一例を
示す図である。
【図2】遅れ破壊試験片の寸法と形状を示す図である。
【図3】遅れ破壊試験における拡散性水素量と破断時間
の関係について解析した一例を示す図である。
【図4】疲労限界拡散性水素量とMo/Mnの質量%比
率の関係について解析した一例を示す図である。
【図5】遅れ破壊限界拡散性水素量とMo/Mnの質量
%比率の関係について解析した一例を示す図である。
【図6】疲労限界拡散性水素量とMg添加量の関係につ
いて解析した一例を示す図である。
【図7】遅れ破壊限界拡散性水素量とMg添加量の関係
について解析した一例を示す図である。

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 質量%で、C:0.2〜0.6%、S
    i:0.01〜2%、Mn:0.05〜0.6%、M
    o:0.8〜3%、Al:0.005〜0.1%を含有
    し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、且つ引
    張強さが1300MPa以上であることを特徴とする耐
    水素脆化特性の優れた高強度鋼。
  2. 【請求項2】 質量%で、V:0.05〜0.5%、M
    g:0.0002〜0.005%の1種または2種を含
    有することを特徴とする請求項1記載の耐水素脆化特性
    の優れた高強度鋼。
  3. 【請求項3】 MoとMnの質量%比率(Mo/Mn)
    が2以上であることを特徴とする請求項1または2記載
    の耐水素脆化特性の優れた高強度鋼。
  4. 【請求項4】 質量%で、Ni:0.05〜3%、C
    u:0.05〜1%、Nb:0.005〜0.1%、T
    i:0.002〜0.05%、B:0.0003〜0.
    005%の1種または2種以上を含有することを特徴と
    する請求項1〜3の何れか1項に記載の耐水素脆化特性
    の優れた高強度鋼。
  5. 【請求項5】 質量%で、Cr:1%以下を含有するこ
    とを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の耐水
    素脆化特性の優れた高強度鋼。
  6. 【請求項6】 疲労限界拡散性水素量が0.7ppm以
    上であることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に
    記載の耐水素脆化特性の優れた高強度鋼。
  7. 【請求項7】 遅れ破壊限界拡散性水素量が0.5pp
    m以上であることを特徴とする請求項1〜6の何れか1
    項に記載の耐水素脆化特性の優れた高強度鋼。
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