JP2002172163A - 細胞吸着材および体外循環用カラムならびにそれらの製造方法 - Google Patents

細胞吸着材および体外循環用カラムならびにそれらの製造方法

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JP2002172163A
JP2002172163A JP2001217706A JP2001217706A JP2002172163A JP 2002172163 A JP2002172163 A JP 2002172163A JP 2001217706 A JP2001217706 A JP 2001217706A JP 2001217706 A JP2001217706 A JP 2001217706A JP 2002172163 A JP2002172163 A JP 2002172163A
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Toshio Yoshioka
敏雄 吉岡
Kazuo Teramoto
和雄 寺本
Takeo Matsunase
武雄 松名瀬
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Abstract

(57)【要約】 【課題】本発明は、血液中から炎症性白血球を、高い効
率で選択的に吸着して効率よく体外循環でき、かつ、安
全な細胞吸着材および体外循環用カラムならびにそれら
の製造方法を提供せんとするものである。 【解決手段】本発明の細胞吸着材は、構成繊維の直径が
10μm以下のものを含み、かつ、嵩密度が0.05〜
0.15g/cm3 の不織布からなることを特徴とする
ものであり、また、体外循環用カラムは、かかる細胞吸
着材を充填してなるものであり、また、前記細胞吸着材
の製造方法は、海島型複合繊維からなる不織布の海成分
を溶解して島成分繊維のみからなる不織布を形成した
後、該不織布を基材として用いるものであり、また、体
外循環用カラムの製造方法は、かかる細胞吸着材をカラ
ムに充填することを特徴とするものである。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、細胞吸着材、詳し
くは、体外循環により白血球、特に炎症性白血球(顆粒
球、単球)を除去するための細胞吸着材および体外循環
用カラム、ならびにそれらの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】臓器の疎血再環流障害、敗血症、潰瘍性
大腸炎、クローン病、SIRS、感染症などの炎症性疾
患では血液中に顆粒球などの炎症性白血球が増えてくる
ことが以前から知られており、体外循環によって炎症性
白血球を除去することは重要である。
【0003】白血球を除去する材料として、例えば、溶
融ブロー法により繊維直径が3μm未満で、嵩密度が
0.15g/cm3 を超え0.50g/cm3 以下の不
織布を作り、これを輸血用白血球除去フィルタとして用
いることが、特開昭60−193468号公報に開示さ
れている。また、それを応用した体外循環用白血球除去
カラムが開発されている(日本アフェレシス学会誌 1
9(1):38−41,2000)。しかし、このカラ
ムは体外循環において、目づまりが生じ、圧力が上昇す
るという問題がある。これを克服するために、流路材と
してスペーサが用いられているが、それによっても血液
の処理効率が落ちるという問題があった。また、顆粒球
だけでなく、かなりのリンパ球が除去されるという問題
もあった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、かかる従来
技術の問題点に鑑み、血液中から炎症性白血球を、高い
効率で選択的に吸着して効率よく体外循環でき、かつ、
安全な細胞吸着材および体外循環用カラムならびにそれ
らの製造方法を提供せんとするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、かかる課題を
解決するために、次のような手段を採用するものであ
る。すなわち、本発明の細胞吸着材は、構成繊維の直径
が10μm以下のものを含み、かつ、嵩密度が0.05
〜0.15g/cm3 の不織布からなることを特徴とす
るものである。
【0006】また、本発明の体外循環用カラムは、かか
る細胞吸着材を充填してなることを特徴とするものであ
る。
【0007】また、本発明の細胞吸着材の製造方法は、
海島型複合繊維で構成された不織布の海成分を溶解し、
直径が10μm以下の島成分からなる繊維で構成された
不織布を形成した後、該不織布を基材として用いること
を特徴とするものであり、また、体外循環用カラムの製
造方法は、かかる細胞吸着材の製造方法により得られた
細胞吸着材をカラムに充填することを特徴とするもので
ある。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明は、前記課題、つまり血液
中から炎症性白血球を、高い効率で選択的に吸着して効
率よく体外循環でき、かつ、安全な細胞吸着材につい
て、鋭意検討し、従来技術の吸着材の問題が、大きすぎ
る嵩密度にあることと、単に嵩密度の小さい不織布を得
たとしても、形態保持性を伴わなければ、結局は目づま
り等を生じてしまうことに着目し、特定な繊維径の極細
繊維を特定な嵩密度の不織布にしてみたところ、かかる
課題を一挙に解決することを究明したものである。
【0009】本発明の不織布の素材としては、ナイロン
などのポリアミド、ポリエステル、ポリアクリロニトリ
ル系、ポリエチレン、ポリプロピレンなどを使用するこ
とができる。
【0010】本発明の不織布の嵩密度は、大きすぎると
目ずまりしやすく、逆に小さすぎると形態保持性が悪く
なるので、0.05〜0.15g/cm3 であることが
重要であり、好ましくは0.10〜0.15g/cm3
であるものが使用される。
【0011】また、かかる不織布を構成する繊維の直径
は、吸着性能の上で10μm以下の極細であることが重
要であり、好ましくは5μm未満のものが使用される。
【0012】本発明の不織布は、特に好ましくは多芯海
島型複合繊維からつくられる。すなわち、かかる複合繊
維を用いて不織布にしてから、この不織布を、形態保持
性を良くするためと、嵩密度を調整するために、ニール
ドパンチした後、海成分を溶解することによって、容易
に製造することができる。
【0013】低嵩密度では通液性がよくなる一方、形態
保持性が悪くなる傾向にあるので、さらに低嵩密度、特
に0.05〜0.10g/cm3 で形態保持性の良い不
織布を得るには、直径が10μm以下、吸着性能の点か
らより好ましくは5μm以下の極細繊維と、直径が10
〜50μmの繊維とが、混合されていることが望まし
い。直径の異なるこれらの繊維の混合比は、重量比で
2:8〜8:2程度が好ましい。この様な不織布の製造
方法としては、島成分の直径が10μm以下の多芯海島
型繊維と直径が10〜50μmの繊維からなる混合シー
ト状物を作製し、ニードルパンチして不織布を得た後、
海成分を溶解することによって混合不織布を製造する方
法を挙げることができる。混合される繊維は、繊維の性
状が異なっていればよく、太さはいずれも10μmであ
っても差し支えない。
【0014】前記不織布の島成分を構成する素材として
は、前記ポリマ、つまりナイロンなどのポリアミド、ポ
リエステル、ポリアクリロニトリル系、ポリエチレン、
ポリプロピレンなどを使用することができる。
【0015】また、海成分を構成する素材としては、溶
媒で容易に溶解するポリマであればよく、特にポリスチ
レンが安価で好ましく使用される。かかる溶媒として
は、海成分を溶解するが、島成分を溶解しないもの、た
とえば島成分がポリスチレンの場合は、トリクレン、ト
ルエンなどが好ましく用いられる。
【0016】また、多芯海島型複合繊維の島数は、好ま
しくは5〜100個であるが、特に好ましくは10〜5
0個がよい。また、海成分の割合は、該複合繊維の好ま
しくは70重量%以下、特に好ましくは10〜50重量
%がよい。
【0017】本発明において、前記0.05〜0.15
g/cm3 という嵩密度範囲は、かかる複合繊維の海島
比率は、もちろん、さらにニードルパンチのパンチング
回数および針本数を制御することによって、随意に設定
することができる。
【0018】本発明の不織布に、さらにアミノ基を有す
るポリマをコーテイングすると、炎症性白血球とエンド
トキシン、スーパー抗原などの細菌由来の毒素を同時に
除去することができるので好ましい。かかる細菌由来の
毒素は、血液中の白血球を活性化し、炎症性白血球を増
大させる作用がある。
【0019】かかるアミノ基としては、脂肪族アミノ基
を意味し、その具体例として、アミノ基を持つ環状ペプ
チド残基、ポリアルキレンイミン残基、ベンジルアミノ
基、1級、2級、3級のアルキルアミノ基を使用するこ
とができる。そのなかでも、好ましくはアミノ基を持つ
環状ペプチド残基、ポリアルキレイミン残基、さらに好
ましくはアミノ基を持つ環状ペプチド残基が、細菌由来
の毒素に対する吸着性能が高くてよい。
【0020】より具体的には、アミノ基をもつ環状ペプ
チドは、2個以上、50個以下、より好ましくは4個以
上16個以下のアミノ酸からなる環状ペプチドであっ
て、その側鎖に1個以上のアミノ基をもつものであれば
良く、特に制限はない。その具体例としては、ポリミキ
シンB、ポリミキシンE、コリスチン、グラミシジンS
あるいはこれらのアルキルあるいはアシル誘導体などを
使用することができる。
【0021】また、本発明で言うポリアルキレイミン残
基とは、ポリエチレンイミン、ポリヘキサメチレンイミ
ンおよびポリ(エチレンイミン・デカメチレンイミン)
共重合体で代表されるポリアルキレンイミンまたはその
窒素原子の一部を、n−ヘキシルブロマイド、n−デカ
ニルブロマイド、n−ステアリルブロマイドなどで代表
されるハロゲン化炭化水素の単独または混合物でアルキ
ル化したもの、または、酪酸、バレイン酸、ラウリル
酸、ミリスチン酸、レノレイン酸、ステアリル酸などの
脂肪酸でアシル化したものを意味する。
【0022】かかるアミノ基を有するポリマの該ポリマ
中におけるアミノ基の適正な結合量、すなわち、固定化
密度は、ポリマの化学構造によって異なるが、少なすぎ
るとその機能が発現されず、一方、多すぎると、ポリマ
の優れた機械的性質が損なわれるので、繰り返し単位当
たり、好ましくは0.0001〜1個、さらに好ましく
は0.001〜0.5個の範囲にあるのがよい。
【0023】かかるアミノ基を有するポリマを構成する
ポリマとしては、水に不溶で、かつ、アミノ基を共有結
合で固定化できるものであれば、特に制限はないが、そ
の具体例としては、ポリ(p−フェニレンエーテルスル
ホン):−{(p−C6 4)−SO2 −(p−C6
4 )−O−}n−やユーデル・ポリスルホン:−{(p
−C6 4 )−SO2 −(p−C6 4 )−O−(p−
6 4 )−C(CH 3 2 −(p−C6 4 )−O}
n−のほか、−{(p−C6 4 )−SO2 −(p−C
6 4 )−O−(p−C6 4 )−O}n−、−{(p
−C6 4 )−SO2 −(p−C6 4 )−S−(p−
6 4 )−O}n−、−{(p−C64 )−SO2
−(p−C6 4 )−O−(p−C6 4 )−C(CF
3 2 −(p−C6 4 )−O}n−などで代表される
ポリスルホン系重合体、ポリエーテルイミド、ポリイミ
ド、ポリアミド、ポリエーテル、ポリフェニレンサルフ
ァイド、ポリスチレン、アクリルポリマなどで、かつ、
アミノ基を共有結合で固定化できる反応性官能基を持つ
ものが使用される。そのなかでも、ポリスルホン系重合
体は安定性が高く、また形状保持性が良いので好ましく
用いられる。
【0024】かかる反応性官能基としては、ハロメチル
基、ハロアセチル基、ハロアセトアミドメチル基、ハロ
ゲン化アルキル基などの活性ハロゲン基、エポキサイド
基、カルボキシル基、イソシアン酸基、チオイソシアン
酸基、酸無水物基などを使用することができるが、とり
わけ、活性ハロゲン基は、製造が容易な上に、反応性が
高く、該固定化反応が温和な条件で遂行できると共に、
この際生じる共有結合が化学的に安定であることから好
ましく使用される。
【0025】さらに具体的な例としては、クロルアセト
アミドメチル化ポリスチレン、クロルアセトアミドメチ
ル化したユーデル・ポリスルホン、クロルアセトアミド
メチル化したポリエーテルイミドなどが使用される。さ
らに、これらのポリマーは有機溶媒に対し可溶であるも
のが、成型のしやすさの上から、特に好ましく使用され
る。
【0026】本発明の細胞吸着材は、かかるアミノ基有
するポリマを該不織布にコーティングしてつくられる
が、その際に、該ポリマを溶媒、たとえば塩化メチレ
ン、テトラヒドロフラン、N,Nージメチルホルムアミ
ドなどに溶かし、この溶液に該不織布を浸したのち、該
溶媒を蒸発させることにより容易に製造される。
【0027】かかる吸着材を体外循環に用いる場合、抗
凝固剤のヘパリンで処理して用いると、血液適合性が向
上するので好ましい。
【0028】本発明の体外循環用カラムは、前記細胞吸
着材をカラムに充填することによって製造することがで
きる。カラムの構成としては、細胞吸着材を平板状に形
成し、これを重ねて充填したカラム、細胞吸着材が円筒
形状に巻かれてなる円筒状フィルターが、両端部に血液
入口と血液出口とを有する円筒容器に納められているカ
ラム、細胞吸着材が円筒状にまかれてなる中空円筒状フ
ィルターが、その両端部を封止された状態で血液入口と
血液出口とを有する円筒状容器に納められており、容器
の血液出口は前記中空円筒状フィルターの外周部に通じ
る部位に、また容器の血液出口は前記中空円筒状フィル
ターの内周部に通じる部位にそれぞれ設けられているカ
ラムが好ましい。そのなかでも、円筒中空状フィルター
を用いたカラムは、血液中の炎症性白血球の大部分が、
円筒形状フィルターの外周部の大きな面積の不織布で迅
速に除去され、除去されずに残ったわずかな炎症性白血
球も、円筒形状フィルターの内周部に到って、その小さ
な面積の不織布でも十分に除去され、効率的な炎症性白
血球除去が可能であるので、最も好ましい。
【0029】
【実施例】以下、実験例により、本発明をさらに具体的
に説明する。
【0030】[実施例1]海成分がポリスチレン、島成
分がポリエステルからなる多芯海島型複合繊維(島数1
6個、海成分の割合30%)のシート状物を作製した
後、ニードルパンチすることによって不織布を得た。次
に、この不織布をトリクレンで処理して海成分のポリス
チレンを溶解することによって、繊維の直径が3μm
で、嵩密度が0.10g/cm3 のポリエステル不織布
を作製した(実施例1:吸着材1)。
【0031】また、直径が20μmである通常の太さの
繊維からなる、嵩密度が0.10g/cm3 の不織布を
用意した(比較例1)。
【0032】前記実施例1および比較例1について、顆
粒球の吸着性を調べ、表1の結果を得た。
【0033】ニュージランド・ホワイト種ウサギ(体重
3.5kg)にLPS(E.coliO111:B4を
100μg/mL濃度に溶かしたもの)を体重1kgあ
たり5μgを耳静脈から投与し、さらに14日後に同量
のLPSを投与した後、2日後に耳動脈から採血して、
以下の評価に用いた。
【0034】吸着材50mgを2mlの上記血液に入
れ、37℃で1時間振とうした後、血球の組成を自動血
液分析器で調べ、また、フローサイトメーターで、顆粒
球とリンパ球の比率を求め、それぞれの血球の数を計算
したところ、表1の結果が得られた。
【0035】
【表1】
【0036】表1から、実施例1の吸着材は、顆粒球を
比較例1のものに比べて高い効率で良く吸着することが
分かる。
【0037】[実施例2]ニトロベンゼン32mLと硫
酸64mLの混合溶液を0℃に冷却後、8.4gのN−
メチロール−α−クロルアセトアミドを加えて、溶解
し、これを、10℃のユーデルポリスルホンP3500
の3Lのニトロベンゼン溶液(300g/3L)に、良
く撹拌しながら加え、さらに、室温で3時間撹拌した。
その後、反応混合物を大過剰の冷メタノール中に入れ、
ポリマーを沈殿させた。沈殿をメタノールで良く洗った
後、乾燥して、307gのα−クロルアセトアミドメチ
ル化ポリスルホン(置換率:0.1;重合体−A)を得
た。
【0038】次に、ポリミキシンB硫酸塩4gを140
mLのジメチルスルホキシドと100mLのジメチルア
セトアミドの混合溶液に溶かし、5Nー水酸化ナトリウ
ム5.0mLを加えた溶液に、上記で得た重合体−Aの
8gを100mLのジメチルアセトアミドと100mL
のジメチルスルホキシドからなる混合溶媒に溶かしたも
のを加え、室温で48時間撹拌した。反応混合物を大過
剰の希塩酸中に入れ、ポリマを沈殿させ、沈殿物を水で
よく洗った後、乾燥して、アミノ基を有するポリマ(重
合体ー1)8.8gを得た。
【0039】この重合体ー1の3gを150mLのジメ
チルホルムアミドに溶かした溶液に、実施例1で作製し
た繊維直径3μmのポリエステル不織布(嵩密度0.1
0g/cm3 )および繊維直径20μmポリエステル不
織布(嵩密度0.10g/cm3 )各1.5gを1時間
浸した後、液を絞り、乾燥して、該アミノ基を有するポ
リマ(重合体ー1)をコーテイングした吸着材(実施例
2:吸着材2)および比較例2を得た。
【0040】前記実施例2および比較例2の各0.5g
をオートクレーブ滅菌した後、それぞれ15mlのエン
ドトキシンを含む牛血清で吸着能の評価(37℃2時
間)をしたところ、表2の結果が得られた。
【0041】
【表2】
【0042】さらに、実施例2および比較例2について
顆粒球の吸着性を調べ、表3の結果を得た。
【0043】
【表3】
【0044】表2と表3から、実施例2のものは、エン
ドトキシンと顆粒球の双方を比較例2のものに比べて高
い効率で良く吸着することが分かる。
【0045】[実施例3]実施例1で作製したポリエス
テル不織布(目付100g/m2 )を直径4.7cmの
円形に切断したもの5枚を重ねて円形のフィルターカラ
ム(有効直径4.2cm)に充填した。このカラムに白
血球(5400個/μl)を含む牛血を2ml/分の流
速で通液したところ、圧力損失が100mmHgに達す
る間での時間は90分であり、その時の顆粒球除去率は
98%以上で、リンパ球除去率は75%であった。
【0046】次に溶融ブロー法で繊維の直径が2μm、
嵩密度が0.20g/cm3 (目付100g/m2 )の
ポリエステル不織布を作製し(比較例3)、前記と同様
の通液試験を行ったところ、圧力損失が100mmHg
に達するまでの時間は40分と短く、またその時の顆粒
球除去率は98%以上であったがリンパ球除去率も98
%以上であった。
【0047】以上の結果から、実施例3の吸着材は、目
ずまりしにくいため吸着濾過寿命が非常に長く、また炎
症性の白血球である顆粒球を選択的に除去できることが
分かる。
【0048】[実施例4]実施例1で作製したポリエス
テル不織布(目付100g/m2 )を幅3cmに切断
し、渦巻き状に巻いていき、長さ8cm分の不織布に巻
いたところで、入口と出口を有する内径1cm、長さ3
cmの円筒状カラムに挿入した。このカラムに白血球
(5400個/μl)を含む牛血を1ml/分の流速で
60分通液したところ、圧力損失は30mmHg以下
で、その時の顆粒球除去率は98%以上であり非常に良
好であった。
【0049】[実施例5]実施例1で作製した繊維直径
が3μmで、嵩密度が0.10g/cm3 のポリエステ
ル不織布を幅16cmに切断し、外径1cmのポリプロ
ピレン製円筒型メッシュの周囲に巻いていき、長さ10
0cm分の不織布を巻いたところで、外径3.8cmの
筒状となった。内径4.2cm、長さ17cmの円筒型
ポリプロピレン製容器に収め、両端をポリウレタン樹脂
で封止し、最後に血液の入口と出口を有するキャップを
円筒型ポリプロピレンの両端に融着させることにより、
本発明の中空円筒型フィルターを用いたカラムを得た。
【0050】このカラムに白血球(5400個/μl)
を含む牛血を20ml/分の流速で60分通液したとこ
ろ、圧力損失は30mmHg以下で、その時の顆粒球除
去率は98%以上であり、非常に良好であった。
【0051】[実施例6]海成分がポリスチレン、島成
分がポリエチレンテレフタレートからなる直径2μmの
多芯海島型複合繊維(島数16個、海成分の割合30
%)と直径15μmのポリエステル繊維の混合シート状
物を作製した。次いで、ニードルパンチすることによっ
て不織布を得た。次に、この不織布をトリクレンで処理
して海成分のポリスチレンを溶解することによって、繊
維直径2μm(50部)と直径15μm(50部)の混
合PET不織布(嵩密度0.075g/cm3 、目付1
00g/m2 )を得た。
【0052】この不織布を用いて、実施例3と同様の通
液試験を行ったところ、圧力損失が100mmHgに達
するまでの時間は180分と非常に長く、またその時の
顆粒球除去率は90%で、リンパ除去率は60%であっ
た。
【0053】以上の結果から、実施例6の吸着材は、非
常に目ずまりしにくいため吸着濾過寿命が極めて長く、
また炎症性の白血球である顆粒球を選択的に除去できる
ことが分かる。
【0054】
【発明の効果】本発明によれば、臓器の疎血再環流障
害、敗血症、潰瘍性大腸炎、クローン病、SIRS、感
染症などの炎症性疾患に有効に利用することができ、か
つ、安全な細胞吸着材を再現性よく提供することができ
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4C077 AA12 BB02 BB03 EE01 KK11 MM02 NN02 PP08 PP10 PP12 PP13

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 構成繊維の直径が10μm以下のものを
    含み、かつ、嵩密度が0.05〜0.15g/cm3
    不織布からなることを特徴とする細胞吸着材。
  2. 【請求項2】 直径が10μm以下の繊維と直径が10
    〜50μmの繊維が混合されていることを特徴とする請
    求項1記載の細胞吸着材。
  3. 【請求項3】 該繊維が少なくとも表面にアミノ基を有
    する請求項1または2記載の細胞吸着材。
  4. 【請求項4】 請求項1から3のいずれか記載の細胞吸
    着材を充填してなることを特徴とする体外循環用カラ
    ム。
  5. 【請求項5】 該細胞吸着材が、平板状で、これを重ね
    て充填してなることを特徴とする請求項4に記載の体外
    循環用カラム。
  6. 【請求項6】 該細胞吸着材が、円筒状に巻かれてなる
    円筒状フィルターが、両端部に血液入口と血液出口とを
    有する円筒状容器に納められていることを特徴とする請
    求項4記載の体外循環用カラム。
  7. 【請求項7】 該細胞吸着材が、円筒状に巻かれてなる
    中空円筒状フィルターが、その両端面が封止された状態
    で血液入口と血液出口とを有する円筒状容器に納められ
    てなるカラムであって、該容器の血液入口は、前記中空
    円筒状フィルターの外周面に通じる部位に、また、該容
    器の血液出口は、前記中空円筒状フィルターの内周面に
    通じる部位に、それぞれ設けられていることを特徴とす
    る請求項4に記載の体外循環用カラム。
  8. 【請求項8】 海島型複合繊維で構成された不織布の海
    成分を溶解し、直径が10μm以下の島成分からなる繊
    維で構成された不織布を形成した後、該不織布を基材と
    して用いることを特徴とする細胞吸着材の製造方法。
  9. 【請求項9】 請求項8記載の細胞吸着材の製造方法に
    より得られた細胞吸着材をカラムに充填することを特徴
    とする体外循環用カラムの製造方法。
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