JP2002170575A - 非水電解液電池 - Google Patents

非水電解液電池

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高温保存性能と間欠放電特性に優れたフッ化
炭素を正極に用いた有機電解液電池を提供する。 【解決手段】 (002)面の面間隔が3.50Å以下
である易黒鉛化性炭素または黒鉛質材料を出発炭素材料
としたフッ化炭素からなる正極、リチウムイオンを放出
可能な負極、及びエチレンサルファイトを含有する有機
電解液を組み合わせ、さらに予備放電後の開路電圧を
3.5V以下とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、フッ化炭素を正極
活物質とする非水電解液電池に関し、特に高温保存特性
及び間欠放電性能に優れた非水電解液電池に関する。
【0002】
【従来の技術】正極活物質にフッ化炭素を、負極にリチ
ウム金属またはその合金を用いた非水電解液電池は、エ
ネルギー密度が高く、また小型化および軽量化が可能で
あることから、小型の携帯機器の主電源をはじめとし、
据置き型機器のバックアップ用電源などさまざまな用途
に使用されている。これら機器からの要望に対して電池
特性の改善に関する提案が種々なされ、実用化されてき
た。例えば、正極活物質の利用率を向上させると共に4
5℃の環境下における保存特性を改善するために、フッ
化炭素の出発材料に(002)面の面間隔が3.40〜
3.50Åのコークスを用いた構成(特公昭56−46
670号公報)、また強負荷放電特性を向上させるため
に、電解液にプロピレンカーボネートあるいはエチレン
カーボネートと低粘度溶媒の1,2ジメトキシエタンと
の混合溶媒を用いた構成(特公昭58−12991号公
報)が提案されている。
【0003】しかしながら、近年では携帯機器の高機能
化、多機能化に伴い、電源としての電池に対する要望も
厳しさを増しており、60℃以上に達する高温環境下で
の保存特性、及び高負荷での間欠放電特性の両立が求め
られている。しかしながら、現状ではこれら特性を満た
す電池は提供されていない。例えば、高温での保存特
性、及び放電特性を個々に改善する前記の各構成を組み
合わせた場合であっても、間欠放電がなされた電池を6
0℃以上の環境下で保存後、強負荷放電に再度供した場
合、放電初期に大幅な電圧の落込みが認められる。この
電圧降下が顕著になると放電電圧が1.0V以下まで低
下してしまい、機器の作動電圧を大幅に下まわるために
動作不能に陥る問題が生ずる。この問題は、高温保存に
伴う電池の内部抵抗の上昇に起因するが、具体的な改善
策を見いだすことはできない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上述のような問題に対
し、非水系電解液電池の溶媒として、S−O結合を有す
るサルファイト化合物を用い、正極集電体や電池缶にお
ける電解液との接液部分の材料をAl、Ti、Zr等の
弁金属またはその合金に用いる構成が提案されている。
この構成では、弁金属が電解液中での陽極酸化によって
表面に不動態皮膜を形成しており、S−O結合を有する
化合物の酸化分解が防止されるとしている。これによ
り、二次電池のサイクル特性と電池の長期保存特性とが
向上出来ることも示されている(特開平11−1625
11号公報)。しかし、電池ケース等の構成部材に弁金
属の使用が不可欠であることから、ステンレス等の汎用
的な金属材料が使用できず、生産性及び構成部材のコス
ト面で課題を有している。
【0005】本発明は、この種の非水電解液電池を高温
環境下で保存した場合に生ずる電池の内部インピーダン
スの上昇を抑制すると同時に、間欠放電特性に優れた安
価な非水電解液電池を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に鋭意検討を重ねた結果、本発明者らは正極のフッ化炭
素の出発材料として(002)面の面間隔の値が3.5
0Å以下にある易黒鉛化性炭素または黒鉛質材料を用
い、電解液としてエチレンサルファイトを含有させると
同時に、適切な予備放電を施すことで、高温保存特性及
び間欠放電特性を満足する非水電解液電池が得られるこ
とを見いだした。すなわち、本発明の非水電解液電池
は、金属リチウム又はリチウム合金からなる負極、フッ
化炭素からなる正極、および有機電解液から構成されて
なり、該フッ化炭素が(002)面の面間隔が3.50
Å以下にある易黒鉛化性炭素または黒鉛質材料を出発炭
素材料とし、且つ該有機電解液がエチレンサルファイト
を含有してなり、さらに予備放電後の開路電圧が3.5
V以下にあることを特徴する。
【0007】本発明に係る非水電解液電池は、リチウム
もしくはその合金からなる負極、フッ化炭素からなる正
極及び非水電解液を基本構成してなり、フッ化炭素の出
発材料として(002)面の面間隔が3.50Å以下に
ある易黒鉛化性炭素または黒鉛質材料を用い、得られた
フッ化炭素とエチレンサルファイトを含有させた有機電
解液とを組み合わせることで、高温保存特性、及び間欠
放電特性に優れた電池を得ることができる。このため、
例えば放電後に60℃以上環境下で保存し、再度放電を
行った場合でも電圧低下は小さく、且つ強負荷放電特性
についても良好であった。さらに、保存前の放電状態に
ついても放電深度に関係なく、従来構成に比べて大幅に
向上した保存特性が得られた。これらの効果は、放電反
応によってリチウムがフッ化炭素に挿入される時に、エ
チレンサルファイトがフッ化炭素の表面に緻密な有機被
膜を形成するためと考えられ、これにより電気抵抗の高
い被膜の生成要因となる有機溶媒の分解が抑制される。
さらにエチレンサルファイトの被膜が良好な電導性を有
するので高温保存後の放電特性、特に間欠放電特性が向
上したと推察される。
【0008】また、本発明に係る非水電解液電池は、予
備放電後の開路電圧を3.5V以下としている。一般に
非水電解液を組み立てた後の開路電圧は約3.6Vであ
るが、上述したようにエチレンサルファイトを含有する
非水電解液を用いた電池は高温雰囲気での保存特性の悪
化を招いてしまう。本発明者らの詳細な検討の結果、保
存後の放電特性は保存前の開路電圧の値に左右され、そ
の値が3.5V以下であると良好な特性が得られるのに
対して、3.5Vを超えると性能劣化することを見出し
た。さらにこれらの現象が、正極側の構成部材が金属リ
チウムに対して3.5Vを超える電位に有り、且つ高温
雰囲気、特に60℃以上の雰囲気に曝された際に、エチ
レンサルファイトによる正極側の構成部材の腐食に起因
する知見も得た。これらの知見に基づき、エチレンサル
ファイトを含有する電解液等を用いて電池を組み立てた
後、予備放電にて電池の開路電圧を3.5V以下にする
ことで、正極集電体や正極缶等にオーステナイト系ステ
ンレスや鉄など安価な材料の使用を可能としている。
尚、予備放電の工程において放電される電気量は組立直
後の放電容量に対して約1%程度であり、電池特性に与
える影響は極めて小さいものである。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、本発明の好ましい実施形態
について説明する。
【0010】本発明の非水電解液電池に係るフッ化炭素
の出発材料となる炭素材料は、熱処理によって易黒鉛化
性炭素の結晶化度をあげた黒鉛に近い構造をもつもので
あり、(002)面の面間隔の値が3.50Å以下にあ
る天然黒鉛、人造黒鉛等が好ましく、さらに面間隔の値
が3.50〜3.35Åにあるものがより好ましい。易
黒鉛化性炭素としては石油コ−クス、石炭コ−クス、メ
ソカ−ボンマイクロビ−ズ、メゾフェ−ズピッチ系炭素
繊維等があり、これらを1000℃以上で熱処理するこ
とによって(002)面の面間隔の値が3.50Å以下
の炭素材料を得られる。また、人造黒鉛はコ−クスを2
800℃以上で熱処理することによって得られる。さら
に、出発炭素材料の形状としては、フリュ−ドコ−ク
ス、ギルソナイトコ−クス等の球状コ−クス、およびピ
ッチの炭素化過程で生じるメソフェ−ズ小球体を原料と
したメソカ−ボンマイクロビ−ズ等の球状の材料が好ま
しい。
【0011】(002)面の面間隔の値が3.50Åよ
り大きい易黒鉛化性炭素を出発炭素材料としたフッ化炭
素の場合は、その面間隔が大きくなるに伴いフッ化炭素
の表面に緻密な有機被膜を形成するエチレンサルファイ
トの添加効果が低下するので望ましくない。尚、本発明
のフッ化炭素(CFx)nのフッ化度(x)はx=0.
4〜1.0の範囲が好ましく、より好ましくはx=0.
5〜1.0である。
【0012】本発明の電池は組み立て後に予備放電を行
い、電池電圧を3.5V以下、望ましくは3.5V〜
3.4Vの範囲であって、予備放電電気量は正極設計容
量の1〜5%の範囲が望ましい。なお、開路電圧を3.
4V以下にした場合、腐食の抑制には十分効果を認めら
れるが、5%以上の予備放電を必要とし、電池容量が減
少するので好ましくない。尚、本実施形態に係る電池は
負極に金属リチウムあるいはリチウム合金を用いてお
り、電池電圧と正極電位とはほぼ同じ値を示すと考えら
れる。
【0013】エチレンサルファイトの有機電解液中の含
有量は0.1〜15質量%であることが好ましい。含有
量が0.1%未満でも効果は認められるが、フッ化炭素
表面を完全に被覆できず、高温保存後の放電時に大きく
電圧低下を起こす危険性がある。また、15質量%より
多くなると、有機被膜の厚みが厚くなり、有機被膜は良
導電性ではあるものの抵抗性分が上昇し、有機被膜の厚
みに起因する電圧低下が見られはじめる。
【0014】一方、負極に用いる材料としては、金属リ
チウムまたはLi−Al、Li−Si、Li−Sn、L
i−NiSi、Li−Pbなどのリチウム合金が挙げら
れる。
【0015】また、有機電解液の溶媒としてはこの種の
電池に使用されている公知の溶媒(高誘電率溶媒や低粘
度溶媒)を挙げることができる。高誘電率溶媒として
は、例えばエチレンカーボネート(EC)、プロピレン
カーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(B
C)、γ―ブチロラクトン(GBL)等の環状エステル
が挙げられる。低粘度溶媒としては、1、2ジメトキシ
エタン(DME)、1、2ジエトキシエタン(DE
E)、1、3ジオキソラン(DOL)等の鎖状エ−テ
ル、およびジメチルカーボネート(DMC)、エチルメ
チルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート
(DEC)等の鎖状エステルが挙げられる。高誘電率溶
媒と低粘度溶媒とは、それぞれ単独で使用しても、複数
の溶媒を組み合わせて使用してもよいが、低粘度溶媒を
使用する場合には、低粘度溶媒の低電導性を補うために
高誘電率溶媒と組み合わせて使用するのが好ましい。高
誘電率溶媒と低粘度溶媒との組み合わせとしては、例え
ばEC―DME、PC―DME、GBL―DMEなどの
2成分溶媒系、EC―PC―DME、EC―GBL―D
ME、GBL―BC―DME、PC―GBL―DMEな
どの3成分溶媒系などが挙げられる。なお、高誘電率溶
媒と低粘度溶媒との割合は、たとえば体積比で40:6
0〜70:30が好ましい。
【0016】さらに、プロピレンカーボネート(PC)
とγ―ブチロラクトン(GBL)とは凝固点が−40℃
以下と低く、またエチレンカーボネート(EC)はリチ
ウム塩の溶解能力が高く、さらに1、2ジメトキシエタ
ン(DME)は低粘度エーテルの中でリチウム塩の溶解
能力が比較的高い等の特徴を有することから、これら3
成分を組み合わせたPC―DME、GBL―DME、E
C―PC―DME、EC―GBL―DME等が−20℃
〜85℃と広範囲の使用環境に対応できる点で有利であ
る。尚、これら2成分溶媒系あるいは3成分溶媒系にお
いての混合割合は、プロピレンカーボネート(PC)あ
るいはγ―ブチロラクトン(GBL)が体積比で5〜6
0含むことがとくに好ましい。
【0017】有機電解液の溶質としては、LiCl
4、LiPF6、LiBF4、LiCF3SO3、LiB
BBまたはイミド結合を有するリチウム塩、例えばLi
N(CF3SO22、LiN(C25SO22、LiN
(CF3SO2)(C49SO2)などが挙げられる。こ
れらのリチウム塩は単独でも、組み合わせて使用しても
よい。なかでもLiPF6またはLiBF4が好ましい。
溶質の塩濃度としては、0.1〜2mol/lの範囲が
好ましく、より好ましくは0.3〜1.5mol/lの
範囲である。
【0018】
【実施例】以下、実施例により本発明を詳しく説明す
る。
【0019】(実施例1)図1に本実施例で用いたコイ
ン型電池の断面図を示す。正極ケース1、負極ケース2
はそれぞれフェライト系ステンレス鋼(SUS444)
製であり、ポリプロピレン製の絶縁パッキング3を介し
て発電要素を密封口してなる。正極4、金属リチウムか
らなる負極5は、ポリプロピレン製の不織布からなるセ
パレータ6を介して対向配置されている。電解液は、環
状エステルであるプロピレンカーボネート(PC)の単
一溶媒に溶質としてホウフッ化リチウム(LiBF4
を1mol/lの比率にて溶解させた。さらに調整され
た電解液に対してエチレンサルファイト(ES)を3質
量%の比率にて添加している。得られた電池の寸法は直
径が20mm、厚みが2.0mmとした。以下、正極4
の構成について詳しく説明する。
【0020】出発炭素として石油ピッチをもちい、これ
を窒素雰囲気、2000℃で焼成して得られた(00
2)面の面間隔が3.40Åの鱗片状の易黒鉛化性炭素
を得た。さらにこの易黒鉛化炭素を400℃でフッ素化
させることによりフッ化炭素とした。このフッ化炭素に
導電剤としてカーボンブラックを、結着剤としてフッ素
系樹脂を重量比で85:8:7の割合で混合し、正極合
剤とした。この正極合剤を2ton/cm2で直径16
mmのペレットに加圧成形した後、ドライ雰囲気中11
0℃で乾燥して重量190mgの正極を得た。この正極
の設計容量は100mAhである。この正極を用い、上
記組成の電解液を160μl注入して本発明の電池Aを
作製した。
【0021】電解液の溶媒をプロピレンカーボネートに
変えてγ―ブチロラクトン(GBL)とした以外は、電
池Aと同じ構成の電池を本発明の電池Bとする。
【0022】電解液の溶媒をプロピレンカーボネートに
変えてプロピレンカーボネートと1,2ジメトキシエタ
ン(DME)を体積比で50:50の混合溶媒とした以
外は、電池Aと同じ構成の電池を本発明の電池Cとす
る。
【0023】フッ化炭素の出発炭素源に(002)面の
面間隔が3.50Åの鱗片状の易黒鉛化性炭素を用いた
以外は、電池Aと同じ構成の電池を本発明の電池Dとす
る。
【0024】フッ化炭素の出発炭素源にメソフェ−ズ小
球体(MCMB)を2200℃の焼成処理を施して得ら
れた(002)面の面間隔が3.40Åのメソカーボン
マイクロビーズを用い、電解液の溶媒をプロピレンカー
ボネートに変えてプロピレンカーボネートと1,2ジメ
トキシエタンとを体積比50:50の混合溶媒を用いた
以外は、電池Aと同じ構成の電池を本発明の電池Eとす
る。
【0025】フッ化炭素の出発炭素源に天然黒鉛を用
い、電解液の溶媒をプロピレンカーボネートに変えてプ
ロピレンカーボネートと1,2ジメトキシエタンを体積
比で50:50の混合溶媒を用いた以外は、電池Aと同
じ構成の電池を本発明の電池Fとする。
【0026】本発明の電池Aの有機電解液に変えて、プ
ロピレンカーボネートの単一溶媒に溶質としてホウフッ
化リチウムのみを1mol/l溶解させ、エチレンサル
ファイトを含まない電解液を用いた以外は、電池Aと同
じ構成の電池を比較電池1とする。
【0027】本発明の電池Aのフッ化炭素に変えて、ア
セチレンブラックを400℃でフッ素化させて得られた
フッ化炭素を用いた以外は、電池Aと同じ構成の電池を
比較電池2とする。
【0028】発明電池Aのフッ化炭素に変えて、(00
2)面の面間隔が3.51Åの鱗片状の易黒鉛化性炭素
を出発炭素源としたフッ化炭素を用いた以外は、電池A
と同じ構成の電池を比較電池3とする。
【0029】上記本発明の電池A、B、C、D、E、F
および比較電池1〜3は各10個を1mAで2時間(設
計容量の2%)の予備放電と開路電圧の測定をした後、
各5個は85℃で20日間の保存を行い、残りの各5個
は室温で10kΩの抵抗(高負荷)で放電終止電圧1.
0Vまでの放電容量を調べた。85℃保存後の電池各5
個は上記と同条件で放電して、放電開始時の落込み電圧
の最低値(以降放電初期電圧と称す)と放電維持電圧と
を測定した。さらに、放電容量比率(%)(保存電池の
放電容量/未保存電池の放電容量×100)を算出し
た。これらの結果を表1に示す。
【0030】
【表1】
【0031】表1からも明らかなように、本発明の電池
A、B、C、D、E、Fはいずれも放電初期電圧が2.
0V以上で放電維持電圧と同等で、電圧低下が少なく、
また放電容量比率においても90%以上の高い値を示
す。また、有機電解液の溶媒が環状エステルのみとした
電池A、B、Dよりも、環状エステルに低粘度エーテル
の1,2ジメトキエタンを混合した混合溶媒を用いた電
池C、E、Fがより良好な結果が得られた。また、出発
炭素材料に球状の易黒鉛化性炭素を用いた電池Eは最も
優れた高負荷放電特性が得られた。
【0032】これらに対してエチレンサルファイトが添
加されていない比較電池1は、放電初期の電圧低下が大
きく、加えて容量劣化も激しい。また、エチレンサルフ
ァイトを添加した場合においても、出発材料が非晶質炭
素のアセチレンブラックの比較電池2、および(00
2)の面間隔が3.51Åの易黒鉛化性炭素の比較電池
3は、いずれも本発明の電池に比べていずれの特性も劣
る。このように出発材料の比表面積が非常に大きい場
合、あるいは(002)の面間隔が3.50Åを超えた
場合には、エチレンサルファイトの添加の効果が得られ
ない。尚、比較電池2および3も開路電圧は3.5V以
下で構成部材の腐食は認められなかった。
【0033】(実施例2)実施例2として、有機電解液
へのエチレンサルファイトの添加量を変化させ、その影
響を検討した。有機電解液に対するエチレンサルファイ
ト(ES)の添加量を、0.05〜18質量%の範囲で
変化させた以外は実施例1の本発明の電池Aと同じ構成
とした本発明の電池G〜Kを作製し、実施例1と同様の
評価をおこなった、その結果を表2に示す。
【0034】
【表2】
【0035】表2からも明らかなように0.1〜15w
t%の範囲にある電池H、A、I、Jは、電圧及び保存
特性の両面で優れている。一方、電池Gは高温保存によ
る内部抵抗の上昇を抑制できるが、放電初期電圧及び容
量比率の面で他の電池に比べて特性が劣っており、電池
Kも同様の傾向を示している。このことから、0.1w
t%以下および15wt%を超えた場合には、添加によ
る改善を認められるがその効果が不十分である。このこ
とから、電解液に対してエチレンサルファイトの含有量
は0.1〜15wt%の範囲が好ましいことがわかる。
【0036】(実施例3)実施例3として、溶媒組成の
影響について検討をした。本実施例3に係る電解液に
は、高誘電率溶媒としてプロピレンカーボネート(P
C)およびエチレンカーボネート(EC)を用い、低粘
度溶媒として1、2ジメトキシエタン(DME)を用
い、これらを選択した2成分系及び3成分系の溶媒を作
成し、それぞれの溶媒にフッ化リチウム(LiBF4
を1mol/lになるように溶解したものを使用した。
さらに各電解液にエチレンサルファイトを電解液に対し
て3質量%の比率にて添加した。これら電解液を用いた
以外は、実施例1の電池Aと構成が同じである電池L〜
Rを作製し、実施例1と同様の評価を行った。尚、実施
例3では高温保存が保存後の低温放電特性への影響を明
確にするために、保存後の放電条件を雰囲気温度−20
℃で負荷抵抗30kΩで行った。その結果を表3に示
す。
【0037】
【表3】
【0038】表3からも明らかなように、高誘電率溶媒
のプロピレンカーボネートの体積比が5〜60%の電池
N〜Qは、いずれの特性も優れている。これに対して溶
媒に占めるPCの比率が5%未満の電池L及び電池M、
加えてPCの比率が70%以上の電池Rでは、放電電圧
および放電容量比率も大幅に低下している。これは、エ
チレンサルファイトの添加によって高温保存時の内部抵
抗の上昇は抑制できているが、低温での放電特性が他の
電池に比べて劣る。これは、−20℃の低温における電
解液の導電性による影響が顕著になり、凝固点の低いプ
ロピレンカーボネートの比率が5%未満の場合、あるい
はプロピレンカーボネートが70%の高率で添加されて
いるにも関わらず低粘度溶媒の1、2ジメトキシエタン
(DME)の比率が低くなる場合には、電解液の電導性
が低下し、これにより低温での放電特性の悪化を招いた
と考えられる。したがって、溶媒組成が2成分系、3成
分系のいずれにおいてもプロピレンカーボネートは体積
比で5〜60%の範囲が好ましい。なお、本実施例は高
誘電率溶媒にプロピレンカーボネートを使用したが、γ
―ブチロラクトン(GBL)の場合も同様の結果が得ら
れる。
【0039】(実施例4)実施例4として、本発明の電
池Aを用いて高温保存前の開路電圧が保存特性に及ぼす
影響を調べた。実施例1で作成した電池を用い、組み立
て後の約3.6Vの電池を予備放電(部分放電)するこ
とによって、異なる開路電圧を有する電池を得た。具体
的には、1mAの定電流放電で時間を変えることで予備
放電深度を正極設計容量(100mAh)の0〜5%の
範囲に設定して、開路電圧が3.6〜3.4Vとなる電
池を各10個作製した。これら電池は実施例1と同様の
評価を行い、その結果の放電容量比率を表4に示す。
【0040】
【表4】
【0041】表4からも明らかなように、開路電圧の値
が3.46V以下の電池は高温保存による容量劣化もな
くエチレンサルファイトの添加効果が認められる。一
方、3.51V以上の電池では容量劣化が激しく、分解
して調べたところリチウム表面に正極ケ−ス材質のステ
ンレスの析出が認められた。以上のことから、開路電圧
を3.5〜3.4Vにすることでエチレンサルファイ添
加の効果を十分に発揮させることができることがわか
る。また、この電圧値を得るには、正極設計容量の1〜
5%の容量を予備放電することが好ましい。
【0042】尚、本実施例ではコイン型電池について述
べたが、本発明は円筒型など様々な形状の電池について
も同様の結果が得られる。
【0043】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、(00
2)面の面間隔が3.50Å以下である易黒鉛化性炭素
または黒鉛質材料を出発炭素材料としたフッ化炭素から
なる正極、リチウムイオンを放出可能な負極とエチレン
サルファイトを含有する有機電解液を組み合わせて電池
を構成し、開路電圧を3.5V以下にすることにより、
高温保存特性に優れ、保存後の高負荷放電においても電
圧低下が生じず、且つ間欠放電特性に優れる非水電解液
電池が得られる。同時にステンレス鋼等を電池構成部材
に用いても特性の劣化を招かず、その工業的価値は大な
るものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施例における非水電解液電池の構成を示す
断面図
【符号の説明】
1 正極缶 2 負極缶 3 ガスケット 4 正極 5 負極 6 セパレータ
フロントページの続き (72)発明者 小柴 信晴 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電器 産業株式会社内 Fターム(参考) 5H024 AA01 AA12 CC03 DD14 EE09 FF15 FF16 FF18 FF19 FF38 HH02 HH04 5H050 AA02 AA10 BA06 CA01 CB12 FA17 HA01 HA04 HA18

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 金属リチウム又はリチウム合金からなる
    負極、フッ化炭素からなる正極、および有機電解液から
    構成される非水電解液電池であって、該フッ化炭素は、
    (002)面の面間隔が3.50Å以下にある易黒鉛化
    性炭素または黒鉛質材料を出発炭素材料とし、該有機電
    解液がエチレンサルファイトを含有してなり、さらに予
    備放電後の開路電圧が3.5V以下にあることを特徴す
    る非水電解液電池。
  2. 【請求項2】 エチレンサルファイトが該有機電解液に
    対して0.1〜15質量%の比率にて含有される請求項
    1記載の非水電解液電池。
  3. 【請求項3】 該有機電解液を構成する有機溶媒が環状
    エステルからなる請求項2記載の非水電解液電池。
  4. 【請求項4】 該有機溶媒が、エチレンカーボネート、
    プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、γ―
    ブチロラクトンから選択される少なくとも一種の環状エ
    ステルである請求項3記載非水電解液電池。
  5. 【請求項5】 該有機電解液が、低粘度のエーテルもし
    くは鎖状エステルと、環状エステルとの混合溶媒からな
    る請求項2記載の非水電解液電池。
  6. 【請求項6】 該低粘度のエーテルが1、2ジメトキシ
    エタンである請求項5記載の非水電解液電池。
  7. 【請求項7】 前記混合溶媒の環状エステルがγ―ブチ
    ロラクトン及びプロピレンカーボネートの少なくとも一
    種であり、該環状エステルを5〜60体積%の比率にて
    含有する請求項5記載の非水電解液電池。
  8. 【請求項8】 該易黒鉛化性炭素の形状が球状である請
    求項3〜7の何れか記載の非水電解液電池。
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