JP2002160999A - 結晶成長方法,フッ化物結晶の成形方法,光学部材の成形方法及び結晶成長用種結晶 - Google Patents

結晶成長方法,フッ化物結晶の成形方法,光学部材の成形方法及び結晶成長用種結晶

Info

Publication number
JP2002160999A
JP2002160999A JP2000352382A JP2000352382A JP2002160999A JP 2002160999 A JP2002160999 A JP 2002160999A JP 2000352382 A JP2000352382 A JP 2000352382A JP 2000352382 A JP2000352382 A JP 2000352382A JP 2002160999 A JP2002160999 A JP 2002160999A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
crystal
growth
plane
seed
seed crystal
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2000352382A
Other languages
English (en)
Inventor
Kazuo Kimura
和生 木村
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nikon Corp
Original Assignee
Nikon Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nikon Corp filed Critical Nikon Corp
Priority to JP2000352382A priority Critical patent/JP2002160999A/ja
Publication of JP2002160999A publication Critical patent/JP2002160999A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Crystals, And After-Treatments Of Crystals (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 {111}結晶面にサブグレインバウンダリ
ーのないフッ化物結晶等を高い確率で安定して得るため
の結晶成長方法,フッ化物結晶の成形方法,光学部材の
成形方法及びそれの方法に用いられる結晶成長用種結晶
を提供する。 【解決手段】 溶融原料を結晶化させて行く過程で、固
液界面を凸形状とし、結晶成長時に結晶格子歪みを結晶
外表面に到達させる方向に制御し、連続成長した結晶の
面方位を結晶粒界が発生する程度にまで変化させ、前記
結晶格子の歪みエネルギーを全面的に解放して、結晶粒
界面からは結晶格子にズレのない{111}結晶成長面
を得るように結晶成長させる結晶成長方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、紫外光および真
空紫外光を用いた各種機器、例えばステッパー、CVD
装置、核融合装置等のレンズ、窓材等の光学系に使用さ
れるフッ化物結晶等を得るための結晶成長方法,フッ化
物結晶の成形方法,光学部材の成形方法及びその方法に
用いられる結晶成長用種結晶に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年におけるVLSIは、高集積化・高
機能化が進行し、ウェハ上の微細加工技術が要求されて
いる。そして、その集積回路の微細パターンをシリコン
等のウエハ上に露光・転写する光リソグラフィーにおい
ては、ステッパーと呼ばれる露光装置が用いられてい
る。
【0003】この光リソグラフィー技術のかなめである
ステッパーの投影レンズには、高い結像性能(解像度、
焦点深度)が要求されている。
【0004】解像度と焦点深度は、露光に用いる光の波
長とレンズのNA(開口数)によって決まる。
【0005】露光波長λが同一の場合には、細かいパタ
ーンほど回折光の角度が大きくなるので、レンズのNA
が大きくなれば回折光を取り込めなくなる。また、露光
波長λが短いほど、同一パターンにおける回折光の角度
は小さくなるので、レンズのNAは小さくてよいことに
なる。
【0006】解像度と焦点深度は、次式により表され
る。
【0007】解像度=k・λ/NA 焦点深度=k・λ/(NA) (ここで、k、kは比例定数) 上式より、解像度を向上させるためには、レンズのNA
を大きくする(レンズを大口径化する)か、あるいは露
光波長λを短くすればよく、またλを短くする方が焦点
深度の点で有利であることがわかる。
【0008】ここで、まず、光の短波長化について述べ
ると、露光波長も次第に短波長となり、KrFエキシマ
レーザー光(波長248nm)やArFエキシマレーザ
ー光(波長193nm)を光源とするステッパーも市場
に登場してきている。250nm以下の波長を利用する
光リソグラフィー用途として使える光学材料は非常に少
なく、フッ化カルシウムと石英ガラスの2種類で設計さ
れている。
【0009】次に、レンズの大口径化について述べる
と、単に大口径であればよいと言うわけではなく、エキ
シマレーザーステッパーの光学系に用いる光学材料とし
ては、フッ化カルシウムにおいては単結晶であることが
要求される。
【0010】最近ではステッパーの高性能化に伴い、口
径φ150mm〜300mm程度、あるいはそれ以上の
大口径のフッ化カルシウム単結晶が要求されるようにな
ってきた。
【0011】ここで従来のフッ化カルシウム単結晶の製
造法の一例を示す。フッ化カルシウム単結晶は、ブリッ
ジマン法(ストックバーガー法、ルツボ降下法)により
製造されている。
【0012】紫外光または真空紫外域において使用され
るフッ化カルシウム単結晶の場合、原料として天然の蛍
石を使用することはなく、化学合成により作製された高
純度原料を使用することが一般的である。
【0013】フッ化カルシウム単結晶の製造にあたって
は、まず、育成装置の中に前記原料を充填したルツボを
置き、その育成装置内を10−3〜10−4Paの真空雰
囲気に保持する。
【0014】次に、育成装置内の温度をフッ化カルシウ
ムの融点以上まで上昇させてルツボ内の原料を熔融す
る。この際、育成装置内温度の時間的変動を抑えるため
に、定電力出力による制御または高精度なPID制御を
行う。結晶育成段階では、0.1〜5mm/hr程度の
速度でルツボ(育成炉)を引き下げることにより、ルツ
ボの下部から徐々に結晶化させる。
【0015】そして、熔融原料が最上部まで結晶化した
ところで結晶育成は終了し、育成した結晶(インゴッ
ト)が割れないように、急冷を避けて簡単な徐冷を行
う。育成装置内の温度が室温程度まで下がったところ
で、育成装置を大気解放してインゴットを取り出す。
【0016】この結晶育成においては、通常は黒鉛性の
ルツボを用いて、先端部が円錐(コーン)形状のペンシ
ル型インゴットが製造される。この際に、ルツボの下端
に位置する円錐部の先端部分から結晶を成長させること
により単結晶化が可能となる。
【0017】また、必要に応じて前記先端部分に種結晶
を入れて結晶成長の面方位を制御する技術もあるが、イ
ンゴットの直径がφ120mmを越えるようになると、
面方位制御はきわめて難しくなる。
【0018】一般に、フッ化物単結晶をブリッジマン法
により製造する場合には、成長方位に優位性はないと考
えられ、結晶成長毎にインゴットの水平面はランダムな
面となる。
【0019】フッ化カルシウム単結晶の結晶育成過程で
は、大きな温度勾配を有する育成装置内の温度分布が原
因となってインゴット内部に歪が発生するため、ステッ
パーの投影レンズなど、高均質が要求されるフッ化カル
シウム単結晶の場合には、歪を除去するためにインゴッ
トのまま簡単なアニールを行った後、目的の製品別に適
当な大きさに切断加工されて、さらにアニール(熱処
理)装置内にて熱処理される。フッ化カルシウム単結晶
は700℃以上で酸素と反応するため、熱処理は酸素を
遮断した環境下で行われる。この熱処理工程では、フッ
化カルシウム単結晶は熱処理温度で反応しない、カーボ
ン容器などの容器に置かれ、そのカーボン容器ごと真空
排気が可能な気密容器内に収められる。この気密容器内
でフッ化カルシウム単結晶を大気と遮断し、適切な温度
スケジュールに従って熱処理が行われる。
【0020】また、一般的に高品質が要求されるフッ化
カルシウム単結晶の場合には、容器内を大気と遮断後、
容器内をフッ素雰囲気として熱処理を行うことで光学特
性がより良好なフッ化カルシウム単結晶を得ている。
【0021】こうして得られたフッ化カルシウム単結晶
は、表面研磨やレンズ加工など、所望の光学部材形状に
機械加工され、精密光学系に組み込まれる。
【0022】
【発明が解決しようとする課題】ところで、ブリッジマ
ン法による結晶育成においては、容器内で結晶化するこ
とから、単結晶育成に関して様々な考慮がなされている
が、通常は黒鉛性のルツボを用いて、先端部が円錐形状
のペンシル型インゴットが製造される。この際に、ルツ
ボの下端に位置する円錐(コーン)部の先端部分から結
晶を成長させることにより単結晶化が可能となる。
【0023】また必要に応じて、前記ルツボの先端部分
に、主成長面を劈開又は切り出した種結晶を入れて、結
晶成長の方位を制御する技術もあるが、インゴットの直
径がφ120mmを越えるようになると、成長界面の形
状などの因子が直接的あるいは間接的に影響し、方位制
御はきわめて難しくなる。
【0024】一般に、フッ化物単結晶をブリッジマン法
により製造する場合には、成長方位に優位性はないと考
えられ、結晶成長毎にインゴットの水平面はランダムな
面となる。そこで種々の工夫をこらして、その結果、イ
ンゴット水平面が{111}結晶面である単結晶インゴ
ットが得られても、その{111}水平面を観察する
と、その表面には、様々な大きさの亜境界(サブグレイ
ンバウンダリー)が、非常にしばしば観察される。特
に、種結晶の{111}主結晶面から連続的に成長を果
たした単結晶インゴットの{111}結晶面には、必ず
強いサブグレインバウンダリーがその全面に存在する。
【0025】この{111}面に見られるサブグレイン
バウンダリー領域は、当然のことながら、その周囲に存
在する{111}面の結晶面方位に対しては、その<1
11>軸がわずかに回転しているわけであるが、ここで
結晶構造から硬度を考えてみると、原子半径が小さく、
原子間距離の近いものほど原子相互の凝集力が大きく、
従って硬度が高いが、同一の結晶についても格子面の面
方位によって硬度が異なる。ゆえに前記のようなサブグ
レインバウンダリーの場合においても、そのサブグレイ
ンバウンダリーの左右に存在する結晶面同一の結晶につ
いては、その硬度が異なるわけであるが、このことは加
工上しばしば大きな問題となることがある。特に精密研
磨が必要な光学部材を作製する場合には、所望の加工精
度を得るため、加工工程に非常に多くの時間を費やすこ
とになり、生産性が著しく悪化する、あるいは所望の加
工精度が得られないという問題点があった。
【0026】ましてや直径が120mmを越え、かつ光
軸方向と垂直な{111}平行面に、サブグレインバウ
ンダリーが部材の有効寸法内に全く存在しないフッ化カ
ルシウム単結晶素材を入手するのは、非常に困難であっ
た。よって、結局、特に精密研磨が必要な光学部材を作
製する場合には、所望の加工精度を得るために、多くの
フッ化カルシウム単結晶から良好のもののみを選定せざ
るを得ず、歩留まりが悪くなり、選定された加工用部材
が高価なものになるという問題点もあった。
【0027】つまり、結晶育成工程において単結晶が得
られても、その単結晶にサブグレインバウンダリーが存
在していると、所望の加工精度が要求される光学部材の
作製には使用できない。
【0028】本発明者は、フッ化物単結晶の結晶成長の
方法及び条件を鋭意研究する中で、得られるインゴット
の{111}結晶面に存在するサブグレインバウンダリ
ーの発生は、結晶成長時の結晶格子歪みの解放のさせか
たが影響すること、又、結晶成長時に使用する種結晶の
取り付け方向によって影響されることを見い出した。
【0029】即ち、サブグレインバウンダリーのないフ
ッ化物結晶等を得るためには、結晶成長方位制御が必要
であること、又、これを目的として使用する、単結晶で
ある種結晶が持つ、{111}結晶面の面方位を、育成
炉の軸方向に対して最適化する必要があることが分かっ
た。
【0030】本発明は、かかる知見を基に完成したもの
であり、{111}結晶面にサブグレインバウンダリー
のないフッ化物結晶等を高い確率で安定して得るための
結晶成長方法,フッ化物結晶の成形方法,光学部材の成
形方法及びその方法に用いられる結晶成長用種結晶を提
供することを課題とする。
【0031】
【課題を解決するための手段】かかる課題を達成するた
めに、請求項1に記載の発明は、溶融原料を結晶化させ
て行く過程で、固液界面を凸形状とし、結晶成長時に結
晶格子歪みを結晶外表面に到達させる方向に制御し、連
続成長した結晶の面方位を結晶粒界が発生する程度にま
で変化させ、前記結晶格子の歪みエネルギーを全面的に
解放して、結晶粒界面からは結晶格子にズレのない{1
11}結晶成長面を得るように結晶成長させる結晶成長
方法としたことを特徴とする。
【0032】請求項2に記載の発明は、育成炉内に取り
付けられた種結晶の主成長面から溶融原料を結晶化させ
る方法において、前記育成炉に対する種結晶の取付位置
を、育成炉軸を中心とした所定の回転位置に設定するこ
とにより、育成炉内の固液界面を凸形状とし、結晶成長
時に結晶格子歪みを前記育成炉のコーン部で結晶外表面
に到達させる方向に制御し、該コーン部で前記種結晶か
ら連続成長した結晶の面方位を結晶粒界が発生する程度
にまで変化させ、結晶格子の歪みエネルギーを全面的に
解放して、結晶粒界面からは結晶格子にズレのない{1
11}結晶成長面を得るように結晶成長させる結晶成長
方法としたことを特徴とする。
【0033】請求項3に記載の発明は、請求項2に記載
の結晶成長方法において、前記所定の回転位置から、軸
回転方向±5°以内に前記種結晶の取付け位置を規定し
たことを特徴とする。
【0034】請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3
の何れか一つに記載の結晶成長方法は、ルツボ降下法を
用いていることを特徴とする。
【0035】請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4
の何れか一つに記載の結晶成長方法において、結晶はフ
ッ化カルシウム又はフッ化バリウムの結晶であることを
特徴とする。
【0036】請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5
の何れか一つに記載の結晶成長方法を用いてインゴット
を成形し、該インゴットの前記結晶粒界面より上側を用
いてフッ化物結晶を成形したフッ化物結晶の成形方法と
したことを特徴とする。
【0037】請求項7に記載の発明は、請求項1乃至5
の何れか一つに記載の結晶成長方法を用いてインゴット
を成形し、該インゴットの前記結晶粒界面より上側を用
いて口径φ120mm〜350mmの光学部材を成形し
た光学部材の成形方法としたことを特徴とする。
【0038】請求項8に記載の発明は、請求項2又は3
に記載の結晶成長方法に用いられる種結晶であって、主
成長面の面方位が{111}であり、該主成長面に接す
る面のうち、少なくとも1つ以上の{111}結晶面の
面方位の方向が判明し、当該面方位が外見上認識できる
ようになっており、これに基づき前記育成炉内の所定の
回転位置に取り付けられるように構成されている結晶成
長用種結晶としたことを特徴とする。
【0039】請求項9に記載の発明は、請求項8に記載
の結晶成長用種結晶であって、前記主成長面に接する面
のうち、少なくとも1つ以上の{111}結晶面を切り
出すことにより、前記面方位が外見上認識できるように
したことを特徴とする。
【0040】請求項10に記載の発明は、請求項8に記
載の結晶成長用種結晶であって、前記主成長面に接する
面のうち、少なくとも1つ以上の{111}結晶面の面
方位の方向を測定して、前記主成長面にマーキングを施
すことにより、前記面方位が外見上認識できるようにし
た結晶成長用種結晶としたことを特徴とする。
【0041】
【発明の実施の形態】以下に本発明の実施の形態を説明
する。
【0042】一般にはフッ化物単結晶をブリッジマン法
により製造する場合には、成長方位に優位性はないと考
えられているが、これは育成炉内部の温度分布が完全な
軸対称性を有するという、理想状態を仮定したものであ
り、実際には使用する育成炉の構造上の問題、例えばヒ
ーター形状やヒーターの電極位置、また保温材の材質や
形状等の様々な理由により、仮定したような温度分布の
軸対称性を実現することはできない。
【0043】即ち、これらの現実的問題が、実際の単結
晶育成時の方位制御や結晶成長界面の状態にも大きく影
響しており、その結果、得られるインゴットの単結晶確
率は不安定であり、また単結晶インゴットが得られて
も、その{111}水平結晶面には強いサブグレインバ
ウンダリーが多量に存在する原因になっていた。
【0044】また、結晶成長とともに結晶中に引き継が
れていく転位(以下grown-in転位と呼ぶ)は、結晶成長
中の固液界面に垂直に伝播していくことが知られてお
り、grown-in転位の発生原因としては、種結晶から伝播
する、結晶表面荒れによる、既存の転位から増殖する、
などの様々な現象が考えられている。また、grown-in転
位は固液界面に対して垂直に伝播するため、固液界面形
状に凹部面が存在すると、転位は結晶の成長につれて凹
面部で高密度に集積し、この転位が高密度に集積すると
欠陥が線状に配列したり、サブグレインバウンダリーが
形成され、このサブグレインバウンダリーが結晶粒界の
発生原因、即ち多結晶化の原因になる。
【0045】ブリッジマン法(ルツボ降下法)では、理
想的な育成炉内の固液界面を凸面形状と仮定しており、
また実際の結晶成長においても育成炉の構造や育成時の
温度制御で固液界面を凸面形状に実現すべく設計されて
いるが、現実の結晶育成炉内においては、局所的に固液
界面の凹面部が発生していると考えられる。
【0046】また、サブグレインバウンダリーが全面に
存在する種結晶からの連続成長{111}結晶面は、全
体としては同一の面方位を有しているものの、大きな歪
みを蓄積している。
【0047】そこで、本発明者が鋭意研究したところ、
溶融原料を結晶化させて行く過程で、固液界面を凸形状
とし、結晶成長時に結晶格子歪みを結晶外表面に到達さ
せる方向に制御し、連続成長した結晶の面方位を結晶粒
界が発生する程度にまで変化させ、前記結晶格子の歪み
エネルギーを全面的に解放することで、結晶粒界面(以
下、「展開面」という)からは結晶格子にズレのない
{111}結晶成長面が得られることが判明した。
【0048】また、前記育成炉に対する種結晶の取付位
置を、育成炉軸を中心とした所定の回転位置に設定する
ことにより、この固液界面の温度分布状態の{111}
連続成長面への特定方向に対する影響が、種結晶からの
{111}成長面が持つ大きな結晶格子歪みを、結晶成
長時に常に育成炉のコーン部で結晶外表面に到達させる
方向に制御して、その結果、コーン部では種結晶から連
続成長した結晶の面方位を結晶粒界が発生する程度にま
で変え、結晶格子の歪みエネルギーを全面的に解放する
ことにより、展開面からは結晶格子にズレのない、即ち
サブグレインバウンダリーのない{111}結晶成長面
が得られることも判明した。しかも、その単結晶確率は
非常に高く、かつ安定していることがわかった。
【0049】かかる種結晶の最適な取付位置を決定する
には、同種の育成炉であっても、各育成炉毎に固有の温
度特性等が不可避的に生じていることから、最適な取付
位置も各育成炉毎で相違する。従って、各育成炉毎に種
結晶の取付位置を変えて実験することにより、サブグレ
インバウンダリーの生じない位置を決定するようにして
いる。ある育成炉については、予め最適取付位置を決定
しておくことにより、その後は、当該育成炉においては
その取付位置に種結晶を取り付けるだけで容易に、サブ
グレインバウンダリーのない結晶成長面を得ることがで
きる。
【0050】通常、ブリッジマン法ではルツボ底部の種
結晶固定部は円筒形状であり、また種結晶も固定部に合
わせて略円柱形状に加工した単結晶が用いられる。
【0051】従って、種結晶を育成炉に対して育成炉軸
を中心とした所定の回転位置に取り付ける際に、目安と
なるような工夫が施された、以下のような結晶成長用種
結晶を用いる。
【0052】すなわち、この種結晶は、主成長面の面方
位が{111}であり、該主成長面に接する面のうち、
少なくとも1つ以上の{111}結晶面の面方位の方向
が判明し、当該面方位が外見上認識できるようになって
おり、これに基づき前記育成炉内の所定の回転位置に取
り付けられるように構成されているものである。
【0053】その種結晶の内の一つとして、主成長面に
接する面のうち、少なくとも1つ以上の{111}結晶
面を切り出すことにより、前記面方位が外見上認識でき
るようにしたものがある。
【0054】また、その種結晶の内の他の一つとして、
主成長面に接する面のうち、少なくとも1つ以上の{1
11}結晶面の面方位を測定して、前記主成長面にマー
キングを施すことにより、前記面方位が外見上認識でき
るようにしたものがある。
【0055】このように面方位が外見上認識できる種結
晶を用いることにより、育成炉の所定の位置に簡単に取
り付けることができる。
【0056】そして、そのような結晶成長方法を用いて
インゴットを成形し、このインゴットの展開面より上
側、つまり、サブグレインバウンダリーのない部分を用
いてフッ化物結晶又は、光学部材を成形し、展開面から
下側を使用しないため、良好な製品を得ることができ
る。換言すれば、インゴットから光学部材等を切り出す
際には、インゴットのコーン部は通常使用されることは
ないため、得られるインゴットのコーン部に{111}
結晶格子歪みエネルギーの解放による展開面が存在して
も、特に問題とはならない。
【0057】特に、上記の方法を用いて成形することに
より、従来の技術では得られなかったサブグレインバウ
ンダリーのない、大口径(口径φ120mm〜350m
m)の光学部材を成形することができた。
【0058】以下に、図面を用いて具体的に説明する。
【0059】まず、図1には本発明の種結晶の形状の一
例を示す。
【0060】(a)に示す種結晶は、主成長面の{11
1}結晶面に接する3つ(少なくとも1つ以上)の{1
11}面を切り出したものであり、詳細には、(1,1,
1)が主成長面で三角形を呈し、(−1,1,1)、
(1,−1,1)、(1,1,−1)の各側面が、三角形の
各辺に接している。
【0061】これにより、それら各側面の結晶面の面方
位の方向が、そのように切り出されることにより判明し
て、主成長面が三角形状を呈することにより、外見上認
識できるようになっている。
【0062】ここで、{111}面とは、(1,1,1)
と等価な面の集合を言い、また、例えば(−1,1,
1,)とは、ミラー指数(11)の意味である。
【0063】(b)に示す種結晶は、主成長面の{11
1}結晶面に接する2つの{111}面を切り出したも
のであり、詳細には、(1,1,1)が主成長面で扇形を
呈し、一つの頂角部を有し、(−1,1,1)、(1,−
1,1)の2つの側面が、扇形の2辺に接している。
【0064】これにより、それら2つの側面の結晶面の
面方位の方向が、そのように切り出されることにより判
明して、主成長面が頂角部を有する扇形状を呈すること
により、外見上認識できるようになっている。
【0065】(c)に示す種結晶は、主成長面の{11
1}結晶面に接する3つ(少なくとも1つ以上)の{1
11}面を切り出したものであるが、上記(a)と異な
り、主成長面が三角形状を呈していない。
【0066】しかし、(−1,1,1)、(1,−1,
1)、(1,1,−1)の各側面の結晶面の面方位の方向
が、そのように切り出されることにより判明して、外見
上認識できるようになっている。
【0067】(d)に示す種結晶は、主成長面の{11
1}結晶面に接する2つの{111}面を切り出したも
のであるが、上記(b)と異なり、主成長面が扇形を呈
していない。
【0068】しかし、(−1,1,1)、(1,−1,1)
の2つの側面の結晶面の面方位の方向が、そのように切
り出されることにより判明して、外見上認識できるよう
になっている。
【0069】(e)に示す種結晶は、上記(a),
(b),(c),(d)の種結晶と異なり、側面が切り
出されておらず、主成長面にマーキングMが施されてい
る。すなわち、前記主成長面に接する面のうち、少なく
とも1つ以上、ここでは2つの{111}結晶面の面方
位を測定して、略V字状のマーキングMを前記主成長面
に施すことにより、前記面方位が外見上認識できるよう
に構成されている。
【0070】ルツボ降下法では、結晶原料熔融時に、融
液に接する種結晶上部も熔融するため、実際には主成長
面に接する他の{111}面を切り出さなくても良い。
【0071】以上のように、ルツボ底部に設けられた種
結晶固定部が円筒である場合だけでなく、種々の形状の
場合においても、該固定部に配置される種結晶の育成炉
軸Oに対する取付け位置が一義的に決定できるように、
主成長面に接する1面以上の{111}結晶面が切り出
し加工されたもの、あるいは面方位が測定されてマーキ
ングされた種結晶であればよい。
【0072】上記各結晶成長用種結晶は以下のように成
形する。ここでは、種結晶の主成長面の{111}結晶
面に接する他の{111}結晶面の面方位を測定するの
にラウエ回折パターンを利用した。
【0073】まず、単結晶フッ化カルシウムに刃物を当
てて応力を加えることで、主成長面として用いる{11
1}結晶面の劈開を生じさせる。そして、この{11
1}結晶面にX線を照射し、得られたラウエ回折パター
ンから、{111}主成長面に接する他の{111}結
晶面の面方位を測定する。
【0074】この他の{111}結晶面の面方位が特定
できたら、特定された{111}結晶面の面方位の方向
が分かるようにマーキングを施すか、あるいは切り出し
工具として一般的に広く用いられているダイヤ研削刃を
用いて、主成長面に接する2面以上の{111}結晶面
を切り出す。この方法によって、種結晶は{111}結
晶面を主成長面とし、該主成長面に接する2面以上の
{111}結晶面の面方位の方向が決定される。
【0075】なお、フッ化カルシウムは劈開によって容
易に{111}結晶面を得ることができるため、ラウエ
回折パターンを用いず、劈開により、主成長面に接する
{111}結晶面を切り出すこともできる。
【0076】次に、これらの種結晶を用いてフッ化カル
シウム単結晶を成長させる方法について説明する。
【0077】図2は、ブリッジマン法(ルツボ降下法)
に使用する装置の一例である。
【0078】図2において、符号201は種結晶、20
2はフッ化カルシウム結晶前処理品、203はルツボ
(育成炉)、204はヒーター、205は断熱材、20
6は真空ベルジャー、207はルツボ引下げ装置であ
る。
【0079】その種結晶201としては上記図1の
(a)〜(e)の何れのものを用いても良い。
【0080】また、そのルツボ203は、円筒形状の直
胴部203aと、この直胴部203aの下方に連続する
コーン部203bと、更に、このコーン部203bの下
方に連続する円筒形状の種結晶収納部203cとを有し
ている。この種結晶収納部203c内に所定の取付位置
で種結晶201が取り付けられて収納されるようになっ
ている。
【0081】そして、その種結晶収納部203cの外側
がルツボ引下げ装置207の引下げシャフト207aに
取り付けられることによりルツボ203が支持され、そ
のシャフト207aが駆動装置207bにより上下動さ
れることにより、ルツボ203が上下動されるようにな
っている。
【0082】かかるルツボ203は前記真空ベルジャー
206内に収納され、この真空ベルジャー206内は図
示省略の装置にて真空排気されることにより、真空状態
とされるように構成されている。
【0083】さらに、ルツボ203の周囲には、真空ベ
ルジャー206内において、ヒーター204が上下方向
に沿って配列されて配置され、更に、この周囲には断熱
材205が配設されている。
【0084】かかる装置を用いて結晶成長を行わせるに
は、まず、上記の種結晶201を黒鉛製ルツボ203の
底部の種結晶収納部203cに取り付ける。
【0085】ここで種結晶201をルツボ203の種結
晶収納部203cに取り付ける際には、{111}主結
晶面に接する他の{111}結晶面の面方位が、ルツボ
203に対して最適方向となるように取り付ける。例え
ば、図1の(a)に示す種結晶であれば、三角形の主成
長面の方向が所定の方向を向くように取り付ける。
【0086】次に、あらかじめフッ化カルシウム精製粉
末原料とスカベンジャーを混合し、加熱、熔融の後に固
化させて製造したフッ化カルシウム結晶前処理品202
を、ルツボ203内に充填する。
【0087】種結晶201と前処理品202を充填した
ルツボ203を真空ベルジャー206内に設置して、ヒ
ータ204に通電し、真空度を10−3〜10−4Pa
以下に保持しながら、ルツボ203を加熱し、1390
℃〜1450℃程度で前処理品202を熔融させる。熔
融状態で温度が安定状態に達した後、さらに6〜24時
間程度保持する。
【0088】その後、引下げ装置207にてルツボ20
3を約0.1〜5mm/hの速度で下部へ移動させる。
この時、ルツボ203の降下とともにフッ化カルシウム
は部分的に温度が低下して、結晶化する。
【0089】ルツボ203が所定距離を下がりきった時
点で、ヒーター204への印加電圧を、炉内温度が80
0〜1100℃まで降下するように調節し、さらにその
温度で12〜120時間アニールした後、温度降下速度
が約50℃/h以内になるように、徐々に印加電圧を低
下させる。
【0090】その後、ヒーター204の電源を切り、室
温程度まで冷却した後、炉からフッ化カルシウム単結晶
を取り出す。
【0091】上記のように所定の向き種結晶201を取
り付けることで、コーン部203bより上の直胴部20
3aで形成されるインゴット直胴部ではサブグレインバ
ウンダリーのない単結晶フッ化カルシウムを、高い確率
で、かつ安定して得ることができる。
【0092】以下、本発明を実施例により更に詳細に説
明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではな
い。
【0093】
【実施例】[実施例1]フッ化カルシウム単結晶を円柱
状に加工した後、図1(a)に示したように、主成長面
の{111}結晶面と該結晶面に接する3つの{11
1}面を切り出し、主成長面を三角形とし、この種結晶
を用いて、主成長面に接する結晶面方位が、ルツボ(育
成炉)に対して最適な方向となるように種結晶の取り付
け方向を決定し、{111}主成長面に対して垂直方向
にルツボを引き下げ、フッ化カルシウムの結晶成長を行
った。
【0094】[実施例2]フッ化カルシウム単結晶を円
柱状に加工した後、図1(b)に示したように、主成長
面の{111}結晶面と該結晶面に接する2つの{11
1}面を切り出して、主成長面に扇形の頂角を形成さ
せ、この種結晶を用いて、主成長面に接する結晶面方位
が、ルツボ(育成炉)に対して最適な方向となるように
種結晶の取り付け方向を決定し、{111}主成長面に
対して垂直方向にルツボを引き下げ、フッ化カルシウム
の結晶成長を行った。
【0095】[実施例3]フッ化カルシウム単結晶を円
柱状に加工した後、図1(c)に示したように、主成長
面の{111}結晶面と該結晶面に接する3つの{11
1}面を、主成長面に三角形の頂角が形成されないよう
に切り出し、この種結晶を用いて、主成長面に接する結
晶面方位が、ルツボ(育成炉)に対して最適な方向とな
るように種結晶の取り付け方向を決定し、{111}主
成長面に対して垂直方向にルツボを引き下げ、フッ化カ
ルシウムの結晶成長を行った。
【0096】[実施例4]フッ化カルシウム単結晶を円
柱状に加工した後、図1(d)に示したように、主成長
面の{111}結晶面と該結晶面に接する2つの{11
1}面を、主成長面に三角形の頂角が形成されないよう
に切り出した。この種結晶を用いて、主成長面に接する
結晶面方位が、ルツボ(育成炉)に対して最適な方向と
なるように種結晶の取り付け方向を決定し、{111}
主成長面に垂直方向にルツボを引き下げ、フッ化カルシ
ウムの結晶成長を行った。
【0097】[実施例5]フッ化カルシウム単結晶を円
柱状に加工した後、図1(e)に示したように、主成長
面の{111}結晶面を切り出し、該結晶面に接する2
面の{111}結晶面の面方位を測定して、加工せずに
面方向のマーキングのみを施した。この種結晶を用い
て、主成長面に接する結晶面方位が、ルツボ(育成炉)
に対して最適な方向となるように種結晶の取り付け方向
を決定し、{111}主成長面に対して垂直方向にルツ
ボを引き下げ、フッ化カルシウムの結晶成長を行った。
【0098】[比較例1]フッ化カルシウム単結晶を円
柱状に加工した後、図1(a)に示したように、主成長
面の{111}結晶面と該結晶面に接する3つの{11
1}面を切り出し、主成長面を三角形とし、この種結晶
を、実施例1で決定された種結晶の取り付け方向とは異
なる様々の向きに無作為に取り付けて、実施例1と同様
に垂直方向にルツボを引き下げ、フッ化カルシウムの結
晶成長を行った。
【0099】[比較例2]フッ化カルシウム単結晶を円
柱状に加工した後、図1(b)に示したように、主成長
面の{111}結晶面と該結晶面に接する2つの{11
1}面を切り出して、主成長面に扇形の頂角を形成さ
せ、この種結晶を、実施例2で決定された種結晶の取り
付け方向とは異なる様々の向きに無作為に取り付けて、
実施例2と同様に垂直方向にルツボを引き下げ、フッ化
カルシウムの結晶成長を行った。
【0100】[比較例3]フッ化カルシウム単結晶を円
柱状に加工した後、図1(c)に示したように、主成長
面の{111}結晶面と該結晶面に接する3つの{11
1}面を、主成長面に三角形の頂角が形成されないよう
に切り出し、この種結晶を、実施例3で決定された種結
晶の取り付け方向とは異なる様々の向きに無作為に取り
付けて、実施例3と同様に垂直方向にルツボを引き下
げ、フッ化カルシウムの結晶成長を行った。
【0101】[比較例4]フッ化カルシウム単結晶を円
柱状に加工した後、図1(d)に示したように、主成長
面の{111}結晶面と該結晶面に接する2つの{11
1}面を、主成長面に三角形の頂角が形成されないよう
に切り出した。この種結晶を、実施例4で決定された種
結晶の取り付け方向とは異なる様々の向きに無作為に取
り付けて、実施例4と同様に垂直方向にルツボを引き下
げ、フッ化カルシウムの結晶成長を行った。
【0102】[比較例5]フッ化カルシウム単結晶を円
柱状に加工した後、図1(e)に示したように、主成長
面の{111}結晶面を切り出し、該結晶面に接する2
面の{111}結晶面の面方位を測定して、加工せずに
面方向のマーキングのみを施した。この種結晶を、実施
例5で決定された種結晶の取り付け方向とは異なる様々
の向きに無作為に取り付けて、実施例5と同様に垂直方
向にルツボを引き下げ、フッ化カルシウムの結晶成長を
行った。
【0103】上記実施例1から実施例5および比較例1
から比較例5に記述した結晶成長は、図2に示す装置を
用いて行った。
【0104】まず、上記の種結晶201を黒鉛製ルツボ
203の底部の種結晶収納部203cに取り付けた。
【0105】ここで種結晶201をルツボ203の種結
晶収納部203cに取り付ける際には、実施例1から実
施例5では、主結晶面に接する他の{111}結晶面の
方向が、ルツボ203に対して最適となるように種結晶
201を取り付けた。また、比較例1から比較例5につ
いては、実施例1から実施例5で決定された方向とは異
なる、様々の向きに種結晶201を取り付けた。次に、
予めフッ化カルシウム精製粉末原料とスカベンジャーを
混合し、加熱、溶融の後に固化させて製造したフッ化カ
ルシウム結晶前処理品202を、ルツボ203内に充填
した。
【0106】種結晶201と前処理品202を充填した
ルツボ203を真空ベルジャー206内に設置して、ヒ
ータ−204に通電し、真空度を3×10−4Pa以下
に保持しながら、ルツボ203を加熱し、1400℃程
度で熔融させた。熔融状態で温度が安定状態に達した
後、さらに6時間程度保持した。
【0107】その後、ルツボ引下げ装置207にてルツ
ボ203を約1mm/hの速度で下部へ移動させた。
【0108】ルツボ203が所定距離を下がりきった時
点で、ヒーター204への印加電圧を、炉内温度が48
時間で1000℃まで降下するように調節し、さらにそ
の温度で24時間アニールした後、温度降下速度が約5
0℃/h以内になるように、徐々に印加電圧を低下させ
た。
【0109】その後、ヒーター204の電源を切り、室
温程度まで冷却した後、炉からフッ化カルシウム単結晶
を取り出した。
【0110】以上のようにして作製した300mm径の
単結晶について、シード接合部203dから100mm
のインゴットのコーン上方部と、直胴部203aの下か
ら230mmのインゴットトップ部をダイヤ刃のついた
バンドソーで切断した。
【0111】その後、切り取ったコーン部の観察は結晶
を破断して、またインゴット表面及び内部観察は集光器
と水銀ランプ照明を使用して、コーン部の展開面の発生
と切断面のサブグレインバウンダリーの存在及び単結晶
の生成を確認して、まず、インゴット直胴部における
{111}結晶面にサブグレインバウンダリーのない単
結晶確率を算出したが、実施例1〜実施例5では有意差
は生じなかった。
【0112】従って、本発明の図1の(a)〜(e)に
挙げたような種結晶の加工形状の違い及び加工の有無
は、得られた結果に影響しないことを確認した。ゆえ
に、本発明で使用する種結晶は、種結晶を育成炉に対し
て最適な方向に取り付けるために、図1の(e)のよう
に、{111}主成長面に接する他の{111}結晶面
の面方位の存在方向が判明していればよく、主成長面に
接する他の{111}面を切り出し加工する必要はな
い。
【0113】次に、実施例での最適な種結晶取付け方向
と、比較例でのその他の無作為な種結晶取付け方向によ
り、インゴットのコーン部の展開面発生で直胴部にサブ
グレインバウンダリーのない単結晶体が生成する確率を
算出した。結果を図3に示す。
【0114】即ち、育成炉に対する種結晶の最適な取付
け方向に対しては、育成炉軸の周りに120°回転させ
る毎に、主成長面に接する他の等価な{111}面が表
れることになるため、最適な取付け方向に対する無作為
方向は、±60°の範囲内でのズレ角として図3の横軸
に示した。
【0115】また、図3の縦軸には、サブグレインバウ
ンダリーのない単結晶が得られた確率(%)を示した。
【0116】この図3から、本発明のように、種結晶の
{111}主成長面に接する他の{111}結晶面の面
方位を利用して、種結晶の取付け方向を育成炉に対して
最適となるように一義的に決定することにより、インゴ
ットの直胴部ではサブグレインバウンダリーがない{1
11}水平面をもつ単結晶を、90%以上という高い確
率で得ることが出来た。
【0117】さらに、種結晶の取付け方向は、育成炉に
対して最適な取付け位置から±5°以内の範囲であれ
ば、80%以上の確率でコーン部に展開面が発生して、
直胴部ではサブグレインバウンダリーのない単結晶体が
得られることがわかる。
【0118】なお、以上の実施例では口径が300mm
の単結晶を製造したが、それ以下、例えば200mm、
あるいはそれ以上、例えば350mmの口径を有する単
結晶についても同様の結果を得た。
【0119】また、種結晶の形状は図1に示したものに
限定されるものでなく、主成長面に接する面の内、1つ
の{111}結晶面の面方位の方向が判明し、当該面方
位が外見上認識できるようになっていれば良い。
【0120】
【発明の効果】以上説明してきたように、請求項1に記
載の発明によれば、サブグレインバウンダリーのない結
晶成長を行わせることができる。
【0121】請求項2に記載の発明によれば、育成炉に
対する種結晶の取付位置を、育成炉軸を中心とした所定
の回転位置に設定することにより、サブグレインバウン
ダリーのない結晶成長を行わせることができる。
【0122】請求項3に記載の発明によれば、前記所定
の回転位置から、軸回転方向±5°以内に前記種結晶の
取付け位置を規定することにより、サブグレインバウン
ダリーのない結晶成長を行わせることができる。
【0123】請求項4に記載の発明によれば、ルツボ降
下法を用いて、サブグレインバウンダリーのない結晶成
長を行わせることができる。
【0124】請求項5に記載の発明によれば、サブグレ
インバウンダリーのない大口径フッ化カルシウム又はフ
ッ化バリウム単結晶体を、高水準の確率で安定して製造
することができる。
【0125】請求項6に記載の発明によれば、インゴッ
トの結晶粒界面より上側を用いてフッ化物結晶を成形す
ることにより、サブグレインバウンダリーのない良質な
フッ化物結晶を得ることができる。
【0126】請求項7に記載の発明によれば、インゴッ
トの結晶粒界面より上側を用いて口径φ120mm〜3
50mmの光学部材を成形することにより、サブグレイ
ンバウンダリーのない良質な光学部材を得ることができ
る。
【0127】請求項8に記載の発明によれば、主成長面
の面方位が{111}であり、該主成長面に接する面の
うち、少なくとも1つ以上の{111}結晶面の面方位
の方向が判明し、当該面方位が外見上認識できる種結晶
とすることにより、種結晶を育成炉内の所定の回転位置
に簡単に取り付けることができる。
【0128】請求項9,請求項10に記載の発明によれ
ば、主成長面に接する面のうち、少なくとも1つ以上の
{111}結晶面を切り出したり、主成長面に接する面
のうち、少なくとも1つ以上の{111}結晶面の面方
位の方向を測定して、前記主成長面にマーキングを施し
たりすることにより、前記面方位が外見上簡単に認識で
きる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の形態にかかる複数の結晶成長
用種結晶を示す図である。
【図2】同実施の形態を示す結晶成長装置の概略図であ
る。
【図3】本実施例1〜5および比較例1〜5により得ら
れたインゴットについて算出した、種結晶の取付け位置
のズレに対する、サブグレインバウンダリーのない単結
晶が得られた確率を表すグラフ図である。
【符号の説明】
201・・・種結晶 202・・・フッ化カルシウム結晶前処理品 203・・・ルツボ(育成炉) 204・・・ヒーター 205・・・断熱材 206・・・真空ベルジャー 207・・・ルツボ引下げ装置 O・・・育成炉軸

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】溶融原料を結晶化させて行く過程で、固液
    界面を凸形状とし、結晶成長時に結晶格子歪みを結晶外
    表面に到達させる方向に制御し、連続成長した結晶の面
    方位を結晶粒界が発生する程度にまで変化させ、前記結
    晶格子の歪みエネルギーを全面的に解放して、結晶粒界
    面からは結晶格子にズレのない{111}結晶成長面を
    得るように結晶成長させることを特徴とする結晶成長方
    法。
  2. 【請求項2】育成炉内に取り付けられた種結晶の主成長
    面から溶融原料を結晶化させる方法において、 前記育成炉に対する種結晶の取付位置を、育成炉軸を中
    心とした所定の回転位置に設定することにより、育成炉
    内の固液界面を凸形状とし、結晶成長時に結晶格子歪み
    を前記育成炉のコーン部で結晶外表面に到達させる方向
    に制御し、該コーン部で前記種結晶から連続成長した結
    晶の面方位を結晶粒界が発生する程度にまで変化させ、
    結晶格子の歪みエネルギーを全面的に解放して、結晶粒
    界面からは結晶格子にズレのない{111}結晶成長面
    を得るように結晶成長させることを特徴とする結晶成長
    方法。
  3. 【請求項3】請求項2に記載の結晶成長方法において、
    前記所定の回転位置から、軸回転方向±5°以内に前記
    種結晶の取付け位置を規定したことを特徴とする結晶成
    長方法。
  4. 【請求項4】請求項1乃至3の何れか一つに記載の結晶
    成長方法は、ルツボ降下法を用いていることを特徴とす
    る結晶成長方法。
  5. 【請求項5】請求項1乃至4の何れか一つに記載の結晶
    成長方法において、結晶はフッ化カルシウム又はフッ化
    バリウムの結晶であることを特徴とする結晶成長方法。
  6. 【請求項6】請求項1乃至5の何れか一つに記載の結晶
    成長方法を用いてインゴットを成形し、該インゴットの
    前記結晶粒界面より上側を用いてフッ化物結晶を成形し
    たことを特徴とするフッ化物結晶の成形方法。
  7. 【請求項7】請求項1乃至5の何れか一つに記載の結晶
    成長方法を用いてインゴットを成形し、該インゴットの
    前記結晶粒界面より上側を用いて口径φ120mm〜3
    50mmの光学部材を成形したことを特徴とする光学部
    材の成形方法。
  8. 【請求項8】請求項2又は3に記載の結晶成長方法に用
    いられる種結晶であって、主成長面の面方位が{11
    1}であり、該主成長面に接する面のうち、少なくとも
    1つ以上の{111}結晶面の面方位の方向が判明し、
    当該面方位が外見上認識できるようになっており、これ
    に基づき前記育成炉内の所定の回転位置に取り付けられ
    るように構成されていることを特徴とする結晶成長用種
    結晶。
  9. 【請求項9】請求項8に記載の結晶成長用種結晶であっ
    て、前記主成長面に接する面のうち、少なくとも1つ以
    上の{111}結晶面を切り出すことにより、前記面方
    位が外見上認識できるようにしたことを特徴とする結晶
    成長用種結晶。
  10. 【請求項10】請求項8に記載の結晶成長用種結晶であ
    って、前記主成長面に接する面のうち、少なくとも1つ
    以上の{111}結晶面の面方位の方向を測定して、前
    記主成長面にマーキングを施すことにより、前記面方位
    が外見上認識できるようにしたことを特徴とする結晶成
    長用種結晶。
JP2000352382A 2000-11-20 2000-11-20 結晶成長方法,フッ化物結晶の成形方法,光学部材の成形方法及び結晶成長用種結晶 Pending JP2002160999A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2000352382A JP2002160999A (ja) 2000-11-20 2000-11-20 結晶成長方法,フッ化物結晶の成形方法,光学部材の成形方法及び結晶成長用種結晶

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2000352382A JP2002160999A (ja) 2000-11-20 2000-11-20 結晶成長方法,フッ化物結晶の成形方法,光学部材の成形方法及び結晶成長用種結晶

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2002160999A true JP2002160999A (ja) 2002-06-04

Family

ID=18825287

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2000352382A Pending JP2002160999A (ja) 2000-11-20 2000-11-20 結晶成長方法,フッ化物結晶の成形方法,光学部材の成形方法及び結晶成長用種結晶

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2002160999A (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2006330407A (ja) * 2005-05-27 2006-12-07 Nikon Corp 光学用被加工部材,光学部材,光学系及び光露光装置
CN106435730A (zh) * 2016-09-08 2017-02-22 中国科学院上海光学精密机械研究所 多坩埚下降法制备氟化镁晶体的生长设备及其生长方法

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2006330407A (ja) * 2005-05-27 2006-12-07 Nikon Corp 光学用被加工部材,光学部材,光学系及び光露光装置
CN106435730A (zh) * 2016-09-08 2017-02-22 中国科学院上海光学精密机械研究所 多坩埚下降法制备氟化镁晶体的生长设备及其生长方法

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US5492079A (en) Process for producing rods or blocks of semiconductor material and an apparatus for carrying out the process
US20040099205A1 (en) Method of growing oriented calcium fluoride single crystals
US20140202377A1 (en) Crucible for producing compound crystal, apparatus for producing compound crystal, and method for producing compound crystal using crucible
JPH1121197A (ja) 結晶成長用の種結晶及びフッ化物結晶
JP4147595B2 (ja) 蛍石単結晶の製造方法
JP3006148B2 (ja) 耐エキシマ性に優れた蛍石の製造装置
JP4569872B2 (ja) 蛍石の単結晶製造装置及びそれを用いた蛍石単結晶の製造方法
JP3988217B2 (ja) 大口径蛍石の製造装置および製造方法
JP2000128696A (ja) フッ化物単結晶からなる光学素子作製用素材とその製造方法
JP2002160999A (ja) 結晶成長方法,フッ化物結晶の成形方法,光学部材の成形方法及び結晶成長用種結晶
JP2006219352A (ja) 単結晶製造装置及び単結晶製造方法
JP2006219361A (ja) 結晶製造方法
JP4092515B2 (ja) 蛍石の製造方法
JP3686204B2 (ja) 蛍石単結晶のアニール方法
JP2005001933A (ja) 金属フッ化物体とその製造方法
JP2005035824A (ja) フッ化物結晶育成装置
JP2007284323A (ja) 半導体単結晶の製造装置及び製造方法
JPH10203899A (ja) アルカリ土類金属不純物の少ない蛍石及びその製造方法
JP3698848B2 (ja) 蛍石単結晶の熱処理装置および熱処理方法
JP2001335398A (ja) 光リソグラフィ用大口径蛍石単結晶およびその製造方法
JP4821623B2 (ja) 単結晶育成用ルツボ及びこのルツボにより育成されるフッ化物結晶
JP2004010461A (ja) 結晶製造装置および結晶製造方法
JP2000203994A (ja) 蛍石単結晶、その熱処理方法及び蛍石単結晶素材の製造 方法
US20040099207A1 (en) As-grown single crystal of calcium fluoride
JP4797447B2 (ja) 光学用被加工部材,光学部材,光学系及び光露光装置

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20071017

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20091102

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20091117

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20100316