JP2002144550A - インクジェット記録ヘッドおよびインクジェット記録装置 - Google Patents

インクジェット記録ヘッドおよびインクジェット記録装置

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JP2002144550A
JP2002144550A JP2000348643A JP2000348643A JP2002144550A JP 2002144550 A JP2002144550 A JP 2002144550A JP 2000348643 A JP2000348643 A JP 2000348643A JP 2000348643 A JP2000348643 A JP 2000348643A JP 2002144550 A JP2002144550 A JP 2002144550A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 インク容器交換時の吸引回復を数多く行う
と、記録時以外のインク消費が多くなってしまい、ラン
ニングコストが増大してしまう。 【解決手段】 インクを吐出して記録するインクジェッ
ト記録ヘッドにおいて、フィルターとインクを吐出する
インク吐出口との間のインク液室に、気泡を溜める手段
と、該気泡を溜める手段に気泡を移動させる手段と、前
記気泡を溜める手段に溜まった気泡を外部に排出する手
段とを有する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はインクジェット記録
ヘッドおよび該インクジェット記録ヘッドを用いるイン
クジェット記録装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】インク吐出口からインクを吐出して被記
録媒体上に記録を行うインクジェット記録装置およびこ
のインクジェット記録装置に用いられるインクジェット
記録ヘッドには、さまざまな形態のものがある。その中
でも、インクジェット記録ヘッドへのインク供給方法と
して代表的なものを幾つか以下に列挙してみよう。
【0003】先ず、インクを包含するインク容器からチ
ューブを用い、インクジェット記録ヘッド内に微少なゴ
ミが入り込むことを防ぐためのフィルターを介し、イン
クジェット記録ヘッドまでインクを供給する形態のもの
があり、これは、インク容器内のインクがなくなるとイ
ンク容器を交換し、その際にインクジェット記録ヘッド
内に気泡が混入することを防ぐために、インクジェット
記録ヘッドから、インクを吸引回復、または加圧回復す
るものが一般的である。このようなインクジェット記録
装置は、大型のインクジェット記録装置によく用いられ
る。
【0004】また、別の形態としては、インク容器とイ
ンクジェット記録ヘッドとが一体的になった構造の、オ
ンキャリッジ型インクジェットカートリッジを用いるイ
ンクジェット記録装置がある。このような形態のもの
は、比較的小さ目のインクジェット記録装置によく用い
られ、インクジェット記録カートリッジの交換等が手軽
にできるために大変多く普及している。しかし、このよ
うな形態のインクジェットカートリッジは、インク容器
内のインクが無くなった時点でインク容器を交換する際
に、インクジェット記録ヘッドも同時に捨ててしまうた
めに、近年、ランニングコストや環境問題の観点から、
インクが無くなった場合には、インク容器のみ交換でき
るような、オンキャリッジ型インクジェット記録カート
リッジが多く提案されている。
【0005】この形態のインクジェット記録装置に用い
られるインクカートリッジは、インクを吐出させるため
のエネルギー発生基板と、その基板に作り込まれたエネ
ルギー発生素子に対応したインク吐出口を備えたインク
ジェット記録チップと、このインクジェット記録チップ
に微小ゴミのないインクを供給するためのフィルターを
備えたインクジェット記録ヘッド部と、インクを貯蔵す
るインク容器部とに分けられるものが一般的であり、イ
ンク容器を交換した場合に、インクジェット記録ヘッド
内に気泡が混入されて、安定した記録が阻害されること
を防ぐための吸引回復を行うのが一般的である。
【0006】しかし、インク容器交換時の吸引回復は必
要としても、吸引回復を数多く行うと、記録時以外のイ
ンク消費が多くなってしまい、ランニングコストが大き
く増大してしまう。また、例えば、インクジェット記録
ヘッドのインクを吐出させるためのエネルギー発生手段
として用いられる一般的なものの1つとして、電気熱変
換体(ヒーター)が用いられる。これは、ヒーターに通
電することでヒーター上のインクに膜沸騰を発生させ
て、その力でインクを吐出させるというものである。こ
のインク吐出のための過程の中で、インク中に含まれて
いた溶存空気が気泡となって少しづつではあるが発生し
てくる。このような気泡が多く溜まってしまうと、印字
に悪影響を及ぼすために、インクジェット記録ヘッド内
に存在する気泡が印字に悪影響を及ぼす大きさになる以
前に、インクジェット記録ヘッドの吸引回復を行う必要
が発生する。この場合も、印字に使用されないインク消
費が発生するために、ランニングコストが増大してしま
う問題がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】通常のインクジェット
記録ヘッドにおいては、例えば図6に示されるように、
インクジェット記録ヘッド100は、インクタンクのよ
うなインク容器と一体に成ったケーシング102を有し
ていて、このケーシング102がインク液室103を形
成しており、インク容器との間にフィルター104が設
けられている。さらに、ケーシング102にはこのフィ
ルター104と反対側に、インクを吐出して記録を行う
ためのインクジェット記録チップ部105が設けられて
いる。フィルター104は、インク容器から供給される
インク中に含まれるゴミ等の不純物を取り除いて、清浄
なインクをインク液室103内に供給するものである。
さらに、インク液室103内には、1枚の板部材106
が傾斜して設けられており、板部材106の下方側の端
部とケーシング102との間に隙間Sが形成されてい
る。従って、図示されるように、インク液室103内に
供給されたインクは、板部材106の端部とケーシング
102との間の隙間Sを通り、インクを吐出するための
エネルギー発生手段と、インクを吐出させるインク吐出
口とを備えたインクジェット記録チップ部105に供給
されて、被記録媒体に対してインクを吐出して記録を行
うように構成されている。
【0008】また、このようなインクジェット記録ヘッ
ド100においては、傾斜した板部材106の上方側の
端部に気泡溜め部108が形成されており、この気泡溜
め部108の近辺においてケーシング102に通気孔1
09が設けられていて、この通気孔109に、一般的に
は、空気は通すが、インクは通さない性質をもった多孔
質性材料の疎水膜110が取付けられており、この疎水
膜110を介してインク液室103と外気とが連通され
るようになっている。しかし、ただインク液室103と
外気とが連通する状態にされていると、インク液室10
3内のインクが蒸発してしまうために、気泡溜め部10
8に溜まった気泡を取り除くとき以外には、常時は略密
閉された状態に構成されている気泡排出部111が設け
られている。また、疎水膜110には、「ゴアテック
ス」(商品名)等のような多孔質性材料が用いられてい
る。
【0009】図示されるように、この気泡排出部111
は、開口113を有する囲い112と、囲い112の開
口113を閉鎖する蓋114と、蓋114を押圧するバ
ネ115とから形成されている。このような気泡溜め部
108に溜まった気泡は、疎水膜110を通って気泡排
出部111に流れて気泡排出部111に溜まるように成
っており、この気泡排出部11に溜まった気泡、すなわ
ち空気が外に排出されるように構成されている。
【0010】このように、図6に示されるように構成さ
れた従来のインクジェット記録ヘッド100において
は、インクは隙間Sを通ってインクジェット記録チップ
部105の方に供給されて、このインクジェット記録チ
ップ部105から被記録媒体に対して吐出されて記録が
行われる。この場合のインクジェット記録チップ部10
5においては、インク吐出によって気泡Bが発生して、
この発生した気泡Bの一部が隙間Sを通ってフィルター
104の方に移動してしまって、フィルター104に付
着してしまう。しかも、このようなフィルター104に
付着した気泡Bは、フィルター104のメニスカス力に
よって自然にフィルター104を通過するようなことが
殆ど全く無い。
【0011】従って、このような状態で、さらに気泡B
がフィルター104に付着すると、気泡Bはフィルター
104の下側の処に溜まってしまい、最終的にはインク
容器からのインクの、インクジェット記録チップ部10
5へのインク供給に不良が発生して、安定した印字が不
可能になってしまう等の自体を生じるようになる。
【0012】従って、本発明の目的は、このような従来
における問題を解決するために、吸引回復による無駄な
インク消費をすることなく、インクジェット記録ヘッド
内に溜まった気泡を取り除くことが可能で、かつ低ラン
ニングコストで、信頼性の高いインクジェット記録ヘッ
ドおよびインクジェット記録ヘッドを用いるインクジェ
ット記録装置を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】上述の目的を達成するた
めに、本発明のインクジェット記録ヘッドは、インクを
吐出して記録するインクジェット記録ヘッドにおいて、
フィルターとインクを吐出するインク吐出口との間のイ
ンク液室に、気泡を溜める手段と、該気泡を溜める手段
に気泡を移動させる手段と、前記気泡を溜める手段に溜
まった気泡を外部に排出する手段とを有することを特徴
とする。
【0014】また、本発明のインクジェット記録ヘッド
は、前記気泡を溜める手段が、重力方向に対して斜めに
なり、かつ間隔を置いて隔てられた2つの板部材を用い
ることを特徴とする。
【0015】さらに、本発明のインクジェット記録ヘッ
ドは、前記外部に気泡を排出する手段に疎水膜が用いら
れている。
【0016】さらにまた、本発明のインクジェット記録
ヘッドは、前記疎水膜が、気泡除去時以外は直接外気に
さらされないように覆われていることを特徴とする。
【0017】本発明のインクジェット記録ヘッドは、前
記気泡を溜める手段が、前記フィルターが重力方向に斜
めに設けられて成ることを特徴とする。
【0018】また、本発明のインクジェット記録ヘッド
は、前記疎水膜の覆いが可撓性部材であることを特徴と
する。
【0019】さらに、本発明のインクジェット記録ヘッ
ドは、前記気泡を溜める手段が、前記気泡を移動させる
手段に組合せられていることを特徴とする。
【0020】さらにまた、本発明のインクジェット記録
ヘッドは、前記疎水膜が、気体は通すが液体は通さない
多孔質性材料で形成されていることを特徴とする。
【0021】本発明のインクジェット記録ヘッドは、イ
ンクを吐出するために利用されるエネルギーとして通電
に応じ熱エネルギーを発生する電気熱変換体を有するこ
とを特徴とする。
【0022】また、本発明のインクジェット記録ヘッド
は、前記電気熱変換体より印加される熱エネルギーによ
ってインクに生じる膜沸騰を利用して、前記インク吐出
口からインクを記録媒体に向けて吐出させることを特徴
とする。
【0023】さらに、本発明のインクジェット記録装置
は、上記いずれかのインクジェット記録ヘッドを用いて
記録を行うことを特徴とする。
【0024】
【発明の実施の形態】このように構成された本発明のイ
ンクジェット記録ヘッドおよびインクジェット記録装置
によれば、上述のように構成することによって、吸引回
復による無駄なインク消費をすることなく、インクジェ
ット記録ヘッド内に溜まった気泡を取り除くことがで
き、かつ低ランニングコストで、信頼性の高いインクジ
ェット記録ヘッドおよびインクジェット記録ヘッドを用
いるインクジェット記録装置が得られる。
【0025】本発明のその他の目的と特徴および利点
は、添付図面に沿っての本発明の幾つかの実施形態に就
いての以下の詳細な説明から明らかになろう。
【0026】以下に、図面を参照して本発明のインクジ
ェット記録ヘッド、およびこのインクジェット記録ヘッ
ドを用いるインクジェット記録装置を詳細に説明する。
【0027】(実施例1)図1は、本発明のインクジェ
ット記録ヘッドにおける実施例1を示す断面図である。
図1に示される本発明のインクジェット記録ヘッド1
は、図示しないが、図の上方でインクを内包したインク
タンクに接続されている。本実施例においては、インク
ジェット記録ヘッド1は、インクを内包したインクタン
クとインクジェット記録ヘッドとが接続されたインクジ
ェット記録カートリッジ方式を採用したが、インクジェ
ット記録ヘッドへのインク供給方法はこれに限ったもの
ではなく、インクジェット記録ヘッドから離れた場所に
インクタンク等のインク容器をセットし、インク供給チ
ューブを介してインクを供給するような方式のものでも
良いことは勿論である。
【0028】図1に示されるように、本発明におけるイ
ンクジェット記録ヘッド1は、インクタンク等のインク
容器と一体を成し、かつインク液室3を形成するケーシ
ング2を有しており、インク容器との間にフィルター4
が設けられると共に、このフィルター4と反対側に、イ
ンクを吐出して記録を行うインクジェット記録チップ部
5を有している。フィルター4は、インク容器から供給
されるインク中に含まれるゴミ等の不純物を取り除い
て、清浄なインクがインク液室3内に供給されるように
なすものである。インク液室3内には2枚の板部材6、
7が互いに同じ方向に傾斜し、かつ間隔を置いて配設さ
れていて、これら板部材6、7の相対する端部が、図2
に示されるように重なり部Aを形成するように設けられ
ている。従って、インク液室3内に供給されたインク
は、2つの板部材6、7の間を通り、インクを吐出する
ためのエネルギー発生手段と、インクを吐出させるイン
ク吐出口とを備えたインクジェット記録チップ部5に供
給されて、被記録媒体に対してインクを吐出して記録を
行うように構成されている。
【0029】本実施例においては、インクを吐出させる
ためのインクジェット記録ヘッド1として、インクジェ
ット記録チップ部5の、図示しないヒーターボードに設
けられたヒーターに通電することによってヒーターを加
熱して、ヒーター上に存在するインクに膜沸騰を発生さ
せることで、インクを吐出させるバブルジェット(登録
商標)方式のインクジェット記録ヘッドを構成してい
る。しかし、本発明に使用できるインクジェット記録ヘ
ッドは、このようなバブルジェット方式のものに限ら
ず、圧電素子に電気を流すことにより圧電素子に変異を
起こさせてインクを吐出するピエゾ方式のものや、静電
気力によりインクを吐出させる静電ヘッド等の、所望の
インク量を所望の位置に、吐出できるものであれば良
い。
【0030】また、本実施例において、傾斜した上側の
板部材6の端に気泡溜め部8が形成されており、この気
泡溜め部8の近辺のケーシング2に通気孔9が設けられ
ていて、この通気孔9に、空気は通過するがインクは通
過しない多孔質性材料の疎水膜10が取付けられてお
り、この疎水膜10を介してインク液室3と外気とが連
通するようになっている。しかし、ただインク液室3と
外気とが連通する状態にしておくと、インク液室3内の
インクが蒸発してしまうために、気泡溜め部8に溜まっ
た気泡を取り除くとき以外は、常時は略密閉された状態
になっている気泡排出部11が設けられている。
【0031】図3に明示されるように、この気泡排出部
11は、開口13を有する囲い12と、囲い12の開口
13を閉鎖する蓋14と、蓋14を押圧するバネ15と
から形成されている。従って、気泡溜め部8に溜まった
気泡は、疎水膜10を通って気泡排出部11に流れて気
泡排出部11に溜まるように成っており、後述するよう
な方法によってこの気泡排出部11に溜まった気泡、す
なわち空気が外に排出されるように構成されたものであ
る。
【0032】なお、ケーシング2の通気孔9に設けられ
る疎水膜10には、同様に、例えばジャパン・ゴアテッ
クス株式会社製の「ゴアテックス」のような多孔質性材
料が使用されるが、このような多孔質性材料に特別に何
等限られるものではなく、同様な性能を発揮する材料で
あれば、同様な他の材料を差し支えなく使用することが
できるものである。
【0033】このように構成された本発明のインクジェ
ット記録ヘッド1を用いて印字を行った場合に、印字中
に発生した気泡は、図2に示されるように、板部材6、
7を伝わって上方へと気泡溜め部8に集まってくる。ま
た、板部材6、7は重なり部Aを形成しており、従っ
て、気泡は先ず下側のインクタンク部材7に沿って上方
に移動し、重なり部Aを経て上側の板部材6の方に移
り、次いで、この上側の板部材6に沿って上方に移動し
て気泡溜め部8に溜まる。他方、インクは重なり部Aを
通ってインクジェット記録チップ部5の方に供給される
ようになっている。
【0034】しかしながら、従来のインクジェット記録
ヘッド100における如く1枚の板部材106だけを使
用した場合では、先に、図6と共に説明されたように、
インクを供給するための隙間Sが傾斜した板部材106
の下方端側に形成されて、インクがこの隙間Sを通って
インクジェット記録チップ部105の方に供給され、イ
ンクジェット記録チップ部105から被記録媒体に対し
て吐出されて記録が行われる。従って、この場合のイン
クジェット記録チップ部105におけるインク吐出によ
って、気泡Bが発生して、この発生した気泡Bの一部が
フィルター104の方に移動してしまい、フィルター1
04に付着する。しかし、このようなフィルター104
に付着した気泡Bは、フィルター104のメニスカス力
によって自然にフィルター104を通過することは殆ど
全く無い。従って、このような状態で、さらに気泡Bが
フィルター104に付着すると、気泡Bはフィルター1
04の下側の処に溜まってしまい、最終的には、インク
ジェット記録チップ部105へのインク供給に不良が発
生して、安定した印字が不可能になってしまう。
【0035】従って、このような問題を解決するために
発明された本発明のインクジェット記録ヘッド1におい
ては、気泡を排出するために、気泡溜め部8に或る程度
の気泡が溜まった場合に、インクジェット記録装置の所
定の位置にキャリッジを移動して、図3に示されるよう
に、インクジェット記録ヘッド1に設けられた気泡除去
用ジョイント部材16によって、気泡排出部11の蓋1
4をバネ15のバネ力に抗して中の方に押し込んで、囲
い12とジョイント部材16とを嵌合させる。次いで、
気泡除去用ジョイント部材16の吸引孔18を介して空
気を吸引すると、インクジェット記録ヘッド1内の、気
泡溜め部8に溜まった気泡が、気泡排出部11を介して
気泡除去用ジョイント部材16の吸引溝17および吸引
孔18を通ってインクジェット記録ヘッド1の外方に吸
い出される。この時の吸引圧は、疎水膜10からインク
が吸い出されない程度にしておけば、気泡のみがインク
ジェット記録ヘッド1内から抜け出るので、ある任意の
時間の間だけ必要な吸引を行い、十分空気を排出したな
らば、気泡除去用ジョイント部材16を引き抜いて、囲
い12とジョイント部材16との嵌合を外せば良く、簡
単な操作で空気を排出することができ、複雑なシーケン
ス等は全く必要ない。
【0036】従って、上述したように構成される本発明
のインクジェット記録ヘッド、およびこのようなインク
ジェット記録ヘッドを用いるインクジェット記録装置に
よって、信頼性が高く、かつ低ランニングコストの印字
を行うことができる。
【0037】(実施例2)次に、本発明のインクジェッ
ト記録ヘッドの実施例2に就いて説明するに、図4およ
び図5は、本発明の実施例2におけるインクジェット記
録ヘッドを示す断面図および拡大断面部分図である。
【0038】図示されるように、本発明の実施例2にお
けるインクジェット記録ヘッド20は、インクジェット
記録チップ部25を有するケーシング21内に斜めに設
けられて、かつインク液室23を形成するフィルター2
4と、フィルター24の一端に形成された気泡溜め部2
8に対応して設けられたケーシング22の開口29部分
に装着された「ゴアテックス」等のような多孔質性材料
の疎水膜30と、この疎水膜30を覆って密閉するよう
に設けられた覆いを形成すると共にインク排出部31を
形成する可撓性部材32と、この可撓性部材32に形成
された通気孔33を開閉するよう設けられた逆止弁34
とを有している。逆止弁34は、可撓性部材32のイン
ク排出部31内の空気を外に出す方向のみに開くように
なったものである。
【0039】本実施例において、インク液室23内に発
生して気泡排出部31に溜まった気泡を除去する場合に
は、インクジェット記録装置に装備された押圧手段の押
し部材35によって、インクジェット記録ヘッド20に
設けられた可撓性部材32を図5に示されるように押圧
する。すると、押し部材35による押圧によって可撓性
部材32が押しつぶされて変形され、逆止弁34が開い
て、可撓性部材32内の空気が通気孔33を通って外に
排出される。その後、押し部材35による可撓性部材3
2の押圧を止めると、逆止弁34が閉じて、可撓性部材
32が最初の形状に戻るようになる。この時に、可撓性
部材32内に存在する空気の圧力が低くなるので、この
圧力を利用して、インクジェット記録ヘッド20内の気
泡溜め部28に存在する気泡を、疎水膜30を介して気
泡排出部31内に吸引して気泡排出部31内に溜めるよ
うになる。従って、この気泡排出部31に溜まった気
泡、すなわち空気を、上述したように押し部材35によ
って可撓性部材32を押圧することによって可撓性部材
32の通気孔33を介してインクジェット記録ヘッド2
0の外に排出することができる。
【0040】上述したように、本発明によれば、インク
ジェット記録ヘッド内の所定の位置に、気泡溜め部を形
成するようインクジェット記録ヘッド内に斜めに、かつ
間隔を置いて2つの板部材を設けたり、あるいはまた
は、1つのフィルターを斜めに設けることによって、イ
ンクジェット記録ヘッド内に発生した気泡を、前記の気
泡溜め部に導き、この溜まった気泡を、インクジェット
記録ヘッドに設けられた疎水膜を介してインクジェット
記録ヘッド外に排出する構成を採ることによって、イン
クジェット記録ヘッドの吸引回復が、不慮の事故等のよ
うな特別な場合のみとなり、回復による消費インク量が
格段に減少し、非常にランニングコストが安く、かつ信
頼性の高いインクジェット記録ヘッドおよび該インクジ
ェット記録ヘッドを用いたインクジェット記録装置が得
られる。
【0041】(その他)なお、本発明は、記録剤として
インクを用いるものであれば種々のインクジェット記録
装置に適用できるのは勿論であるが、その中でもインク
吐出を行わせるために利用されるエネルギーとして熱エ
ネルギーを発生する手段(例えば、電気熱変換体やレー
ザ光等)を備え、前記熱エネルギーによりインクの状態
変化を生起させる方式の記録(記録)ヘッド、記録装置
において優れた効果をもたらすものである。かかる方式
によれば記録の高密度化、高精細化が達成できるからで
ある。
【0042】その代表的な構成や原理については、例え
ば、米国特許第4、723、129号明細書、同第4、
740、796号明細書に開示されている基本的な原理
を用いて行うものが好ましい。この方式は所謂オンデマ
ンド型、コンティニュアス型のいずれにも適用可能であ
るが、特に、オンデマンド型の場合には、液体(イン
ク)が保持されているシートや液路に対応して配置され
ている電気熱変換体に、記録情報に対応していて核沸騰
を越える急速な温度上昇を与える少なくとも1つの駆動
信号を印加することによって、電気熱変換体に熱エネル
ギーを発生せしめ、記録ヘッドの熱作用面に膜沸騰を生
じさせて、結果的にこの駆動信号に一対一で対応した液
体(インク)内の気泡を形成できるので有効である。こ
の気泡の成長,収縮により吐出用開口を介して液体(イ
ンク)を吐出させて、少なくとも1つの滴を形成する。
この駆動信号をパルス形状とすると、即時適切に気泡の
成長収縮が行われるので、特に応答性に優れた液体(イ
ンク)の吐出が達成でき、より好ましい。このパルス形
状の駆動信号としては、米国特許第4、463、359
号明細書、同第4、345、262号明細書に記載され
ているようなものが適している。なお、上記熱作用面の
温度上昇率に関する発明の米国特許第4、313、12
4号明細書に記載されている条件を採用すると、さらに
優れた記録を行うことができる。
【0043】記録ヘッドの構成としては、上述の各明細
書に開示されているようなインク吐出口、液路、電気熱
変換体の組合せ構成(直線状液流路または直角液流路)
の他に熱作用部が屈曲する領域に配置されている構成を
開示する米国特許第4、558、333号明細書、米国
特許第4、459、600号明細書を用いた構成も本発
明に含まれるものである。加えて、複数の電気熱変換体
に対して、共通するスリットを電気熱変換体の吐出部と
する構成を開示する特開昭59−123670号公報や
熱エネルギーの圧力波を吸収する開孔を吐出部に対応さ
せる構成を開示する特開昭59−138461号公報に
基いた構成としても本発明の効果は有効である。すなわ
ち、記録ヘッドの形態がどのようなものであっても、本
発明によれば記録を確実に効率よく行うことができるよ
うになるからである。
【0044】さらに、記録装置が記録できる記録媒体の
最大幅に対応した長さを有するフルラインタイプの記録
ヘッドに対しても本発明は有効に適用できる。そのよう
な記録ヘッドとしては、複数記録ヘッドの組合せによっ
てその長さを満たす構成や、一体的に形成された1個の
記録ヘッドとしての構成のいずれでもよい。
【0045】加えて、上例のようなシルアルタイプのも
のでも、装置本体に固定された記録ヘッド、あるいは装
置本体に装着されることで装置本体との電気的な接続や
装置本体からのインクの供給が可能になる交換自在のチ
ップタイプの記録ヘッド、あるいは記録ヘッド自体に一
体的にインクタンクが設けられたカートリッジタイプの
記録ヘッドを用いた場合にも、本発明は有効である。
【0046】また、本発明を適用できる記録装置の構成
として、記録ヘッドの吐出回復手段(予備的な補助手段
等も含む)の形態は種々のものであってもよい。具体的
に挙げれば、記録ヘッドに対してのキャッピング手段、
ブレードなどのクリーニング手段、インク供給系の加圧
あるいは上例のような吸引によってインクをインク吐出
口から排除する手段、電気熱変換体或はこれとは別の加
熱素子或はこれらの組み合わせを用いて加熱を行う予備
加熱手段、記録とは別の吐出を行なう予備吐出手段を含
むものであればよい。それらのような回復処理後にヘッ
ドフェイス面にインク付着ないし残留が生じうる場合に
は本例のようなキャップ内吸収体の配設が有効である
し、またブレードを清浄に保つ吸収体の配設によって好
ましくない部位へのインク滴下を防止できるからであ
る。
【0047】また、搭載される記録ヘッドの種類ないし
個数についても、例えば単色のインクに対応して1個の
みが設けられたものの他、上述のように記録色や濃度を
異にする複数のインクに対応して複数個数設けられるも
のであってもよい。すなわち、例えば記録装置の記録モ
ードとしては黒色等の主流色のみの記録モードだけでは
なく、記録ヘッドを一体的に構成するか複数個の組み合
わせによるかいずれでもよいが、異なる色の複色カラ
ー、または混色によるフルカラーの各記録モードの少な
くとも一つを備えた装置にも本発明は極めて有効であ
る。
【0048】さらに加えて、以上説明した本発明実施形
態においては、インクを液体として説明しているが、室
温やそれ以下で固化するインクであって、室温で軟化も
しくは液化するものを用いてもよく、あるいはインクジ
ェット方式ではインク自体を30℃以上70℃以下の範
囲内で温度調整を行ってインクの粘性を安定吐出範囲に
あるように温度制御するものが一般的であるから、使用
記録信号付与時にインクが液状をなすものを用いてもよ
い。加えて、熱エネルギーによる昇温を、インクの固形
状態から液体状態への状態変化のエネルギーとして使用
せしめることで積極的に防止するため、またはインクの
蒸発を防止するため、放置状態で固化し加熱によって液
化するインクを用いてもよい。いずれにしても熱エネル
ギーの記録信号に応じた付与によってインクが液化し、
液状インクが吐出されるものや、記録媒体に到達する時
点ではすでに固化し始めるもの等のような、熱エネルギ
ーの付与によって初めて液化する性質のインクを使用す
る場合も本発明は適用可能である。このような場合のイ
ンクは、特開昭54−56847号公報あるいは特開昭
60−71260号公報に記載されるような、多孔質シ
ート凹部または貫通孔に液状又は固形物として保持され
た状態で、電気熱変換体に対して対向するような形態と
してもよい。本発明においては、上述した各インクに対
して最も有効なものは、上述した膜沸騰方式を実行する
ものである。
【0049】さらに加えて、本発明に適用できるインク
ジェット記録装置の形態としては、コンピュータ等の情
報処理機器の画像出力端末として用いられるものの他、
リーダ等と組合せた複写装置、さらには送受信機能を有
するファクシミリ装置の形態を採るもの等であってもよ
い。
【0050】
【発明の効果】本発明の請求項1記載のインクジェット
記録ヘッドは、インクを吐出して記録するインクジェッ
ト記録ヘッドにおいて、フィルターとインクを吐出する
インク吐出口との間のインク液室に、気泡を溜める手段
と、該気泡を溜める手段に気泡を移動させる手段と、前
記気泡を溜める手段に溜まった気泡を外部に排出する手
段とを有する有するので、インクジェット記録ヘッドの
吸引回復が、不慮の事故等の特別な場合のみとなり、格
段に回復による消費インク量が減少し、非常にランニン
グコストが安く、低ランニングコストの印字を行うこと
ができ、かつ信頼性の高いインクジェット記録ヘッドお
よびインクジェット記録装置が得られる。
【0051】本発明の請求項2記載のインクジェット記
録ヘッドは、前記気泡を溜める手段が、重力方向に対し
て斜めになり、かつ間隔を置いて隔てられた2つの板部
材を用いるので、気泡を好適に集めて排出することがで
き、フィルターを何等詰まらせることが無い。
【0052】本発明の請求項3記載のインクジェット記
録ヘッドは、前記外部に気泡を排出する手段が、疎水膜
が用いられているので、気泡を簡便にかつ良好に排出す
ることができる。
【0053】本発明の請求項4記載のインクジェット記
録ヘッドは、前記疎水膜が、気泡除去時以外は直接外気
にさらされないように覆われているので、疎水膜を好適
に保護することができる。
【0054】本発明の請求項5記載のインクジェット記
録ヘッドは、前記気泡を溜める手段が、前記フィルター
が重力方向に斜めになっているので、気泡を簡単な手段
をもって好適に導いて溜めることができる。
【0055】本発明の請求項6記載のインクジェット記
録ヘッドは、前記疎水膜を密閉する部材が可撓性を有す
るので、疎水膜を良好に保護し、気泡を好適に排出する
ことができる。
【0056】本発明の請求項7記載のインクジェット記
録ヘッドは、前記気泡を溜める手段が、前記気泡を移動
させる手段に組合せられているので、簡易な構成に良好
に作ることができる。
【0057】本発明の請求項8記載のインクジェット記
録ヘッドは、前記疎水膜が、気体は通すが液体は通さな
い多孔質性材料で形成されているので、気泡だけを好適
に通過させて排出することができる。
【0058】本発明の請求項9記載のインクジェット記
録ヘッドは、インクを吐出するために利用されるエネル
ギーとして通電に応じ熱エネルギーを発生する電気熱変
換体を有するので、被記録媒体に対してインクを好適に
吐出して良好な安定した印字を行うことができる。
【0059】本発明の請求項10記載のインクジェット
記録ヘッドは、前記電気熱変換体より印加される熱エネ
ルギーによってインクに生じる膜沸騰を利用して、前記
インク吐出口からインクを記録媒体に向けて吐出させる
ので、インクを好適に吐出して安定して印字することが
でき、印字品位を向上維持することができる。
【0060】本発明の請求項11記載のインクジェット
記録装置は、請求項1ないし10のいずれか記載のイン
クジェット記録ヘッドを用いて記録を行うので、インク
ジェット記録ヘッドの吸引回復が、不慮の事故等の特別
な場合のみとなり、格段に回復による消費インク量が減
少し、非常にランニングコストが安く、かつ信頼性の高
いインクジェット記録ヘッドおよびインクジェット記録
装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1におけるインクジェット記録
ヘッドの断面図である。
【図2】図1の本発明の実施例1におけるインク液室内
の気泡の動きを示すインクジェット記録ヘッドの断面図
である。
【図3】本発明の実施例1におけるインクジェット記録
ヘッドとインクジェット記録装置に供されたジョイント
部が嵌合した状態を示す断面図である。
【図4】本発明の実施例2におけるインクジェット記録
ヘッドと、インクジェット記録装置に供された押し部材
とを示す断面図である。
【図5】図4の本発明の実施例2における可撓性部材の
動作を説明するための拡大断面部分図である。
【図6】本発明のインクジェット記録ヘッドの実施例1
と比較される、従来のインクジェット記録ヘッドにおけ
るインク液室内の気泡の動きを示す断面図である。
【符号の説明】
1 インクジェット記録ヘッド 2 ケーシング 3 インク液室 4 フィルター 5 インクジェット記録チップ部 6 板部材 7 板部材 8 気泡溜め部 9 通気孔 10 疎水膜 11 気泡排出部 12 囲い 13 開口 14 蓋 15 バネ 16 気泡除去用ジョイント部材 17 吸引溝 18 吸引孔 20 インクジェット記録ヘッド 22 ケーシング 23 インク液室 24 フィルター 25 インクジェット記録チップ部 28 気泡溜め部 29 開口 30 疎水膜 31 気泡排出部 32 可撓性部材 33 通気孔 34 逆止弁 35 押し部材

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 インクを吐出して記録するインクジェッ
    ト記録ヘッドにおいて、 フィルターとインクを吐出するインク吐出口との間のイ
    ンク液室に、気泡を溜める手段と、該気泡を溜める手段
    に気泡を移動させる手段と、前記気泡を溜める手段に溜
    まった気泡を外部に排出する手段とを有することを特徴
    とするインクジェット記録ヘッド。
  2. 【請求項2】 前記気泡を溜める手段は、重力方向に対
    して斜めになり、かつ間隔を置いて隔てられた2つの板
    部材を用いることを特徴とする請求項1記載のインクジ
    ェット記録ヘッド。
  3. 【請求項3】 前記外部に気泡を排出する手段は、疎水
    膜が用いられていることを特徴とする請求項1記載のイ
    ンクジェット記録ヘッド。
  4. 【請求項4】 前記疎水膜は、気泡除去時以外は直接外
    気にさらされないように覆われていることを特徴とする
    請求項3記載のインクジェット記録ヘッド。
  5. 【請求項5】 前記気泡を溜める手段は、前記フィルタ
    ーが重力方向に斜めに設けられて成ることを特徴とする
    請求項1記載のインクジェット記録ヘッド。
  6. 【請求項6】 前記疎水膜の覆いが可撓性部材であるこ
    とを特徴とする請求項4記載のインクジェット記録ヘッ
    ド。
  7. 【請求項7】 前記気泡を溜める手段が、前記気泡を移
    動させる手段に組合せられていることを特徴とする請求
    項1記載のインクジェット記録ヘッド。
  8. 【請求項8】 前記疎水膜は、気体は通すが液体は通さ
    ない多孔質性材料で形成されていることを特徴とする請
    求項3または4記載のインクジェット記録ヘッド。
  9. 【請求項9】 インクを吐出するために利用されるエネ
    ルギーとして通電に応じ熱エネルギーを発生する電気熱
    変換体を有することを特徴とする請求項1記載のインク
    ジェット記録ヘッド。
  10. 【請求項10】 前記電気熱変換体より印加される熱エ
    ネルギーによってインクに生じる膜沸騰を利用して、前
    記インク吐出口からインクを記録媒体に向けて吐出させ
    ることを特徴とする請求項9記載のインクジェット記録
    ヘッド。
  11. 【請求項11】 請求項1ないし10のいずれか記載の
    インクジェット記録ヘッドを用いて記録を行うことを特
    徴とするインクジェット記録装置。
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