JP2002138814A - 排気ガス浄化装置、および排気ガスの浄化方法 - Google Patents

排気ガス浄化装置、および排気ガスの浄化方法

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JP2002138814A
JP2002138814A JP2000335537A JP2000335537A JP2002138814A JP 2002138814 A JP2002138814 A JP 2002138814A JP 2000335537 A JP2000335537 A JP 2000335537A JP 2000335537 A JP2000335537 A JP 2000335537A JP 2002138814 A JP2002138814 A JP 2002138814A
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exhaust gas
filter
trapping
recirculation
engine
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Hiromichi Yanagihara
弘道 柳原
Zenichiro Kato
善一郎 加藤
Toshihisa Sugiyama
敏久 杉山
Rentaro Kuroki
錬太郎 黒木
Yoshimitsu Henda
良光 辺田
Kazuhiko Shiratani
和彦 白谷
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Original Assignee
Toyota Motor Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 内燃機関の浮遊微粒子を捕集するフィルタが
目詰まりした場合にも、該フィルタに過大な力が加わる
ことを回避する。 【解決手段】 内燃機関の排気ガス中の浮遊微粒子をフ
ィルタを用いて捕集する。該フィルタに捕集されている
浮遊微粒子の捕集量が、所定の許容値を越えているか否
かを判断して、所定の許容値を超えている場合には、排
気ガスの一部をフィルタの上流側から吸気側に還流され
る排気ガスの還流量を増量する。内燃機関には、排気管
内から吸気管内に排気ガスの一部を還流させるための還
流通路と、還流を制御するための排気ガス還流弁とが設
けられており、かかる排気ガス還流弁を制御することで
還流量を増量させることができる。こうすれば、フィル
タの捕集量が許容値を超える場合でも、フィルタ上流の
排気ガス圧力の上昇が抑制され、フィルタに過大な力が
加わることを回避することができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、内燃機関の排気
ガスに含まれる浮遊微粒子を浄化する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】内燃機関、特にディーゼル機関の排気ガ
ス中には、黒煙(スス)などの浮遊微粒子が含まれてお
り、大気の汚染を防ぐために、排出される浮遊微粒子の
総量を低減させることが強く要請されている。また、燃
焼室内に直接ガソリンを噴射する方式の、いわゆる筒内
噴射ガソリン機関からも、運転条件によっては排気ガス
とともに浮遊微粒子が排出される場合があるために、同
様の要請が存在する。
【0003】これら内燃機関から排出される浮遊微粒子
を大幅に低減可能性な技術として、機関の排気通路中に
耐熱性のフィルタを設け、排気ガスとともに排出される
浮遊微粒子を該フィルタで捕集する技術が提案されてい
る。
【0004】かかる方法を用いて排気ガス中の浮遊微粒
子を捕集すれば、大気に排出される浮遊微粒子を大幅に
低減することが可能となるが、捕集した微粒子は何らか
の方法で処理してやらなければならない。捕集した浮遊
微粒子を処理する代表的な手法としては、電気ヒータや
バーナなどの補助的手段を用いて、捕集した浮遊微粒子
を定期的に燃焼させる技術(特開平5−296027
号)や、機関の排気ガス温度を意図的に上昇させること
により、浮遊微粒子を燃焼させる技術(特開2000−
161044号)等が提案されている。これら技術を用
いれば、捕集した浮遊微粒子を比較的簡便に処理するこ
とができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、捕集した浮遊
微粒子が、何らかの要因で完全には燃焼しなかった場
合、燃え残った微粒子の堆積によりフィルタが目詰まり
するおそれがある。あるいは、機関の異常等、何らかの
要因で浮遊微粒子の排出量が急増した場合にも、フィル
タの目詰まりが発生するおそれがある。フィルタが目詰
まりすると、機関性能を低下させるだけでなく、フィル
タに機関の排気圧力による過大な力が加わっるおそれが
あるという問題があった。
【0006】本発明は、従来技術における上述の課題を
解決するためになされたものであり、たとえ何らかの要
因でフィルタが目詰まりした場合にも、フィルタに過大
な力が加わることを回避可能な技術を提供することを目
的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段およびその作用・効果】上
述の課題の少なくとも一部を解決するため、本発明の排
気ガス浄化装置は次の構成を採用した。すなわち、排気
ガスの一部を排気通路から吸気通路に還流させる還流通
路と、該還流通路上に設けられて該排気ガスの還流を制
御する排気ガス還流弁とを備えた内燃機関に適用され、
該排気ガス中の有害物質を浄化する排気ガス浄化装置で
あって、前記排気ガスの一部が前記還流通路に流入する
位置よりも下流側の前記排気通路内に設けられて、該排
気ガスに含まれる浮遊微粒子を捕集する捕集フィルタ
と、前記捕集フィルタの前記浮遊微粒子の捕集量が所定
の許容値を越えているか否かを判断する捕集量判断手段
と、前記浮遊微粒子の捕集量が前記所定の許容値を超え
ている場合に、前記排気ガス還流弁を制御して前記排気
ガスの還流量を増量する排気ガス還流弁制御手段とを備
えることを特徴とする。
【0008】また、上記の排気ガス浄化装置に対応する
本発明の排気ガスの浄化方法は、排気ガスの一部を排気
通路から吸気通路に還流させる還流通路と、該還流通路
上に設けられて該排気ガスの還流を制御する排気ガス還
流弁とを備えた内燃機関に適用され、該排気ガス中の有
害物質を浄化する排気ガス浄化方法であって、前記排気
ガスの一部が前記還流通路に流入する位置よりも下流側
の前記排気通路内に設けた捕集フィルタを用いて、該排
気ガスに含まれる浮遊微粒子を捕集するとともに、前記
捕集フィルタの前記浮遊微粒子の捕集量が所定の許容値
を越えているか否かを判断し、前記浮遊微粒子の捕集量
が前記所定の許容値を超えている場合に、前記排気ガス
還流弁を制御して前記排気ガスの還流量を増量させるこ
とを特徴とする。
【0009】かかる排気ガス浄化装置、および排気ガス
の浄化方法においては、前記捕集フィルタ上の前記浮遊
微粒子の捕集量が所定の許容値を超えている場合に、前
記排気ガス還流弁を制御して排気ガスの還流量を増量さ
せる。前記還流通路は該捕集フィルタの上流側で排気通
路と接続されているので、排気ガスの還流量が増加すれ
ば、その分だけ捕集フィルタ上流側の排気管内圧力が低
下する。このため、該浮遊微粒子の捕集量が所定の許容
値を超えた場合でも、排気圧力による過大な力がフィル
タにかかるおそれを回避することができる。
【0010】また、かかる方法では、フィルタ上流から
吸気管内に排気ガスを還流させることによって、捕集フ
ィルタ前後の圧力差を減少させているために、浮遊微粒
子を含んだ排気ガスが大気に放出されることがない。こ
のため、例えば、捕集フィルタの上流側から下流側に排
気ガスの一部をバイパスさせるといった方法のように、
浮遊微粒子を大気に放出せずに済むので好ましい。
【0011】加えて、排気ガスの還流量を増加させれ
ば、一般に、排気ガス温度が上昇するので、捕集されて
いる浮遊微粒子の燃焼をそれだけ促進させることができ
る。更に、内燃機関に設けられた還流通路と排気ガス還
流弁とを利用することで、排気ガス浄化装置の構造を簡
素なものとすることが可能となる。
【0012】上記の排気ガス浄化装置においては、前記
捕集フィルタとして、次のような捕集フィルタを用いて
もよい。すなわち、前記排気ガス中の浮遊微粒子および
炭化水素系化合物を、該排気ガス中の酸素と接触可能に
分散して捕集することにより、該捕集フィルタに流入す
る温度が該浮遊微粒子の可燃温度よりも低温である排気
ガスを用いて、該捕集した炭化水素系化合物と浮遊微粒
子とを燃焼させる耐熱性濾材を備えた捕集フィルタを用
いることもできる。
【0013】かかる捕集フィルタを用いれば、捕集した
浮遊微粒子を燃焼させるために特別な処理を行うことな
く、自然に燃焼させることが可能であり、簡素な排気ガ
ス浄化装置を構成可能という利点がある。従って、上述
した本願発明の排気ガス浄化装置に、このような捕集フ
ィルタを組合せれば、排気ガス浄化装置が複雑化するこ
とがないので好適である。
【0014】上述の排気ガス浄化装置においては、前記
捕集フィルタを内燃機関の燃焼室毎に設けることとして
もよい。あるいは前記捕集フィルタを内燃機関の排気弁
毎に設けることとしてもよい。
【0015】捕集フィルタを燃焼室毎に、あるいは排気
弁毎に設けることとすれば、捕集フィルタを高温の排気
ガス雰囲気中で用いることが可能となり、捕集した浮遊
微粒子を容易に燃焼させることが可能となるので好まし
い。また、燃焼室毎あるいは排気弁毎に捕集フィルタを
設けることによるレイアウト上の制約から、捕集フィル
タの容積が制限される場合でも、本願発明の排気ガス浄
化装置においては、フィルタに過大な力が加わるおそれ
がないので好適である。
【0016】上述の排気ガス浄化装置においては、前記
捕集フィルタの上流側排気通路内での圧力と、下流側排
気通路内での圧力とに基づいて、前記浮遊微粒子の捕集
量が前記所定の許容値を超えているか否かを判断するこ
ととしてもよい。
【0017】捕集フィルタ上の浮遊微粒子の捕集量が所
定の許容値を超えれば、該捕集フィルタ前後の圧力差が
増大するので、上流側での圧力と下流側での圧力とに基
づいて判断すれば、捕集フィルタに過大な力が加わるこ
とを確実に回避することが可能となる。
【0018】上述の排気ガス浄化装置においては、前記
内燃機関を所定条件で運転しているときの前記捕集フィ
ルタの上流側における排気通路内圧力に基づいて、前記
浮遊微粒子の捕集量が前記所定の許容値を超えているか
否かを判断することとしてもよい。
【0019】一定の条件で内燃機関を運転している場
合、前記捕集フィルタ上の浮遊微粒子の捕集量が許容値
を超えていれば、該捕集フィルタ上流での排気管内圧力
は増加する。従って、所定の運転条件における該捕集フ
ィルタ上流の排気管内圧力を検出することで、捕集した
浮遊微粒子が所定の許容量を超えているか否かを簡便に
検出することができるので好適である。
【0020】上述の排気ガス浄化装置においては、前記
浮遊微粒子の捕集量が所定の許容値を超えている場合
に、前記排気ガス還流弁を所定開度まで開くことによっ
て、前記排気ガスの還流量を増量することとしても良
い。あるいは、内燃機関の運転条件に応じた所定開度ま
で、該排気ガス還流弁を開くことによって、該排気ガス
の還流量を増量することとしても良い。
【0021】排気ガスの還流弁を所定開度まで開くこと
とすれば、排気ガスの還流量を簡便に増量させることが
可能となり、また、内燃機関の運転条件に応じた所定開
度まで開くこととすれば、排気ガスの還流量を運転条件
に応じて適切に制御することが可能となるので好適であ
る。
【0022】上述の排気ガス浄化装置においては、前記
還流通路と、前記排気ガス還流弁と、前記捕集フィルタ
とを、前記内燃機関の燃焼室毎に設けてもよい。各燃焼
室毎に設けられた各々の捕集フィルタについて、捕集量
が所定の許容値を越えているか否かを判断するととも
に、該捕集量が所定の許容値を越えていると判断した燃
焼室の排気ガス還流弁を制御して、該燃焼室の排気ガス
還流量を増量する。
【0023】こうすれば、フィルタ上に捕集された浮遊
微粒子が許容量を超えている燃焼室についてのみ、排気
ガスの還流量を増量させることができるので好適であ
る。
【0024】
【発明の実施の形態】本発明の作用・効果をより明確に
説明するために、次のような順序に従って、本発明の実
施例を説明する。 A.第1実施例: A−1.装置構成: A−1−1.エンジンの構成: A−1−2.エンジン制御の概要: A−1−3.パティキュレートフィルタの概要: A−2.フィルタ保護処理: A−3.変形例: B.第2実施例: B−1.装置構成: B−2.フィルタ保護処理:
【0025】A.第1実施例: A−1.装置構成:以下、本発明の排気ガス浄化装置
を、ディーゼルエンジンに適用した実施例について説明
する。もちろん、ディーゼルエンジンに限らず、燃料を
シリンダ内に直接噴射する方式のガソリンエンジンな
ど、他の内燃機関に適用することもできる。また、本発
明は、車両や船舶搭載用あるいは定置用などのあらゆる
内燃機関に適用することが可能である。
【0026】A−1−1.エンジンの構成:図1は、第
1実施例の排気ガス浄化装置を装着したディーゼルエン
ジン10の概略構成を示した説明図である。ディーゼル
エンジン10は、いわゆる4気筒エンジンであり、#1
ないし#4の4つの燃焼室を有している。各燃焼室には
吸気管12を介して空気が供給され、各燃焼室に設けら
れた燃料噴射弁14から燃料が噴射されると、燃焼室内
で空気と燃料とが燃焼して、排気管16から排気ガスが
排出される。
【0027】排気管16の途中には、過給器20が設け
られている。過給器20は、排気管16内に設けられた
タービン21と、吸気管12内に設けられたコンプレッ
サ22と、タービン21とコンプレッサ22とをつなぐ
シャフト23とから構成されている。燃焼室から排出さ
れた排気ガスが過給器20のタービン21を回すと、シ
ャフト23を介してコンプレッサ22が回転し、空気を
圧縮して各燃焼室内に供給する。本実施例の過給器20
にはアクチュエータ70が設けられており、タービン2
1に排気ガスが流入する部分の開口面積を変更すること
が可能となっている。排気ガス流量に応じて開口面積を
適切に制御することで、過給器20の性能を向上させる
ことができる。コンプレッサ22の上流側にはエアクリ
ーナ26が設けられており、コンプレッサ22はエアク
リーナ26から取り入れた空気を圧縮して燃焼室内に供
給する。コンプレッサ22で圧縮すると空気の温度が上
昇するので、コンプレッサ22の下流には空気を冷却す
るためのインタークーラ24が設けられていて、圧縮し
た空気はインタークーラ24で冷却された後に、燃焼室
内に供給される。
【0028】タービン21の上流側の排気管16内に
は、#1ないし#4の各燃焼室毎にパティキュレートフ
ィルタ100が設けられている。パティキュレートフィ
ルタ100は、排気ガス中に含まれる浮遊微粒子と炭化
水素系化合物とを捕集するとともに、該炭化水素系化合
物の反応熱を利用して、捕集した浮遊微粒子を比較的低
温の排気ガス中で燃焼させることができる。パティキュ
レートフィルタ100については後述する。
【0029】各パティキュレートフィルタ100の上流
側の排気管16と吸気管12とは、EGR通路60でつ
ながっており、排気ガスの一部を吸気管12内に導入可
能となっている。EGR通路60に設けられたEGR弁
62の開度を調整することで、吸気管12内に導入する
排気ガス量を制御することができる。
【0030】燃料供給ポンプ18および燃料噴射弁11
4は、エンジン制御用ECU30の制御のもとで、適切
な量の燃料を適切なタイミングで燃焼室内に噴射する。
【0031】エンジン制御用ECU30は、エンジン回
転速度Neやアクセル開度θacといったエンジンの運
転条件を検出し、運転条件に応じて燃料供給ポンプ18
や燃料噴射弁14、EGR弁62、過給器20のアクチ
ュエータ70などを適切に制御する。また、エンジン制
御用ECU30は、圧力センサ64,66によって、パ
ティキュレートフィルタ100の上流側と下流側のそれ
ぞれの位置での排気管内圧力を検出している。
【0032】A−1−2.エンジン制御の概要:図2
は、エンジン制御用ECU30が行うエンジン制御ルー
チンの概要を示すフローチャートである。かかる制御ル
ーチンは、エンジンに始動用キーが挿入されて電源が
「オン」状態になると開始される。
【0033】エンジンに挿入されたキーが始動位置まで
回されたことを検出すると、エンジン制御用ECU30
はエンジン始動制御を開始する(ステップS10)。か
かる処理では、スタータモータでエンジンをクランキン
グしつつ、適切なタイミングで燃料を噴射してエンジン
を始動させる。エンジンの始動に際しては、吸気温度や
エンジン水温を検出し、エンジンの始動が困難なほど温
度が低い場合には、吸入空気や燃焼室をヒータで適宜加
熱する。噴射した燃料が燃焼室内で燃焼すると、大きな
トルクが発生してエンジン回転速度が上昇していき、エ
ンジン制御用ECU30は、エンジン回転速度が所定の
回転速度に達したことを検出してエンジン始動制御を終
了する。
【0034】エンジンの始動制御が終了すると、次はエ
ンジン運転条件を検出する(ステップS20)。エンジ
ン運転条件を規定する主なパラメータは、エンジン回転
速度Neおよびアクセル開度θacであり、その他の補
助的なパラメータとして、吸入空気温度やエンジン冷却
水温、燃料温度、吸気圧力などを使用する。ステップS
20ではこれらパラメータを検出する。エンジン回転速
度Neは、エンジンのクランクシャフトに装着されたク
ランク角センサ32によって検出することができる。ま
た、アクセル開度θacは、アクセルペダルに装着され
たアクセル開度センサ34によって検出する。
【0035】エンジン運転条件を検出すると、燃料噴射
制御を開始する(ステップS30)。燃料噴射制御で
は、エンジン回転速度Neおよびアクセル開度θacに
基づいて、基本となる燃料噴射量および燃料噴射タイミ
ングを算出し、この値に、吸入空気温度や、エンジン冷
却水温、燃料温度等の影響を終了した補正を加えること
により、エンジン運転条件に最適な燃料噴射量および燃
料噴射タイミングを算出して、燃料供給ポンプ18およ
び燃料噴射弁14を制御する。エンジン制御用ECU3
0に内蔵されたROMには、基本燃料噴射量および基本
燃料噴射タイミングが、エンジン回転速度Neおよびア
クセル開度θacに対する2次元マップとして記憶され
ている。また、吸入空気温度やエンジン冷却水温などの
各種の補正係数も、エンジン制御用ECU30内のRO
Mにマップとして記憶されている。エンジン制御用EC
U30は、これらマップを参照して、基本となる燃料噴
射量および噴射タイミング、各種補正係数を取得し、エ
ンジン運転条件に最適な燃料噴射量および燃料噴射タイ
ミングを算出する。
【0036】燃料噴射制御を終了すると、続いてEGR
制御を開始する(ステップS40)。EGRとは、Ex
haust Gas Recirculation(排
気ガス再循環装置)の略語であって、排気ガス中に含ま
れる窒素酸化物の濃度を減少させるために、排気ガスの
一部を吸気管内に意図的に戻してやることを言う。排気
ガスの一部を吸気に還流させれば、燃料の燃焼速度が低
下するので燃焼最高温度が低くなって排気ガス中の窒素
酸化物の濃度を減少させることができるが、反面、排気
ガスの還流量が多くなると燃焼が不安定になる傾向があ
る。このため、エンジンの運転条件に応じて、排気ガス
の還流量が最適となるように制御してやる必要がある。
EGR制御ではこのような制御を行う。
【0037】図3は、EGR制御処理の流れを示すフロ
ーチャートである。EGR制御処理を開始すると、先ず
初めにパティキュレートフィルタ100の上流側および
下流側に設けた圧力センサ64,66(図1参照)の出
力から、フィルタ前後の差圧dPを検出する(ステップ
S100)。
【0038】続いて、フィルタ前後差圧の許容差圧dP
cと、復帰差圧dPrとを取得する(ステップS10
2)。復帰差圧dPrとは、後述するフィルタ保護処理
を終了するか否かの判断基準となる圧力値である。許容
差圧dPcおよび復帰差圧dPrは、それぞれエンジン
回転速度Neとアクセル開度θacとに対するマップの
形式で、エンジン制御用ECU30内のROMに記憶さ
れている。エンジン制御用ECU30は、かかるマップ
を参照することにより、前述のエンジン制御ルーチンで
検出したエンジン回転速度Neおよびアクセル開度θa
cに対応する許容差圧dPcおよび復帰差圧dPrの値
を取得する。
【0039】尚、本実施例においては、許容差圧dPc
あるいは復帰差圧dPrは、マップを用いて、エンジン
運転条件に応じた最適な値が設定されているものとして
いる。しかし、浮遊微粒子が堆積してフィルタが目詰ま
りし始めると、フィルタ前後差圧は急激に増加するの
で、許容差圧dPcあるいは復帰差圧dPrの値を、エ
ンジン運転条件によらず一定値とすることも可能であ
る。
【0040】次に、フィルタ前後の差圧dPと許容差圧
dPcとの大小関係を比較する(ステップS104)。
差圧dPが許容差圧dPcよりも大きい場合は、パティ
キュレートフィルタ100に排気ガス中の浮遊微粒子が
異常に堆積しているものと考えられる。そこで、フィル
タ前後の圧力差でパティキュレートフィルタ100に過
大な力がかかることを回避すべく、フラグFをセットし
てから(ステップS106)、フィルタ保護処理を実行
する(ステップS108)。フィルタ保護処理の内容に
ついては後ほど詳述するが、大まかには、EGR弁62
の弁開度を増加させて、吸気側に還流させる排気ガス量
を増加させる処理を行う。かかる処理を行えば、フィル
タ上流側の排気が圧力が減少するので、フィルタに大き
な差圧dPがかかってパティキュレートフィルタ100
に過大な力がかかるおそれを回避することができる。加
えて、後述する理由から、EGR弁62の開度を増加さ
せることにより、フィルタに堆積した浮遊微粒子を燃焼
させて、フィルタ前後の差圧dPを許容差圧dPc以下
の正常範囲内に回復させることができる。
【0041】差圧dPが許容差圧dPcよりも小さい場
合には、フラグFがセットされているか否かを判断する
(ステップS110)。すなわち、フィルタ前後の差圧
dPが許容差圧dPcを越えている場合(ステップSS
104:no)、フィルタ保護処理によりEGR弁62
が更に開弁されるので、その結果としてフィルタ前後の
差圧dPが直ちに減少する。このことから、フィルタ前
後差圧dPが許容差圧dPcより小さな値となっている
場合でも、フラグFがセットされていれば、EGR弁6
2開弁が増加したために一時的に前後差圧dPが減少し
ている場合が生じ得る。このような場合、EGR弁62
の開度を戻すと、直ぐにフィルタ前後差圧dPが許容差
圧Pcを越えてしまう。そこで、フラグFがセットされ
ているか否かを判断し、フラグFがセットされている場
合(EGR弁62の開度が正常値よりも大きな値となっ
ている場合)は、フィルタ前後差圧dPを復帰差圧dP
rと比較するのである(ステップS112)。尚、復帰
差圧dPrは許容差圧dPcよりも小さな値に設定され
ている。
【0042】前後差圧dPと復帰差圧dPrとを比較し
た結果、前後差圧dPが復帰差圧dPrよりも小さな値
まで減少していない場合には(ステップS112:n
o)、後述するフィルタ保護処理(S108)を継続す
る。これに対して、フィルタ前後差圧dPが復帰差圧d
Prよりも小さな値となっている場合には(ステップS
112:yes)、EGR弁62の開度を正常値に戻し
てもフィルタ前後差圧dPは許容差圧dPcを越えるこ
とはないと判断して、EGR弁開度をエンジン運転条件
に応じた最適値に設定する(ステップS114)。エン
ジン制御用ECU30内のROMには、エンジン回転速
度Neとアクセル開度θacに対するマップとしてEG
R弁の最適開度が予め記憶されている。ステップS11
4においては、かかるマップを参照して、エンジン運転
条件に応じた最適なEGR弁開度を設定する。エンジン
制御用ECU内のメモリには、EGR弁62の目標開度
を格納する所定のアドレスが設けられており、設定した
EGR弁開度はかかるアドレスに書き込まれる。こうす
ることによりエンジン制御用ECU30は、必要に応じ
ていつでも、EGR弁の制御目標開度を取得することが
可能となっている。こうしてEGR目標開度を設定した
後、フィルタ保護処理を終了したことに対応して、フラ
グFをリセットしておく(ステップS116)。
【0043】一方、フィルタ前後差圧dPが許容差圧d
Pcよりも小さく(ステップS104:yes)、か
つ、フラグFがセットされていない場合(ステップS1
10:no)は、パティキュレートフィルタ100に堆
積している浮遊微粒子は、正常範囲内と考えられる。そ
こで、EGR弁62の目標開度を、エンジン運転条件に
応じてマップに定められる最適値に設定して(ステップ
S114)、フラグFをリセットする(ステップS11
6)。
【0044】尚、ここでは、圧力センサ64,66を用
いてフィルタ前後の圧力を検出し、フィルタ前後差圧d
Pを算出するものとして説明するが、必ずしもフィルタ
前後での圧力値を検出せずともよい。例えば、フィルタ
前後の圧力差で接点が閉じるような圧力スイッチを複数
種類設けておき、いずれの接点が閉じているかによっ
て、フィルタ前後差圧を検出しても良い。
【0045】あるいは、フィルタ上流にのみ圧力センサ
を設けておき、エンジンを所定条件で運転しているとき
にフィルタ上流の圧力を検出しても良い。フィルタ前後
の圧力差が大きくなれば、それに伴ってフィルタ上流の
圧力も増加する。このことから、所定運転条件でフィル
タ上流の圧力が増加したことを検出することによって、
フィルタ前後差圧の増加を検出することも可能である。
【0046】以上のようにしてEGR制御処理を終了し
たら、図2に示したエンジン制御ルーチンに復帰する。
次いで、エンジンに挿入されている始動用キーが「オ
フ」位置まで戻されているか否かを検出し(ステップS
50)、「オフ」位置まで戻されていなければ、再びス
テップS20に戻って続く一連の処理を繰り返す。エン
ジン制御用ECU30は、始動用キーが「オフ」位置に
戻されるまで、上述した処理を繰り返す。その結果、エ
ンジンは運転条件の変化に応じて、常に最適に制御され
ることになる。
【0047】A−1−3.パティキュレートフィルタの
概要:図4は、排気管16に装着されているパティキュ
レートフィルタ100の外観形状を示す斜視図である。
理解を容易にするために、一部分の断面をとって内部構
造を拡大して表示している。パティキュレートフィルタ
100は、円筒状のケース102と、ケース102内に
挿入されて外周をケースに溶接されたエレメント104
とから構成されている。エレメント104は、耐熱金属
製の不織布106と同じく耐熱金属製の波板108とを
重ねて、中心棒110を芯にして円筒状に巻き付けたロ
ール構造となっている。本実施例のパティキュレートフ
ィルタ100で用いるエレメント104は、外径が約5
5mm、長さが約40mmのものを使用している。もち
ろん、これら寸法は、ディーゼルエンジンの排気量や排
気管16の内径などにあわせて、適宜変更することがで
きる。
【0048】不織布106は波板108とともに巻き付
けられているので、不織布106同士の間隔は、波板1
08によって所定の間隔に保たれており、不織布106
と波板108との間には、中心棒110の軸方向に沿っ
て多数の通路が形成されている。エレメント104の両
側には、封止板112が溶接されている。封止板112
は、不織布106と波板108との間に形成された通路
を互い違いに閉塞して、排気ガスが不織布106を通過
する構造を形成する。図5を参照して、封止板112に
より排気ガスが不織布106を通過する構造が形成され
る様子を説明する。
【0049】図5は、パティキュレートフィルタ100
の断面構造を概念的に示す説明図である。尚、図が煩雑
になることを防ぐために、図5では、波板108の表示
は省略している。図示するように、封止板112は、所
定の間隔に保たれて隣接する不織布106の間に形成さ
れる通路を、互い違いになるように閉塞する。このた
め、図5に矢印で示したように、図の左側から排気ガス
が流れてくると、封止板112で塞がれていない通路に
一旦は流入するが、通路の出口側は封止板112で塞が
れている。そこで排気ガスは、図中に太い矢印に示すよ
うに、通路側面を構成する不織布106を通って、出口
側が塞がれていない通路に抜けていく。こうして排気ガ
スが不織布106を抜ける際に、排気ガス中に含まれて
いるススなどの浮遊微粒子を不織布106によって捕集
することができる。
【0050】ここで、不織布106は、細孔径分布が所
定範囲(代表的には5μmないし50μm)に設定され
ており、このため、排気ガス中の浮遊微粒子を不織布1
06の内部に3次元的に分散した状態で捕集することが
できる。このように、浮遊微粒子を3次元的に分散した
状態で捕集しておくと、捕集された微粒子がある程度の
量に達した時点で自然に着火して燃焼させることができ
る。このため、本実施例のパティキュレートフィルタ1
00は、意図的に排気ガス温度を上昇させるといった特
別な操作を行わずとも、フィルタ上に捕集された微粒子
が自然と燃焼してフィルタを再生させることができる。
本明細書中では、本実施例のパティキュレートフィルタ
100が有するこのような機能を「自然再生機能」と呼
ぶ。自然再生機能のメカニズムについては全てが解明さ
れたわけではないが、現時点で推定されるメカニズムに
ついて若干説明する。
【0051】ディーゼルエンジンの排気ガス中には、含
炭素浮遊微粒子や炭化水素系化合物が、図6に示すよう
な割合で含まれていることが分かっている。すなわち、
おおまかに言えば、ススなどの浮遊微粒子と、燃料に起
因する炭化水素系化合物と、潤滑油に起因する炭化水素
系化合物とが、ほぼ同じ割合で含まれている。ススなど
の浮遊微粒子は、酸素を含んだ排気ガス雰囲気中でも通
常は550℃以上にならないと燃焼しないと言われてい
る。これに対して、燃料や潤滑油に起因する炭化水素系
化合物は、酸素さえ供給されれば、550℃より低い温
度でも何らかの酸化反応が起こり得る。
【0052】本実施例のパティキュレートフィルタ10
0では、所定範囲の細孔径分布を有する金属不織布10
6を使用しており、排気ガス中の浮遊微粒子と炭化水素
系化合物とを、不織布内部に3次元的に分散した状態で
捕集する。このため、捕集された炭化水素系化合物の一
部は、排気ガス中の酸素が十分に供給される状態で捕集
されており、排気ガスの温度によってゆっくりとした酸
化反応(発熱反応)を開始して、フィルタ温度を次第に
上昇させる。この結果、浮遊微粒子および炭化水素系化
合物がある程度フィルタに捕集された時点でフィルタ温
度が550℃以上となり、フィルタ上の微粒子と炭化水
素系化合物とを一気に燃焼させることができるのであ
る。
【0053】図7は、本実施例のパティキュレートフィ
ルタ100が自然再生を行う様子を概念的に示した説明
図である。図7(a)は、ディーゼルエンジン10の排
気管16内にパティキュレートフィルタ100が装着さ
れている様子を模式的に示している。図7(b)は、デ
ィーゼルエンジン10を一定条件で運転しながら、フィ
ルタ前後の差圧dPおよびフィルタに流れ込む排気ガス
温度Tg、フィルタ温度Tfを計測して得られた結果を
概念的に示す説明図である。
【0054】ディーゼルエンジン10の運転を開始する
と、排気ガス温度Tgおよびフィルタ温度Tfが直ちに
上昇して定常温度に達する。このとき、実際には、フィ
ルタ温度Tfは排気ガス温度Tgよりも高い値となる
が、説明を簡明にする観点から、ここでは2つの温度に
有意な差は無いものとして説明する。
【0055】パティキュレートフィルタ100が新品の
場合、フィルタ前後の差圧dPは初めの間は次第に増加
して行くが、やがて一定値に安定する。フィルタ前後の
差圧が一定値に安定するのは、本実施例のパティキュレ
ートフィルタ100が、排気ガス中の浮遊微粒子をフィ
ルタ表面だけでなく、フィルタ内部に3次元的に捕集す
るためである。差圧が安定する値は主にフィルタの設計
緒元によって変化するが、代表的には新品時差圧の3倍
ないし4倍程度の値となることが多い。説明の便宜上、
ディーゼルエンジン10の運転を開始してから、フィル
タ前後の差圧が安定するまでの期間を、「第1期」と呼
ぶことにする。
【0056】フィルタ前後の差圧が安定した後、ディー
ゼルエンジン10をしばらく運転していると、排気ガス
温度Tgは変化しないにも関わらず、フィルタ温度Tf
が少しずつ上昇し始める。フィルタ温度Tfと排気ガス
温度Tgとの乖離は次第に大きくなり、ついにはフィル
タ温度Tfが550℃前後に達する。この間、ススなど
の浮遊微粒子および炭化水素系化合物がフィルタで捕集
されることに伴って、フィルタ前後の差圧dPはごく僅
かに増加する傾向にあるが、有意な増加量を計測できな
い場合もある。
【0057】フィルタ温度Tfが上昇して550℃付近
に達すると、フィルタに捕集されたススなどの微粒子が
燃焼し始め、捕集した微粒子が全て燃焼すると、フィル
タ温度Tfは排気ガス温度Tg付近の温度まで速やかに
低下する。排気ガス中のススなどが捕集されることによ
るフィルタ前後での差圧dPの増加を検出可能な場合に
は、フィルタ上でススなどが燃焼するときに差圧dPの
低下を検出することができる。第1期が終了した後に、
フィルタ温度Tfが排気ガス温度Tgから次第に乖離し
ていき、再び排気ガス温度Tgに低下するまでの期間を
「第2期」と呼ぶことにする。尚、第1期の期間は第2
期の期間に比べてかなり短いが、図7では表示上の理由
から、第1期の期間を第2期に対して実際よりも長く表
示している。
【0058】フィルタに捕集されたススなどが燃焼し終
わって、フィルタ温度Tfが排気ガス温度Tg付近の温
度に低下しても、しばらくすると再びフィルタ温度Tf
が上昇し始め、やがて550℃に達して捕集したススな
どが燃焼する。このように、フィルタはいつまでも第2
期の状態に保たれて、排気ガス中に含まれるススなどの
捕集と燃焼とを繰り返す。以上が、パティキュレートフ
ィルタ100の有する自然再生機能の第1の形態であ
る。
【0059】排気ガス温度Tgが高い条件では、自然再
生機能の第2の形態が発現する。図7(c)は、図7
(b)の条件に対して排気ガス温度が若干高い(代表的
には50℃)条件でディーゼルエンジン10を運転した
ときの、フィルタ温度Tfおよびフィルタ前後の差圧d
Pの推移を概念的に示した説明図である。排気ガス温度
に限らず、図7(b)の条件に対してスス濃度が若干高
くなるように変更した場合にも、同様の結果を得ること
ができる。
【0060】排気ガス温度Tgが高い条件では、図7
(c)に示すように、第2期の終了後、フィルタ温度T
fが排気ガス温度Tg付近まで低下することなく、若干
高い温度で安定する。第2期の終了後、フィルタ温度T
fが排気ガス温度Tgよりも高い温度で安定する期間を
「第3期」と呼ぶことにする。第3期では、ススなどの
捕集と燃焼とが局所的に繰り返されているか、あるいは
同時進行的に行われているものと予想される。このよう
に、自然再生機能の第2の形態では、浮遊微粒子の捕集
と燃焼とが並行して行われている。
【0061】以上説明したように、本実施例のパティキ
ュレートフィルタ100は、捕集した排気ガス中の浮遊
微粒子と炭化水素系化合物とを、特別な操作を行うこと
なく自然に燃焼させることができる。尚、本実施例のパ
ティキュレートフィルタ100では、排気ガス中の浮遊
微粒子などを金属不織布106を用いて捕集している
が、金属製の不織布に限らず、例えばコーディエライト
製のハニカムフィルタのようなセッラミックスフィルタ
などを用いても、同等の細孔径分布を有するフィルタで
あれば、本実施例のフィルタと同様の自然再生機能を発
揮するものと考えられる。
【0062】A−2.フィルタ保護処理:図8は、図3
のステップS108に示したフィルタ保護処理の流れを
示すフローチャートである。かかる処理は、図3を用い
て前述したように、EGR制御中にフィルタ前後の差圧
dPが許容差圧dPc以上であることが検出されたとき
に開始され、前後差圧dPが復帰差圧dPrよりも小さ
な値となるまで実行される。
【0063】処理を開始すると、先ず初めにEGR弁6
2の目標開度が、エンジンの運転条件に対応した最適値
となっているか否かを判断する(ステップS200)。
前述したようにEGR弁62の目標開度は、エンジン制
御用ECU30のメモリ上の所定アドレスに格納されて
いる。そこで、アドレスに格納されている目標開度が、
エンジン運転条件に対するマップとして設定されている
最適値と一致しているか否かを判断するのである。
【0064】EGR弁62の目標開度がマップに設定さ
れている最適値と一致している場合(ステップS20
0:yes)は、前回のフィルタ前後差圧の検出時に
は、検出した差圧dPが許容差圧dPcを越えていなか
ったものと考えられる(図3のEGR制御処理参照)。
そこで、カウンタnの初期化を行う(ステップS20
2)。前述したように、エンジン制御用ECU30は図
2のエンジン制御ルーチンを繰り返し実行することによ
ってエンジンの制御を行っている。カウンタnは、エン
ジン制御ルーチンの繰り返し回数を計数するために用い
られる変数である。
【0065】次いで、EGR弁62の制御目標開度を、
フィルタに過大な力がかかることを回避するための所定
開度(保護開度θem)に設定する(ステップS20
6)。保護開度θemは、エンジン運転条件に応じた最
適開度よりも大きな値に設定されており、EGR弁62
の保護開度θemに設定することで、吸気側に還流する
排気ガス量を増加させることができる。その結果、フィ
ルタ上流側の排気管内圧力が低下して、フィルタ前後差
圧dPが減少するので、フィルタ過大な力がかかること
を回避することができる。尚、EGR弁開度の目標値を
保護開度θemに設定したことに伴い、エンジン制御用
ECU30の所定アドレスのメモリ値も、保護開度θe
mに更新しておく。
【0066】また、EGR弁62の目標開度がマップの
設定値と異なっている場合(ステップS200:no)
は、前回のフィルタ前後差圧を検出時に、既に差圧dP
が許容差圧dPcを越えていてフィルタ保護処理が行わ
れたものと考えられる。そこで、カウンタnの値を
「1」だけ増加させる(ステップS204)。こうすれ
ば、カウンタnの値により、フィルタ保護処理を行いな
がらエンジン制御ルーチンが実行された回数を知ること
ができる。
【0067】EGR弁62の制御目標開度を設定した
ら、カウンタnが所定の閾値回数th1に達したか否か
を判断する(ステップS208)。カウンタnが閾値回
数th1に達していない場合は、そのままフィルタ保護
処理を抜けて、図3のEGR制御を経由した後、図2の
エンジン制御ルーチンに復帰する。
【0068】EGR弁62を保護開度θemに設定し
て、しばらくエンジンを運転していると、後述する理由
により、通常はパティキュレートフィルタ100上に堆
積した浮遊微粒子が燃焼して、フィルタ前後差圧dPが
復帰差圧dPr以下に低下する。このことから、カウン
タnが所定の閾値回数th1に達するまでは、EGR弁
62を保護開度θemに設定した状態でしばらくエンジ
ンを運転するのである。エンジン制御ルーチンが何回か
実行されている間に、フィルタ前後の差圧dPが復帰差
圧dPr以下に低下すれば、EGR弁62の開度をエン
ジン運転条件に応じてマップに定められた最適の目標開
度に復帰させる(図3参照)。
【0069】図8のフィルタ保護処理において、カウン
タnの値が所定の閾値回数th1に達した場合(ステッ
プS208:yes)は、エンジンをあまり高負荷(ア
クセル開度θacが大きな値となる条件)で運転しない
よう、注意を促すために警告ランプ72を点灯する(ス
テップS210)。次いで、カウンタnが所定の閾値回
数th2に達しているか否かを判断し(ステップS21
2)、カウンタnの値が閾値回数th2に達していない
場合(ステップS212:no)は、そのままフィルタ
保護処理を抜け、更に図3に示したEGR制御も抜け
て、エンジン制御ルーチンに復帰する。尚、閾値回数t
h2は、閾値回数th1よりも大きな値が予め設定され
ている。
【0070】警告ランプ72を点灯させるだけで、通
常、おのずから運転が慎重になって、エンジンを低負荷
(アクセル開度θacが小さな値となる条件)で運転す
る頻度が高くなる。エンジンを低負荷でしばらく運転し
ていると、後述する理由からフィルタ上に堆積した浮遊
微粒子の燃焼が促進されるので、通常はフィルタ前後差
圧dPが復帰差圧dPr以下に低下する。このことか
ら、警告ランプ72を点灯した状態で、カウンタnが所
定の閾値回数th2に達するまでもうしばらくの間、エ
ンジンを運転するのである。こうして、エンジン制御ル
ーチンが何回か実行されている間に、フィルタ前後の差
圧dPが復帰差圧dPr以下に低下すれば、EGR弁6
2の開度をエンジン運転条件に応じてマップに定められ
た最適の目標開度に復帰させる(図3参照)。警告ラン
プ72が点灯している場合は、消灯しておく。
【0071】ステップS212において、カウンタnが
閾値回数th2に達した場合は(ステップS212:y
es)、警告ランプ72の点灯に加えて、低負荷運転指
示ランプ74を点灯させる(ステップS214)。すな
わち、警告ランプ72を点灯させるだけでは、フィルタ
前後差圧dPが低下しない場合は、低負荷運転指示ラン
プ74も点灯させて、低負荷で運転するよう運転者に指
示するのである。
【0072】次いで、カウンタnが所定の閾値回数th
3に達しているか否かを判断し(ステップS216)、
カウンタnの値が閾値回数th3に達していない場合
(ステップS216:no)は、そのままフィルタ保護
処理を抜けて、エンジン制御ルーチンに復帰する。閾値
回数th3は、閾値回数th2よりも大きな値が予め設
定されている。カウンタnが閾値回数th3に達しても
依然としてフィルタ前後差圧dPが復帰差圧dPr以下
に低下しない場合(ステップS216:yes)は、何
らかの異常が発生している考えられるので、要修理ラン
プ76を点灯して運転者にエンジンの修理が必要である
旨を報知する。
【0073】以上に説明したように、図8のフィルタ保
護処理においては、EGR弁62の開度を保護開度θe
mに設定した状態で、所定期間だけエンジンを運転する
ことによって、フィルタ前後差圧dPを復帰差圧dPr
以下に低下させる。EGR弁62を保護開度θemに設
定するだけではフィルタ前後差圧dPが充分に低下しな
い場合には、更にエンジンを軽負荷で運転することで、
前後差圧dPを復帰差圧dPr以下の値に低下させる。
【0074】以下では、EGR弁62の開度を保護開度
θemに設定してエンジンを所定期間運転することによ
って、あるいはエンジンを軽負荷で運転することによっ
て、フィルタ前後差圧dPが復帰差圧dPr以下の値に
低下させることができる理由について説明する。
【0075】一般に、ディーゼルエンジンでは、排気ガ
スを吸気に還流させると排気ガス温度が上昇する。これ
は、次の理由による。燃焼室内に供給した燃料を空気と
ともに燃焼させると、燃焼熱の一部はエンジンを動かす
ための機械仕事に変換され、残りの燃焼熱は冷却水や排
気ガスの温度を上昇させるために使用される。ここで、
吸気に高温の排気ガスを還流させれば、燃焼室に供給さ
れる吸気の温度が上昇するので、その分だけ排気ガスの
温度も高くなる。高温になった排気ガスを吸気に還流さ
せれば、排気ガス温度は更に上昇する。すなわち、EG
Rを行って排気ガスの一部を吸気に還流させることによ
り、EGRを行わなければ排気ガスとともに捨てられる
燃焼熱の一部が、排気から吸気に戻って再び排気される
ループの中に次第に蓄積されていき、その結果、排気ガ
ス温度が上昇するのである。排気ガスの還流量が多くな
れば、それだけ排気ガスの温度が上昇する度合いも大き
くなる。
【0076】また、本実施例のパティキュレートフィル
タ100は、前述したように、排気ガス中の浮遊微粒子
と炭化水素系化合物とを、金属不織布内に3次元的に分
散した状態で捕集し、捕集した炭化水素系化合物を排気
ガスで加熱することで、炭化水素系化合物のゆっくりと
した酸化反応を開始させ、かかる反応を前駆反応として
浮遊微粒子と炭化水素系化合物とを燃焼させている。捕
集した浮遊微粒子や炭化水素系化合物が正常に燃焼して
いれば、フィルタ前後の差圧dPが許容差圧dPcを越
えることはない。フィルタ前後差圧dPが許容差圧dP
cを越えている場合は、捕集した浮遊微粒子が正常に燃
焼していないと考えられる。そこで、排気ガスの還流量
を増やして排気ガス温度を上昇させてやれば、フィルタ
上に捕集されている炭化水素系化合物の酸化反応を促進
し、延いては、捕集されている浮遊微粒子や炭化水素系
化合物の燃焼を促進することができる。以上のような理
由から、EGR弁62の開度を、エンジン運転条件に応
じた最適値からフィルタ保護開度θemに増加させるこ
とで、フィルタに堆積している浮遊微粒子や炭化水素系
化合物を燃焼させることができるのである。
【0077】次に、エンジンを軽負荷条件で運転するこ
とによって、フィルタ前後差圧dPを減少させることが
できる理由について説明する。ディーゼルエンジンの負
荷は、通常、燃焼室に供給する燃料量によって制御され
ている。エンジンの負荷をあげる場合には燃料量を増加
させ、逆に、負荷を低下させる場合には燃料量を減少さ
せる。燃料量が減少すれば燃焼に必要な酸素量も減少す
るので、使われずに排気ガスとして排出される酸素量は
増加して、排気ガス中の酸素濃度が上昇する。酸素濃度
が高くなれば、フィルタ上に捕集されている浮遊微粒子
や炭化水素系化合物の燃焼をそれだけ促進することがで
きる。このような理由から、エンジンを軽負荷条件で運
転すると、フィルタ上に捕集されている浮遊微粒子など
が燃焼するために、フィルタ前後差圧dPの値を低下さ
せることができるのである。
【0078】以上に説明したように、フィルタ前後差圧
dPが許容差圧dPcを越えた場合に、上述のフィルタ
保護処理を実行すれば、フィルタ前後の圧力差によって
パティキュレートフィルタ100に過大な力が加わるこ
とを回避することができる。加えて、フィルタ上に堆積
している浮遊微粒子などを燃焼させることができるの
で、フィルタ前後差圧dPが正常値に低下し、パティキ
ュレートフィルタ100の交換などを要することなくそ
のまま使用を継続することが可能となる。
【0079】A−3.変形例:上述した第1実施例のフ
ィルタ保護処理には、種々の変形例が存在する。以下、
これら変形例について簡単に説明する。
【0080】上述した第1実施例のフィルタ保護処理で
は、EGR弁62の保護開度θemはエンジン運転条件
によらず一定値に設定されていた(図8のステップS2
06)。これに対して、エンジン運転条件に応じて定ま
るEGR弁62の最適開度に対して、所定値だけEGR
弁開度を増加させることもできる。かかる変形例のフィ
ルタ保護処理について、図8のフローチャートを流用し
て簡単に説明する。
【0081】変形例のフィルタ保護処理を開始すると、
初めにEGR弁62の目標開度が、エンジンの運転条件
に対応した最適値となっているか否かを判断する(図8
のステップS200相当)。EGR弁62の目標開度が
マップに設定されている最適値と一致している場合は、
前回のフィルタ前後差圧の検出時には、検出した差圧d
Pが許容差圧dPcを越えていなかったものと考えられ
る(図3のEGR制御処理参照)。そこで、カウンタn
の初期化を行う(図8のステップS202相当)。一
方、EGR弁62の目標開度がマップの設定値と異なっ
ている場合は、前回のエンジン制御ルーチンが実行され
た際に、既にフィルタ保護処理が実行されたものと考え
られるので、カウンタnの値を「1」だけ増加させる
(図8のステップS204相当)。
【0082】次いで、マップに設定されているEGR弁
62の目標開度に一定値dθを加算する(図8のステッ
プS306)。すなわち、変形例においては、エンジン
制御用ECUのメモリ上に記憶されているマップを参照
し、エンジン運転条件に応じた最適にEGR弁目標開度
を読み出して、この値に所定の一定値dθを加算した値
を、新たな目標開度とするのである。こうすれば、フィ
ルタ保護処理中のEGR弁開度も、エンジン運転条件の
違いを反映した適切な開度に設定することができる。特
に、フィルタ保護処理中にエンジンの運転条件が大きく
変動した場合でも、かかる変動を反映した適切なEGR
弁開度に設定することが可能となる。
【0083】こうしてEGR弁62の目標開度を設定し
たら、以降の処理は前述の第1実施例のフィルタ保護処
理と同様である。すなわち、カウンタnの値と所定の閾
値回数th1,th2,th3との大小関係を比較し
て、カウンタnの値に応じて、警告ランプ点灯(図8の
ステップS210相当)、低負荷運転指示(図8のステ
ップS214相当)、要修理ランプ点灯(図8のステッ
プS218相当)の各種処理を行う。
【0084】尚、上述の説明では、マップに設定されて
いるEGR弁目標開度に加算される値dθは、一定値で
あるとして説明したが、エンジン運転条件に応じた適切
な値としてもよい。すなわち、エンジン運転条件に応じ
て最適な加算値dθをマップに記憶しておき、かかるマ
ップを参照することにより最適な値dθを加算するもの
としても良い。こうすれば、エンジン運転条件に応じ
て、より適切なEGR弁開度を設定することが可能とな
る。
【0085】あるいは、フィルタ保護処理を実施時の最
適なEGR弁開度を、エンジン運転条件に対するマップ
として予め設定しておき、図8のステップS206でフ
ィルタ保護処理中に保護開度θemを設定する際には、
かかるマップを参照してEGR弁の目標開度を設定して
も良い。かかる方法によっても、エンジンの運転条件に
応じて、より適切なEGR弁開度を設定することができ
る。
【0086】また、上述した第1実施例のフィルタ保護
処理では、EGR弁62を保護開度θemに設定した状
態で、エンジン制御ルーチン(図2参照)を所定回数実
行してもフィルタ前後差圧dPが充分に低下しない場合
には、ルーチンの実行回数に応じて、警告ランプ点灯、
低負荷運転指示、要修理ランプ点灯等の各種処理を行っ
ていた。もちろん、これら処理に限らず、いわゆる排気
絞り、あるいはポストインジェクションと呼ばれる処理
を行っても良い。
【0087】排気絞りとは、排気管16内に開閉弁等を
設けておき、排気ガスの通路を絞ることによって、排気
ガス温度を上昇させる手法である。また、ポストインジ
ェクションとは、燃料を噴射するタイミングを本来のタ
イミングよりも大幅に遅らせることによって、排気ガス
温度を上昇させる手法である。図1に示したように、本
実施例では、過給器20にアクチュエータ70が設けら
れており、タービン21に排気ガスが流入する部分の開
口面積を変更することが可能となっている。そこで、過
給器20の開口面積を小さくすることによって、簡便に
排気絞りを行うことができる。また、ポストインジェク
ションに関しても、本実施例ではエンジン制御用ECU
が燃料噴射弁14および燃料供給ポンプ118を制御す
ることにより、燃料の噴射タイミングを自由に設定する
ことができるので、簡便にポストインジェクションを行
うことができる。そこで、EGR弁開度を大きくして
も、フィルタ前後差圧dPが充分に低下しない場合に
は、EGR弁開度の増大に加えて、排気絞り、あるいは
ポストインジェクションを行い、更にはこれら複数の手
法を組み合わせて用いることにより、フィルタ上に堆積
した浮遊微粒子を速やかに燃焼させることができる。
【0088】B.第2実施例:以下、第2実施例の排気
ガス浄化装置について説明する。
【0089】B−1.装置構成: A−1−1.エンジンの構成:図9は、第2実施例の排
気ガス浄化装置を装着したディーゼルエンジン90の概
略構成を示した説明図である。第2実施例のディーゼル
エンジン90は、前述の第1実施例のディーゼルエンジ
ン10に対して、フィルタ前後差圧を燃焼室毎に計測す
るとともに、EGR弁が燃焼室毎に設けられている部分
が大きく異なっている。以下、図9を参照しながら、第
2実施例のディーゼルエンジン90が第1実施例のディ
ーゼルエンジン10とは異なる部分について簡単に説明
する。
【0090】図9に示すように、第2実施例のディーゼ
ルエンジン90においても、燃焼室毎にパティキュレー
トフィルタ100が排気管16内に設けられている。第
2実施例では、フィルタ上流の排気管内圧力を計測する
4つの圧力センサ64が燃焼室毎に設けられており、各
圧力センサ64はエンジン制御用ECUに接続されてい
る。これら各気筒毎に設けられた圧力センサ64の出力
と、フィルタ下流に設けられた圧力センサ66の出力と
から、いずれの気筒のフィルタで目詰まりが発生してい
るかを検出することが可能となっている。
【0091】また、第2実施例では、排気管16のフィ
ルタ上流側と吸気管12とをつなぐEGR通路60も、
各気筒毎に独立して設けられ、これら4本のEGR通路
60にはEGR弁62が1つずつ設けられている。エン
ジン制御用ECUがこれら4つのEGR弁62を個別に
制御することで、吸気に還流させる排気ガス量を気筒毎
に独立して制御することが可能となっている。
【0092】B−2.フィルタ保護処理:図10は、第
2実施例のEGR制御処理の流れを示すフローチャート
である。第2実施例のフィルタ保護処理は、かかるEG
R制御処理において、後述する所定条件が成立した場合
に実行される。そこで、先ず、第2実施例のEGR制御
処理について簡単に説明する。
【0093】第2実施例のEGR制御処理を開始する
と、初めにエンジン運転条件に対応した許容差圧dP
c、および復帰差圧dPrを取得する(ステップS30
0)。許容差圧dPcおよび復帰差圧dPrの値は、そ
れぞれエンジン回転速度Neとアクセル開度θacとに
対するマップとして、エンジン制御用ECU30内のR
OMに記憶されている。尚、復帰差圧dPrは、許容差
圧dPよりも小さな値が設定されている。
【0094】許容差圧dPおよび復帰差圧dPrとを取
得した後、フィルタ上流側に設けた気筒毎の圧力センサ
64の出力と、フィルタ下流側の圧力センサ66の出力
とに基づいて、フィルタ前後差圧dPを各気筒毎に取得
する(ステップS302)。
【0095】次に、気筒毎に取得した前後差圧dPと許
容差圧dPcとを比較して、前後差圧dPが許容差圧d
Pcを越えている気筒については、その気筒のフラグF
をセットする(ステップS304)。こうすることによ
り、排気ガス中の浮遊微粒子が堆積してフィルタの目詰
まりが検出された気筒にはフラグFがセットされ、後述
するフィルタ保護処理において、その気筒のEGR弁6
2がマップに設定された最適値よりも大きく開かれるこ
とになる。
【0096】続いて、各気筒での前後差圧dPと復帰差
圧dPrとを比較して、フィルタ前後差圧dPが復帰差
圧dPrよりも低くなっている気筒を検出して、その気
筒のフラグFをリセットする(ステップS306)。す
なわち、フィルタの目詰まりが検出された気筒は、後述
するフィルタ保護処理によってEGR弁が最適値よりも
開かれるので、フィルタ前後差圧dPが許容差圧dP以
下に直ちに低下する。しかし、前後差圧dPが許容差圧
dPcより低くなったからといって、直ちにEGR弁開
度を最適値に戻せば、前後差圧dPは再び許容差圧dP
c以上に上昇してしまう。そこで、フィルタ前後差圧d
Pが復帰差圧dPrよりも低くなるまでEGR弁開度を
大きめの値に保つこととし、前後差圧dPが復帰差圧d
Prを下回ったことを確認してからフラグFをリセット
するのである。
【0097】その後、フラグFがセットされている気筒
の有無を判断し(ステップS308)、フラグFのセッ
トされている気筒がなければ、いずれの気筒のフィルタ
も目詰まりしていないと考えられる。そこで、気筒毎に
設けられた4つのEGR弁62の制御目標開度を設定す
る(ステップS310)。設定した目標開度は、エンジ
ン制御用ECUに内蔵されたメモリの所定アドレスに、
気筒毎に格納される。また、目標開度の値は、エンジン
運転条件に応じた最適値が、エンジン制御用ECU30
内のメモリにマップの形式で記憶されている。
【0098】フラグFのセットされている気筒が存在す
る場合は(ステップS308:yes)、フラグFのセ
ットされている気筒とセットされていない気筒とを別々
に制御することとし、先ず、フラグFのセットされてい
ない気筒については、マップに記憶されている最適なE
GR開度を目標開度として設定する(ステップS31
2)。目標開度の設定については、ステップS310と
同様である。フラグFがセットされている気筒について
は、フィルタが目詰まりしていると考えられるので、後
述するフィルタ保護処理を行う(ステップS314)。
こうして、EGR目標開度を設定し(ステップS31
0)、あるいはフィルタ保護処理を行ったら(ステップ
S314)、EGR制御処理を抜けて図2に示すエンジ
ン制御ルーチンに復帰する。
【0099】図11は、第2実施例のフィルタ保護処理
の流れを示すフローチャートである。以下、かかるフロ
ーチャートに従って第2実施例のフィルタ保護処理につ
いて説明する。
【0100】第2実施例のフィルタ保護処理を開始する
と、先ず初めにフラグFがセットされている気筒を検出
する(ステップS400)。ついで、検出した気筒のE
GR弁の目標開度が、マップに定められている最適値と
一致するか否かを判断する(ステップS402)。フラ
グFがセットされている気筒のEGR目標開度が、マッ
プに設定されている最適値と一致している場合(ステッ
プS402:yes)は、前回のフィルタ前後差圧の検
出時には、検出した差圧dPが許容差圧dPcを越えて
いなかったものと考えられるので、カウンタnの初期化
を行う(ステップS404)。カウンタnは気筒毎に設
けられている。フラグFがセットされている気筒のEG
R目標開度がマップの設定値と一致していない場合には
(ステップS402:no)、前回のフィルタ前後差圧
を検出時に、既に差圧dPが許容差圧dPcを越えてい
てフィルタ保護処理が行われたものと考えられるので、
該当する気筒のカウンタnの値を「1」だけ増加させる
(ステップS406)。
【0101】次いで、フラグFがセットされている気筒
を全て調べたか否かを判断し(ステップS408)、ス
テップS400で検出した全ての気筒について、各気筒
毎に設けられたカウンタnを適切な値に更新する。
【0102】続いて、フラグFがセットされている気筒
の数に応じて、EGR弁の制御目標開度を適切な値に設
定する。すなわち、フラグFがセットされている気筒数
を判断し(ステップS410)、気筒数に応じた保護開
度をフラグFがセットされている気筒のEGR弁制御目
標値として設定する(ステップS412〜S418)。
具体的には、フラグFセットされている気筒が1つであ
る場合は、その気筒のEGR弁の目標開度として保護開
度θem1を設定し(ステップS412)、フラグFの
セットされている気筒が2つの場合はそれら気筒のEG
R弁目標開度として保護開度θem2を設定し(ステッ
プS414)、3つの場合は保護開度θem3を、4つ
の場合は保護開度θem4を、フラグFがセットされて
いる気筒のEGR弁の制御目標開度として設定する。こ
れら制御目標開度を設定することに対応して、エンジン
制御用ECU30内に気筒毎に設けられているアドレス
の値も新たな目標制御開度の値に更新しておく。
【0103】それぞれの保護開度θem1ないしθem
4は、エンジン運転条件に応じた最適値を予めマップに
設定しておく。こうすれば、フィルタが目詰まりした気
筒のみEGR量を増加させることが可能となり、後述す
るような好ましい効果を得ることができる。尚、ここで
は、各保護開度θem1ないしθem4の値は、エンジ
ン運転条件に対するマップとして設定されているものと
して説明したが、もちろん、簡易的には、各保護開度θ
em1ないしθem4をそれぞれに適切な一定値に設定
しておいても構わない。
【0104】気筒毎のEGR弁62の制御目標開度を設
定したら、カウンタnが所定の閾値回数th1に達した
か気筒が存在するか否かを判断する(ステップS42
0)。カウンタnが閾値回数th1に達した気筒が存在
しない場合は、そのままフィルタ保護処理を抜けて、図
10に示したEGR制御に復帰する。第1実施例におい
ても前述したように、EGR量を増量した状態でエンジ
ンをしばらく運転していると、フィルタに堆積した浮遊
微粒子が燃焼して、フィルタ前後差圧dPが復帰差圧d
Pr以下に低下する。すなわち、通常であればカウンタ
nが閾値回数th1に達するまでに、フィルタ前後差圧
dPは復帰差圧dPr以下に低下する。
【0105】ところが、カウンタnが閾値回数th1に
達している気筒が存在している場合(ステップS42
0:yes)は、その気筒では何らかの理由によって、
フィルタに堆積した浮遊微粒子が充分には燃焼していな
いものと考えられる。そこで、カウンタnが閾値回数t
h1に達した気筒についてはポストインジェクションを
行って、フィルタに堆積した浮遊微粒子の燃焼を促進す
る(ステップS422)。ポストインジェクションと
は、前述したように、燃料を噴射するタイミングを本来
のタイミングよりも大幅に遅らせることによって、排気
ガス温度を上昇させる手法である。燃料の噴射タイミン
グを遅らせると、燃料の燃焼熱が機械的仕事に変換され
る割合が低下するので、その分だけ排気ガスの加熱に使
用される燃焼熱が増えることになり、排気ガス温度を上
昇させることができる。吸気絞りや排気絞りといった手
法では、特定の気筒のみの排気ガス温度を上昇させるこ
とはそれほど容易ではないが、ポストインジェクション
を行えば、その気筒の排気ガス温度のみを上昇させるこ
とができる。すなわち、堆積した浮遊微粒子の燃焼を促
進する必要のあるフィルタのみ、排気ガス温度を上昇さ
せることができるので、後述するような好ましい効果を
得ることができる。
【0106】ポストインジェクションを行いながらしば
らくの間エンジンを運転すれば、フィルタ上に堆積した
浮遊微粒子が燃焼してしまうので、通常、カウンタnが
閾値回数th2に達するまでには、フィルタの前後差圧
dPが復帰差圧dPr以下に低下する。
【0107】ところが、カウンタnが閾値回数th2に
達した気筒が存在している場合(ステップS424:y
es)、その気筒ではポストインジェクションを行って
も前後差圧dPが低下しない程の、何らかの異常事態の
発生が懸念される。そこで、カウンタnが閾値回数th
2に達した気筒が検出された場合には、要修理ランプ7
6を点灯させて、運転者にエンジンの修理が必要である
旨を報知する。
【0108】尚、第2実施例のフィルタ保護処理におい
ては、ポストインジェクションを所定期間だけ行っても
フィルタの前後差圧dPが低下しなければ、直ちに要修
理ランプ76を点灯させるものとして説明したが、もち
ろん、第1実施例のフィルタ保護処理と同様に、一旦は
警告ランプ72あるいは低負荷運転指示ランプ74を点
灯させ、それでもフィルタ前後差圧が低下しなければ要
修理ランプ76を点灯させることとしても良い。
【0109】以上に説明したように、第2実施例のフィ
ルタ保護処理においては、フィルタ前後差圧dPが許容
差圧dPcを越えた気筒についてのみ、EGR量を増加
させることができる。全気筒一斉にEGRを行う場合に
比べて、必要な気筒のみEGR量を増加させれば、全体
としてのEGR増加量を抑制することができるので、エ
ンジンの運転状態を良好に保つことができる。
【0110】また、必要な気筒のみEGRを増量すると
言うことは、とりもなおさずフィルタの正常な気筒につ
いてはエンジン運転条件に応じた最適量のEGRを行う
ことである。EGRを最適量よりも増量した気筒では、
燃焼状態が悪化し易くなるが、EGRを増量していない
気筒については良好な燃焼状態のまま保たれている。つ
まり、第2実施例のフィルタ保護処理においては、フィ
ルタが目詰まりしている気筒についてはEGR量を増量
させるが、他の気筒については安定した燃焼状態に保つ
ことができるので、エンジン全体としての運転状態がよ
り良好に保たれることになる。エンジンの運転状態が良
好に保たれれば、必要に応じて、EGR量を更に増量さ
せることも可能となり、設定の自由度を向上させること
が可能となって好ましい。
【0111】更に、ポストインジェクションと呼ばれる
手法は、噴射した燃料の燃焼熱を用いて排気ガス温度を
上昇させている手法であるため、排気ガス温度を上昇さ
せるほど、あるいはポストインジェクションで使用する
燃料量を増やすほど、機械的な仕事に変換される割合が
低下する。つまり、燃料消費効率が悪化してしまう。こ
れに対して、第2実施例のフィルタ保護処理において
は、フィルタの目詰まりしている気筒を検出して、かか
る気筒のみポストインジェクションを行うことができる
ので、ポストインジェクションに使用される燃料量が少
なくなり、それだけ燃料消費効率を向上させることが可
能となる。
【0112】以上、各種の実施例について説明してきた
が、本発明は上記すべての実施例に限られるものではな
く、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実
施することができる。
【0113】例えば、上述の実施例においては、パティ
キュレートフィルタは金属不織布を備えたであるとして
説明したが、セラミックス製のフィルタのような、他の
周知のフィルタに適用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施例の排気ガス浄化装置を適用したディ
ーゼルエンジンの構成を示す説明図である。
【図2】第1実施例の排気ガス浄化装置を適用したディ
ーゼルエンジンのエンジン制御ルーチンを示すフローチ
ャートである。
【図3】第1実施例の排気ガス浄化装置を適用したディ
ーゼルエンジンのEGR制御の流れを示すフローチャー
トである。
【図4】本実施例のパティキュレートフィルタの外観形
状および構造を示す説明図である。
【図5】本実施例のパティキュレートフィルタで排気ガ
ス中の微粒子が捕集される様子を概念的に示す説明図で
ある。
【図6】ディーゼルエンジンの排気ガス中に含まれる浮
遊微粒子や炭化水素系化合物の組成を示す説明図であ
る。
【図7】本実施例のパティキュレートフィルタが捕集し
た微粒子を燃焼する様子を概念的に示す説明図である。
【図8】第1実施例の排気ガス浄化装置を適用したディ
ーゼルエンジンで行われるフィルタ保護処理の流れを示
すフローチャートである。
【図9】第2実施例の排気ガス浄化装置を適用したディ
ーゼルエンジンの構成を示す説明図である。
【図10】第2実施例の排気ガス浄化装置を適用したデ
ィーゼルエンジンのEGR制御の流れを示すフローチャ
ートである。
【図11】第2実施例の排気ガス浄化装置を適用したデ
ィーゼルエンジンで行われるフィルタ保護処理の流れを
示すフローチャートである。
【符号の説明】
10…ディーゼルエンジン 12…吸気管 14…燃料噴射弁 16…排気管 18…燃料供給ポンプ 20…過給器 21…タービン 22…コンプレッサ 23…シャフト 24…インタークーラ 26…エアクリーナ 30…エンジン制御用ECU 32…クランク角センサ 34…アクセル開度センサ 60…EGR通路 62…EGR弁 64,66…圧力センサ 70…アクチュエータ 72…警告ランプ 74…低負荷運転指示ランプ 76…要修理ランプ 90…ディーゼルエンジン 100…パティキュレートフィルタ 102…ケース 104…エレメント 106…金属不織布 108…波板 110…中心棒 112…封止板 114…燃料噴射弁
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) B01D 46/44 B01D 46/44 F02D 21/08 F02D 21/08 L 45/00 312 45/00 312Z 314 314Z 360 360Z (72)発明者 杉山 敏久 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動 車株式会社内 (72)発明者 黒木 錬太郎 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動 車株式会社内 (72)発明者 辺田 良光 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動 車株式会社内 (72)発明者 白谷 和彦 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動 車株式会社内 Fターム(参考) 3G084 AA01 BA20 DA19 EA11 EB12 FA00 FA10 FA33 3G090 AA01 AA04 BA01 CA00 CA01 CB23 DA00 DA01 DA03 DA04 DA09 DA14 DA18 DA20 EA05 EA06 EA08 3G092 AA02 AA17 DC09 EA08 EC01 FA13 HD00Z HE01Z HF08Z 4D058 JA38 JB03 JB25 MA41 NA04 PA04 PA16 QA01 QA19 QA25 SA08

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 排気ガスの一部を排気通路から吸気通路
    に還流させる還流通路と、該還流通路上に設けられて該
    排気ガスの還流を制御する排気ガス還流弁とを備えた内
    燃機関に適用され、該排気ガス中の有害物質を浄化する
    排気ガス浄化装置であって、 前記排気ガスの一部が前記還流通路に流入する位置より
    も下流側の前記排気通路内に設けられて、該排気ガスに
    含まれる浮遊微粒子を捕集する捕集フィルタと、 前記捕集フィルタの前記浮遊微粒子の捕集量が所定の許
    容値を越えているか否かを判断する捕集量判断手段と、 前記浮遊微粒子の捕集量が前記所定の許容値を超えてい
    る場合に、前記排気ガス還流弁を制御して前記排気ガス
    の還流量を増量する排気ガス還流弁制御手段とを備える
    排気ガス浄化装置。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の排気ガス浄化装置であっ
    て、 前記捕集フィルタは、前記排気ガス中の浮遊微粒子およ
    び炭化水素系化合物を、該排気ガス中の酸素と接触可能
    に分散して捕集することにより、該捕集フィルタに流入
    する温度が該浮遊微粒子の可燃温度よりも低温である排
    気ガスを用いて、該捕集した炭化水素系化合物と浮遊微
    粒子とを燃焼させる耐熱性濾材を備えている排気ガス浄
    化装置。
  3. 【請求項3】 前記捕集フィルタが、前記内燃機関の燃
    焼室毎に設けられている請求項1記載の排気ガス浄化装
    置。
  4. 【請求項4】 前記捕集フィルタが、前記内燃機関の排
    気弁毎に設けられている請求項1記載の排気ガス浄化装
    置。
  5. 【請求項5】 請求項1記載の排気ガス浄化装置であっ
    て、 前記捕集量判断手段は、前記浮遊微粒子の捕集量が前記
    所定の許容値を超えているか否かを、前記捕集フィルタ
    の上流側排気通路内での圧力と、下流側排気通路内での
    圧力とに基づいて判断する手段である排気ガス浄化装
    置。
  6. 【請求項6】 請求項1記載の排気ガス浄化装置であっ
    て、 前記捕集量判断手段は、前記浮遊微粒子の捕集量が前記
    所定の許容値を超えているか否かを、前記内燃機関を所
    定条件で運転しているときの前記捕集フィルタの上流側
    における排気通路内圧力に基づいて判断する手段である
    排気ガス浄化装置。
  7. 【請求項7】 請求項1記載の排気ガス浄化装置であっ
    て、 前記排気ガス還流弁制御手段は、前記排気ガス還流弁を
    所定開度まで開くことによって、前記排気ガスの還流量
    を増量する手段である排気ガス浄化装置。
  8. 【請求項8】 請求項7記載の排気ガス浄化装置であっ
    て、 前記所定開度は、前記内燃機関の運転条件に応じて定ま
    る開度である排気ガス浄化装置。
  9. 【請求項9】 請求項1記載の排気ガス浄化装置であっ
    て、 前記還流通路と、前記排気ガス還流弁と、前記捕集フィ
    ルタとは、前記内燃機関の燃焼室毎に設けられており、 前記捕集量判断手段は、前記燃焼室毎に設けられた捕集
    フィルタの各々について、前記捕集量が所定の許容値を
    越えているか否かを判断する手段であり、 前記排気ガス還流弁制御手段は、前記捕集量が所定の許
    容値を越えていると判断された燃焼室の前記排気ガス還
    流弁を制御する手段である排気ガス浄化装置。
  10. 【請求項10】 排気ガスの一部を排気通路から吸気通
    路に還流させる還流通路と、該還流通路上に設けられて
    該排気ガスの還流を制御する排気ガス還流弁とを備えた
    内燃機関に適用され、該排気ガス中の有害物質を浄化す
    る排気ガス浄化方法であって、 前記排気ガスの一部が前記還流通路に流入する位置より
    も下流側の前記排気通路内に設けた捕集フィルタを用い
    て、該排気ガスに含まれる浮遊微粒子を捕集するととも
    に、 前記捕集フィルタの前記浮遊微粒子の捕集量が所定の許
    容値を越えているか否かを判断し、 前記浮遊微粒子の捕集量が前記所定の許容値を超えてい
    る場合に、前記排気ガス還流弁を制御して前記排気ガス
    の還流量を増量させる排気ガスの浄化方法。
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