JP2002114928A - 半導体超微粒子を含有する塗布組成物 - Google Patents

半導体超微粒子を含有する塗布組成物

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JP2002114928A
JP2002114928A JP2000306965A JP2000306965A JP2002114928A JP 2002114928 A JP2002114928 A JP 2002114928A JP 2000306965 A JP2000306965 A JP 2000306965A JP 2000306965 A JP2000306965 A JP 2000306965A JP 2002114928 A JP2002114928 A JP 2002114928A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 優れた吸発光能を有し、透明性と機械的強度
に優れた塗布面を形成することのできる塗布組成物を提
供する。 【解決手段】 少なくとも重合性成分、半導体超微粒子
及び溶媒を含有してなる塗布組成物。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は半導体超微粒子を含
有する塗布組成物に関する。本発明の塗布組成物は、光
を吸収する性質及び発光する性質(吸発光能)を有する
半導体超微粒子を含有するので塗布面は大きな吸発光能
を有し、該塗布面はアクリル樹脂等の高分子をマトリク
スとし該半導体超微粒子を極めて均一に分散するので、
透明性と機械的強度に優れたものとなる。本発明の塗布
組成物は沈殿を生じない長期保存安定性に優れ、しかも
例えばエタノールを主体とする溶媒を使用すれば対環境
安全性に優れたものとなる。
【0002】従って本発明の塗布組成物は、例えば、D
NAチップ等の膨大な種類の分析を基材上の微小区画に
おいて同時に行う集積分析チップの吸発光検出を目的と
する微小区画パターンの塗布形成、あるいは、吸発光ス
ペクトル形状の「指紋性」(特定判別性)を利用したク
レジットカードや紙幣など複製防止の必要のある印刷物
の真偽判定印刷等、精密な識別判定が必要な各種塗布用
途に非常に有用である。
【0003】
【従来の技術】半導体超微粒子は、その主体である半導
体結晶の量子効果による吸発光特性を有するため、新し
い光機能材料としての産業上の利用が期待されている。
かかる性質を有する超微粒子は、コロイド粒子、ナノ結
晶(Nanocrystal)、ナノ粒子(Nanop
article)、あるいは量子ドット(Quantu
m dot)等とも呼称される場合がある。
【0004】特にトリオクチルホスフィンオキシド(以
下TOPOと略)等を溶媒とした300℃以上の高温反
応により合成されるTOPO等の疎水性有機配位子を結
合した半導体超微粒子の優れた溶媒溶解性や発光特性
(例えば、量子効果による狭い半値幅と大きな発光強度
を有する発光帯)が、例えばJ.E.B.Katari
ら;J.Phys.Chem.,98巻,4109−4
117(1994)に報告されている。
【0005】かかる半導体超微粒子の溶剤溶解性を利用
して塗布面を得る方法は公知である。例えば特開200
0−81682号公報には、高分子を溶解した半導体超
微粒子溶液により塗布面を得る方法が述べられている
が、この方法では、塗布面に残留する高分子マトリクス
への半導体超微粒子の分散性あるいは相溶性が悪いた
め、該塗布面の透明性と機械的強度に問題を残してい
た。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は前記の実情に
鑑みてなされたものであり、その目的は、半導体超微粒
子の量子効果による狭い半値幅(即ち高い色純度)と大
きな発光強度を保持し、機械的強度に優れた塗布面を与
える塗布組成物の提供にある。特に、エタノールを主体
とする溶媒の使用により対環境安全性に優れ、しかも透
明性の良好な塗布面を与える塗布組成物を提供すること
を課題とした。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者は上記の現状に
鑑み、半導体超微粒子が有する有機配位子の化学構造、
半導体超微粒子の溶媒溶解性、及び半導体超微粒子を含
有する樹脂組成物について鋭意系統的な検討を行った。
その結果、半導体超微粒子溶液に重合性成分を配合し、
特に重合性有機配位子を半導体超微粒子原料として使用
し、重合工程を経て高分子マトリクスを形成させると、
吸発光性塗布面が優れた透明性と機械的強度を獲得する
ことを見出して本発明に到達した。
【0008】即ち、本発明の要旨は、(1)少なくとも
重合性成分、半導体超微粒子及び溶媒を含有してなる塗
布組成物、(2)塗布組成物中の重合性成分を重合せし
める工程を含むことを特徴とする前記の塗布組成物を使
用する塗布方法、(3)複数種の半導体超微粒子を同一
塗布面に含有させることを特徴とする前記の塗布組成物
を使用する塗布方法、(4)前記の塗布組成物により形
成される塗布面を有するシート状塗布物、及び(5)塗
布面への光照射により、該塗布面が含有する半導体超微
粒子の吸発光特性の指紋性を検出することを特徴とする
前記のシート状塗布物の塗布面検出方法、の5点に存す
る。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、本発明につきさらに詳細に
説明する。 [塗布組成物]本発明の塗布組成物は、少なくとも重合
性成分、半導体超微粒子及び溶媒を含有するものであ
る。通常、吸発光種である後述する半導体超微粒子は、
溶媒に溶解して溶液を形成している。ここで言う吸発光
とは光の吸収及び発光を意味する。ここで言う溶液と
は、半導体超微粒子を含有する溶媒液において、目視に
より濁りや固体微粒子が観察されない状態であり、具体
的には、2次粒子状に凝集構造をとっていてもよい半導
体超微粒子の数平均粒径が1〜100nmである状態を
意味する。かかる条件を満たす限りにおいて本発明の半
導体超微粒子溶液中の半導体超微粒子の分散状態に制限
はない。該数平均粒径は例えば電子顕微鏡観察や光散乱
法により測定され、好ましくは1〜70nm、更に好ま
しくは1〜40nmの範囲とする。
【0010】本発明の塗布組成物中において、後述する
半導体超微粒子は、通常0.01〜90重量%、吸発光
能、溶解性、及び溶液粘度等の塗布性の点で好ましくは
0.1〜75重量%、更に好ましくは1〜60重量%、
最も好ましくは5〜40重量%程度含有せしめる。 [塗布面]本発明の塗布組成物は後述する任意の基材上
に塗布され、必要に応じて含有溶媒の除去を行い、含有
する重合性成分の重合反応を進行させることにより、高
分子マトリクスを有する塗布面を形成するものである。
本発明におけるかかる「塗布面」とは、該塗布組成物が
接した基材の外表面上あるいは該外表面に隣接する基材
内部に集積した該塗布組成物由来の残留成分の組成物
(以下「残留組成物」と呼ぶ)が構成する部分のうち、
該塗布の目的機能(例えば吸発光能や高屈折率化等)を
発現する部分を意味する。本発明におけるかかる塗布面
中における半導体超微粒子の濃度分布に制限はなく、例
えば均一分布、塗布面の外表面から基材内部方向への濃
度勾配を持った分布、積層分布等の濃度分布形態でも構
わない。
【0011】本発明における塗布面とは、例えば樹脂シ
ート表面に互いに離れて存在する独立した複数の塗布面
であっても構わず、前記の塗布の目的機能を発現する限
りにおいてその面積に制限はない。また各塗布面は、そ
れが前記の基材の外表面上あるいは該外表面に隣接する
該基材内部のいずれに存在している場合においても、任
意の立体形状、例えば四面体や直方体等の六面体、その
他の多面体、角錐、円錐、半球、あるいは球等の幾何学
的立体形状、あるいは不定形立体形状であって構わな
い。
【0012】[溶媒]本発明の塗布組成物に使用される
溶媒に制限はないが、具体的には、トルエン、キシレ
ン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素類、テトラヒド
ロフラン(通称THF)、メチルセロソルブ、エチルセ
ロソルブ、ジエチルエーテル、ベンジルメチルエーテ
ル、1,2−ジメトキシエタン等のエーテル類、酢酸メ
チル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸ベンジル、プロピ
オン酸エチル等のカルボン酸エステル類、塩化メチレ
ン、クロロホルム、1,1,1−トリクロロエタン、s
ym−テトラクロロエチレン等のハロゲン化アルキル
類、アセトンやメチルエチルケトン等のケトン類、N,
N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムア
ミド(通称DMF)、N−メチルピロリドン(通称NM
P)等の非プロトン性アミド系溶媒、ジメチルスルホキ
シド(通称DMSO)やジブチルスルホキシド等のスル
ホキシド類、メタノール、エタノール、n−プロパノー
ル、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、イソブ
チルアルコール、tert−ブチルアルコール等の低級
アルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコ
ール、ブチレングリコール等の低級グリコール類、グリ
セリン、エリスリトール、ペンタエリスリトール、2−
エチル−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオ
ール等の多価アルコール類、あるいは水等が挙げられ
る。これらの溶媒は、必要に応じて複数種を組み合わせ
て用いても構わない。
【0013】前記したように、対環境安全性の点からこ
れら例示のうち好ましい溶媒はエタノール、n−プロパ
ノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、イ
ソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール等の
低級アルコール類、あるいは水であり、中でもエタノー
ルと水は更に好ましく、エタノールは半導体超微粒子の
溶解性の点でも最も好ましい。
【0014】かかる対環境安全性に優れる塗布組成物溶
媒は、溶解性、揮発性、塗布性等の必要に応じてエタノ
ールを主体とした混合溶媒としても構わない。かかるエ
タノールを主体とした混合溶媒中でのエタノールの含有
量は、通常40〜100重量%、好ましくは60〜10
0重量%、更に好ましくは70〜100重量%とする。
【0015】なお、後述する重合性成分のうち、常温で
液体であるものは前記で例示した溶媒と同様に用いるこ
とも可能である。 [重合性成分]本発明における「重合性」とは、任意の
重合形式における重合性を意味し、重合形式としては、
ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合、配位重
合、開環重合、縮重合等が例示されるが、特にラジカル
重合が好ましい。
【0016】本発明に用いられる重合性成分とは、重合
性を有する官能基(以下「重合性基」と呼ぶ)を化学構
造に含有する化合物質であり、その式量に制限はない。
本発明の塗布組成物における該重合性成分の割合は、後
述する半導体超微粒子を除く全重量に対して、通常1〜
100重量%、高分子マトリクスの生成効果の点で好ま
しくは10〜100重量%、更に好ましくは25〜10
0重量%、最も好ましくは40〜100重量%とする。
【0017】好適に用いられる重合性成分は比較的低分
子量のものであり、例えば、スチレン、α−メチルスチ
レン、4−クロロスチレン、4−メチルスチレン、4−
クロロメチルスチレン、4−ヒドロキシスチレン、4−
アセトキシスチレン、ビニルナフタレン、2−ビニルピ
リジン、4−ビニルピリジン等の芳香族ビニル化合物、
(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチ
ル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ベ
ンジル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリ
ル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキ
シエチル、(メタ)アクリル酸フルフリル、(メタ)ア
クリル酸N,N−ジメチルアミノエチル等の(メタ)ア
クリル酸エステル類、クロトン酸メチル、クロトン酸n
−ブチル、クロトン酸ベンジル等のクロトン酸エステル
類、(メタ)アクリル酸やクロトン酸等の不飽和共役カ
ルボン酸、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メ
タ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリ
ルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、
N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミ
ド、N−(メタ)アクリロイルモルホリン、N−イソプ
ロピル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルア
ミド類、クロトニルアミド、N−メチルクロトニルアミ
ド、N,N−ジメチルクロトニルアミド、N−クロトニ
ルモルホリン、N−イソプロピルクロトニルアミド等の
クロトニルアミド類、(メタ)アクリロニトリル、クロ
トノニトリル等のアクリロニトリル誘導体、酢酸ビニ
ル、モノクロロ酢酸ビニル、ピバル酸ビニル、酪酸ビニ
ル、2−エチルヘキサン酸ビニル等のカルボン酸のビニ
ルエステル類、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル
酸、マレイン酸ジエチル、フマル酸ジメチル、マレイン
酸のモノエチルエステル、マレイミド、N−メチルマレ
イミド、N−フェニルマレイミド等の共役不飽和ジカル
ボン酸誘導体、N−ビニルオキサゾリン、N−ビニルピ
ロリドン、N−ビニルホルムアミド等のN−ビニル化合
物等のラジカル重合性を有する化合物が挙げられ、これ
らの中にはアニオン重合性やカチオン重合性を有するも
のもあるのは公知である。また、開環重合性を有する化
合物としては、THF、プロピレンオキシド、エピクロ
ロヒドリン等の環状エーテル類、ε−カプロララクタム
等の環状アミド類、ε−カプロララクトン、γ−ブチロ
ラクトン等の環状エステル類等が例示される。
【0018】前記の重合性成分の例示のうち、好ましく
用いられるのはスチレン、p−クロロメチルスチレン、
p−アセトキシスチレン、2−ビニルピリジン、4−ビ
ニルピリジン等の芳香族ビニル化合物、アクリル酸メチ
ル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸
ベンジル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、
メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル
酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ベンジル、メタクリ
ル酸フェニル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル
等のアクリル酸やメタクリル酸の誘導体、酢酸ビニル等
のビニルエステル類、無水マレイン酸等の共役不飽和ジ
カルボン酸誘導体、N−ビニルピロリドンやN−ビニル
オキサゾリン等のN−ビニル化合物等のラジカル重合性
モノマーであり、中でもスチレン、4−ビニルピリジン
等の芳香族ビニル化合物、アクリル酸エチル、アクリル
酸ブチル、アクリル酸ベンジル、メタクリル酸メチル、
メタクリル酸エチル、メタクリル酸ベンジル、アクリロ
ニトリル等のアクリル酸やメタクリル酸の誘導体、及び
酢酸ビニル等のビニルエステル類が更に好適であり、最
も好適なのはスチレン、メタクリル酸メチル、及びアク
リロニトリルである。
【0019】また、前記の(メタ)アクリルアミド類や
(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)
アクリル酸フルフリル、(メタ)アクリル酸N,N−ジ
メチルアミノエチル、アクリロニトリル、(メタ)アク
リル酸等の親水性化合物は、親水性の塗布面を得るのに
有用である場合がある。重合性成分として架橋性多価化
合物(以下「架橋剤」と呼ぶ)を併用しても構わず、そ
の例としては、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリ
ルアミド、N,N’−エチレンビス(メタ)アクリルア
ミド、N,N’−ブチレンビス(メタ)アクリルアミ
ド、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチ
レングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリス
リトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテト
ラアクリレート等の2つ以上の(メタ)アクリロイル基
を有する化合物、アジピン酸ジビニル、(メタ)アクリ
ル酸ビニル、クロトン酸ビニル等の2官能ビニルエステ
ル類、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ジビニ
ルピリジン等の芳香族ビニル化合物等が挙げられる。か
かる架橋剤を重合性成分として併用すると、得られる塗
布面が架橋高分子マトリクスを含有するので、耐熱性、
耐溶剤性、表面硬度や弾性率等の機械的強度、酸化や光
劣化等の化学変化への耐久性等を著しく向上させる場合
がある。これらの架橋剤のうち一般的に用いられる重要
なものはジビニルベンゼン、N,N’−メチレンビスア
クリルアミド、エチレングリコールジアクリレート、ア
ジピン酸ジビニル、アクリル酸ビニル等である。かかる
架橋剤の使用量は、半導体超微粒子を除く全重合性成分
中のモル分率として、通常0.001〜5%、好ましく
は0.01〜4%、更に好ましくは0.05〜3.5
%、最も好ましくは0.1〜3%程度とする。
【0020】前記の重合性成分の重合反応を開始する目
的で、本発明の塗布組成物には、通常、適当な開始剤を
添加しておく。例えば、ラジカル重合の場合にはラジカ
ル開始剤を、アニオン重合やカチオン重合の場合には光
や熱により酸や塩基を発生する酸塩基発生剤等を添加す
る。その使用量は、例えばラジカル重合の場合のラジカ
ル開始剤の使用量は、半導体超微粒子を除く全重合性成
分の重量に対して通常0.001〜10重量%、好まし
くは0.01〜5重量%、更に好ましくは0.05〜3
重量%、最も好ましくは0.1〜2重量%程度とする。
前記のラジカル開始剤には制限はなく、例えば熱分解性
のラジカル開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル
(AIBN)等のアゾ化合物、過酸化ベンゾイルやte
rt−ブチルペルオキシド等の過酸化物等が代表的であ
るが、溶媒種によっては水溶性のラジカル発生剤、例え
ば過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸リチウ
ム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩等を使用しても構
わない。また光分解性のラジカル開始剤、例えばα−ア
ミノアセトフェノンや2−ベンジル−2−ジメチルアミ
ノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタン−1等の
アミノアセトフェノン類、の他、ベンジルジメチルケタ
ール類、グリオキシエステル類、アシルホスフィンオキ
シ類等も使用可能である。
【0021】前記した重合性成分、架橋剤、及び重合開
始剤はいずれも、必要に応じて、それぞれ複数種を混合
して用いても構わない。 [半導体超微粒子]本発明の塗布組成物が含有する半導
体超微粒子は、後述する半導体結晶を主体とし、その表
面に通常後述する有機配位子を結合したものである。特
に好ましく用いられる重合性を有する半導体超微粒子に
ついては後述する。該半導体結晶は、半導体単結晶、複
数半導体結晶組成が相分離した混晶、相分離の観察され
ない混合半導体結晶のいずれでも構わず、後述するコア
−シェル構造をとっていても構わない。
【0022】かかる半導体結晶の粒径は、重量平均粒径
として通常0.5〜20nm、光の吸収や発光等の電磁
気学的特性の点で好ましくは1〜15nm、更に好まし
くは2〜12nm、最も好ましくは2〜10nmとす
る。半導体結晶の量子効果による光吸収や発光特性はか
かる粒径により制御され、これは塗布組成物の濃縮残渣
の透過型電子顕微鏡(TEM)による観察で通常決定可
能である。
【0023】該半導体結晶の粒径分布に制限はないが、
半導体結晶の量子効果による吸発光特性を利用する場
合、かかる分布を変えることで必要とする発光波長幅を
変化させることができる。なお、かかる波長幅を狭くす
る必要がある場合には該粒径分布を狭くするが、通常、
標準偏差として±40%以内、好ましくは±30%以
内、更に好ましくは±20%以内、最も好ましくは±1
0%以内とする。この標準偏差の範囲を超えた粒径分布
の場合、量子効果による発光帯波長幅を狭くする目的を
十分に達成することが困難となる。
【0024】かかる発光帯波長幅に制限はないが、発光
帯の半値幅として通常50nm以下、好ましくは40n
m以下、さらに好ましくは35nm以下とする。かかる
半値幅が50nmよりも大きいと、本発明の塗布組成物
の特徴である発光帯の色純度と発光帯ピーク強度がいず
れも低下するので、吸発光帯のピーク波長やスペクトル
形状の精密検出を利用する後述の印刷用途への適性が大
きく損なわれる場合がある。
【0025】本発明の塗布組成物は、非常に良好に分散
した凝集していない半導体結晶を含有するので、かかる
半導体結晶の量子効果による吸発光が非線形性を有する
場合があり、かかる場合は非線形光学特性を有する塗布
面を与える塗布組成物としても有用である。前記の残留
組成物が透明性を有する場合、本発明の塗布組成物は透
明な塗布面を与える塗布組成物として有用である。ま
た、該半導体結晶の屈折率が大きい場合には、高屈折率
の塗布面を与える塗布組成物としても有用である。
【0026】本発明の塗布組成物は、複数種の半導体超
微粒子を含有していても構わず、あるいは同種の半導体
結晶からなる半導体超微粒子でも、例えば2山分布等そ
の粒径分布を任意に変化させて構わない。 [添加剤]本発明の目的達成を著しく損なわない限りに
おいて本発明の塗布組成物には、任意の添加剤、例えば
酸化防止剤、熱安定剤、あるいは光安定剤等の安定剤
類、ガラス繊維、ガラスビーズ、マイカ、タルク、カオ
リン、粘土鉱物、炭素繊維、カーボンブラック、黒鉛、
金属繊維、金属粉等のフィラー類、着色剤、紫外線吸収
剤、粘度調整剤、基材との接着性を改善する接着剤等の
添加剤類、ゴムやエラストマー等の耐衝撃性付与剤、熱
可塑性樹脂等、必要に応じて任意の添加物を混合するこ
とも可能である。以下、主な添加剤について説明を加え
る。
【0027】熱可塑性樹脂として、ポリメタクリル酸メ
チル(略称PMMA)等のアクリル酸誘導体を主体とす
るモノマーの重合体であるアクリル樹脂、ポリスチレン
等のスチレン誘導体を主体とするモノマーの重合体であ
るスチレン樹脂、あるいはビスフェノールAポリカーボ
ネート等の芳香族ポリカーボネート樹脂等の透明非晶性
樹脂を添加すると、得られる塗布面の機械的強度の点で
有利な場合がある。
【0028】本発明の塗布組成物が、特にエタノールを
主体とする溶媒を使用する場合には、粘度調整や保湿性
向上等の目的で適当な親水性高分子を添加すると実用上
好ましい場合がある。かかる親水性高分子としては、ポ
リエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、エチレ
ンオキシド−プロピレンオキシド共重合体、グリセリン
をベースにしたポリオキシエチレンオキシプロピレント
リオール(即ち、エチレンオキシドとプロピレンオキシ
ドのブロック共重合体とグリセリンの3つの水酸基がエ
ーテル結合したもの、または該共重合体がランダム共重
合体であるもの)、ビニルアセタール樹脂(ポリビニル
アルコールにホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プ
ロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド等の低級アルデ
ヒドを反応させて製造され、ポリ酢酸ビニルとポリビニ
ルアセタールとポリビニルアルコールがランダムに配列
する組成を有する)等が例示され、これらは複数種混合
して用いても良い。かかる親水性高分子の添加量は、本
発明の塗布組成物中、通常0.1〜15重量%程度とす
る。
【0029】本発明の塗布組成物に添加される着色剤と
して、顔料、染料のどちらでも使用可能である。顔料と
しては公知の有機顔料あるいは無機顔料を単独又は混合
して使用することができ、例えば、アゾ系、フタロシア
ニン系、キナクリドン系、アントラキノン系、ジオキサ
ジン系、インジゴ・チオインジゴ系、ベリノン・ベリレ
ン系、イソインドレノン系、アゾメチレンアゾ系などの
有機顔料や、カーボンブラック、マイカ、チタン白、パ
ール顔料、酸化鉄・アルミニウム粉・真鍮等金属顔料な
どの無機顔料を用いることができる。これらの顔料は通
常、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、スチレン−ア
クリル酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合
体、及びそれらの金属塩・アンモニウム塩・アミン塩な
ど、あるいはこれらを他の公知の樹脂などに練り込んで
加工顔料としておくと、塗布に混合する際に容易に分散
するので便利な場合がある。また、既に分散剤中に顔料
を練り込んである市販の加工顔料を用いてもよい。これ
らの顔料は色合いを勘案しながら単独又は混合して使用
でき、本発明の塗布組成物中、通常1〜30重量%程度
添加してもよい。染料として、モノアゾ系、ジスアゾ
系、金属錯塩型モノアゾ系、アントラキノン系、フタロ
シアニン系、トリアリルメタン系など公知のものを添加
しても良い。
【0030】本発明の塗布組成物には、アクリル樹脂粉
末、アクリル樹脂水溶液、アクリル樹脂コロイダルディ
スパージョン、アクリル樹脂エマルジョン、及び体質顔
料等をチキソトロピー性付与剤兼顔料分散剤として配合
することができる。本発明の塗布組成物を紙や木材等の
親水性基材に塗布した場合の浸透補助剤として、ジエチ
レングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリ
コールモノブチルエーテルなどのグリコールエーテルを
少量配合してもよい。
【0031】[半導体結晶の組成]前記の半導体結晶の
組成には特に制限はないが、発光能があるものや屈折率
の高いものが望ましい。具体的な組成例としては、炭
素、ケイ素、ゲルマニウム、錫等の周期表第14族元素
の単体、リン(黒リン)等の周期表第15族元素の単
体、セレン、テルル等の周期表第16族元素の単体、炭
化ケイ素(SiC)等の複数の周期表第14族元素から
なる化合物、酸化錫(IV)(SnO2)、硫化錫(II,I
V)(Sn(II)Sn(IV)S3)、硫化錫(IV)(Sn
2)、硫化錫(II)(SnS)、セレン化錫(II)
(SnSe)、テルル化錫(II)(SnTe)、硫化鉛
(II)(PbS)、セレン化鉛(II)(PbSe)、テ
ルル化鉛(II)(PbTe)等の周期表第14族元素と
周期表第16族元素との化合物、窒化ホウ素(BN)、
リン化ホウ素(BP)、砒化ホウ素(BAs)、窒化ア
ルミニウム(AlN)、リン化アルミニウム(Al
P)、砒化アルミニウム(AlAs)、アンチモン化ア
ルミニウム(AlSb)、窒化ガリウム(GaN)、リ
ン化ガリウム(GaP)、砒化ガリウム(GaAs)、
アンチモン化ガリウム(GaSb)、窒化インジウム
(InN)、リン化インジウム(InP)、砒化インジ
ウム(InAs)、アンチモン化インジウム(InS
b)等の周期表第13族元素と周期表第15族元素との
化合物(あるいはIII−V族化合物半導体)、硫化アル
ミニウム(Al23)、セレン化アルミニウム(Al2
Se3)、硫化ガリウム(Ga23)、セレン化ガリウ
ム(Ga2Se3)、テルル化ガリウム(Ga2Te3)、
酸化インジウム(In23)、硫化インジウム(In2
3)、セレン化インジウム(In2Se3)、テルル化
インジウム(In2Te3)等の周期表第13族元素と周
期表第16族元素との化合物、塩化タリウム(I)(T
lCl)、臭化タリウム(I)(TlBr)、ヨウ化タ
リウム(I)(TlI)等の周期表第13族元素と周期
表第17族元素との化合物、酸化亜鉛(ZnO)、硫化
亜鉛(ZnS)、セレン化亜鉛(ZnSe)、テルル化
亜鉛(ZnTe)、酸化カドミウム(CdO)、硫化カ
ドミウム(CdS)、セレン化カドミウム(CdS
e)、テルル化カドミウム(CdTe)、硫化水銀(H
gS)、セレン化水銀(HgSe)、テルル化水銀(H
gTe)等の周期表第12族元素と周期表第16族元素
との化合物(あるいはII−VI族化合物半導体)、硫化砒
素(III)(As23)、セレン化砒素(III)(As2
Se3)、テルル化砒素(III)(As2Te3)、硫化ア
ンチモン(III)(Sb23)、セレン化アンチモン(I
II)(Sb2Se3)、テルル化アンチモン(III)(S
2Te3)、硫化ビスマス(III)(Bi23)、セレ
ン化ビスマス(III)(Bi2Se3)、テルル化ビスマ
ス(III)(Bi2Te3)等の周期表第15族元素と周
期表第16族元素との化合物、酸化銅(I)(Cu
2O)、セレン化銅(I)(Cu2Se)等の周期表第1
1族元素と周期表第16族元素との化合物、塩化銅
(I)(CuCl)、臭化銅(I)(CuBr)、ヨウ
化銅(I)(CuI)、塩化銀(AgCl)、臭化銀
(AgBr)等の周期表第11族元素と周期表第17族
元素との化合物、酸化ニッケル(II)(NiO)等の周
期表第10族元素と周期表第16族元素との化合物、酸
化コバルト(II)(CoO)、硫化コバルト(II)(C
oS)等の周期表第9族元素と周期表第16族元素との
化合物、四酸化三鉄(Fe34)、硫化鉄(II)(Fe
S)等の周期表第8族元素と周期表第16族元素との化
合物、酸化マンガン(II)(MnO)等の周期表第7族
元素と周期表第16族元素との化合物、硫化モリブデン
(IV)(MoS2)、酸化タングステン(IV)(WO2
等の周期表第6族元素と周期表第16族元素との化合
物、酸化バナジウム(II)(VO)、酸化バナジウム
(IV)(VO2)、酸化タンタル(V)(Ta25)等
の周期表第5族元素と周期表第16族元素との化合物、
酸化チタン(TiO2、Ti25、Ti23、Ti59
等)等の周期表第4族元素と周期表第16族元素との化
合物、硫化マグネシウム(MgS)、セレン化マグネシ
ウム(MgSe)等の周期表第2族元素と周期表第16
族元素との化合物、酸化カドミウム(II)クロム(II
I)(CdCr24)、セレン化カドミウム(II)クロ
ム(III)(CdCr2Se 4)、硫化銅(II)クロム(I
II)(CuCr24)、セレン化水銀(II)クロム(II
I)(HgCr2Se4)等のカルコゲンスピネル類、バ
リウムチタネート(BaTiO3)等が挙げられる。な
お、G.Schmidら;Adv.Mater.,4
巻,494頁(1991)に報告されている(BN)75
(BF2151 5や、D.Fenskeら;Ange
w.Chem.Int.Ed.Engl.,29巻,1
452頁(1990)に報告されているCu146Se73
(トリエチルホスフィン)22のように構造の確定されて
いる半導体クラスターも同様に例示される。
【0032】これらのうち、高屈折率かつ後述する半導
体超微粒子の製造方法に適した実用的に重要なものを組
成式で示すと、例えばSnS2、SnS、SnSe、S
nTe、PbS、PbSe、PbTe等の周期表第14
族元素と周期表第16族元素との化合物、GaN、Ga
P、GaAs、GaSb、InN、InP、InAs、
InSb等のIII−V族化合物半導体、Ga23、Ga2
3、Ga2Se3、Ga2Te3、In23、In23
In2Se3、In2Te3等の周期表第13族元素と周期
表第16族元素との化合物、ZnO、ZnS、ZnS
e、ZnTe、CdO、CdS、CdSe、CdTe、
HgO、HgS、HgSe、HgTe等のII−VI族化合
物半導体、As23、As23、As2Se3、As2
3、Sb23、Sb23、Sb2Se3、Sb2Te3
Bi23、Bi23、Bi2Se3、Bi2Te3等の周期
表第15族元素と周期表第16族元素との化合物、Mg
S、MgSe等の周期表第2族元素と周期表第16族元
素との化合物であり、中でも、GaN、GaP、In
N、InP、Ga23、Ga23、In23、In
23、ZnO、ZnS、CdO、CdS等は毒性の高い
陰性元素を含まないので耐環境汚染性や生物への安全性
の点で好ましく、この観点でZnO及びZnSは更に好
ましい。また、CdSeとZnSeは安定した発光能の
点で重要である。
【0033】本発明に用いられる半導体超微粒子の主体
である半導体結晶は、例えばA.R.Kortanら;
J.Am.Chem.Soc.,112巻,1327頁
(1990)あるいは米国特許5985173号公報
(1999)に報告されているように、その半導体結晶
の発光特性を改良する目的で内核(コア)と外殻(シェ
ル)からなるいわゆるコア−シェル構造とすると、該コ
アを成す半導体結晶の量子効果による発光能が改良され
る場合があるので、本発明の塗布組成物をかかる発光能
を生かす用途に使用するのに好適な場合がある。この場
合、コアの半導体結晶構造よりもバンドギャップエネル
ギーの大きな半導体結晶構造をシェルとして起用するこ
とにより、該コア結晶の発光効率を減衰させる表面準位
や結晶格子欠陥準位等を経由するエネルギー損失を防ぐ
ことが可能な場合がある。かかるシェルに好適用いられ
る半導体結晶構造としては、コア半導体結晶のバンドギ
ャップエネルギーにもよるが、バルク状態のバンドギャ
ップが温度300Kにおいて2.0電子ボルト以上であ
るもの、例えば窒化ホウ素(BN)、砒化ホウ素(BA
s)、窒化ガリウム(GaN)やリン化ガリウム(Ga
P)等の周期表第13族元素と周期表第15族元素との
化合物(III−V族化合物半導体)、酸化亜鉛(Zn
O)、硫化亜鉛(ZnS)、セレン化亜鉛(ZnS
e)、テルル化亜鉛(ZnTe)、酸化カドミウム(C
dO)、硫化カドミウム(CdS)等の周期表第12族
元素と周期表第16族元素との化合物(II−VI族化合物
半導体)、硫化マグネシウム(MgS)、セレン化マグ
ネシウム(MgSe)等の周期表第2族元素と周期表第
16族元素との化合物等が好適に用いられる。これらの
うちより好ましいシェルとなる半導体結晶組成は、B
N、BAs、GaN等のIII−V族化合物半導体、Zn
O、ZnS、ZnSe、CdS等のII−VI族化合物半導
体、MgS、MgSe等の周期表第2族元素と周期表第
16族元素との化合物等のバルク状態のバンドギャップ
が温度300Kにおいて2.3電子ボルト以上のもので
あり、最も好ましいのはBN、BAs、GaN、Zn
O、ZnS、ZnSe、MgS、MgSe等のバルク状
態のバンドギャップが温度300Kにおいて2.5電子
ボルト以上のものである。
【0034】前記で例示した任意の半導体結晶組成に
は、必要に応じて微量のドープ物質(故意に添加する不
純物の意味)として例えばAl、Mn、Cu、Zn、A
g、Cl、Ce、Eu、Tb、Er等の元素を加えても
構わない。かかるドープ物質の添加により半導体結晶の
発光特性が大きく向上する場合がある。かかるドープ物
質の添加により好ましい効果を示す半導体結晶種として
ZnOやZnSが挙げられ、中でもZnSがこの点でも
特に好適である。特に好ましいドープ系として、前記の
米国特許5985173号にも記載のようにMn2+をド
ープしたZnSが例示される。
【0035】[半導体結晶の製造方法]前記の半導体結
晶は、従来行われている下記の半導体結晶の製造方法
等、任意の方法を使用して構わない。 (a)分子ビームエピタキシー法あるいはCVD法等の
高真空プロセス。この方法により組成が高度に制御され
た高純度の半導体超微粒子が得られるが、ホスフィンや
アルシン等の有毒気体を原料とする場合があり、且つ高
価な製造装置を要するので生産性の点で産業上の利用に
制限がある。 (b)原料水溶液を非極性有機溶媒中の逆ミセルとして
存在させ該逆ミセル相中にて結晶成長させる方法(以
下、逆ミセル法と呼ぶ)であり、例えばB.S.Zou
ら;Int.J.Quant.Chem.,72巻,4
39(1999)に報告されている方法である。汎用的
な反応釜において公知の逆ミセル安定化技術が利用で
き、比較的安価かつ化学的に安定な塩を原料とすること
ができ、しかも水の沸点を超えない比較的低温で行われ
るため工業生産に適した方法である。但し、下記のホッ
トソープ法の場合に比べて現状技術では発光特性に劣る
場合がある。 (c)熱分解性原料を高温の液相有機媒体に注入して結
晶成長させる方法(以下、ホットソープ法と呼ぶ)であ
り、例えば前記のKatariら著の文献に報告されて
いる方法である。逆ミセル法に比べて粒径分布と純度に
優れた半導体結晶が得られ、生成物は発光特性に優れ有
機溶媒に通常可溶である特徴がある。ホットソープ法に
おける液相での結晶成長の過程の反応速度を望ましく制
御する目的で、半導体構成元素に適切な配位力のある配
位性有機化合物が液相成分(溶媒と配位子を兼ねる)と
して選択される。かかる配位性有機化合物の例として
は、トリブチルホスフィン、トリヘキシルホスフィン、
トリオクチルホスフィン等のトリアルキルホスフィン
類、トリブチルホスフィンオキシド、トリヘキシルホス
フィンオキシド、トリオクチルホスフィンオキシド、ト
リデシルホスフィンオキシド等のトリアルキルホスフィ
ンオキシド類、オクチルアミン、デシルアミン、ドデシ
ルアミン、テトラデシルアミン、ヘキサデシルアミン、
オクタデシルアミン等のω−アミノアルカン類、ジメチ
ルスルホキシドやジブチルスルホキシド等のジアルキル
スルホキシド類等が挙げられる。これらのうち、トリブ
チルホスフィンオキシドやトリオクチルホスフィンオキ
シド等のトリアルキルホスフィンオキシド類やドデシル
アミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン等の
炭素数12以上のω−アミノアルカン類等が好適であ
り、中でもトリオクチルホスフィンオキシド等のトリア
ルキルホスフィンオキシド類、及びヘキサデシルアミン
等の炭素数16以上のω−アミノアルカン類は最適であ
る。 (d)前記のホットソープ法と類似の半導体結晶成長を
伴う溶液反応であるが、酸塩基反応を駆動力として比較
的低い温度で行う方法が古くから知られている(例えば
P.A.Jackson;J.Cryst.Growt
h,3−4巻,395頁(1968)等)。最近では
D.Diazら;J.Phys.Chem.B,103
巻,9854頁(1999)には、カドミウム(II)の
カルボン酸塩と硫化ナトリウムとを原料としジメチルス
ルホキシド(DMSO)を溶媒とした硫化カドミウム
(CdS)ナノ結晶の合成が例示される。
【0036】かかる液相製造方法に使用可能な半導体原
料物質としては、周期表第2〜15族から選ばれる陽性
元素を含有する物質と、周期表第15〜17族から選ば
れる陰性元素を含有する物質が挙げられる。例えば前期
のホットソープ法では、ジメチルカドミウムやジエチル
亜鉛等の有機金属類と、セレン単体をトリオクチルホス
フィンやトリブチルホスフィン等の3級ホスフィン類に
溶解させたものやビス(トリメチルシリル)スルフィド
等のカルコゲニド元素化合物とを反応させる方法が知ら
れている。なお周期表第15族元素は、例えば理化学辞
典(第4版、岩波書店、1987年)に記載の硫化ビス
マスやテルル化ビスマスのように3価の陽性元素として
も半導体を構成することが知られている。
【0037】半導体原料物質が複数種ある場合、これら
をあらかじめ混合しておいても良く、あるいはこれらを
それぞれ単独で反応液相に注入しても良い。これら原料
は、適当な希釈溶媒を用いて溶液にして使用しても構わ
ない。 [有機配位子]本発明の塗布組成物が含有する半導体超
微粒子は、その主体である前記の半導体結晶表面に有機
配位子を通常結合している。かかる有機配位子は、塗布
溶媒への該半導体結晶の溶解性を向上させる効果、重合
性を半導体超微粒子に付与する効果、あるいは前記の残
留組成物中での該半導体結晶の分散性や高分子マトリク
スへの相溶性を向上させる効果を有する。特に、後述す
る重合性を有する有機配位子は、重合性を有する半導体
超微粒子の構成成分として重要である。
【0038】またかかる有機配位子は、半導体超微粒子
の主体である半導体結晶の吸発光能等の望ましい物性
を、溶媒、大気、光、湿度等の外界からの影響から遮蔽
して良好に保持する効果(以下「遮蔽効果」と呼ぶ)を
も有する。かかる遮蔽効果の点では、該有機配位子は炭
素数6以上のメチレン基連鎖を含有するものであること
が好ましく、特に本発明のエタノールを主体とする塗布
溶媒系や含水溶媒系のようなプロトン性溶液中では、そ
の効果を顕著に発揮する。これは、かかるプロトン性溶
液系(特に酸性系)においては例えばプロトン性溶媒や
プロトン酸による該半導体結晶表面からの遷移金属元素
の溶出等の化学変化を受けやすいが、炭素数6以上のメ
チレン基連鎖を有する有機配位子が該半導体結晶表面に
結合していると、その疎水性により一種の疎水障壁を形
成し、水、メタノール、あるいはエタノール等のプロト
ン性溶媒分子やプロトン酸等が該半導体結晶表面に接近
することを妨げる、といった機構によるものと推測され
る。かかる炭素数6以上のメチレン基連鎖を有する有機
配位子の使用により、具体的には、半導体超微粒子の発
光能の保持、あるいは安定化の効果が見られる場合が多
い。このメチレン基連鎖の炭素数は通常6〜20、好ま
しくは8〜16、最も好ましくは9〜12程度とする。
【0039】前記の諸効果を発揮する限りにおいて、該
有機配位子の化学構造及び該半導体結晶表面への結合様
式に制限はなく、かつ複数種の有機配位子を併用しても
構わないが、通常、後述する配位性官能基を分子構造中
に有し、これにより該半導体結晶表面に結合する有機配
位子が使用される。かかる配位官能基として、通常周期
表第15又は16族元素を含有する官能基を用いる。そ
の具体例としては、1級アミノ基(−NH2)、2級ア
ミノ基(−NHR;但しRはメチル基、エチル基、プロ
ピル基、ブチル基、フェニル基等の炭素数6以下の炭化
水素基である;以下同様)、3級アミノ基(−NR
12;但しR1及びR2は独立にメチル基、エチル基、プ
ロピル基、ブチル基、フェニル基等の炭素数6以下の炭
化水素基である;以下同様)、ニトリル基やイソシアネ
ート基等の含窒素多重結合を有する官能基、ピリジン環
やトリアジン環等の含窒素芳香環等の窒素含有官能基、
1級ホスフィン基(−PH2)、2級ホスフィン基(−
PHR)、3級ホスフィン基(−PR12)、1級ホス
フィンオキシド基(−PH2=O)、2級ホスフィンオ
キシド基(−PHR=O)、3級ホスフィンオキシド基
(−PR12=O)、1級ホスフィンセレニド基(−P
2=Se)、2級ホスフィンセレニド基(−PHR=
Se)、3級ホスフィンセレニド基(−PR12=S
e)等のリン含有官能基等の周期表第15族元素を含有
する官能基、水酸基(−OH)、メチルエーテル基(−
OCH3)、フェニルエーテル基(−OC65)、カル
ボキシル基(−COOH)等の酸素含有官能基、メルカ
プト基(別称はチオール基;−SH)、メチルスルフィ
ド基(−SCH3)、エチルスルフィド基(−SCH2
3)、フェニルスルフィド基(−SC65)、メチル
ジスルフィド基(−S−S−CH3)、フェニルジスル
フィド基(−S−S−C65)、チオ酸基(−COS
H)、ジチオ酸基(−CSSH)、キサントゲン酸基、
キサンテート基、イソチオシアネート基、チオカルバメ
ート基、チオフェン環等の硫黄含有官能基、同様に−S
eH、−SeCH3、−SeC65等のセレン含有官能
基、同様に−TeH、−TeCH3、−TeC65等の
テルル含有官能基等の周期表第16族元素を含有する官
能基等が例示される。これらのうち好ましく利用される
のは、ピリジン環等の窒素含有官能基、3級ホスフィン
基、3級ホスフィンオキシド基、3級ホスフィンセレニ
ド基等のリン含有官能基等の周期表第15族元素を含有
する官能基、メルカプト基、メチルスルフィド基等の硫
黄含有官能基等の周期表第16族元素を含有する官能基
であり、中でも3級ホスフィン基、3級ホスフィンオキ
シド基等のリン含有官能基、あるいはメルカプト基等の
硫黄含有官能基等は更に好ましく用いられる。
【0040】ナノ結晶に代表される半導体結晶に対する
有機配位子の具体的な配位化学構造は十分に解明されて
いないが、本発明に用いられる半導体超微粒子の表面に
おいては前記に例示した配位官能基は必ずしもそのまま
の構造を保持していなくても良い。例えば、メルカプト
基(SH)の場合、半導体結晶終端に存在する金属元素
M(例えばII-VI化合物半導体における亜鉛やカドミウ
ム、III-V化合物半導体におけるガリウムやインジウム
等)との共有結合を形成した構造(例えばS−Mなる構
造)への変化、ホスフィンオキシド基(P=O)の場
合、金属元素Mとの共有結合を形成した構造(例えばP
−O−Mなる構造)への変化等も考えられる。
【0041】[ポリエチレングリコール残基を含有する
有機配位子]本発明の塗布組成物に使用する溶媒とし
て、特にエタノールや水のような対環境安全性や生体へ
の無害性に優れた溶媒の使用が好ましい。従って、かか
る水酸基を有する溶媒への溶解性に優れた有機配位子が
本発明に使用される半導体超微粒子が結合する有機配位
子として好適であり、具体的にはポリエチレングリコー
ル残基(以下PEG残基と略称する)を含有する有機配
位子が例示される。かかるPEG残基の利用は、前記の
塗布面に親水性を付与する効果をも有し、更に、前記の
塗布面を生物学的分析に用いる場合、血液サンプル等の
生体物質溶液に接触する際に任意の生体物質が無差別に
吸着する基質特異性低下の問題を改善する効果をも示
す。
【0042】ここで言うPEG残基とは、下記一般式
(1)で表されるものである。
【0043】
【化1】−(CH2CH2O)n−R (1) 但し一般式(1)において、Rは水素原子、炭素数1〜
7のアルキル基、及び炭素数10以下のアリール基から
なる群から任意に選択される構造を、nは50以下の自
然数をそれぞれ表す。
【0044】一般式(1)におけるRとして水素原子が
好適に使用されるが、アルキル基の具体例としては、メ
チル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、
n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n
−ペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シ
クロヘキシル基、ベンジル基等が挙げられ、親水性の点
で好ましくはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イ
ソプロピル基等の炭素数3以下のアルキル基が、最も好
ましくはメチル基が使用される。該Rに使用されるアリ
ール基の具体例としては、フェニル基、トルイル基(モ
ノメチルフェニル基)、ジメチルフェニル基、エチルフ
ェニル基、イソプロピルフェニル基、4−tert−ブ
チルフェニル基、ピリジル基、モノメチルピリジル基、
ジメチルピリジル基等が挙げられ、親水性の点で好まし
くはフェニル基あるいはピリジル基が使用される。
【0045】一般式(1)における自然数nは、好まし
くは40以下、より好ましくは30以下、更に好ましく
は20以下、最も好ましくは10以下である。該nの数
値が大き過ぎると塗布溶液の粘度が必要以上に大きくな
り塗布性の低下をもたらす場合がある。一般式(1)の
好ましい構造として、通常、エチレングリコール残基
(n=2)やトリエチレングリコール残基(n=3)が
挙げられ、前記の残留組成物との相溶性の点でより好ま
しいのはトリエチレングリコール残基であり、化学的安
定性の点で更に好ましいのはRがメチル基であるトリエ
チレングリコールモノメチルエーテル(以下MTEGと
略記)残基である。
【0046】前記の遮蔽効果とプロトン性溶媒溶解性、
及び化学合成の容易性から本発明に非常に好ましく使用
される有機配位子として、下記一般式(2)で表される
ω−メルカプト脂肪酸のMTEGエステルが挙げられ
る。
【0047】
【化2】 HS(CH2nCOO(CH2CH2O)3CH3 (2) 但し一般式(2)においてnは炭素数6以上11以下の
自然数を表す。特に好ましい具体的化合物としては、前
記一般式(2)においてn=10に相当する11−メル
カプトウンデカン酸MTEGエステルが例示される。な
お、かかるMTEGエステルの末端メチル基が水素原子
となった化合物も同様に好適である。
【0048】前記一般式(2)のMTEGエステルは、
例えば、11−メルカプトウンデカン酸等のω−メルカ
プト脂肪酸と過剰当量のMTEGとを硫酸やp−トルエ
ンスルホン酸等の酸触媒存在下脱水エステル化させる方
法(必要に応じ加熱や減圧脱水を施し平衡反応を加速す
る)やMTEGを過剰当量用いるエステル交換法等によ
り合成される。
【0049】なお、前記のPEG残基の代わりに、プロ
ピレンオキシド等の任意のアルキレンオキシドをエチレ
ンオキシドと共重合して得られるポリアルキレングリコ
ール残基を使用しても同様の効果が得られる場合がある
が、通常PEG残基が最良である。前記のPEG残基を
含有する有機配位子を使用する場合、半導体超微粒子中
の全有機配位子における使用割合は、通常50〜100
重量%、好ましくは60〜100重量%、更に好ましく
は70〜100重量%程度とする。
【0050】[重合性を有する半導体超微粒子]本発明
の塗布組成物の構成成分として、重合性を有する半導体
超微粒子が非常に好適に用いられる。かかる重合性は、
通常、有機配位子の分子構造中に重合性を有する官能基
(以下、重合性基と呼ぶ)を導入して付与される。重合
性を有する半導体超微粒子の使用の効果は、具体的に
は、透明性の向上、塗布面の機械的強度(例えば、表面
硬度や弾性率等の剛性、耐摩耗性、耐衝撃性、耐曲げ性
等の靱性、あるいは耐熱変形性、等)や化学的耐久性
(例えば、耐溶剤溶解性、耐酸化性、耐光劣化性、耐酸
・塩基性、耐加水分解性、等)の向上が挙げられる。こ
れは、本発明の塗布組成物の機能の源泉である半導体超
微粒子自体を高分子マトリクスをなす高分子鎖に共重合
させ固定する効果と、生成する高分子マトリクスと該半
導体超微粒子との界面接着性を向上させる効果によるも
のと考えられる。
【0051】好ましい重合性であるラジカル重合性を有
する重合性基(以下単に「ラジカル重合性基」と呼ぶ)
の構造に制限はないが、例えば、炭素−炭素2重結合、
炭素−炭素3重結合、あるいはシクロプロパン環等が例
示される。本発明の目的において好適なラジカル重合性
基は、例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、あ
るいはクロトノイル基等のカルボニル基と共役した炭素
−炭素2重結合、マレオイル残基やフマロイル残基等の
2つのカルボニル基と両端で共役した炭素−炭素2重結
合、4−ビニルベンジル基、3−ビニルベンジル基、ビ
ニルピリジルメチル基等の芳香環と共役した炭素−炭素
2重結合、ビニルオキシカルボニル基、ビニルオキシ
基、ビニルアミノ基等のビニル基が電気陰性度の高い原
子に結合した構造、アリルオキシ基やアリルアミノ基等
のアリル基が電気陰性度の高い原子に結合した構造が挙
げられる。これらのうちラジカル重合性の点で好ましい
のは、アクリロイル基やメタクリロイル基等のカルボニ
ル基と共役した炭素−炭素2重結合、マレオイル残基等
の2つのカルボニル基と両端で共役した炭素−炭素2重
結合、ビニルベンジル基等の芳香環と共役した炭素−炭
素2重結合、ビニルオキシカルボニル基やビニルオキシ
基等のビニル基が電気陰性度の高い原子に結合した構
造、アリルオキシ基等のアリル基が電気陰性度の高い原
子に結合した構造であり、中でもアクリロイル基、メタ
クリロイル基、及びマレオイル残基等のカルボニル基と
共役した炭素−炭素2重結合が反応性や広範な溶媒への
溶解性の点で最適である。
【0052】かかるラジカル重合性基を含有する有機配
位子の好適な具体例として、ラジカル重合性基を結合し
たホスフィンオキシド類が例示され、下記一般式(3)
で表される。
【0053】
【化3】
【0054】但し一般式(3)において、Rradはアク
リロイル基、メタクリロイル基、マレオイル基、及びビ
ニルフェニル基(例えば4−ビニルフェニル基や3−ビ
ニルフェニル基等)のいずれかから選択されるラジカル
重合性基であり、R1及びR2は独立に炭素数10以下の
アルキル基、アシル基、アリール基、又は前記Rrad
表し、Lはホスフィンオキシド基(O=P)のリン原子
に炭素原子で結合する炭素数2〜16の脂肪族基(但し
Lはその構造中に、エーテル結合、エステル結合、カー
ボネート結合、ケトン結合等の含酸素結合、あるいはア
ミド結合、ウレタン結合、尿素結合等の含窒素結合等、
任意のヘテロ原子を含有する非芳香族結合を含有してい
ても構わない)を表す。
【0055】前記一般式(3)で表されるホスフィンオ
キシド類の構造におけるR1及びR2は、Rradのラジカ
ル重合性を損なわない範囲で、溶媒への溶解性や前記の
残留組成物の高分子マトリクスへの相溶性の向上に寄与
する構造であることが好ましくRrad同様のラジカル重
合性基である必要はない。しかし、前記一般式(3)に
おいて、R1及びR2としてRradがとりうるラジカル重
合性基を用いることは、ラジカル重合性、及びかかるホ
スフィンオキシド類の合成容易性の点で非常に好ましい
場合もある。
【0056】前記一般式(3)におけるR1及びR2に用
いられる一般的な構造例として、メチル基、エチル基、
n−プロピル基、n−ブチル基、n−ヘキシル基、n−
オクチル基、n−デシル基等の直鎖アルキル基、イソプ
ロピル基、イソブチル基、tert−ブチル基、イソヘ
キシル基等の分岐アルキル基、シクロペンチル基やシク
ロヘキシル基等の環状アルキル基、ベンジル基等のアリ
ール基を結合したアルキル基、ビニル基やアリル基等の
不飽和基、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、
ブチリル基、バレリル(Valeryl)基、ヘキサノ
イル基、オクタノイル基、デカノイル基、イソブチリル
基、ピバロイル基、イソバレリル基等の脂肪族アシル
基、ベンゾイル基、イソフタロイル基、テレフタロイル
基、サリチロイル基等の芳香族アシル基、フェニル基、
ナフチル基、ピリジル基等のアリール基等が挙げられ
る。これらのうち好適な構造は、所望の溶解性や相溶性
により変動するが、該残留組成物中の半導体結晶含量を
大きくしたい場合には該R1及びR2は必要以上に大きな
化学構造でないことが望ましい。この意味で好適な該R
1及びR2の構造は、メチル基、エチル基、n−プロピル
基、n−ブチル基等の直鎖アルキル基、イソプロピル
基、イソブチル基、tert−ブチル基等の分岐アルキ
ル基、ベンジル基等のアリール基を結合したアルキル
基、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリ
ル基等の脂肪族アシル基、ベンゾイル基等の芳香族アシ
ル基であり、中でもメチル基、エチル基、n−プロピル
基、n−ブチル基等の直鎖アルキル基、ベンジル基等の
アリール基を結合したアルキル基、アセチル基等の脂肪
族アシル基等がより好ましく、特にアセチル基は無水酢
酸によるアセチル化により極めて簡便に導入可能な小さ
な化学構造なので最適である。
【0057】前記一般式(3)におけるLは、炭素数1
〜6の分岐側鎖を含有していても構わないが直鎖状であ
るのが好ましい。該Lの炭素数が2に満たないと前記R
radの結合した分子鎖の可動性が極端に低下する場合が
あり、しかも配位官能基であるホスフィンオキシド基と
分子末端との距離が短いので前記の遮蔽効果も低下する
恐れがある。逆にLの炭素数が16を超えると前記R
radがかかる脂肪族構造に埋没してそのラジカル重合性
が極端に低下する場合がある。好ましい該Lの炭素数は
2〜14、更に好ましくは3〜12、最も好ましくは3
〜10である。
【0058】かかるLの好ましい具体例としては、炭素
数2〜16の直鎖メチレン鎖、炭素数2〜16の直鎖メ
チレン鎖の先端に酸素原子を結合したオキシアルキレン
基、下記一般式(4)で表されるポリエチレングリコー
ル鎖を結合したn−プロピレン基、下記一般式(5)で
表されるポリブチレングリコール鎖を結合したn−プロ
ピレン基、下記一般式(6)で表されるポリプロパン酸
鎖等が挙げられる。
【0059】
【化4】 −(CH23−O−(CH2CH2O)x−T (4) −(CH23−O−(CH2CH2CH2CH2O)y−T (5) −(CH2CH2COO)z−T (6) 但し一般式(4)〜(6)においてTは前記一般式
(3)におけるR1、R2、及びRradのいずれかを表
し、xは0〜6の整数を、yは0〜3の整数を、zは1
〜5の整数を、それぞれ表す。
【0060】前記一般式(4)又は(5)のLは、3−
ヒドロキシプロピル基を開始点とするエチレンオキシド
又はテトラヒドロフランの開環重合によりそれぞれ構築
可能であり、前記一般式(6)に示すLは、アクリル
酸、アクリル酸エステル、あるいはアクリロニトリルの
マイケル付加反応を利用して構築可能である。前記一般
式(3)の構造の好適な例として、下記一般式(7)が
挙げられる。
【0061】
【化5】
【0062】但し一般式(7)におけるR1、R2、及び
radはいずれも前記一般式(3)の場合と同一であ
る。特に好適な前記一般式(7)の構造として、下記式
(8)で表されるR1、R2、及びRradが全てアクリロ
イル基あるいはメタクリロイル基である分子構造が例示
される。
【0063】
【化6】
【0064】但し式(8)においてAは水素原子又はメ
チル基を表す。なお、下記一般式(9)又は(10)で
示される1つ又は2つのアルキル鎖を有するものも、本
発明のラジカル重合性基を結合したホスフィンオキシド
類として好適に使用される。
【0065】
【化7】
【0066】
【化8】
【0067】但し一般式(9)又は(10)におけるR
1又はRradは一般式(3)の場合と同一であり、Rは炭
素数12以下のアルキル基を表す。該Rは、好ましくは
メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、
n−ヘキシル基、n−オクチル基等の炭素数8以下の直
鎖状のもの、更に好ましくはメチル基、エチル基、n−
ブチル基、n−ヘキシル基等の炭素数6以下の直鎖状の
もの、最も好ましくはメチル基、エチル基、n−ブチル
基等の炭素数4以下の直鎖状のものとする。一般式(1
0)における2つのRは、互いに同一でも異なっていて
も構わない。
【0068】半導体超微粒子において、前記の重合性基
を含有する有機配位子の全有機配位子中の使用割合は、
通常1〜70重量%、好ましくは5〜60重量%、更に
好ましくは10〜50重量%程度とする。なお、エタノ
ールを主体とする溶媒を使用する場合には、使用する半
導体超微粒子もエタノール可溶性とすることが望ましい
ので、例えば前記のPEG残基を含有する有機配位子
(以下PEG配位子と略記する)とラジカル重合性基を
含有する有機配位子(以下RAD配位子と略記する)の
2種を結合させることにより、エタノール溶解性と重合
性とを付与することが非常に好ましい。かかる場合、P
EG配位子とRAD配位子の全有機配位子中の使用割合
は、該半導体超微粒子がエタノール溶解性と重合性とを
兼備する限りにおいて制限はないが、PEG配位子は通
常50〜99重量%、好ましくは60〜99重量%、更
に好ましくは70〜99重量%程度とし、RAD配位子
は通常1〜70重量%、好ましくは5〜60重量%、更
に好ましくは10〜50重量%程度とする。PEG配位
子を比較的大量使用し、RAD配位子を比較的少量使用
する理由は、前者はエタノール溶解性を付与するために
比較的大量に半導体超微粒子表面を被覆する必要がある
のに対して、後者は1つの半導体超微粒子表面に比較的
少量存在していればその超微粒子に重合性を付与する効
果があるためである。これら2種以外の有機配位子を溶
解性調整等の目的で併用しても構わない。
【0069】なお、前記のラジカル重合性基を分子構造
中に含有するチオール類も、同様に好適な有機配位子と
して使用可能な場合がある。 [所望の有機配位子の半導体結晶表面への結合]前記例
示の製造方法で得られる半導体結晶に、エタノール溶解
性や重合性等望ましい性質を有する所望の有機配位子を
結合させる方法に制限はないが、好適な方法を例示す
る。 (a)配位子交換反応による方法 前記のホットソープ法等で合成される有機溶媒可溶性の
半導体超微粒子をトルエン、塩化メチレン、あるいはピ
リジン等の比較的弱配位性の有機溶媒に溶解し、所望の
有機配位子(好ましくはホスフィンオキシド基やメルカ
プト基等の強配位性官能基を有するもの)を加えて行
う。これにより、添加した有機配位子がもともと存在し
ていた配位子を置換する配位子交換が進行するが、所望
の有機配位子を残すにはこれら配位子の配位力を調整す
る必要がある。ピリジンを溶媒に使用すると、ピリジン
は弱いながら配位力のある溶媒分子なのでまずこれによ
る配位子交換が進行し、次いで添加された所望の有機配
位子による配位子交換が進行して好適な場合がある。 (b)有機配位子のホットソープ法反応液相への添加 前記のホットソープ法の反応液相に所望の有機配位子を
添加する方法である。かかる方法に好適な有機配位子
は、ホスフィン基やホスフィンオキシド基、あるいはメ
ルカプト基のような強配位性官能基を有する有機配位子
であり、特にホスフィンオキシド基を有するものが最適
である。ホットソープ法反応液相への配位性の有機配位
子の添加は、好ましくは該ホットソープ法反応の後期に
行われる。この理由は、所望の大きさの半導体結晶を生
成せしめた後で、その表面に配位性の有機配位子を配位
させるためである。所望の有機配位子の添加の時期は、
所望の吸発光能等により決まる半導体結晶の粒径に応じ
て選ばれる。
【0070】かかるホットソープ法の反応は一般に高温
なので、所望の有機配位子の構造が熱分解等による損傷
を受けないように、通常温度条件等を制御する必要があ
る。 (c)有機配位子の逆ミセル法反応液相への添加 前記の逆ミセル法の反応液相に所望の有機配位子を添加
する方法である。かかる方法に好適な有機配位子は、ホ
スフィン基やホスフィンオキシド基を有するもの、ある
いはメルカプト基のような強配位性官能基を有する有機
配位子であり、特に親水性を有する前記のPEG残基を
有する有機配位子が最適である。
【0071】[塗布方法]本発明の塗布組成物は、その
重合性成分を重合せしめる工程を含むことを特徴とする
塗布方法により好適に塗布される。特にラジカル重合を
進行させる場合、熱ラジカル重合あるいは光ラジカル重
合等の任意のラジカル重合行う工程を経る塗布方法が好
適である。いずれのラジカル重合の場合も、後述する加
熱処理が有効である。
【0072】熱ラジカル重合の場合、塗布操作後の塗布
面を前記の熱ラジカル発生剤の分解温度以上に加熱す
る。かかる加熱温度は、通常40〜180℃、重合性及
び半導体超微粒子の熱劣化やラジカル重合性成分の揮発
防止の点で好ましくは50〜160℃、更に好ましくは
55〜140℃、最も好ましくは60〜120℃程度と
する。また、この加熱時間は、加熱温度にもよるが通常
1〜36000秒、重合性と生産性の点で好ましくは5
〜18000秒、更に好ましくは10〜9000秒、最
も好ましくは15〜3600秒程度とする。なお、該加
熱時間中の加熱温度を変化させて好ましい熱ラジカル重
合を設計することも可能である。例えば、加熱初期は4
0〜90℃程度の比較的低温で加熱することにより重合
性成分の揮発を防ぎながらラジカルを発生させて重合を
開始し、次いで90〜180℃程度の高温でラジカル重
合を急速に進行させる、といった反応設計が考えられ
る。
【0073】光ラジカル重合の場合、塗布操作後の塗布
面に、前記の光ラジカル発生剤を分解せしめる波長の光
をまず照射し、通常次いで重合を促進する目的で加熱す
る。かかる加熱の温度範囲と時間は、前記の熱ラジカル
重合の場合の記述と同様である。なお、該加熱時間中の
加熱温度を変化させて好ましいラジカル重合を設計する
ことも可能である。例えば、加熱初期は40〜90℃程
度の比較的低温で加熱することにより重合性成分の揮発
を防ぎながらラジカル重合を徐々に進行させ、次いで9
0〜180℃程度の高温でラジカル重合を急速に進行さ
せる、といった反応設計が考えられる。
【0074】前記いずれの重合操作を行う前又は後に、
蒸発や蒸留による溶媒の除去による濃縮工程を入れても
構わない。いずれの加熱処理においても、望ましくない
空気酸化、ラジカル種の失活、加水分解等の副反応を抑
制するために、乾燥した窒素等不活性ガスあるいは乾燥
空気の雰囲気とすることが好ましい場合がある。また、
塗布の生産性向上等の目的で、連続塗布ラインにおいて
前記の加熱処理や光照射を複数回印加することも可能で
ある。あるいは、塗布物を任意の温度で加熱保存する熱
アニール工程を塗布工程の後に付加してラジカル重合を
進行あるいは完結させることも可能である。
【0075】[半導体超微粒子の吸発光特性の指紋性]
前記の半導体超微粒子の吸発光挙動の塗布組成物用途と
しての最大の特徴は、その主体である半導体結晶の組成
と粒径の制御により、精密に吸光スペクトル又は発光ス
ペクトル(以下、単に吸発光スペクトルと呼ぶ)形状を
制御できる点にある。本発明の塗布組成物をシート状の
基材上に塗布した塗布面を有する後述のシート状塗布物
は、かかる吸発光特性を具備するものである。従って、
特定の塗布面にある特定の製造ロットの半導体超微粒子
を使用すれば、該塗布面の吸発光スペクトルを検出し該
スペクトル形状を照合することにより、あたかも指紋照
合による個人の特定(以下「指紋性」と呼ぶ)のように
該塗布面を厳密に特定可能である。
【0076】かかる「指紋性」の源泉は、前記の半導体
超微粒子は化学構造と吸発光特性が一義的に決まる分子
ではないことにある。即ち、一定製品の再現を意図した
複数の製造ロット間の半導体超微粒子で、厳密に同一の
吸発光スペクトルを示すものを再現することは事実上困
難である(以下「厳密再現の不可能性」と呼ぶ)、とい
うことである。かかる厳密再現の不可能性は、異なる製
造方法で得られたある特定の分子構造が、ある一定環境
において、原理的に、厳密に同一の吸発光スペクトルを
示すことと対照的であり、実際に、例えば同一品種の合
成樹脂材料の物性の製造ロット間での差等、単一分子で
構成されていない材料において普遍的に起こり得ること
である。かかる厳密再現の不可能性が前記の半導体超微
粒子において起きる理由は、その吸発光スペクトルが、
現状技術では人為的に制御しきれない要因、例えば半導
体結晶表面の結晶欠陥や結晶格子の歪み、半導体結晶の
厳密な立体形態の変動(例えば、球状か楕円球状である
か、あるいは結晶面平面や結晶面終端の段差の不確定
性、等)、有機配位子の結合数や結合の化学構造、等に
より影響を受けることにある。
【0077】[複数種の半導体超微粒子を同一塗布面に
含有させる方法]本発明の塗布組成物における前記の
「指紋性」を増強する目的で、異なるピーク波長や波長
半値幅を有する吸発光帯を示す複数種の半導体超微粒子
をそれぞれ任意濃度で同一塗布面に含有させることは非
常に有効である。つまり、個々の半導体超微粒子が前記
の厳密再現の不可能性を本質的に有する上に、それらを
組み合わせることにより、膨大な種類の互いに異なる吸
発光スペクトルを有する一連の塗布組成物(以下「スペ
クトルライブラリ」と呼ぶ)を作り出すことが可能であ
る。
【0078】例えば、10種類の異なる吸発光スペクト
ルを有する半導体超微粒子をそれぞれある濃度で溶解し
た10種類の原料溶液を用意し、これらの任意2種の溶
液を同容量混合するとする。これにより得られる互いに
異なる吸発光スペクトルを有する半導体超微粒子の溶液
は55種類になる。ここに更に濃度変化によるバリエー
ションを得る目的でそれぞれの組み合わせについて容量
混合比を例えば1:3、2:2、及び3:1の3種作る
と、145種類の互いに異なる吸発光スペクトルを有す
る半導体超微粒子の溶液を得ることになる。前記の10
種類の原料溶液から任意3種以上の組み合わせを同様に
考えた場合には、飛躍的に多数の互いに異なる吸発光ス
ペクトルを有する半導体超微粒子の溶液を得ることは言
うまでもない。
【0079】なお、本発明における「同一塗布面」とは
任意形状の1つの連続した塗布面を意味し、該同一塗布
面内部での複数種の半導体超微粒子のそれぞれの濃度分
布に制限はなく、例えば全半導体超微粒子が均一混合さ
れた分布、各半導体超微粒子がそれぞれ層を成す積層分
布等が実用的に考えられ、後者の積層分布を与えるには
積層塗布による塗布が考えられる。
【0080】[シート状塗布物]本発明におけるシート
状塗布物とは、用途に応じて、紙パルプ、木材、樹脂、
有機物結晶、ダイヤモンド、ガラス、セラミクス、岩
石、無機物結晶、石英、金属、半導体等の任意の固体素
材をフィルムや薄い板状(即ちシート状)に成形したシ
ート状基材表面に本発明の塗布組成物が塗布され、その
結果塗布面が形成された成形体を言う。具体的には、該
シート状基材の厚さは、通常0.1〜10,000μ
m、好ましくは1〜5,000μm、更に好ましくは1
0〜3,000μm程度とし、この厚さは該シート状基
材中で同一であっても、連続的あるいは不連続的に変化
していても構わない。
【0081】本発明のシート状塗布物は必ずしも平面状
でなくてもよく、例えば球面状、非球面曲面状、円柱
状、円錐状、あるいはペットボトル等のボトル状等に成
形されていても構わない。また、紙パルプ、木材、ある
いは樹脂等の可撓性素材によるシート状塗布物は、塗布
作業の前あるいは後に折り曲げ、延伸、圧縮等により物
理的な変形を受けていても構わない。
【0082】かかるシート状塗布物には、必要に応じて
該塗布面を被覆する層(例えば、摩擦や摩耗による塗布
面の機械的損傷を防止する保護層、半導体超微粒子や基
材等の劣化原因となる不要かつ望ましくない波長の光線
を吸収する光線吸収層、防眩層、反射防止層、等)や、
基材と塗布面との接着性を改善する下引き層等、任意の
付加機能層を設けて多層構造としても構わない。
【0083】[シート状塗布物の用途]前記のシート状
塗布物は、それが複製でないことを簡便に調べる必要の
ある用途、例えば紙幣、クレジットカードや銀行等金融
機関のキャッシュカード等の各種マネーカード類、身分
証明書やパスポート等の各種証明書類等の印刷物におけ
る真偽判定印刷として非常に有用である。かかる真偽判
定印刷は、例えば前記の各種マネーカード類や証明書類
等の印刷物所有者を判別する個人情報(例えば指紋や目
の虹彩のパターン等)の印刷により、例えば使用者の指
紋の光学的検出を併用することで該印刷物の使用者判別
機能をも付与することも可能である。
【0084】また、前記のスペクトルライブラリを構成
する各塗布組成物を、それぞれ微小な点(ドット)や線
(以下「微小塗布エリアと呼ぶ」)として基材表面に塗
布したシート状塗布物は、DNAチップ等の膨大な種類
の生物学的分析を基材上の微小区画で同時に行う集積分
析チップとしてきわめて有用である。以下、かかる集積
分析チップの作成方法について説明する。
【0085】まず、ガラスや樹脂等の基板上に微小塗布
エリアを設ける。この時、任意の微小塗布エリアとスペ
クトルライブラリを構成する各塗布組成物との対応を完
全に制御する必要があり、かかる塗布制御は例えばイン
クジェット印刷により好適に行われる。使用する基板の
各微小塗布エリアには必要に応じて微小な窪みを設け
て、微小塗布エリアの外に塗布溶液がはみ出ることを防
止しても良い。次いで、塗布面を適当な定着方法(例え
ば前記の重合性成分を重合せしめる工程や保護層の塗
布、等)により安定化させる。最後に、各微小塗布エリ
アの直上に、所望のプローブ物質を固定する。ここで言
うプローブ物質とは、分析目的物質と特異的に相互作用
する物質を意味し、例えば相補的ポリ核酸塩基対におけ
る一方のポリ核酸塩基、抗原抗体反応における抗原又は
抗体タンパク質、アビジン(Avidin)類に対する
ビオチン(ビオチン)残基、あるいは特定のタンパク質
等に特異的親和性を示すエピトープと呼ばれる比較的小
さな有機構造、等が例示される。かかるプローブ物質の
各微小塗布エリアの直上への固定方法は、公知の方法、
例えばガラス基板へのシランカップリング剤(アミノ
基、マレイミド基、メルカプト基、カルボキシル基等の
プローブ結合官能基を有するものが好適である)を介し
た結合、あるいは樹脂基板上に前記のプローブ結合官能
基を導入して結合する方法等が可能であり、場合によっ
ては、各微小塗布エリアに対応する各塗布組成物中に該
プローブ物質又はその誘導体を混合しておいても良い。
【0086】[塗布面の検出]前記のシート状塗布物が
有する塗布面の検出は、該塗布面への光照射により、該
塗布面の吸光スペクトル又は発光スペクトル、あるいは
その両者の組み合わせにより行われる。該塗布面に含ま
れる半導体超微粒子のかかる吸発光スペクトルの形状を
あらかじめ記録しておくことにより測定スペクトルの形
状を照合することが可能となり、これにより前記の各用
途における塗布面の判別同定が可能となる。
【0087】前記のスペクトルのうち吸光スペクトル
は、通常、透過光の波長スキャンにより発光スペクトル
に比べて簡素な装置で容易に測定されるので、該塗布面
とその直上及び直下の塗膜や基材は光を透過する材質
(通常非晶性の材料)とし、該塗布面の吸光スペクトル
を簡便に測定することが非常に好適である。従って、塗
布面の基材が非晶性材料で構成されていることを特徴と
する前記のシート状塗布物は好適である。かかる非晶性
材料としては、シリカガラス(又は石英ガラス)等の無
機ガラス類、ポリメチルメタクリレート(通称PMM
A)等のアクリル樹脂類、ポリスチレン等のスチレン樹
脂類、ビスフェノールAポリカーボネート等の芳香族ポ
リカーボネート樹脂類等の非晶性合成樹脂、硬化型アク
リル樹脂等が好適に使用される。なお、かかる非晶性材
料の使用は、本発明のシート状塗布物の基材の全体に及
ぶ必要はなく、少なくとも該塗布面の直下の基材部分に
使用される。従って、該基材は、機械的強度、成形性、
経済性等の必要に応じて、複数の材料により任意に構成
されていて構わない。
【0088】膨大な種類の吸発光スペクトルの照合は、
各スペクトルデータをあらかじめコンピュータに記憶さ
せておき、オンラインで迅速照合作業を行うことが可能
である。
【0089】
【実施例】以下に実施例により本発明の具体的態様を更
に詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限
り、これらの実施例によって限定されるものではない。
なお原料試薬は、特に記載がない限り、Aldrich
社製のものを精製を加えず使用した。但し、精製トルエ
ンは、濃硫酸、水、飽和重曹水、更に水の順序で洗浄
後、無水硫酸マグネシウムで乾燥次いで濾紙で濾過し、
五酸化二リン(P 25)から蒸留して得、精製塩化メチ
レンは五酸化二リン(P25)で乾燥した後、ここから
大気圧にて直接蒸留して得た。また、半導体超微粒子の
合成例に用いたメタノールとn−ブタノールは、ともに
Aldrich社から供給される無水グレード(99.
8%)を使用した。
【0090】[測定装置と条件等] (1)赤外吸収スペクトル(FT−IR):日本分光工
業社製FT/IR−8000型FT−IR。23℃にて
測定した。 (2)X線回折(XRD)スペクトル:リガク(株)製
RINT1500(X線源:銅Kα線、波長1.541
8Å)。23℃にて測定した。 (3)透過型電子顕微鏡(TEM)観察:日立製作所
(株)製H−9000UHR型透過電子顕微鏡(加速電
圧300kV、観察時の真空度約7.6×10-9Tor
r)にて行った。 (4)発光スペクトル:日立製作所(株)製F−250
0型分光蛍光光度計にて、スキャンスピード60nm/
分、励起側スリット5nm、蛍光側スリット5nm、フ
ォトマル電圧400Vの条件で、光路長1cmの石英製
セルを用いて測定した。 (5)吸光スペクトル:Hewlett Packar
d社製8453型吸光スペクトル計により測定した。 (6)熱重量分析(TG):セイコーインスツルメンツ
(株)製TG/DTA320を使用した。
【0091】合成例1[11−メルカプトウンデカン酸
MTEGエステルの合成] 11−メルカプトウンデカン酸(1.70g)と東京化
成(株)から供給されたトリエチレングリコールモノメ
チルエーテル(以下MTEGと略記:50mL)、及び
濃硫酸(国産化学(株);5滴)を乾燥窒素雰囲気のフ
ラスコ内に混合し、60℃で攪拌しながら30mmHg
以下の圧力での減圧脱水を延べ約36時間行った。反応
液を大量の氷水に攪拌しながら徐々に加えて得た析出物
をn−ヘキサン/酢酸エチル(5/1容量比)混合溶媒
で抽出し、この有機相を飽和重曹水、次いで水で洗浄
し、硫酸ナトリウム上で乾燥後濾過して濃縮した。この
生成物は、IRスペクトルにおいて1730cm-1にエ
ステル基、及び2870cm -1のピークと2820cm
-1の肩を含む3050〜2650にかけてのブロードな
領域にTEGMME由来の炭化水素構造にそれぞれ帰属
される吸収帯を与えたことから、11−メルカプトウン
デカン酸MTEGエステル(以下11−MTEGと略
記)の生成を確認した。
【0092】合成例2[メタクリロイル基を結合したホ
スフィンオキシドの合成] トリス(3−ヒドロキシプロピル)ホスフィンオキシド
(以下HPPOと略記、3.96g;0.0177モ
ル、日本化学工業(株)製の商品名ヒシコーリンPO−
500)をピリジン(100mL)中で室温にて乾燥窒
素雰囲気下攪拌しながら、メタクリル酸無水物(8.4
4g;0.0547モル)とDMF(40mL)を加え
た。室温での攪拌を約3.5時間続けた後、60℃で約
1時間加熱し、得られた透明均一な溶液を更に室温で約
67時間放置した。反応液の一部を減圧濃縮した不揮発
性残渣の1H−NMRスペクトルにおいて、アクリロイ
ル基由来のオレフィンの2つのプロトン(5.56pp
mと6.11ppm)とメチル基プロトン、およびHP
PO由来のメチレン基のプロトン(1.92−2.05
ppm、4.21ppm:エステル基酸素に隣接のメチ
レン基)を観測した。但し3.70ppmにHPPOの
未反応水酸基に隣接するメチレン基プロトンが観測さ
れ、4.21ppmのシグナルとの積分値の比較から、
この反応条件ではHPPOの水酸基のメタクリル酸エス
テルへの変換が進行したが全水酸基の約25%が未反応
で残っているものと考えられた。また、この濃縮残渣の
FT−IRスペクトルにおいて、エステル結合に帰属さ
れるカルボニル基の非常に強い吸収帯(1715c
-1)が観測され、一方で3100−3700cm-1
かけての水酸基のブロードな吸収帯が弱いながらも観測
されたことからも、少量の水酸基がメタクリル酸エステ
ルへ変換されずに残っていることを支持した。そこで、
無水酢酸(1.40g;0.0137モル)を加えて更
に室温で放置し未反応水酸基の酢酸エステルへの変換を
行い、減圧濃縮して揮発成分を除去した。こうして、前
記式(2)でAがメチル基であるメタクリロイル基を結
合したホスフィンオキシドのエステルの約25%が酢酸
エステルであると推定される混合ホスフィンオキシドを
得た(この生成物を以下MPOと略記する)。
【0093】合成例3[CdSe超微粒子の合成] 空冷式のリービッヒ還流管と反応温度調節のための熱電
対を装着した無色透明のパイレックスガラス製3口フラ
スコにトリオクチルホスフィンオキシド(以下TOPO
と略記;4g)を入れ、マグネチックスターラーで攪拌
しながら乾燥アルゴンガス雰囲気で360℃に加熱し
た。別途、乾燥窒素雰囲気のグローブボックス内で、セ
レン(単体の黒色粉末;0.1g)をトリブチルホスフ
ィン(以下TBPと略記;6.014g)に溶解した液
体に更にジメチルカドミウム(Strem Chemi
cal社;97%;0.216g)を混合溶解した原料
溶液Aを、ゴム栓(Aldrich社から供給されるセ
プタム)で封をしアルミニウム箔ですき間なく包んで遮
光したガラス瓶中に調製した。この原料溶液Aの一部
(2.0mL)を、前記のTOPOの入ったフラスコに
注射器で一気に注入し、この時点を反応の開始時刻とし
た。反応開始20分後に熱源を除去し約50℃に冷却さ
れた時点で精製トルエン(2mL)を注射器で加えて希
釈し、メタノール(10mL)を注入して不溶物を生じ
させた。この不溶物を遠心分離(3000rpm)し、
デカンテーションにより上澄み液を除去して分離し、室
温にて約14時間真空乾燥して固形粉体を得た。この固
形粉体のXRDスペクトルにおいて、Wurtzite
型CdSe結晶の002面及び110面に帰属される回
折ピークを観測したことからCdSeナノ結晶の生成を
確認した。また、このCdSeナノ結晶の平均粒径は、
TEM観察によれば約4nmであった。このCdSeナ
ノ結晶は、精製トルエン溶液において、366nm波長
の励起光を照射すると赤色の発光帯(ピーク波長595
nm、半値幅43nm)を与えた。
【0094】合成例4[ZnSシェルを有するCdSe
ナノ結晶を主体とする半導体超微粒子の合成] B.O.Dabbousiら;J.Phys.Che
m.B,101巻,9463頁(1997)に記載の方
法に準じて行った。これを以下説明する。乾燥アルゴン
ガス雰囲気の褐色ガラス製の3口フラスコ中にTOPO
(15g)を入れ、減圧下130〜150℃での溶融状
態で約2時間攪拌した。この間、残留する空気や水分を
置換する目的で、乾燥アルゴンガスにより大気圧に復圧
する操作を数回行った。温度設定を100℃として約1
時間後、合成例3で得たCdSeナノ結晶の固形粉体
(0.094g)のトリオクチルホスフィン(1.5
g、以下TOPと略記)溶液を加えて、CdSeナノ結
晶を含む透明溶液を得た。これを100℃の減圧下で更
に約80分間攪拌後、温度を180℃に設定して乾燥ア
ルゴンガスで大気圧に復圧した。別途、乾燥窒素雰囲気
のグローブボックス内で、ジエチル亜鉛の1N濃度n−
ヘキサン溶液(1.34mL;1.34ミリモル)とビ
ス(トリメチルシリル)スルフィド(0.239g;
1.34ミリモル)とをTOP(9mL)に溶解した原
料溶液Bを、合成例3で使用のセプタムで封をしアルミ
ニウム箔ですき間なく包んで遮光したガラス瓶中に調製
した。この原料溶液Bを、注射器により、前記の180
℃のCdSeナノ結晶を含む透明溶液に20分間かけて
滴下し、90℃に降温後約1時間攪拌を継続した。室温
で約14時間静置した後、再び90℃で3時間加熱攪拌
した。熱源を除去し、n−ブタノール(8mL)を反応
液に加えて室温まで冷却して、透明な赤色溶液を得た。
この赤色溶液には、原料のビス(トリメチルシリル)ス
ルフィド等の硫黄化合物の臭気はなく、代わりにセレン
特有のニラ様臭気があった。合成例2で得たCdSeナ
ノ結晶の溶液にはこのようなセレン臭はなかったので、
該CdSeナノ結晶表面での意図した硫化物生成反応の
進行とともに、該ナノ結晶表面における硫黄原子による
セレン原子の置換反応等何らかの機構によるセレンの遊
離があったものと推測され、前記文献記載同様にZnS
シェルを有するCdSeナノ結晶を主体とする半導体超
微粒子が生成したものと考えられた(以下これをCdS
e/ZnS−TOPOと略記する)。この赤色溶液の一
部(8mL)を、乾燥窒素気流下、室温でメタノール
(16mL)中に滴下し20分間攪拌を継続する沈殿操
作により赤色不溶物を得た。この赤色不溶物を合成例2
同様に遠心分離及びデカンテーションにより分離し、精
製トルエン(14mL)に再溶解した。この再溶解トル
エン溶液を用いて、再び同様の沈殿操作、遠心分離、及
びデカンテーションの一連の精製操作を行って固体生成
物を得た。この固体生成物は、1mLの精製メタノール
と振り混ぜて洗浄後、デカンテーションで分離した。こ
の固体生成物は透明赤色の精製トルエン溶液を与え、こ
のトルエン溶液の発光スペクトルを468nm波長の励
起光により測定するとオレンジ色の発光帯(ピーク波長
597nm、半値幅41nm)を与え、該トルエン溶液
の吸光スペクトルは488nmの緩やかな肩と580n
mの明瞭なピークを有していた。この発光は同程度の溶
液濃度において、合成例2で得たCdSeナノ結晶の場
合よりも明らかに発光強度が大きかったことから、Zn
Sシェルを有するCdSeナノ結晶に変換され、表面準
位等を経由する非発光過程の寄与が抑制されたものと考
えられた。
【0095】合成例5[PEG残基含有配位子を結合し
た半導体超微粒子] 合成例4で得たCdSe/ZnS−TOPO(約0.5
g)を、アルミニウム箔で隙間なく包んで遮光したガラ
ス容器内で乾燥窒素雰囲気下、精製塩化メチレン(6m
L)に溶解した。これを室温で攪拌しながら合成例1で
得た11−MTEG(0.4g)を加えて得た均一溶液
を、室温遮光条件で約18時間放置した。反応液を濃縮
後、純正化学(株)から供給されるエタノール(8m
L)を加えて攪拌しながら大気圧での加熱還流を15分
間行ったところ、均一なエタノール溶液が得られた。合
成例3で得たCdSe/ZnS−TOPOはエタノール
に実質的に不溶性なので、その有機配位子の主体と考え
られるTOPOが11−MTEGにより置換されたため
エタノール可溶性となったものと結論した。このエタノ
ール溶液を濃縮して得た残渣をn−ヘキサン中で攪拌し
て懸濁洗浄し、静置後に得られた析出物をデカンテーシ
ョン法により分離した(これを以下CdSe/ZnS−
MTEGと略記する)。
【0096】 実施例1[エタノールを溶媒とする塗布組成物] 合成例5で得たエタノール可溶性半導体超微粒子である
CdSe/ZnS−MTEGを塩化メチレンに溶解した
後ここにエタノールを加え、次いで塩化メチレンを蒸留
除去してエタノール溶液を得た。ここに、平均分子量3
60のポリエチレングリコールメタクリレート(0.5
g)、東京化成(株)から供給されるメタクリル酸メチ
ル(0.2g)、キシダ化学(株)から供給されるアゾ
ビスイソブチロニトリル(以下AIBNと略;0.05
g)、及び和光純薬(株)から供給される平均分子量3
0万のポリエチレンオキシド(以下略称PEO;2g)
を加え溶解する。得られるPEO組成物溶液を指に塗布
し、紙に押印後加熱処理してラジカル重合を進行させる
と指紋パターンに相当する塗布面を得る。この塗布面は
合成例4の記載と同様のオレンジ色の発光能を有するの
で、かかるPEO組成物溶液は、エタノールを溶媒とす
る本発明の塗布組成物として用いられる。
【0097】合成例6[重合性ホスフィンオキシド配位
子を結合した半導体超微粒子] 合成例4で得たCdSe/ZnS−TOPOを精製トル
エンに溶解し、ここに合成例2で得たMPO(使用した
CdSe/ZnSの約5倍重量)を加えて十分に作用さ
せ、合成例4同様の沈殿、遠心分離、デカンテーション
による半導体超微粒子の分離精製操作を行うと、MPO
が配位子として結合された半導体超微粒子が得られる
(以下これをCdSe/ZnS−MPOと略記する)。
該MPOの結合は、十分に精製された半導体超微粒子の
FT−IRスペクトルにおいてMPO由来の吸収帯が観
測されることから確認される。
【0098】実施例2[アクリル樹脂マトリクスを与え
る塗布組成物] 合成例6で得るラジカル重合性を有する半導体超微粒子
CdSe/ZnS−MPO(10重量%)、東京化成
(株)から供給される平均分子量7万〜7.5万である
PMMA樹脂(10重量%)、東京化成(株)から供給
されるメタクリル酸n−ブチル(30重量%)、精製ト
ルエン(47重量%)及び実施例1で使用のAIBN
(3重量%)を約23℃の室温で混合してアクリル樹脂
混合液を得る。このアクリル樹脂混合液をPMMA樹脂
シート上に塗布し加熱処理してラジカル重合を進行させ
ると、該樹脂シートに密着し耐摩耗性に優れる塗布面を
得る。塗布面は優れた透明性と合成例4の記載と同様の
オレンジ色の発光能を有するので、かかるアクリル樹脂
混合液は本発明の塗布組成物として用いられる。
【0099】 合成例7[エタノール可溶性の重合性半導体超微粒子] 合成例6で得るCdSe/ZnS−MPO(0.5g)
を、空気雰囲気下55℃のエタノール(8mL)中で攪
拌し懸濁させながら、合成例1で得た11−MTEGの
エタノール溶液を少しずつ滴下する。そして、懸濁した
CdSe/ZnS−MPOが溶解して均一溶液が得られ
次第、該滴下を終了し、直ちに室温に戻して遮光冷蔵す
る。こうして得るエタノール溶液中には有機配位子とし
て11−MTEGとMPOを結合した半導体超微粒子が
生成しているものと考えられる。
【0100】実施例3[重合性半導体超微粒子を使用し
たエタノールを溶媒とする塗布組成物] 合成例7で得るエタノール溶液の全量に、実施例1で使
用の平均分子量360のポリエチレングリコールメタク
リレート(1g)、実施例1で使用のメタクリル酸メチ
ル(0.5g)、実施例1で使用のAIBN(0.1
g)、及び水(0.5g)を加えて氷冷しながら溶解し
た。この含水エタノール溶液を実施例2で使用したと同
様のPMMA樹脂シート上に直径約1mmの点として塗
布し加熱処理してラジカル重合を進行させると、該樹脂
シートに密着し耐摩耗性に優れる直径約1mmの点状塗
布面を得る。この塗布面は優れた透明性と合成例4の記
載と同様のオレンジ色の発光能を有するので、かかる含
水エタノール溶液はエタノールを主体とする塗布溶媒を
用いた本発明の塗布組成物として用いられる。
【0101】実施例4[塗布面の検出] 実施例2で得る塗布面を有するPMMA樹脂シートの複
数部分の吸光スペクトルを測定する。但し、該測定値か
ら差し引くべきバックグラウンド吸光として、塗布をし
ていない同じ厚さのPMMA樹脂シートの吸光スペクト
ルを用いる。その結果、塗布面のある部分のみ、半導体
超微粒子に由来する吸光スペクトルを得る。この塗布面
の吸光スペクトルは、合成例4で得たCdSe/ZnS
−TOPOを精製トルエン溶液のそれと実質的に同一で
あることが確認される。
【0102】合成例8[ZnSeナノ結晶を主体とする
半導体超微粒子の合成] 空冷式のリービッヒ還流管と反応液温測定用の熱電対を
装着した3口フラスコに東京化成(株)から供給される
ヘキサデシルアミン(HDAと略、4.44g)を入
れ、真空下125℃に加熱しながらマグネティックスタ
ーラーで3時間攪拌して予備乾燥した。この間数回、乾
燥アルゴンガスで内部を置換した。別途、乾燥窒素雰囲
気のグローブボックス内で、ジエチル亜鉛の1規定濃度
n−ヘキサン溶液(0.71mL)、セレン(単体)の
トリオクチルホスフィン(TOPと略)溶液(溶液濃
度:0.78ミリモル/g、0.61g)、及び追加の
TOP(2mL)を混合し第1原料溶液とした。また、
硫黄(単体)のTOP溶液(溶液濃度:0.78ミリモ
ル/gであり0.21gの溶液を使用)を更にTOP
(1.5mL)で希釈して第2原料溶液とした。まず、
反応系をアルミニウム箔で包んで遮光し、HDAの入っ
たフラスコはアルゴンガス雰囲気下でほぼ大気圧に保ち
ながら330℃に昇温し、攪拌を継続しながら前記の第
1原料溶液を注射器で一気に注入し、この時点を反応時
間の開始とした。直ちに温度を290℃に設定して約6
0分攪拌を継続した後、温度を300℃に設定し、延べ
460分反応を継続した。次いで第2原料溶液を注射器
で一気に注入した。更に約30分反応を継続してから、
あらかじめ別途125℃真空下で加熱攪拌して乾燥した
TOPO(2mL)を加え、直ちに熱源を除去して空冷
した。反応液が70℃程度まで冷却されたところで精製
トルエン(2mL)を注射器で加えて希釈後室温まで冷
却した。この溶液をメタノール/n−ブタノール(それ
ぞれ20mL/30mL)混合溶媒中に乾燥窒素雰囲気
下で滴下し、不溶物を遠心分離(3000回転/分、3
分間)した。デカンテーションにより上澄み液を除去し
て得た沈殿物をトルエン(10mL)に再度溶解し、メ
タノール/n−ブタノール(それぞれ10mL/15m
L)混合溶媒中に乾燥窒素雰囲気下で滴下し、不溶物を
前記同様に遠心分離した。デカンテーションにより上澄
み液を除去して得た沈殿物をトルエン(4mL)に再度
溶解し、メタノール/n−ブタノール(それぞれ8mL
/12mL)混合溶媒中に乾燥窒素雰囲気下で滴下し、
不溶物を前記同様に遠心分離した。この生成物はトルエ
ンへの溶解性が良好であり、精製トルエン溶液の発光ス
ペクトル(波長350nmで励起)の発光帯ピーク波長
は414nmであり、吸光スペクトルは400nm付近
に顕著な肩を持っていた。また、乾燥固化させた該生成
物粉末のXRDスペクトルにおいて、ZnSe結晶の2
20面と311面に帰属される回折ピークを観測したこ
とからZnSeナノ結晶構造の存在を確認した。この半
導体結晶のTEM観察によれば、重量平均粒子径約5n
mの超微粒子であった。このZnSe超微粒子中の有機
成分含有量を前記のTG測定(窒素気流下室温〜約60
0℃、10℃/分で昇温後120分保持)により求めた
ところ、約38重量%であった。この半導体超微粒子
を、以下ZnSe−TOPOと呼ぶ。
【0103】合成例9[PEG残基含有配位子を結合し
た半導体超微粒子] 合成例8で得たZnSe−TOPO(約0.5g)と1
1−MTEG(0.4g)を、純正化学(株)から供給
されるエタノール(8mL)中で攪拌しながら大気圧で
の加熱還流を15分間行うと、均一なエタノール溶液を
得る。合成例8で得たZnSe−TOPOはエタノール
に実質的に不溶性なので、その有機配位子の主体と考え
られるTOPOが11−MTEGにより置換されたため
エタノール可溶性となるものと考えられる。このエタノ
ール溶液を濃縮して得た残渣をn−ヘキサン中で攪拌し
て懸濁洗浄し、静置後に得られた析出物をデカンテーシ
ョン法により分離する(これを以下ZnSe−MTEG
と略記する)。
【0104】実施例5[2種の半導体超微粒子を含有す
るエタノールを溶媒とする塗布組成物] 合成例7で得るエタノール溶液の全量に合成例9で得た
ZnSe−MTEG(0.5g)を加え、濃縮して得る
残渣を塩化メチレンに溶解し、ここにエタノールを加
え、次いで塩化メチレンを蒸留除去してエタノール溶液
を得る。ここにを実施例1で使用の平均分子量360の
ポリエチレングリコールメタクリレート(2g)、実施
例1で使用のメタクリル酸メチル(1g)、実施例1で
使用のAIBN(0.3g)を加えて氷冷しながら溶解
する。このエタノール溶液(以下「溶液A」と呼ぶ)と
実施例3で得る含水エタノール溶液を、100/0、7
5/25、50/50、25/75、及び0/100の
重量比で混合した5種の混合溶液を調製する。これら
を、実施例2で使用したと同様のPMMA樹脂シート上
に、それぞれ直径約1mmの点として塗布し加熱処理し
てラジカル重合を進行させると、それぞれ該樹脂シート
に密着し耐摩耗性に優れる透明な直径約1mmの点状塗
布面を与える。これら5種の塗布面の吸光スペクトルと
発光スペクトルは互いに異なり、それぞれ、混合使用し
た2種の半導体超微粒子のスペクトルの重ね合わせと解
釈される新しいスペクトルとなる。これらの塗布面は、
いずれも実施例4の塗布面の検出方法により、互いに識
別される。従って、これらの混合溶液は、エタノールを
主体とする溶媒を使用し、複数の半導体超微粒子の混合
による新しいスペクトルを有する本発明の塗布組成物と
して用いられる。
【0105】
【発明の効果】本発明の塗布組成物は半導体超微粒子を
含有するので、その塗布面も、該半導体超微粒子の主体
である半導体結晶の量子効果による吸発光特性を有する
ものとなる。かかる吸発光特性(例えば吸発光波長や吸
発光帯の半値幅等)は、該半導体結晶の結晶組成と粒径
により精密に制御される。
【0106】該塗布面はアクリル樹脂等の高分子をマト
リクスとし該半導体超微粒子を極めて均一に分散するの
で、機械的強度や化学的耐久性に優れ、しかも通常透明
性に優れたものとなる。本発明の塗布組成物は沈殿を生
じない長期保存安定性に優れ、しかも例えばエタノール
や水等の溶媒を使用すれば対環境安全性に優れたものと
なる。
【0107】従って、本発明の塗布組成物は、例えばD
NAチップ等、膨大な種類の生物学的分析を基材上の微
小区画において同時に行う集積分析チップの吸発光検出
微小パターンの塗布形成、あるいは、吸発光スペクトル
形状の「指紋性」を利用した真偽判定印刷等、塗布面の
精密な識別判定が必要な各種塗布用途に非常に有用であ
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) B42D 15/10 531 B42D 15/10 531C G02B 1/02 G02B 1/02 1/11 G07D 7/12 G07D 7/12 G02B 1/10 A Fターム(参考) 2C005 HA04 HA21 HB09 HB10 JB40 KA05 LA12 LB15 2K009 AA12 CC09 CC14 DD02 3E041 AA02 AA10 BB03 4D075 BB85Y CB08 DA04 DB18 EC01 EC10 EC30 4J038 FA011 KA08 KA15 KA20

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 少なくとも重合性成分、半導体超微粒子
    及び溶媒を含有してなる塗布組成物。
  2. 【請求項2】 重合性成分がラジカル重合性基を有する
    ものである請求項1に記載の塗布組成物。
  3. 【請求項3】 半導体超微粒子が重合性を有するもので
    ある請求項1又は2に記載の塗布組成物。
  4. 【請求項4】 半導体超微粒子が、発光帯の半値幅が5
    0nm以下のである発光能を有するものである請求項1
    〜3のいずれかに記載の塗布組成物。
  5. 【請求項5】 半導体超微粒子が亜鉛又はカドミウムを
    半導体結晶組成として含有するものである請求項1〜4
    のいずれかに記載の塗布組成物。
  6. 【請求項6】 半導体超微粒子が、ポリエチレングリコ
    ール残基を分子構造中に含有する配位子を結合したもの
    である請求項1〜5のいずれかに記載の塗布組成物。
  7. 【請求項7】 溶媒がエタノールを主体とするものであ
    る請求項1〜6のいずれかに記載の塗布組成物。
  8. 【請求項8】 塗布組成物中の重合性成分を重合せしめ
    る工程を含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか
    に記載の塗布組成物を使用する塗布方法。
  9. 【請求項9】 複数種の半導体超微粒子を同一塗布面に
    含有させることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに
    記載の塗布組成物を使用する塗布方法。
  10. 【請求項10】 請求項1〜7のいずれかに記載の塗布
    組成物により形成される塗布面を有するシート状塗布
    物。
  11. 【請求項11】 塗布面の基材が非晶性材料で構成され
    てなる請求項10に記載のシート状塗布物。
  12. 【請求項12】 塗布面への光照射により、該塗布面が
    含有する半導体超微粒子の吸発光特性の指紋性を検出す
    ることを特徴とする請求項10又は11に記載のシート
    状塗布物の塗布面検出方法。
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