JP2002114766A - 新規なピペラジノン誘導体及びその製造方法 - Google Patents

新規なピペラジノン誘導体及びその製造方法

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JP2002114766A
JP2002114766A JP2000304904A JP2000304904A JP2002114766A JP 2002114766 A JP2002114766 A JP 2002114766A JP 2000304904 A JP2000304904 A JP 2000304904A JP 2000304904 A JP2000304904 A JP 2000304904A JP 2002114766 A JP2002114766 A JP 2002114766A
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hydrogen atom
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Hiroyuki Nogami
弘之 野上
Ryuichi Anzai
竜一 安齋
Akira Yoshioka
彰 吉岡
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Mitsubishi Rayon Co Ltd
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Mitsubishi Rayon Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 医薬、農薬、キレート剤、高分子化合物等の
原料として有用な新規な2−ピペラジノン誘導体と、そ
の工業的な生産に利用できる、安全かつ効率的な2−ピ
ペラジノン誘導体の製造方法の提供。 【解決手段】 下記一般式(1)の2−ピペラジノン誘
導体あるいはその塩。 【化1】 (式中、R1及びR2は、それぞれ、水素原子、ヒドロキ
シル基(−OH)、又はヒドロキシル基が置換していて
もよい炭素数1〜6のアルキル基を示し、R3は、水素
原子、ヒドロキシル基、スルホ基(−SO3H)、又は
ヒドロキシル基、スルホ基、カルボキシル基(−COO
H)が置換していてもよい炭素数1〜6のアルキル基、
あるいは炭素数1〜20のアルキル基またはアルケニル
基を有するアシル基を示す。)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ピペラジノン誘導
体およびピペラジノン誘導体の製造方法に関し、より具
体的には、医薬、農薬、抗菌剤、キレート剤、高分子化
合物等の原料として有用な、少なくとも3位に3−カル
ボキシエチル基と1位に1,3−ジカルボキシプロピル
基を置換基として有する2−ピペラジノン誘導体、なら
びにこれらの3位にカルボキシアルキル基、1位にジカ
ルボキシアルキル基が置換する2−ピペラジノン誘導体
を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】ピペラジノン誘導体としては、下記式
(4):
【0003】
【化5】
【0004】で表される1−(1,2−ジカルボキシエ
チル)−3−カルボキシメチル−ピペラジン−2−オン
及びそのニッケル、亜鉛、コバルト、銅などの各種金属
とのキレート化合物が知られ、また、そのキレート安定
度定数などのキレート性能が報告されている[Zh.N
eorg.khim.,1989,34巻,381、Z
h.Neorg.Khim.,1992,10巻,23
03他]。また、特開平11−189579号公報や特
開平11−130741号公報には、S,S−エチレン
ジアミン−N,N’−ジコハク酸鉄アルカリ塩製造時
に、式(4)の2−ピペラジノン誘導体が副生すること
が記載されている。
【0005】また、2−ピペラジノン誘導体の合成法と
して、ピペラジノン環にアルキル鎖を導入する方法[T
etrahedron Lett.,1994,35
巻,2533〜2536]、ジペプチド誘導体をエチレ
ングリコール・ビストリフラートで環化する方法なども
知られている[J.Org.Chem.,1997,6
2,1016]。
【0006】なお、2−ピペラジノン環にアルキル鎖を
不斉導入する方法は、発ガン性が疑われている有機溶媒
HMPA(Hexamethylphosphoric Triamide)中で、発
火性のある強塩基t−BuLiを用いている。また、ジ
ペプチド誘導体をエチレングリコール・ビストリフラー
トで環化する方法は、無水溶媒中で水素化ナトリウムを
使用して、反応を行っている。この二つの手法ともに、
用いている試薬を考慮すると、安全性の面で一般的な工
業的製法には適さない方法といえる。
【0007】Journal of American
Chemical Society,76巻,1137
〜1140(1954)には、エタノール中、α−ブロ
モイソ吉草酸エチルとエチレンジアミンとを205〜2
10℃まで加熱して反応させ、3−イソプロピル−2−
ピペラジノンを合成する例が記載されている。また、J
ournal of American Chemica
l Society ,62巻,1202〜1204(1
940)には、エチレンジアミンにα−クロロ酢酸エス
テルやα−ブロモ−n−酪酸エステルを反応させて、得
られるN−モノ(カルボキシアルキル)置換エチレンジ
アミン誘導体を200℃に加熱すると環化することが記
載されている。
【0008】α−ブロモイソ吉草酸エチルを用いる方法
では、200℃以上で反応しているため副反応が起こ
り、収率が低下しやすい上に、特殊な装置を必要とす
る。
【0009】特開平7−291946号公報には、
(R)−脂肪酸エステル誘導体とエチレンジアミンとを
反応させることを特徴とする(S)−3−低級アルキル
−2−ピペラジノンの製造方法が記載されている。さら
には、特開平7−53548号公報には、N,N’−ジ
ベンジルエチレンジアミンまたはそのN置換体にクロロ
マレイン酸ジエチルを反応させて得られた化合物に、ハ
ロゲン化アルキルをさらに反応させた後、接触的脱ベン
ジル化および閉環反応を行わせ、2−ピペラジノン誘導
体を得る方法が記載されている。
【0010】特開平7−291946号公報記載の方法
では、(R)−2−トシルオキシプロピオン酸アルキル
エステル、(R)−2−クロロプロピオン酸アルキルエ
ステルや(R)−2−フルオロプロピオン酸アルキルエ
ステルが使われるが、これらの原料化合物は腐食性を有
す場合がある上、ハロゲン化物やトルエンスルホン酸な
どの腐食性の副生成物が生じる可能性がある。また、多
量の原料エチレンジアミンがトシル酸塩(トルエンスル
ホン酸塩)となり、この副生物を処理する必要が生じ
る。特開平7−53548号公報の方法では、接触的脱
ベンジル化および閉環反応時の収率が60%と低く、そ
れに伴い、全体の反応を通しての収率は、さらに低くな
る。
【0011】特開平11−189579号公報や特開平
11−130741号公報に記載されているように、
S,S−エチレンジアミン−N,N’−ジコハク酸を酸
性条件下におけば、分子内環化反応によって式(4)の
2−ピペラジノン誘導体が生成する。しかしながら、こ
の方法は反応性が低い上、同時に逆マイケル反応により
S,S−エチレンジアミン−N,N’−ジコハク酸がフ
マル酸(trans-2−ブテン二酸)とS−エチレンジアミ
ン−N−コハク酸とに分解する反応も起こり、目的の分
子内環化反応の選択率が低くなっている。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】以上に紹介した通り、
2−ピペラジノン誘導体は、医薬、農薬、キレート剤、
高分子化合物等の原料として有用な化合物であるが、既
に合成方法が確立しているものは限られており、新規な
2−ピペラジノン誘導体とその合成方法、特には、工業
的な生産に適する安全性も高くまた効率のよい合成方法
の提案が望まれている。
【0013】本発明は前記の課題を解決するもので、本
発明の目的は、医薬、農薬、キレート剤、高分子化合物
等の原料として有用な新規な2−ピペラジノン誘導体
と、その工業的な生産に利用できる、安全かつ効率的な
2−ピペラジノン誘導体の製造方法を提供することにあ
る。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記課題
を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、新規な構造を有す
る2−ピペラジノン誘導体あるいはその塩を創製し、そ
れらは医薬、農薬、抗菌剤、キレート剤、高分子化合物
等の原料として有用な2−ピペラジノン誘導体であるこ
とを見出した。具体的には、従来、その工業的な製造に
利用できる手法が報告されていない、少なくとも、2−
ピペラジノン環上の3位にカルボキシアルキル基、1位
の窒素上にジカルボキシアルキル基がそれぞれ置換して
いる2−ピペラジノン誘導体、例えば、3位にカルボキ
シエチル基、1位の窒素上に1,3−ジカルボキシプロ
ピル基がそれぞれ置換している新規な2−ピペラジノン
誘導体を効率的で安全性の高い製造方法を見出し、本発
明を完成するに至った。
【0015】すなわち、本発明の2−ピペラジノン誘導
体あるいはその塩は、下記一般式(1):
【0016】
【化6】
【0017】(式中、R1、R2は同一又は異なり、それ
ぞれ、水素原子、ヒドロキシル基(−OH)、又はヒド
ロキシル基が置換していてもよい直鎖又は分岐鎖の炭素
数1〜6のアルキル基を示し、R3は、水素原子、ヒド
ロキシル基、スルホ基(−SO3H)、又はヒドロキシ
ル基、カルボキシル基(−COOH)、スルホ基のいず
れかの基が置換していてもよい直鎖又は分岐鎖の炭素数
1〜6のアルキル基、あるいは直鎖又は分岐鎖の炭素数
1〜20のアルキル基またはアルケニル基を持つアシル
基を示す。)で表される2−ピペラジノン誘導体または
その塩である。
【0018】この一般式(1)で表される化合物または
その塩において、R1が水素原子である化合物が好まし
い。また、一般式(1)で表される化合物またはその塩
において、R2も水素原子であることが好ましい。加え
て、一般式(1)で表される化合物またはその塩におい
て、R3が水素原子であることがより好ましい。
【0019】一方、一般式(1)で表される化合物また
はその塩において、含まれる不斉炭素がすべて(S)−
配置である化合物とすることができる。あるいは、一般
式(1)で表される化合物またはその塩において、含ま
れる不斉炭素がすべて(R)−配置である化合物とする
ことができる。
【0020】また、本発明は、2−ピペラジノン誘導体
またはその塩の製造方法として、二種の方法を提供す
る。本発明の2−ピペラジノン誘導体またはその塩の製
造を行う第一の方法は、下記一般式(2):
【0021】
【化7】
【0022】(式中、R4、R5は同一又は異なり、それ
ぞれ、水素原子、ヒドロキシル基(−OH)、又はヒド
ロキシル基が置換していてもよい直鎖又は分岐鎖の炭素
数1〜6のアルキル基を示し、R6は、水素原子、ヒド
ロキシル基、スルホ基(−SO3H)、これらヒドロキ
シル基、スルホ基のいずれかの基が置換していてもよい
直鎖又は分岐鎖の炭素数1〜6のアルキル基、あるいは
直鎖又は分岐鎖の炭素数1〜20のアルキル基またはア
ルケニル基を持つアシル基を示し、R7、R8は同一であ
り、それぞれ、−CH2−又は−CH2CH2−基を示
す。)で表される化合物またはその塩を、α-ヒドロキ
シカルボン酸の存在下、溶液またはスラリー状で環化さ
せて、中間生成物として、下記一般式(I):
【0023】
【化8】
【0024】(式中、R4、R5、R6、R7、R8は、そ
れぞれ、前記一般式(2)中のR4、R 5、R6、R7、R
8と同一の基を示す。)で表される2−ピペラジノン誘
導体を形成し、更に、R6が水素である場合、必要に応
じて4位の窒素原子上に置換基を付加し、下記一般式
(3):
【0025】
【化9】
【0026】(式中、R9、R10、R12、R13は、それ
ぞれ、前記一般式(2)中のR4、R5、R7、R8と同一
の基を示し、R11は、水素原子、ヒドロキシル基、スル
ホ基(−SO3H)、又はヒドロキシル基、カルボキシ
ル基(−COOH)、スルホ基のいずれかの基が置換し
ていてもよい直鎖又は分岐鎖の炭素数1〜6のアルキル
基、あるいは直鎖又は分岐鎖の炭素数1〜20のアルキ
ル基またはアルケニル基を持つアシル基を示し、R12
13は同一であり、それぞれ、−CH2−又は−CH2
2−基を示す。)で表される2−ピペラジノン誘導体
に変換することを特徴とする前記一般式(3)の2−ピ
ペラジノン誘導体またはその塩の製造方法である。
【0027】一般式(I)のR6が水素である場合、生
成した4位の窒素原子上に置換基を有ささない2−ピペ
ラジノン誘導体またはその塩に、水または有機溶媒中
で、アルカリ金属水酸化物や第三級アミンなどの塩基の
存在下、ハロゲン化アルキルや2−クロロエタノール、
クロロエタンスルホン酸、塩化ラウロイルなどのハロゲ
ン化物を反応させることにより、4位の窒素に置換基を
導入することが可能になる。
【0028】一般式(2)で表される化合物またはその
塩において、R4が水素原子であることが好ましい。ま
た、一般式(2)で表される化合物またはその塩におい
て、R5も水素原子であることが好ましい。加えて、一
般式(2)で表される化合物またはその塩において、R
6も水素原子であることが好ましい。
【0029】なお、一般式(2)で表される化合物また
はその塩において、含まれる不斉炭素がすべて(S)−
配置である化合物を用いることができる。あるいは、一
般式(2)で表される化合物またはその塩において、含
まれる不斉炭素がすべて(R)−配置である化合物を用
いることができる。
【0030】この第一の方法では、一般式(2)で表さ
れる化合物を一般式(I)の2−ピペラジノン誘導体へ
導く、縮合環化反応を、分離精製用材料を充填又は備え
付けた容器及び/またはカラム中で行うこともできる。
その時、用いる分離精製用材料は、イオン交換樹脂、シ
リカゲル、アルミナ、フロリジル、セルロース、珪藻
土、イオン交換膜からなる群のうちから選択される少な
くとも一つであることが望ましい。
【0031】一方、本発明の2−ピペラジノン誘導体ま
たはその塩の製造を行う第二の方法は、前述の第一の方
法に若干の変更を加えたものである。すなわち、本発明
の第二の方法は、前記一般式(2)で表される化合物ま
たはその塩を、エステル化して、得られるエステル体
を、溶液またはスラリー状で環化させて、2−ピペラジ
ノン環を形成したのち、導入されたエステルを加水分解
することにより、前記一般式(I)で表される2−ピペ
ラジノン誘導体を形成し、R6が水素である場合、必要
に応じて4位の窒素原子上に置換基を付加し、最終生成
物である前記一般式(3)で表される2−ピペラジノン
誘導体に変換することを特徴とする一般式(3)の2−
ピペラジノン誘導体またはその塩の製造方法である。
【0032】一般式(I)のR6が水素である場合、生
成した4位の窒素原子上に置換基を有さない2−ピペラ
ジノン誘導体またはその塩に、水または有機溶媒中で、
アルカリ金属水酸化物や三級アミンなどの塩基の存在
下、ハロゲン化アルキルや2−クロロエタノール、クロ
ロエタンスルホン酸、塩化ラウロイルなどのハロゲン化
物を反応させることにより、4位の窒素に置換基を導入
することが可能になる。
【0033】この第二の方法においても、一般式(2)
で表される化合物またはその塩において、R4が水素原
子であることが好ましい。また、一般式(2)で表され
る化合物またはその塩において、R5も水素原子である
ことが好ましい。加えて、一般式(2)で表される化合
物またはその塩において、R6も水素原子であることが
好ましい。
【0034】なお、一般式(2)で表される化合物また
はその塩において、含まれる不斉炭素がすべて(S)−
配置である化合物を用いることができる。あるいは、一
般式(2)で表される化合物またはその塩において、含
まれる不斉炭素がすべて(R)−配置である化合物を用
いることができる。
【0035】本発明の第二の方法では、縮合環化反応で
得られる第一の中間生成物は、上記一般式(I)で表さ
れる2−ピペラジノン誘導体をエステル化したエステル
体であるため、エステルの加水分解を行って、一般式
(I)で表される2−ピペラジノン誘導体とする。その
際、環化反応後に実施するエステルの加水分解は、pH8
〜13.5の範囲で行うことが好ましい。
【0036】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳しく説明する。
【0037】一般式(1)で表されるピペラジノン誘導
体またはその塩において、R1〜R2で表される置換基
は、原料由来のものである。R3で表される置換基は、
原料由来のものであっても、あるいは、一旦置換を有さ
ない2−ピペラジノン誘導体またはその塩を合成した
後、所定の置換基を付加させたものであってもよい。
【0038】この一般式(1)中、R1〜R2における、
ヒドロキシル基が置換していてもよい直鎖又は分岐鎖の
炭素数1〜6のアルキル基としては、メチル基、エチル
基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、
イソプロピル基、イソブチル基、イソペンチル基などの
基が挙げられる。また、その上にヒドロキシル基、カル
ボキシル基のいずれかが置換した直鎖又は分岐鎖の炭素
数1〜6のアルキル基は、これらアルキル基に由来す
る、ヒドロキシアルキル基などとなっている。
【0039】また、R3における、ヒドロキシル基、カ
ルボキシル基、スルホ基が置換していてもよい直鎖又は
分岐鎖の炭素数1〜6のアルキル基としては、メチル
基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘ
キシル基、イソプロピル基、イソブチル基、イソペンチ
ル基などの基が挙げられる。また、その上にヒドロキシ
ル基、カルボキシル基、スルホ基のいずれかが置換した
直鎖又は分岐鎖の炭素数1〜6のアルキル基は、これら
アルキル基に由来する、ヒドロキシアルキル基、カルボ
キシアルキル基などとなっている。直鎖もしくは分岐鎖
の炭素数1〜20のアルキル基またはアルケニル基を持
つアシル基は、R−CO−またはR−SO 2−の形態を
とり、その例としては、n−ノナノイル基(CH3−(C
H27−CO−)、n−デカノイル基(CH3−(CH28−CO
−)、ラウロイル基(CH3−(CH210−CO−)、ミリス
トイル基(CH3−(CH212−CO−)、パルミトイル基
(CH3−(CH214−CO−)、ステアロイル基(CH3−(C
H216−CO−)、オレオイル基(cis−CH3−(CH27
CH=CH−(CH27−CO−)等が挙げられる。
【0040】本発明の2−ピペラジノン誘導体またはそ
の塩では、生体内などにおける誘導体の安定性の点か
ら、一般式(1)中のR1、R2は、水素原子、メチル
基、エチル基、ヒドロキシル基、ヒドロキシエチル基等
が好ましく、なかでも、R1、R2は、いずれかは水素原
子であることがより好ましい。加えて、R1、R2が、と
もに水素原子であると、一層好ましい。
【0041】一般式(1)中のR3は、安定性の点から
は、水素原子、メチル基、エチル基、ヒドロキシル基、
ヒドロキシエチル基、カルボキシメチル基、カルボキシ
エチル基、n−ノナノイル基、n−デカノイル基、ラウ
ロイル基、ミリストイル基、ステアロイル基が好まし
い。また、医薬品等の原料として使用される場合、種々
のN−置換体を調製する目的から、R3を水素原子とす
ることが好ましい。
【0042】本発明の2−ピペラジノン誘導体またはそ
の塩では、少なくとも、1位の窒素原子上に置換する
1,3−ジカルボキシプロピル基の1位の炭素原子、な
らびに、2−ピペラジノン環の3位の炭素原子は不斉炭
素であり、二つまたはそれ以上の不斉炭素を有してお
り、複数種の光学異性体が存在することになる。いずれ
の光学異性体も、用途に応じては、単独もしくは混合し
て使用することができる。通常、分子内に含まれる不斉
炭素において、S−配置をとる誘導体が、生分解性に優
れるので好ましく、より生分解性に優れる全ての不斉炭
素がS−配置である誘導体は、医薬品やその原料など、
生分解性を要する用途に特に好ましい。
【0043】本発明の2−ピペラジノン誘導体は、本発
明の第一の製造方法に従い、下記一般式(2):
【0044】
【化10】
【0045】(式中、R4、R5は同一又は異なり、それ
ぞれ、水素原子、ヒドロキシル基(−OH)、又はヒド
ロキシル基が置換していてもよい直鎖又は分岐鎖の炭素
数1〜6のアルキル基を示し、R6は、水素原子、ヒド
ロキシル基、スルホ基(−SO3H)、これらヒドロキ
シル基、スルホ基のいずれかの基が置換していてもよい
直鎖又は分岐鎖の炭素数1〜6のアルキル基、あるいは
直鎖又は分岐鎖の炭素数1〜20のアルキル基またはア
ルケニル基を持つアシル基を示し、R7、R8は同一であ
り、それぞれ、−CH2−又は−CH2CH2−基を示
す。)で表される化合物またはその塩を、α-ヒドロキ
シカルボン酸の存在下溶液またはスラリー状で環化させ
て、一旦、中間生成物として、下記一般式(I):
【0046】
【化11】
【0047】(式中、R4、R5、R6、R7、R8は、そ
れぞれ、前記一般式(2)中のR4、R 5、R6、R7、R
8と同一の基を示す。)で表される2−ピペラジノン誘
導体を形成した後、更に、R6が水素である場合、必要
に応じて4位の窒素原子上に置換基を付加し、最終生成
物である下記一般式(3):
【0048】
【化12】
【0049】(式中、R9、R10、R12、R13は、それ
ぞれ、前記一般式(2)中のR4、R5、R7、R8と同一
の基を示し、R11は、水素原子、ヒドロキシル基、スル
ホ基(−SO3H)、又はヒドロキシル基、カルボキシ
ル基(−COOH)、スルホ基のいずれかの基が置換し
ていてもよい直鎖又は分岐鎖の炭素数1〜6のアルキル
基、あるいは直鎖又は分岐鎖の炭素数1〜20のアルキ
ル基またはアルケニル基を持つアシル基を示し、R12
13は同一であり、それぞれ、−CH2−又は−CH2
2−基を示す。)で表される2−ピペラジノン誘導体
に変換することにより製造することができる。また、一
般式(2)で表される化合物をエステル化し、環化させ
た後、エステルを加水分解するという第二の方法を用い
ても、目的とする2−ピペラジノン誘導体またはその塩
を製造できる。
【0050】本発明の製造方法で出発原料として用いる
一般式(2)の化合物としては、市販のもの、ならび
に、その誘導体を使用することができる。一般式(2)
中のR 4、R5における、ヒドロキシル基が置換していて
もよい直鎖又は分岐鎖の炭素数1〜6のアルキル基とし
ては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペ
ンチル基、ヘキシル基、イソプロピル基、イソブチル
基、イソペンチル基などの基が挙げられる。R6におけ
る、ヒドロキシル基、スルホ基が置換していてもよい直
鎖又は分岐鎖の炭素数1〜6のアルキル基としては、メ
チル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル
基、ヘキシル基、イソプロピル基、イソブチル基、イソ
ペンチル基などの基が挙げられ、直鎖もしくは分岐鎖の
炭素数1〜20のアルキル基またはアルケニル基を持つ
アシル基は、R−CO−またはR−SO 2−の形態をと
り、その例としては、n−ノナノイル基、n−デカノイ
ル基、ラウロイル基、ミリストイル基、パルミトイル
基、ステアロイル基、オレオイル基等が挙げられる。
【0051】一般式(2)で表される化合物は、公知の
方法で合成することができる。例えば、エチレンジアミ
ン−N,N’−ジコハク酸、エチレンジアミン−N,
N’−ジグルタル酸、1,2−プロパンジアミン−N,
N’−ジコハク酸、1,2−プロパンジアミン−N,
N’−ジグルタル酸、1−ヒドロキシ−1,2−エチレ
ンジアミン−N,N’−ジグルタル酸等は、ジクロロエ
タン、1,2−ジクロロプロパン、1,2−ジクロロエ
タノール、ジブロモエタンなどのジハロゲノアルカン誘
導体に、水または有機溶媒中で、アルカリ金属水酸化物
や三級アミンなどの塩基の存在下、ニ分子のL−アスパ
ラギン酸やL−グルタミン酸のようなアミノ酸を反応さ
せることによって得られる。また、触媒、微生物や酵素
等を用いて、エチレンジアミンや1,2−プロピレンジ
アミン等のジアミンに、マレイン酸やフマル酸あるいは
それらのエステル体などを付加させる不斉合成によって
も得られる。エチレンジアミン−N−メチル−N,N’
−ジコハク酸、エチレンジアミン−N−エチル−N,
N’−ジコハク酸、エチレンジアミン−N−イソプロピ
ル−N,N’−ジコハク酸、エチレンジアミン−N−
(2−エタノール)−N,N’−ジコハク酸、1,2−
プロパンジアミン−N−メチル−N,N’−ジコハク
酸、エチレンジアミン−N−メチル−N,N’−ジグル
タル酸、エチレンジアミン−N−(2−エタノール)−
N,N’−ジグルタル酸、1,2−プロパンジアミン−
N−メチル−N,N’−ジグルタル酸等は、前記の方法
で得られた化合物に、水または有機溶媒中で、アルカリ
金属水酸化物や三級アミンなどの塩基の存在下、ハロゲ
ン化アルキルやクロロ酢酸、2−クロロエタノール、ク
ロロエタンスルホン酸、塩化ラウロイルなどのハロゲン
化物を反応させることにより、窒素に置換基を導入する
ことが可能になる。
【0052】また、得られる一般式(I)の2−ピペラ
ジノン誘導体に、2−クロロエタノール、ハロゲン化ア
ルキルやクロロエタンスルホン酸などを反応させ、置換
基の導入を図る等の手法で、一般式(I)の2−ピペラ
ジノン誘導体を中間原料として、目的とする一般式
(3)の2−ピペラジノン誘導体に変換することもでき
る。
【0053】一般式(2)の化合物においては、一般式
(2)中、R7、R8に隣接し、窒素原子と結合している
二つの炭素原子はともに不斉炭素であり、(S,S)、
(R,R)、(S,R)、(R,S)の配置のいずれか
を持つ。このように複数の光学異性体が存在するが、好
適に利用される一般式(2)の化合物の例として、エチ
レンジアミン−N,N’−ジコハク酸、エチレンジアミ
ン−N−メチル−N,N’−ジコハク酸、エチレンジア
ミン−N−エチル−N,N’−ジコハク酸、エチレンジ
アミン−N−イソプロピル−N,N’−ジコハク酸、エ
チレンジアミン−N−n−プロピル−N,N’−ジコハ
ク酸、エチレンジアミン−N−n−ブチル−N,N’−
ジコハク酸、エチレンジアミン−N−(2−エタノー
ル)−N,N’−ジコハク酸、1,2−プロパンジアミ
ン−N,N’−ジコハク酸、1,2−プロパンジアミン
−N−メチル−N,N’−ジコハク酸、1,2−プロパ
ンジアミン−N−エチル−N,N’−ジコハク酸、1,
2−プロパンジアミン−N−イソプロピル−N,N’−
ジコハク酸、1,2−プロパンジアミン−N−n−プロ
ピル−N,N’−ジコハク酸、1,2−プロパンジアミ
ン−N−n−ブチル−N,N’−ジコハク酸、1,2−
プロパンジアミン−N−(2−エタノール)−N,N’
−ジコハク酸、1−ヒドロキシ−1,2−エチレンジア
ミン−N,N’−ジコハク酸、エチレンジアミン−N,
N’−ジグルタル酸、エチレンジアミン−N−メチル−
N,N’−ジグルタル酸、エチレンジアミン−N−エチ
ル−N,N’−ジグルタル酸、エチレンジアミン−N−
イソプロピル−N,N’−ジグルタル酸、エチレンジア
ミン−N−n−プロピル−N,N’−ジグルタル酸、エ
チレンジアミン−N−n−ブチル−N,N’−ジグルタ
ル酸、エチレンジアミン−N−(2−エタノール)−
N,N’−ジグルタル酸、1,2−プロパンジアミン−
N,N’−ジグルタル酸、1,2−プロパンジアミン−
N−メチル−N,N’−ジグルタル酸、1,2−プロパ
ンジアミン−N−エチル−N,N’−ジグルタル酸、
1,2−プロパンジアミン−N−イソプロピル−N,
N’−ジグルタル酸、1,2−プロパンジアミン−N−
n−プロピル−N,N’−ジグルタル酸、1,2−プロ
パンジアミン−N−n−ブチル−N,N’−ジグルタル
酸、1,2−プロパンジアミン−N−(2−エタノー
ル)−N,N’−ジグルタル酸、1−ヒドロキシ−1,
2−エチレンジアミン−N,N’−ジグルタル酸、また
はこれらの塩が挙げられる。加えて、後に述べるよう
に、これらのエステル体等も原料として利用できる。反
応性や目的物選択性の点から、エチレンジアミン−N,
N’−ジコハク酸、1,2−プロパンジアミン−N,
N’−ジコハク酸、エチレンジアミン−N,N’−ジグ
ルタル酸またはこれらの塩等が好ましい。
【0054】原料に用いる一般式(2)で表される化合
物またはその塩は、合成される2−ピペラジノン誘導体
の安定性の点から、R4、R5は水素原子、メチル基、エ
チル基、ヒドロキシル基等が好ましく、水素であること
がより好ましい。また、窒素原子上に置換するR6は、
水素原子、メチル基、エチル基、ヒドロキシエチル基、
スルホエチル基、ラウロイル基、ステアロイル基が好ま
しく、なかでも、水素原子であることがより好ましい。
6が水素原子の際には、2−ピペラジノン環を形成し
た後、公知のN−置換方法を利用して、所望の置換基を
かかる窒素原子上に導入することもできる。
【0055】一般式(2)で表される化合物またはその
塩は、少なくとも二つまたはそれ以上の不斉炭素を有し
ており、数種の光学異性体が存在する。本発明の製造方
法では、分子内のアミノ基とカルボキシル基の反応にお
いて、前記の不斉炭素の絶対配置は保持される。従っ
て、目的とする最終生成物において要求される絶対配置
に応じて、いずれかの光学異性体も単独、もしくは混合
して使用できる。なお、製造の際、発生する未反応残留
分、あるいは、副生成物を微生物を利用して分解処理す
る場合、生分解性の観点では、S体の不斉炭素を有する
化合物が好ましく、より生分解性に優れる全ての不斉炭
素がS体である化合物を用いると、特に好ましい。加え
て、合成される2−ピペラジノン誘導体も、その生分解
性の点からS体の不斉炭素を有する光学活性体が好まし
く、より生分解性に優れるすべての不斉炭素がS体であ
る2−ピペラジノン誘導体が特に好ましいため、一般式
(2)で表される化合物自体も、S体の不斉炭素を有す
る光学活性体を用いることが好ましく、すべての不斉炭
素がS体である光学活性体を用いることが特に好まし
い。
【0056】本発明の第一の製造方法の環化反応では、
分子内アミノ基と分子内カルボキシル基とが反応し、ア
ミド結合が生成して環化する。1−ヒドロキシ−1,2
−エチレンジアミン−N,N’−ジコハク酸、1−ヒド
ロキシ−1,2−エチレンジアミン−N,N’−ジグル
タル酸等のようにエチレンジアミン部分に電子吸引性の
基を有する化合物の場合、電子吸引性基側のアミンがカ
ルボン酸と反応したラクタムとなりやすく、5−ヒドロ
キシ−1−(1,2−ジカルボキシエチル)−3−カル
ボキシメチル−ピペラジン−2−オン、5−ヒドロキシ
−1−(1,3−ジカルボキシプロピル)−3−カルボ
キシエチル−ピペラジン−2−オンのように、5位に電
子吸引性基を有するピペラジノン誘導体ができやすい。
なお、既知の方法で一般式(2)の原料化合物をエステ
ル化し、アルキルエステル化されたカルボキシル基とア
ミノ基との間で、同様な反応を行なわせることにより反
応性が向上する場合がある。このエステル化物を用いる
変形が、後に説明する第二の方法である。
【0057】前記アミド結合の生成による縮合(環化)
反応は無触媒でも進行するが、反応促進作用・触媒作用
を示す添加物として、酸や塩基を共存させたほうが反応
が早く進行する。通常、反応促進作用・触媒作用を示す
物質となる、酸としては、有機酸や無機酸、酸性アミノ
酸などの酸性物質が使用され、また、塩基としては、ア
ルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アミ
ン、アンモニアなどの塩基性物質などが使用される。本
発明においては、酸としては、カルボキシル基を有する
有機酸を、塩基としては、トリエチルアミンなどの第三
級アミンを用いると反応がより促進される。しかしなが
ら、反応条件によっては、これらの触媒の幾つかでは、
原料の分解などが起こり、目的化合物の選択率が著しく
低くなることもある。
【0058】そのため、本発明者らは、目的化合物の選
択率を高く保つ反応促進作用・触媒作用を示す物質の検
討を行った結果、リンゴ酸(2−ヒドロキシブタン二
酸)、グリコール酸(ヒドロキシ酢酸)などのα−ヒド
ロキシカルボン酸を使用した場合、反応速度が速い上
に、目的物の選択性が優れることを見出した。特に、リ
ンゴ酸やグリコール酸が、反応速度及び目的物選択性の
点からより優れている。前記の反応促進作用・触媒作用
を示す物質の使用量は、例えば、α-ヒドロキシカルボ
ン酸の使用量は、一般式(2)で表される原料化合物に
対し、0.0001〜1倍モルの範囲に選択することが
好ましく、収率の点から0.001倍〜0.1倍モルが
より好ましい。
【0059】一般式(2)で表される原料化合物は、そ
れ自体液体であれば無溶媒でもアミド結合形成反応は進
行するが、原料化合物を溶媒中で環化させる反応は、収
率や目的物の選択性、加えて、この原料化合物自体が固
体である場合の反応性の点から、本発明の製造方法で
は、環化反応を溶媒の存在下で溶液またはスラリーの状
態で反応を行うとよい。利用できる溶媒としては、水、
アセトアミド、ホルムアミド、N−メチルホルムアミ
ド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルフォ
キシド、クレゾール、フェノール、キシレノール、アセ
トン、メタノール、エタノール、エチレングリコール、
ジオキサン、テトラヒドロフラン、ピリジン、γ−ブチ
ルラクトン、スルホラン、シクロヘキサノン、ジエチレ
ングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコール
ジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエ
ーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、メ
チルエチルケトン、テトラヒドロフラン、ベンゼン、ト
ルエン、トリエチルアミン等が挙げられる。溶媒とし
て、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−
ジメチルホルムアミド、アセトン、メタノール、エタノ
ール、テトラヒドロフランなどを利用することが好まし
く、さらに、アセトン、メタノール、エタノール、テト
ラヒドロフランなどを用いることがより好ましい。これ
らの溶媒は、混合して使用しても良い。溶媒の量として
は、一般式(2)の原料化合物に対して重量で1倍以
上、好ましくは2〜1000倍、さらに好ましくは5〜
100倍の範囲に選択するとよい。
【0060】一般式(2)で表される化合物の分子内環
化反応の反応温度は、20〜120℃、好ましくは40
〜100℃の範囲に選択する。前記の範囲より反応温度
を低くすると、反応が完結するまで時間がかかり過ぎ
る。逆に、前記の範囲より反応温度を高くすると、原料
や生成物の分解が生じるなどの理由で収率が低下する。
【0061】上記の環化反応は、分離精製用材料を充填
又は備え付けた容器及び/またはカラム中で、その反応
を行うこともできる。具体的には、イオン交換樹脂、シ
リカゲル、アルミナ、フロリジル、セルロース、珪藻土
などを充填させた固定層、移動層や擬似移動層のカラム
やイオン交換膜を備え付けた反応容器を使用して反応を
行うことができる。
【0062】充填剤を使用したカラム中で反応させるこ
とにより、目的生成物、副生成物、不純物などのうち、
用いる充填剤に応じて、任意の化合物を捕集できる。例
えば、副生成物や不純物を捕集した場合には、これら副
生成物や不純物に起因する副反応の抑制が可能になる上
に、反応系に残される目的生成物のみを容易に取り出す
ことも可能となる。一方、目的生成物を捕集した場合に
は、平衡が所望の反応が進行する方向に傾き、収率が向
上する効果が有る。さらには、目的生成物のみを回収で
きる。また、目的生成物または副生成物を系外に取り除
きながら、反応を行うことも可能である。
【0063】本発明の第二の製造方法では、2−ピペラ
ジノン環を形成する環化反応を、一般式(2)で表され
る化合物を一旦エステル化して、そのエステル化物を出
発原料として行うものである。一般式(2)で表される
化合物のエステル化物を用いる場合も、環構成した際6
員環となる、分子内アミノ基と分子内カルボン酸エステ
ル基とが反応し、アミド結合が生成して環化する。一般
式(2)で表される化合物のエステル化は、既知のカル
ボン酸のエステル化法によって行なうことができる。例
えば、過剰量のアルコール存在下、塩酸や硫酸などの酸
または水酸酸化ナトリウムやピリジンなどのアルカリ性
物質を触媒として、還流温度で反応させる方法や、過剰
量のアルコール存在下、0℃以下で一般式(2)で表さ
れる化合物に塩化チオニルを反応させ、エステル化合物
の塩酸塩を得る方法などが利用できる。なお、一般式
(2)で表される化合物のエステル化物は、すべてのカ
ルボキシル基がエステル化されたものでも、一部のカル
ボキシル基がエステル化されたものでも良い。
【0064】この一般式(2)で表される化合物のエス
テル化物を中間原料とする環化反応においても、このエ
ステル化物それ自体、液体であれば無溶媒でもアミド結
合形成反応は進行するが、中間原料化合物を溶媒中で環
化させる反応は、収率や目的物の選択性、加えて、この
中間原料化合物自体が固体である場合の反応性の点か
ら、本発明の製造方法では、環化反応を溶媒の存在下で
溶液またはスラリーの状態で反応を行うとよい。利用で
きる溶媒としては、水,アセトアミド、ホルムアミド、
N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミ
ド、ジメチルスルフォキシド、クレゾール、フェノー
ル、キシレノール、アセトン、メタノール、エタノー
ル、エチレングリコール、ジオキサン、テトラヒドロフ
ラン、ピリジン、γ−ブチルラクトン、スルホラン、シ
クロヘキサノン、ジエチレングリコールジメチルエーテ
ル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチ
レングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコ
ールジエチルエーテル、メチルエチルケトン、テトラヒ
ドロフラン、ベンゼン、トルエン、トリエチルアミン等
が挙げられる。溶媒として、ホルムアミド、N−メチル
ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセト
ン、メタノール、エタノール、テトラヒドロフランなど
を利用することが好ましく、さらに、アセトン、メタノ
ール、エタノール、テトラヒドロフランなどを用いるこ
とがより好ましい。これらの溶媒は、混合して使用して
も良い。溶媒の量としては、中間原料とする一般式
(2)の化合物のエステル化物に対して重量で1倍以
上、好ましくは2〜1000倍、さらに好ましくは5〜
100倍の範囲に選択するとよい。
【0065】中間原料とする一般式(2)の化合物のエ
ステル化物において、その環化反応の反応温度は、0〜
120℃、好ましくは20〜80℃の範囲に選択する。
前記の範囲より反応温度を低くすると、反応が完結する
まで時間がかかり過ぎる。逆に、前記の範囲より反応温
度を高くすると、中間原料や生成物の分解が生じるなど
の理由で収率が低下する。
【0066】この環化反応後、2−ピペラジノン環が形
成された中間生成物中には、当初エステル化されたカル
ボキシル基などが残っているので、このエステルの加水
分解を行う。その際、水自体が反応に消費され、また、
反応溶液のpHを調整する目的からも、溶媒として水を
使用することができるが、必要に応じて、水に有機溶媒
を混合、混和させて使用しても良い。
【0067】一般に、加水分解の条件によっては、エス
テルだけではなくアミド結合も加水分解されるが、本発
明者らは、pH8〜13.5、好ましくはpH10〜13で
加水分解を行うことにより、目標とするエステルのみを
選択的に加水分解でき、目的生成物が効率良く得られる
ことを見出した。具体的には、前記のpH範囲より低い
pHでは、エステルの加水分解が進行しなかったり、酸無
水物などの副生成物が生成する。一方、前記のpH範囲
より高いpHでは、アミド結合までもが加水分解され、2
−ピペラジノン環(ラクタム)の開環が生じる。一般
に、反応液のpH調整には、アルカリ金属水酸化物、ア
ルカリ土類金属水酸化物、アミン、アンモニアなどの塩
基性物質、有機酸や無機酸、酸性アミノ酸などの酸性物
質が使用される。本発明の製造方法では、反応液のpH
調整に際して、塩基性物質としてはアルカリ金属水酸化
物、酸性物質としては無機酸を利用することが好まし
く、さらに、アルカリ金属水酸化物のなかでも、水酸化
リチウムや水酸化ナトリウムを、無機酸のなかでも、塩
酸や硫酸を利用することがより好ましい。
【0068】エステルの加水分解の反応温度は、10〜
100℃の範囲、好ましくは30〜60℃の範囲に選択
する。前記の範囲より反応温度を低くする場合、反応が
完結するまであまりに長い時間を要する。逆に、前記の
範囲より反応温度を低くする場合、目的のエステルの加
水分解以外に、ラクタムの開環反応が生じたり、前記ラ
クタムの分解による副生成物量が増えるなどの理由で収
率が低下する。
【0069】以上の反応終了後、反応混合物中には、目
的とする本発明の2−ピペラジノン誘導体、あるいはそ
の塩の他に、未反応の出発原料、反応により副生する無
機塩、中間生成物などのエステル誘導体またはその塩、
脂肪酸等の挟雑物が含まれることがある。本発明におい
ては、反応生成物をそのまま使用することも可能である
が、目的とする2−ピペラジノン誘導体、あるいはその
塩を、必要に応じて溶媒分別法、イオン交換クロマトグ
ラフィー、再結晶法、電気透析法など、公知の方法によ
り精製して用いることもできる。
【0070】本発明の一般式(1)で表される2−ピペ
ラジノン誘導体、すなわち、上記の製造方法で得られる
一般式(3)で表される2−ピペラジノン誘導体は、カ
ルボキシル基(−COOH)、場合によっては、さらに
はスルホ基(−SO3H)を有するので、種々の陽イオ
ンまたは塩基との塩を形成してもよい。かかる塩として
は、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、重
金属塩、アミン塩、塩基性アミノ酸塩、アンモニウム塩
等が挙げられる。具体的には、ナトリウム、カリウム、
リチウム、マグネシウム、カルシウム、銀、銅、亜鉛、
スズ、クロム、チタン、ニッケル、コバルトなどの金属
塩、あるいは、トリメチルアミン、トリエチルアミン、
トリブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノー
ルアミン、トリエタノールアミン、リジン、アルギニ
ン、コリン、アンモニア等とのアミン塩またはアンモニ
ウム塩が挙げらる。これらの塩は、混合して使用しても
良く、また、一つの分子中に複数の陽イオン、塩基を含
むものであっても良い。更には、分子内に複数のカルボ
キシル基(−COOH)、場合によっては複数のスルホ
基(−SO3H)を有するが、その一部のみが塩を形成
している、部分中和塩としても良い。
【0071】
【実施例】次に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明
する。これら実施例は本発明の最良の実施の形態の一例
であるものの、本発明はこれら実施例により限定される
ものではない。
【0072】(実施例1)3つ口フラスコに、(S,
S)−エチレンジアミン−N,N’−ジグルタル酸3
2.0g(0.1モル)及び水400mlを入れ、これ
にα-ヒドロキシカルボン酸として、グリコール酸0.
076g(0.001モル)を添加する。この混合液
を、スラリー状のまま80℃で6時間攪拌しながら反応
させた。6時間攪拌後、溶解していない(S,S)−エ
チレンジアミン−N,N’−ジグルタル酸はほとんどな
くなった。
【0073】反応終了後、反応液を80℃で熱ろ過し、
ろ液をエバポレーターで濃縮して結晶を析出させた。析
出した結晶を80℃で水300mlに溶解させ、再度熱
ろ過した。ろ液を10℃で静置し、再結晶を行った。析
出した結晶をろ過し、真空乾燥を行い、(S,S)−1
−(1,3−ジカルボキシプロピル)−3−カルボキシ
エチル−ピペラジン−2−オンを26.2g(式
(5):収率 86.8%)得た。
【0074】得られた(S,S)−1−(1,3−ジカ
ルボキシプロピル)−3−カルボキシエチル−ピペラジ
ン−2−オンの元素分析、IR、NMR及び光学純度の
測定結果を以下に示す。
【0075】
【化13】
【0076】質量分析(FABイオン化法):M/Z:
303(M+H+) 元素分析:C 47.54%、H 5.99%、N
9.26% (理論値:C 47.68%、H 5.99%、N
9.26%)1 H−NMR(溶媒:D2O、δppm):1.77〜
1.85(m,2H,a)、2.10〜2.36(m,
2H×3,b、c、d)、2.81(d,2H,e)、
3.80(d,2H,f)、4.13〜4.17(m,
H×2,g、h) 赤外線吸収スペクトル(KBr錠剤):3430cm-1
(νN−H、ラクタム−NH−)、2945,2920
cm-1(νCH2)、1722,1693cm- 1(νC
=O、−COOH)、1634cm-1(νC=O、ラク
タム −CON<)、 光学純度:98%ee(HPLC:光学分割カラム) 比旋光度:[α]D 25=−3.9(1%水溶液) (実施例2)3つ口フラスコに、1−ヒドロキシメチル
−1,2−エチレンジアミン−N,N’−ジグルタル酸
(ラセミ体)33.4g(0.1モル)及び水400m
lを入れ、これにα-ヒドロキシカルボン酸として、
(d)−リンゴ酸1.3g(0.01モル)を添加し
た。この混合液を、スラリー状のまま70℃で8時間攪
拌しながら反応させた。8時間攪拌後、溶解していない
1−ヒドロキシメチル−1,2−エチレンジアミン−
N,N’−ジグルタル酸はほとんどなくなった。
【0077】反応終了後、反応液を80℃で熱ろ過し、
ろ液をエバポレーターで濃縮して結晶を析出させた。析
出した結晶を80℃で水300mlに溶解させ、再度熱
ろ過した。ろ液を10℃で静置し、再結晶を行った。析
出した結晶をろ過し、真空乾燥を行い、5−ヒドロキシ
メチル−1−(1,3−ジカルボキシプロピル)−3−
カルボキシエチル−ピペラジン−2−オン(ラセミ体)
を26.1g(式(6):収率 78.5%)得た。
【0078】得られた5−ヒドロキシメチル−1−
(1,3−ジカルボキシプロピル)−3−カルボキシエ
チル−ピペラジン−2−オン(ラセミ体)の元素分析、
IR、NMR及び光学純度の測定結果を以下に示す。
【0079】
【化14】
【0080】質量分析(FABイオン化法):M/Z:
333(M+H+) 元素分析:C 46.77%、H 6.05%、N
8.41% (理論値:C 46.99%、H 6.07%、N
8.43%)1 H−NMR(溶媒:D2O、δppm):1.86〜
1.97(m,2H,a)、2.23〜2.49(m,
2H×3,b、c、d)、2.88(d,2H,e)、
3.69(t,H,f)、3.92(d,2H,g)、
4.01〜4.15(m,H,h)、4.35(t,
H,i) 赤外線吸収スペクトル(KBr錠剤):3635cm-1
(−OH)、3425cm-1(νN−H、ラクタム −
NH−)、2948,2922cm-1(νCH2)、1
725,1695cm-1(νC=O、−COOH)、1
635cm-1(νC=O、ラクタム −CON<) (実施例3)(R,R)−1−(1,3−ジカルボキシ
プロピル)−3−カルボキシエチル−ピペラジン−2−
オン30.2g(0.1mol)を水100mlに溶解
させ、水酸化ナトリウムでpHを8〜10に調整した
後、塩化ラウロイル13.1g(0.06モル)を50
mlのアセトンに溶解させた液を添加した。塩化ラウロ
イルの添加後、10%水酸化ナトリウム水溶液でpHを
8〜10に調整しながら、40℃で12時間反応させ
た。
【0081】その後、10%水酸化ナトリウム水溶液で
反応液のpHを12〜13に調整しながら、40℃で6
時間加水分解を行った。酸無水物の加水分解後、エバポ
レーターでアセトンを留去した。この液に、水を20m
l加え、5%塩酸を滴下してpHを2に調整して目的物
を析出させ、析出物をろ過した。ろ取した白色の析出物
を水で洗浄し、(R,R)−1−(1,3−ジカルボキ
シプロピル)−3−カルボキシエチル−4−N−ラウロ
イル−ピペラジン−2−オン33.9g(式(7):収
率 71.3%)を得た。
【0082】得られた(R,R)−1−(1,3−ジカ
ルボキシプロピル)−3−カルボキシエチル−4−N−
ラウロイル−ピペラジン−2−オンの元素分析、IR及
びNMR測定結果を以下に示す。
【0083】
【化15】
【0084】質量分析(FABイオン化法):M/Z:
471(M+H+) 元素分析:C 58.43%、H 8.12%、N
5.94% (理論値:C 58.71%、H 8.14%、N
5.95%)1 H−NMR(溶媒:DMSO−d6、δppm):0.
84(t,3H,a)、1.24(s,2H×8,
b)、1.46(bd,2H,c)、2.32〜2.3
6(m,2H,d)、2.63〜2.72(m,2H×
2,e、f)、3.01〜3.43(m,2H×2,
g、h)、3.53(d,2H,i)、3.70(d,
2H,j)、4.65〜4.90(m,H×2,k、
l) 赤外線吸収スペクトル(KBr錠剤):2930,28
70cm-1(νCH2、νCH3)、1730,1702
cm-1(νC=O、−COOH)、1656cm-1(ν
C=O、アシル基 −CON<)、1630cm-1(ν
C=O、ラクタム −CON<) (実施例4〜7)表1に示す置換エチレンジアミン−
N,N’−ジグルタル酸及び置換エチレンジアミン−
N,N’−ジコハク酸を出発原料に用いて、表1に示す
最終生成物を、実施例1に記載する方法に準じて、それ
ぞれ記載される反応条件で合成、取得した。表1には、
収率、ならびに光学純度を併せて示す。
【0085】
【表1】
【0086】(実施例8)3つ口フラスコに、(S,
S)−エチレンジアミン−N,N’−ジコハク酸(ED
DS)29.2g(0.1モル)及び水800mlを入
れ、これにα-ヒドロキシカルボン酸として、(d)−
リンゴ酸 0.0013g(0.00001モル)を添
加した。このスラリー状の反応液を、80℃、6時間攪
拌しながら環化反応反応させた。開始後、6時間攪拌を
継続した時点で、溶解せず、スラリー状に残留している
(S,S)−エチレンジアミン−N,N’−ジコハク酸
はほとんどなくなった。
【0087】反応終了後、反応液に水酸化ナトリウム水
溶液を加えて鉄をはずした後、銅を含む溶解液に溶解
し、銅錯体を形成させて液体クロマトグラフィー(カラ
ム;ODS−2、波長;254nm、溶出液;銅を含む緩
衝液、分析温度;40℃)により、目的生成物(S,
S)−1−(1,2−ジカルボキシエチル)−3−カル
ボキシメチル−ピペラジン−2−オン、ならびに逆マイ
ケル反応によりS,S−エチレンジアミン−N,N’−
ジコハク酸が分解し副生したS−エチレンジアミン−N
−コハク酸(EDMS)生成量を分析した。表2に、そ
の結果を示す。
【0088】(実施例9〜15)用いるα-ヒドロキシ
カルボン酸の種類と添加量を変えて、それ以外は実施例
8と同じ条件として反応を行なった。表2に、合成条件
のα-ヒドロキシカルボン酸の種類と添加量と、合成結
果を示す。
【0089】
【表2】
【0090】(比較例1)α-ヒドロキシカルボン酸を
添加しない以外は、実施例8と同じ条件として反応を行
なった。表3に、その結果を示す。
【0091】(比較例2)α-ヒドロキシカルボン酸に
代えて、35%塩酸を0.10g(0.001モル)添
加した以外は、実施例8と同じ条件として反応を行なっ
た。表3にその結果を示す。
【0092】
【表3】
【0093】(実施例16)ジャケットつきセパラブル
・フラスコに、(S,S)−エチレンジアミン−N,
N’−ジコハク酸29.2g(0.1モル)及びメタノ
ール128gを入れ、−5℃に冷却した。−5〜0℃に
なるように冷却しつつ、攪拌しながら塩化チオニル7
1.4g(0.6mol)を滴下した。滴下終了後、液
温を室温に戻し、そのまま攪拌を3日間続けた。3日
後、析出した結晶をろ別し、酢酸エチルで3回洗浄し
た。その後、真空乾燥して、(S,S)−エチレンジア
ミン−N,N’−ジコハク酸の四メチルエステル・塩酸
塩を38.3g得た(90.9%)。
【0094】得られた(S,S)−エチレンジアミン−
N,N’−ジコハク酸の四メチルエステル・塩酸塩3
8.3gを水100mlに溶解し、10%水酸化リチウ
ム水溶液を加えてpH5に調整した。この液を、50℃
で8時間攪拌して、環化反応を行った。その後、10%
水酸化リチウム水溶液を加えて、反応液のpH12〜1
3に調整しながら、40℃で6時間加水分解を行った。
反応液を室温まで冷却した後、メタノールを200ml
加え、析出した結晶をろ過した。さらに、ろ別した結晶
を、メタノールで洗浄した。真空乾燥を行い、(S,
S)−1−(1,2−ジカルボキシエチル)−3−カル
ボキシメチル−ピペラジン−2−オン 22.7g(収
率 82.5%)を得た。
【0095】(実施例17)(S,S)−エチレンジア
ミン−N,N’−ジコハク酸2.92g(0.01モ
ル)を水400mlに溶解させ、これにα-ヒドロキシ
カルボン酸として、(d)−リンゴ酸 0.0013g
(0.00001モル)を添加し、50℃で陽イオン交
換樹脂(アンバーライトIR−120B/オルガノ社
製:酸型)を充填したカラム(内径3cm×長さ20c
mで充填)に毎分2mlで通過させて反応させた。
【0096】陽イオン交換樹脂を通過した液の水分をエ
バポレータで蒸発させ、(S,S)−1−(1,2−ジ
カルボキシエチル)−3−カルボキシメチル−ピペラジ
ン−2−オン1.9gを得た(収率 69%)。
【0097】(実施例18) 生分解性試験:表4に示す本発明の2−ピペラジノン誘
導体に関して、その生分解性をOECD化学品テストガ
イドラインに記載されている、活性汚泥を用いた生分解
性試験の方法である修正SCAS法で試験した。具体的
には、下記試験方法で、28日間操作を行なった後の残
存率を表4に示す。
【0098】(試験方法) (1)試験槽に活性汚泥混合液150mlを仕込み、エ
アポンプにて曝気する。 (2)23時間曝気を続けた後、曝気を止め、45分間
汚泥を沈降させ、上澄み液100mlを除去する。 (3)試験槽には、静置廃水95mlと試験物質原液
(400mg/l)5ml、対照槽には静置廃水100
mlをそれぞれ仕込み曝気を再開する。 (4)前記(2)と(3)の操作を毎日繰り返し、上澄
み液をサンプリングし、HPLC(高速液体クロマトグ
ラフ)法及びTOC(溶存有機炭素)法で試験物質の残
存率を追跡する。
【0099】
【表4】
【0100】
【発明の効果】本発明の2−ピペラジノン誘導体は、2
−ピペラジノン環の3位にカルボキシエチル基、1位の
窒素原子上には1,3−ジヒドロキシプロピル基が置換
した新規な構造の2−ピペラジノン誘導体であり、分子
内にグルタミン酸ジペプチド骨格を内在する構造の特徴
を生かし、医薬、農薬、キレート剤、高分子化合物等の
原料として有用である。加えて、本発明の2−ピペラジ
ノン誘導体の製造方法を用いると、その2−ピペラジノ
ン環の形成などの反応では、水を溶媒に用いても、何ら
支障を生じることもなく、安全性の高い条件で、また、
効率的に目的の2−ピペラジノン誘導体を製造できる。
加えて、原料に、予め所望の絶対配置を有する光学異性
体を用いると、得られる2−ピペラジノン誘導体も、そ
の原料自体の絶対配置を保持するものとなり、上記の用
途に望まれる所望の2−ピペラジノン誘導体光学異性体
を高い光学純度で調製できる。

Claims (18)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記一般式(1): 【化1】 (式中、R1、R2は同一又は異なり、それぞれ、水素原
    子、ヒドロキシル基(−OH)、又はヒドロキシル基が
    置換していてもよい直鎖又は分岐鎖の炭素数1〜6のア
    ルキル基を示し、R3は、水素原子、ヒドロキシル基、
    スルホ基(−SO3H)、又はヒドロキシル基、カルボ
    キシル基(−COOH)、スルホ基のいずれかの基が置
    換していてもよい直鎖又は分岐鎖の炭素数1〜6のアル
    キル基、あるいは直鎖又は分岐鎖の炭素数1〜20のア
    ルキル基またはアルケニル基を持つアシル基を示す。)
    で表される2−ピペラジノン誘導体またはその塩。
  2. 【請求項2】 下記一般式(2): 【化2】 (式中、R4、R5は同一又は異なり、それぞれ、水素原
    子、ヒドロキシル基(−OH)、又はヒドロキシル基が
    置換していてもよい直鎖又は分岐鎖の炭素数1〜6のア
    ルキル基を示し、R6は、水素原子、ヒドロキシル基、
    スルホ基(−SO3H)、これらヒドロキシル基、スル
    ホ基のいずれかの基が置換していてもよい直鎖又は分岐
    鎖の炭素数1〜6のアルキル基、あるいは直鎖又は分岐
    鎖の炭素数1〜20のアルキル基またはアルケニル基を
    持つアシル基を示し、R7、R8は同一であり、それぞ
    れ、−CH2−又は−CH2CH2−基を示す。)で表さ
    れる化合物またはその塩を、α-ヒドロキシカルボン酸
    の存在下、溶液またはスラリー状で環化させて、中間生
    成物として、下記一般式(I): 【化3】 (式中、R4、R5、R6、R7、R8は、それぞれ、前記
    一般式(2)中のR4、R 5、R6、R7、R8と同一の基
    を示す。)で表される2−ピペラジノン誘導体を形成
    し、 更に、 R6が水素である場合、必要に応じて4位の窒素
    原子上に置換基を付加し、下記一般式(3): 【化4】 (式中、R9、R10、R12、R13は、それぞれ、前記一
    般式(2)中のR4、R5、R7、R8と同一の基を示し、
    11は、水素原子、ヒドロキシル基、スルホ基(−SO
    3H)、又はヒドロキシル基、カルボキシル基(−CO
    OH)、スルホ基のいずれかの基が置換していてもよい
    直鎖又は分岐鎖の炭素数1〜6のアルキル基、あるいは
    直鎖又は分岐鎖の炭素数1〜20のアルキル基またはア
    ルケニル基を持つアシル基を示し、R12、R13は同一で
    あり、それぞれ、−CH2−又は−CH2CH2−基を示
    す。)で表される2−ピペラジノン誘導体に変換するこ
    とを特徴とする前記一般式(3)の2−ピペラジノン誘
    導体またはその塩の製造方法。
  3. 【請求項3】 請求項2に記載される一般式(2)で表
    される化合物またはその塩をエステル化して、得られる
    エステル体を、溶液またはスラリー状で環化させて、2
    −ピペラジノン環を形成したのち、導入されたエステル
    を加水分解することにより、請求項2に記載される一般
    式(I)で表される2−ピペラジノン誘導体を形成し、 更に、R6が水素である場合、必要に応じて4位の窒素
    原子上に置換基を付加し、前記一般式(3)で表される
    2−ピペラジノン誘導体に変換することを特徴とする前
    記一般式(3)の2−ピペラジノン誘導体またはその塩
    の製造方法。
  4. 【請求項4】 一般式(1)で表される2−ピペラジノ
    ン誘導体またはその塩において、R1が水素原子である
    ことを特徴とする請求項1に記載の2−ピペラジノン誘
    導体またはその塩。
  5. 【請求項5】 一般式(1)で表される2−ピペラジノ
    ン誘導体またはその塩において、R2が水素原子である
    ことを特徴とする請求項1または4に記載の2−ピペラ
    ジノン誘導体またはその塩。
  6. 【請求項6】 一般式(1)で表される2−ピペラジノ
    ン誘導体またはその塩において、R3が水素原子である
    ことを特徴とする請求項1、4または5のいずれか1項
    に記載の2−ピペラジノン誘導体またはその塩。
  7. 【請求項7】 一般式(1)で表される2−ピペラジノ
    ン誘導体またはその塩において、その分子内に含まれる
    不斉炭素がすべて(S)−配置であることを特徴とする
    請求項1、4−6のいずれか1項に記載の2−ピペラジ
    ノン誘導体またはその塩。
  8. 【請求項8】 一般式(2)で表される化合物またはそ
    の塩において、R4が水素原子であることを特徴とする
    請求項2に記載の方法。
  9. 【請求項9】 一般式(2)で表される化合物またはそ
    の塩において、R5が水素原子であることを特徴とする
    請求項2又は8に記載の方法。
  10. 【請求項10】 一般式(2)で表される化合物または
    その塩において、R 6が水素原子であることを特徴とす
    る請求項2、8又は9のいずれか1項に記載の方法。
  11. 【請求項11】 一般式(2)で表される化合物または
    その塩において、その分子内に含まれる不斉炭素がすべ
    て(S)−配置であることを特徴とする請求項2、8−
    10のいずれか1項に記載の方法。
  12. 【請求項12】 一般式(2)で表される化合物または
    その塩において、R 4が水素原子であることを特徴とす
    る請求項3に記載の方法。
  13. 【請求項13】 一般式(2)で表される化合物または
    その塩において、R 5が水素原子であることを特徴とす
    る請求項3又は12の記載の方法。
  14. 【請求項14】 一般式(2)で表される化合物または
    その塩において、R 6が水素原子であることを特徴とす
    る請求項3、12又は13のいずれか1項に記載の方
    法。
  15. 【請求項15】 一般式(2)で表される化合物または
    その塩において、その分子内に含まれる不斉炭素がすべ
    て(S)−配置であることを特徴とする請求項3、12
    −14のいずれか1項記載の方法。
  16. 【請求項16】 分離精製用材料を充填又は備え付けた
    容器及び/またはカラム中で環化反応を行うことを特徴
    とする請求項2、8−10のいずれか1項に記載の方
    法。
  17. 【請求項17】 分離精製用材料が、イオン交換樹脂、
    シリカゲル、アルミナ、フロリジル、セルロース、珪藻
    土、イオン交換膜からなる群のうち少なくとも一つであ
    ることを特徴とする請求項16に記載の方法。
  18. 【請求項18】 環化反応後に実施するエステルの加水
    分解を、pH8〜13.5の範囲で行うことを特徴とする
    請求項3、12−14のいずれか1項に記載の方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2006028515A (ja) * 2004-07-14 2006-02-02 Bayer Material Science Llc 官能性アスパラギン酸エステル

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