JP3897378B2 - アスパラギン酸誘導体の製造方法 - Google Patents

アスパラギン酸誘導体の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、アスパラギン酸−N,N−二酢酸アルカリ塩類の製造方法に関する。アスパラギン酸−N,N−二酢酸アルカリ塩類は、生分解性を有し、繊維染色用薬剤、洗剤用ビルダー、金属表面処理用錯化剤、無電解メッキ用錯化剤、写真用薬剤あるいは紙パルプ用漂白助剤などに用いることが出来る。
【0002】
【従来の技術】
アスパラギン酸誘導体であるアスパラギン酸−N,N−二酢酸アルカリ塩類を工業的に得る方法としては、アスパラギン酸の塩に塩基成分存在下、モノクロル酢酸またはモノブロム酢酸を作用させる方法(ソ連特許第482438号)が知られている。しかしながら、この方法は腐食性の高いハロゲン廃液を多量に生成するため工業的に有利とはいいがたい方法である。
【0003】
その他の製造方法としては、アスパラギン酸とニトリル化合物を反応し、アミド化合物を得た後、更に加水分解して目的物を得る方法(特願平7−37760号)があるが、工程が長く操作が煩雑となり生産性に問題があった。
【0004】
シアノメチル化合物をアミド体を経由せずに塩基で加水分解する方法として、アスパラギン酸とニトリル化合物を反応し、塩基存在下に加水分解して目的化合物を得る方法、及び、塩基存在下にアスパラギン酸をニトリル化合物と反応して直接目的化合物を得る方法(特開平7−89913号、ドイツ特許第4211713号)が提案されている。
【0005】
これらの方法は、工程的には短いが反応副生成物であるニトリロ三酢酸(以下、NTAという)の生成が多いばかりでなく、目的物は加熱等により容易に分解し、フマル酸とイミノジ酢酸(以下、IDAという)になるため高純度の目的物を得ることは困難であった。そのため、利用形態上使用されることの多いアルカリ塩としてこれらの反応液をそのまま使用することはできなかった。高純度のアルカリ塩を得るためには酸の形で単離して精製した後に再びアルカリ塩に戻す必要があり、工程が長くなる問題があった。
【0006】
いずれの方法においても反応液の着色は激しいものであり、活性炭をそのまま作用させただけでは十分な脱色効果が得られなかった。また、反応液に対して過酸化水素を直接作用させると十分な脱色効果が得られないばかりでなく、経時的に着色が進行してしまうという結果を招いていた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、NTAなどの副生成物が少なく高純度で着色のないアスパラギン酸−N,N−二酢酸アルカリ塩類が高収率で得られる工業的に有利な製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、アスパラギン酸またはアスパラギン酸モノ酢酸とシアノメチル化剤を水性媒体中で反応させてシアノメチル化物とした後、シアンイオンの量を1.0%以下として加水分解することにより、副生成物の生成を抑えることができ、高純度で着色のないアスパラギン酸−N,N−二酢酸アルカリ塩類が高収率で得られることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、「アスパラギン酸またはアスパラギン酸モノ酢酸とシアノメチル化剤を水性媒体中で反応させてシアノメチル化物とした後、塩基成分の存在下にシアノメチル化物を加水分解し、アスパラギン酸−N,N−二酢酸アルカリ塩を製造する方法において、シアノメチル化物の加水分解に際して、シアノメチル化物に含まれるシアンイオンの量を1.0%以下とすることを特徴とするアスパラギン酸−N,N−二酢酸アルカリ塩の製造方法。」を要旨とする。
【0010】
さらに、シアノメチル化反応後かつ加水分解反応前の反応液に、不活性ガスもしくは空気を曝気するか、および/または、減圧脱気することで、シアノメチル化物に含まれるシアンイオンの量を1.0%以下にできることを見出した。
【0011】
また、加水分解反応時に、減圧脱気するか空気もしくは不活性ガスを通ずる、あるいはこの二つを同時に行うことにより、NTA、フマル酸、IDA等の副生成物を大幅に減少できることを見出した。
【0012】
さらに、加水分解反応終了液のpHを12以下に下げることで活性炭による脱色効果を著しく上げられること、加水分解反応終了液の残存シアンイオン濃度を100ppm以下まで減少させた状態で過酸化水素処理を行うことにより、脱色後の再着色がなく良好な効果が得られることを見出した。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の方法は、アスパラギン酸−N,N−二酢酸アルカリ塩類を得ることを目的とするものである。アルカリ塩類は、アスパラギン酸−N,N−二酢酸がその一分子中に有する4個のカルボキシル基の少なくとも1個の水素原子が、アルカリ金属で置換された塩類およびこれらの混合塩類を含む。前記のアルカリ金属は、Li,Na,K,Rb,Csなどを含み、前記のアルカリ塩類は、一リチウム塩,二リチウム塩,三リチウム塩,四リチウム塩;一ナトリウム塩,二ナトリウム塩,三ナトリウム塩,四ナトリウム塩;一カリウム塩,二カリウム塩,三カリウム塩,四カリウム塩;一ルビジウム塩,二ルビジウム塩,三ルビジウム塩,四ルビジウム塩;一セシウム塩,二セシウム塩,三セシウム塩,四セシウム塩など、およびこれらの混合塩類を含む。
【0014】
本発明の方法では、まず、アスパラギン酸またはアスパラギン酸モノ酢酸を水性媒体に分散または溶解する。原料が塩基との塩である場合は、pH6以下の弱酸性となるようにアスパラギン酸、アスパラギン酸モノ酢酸、アスパラギン酸−N,N−二酢酸、または、硫酸、塩酸等の無機の酸を添加して行うのがよい。
【0015】
本発明で用いられるアスパラギン酸は、市販されているものをそのまま用いることが出来るが生分解性の見地よりラセミ体よりもS体の方が好ましい。また、アスパラギン酸モノ酢酸は、公知の方法により得られた物を用いることが出来る。さらに、本発明では、原料であるアスパラギン酸もしくはアスパラギン酸モノ酢酸の酸が塩基により部分的もしくは全てが中和された塩の状態の化合物を用いることもできる。
【0016】
水性媒体としては、アセトニトリル、メタノール、エタノール、イソプロパノール、イソブタノール、ジオキサン、THF等の水溶性の有機溶媒と水との混合溶媒を用いることが出来、その混合比は水のみの場合から任意の混合比で出来るが最も好ましくは水溶媒がよい。
【0017】
次いで、アスパラギン酸またはアスパラギン酸モノ酢酸を、水性媒体に分散したスラリーまたは溶解した溶液に、20〜70℃好ましくは30〜45℃で、シアノメチル化剤を添加、反応せしめ、シアノメチル化物を得る。
本発明に用いられるシアノメチル化剤は、青酸とホルマリンまたはグリコロニトリルのいずれかであるが、反応性の観点から青酸とホルマリンが好ましい。
シアノメチル化剤が青酸とホルマリンの場合は、当モルもしくは小過剰のホルマリンを青酸と同時に添加するか、当モルもしくは小過剰のホルマリンを添加した後に青酸を添加する。青酸の使用量は、アスパラギン酸1モルに対し、1.9〜2.2モル、より好ましくは2〜2.1モルがよい。また、アスパラギン酸モノ酢酸を用いたときは、アスパラギン酸を用いたときの半量を用いる。
グリコロニトリルの場合は、そのまま又は水溶液として添加し反応させる。グリコロニトリルの使用量は、アスパラギン酸1モルに対して、1.9〜3モル、より好ましくは2〜2.5モルを用いるのがよい。アスパラギン酸モノ酢酸を用いたときは、青酸の場合と同様に、アスパラギン酸を用いたときの半量を用いる。このシアノメチル化反応を完全に行うためには、シアノメチル化剤を添加終了後、30〜70℃、好ましくは、40〜50℃で3時間ほど熟成反応するのがよい。
【0018】
次に、シアノメチル化反応終了液を塩基の水溶液に、20〜90℃、好ましくは40〜90℃、より好ましくは60〜80℃に保ちながら添加して、加水分解反応を行う。添加終了後、更に20〜90℃、好ましくは40〜90℃、より好ましくは60〜90℃で、1〜5時間熟成反応を行う。
加水分解反応に供されるシアノメチル化物に含まれるシアンイオンの量は、シアノメチル化物に対して1.0%以下、好ましくは0.5%以下、より好ましくは0.3%以下がよい。通常は、残存するシアンイオン量が過大にならないようにシアノメチル化反応の仕込みシアン化合物の使用量を理論等量に対して10%以下の過剰量、より好ましくは5%以下の過剰量で反応させるのがよい。
シアノメチル化物に対するシアンイオンの量が1.0%以上となった場合は、加水分解反応の前に、シアノメチル化反応終了液を温度15〜50℃で93300Pa以下の減圧状態で脱気するか、空気もしくは不活性ガスを毎時1m3 /反応液10m3 以上を曝気するか、脱気と曝気を同時に行うことによって過剰のシアン化合物を除去することが好ましい。
【0019】
加水分解で用いる塩基は、水溶液pHが12以上になるような塩基であれば有機、無機を問わず用いることができるが、生成物の使用方法、操作性の面から水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等アルカリ金属の水酸化物を用いるのが好ましい。通常は、得られる組成物が一般的に使用される形態のアスパラギン酸−N,N−二酢酸のナトリウム塩もしくはカリウム塩であることから、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムを用いることが好ましい。
【0020】
塩基の使用量は、アスパラギン酸もしくはアスパラギン酸モノ酢酸の酸を中和するに必要な量A、使用するシアノメチル化合物が加水分解して生成する酸を中和するに必要な量B、塩基の使用量Dとすると、下記式(1)で表される。
【0021】
D=(A+B)×C (1)
ここで、Cは1.01〜1.5の範囲の任意の値でよいが、より好ましくは、1.03<C<1.2の範囲が選択される。この範囲にCがある場合、塩基の使用量Dは、加水分解がスムースに行われるに十分な量であり、反応終了後の過剰の塩基成分も少なくなる。
【0022】
加水分解反応の間に発生するアンモニアガスの系外への除去は、93300Pa以下、より好ましくは66600Pa以下の減圧で脱気するか、空気もしくは不活性ガスを曝気するか、脱気と曝気を同時に行う。
空気もしくは不活性ガスの曝気通気量は加水分解によって発生するアンモニアガスを排出するに十分な量が必要である。
通常は、発生するアンモニア量に対して0.7〜10倍、好ましくは1.5〜5倍のガスを通気するのがよい。また、通気に際してはガスの気相部への移動が十分に行われるように気泡を細かくし、十分な撹拌をすることが好ましい。不活性ガスとしては、窒素ガス、アルゴン、ネオン、ヘリウム等を用いることが出来るが、経済的見地から窒素ガスが好ましい。
【0023】
このようにして、着色の少ない高純度のアスパラギン酸−N,N−二酢酸のアルカリ塩が得られるが、必要ならば以下のような脱色操作を行う。
得られた加水分解反応終了液の脱色方法は、着色の程度や使用する装置により選択できる。分子状酸素による場合は、酸素、酸素富化空気、空気のいずれかが用いられるが経済的見地及び安全性等から空気が好ましい。通気量は、1kgの加水分解反応終了液に対して3000〜5000cc/分が好ましく、処理温度は20〜80℃、好ましくは40〜70℃がよい。
【0024】
活性炭により脱色する場合は、加水分解反応終了液にアスパラギン酸−N,N−二酢酸等の酸成分を添加し、pH4〜12.5、より好ましくはpH10〜11.5に調整する。調整pHの値は4以下でも差し支えないが、必要以上に低いpHでは脱色処理に際して、アスパラギン酸−N,N−二酢酸が析出することがあり好ましくない。遊離の酸として単離することを目的とせずに反応液をそのままアルカリ塩水溶液の製品とする場合には大幅なpHの低下は酸成分を過剰に添加することであり好ましくない。
【0025】
次いで、この反応液へ溶質量に対し0.5〜10%、好ましくは1〜5%の量の活性炭を添加し、約30分間撹拌した後、活性炭を濾過することで清澄な反応液が得られる。この脱色操作により反応液の色調は、APHA100〜150となる。
【0026】
使用目的により必要ならば、反応に使用した塩基を用い、反応液pHをアスパラギン酸−N,N−二酢酸四アルカリ塩のpHである、50%水溶液で12〜12.5に調整する。
【0027】
活性炭処理の際にpH調整に使用する酸としては、市販されている塩酸、硝酸、硫酸、燐酸、酢酸、グリコール酸、乳酸、蓚酸、コハク酸、リンゴ酸、アスパラギン酸、酸性イオン交換樹脂、あるいはアスパラギン酸−N,N−二酢酸、アスパラギン酸モノ酢酸などを用いることができる。製品の使用用途により無機塩の含有が好ましくない場合は、酢酸、蓚酸、アスパラギン酸、アスパラギン酸−N,N−二酢酸、アスパラギン酸モノ酢酸を用いる。無機塩が入っても差し支えない場合は塩酸、硫酸を用いる。より高純度な製品が要求される場合には、アスパラギン酸−N,N−二酢酸や酸性イオン交換樹脂などが好適である。又、アスパラギン酸−N,N−二酢酸の遊離酸の形で結晶として単離しようとする場合は、腐食性や操作性の観点から硫酸が好ましい。
【0028】
本発明で用いる活性炭は、市販されている粉体、球体等どのような形態であっても差し支えなく使用できる。
【0029】
さらに残存するシアンイオンが100ppm以下、好ましくは50ppm以下である反応液に対し、過酸化水素やオゾンのような活性酸素による処理を行って脱色することが出来る。過酸化水素は、市販の30〜35%のものをそのまま用いることが出来るし、低濃度のものでも差し支えない。オゾンの場合は、市販されているオゾン発生器を用いるとよい。その使用量は、反応液の着色の程度により、過酸化水素又はオゾン量として、溶質量に対し0.01〜1.5重量%、好ましくは0.05〜1.0重量%の範囲で行うのが良い。
【0030】
このようにして、NTA量が1%以下と少なく、着色もない高品質のアスパラギン酸−N,N−二酢酸アルカリ塩が得られる。
【0031】
【実施例】
以下実施例を挙げて説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0032】
実施例1
反応容器にアスパラギン酸133.1gと水130gを投入し、分散した。次に37%ホルマリン水溶液169gを添加し、さらに反応温度を45℃以下にコントロールしながら青酸55.7gを約1時間かけて滴下した。滴下終了後、40〜45℃で3時間撹拌反応した。熟成終了後のシアンイオン濃度は0.25%であった。シアノメチル化熟成反応終了液を48%苛性ソーダ水溶液366.7g中に、40000Paに減圧脱気しながら、反応温度を70℃以下に保って、約3.5時間をかけて滴下した。滴下終了後、40000Paで減圧脱気を継続しながら、70℃で2時間、熟成反応を行った。反応終了液にアスパラギン酸−N,N−二酢酸を添加してpH11に調整した後、活性炭10gを添加して30分撹拌後に活性炭を濾別し、アスパラギン酸−N,N−二酢酸4ナトリウム塩水溶液を得た。この時の色調は、APHA100以下であり、アスパラギン酸−N,N−二酢酸4ナトリウム塩の収率は96%で、不純物の量はアスパラギン酸−N,N−二酢酸4ナトリウム塩に対し、アスパラギン酸モノ酢酸ナトリウム塩3%、IDAナトリウム塩0.6%、NTAナトリウム塩0.4%、フマル酸ナトリウム塩痕跡程度であった。得られたアスパラギン酸−N,N−二酢酸4ナトリウム塩水溶液を噴霧乾燥機で乾燥して微黄色粉体を得た。乾燥粉体は、高速液体クロマトグラフィによる含量分析及び示差熱分析の結果より一水和物としてアスパラギン酸−N,N−二酢酸4ナトリウム塩含量94%、NTAナトリウム塩0.4%であった。
【0033】
実施例2
反応容器にアスパラギン酸133.1gと水130gを投入し、分散した。次に37%ホルマリン水溶液169gを添加し、さらに反応温度45℃以下にコントロールしながら青酸55.7gを約1時間かけて滴下した。滴下終了後、40〜45℃で3時間撹拌反応した。熟成終了後のシアンイオン濃度は0.30%であった。次に、散気装置を備えた反応容器に48%苛性ソーダ水溶液366.7gを仕込み、散気装置より1000cc/分の速度で空気を吹き込みながら、反応温度を70℃以下に保って、シアノメチル化熟成反応終了液を3時間で添加した。添加終了後、3000cc/分の空気の曝気を継続しつつ、更に、反応温度70℃で12時間熟成反応した。反応終了液の色調はAPHA150で、アスパラギン酸−N,N−二酢酸4ナトリウム塩の収率は94%であった。不純物の量は、アスパラギン酸−N,N−二酢酸4ナトリウム塩に対し、アスパラギン酸モノ酢酸ナトリウム塩4%、IDAナトリウム塩0.8%、NTAナトリウム塩0.6%、フマル酸ナトリウム塩0.1%であった。
【0034】
実施例3
反応容器にアスパラギン酸133.1gと水130gを投入し、分散した。次に37%ホルマリン水溶液167gを添加し、さらに青酸55.7gを反応温度を45℃以下にコントロールしながら約1.0時間かけて滴下した。滴下終了後、40〜45℃で更に3時間撹拌反応した。熟成終了後のシアンイオン濃度は0.28%であった。次に、散気装置を備えた反応容器に48%苛性ソーダ水溶液366.7gを仕込み、散気装置より1000cc/分の速度で窒素ガスを吹き込みながら、反応温度を70℃以下に保って、シアノメチル化熟成反応終了液を3時間で添加した。添加終了後、3000cc/分の窒素ガスの曝気を継続しつつ更に3時間、反応温度70℃で熟成反応した。反応終了液に含まれる遊離シアンに対し1.2倍モルのホルマリンを添加し、70℃で2時間シアン分解処理を行った。処理液中の残シアン濃度が100ppm以下であることを確認した後、10%過酸化水素水5gを添加して1時間撹拌し、アスパラギン酸−N,N−二酢酸4ナトリウム塩水溶液を得た。この液の色調は、APHA100以下であり、アスパラギン酸−N,N−二酢酸4ナトリウム塩の収率は95%であった。不純物の量は、アスパラギン酸−N,N−二酢酸4ナトリウム塩に対し、アスパラギン酸モノ酢酸ナトリウム塩4%、IDAナトリウム塩0.7%、NTAナトリウム塩0.5%、フマル酸ナトリウム塩0.01%であった。
【0035】
実施例4
反応容器にアスパラギン酸モノ酢酸モノナトリウム塩231gと水340gを投入、溶解し、苛性ソーダでpH5.2に調整する。次に、50%グリコロニトリル水溶液119.6gを反応温度を45℃以下にコントロールしながら約2.0時間かけて滴下した。滴下終了後、40〜45℃で更に3時間撹拌反応した。更に、40℃で窒素ガスを3000cc/時の速度で2時間吹き込みシアンイオン濃度は0.1%となった。次に、反応液を48%苛性ソーダ水溶液283.3gの中に、40000Paに減圧脱気しながら、反応温度を70℃以下に保って、約3.5時間をかけて滴下した。滴下終了後、40000Paで減圧脱気を継続しながら、70℃で2時間、熟成反応を行った。反応終了液に98%硫酸を添加してpH11に調整した後、活性炭10gを添加し、30分撹拌後に活性炭を濾別し、アスパラギン酸−N,N−二酢酸4ナトリウム塩水溶液を得た。この時の色調はAPHA100〜150で、アスパラギン酸−N,N−二酢酸4ナトリウム塩の収率は93%であった。不純物の量は、アスパラギン酸−N,N−二酢酸4ナトリウム塩に対し、アスパラギン酸モノ酢酸ナトリウム塩5%、IDAナトリウム塩1.0%、NTAナトリウム塩0.8%、フマル酸ナトリウム塩痕跡程度であった。
【0036】
実施例5
反応容器にアスパラギン酸133.1gと水130gを投入し、分散した。次に37%ホルマリン水溶液170gを添加し、さらに反応温度を40℃以下にコントロールしながら青酸59gを約1時間かけて滴下した。滴下終了後、40〜45℃で3時間撹拌反応した。熟成終了後のシアンイオン濃度は2%であった。シアノメチル化熟成反応終了液を40〜45℃で60000Paの減圧下に2時間脱気を行い、シアンイオンの量を400ppmに減少させた。次いで、散気装置を備えた反応容器に48%苛性ソーダ水溶液366.7gを仕込み、散気装置より1000cc/分の速度で空気を吹き込みながら、反応温度を70℃以下に保って、脱シアンしたシアノメチル化液を約3時間をかけて滴下した。滴下終了後、3000cc/分の空気の曝気を継続しつつ更に12時間、反応温度を70℃で熟成反応する。反応終了液の色調は、APHA150であり、アスパラギン酸−N,N−二酢酸4ナトリウム塩の収率は96%で、不純物の量はアスパラギン酸−N,N−二酢酸4ナトリウム塩に対し、アスパラギン酸モノ酢酸ナトリウム塩3%、IDAナトリウム塩0.3%、NTAナトリウム塩0.3%、フマル酸ナトリウム塩0.2%であった。
【0037】
比較例1
反応容器にアスパラギン酸133.1gと水130gを投入し、分散した。次に、37%ホルマリン水溶液169gを添加し、更に青酸59gを反応温度45℃以下にコントロールしながら約1時間かけて滴下した。滴下終了後、40〜45℃で更に3時間撹拌反応した。熟成終了液のシアンイオンの量はシアノメチル化物の1.8%であった。この熟成反応終了液を48%苛性ソーダ水溶液366.7gの中に、反応温度を70℃に保って、常圧で約3.5時間をかけて滴下した。滴下終了後、70℃で2時間、更に熟成反応を行った。反応終了液に含まれる遊離シアンに対して1.2倍モルのホルマリンを添加し、70℃で2時間シアン分解処理を行った。このpH13の反応終了液に活性炭10gを添加し、30分撹拌後に活性炭を濾別し、APHA500のアスパラギン酸−N,N−二酢酸4ナトリウム塩水溶液を得た。この時の不純物の量は、アスパラギン酸−N,N−二酢酸4ナトリウム塩に対しアスパラギン酸モノ酢酸ナトリウム塩4%、IDAナトリウム塩3%、NTAナトリウム塩3.7%、フマル酸ナトリウム塩0.02%であった。
この活性炭処理液を98%硫酸を用いてpH11とした後、10gの活性炭を添加し30分撹拌後に活性炭を濾別し脱色処理した。この再処理液のAPHAは100であった。得られたアスパラギン酸−N,N−二酢酸4ナトリウム塩水溶液を噴霧乾燥機で乾燥し、微黄色粉体を得た。高速液体クロマトグラフィによる含量分析及び示差熱分析の結果より、この粉体は一水和物としてアスパラギン酸−N,N−二酢酸4ナトリウム塩を83%含み、NTAナトリウム塩3%を含んでいた。
【0038】
比較例2
反応容器にアスパラギン酸133.1g、48%水酸化ナトリウム水溶液166.6g及び水330.0gを投入し、90℃まで昇温した。この混合液に青酸81g、37%ホルマリン242.9g及び48%水酸化ナトリウム水溶液274.8gを100℃で10時間かけて滴下した。滴下終了後、100℃で2時間撹拌した。反応終了後、10%ホルマリン15gを加えて残留する青酸を分解した。この液の色調は、APHA500以上であり、アスパラギン酸−N,N−二酢酸4ナトリウム塩の収率は90%であった。アスパラギン酸−N,N−二酢酸4ナトリウム塩に対し、アスパラギン酸モノ酢酸ナトリウム塩6%、IDAナトリウム塩16%、NTAナトリウム塩11%、フマル酸ナトリウム塩2%であった。
【0039】
比較例3
反応容器にアスパラギン酸133.1gと水130gを投入し分散する。次に、37%ホルマリン水溶液170gを添加し、更に青酸59gを反応温度を45℃以下にコントロールしながら、約1時間かけて滴下した。滴下終了後、40〜45℃で更に3時間撹拌反応した。熟成終了液のシアンイオンの量はシアノメチル化物の2%であった。次いで、熟成終了液を48%苛性ソーダ水溶液366.7gの中に、反応温度70℃に保って、40000Paに減圧脱気しながら約3.5時間かけて滴下した。滴下終了後、40000Paで減圧脱気を継続しつつ、70℃で2時間、熟成反応を行なった。過剰に用いたシアンイオンが200ppm残っている反応終了液に10%過酸化水素水10gを添加した後、1時間撹拌し、アスパラギン酸−N,N−二酢酸4ナトリウム塩水溶液を得た。アスパラギン酸−N,N−二酢酸4ナトリウム塩の収率は96%であった。不純物の量は、アスパラギン酸−N,N−二酢酸4ナトリウム塩に対し、アスパラギン酸モノ酢酸ナトリウム塩3%、IDAナトリウム塩3%、NTAナトリウム塩3%、フマル酸ナトリウム塩痕跡程度であった。この液の色調は、APHA250まで低下した後、室温で一昼夜放置するとAPHA500以上に激しく着色した。

Claims (8)

  1. アスパラギン酸またはアスパラギン酸モノ酢酸とシアノメチル化剤を水性媒体中で反応させシアノメチル化物とした後、塩基成分の存在下にシアノメチル化物を加水分解し、アスパラギン酸−N,N−二酢酸アルカリ塩を製造する方法において、シアノメチル化物の加水分解に際して、シアノメチル化物に含まれるシアンイオンの量を1.0%以下とすることを特徴とするアスパラギン酸−N,N−二酢酸アルカリ塩の製造方法。
  2. シアノメチル化熟成反応終了後かつ加水分解反応前の反応液に、不活性ガスもしくは空気を曝気するか、および/または、減圧脱気することを特徴とする請求項1記載のアスパラギン酸−N,N−二酢酸アルカリ塩類の製造方法。
  3. シアノメチル化物の加水分解の際に、不活性ガスもしくは空気を曝気するか、および/または、減圧脱気することを特徴とする請求項1記載のアスパラギン酸−N,N−二酢酸アルカリ塩の製造方法。
  4. 不活性ガスが、窒素、ヘリウム、ネオン及びアルゴンの中から選ばれた少なくとも一種である請求項2または3記載のアスパラギン酸−N,N−二酢酸アルカリ塩の製造方法。
  5. 加水分解反応終了液に酸素、酸素富化空気または空気を通気し、酸化脱色することを特徴とする請求項1記載のアスパラギン酸−N,N−二酢酸アルカリ塩の製造方法。
  6. シアンイオン濃度を100ppm以下に調整した加水分解反応終了液に過酸化水素を添加して脱色することを特徴とする請求項1記載のアスパラギン酸−N,N−二酢酸アルカリ塩の製造方法。
  7. 加水分解反応終了液に酸を添加してpH4〜12とした後に活性炭を添加して脱色することを特徴とする請求項1記載のアスパラギン酸−N,N−二酢酸アルカリ塩の製造方法。
  8. 酸が、塩酸、硝酸、硫酸、燐酸、酢酸、グリコール酸、乳酸、蓚酸、コハク酸、リンゴ酸、アスパラギン酸、アスパラギン酸モノ酢酸、アスパラギン酸−N,N−二酢酸、酸性イオン交換樹脂の中から選ばれた少なくとも一種である請求項7記載のアスパラギン酸−N,N−二酢酸アルカリ塩の製造方法。
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