JP2002110414A - 絶縁材料及びそれを用いた変圧器 - Google Patents

絶縁材料及びそれを用いた変圧器

Info

Publication number
JP2002110414A
JP2002110414A JP2000305266A JP2000305266A JP2002110414A JP 2002110414 A JP2002110414 A JP 2002110414A JP 2000305266 A JP2000305266 A JP 2000305266A JP 2000305266 A JP2000305266 A JP 2000305266A JP 2002110414 A JP2002110414 A JP 2002110414A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
insulating
cellulose
transformer
insulating material
oil
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2000305266A
Other languages
English (en)
Inventor
Hisaji Morooka
寿至 師岡
Yoshitaka Takezawa
由高 竹澤
Yuzo Ito
雄三 伊藤
Shigekatsu Sato
重勝 佐藤
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Hitachi Ltd
Original Assignee
Hitachi Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Hitachi Ltd filed Critical Hitachi Ltd
Priority to JP2000305266A priority Critical patent/JP2002110414A/ja
Publication of JP2002110414A publication Critical patent/JP2002110414A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Insulating Of Coils (AREA)
  • Organic Insulating Materials (AREA)
  • Insulating Bodies (AREA)
  • Compositions Of Macromolecular Compounds (AREA)
  • Paper (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 セルロースと比べて機械的強度を大きく損な
うことなく低誘電率化した化合物を絶縁材料に用いて媒
体の誘電率との整合をとり、電気機器、特に油入電気機
器である油入変圧器の絶縁耐力を高め、絶縁距離を短縮
することにより小型軽量の変圧器を提供すること。 【解決手段】 変圧器用絶縁材料において、置換度0.
9〜2.1のアルキルエーテル化セルロース化合物を含
む絶縁材料を使用する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、絶縁材料、及び絶
縁材料を使用した変圧器に関する。
【0002】
【従来の技術】紙、ボード材又はフィルム状の材料は、
電線、変圧器、電動機等の巻線の絶縁物として広く用い
られている。これら材料は、しばしば、鉱油、シリコー
ン油、PFC(パーフルオロカーボン)等の絶縁油と組
み合わせて油浸した状態で用いられる。
【0003】油入電気機器として知られる高電圧大容量
油入変圧器の巻線では、絶縁物として鉱油の他に良質の
木材パルプからなる紙が大量に用いられている。例え
ば、巻線リード線の絶縁被覆としてクラフト紙やクレー
プ紙が用いられ、巻線内の冷却油道を確保するための各
種スペーサ、主絶縁を構成する絶縁物、巻線を支持する
ために巻線の上下に配置された支持絶縁物、リード線バ
リヤを構成する絶縁筒やスペーサ及びリード線を支持す
るための腕木等の素材として、紙を強圧縮したプレスボ
ードが用いられてきている。即ち、変圧器巻線の絶縁
は、これらの絶縁紙と絶縁油として用いられる鉱油の複
合絶縁になっている。ところで、これらの絶縁紙を油含
浸した油浸紙の誘電率と鉱油の誘電率を比較すると、鉱
油の誘電率が2.2程度であるのに対して油浸紙の誘電
率が3.5〜4.7程度あり、油浸紙の方が1.5〜2
倍程度大きい。このため、これらが直列に配置された絶
縁構造の電界負担は、油浸紙中では緩和され、その分が
鉱油にしわ寄せされて鉱油に電界が集中する。そのう
え、鉱油の絶縁強度は油浸紙の絶縁強度よりもはるかに
小さいので、結局、鉱油の絶縁強度で巻線の複合絶縁系
の絶縁強度が決められてくる。
【0004】このような鉱油への電界集中は絶縁寸法中
における油浸紙の占める割合が大きい部分ほど大きく、
例えば、円板コイルからなる巻線内では、冷却ダクトを
確保するための直線スペーサやコイル間スペーサが配置
された部分の油ギャップで集中が大きい。中でも円板コ
イルが直線スペーサやコイル間スペーサに接する部分の
くさび状の微細な油ギャップの電界が、円板コイルが角
ばっていることによる幾何学的な電界集中も加わって集
中しやすい。このため、この微細油ギャップが絶縁上の
弱点になって絶縁破壊が生じる場合が多いことが知られ
ている。
【0005】このような弱点を解消して絶縁耐力の向上
を図るため、例えば巻線内については、特開昭62−1
47710号公報に記載のように、円板コイルの絶縁被
覆やコイル間スペーサ及び直線スペーサの材料に誘電率
が鉱油の1.3倍以下のものを適用することによって、
円板コイル近傍の微細な油ギャップでの電界の集中を防
止したものがある。特公平6−44411号公報は、ポ
リ4−メチルペンテン1繊維とクラフトパルプを混抄し
た低誘電率のプレスボードを提案している。また、プレ
スボード以外の絶縁紙としては、高分子繊維とパルプ状
物体(合成フィブリッド)を混抄し加熱加圧溶融して成
形した低誘電率絶縁紙(特公昭38−13912号公
報)や高分子繊維とクラフトパルプとの混抄紙2枚以上
を重ね合わせて高分子繊維を溶融して一体化した複合絶
縁紙(特開昭57−124811号公報)が開示されて
いる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】特開昭62−1477
10号公報は誘導電器巻線におけるスペーサ材等の絶縁
材料として誘電率が鉱油の1.3倍以下のスペーサを用
いることを記載するが、具体的にはポリテトラフルオロ
エチレン、ポリプロピレン等の低誘電率のプラスチック
材料をそのまま用いており、鉱油で膨潤する、機械的強
度が低い等の問題がある。また、特公平6−44411
号公報、特公昭38−13912号公報及び特開昭57
−124811号公報は、いずれもクラフトパルプと高
分子繊維とを混抄する、あるいは積層する等して材料を
混合、複合化することで絶縁紙、プレスボード等の絶縁
材料を低誘電率化することを記載するが、これら材料の
場合、低誘電率と機械的強度の両立を図ることが難し
い。セルロースの化学構造を下記の式(I)に示す。
【0007】
【化1】
【0008】セルロースは、ピラノース環が1,4−β
−グルコシド結合した鎖状高分子であり、ピラノース環
の2と3と6の位置に水酸基を持っている。特公昭41
−20762号公報はセルロース中の水酸基をシアノエ
チル化して絶縁紙の耐熱性を上げることを記載するが、
一般にセルロース中の水酸基をシアノエチル化する等エ
ーテル化すると、置換度が高くなるとともに機械的強度
が低下することが知られている。
【0009】本発明の目的は、機械的強度を大きく損な
うことなくセルロースと比べて低誘電率化した化合物を
絶縁材料に用いて媒体の誘電率との整合をとり、電気機
器、特にPFC、シリコーン油、鉱油等の絶縁油を用い
た油入電気機器である油入変圧器や、SF6ガス等の絶
縁気体を用いたガス絶縁電気機器であるガス絶縁変圧器
の絶縁耐力を高め、絶縁距離を短縮することにより小型
軽量の変圧器を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、変圧器用
絶縁材料において、絶縁材料を構成するセルロース化合
物を種々の置換度でアルキルエーテル化したセルロース
化合物の誘電率及び機械的強度について検討し、置換度
0.9〜2.1のアルキルエーテル化セルロース化合
物、即ちセルロースを構成するピラノース環1個につき
平均0.9〜2.1個の水酸基をアルキルエーテル化し
たセルロース化合物がセルロースと比べて低誘電率であ
り、かつ機械的強度が大きく低下しないことを見出し
た。したがって、該化合物は前述したように機械的強度
と低誘電率が要求される電気機器、特にPFC、シリコ
ーン油、鉱油等の絶縁油を用いた油入電気機器である油
入変圧器や、SF6ガス等の絶縁気体を用いたガス絶縁
電気機器であるガス絶縁変圧器の絶縁材料として有効に
適用可能であり、該絶縁材料を適用した変圧器を提供す
ることができる。
【0011】即ち、本発明は以下の発明を包含する。 (1)変圧器用絶縁材料において、絶縁材料を構成する
セルロース化合物として置換度0.9〜2.1のアルキ
ルエーテル化セルロース化合物を用いることを特徴とす
る変圧器用絶縁材料。 (2)アルキルエーテル化がメチルエーテル化又はエチ
ルエーテル化である前記(1)に記載の変圧器用絶縁材
料。 (3)メチルエーテル化又はエチルエーテル化したセル
ロース化合物繊維が、クラフトパルプ及びプラスチック
繊維の少なくとも一つと混抄されている前記(2)に記
載の変圧器用絶縁材料。
【0012】(4)絶縁媒体と、鉄芯脚と、この鉄芯脚
に巻装された、絶縁紙が巻回された電線からなるコイル
と、絶縁用及び絶縁媒体の冷却通路構成用絶縁物を備え
た巻線とをタンク内に備えた変圧器において、前記絶縁
紙又は絶縁物の一部又は全部がセルロース化合物を含
み、該セルロース化合物が置換度0.9〜2.1のアル
キルエーテル化セルロース化合物であることを特徴とす
る変圧器。 (5)アルキルエーテル化がメチルエーテル化又はエチ
ルエーテル化である前記(4)に記載の変圧器。 (6)メチルエーテル化又はエチルエーテル化したセル
ロース化合物繊維が、クラフトパルプ及びプラスチック
繊維の少なくとも一つと混抄されている前記(4)に記
載の変圧器。
【0013】
【発明の実施の形態】本発明の特徴は、変圧器用絶縁材
料、例えば紙、ボード材又はフィルムにおいて、置換度
0.9〜2.1のアルキルエーテル化セルロース化合
物、即ちセルロースを構成するピラノース環1個につき
平均0.9〜2.1個の水酸基をアルキルエーテル化し
たセルロース化合物を含む絶縁材料を使用することであ
る。
【0014】前記アルキルエーテル化における「アルキ
ル」とは、炭素数1〜6の非置換のアルキル基をいい、
例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチ
ル、ペンチル、ヘキシルが挙げられる。これらのアルキ
ル基は2種以上を組み合わせてもよい。前記アルキルエ
ーテル化としては、メチルエーテル化又はエチルエーテ
ル化が好ましい。
【0015】前記セルロース化合物はフィルム状の材料
として用いることができる他、該セルロース化合物繊維
を抄紙して絶縁紙、ボード材のような材料としても用い
ることができる。例えば、該セルロース化合物繊維の水
性スラリーから湿式抄造によって湿紙を形成し、この湿
紙を積層して乾燥後、乾燥機で再乾燥し、熱カレンダ処
理することによって絶縁紙を得ることができる。
【0016】また、該セルロース化合物繊維の水性スラ
リーから湿式抄造によって湿紙を形成し、この湿紙を複
数枚重ねて、温度110〜190℃、圧力1〜5MPa
でホットプレスにより加熱加圧乾燥して一体化すること
によりボード材を得ることができる。この際、表面の毛
羽だちをなくし、毛羽だちによる雷インパルス破壊電圧
の低下を防止し、かつ毛羽抜けを防止する目的で、22
0℃以上の温度で表面を加熱処理してもよい。
【0017】該セルロース化合物繊維をクラフトパルプ
及びプラスチック繊維の少なくとも一つと混抄した絶縁
紙、ボード材として用いることができる。該セルロース
化合物繊維とクラフトパルプ及びプラスチック繊維の少
なくとも一つの繊維との混合物の水性スラリーから湿式
抄造によって湿紙を形成し、この湿紙から前述の手法と
同様にして絶縁紙、ボード材を作製することができる。
【0018】更に、絶縁紙、ボード材の原料のパルプ自
体を化学処理して、セルロース中の水酸基をアルキルエ
ーテル化することもできる。例えば、クラフトパルプの
スラリーに水酸化ナトリウム等のアルカリ金属の水酸化
物の微粉末を触媒として加えハロゲン化アルキル化合物
と反応させることでセルロースをアルキルエーテル化し
たクラフトパルプを得ることができる。また、セルロー
スを含むフィルム、絶縁紙又はボード材を直接化学処理
することも可能である。例えば、抄紙の途中の湿紙の状
態で水酸化ナトリウム等のアルカリ金属の水酸化物の微
粉末とハロゲン化アルキル化合物とを加えた有機系溶媒
に浸漬して反応させることで、絶縁紙を構成するセルロ
ース中の水酸基をアルキルエーテル化することができ
る。更に、この湿紙を複数枚重ねてホットプレスにより
加熱加圧乾燥して一体化することによりボード材を得る
ことができる。
【0019】本発明に用いるアルキルエーテル化セルロ
ース化合物としては、置換度が0.9〜2.1のもので
あれば特に制限はないが、セルロースを構成するピラノ
ース環がほぼ均一にアルキルエーテル化されているもの
が、機械的強度の点で好ましい。このなうな均一にアル
キルエーテル化されているアルキルエーテル化セルロー
ス化合物は、例えば、ピラノース環1個につき1〜2個
の水酸基を選択的にアルキルエーテル化することにより
得ることができる。
【0020】前記式(I)に示したように、セルロース
はピラノース環1個につき2と3と6の位置に3個の水
酸基を持っている。ピラノース環1個につき1〜2個の
水酸基を選択的にアルキルエーテル化する場合、2、
3、あるいは6の位置の1個の水酸基をアルキルエーテ
ル化するか、2と3、2と6、あるいは3と6の位置の
2個の水酸基をアルキルエーテル化することが考えられ
るが、化学処理の容易性の点で、6の位置の1個、又は
2と3の位置の2個をアルキルエーテル化することが望
ましい。
【0021】セルロース中の3個の水酸基は極性が高
い。また、セルロース中の水酸基は分子内又は分子間で
水素結合を形成することが知られている。したがって、
セルロース中のピラノース環1個につき平均0.9〜
2.1個の水酸基をアルキルエーテル化したセルロース
化合物は、極性が低くなり誘電率も低くなる。また、例
えば、ピラノース環1個につき3個すべての水酸基では
なく平均0.9〜2.1個の水酸基をアルキルエーテル
化したセルロース化合物は、水素結合を形成する水酸基
がピラノース環1個につき少なくとも約1個残るため、
セルロース化合物の機械的強度が大きく低下することが
なく、セルロースを100%とすると70%以上の機械的強
度を保持することができる。アルキルエーテル化セルロ
ース化合物の置換度が2.1を超えると、変圧器用材料
として実質的に使用に耐えられない。
【0022】したがって、この特徴によれば上述したよ
うな性質の置換度0.9〜2.1のアルキルエーテル化
セルロース化合物を含むことで、フィルム、紙あるいは
ボード材を機械的強度を大きく損なうことなく低誘電率
化できる。このようなセルロース化合物を用いたフィル
ム、紙あるいはボード材は電気機器の絶縁材料として用
いることができ、特にPFC、シリコーン油、鉱油等の
絶縁油を用いた油入電気機器である油入変圧器や、 S
6ガス等の絶縁気体を用いたガス絶縁電気機器である
ガス絶縁変圧器の絶縁材料として好ましく用いることが
できる。更に、これらのセルロース化合物を用いたフィ
ルム、紙あるいはボード材を絶縁材料として用いること
で媒体の誘電率との整合をとり、絶縁耐力が高い電気機
器、特に油入変圧器やガス絶縁変圧器を作製することが
できる。また、容量が同じであれば絶縁距離を短縮する
ことにより巻線高さを縮小し、変圧器を小型軽量化する
ことができる。
【0023】
【実施例】はじめに、本発明の実施例及び比較例の絶縁
材料について説明する。表1及び下記の式(II)に、本
発明の実施例及び比較例の絶縁材料の化学構造を示す。
【0024】
【化2】
【0025】これらはセルロース中のピラノース環1個
につき1〜3個の水酸基を、表1に示すように選択的に
アルキルエーテル化した化合物である。実施例1は2と
3の位置の水酸基をメチルエーテル化した2,3−ジ−
O−メチルセルロースであり、実施例2は6の位置の水
酸基をメチルエーテル化した6−O−メチルセルロース
であり、実施例3は2と3の位置の水酸基をエチルエー
テル化した2,3−ジ−O−エチルセルロースである。
比較例1はピラノース環1個につき3個の水酸基すべて
をメチルエーテル化した化合物、比較例2はピラノース
環1個につき3個の水酸基すべてをエチルエーテル化し
た化合物、比較例3は全く置換していないセルロース
(市販品)である。
【0026】
【表1】
【0027】(1)絶縁材料の合成 これらの実施例及び比較例の絶縁材料は以下の手順で合
成した。セルロースアセテートはダイセル化学工業社製
(DS=2.24)のものを105℃で3時間乾燥して
用いた。ジメチルスルホキシド、ピリジンはモレキュラ
ーシーブス3Aで脱水した。溶媒、ヨウ化メチル及びヨ
ウ化エチルは市販の有機合成用グレードのものを特に精
製せずそのまま用いた。また、水酸化ナトリウムの粉末
は水酸化ナトリウムのペレットをミルで粉砕したものを
用いた。
【0028】(実施例1)2,3−ジ−O−メチルセル
ロースの合成 (a)6−O−(トリフェニルメチル)セルロースの合
成 セルロースアセテートを15%アンモニア水に加え室温
で3週間撹拌し脱アセチル化した。完全に脱アセチル化
して得られたセルロース32.5gを脱水したピリジン
300mlに加え、80℃で3時間還流した後、ろ過し
た。この還流及びろ過の手順を3回繰り返した。このセ
ルロースに無水ピリジン500mlとトリフェニルメチル
クロリド142gとを加え、冷却管、メカニカルスター
ラー及び乾燥管を接続した1000mlの三口フラスコ中
で95℃で26時間撹拌した。次に、室温まで冷却した
後、反応混合物を撹拌しているメタノールに注いだ。得
られた沈殿を単離してメタノール中で12時間洗浄し
た。沈殿は2回洗浄した後、ろ過し、100℃で真空乾
燥した。
【0029】(b)2,3−ジ−O−メチル−6−(ト
リフェニルメチル)セルロースの合成 6−O−(トリフェニルメチル)セルロース1gをジメ
チルスルホキシド60mlに加え50℃で撹拌しながら溶
解した後、水1mlを加えて室温まで冷却した。次に、こ
の溶液に水酸化ナトリウム粉末2.5gを窒素気流下で
撹拌しながら少しずつ加え分散させた。更に窒素気流下
で1時間撹拌した後、撹拌しながらヨウ化メチル2.2
mlを滴下ロートでゆっくりと滴下した。最初に溶液にヨ
ウ化メチルを加えてから2時間後、3時間後、4時間後
に、それぞれヨウ化メチル0.3mlを滴下ロートでゆっ
くりと滴下した。次に、温度を40℃まで上げて30分
撹拌した後、更に70℃で窒素気流下で20時間撹拌し
た。反応混合物の温度を室温まで下げてしばらく撹拌し
た後、撹拌しているメタノール/水=95/5(vol)
100mlに注いだ。しばらく静置した後、沈殿をろ過
し、ろ物を風乾後50℃で真空乾燥した。
【0030】(c)2,3−ジ−O−メチルセルロース
の合成 得られた2,3−ジ−O−メチル−6−(トリフェニル
メチル)セルロース4.5gをジクロロメタン150ml
に入れ塩化水素ガスで4分間処理し脱トリチル化した。
脱トリチル化混合物を500mlのアセトンに注いだ。生
成物をアセトンで洗浄後ろ過し、65℃で真空乾燥し
た。得られた2,3−ジ−O−メチルセルロースの置換
度は2.0であった。
【0031】(実施例2)6−O−メチルセルロースの
合成 (a)2,3−ジ−O−アリル−6−(トリフェニルメ
チル)セルロースの合成 6−O−(トリフェニルメチル)セルロース3gをジメ
チルスルホキシド150mlに加え60℃で撹拌しながら
溶解した後、室温まで冷却した。次に、この溶液に水酸
化ナトリウム粉末5.94gを窒素気流下で撹拌しなが
ら少しずつ加え分散させた。更に窒素気流下で1時間撹
拌した後、アリルクロリド12.1mlを一気に加えた。
混合物を窒素気流下70℃で4時間撹拌した後、室温ま
で冷却した。反応混合物を撹拌しているメタノール/水
=95/5(vol)に注いで沈殿させた。沈殿はジクロ
ロメタンに溶解して水で3回洗浄した後、減圧下60℃
でシロップ状になるまで溶媒を蒸発させた。シロップに
メタノールを加えて沈殿させ、ろ過後65℃で真空乾燥
した。
【0032】(b)2,3−ジ−O−アリルセルロース
の合成 2,3−ジ−O−アリル−6−(トリフェニルメチル)
セルロース4.5gをジクロロメタン150mlに溶解し
塩化水素ガスで3分間処理し脱トリチル化した。脱トリ
チル化混合物を500mlのアセトンに注ぎ、生成物を遠
心分離して単離した。生成物はアセトンで洗浄後、ろ過
し、65℃で真空乾燥した。
【0033】(c)2,3−ジ−O−(1−プロペニ
ル)セルロースの合成 2,3−ジ−O−アリルセルロース3gをジメチルスル
ホキシド150mlに50℃で2時間撹拌して溶解し、窒
素気流下tert−ブトキシカリウム7.73gを触媒とし
て加え均一溶液とし4時間撹拌して異性化した。反応混
合物をアセトンに注ぎ、沈殿を遠心分離して単離した。
沈殿はアセトンで洗浄後、ろ過し、65℃で真空乾燥し
た。
【0034】(d)6−O−メチル−2,3−ジ−O−
(1−プロペニル)セルロースの合成 2,3−ジ−O−(1−プロペニル)セルロース1.5
gをジメチルスルホキシド90mlに加え50℃で撹拌し
ながら溶解した後、水1.5mlを加えて室温まで冷却し
た。次に、この溶液に水酸化ナトリウム粉末3.1gを
窒素気流下で撹拌しながら少しずつ加え分散させた。更
に窒素気流下で1時間撹拌した後、総量の2/3のヨウ
化メチル1.9mlを滴下ロートでゆっくりと滴下した。
最初に溶液にヨウ化メチルを加えてから2時間後、3時
間後、4時間後に、それぞれ等量のヨウ化メチル0.3
ml(総量の1/9)を滴下ロートでゆっくりと滴下し
た。次に、温度を40℃まで上げて30分撹拌した後、
更に70℃で窒素気流下で20時間撹拌した。反応混合
物の温度を室温まで下げてしばらく撹拌した後、撹拌し
ているメタノール/水=95/5(vol)300mlに
注いだ。しばらく静置した後、沈殿をろ過し、ろ物を風
乾後50℃で真空乾燥した。
【0035】(e)6−O−メチルセルロースの合成 6−O−メチル−2,3−ジ−O−(1−プロペニル)
セルロースは0.1MのHClを溶解したメタノール/水
=90/10(vol)中で室温で3時間撹拌して加水分
解した。混合物を大量の冷水中に注ぎ、沈殿をろ過後、
蒸留水で2〜3回洗浄した。得られた固体を65℃で真
空乾燥した。得られた6−O−メチルセルロースの置換
度は1.0であった。
【0036】(実施例3)2,3−ジ−O−エチルセル
ロースの合成 (a)2,3−ジ−O−エチル−6−(トリフェニルメ
チル)セルロースの合成 6−O−(トリフェニルメチル)セルロース1gをジメ
チルスルホキシド60mlに加え50℃で撹拌しながら溶
解した後、水1mlを加えて室温まで冷却した。次に、こ
の溶液に水酸化ナトリウム粉末2.5gを窒素気流下で
撹拌しながら少しずつ加え分散させた。更に窒素気流下
で1時間撹拌した後、撹拌しながらヨウ化エチル2.8
mlを滴下ロートでゆっくりと滴下した。最初に溶液にヨ
ウ化エチルを加えてから2時間後、3時間後、4時間後
に、それぞれヨウ化エチル0.4mlを滴下ロートでゆっ
くりと滴下した。次に、温度を40℃まで上げて30分
撹拌した後、更に70℃で窒素気流下で20時間撹拌し
た。反応混合物の温度を室温まで下げてしばらく撹拌し
た後、撹拌しているメタノール/水=95/5(vol)
100mlに注いだ。しばらく静置した後、沈殿をろ過
し、ろ物を風乾後50℃で真空乾燥した。
【0037】(b)2,3−ジ−O−エチルセルロース
の合成 得られた2,3−ジ−O−エチル−6−(トリフェニル
メチル)セルロース4.5gをジクロロメタン150ml
に入れ塩化水素ガスで4分間処理し脱トリチル化した。
脱トリチル化混合物を500mlのアセトンに注いだ。生
成物をアセトンで洗浄後、ろ過し、65℃で真空乾燥し
た。得られた2,3−ジ−O−エチルセルロースの置換
度は2.0であった。
【0038】(比較例1)2,3,6−トリ−O−メチ
ルセルロースの合成 セルロースアセテート1gをジメチルスルホキシド60m
lに加え50℃で撹拌しながら溶解した後、水1mlを加
えて室温まで冷却した。次に、この溶液に水酸化ナトリ
ウム粉末5.86gを窒素気流下で撹拌しながら少しず
つ加え分散させた。更に1時間撹拌した後、窒素気流下
で撹拌しながらヨウ化メチル4.9mlを滴下ロートでゆ
っくりと滴下した。最初に溶液にヨウ化メチルを加えて
から2時間後、3時間後、4時間後に、それぞれヨウ化
メチル0.8mlを滴下ロートでゆっくりと滴下した。次
に、温度を40℃まで上げて30分撹拌した後、更に7
0℃で窒素気流下で20時間撹拌した。反応混合物の温
度を室温まで下げてしばらく撹拌した後、撹拌している
アセトン/水=50/50(vol)100mlに注い
だ。しばらく静置した後、沈殿をろ過し乾燥した。ろ物
をジクロロメタンに溶解し分液ロートを用いて水で洗浄
した後、シロップが残るまでジクロロメタンを蒸発させ
た。残ったシロップにアセトン/水=50/50(vo
l)を加え、沈殿をろ過した。ろ物をジクロロメタンに
溶解しアセトン/水=50/50(vol)で同様に再沈
殿した後、ろ過し、ろ物を風乾後50℃で真空乾燥し
た。得られた2,3,6−トリ−O−メチルセルロース
の置換度は3.0であった。
【0039】(比較例2)2,3,6−トリ−O−エチ
ルセルロースの合成 比較例1において、ヨウ化メチルの代わりにヨウ化エチ
ルを用いる以外は同様にして、2,3,6−トリ−O−
エチルセルロースを得た。得られた2,3,6−トリ−
O−エチルセルロースの置換度は3.0であった。
【0040】(2)絶縁材料フィルムの作製 合成した絶縁材料を以下の手順でフィルム化した。2,
3−ジ−O−メチルセルロース、6−O−メチルセルロ
ース及び2,3−ジ−O−エチルセルロースをそれぞれ
約0.8wt%のジメチルアセトアミド溶液とした。約2
gの溶液を底が平坦なトレイに入れ、50℃で減圧下3
日間処理してジメチルアセトアミドを蒸発させ、キャス
トフィルムを得た。更に50℃で2日間真空乾燥してフ
ィルム中に残るジメチルアセトアミドを完全に除去し、
デシケータ中に保管した。2,3,6−トリ−O−メチ
ルセルロース及び2,3,6−トリ−O−エチルセルロ
ースについては、溶媒としてクロロホルムを用い、同様
にしてキャストフィルムを得た。純粋なセルロースフィ
ルムはセルロースの塩化リチウム−ジメチルアセトアミ
ド溶液をキャストして得た。
【0041】(3)絶縁紙、ボード材の作製 合成した絶縁材料から、以下の手順で絶縁紙及びボード
材を作製した。実施例1〜3及び、比較例1、3のそれ
ぞれの化合物について、該化合物繊維の水性スラリーか
ら湿式抄造によって湿紙を形成し、この湿紙を積層して
乾燥後、乾燥機で再乾燥し、熱カレンダ処理することに
よって厚さ100μmの絶縁紙を得た。また、該セルロ
ース化合物繊維の水性スラリーから湿式抄造によって湿
紙を形成し、この湿紙を19枚重ねて、温度140℃、
圧力4MPaでホットプレスにより加熱加圧乾燥して一
体化し、厚さ1.6〜1.7mmのボード材を得た。
【0042】また、実施例1の化合物について、該化合
物繊維をクラフトパルプと重量比で80/20の割合で
混ぜ水性スラリーとし、同様に湿式抄造によって湿紙を
形成し、この湿紙を積層して乾燥後、乾燥機で再乾燥
し、熱カレンダ処理することによって厚さ100μmの
絶縁紙を得た。また、該セルロース化合物繊維の水性ス
ラリーから湿式抄造によって湿紙を形成し、この湿紙を
19枚重ねて、温度140℃、圧力4MPaでホットプ
レスにより加熱加圧乾燥して一体化し、厚さ1.6〜
1.7mmのボード材を得た。
【0043】(4)誘電率測定 作製した絶縁材料フィルムの室温、空気中における誘電
率を測定した。誘電率測定用の試料は、作製したキャス
トフィルムの表側に約4mmΦ、裏側には約10mmΦのア
ルミニウム電極を厚さ500nm蒸着したものを用い
た。測定は、HEWLETT PACKARD社製電極
16451Bを用い、YOKOGAWAHEWLETT
PACKARD社製IMPEDANCE ANALY
ZER4192Aで測定した。作製した絶縁紙、ボード
材の誘電率は、日新電機社製EY−02559電極を用
い、あらかじめ真空加熱乾燥し絶縁油を含浸した供試片
(直径90mmΦ)を電極間に0.025MPaの圧力で
はさみ絶縁油を含浸して、安藤電気社製TR−1100
形誘電体損測定装置で測定した。
【0044】(5)機械的強度測定 作製した絶縁材料フィルムの室温、空気中における機械
的特性を測定した。引張弾性率(ヤング率)はアイティ
ー計測制御社製動的粘弾性測定装置DVA−200を用
いて測定した。また、引張強度はフィルムを5mm×30
mmに切りスパン間20mm、引張速度5mm/minで、SH
IMAZU社製AUTOGRAPH DSS5000を
用いて測定した。作製した絶縁紙、ボード材の引張強度
は、15mm×250mmに切りスパン間180mm、引張速
度200mm/minで、SHIMAZU社製AUTOGR
APH DSS5000を用いて測定した。
【0045】(実施例4〜6、比較例4〜6)表2に、
各絶縁材料フィルムの誘電率及び機械的特性を示す。実
施例4〜6は、比較例6のセルロースと比べて誘電率が
低い。また、機械的強度も比較例6のセルロースの約7
0〜85%程度であり、変圧器等の絶縁材料に適用する
ことができる。比較例4〜5も実施例4〜6と同様に誘
電率は低いが、機械的強度が比較例6のセルロースの5
0%程度であり、変圧器等の絶縁材料に適用することは
困難であることが分かる。
【0046】
【表2】
【0047】表2の実施例4〜6の測定結果より、セル
ロースを構成するピラノース環1個につき1〜2個の水
酸基をメチルエーテル化又はエチルエーテル化した化合
物はセルロースと比べて誘電率が低く引張強度もセルロ
ースの約70〜85%程度であり、変圧器等の絶縁材料
に適用することができる。
【0048】(実施例7〜14、比較例7〜10)表3及び
4に、実施例1〜3及び比較例1、3のそれぞれの化合
物を用いて作製した絶縁紙及びボード材の密度、誘電率
及び引張強度を示す。実施例7〜10の絶縁紙は、比較例
8のセルロース100%の絶縁紙と比べて誘電率が低く、ま
た、引張強度も比較例8の約70〜85%程度であり、
変圧器等の絶縁材料に適用することができる。また、実
施例11〜14のボード材は、比較例10のセルロース100%の
ボード材と比べて誘電率が低く、また、引張強度も比較
例10の約70〜87%程度であり、変圧器等の絶縁材料
に適用することができる。また、実施例8及び実施例12
からわかるように、実施例1の化合物にクラフトパルプ
を混抄して作製した絶縁紙及びボード材も、それぞれ比
較例8の絶縁紙及び比較例10のボード材と比べて誘電率
が低く、また、引張強度も比較例8の絶縁紙及び比較例
10のボード材の約85%程度であり、変圧器等の絶縁材
料に適用することができる。
【0049】比較例7の絶縁紙及び比較例9のボード材
も、それぞれ比較例8の絶縁紙及び比較例10のボード材
と比べて誘電率は低いが、引張強度が8及び10と比べて
それぞれ50%程度であり、変圧器等の絶縁材料に適用
することは困難であることが分かる。
【0050】
【表3】
【0051】
【表4】
【0052】表3及び4の実施例7〜14の測定結果よ
り、セルロースを構成するピラノース環1個につき1〜
2個の水酸基をメチルエーテル化又はエチルエーテル化
した化合物を用いて作製した絶縁紙又はボード材は、そ
れぞれセルロース100%の絶縁紙又はボード材と比べ
て誘電率が低く、引張強度もセルロースの約70〜87
%程度であり、変圧器等の絶縁材料に適用することがで
きる。
【0053】絶縁紙、ボード材の原料のパルプ自体を化
学処理して、セルロース中の水酸基をアルキルエーテル
化することも可能である。クラフトパルプを有機溶剤に
分散させ、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属の水酸化
物の微粉末を触媒として加え、ハロゲン化アルキル化合
物と反応させることで、クラフトパルプを構成するセル
ロースをアルキルエーテル化したクラフトパルプを得る
ことができる。例えば2,3位の水酸基をメチルエーテ
ル化する場合、まず、クラフトパルプを十分に脱水した
後、脱水した有機溶剤中でトリフェニルメチルクロライ
ドとを加えて反応させ、6位の水酸基を(トリフェニル
メチル)エーテル化する。次に、得られた6−O−(ト
リフェニルメチル)セルロースを有機溶剤に若干の水を
加えて分散させ、この溶液に窒素気流下で水酸化ナトリ
ウム粉末を少しずつ分散させた後にヨウ化メチルをでゆ
っくりと加えて反応させ2,3位の水酸基をメチルエー
テル化する。更に、得られた2,3−ジ−O−メチル−
6−(トリフェニルメチル)セルロースを有機溶剤中で
塩化水素ガスで短時間処理し脱トリチル化して、2,3
−ジ−O−メチルセルロースを得ることが可能である。
【0054】また、セルロースを含むフィルム、絶縁紙
又はボード材を直接化学処理することも可能である。例
えば、抄紙の途中の湿紙の状態で水酸化ナトリウム等の
アルカリ金属の水酸化物とハロゲン化アルキル化合物と
を加えた水又は有機溶媒に浸漬して反応させることで、
クラフトパルプを構成するセルロースをアルキルエーテ
ル化して絶縁紙又はボード材を作製することができる。
2,3位をメチルエーテル化する場合、クラフトパルプ
を十分に脱水した後、脱水した有機溶剤中で抄紙の途中
の湿紙の状態で、トリフェニルメチルクロリドを加えた
脱水した有機溶剤中に浸漬して反応させることで、6位
の水酸基を(トリフェニルメチル)エーテル化する。次
いで、若干の水を加えた有機溶剤に窒素気流下で水酸化
ナトリウム粉末を少しずつ分散させた溶液に浸漬し、こ
の溶液に窒素気流下でヨウ化メチルをゆっくりと加えて
反応させ、2,3位の水酸基をメチルエーテル化する。
更に、有機溶剤中で塩化水素ガスで短時間処理し脱トリ
チル化して、2,3位をメチルエーテル化した絶縁紙又
はボード材を得ることが可能である。また、絶縁紙、ボ
ード材そのものを水酸化ナトリウム等のアルカリ金属の
水酸化物とハロゲン化アルキル化合物とを加えた水又は
有機溶媒に浸漬して反応させることで、絶縁紙又はボー
ド材を構成するセルロースをアルキルエーテル化するこ
とも可能である。
【0055】(実施例12)本発明の実施例である油入電
気機器としての油入変圧器を説明する。図1は本実施例
の油入変圧器を示す縦断面図である。鉄芯1の下部に取
り付けた下部支持金具2の上に絶縁支持台3aを置き、
この絶縁支持台3a上にコイル間スペーサ4aと円板コ
イル5aを交互に積み重ねて低圧巻線6を形成してい
る。低圧巻線6の最上部には静電シールド7aが置かれ
る。低圧巻線6の外側に直線スペーサ8を当て、その外
側に絶縁紙を巻回して絶縁筒9を形成し、更に、その外
側に同様の直線スペーサ8と絶縁筒9を配置して主絶縁
10を形成している。
【0056】主絶縁10の最も外側に位置する直線スペ
ーサ8の外側に電線を締め付けながら巻回して円板コイ
ル5bを形成し、この円板コイル5bとコイル間スペー
サ4bを交互に積み重ねて高圧巻線11を構成してい
る。高圧巻線11の最上部には静電シールド7bが設け
られる。
【0057】このように形成した低圧及び高圧巻線6、
11の上部には絶縁支持台3bを乗せ、更にその上に押
しボルト13を装着した上部支持金具12を乗せて鉄芯
1に取り付ける。そして、押しボルト13で絶縁支持台
3bに荷重を加え、低圧及び高圧巻線6、11を締め付
けて巻線本体を構成している。
【0058】高圧巻線11の上端から高圧リード線14
を引き出して高圧ブッシング15に接続するが、その
際、上部支持金具12から、高圧リード線14が入るよ
うな穴をあけた支持腕木16を出し、この穴に高圧リー
ド線14を納めてリード線14の途中を支持している。
また、高圧リード線の周囲との絶縁距離が小さい部分に
ついてはスペーサ17を介して絶縁紙を巻回してリード
線バリヤ18を配置している。これらすべては鉱油21
を満たしたタンク20内に収納して円板巻の変圧器巻線
22が構成されている。
【0059】絶縁用及び絶縁油の冷却通路構成用絶縁物
として用いられるコイル間スペーサ4a、4b、直線ス
ペーサ8の材料としては従来よりクラフトパルプからな
るプレスボード等のボード材が広く用いられている。こ
れらコイル間スペーサ4a、4b、直線スペーサ8に用
いるボード材として、表4に示す実施例11に代表される
置換度0.9〜2.1のアルキルエーテル化セルロース
化合物を含む絶縁材料を用いることにより、ボード材と
鉱油とで形成される複合絶縁系の絶縁耐力を高くするこ
とができる。即ち、従来と比べて機械的強度を損なうこ
となく低誘電率化したボード材を用いて鉱油と絶縁材料
との誘電率差を小さくすることにより、コイル間スペー
サ4a、4b、直線スペーサ8が配置された部分等の油
ギャップでの電界集中を緩和することができる。
【0060】また、図2に図1中の円板コイルの拡大断
面図を示す。導体51のまわりに用いられる絶縁被覆5
2の材料として従来よりクラフトパルプからなる絶縁紙
が広く用いられている。絶縁被覆52に用いる絶縁紙と
して置換度0.9〜2.1のアルキルエーテル化セルロ
ース化合物を含む絶縁材料を用いることにより、ボード
材と鉱油とで形成される複合絶縁系の絶縁耐力を高くす
ることができる。本発明の絶縁材料は、ここに示した材
料に限らず、変圧器で用いられる鉱油との複合絶縁系を
形成する紙、ボード材に代表される絶縁材料に適用可能
である。また、従来より用いられるフィルム、紙、ボー
ド材と併用することもできる。
【0061】本発明の絶縁材料は、鉱油に限らず、一般
に絶縁、冷却媒体として用いられる汎用の絶縁液体を用
いた場合でも、絶縁液体との複合絶縁系を形成する紙、
ボード材に代表される絶縁材料に適用可能である。ま
た、絶縁、冷却媒体としてガスを用いた場合にも、絶縁
ガスとの複合絶縁系を形成するフィルム、紙、ボード材
に適用可能である。例えば、油入変圧器と同様に冷却通
路構成用絶縁物であるコイル間スペーサ、直線スペーサ
の材料としてボード材を用いるガス絶縁変圧器に代表さ
れるガス絶縁電気機器にも本発明の絶縁材料を適用する
ことができる。
【0062】前記の一定の置換度でアルキルエーテル化
されたセルロース化合物を用いたフィルム、紙又はボー
ド材を絶縁材料として用いることで媒体の誘電率との整
合をとり、絶縁耐力が高い電気機器、特に油入電気機器
である油入変圧器を作製することができる。また、容量
が同じであれば絶縁距離を短縮することにより巻線高さ
を縮小し、変圧器を小型軽量化することができる。本発
明の表4に示す実施例11のボード材を用いることによ
り、容量が同じである従来の変圧器と比べて巻線高さを
約5%縮小し、変圧器を小型化することができた。
【0063】
【発明の効果】本発明によれば、絶縁材料において、機
械的強度を大きく損なうことなく低誘電率化することが
できる。また、本発明の絶縁材料は電気機器の絶縁材料
として用いることができ、特に油入電気機器である油入
変圧器の絶縁材料として好ましく用いることができる。
更に、本発明の絶縁材料を用いることで媒体の誘電率と
の整合をとり、絶縁耐力が高い電気機器、特に油入電気
機器である油入変圧器を作製することができる。また、
容量が同じであれば絶縁距離を短縮することにより巻線
高さを縮小し、変圧器を小型軽量化することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例の油入変圧器を示すを示す縦断面図。
【図2】実施例の油入変圧器の要部である円板コイルの
拡大断面図。
【符号の説明】
1 鉄芯 2 下部支持金具 3a,3b 絶縁支持台 4a,4b コイル間スペーサ 5a,5b 円板コイル 6 低圧巻線 7a,7b 静電シールド 8 直線スペーサ 9 絶縁筒 10 主絶縁 11 高圧巻線 12 上部支持金具 13 押しボルト 14 高圧リード線 15 高圧ブッシング 16 支持腕木 17 スペーサ 18 リード線バリヤ 19 絶縁被覆 20 タンク 21 鉱油 22 変圧器巻線 51 導体 52 絶縁被覆
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) H01B 3/52 H01B 3/52 Z 17/56 17/56 D H01F 27/32 H01F 27/32 Z 41/12 41/12 E (72)発明者 伊藤 雄三 茨城県日立市大みか町七丁目1番1号 株 式会社日立製作所日立研究所内 (72)発明者 佐藤 重勝 茨城県日立市国分町一丁目1番1号 株式 会社日立製作所電機システム事業部内 Fターム(参考) 4J002 AB031 FA041 GK00 GQ01 4L055 AC06 AF09 AF10 EA29 FA11 GA02 5E044 CA01 CB03 5G305 AA03 AB02 AB10 AB15 AB40 BA18 BA21 BA23 CA43 5G333 AA02 AA03 AB05 AB28 CA01 CA03 CB01 DA06 DA12

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 変圧器用絶縁材料において、絶縁材料を
    構成するセルロース化合物として置換度0.9〜2.1
    のアルキルエーテル化セルロース化合物を用いることを
    特徴とする変圧器用絶縁材料。
  2. 【請求項2】 アルキルエーテル化がメチルエーテル化
    又はエチルエーテル化である請求項1記載の変圧器用絶
    縁材料。
  3. 【請求項3】 メチルエーテル化又はエチルエーテル化
    したセルロース化合物繊維が、クラフトパルプ及びプラ
    スチック繊維の少なくとも一つと混抄されている請求項
    2記載の変圧器用絶縁材料。
  4. 【請求項4】 絶縁媒体と、鉄芯脚と、この鉄芯脚に巻
    装された、絶縁紙が巻回された電線からなるコイルと、
    絶縁用及び絶縁媒体の冷却通路構成用絶縁物を備えた巻
    線とをタンク内に備えた変圧器において、前記絶縁紙又
    は絶縁物の一部又は全部がセルロース化合物を含み、該
    セルロース化合物が置換度0.9〜2.1のアルキルエ
    ーテル化セルロース化合物であることを特徴とする変圧
    器。
  5. 【請求項5】 アルキルエーテル化がメチルエーテル化
    又はエチルエーテル化である請求項4記載の変圧器。
  6. 【請求項6】 メチルエーテル化又はエチルエーテル化
    したセルロース化合物繊維が、クラフトパルプ及びプラ
    スチック繊維の少なくとも一つと混抄されている請求項
    4記載の変圧器。
JP2000305266A 2000-10-04 2000-10-04 絶縁材料及びそれを用いた変圧器 Pending JP2002110414A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2000305266A JP2002110414A (ja) 2000-10-04 2000-10-04 絶縁材料及びそれを用いた変圧器

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2000305266A JP2002110414A (ja) 2000-10-04 2000-10-04 絶縁材料及びそれを用いた変圧器

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2002110414A true JP2002110414A (ja) 2002-04-12

Family

ID=18786162

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2000305266A Pending JP2002110414A (ja) 2000-10-04 2000-10-04 絶縁材料及びそれを用いた変圧器

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2002110414A (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2012033386A (ja) * 2010-07-30 2012-02-16 Nec Tokin Corp 電線、巻き線、および電気部品
CN104066887A (zh) * 2012-01-20 2014-09-24 Abb技术有限公司 纤维素基电绝缘材料

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2012033386A (ja) * 2010-07-30 2012-02-16 Nec Tokin Corp 電線、巻き線、および電気部品
CN104066887A (zh) * 2012-01-20 2014-09-24 Abb技术有限公司 纤维素基电绝缘材料
US10937562B2 (en) 2012-01-20 2021-03-02 Abb Power Grids Switzerland Ag Cellulose based electrically insulating material

Similar Documents

Publication Publication Date Title
RU2656226C2 (ru) Электроизоляционная бумага
CN101253582B (zh) 套管、使用该套管的高压/中压设备及制造该套管的方法
EP2588304B1 (en) Multilayer structure useful for electrical insulation
DE2417369B2 (de) Formkörper für elektrische Isolierzwecke und Verwendung desselben
CN107034738A (zh) 一种耐高温绝缘纸
Chen et al. Effect of melamine modified cellulose nanocrystals on the performance of oil-immersed transformer insulation paper
JP2002110414A (ja) 絶縁材料及びそれを用いた変圧器
CN102254650B (zh) 少胶云母带及其制备方法
US6017627A (en) High voltage electric appliance
US4418241A (en) Insulated coil
WO2015015981A1 (ja) 電気絶縁紙およびそれを用いた静止誘導電器
DE2249871A1 (de) Loesungsmittelfreie kombination aus epoxyharz, haerter und verduenner als elektrisches isolier- und/oder impraegniermittel
EP0623936B1 (de) Elektroisolationspapier
CN1641810A (zh) C级非包封线圈干式变压器
JP3027273B2 (ja) シート状全芳香族ポリアミド成形物
US3062912A (en) Paper for use in the manufacture of electric cables and capacitors and other purposes
EP1873206A1 (en) Nano-composite dielectrics
JP3380267B2 (ja) 耐熱性薄葉紙の製造方法
SU553322A1 (ru) Способ изготовлени электроизол ционной бумаги
CN111145936A (zh) 一种高性能耐高温绝缘纸
FI61365B (fi) Elektriskt isoleringsmaterial pao cellulosa-basis och process foer framstaellning daerav
JPS593566B2 (ja) パルプ状粒子
US4325848A (en) Cellulose-based electric insulation material containing boric anhydride and process for producing same
JPS6233726B2 (ja)
CN117736442A (zh) 电工环氧树脂活性添加剂、组合物及其制备方法与应用