JP2002107196A - 感温性抵抗素子及びこれを用いた熱式流量センサ - Google Patents

感温性抵抗素子及びこれを用いた熱式流量センサ

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JP2002107196A
JP2002107196A JP2000299653A JP2000299653A JP2002107196A JP 2002107196 A JP2002107196 A JP 2002107196A JP 2000299653 A JP2000299653 A JP 2000299653A JP 2000299653 A JP2000299653 A JP 2000299653A JP 2002107196 A JP2002107196 A JP 2002107196A
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acid
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Fujio Ishiguro
不二男 石黒
Zenji Ishikawa
善治 石川
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NGK Insulators Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 劣悪な使用環境下であっても所定の抵抗特性
を維持することが可能な感温性抵抗素子、及び信頼性、
測定精度に優れた熱式流量センサを提供する。 【解決手段】 絶縁体からなる円筒状の基体3と、基体
3の外周面に形成された、基体3の両端部を連絡する感
温性抵抗体2と、感温性抵抗体2と電気的に接続され
た、基体3の両端部から突出する導通部材4と、少なく
とも感温性抵抗体2を被覆する保護被膜6とを備えた感
温性抵抗素子1である。保護被膜6を耐酸性材料から構
成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】 本発明は、例えば自動車用
内燃機関の吸入空気の流量測定に用いられる熱式流量セ
ンサの構成部品として好適に用いられる、感温性の抵抗
素子に関する。
【0002】
【従来の技術】 例えば自動車用内燃機関等において燃
料噴射バルブを調整する際に、吸入空気の流量を測定す
ることが必要となる場合がある。このような測定を行う
センサとしては、温度上昇に伴って抵抗値が増加する抵
抗体を利用した抵抗素子(以下、「感温性抵抗素子」と
いう。)により、吸入空気の流量を測定する熱式流量セ
ンサが知られている(センサ技術1989年9月号第2
9頁)。
【0003】 熱式流量センサ用の感温性抵抗素子とし
ては、例えば図1に示すような、絶縁体からなる円筒状
の基体3と、基体3の外周面に、基体3の両端部を連絡
するように形成された感温性抵抗体2と、感温性抵抗体
2と電気的に接続された、基体3の両端部から突出する
リード線等の導通部材4とを備えた構造の抵抗素子1が
使用される(実開昭56−96326号公報等)。
【0004】 上記のような抵抗素子においては、吸入
空気中の塵、埃、砂による摩耗、或いは酸性ガス(NO
x、SOx)による腐食から感温性抵抗体を保護し、所定
の抵抗特性を維持するため、保護被膜6を形成すること
が一般的である。保護被膜は空気温度に対する応答性を
確保する必要から20μm程度の膜厚に構成され、その
材質としては耐熱性を確保するため、200℃程度の温
度条件で使用する場合にはポリイミド樹脂、シリコーン
樹脂等の耐熱性樹脂、350℃程度の条件であれば軟化
点400〜800℃の低融点ガラスが用いられてきた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】 しかしながら、上記
材質からなる保護被膜は感温性抵抗体と比較すれば耐久
性があるものの、薄厚であることに加えその化学的安定
性が充分ではないため、例えば降雪時に道路に散布され
る凍結防止剤、或いは酸性雨等の影響により使用雰囲気
が悪化すると保護被膜が溶解し、消失するおそれがある
という問題があった。
【0006】 上記のような場合には、保護被膜がその
機能を果たすことができないため、感温性抵抗体の劣化
により抵抗特性が低下し、当該抵抗素子を組み込んだ熱
式流量センサの信頼性や測定精度を低下させる点におい
て好ましくない。
【0007】 本発明は、上述のような従来技術の問題
点に鑑みてなされたものであって、その目的とするとこ
ろは、劣悪な使用環境下であっても所定の抵抗特性を維
持することが可能な感温性抵抗素子、及び信頼性、測定
精度に優れた熱式流量センサを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】 本発明者らが鋭意検討
した結果、保護被膜を耐酸性材料から構成することによ
り、上記従来技術の問題点を解決できることを見出して
本発明を完成した。
【0009】 即ち、本発明によれば、絶縁体からなる
円筒状の基体と、当該基体の外周面に形成された、当該
基体の両端部を連絡する感温性抵抗体と、当該感温性抵
抗体と電気的に接続された、当該基体の両端部から突出
する導通部材と、少なくとも前記感温性抵抗体を被覆す
る保護被膜と、を備えた感温性抵抗素子であって、前記
保護被膜が、耐酸性材料から構成されていることを特徴
とする感温性抵抗素子が提供される。
【0010】 本発明の感温性抵抗素子は、保護被膜が
PbO含有量30〜60質量%の低融点ガラスから構成
されていることが好ましく、保護被膜を構成する耐酸性
材料が、SiO2,Al23,B23の総量が28質量
%以上の耐酸性材料であることが好ましい。
【0011】 更に、本発明によれば、上記の感温性抵
抗素子を、ブリッジ回路に組み込んだことを特徴とする
熱式流量センサが提供される。
【0012】
【発明の実施の形態】 本発明の感温性抵抗素子(以
下、単に「抵抗素子」と記す。)は、保護被膜を耐酸性
材料から構成したものである。本発明の抵抗素子は劣悪
な使用環境下であっても所定の抵抗特性を維持すること
が可能であり、当該抵抗素子を組み込んだ熱式流量セン
サ(以下、単に「センサ」と記す。)は信頼性、測定精
度に優れる。以下、本発明の抵抗素子及びセンサについ
て詳細に説明する。
【0013】(1)本発明の抵抗素子の特徴 本発明の抵抗素子は、保護被膜を化学的安定性が高い耐
酸性材料から構成した点に特徴があり、従前から使用さ
れてきた耐熱性樹脂や低融点ガラスと比較して、吸入空
気中の酸性ガス(NOx、SOx)に対する耐久性が向上
する他、例えば凍結防止剤、酸性雨等の劣悪な使用雰囲
気下においても保護被膜が溶解し、消失することがな
い。従って、感温性抵抗体の劣化による抵抗特性の低下
を防止することができ、当該抵抗素子を組み込んだ熱式
流量センサの信頼性や測定精度を向上させることが可能
である。
【0014】 本発明にいう「耐酸性材料」とは、以下
に説明する耐酸試験において、腐食、溶解、外観上の変
化が認められない材料を意味する。従って、一般に耐酸
性材料と称される材料であっても、本発明にいう「耐酸
性材料」には該当しない場合がある点には留意すべきで
ある。
【0015】 耐酸試験は、何らかの基材(例えばアル
ミナ板)の表面に、試験すべき材料の厚さ5〜35μm
の被膜を形成したものをサンプルとし、当該サンプル
を、10%硝酸水溶液中、室温(25℃)下、24時間
浸漬することにより行う。
【0016】 本発明にいう「耐酸性材料」としては、
材料全体のPbO含有量が30〜60質量%の低融点ガ
ラスが挙げられる。
【0017】 保護被膜の材料として低融点ガラスを用
いる場合には、ペースト状にした低融点ガラスを基体表
面の抵抗体を被覆するように塗布し、低融点ガラスの軟
化点より50〜250℃高い温度で熱処理(焼成)して
保護被膜を形成するが、前記熱処理温度を1000℃以
上とすると抵抗体の抵抗値が変動するおそれがある。材
料全体のPbO含有量が30質量%未満のガラスは軟化
し難く、1000℃未満の熱処理温度では保護被膜表面
が平滑にならず、被膜内部に未溶融部が残り易い点にお
いて好ましくない。
【0018】 一方、保護被膜には、抵抗素子の使用条
件と適合する耐熱性が必要とされるため、軟化点は35
0℃以上であることが理想的である。このような軟化点
を得るため、本発明においては材料全体のPbO含有量
を60質量%以下とすることが好ましい。
【0019】 また、低融点ガラス中にNa2O,K
2O,MgO,CaO等のアルカリ系酸化物が多量に含
まれると、耐酸性が低下することに加え、抵抗体の抵抗
温度係数をも低下させる点において好ましくない。従っ
て、本発明においては、保護被膜を構成する耐酸性材料
が、非アルカリ系酸化物であるSiO2,Al23,B2
3の総量が28質量%以上の耐酸性材料であること、
即ちこれらの成分が、耐酸性材料のPbO以外の成分に
おける主要成分であることが好ましい。
【0020】 保護被膜の厚さは、空気温度に対する応
答性を確保する必要から20μm程度の膜厚に構成す
る。保護被膜の形成方法は、その材質により異なるが、
低融点ガラスの場合であれば、例えばペースト状にした
低融点ガラスを、基体の端面も含む抵抗体全体を被覆す
るように塗布し、軟化点より50℃〜250℃程度高い
温度で焼成する操作を複数回繰り返すことにより形成す
ることができる。なお、既に抵抗素子の他の部材(例え
ば導通部材)をガラスペーストで固着している場合に
は、当該ガラスの軟化点以下のガラスを保護被膜の材質
として選択する必要がある。
【0021】(2)製造方法 本発明の抵抗素子は、保護被膜の材質を除き、従来公知
の感温性抵抗素子の製造方法に準じて製造することが可
能である。
【0022】基体 本発明の抵抗素子の基体は円筒状とする。板状の抵抗素
子も存在するが、これと比較してセンサに組み込む際に
方向性を問わないことに加え、抵抗素子の取付が容易で
あり、曲げ応力や熱衝撃に対する強度が高いからであ
る。
【0023】 基体は、円筒状である限りにおいて、中
実円筒であると、中空円筒であるとを問わない。但し、
熱的応答性を向上させるべく熱容量を小さくする必要が
あり、外径0.4〜1.0mmφ程度、軸方向長さ1.
5〜3mm程度とすることが好ましい。基体は、絶縁
体、一般にはアルミナ等の絶縁性セラミックで構成され
るため、当該絶縁性セラミックの粉末をプレス成形など
従来公知の成形法で成形し、焼成することにより製造す
ることができる。
【0024】抵抗体 上記基体の外周面には、当該基体の両端部を連絡するよ
うに抵抗体を形成する。抵抗体を構成する材質として
は、温度上昇に伴って抵抗値が増加する材質、例えばP
t属金属(Pt,Ru,Rh,Pd,Os,Ir),A
u,Ag,Cu,Ni、或いはこれらを含む混合物が挙
げられるが、融点が高く、化学的安定性が高い点におい
て、Pt若しくはPtを含む混合物であることが好まし
い。
【0025】 抵抗体の形状は特に限定されないが、例
えば薄膜、厚膜等の膜状のものを用いることができ、真
空蒸着、スパッタリング、メッキ、ディッピング等の従
来公知の膜形成法を利用して形成することができる。形
成された膜は、構成する材質(例えばPt)を結晶化さ
せ、或いは基体表面と強固に付着せしめるべく、熱処理
を行うことが好ましい。熱処理温度は、その材質や膜形
成法によっても異なるが、Ptであれば600〜120
0℃で熱処理することにより上記効果を得ることができ
る。
【0026】 抵抗体の抵抗値の調整は、膜厚により電
流の流路の断面積を調整することにより、或いは抵抗体
に絶縁物を混合せしめる方法により行っても良いが、基
体外周面の膜をレーザトリミング等の方法により螺旋状
に切除して抵抗体を長尺とし、その幅及び長さを調整す
ることによって行う方法が好ましい。抵抗値の調整が容
易だからである。
【0027】 また、抵抗体は、ワイヤ等の線状部材を
基体に巻回した形態であっても良い。既述した外径0.
4〜1.0mmφ程度、軸方向長さ1.5〜3mm程度
の基体に、線径20μm程度のワイヤを数十回ほど巻回
し、その両端部を後述する導通部材に溶接したもの等も
好適に用いることができる。本発明の抵抗素子は保護被
膜が溶解し、消失することがないため、上記のような巻
線タイプの抵抗体の巻き緩みを防止できる点においても
好ましい。
【0028】導通部材 本発明の抵抗素子は、抵抗体と電気的に接続された、基
体の両端部から突出する導通部材を備える。導通部材は
抵抗素子(即ち、抵抗体)とセンサの電気回路とを接続
し、また、抵抗素子を保持するための部材であり、導電
性を有することが必要なため、例えば金属からなる直径
0.1〜0.2mm程度のリード線等を好適に用いるこ
とができる。上記のように導通部材を細いリード線とす
ると、基体からの伝熱による熱の逃げが少なく、センサ
の測定精度や応答性を確保できる点において好ましい。
【0029】 導通部材の材質は、保護被膜形成の際の
耐酸化性、センサ作動時の発熱に対する耐熱性を備え、
かつ、その熱を抵抗素子から逃がさないようにするべく
熱伝導性が低い材質であることが好ましい。従って、純
金属に比して熱伝導性が低い、合金を用いることが一般
的である。具体的には、貴金属、特にPtを主体(例え
ばPtが質量比90%)とする合金であることが好まし
く、Pt−Ir,Pt−Rh,Pt−Au,Pt−N
i,Pt−Ag,Pt−Pd,Pd−Ir,Pd−Ag
等の組み合わせが挙げられる。
【0030】 なお、Fe−Ni合金、ステンレス等の
卑金属合金を使用する場合には、酸性ガス等に対する耐
食性を高めるべく、真空蒸着、化学メッキ、スパッタリ
ング、溶融メッキ、或いはクラッド等の方法により表面
をPt等の貴金属で被覆することが好ましい。
【0031】 導通部材の基体端部への固着は、例えば
金属とガラスとを混合してなる導体ペースト(以下、単
に「ペースト」という。)等を用いることができる。3
50℃程度まで発熱する発熱抵抗素子RHに用いるペー
ストであれば、Ptと軟化点600℃程度のガラスの各
粉末を体積比1:1で混合した原料粉末に、バインダと
して原料粉末の1質量%のエチルセルロース、有機ビヒ
クルとして少量のブチルカルビトールアセテートを添加
し、充分混合することにより保形性を有する程度の粘度
に調節したもの等を使用することができる。この場合の
ガラス粉末は、焼成時にクラックが入り強度が低下する
ことを防止するため、基体より熱膨張係数が小さいもの
を選択することが好ましい。
【0032】 中空円筒の基体の場合であれば、例えば
基体中空部にペーストを充填し、当該充填されたペース
ト中に導通部材(リード線等)を挿入し、ペーストを乾
燥した後、ペースト中のガラスが半溶融する程度の温度
より高い温度で焼成することにより、両者を固着するこ
とができる。中実円筒の基体の場合であれば、例えばリ
ード線の一方の縁端に平板部を有する導通部材を用い、
基体端面にペーストを塗布し、基体端面に当該平板部を
当接するように圧着し、同様に乾燥し、焼成する方法を
採っても良い。
【0033】(3)熱式流量センサ 上記のように製造された抵抗素子は、以下に説明する熱
式流量センサ(以下、単に「センサ」と記す。)の発熱
抵抗素子RH、温度補償抵抗素子RCとして好適に用いる
ことができる。
【0034】 センサは、例えば図2に示すように、発
熱抵抗素子RH(抵抗値10〜30Ω程度)、温度補償
抵抗素子RC(抵抗値400〜1000Ω程度)とい
う、抵抗値が異なる2種の感温性抵抗素子と、これらと
共にブリッジ回路17を構成する通常の抵抗素子R1
びR2、更にはトランジスタ13、比較器14、センサ
駆動電圧が印加される端子15等を備えたものである。
【0035】 センサ11は、抵抗素子R1及びR2を吸
気管12の外部に、発熱抵抗素子RH及び温度補償抵抗
素子RCを吸入空気に接触する吸気管12内部に配置
し、温度補償抵抗素子RCが吸気管12内の空気温度と
同温度に、発熱抵抗素子RHが前記空気温度に対して所
定の温度(例えば200℃)だけ高温に、各々保持され
た状態でブリッジ回路17がバランスするように構成さ
れている。
【0036】 即ち、吸気管12内への吸入空気により
発熱抵抗素子RHが冷却されると、その温度を一定に保
持するため、温度低下に応じた電流がブリッジ回路17
に供給される。抵抗素子R1の両端電圧は、ブリッジ回
路17への電流供給量に応じて変化するため、これを電
気的出力16として取り出すことにより、吸入空気の流
量を測定することが可能となる。
【0037】
【実施例】 以下、本発明を実施例により具体的に説明
するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものでは
ない。
【0038】 まず、各実施例に使用する抵抗素子の製
造方法について述べる。基体は、外径0.5mmφ、内
径0.25mmφ、長さ2.0mmの中空円筒体とし
た。当該基体の製造は、アルミナ含有量92質量%のア
ルミナ粉末に、バインダとしてアルミナ粉末の2質量%
のポリビニルアルコール、分散媒として適量の水を添加
・混合し、スプレードライヤで造粒してなる造粒物を、
プレス成形し、乾燥し、1650℃で焼成する方法によ
り行った。
【0039】 抵抗体は膜状(厚膜)とし、ディッピン
グ法により基体表面に膜状に付着せしめる方法により形
成した。まず、抵抗体を基体の外周面全体に形成した抵
抗素子を製造した。抵抗体は、Pt、アルミナ、軟化点
900℃のガラスの各粉末を体積比50:35:15の
比率で混合した原料粉末に、更に溶剤として適量のブチ
ルカルビトールアセテート、バインダとしてエチルセル
ロースを原料粉末の全体質量に対し5質量%を加えたペ
ーストを使用し、ディッピング法により膜を形成した。
【0040】 当該ペースト中に前記基体を浸漬し、ゆ
っくり引き上げ150℃で乾燥する操作を5回繰り返し
た後、1200℃で熱処理を行い膜を形成した。抵抗体
を形成した100個の基体について基体の両端面間で抵
抗値を測定したところ、抵抗値は5±0.4Ωの範囲内
に制御された。
【0041】 更に、上記基体については、基体外周面
に形成された抵抗体の全体を、図1に示すように基体3
の円筒軸を中心として、切り幅約30μmでレーザトリ
ミングすることで、抵抗体を螺旋状とした。抵抗体の幅
は800μm、基体円筒軸中心に2.4回転の螺旋が形
成された。
【0042】 上記抵抗体を形成した基体については、
両端部に導通部材であるリード線を固着することによ
り、抵抗素子とした。導通部材は、長さ3mm、直径
0.15mmのリード線とした。当該リード線は、Fe
−Ni合金からなるワイヤを芯材とし、当該ワイヤの表
面にクラッドによりPtを被覆したものを使用した。
【0043】 リード線と基体との固着は、Ptと軟化
点750℃のPb系低融点ガラスとを、体積比20:8
0で混合したペーストを使用して行った。具体的には、
基体中空部にペーストを充填し、当該充填されたペース
ト中にリード線を挿入し、ペーストを120℃で乾燥し
た後、990℃、5分間という条件で焼成することによ
り、両者を固着した。
【0044】 上記抵抗素子については、以下の方法に
より抵抗温度係数を測定した。まず、−20,0,2
0,40,60,80,100℃の雰囲気温度で15分
保持するようにプログラム運転する恒温槽中に抵抗素子
をセットし、当該7点の雰囲気温度を白金線測温抵抗体
により、各雰囲気温度における抵抗素子の抵抗値を4端
子型抵抗測定器により精密に測定した。これらのデータ
を下記式(1)に代入し、抵抗温度係数α、温度二乗項
の係数βを算出した。 R=R0(1+αT+βT2) …(1) (但し、R0:0℃における抵抗値(Ω)、T:温度
(℃)、R:温度T(℃)における抵抗値(Ω))
【0045】 抵抗温度係数α、温度二乗項の係数βを
算出した後、上記式のTを25(℃)として、25℃に
おける抵抗値(R25)を計算により算出した。製造した
100個の抵抗素子について抵抗温度係数を測定したと
ころ、3800±50ppm/℃で、ほぼPtの理論値
3910ppm/℃に近い値が得られた。また、抵抗値
は18±2Ωの範囲内で均一に制御されていた。
【0046】 実施例1〜3、比較例1〜3において
は、上記抵抗素子にPb含有量の異なるPb系低融点ガ
ラス、若しくはPbを全く含有しない低融点ガラスを使
用して保護被膜を形成し、その耐酸性を評価した。
【0047】 保護被膜の形成に使用する低融点ガラス
は、予め以下の耐酸試験を行ったものを使用した。縦3
0mm×横30mm×厚さ1mmのアルミナ板の表面
に、試験すべき低融点ガラスのペーストを塗布し、厚さ
20μmのガラス被膜を形成したものをサンプルとし
た。当該サンプルを、10%硝酸水溶液中、室温(25
℃)下、24時間以上浸漬した後、水洗し、その表面を
観察し、腐食、溶解、外観上の変化について評価した。
【0048】(実施例1)実施例1の抵抗素子に使用す
る低融点ガラスとしては、PbO含有量45質量%、S
iO2,Al23,B23の総量が51質量%、軟化点
600℃のものを選択した。当該低融点ガラスは、既述
の耐酸試験の48時間後において、その表面に腐食、溶
解、外観上の変化が認められなかったものである。
【0049】 上記低融点ガラスをペースト状にし、抵
抗体全体(基体の端面も含む)を被覆するように塗布
し、軟化点より150℃高い温度で焼成する操作を2回
繰り返すことにより、膜厚約20μmの保護被膜を抵抗
体表面上に形成した。
【0050】(実施例2)実施例2の抵抗素子に使用す
る低融点ガラスとしては、PbO含有量58質量%、S
iO2,Al23,B23の総量が35質量%、軟化点
490℃のものを選択した。当該低融点ガラスは、既述
の耐酸試験の48時間後において、その表面に腐食、溶
解、外観上の変化が認められなかったものである。当該
低融点ガラスを使用することを除き、実施例1と同様の
方法により、保護被膜を形成した。
【0051】(実施例3)実施例3の抵抗素子に使用す
る低融点ガラスとしては、PbO含有量30質量%、S
iO2,Al23,B23の総量が59質量%、軟化点
810℃のものを選択した。当該低融点ガラスは、既述
の耐酸試験の48時間後において、その表面に腐食、溶
解、外観上の変化が認められなかったものである。当該
低融点ガラスを使用することを除き、実施例1と同様の
方法により、保護被膜を形成した。
【0052】(比較例1)比較例1の抵抗素子に使用す
る低融点ガラスとしては、PbO含有量73質量%、S
iO2,Al23,B23の総量が24質量%、軟化点
350℃のものを選択した。当該低融点ガラスは、既述
の耐酸試験の24時間後において、ガラス被膜が完全に
溶解、消失してしまったものである。当該低融点ガラス
を使用することを除き、実施例1と同様の方法により、
比較例1の抵抗素子とした。
【0053】(比較例2)比較例2の抵抗素子に使用す
る低融点ガラスとしては、PbO含有量65質量%、S
iO2,Al23,B23の総量が27質量%、軟化点
450℃のものを選択した。当該低融点ガラスは、既述
の耐酸試験の24時間後において、ガラス被膜の60%
が溶解、消失してしまったものである。当該低融点ガラ
スを使用することを除き、実施例1と同様の方法によ
り、保護被膜を形成した。
【0054】(比較例3)比較例3の抵抗素子に使用す
る低融点ガラスとしては、PbOを全く含有しない硼珪
酸ソーダからなる低融点ガラスを選択した。当該低融点
ガラスは、既述の耐酸試験の24時間後において、ガラ
ス被膜の80%が溶解、消失してしまったものである。
当該低融点ガラスを使用することを除き、実施例1と同
様の方法により、保護被膜を形成した。
【0055】 上記のように保護被膜を形成した実施例
1〜3,比較例1〜3の抵抗素子については、SO2
25ppm、NO2:5ppm、Cl2:5ppm、温度
40℃、湿度90%の雰囲気下に放置し、24時間毎の
状態を観察し、評価した。その結果を表1に示す。
【0056】
【表1】
【0057】 表1から明らかなように、PbO含有量
が30〜60質量%、SiO2,Al23,B23の総
量が28質量%以上のPb系低融点ガラスにより保護被
膜を形成した実施例1〜3の抵抗素子は72時間後にお
いても保護被膜に変化は認められなかった。一方、Pb
O含有量が60質量%以上、SiO2,Al23,B2
3の総量が28質量%未満のPb系低融点ガラス若しく
はPbを全く含有しない低融点ガラスにより保護被膜を
形成した比較例1及び3の抵抗素子は、24時間後に保
護被膜の表面が白変し始め、48時間後には保護被膜の
殆どが消失してしまった。また、比較例2の抵抗素子は
24時間後に保護被膜の表面が僅かに白変し始め、72
時間後には保護被膜の50%が消失してしまった。
【0058】
【発明の効果】 以上説明したように、本発明の感温性
抵抗素子は保護被膜を耐酸性材料から構成したので、劣
悪な使用環境下であっても所定の抵抗特性を維持するこ
とが可能である。従って、本発明の感温性抵抗素子をブ
リッジ回路に組み込んだ熱式流量センサは、信頼性、測
定精度に優れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の感温性抵抗素子の一の実施例を示す
概略断面図である。
【図2】 熱式流量センサの電気回路の構成を示す回路
図である。
【符号の説明】
1…感温性抵抗素子、2…感温性抵抗体、3…基体、4
…導通部材、5…導体ペースト、6…保護被膜、7…中
空部、11…熱式流量センサ、12…吸気管、13…ト
ランジスタ、14…比較器、15…端子、16…電気的
出力、17…ブリッジ回路。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 絶縁体からなる円筒状の基体と、当該基
    体の外周面に形成された、当該基体の両端部を連絡する
    感温性抵抗体と、当該感温性抵抗体と電気的に接続され
    た、当該基体の両端部から突出する導通部材と、少なく
    とも前記感温性抵抗体を被覆する保護被膜と、を備えた
    感温性抵抗素子であって、 前記保護被膜が、耐酸性材料から構成されていることを
    特徴とする感温性抵抗素子。
  2. 【請求項2】 保護被膜が、PbO含有量30〜60質
    量%の低融点ガラスから構成されている請求項1に記載
    の感温性抵抗素子。
  3. 【請求項3】 保護被膜を構成する耐酸性材料が、Si
    2,Al23,B23の総量が28質量%以上の耐酸
    性材料である請求項1又は2に記載の感温性抵抗素子。
  4. 【請求項4】 請求項1〜3のいずれか一項に記載の感
    温性抵抗素子を、ブリッジ回路に組み込んだことを特徴
    とする熱式流量センサ。
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