JP2002088093A - キチンオリゴ糖の製造方法 - Google Patents

キチンオリゴ糖の製造方法

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JP2002088093A
JP2002088093A JP2000279472A JP2000279472A JP2002088093A JP 2002088093 A JP2002088093 A JP 2002088093A JP 2000279472 A JP2000279472 A JP 2000279472A JP 2000279472 A JP2000279472 A JP 2000279472A JP 2002088093 A JP2002088093 A JP 2002088093A
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chitin
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sulfuric acid
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Kazuyuki Iwata
一幸 岩田
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ENIWA RESEARCH BUSINESS PARK CO Ltd
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ENIWA RES BUSINESS PARK CO Ltd
ENIWA RESEARCH BUSINESS PARK CO Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 より簡便にかつ低コストで、キチンオリゴ糖
を大量に得られる製造方法。 【解決手段】 キチンを、このキチンの重量の1〜10
倍量の範囲内の重量の濃硫酸を用いて、0〜50℃の範
囲内の反応温度でかつ5分〜2時間の範囲内の反応時間
で以て処理する工程と、処理液を、キチンの重量の10
〜1000倍量の範囲内の重量の水に溶解させて加水分
解する工程と、加水分解した溶液を水酸化バリウムを用
いて中和する工程と、中和工程により生じる中和塩をろ
過する工程と、ろ液を濃縮および乾燥させる工程とを含
む。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、高分子キチンを
分解して、水溶性のキチンオリゴ糖を製造する方法に関
する。
【0002】
【従来の技術】キチンは、バイオマス資源として従来よ
り注目され、多くの研究がなされている。しかしなが
ら、高分子キチンは水素結合による分子間力が強いため
に、試薬との反応性および溶媒に対する溶解性が低い。
このため、未だキチンが有効に利用されているとは言い
難い。キチンの反応性および溶解性の向上を図るために
は、高分子キチンをキチン骨格を保持しながら分解し
て、オリゴ糖(ここでは、2〜10糖をオリゴ糖と称す
る。)にする必要がある。
【0003】このため、高分子キチンを低分子化する方
法として、従来、酵素的分解法および化学的分解法が知
られている。
【0004】まず、酵素的分解法は、微生物から酵素を
生成して、この酵素を用いて高分子キチンを分解する方
法である。しかしながら、この方法を用いて製造する
と、多大な時間を要し、大型の装置が必要で、しかも高
コストである。よって、生産効率の点で良好な製造方法
であるとは言えない。
【0005】一方、化学的分解法は、キチンオリゴ糖を
大量に生産できる方法であり、塩酸を用いた酸加水分解
法がよく知られている。例えば、文献1(「キチン、キ
トサンハンドブック」、キチン,キトサン研究会編、技
報堂出版(1995)、P210〜212)には、濃塩
酸を用いた酸加水分解法について記載されている。文献
1によれば、キチンに5倍量(重量)の濃塩酸を添加し
た後、40℃の温度で攪拌する。この結果、2時間の反
応時間で約50%の分解物収率が得られる。そして、こ
の時点で5〜6糖のキチンオリゴ糖の収率が最大(10
〜12%)となる。さらに反応時間を長くすると重合度
の高いオリゴ糖(5〜10糖)の収率は次第に低下し、
反対に単糖の収率が増大する。
【0006】また、硫酸を用いた分解法については、例
えば、文献2(Nagasawa et.al. Carbohydr. Res., vo
l.18, p.95-102,1971)で検討されている。文献2によ
れば、高分子キチンに18.4倍量(重量)の濃硫酸を
反応させた後、これを中和処理し、次に、透析を行って
透析膜通過物と未通過物とに分離した。そして、通過物
および未通過物のそれぞれの分子量およびイオウ含量を
測定した。その結果、反応温度−5℃、反応時間2時間
の反応条件で、通過物の収率が65%、未通過物の収率
が83%であった。また、生成物のイオウ含量は、通過
物が11.9%、未通過物が11.5%であった。この
ことより、分解されたキチンが硫酸化していることが分
かった。また、通過物と未通過物との合計収率が100
%を越えているが、これは、生成物に硫酸化キチンが含
まれるためと推定される。また、分子量は、通過物が8
400で未通過物が約20000であった。この分子量
から推定されるキチン分子の重合度は通過物で41、未
通過物で約100である。
【0007】上記の何れの場合も濃酸を用いて高分子キ
チンを分解した後、分解液をアルカリを用いて中和す
る。得られる副生塩は水溶性である。また、低分子化し
たキチンも水溶性である。このため、副生塩とキチン分
解物とを分離して、低分子化キチンを精製回収する必要
がある。この分離方法としては、例えば、酸加水分解に
塩酸を用いた場合には、活性炭およびセライトとの混合
物からなるカラムを用いて、キチンオリゴ糖を選択的に
カラムに吸着させた後、アルコールにより脱着・分離す
る方法がある。また、別の分離方法として、例えば文献
3(特公平5−86399号公報)では、イオン交換膜
電気透析法を用いる方法が開示されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、中和さ
れた分解液からキチンオリゴ糖を上記カラムを用いて分
離する方法では、キチンオリゴ糖のカラムへの吸着量が
比較的少ないために、大量の活性炭が必要となる。ま
た、吸着したキチンオリゴ糖をカラムから溶出させるた
めに大量の溶剤が必要となる。
【0009】また、イオン交換膜電気透析法を用いた分
離方法は、装置コストが高く、透析膜も高価である。
【0010】また、上述した酸加水分解法では、高分子
キチンをオリゴ糖の範囲内で分解を停止させるように反
応を制御するのは困難である。このため、反応中に、オ
リゴ糖の範囲内でも重合度の高い分子はさらに分解が進
んで重合度の低いオリゴ糖あるいは単糖になる。また、
逆に分解を抑制しすぎると、分子量が大きすぎて有用な
キチンオリゴ糖が得られない。
【0011】また、酸加水分解法に濃塩酸を用いると、
有害な塩化水素ガスが発生するために除害設備を設けな
ければならない。さらに、塩酸は酸濃度が最大37%で
あり、酸濃度が97%である硫酸と比較すると、37%
以上の濃度を得ることは困難である。濃酸を使用して3
7%以下の酸濃度を得る場合、塩酸の方が使用容量が多
くなる。このため、容量の大きい反応装置を使用しなけ
ればならない。また、低濃度の酸で反応させると、反応
速度が遅くなるため、反応温度を高くしなければならな
い。反応温度を高くすると高温に保持するための設備が
必要となる。さらに、高温での加水分解反応では反応の
制御が困難であるためキチンオリゴ糖の収率を上げるの
は困難である。
【0012】また、酸加水分解において、ギ酸や酢酸等
の有機酸を使用することも考えられるが、有機酸とキチ
ンとの室温下における反応は非常に遅く、高温で反応さ
せることが必須条件となる。しかも目的とするキチンオ
リゴ糖の収率も低い。
【0013】このため、より簡便にかつ低コストで、キ
チンオリゴ糖を大量に得る製造方法の出現が望まれてい
る。
【0014】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するた
め、濃硫酸を使用して高分子キチンの分解法を検討し
た。
【0015】(1)濃硫酸使用量とキチン分解物収率と
の関係 キチン1gに対して濃硫酸を5g〜40gを添加し、室
温下で4時間撹拌・混合した。撹拌・混合終了後は50
0mlの水へ処理液を滴下し、溶解させた。その後、水
酸化バリウム八水和物にて中和処理し、析出物をろ過し
た。ろ液は減圧濃縮し、凍結乾燥した。乾燥物の重量を
測定し、キチン分解物収率を算出した。その結果、濃硫
酸使用量が多くなると、キチン分解物収率が低下するこ
とが判明した(図1)。
【0016】(2)濃硫酸処理時間とキチン分解物収率
との関係 キチン1gに対して濃硫酸5gを添加し、室温下で5分
〜6時間撹拌・混合した。撹拌・混合終了後は上記
(1)と同様の操作を行い、キチン分解物収率を算出し
た。その結果、処理時間が長くなると、キチン分解物収
率も増加した(図2)。
【0017】以上の結果に基づいて、さらに鋭意検討し
た結果、より効率的な処理条件を見出し、本発明に至っ
た。
【0018】本発明のキチンオリゴ糖の製造方法によれ
ば、以下の(1)〜(5)の工程を含んでいることを特
徴とする。
【0019】(1)キチンを、このキチンの重量の1〜
10倍量の濃硫酸を用いて、0〜50℃の範囲内の反応
温度でかつ5分〜2時間の反応時間で以て処理する工
程。
【0020】(2) 処理液を、上記キチンの重量の1
0〜1000倍量の水に溶解する工程。
【0021】(3)処理液を溶解した水溶液を水酸化バ
リウムを用いて中和する工程。
【0022】(4)中和工程により生じる中和塩をろ過
する工程。
【0023】(5)ろ液を濃縮および乾燥する工程。
【0024】高分子のキチンに対して、酸濃度が97%
である市販の濃硫酸を使用して段階的に加水分解反応を
行うことによって、従来頻繁に用いられてきた塩酸より
もずっと少ない量の酸で処理することができる。また、
反応温度および反応時間は適用範囲が広いが、室温でか
つ短時間に反応を行うことが可能である。従って、温度
を制御する設備を特に必要とせず効率よく反応させるこ
とができる。よって、低コストで大量の高分子キチンを
処理することができるので、大量のキチンオリゴ糖が得
られる。
【0025】また、硫酸と混合した後、水に滴下し、水
に可溶となった低分子のキチンを水酸化バリウムを用い
て中和する。これにより、中和塩である硫酸バリウムは
沈殿物となるので、水に溶解しているキチン分解物とこ
の中和塩とをろ過によって容易に分離することができ
る。
【0026】また、好ましくは、キチンの段階的な加水
分解に用いる濃硫酸の量を、キチンの重量の1〜5倍量
の範囲内とするのがよい。
【0027】濃硫酸の量を多くすると、加水分解反応後
に行う中和工程で使用する水酸化バリウムの量も多くな
る。また、得られるキチンオリゴ糖の収率も低下してし
まう。このため、濃硫酸の量をキチンの重量の5倍量以
下とするのが好ましい。また、濃硫酸の量が少なすぎる
と、硫酸およびキチンの混合物の粘性が増加し、硫酸と
キチンとを均一に混合させることが困難となる。よって
濃硫酸の量をキチンの重量と同量以上とするのが好まし
い。
【0028】また、好ましくは、キチンの段階的な加水
分解を行う際の反応温度を室温とするのがよい。
【0029】キチンと濃硫酸との混合は、室温で十分反
応が進行するため、温度を保持するための設備を必要と
しない。従って、キチンオリゴ糖の製造をより低コスト
で行うことができる。
【0030】また、好ましくは、キチンの段階的な加水
分解反応を行う際の反応時間を5分〜1時間とするのが
よい。キチンオリゴ糖の収率を考慮すると反応時間を1
時間以下とするのが好ましい。また、キチンおよび濃硫
酸が効率的に混合される場合には5分程度でも十分に反
応させることができる。
【0031】また、好ましくは、上記(2)工程におい
て、水の量をキチンの重量の100〜500倍量とする
のがよい。
【0032】分解されたキチンのうち、重合度の高いキ
チンオリゴ糖は、重合度の低いキチンオリゴ糖よりも水
に対する溶解度が格段に低い。このため、重合度の高い
キチンオリゴ糖の回収率を上げるためには、高分子キチ
ンの重量の100倍量以上の水に溶解させるのがよい。
また、装置容量を抑制することを考慮すると、キチンの
重量の500倍量以下とするのが好ましい。
【0033】また、上記(5)工程の終了後に、(6)
工程として、得られる生成物(キチンオリゴ糖)から、
生成物中に残存しているおそれのある水酸化バリウムを
除去する工程を含んでいるのがよい。
【0034】例えば、ゲル浸透クロマトグラフィやイオ
ン交換膜によって除去するのがよい。
【0035】
【発明の実施の形態】以下、この発明の実施の形態につ
き説明する。
【0036】まず、キチンおよび濃硫酸を混合する。
【0037】キチンは、市販されているキチンを用いて
もよいし、エビ、カニ等の甲殻類の甲殻を脱灰処理およ
び脱タンパク処理することによって得たものを使用して
もよい。また、濃硫酸はここでは、市販品(通常、濃度
97%)を用いる。混合処理は、キチンに、キチンの重
量の1〜10倍量の濃硫酸を加えた後、0〜50℃の温
度でかつ5分〜2時間、攪拌する。
【0038】次に、この処理液を水に溶解する。
【0039】処理液を上記キチンの重量の10〜100
0倍量の水に滴下して、溶解する。大量の水に処理液を
滴下するので、溶解度が比較的低い、高重合度のキチン
オリゴ糖も溶解させることができる。
【0040】その後、処理液を溶解した水溶液を水酸化
バリウムを用いて中和する。
【0041】この中和反応はゆっくり進行する。水溶液
中の硫酸と水酸化バリウムとの反応は迅速である。段階
的な加水分解により生じたキチン分解物の一部は硫酸化
している。水酸化バリウムは硫酸化キチンの硫酸基とも
反応するが、反応終了には長い時間を要する。このた
め、水溶液中には予め過剰の水酸化バリウムを添加して
おく。pHとして7.0〜14.0であればよい。中和
反応終了時の水溶液のpHが中性となっていることが理
想的であるため、より好ましくは、水酸化バリウム添加
終了時点でのpHが10.0〜13.0となるようにす
る。また、中和に要する時間を短縮させるために、水溶
液を加熱したり攪拌したりして中和反応を促進させても
よい。
【0042】この中和反応によって、硫酸イオンを水に
難溶の硫酸バリウムとして析出させることができる。ま
た、一部が硫酸化したキチン分解物から硫酸基を除去す
ることもできる。
【0043】その後、中和工程により生じる中和塩をろ
過する。
【0044】この実施の形態では、中和塩が硫酸バリウ
ムであるため、ろ過することにより、硫酸バリウムを溶
液中から簡単に除去することができる。そして、ろ液中
にはキチンオリゴ糖が溶解している。また、このろ過に
より、未分解の重合度の高いキチンや硫酸との処理によ
って生成した着色成分も除去することが可能である。
【0045】その後、ろ液を濃縮および乾燥させる。
【0046】例えば、減圧下でろ液を濃縮処理した後、
凍結乾燥させることにより、粉末状の生成物が得られ
る。そして、好ましくは、ろ液若しくは乾燥後の生成物
に対してゲル浸透クロマトグラフィーやイオン交換膜に
よる不純物除去処理を行う。これにより、過剰に加える
ためにろ液中に残存するおそれのある水酸化バリウムを
除去することができる。従って、高純度のキチンオリゴ
糖を精製・回収することができる。
【0047】
【実施例】以下、本発明のキチンオリゴ糖の製造方法の
いくつかの実施例についてそれぞれ比較例を示しながら
説明する。なお、以下の説明中で挙げる使用材料および
その量、処理温度及び時間などの数値的条件は、この発
明の範囲内の好適な一例にすぎない。
【0048】<実施例1>まず、キチンを、キチンの重
量の1〜10倍量の濃硫酸を用いて、0〜50℃の反応
温度で混合する。
【0049】この例では、キチン(和光純薬製)1gに
市販の濃硫酸5gを添加する。その後室温(24℃)下
で30分攪拌する。この処理により、キチンは硫酸化す
ると考えられる。
【0050】次に、上記処理液を、キチンの重量の10
〜1000倍量の水に溶解する。
【0051】この例では、処理液を水500ml(50
0g)中に滴下して溶解させた。これにより、硫酸化し
たキチンは加水分解する。
【0052】次に、処理液を溶解した水溶液を水酸化バ
リウムを用いて中和する。
【0053】ここでは、pH計でpH値をモニターしな
がら、水酸化バリウム八水和物15.5gを溶液中に添
加する。これにより、水酸化バリウム添加終了時にはp
H値が12であった。その後、溶液を室温下に攪拌し続
けるとpH値は徐々に減少し、pH値が8になると安定
した。
【0054】その後、中和工程により生じる中和塩をろ
過する。
【0055】この例では、中和工程により中和塩として
硫酸バリウムが析出・沈降する。よって、これをメンブ
ランフィルタ(アドバンテック製)を用いてろ過する。
これにより、ろ液500mlを得る。
【0056】次に、ろ液を濃縮および乾燥する。
【0057】ここでは、ろ液を50mlになるまで減圧
濃縮した後、凍結乾燥した。
【0058】この結果、キチン分解物収率は133重量
%であった。キチン分解物収率は、原料キチン重量に対
して最終的に得られたキチンオリゴ糖と推定できる生成
物の重量の割合を百分率で示した。この分解物収率が1
00%を越えているのは、中和剤としての水酸化バリウ
ムが生成物中に混入していることおよび生成物が硫酸化
していることが原因と考えられる。
【0059】また、生成物のイオウ含量を測定したとこ
ろ、4.0重量%であった。これにより、生成物の一部
が硫酸化していると推定される。
【0060】また、生成物は高速液体クロマトグラフィ
ーにより分析した。分析条件は、カラムとして、Asahip
akGS-220HQ(Shodex製)(内径7.6mm×高さ300
mm)を使用した。また、溶離液として0.05M−酢
酸アンモニウム水溶液を使用し、流速を0.3ml/
分、カラム温度を室温とし、検出器として示差屈折計
(日立製、型番L−3300)を使用した。
【0061】得られたクロマトグラムを図3に示す。図
3では、横軸に保持時間(分)を、縦軸に応答を示して
いる。
【0062】図3の各ピークの保持時間と、標準品であ
るキチンオリゴ糖の保持時間とを比較することによっ
て、生成物中のキチンオリゴ糖の重合度が推定される。
これによると、(a)ピークは10糖で、(b)ピーク
が9糖、(c)ピークが6糖、および(f)ピークが3
糖にそれぞれ相当すると考えられる。(d)ピークと
(e)ピークは不明。
【0063】よって、図3より、得られる生成物は3〜
10糖の範囲内にあり、キチンオリゴ糖の中でも有用性
が高いと言われる、比較的高分子のキチンオリゴ糖を得
ることができた。
【0064】また、図3によれば、保持時間41分の位
置に生じているピークは水酸化バリウムのピークであ
る。このことより、生成物には不純物である水酸化バリ
ウムが含まれているため、この例では、ゲル浸透クロマ
トグラフィー(GPC)を行う。
【0065】GPC処理条件は、次のようにした。ゲル
としてBio-Gel P-2(Fine)(バイオラッド製)を用い、
充填サイズを内径22mmで高さ860mmとし、溶離
液として0.05M-酢酸アンモニウム水溶液を使用
し、流速を0.39ml/分とし、分画を4ml/フラ
クションとした。
【0066】これにより、バリウムを含まないフラクシ
ョンだけを集めた後、再び減圧下で50mlに濃縮し、
凍結乾燥した。
【0067】GPCを行った後のキチン分解物収率は1
00%であった。また、イオウ含量は8.8重量%であ
った。
【0068】GPCによって精製・回収されたキチン分
解物のイオウ含量はGPCを行う前の値(4.0重量
%)よりも増加していた。この例では、文献2に記載さ
れている硫酸によるキチンの分解例よりもイオウ含量を
抑制することができた。これは、中和剤としての水酸化
バリウムによる効果であると考えられる。すなわち、過
剰に添加された水酸化バリウムと硫酸化キチンとが徐々
に反応して硫酸化キチンからの脱硫酸化反応が進行した
ためである。
【0069】また、硫酸化物収率の低減化を図るため
に、加熱処理することが考えられるが、同時にキチン分
子がさらに低分子化した。
【0070】<実施例2>以下、実施例1と相違する点
につき説明し、実施例1と同様の点についてはその詳細
な説明を省略する。
【0071】ここでは、キチン(和光純薬製)1gに市
販の濃硫酸20gを添加する。その後室温(24℃)下
で30分攪拌する。その後、処理液を水500ml中に
滴下して溶解させる。次に、処理液を溶解した水溶液を
水酸化バリウムを用いて中和する。実施例1と同様にp
H計でpH値をモニターしながら、水酸化バリウム八水
和物62.0gを溶液中に添加する。その後、実施例1
と同様にして、中和塩をろ過した後、ろ液を濃縮および
乾燥する。
【0072】この結果、実施例2でのキチン分解物収率
は83重量%であった。また、イオウ含量は7.0重量
%であった。
【0073】さらに、実施例1と同様に、生成物の純度
を高くするために、GPC処理を行って生成物を精製し
たところ、キチン分解物収率は60重量%となり、この
ときのイオウ含量は12.0%であった。
【0074】<比較例1>次に、比較例1として、有機
酸であるギ酸を用いて高分子キチンを分解する方法を説
明する。
【0075】キチン(和光純薬製)1gにギ酸20gを
添加する。その後、90℃の温度で2時間攪拌して、反
応させる。この後、この反応液を水500ml中に投入
し、遠心分離を行う。このとき、回転数を3000回転
/分とし、5分処理する。これにより、分解された低分
子化したキチンが上清中に溶解しており、未分解物及び
分解不十分なキチンは沈殿中に含まれている。よって、
上清をろ過した後、第1の実施例と同様に、ろ液を減圧
下で濃縮し、凍結乾燥することにより、第1の比較例の
キチンオリゴ糖が得られる。
【0076】この結果、キチン分解物収率は11%であ
った。よって、ギ酸等の有機酸を用いてキチンオリゴ糖
を製造する際には、容易に未反応の酸を除去できるとい
う利点はあるが、本発明と比較すると、反応温度を高く
して、反応時間を長くしなければならない。そして、こ
のように過酷な反応条件を設定したとしても、実施例1
および実施例2と比較してキチン分解物収率は非常に低
い。
【0077】<比較例2>比較例2として、低濃度の硫
酸を用いて高分子キチンの加水分解反応を行う例につき
説明する。
【0078】ここでは、キチン(和光純薬製)1gに1
0重量%の濃度の硫酸50gを添加し、100℃の温度
で4時間攪拌する。その後、反応液を水450ml中に
加えた後、第1の実施例と同様に水酸化バリウム八水和
物を用いて中和反応を行う。中和後の溶液を遠心分離し
た後、上清をろ過する。ろ液を減圧下で濃縮した後、凍
結乾燥することによって、キチンオリゴ糖が得られる。
このときのキチン分解物収率は7重量%であった。
【0079】以上のことにより、低濃度の硫酸を用いて
高分子キチンの加水分解を行う場合、反応温度を高く
し、反応時間を長くして反応を行っても、得られるキチ
ンオリゴ糖の収率は、実施例1および実施例2と比較し
て非常に低い。
【0080】
【発明の効果】上述した説明から明らかなように、本発
明のキチンオリゴ糖の製造方法によれば、高分子キチン
を、その重量の1〜10倍量の範囲内の重量の濃硫酸を
用いて、0〜50℃の範囲内の反応温度でかつ5分〜2
時間の範囲内の反応時間で以て処理する工程と、処理液
を、原料キチンの重量の10〜1000倍量の範囲内の
重量の水に溶解する工程と、処理液を溶解した水溶液を
水酸化バリウムを用いて中和する工程と、中和工程によ
り生じる中和塩をろ過する工程と、ろ液を濃縮および乾
燥する工程とを含んでいる。
【0081】高分子のキチンに対して、酸濃度が97%
である市販の濃硫酸を使用して段階的な加水分解反応を
行うことによって、濃硫酸の量を、従来頻繁に用いられ
てきた塩酸よりも少なくすることができる。また、反応
時の反応温度および反応時間は適用範囲が広いが、例え
ば室温でかつ短時間に反応を行うことができる。従っ
て、温度を制御する設備を特に必要とせず効率よく反応
させることができる。よって、低コストで大量の高分子
キチンを処理することができるので、大量のキチンオリ
ゴ糖が得られる。
【0082】また、濃硫酸と混合処理し、大量の水に溶
解させた後、これを水酸化バリウムを用いて中和させ
る。これにより、中和塩である硫酸バリウムは析出する
ので、水に溶解しているキチン分解物とこの中和塩とを
ろ過によって容易に分離することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】課題を解決するための手段の説明に供する、濃
硫酸使用量とキチン分解物収率との関係図である。
【図2】課題を解決するための手段の説明に供する、濃
硫酸処理時間とキチン分解物収率との関係図である。
【図3】実施例1の説明に供する、高速液体クロマトグ
ラフィーのクロマトグラムである。

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 キチンを、該キチンの重量の1〜10倍
    量の範囲内の重量の濃硫酸を用いて、0〜50℃の範囲
    内の反応温度でかつ5分〜2時間の範囲内の反応時間で
    以て処理する工程と、 前記処理液を、前記キチンの重量の10〜1000倍量
    の範囲内の重量の水に溶解する工程と、 前記処理液を溶解した溶液を水酸化バリウムを用いて中
    和する工程と、 前記中和工程により生じる中和塩をろ過する工程と、 前記ろ液を濃縮および乾燥させる工程とを含むことを特
    徴とするキチンオリゴ糖の製造方法。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載のキチンオリゴ糖の製造
    方法において、 前記濃硫酸の量を前記キチンの重量の1〜5倍量の範囲
    内の重量とすることを特徴とするキチンオリゴ糖の製造
    方法。
  3. 【請求項3】 請求項1に記載のキチンオリゴ糖の製造
    方法において、 前記反応温度を室温とすることを特徴とするキチンオリ
    ゴ糖の製造方法。
  4. 【請求項4】 請求項1に記載のキチンオリゴ糖の製造
    方法において、 前記反応時間を5分〜1時間の範囲内の時間とすること
    を特徴とするキチンオリゴ糖の製造方法。
  5. 【請求項5】 請求項1に記載のキチンオリゴ糖の製造
    方法において、 前記水の量を、前記キチンの重量の100〜500倍量
    の範囲内の重量とすることを特徴とするキチンオリゴ糖
    の製造方法。
  6. 【請求項6】 請求項1に記載のキチンオリゴ糖の製造
    方法において、 前記ろ液を濃縮および乾燥させる工程後に、生成物から
    該生成物中に残存している水酸化バリウムを除去する工
    程を含んでいることを特徴とするキチンオリゴ糖の製造
    方法。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2005005485A1 (ja) * 2003-05-07 2005-01-20 Research Institute For Production Development キチンオリゴマー組成物及び/又はキトサンオリゴリマー組成物、並びにその製造方法
JP2011116699A (ja) * 2009-12-03 2011-06-16 Yaizu Suisankagaku Industry Co Ltd キチンオリゴ糖誘導体及びn−アセチルラクトサミン誘導体並びにそれらの製造方法
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US11603447B2 (en) 2016-04-27 2023-03-14 Showa Denko K. K. Methods for producing chitin oligomer, N-acetylglucosamine, and 1-O-alkyl-N-acetylglucosamine

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