JP2002086259A - パイプ鋳ぐるみ用金型 - Google Patents

パイプ鋳ぐるみ用金型

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康彦 濱野
Hiroshi Horikawa
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 湯不足,鋳巣等の鋳造欠陥や鋳ぐるまれるパ
イプの溶損がなく、良好な形状をもつ鋳物の製造に適し
た金型を提供する。 【構成】 キャリパボディのプロフィールに相当するキ
ャビティをもつ上型10,下型20の表面に、独立して
制御可能な冷却手段を設ける。各冷却手段は、冷却孔4
1〜43,45,46,51〜54,56,57に冷媒
供給管を挿入し、冷媒供給管から送り出される冷却水,
ミスト,冷気等で金型表面を直接冷却する。早期に冷却
しがちなブリッジ部に当たる部分では、充填孔44,5
5に断熱材又は加熱手段を挿入し、溶湯の温度降下を遅
らせる。 【効果】 十分な量の溶湯が金型キャビティの隅々まで
行き渡るため、良好な形状をもつ鋳物が得られる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、流体回路を内部に備え
た鋳物を鋳ぐるみ法で製造するときに使用されるパイプ
鋳ぐるみ用金型に関し、特に一体型ブレーキキャリパの
ような複雑形状の鋳物の製造に適している。
【0002】
【従来の技術】内部に流体回路が形成された製品は、鋳
造後の鋳物を複数回の穿孔加工により製造できるが、穿
孔加工では複雑な流体回路が形成されず、形成した孔を
栓処理することが必要になる。他方、内部の所定位置に
パイプ(被鋳ぐるみ材)をセットした金型に溶湯(鋳ぐ
るみ材)を注入する鋳ぐるみ法によると、鋳ぐるまれた
パイプによって流体回路が形成されるため、後工程が非
常に容易になる。鋳ぐるまれるパイプは、溶解防止や鋳
ぐるみ材に対する密着性を向上させるため、断熱材塗
布,めっき処理等が施されている。また、鋳造時に冷媒
をパイプ内部に送り込み、パイプを冷却する方法も一部
で採用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】パイプがセットされた
金型に溶湯を注入して鋳造すると、被鋳ぐるみ材である
パイプの周辺が他の部分よりも速く凝固しやすい。部分
的に凝固した溶湯は、他の部分に対する溶湯補給の障害
になる。その結果、巣,湯回り不良等の鋳造欠陥が発生
しがちであった。鋳造欠陥の発生傾向は、対向ピストン
型ディスクブレーキのように厚肉部及び薄肉部をもつ複
雑形状になるほど顕著となる。
【0004】具体的には、図1に示すようにロータ1を
キャリパボディ2の中心近傍にある空間部に臨ませ、ピ
ストン3の先端に取り付けられているブレーキパッド4
をロータ1の両側面に対向させた構造をもつ対向ピスト
ン型ディスクブレーキでは、シリンダ6にパイプ5から
油を送り込み、ピストン3に油圧を加えることによりブ
レーキパッド4がロータ1を挟み込み車軸にブレーキを
かける。このとき、キャリパボディ2のブリッジ部7が
開く方向の反力が発生する。アルミニウム製のキャリパ
ボディ2では、反力によってブリッジ部7が金属疲労し
てクラックが発生する虞れがあるが、肉厚変動の大きな
個所であるブリッジ部7は鋳造欠陥が発生しやすい個所
でもある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、このような問
題を解消すべく案出されたものであり、金型キャビティ
に注入された溶湯を部分部分に応じて制御冷却すること
により、湯不足,鋳巣等の欠陥がなく良好な肉厚及び形
状をもつ鋳物の鋳造に適した金型を提供することを目的
とする。
【0006】本発明のパイプ鋳ぐるみ用金型は、その目
的を達成するため、流体回路を構成するパイプが鋳ぐる
まれた鋳物を鋳造する金型であって、キャビティに注入
された溶湯を湯口から遠い側から凝固する冷却手段が金
型に設けられている。冷却手段として、個別に制御可能
な複数の冷却手段を金型の複数箇所に設けても良い。冷
却手段としては、先端が開口した冷媒供給管を金型の表
面に形成した孔部に挿入した構造が採用される。パイプ
鋳ぐるみ用金型には、併せて単数又は複数の加熱又は断
熱手段を組み込むこともできる。加熱又は断熱手段とし
ては、金型表面に形成された有底孔にヒータ又は断熱材
を挿入した構造が採用される。
【0007】金型内部にセットされる中子にも、中子内
部に形成された有底孔に先端が開口した冷媒供給管を挿
入した構造等の冷却手段を組み込むことができる。勿
論、冷却手段を備えていない砂型,シェル中子,金型等
の中子も使用可能である。中子には、鋳ぐるまれるパイ
プを保持又は保持固定する支持部を形成しても良い。冷
却手段としては、先端が開口した冷媒供給管を金型表面
に形成した孔部に挿入し、冷媒供給管から噴出する冷却
水,ミスト,冷気等を金型表面に直接接触させて冷却す
る方式が好ましい。
【0008】本発明鋳型をブレーキキャリパの鋳造に適
用する場合、金型内部にセットされ、キャリパボディの
ピストン収容空間を形成する中子と、ブリッジ部に当た
る個所で金型表面に設けられた断熱又は加熱手段と、イ
ンナキャリパ部及びアウタキャリパ部に当たる複数箇所
に設けられた個別制御可能な冷却手段とを組み込んだ金
型が使用される。この金型により、油圧回路を構成する
パイプが鋳ぐるまれ、インナキャリパ部とアウタキャリ
パ部とが薄肉のブリッジ部で繋がった一体型のキャリパ
ボディが鋳造される。鋳ぐるまれるパイプは、中子の先
端に形成された支持部で中間部が保持されることが好ま
しい。パイプの少なくとも一端は、中子又は金型に形成
された挿入孔で保持され、或いは上型又は下型に形成さ
れた固定溝で固定される。これにより、パイプは、注入
された溶湯の流れによっても位置ズレすることなく、所
定位置に確保される。
【0009】
【作用】以下、対向ピストン型ディスクブレーキの一体
型キャリパボディを例に採って説明するが、本発明はこ
れに拘束されるものではなく、内部に流体通路が必要な
他の部品の製造についても同様に適用される。キャリパ
ボディは、図1に示すように厚肉部(アウタキャリパ部
8,インナキャリパ部9)と薄肉部(ブリッジ部7)と
の肉厚差が大きく、しかもパイプPを内包している薄肉
部が両側から厚肉部で挟まれた構造になっている。この
複雑な構造のため、キャリパボディを一体鋳造しようと
すると、薄肉部が早期に凝固して堰となり、奥側の厚肉
部に湯が十分に回らず、また厚肉部が凝固する際の収縮
力で薄肉部が引っ張られ、鋳巣,ヒケ巣等の鋳造欠陥が
発生し、強度や耐疲労破壊性が劣化しやすい。更に、金
型キャビティにセットされている被鋳ぐるみ材は、金型
に注入された溶湯の流動エネルギ,熱エネルギ,浮力等
を受けて位置ズレを生じ易い。
【0010】本発明では、それぞれ独立して制御可能な
冷却手段を上型,下型及び中子に設け、鋳造時に湯口か
ら遠い順でそれぞれの冷却手段を作動させることによ
り、金型に注入された溶湯の凝固に方向性を付けて湯不
足,鋳巣,ヒケ巣等の鋳造欠陥を防止している。金型の
冷却に使用される冷媒としては水,ミスト,エアー等を
使用できるが、湯口から遠い部分では急速冷却が必要と
されるので水を、湯口に近い部分では溶湯に水がかから
ないようにエアーを冷媒として使用することが好まし
い。更に、インナキャリパ部9とアウタキャリパ部8と
を接続するブリッジ部7を形成する金型部分では、断熱
材を埋め込み、或いは加熱装置を付設することが好まし
い。断熱材や加熱装置は、鋳造時にブリッジ部7におけ
る溶湯の温度降下を部分的に遅らせ、湯流れを阻害する
堰の生成を防止する。仮に、ブリッジ部7が早期に凝固
すると、湯口から遠い方のキャリパ部に溶湯が到達しな
くなり、湯不足が発生する。
【0011】
【実施の形態】本発明で使用する金型は、図2に示すよ
うに上型10及び下型20の割り型になっており、下型
20に中子30が組み込まれている。上型10,下型2
0,中子30は、耐熱性,耐摩耗性に優れた工具鋼SK
D61等で作られる。上型10は、キャリパボディ形状
のほぼ半分に相当するキャビティ11をもち、一側が反
湯口ブロック12になっている。反湯口ブロック12の
ほぼ中央に、中子30の基部31が嵌め込まれる嵌合凹
部13が形成されている。下型20は、キャリパボディ
形状の残り半分に相当するキャビティ21をもち、反湯
口ブロック22及び湯口ブロック24がそれぞれ上型1
0の反湯口ブロック12及び湯口ブロック14に対応す
る。上型10の湯口ブロック14及び下型20の湯口ブ
ロック24の中央に湯口となる窪み15,25が形成さ
れている。
【0012】中子30は、湯口15−25と反対側で上
型10及び下型20の端面に当接する台座32をもち、
台座32から起立した基部31が上型10の嵌合凹部1
3及び下型20の嵌合凹部(図示省略)に嵌め込まれ
る。台座32から1本又は複数本(図2では2本)の中
子33が突出しており、中子33は下型20のブロック
34に設けられた孔に挿し込まれている。中子33はキ
ャリパボディのピストン収容空間を形成し、ブロック3
4はロータ収容空間を形成する。中子33の先端には、
被鋳ぐるみ材であるパイプPの中間部を固定する支持部
35が形成されている。パイプPは、キャリパボディ内
部を循環する形状に曲げられており、両端部は中子3
3,33の基部31側端部に形成した挿入孔71(図
5),上型10又は下型20の固定溝73,74(図
7,8)等に挿入固定される。
【0013】上型10及び下型20を合わせたとき、キ
ャリパボディのプロフィールに相当する金型キャビティ
11−21が形成され、上型10及び下型20の窪み1
5,25で金型キャビティ11−21に臨む湯口15−
25が構成される。金型キャビティ11−21のうち、
中子30をセットした側がインナキャリパ部9となり、
湯口15−25に臨む側がアウタキャリパ部8となる。
図2の例では、湯口15−25をアウタキャリパ部8側
に設けているが、これに拘束されることなくインナキャ
リパ部9側又は側面に湯口を設けることも可能である。
【0014】上型10及び下型20には、それぞれ図3
(a),(b)に示すように、キャビティ11,21と
は反対側の表面に、各種冷却手段が設けられている。上
型10の表面には、湯口となる窪み15に遠い側で、イ
ンナキャリパ部9のほぼ中央に当たる位置の金型キャビ
ティに対応する第1水冷孔41が形成されている。次い
で、湯口となる窪み15に向けて、それぞれ一対の第2
水冷孔42,42,ミスト冷却孔43,43,断熱材充
填孔44,44,第1空冷孔45,45及び第2空冷孔
46,46が左右対称に形成されている。下型20の表
面にも、中子30から湯口となる窪み25に向けて、第
1水冷孔51,第2水冷孔52,52,ミスト冷却孔5
3,53,第3水冷孔54,54,断熱材充填孔55,
55,第1空冷孔56,56及び第2空冷孔57,57
が形成されている。
【0015】断熱材充填孔44,55は、インナキャリ
パ部9とアウタキャリパ部8とを接続するブリッジ部7
(図1)に当たる位置に設けられている。断熱材充填孔
44,55には、図4(a)に示すように断熱材61が
充填される。これにより、金型内部における熱伝導がこ
の部分で抑えられ、対応する個所のキャビティ11,2
1にある溶湯の冷却が緩慢になる。その結果、ブリッジ
部7の凝固が遅延し、湯口15−25から送り込まれた
溶湯が中子30側のインナキャリパ部9まで送り込まれ
る。なお、断熱材61に替えて、金型又は溶湯を積極的
に加熱することにより冷却を防止する電気ヒータ等の加
熱装置を断熱材充填孔44.55に挿入しても良い。こ
れに対し、断熱材61又は加熱装置を組み込まないと、
他の部分よりも薄肉になっているブリッジ部7で溶湯が
優先的に温度降下して凝固しやすいため、インナキャリ
パ部9に溶湯が十分補給されず、結果として湯不足が生
じる。
【0016】第1水冷孔41,51には、図4(b)に
示すように冷媒供給管62が挿入されている。冷媒供給
管62は、第1水冷孔41,51の孔底部近傍で開口し
ている。冷媒供給管62を経て供給された冷却水wは、
冷媒供給管62の先端開口部63から第1水冷孔41,
51内に噴出され、第1水冷孔41,51の内壁面に直
接接触して上型10,下型20を冷却した後、第1水冷
孔41,51から排出される。冷却水wを上型10,下
型20の表面に直接吹き付けて冷却する方式であるた
め、大きな冷却能が得られる。冷却を効果的にするため
には、第1水冷孔41,51の孔底部から金型内面まで
の距離Lを5〜10mmとすることが好ましい。距離L
が5mm未満では、上型10,下型20が薄くなりす
ぎ、熱衝撃等によって破損しやすくなる。逆に、10m
mを超える距離Lでは、十分な冷却効果が得られない。
断熱材充填孔44,55も同様な理由により、孔底部か
ら金型内面までの距離を5〜10mmとすることが好ま
しい。
【0017】冷媒供給管62を第1水冷孔41,51に
挿入した水冷機構は、簡単な構造のためメンテナンスが
容易である。しかも、冷却水wの供給を止めると第1水
冷孔41,51から直ちに冷却水wが排出されるため、
上型10,下型20の冷却を止めることができる。この
点、冷媒供給管62及び排水管64が二重管構造になっ
た冷却手段を第1水冷孔41,51に挿入して冷却する
方式(図4c)が従来の一般的な冷却方法である。この
方式では、冷媒供給管62から送り込まれた冷却水w
は、上型10,下型20の表面に直接接触することな
く、排水管64から送り出される。そのため、外側の排
水管64を介して上型10,下型20が冷却されること
になり、大きな冷却能が得られない。しかも、冷却水w
の供給を止めても、冷媒供給管62や排水管64に冷却
水wが残留し、上型10,下型20の冷却を中止したこ
とにならない。更には、複雑な構造をもつため、手数の
かかるメンテナンスが必要になる。
【0018】他の水冷孔42,52,54,ミスト冷却
孔43,53,空冷孔45,46,56,57に対して
も、同様に先端が孔底部近傍に開口した冷媒供給管を挿
入し、冷媒供給管から冷却水,ミスト,冷気等を送り込
むことにより、上型10,下型20を直接冷却する。キ
ャリパボディの肉厚部に当たる部分では、特に大きな冷
却能が要求される。このような部分、たとえば上型10
の第2水冷孔42として、図4(d)に示すように上型
10を貫通する貫通孔65を形成し、熱伝導性の良好な
銅等で作られ、先端を閉じたキャップ66を貫通孔65
に装着する。キャビティ11に注入された溶湯は、冷媒
供給管62から送り出された冷却水wとキャップ66を
介して接触するため、より大きな冷却能が得られる。湯
口15−25に近い部分では、溶湯の降温を比較的遅く
することからエアー冷却が採用される。また、水冷方式
で冷却に使用された水が溶湯と接触する危険を避ける上
でも、湯口15−25に近い部分に対してはエアー冷却
が好ましい。
【0019】中子30は、基部31から金型キャビティ
11−21に向けて中子33を突出させている。中子3
3の内部に、図5(b)に示すように軸方向に延びる有
底孔36が穿設されており、有底孔36に給水管67が
挿入される。給水管67も、上型10,下型20に設け
られる冷媒供給管62と同様に、有底孔36の底部近傍
に開口した先端開口部68をもつ。給水管67から送り
込まれた冷却水wは、有底孔36の内壁面に直接接触し
て金型及び溶湯を冷却した後、排出される。冷却水wが
中子33の先端まで送り込まれているので、中子33の
先端で保持されているパイプPは、中子33を介して冷
却される。そのため、鋳造の最終段階で湯口から金型キ
ャビティ11−21に注入された溶湯が中子33の先端
部に直接かかっても、パイプPの溶損が防止される。
【0020】中子30の基部31には、所定形状に曲げ
成形されたパイプPの両端部が差し込まれる挿入孔71
が穿設されている。両端が挿入孔71,71に差し込ま
れたパイプPは、中間部が中子33の先端面にある支持
部72で支持される。支持部72は、図6に示すように
ストレートな溝72a,中間部が屈曲した溝72b,中
間部が幅広になった溝72c,二重に幅広になった溝7
2d,中間部が幅狭になった溝72e,溝底部が中間部
で浅くなった溝72f,溝底部が中間部で深くなった溝
72g等として中子33の先端面に形成される。
【0021】溝72a〜72gにパイプPの中間部を差
し込むことによりパイプPが確実に保持され、鋳造中に
溶湯の流動エネルギによるパイプPの位置ズレが防止さ
れる。屈曲部,幅広部,幅狭部等のある溝72b〜72
fを支持部72とする中子33に、屈曲部,幅広部,幅
狭部等に対応して中間部を変形させたパイプPを差し込
むとき、パイプPの保持が一層確実になる。パイプPの
中間部を支持部72で保持し、両端部を挿入孔71,7
1に差し込むことにより、パイプPは、鋳造中にも所定
位置に維持される。そのため、パイプPを鋳ぐるんだキ
ャリパボディにおいて、ボディ内部で精度良くパイプP
が配置されることになる。パイプPの高い位置精度は、
パイプPを油圧回路に使用する場合にパイプPに接続す
るブリーダ装着用の孔を開けるとき小さなブリーダ装着
用孔で済み、油漏れ防止にも有効である。また、全体的
な肉厚も薄くできる。
【0022】パイプPの両端部は、上型10,下型2
0,中子30等で保持又は保持固定される。たとえば、
上型10にパイプ押え溝71a(図9a)又はパイプ挿
入孔71b(図9b)を形成し、一端部が金型10,2
0の外面に臨むようにパイプPをセットする。キャリパ
ボディ鋳物は、図10に示すように鋳物本体からパイプ
Pが突出しているため、ブリーダ装着口Xを高精度で設
定できる。この場合、鋳造後の切削加工により、パイプ
Pに達する油圧回路用の孔部Yを形成する。上型10の
パイプ押え溝71aと中子30のパイプ押え溝71aと
の間でパイプPの両端部を挟む方式(図10),一端を
中子30の挿入孔71に差し込み、他端を下型20の挿
入孔71に挿し込んでパイプPを固定する方式(図1
1)も採用できる。
【0023】パイプPの端部を上型10,下型20に挟
み込んで固定する場合、パイプPの外径と固定溝73,
74(図7,8)の内径を同一にすると、パイプPのセ
ッティングに時間がかかり生産性が低下しかねない。パ
イプPのセッティングを容易にするためには、固定溝7
3,74の内径をパイプPの外径より大きくすることが
好ましい。しかし、固定溝73,74の内径を単に大き
くしただけでは、セットされたパイプPが鋳造時にぐら
つき、パイプPの鋳ぐるみ位置が変動し易い。パイプP
のグラツキは弾性復元力を利用(図7,8)して上型1
0,下型20に挟み込むことにより防止でき、パイプP
が上型10と下型20との間に強固に固定される。或い
は、パイプPに比較して大きな内径をもつパイプ挿入孔
71の内部に突起71c(図13a)を形成し、同様な
突起71cを付けた下型20のパイプ挿入孔71との間
にパイプPの端部をセットして上型10と下型20との
間に挟み込む(図13b)ことによっても、パイプPを
強固に固定できる。更には、比較的浅い半楕円状のパイ
プ挿入孔71a(図14a)を形成し、パイプ挿入孔7
1aに配置したパイプPを上型10と下型20との間に
挟み付ける(図14b)によってもパイプPが強固に固
定される。また、図14(c)に示すように下型20の
溝に凹部71d,上型10の溝に凸部71eを設け、パ
イプPを凸部71eによって凹部71dに押し付けるこ
とによってもパイプPが強固に固定される。更には、パ
イプPの先端を外側に曲げ(図15b)、パイプPの曲
りに対して金型の溝11aを形成し(図15a)、パイ
プPの斜線部を抑えて固定すると矢印方向(図15c)
にパイプPが変動することが抑制される。
【0024】第1水冷孔41,51,第2水冷孔42,
52,ミスト冷却孔43,53,第3水冷孔54,第1
空冷孔45,56,第2空冷孔46,57,有底孔36
に供給される冷却水,ミスト,冷気は、流量、供給時間
等が独立して制御される。そのため、金型キャビティ1
1−21に注入された溶湯が凝固冷却してキャリパボデ
ィになる過程の溶湯流動,凝固等を考慮して適切な冷却
条件を設定できる。基本的には、湯口15−25から遠
い部分ほど先に冷却させる冷却条件が採用される。すな
わち、第1水冷孔41,51を介した冷却作用を早期に
働かせ、第2水冷孔42,52→ミスト冷却孔43,5
3→第3水冷孔54→第1空冷孔45,56→第2空冷
孔46,57の順に冷却を開始する。これにより、金型
キャビティ11−21に注入された溶湯は、湯口15−
25の反対側から一方向凝固する。質量の小さいことか
ら凝固しやすいブリッジ部7では、断熱材61によって
溶湯の温度降下を遅らせる。したがって、湯回りを困難
にする複雑形状をもつキャリパボディであるにも拘わら
ず、金型キャビティ11−21の隅々まで十分に溶湯が
行き渡る。その結果、得られたキャリパボディは、鋳
巣,湯不足に起因するヒケ巣等の鋳造欠陥がなく、各部
が十分な肉厚をもった製品になる。
【0025】しかも、鋳ぐるまれるパイプPの中間部が
中子33の先端で、両端部が中子30の基部31又は上
型10,下型20の固定溝73,74で支持されている
ため、パイプPは、溶湯の流動エネルギに抗して金型キ
ャビティ11−21内で所定位置に維持される。そのた
め、得られたキャリパボディにブリーダを装着する場
合、小さな装着用孔を開けてパイプPにブリーダを接続
して油圧回路を構成することができる。更には、鋳造終
了段階で金型キャビティ11−21に注入される溶湯流
が直接接触しやすいパイプPの中間部が中子30の中子
33を介して冷却されているので、パイプPは溶損のな
い状態でキャリパボディの内部に配置される。したがっ
て、パイプPは、油漏れのない油圧回路の一部として使
用される。
【0026】
【実施例】図8の下型20に図2の中子30をセット
し、図7の上型10を重ね合わせた。パイプPとして、
外径6mm,肉厚1.5mmの3000系アルミニウム
合金パイプを用い、中間部を中子33先端の支持部72
に差し込み、両端部を固定溝74に差し込んで上型10
と下型20で狭持した。JIS AC4Cアルミニウム
合金を鋳ぐるみ材として使用し、湯溜り部での溶湯温度
を700℃に設定し、傾斜重力鋳造法によって金型キャ
ビティ11−21に注入した。溶湯注入直後に第1水冷
孔41,51に冷却水を送り込み、第2水冷孔42,5
2→ミスト冷却孔43,53→第3水冷孔54→第1空
冷孔45,56→第2空冷孔46,57の順で各冷却手
段を5秒間隔で作動させた。なお、中子33の有底孔4
8には、溶湯注入直後から冷却水wを送り込んだ。
【0027】この条件下でパイプPを鋳ぐるむことによ
り、10個のキャリパボディを得た。何れのキャリパボ
ディも、インナキャリパ部9,アウタキャリパ部8,ブ
リッジ部共に十分な肉をもっており、湯不足,鋳巣等の
鋳造欠陥は検出されなかった。鋳ぐるまれたパイプP
は、何れのキャリパボディにあっても設計値に比較して
パイプ中心位置が±0.5mmの範囲に収まっており、
油漏れ等を引き起こす溶損も観察されなかった。
【0028】比較のため、溶湯注入開始直後に各部の冷
却手段を一斉に作動させて、10個のキャリパボディを
鋳造した。この場合には、10個のうち7個まで、ブリ
ッジ部7で溶湯が最初に凝固したため、インナキャリパ
部9に十分な量の溶湯が補給されず、目標とする製品形
状が得られなかった。残る3個も、多量の鋳巣が検出さ
れ、特に湯口15−25から遠いインナキャリパ部9に
鋳巣が集中していた。更に、鋳ぐるまれたパイプPの位
置を測定したところ、3個のキャリパボディ共にパイプ
中心位置が設計値から1mm以上ずれていた。この対比
から明らかなように、キャリパボディの形状や肉厚を考
慮して各部の冷却条件を制御することにより、良好な形
状をもち、高い位置精度でパイプPが鋳ぐるまれた一体
型キャリパボディが得られることが判った。
【0029】
【発明の効果】以上に説明したように、本発明のパイプ
鋳ぐるみ用金型は、鋳物の各部肉厚に応じて冷却手段及
び断熱又は加熱手段を上型及び下型に組み込み、湯口か
ら遠い側から作動するように各冷却機構をそれぞれ独立
に制御し、早期に凝固しがちなブリッジ部の温度降下を
遅らせている。これにより、形状及び肉厚が複雑に変化
するにも拘わらず、湯不足,鋳巣等の鋳造欠陥がない良
好な形状の鋳物が鋳造される。また、鋳ぐるまれるパイ
プは、鋳造中にも冷却されるため溶損がなく、油漏れ等
のない油圧回路の一部として使用される。しかも、鋳物
内部の所定位置に精度良く保持されるため、ブリーダ装
着用孔の穿設等の後作業も容易になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 ブレーキディスク用キャリパボディの概略を
説明する平面図(a)及びB−B断面図(b)
【図2】 上型(a)及び下型(b)の内部を説明する
斜視図
【図3】 上型(a)及び下型(b)の表面に形成され
た冷却用及び断熱用の孔部を示す斜視図
【図4】 断熱手段(a),冷却手段(b,d)を従来
の冷却手段(c)と対比して説明する断面図
【図5】 中子の斜視図(a)及び断面図(b)
【図6】 中子の先端に形成したパイプ支持部の数例
【図7】 パイプの両端部が差し込まれる固定溝が形成
された上型の斜視図(a)及びパイプの端部を狭持する
ことを説明する断面図(b)
【図8】 パイプの両端部が差し込まれる固定溝が形成
された下型の斜視図(a),パイプの屈曲端部と下型の
縁部との関係を示す断面図(b)及び下型と上型との間
でパイプの端部を狭持している状態を示す断面図(c)
【図9】 パイプの一端を上型(a)で支持し、他端を
中子(b)で支持した金型
【図10】 キャリパボディ鋳物にブリーダを取り付け
る説明図
【図11】 パイプ押え溝をつけた上型(a)と、パイ
プ押え溝をつけた中子(c)を組み込んだ下型(b)
【図12】 パイプの一端を中子の挿入孔に差し込み、
他端を下型の挿入孔に挿し込んだ金型
【図13】 突起を付けたパイプ押え溝を形成した上型
(a)と、上型及び下型で挟み付けられたパイプ(b)
【図14】 半楕円状のパイプ押え溝を形成した上型
(a)と、上型及び下型で挟み付けられたパイプ(b)
【図15】 パイプの曲がり(b)に応じた溝を金型に
形成し(a)、パイプの変動(c)を抑えた例
【符号の説明】
10:上型 11:キャビティ 15:湯口となる
窪み 20:下型 21:キャビティ 25:湯口となる
窪み 30,33:中子 34:ブロック 35:支持部
36:有底孔 41,51:第1水冷孔 42,52:第2水冷孔
43,53:ミスト冷却孔 54:第3水冷孔
44,55:断熱材充填孔 45,56:第1空冷孔
46,57:第2空冷孔 61:断熱材 62,67:給水管 63,68:
先端開口部 65:貫通孔 66:キャップ P:パイプ(被鋳ぐるみ材) Pe:屈曲端部
w:冷却水
フロントページの続き (72)発明者 清水 宜伸 北海道苫小牧市晴海町43番地3号 日本軽 金属株式会社苫小牧製造所内 (72)発明者 濱野 康彦 北海道苫小牧市晴海町43番地3号 日本軽 金属株式会社苫小牧製造所内 (72)発明者 堀川 宏 静岡県庵原郡蒲原町蒲原1丁目34番1号 日本軽金属株式会社グループ技術センター 内 Fターム(参考) 4E093 NB05

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 流体回路を構成するパイプが鋳ぐるまれ
    た鋳物を鋳造する金型であって、キャビティに注入され
    た溶湯を湯口から遠い側から凝固させる冷却手段を備え
    ているパイプ鋳ぐるみ用金型。
  2. 【請求項2】 個別に制御可能な冷却手段が金型の複数
    箇所に設けられている請求項1記載のパイプ鋳ぐるみ用
    金型。
  3. 【請求項3】 先端が開口した冷媒供給管を金型の表面
    に形成した孔部に挿入した構造をもつ冷却手段を備えて
    いる請求項1又は2記載のパイプ鋳ぐるみ用金型。
  4. 【請求項4】 単数又は複数の加熱又は断熱手段が組み
    込まれている請求項1〜3の何れかに記載のパイプ鋳ぐ
    るみ用金型。
  5. 【請求項5】 加熱又は断熱手段が金型表面に形成され
    た有底孔にヒータ又は断熱材を挿入した構造をもつ請求
    項4記載のパイプ鋳ぐるみ用金型。
  6. 【請求項6】 中子が組み込まれている請求項1〜5の
    何れかに記載のパイプ鋳ぐるみ用金型。
  7. 【請求項7】 中子が冷却手段を備えている請求項6記
    載のパイプ鋳ぐるみ用金型。
  8. 【請求項8】 冷却手段が中子内部に形成された有底孔
    に先端が開口した冷媒供給管を挿入した構造をもつ請求
    項7記載のパイプ鋳ぐるみ用金型。
  9. 【請求項9】 鋳ぐるまれるパイプを保持する支持部が
    金型に形成されている請求項1〜8の何れかに記載のパ
    イプ鋳ぐるみ用金型。
  10. 【請求項10】 鋳ぐるまれるパイプを保持する支持部
    が中子に形成されている請求項6〜8の何れかに記載の
    パイプ鋳ぐるみ用金型。
  11. 【請求項11】 鋳ぐるまれるパイプを保持する支持部
    が金型又は中子に形成されており、パイプの少なくとも
    一つの支持部が金型間又は金型と中子との間に挟み込ま
    れることにより固定される請求項1〜10の何れかに記
    載のパイプ鋳ぐるみ用金型。
  12. 【請求項12】 鋳ぐるまれるパイプの中間部を保持又
    は保持固定する支持部が中子に形成されている請求項6
    〜11の何れかに記載のパイプ鋳ぐるみ用金型。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2009297784A (ja) * 2008-05-12 2009-12-24 Nissin Kogyo Co Ltd 車両用ディスクブレーキのキャリパボディ製造方法及びキャリパボディ
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CN114082959A (zh) * 2021-11-23 2022-02-25 国铭铸管股份有限公司 一种球墨铸管表面处理工艺

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