JP2002080959A - 歪取り焼鈍後の特性劣化が無くかつ被膜密着性に優れた超低鉄損一方向性けい素鋼板の製造方法 - Google Patents

歪取り焼鈍後の特性劣化が無くかつ被膜密着性に優れた超低鉄損一方向性けい素鋼板の製造方法

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JP2002080959A JP2000271402A JP2000271402A JP2002080959A JP 2002080959 A JP2002080959 A JP 2002080959A JP 2000271402 A JP2000271402 A JP 2000271402A JP 2000271402 A JP2000271402 A JP 2000271402A JP 2002080959 A JP2002080959 A JP 2002080959A
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征夫 井口
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 一方向性けい素鋼板の表面近傍に濃化した酸
化物を効果的に除去して、表面平滑化による鉄損の低減
効果を十分に発現させると共に、鋼板表面に対する被膜
密着性を高める。 【解決手段】 仕上焼鈍済みの膜無し一方向性けい素鋼
板の表面に、直流マグネトロン・スパッタ法によってSi
x 系セラミック被膜を被成するに先立ち、不活性ガス
を用いたプラズマ雰囲気中にてボンバード処理を行うこ
とにより、けい素鋼板表面の酸化物を除去する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、歪取り焼鈍後の特
性劣化が無くかつ被膜密着性に優れた超低鉄損一方向性
けい素鋼板の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】発明者らは、これまで長年にわたって一
方向性けい素鋼板の磁気特性の改善に取り組んでおり、
その一例として、仕上げ焼鈍済みの一方向性けい素鋼板
の表面酸化物を除去し、 ついで研磨処理を施したのち、
この研磨表面にPVDやCVD処理によって窒化物や炭
化物などの薄膜の張力被膜を被成させることからなる鉄
損低減技術が挙げられる(例えば特公昭63−32849 号,
同63−32850 号,同63−35684 号,同63−35685 号,同
63−35686 号および同63−35687 号各公報)。
【0003】上記の被膜形成法のうち、特にPVD法
は、CVD法よりも高速成膜が可能でしかも低温で成膜
できることから、低鉄損一方向性けい素鋼板の製造に適
している。その中でも、特にHCD(Hollow Cathode D
ischarge)法は、緻密で平滑なセラミック膜が得られ、
しかも比較的高速でのセラミック被膜の成膜が可能であ
ることから、かかるけい素鋼板の製造に最適とされてい
た。
【0004】しかしながら、このHCD法では、例えば
代表例であるTiNセラミック被膜を考えた場合、(1) 素
材(Ti)コストが高価である、(2) Tiの蒸着効率が15〜
20%と低い、(3) コーティングに使用するためのTaカソ
ード、集束コイル等が高価であるため、かかるコーティ
ング手法におけるセラミック被膜の製造は極めてコスト
高となることの他、(4) 高温の歪取り焼鈍を施した場合
に、しばしば密着性不良に起因した被膜剥離が生じるこ
とが問題として指摘されてきた。
【0005】そこで、発明者らは、再度、コーティング
手法とコーティング物質について根本的な検討を行った
結果、HCD法を利用したイオンプレーティング法に代
えて、直流マグネトロン・スパッタ法を利用すれば、高
速でしかも膜質に優れた薄いSiNX 系セラミック被膜を
けい素鋼板の表面に被成することができ、その結果、よ
り安価でかつより鉄損特性に優れた一方向性けい素鋼板
の製造が可能になることを見出し、特開平11−131252号
公報において開示した。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、この直
流マグネトロン・スパッタ法を利用してSiNX 系セラミ
ック被膜を被成した場合であっても、その後にN2 ガス
雰囲気中にて高温の歪取り焼鈍を施した場合には、密着
性不良に起因した被膜剥離を生じる場合があった。特に
この傾向は、一方向性けい素鋼板として、高磁束密度の
達成が可能なAlをインヒビターとして含有する鋼板すな
わち含Al一方向性けい素鋼板を用いた場合に顕著であっ
た。
【0007】そこで、発明者は、この原因を解明すべく
鋭意検討を重ねた結果、かような被膜剥離の原因は、最
終仕上げ焼鈍時にけい素鋼板の表面近傍に濃化した酸化
物とくにAl系酸化物が、完全に除去されていなかったた
めであることを突き止めた。
【0008】本発明は、上記の問題を有利に解決するも
ので、たとえ含Al一方向性けい素鋼板の表面近傍に濃化
したAl系酸化物であっても効果的に除去して、表面平滑
化による鉄損の低減効果を十分に発現させ得ると共に、
被膜密着性を格段に向上させることができる超低鉄損一
方向性けい素鋼板の有利な製造方法を提案することを目
的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】以下、本発明の解明経緯
について説明する。従来、一方向性けい素鋼板の製造に
際しては、2次再結晶焼鈍前の脱炭・1 次再結晶焼鈍時
に鋼板表面に生成させたサブスケール(SiO2)と焼鈍分
離剤 (MgO)との高温での固相反応、すなわち次式、 SiO2 + 2MgO → Mg2SiO4 によってフォルステライト系下地被膜を形成させ、さら
にその上に熱膨張係数の小さい絶縁被膜を形成すること
によりけい素鋼板表面近傍に張力を付与することによっ
て、鉄損の低減と磁歪の改善を図ってきた。しかしなが
ら、このようなフォルステライト系下地被膜を形成させ
た場合、この被膜と地鉄との乱れた界面構造が、鉄損に
対する被膜の張力効果をある程度減殺する不利があっ
た。
【0010】そこで、上記の弊害を除去するために、仕
上げ焼鈍工程でのフォルステライト系下地被膜の形成を
抑制(膜無し材と呼ばれる)したり、あるいはこの下地
被膜を除去し、表面を鏡面化することによって、一層の
低鉄損化を図る技術が提案された。しかしながら、上記
の方法によって表面を鏡面化する場合には、最終仕上げ
焼鈍時に鋼板表面近傍に濃化した酸化物をきれいに除去
する必要があるが、かかる酸化物とくに含Al一方向性け
い素鋼板の最終焼鈍時に鋼板表面近傍に濃化したAl系酸
化物は除去することが極めて難しく、そのため上記のよ
うな被膜剥離という弊害が生じていたのである。
【0011】そこで、発明者らは、かようなAl系酸化物
の除去手段について種々検討を行った。まず、酸洗処理
によるAl系酸化物の除去を試みたが、この方法によって
Al系酸化物を除去するには、多大の労力を必要とするだ
けでなく、たとえ除去できたとしても、けい素鋼板表面
の凹凸が顕著となり、表面平滑化による十分なヒステリ
シス損の低減が期待できないことが判明した。
【0012】次に、グロー放電によるボンバート処理に
よって表面を清浄化を試みたが、この処理では、含Al一
方向性けい素鋼板の表面近傍のAl系酸化物を十分に除去
することはできなかった。
【0013】そこで、さらに発明者らは、セラミックコ
ーティングの前処理に関して種々の試行実験を行った結
果、前処理として、不活性ガスを利用したプラズマ雰囲
気中にてボンバード処理を行うことにより、表面に残存
するAl系酸化物を効果的に除去することができ、従っ
て、その後に直流マグネトロン・スパッタ法を用いてSi
x 系セラミック膜を被成した場合には、鉄損が極めて
低くかつ被膜密着性にも優れた一方向性けい素鋼板を得
ることができ、しかもかくして得られた一方向性けい素
鋼板はN2 ガス雰囲気にて高温の歪取り焼鈍を施した場
合であっても被膜密着性の劣化ひいては鉄損特性の劣化
が生じないことの知見を得た。また、かようなプラズマ
雰囲気中でのボンバード処理後、SiNx 系セラミック膜
の被成に先立ち、下地被膜としてCr,TiおよびNi等を含
有する薄膜を被成することにより、被膜密着性の一層の
向上が達成されることも併せて見出した。本発明は、上
記の知見に立脚するものである。
【0014】すなわち、本発明の要旨構成は次のとおり
である。 1.仕上焼鈍済みの膜無し一方向性けい素鋼板の表面
に、直流マグネトロン・スパッタ法によってSiNx 系セ
ラミック被膜を成膜してなる超低鉄損一方向性けい素鋼
板の製造方法において、上記の成膜処理に先立ち、不活
性ガスを用いたプラズマ雰囲気中にてボンバード処理を
行うことによって、けい素鋼板表面の酸化物を除去する
ことを特徴とする、歪取り焼鈍後の特性劣化が無くかつ
被膜密着性に優れた超低鉄損一方向性けい素鋼板の製造
方法。
【0015】2.仕上焼鈍済みの膜無し一方向性けい素
鋼板の表面に、直流マグネトロン・スパッタ法によって
SiNx 系セラミック被膜を成膜してなる超低鉄損一方向
性けい素鋼板の製造方法において、上記の成膜処理に先
立ち、不活性ガスを用いたプラズマ雰囲気中にてボンバ
ード処理を行うことによって、けい素鋼板表面の酸化物
を除去すると共に、下地被膜としてCr,TiおよびNiのう
ちから選んだ1種または2種以上を含有する薄膜を0.00
1〜0.2 μm の厚みで被成することを特徴とする、歪取
り焼鈍後の特性劣化が無くかつ被膜密着性に優れた超低
鉄損一方向性けい素鋼板の製造方法。
【0016】3.上記1または2において、不活性ガス
がArガスを主体とするものであることを特徴とする、超
低鉄損一方向性けい素鋼板の製造方法。
【0017】4.上記1,2または3において、プラズ
マ励起源として5〜300 MHz の高周波帯域を用いること
を特徴とする、超低鉄損一方向性けい素鋼板の製造方
法。
【0018】
【発明の実施の形態】以下、本発明を由来するに至った
実験結果について説明する。 C:0.079 mass%, Si:3.38mass%, Mn:0.073 mass
%, Se:0.020 mass%,Sb:0.023 mass%, Al:0.020 m
ass%, N:0.0068mass%およびMo:0.012 mass%を含
有し、残部は実質的にFeの組成になるけい素鋼連鋳スラ
ブを、1340℃, 4時間の加熱処理後、熱間圧延により板
厚:2.0 mmの熱延板とした。ついで、この熱延板に1080
℃, 1分間の均一化焼鈍を施したのち、1050℃の中間焼
鈍を挟む2回の圧延を施して板厚:0.23mmの最終冷延板
とした。
【0019】ついで、この最終冷延板の表面に、アルキ
ド系樹脂を主成分とするエッチングレジストインキをグ
ラビアオフセット印刷により、非塗布部が圧延方向にほ
ぼ直角に幅:200 μm 、間隔:4mmで線状に残存するよ
うに塗布したのち、200 ℃で3分間焼き付けた。この時
のレジスト厚は2μm であった。このようにしてエッチ
ングレジストを塗布した鋼板に、電解エッチングを施す
ことにより、幅:200μm 、深さ:20μm の線状の溝を
形成し、ついで有機溶剤中に浸漬してレジストを除去し
た。このときの電解エッチングは、NaCl電解液中で電流
密度:10 A/dm2、処理時間:20秒の条件で行った。
【0020】その後、 840℃の湿H2 中で脱炭・1 次再
結晶焼鈍を行ったのち、鋼板表面にMgO(20mass%), Al2O
3(45mass%), CaSiO3(15mass%), SiO2(20mass%)の組成に
なる焼鈍分離剤のスラリーを塗布してから、 850℃で15
時間の焼鈍後、 850℃から1160℃まで11℃/hの速度で昇
温して、ゴス方位に強く集積した2次再結晶粒を発達さ
せたのち、1220℃の乾H2 中で純化処理を施して、表面
被膜無しの方向性けい素鋼板を製造した。
【0021】ついで、セラミックコーティングに先立
ち、次の前処理を行った。 (1) 投入パワー:3.5 kW、Arガス流量:200 SCCM、ボン
バード時間:3min で、100MHzの高密度プラズマ雰囲気
中でボンバード処理を行った(発明例)。 (2) 投入パワー:3.5 kW、Arガス流量:200 SCCM、ボン
バード時間:3min で、グロー放電によるボンバード処
理を行った(従来例)。
【0022】上記の各前処理後、一部については、中空
陰極放電法〔HCD法(Hollow Cathode Discharge
法)〕により、下地被膜として厚み:0.1 μm のTi膜を
被成した。ついで、直流マグネトロン・スパッタ法によ
り 0.1μm 厚のSiNx 系セラミック被膜を被成した。そ
の後、けい素鋼板の表面にりん酸塩とコロイダルシリカ
を主成分とする絶縁被膜(約 0.7μm 厚)を焼付け後、
窒素雰囲気中で 800℃で3時間の歪取り焼鈍を行った。
かくして得られた製品の磁気特性および被膜密着性つい
て調べた結果を、表1に示す。なお、被膜密着性につい
ては、直径:20mmφの丸棒を用いて 180°曲げ変形を行
った場合における被膜の剥離状況によって評価するもの
とし、全く剥離が生じなかった場合を(○)、部分的に
剥離が生じた場合を(△)、全面に剥離が生じた場合を
(×)で表した。
【0023】
【表1】
【0024】同表に示したとおり、本発明に従う (1)の
方法で前処理を施したのち、SiNx系セラミック被膜を
被成した一方向性けい素鋼板は、 800℃で3時間の高温
での歪取り焼鈍後でも、極めて低い鉄損値を示し、かつ
被膜密着性にも優れていることが注目される。特に、下
地被膜としてTi膜を形成した場合にはより一層優れた特
性が得られている。これに対して、 (2)の方法で前処理
を施した場合には、歪取り焼鈍後の鉄損W 17/50 は 0.6
3 W/kgで (1)の方法を実施した場合よりも 0.08 W/kgも
悪く、また被膜密着性にも劣っていた。
【0025】また、図1に、上記した(1), (2)の方法で
前処理を行ったのちの、けい素鋼板の表面性状について
調べた結果を比較して示す。図1の右側は、本発明に従
う (1)の方法で前処理を行った場合、また同図の左側は
(2)の方法で前処理を行った場合のけい素鋼板の表面写
真である。両者を比較すれば明らかなように、本発明に
従う (1)の方法で前処理したけい素綱板の表面は極めて
美麗であるのに対し、 (2)の方法で処理した場合には黒
色の筋状あるいは斑点が数多く観察された。この黒色の
筋状あるいは斑点をEDX(Electron Dispersive X−
ray)分析したところ、Al, Mg, Oが検出され、これらは
鋼板表面に濃化したスピネル(MgO・A12O3)のAl系酸化物
であることが確認された。
【0026】上述したところからも明らかなように、本
発明に従う (1)の方法、すなわち不活性ガスを用いたプ
ラズマ雰囲気中でのボンバード処理を行えば、けい素鋼
板の表面近傍に濃化したAl系酸化物についても効果的に
除去することができ、その後にSiNx 系セラミック被膜
を被成したのち、高温の歪取り焼鈍を施したとしても、
セラミック被膜とけい素鋼板とは強固な密着性を確保す
ることができる。これに対し、 (2)の方法でボンバード
前処理を行った場合には、けい素鋼板表面のAl系酸化物
を完全に除去することができないため、その後にSiNx
系セラミック被膜を被成したのち、高温の歪取り焼鈍を
施した場合には、セラミック被膜とけい素鋼板の密着性
を十分に確保することができず、その結果、被膜剥離の
発生が避けられない。
【0027】本発明において、プラズマ雰囲気を形成す
るための不活性ガスは特に限定されることはないが、Ar
ガスを主体とするものがとりわけ有利である。また、プ
ラズマ雰囲気は高密度であることが好ましく、そのため
にはプラズマ励起源として5〜300 MHz の高周波帯域を
用いることが好適である。特に好ましくは10〜100 MHz
の帯域である。
【0028】また、本発明において、鋼板表面に対する
SiNx 系セラミック被膜の密着性を一層向上させるに
は、上記した不活性ガスを用いたプラズマ雰囲気中にて
ボンバード処理を行ったのち、下地被膜としてCr,Tiお
よびNiのうちから選んだ1種または2種以上を含有する
薄膜を形成させることが有利である。この薄膜の界面を
XPS(X-ray Photoelectron Spectroscopy, X線光電
子分光装置)で調査した結果、TiO2, TiO, TiN, TiC
であり、金属Tiとして存在しているのではないことが判
明した。すなわち、金属Tiの状態でないことはTi拡散に
よる鉄損の劣化がなく、好都合であることを意味する。
【0029】ここに、かかる薄膜の厚みは 0.001〜0.2
μm 程度とすることが有利である。というのは、膜厚が
0.001μm に満たないと満足いくほどの密着性効果が得
られず、一方 0.2μm を超えるとコストアップとなり経
済的ではなくなるからである。なお、特に好ましい厚み
は0.05〜0.1 μm である。また、かかる薄膜の形成方法
としては、中空陰極放電法(HCD法)や直流マグネト
ロン・スパッタ法等が有利に適合する。
【0030】さらに、この発明に従って被成するSiNX
系セラミック被膜の膜厚は、0.05〜1.0 μm 程度とする
のが好適である。また、直流マグネトロン・スパッタ法
を用いてけい素鋼板の表面に薄いSiNX系セラミック膜
を被成する場合、Siターゲットの素材としては、半導体
のウェハに使用したような高純度のSiの素材(99.99999
99%)は必要なく、低純度で安価なフエローSiやメター
Siで十分である。
【0031】なお、この発明の素材である方向性けい素
鋼板としては、従来公知のもの何れもが適合し、その種
類が特に限定されることはないが、前述したような含Al
一方向性けい素鋼板に適用して特に好適である。また、
その形状については、鋼帯は勿論のこと、切り板にも適
用できるのは言うまでもない。
【0032】
【実施例】C:0.076 mass%, Si:3.49mass%, Mn:0.
074 mass%, Se:0.020 mass%,Al:0.020 mass%, M
o:0.012 mass%およびSb:0.025 mass%を含有し、残
部は実質的にFeの組成になるけい素鋼連鋳スラブを、13
50℃, 4時間の加熱処理後、熱間圧延により板厚:2.2
mmの熱延板とした。ついで、この熱延板に1050℃, 3分
間の均一化焼鈍を施したのち、1000℃の中間焼鈍を挟む
2回の圧延を施して板厚:0.23mmの最終冷延板とした。
その後、 840℃の湿H2 中で脱炭・1 次再結晶焼鈍を行
ったのち、鋼板表面にMgO(30mass%), Al2O3(35mass%),
SiO2(25mass%), SrOH(8mass%), PbCl3(2mass%)の組成に
なる焼鈍分離剤のスラリーを塗布してから、 850℃で15
時間の焼鈍後、850 ℃から1050℃まで10℃/hの速度で昇
温して、ゴス方位に強く集積した2次再結晶粒を発達さ
せ、ついで1210℃の乾H2 中で純化処理を施したのち、
酸洗により表面酸化物を除去して、鋼板表面を平滑化し
た。ついで、50 MHzの高密度プラズマ雰囲気中にてボン
バード処理(投入パワー:3.5 kW, Arガス流量:200 SC
CM, ボンバード時間:3min )を行ったのち、一部につ
いては、直流マグネトロン・スパッタ法により、下地被
膜として厚み:0.075 μm のCr系薄膜を被成した。
【0033】ついで、直流マグネトロン・スパッタ法に
より、投入パワー:5kW, N2 ガス流量:70 SCCM の条
件で約0.02μm 厚のSiNx 系セラミック被膜を−75V の
バイアス電圧を印加しながら被成したのち、引き続きN
2 ガス流量:100 SCCMの条件で処理することにより、約
0.05μm 厚のSiNx 系セラミック被膜を被成した。その
後、さらにその上にりん酸塩とコロイダルシリカを主成
分とする絶縁被膜(約 0.7μm 厚)を焼付け後、窒素雰
囲気中で 800℃で3時間の歪取り焼鈍を行った。かくし
て得られた方向性けい素鋼板の鉄損、耐電圧、層間抵抗
および被膜密着性について測定した結果を表2に示す。
また、同表には比較のため、前処理として、投入パワ
ー:3.5 kW、Arガス流量:200 SCCM、ボンバード時間:
3min の条件で、グロー放電によるボンバード処理を行
った場合の調査結果についても併記する。
【0034】
【表2】
【0035】同表から明らかなように、SiNx 系セラミ
ック被膜の被成に先立ち、本発明に従う前処理を施した
場合には、 800℃で3時間の高温での歪取り焼鈍後で
も、被膜密着性は極めて良好で、しかも優れた鉄損特性
を得ることができた。
【0036】
【発明の効果】かくして、本発明によれば、含Al一方向
性けい素鋼板の表面近傍に濃化したAl系酸化物について
も効果的に除去することができ、ひいては表面平滑化に
よる鉄損の低減効果を十分に発現させ得ると共に、被膜
密着性を格段に向上させることができ、その結果、歪取
り焼鈍後においても特性劣化が無くかつ被膜密着性に優
れた超低鉄損一方向性けい素鋼板を安定して得ることが
できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に従い前処理を行った場合(同図右
側)および従来法に従い前処理を行った場合(同図左
側)におけるけい素鋼板の表面性状を示した図面代用写
真である。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 仕上焼鈍済みの膜無し一方向性けい素鋼
    板の表面に、直流マグネトロン・スパッタ法によってSi
    x 系セラミック被膜を成膜してなる超低鉄損一方向性
    けい素鋼板の製造方法において、 上記の成膜処理に先立ち、不活性ガスを用いたプラズマ
    雰囲気中にてボンバード処理を行うことによって、けい
    素鋼板表面の酸化物を除去することを特徴とする、歪取
    り焼鈍後の特性劣化が無くかつ被膜密着性に優れた超低
    鉄損一方向性けい素鋼板の製造方法。
  2. 【請求項2】 仕上焼鈍済みの膜無し一方向性けい素鋼
    板の表面に、直流マグネトロン・スパッタ法によってSi
    x 系セラミック被膜を成膜してなる超低鉄損一方向性
    けい素鋼板の製造方法において、 上記の成膜処理に先立ち、不活性ガスを用いたプラズマ
    雰囲気中にてボンバード処理を行うことによって、けい
    素鋼板表面の酸化物を除去すると共に、下地被膜として
    Cr,TiおよびNiのうちから選んだ1種または2種以上を
    含有する薄膜を0.001〜0.2 μm の厚みで被成すること
    を特徴とする、歪取り焼鈍後の特性劣化が無くかつ被膜
    密着性に優れた超低鉄損一方向性けい素鋼板の製造方
    法。
  3. 【請求項3】 請求項1または2において、不活性ガス
    がArガスを主体とするものであることを特徴とする、超
    低鉄損一方向性けい素鋼板の製造方法。
  4. 【請求項4】 請求項1,2または3において、プラズ
    マ励起源として5〜300MHz の高周波帯域を用いること
    を特徴とする、超低鉄損一方向性けい素鋼板の製造方
    法。
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