JP2002075473A - 光電変換素子および光電池 - Google Patents

光電変換素子および光電池

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JP2002075473A
JP2002075473A JP2000256025A JP2000256025A JP2002075473A JP 2002075473 A JP2002075473 A JP 2002075473A JP 2000256025 A JP2000256025 A JP 2000256025A JP 2000256025 A JP2000256025 A JP 2000256025A JP 2002075473 A JP2002075473 A JP 2002075473A
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JP2000256025A
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Shigeru Nakamura
茂 中村
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Fuji Photo Film Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】 変換効率が高く、耐久性が高い光電変換素子
及びこれを用いた光電池を提供する。 【解決手段】導電層10、感光層20、電荷輸送層30
および対極40を有する光電変換素子において、対極を
硼素ドープダイアモンド層を用いて構成し、硼素のドー
プ量が5,000ppm以上30,000ppm以下で
ある。又前記電荷輸送層にはピリジニウム塩、イミダゾ
リウム塩等の溶融塩を含有する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、色素により増感さ
れた半導体微粒子を用いた光電変換素子、およびこれを
用いた光電池に関する。
【0002】
【従来の技術】現在、太陽光発電は単結晶シリコン太陽
電池、多結晶シリコン太陽電池、アモルファスシリコン
太陽電池、テルル化カドミウムやセレン化インジウム銅
等の化合物太陽電池の改良が、実用化の主力技術となっ
ており、太陽光エネルギー変換効率として10%近い発
電効率が得られている。しかし、将来に向けてこれらを
普及させる上では、素材製造にかかるエネルギーコスト
が高く製品化への環境負荷が大きいこと、ユーザーにと
ってエネルギーペイバックタイムが長い等の問題点を克
服する必要がある。このため、低価格化を目指し、大面
積化も容易な有機材料をシリコンに替わる感光材料とし
て用いた太陽電池がこれまでに多く提案されてきたが、
エネルギー変換効率が1%以下と低く、耐久性も悪いと
いう問題があった。このような状況の中で、ネイチュア
(Nature)第353巻、737〜740頁(1991年)および米国
特許4927721号等に、色素によって増感された半導体微
粒子を用いた光電変換素子および太陽電池、ならびにこ
の作製に必要な材料および製造技術が開示された。提案
された電池は、ルテニウム錯体によって分光増感された
二酸化チタン多孔質薄膜を作用電極とする湿式太陽電池
である。この方式の第一の利点は二酸化チタン等の安価
な酸化物半導体を高純度まで精製する必要なしに用いる
ことができるため、安価な光電変換素子として提供でき
る可能性が有る点であり、第二には用いられる色素の吸
収がブロードであり、広い可視光の波長域にわたって太
陽光を電気に変換できることであり、第三にはエネルギ
ー変換効率が高いことである。しかしながら、この電池
で作用極と組み合わせて使用する対極の材料について
は、性能上の要請のみならず、これと接する電荷輸送材
料に対する化学的安定性も要求される。従来、白金微粒
子を表面に有する導電性酸化物層、白金微粒子を含むグ
ラファイト層などが、これらの条件を満たす対極として
使用されてきた。しかしながら、これらの対極は、実際
的なモジュールとして太陽光下で作動させると、序々に
電極としての性能の劣化が起きることが判り、こうした
作動条件下でも長期の使用に耐え得る電極材料が望まれ
ていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、エネ
ルギー変換効率と耐久性に優れた色素増感光電変換素子
および光電池を提供することである。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明の課題は、下記の
本発明を特定する事項およびその好ましい態様によって
達成された。
【0005】(1)導電層、感光層、電荷輸送層および
対極を有する光電変換素子において、対極が硼素をドー
プしたダイアモンドの層を有することを特徴とする光電
変換素子。 (2)前記硼素のドープ量が5、000ppmから3
0、000ppmであることを特徴とする上記(1)に
記載の光電変換素子。 (3)前記硼素のドープ量が7、500ppmから2
0、000ppmであることを特徴とする上記(1)又
は(2)に記載の光電変換素子。 (4)前記電荷輸送層が溶融塩を含有することを特徴と
する上記(1)〜(3)に記載の光電変換素子。 (5)上記(1)〜(4)のいずれかの光電変換素子を
用いた光電池。 (6)上記(1)〜(4)のいずれかの光電変換素子を
用いた太陽電池モジュール。
【0006】
【発明の実施の形態】〔1〕光電変換素子 本発明の光電変換素子の詳細を図を用いて説明する。図
1は、本発明の好ましい一態様の構造を示す部分断面図
である。図1において光電変換素子は、導電層10、下塗
り層60、感光層20、電荷輸送層30、対極導電層40の順に
積層された各層からなり、前記感光層20は色素22とそれ
によって増感された半導体微粒子21と当該半導体微粒子
21が有する空隙に浸透した電荷輸送材料23とから構成さ
れる。電荷輸送材料23は、電荷輸送層30に用いる材料と
同じ成分からなる。また光電変換素子に強度を付与する
ため、導電層10および/または対極導電層40の下地とし
て、基板50を設けてもよい。以下本発明では、導電層10
および任意で設ける基板50からなる層を「導電性支持
体」、対極導電層40および任意で設ける基板50からなる
層を「対極」と呼ぶ。なお、図1中の導電層10、対極導
電層40、基板50は、それぞれ透明導電層10a、透明対極
導電層40a、透明基板50aであっても良い。本発明は、対
極40の材料として、硼素をドープしたダイヤモンドを用
いることを特徴とする。この光電変換素子を外部負荷に
接続して電気的仕事をさせる目的(発電)で作られたも
のが光電池であり、光学的情報のセンシングを目的に作
られたものが光センサーである。光電池のうち、電荷輸
送材料23が主としてイオン輸送材料からなる場合を特に
光電気化学電池と呼び、また、太陽光による発電を主目
的とする場合を太陽電池と呼ぶ。
【0007】図1に示す本発明の光電変換素子におい
て、半導体微粒子がn型である場合、色素22により増感
された半導体微粒子21を含む感光層20に入射した光は色
素22を励起し、色素22の中の励起されて高エネルギーレ
ベルに遷移した電子が半導体微粒子21の伝導帯に渡さ
れ、さらに拡散により導電層10に到達する。このとき色
素22などの分子は酸化体となっている。光電池において
は、導電層10中の電子が外部回路で仕事をしながら対極
導電層40および電荷輸送層30を経て色素22などの酸化体
に戻り、色素22が再生する。感光層20は負極(光アノー
ド)として働き、対極導電層40は正極として働く。それ
ぞれの層の境界(例えば導電層10と感光層20との境界、
感光層20と電荷輸送層30との境界、電荷輸送層30と対極
導電層40との境界など)では、各層の構成成分同士が相
互に拡散混合していてもよい。以下各層について詳細に
説明する。
【0008】(A)導電性支持体 導電性支持体は、(1)導電層の単層、または(2)導
電層および基板の2層からなる。(1)の場合は、導電
層として強度や密封性が十分に保たれるような材料が使
用され、例えば、金属材料(白金、金、銀、銅、亜鉛、
チタン、アルミニウム等またはこれらを含む合金)を用
いることができる。(2)の場合、感光層側に導電剤を
含む導電層を有する基板を使用することができる。好ま
しい導電剤としては金属(例えば白金)、炭素、または
導電性金属酸化物(インジウム−スズ複合酸化物、酸化
スズにフッ素またはアンチモンをドープしたもの等)が
挙げられる。導電層の厚さは0.02〜10μm程度が好まし
い。
【0009】導電性支持体は表面抵抗が低い程よい。好
ましい表面抵抗の範囲は50Ω/□以下であり、さらに好
ましくは20Ω/□以下である。
【0010】導電性支持体側から光を照射する場合に
は、導電性支持体は実質的に透明であるのが好ましい。
実質的に透明であるとは、可視〜近赤外領域(400〜120
0nm)の光の一部または全域において透過率が10%以上
であることを意味し、50%以上であるのが好ましく、80
%以上がより好ましい。特に、感光層が感度を有する波
長域の透過率が高いことが好ましい。
【0011】透明導電性支持体としては、ガラスまたは
プラスチック等の透明基板の表面に導電性金属酸化物か
らなる透明導電層を塗布または蒸着等により形成したも
のが好ましい。透明導電層として好ましいものは、フッ
素もしくはアンチモンをドーピングした二酸化スズある
いはインジウム−スズ酸化物(ITO)である。透明基板
には低コストと強度の点で有利なソーダガラス、アルカ
リ溶出の影響のない無アルカリガラスなどのガラス基板
のほか、透明ポリマーフィルムを用いることができる。
透明ポリマーフィルムの材料としては、トリアセチルセ
ルロース(TAC)、ポリエチレンテレフタレート(PE
T)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、シンジオタク
チックポリスチレン(SPS)、ポリフェニレンスルフィ
ド(PPS)、ポリカーボネート(PC)、ポリアリレート
(PAr)、ポリスルフォン(PSF)、ポリエステルスルフ
ォン(PES)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルイミド
(PEI)、環状ポリオレフィン、ブロム化フェノキシ樹
脂等がある。十分な透明性を確保するために、導電性金
属酸化物の塗布量はガラスまたはプラスチックの支持体
1m2当たり0.01〜100gとするのが好ましい。
【0012】透明導電性支持体の抵抗を下げる目的で金
属リードを用いるのが好ましい。金属リードの材質は白
金、金、ニッケル、チタン、アルミニウム、銅、銀、等
の金属が好ましい。金属リードは透明基板に蒸着、スパ
ッタリング等によって設置し、その上に導電性の酸化ス
ズ又はITO膜などからなる透明導電層を設けるのが好ま
しい。金属リードを設置することによる入射光量の低下
は、好ましくは10%以内、より好ましくは1〜5%とす
る。
【0013】(B)感光層 感光層において、半導体は感光体として作用し、光を吸
収して電荷分離を行い、電子と正孔を生ずる。色素増感
された半導体では、光吸収およびこれによる電子および
正孔の発生は主として色素において起こり、半導体微粒
子はこの電子(または正孔)を受け取り、伝達する役割
を担う。本発明で用いる半導体は、光励起下で伝導体電
子がキャリアーとなり、アノード電流を与えるn型半導
体であることが好ましい。
【0014】(1)半導体 半導体としては、シリコン、ゲルマニウムのような単体
半導体、周期律表のIII-V族元素の化合物半導体、金属
のカルコゲナイド(例えば酸化物、硫化物、セレン化
物、またはそれらの複合物等)、またはペロブスカイト
構造を有する化合物(例えばチタン酸ストロンチウム、
チタン酸カルシウム、チタン酸ナトリウム、チタン酸バ
リウム、ニオブ酸カリウム等)等を使用することができ
る。
【0015】好ましい金属のカルコゲナイドとして、チ
タン、スズ、亜鉛、鉄、タングステン、ジルコニウム、
ハフニウム、ストロンチウム、インジウム、セリウム、
イットリウム、ランタン、バナジウム、ニオブ、または
タンタルの酸化物、カドミウム、亜鉛、鉛、銀、アンチ
モンまたはビスマスの硫化物、カドミウムまたは鉛のセ
レン化物、カドミウムのテルル化物等が挙げられる。他
の化合物半導体としては亜鉛、ガリウム、インジウム、
カドミウム等のリン化物、ガリウム−ヒ素または銅−イ
ンジウムのセレン化物、銅−インジウムの硫化物等が挙
げられる。さらには、MxOySzまたはM1xM2yOz
(M、M1およびM2はそれぞれ金属元素、Oは酸素、x、
y、zは価数が中性になる組み合わせの数)の様な複合物
も好ましく用いることができる。
【0016】本発明に用いる半導体の好ましい具体例
は、Si、TiO2、SnO2、Fe2O3、WO3、ZnO、Nb2O5、CdS、Z
nS、PbS、Bi2S3、CdSe、CdTe、SrTiO3、GaP、InP、GaA
s、CuInS2、CuInSe2等であり、より好ましくはTiO2、Zn
O、SnO2、Fe2O3、WO3、Nb2O5、CdS、PbS、CdSe、SrTi
O3、InP、GaAs、CuInS2またはCuInSe2であり、特に好ま
しくはTiO2またはNb2O5であり、最も好ましくはTiO2
ある。TiO2は、アナターゼ型結晶を70%以上含むTiO2
好ましく、特に好ましくは100%アナターゼ型結晶のTiO2
である。また、これらの半導体中の電子電導性を上げる
目的で金属をドープすることも有効である。ドープする
金属としては、2価及び3価の金属が好ましい。半導体か
ら電荷輸送層へ逆電流が流れるのを防止する目的で、半
導体に1価の金属をドープすることも有効である。
【0017】本発明に用いる半導体は、単結晶でも多結
晶でもよいが、製造コスト、原材料確保、エネルギーペ
イバックタイム等の観点からは多結晶が好ましく、半導
体微粒子からなる多孔質膜が特に好ましい。また、一部
アモルファス部分を含んでいてもよい。
【0018】半導体微粒子の粒径は、一般に10-9〜1
-6m(1nm〜1μm)のレベルであるが、投影面積を
円に換算したときの直径から求めた一次粒子の平均粒径
は5〜200nmであるのが好ましく、8〜100nmがより好ま
しい。また分散液中の半導体微粒子(二次粒子)の平均
粒径は0.01〜30μmが好ましい。粒径分布の異なる2種
類以上の微粒子を混合してもよく、この場合小さい粒子
の平均サイズは25nm以下であるのが好ましく、より好ま
しくは10nm以下である。入射光を散乱させて光捕獲率を
向上させる目的で、粒径の大きな、例えば100nm〜300nm
程度の半導体粒子を混合することも好ましい。
【0019】半導体微粒子の種類も異なる2種以上の混
合であってもよい。2種以上の半導体微粒子を混合して
使用する場合、1種は、TiO2、ZnO、Nb2O5もしくはSrTi
O3であることが好ましい。またもう1種としてはSnO2
Fe2O3、WO3であることが好ましい。さらに好ましい組み
合わせとしては、ZnOとSnO2、ZnOとWO3またはZnO、SnO2
とWO3などの組み合わせを挙げることができる。2種以
上の半導体微粒子を混合して用いる場合、それぞれの粒
径が異なっていても良い。特に上記1種目に挙げた半導
体微粒子の粒径が大きく、2種目として挙げた半導体微
粒子が小さい組み合わせが好ましい。好ましくは、大き
い粒径の粒子が100nm以上で、小さい粒径の粒子が15nm
以下の組み合わせである。
【0020】半導体微粒子の作製法としては、作花済夫
の「ゾル−ゲル法の科学」アグネ承風社(1998年)、技
術情報協会の「ゾル−ゲル法による薄膜コーティング技
術」(1995年)等に記載のゾル−ゲル法、杉本忠夫の
「新合成法ゲル−ゾル法による単分散粒子の合成とサイ
ズ形態制御」、まてりあ,第35巻,第9号,1012〜1018
頁(1996年)に記載のゲル−ゾル法が好ましい。またDe
gussa社が開発した塩化物を酸水素塩中で高温加水分解
により酸化物を作製する方法も好ましい。
【0021】半導体微粒子が酸化チタンの場合、上記ゾ
ル-ゲル法、ゲル−ゾル法、塩化物の酸水素塩中での高
温加水分解法はいずれも好ましいが、さらに清野学の
「酸化チタン物性と応用技術」技報堂出版(1997年)に
記載の硫酸法および塩素法を用いることもできる。さら
にゾル−ゲル法として、バーブ(Barbe)らのジャーナ
ル・オブ・アメリカン・セラミック・ソサエティー,第
80巻,第12号,3157〜3171頁(1997年)に記載の方法
や、バーンサイド(Burnside)らのケミストリー・オブ
・マテリアルズ,第10巻,第9号,2419〜2425頁に記載
の方法も好ましい。
【0022】(2)半導体微粒子層 半導体微粒子を導電性支持体上に塗布するには、半導体
微粒子の分散液またはコロイド溶液を導電性支持体上に
塗布する方法の他に、前述のゾル−ゲル法等を使用する
こともできる。光電変換素子の量産化、半導体微粒子液
の物性、導電性支持体の融通性等を考慮した場合、湿式
の製膜方法が比較的有利である。湿式の製膜方法として
は、塗布法、印刷法、電解析出法および電着法が代表的
である。また、金属を酸化する方法、金属溶液から配位
子交換等で液相にて析出させる方法(LPD法)、スパッタ
等で蒸着する方法、CVD法、あるいは加温した基板上に
熱分解する金属酸化物プレカーサーを吹き付けて金属酸
化物を形成するSPD法を利用することもできる。
【0023】半導体微粒子の分散液を作製する方法とし
ては、前述のゾル−ゲル法の他に、乳鉢ですり潰す方
法、ミルを使って粉砕しながら分散する方法、あるいは
半導体を合成する際に溶媒中で微粒子として析出させそ
のまま使用する方法等が挙げられる。
【0024】分散媒としては、水または各種の有機溶媒
(例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコ
ール、シトロネロール、ターピネオール、ジクロロメタ
ン、アセトン、アセトニトリル、酢酸エチル等)が挙げ
られる。分散の際、必要に応じて例えばポリエチレング
リコール、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメ
チルセルロースのようなポリマー、界面活性剤、酸、ま
たはキレート剤等を分散助剤として用いてもよい。ポリ
エチレングリコールの分子量を変えることで、分散液の
粘度が調節可能となり、さらに剥がれにくい半導体層を
形成したり、半導体層の空隙率をコントロールできるの
で、ポリエチレングリコールを添加することは好まし
い。
【0025】塗布方法としては、アプリケーション(塗
布液適用)システムとしてローラ法、ディップ法など、
メータリング(塗布量制御)システムとしてエアーナイ
フ法、ブレード法など、またアプリケーションとメータ
リングを同一部分で行うシステムとして、特公昭58-458
9号公報に開示されているワイヤーバー法、米国特許268
1294号、同2761419号、同2761791号などの各公報に記載
のスライドホッパー法、エクストルージョン法及びカー
テンコート法が好ましい。また、そのほかの汎用手段と
してスピンコート法やスプレーコート法も好ましい。さ
らに、湿式印刷方法も好ましく、凸版、オフセットおよ
びグラビアの3大印刷法をはじめ、凹版、ゴム版、スク
リーン印刷などが好ましい。これらの中から、液粘度や
ウェット厚さに応じて、好ましい製膜方法を選択でき
る。
【0026】半導体微粒子の層は単層に限らず、粒径の
違った半導体微粒子の分散液を多層塗布したり、種類が
異なる半導体微粒子(あるいは異なるバインダー、添加
剤)を含有する塗布層を多層塗布したりすることもでき
る。一度の塗布で膜厚が不足の場合にも多層塗布は有効
である。
【0027】一般に半導体微粒子層の厚さ(感光層の厚
さと同じ)が厚くなるほど単位投影面積当たりの担持色
素量が増えるため、光の捕獲率が高くなるが、生成した
電子の拡散距離が増すため電荷再結合によるロスも大き
くなる。したがって、半導体微粒子層の好ましい厚さは
0.1〜100μmである。光電池に用いる場合、半導体微粒
子層の厚さは1〜30μmが好ましく、2〜25μmがより好
ましい。半導体微粒子の支持体1m2当たり塗布量は0.5
〜100gが好ましく、3〜50gがより好ましい。
【0028】半導体微粒子を導電性支持体上に塗布した
後、半導体微粒子同士を電子的に接触させるとともに、
塗膜強度の向上や支持体との密着性を向上させるため
に、加熱処理するのが好ましい。好ましい加熱温度の範
囲は40℃以上700℃以下であり、より好ましくは100℃以
上600℃以下である。また加熱時間は10分〜10時間程度
である。ポリマーフィルムのように融点や軟化点の低い
支持体を用いる場合、高温処理は支持体の劣化を招くた
め、好ましくない。またコストの観点からもできる限り
低温(例えば50℃〜350℃)であるのが好ましい。加熱
処理温度の低温化は、5nm以下の小さい半導体微粒子を
用いること、鉱酸、金属酸化物プレカーサーの存在下で
加熱処理することなどにより可能となり、また、紫外
線、赤外線、マイクロ波などの照射を加えることや電
界、超音波を印加することによって行うことができる。
これらの各手段は、適宜組み合わせて用いることもでき
る。同時に不要な有機物などを除去する目的で、上記の
照射や印加のほか加熱、減圧、酸素プラズマ処理、純水
洗浄、溶剤洗浄、ガス洗浄などを適宜組み合わせて併用
することが好ましい。
【0029】加熱処理後、半導体微粒子の表面積を増大
させたり、半導体微粒子近傍の純度を高め、色素から半
導体微粒子への電子注入効率を高める目的で、例えば四
塩化チタン水溶液を用いた化学メッキ処理や三塩化チタ
ン水溶液を用いた電気化学的メッキ処理を行ってもよ
い。 また、半導体微粒子から電荷輸送層へ逆電流が流
れるのを防止する目的で、粒子表面に色素以外の電子電
導性の低い有機物を吸着させることも有効である。吸着
させる有機物としては疎水性基を持つ有機化合物が好ま
しい。
【0030】半導体微粒子層は、多くの色素を吸着する
ことができるように大きい表面積を有することが好まし
い。半導体微粒子の層を支持体上に塗布した状態での表
面積は、投影面積に対して10倍以上であるのが好まし
く、さらに100倍以上であるのが好ましい。この上限は
特に制限はないが、通常1000倍程度である。
【0031】(3)色素 感光層に用いる増感色素は、可視域や近赤外域に吸収を
有し、半導体を増感しうる化合物なら任意に用いること
ができるが、有機金属錯体色素、メチン色素、ポルフィ
リン系色素またはフタロシアニン系色素が好ましい。ま
た、光電変換の波長域をできるだけ広くし、かつ変換効
率を上げるため、二種類以上の色素を併用または混合す
ることができる。この場合、目的とする光源の波長域と
強度分布に合わせるように、併用または混合する色素と
その割合を選ぶことができる。
【0032】こうした色素は、半導体微粒子の表面に対
して吸着能力の有る適当な結合基(interlocking grou
p)を有しているのが好ましい。好ましい結合基として
は、COOH基、OH基、SO3H基、-P(O)(OH)2基または-OP
(O)(OH)2基のような酸性基、あるいはオキシム、ジオ
キシム、ヒドロキシキノリン、サリチレートまたはα-
ケトエノレートのようなπ伝導性構造を有するキレート
化基が挙げられる。なかでもCOOH基、-P(O)(OH)2基ま
たは-OP(O)(OH)2基が特に好ましい。これらの基は、ア
ルカリ金属等と塩を形成していてもよく、また分子内塩
を形成していてもよい。またポリメチン色素の場合、メ
チン鎖がスクアリリウム環やクロコニウム環を形成する
場合のように酸性基を含有するなら、この部分を結合基
としてもよい。
【0033】以下、感光層に用いる好ましい増感色素を
具体的に説明する。 (a)有機金属錯体色素 色素が金属錯体色素である場合、金属フタロシアニン色
素、金属ポルフィリン色素またはルテニウム錯体色素が
好ましく、ルテニウム錯体色素が特に好ましい。ルテニ
ウム錯体色素としては、例えば米国特許4927721号、同4
684537号、同5084365号、同5350644号、同5463057号、
同5525440号、特開平7-249790号、特表平10-504512号、
世界特許98/50393号、特開2000-26487号等の各公報に記
載の錯体色素が挙げられる。
【0034】さらに本発明で用いるルテニウム錯体色素
は、下記一般式(I)により表される色素が好ましい。 (A1)pRu(B-a)(B-b)(B-c) ・・・(I) 一般式(I)において、A1は1または2座の配位子を
表し、Cl、SCN、H2O、Br、I、CN、NCOおよびSeCN、な
らびにβ−ジケトン類、シュウ酸およびジチオカルバミ
ン酸の誘導体からなる群から選ばれた配位子が好まし
い。pは0〜3の整数である。B-a、B-bおよびB-cはそれ
ぞれ独立に下記化学式B-1〜B-10により表される化合物
から選ばれた有機配位子を表す。B-a、B-bおよびB-cは
同一でも異なっていてもよく、いずれか1つまたは2つ
でもよい。
【0035】
【化1】
【0036】上記の各化学式において、Raは水素原子ま
たは置換基を表し、置換基としてはたとえば、ハロゲン
原子、炭素原子数1〜12の置換または無置換のアルキル
基、炭素原子数7〜12の置換または無置換のアラルキル
基、炭素原子数6〜12の置換または無置換のアリール
基、あるいは前述の酸性基(これらの酸性基は塩を形成
していてもよい)やキレート化基が挙げられ、アルキル
基およびアラルキル基のアルキル部分は直鎖状でも分岐
状でもよく、またアリール基およびアラルキル基のアリ
ール部分は単環でも多環(縮合環、環集合)でもよい。
【0037】有機金属錯体色素の好ましい具体例を以下
のR−1〜R−17に示すが、本発明はこれらに限定さ
れるものではない。
【0038】
【化2】
【0039】
【化3】
【0040】
【化4】
【0041】(b)メチン色素 本発明に使用する色素の好ましいメチン色素は、シアニ
ン色素、メロシアニン色素、スクワリリウム色素などの
ポリメチン色素である。本発明で好ましく用いられるポ
リメチン色素の例は、特開平11−35836号、特開
平11−67285号、特開平11−86916号、特
開平11−97725号、特開平11−158395
号、特開平11−163378号、特開平11−214
730号、特開平11−214731号、特開平11−
238905号、特開2000−26487号、欧州特
許892411号、同911841号および同9910
92号の各明細書に記載の色素である。好ましいメチン
色素の具体例を下に示す。
【0042】
【化5】
【0043】(4)半導体微粒子への色素の吸着 半導体微粒子に色素を吸着させるには、色素の溶液中に
良く乾燥した半導体微粒子層を有する導電性支持体を浸
漬するか、色素の溶液を半導体微粒子層に塗布する方法
を用いることができる。前者の場合、浸漬法、ディップ
法、ローラ法、エアーナイフ法等が使用可能である。浸
漬法の場合、色素の吸着は室温で行ってもよいし、特開
平7-249790号に記載されているように加熱還流して行っ
てもよい。また後者の塗布方法としては、ワイヤーバー
法、スライドホッパー法、エクストルージョン法、カー
テン法、スピン法、スプレー法等がある。色素を溶解す
る溶媒として好ましいのは、例えば、アルコール類(メ
タノール、エタノール、t-ブタノール、ベンジルアルコ
ール等)、ニトリル類(アセトニトリル、プロピオニト
リル、3-メトキシプロピオニトリル等)、ニトロメタ
ン、ハロゲン化炭化水素(ジクロロメタン、ジクロロエ
タン、クロロホルム、クロロベンゼン等)、エーテル類
(ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等)、ジメチ
ルスルホキシド、アミド類(N,N-ジメチルホルムアミ
ド、N,N-ジメチルアセタミド等)、N-メチルピロリド
ン、1,3-ジメチルイミダゾリジノン、3-メチルオキサゾ
リジノン、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチル等)、
炭酸エステル類(炭酸ジエチル、炭酸エチレン、炭酸プ
ロピレン等)、ケトン類(アセトン、2-ブタノン、シク
ロヘキサノン等)、炭化水素(へキサン、石油エーテ
ル、ベンゼン、トルエン等)やこれらの混合溶媒が挙げ
られる。
【0044】色素の全吸着量は、多孔質半導体電極基板
の単位面積(1m2)当たり0.01〜100mmolが好ましい。
また色素の半導体微粒子に対する吸着量は、半導体微粒
子1g当たり0.01〜1mmolの範囲であるのが好ましい。
このような色素の吸着量とすることにより半導体におけ
る増感効果が十分に得られる。これに対し、色素が少な
すぎると増感効果が不十分となり、また色素が多すぎる
と半導体に付着していない色素が浮遊し、増感効果を低
減させる原因となる。色素の吸着量を増大させるために
は、吸着前に加熱処理を行うのが好ましい。加熱処理
後、半導体微粒子表面に水が吸着するのを避けるため、
常温に戻さずに、半導体電極基板の温度が60〜150℃の
間で素早く色素の吸着操作を行うのが好ましい。また、
色素間の凝集などの相互作用を低減する目的で、無色の
化合物を色素に添加し、半導体微粒子に共吸着させても
よい。この目的で有効な化合物は界面活性な性質や構造
をもった化合物であり、例えば、カルボキシル基を有す
るステロイド化合物(例えばケノデオキシコール酸)や
下記の例のようなスルホン酸塩類が挙げられる。
【0045】
【化6】
【0046】未吸着の色素は、吸着後速やかに洗浄によ
り除去するのが好ましい。洗浄は、湿式洗浄槽を使い、
アセトニトリル等の極性溶剤、アルコール系溶剤のよう
な有機溶媒で洗浄を行うのが好ましい。また、色素を吸
着した後にアミン類や4級塩を用いて半導体微粒子の表
面を処理してもよい。好ましいアミン類としてはピリジ
ン、4-t-ブチルピリジン、ポリビニルピリジン等が挙げ
られ、好ましい4級塩としてはテトロブチルアンモニウ
ムヨージド、テトラヘキシルアンモニウムヨージド等が
挙げられる。これらが液体の場合はそのまま用いてもよ
いし、有機溶媒に溶解して用いてもよい。
【0047】(C)電荷輸送層 電荷輸送層は、色素の酸化体に電子を補充する機能を有
する電荷輸送材料を含有する層である。本発明で用いる
ことのできる代表的な電荷輸送材料の例としては、(i)
イオン輸送材料として、酸化還元対のイオンが溶解した
溶液(電解液)、酸化還元対の溶液をポリマーマトリク
スのゲルに含浸したいわゆるゲル電解質、酸化還元対イ
オンを含有する溶融塩電解質、さらには固体電解質が挙
げられ、これらの電解質を含む組成物〈電解質組成物〉
を電荷輸送層に用いることができる。また、イオンがか
かわる電荷輸送材料のほかに、(ii)固体中のキャリアー
移動がかかわる電荷輸送材料として、電子輸送材料や正
孔(ホール)輸送材料を用いることもできる。これらの
電荷輸送材料は、併用することができる。
【0048】(1)溶融塩電解質 溶融塩電解質は、光電変換効率と耐久性の両立という観
点から特に好ましい。溶融塩電解質とは、室温において
液状であるか、または低融点の電解質であり、例えばWO
95/18456号、特開平8-259543号などの明細書や、電気化
学,第65巻,11号,923頁(1997年)などに記載されて
いるピリジニウム塩、イミダゾリウム塩、トリアゾリウ
ム塩等の既知の電解質を挙げることができる。100℃
以下、特に室温付近において液状となる溶融塩が好まし
い。
【0049】好ましく用いることのできる溶融塩として
は、下記一般式(Y-a)、(Y-b)及び(Y-c)のいずれ
かにより表されるものが挙げられる。
【0050】
【化7】
【0051】一般式(Y-a)中、Qy1は窒素原子と共に5
又は6員環の芳香族カチオンを形成しうる原子団を表
す。Qy1は炭素原子、水素原子、窒素原子、酸素原子及
び硫黄原子からなる群から選ばれる1種以上の原子によ
り構成されるのが好ましい。Qy 1により形成される5員
環は、、オキサゾール環、チアゾール環、イミダゾール
環、ピラゾール環、イソオキサゾール環、チアジアゾー
ル環、オキサジアゾール環、トリアゾール環、インドー
ル環またはピロール環の各カチオン型であるのが好まし
く、オキサゾール環、チアゾール環又はイミダゾール環
の各カチオン型であるのがより好ましく、オキサゾール
環又はイミダゾール環の各カチオン型であるのが特に好
ましい。Qy1により形成される6員環は、ピリジン環、
ピリミジン環、ピリダジン環、ピラジン環又はトリアジ
ン環の各カチオン型であるのが好ましく、ピリジニウム
環であるのがより好ましい。
【0052】一般式(Y-b)中、Ay1は窒素原子又はリン
原子を表す。
【0053】一般式(Y-a)、(Y-b)及び(Y-c)中のR
y1〜Ry6はそれぞれ独立に置換又は無置換のアルキル基
(好ましくは炭素原子数1〜24、直鎖状であっても分岐
状であっても、また環式であってもよく、例えばメチル
基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ペンチル
基、ヘキシル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、t-
オクチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、
2-ヘキシルデシル基、オクタデシル基、シクロヘキシル
基、シクロペンチル基等)、或いは置換又は無置換のア
ルケニル基(好ましくは炭素原子数2〜24、直鎖状であ
っても分岐状であってもよく、例えばビニル基、アリル
基等)を表し、より好ましくは炭素原子数2〜18のアル
キル基又は炭素原子数2〜18のアルケニル基であり、特
に好ましくは炭素原子数2〜6のアルキル基である。
【0054】また、一般式(Y-b)中のRy1〜Ry4のうち
2つ以上が互いに連結してAy1を含む非芳香族環を形成
してもよく、一般式(Y-c)中のRy1〜Ry6のうち2つ以
上が互いに連結して環構造を形成してもよい。
【0055】一般式(Y-a)、(Y-b)及び(Y-c)中のQ
y1及びRy1〜Ry6は置換基を有していてもよく、好ましい
置換基の例としては、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I
等)、シアノ基、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、
エトキシ基、メトキシエトキシ基、メトキシエトキシエ
トキシ基等)、アリーロキシ基(例えば、フェノキシ基
等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチル
チオ基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、エトキ
シカルボニル基等)、炭酸エステル基(例えば、エトキ
シカルボニルオキシ基等)、アシル基(例えば、アセチ
ル基、プロピオニル基、ベンゾイル基等)、スルホニル
基(例えば、メタンスルホニル基、ベンゼンスルホニル
基等)、アシルオキシ基(例えば、アセトキシ基、ベン
ゾイルオキシ基等)、スルホニルオキシ基(例えば、メ
タンスルホニルオキシ基、トルエンスルホニルオキシ基
等)、ホスホニル基(例えば、ジエチルホスホニル基
等)、アミド基(例えば、アセチルアミノ基、ベンゾイ
ルアミノ基等)、カルバモイル基(例えば、N,N-ジメチ
ルカルバモイル基等)、アルキル基(例えば、メチル
基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプ
ロピル基、ブチル基、2-カルボキシエチル基、ベンジル
基等)、アリール基(例えば、フェニル基、トルイル基
等)、複素環基(例えば、ピリジル基、イミダゾリル
基、フラニル基等)、アルケニル基(例えば、ビニル
基、1-プロペニル基等)、シリル基、シリルオキシ基等
が挙げられる。
【0056】一般式(Y-a)、(Y-b)又は(Y-c)によ
り表される化合物は、Qy1又はRy1〜R y6を介して多量体
を形成してもよい。
【0057】これらの溶融塩は、単独で使用しても、2
種以上混合して使用してもよく、また、ヨウ素アニオン
を他のアニオンで置き換えた溶融塩と併用することもで
きる。ヨウ素アニオンと置き換えるアニオンとしては、
ハロゲン化物イオン(Cl-、Br-等)、SCN-、BF4 -、P
F6 -、ClO4 -、(CF3SO2)2N-、(CF3CF2SO2)2N-、CH3SO3 -
CF3SO3 -、CF3COO-、Ph4B-、(CF3SO2)3C-等が好ましい例
として挙げられ、SCN-、CF3SO3 -、CF3COO-、(CF3SO2)2N
-又はBF4 -であるのがより好ましい。また、LiIなど他の
ヨウ素塩やCF3COOLi、CF3COONa、LiSCN、NaSCNなどのア
ルカリ金属塩を添加することもできる。アルカリ金属塩
の添加量は、電解質組成物全体の0.02〜2質量%程度で
あるのが好ましく、0.1〜1質量%がさらに好ましい。
【0058】本発明で好ましく用いられる溶融塩の具体
例を以下に挙げるが、これらに限定されるわけではな
い。
【0059】
【化8】
【0060】
【化9】
【0061】
【化10】
【0062】
【化11】
【0063】
【化12】
【0064】
【化13】
【0065】上記溶融塩電解質は常温で溶融状態である
ものが好ましく、溶媒を用いない方が好ましい。後述す
る溶媒を添加しても構わないが、溶融塩の含有量は電解
質組成物全体に対して50質量%以上であるのが好まし
く、90質量%以上であるのが特に好ましい。また、塩の
うち、50質量%以上がヨウ素塩であることが好ましい。
【0066】上記電解質組成物にはヨウ素を添加するの
が好ましく、この場合、ヨウ素の含有量は、電解質組成
物全体に対して0.1〜20質量%であるのが好ましく、0.5
〜5質量%であるのがより好ましい。
【0067】(2)電解液 電荷輸送層に電解液を使用する場合、電解液は電解質、
溶媒、および添加物から構成されることが好ましい。本
発明の電解質はI2とヨウ化物の組み合わせ(ヨウ化物
としてはLiI、NaI、KI、CsI、CaI2 など
の金属ヨウ化物、あるいはテトラアルキルアンモニウム
ヨーダイド、ピリジニウムヨーダイド、イミダゾリウム
ヨーダイドなど4級アンモニウム化合物のヨウ素塩な
ど)、Br 2と臭化物の組み合わせ(臭化物としてはL
iBr、NaBr、KBr、CsBr、CaBr2 など
の金属臭化物、あるいはテトラアルキルアンモニウムブ
ロマイド、ピリジニウムブロマイドなど4級アンモニウ
ム化合物の臭素塩など)のほか、フェロシアン酸塩−フ
ェリシアン酸塩やフェロセン−フェリシニウムイオンな
どの金属錯体、ポリ硫化ナトリウム、アルキルチオール
−アルキルジスルフィドなどのイオウ化合物、ビオロゲ
ン色素、ヒドロキノン−キノンなどを用いることができ
る。この中でもI2とLiIやピリジニウムヨーダイド、
イミダゾリウムヨーダイドなど4級アンモニウム化合物
のヨウ素塩を組み合わせた電解質が好ましい。上述した
電解質は混合して用いてもよい。
【0068】好ましい電解質濃度は0.1M以上10M以下で
あり、さらに好ましくは0.2M以上4M以下である。ま
た、電解液にヨウ素を添加する場合の好ましいヨウ素の
添加濃度は0.01M以上0.5M以下である。
【0069】電解質に使用する溶媒は、粘度が低くイオ
ン易動度を向上したり、もしくは誘電率が高く有効キャ
リアー濃度を向上したりして、優れたイオン伝導性を発
現できる化合物であることが望ましい。このような溶媒
としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネ
ートなどのカーボネート化合物、3−メチル−2−オキ
サゾリジノンなどの複素環化合物、ジオキサン、ジエチ
ルエーテルなどのエーテル化合物、エチレングリコール
ジアルキルエーテル、プロピレングリコールジアルキル
エーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテ
ル、ポリプロピレングリコールジアルキルエーテルなど
の鎖状エーテル類、メタノール、エタノール、エチレン
グリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコー
ルモノアルキルエーテル、ポリエチレングリコールモノ
アルキルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアル
キルエーテルなどのアルコール類、エチレングリコー
ル、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、
ポリプロピレングリコール、グリセリンなどの多価アル
コール類、アセトニトリル、グルタロジニトリル、メト
キシアセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリ
ルなどのニトリル化合物、ジメチルスルフォキシド、ス
ルフォランなど非プロトン極性物質、水などが挙げら
れ、これらを混合して用いることもできる。
【0070】また、本発明では、J. Am. Ceram. Soc .,
80 (12)3157-3171(1997)に記載されているようなtert-
ブチルピリジンや、2−ピコリン、2,6−ルチジン等
の塩基性化合物を前述の溶融塩電解質や電解液に添加す
ることが好ましい。塩基性化合物を添加する場合の好ま
しい濃度範囲は0.05M以上2M以下である。
【0071】(3)ゲル電解質 本発明において、電解質はポリマー添加、オイルゲル化
剤添加、多官能モノマー類を含む重合、ポリマーの架橋
反応等の手法により、前述の溶融塩電解質や電解液をゲ
ル化(固体化)させて使用することもできる。ポリマー
添加によりゲル化させる場合は、“Polymer Electrolyt
e Reviews-1および2”(J.R.MacCallumとC.A. Vincent
の共編、ELSEVIER APPLIED SCIENCE)に記載された化合
物を使用することができるが、特にポリアクリロニトリ
ル、ポリフッ化ビニリデンを好ましく使用することがで
きる。オイルゲル化剤添加によりゲル化させる場合は、
工業化学雑誌(J. Chem Soc. Japan, Ind. Chem.Se
c.), 46巻,779(1943), J. Am.Chem. Soc., 111巻,5542
(1989), J. Chem. Soc., Chem. Commun., (1993) 390,A
ngew. Chem. (英語板),35巻,1949(1996), Chem. Let
t., (1996), 885, J. Chm. Soc., Chem. Commun., (199
7),545に記載されている化合物を使用することができる
が、好ましい化合物は分子構造中にアミド構造を有する
化合物である。電解液をゲル化した例は特開平11−1
85863号に、溶融塩電解質をゲル化した例は特開2
000−58140号にに記載されており、本発明にも
適用できる。
【0072】また、ポリマーの架橋反応により電解質を
ゲル化させる場合、架橋可能な反応性基を含有するポリ
マーおよび架橋剤を併用することが望ましい。この場
合、好ましい架橋可能な反応性基は、アミノ基、含窒素
複素環(例えば、ピリジン環、イミダゾール環、チアゾ
ール環、オキサゾール環、トリアゾール環、モルホリン
環、ピペリジン環、ピペラジン環など)であり、好まし
い架橋剤は、窒素原子に対して求電子反応可能な2官能
以上の試薬(例えば、ハロゲン化アルキル類、ハロゲン
化アラルキル類、スルホン酸エステル類、酸無水物類、
酸クロライド類、イソシアネート化合物、α、β−不飽
和スルホニル基含有化合物、α、β−不飽和カルボニル
基含有化合物、α、β−不飽和ニトリル基含有化合物な
ど)であり、このゲル化には、特開2000−1707
6号及び同2000−86724号公報に記載されてい
る架橋技術も適用できる。
【0073】(5)電荷輸送層の形成 電荷輸送層の形成方法に関しては2通りの方法が考えら
れる。1つは感光層の上に先に対極を貼り合わせてお
き、その間隙に液状の電荷輸送層を挟み込む方法であ
る。もう1つは感光層上に直接、電荷輸送層を付与する
方法で、対極はその後付与することになる。
【0074】前者の場合、電荷輸送層の挟み込み方法と
して、浸漬等による毛管現象を利用する常圧プロセス、
または常圧より低い圧力にして間隙の気相を液相に置換
する真空プロセスを利用できる。
【0075】後者の場合、湿式の電荷輸送層においては
未乾燥のまま対極を付与し、エッジ部の液漏洩防止措置
を施すことになる。またゲル電解質の場合には湿式で塗
布して重合等の方法により固体化する方法があり、その
場合には乾燥、固定化した後に対極を付与することもで
きる。
【0076】(D)対極 本発明の対極は、対極導電層として硼素ドープ・ダイア
モンドの層を有することを特徴とし、支持体上に、この
層を設けることが好ましい。支持体としては、前述の導
電性支持体のところで述べた支持体(基板)を用いるこ
とができ、導電性支持体であることが好ましく、前述の
導電性支持体の他、支持体上に金属(例えば白金、金、
銀、銅、アルミニウム、マグネシウム、インジウム
等)、炭素、または導電性金属酸化物(インジウム−ス
ズ複合酸化物、フッ素ドープ酸化スズ、等)からなる導
電層を設けたもの、あるいは、良導電性のシリコンやII
I−V系半導体を支持体として用いることもできる。硼
素ドープ・ダイアモンドの作成法には、熱フィラメント
CVD法、電子衝撃CVD,プラズマCVD,光CVD
等の方法が挙げられる。好ましくは、マイクロ波プラズ
マCVD法であり、例えば「電気化学および工業物理化
学」67巻(4)389頁記載の方法を参考にすることがで
きる。硼素のドープ量は、10〜30、000ppmの範囲であ
り、好ましくは5、000ppmから30、000ppm、さらに
好ましくは6,000ppmから25,000ppm、特に好まし
くは7,500ppmから20,000ppmである。本発明のダ
イアモンド膜の厚さは0.2〜10μmが好ましく、より好
ましくは1〜5μmである。
【0077】(E)その他の層 対極と導電性支持体の短絡を防止するため、予め導電性
支持体と感光層の間に緻密な半導体の薄膜層を下塗り層
として塗設しておくことが好ましく、電荷輸送層に電子
輸送材料や正孔輸送材料を用いる場合は、特に有効であ
る。下塗り層として好ましいのは、TiO2、SnO2、Fe
2O3、WO3、ZnO、Nb2O5であり、さらに好ましくはTiO2
ある。下塗り層は、例えば、Electrochim. Acta 40, 64
3-652(1995)に記載されているスプレーパイロリシス法
の他、スパッタ法等により塗設することができる。下塗
り層の好ましい膜厚は5〜1000nmであり、10〜500nmがさ
らに好ましい。
【0078】また、電極として作用する導電性支持体と
対極の一方または両方の外側表面、導電層と基板の間ま
たは基板の中間に、保護層、反射防止層等の機能性層を
設けても良い。これらの機能性層の形成には、その材質
に応じて塗布法、蒸着法、貼り付け法等を用いることが
できる。
【0079】(F)光電変換素子の内部構造の具体例 上述のように、光電変換素子の内部構造は目的に合わせ
様々な形態が可能である。大きく2つに分ければ、両面
から光の入射が可能な構造と、片面からのみ可能な構造
が可能である。図2〜図9に本発明に好ましく適用でき
る光電変換素子の内部構造を例示する。
【0080】図2に示す本発明の光電変換素子の一態様
の内部構造の部分断面図は、透明導電層10aと透明対極
導電層40aとの間に、感光層20と、電荷輸送層30とを介
在させた態様を示しており、両面から光が入射する構造
となっている。図3に示した本発明の別の態様の光電変
換素子は、透明基板50a上に一部金属リード11を設け、
さらに透明導電層10aを設け、下塗り層60、感光層20、
電荷輸送層30および対極導電層40をこの順で設け、さら
に支持基板50を配置したものであり、導電層側から光が
入射する構造となっている。図4に示した本発明の光電
変換素子のさらに別の態様では、支持基板50上にさらに
導電層10を有し、下塗り層60を介して感光層20を設け、
さらに電荷輸送層30と透明対極導電層40aとを設け、一
部に金属リード11を設けた透明基板50aを、金属リード1
1側を内側にして配置したものであり、対極側から光が
入射する構造である。図5し示した態様では、透明基板
50a上に一部金属リード11を設け、さらに透明導電層10a
(または40a)を設けたもの1組の間に下塗り層60と感
光層20と電荷輸送層30とを介在させたものであり、両面
から光が入射する構造である。さらに、図6に示した態
様では、透明基板50a上に透明導電層10a、下塗り層60、
感光層20、電荷輸送層30および対極導電層40を設け、こ
の上に支持基板50を配置したものであり導電層側から光
が入射する構造である。図7に示した態様では、支持基
板50上に導電層10を有し、下塗り層60を介して感光層20
を設け、さらに電荷輸送層30および透明対極導電層40a
を設け、この上に透明基板50aを配置したものであり、
対極側から光が入射する構造である。図8に示した態様
では、透明基板50a上に透明導電層10aを有し、下塗り層
60を介して感光層20を設け、さらに電荷輸送層30および
透明対極導電層40aを設け、この上に透明基板50aを配置
したものであり、両面から光が入射する構造となってい
る。図9は、支持基板50上に導電層10を設け、下塗り層
60を介して感光層20を設け、さらに固体の電荷輸送層30
を設け、この上に一部対極導電層40または金属リード11
を有するものであり、対極側から光が入射する構造とな
っている。
【0081】〔2〕光電池 本発明の光電池は、上記光電変換素子によって変換され
て得られた電気エネルギーを用いて外部負荷の仕事をさ
せるようにしたものである。光電池のうち、電荷輸送材
料が主としてイオン輸送材料からなる場合を、特に光電
気化学電池と呼び、また、太陽光による発電を主目的と
する場合を太陽電池と呼ぶ。光電池は、構成物の劣化や
内容物の揮散を防止するために、側面をポリマーや接着
剤等で密封するのが好ましい。導電性支持体および対極
にリードを介して接続される外部回路自体は公知のもの
で良い。本発明の光電変換素子を太陽電池に適用する場
合、そのセル内部の構造は基本的に上述した光電変換素
子の構造と同じである。また、本発明の色素増感型太陽
電池は、従来の太陽電池モジュールと基本的には同様の
モジュール構造をとりうる。太陽電池モジュールは、一
般的には金属、セラミック等の支持基板の上にセルが構
成され、その上を充填樹脂や保護ガラス等で覆い、支持
基板の反対側から光を取り込む構造をとるが、支持基板
に強化ガラス等の透明材料を用い、その上にセルを構成
してその透明の支持基板側から光を取り込む構造とする
ことも可能である。具体的には、スーパーストレートタ
イプ、サブストレートタイプ、ポッティングタイプと呼
ばれるモジュール構造、アモルファスシリコン太陽電池
などで用いられる基板一体型モジュール構造等が知られ
ており、本発明の色素増感型太陽電池も使用目的や使用
場所および環境により、適宜これらのモジュール構造を
選択できる。特に好ましい具体的な構造と態様は、特願
平11-8457号明細書に記載されている。
【0082】
【実施例】以下、本発明を実施例によって具体的に説明
する。 [実施例1] 1.透明導電性支持体(作用極用)の作製 厚さ1.9mmの無アルカリガラスの基板に、CVD法
によってフッ素ドープ型の二酸化スズを全面に均一にコ
ーティングし、厚さ600nm、面抵抗約20Ω/□、
光透過率(500nm)が85%の導電性二酸化スズ膜
を片面に被覆した透明導電性支持体を形成した。
【0083】2.二酸化チタン粒子含有塗布液の作製 バーブ(C.J.Barbe)らのJ.Am.Cera
mic Soc.80巻,3157頁の論文に記載の製造
方法に従い、チタン原料にチタニウムテトライソプロポ
キシドを用い、オートクレーブ中での重合反応の温度を
230℃に設定して二酸化チタン濃度11重量%の二酸
化チタン分散物を合成した。得られた二酸化チタン粒子
の平均サイズは約10nmであった。この分散物に二酸化
チタンに対し30重量%のポリエチレングリコール(分
子量20,000、和光純薬製)を添加し、混合して塗
布液を得た。
【0084】3.色素を吸着した二酸化チタン電極の作
製 上記1で作製した透明導電性基板の導電面側にこの塗布
液をドクターブレード法で100μmの厚みで塗布し、
25℃で30分間乾燥した後、電気炉で450℃にて3
0分間焼成した。二酸化チタンの塗布量は15g/m2であ
り、膜厚は8μmであった。ガラスを取り出し冷却した
後、色素R−1の有機溶液(色素3×10-4モル/リッ
トル、溶媒:2−プロパノール)に40℃で12時間浸
漬した。色素の染着したガラスをエタノールで洗浄し暗
所にて自然乾燥させた。色素の吸着量は、二酸化チタン
の塗布面積1m2あたりおよそ1.5×10-3モルであ
った。
【0085】4.対極の作成 「電気化学および工業物理化学」67巻(4)389頁記載
の方法に準じて、本発明のダイアモンド層を有する対極
を作製した。マイクロ波プラズマCVD装置に基板とな
る良導電性のp型シリコンウェファーを置き、酸化硼素
(無水ホウ酸)を溶解したアセトン/メタノールの混合
溶媒を水素ガスでバブリングした気体をチャンバー内に
導入し、2時間CVDを行った。得られたダイアモンド
膜は多結晶で膜厚みは約2μmであった。溶解する酸化
硼素の量を変えることで、硼素ドープ量が3、000ppm
から20、000ppmの電極1から5を作成した。また比較用
の白金対極を、ジャーナル・オブ・エレクトロケミカル
ソサイアティー(J.Chem.Soc.)、144巻、3号、876頁に記
載の以下の方法で作成した。フッ素ドープ酸化スズ膜を
有するガラス基板に塩化白金酸の5mM濃度のイソプロ
パノール液をひろげ、乾燥後400℃で20分熱処理するこ
とで、表面に微細な白金粒子を担持した電極を作成し
た。
【0086】6.光電池の作成 上述のようにして作成した色増感されたTiO2電極基
板(2cm×1.5cm)と本発明の対極又は比較用対
極とを、ポリエチレン製のフレーム型スペーサー(厚さ
10μm)を挟んで、長辺方向に端子用の末端部である
幅2mmを交互に外へ出して重ね合わせた。セルを受光
部であるTiO2透明電極基板の面を残して全体をエポ
キシ樹脂接着剤でシールした。次に、スペーサーの側面
に注液用の小孔を空け、本文記載の2種類のイミダゾリ
ウム化合物、(Y7−1)を0.8gと(Y6−2)を
0.3g、及びヨウ素を0.02gとを含む常温溶融塩
の組成物の5μlを注入した。このようにして、受光面
積が約2cm2の光電池を組み立てた。比較用の対極に
ついても同様にして光電池を作成した。
【0087】7.光電変換効率の測定 500Wのキセノンランプ(連続スペクトルの高圧キセ
ノン灯、ウシオ電気製)に太陽光シミュレーション用補
正フィルター(Oriel社製AM1.5)を装着し、
電池への入射光強度が100mW/cm2に調整された模
擬太陽光を照射した。作製した光電池のTiO2電極と
対極とから取り出した端子に導線を接続し、両電極の電
気応答を電流電圧測定装置(ケースレー製ソースメジャ
ーユニット238型)に入力した。光源の照射光を電池
の透明電極側から入射し、電流―電圧特性を測定した。
電池は温度制御されたステージ上に固定することで、光
照射中の温度を制御して、測定を行った。これにより求
められた光電池の開放電圧(Voc)、短絡電流密度(Js
c)、形状因子(FF)、変換効率(η)を一括して表1に記
載した。
【0088】
【表1】
【0089】上記実施例の結果から、本発明のホウ素ド
ープしたダイアモンド対極を用いる本発明の光電池は、
高価な原料である白金を用いた従来の対極を用いた光電
池に対して、安価な原料の対極で、且つ、同等あるいは
それ以上の光電変換効率を光電池が得られたことが判
る。これらの本発明の光電池は、比較電池よりも経時安
定性(耐久性)に優れていた。
【0090】[実施例2] (耐久性試験) 実施例1記載の方法で作成された対極3〜5、及び比較用
対極を用いて、光電池モジュールを作成した。それぞれ
の単素子を5個並列とし、これを5個直列として、計2
5個の単素子から成るモジュールを作成し、ソーラーシ
ミュレーターを用いて、1ヶ月の耐久性テストを行っ
た。実際の使用条件も考慮して、モジュールの半分を覆
ってのテスト(すなわち、光照射を片面から行う)も行
った。1ヶ月の耐久性テストの後に、モジュールの性能
を測定し、フレッシュ状態からの劣化の程度を調べ、結
果を表2に示した。なお、表中の「フレッシュ」は、光
電変換素子を製作したのち、経時させてない状態を意味
する。
【0091】
【表2】
【0092】上記の結果から、従来の対極では、モジュ
ールでの耐久性に劣る場合が有るのに対して、本発明に
なる硼素ドープダイアモンド層からなる対極を用いるこ
とにより耐久性の高い光電変換モジュールが得られるこ
とが判る。
【0093】
【発明の効果】本発明によって、エネルギー変換効率に
優れた、且つ、耐久性に優れた色素増感光電変換素子お
よび光電気化学電池が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の好ましい光電変換素子の構造を示す
部分断面図である。
【図2】 本発明の好ましい光電変換素子の構造を示す
部分断面図である。
【図3】 本発明の好ましい光電変換素子の構造を示す
部分断面図である。
【図4】 本発明の好ましい光電変換素子の構造を示す
部分断面図である。
【図5】 本発明の好ましい光電変換素子の構造を示す
部分断面図である。
【図6】 本発明の好ましい光電変換素子の構造を示す
部分断面図である。
【図7】 本発明の好ましい光電変換素子の構造を示す
部分断面図である。
【図8】 本発明の好ましい光電変換素子の構造を示す
部分断面図である。
【図9】 本発明の好ましい光電変換素子の構造を示す
部分断面図である。
【符号の説明】
10・・・導電層 10a・・・透明導電層 11・・・金属リード 20・・・感光層 21・・・半導体微粒子 22・・・色素 23・・・電荷輸送材料 30・・・電荷輸送層 40・・・対極層 40a・・・透明対極層 50・・・基板 50a・・・透明基板 60・・・下塗り層

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 導電層、感光層、電荷輸送層および対極
    を有する光電変換素子において、該対極が硼素をドープ
    したダイアモンドの層を含有することを特徴とする光電
    変換素子。
  2. 【請求項2】 前記硼素のドープ量が5、000ppm
    以上30、000ppm以下であることを特徴とする請
    求項1に記載の光電変換素子。
  3. 【請求項3】 前記電荷輸送層が溶融塩を含有すること
    を特徴とする請求項1または2に記載の光電変換素子。
  4. 【請求項4】 請求項1から3の何れかの光電変換素子
    を用いた光電池。
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