JP2002053968A - 高周波電極およびプラズマ処理装置 - Google Patents

高周波電極およびプラズマ処理装置

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JP2002053968A
JP2002053968A JP2000236207A JP2000236207A JP2002053968A JP 2002053968 A JP2002053968 A JP 2002053968A JP 2000236207 A JP2000236207 A JP 2000236207A JP 2000236207 A JP2000236207 A JP 2000236207A JP 2002053968 A JP2002053968 A JP 2002053968A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高周波伝送線路に生じる定在波の節の影響を
抑制した高周波電極、およびそれを用いてプラズマ分布
の生じない良好な処理を可能とするプラズマ処理装置を
提供する。 【解決手段】 高周波電力が供給される高周波電極1に
窪み部2を形成し、高周波電極の表面1aから窪み部2
の内表面2bを通って表面1aに高周波電力が伝送され
るように、高周波伝送線路を形成する。高周波伝送線路
で発生する定在波の節の位置近傍に窪み部2を形成し、
窪み部2の中に定在波の節が隠し込まれるようにする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高周波電力が供給
される高周波電極およびそれを用いたプラズマ処理装置
に関し、さらに詳しくは、そのサイズを高周波電力の波
長λの1/4以上に大型化しても定在波の影響を抑制す
ることができ、大面積の被処理物に対して均一処理を行
うために好適な高周波電極およびプラズマ処理装置に関
する。
【0002】
【従来の技術】成膜、加工、表面処理等のプラズマ処理
においては、プラズマ処理速度の高速化とプラズマ処理
面の高品質化が望まれている。
【0003】この要求に応えるための技術としては、2
5MHz〜数100MHz程度の高周波電力を用いたプ
ラズマ処理方法が知られている。この技術については、
例えばPlasma Chemistry and P
lasma Processing,Vol7,No.
3,(1987) p267−273に記載されてい
る。
【0004】しかしながら、上記技術を発展させて大面
積の基体をプラズマ処理しようとすると、均一なプラズ
マ処理が行えないという問題点があった。この点につい
ては、特開平9−279348号公報の中で指摘されて
いる。さらに、この公報は、均一なプラズマ処理が行え
ない原因として、高周波伝送線路に発生する定在波の影
響を挙げて、その解決手段について記載している。
【0005】以下に、特開平9−279348号公報に
開示された内容について、図14および図15を参照し
ながら説明する。図14(a)はプラズマ処理装置の構
成を示す断面図であり、図14(b)はそのX−X’断
面図である。
【0006】このプラズマ処理装置は、反応容器100
を備えており、その中に6個の基体ホルダ105Aが同
心円状に所定の間隔で配置されている。各基体ホルダ1
05Aの上には成膜用の円筒状基体106が配置され、
各基体ホルダ105Aの内部には基体加熱用ヒータ14
0が設けられており、円筒状基体106を内側から加熱
できるようにされている。また、各基体ホルダ105A
はモータ132に連結されたシャフト131に接続され
ており、回転できるようにされている。円筒状基体10
6の上には円筒状基体106を支えるための補助部材1
05Bが配置されている。さらに、反応容器100のシ
ャフト131の周囲にはシール部材133が設けられて
いる。プラズマ生成領域の中心に位置する部分には、高
周波電力投入用の高周波電極103が設けられており、
この高周波電極103は整合回路109を介して高周波
電源111に接続されている。また、反応容器100に
は排気バルブを備えた排気パイプ107が設けられてお
り、この排気パイプ107は真空ポンプを備えた排気機
構135に連通している。反応容器100の排気機構1
35とは反対側には、図示しないガスボンベ、マスフロ
ーコントローラおよびバルブ等で構成された原料ガス供
給手段108が設けられている。この原料ガス供給手段
108は、ガス供給パイプ117を介して複数のガス放
出孔を備えたガス放出パイプ116に接続されている。
【0007】上記プラズマ処理装置を用いたプラズマ処
理、例えばプラズマCVD(Chemical Vap
or Deposition)法による成膜は、例えば
以下のようにして行われる。
【0008】まず、反応容器100を排気機構135に
よって高真空まで排気した後、原料ガス供給手段108
からガス供給パイプ117およびガス放出パイプ116
を介して原料ガスを反応容器100内に導入して、所定
の圧力に維持する。そして、高周波電極103と円筒状
基体106との間にプラズマを発生させる。これによ
り、原料ガスがプラズマにより分解されて励起され、円
筒状基体106の上に堆積膜が形成される。
【0009】上記プラズマ処理装置において、高周波電
極103は、段差の付いた誘電体カバー104で被覆さ
れている。図15(a)は段差付き誘電体カバー104
で被覆された高周波電極103の構成を示す図であり、
図15(b)は段差付き誘電体カバーで被覆されていな
い高周波電極103の構成を示す図である。以下、図1
5(b)に示した高周波電極をカバー無し電極、図15
(a)に示した高周波電極をカバー付き電極と称する。
【0010】上記特開平9−279348号公報では、
図15(b)に示したカバー無し電極を用いた場合、3
0MHz以上の周波数において、膜質および堆積速度に
影響を及ぼす定在波が発生し、図15(b)中のA−
A’位置近傍に定在波の節が現れているものと予測して
いる。そして、この節の位置で電界が弱くなって偏在的
なプラズマ分布が起こっているものと考えている。そこ
で、この公報では、図15(a)に示すように、定在波
の節近傍と考えられるA−A’位置に高周波電力の反射
面を配置している。具体的には、上記段付き誘電体カバ
ー104によって高周波伝送線路の特性インピーダンス
をA−A’位置で急激に(小から大)に変化させること
により入射波を反射させている。これにより、反射面で
の電界を強めて偏在的なプラズマ分布を抑制し、膜質お
よび堆積速度の均一化を図っている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】上述の図15(a)に
示した特開平9−279348号公報の技術は、図15
(b)中のA−A’位置近傍における定在波の節を腹に
近づけるような効果を有している。しかしながら、この
効果を得るためにA−A’位置に配した特性インピーダ
ンスの不整合部は、以下のような問題点を引き起こして
いる。すなわち、 A−A’位置よりも後段に高周波電力が伝送されにく
い。また、A−A’位置を境として電圧が大きく異なる
ため、結果としてプラズマ分布が生じる。さらに、 上記不都合を伴いながらA−A’位置を完全に腹に転
じさせたとしても、そのA−A’位置からλ/4(λ:
高周波電力の波長)だけ上段の位置では節が現れてく
る。
【0012】従って、上記従来技術は定在波の節の影響
を本質的に改善したものではなく、プラズマ分布の問題
は依然として解決されていない。
【0013】上記問題点について、さらに具体的に説明
する。図16(a)は図15(a)に示した高周波電極
103の高周波伝送線路をモデル化したものである。な
お、説明が繁雑になるのを避けるために、分布定数線路
の損失抵抗と損失コンダクタンスとは省略している。ま
た、線路の終端は開放端(終端負荷ZL=∞)としてい
る。厳密には損失コンダクタンスおよび終端負荷がプラ
ズマによるエネルギー消費部に相当するのであるが、こ
れらを省略しても以下の説明においては特に問題は生じ
ない。
【0014】この図16(a)および以下の図16
(b)において、Z1はA−A’位置よりも上流線路の
特性インピーダンスを示し、Z2はA−A’位置よりも
下流線路の特性インピーダンスを示す。Lは終端部から
A−A’位置までの距離を示している。βは位相定数で
あり、 β=(2π)/λ ・・・(1) で表される。なお、λは高周波電力の波長である。
【0015】以下に、上記図16(a)のモデルに基づ
いて、定在波分布を調べる。なお、下記式(2)〜下記
式(7)の導出に当たっては、「マイクロ波工学」(森
北出版)を参照した。
【0016】まず、終端部から距離xだけ上流側の位置
から下流側を見たときのインピーダンスZ(x)は、下
記式(2)または下記式(3)のように表される。な
お、下記式(2)、下記式(3)および下記式(7)に
おいて、jは虚数である。
【0017】 Z(x) =−j・Z1・{Z2−tan(β・L)・tan(β・(x−L))・Z1 } /{Z1・tan(β・L)+Z2・tan(β・(x−L))} (x≧Lのとき) ・・・(2) Z(x)=−j・Z2/tan(β・x) (0≦x<Lのとき) ・・・(3) さらに、上記インピーダンスZ(x)を用いると、位置
xにおける電圧反射係数Γ(x)は、下記式(4)また
は下記式(5)のように表される。
【0018】 Γ(x)={Z(x)−Z1}/{Z(x)+Z1} (x≧Lのとき) ・・・(4) Γ(x)={Z(x)−Z2}/{Z(x)+Z2} (0≦x<Lのとき) ・・・(5) さらに、上記電圧反射係数Γ(x)を用いると、位置x
における電圧定在波の振幅|V(x)|は、下記式
(6)または下記式(7)のように表される。なお、下
記式(6)および下記式(7)において、AはA−A’
位置よりも上流側の高周波電力供給点Sにおける、入射
波の振幅を表している。
【0019】 |V(x)|=|A|・|1+Γ(x)| (x≧Lのとき) ・・・(6) |V(x)|=|{A・(1+Γ(L))} /{1+exp(−2・j・β・L)}| ・|1+Γ(x)| (0≦x<Lのとき) ・・・(7) 図17に、上記式(1)〜上記式(7)に基づいて、L
=λ/4×0.95として電圧定在波振幅|V(x)|
を試算した結果を示す。この図17においては、電圧定
在波振幅|V(x)|を|A|で規格化して表現してい
る。
【0020】図17(b)はZ2=Z1とした場合の結果
であり、図15(b)に示したカバー無し電極を用いた
場合をイメージしたものである。なお、この場合には、
図16(a)に示した高周波伝送線路モデルは図16
(b)のモデルと等価である。また、図17(a)はZ
2=Z1×100とした場合の結果であり、誇張されてい
るかもしれないが、図15(a)に示したカバー付き電
極を用いた場合をイメージしている。
【0021】図17(a)と図17(b)とを比較する
と、図15(b)に示したカバー無し電極を用いた場合
にはA−A’位置(x=L)付近に定在波の節が現れて
いるのに対して、図15(a)に示したカバー付き電極
を用いた場合にはA−A’位置(x=L)付近に定在波
の腹が現れている。この点が上記公報の構成による効果
である。
【0022】しかしながら、図17(a)から分かるよ
うに、カバー付き電極を用いた場合には、A−A’位置
を境として定在波の振幅が大きく異なっている。このこ
とは、上記の問題点に相当し、A−A’位置を境とし
てプラズマ分布が生じていることを意味する。また、A
−A’位置の後段において電圧が極端に大きくなる(イ
ンピーダンスが大きくなる)ことは、高周波電力が伝送
されにくくなることを意味する。
【0023】さらに、A−A’位置より上流側におい
て、λ/2周期の定在波が依然として発生している。こ
のことは、上記の問題点に相当している。すなわち、
A−A’位置付近の節を腹に転じているものの、それよ
りλ/4だけ上段の位置では、いずれにしても節が存在
しているのである。
【0024】本発明は、このような従来技術の課題を解
決すべくなされたものであり、高周波伝送線路に生じる
定在波の節の影響を抑制することができる高周波電極、
およびそれを用いてプラズマ分布の生じない良好なプラ
ズマ処理を行うことができるプラズマ処理装置を提供す
ることを目的とする。
【0025】
【課題を解決するための手段】本発明の高周波電極は、
高周波電力が供給される高周波電極であって、該高周波
電極は窪み部を有し、該窪み部に対して一方側の該高周
波電極の表面から、該窪み部の内表面を通って、該窪み
部に対して他方側の該高周波電極の表面に高周波電力が
伝送される高周波伝送線路が形成されており、そのこと
により上記目的が達成される。
【0026】前記窪み部は、前記高周波伝送線路で発生
する定在波の節の位置近傍に形成されているのが好まし
い。
【0027】前記窪み部は、前記高周波伝送線路に沿っ
た内表面の長さが前記高周波電力の波長λの1/2以下
であるのが好ましい。
【0028】前記窪み部は、前記高周波伝送線路に沿っ
た内表面の長さが前記高周波電力の波長λの1/10以
上であるのが好ましい。
【0029】前記窪み部は、前記高周波伝送線路におい
て、前記高周波電力の波長λの略1/2のピッチにて2
個以上形成されているのが好ましい。
【0030】前記高周波電極の表面が誘電体で被覆され
ているのが好ましい。
【0031】本発明のプラズマ処理装置は、本発明の高
周波電極と被処理物とが互いに対向して配置され、該高
周波電極と該被処理物の間で発生させたプラズマにより
該被処理物にプラズマ処理を行い、そのことにより上記
目的が達成される。
【0032】前記プラズマの前記被処理物の表面に平行
な第1の方向の長さが前記高周波電力の波長λの1/4
以上であり、該被処理物の表面に平行で該第1の方向と
垂直な第2の方向の長さが該波長λの1/4以下となる
ように、前記高周波電極の形状および配置が設定されて
いるのが好ましい。
【0033】前記被処理物を、前記高周波電極に対して
相対的に、前記第2の方向に移動させながらプラズマ処
理を行うのが好ましい。
【0034】前記高周波電極の直近に、プラズマ処理用
のガス供給口およびガス排気口が設けられているのが好
ましい。
【0035】以下に、本発明の作用について説明する。
【0036】本発明にあっては、導体からなる高周波電
極の表面に窪み部を設ける。高周波は、表皮効果によっ
て導体の表面にしか流れないため、窪み部に対して一方
側の高周波電極の表面から、窪み部の内表面を通って、
窪み部に対して他方側の高周波電極の表面に高周波電力
が伝送される。
【0037】この窪み部は、後述する第1実施形態に示
すように、高周波伝送線路で発生する定在波の節の位置
近傍に形成することにより、定在波の節が窪み部の内表
面に現れる。このため、電極表面のプラズマと接する部
分に節が現れず、偏在的なプラズマ分布を抑制すること
が可能である。
【0038】さらに、高周波伝送線路に沿った窪み部の
内表面の長さを高周波電力の波長λの1/2以下とし、
窪み部を高周波伝送線路に略λ/2のピッチにて1個ま
たは2個以上形成することにより、後述する第1実施形
態に示すように、窪み部の中に定在波の節を隠し込むこ
とが可能となる。
【0039】さらに、高周波伝送線路に沿った窪み部の
内表面の長さを高周波電力の波長λの1/10以上にす
ることにより、後述する実施例1に示すように、プラズ
マ処理における分布を5%以下に抑えることが可能とな
る。
【0040】さらに、導体からなる高周波電極の表面を
誘電体で被覆することにより、後述する第1実施形態に
示すように、電界分布を誘電体で緩和してプラズマの分
布をさらに小さくすることが可能である。
【0041】本発明のプラズマ処理装置にあっては、こ
のように定在波の節の影響を抑制した高周波電極を用い
ることにより、均一なプラズマ処理を行うことが可能と
なる。
【0042】さらに、プラズマの、被処理物の表面に平
行な第1の方向の長さが高周波電力の波長λの1/4以
上であり、被処理物の表面に平行で第1の方向と垂直な
第2の方向の長さがλ/4以下となるように、高周波電
極の形状および配置を設定した場合、後述する第3実施
形態に示すように、第2の方向の高周波伝送線路には定
在波の分布が殆ど現れず、第1の方向の高周波伝送線路
では定在波の節を窪み部の中に隠し込むことが可能であ
る。従って、プラズマと接する高周波電極表面には定在
波分布が殆ど生じない。この場合、板状基板に対して簡
単な構成の高周波電極によりプラズマ処理を行うことが
でき、さらに、プラズマサイズが小さいのでより均一な
プラズマ処理が可能となる。基板を高周波電極に対して
相対的に第2の方向に移動させながらプラズマ処理を行
うことにより、基板全面にプラズマ処理を行うことが可
能である。
【0043】さらに、上記構成を採用することにより、
サイズの小さいプラズマ領域の直近(高周波電極の直
近)にプラズマ処理用のガス供給口およびガス排気口を
設けることができ、これによって、後述する第4実施形
態に示すように、大流量のガスをプラズマ発生部に安定
して供給することが可能である。
【0044】
【発明の実施の形態】上述したように、本発明は、高周
波伝送線路に生じる定在波の節の影響を抑制した高周波
電極と、この高周波電極を用いてプラズマ分布の生じな
い良好なプラズマ処理を可能とするプラズマ処理装置を
提供するものである。
【0045】なお、本発明では、従来技術のように、特
定位置に現れる定在波の節を除去するようなアプローチ
はしていない。その理由は、定在波の腹と節とが高周波
の波長λの1/4毎に交互に現れることは物理現象であ
って、これを完全に除去することは不可能と考えたから
である。但し、高周波伝送線路の特性インピーダンスと
終端負荷インピーダンスとの整合が完全に取れていれば
定在波は発生しないが、プラズマ発生部が損失コンダク
タンスおよび終端負荷となるような系においては、この
ように理想的な整合が得られるとは考えにくい。
【0046】そこで、本願発明者は、高周波伝送線路に
発生する定在波の存在を認めた上で、その節を隠し込む
ようなアプローチを行った。そして、この指針に基づい
て具体的な構成を実現することができたのは、導体表面
にしか電流が流れないという高周波の性質、すなわち表
皮効果を積極的に利用したからである。
【0047】以下に、本発明の実施の形態について、図
面を参照しながら説明する。
【0048】(第1実施形態)図1(a)は本実施形態
のプラズマ処理装置の構成を示す断面図であり、図1
(b)はそのX−X’断面図である。図1において、高
周波電極1以外の構成要素は図14に示した従来技術と
同じであるので、同一の構成要素には同一の符号を付し
て説明を省略する。
【0049】本実施形態の特徴は高周波電極1の形状に
あり、図2(a)に高周波電極1の斜視図を示し、図2
(b)にその断面図を示す。高周波電極1は、従来技術
と同様に円柱棒状であり、その外周面1aから円柱の中
心部に向けて窪み部2を有しており、外観は円柱の表面
1aに複数のスリット2aが設けられたような形状であ
る。
【0050】この窪み部2は、後述する高周波伝送線路
上において、高周波電力の波長λの略1/2のピッチで
1個または2個以上設けられ、1個の窪み部2の内表面
2bの高周波伝送線路に沿った長さはλ/2以下とされ
ている。なお、窪み部2の内表面2bとは、図2(b)
を拡大した図3において、上から2番目の窪み部2に対
して太線で示した部分を言う。好ましくは、1個の窪み
部2の内表面2bの高周波伝送線路に沿った長さはλ/
10以上である。なお、図3において、106はプラズ
マ処理がなされる円筒状基体である。また、図3中のx
xは、後述する高周波伝送線路の終端部Eから高周波電
極1の表面1a上(プラズマと接する部分)の任意の位
置までの軸方向距離を表わしており、後述する図7
(b)の横軸に対応するものである。
【0051】さらに、高周波電極1の外周面1aおよび
スリット部2aの表面全体は、図4に示すように、アル
ミナやテフロン等の誘電体4で被覆されているのが好ま
しい。この誘電体4は、公知技術に基づいてCVD法や
溶射法等、どのような方法で作製してもよい。
【0052】図2および図3に示した窪み部2を設けた
高周波電極1は、どのような方法で作製してもよい。例
えば図5(b)に示すような中心に段付き穴5aを設け
た円柱状電極パーツ222を順次シャフト5に圧入し、
図5(a)に示すように組み立てることによって作製す
ることができる。なお、この場合には、シャフト5と円
柱状電極パーツ222を電気的に接続させることが必要
である。
【0053】本実施形態において、プラズマ処理は従来
技術と同様に、以下のようにして行うことができる。
【0054】まず、反応容器100を排気機構135に
よって高真空まで排気した後、ガス供給手段108から
ガス供給パイプ117およびガス放出パイプ116を介
してプラズマ処理用ガスを反応容器100内に導入し
て、所定の圧力に維持する。そして、高周波電極1と円
筒状基体106との間にプラズマを発生させる。これに
より、ガスがプラズマにより分解されて励起され、円筒
状基体106表面に対してプラズマ処理が行われる。
【0055】以下に、本実施形態の作用について、説明
する。
【0056】まず、本実施形態の高周波電極1におけ
る、導体表面の表皮厚さについて説明する。本実施形態
において使用する高周波電力の周波数をf(Hz)とす
ると、表皮厚さδは下記式(8)で与えられる。なお、
下記式(8)において、ρは高周波電極材料の固有抵抗
であり、μは高周波電極材料の透磁率である。
【0057】 δ={ρ/(π・f・μ)}0.5 ・・・(8) 例えば、周波数fを80MHz以上とし、高周波電極1
をAl製とすると、上記式(8)から表皮厚さはδ≦
0.01mmとなる。
【0058】このように表皮厚さδが薄いので、図3の
上部から高周波電極1に供給された高周波電力は、高周
波電極1(導体)の表皮を通りながら下方に伝送され
る。具体的には、高周波電力は、電極1への高周波電力
供給点Sから出発した後、高周波電極1の表面1aを通
り、続いて窪み部2の内表面2bを通る。高周波電力
は、続いて高周波電極の表面1aを通った後、上記の経
路が繰り返されて終端部Eに致る。なお、図3では、高
周波伝送経路のうち、高周波電力が高周波電極表面1a
を通る部分を実線で表し、窪み部2の内表面2bを通る
部分を点線で表している。
【0059】次に、本実施形態における定在波分布につ
いて説明する。図6(a)は図3に示した高周波電極1
の高周波伝送線路をモデル化したものである。なお、高
周波伝送線路は、高周波電極1の表面1aと窪み部2の
内表面2bとから構成されている。この図6(a)およ
び以下の図6(b)において、Z0は伝送線路の特性イ
ンピーダンスを示し、Zpは損失コンダクタンス(プラ
ズマ)を示し、ZLは終端負荷(プラズマ)を示してい
る。なお、以下の説明においては定在波の分布形状のみ
を議論し、位相の絶対値および振幅の絶対値については
議論しないため、図6(a)のモデルを図6(b)のよ
うに簡略化してもよい。すなわち、損失コンダクタンス
を無視し、終端部を開放端(終端負荷ZL=∞)として
もよい。そこで、図6(b)のモデルに基づいて、高周
波伝送線路上における定在波分布を説明する。
【0060】図3に示した、高周波電極表面1aと窪み
部2の内表面2bとを含む高周波伝送線路上における定
在波分布を考える。伝送線路の終端部E点から伝送線路
上において距離x1だけ上流側の位置から下流側を見た
ときのインピーダンスZ(x1)は、下記式(9)のよ
うに表される。なお、下記式(9)において、jは虚数
であり、βは下記式(10)で表される位相定数であ
り、下記式(10)においてλは高周波電力の波長であ
る。
【0061】 Z(x1)=−j・Z0/tan(β・x1) ・・・(9) β=(2π)/λ ・・・(10) さらに、上記インピーダンスZ(x1)を用いると、位
置x1における電圧反射係数Γ(x1)は、下記式(1
1)のように表される。
【0062】 Γ(x1)={Z(x1)−Z0}/{Z(x1)+Z0} ・・・(11) さらに、上記電圧反射係数Γ(x1)を用いると、位置
1における電圧定在波振幅|V(x1)|は、下記式
(12)のように表される。なお、下記式(12)にお
いて、Aは電力供給点Sにおける入射波の振幅を表して
いる。
【0063】 |V(x1)|=|A|・|1+Γ(x1)| ・・・(12) 図7(a)に、上記式(9)〜上記式(12)に基づい
て、電圧定在波振幅|V(x1)|を試算した結果を示
す。試算においては1個の窪み部2の内表面2bの全長
をλ/6とし、高周波伝送線路上における窪み部2のピ
ッチをλ/2とした。また、終端部E点と、これに一番
近い窪み部2の内表面2bの中央部との間の、高周波伝
送線路上の距離をλ/4とした。この図7(a)におい
て、縦軸は電圧定在波振幅|V(x1)|を|A|で規
格化して表している。また、横軸はE点を原点とし、高
周波伝送線路上での距離X1を表している。さらに、図
7(a)において、実線は高周波電極表面1aの部分に
対する電圧を示し、点線は窪み部内表面2b上の部分に
対する電圧を示している。
【0064】図7(a)から分かるように、本実施形態
における高周波伝送線路上の定在波分布は、従来技術に
おいて図17(b)に示したカバー無し電極を用いた場
合の定在波分布と何等異なるものではない。しかしなが
ら、本実施形態においては、定在波の節となる部分が、
高周波電極表面1aではなく、窪み部内表面2bに現れ
ている。この点が本発明のポイントであり、高周波伝送
線路上の節の存在を認めながら、この節を窪み部2の中
に隠し込んでいるのである。
【0065】その結果、高周波電極表面1a(プラズマ
と接する部分)上の距離xx(図3中に図示)を横軸と
して|A|で規格化した電圧定在波振幅|V(xx)|
/|A|を表すと、図7(b)に示すようになり、プラ
ズマと接する部分に節が現れない。従って、円筒状基体
106の軸方向に沿って、偏在的なプラズマ分布を抑制
することができ、均一なプラズマ処理を施すことができ
る。
【0066】なお、上記窪み部2の中に定在波の節を隠
し込む条件は、図7(a)からも明らかなように、1個
の窪み部2の内表面2bの全長がλ/2以下で、高周波
伝送線路上に略λ/2のピッチで1個または2個以上の
窪み部2が形成されていることである。さらに、後述す
る実施例1に示すように、1個の窪み部2の内表面2b
の全長がλ/10以上である場合に、プラズマ処理の分
布を5%以内に抑えられるので好ましい。
【0067】ところで、上記試算は図6(b)に示した
モデルに基づいているため、図7(b)に示すようなピ
ークを有する定在波分布になっているが、図6(a)に
示すような現実的なモデルの場合には、さらにブロード
な分布となる。従って、本実施形態によれば、高周波電
極表面1a上に殆ど定在波分布が生じない。この点につ
いては、後述する実施例により確認することができる。
【0068】さらに、図2および図3に示した構成で
は、スリット部2aにおいてプラズマに与える電界が弱
まることが懸念されるかもしれないが、プラズマ自体の
空間分布を考慮すれば、このことは問題ではない。例え
ば、数Torrオーダー以下の圧力の場合には、数mm
程度の隙間を設けても全く問題は生じない。但し、スリ
ット幅として考慮すべきオーダーは、プラズマを発生さ
せる圧力によって異なる。 さらなる定在波分布の抑制
や、さらなるスリット部2aの影響の抑制を目指すため
には、図4に示したように、高周波電極1の表面を誘電
体4で覆うようにすればよい。このようにすれば、多少
の電界分布が存在しても誘電体4により緩和されるの
で、プラズマ分布を小さくすることができる。
【0069】なお、上記試算は終端部を開放端として行
ったが、実際には終端負荷はプラズマインピーダンスに
依存するものであり、節の位置を特定できない場合が多
い。このような場合には、まず、窪み部2の無い円柱棒
状の電極によって、高周波伝送線路の終端部から節まで
の距離を調べておけばよい。その上で、節を隠し込むこ
とができるように窪み部2を配置して、高周波電極を作
製すればよい。
【0070】(第1実施形態の変形例)上記第1実施形
態では、窪み部2における内表面2bの全長の長さを十
分に確保するために、図2に示したようなスリット部2
aから内表面が広がるような形状の窪み部2を設けた
が、本発明はこれに限定されず、問題となる定在波の節
を窪み部2の内表面2bにて隠し込めれば良い。例え
ば、終端負荷や損失コンダクタンスによって、定在波分
布が元々あまり大きくない場合や、目的とする電圧定在
波振幅の分布の許容範囲が広い場合には、窪み部2の内
表面2bの全長はもっと短くてもよい。このような場合
には、図8に示すように、スリット2aのみからなる窪
み部を設けてもよい。さらに、円柱棒状の高周波電極1
の直径が大きい場合には、図8に示すようなスリット2
aのみからなる窪み部であっても、スリット2aの深さ
を深くすることにより、窪み部の内表面の全長を十分確
保することができるので、定在波の節を十分に隠し込め
る場合がある。
【0071】なお、本変形例では窪み部の内表面を平面
で構成したが、曲面であってもよい。
【0072】スリット幅としては、第1実施形態と同様
に設定すればよく、例えば数Torrオーダ以下の圧力
の場合には数mm程度であってもよい。
【0073】(第2実施形態)上記実施形態1では、高
周波電極として円柱棒状の導体を用いて、円筒状基体1
06をプラズマ処理する場合について説明したが、本発
明において高周波電極の形状およびプラズマ処理が行わ
れる被処理物はこれに限定されない。本実施形態では、
板状の基板に対してプラズマ処理を行う場合について説
明する。
【0074】例えば、板状基板206にプラズマ処理を
行う場合には、図9に示すような高周波電極11を用い
ることができる。図9において、基板206はSiウェ
ハやガラス基板等の板状基板であり、高周波電極11は
円板状または平板状である。図10は高周波電極11を
円板状とした場合の下面図である。図9および図10に
おいて、11aは高周波電極11の表面を示し、12は
高周波電極11の表面から上方に向けて設けられた窪み
部であり、12aはそのスリット部である。205Aは
基板ホルダーであり、117はガス供給パイプを示し、
107はガス排気パイプを示している。
【0075】本実施形態においても、高周波伝送線路
は、図9に実線および破線の矢印で示すように、高周波
電極表面11aと窪み部12の内表面12bとで構成さ
れる。そして、第1実施形態と同様に、定在波の節を窪
み部12の中に隠し込むことができる。従って、本実施
形態における高周波電極11のプラズマと接する部分の
電圧定在波振幅も、図7(b)と同様のものになる。但
し、高周波電極11が円板状の場合には、高周波伝送線
路が高周波電極11の中心軸に対して対称形となるた
め、図10に示すように、窪み部12が高周波電極11
の中心軸に対して対称な位置に形成される。このため、
定在波分布も高周波電極11の中心軸に対して対称形と
なる。
【0076】本実施形態において、窪み部の形状やその
配置の仕方については第1実施形態と同様にすることが
でき、その効果については第1実施形態と同様であるの
で、説明を省略する。本実施形態によれば、板状基板に
対して上記第1実施形態と同様の効果を得ることが可能
である。
【0077】(第3実施形態)上記実施形態2は、本発
明の基本思想を板状基板に対して適用可能としたもので
あるが、板状基板を用いる場合には高周波電極をさらに
簡単な構成とすることも可能である。本実施形態ではこ
の構成について説明する。
【0078】本実施形態における高周波電極21は、図
11(a)に示すDx方向の長さWxが、その方向におけ
る基板206の長さよりも短く、λ/4以下となってい
る。一方、Dx方向と垂直なDy方向の高周波電極21の
長さWyは、その方向における基板206の長さと同程
度であり、基板206のサイズに応じてどのような長さ
であってもよいが、Wyがλ/4以上である場合に本発
明の効果が活かされる。
【0079】本実施形態においても、高周波電極21に
はその表面21aから上方に向けて窪み部22が形成さ
れており、Dx方向に見た断面形状は、上記図9に示し
た第2実施形態の高周波電極11と同様である。但し、
本実施形態では、高周波電極21の下面図である図11
(b)に示すように、窪み部22(スリット部22a)
は図11(a)のDx方向に一様に形成されている。
【0080】本実施形態において、高周波伝送線路は、
図11(a)のDx方向およびDy方向に2次元的に構成
されるが、高周波電極21のDx方向の長さWxはλ/4
よりも短い。高周波伝送線路上の定在波の周期は、例え
ば図7(a)に示したようにλ/2であるので、Dx
向の高周波伝送線路には定在波の分布が殆ど現れない。
一方、Dy方向においては、Wyがλ/4以上の場合に定
在波分布が生じるおそれがあるが、上記第2実施形態と
同様に、定在波の節を窪み部22の中に隠し込むことが
可能である。従って、高周波電極21のプラズマと接す
る部分には、定在波分布が殆どなく、プラズマ分布が生
じない。
【0081】なお、上記構成では、プラズマが、高周波
電極21と基板206とが対向する空間にしか発生しな
いが、基板206が搭載される基板ホルダ305AをD
x方向に移動させることにより、基板206の全面に対
してプラズマ処理を行うことが可能である。
【0082】本実施形態において、Dx方向に見たとき
の窪み部の形状やその配置の仕方については第1実施形
態および第2実施形態と同様にすることができ、その主
たる効果については第1実施形態および第2実施形態と
同様であるので、説明を省略する。本実施形態によれ
ば、上記第2実施形態と同様の効果をより簡単な電極構
成で得ることができる。
【0083】さらに、本実施形態では、プラズマサイズ
が第2実施形態よりも小さいので、例えばガス流速や放
電ギャップの不均一等の定在波以外の原因によるプラズ
マの不均一性についても解消することが可能である。さ
らに、本実施形態によれば、基板206のDx方向の長
さの制約を全く受けないので、インライン方式のプラズ
マ処理装置に適しており、特に、シート状の基板をプラ
ズマ処理する場合にも好適である。
【0084】(第4実施形態)上記実施形態3は、図1
1(a)中のDx方向の長さが短い高周波電極を用いる
ことにより、上述のような優れた効果を呈した。しかし
ながら、第3実施形態の思想に種々の工夫を加えること
により、さらに均一性に優れたプラズマ処理が可能なプ
ラズマ処理装置を得ることができる。本実施形態ではそ
の一例について説明する。
【0085】本実施形態における高周波電極31は、図
12および図13に示すように、断面が略半円形状をな
し、図2に示した円柱棒状の高周波電極1を中心軸を含
む平面で切断したような形状を有している。窪み部の形
状は図2に示した窪み部2と同様であり、外観的には図
13に示すように、高周波電極31の表面31aにスリ
ット部32aが形成されたような形状を有している。
【0086】本実施形態では、上述のような高周波電極
31の円筒面を板状基板206と対向させているため、
上記円筒面の先端付近にのみプラズマが発生する。従っ
て、第3実施形態と同様に、Dx方向のプラズマの長さ
を短くすることができる。そして、このプラズマのDx
方向の長さをλ/4以下にすることにより、第3実施形
態と同様の効果を得ることができる。
【0087】なお、図12の紙面に対して垂直方向(D
y)の高周波伝送線路については、第2実施形態および
第3実施形態と同様であり、定在波の節を窪み部に隠し
込むことができる。
【0088】さらに、本実施形態では、上記円筒面を有
する高周波電極31を、カバー体40で包囲して、図1
2中にFで示すガス流路を形成している。このガス流路
Fにおいて、プラズマよりも上流側の部分がプラズマ処
理用のガス供給口であり、図12ではFinを付してい
る。また、プラズマよりも下流側の部分がガス排気口で
あり、図12ではFoutを付している。117および
107はガス供給パイプおよびガス排気パイプである。
このガス流路Fは、その流線に急激な変化が加わらない
ように、略U字形状をなしており、これによってプラズ
マ部に大流量のガスを安定して供給することができる。
【0089】本実施形態において、Dx方向に見たとき
の窪み部の形状やその配置の仕方については第3実施形
態と同様にすることができ、その主たる効果については
第3実施形態と同様であるので、説明を省略するさら
に、本実施形態によれば、第3実施形態よりもプラズマ
部に大流量のガスを安定して供給することができるの
で、さらなるプラズマ処理の均一化を図ることができ
る。
【0090】上述したように、本発明の高周波電極によ
れば、高周波伝送線路に生じる定在波の節の影響を抑制
することができ、これを用いることによりプラズマ分布
の生じない均一なプラズマ処理を行うことが可能とな
る。特に、基体および基板のサイズや高周波電力の周波
数に捕らわれずに、均一なプラズマ処理が可能となる。
【0091】例えば、定在波のために、従来ではVHF
帯の高周波により均一なプラズマ処理が行えなかったよ
うな大型の基体や基板に対しても、ムラの無い均一なプ
ラズマ処理を施すことができる。従って、VHF帯のプ
ラズマによる高速で高品質なプラズマ処理を大型の基体
や基板に適用することが可能となり、プラズマ処理を必
要とするデバイスの生産性および品質の上で非常に大き
な効果が得られる。この効果は、特に太陽電池やTFT
液晶等の大型基板を用いたデバイス作製工程に有用であ
り、生産性および品質を向上させる上で非常に効果的で
ある。
【0092】なお、本発明の高周波電極の用途は、上述
したようなプラズマ処理に限られるものではなく、定在
波の影響を伴う如何なる用途にも適用することが可能で
ある。例えば、均一なコロナ放電処理が要求される分野
等にも本発明の高周波電極を適用可能である。
【0093】以下、本発明のさらに具体的な実施例につ
いて説明する。
【0094】[実施例1]図1に示したプラズマ処理装
置を用い、高周波電力の周波数を500MHz(λ=6
00mm)として成膜実験を行った。基体106は、直
径100mm、長さ360mm、厚さ5mmのAl製円
筒状基体であり、反応容器100内に6本設置した。そ
して、基体106を回転させながらアモルファスSiの
成膜を行った。高周波電極1は、Al製で直径30mm
の円柱形状であり、図5に示した方法により窪み部2を
設けて作製した。組立後の高周波電極1の長さは500
mmとした。また、窪み部2は、節の現れそうな位置を
予備実験によって予め調べておき、その位置に配置し
た。本実施例の予備実験では、高周波伝送線路の終端部
から約100mmだけ上流側の位置に節が現れたため、
この部分の節を隠すように1個めの窪み部2を配置し
た。さらに、この1個めの窪み部2から、高周波伝送線
路上でλ/2(300mm)だけ上流側の位置に2個め
の窪み部2を配置した。1個の窪み部2の内表面の全長
は、下記の3種類を設定した。その他の実験条件は以下
に示す通りとした。
【0095】 (実験結果)上述のようにして成膜した円筒状基体のう
ち、特定の1本を取り出して成膜されたa−Si膜の膜
厚を軸方向に20箇所測定し、膜厚分布を調べた。その
結果は下記表1の通りであり、窪み部2の内表面の全長
をλ/10以上にすることにより、a−Si膜の膜厚分
布を5%以下にすることができた。
【0096】
【表1】 [比較例1]高周波電極1に窪み部2を設けずに、実施
例1と同じ外形サイズの高周波電極を作製し、実施例1
と同様の実験を行った。その結果、膜厚分布は30%と
非常に大きく、膜厚ムラのピッチはほぼλ/2に対応し
ていた。
【0097】[実施例2]実施例1で作製した高周波電
極1の表面に、溶射法によりアルミナをコーティングし
て、図4に示したような誘電体4で覆われた高周波電極
1を作製した。この高周波電極を用いて実施例1と同様
の実験を行った。その結果は下記表2の通りであり、特
に、実施例1で膜厚分布が大きかった窪み部2の内表面
の全長がλ/12の条件において、膜厚分布が改善され
た。
【0098】
【表2】 [実施例3]図12に示したプラズマ処理装置を用い、
高周波電力の周波数を200MHz(λ=1.5m)と
して成膜実験を行った。基板206は、1m角のガラス
基板であり、図12中のDx方向に200mm移動させ
てアモルファスSiの成膜を行った。高周波電極31
は、Al製で曲率半径100mmの円筒曲面を有し、窪
み部を設けた。図12の紙面に対して垂直な方向(Dy
方向)の長さは1.1mとした。また、窪み部は、節の
現れそうな位置を予備実験によって予め調べておき、そ
の位置に配置した。本実施例の予備実験では、高周波電
極31のDy方向における中央部から略λ/4だけ離れ
た位置に節が現れたため、この部分の節を隠すように2
個の窪み部を配置した。1個の窪み部の内表面の全長は
λ/10(150mm)となるように設定し、さらに、
高周波電極の表面をアルミナでコーティングした。その
他の実験条件は以下に示す通りとした。
【0099】(実験条件) 周波数:200MHz 高周波電力:4kW 成膜用ガス:SiH4(1%)+H2(2.5%)+He
(96.5%) SiH4ガス流量:750SCCM 反応容器内圧力:8Torr 基板温度:250℃ 窪み部32の内表面全長:150mm スリット32aの幅:1mm (実験結果)上述のようにして成膜した基板に対して、
100mm(Dx方向)×1m(Dy方向)の領域内で6
0点の膜厚を測定した結果、その分布は5%と非常に良
好であった。しかも、成膜速度は20オングストローム
/sと非常に高速であり、光感度が105〜106オーダ
という非常に高品質の膜が得られていることが確認でき
た。
【0100】[比較例2]高周波電極31に窪み部を設
けずに、実施例3と同じ外形サイズの高周波電極を作製
し、実施例3と同様の実験を行った。その結果、膜厚分
布は24%と非常に大きく、図12の紙面に対して垂直
な方向の膜厚ムラのピッチはほぼλ/2に対応してい
た。
【0101】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明の高周波電
極によれば、高周波伝送線路に生じる定在波の節を隠し
込むような窪み部を設けることにより、定在波分布の影
響を抑制することができる。そして、これを用いること
により、プラズマ分布の生じない均一なプラズマ処理を
行うことが可能となる。特に、基体および基板のサイズ
や高周波電力の周波数に捕らわれずに、均一なプラズマ
処理が可能となる。
【0102】例えば、定在波のために従来ではVHF帯
の高周波により均一なプラズマ処理が行えなかったよう
な大型の基体や基板に対しても、ムラの無い均一なプラ
ズマ処理を施すことができる。従って、VHF帯のプラ
ズマによる高速で高品質なプラズマ処理を大型の基体や
基板に適用することが可能となり、プラズマ処理を必要
とするデバイスの生産性および品質の上で非常に大きな
効果が得られる。この効果は、特に太陽電池やTFT液
晶等の大型基板を用いたデバイス作製工程に有用であ
り、生産性および品質を向上させる上で非常に効果的で
ある。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は第1実施形態のプラズマ処理装置の概
略構成を示す断面図であり、(b)はそのX−X’断面
図である。
【図2】(a)は第1実施形態の高周波電極の構成を説
明するための斜視図であり、(b)はその断面図であ
る。
【図3】第1実施形態における高周波伝送線路を説明す
るための断面図である。
【図4】第1実施形態における誘電体でコーティングさ
れた高周波電極の構成を説明するための断面図である。
【図5】(a)は第1実施形態の高周波電極の作製方法
を説明するための断面図であり、(b)は高周波電極を
構成するパーツの断面図である。
【図6】(a)および(b)は第1実施形態における高
周波伝送線路をモデル化した図である。
【図7】(a)および(b)は第1実施形態の高周波電
極の作用を説明するための図である。
【図8】第1実施形態の変形例の高周波電極の構成を説
明するための断面図である。
【図9】第2実施形態のプラズマ処理装置の概略構成を
示す断面図である。
【図10】第2実施形態の高周波電極の構成を説明する
ための下面図である。
【図11】(a)は第3実施形態のプラズマ処理装置の
概略構成を示す斜視図であり、(b)は第3実施形態の
高周波電極の構成を説明するための下面図である。
【図12】第4実施形態のプラズマ処理装置の概略構成
を示す断面図である。
【図13】第4実施形態の高周波電極の構成を説明する
ための斜視図である。
【図14】(a)は従来のプラズマ処理装置の概略構成
を示す断面図であり、(b)はそのX−X’断面図であ
る。
【図15】(a)および(b)は従来の高周波電極の構
成を説明するための断面図である。
【図16】(a)および(b)は従来の高周波電極の高
周波伝送線路をモデル化した図である。
【図17】(a)および(b)は従来の高周波電極の問
題点を説明するための図である。
【符号の説明】
1、11、21、31 高周波電極 1a、11a、21a、31a 高周波電極の表面 2、12、22、32 窪み部 2a、12a、22a、32a 窪み部のスリット 2b、12b、22b 窪み部の内表面 4 誘電体 5 シャフト 5a 段付き穴 100 反応容器 103 高周波電極 104 段差の付いた誘電体カバー 105A、205A、305A 基体ホルダ 105B 補助部材 106 円筒状基体 107 排気パイプ 108 原料ガス供給手段 109 整合回路 111 高周波電源 116 ガス放出パイプ 117 ガス供給パイプ 131 基体回転用シャフト 132 モータ 133 シール部材 135 排気機構 140 基体加熱用ヒータ 206 板状基板 222 円柱状電極パーツ S 高周波電力供給点 E 高周波伝送線路の終端部 Z0 高周波伝送線路の特性インピーダンス Z インピーダンス V 電圧定在波振幅
フロントページの続き Fターム(参考) 4K030 AA06 BA30 CA02 CA14 EA06 EA11 FA03 JA19 KA15 KA30 LA16 5F045 AA08 AB04 AC01 AC17 AD06 AE15 AE23 BB03 CA13 CA15 DP03 DP27 EH04 EH13 EH19 EK07

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 高周波電力が供給される高周波電極であ
    って、 該高周波電極は窪み部を有し、該窪み部に対して一方側
    の該高周波電極の表面から、該窪み部の内表面を通っ
    て、該窪み部に対して他方側の該高周波電極の表面に高
    周波電力が伝送される高周波伝送線路が形成されている
    高周波電極。
  2. 【請求項2】 前記窪み部は、前記高周波伝送線路で発
    生する定在波の節の位置近傍に形成されている請求項1
    に記載の高周波電極。
  3. 【請求項3】 前記窪み部は、前記高周波伝送線路に沿
    った内表面の長さが前記高周波電力の波長λの1/2以
    下である請求項1または請求項2に記載の高周波電極。
  4. 【請求項4】 前記窪み部は、前記高周波伝送線路に沿
    った内表面の長さが前記高周波電力の波長λの1/10
    以上である請求項3に記載の高周波電極。
  5. 【請求項5】 前記窪み部は、前記高周波伝送線路にお
    いて、前記高周波電力の波長λの略1/2のピッチにて
    2個以上形成されている請求項1乃至請求項4のいずれ
    かに記載の高周波電極。
  6. 【請求項6】 前記高周波電極の表面が誘電体で被覆さ
    れている請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の高周
    波電極。
  7. 【請求項7】 請求項1乃至請求項6のいずれかに記載
    の高周波電極と被処理物とが互いに対向して配置され、
    該高周波電極と該被処理物の間で発生させたプラズマに
    より該被処理物にプラズマ処理を行うプラズマ処理装
    置。
  8. 【請求項8】 前記プラズマの前記被処理物の表面に平
    行な第1の方向の長さが前記高周波電力の波長λの1/
    4以上であり、該被処理物の表面に平行で該第1の方向
    と垂直な第2の方向の長さが該波長λの1/4以下とな
    るように、前記高周波電極の形状および配置が設定され
    ている請求項7に記載のプラズマ処理装置。
  9. 【請求項9】 前記被処理物を、前記高周波電極に対し
    て相対的に、前記第2の方向に移動させながらプラズマ
    処理を行う請求項8に記載のプラズマ処理装置。
  10. 【請求項10】 前記高周波電極の直近に、プラズマ処
    理用のガス供給口およびガス排気口が設けられている請
    求項9に記載のプラズマ処理装置。
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