JP3763392B2 - 高周波電極およびプラズマ処理装置 - Google Patents

高周波電極およびプラズマ処理装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高周波電力が供給される高周波電極およびそれを用いたプラズマ処理装置に関し、さらに詳しくは、そのサイズを高周波電力の波長λの1/4以上に大型化しても定在波の影響を抑制することができ、大面積の被処理物に対して均一処理を行うために好適な高周波電極およびプラズマ処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
成膜、加工、表面処理等のプラズマ処理においては、プラズマ処理速度の高速化とプラズマ処理面の高品質化が望まれている。
【0003】
この要求に応えるための技術としては、25MHz〜数100MHz程度の高周波電力を用いたプラズマ処理方法が知られている。この技術については、例えばPlasma Chemistry and Plasma Processing,Vol7,No.3,(1987) p267−273に記載されている。
【0004】
しかしながら、上記技術を発展させて大面積の基体をプラズマ処理しようとすると、均一なプラズマ処理が行えないという問題点があった。この点については、特開平9−279348号公報の中で指摘されている。さらに、この公報は、均一なプラズマ処理が行えない原因として、高周波伝送線路に発生する定在波の影響を挙げて、その解決手段について記載している。
【0005】
以下に、特開平9−279348号公報に開示された内容について、図14および図15を参照しながら説明する。図14(a)はプラズマ処理装置の構成を示す断面図であり、図14(b)はそのX−X’断面図である。
【0006】
このプラズマ処理装置は、反応容器100を備えており、その中に6個の基体ホルダ105Aが同心円状に所定の間隔で配置されている。各基体ホルダ105Aの上には成膜用の円筒状基体106が配置され、各基体ホルダ105Aの内部には基体加熱用ヒータ140が設けられており、円筒状基体106を内側から加熱できるようにされている。また、各基体ホルダ105Aはモータ132に連結されたシャフト131に接続されており、回転できるようにされている。円筒状基体106の上には円筒状基体106を支えるための補助部材105Bが配置されている。さらに、反応容器100のシャフト131の周囲にはシール部材133が設けられている。プラズマ生成領域の中心に位置する部分には、高周波電力投入用の高周波電極103が設けられており、この高周波電極103は整合回路109を介して高周波電源111に接続されている。また、反応容器100には排気バルブを備えた排気パイプ107が設けられており、この排気パイプ107は真空ポンプを備えた排気機構135に連通している。反応容器100の排気機構135とは反対側には、図示しないガスボンベ、マスフローコントローラおよびバルブ等で構成された原料ガス供給手段108が設けられている。この原料ガス供給手段108は、ガス供給パイプ117を介して複数のガス放出孔を備えたガス放出パイプ116に接続されている。
【0007】
上記プラズマ処理装置を用いたプラズマ処理、例えばプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法による成膜は、例えば以下のようにして行われる。
【0008】
まず、反応容器100を排気機構135によって高真空まで排気した後、原料ガス供給手段108からガス供給パイプ117およびガス放出パイプ116を介して原料ガスを反応容器100内に導入して、所定の圧力に維持する。そして、高周波電極103と円筒状基体106との間にプラズマを発生させる。これにより、原料ガスがプラズマにより分解されて励起され、円筒状基体106の上に堆積膜が形成される。
【0009】
上記プラズマ処理装置において、高周波電極103は、段差の付いた誘電体カバー104で被覆されている。図15(a)は段差付き誘電体カバー104で被覆された高周波電極103の構成を示す図であり、図15(b)は段差付き誘電体カバーで被覆されていない高周波電極103の構成を示す図である。以下、図15(b)に示した高周波電極をカバー無し電極、図15(a)に示した高周波電極をカバー付き電極と称する。
【0010】
上記特開平9−279348号公報では、図15(b)に示したカバー無し電極を用いた場合、30MHz以上の周波数において、膜質および堆積速度に影響を及ぼす定在波が発生し、図15(b)中のA−A’位置近傍に定在波の節が現れているものと予測している。そして、この節の位置で電界が弱くなって偏在的なプラズマ分布が起こっているものと考えている。そこで、この公報では、図15(a)に示すように、定在波の節近傍と考えられるA−A’位置に高周波電力の反射面を配置している。具体的には、上記段付き誘電体カバー104によって高周波伝送線路の特性インピーダンスをA−A’位置で急激に(小から大)に変化させることにより入射波を反射させている。これにより、反射面での電界を強めて偏在的なプラズマ分布を抑制し、膜質および堆積速度の均一化を図っている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
上述の図15(a)に示した特開平9−279348号公報の技術は、図15(b)中のA−A’位置近傍における定在波の節を腹に近づけるような効果を有している。しかしながら、この効果を得るためにA−A’位置に配した特性インピーダンスの不整合部は、以下のような問題点を引き起こしている。すなわち、▲1▼A−A’位置よりも後段に高周波電力が伝送されにくい。また、A−A’位置を境として電圧が大きく異なるため、結果としてプラズマ分布が生じる。さらに、
▲2▼上記不都合を伴いながらA−A’位置を完全に腹に転じさせたとしても、そのA−A’位置からλ/4(λ:高周波電力の波長)だけ上段の位置では節が現れてくる。
【0012】
従って、上記従来技術は定在波の節の影響を本質的に改善したものではなく、プラズマ分布の問題は依然として解決されていない。
【0013】
上記問題点について、さらに具体的に説明する。図16(a)は図15(a)に示した高周波電極103の高周波伝送線路をモデル化したものである。なお、説明が繁雑になるのを避けるために、分布定数線路の損失抵抗と損失コンダクタンスとは省略している。また、線路の終端は開放端(終端負荷ZL=∞)としている。厳密には損失コンダクタンスおよび終端負荷がプラズマによるエネルギー消費部に相当するのであるが、これらを省略しても以下の説明においては特に問題は生じない。
【0014】
この図16(a)および以下の図16(b)において、Z1はA−A’位置よりも上流線路の特性インピーダンスを示し、Z2はA−A’位置よりも下流線路の特性インピーダンスを示す。Lは終端部からA−A’位置までの距離を示している。βは位相定数であり、
β=(2π)/λ ・・・(1)
で表される。なお、λは高周波電力の波長である。
【0015】
以下に、上記図16(a)のモデルに基づいて、定在波分布を調べる。なお、下記式(2)〜下記式(7)の導出に当たっては、「マイクロ波工学」(森北出版)を参照した。
【0016】
まず、終端部から距離xだけ上流側の位置から下流側を見たときのインピーダンスZ(x)は、下記式(2)または下記式(3)のように表される。なお、下記式(2)、下記式(3)および下記式(7)において、jは虚数である。
【0017】
Figure 0003763392
さらに、上記インピーダンスZ(x)を用いると、位置xにおける電圧反射係数Γ(x)は、下記式(4)または下記式(5)のように表される。
【0018】
Figure 0003763392
さらに、上記電圧反射係数Γ(x)を用いると、位置xにおける電圧定在波の振幅|V(x)|は、下記式(6)または下記式(7)のように表される。なお、下記式(6)および下記式(7)において、AはA−A’位置よりも上流側の高周波電力供給点Sにおける、入射波の振幅を表している。
【0019】
Figure 0003763392
図17に、上記式(1)〜上記式(7)に基づいて、L=λ/4×0.95として電圧定在波振幅|V(x)|を試算した結果を示す。この図17においては、電圧定在波振幅|V(x)|を|A|で規格化して表現している。
【0020】
図17(b)はZ2=Z1とした場合の結果であり、図15(b)に示したカバー無し電極を用いた場合をイメージしたものである。なお、この場合には、図16(a)に示した高周波伝送線路モデルは図16(b)のモデルと等価である。また、図17(a)はZ2=Z1×100とした場合の結果であり、誇張されているかもしれないが、図15(a)に示したカバー付き電極を用いた場合をイメージしている。
【0021】
図17(a)と図17(b)とを比較すると、図15(b)に示したカバー無し電極を用いた場合にはA−A’位置(x=L)付近に定在波の節が現れているのに対して、図15(a)に示したカバー付き電極を用いた場合にはA−A’位置(x=L)付近に定在波の腹が現れている。この点が上記公報の構成による効果である。
【0022】
しかしながら、図17(a)から分かるように、カバー付き電極を用いた場合には、A−A’位置を境として定在波の振幅が大きく異なっている。このことは、上記▲1▼の問題点に相当し、A−A’位置を境としてプラズマ分布が生じていることを意味する。また、A−A’位置の後段において電圧が極端に大きくなる(インピーダンスが大きくなる)ことは、高周波電力が伝送されにくくなることを意味する。
【0023】
さらに、A−A’位置より上流側において、λ/2周期の定在波が依然として発生している。このことは、上記▲2▼の問題点に相当している。すなわち、A−A’位置付近の節を腹に転じているものの、それよりλ/4だけ上段の位置では、いずれにしても節が存在しているのである。
【0024】
本発明は、このような従来技術の課題を解決すべくなされたものであり、高周波伝送線路に生じる定在波の節の影響を抑制することができる高周波電極、およびそれを用いてプラズマ分布の生じない良好なプラズマ処理を行うことができるプラズマ処理装置を提供することを目的とする。
【0025】
【課題を解決するための手段】
本発明の高周波電極は、高周波電力が供給される高周波電極であって、該高周波電極は窪み部を有し、該窪み部に対して一方側の該高周波電極の表面から、該窪み部の内表面を通って、該窪み部に対して他方側の該高周波電極の表面に高周波電力が伝送される高周波伝送線路が形成されており、そのことにより上記目的が達成される。
【0026】
前記窪み部は、前記高周波伝送線路で発生する定在波の節の位置近傍に形成されているのが好ましい。
【0027】
前記窪み部は、前記高周波伝送線路に沿った内表面の長さが前記高周波電力の波長λの1/2以下であるのが好ましい。
【0028】
前記窪み部は、前記高周波伝送線路に沿った内表面の長さが前記高周波電力の波長λの1/10以上であるのが好ましい。
【0029】
前記窪み部は、前記高周波伝送線路において、前記高周波電力の波長λの略1/2のピッチにて2個以上形成されているのが好ましい。
【0030】
前記高周波電極の表面が誘電体で被覆されているのが好ましい。
【0031】
本発明のプラズマ処理装置は、本発明の高周波電極と被処理物とが互いに対向して配置され、該高周波電極と該被処理物の間で発生させたプラズマにより該被処理物にプラズマ処理を行い、そのことにより上記目的が達成される。
【0032】
前記プラズマの前記被処理物の表面に平行な第1の方向の長さが前記高周波電力の波長λの1/4以上であり、該被処理物の表面に平行で該第1の方向と垂直な第2の方向の長さが該波長λの1/4以下となるように、前記高周波電極の形状および配置が設定されているのが好ましい。
【0033】
前記被処理物を、前記高周波電極に対して相対的に、前記第2の方向に移動させながらプラズマ処理を行うのが好ましい。
【0034】
前記高周波電極の直近に、プラズマ処理用のガス供給口およびガス排気口が設けられているのが好ましい。
【0035】
以下に、本発明の作用について説明する。
【0036】
本発明にあっては、導体からなる高周波電極の表面に窪み部を設ける。高周波は、表皮効果によって導体の表面にしか流れないため、窪み部に対して一方側の高周波電極の表面から、窪み部の内表面を通って、窪み部に対して他方側の高周波電極の表面に高周波電力が伝送される。
【0037】
この窪み部は、後述する第1実施形態に示すように、高周波伝送線路で発生する定在波の節の位置近傍に形成することにより、定在波の節が窪み部の内表面に現れる。このため、電極表面のプラズマと接する部分に節が現れず、偏在的なプラズマ分布を抑制することが可能である。
【0038】
さらに、高周波伝送線路に沿った窪み部の内表面の長さを高周波電力の波長λの1/2以下とし、窪み部を高周波伝送線路に略λ/2のピッチにて1個または2個以上形成することにより、後述する第1実施形態に示すように、窪み部の中に定在波の節を隠し込むことが可能となる。
【0039】
さらに、高周波伝送線路に沿った窪み部の内表面の長さを高周波電力の波長λの1/10以上にすることにより、後述する実施例1に示すように、プラズマ処理における分布を5%以下に抑えることが可能となる。
【0040】
さらに、導体からなる高周波電極の表面を誘電体で被覆することにより、後述する第1実施形態に示すように、電界分布を誘電体で緩和してプラズマの分布をさらに小さくすることが可能である。
【0041】
本発明のプラズマ処理装置にあっては、このように定在波の節の影響を抑制した高周波電極を用いることにより、均一なプラズマ処理を行うことが可能となる。
【0042】
さらに、プラズマの、被処理物の表面に平行な第1の方向の長さが高周波電力の波長λの1/4以上であり、被処理物の表面に平行で第1の方向と垂直な第2の方向の長さがλ/4以下となるように、高周波電極の形状および配置を設定した場合、後述する第3実施形態に示すように、第2の方向の高周波伝送線路には定在波の分布が殆ど現れず、第1の方向の高周波伝送線路では定在波の節を窪み部の中に隠し込むことが可能である。従って、プラズマと接する高周波電極表面には定在波分布が殆ど生じない。この場合、板状基板に対して簡単な構成の高周波電極によりプラズマ処理を行うことができ、さらに、プラズマサイズが小さいのでより均一なプラズマ処理が可能となる。基板を高周波電極に対して相対的に第2の方向に移動させながらプラズマ処理を行うことにより、基板全面にプラズマ処理を行うことが可能である。
【0043】
さらに、上記構成を採用することにより、サイズの小さいプラズマ領域の直近(高周波電極の直近)にプラズマ処理用のガス供給口およびガス排気口を設けることができ、これによって、後述する第4実施形態に示すように、大流量のガスをプラズマ発生部に安定して供給することが可能である。
【0044】
【発明の実施の形態】
上述したように、本発明は、高周波伝送線路に生じる定在波の節の影響を抑制した高周波電極と、この高周波電極を用いてプラズマ分布の生じない良好なプラズマ処理を可能とするプラズマ処理装置を提供するものである。
【0045】
なお、本発明では、従来技術のように、特定位置に現れる定在波の節を除去するようなアプローチはしていない。その理由は、定在波の腹と節とが高周波の波長λの1/4毎に交互に現れることは物理現象であって、これを完全に除去することは不可能と考えたからである。但し、高周波伝送線路の特性インピーダンスと終端負荷インピーダンスとの整合が完全に取れていれば定在波は発生しないが、プラズマ発生部が損失コンダクタンスおよび終端負荷となるような系においては、このように理想的な整合が得られるとは考えにくい。
【0046】
そこで、本願発明者は、高周波伝送線路に発生する定在波の存在を認めた上で、その節を隠し込むようなアプローチを行った。そして、この指針に基づいて具体的な構成を実現することができたのは、導体表面にしか電流が流れないという高周波の性質、すなわち表皮効果を積極的に利用したからである。
【0047】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0048】
(第1実施形態)
図1(a)は本実施形態のプラズマ処理装置の構成を示す断面図であり、図1(b)はそのX−X’断面図である。図1において、高周波電極1以外の構成要素は図14に示した従来技術と同じであるので、同一の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0049】
本実施形態の特徴は高周波電極1の形状にあり、図2(a)に高周波電極1の斜視図を示し、図2(b)にその断面図を示す。高周波電極1は、従来技術と同様に円柱棒状であり、その外周面1aから円柱の中心部に向けて窪み部2を有しており、外観は円柱の表面1aに複数のスリット2aが設けられたような形状である。
【0050】
この窪み部2は、後述する高周波伝送線路上において、高周波電力の波長λの略1/2のピッチで1個または2個以上設けられ、1個の窪み部2の内表面2bの高周波伝送線路に沿った長さはλ/2以下とされている。なお、窪み部2の内表面2bとは、図2(b)を拡大した図3において、上から2番目の窪み部2に対して太線で示した部分を言う。好ましくは、1個の窪み部2の内表面2bの高周波伝送線路に沿った長さはλ/10以上である。なお、図3において、106はプラズマ処理がなされる円筒状基体である。また、図3中のxxは、後述する高周波伝送線路の終端部Eから高周波電極1の表面1a上(プラズマと接する部分)の任意の位置までの軸方向距離を表わしており、後述する図7(b)の横軸に対応するものである。
【0051】
さらに、高周波電極1の外周面1aおよびスリット部2aの表面全体は、図4に示すように、アルミナやテフロン等の誘電体4で被覆されているのが好ましい。この誘電体4は、公知技術に基づいてCVD法や溶射法等、どのような方法で作製してもよい。
【0052】
図2および図3に示した窪み部2を設けた高周波電極1は、どのような方法で作製してもよい。例えば図5(b)に示すような中心に段付き穴5aを設けた円柱状電極パーツ222を順次シャフト5に圧入し、図5(a)に示すように組み立てることによって作製することができる。なお、この場合には、シャフト5と円柱状電極パーツ222を電気的に接続させることが必要である。
【0053】
本実施形態において、プラズマ処理は従来技術と同様に、以下のようにして行うことができる。
【0054】
まず、反応容器100を排気機構135によって高真空まで排気した後、ガス供給手段108からガス供給パイプ117およびガス放出パイプ116を介してプラズマ処理用ガスを反応容器100内に導入して、所定の圧力に維持する。そして、高周波電極1と円筒状基体106との間にプラズマを発生させる。これにより、ガスがプラズマにより分解されて励起され、円筒状基体106表面に対してプラズマ処理が行われる。
【0055】
以下に、本実施形態の作用について、説明する。
【0056】
まず、本実施形態の高周波電極1における、導体表面の表皮厚さについて説明する。本実施形態において使用する高周波電力の周波数をf(Hz)とすると、表皮厚さδは下記式(8)で与えられる。なお、下記式(8)において、ρは高周波電極材料の固有抵抗であり、μは高周波電極材料の透磁率である。
【0057】
δ={ρ/(π・f・μ)}0.5 ・・・(8)
例えば、周波数fを80MHz以上とし、高周波電極1をAl製とすると、上記式(8)から表皮厚さはδ≦0.01mmとなる。
【0058】
このように表皮厚さδが薄いので、図3の上部から高周波電極1に供給された高周波電力は、高周波電極1(導体)の表皮を通りながら下方に伝送される。具体的には、高周波電力は、電極1への高周波電力供給点Sから出発した後、高周波電極1の表面1aを通り、続いて窪み部2の内表面2bを通る。高周波電力は、続いて高周波電極の表面1aを通った後、上記の経路が繰り返されて終端部Eに致る。なお、図3では、高周波伝送経路のうち、高周波電力が高周波電極表面1aを通る部分を実線で表し、窪み部2の内表面2bを通る部分を点線で表している。
【0059】
次に、本実施形態における定在波分布について説明する。図6(a)は図3に示した高周波電極1の高周波伝送線路をモデル化したものである。なお、高周波伝送線路は、高周波電極1の表面1aと窪み部2の内表面2bとから構成されている。この図6(a)および以下の図6(b)において、Z0は伝送線路の特性インピーダンスを示し、Zpは損失コンダクタンス(プラズマ)を示し、ZLは終端負荷(プラズマ)を示している。なお、以下の説明においては定在波の分布形状のみを議論し、位相の絶対値および振幅の絶対値については議論しないため、図6(a)のモデルを図6(b)のように簡略化してもよい。すなわち、損失コンダクタンスを無視し、終端部を開放端(終端負荷ZL=∞)としてもよい。そこで、図6(b)のモデルに基づいて、高周波伝送線路上における定在波分布を説明する。
【0060】
図3に示した、高周波電極表面1aと窪み部2の内表面2bとを含む高周波伝送線路上における定在波分布を考える。伝送線路の終端部E点から伝送線路上において距離x1だけ上流側の位置から下流側を見たときのインピーダンスZ(x1)は、下記式(9)のように表される。なお、下記式(9)において、jは虚数であり、βは下記式(10)で表される位相定数であり、下記式(10)においてλは高周波電力の波長である。
【0061】
Z(x1)=−j・Z0/tan(β・x1) ・・・(9)
β=(2π)/λ ・・・(10)
さらに、上記インピーダンスZ(x1)を用いると、位置x1における電圧反射係数Γ(x1)は、下記式(11)のように表される。
【0062】
Γ(x1)={Z(x1)−Z0}/{Z(x1)+Z0} ・・・(11)
さらに、上記電圧反射係数Γ(x1)を用いると、位置x1における電圧定在波振幅|V(x1)|は、下記式(12)のように表される。なお、下記式(12)において、Aは電力供給点Sにおける入射波の振幅を表している。
【0063】
|V(x1)|=|A|・|1+Γ(x1)| ・・・(12)
図7(a)に、上記式(9)〜上記式(12)に基づいて、電圧定在波振幅|V(x1)|を試算した結果を示す。試算においては1個の窪み部2の内表面2bの全長をλ/6とし、高周波伝送線路上における窪み部2のピッチをλ/2とした。また、終端部E点と、これに一番近い窪み部2の内表面2bの中央部との間の、高周波伝送線路上の距離をλ/4とした。この図7(a)において、縦軸は電圧定在波振幅|V(x1)|を|A|で規格化して表している。また、横軸はE点を原点とし、高周波伝送線路上での距離X1を表している。さらに、図7(a)において、実線は高周波電極表面1aの部分に対する電圧を示し、点線は窪み部内表面2b上の部分に対する電圧を示している。
【0064】
図7(a)から分かるように、本実施形態における高周波伝送線路上の定在波分布は、従来技術において図17(b)に示したカバー無し電極を用いた場合の定在波分布と何等異なるものではない。しかしながら、本実施形態においては、定在波の節となる部分が、高周波電極表面1aではなく、窪み部内表面2bに現れている。この点が本発明のポイントであり、高周波伝送線路上の節の存在を認めながら、この節を窪み部2の中に隠し込んでいるのである。
【0065】
その結果、高周波電極表面1a(プラズマと接する部分)上の距離xx(図3中に図示)を横軸として|A|で規格化した電圧定在波振幅|V(xx)|/|A|を表すと、図7(b)に示すようになり、プラズマと接する部分に節が現れない。従って、円筒状基体106の軸方向に沿って、偏在的なプラズマ分布を抑制することができ、均一なプラズマ処理を施すことができる。
【0066】
なお、上記窪み部2の中に定在波の節を隠し込む条件は、図7(a)からも明らかなように、1個の窪み部2の内表面2bの全長がλ/2以下で、高周波伝送線路上に略λ/2のピッチで1個または2個以上の窪み部2が形成されていることである。さらに、後述する実施例1に示すように、1個の窪み部2の内表面2bの全長がλ/10以上である場合に、プラズマ処理の分布を5%以内に抑えられるので好ましい。
【0067】
ところで、上記試算は図6(b)に示したモデルに基づいているため、図7(b)に示すようなピークを有する定在波分布になっているが、図6(a)に示すような現実的なモデルの場合には、さらにブロードな分布となる。従って、本実施形態によれば、高周波電極表面1a上に殆ど定在波分布が生じない。この点については、後述する実施例により確認することができる。
【0068】
さらに、図2および図3に示した構成では、スリット部2aにおいてプラズマに与える電界が弱まることが懸念されるかもしれないが、プラズマ自体の空間分布を考慮すれば、このことは問題ではない。例えば、数Torrオーダー以下の圧力の場合には、数mm程度の隙間を設けても全く問題は生じない。但し、スリット幅として考慮すべきオーダーは、プラズマを発生させる圧力によって異なる。 さらなる定在波分布の抑制や、さらなるスリット部2aの影響の抑制を目指すためには、図4に示したように、高周波電極1の表面を誘電体4で覆うようにすればよい。このようにすれば、多少の電界分布が存在しても誘電体4により緩和されるので、プラズマ分布を小さくすることができる。
【0069】
なお、上記試算は終端部を開放端として行ったが、実際には終端負荷はプラズマインピーダンスに依存するものであり、節の位置を特定できない場合が多い。このような場合には、まず、窪み部2の無い円柱棒状の電極によって、高周波伝送線路の終端部から節までの距離を調べておけばよい。その上で、節を隠し込むことができるように窪み部2を配置して、高周波電極を作製すればよい。
【0070】
(第1実施形態の変形例)
上記第1実施形態では、窪み部2における内表面2bの全長の長さを十分に確保するために、図2に示したようなスリット部2aから内表面が広がるような形状の窪み部2を設けたが、本発明はこれに限定されず、問題となる定在波の節を窪み部2の内表面2bにて隠し込めれば良い。例えば、終端負荷や損失コンダクタンスによって、定在波分布が元々あまり大きくない場合や、目的とする電圧定在波振幅の分布の許容範囲が広い場合には、窪み部2の内表面2bの全長はもっと短くてもよい。このような場合には、図8に示すように、スリット2aのみからなる窪み部を設けてもよい。さらに、円柱棒状の高周波電極1の直径が大きい場合には、図8に示すようなスリット2aのみからなる窪み部であっても、スリット2aの深さを深くすることにより、窪み部の内表面の全長を十分確保することができるので、定在波の節を十分に隠し込める場合がある。
【0071】
なお、本変形例では窪み部の内表面を平面で構成したが、曲面であってもよい。
【0072】
スリット幅としては、第1実施形態と同様に設定すればよく、例えば数Torrオーダ以下の圧力の場合には数mm程度であってもよい。
【0073】
(第2実施形態)
上記実施形態1では、高周波電極として円柱棒状の導体を用いて、円筒状基体106をプラズマ処理する場合について説明したが、本発明において高周波電極の形状およびプラズマ処理が行われる被処理物はこれに限定されない。本実施形態では、板状の基板に対してプラズマ処理を行う場合について説明する。
【0074】
例えば、板状基板206にプラズマ処理を行う場合には、図9に示すような高周波電極11を用いることができる。図9において、基板206はSiウェハやガラス基板等の板状基板であり、高周波電極11は円板状または平板状である。図10は高周波電極11を円板状とした場合の下面図である。図9および図10において、11aは高周波電極11の表面を示し、12は高周波電極11の表面から上方に向けて設けられた窪み部であり、12aはそのスリット部である。205Aは基板ホルダーであり、117はガス供給パイプを示し、107はガス排気パイプを示している。
【0075】
本実施形態においても、高周波伝送線路は、図9に実線および破線の矢印で示すように、高周波電極表面11aと窪み部12の内表面12bとで構成される。そして、第1実施形態と同様に、定在波の節を窪み部12の中に隠し込むことができる。従って、本実施形態における高周波電極11のプラズマと接する部分の電圧定在波振幅も、図7(b)と同様のものになる。但し、高周波電極11が円板状の場合には、高周波伝送線路が高周波電極11の中心軸に対して対称形となるため、図10に示すように、窪み部12が高周波電極11の中心軸に対して対称な位置に形成される。このため、定在波分布も高周波電極11の中心軸に対して対称形となる。
【0076】
本実施形態において、窪み部の形状やその配置の仕方については第1実施形態と同様にすることができ、その効果については第1実施形態と同様であるので、説明を省略する。本実施形態によれば、板状基板に対して上記第1実施形態と同様の効果を得ることが可能である。
【0077】
(第3実施形態)
上記実施形態2は、本発明の基本思想を板状基板に対して適用可能としたものであるが、板状基板を用いる場合には高周波電極をさらに簡単な構成とすることも可能である。本実施形態ではこの構成について説明する。
【0078】
本実施形態における高周波電極21は、図11(a)に示すDx方向の長さWxが、その方向における基板206の長さよりも短く、λ/4以下となっている。一方、Dx方向と垂直なDy方向の高周波電極21の長さWyは、その方向における基板206の長さと同程度であり、基板206のサイズに応じてどのような長さであってもよいが、Wyがλ/4以上である場合に本発明の効果が活かされる。
【0079】
本実施形態においても、高周波電極21にはその表面21aから上方に向けて窪み部22が形成されており、Dx方向に見た断面形状は、上記図9に示した第2実施形態の高周波電極11と同様である。但し、本実施形態では、高周波電極21の下面図である図11(b)に示すように、窪み部22(スリット部22a)は図11(a)のDx方向に一様に形成されている。
【0080】
本実施形態において、高周波伝送線路は、図11(a)のDx方向およびDy方向に2次元的に構成されるが、高周波電極21のDx方向の長さWxはλ/4よりも短い。高周波伝送線路上の定在波の周期は、例えば図7(a)に示したようにλ/2であるので、Dx方向の高周波伝送線路には定在波の分布が殆ど現れない。一方、Dy方向においては、Wyがλ/4以上の場合に定在波分布が生じるおそれがあるが、上記第2実施形態と同様に、定在波の節を窪み部22の中に隠し込むことが可能である。従って、高周波電極21のプラズマと接する部分には、定在波分布が殆どなく、プラズマ分布が生じない。
【0081】
なお、上記構成では、プラズマが、高周波電極21と基板206とが対向する空間にしか発生しないが、基板206が搭載される基板ホルダ305AをDx方向に移動させることにより、基板206の全面に対してプラズマ処理を行うことが可能である。
【0082】
本実施形態において、Dx方向に見たときの窪み部の形状やその配置の仕方については第1実施形態および第2実施形態と同様にすることができ、その主たる効果については第1実施形態および第2実施形態と同様であるので、説明を省略する。本実施形態によれば、上記第2実施形態と同様の効果をより簡単な電極構成で得ることができる。
【0083】
さらに、本実施形態では、プラズマサイズが第2実施形態よりも小さいので、例えばガス流速や放電ギャップの不均一等の定在波以外の原因によるプラズマの不均一性についても解消することが可能である。さらに、本実施形態によれば、基板206のDx方向の長さの制約を全く受けないので、インライン方式のプラズマ処理装置に適しており、特に、シート状の基板をプラズマ処理する場合にも好適である。
【0084】
(第4実施形態)
上記実施形態3は、図11(a)中のDx方向の長さが短い高周波電極を用いることにより、上述のような優れた効果を呈した。しかしながら、第3実施形態の思想に種々の工夫を加えることにより、さらに均一性に優れたプラズマ処理が可能なプラズマ処理装置を得ることができる。本実施形態ではその一例について説明する。
【0085】
本実施形態における高周波電極31は、図12および図13に示すように、断面が略半円形状をなし、図2に示した円柱棒状の高周波電極1を中心軸を含む平面で切断したような形状を有している。窪み部の形状は図2に示した窪み部2と同様であり、外観的には図13に示すように、高周波電極31の表面31aにスリット部32aが形成されたような形状を有している。
【0086】
本実施形態では、上述のような高周波電極31の円筒面を板状基板206と対向させているため、上記円筒面の先端付近にのみプラズマが発生する。従って、第3実施形態と同様に、Dx方向のプラズマの長さを短くすることができる。そして、このプラズマのDx方向の長さをλ/4以下にすることにより、第3実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0087】
なお、図12の紙面に対して垂直方向(Dy)の高周波伝送線路については、第2実施形態および第3実施形態と同様であり、定在波の節を窪み部に隠し込むことができる。
【0088】
さらに、本実施形態では、上記円筒面を有する高周波電極31を、カバー体40で包囲して、図12中にFで示すガス流路を形成している。このガス流路Fにおいて、プラズマよりも上流側の部分がプラズマ処理用のガス供給口であり、図12ではFinを付している。また、プラズマよりも下流側の部分がガス排気口であり、図12ではFoutを付している。117および107はガス供給パイプおよびガス排気パイプである。このガス流路Fは、その流線に急激な変化が加わらないように、略U字形状をなしており、これによってプラズマ部に大流量のガスを安定して供給することができる。
【0089】
本実施形態において、Dx方向に見たときの窪み部の形状やその配置の仕方については第3実施形態と同様にすることができ、その主たる効果については第3実施形態と同様であるので、説明を省略する
さらに、本実施形態によれば、第3実施形態よりもプラズマ部に大流量のガスを安定して供給することができるので、さらなるプラズマ処理の均一化を図ることができる。
【0090】
上述したように、本発明の高周波電極によれば、高周波伝送線路に生じる定在波の節の影響を抑制することができ、これを用いることによりプラズマ分布の生じない均一なプラズマ処理を行うことが可能となる。特に、基体および基板のサイズや高周波電力の周波数に捕らわれずに、均一なプラズマ処理が可能となる。
【0091】
例えば、定在波のために、従来ではVHF帯の高周波により均一なプラズマ処理が行えなかったような大型の基体や基板に対しても、ムラの無い均一なプラズマ処理を施すことができる。従って、VHF帯のプラズマによる高速で高品質なプラズマ処理を大型の基体や基板に適用することが可能となり、プラズマ処理を必要とするデバイスの生産性および品質の上で非常に大きな効果が得られる。この効果は、特に太陽電池やTFT液晶等の大型基板を用いたデバイス作製工程に有用であり、生産性および品質を向上させる上で非常に効果的である。
【0092】
なお、本発明の高周波電極の用途は、上述したようなプラズマ処理に限られるものではなく、定在波の影響を伴う如何なる用途にも適用することが可能である。例えば、均一なコロナ放電処理が要求される分野等にも本発明の高周波電極を適用可能である。
【0093】
以下、本発明のさらに具体的な実施例について説明する。
【0094】
[実施例1]
図1に示したプラズマ処理装置を用い、高周波電力の周波数を500MHz(λ=600mm)として成膜実験を行った。基体106は、直径100mm、長さ360mm、厚さ5mmのAl製円筒状基体であり、反応容器100内に6本設置した。そして、基体106を回転させながらアモルファスSiの成膜を行った。高周波電極1は、Al製で直径30mmの円柱形状であり、図5に示した方法により窪み部2を設けて作製した。組立後の高周波電極1の長さは500mmとした。また、窪み部2は、節の現れそうな位置を予備実験によって予め調べておき、その位置に配置した。本実施例の予備実験では、高周波伝送線路の終端部から約100mmだけ上流側の位置に節が現れたため、この部分の節を隠すように1個めの窪み部2を配置した。さらに、この1個めの窪み部2から、高周波伝送線路上でλ/2(300mm)だけ上流側の位置に2個めの窪み部2を配置した。1個の窪み部2の内表面の全長は、下記の3種類を設定した。その他の実験条件は以下に示す通りとした。
【0095】
Figure 0003763392
上述のようにして成膜した円筒状基体のうち、特定の1本を取り出して成膜されたa−Si膜の膜厚を軸方向に20箇所測定し、膜厚分布を調べた。その結果は下記表1の通りであり、窪み部2の内表面の全長をλ/10以上にすることにより、a−Si膜の膜厚分布を5%以下にすることができた。
【0096】
【表1】
Figure 0003763392
[比較例1]
高周波電極1に窪み部2を設けずに、実施例1と同じ外形サイズの高周波電極を作製し、実施例1と同様の実験を行った。その結果、膜厚分布は30%と非常に大きく、膜厚ムラのピッチはほぼλ/2に対応していた。
【0097】
[実施例2]
実施例1で作製した高周波電極1の表面に、溶射法によりアルミナをコーティングして、図4に示したような誘電体4で覆われた高周波電極1を作製した。この高周波電極を用いて実施例1と同様の実験を行った。その結果は下記表2の通りであり、特に、実施例1で膜厚分布が大きかった窪み部2の内表面の全長がλ/12の条件において、膜厚分布が改善された。
【0098】
【表2】
Figure 0003763392
[実施例3]
図12に示したプラズマ処理装置を用い、高周波電力の周波数を200MHz(λ=1.5m)として成膜実験を行った。基板206は、1m角のガラス基板であり、図12中のDx方向に200mm移動させてアモルファスSiの成膜を行った。高周波電極31は、Al製で曲率半径100mmの円筒曲面を有し、窪み部を設けた。図12の紙面に対して垂直な方向(Dy方向)の長さは1.1mとした。また、窪み部は、節の現れそうな位置を予備実験によって予め調べておき、その位置に配置した。本実施例の予備実験では、高周波電極31のDy方向における中央部から略λ/4だけ離れた位置に節が現れたため、この部分の節を隠すように2個の窪み部を配置した。1個の窪み部の内表面の全長はλ/10(150mm)となるように設定し、さらに、高周波電極の表面をアルミナでコーティングした。その他の実験条件は以下に示す通りとした。
【0099】
(実験条件)
周波数:200MHz
高周波電力:4kW
成膜用ガス:SiH4(1%)+H2(2.5%)+He(96.5%)
SiH4ガス流量:750SCCM
反応容器内圧力:8Torr
基板温度:250℃
窪み部32の内表面全長:150mm
スリット32aの幅:1mm
(実験結果)
上述のようにして成膜した基板に対して、100mm(Dx方向)×1m(Dy方向)の領域内で60点の膜厚を測定した結果、その分布は5%と非常に良好であった。しかも、成膜速度は20オングストローム/sと非常に高速であり、光感度が105〜106オーダという非常に高品質の膜が得られていることが確認できた。
【0100】
[比較例2]
高周波電極31に窪み部を設けずに、実施例3と同じ外形サイズの高周波電極を作製し、実施例3と同様の実験を行った。その結果、膜厚分布は24%と非常に大きく、図12の紙面に対して垂直な方向の膜厚ムラのピッチはほぼλ/2に対応していた。
【0101】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明の高周波電極によれば、高周波伝送線路に生じる定在波の節を隠し込むような窪み部を設けることにより、定在波分布の影響を抑制することができる。そして、これを用いることにより、プラズマ分布の生じない均一なプラズマ処理を行うことが可能となる。特に、基体および基板のサイズや高周波電力の周波数に捕らわれずに、均一なプラズマ処理が可能となる。
【0102】
例えば、定在波のために従来ではVHF帯の高周波により均一なプラズマ処理が行えなかったような大型の基体や基板に対しても、ムラの無い均一なプラズマ処理を施すことができる。従って、VHF帯のプラズマによる高速で高品質なプラズマ処理を大型の基体や基板に適用することが可能となり、プラズマ処理を必要とするデバイスの生産性および品質の上で非常に大きな効果が得られる。この効果は、特に太陽電池やTFT液晶等の大型基板を用いたデバイス作製工程に有用であり、生産性および品質を向上させる上で非常に効果的である。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は第1実施形態のプラズマ処理装置の概略構成を示す断面図であり、(b)はそのX−X’断面図である。
【図2】(a)は第1実施形態の高周波電極の構成を説明するための斜視図であり、(b)はその断面図である。
【図3】第1実施形態における高周波伝送線路を説明するための断面図である。
【図4】第1実施形態における誘電体でコーティングされた高周波電極の構成を説明するための断面図である。
【図5】(a)は第1実施形態の高周波電極の作製方法を説明するための断面図であり、(b)は高周波電極を構成するパーツの断面図である。
【図6】(a)および(b)は第1実施形態における高周波伝送線路をモデル化した図である。
【図7】(a)および(b)は第1実施形態の高周波電極の作用を説明するための図である。
【図8】第1実施形態の変形例の高周波電極の構成を説明するための断面図である。
【図9】第2実施形態のプラズマ処理装置の概略構成を示す断面図である。
【図10】第2実施形態の高周波電極の構成を説明するための下面図である。
【図11】(a)は第3実施形態のプラズマ処理装置の概略構成を示す斜視図であり、 (b)は第3実施形態の高周波電極の構成を説明するための下面図である。
【図12】第4実施形態のプラズマ処理装置の概略構成を示す断面図である。
【図13】第4実施形態の高周波電極の構成を説明するための斜視図である。
【図14】(a)は従来のプラズマ処理装置の概略構成を示す断面図であり、(b)はそのX−X’断面図である。
【図15】(a)および(b)は従来の高周波電極の構成を説明するための断面図である。
【図16】(a)および(b)は従来の高周波電極の高周波伝送線路をモデル化した図である。
【図17】(a)および(b)は従来の高周波電極の問題点を説明するための図である。
【符号の説明】
1、11、21、31 高周波電極
1a、11a、21a、31a 高周波電極の表面
2、12、22、32 窪み部
2a、12a、22a、32a 窪み部のスリット
2b、12b、22b 窪み部の内表面
4 誘電体
5 シャフト
5a 段付き穴
100 反応容器
103 高周波電極
104 段差の付いた誘電体カバー
105A、205A、305A 基体ホルダ
105B 補助部材
106 円筒状基体
107 排気パイプ
108 原料ガス供給手段
109 整合回路
111 高周波電源
116 ガス放出パイプ
117 ガス供給パイプ
131 基体回転用シャフト
132 モータ
133 シール部材
135 排気機構
140 基体加熱用ヒータ
206 板状基板
222 円柱状電極パーツ
S 高周波電力供給点
E 高周波伝送線路の終端部
0 高周波伝送線路の特性インピーダンス
Z インピーダンス
V 電圧定在波振幅

Claims (9)

  1. 高周波電力が供給される高周波電極であって、
    該高周波電極は窪み部を有し、該窪み部に対して一方側の該高周波電極の表面から、該窪み部の内表面を通って、該窪み部に対して他方側の該高周波電極の表面に高周波電力が伝送される高周波伝送線路が形成されており、
    前記窪み部は、前記高周波伝送線路で発生する定在波の節の位置近傍に形成されていることを特徴とする高周波電極。
  2. 前記窪み部は、前記高周波伝送線路に沿った内表面の長さが前記高周波電力の波長λの1/2以下である請求項1に記載の高周波電極。
  3. 前記窪み部は、前記高周波伝送線路に沿った内表面の長さが前記高周波電力の波長λの1/10以上である請求項2に記載の高周波電極。
  4. 前記窪み部は、前記高周波伝送線路において、前記高周波電力の波長λの略1/2のピッチにて2個以上形成されている請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の高周波電極。
  5. 前記高周波電極の表面が誘電体で被覆されている請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の高周波電極。
  6. 請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の高周波電極と被処理物とが互いに対向して配置され、該高周波電極と該被処理物の間で発生させたプラズマにより該被処理物にプラズマ処理を行うプラズマ処理装置。
  7. 前記プラズマの前記被処理物の表面に平行な第1の方向の長さが前記高周波電力の波長λの1/4以上であり、該被処理物の表面に平行で該第1の方向と垂直な第2の方向の長さが該波長λの1/4以下となるように、前記高周波電極の形状および配置が設定されている請求項6に記載のプラズマ処理装置。
  8. 前記被処理物を、前記高周波電極に対して相対的に、前記第2の方向に移動させながらプラズマ処理を行う請求項7に記載のプラズマ処理装置。
  9. 前記高周波電極の直近に、プラズマ処理用のガス供給口およびガス排気口が設けられている請求項8に記載のプラズマ処理装置。
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