JP2002045963A - 薄鋼板のガスシールドアーク溶接方法 - Google Patents
薄鋼板のガスシールドアーク溶接方法Info
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Abstract
力薄鋼板の重ね隅肉ガスシールドアーク溶接において、
疲労特性に優れた隅肉溶接継手を確実に達成するための
溶接方法を提案する。 【解決手段】 板厚1.0 mm以上、引張強さ590MPa以上の
高張力薄鋼板を重ね隅肉溶接するに際し、溶接金属の含
有成分が下記(1) 、(2) および(3) 式を満たすように、
溶接ワイヤおよび/または溶接条件を設定する。 記 0.30≦C%+Si%/24+Mn%/6+Ni%/40+Cr%/5+Mo%/4≦0.55 … (1) 0.10≦C%+4S%+2O%≦0.35 … (2) 1.6 ≦Si%+Mn%+4Ti%+2Al%≦3.2 … (3)
Description
スシールドアーク溶接に係り、特に、疲労特性に優れた
隅肉溶接継手を形成するためのガスシールドアーク溶接
方法に関する。
て、その軽量化を図るために、より高強度の薄鋼板が使
用される傾向にある。そして自動車などの振動を伴う環
境で使用される構造物においては、通常の静的な引張強
度のほか、十分な疲労強度も具備することが必要であ
る。ところが、高張力鋼板のガスシールドアーク溶接継
手においては、静的な引張強度は鋼板の引張強度の増大
とともに増すのに対して、疲労強度は鋼板の疲労強度の
増大に応じて増加はしないという大きな問題が指摘され
ている。そのため、より高い疲労特性を有する溶接継手
が得られる高張力薄鋼板のガスシールドアーク溶接方法
の確立が要請されている。
ためには、一般に、溶接止端部の曲率半径を大きくし、
溶接止端部での応力集中を低減することが有効であるこ
とが知られている。このような観点の下に、特開平8−
25080号公報には、溶接ワイヤの化学組成および溶
接電圧を規定することにより、溶接ビード止端部の曲率
半径を大きくして隅肉溶接部の疲労特性を向上する溶接
方法が提案されている。
らが、板厚1.0 mm以上、引張強さ590MPa以上の高張力薄
鋼板を重ね隅肉ガスシールドアーク溶接について詳細に
調査したところ、単に溶接ワイヤの化学組成や溶接電圧
のみを規定しただけでは、溶接継手の疲労強度を十分に
確保できない場合があることがわかった。そこで本発明
は、板厚1.0 mm以上、引張強さ590MPa以上の高張力薄鋼
板の重ね隅肉ガスシールドアーク溶接において、疲労特
性に優れた隅肉溶接継手を確実に達成するための溶接方
法を提案することを目的とする。
に、発明者らは、薄鋼板の重ね隅肉継手の溶接ビード止
端部形状に及ぼす溶接金属化学組成の影響について鋭意
検討した。その結果、溶接ビード止端部の曲率半径は溶
接ワイヤ化学組成に直接依存するのではなく、溶接金属
化学組成を適正範囲に制御すれば大きくなり、継手疲労
強度が向上することを見いだした。また、溶接金属への
鋼板希釈率を制限することも、溶接継手の静的引張強さ
及び疲労強度を確保するために有効であることを見いだ
した。
したものであり、その要旨構成は次のとおりである。 (1)板厚1.0 mm以上、引張強さ590MPa以上の高張力薄鋼
板を重ね隅肉溶接するに際し、溶接金属の含有成分が、
mass%で、下記(1) 、(2) および(3) 式を満たすよう
に、溶接ワイヤおよび/または溶接条件を設定すること
を特徴とする、ガスシールドアーク溶接方法。 記 0.30≦C%+Si%/24+Mn%/6+Ni%/40+Cr%/5+Mo%/4≦0.55 … (1) 0.10≦C%+4S%+2O%≦0.35 … (2) 1.6 ≦Si%+Mn%+4Ti%+2Al%≦3.2 … (3)
に占める鋼板溶融部の比率)を40%以上80%以下とする
ことを特徴とする、上記 (1)に記載のガスシールドアー
ク溶接方法。
s%でC:0.04〜0.15%、Si:0.3〜2.0 %、Mn:1.0 〜
3.0 %、P:0.05%以下、S:0.05%以下、Al:0.005
〜0.10%を含有し、さらに、Ni:0.01〜2.00%、Cr:0.
01〜1.00%、Mo:0.01〜1.00%、Cu:0.01〜0.50%、T
i:0.01〜0.50%、Nb:0.01〜0.10%、B:0.0005〜0.0
100%から選ばれる少なくとも1種を含有し、残部はFe
および不可避的不純物からなる組成であることを特徴と
する、上記 (1)または (2)に記載のガスシールドアーク
溶接方法。
は、板厚1.0 mm以上、引張強さ590MPa以上の高張力薄鋼
板とする。その理由は、疲労特性が懸念されるガスシー
ルドアーク溶接継手は、引張強さ590MPa以上の高張力薄
鋼板を溶接してなる溶接継手であるからである。引張強
さ590MPa未満の薄鋼板の場合には、溶接継手における疲
労特性の劣化がとくに問題になることはない。また、鋼
板板厚が1.0mm 未満では、ガスシールドアーク溶接での
隅肉溶接時に溶け落ちが生じやすく、溶接ビード止端部
形状の改善は難しくなる。このため、本発明では鋼板板
厚を1.0 mm以上に限定した。
以上級高張力薄鋼板の好適な化学組成について説明す
る。なお、本発明において、薄鋼板、溶接金属の含有量
を表す%はすべて質量%を意味するものとする。 C:0.04〜0.15% Cは、鋼の強度を増加させる元素であり、所望の強度を
得るために0.40%以上含有するのが望ましい。一方、0.
15%を超える含有は、プレス成形性の指標である伸びお
よびr値を低下させる。このため、Cは0.04〜0.15%の
範囲とするのが好ましい。
の含有では、その効果が発揮されず、ピットやブローホ
ールなどの欠陥が発生する。一方、2.0 %を超えると、
高Siスケールによる表面品質の劣化が著しくなる。この
ため、Siは0.3〜2.0 %の範囲とするのが好ましい。
得るためには1.0 %以上含有するのが望ましい。一方、
3.0 %を超えると、鋼板硬さが過度に上昇して、伸びお
よびr値が低下する。このため、Mnは、1.0 〜3.0 %の
範囲とするのが望ましい。
化させる。このため、できるだけ低減するのが好ましい
が、0.05%までは許容できる。
する。このS含有量は0.05%までは大きな悪影響を及ぼ
さないので許容できる。
有成分として、必要に応じて、さらに以下の元素のうち
の1種以上を含有することができる。 Ni:0.01〜2.00% Niは、鋼の強度を増加させる元素であり、所望の強度を
得るために本発明では0.01%以上含有するのが望まし
い。一方、含有量の上限は経済性を考慮して、2.00%以
下とする。このため、Niは0.01〜2.00%の範囲とするの
が望ましい。
得るために0.01%以上含有するのが望ましいが、1.00%
を超えると経済性の上で不利となる。このため、Crは0.
01〜1.00%の範囲とするのが望ましい。
得るために0.01%以上含有するのが望ましいが、1.00%
を超えると経済性の上で不利となる。このため、Moは0.
01〜2.00%の範囲とするのが望ましい。
元素であり、0.01%以上含有することが望ましい。一
方、含有量が0.50%を超えると、防食効果が飽和するほ
か、高温割れが生じるようになる。このため、Cuは0.01
〜0.50%の範囲とすることが望ましい。
は、変態および再結晶時の粒成長を抑制する元素であ
る。鋼板平均結晶粒を微細化させるためには0.01%以上
含有するのが望ましいが、0.50%を超えると経済性の上
で不利となる。このため、Tiは、0.01〜0.50%の範囲と
するのが望ましい。
満の含有では十分な脱酸効果を確保することができな
い。一方、0.10%を超えると、クラスター状の介在物が
多くなり、加工性を劣化させる。このため、Alは、0.01
〜0.10%の範囲とするのが望ましい。
での軟化を抑制する効果があるが、0.01%未満では期待
する効果が十分には発揮されない。一方、0.10%を超え
て含有すると、溶接熱影響部が過度に硬化するために溶
接割れが生じる。このため、Nbは0.01〜0.10%の範囲と
するのが望ましい。
望の強度を得るために0.0005%以上含有するのが望まし
い。一方、0.0100%を超えて含有すると、溶接性が劣化
する。このため、Bは0.0005〜0.0100%の範囲とするの
が望ましい。
分以外の残部はFeおよび不可避的不純物とする。上述し
た強度と板厚の高張力薄鋼板をガスシールドアーク溶接
法により、重ね隅肉継手を作製する。この重ね隅肉継手
の溶接金属は、(1) 、(2) および(3) 式を満足する必要
がある。 0.30≦C%+Si%/24+Mn%/6+Ni%/40+Cr%/5+Mo%/4≦0.55 … (1) 0.10≦C%+4S%+2O%≦0.35 … (2) 1.6 ≦Si%+Mn%+4Ti%+2Al%≦3.2 … (3)
%/40+Cr%/5+Mo%/4(以後、Ceqで表す)が、
0.30%未満では、溶接金属の引張強さが低くなるため
に、溶接継手の引張強さが鋼板の引張強さよりも低くな
る。一方、Ceqが0.55%を超えると、溶接金属の延性が
低下するとともに、溶接割れも生じやすくなる。このた
め、溶接金属のCeqは(1) 式を満足するように調整する
必要がある。
%未満では、溶接中のアーク直下の溶融池の粘性が大き
くなるため、溶接ビード止端部で鋼板とのなじみが悪く
なり、止端部曲率半径が小さくなることにより継手疲労
強度を劣化させる。また、この値が0.35%を超えると、
表面張力の温度勾配dγ/dTが負となるため、溶接中
のアーク直下の溶融池表面流が放射流から求心流とな
り、溶接ビードは深溶け込みの凸形ビードとなること、
さらには、溶融池の粘性が小さくなり過ぎるため、アー
ク力により溶鋼が溶融池後方に押しやられて凸形ビード
となること、の2点により溶接ビード止端部での曲率半
径は小さくなり継手疲労強度は劣化する。このため、溶
接金属のC%+4S%+2O%を(2) 式を満足するよう
に調整する必要がある。
が、1.6 %未満では、溶接アーク状態が不安定になり、
溶接作業性が劣化するとともに、溶接ビード形状が不規
則となり、溶接止端部での曲率半径は小さくなり継手疲
労強度は劣化する。一方、この値が3.2 %を超えると、
溶接金属の延性が低下するとともに、溶接割れが生じや
すくなる。このため、溶接金属のSi%+Mn%+4Ti%+
2Al%を(3) 式を満足するように調整する必要がある。
の鋼板希釈率(溶接金属に占める鋼板溶融部の比率)は
40%以上80%以下とすることが好ましい。なお、鋼板希
釈率は次のように決定する。すなわち、溶接前の鋼板形
状を記録した後に溶接を実施し、溶接部の断面部をエッ
チングすることにより形状測定し、図1 に示す各領域を
算出する。Aは溶接金属に含まれる下板の溶融領域、B
は溶接金属に含まれる上板の溶融領域、Cは溶接金属が
AおよびBの領域を除いた領域、Dは鋼板の溶融領域で
かつ溶接金属と重ならない領域である。さらに、溶接金
属に含まれる鋼板溶融比率を (A+B+D)/(A+B
+C) で算出し、パーセントで表示した値を鋼板希釈率
とする。
は、溶接ビード断面の溶け込み形状が浅くなり溶接継手
の静的引張強さが鋼板強さよりも低下する。一方、鋼板
希釈率が80%を超えると、溶け込み形状が深くなりす
ぎ、鋼板が溶け落ちるあるいは鋼板が大きく変形するな
どの欠陥が溶接継手部に生じ、静的引張強さの低下およ
び疲労強度の低下が生じる。このため、溶接金属中への
鋼板希釈率が40%以上80%以下であることが好ましい。
溶接方法としては、ガスシールドアーク溶接のうち、M
AG溶接、CO2アーク溶接いずれも好適であるが、なか
でもMAG溶接が好ましい。
板成分およびワイヤ成分) によって変化する。すなわ
ち、溶接速度が遅くなるほど、また、溶接電流が大きく
なるほど、溶融部の形状は大きくなり、鋼板の希釈率も
大きくなる傾向となる。なお、鋼板成分およびワイヤ成
分による溶融部形状の変化によっても希釈率は変化する
ため、各溶接において断面形状を観察することにより、
希釈率を確認して最適な条件を設定することが好まし
い。また、溶接金属成分は、鋼板成分、ワイヤ成分およ
び鋼板希釈率によって変化するが、板厚5mm以下の薄鋼
板を希釈率40%以上80%以下で溶接する場合は、鋼
板成分の影響が比較的大きくなるため、前述した(1) ,
(2) および(3) 式を満足するためには、鋼板成分を調整
することが最も重要である。ただし、ワイヤ成分によっ
ても溶接金属成分は変化するため、各溶接において溶接
金属成分の分析を行い、溶接金属成分が(1) ,(2) およ
び(3) 式を満足することを確認することが、溶接継手の
疲労強度を改善するためには好ましい。
2に示す1.2 mmφの溶接ワイヤおよびガスシールドアー
ク溶接条件を用いて、重ね隅肉溶接継手を作製した。作
製した溶接継手から疲労試験片を採取し、静的な引張特
性および疲労特性を調査した。引張特性は、継手の破断
強度が鋼板の引張強さ以上となる場合を○、それ以外を
×として評価した。疲労特性は、単軸引張疲労試験によ
り実施し、107回の繰り返し荷重を負荷した場合に破断
しない下限値を疲労限とし、継手の疲労限が鋼板の疲労
限の12%以上となる場合を○、それ以外を×として評価
した。得られた結果を表3および表4に示す。発明例
は、溶接継手部の引張特性および疲労特性が評価○とな
っている。一方、本発明の範囲を外れる比較例は、引張
特性および/または疲労特性が劣っている。
成、溶接ワイヤの化学組成、溶接速度を変化させること
により溶接金属組成、鋼板希釈率を制御しているが、溶
接対象となる鋼板の厚さ等を考慮して、溶接電圧、溶接
電流等、通常の方法を用いて制御することは差し支えな
い。
厚1.0 mm以上、引張強さ590MPa以上の高張力薄鋼板のガ
スシールドアーク溶接において、特に、疲労特性に優れ
た隅肉溶接継手の製作が確実に可能なガスシールドアー
ク溶接方法を提供することができるようになった。した
がって、本発明は、高張力薄鋼板を使用する産業分野の
発展に大きく寄与するものである。
模式図である。
Claims (3)
- 【請求項1】 板厚1.0 mm以上、引張強さ590MPa以上の
高張力薄鋼板を重ね隅肉溶接するに際し、溶接金属の含
有成分がmass%で、下記(1) 、(2) および(3) 式を満た
すように、溶接ワイヤおよび/または溶接条件を設定す
ることを特徴とする、ガスシールドアーク溶接方法。 記 0.30≦C%+Si%/24+Mn%/6+Ni%/40+Cr%/5+Mo%/4≦0.55 … (1) 0.10≦C%+4S%+2O%≦0.35 … (2) 1.6 ≦Si%+Mn%+4Ti%+2Al%≦3.2 … (3) - 【請求項2】 溶接金属中への鋼板希釈率(溶接金属に
占める鋼板溶融部の比率)を40%以上80%以下とするこ
とを特徴とする、請求項1に記載のガスシールドアーク
溶接方法。 - 【請求項3】 上記590MPa以上級高張力薄鋼板が、mass
%でC:0.04〜0.15%、Si:0.3 〜2.0 %、Mn:1.0 〜
3.0 %、P:0.05%以下、S:0.05%以下、Al:0.005
〜0.10%を含有し、さらに、Ni:0.01〜2.00%、Cr:0.
01〜1.00%、Mo:0.01〜1.00%、Cu:0.01〜0.50%、T
i:0.01〜0.50%、Nb:0.01〜0.10%、B:0.0005〜0.0
100%から選ばれる少なくとも1種を含有し、残部はFe
および不可避的不純物からなる組成であることを特徴と
する、請求項1または2に記載のガスシールドアーク溶
接方法。
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