JP2002030339A - Vを含有しない熱間鍛造用非調質鋼 - Google Patents

Vを含有しない熱間鍛造用非調質鋼

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JP2002030339A JP2000218597A JP2000218597A JP2002030339A JP 2002030339 A JP2002030339 A JP 2002030339A JP 2000218597 A JP2000218597 A JP 2000218597A JP 2000218597 A JP2000218597 A JP 2000218597A JP 2002030339 A JP2002030339 A JP 2002030339A
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】 Vを添加せずに、衝撃値と降伏比をV添加の
熱間鍛造用非調質鋼と同等以上に改善する。 【解決手段】 質量パーセントで、C=0.20〜0.
60%、Si=0.01〜1.00%、Mn=0.30
〜2.50%、P=0.035%以下、Ni=0.01
〜0.35%、Cr=0.10〜1.50%、Mo=
0.01〜0.35%、Al=0.020〜0.045
%、O=0.0015%以下、N=0.0100〜0.
0250%、を含有し、さらに、Ni+Moが0.05
%以上であり、残部Feおよび不可避的不純物元素から
なる鋼を1250℃以上に加熱し、仕上温度800℃以
上で熱間成形を終了後、30℃/分以上の冷却速度で6
00℃以下まで冷却して得られるフェライト−パーライ
ト組織を主体とした熱間鍛造用非調質鋼である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、熱間鍛造後に放冷
するだけで、焼入れ、焼戻しなどの熱処理を省略して
も、部品として十分な強度および靭性が得られるフェラ
イト−パーライト組織を主体とした熱間鍛造用非調質鋼
に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来の技術としては、Cが0.30〜
0.60%程度の中炭素鋼に析出強化元素としてVを
0.10%程度添加した熱間鍛造用非調質鋼が一般的に
使用されている。
【0003】かかる従来技術における問題点としては、
先ず、Vは非常に高価な添加元素であり、素材コストの
上昇が避けられないことが挙げられる。このような問題
点は従来から意識され、これまでに様々なVを添加しな
い熱間鍛造非調質鋼が提案されている。
【0004】例えば、特開平9−310122では冷間
加工とその後の時効処理により降伏比を向上させたVを
含有しない非調質鋼が提案されている。しかしながら、
この提案では冷間加工が前提である制約条件とその後の
時効処理にコストを要するといった問題点がある。
【0005】また、特開平9−310152、特開平1
0−237587、および特開平11−229082で
は、Siによるフェライト固溶強化を主旨としたVを添
加しない非調質鋼が提案されている。しかしながら、こ
の提案では、その効果を発揮するまでSiを添加すると
素材硬さが上がり、機械加工性の観点で好ましくないと
いった問題点がある。
【0006】さらに、特開平4−141548ではCu
による析出強化を主旨としたVを添加しない非調質鋼が
提案されている。しかしながら、この提案では、Cuの
熱間脆性により圧延時において表面キズが多発する問題
点がある。
【0007】加えて、特開平9−53142では冷却中
におけるTiCの微細析出とTiCを核としたフェライ
トの微細化による強化を主旨としたVを添加しない非調
質鋼が提案されている。しかしながら、この提案では、
Tiの添加量が多く、TiCの析出に先立ち疲労強度を
低下させるTiNが多量に発生するといった問題点があ
る。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明が解決しようと
する課題は、上記のような問題点を鑑み、鋼の化学成分
の調整と熱間圧延等の熱間成形条件の調整により、Vを
添加しなくとも部品としてユーザーが満足できる熱間鍛
造用非調質鋼を提供するものである。この課題をより具
体的に抽出するために、熱間鍛造非調質鋼による部品に
要求される特性とVの添加有無の関係を整理してみる
と、下記のとおりとなる。
【0009】すなわち、熱間鍛造用非調質鋼による部品
として要求される特性としては、引張強度、降伏強度お
よび衝撃値が上げられるが、Vを添加しない場合には、 ・引張強度:Vを添加しなくてもC、Mn、Cr等の含
有量を上げれば、向上する、 ・降伏強度:引張強度を上げれば降伏強度も向上する
が、部品の硬さが上がることにより、機械加工性が劣化
する、 ・衝撃値 :硬さを上げて、降伏強度を確保しようとす
ると、衝撃値は低下し、所期の値の確保が難しくなる、 ことが指摘される。
【0010】一般に、降伏強度を引張強度で割った降伏
比(降伏強度/引張強度)は、Vを添加しない場合には
降伏比が低く、降伏強度を確保しようとすると硬さが上
がり、機械加工性の観点から不利となる。したがって、
Vを添加しない場合には、衝撃値と降伏比が低くなると
いった問題点がある。
【0011】一方、V添加の効果としては、以下の通り
である。Vを添加すると熱間鍛造後の冷却中にV炭窒化
物が析出し、オーステナイトからフェライトに変態する
際に、オーステナイト粒界ばかりでなく、これらのV炭
窒化物を核としてフェライトが析出するので、フェライ
トの析出サイトが多くなる。したがって、フェライト結
晶粒が細かくなり、フェライト−パーライトを主体とす
るミクロ組織が微細化する。このようなミクロ組織の微
細化を介して、衝撃値や降伏比を向上することができ
る。さらに、V炭窒化物は、パーライトに比較して硬さ
が低いフェライトの硬さを上げるといった効果もある。
【0012】以上の観点から、本発明が解決しようとす
る具体的な課題は、Vを添加しないコストの低い成分系
で、衝撃値と降伏比をVを添加した熱間鍛造用非調質鋼
と同等以上に向上することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決する手
段として、本発明者等が鋭意研究を積み重ねた結果、以
下の知見を得るに至った。
【0014】(A)V添加鋼でなくても、AlとNを調
整した鋼においても、ある限定された条件下において
は、AlNによってミクロ組織を微細化することによ
り、衝撃値や降伏比の向上が可能である。
【0015】(B)その条件とは熱間鍛造前の鋼に存在
するAlNが、ユーザーにおける熱間鍛造工程の加熱時
に、一旦、完全にオーステナイト中に固溶し、熱間鍛造
後の冷却中に再度AlNとして析出することである。
【0016】(C)その理由は、AlNがオーステナイ
ト中に固溶している場合は、熱間鍛造後の冷却中にAl
Nが均一に多数析出し、上述したV炭窒化物のように、
AlNを析出サイトとしてフェライトが多数析出するこ
とによって、ミクロ組織が微細化するからである。
【0017】(D)一方、熱間鍛造工程の加熱時に、A
lNが溶け残っていると、溶け残ったAlNを核として
優先的にAlNが析出するので、フェライトの析出サイ
トとなるAlNの数が少なくなり、ミクロ組織の微細化
に寄与しない。
【0018】(E)熱力学的計算によると、AlNのオ
ーステナイト中への固溶温度は実験室等で十分な加熱時
間を確保した理想的な条件、すなわち平衡状態において
も約1050℃であり、V炭窒化物の固溶温度である約
850℃と比較すると約200℃程度高く、V炭窒化物
に比べてAlNはオーステナイト中に固溶しにくい。
【0019】(F)したがって、実際の製造工程におい
て、熱間鍛造温度が1050℃以上であっても、高周波
加熱のように保持時間が短い場合には、AlNが溶け残
る可能性がある。
【0020】(G)ユーザーにおける熱間鍛造の加熱時
にAlNを安定してオーステナイト中に固溶させるため
には、ユーザーに出荷前の鋼で既にAlNを微細に析出
させ、ユーザーにおける熱間鍛造の加熱時にAlNをオ
ーステナイト中に固溶し易く制御しておく必要がある。
【0021】(H)ユーザーに出荷前の鋼のAlNの大
きさは、熱間圧延等の加熱成形時の加熱温度、仕上温度
および仕上後の冷却速度によって支配される。
【0022】(I)したがって、AlNによる衝撃値や
降伏比の向上効果を確実にするためには、熱間圧延等の
熱間成形工程までさかのぼって品質を作り込む必要があ
る。
【0023】(J)以上のような対策を講じても、Vを
添加した非調質鋼と比較して、まだ、衝撃値や降伏比は
低いが、Vを添加していない鋼ではV添加鋼では無視し
得るような微量のNiおよびMoの複合添加が降伏比や
衝撃値の改善に大きく寄与し、Vを添加した鋼と同等以
上の衝撃値と降伏比を確保することができる。
【0024】これらの知見に基づいた課題を解決する具
体的な手段は、下記のとおりである。 (1)質量パーセントで、 C=0.20〜0.60%、 Si=0.01〜1.00%、 Mn=0.30〜2.50%、 P=0.035%以下、 Ni=0.01〜0.35%、 Cr=0.10〜1.50%、 Mo=0.01〜0.35%、 Al=0.020〜0.045%、 O=0.0015%以下、 N=0.0100〜0.0250%、 を含有し、さらに、Ni+Moで示されるパラメーター
が0.05%以上であり、残部Feおよび不可避的不純
物元素からなる鋼を1250℃以上に加熱し、仕上温度
800℃以上で熱間成形を終了後、30℃/分以上の冷
却速度で600℃以下まで冷却して得られることを特徴
とするVを含有しないフェライト−パーライト組織を主
体とした熱間鍛造用非調質鋼。
【0025】(2)上記(1)に、質量パーセントで、 Nb=0.005〜0.050%、 Ti=0.010〜0.035%、 のうちから1種または2種を含有しているVを含有しな
いフェライト−パーライト組織を主体とした熱間鍛造用
非調質鋼。
【0026】(3)上記(1)又は(2)に、さらに S=0.005〜0.100%、 Pb=0.01〜0.09%、 Bi=0.04〜0.20%、 Te=0.002〜0.030%、 Zr=0.01〜0.20%、 Ca=0.0001〜0.0100%、 Sb=0.015〜0.100%、 のうちから1種または2種以上を含有するVを含有しな
いフェライト−パーライト組織を主体とした熱間鍛造用
非調質鋼。
【0027】
【発明の実施の形態】以下に、課題を解決するための手
段を実証した発明の実施の形態を示す。 実験1 実験1では、V無添加鋼について、 (1)ミクロ組織の微細化とAlとNの関係 (2)熱間鍛造前の鋼の熱間成形条件の影響 (3)少量のNiおよびMoの複合添加効果 を調査した。
【0028】表1には、実験に使用したV添加鋼とV無
添加の化学成分を示す。これらのなかで、V無添加、A
l,N調整鋼とは、上記調査(1)の結果、ミクロ組織
の微細化が可能なようにAlとNを調整した鋼であり、
V無添加,Al,N調整、Ni,Mo添加鋼とは、V無
添加、Al,N調整鋼に微量のNiおよびMoを添加し
た鋼である。これらの鋼を高周波真空溶解炉により溶製
し鋼塊にした。これらの鋼塊を図1に示す熱間圧延等を
想定した熱間成形方法で、1100〜1300℃に加熱
後180分保持し(以下、これらの温度を加熱温度と称
する)、700〜1000℃までに鍛伸を終了して80
mmφに成形後(以下、これらの熱間成形が完了する温
度を仕上温度と称する)、600℃までに冷却速度10
〜100℃/分(以下、これらを単に冷却速度と称す
る)で冷却後放冷した。以下、表現上の混同を避けるた
めに、この段階までの鋼を、特に、「熱間鍛造前の鋼」
と定義し、その作り込みに関する加熱温度、仕上温度お
よび冷却速度も本発明の範疇としている。これらの80
mmφ鋼、すなわち、「熱間鍛造前の鋼」について、代
表的なV炭窒化物やAlNの粒径を10視野測定し、そ
れらの平均値を求めた。
【0029】次に、これらの80mmφ鋼をユーザーで
の熱間鍛造を想定し、図2に示すように、高周波加熱後
40mmφに鍛伸後放冷した。放冷後の40mmφ鋼材
の1/2R部からJIS4号引張試験片およびJIS3
号シャルピー衝撃試験片を切り出して機械加工した。こ
れらの試験片について、ミクロ組織の細かさを評価する
ためにフェライト結晶粒度番号(番号が大きい方がフェ
ライト結晶粒が細かく、フェライト−パーライト組織を
主体とするミクロ組織が微細である)を測定し、室温に
て引張試験とシャルピー衝撃試験を実施し、降伏強度、
引張強度、降伏比および衝撃値を求めた。それらの結果
を表1に示す。
【0030】
【表1】
【0031】先ず、V無添加鋼により、フェライト結晶
粒度番号とAlおよびNの影響を調査した。これらの鋼
の熱間鍛造前の熱間成形条件については、加熱温度を1
250℃以上の1290〜1305℃、仕上温度を80
0℃以上の804〜845℃および冷却速度を30℃/
分以上の30〜35℃/分とした。図3には、フェライ
ト結晶粒度番号とAlおよびN含有量の関係を示す。こ
れより、フェライト結晶粒度番号がV添加鋼と同等レベ
ルの6.0を確保するためには、Al含有量が0.02
0質量%以上、かつ、N含有量が0.01000質量%
以上必要なことがわかった。これは、Al含有量が0.
020質量%以上、かつ、N含有量が0.0100質量
%以上で、フェライトの微細化に効果があるAlNが十
分に析出するためと推定される。
【0032】次に、「熱間鍛造前の鋼」の熱間成形条件
が衝撃値や降伏比等の各種特性に及ぼす影響について、
V添加鋼と上記の結果からAl含有量0.020質量%
でN含有量0.0100質量%としたV無添加、Al,
N調整鋼を対比した。
【0033】図4には、「熱間鍛造前の鋼」中のV炭窒
化物やAlNの平均粒径と冷却速度の関係を示す。これ
より、加熱温度が1250℃以下の鋼と仕上温度が80
0℃以下の鋼を除き、冷却速度が高くなるにつれて「熱
間鍛造前の鋼」のV炭窒化物やAlNの大きさが小さく
なることがわかる。また、その傾向は冷却温度が30℃
/分以上では飽和することがわかる。これは、冷却速度
が高い程、鋼中のV炭窒化物やAlNが温度の高い領域
で成長する時間が短くなり、それらの平均粒径が小さく
なるためと推定される。一方、加熱温度が1250℃以
下の場合には、熱間成形前の鋼塊中に存在する凝固中に
大きく成長した種々の炭窒化物がオーステナイト中に固
溶しきれず、それらの溶け残った炭窒化物を核として優
先的に成長するため、その後の冷却速度が高くとも、そ
れらの平均粒径が大きいと推定される。また、仕上げ温
度が800℃以下の場合には、熱間成形後冷却速度を制
限する前の温度の高い領域に留まっている時間が長く、
その間にV炭窒化物やAlNが成長するため、その後の
冷却速度が高くても、それらの平均粒径が大きいと推定
される。
【0034】図5には、熱間鍛造後の鋼のフェライト結
晶粒度番号と冷却速度の関係を示す。これより、V無添
加鋼、Al,N調整鋼では加熱温度が1250℃以下の
鋼と仕上温度が800℃以下の鋼を除き、冷却速度が高
くなるにつれてフェライト結晶粒度番号が大きくなる、
すなわち、フェライト結晶粒が細かくなり、フェライト
−パーライトを主体とするミクロ組織が微細となること
がわかる。また、その傾向は、冷却速度が30℃/分以
上では飽和することがわかる。しかし、V添加鋼では冷
却速度や加熱温度および仕上温度に関わらず、フェライ
ト結晶粒度番号は大きく、ミクロ組織が微細であること
がわかる。これについては、以下のように推察すること
ができる。
【0035】先ず、V添加鋼や上述したようにAlとN
が一定量添加されている鋼においては、熱間鍛造後の冷
却中にV炭窒化物やAlNとして析出し、オーステナイ
トからフェライトに変態する際に、オーステナイト粒界
ばかりでなく、これらのV炭窒化物やAlNを核として
フェライトが析出することからフェライトの析出サイト
が多くなり、フェライト結晶粒が微細となる。したがっ
て、フェライト結晶粒の大きさは、このような析出サイ
トの密度(単位体積当たりの析出サイトの数)に支配さ
れ、フェライト結晶粒を細かくし、フェライト−パーラ
イトを主体とするミクロ組織を微細化するためには、こ
れらの析出サイトとなる炭窒化物の密度も高くしておく
必要がある。一方、熱間鍛造後の冷却中に析出するこれ
らの炭窒化物の密度は、熱間鍛造の加熱時のオーステナ
イト中に「熱間鍛造前の鋼」の炭窒化物が固溶している
場合には高くなり、「熱間鍛造前の鋼」の炭窒化物が溶
け残っていると低くなる。その理由は、熱間鍛造の加熱
時に「熱間鍛造前の鋼」の炭窒化物がオーステナイト中
に固溶して存在しない場合は、冷却中に再度炭窒化物と
して析出する際に、その析出する頻度は鋼中のどこでも
同じであり、均一にあらゆる箇所から析出し、冷却中に
析出する炭窒化物の密度が高くなる。ところが、「熱間
鍛造前の鋼」の炭窒化物が固溶しきれずに溶け残ってい
ると、冷却中に再度炭窒化物として析出する際に、それ
らの溶け残った炭窒化物を核として優先的に析出し、そ
れ以外の場所では析出しにくくなるので、冷却中に析出
する炭窒化物の密度が低くなる。したがって、フェライ
トの析出サイトとなる炭窒化物の密度を高くするには、
熱間鍛造の加熱時のオーステナイト中に「熱間鍛造前の
鋼」の炭窒化物が完全に固溶し、溶け残っていないこと
が必要である。
【0036】一方、上述したように、「熱間鍛造前の
鋼」のV炭窒化物やAlNの大きさは、熱間成形時にお
ける加熱温度が1250℃以下の鋼と仕上温度が800
℃以下の鋼を除き、冷却速度が高くなるにつれて小さく
なり、これらの炭窒化物の大きさが小さい方が、熱間鍛
造時の加熱時にオーステナイト中へ固溶し易くなると考
えられる。また、熱間鍛造時の加熱時にオーステナイト
中への固溶のし易さは、「熱間鍛造前の鋼」の炭窒化物
の大きさばかりでなく、その種類にも左右されることが
考えられる。すなわち、前述した熱力学的計算による
と、V添加鋼中に存在するV炭窒化物はオーステナイト
中への固溶温度が低く、「熱間鍛造前の鋼」のV炭窒化
物の粒径が大きくても、オーステナイト中に固溶する
が、V無添加、Al,N調整鋼中に存在するAlNのオ
ーステナイト中への固溶温度はV炭窒化物よりも高く、
「熱間鍛造前の鋼」のAlNの粒径が大きい場合にはオ
ーステナイト中に固溶しない場合があると推定される。
したがって、図5に示すように、V添加鋼では、フェラ
イト結晶粒度番号は「熱間鍛造前の鋼」の熱間成形方法
にあまり左右されないが、V無添加、Al,N調整鋼に
おいてフェライト結晶粒度番号を上げ、フェライト−パ
ーライトを主体とするミクロ組織を微細とするために
は、「熱間鍛造前の鋼」のAlNの粒径を小さくするよ
うに「熱間鍛造前の鋼」の熱間成形方法を制御しなけれ
ばならない。
【0037】図6に、これらの現象を概念図として示
す。従来のV添加鋼では「熱間鍛造前の鋼」の炭窒化物
が大きくても、V炭窒化物は固溶し易いので、熱間鍛造
時の加熱時にV炭窒化物はオーステナイト中に固溶し、
溶け残らないので、熱間鍛造後の冷却中に再度析出する
炭窒化物の密度は高く、ミクロ組織の微細化に寄与す
る。一方、V無添加、Al,N調整鋼では「熱間鍛造前
の鋼」のAlNが大きい場合、AlNは固溶しにくいの
で、熱間鍛造時の加熱時にAlNが溶け残り、熱間鍛造
後の冷却中にそれらの溶け残ったAlNを核として成長
するので、フェライトの析出サイトとなるAlNの密度
は低く、ミクロ組織の微細化に寄与しない。
【0038】したがって、V添加鋼と異なり、V無添
加、Al,N調整鋼においては、ミクロ組織を微細化す
るために、「熱間鍛造前の鋼」の段階でAlNの粒径を
小さく制御する必要があり、この制御に関する熱間成形
方法、すなわち、 ・加熱温度=1250℃以上 ・仕上温度= 800℃以上 ・冷却速度= 30℃/分以上 といった請求項目も本発明の重要な要件のうちの一つと
なる。
【0039】一方、本発明が解決しようとする課題であ
る衝撃値と降伏比について、図7には、衝撃値とフェラ
イト結晶粒度番号の関係を示すが、V無添加、Al,N
調整鋼では、上記の熱間成形方法によりフェライト結晶
粒度番号を上げ、ミクロ組織を微細化すれば、衝撃値は
向上するが、それでも、V添加鋼の衝撃値のレベルであ
る40J/cm2に満たない。また、図8には、降伏比
とフェライト結晶粒度番号の関係を示すが、同じく、V
無添加、Al,N調整鋼では、上記の熱間成形方法によ
りフェライト結晶粒度番号を上げ、ミクロ組織を微細化
すれば、降伏比は向上するが、それでも、V添加鋼の降
伏比のレベルである0.65に満たない。そこで、コス
トアップが問題とならない程度の少量のNiおよびMo
の複合添加効果を調査した。
【0040】図9には、AlとNを調整し、熱間成形方
法の改善により、フェライト結晶粒度番号を上げた鋼の
衝撃値とNi+Moパラメーターの関係を示す。これよ
り、Ni+Moパラメーターが0.05質量%以上であ
れば、衝撃値がV添加鋼のレベルである40J/cm2
を確保できることがわかる。図10には、同じく、熱間
成形方法の改善によりフェライト結晶粒度を上げた鋼の
降伏比とNi+Moパラメーターの関係を示す。これよ
り、Ni+Moパラメーターが0.05質量%以上であ
れば、降伏比がV添加鋼のレベルである0.65を確保
できることがわかる。
【0041】したがって、本発明が解決しようとする課
題、すなわち、Vを添加しないコストの低い成分系で、
衝撃値と降伏比をVを添加した熱間鍛造用非調質鋼と同
等以上に向上するには、 ・鋼のAl含有量を0.020質量%以上、かつ、N含
有量を0.0100質量%とし、熱間成形方法の改善、
すなわち、 ・加熱温度=1250℃以上 ・仕上温度= 800℃以上 ・冷却速度= 30℃/分以上 によって、「熱間鍛造前の鋼」のAlNの大きさを制御
し、それらを熱間鍛造の加熱時にオーステナイト中に固
溶させることにより、フェライトの析出サイトとなるA
lNの密度を高くし、フェライト結晶粒を細かくするこ
とにより、フェライト−パーライトを主体とするミクロ
組織の微細化を図り、かつ、 ・Ni+Moパラメーター=0.05質量%以上 として、衝撃値および降伏比を向上することにより、は
じめて達成できることが発見され、本発明を成すに至っ
た。
【0042】実験2 実験2では、実験1で発見した本発明が、熱間鍛造用非
調質鋼として想定しうる化学成分の範囲全般について成
立し得るものかどうか確認し、発明鋼の化学成分の範囲
を決定した。
【0043】表2には、使用した発明鋼と比較鋼の化学
成分を示す。ここで、第1発明鋼とは特許請求項1に該
当する発明鋼で、第2発明鋼とは特許請求項2に該当す
る発明鋼である。また、比較鋼1はAlの添加量が、比
較鋼2はNの添加量が本発明鋼の範囲から外れ、比較鋼
3はAlおよびN含有量は本発明鋼の範囲であるがNi
+Moパラメーターが本発明鋼の範囲から外れる。さら
に、現用鋼はVを0.10質量%添加したV添加鋼であ
る。これらの鋼を高周波真空溶解炉により溶製し鋼塊に
製造した。これらの鋼塊を前掲の図1に示す熱間圧延等
を想定した熱間成形方法で、1100〜1300℃に加
熱後180分保持し、700〜1000℃までに鍛伸を
終了して80mmφに成形後、600℃までに冷却速度
10〜100℃/分で冷却後放冷した。次に、これらの
80mmφの鋼をユーザーでの熱間鍛造を想定し、同じ
く前掲の図2に示すように、高周波加熱後、40mmφ
に鍛伸後放冷した。放冷後の40mmφの鋼材の1/2
R部からJIS4号引張試験片およびJIS3号シャル
ピー衝撃試験片を切り出して機械加工した。これらの試
験片について、ミクロ組織の細かさを評価するためにフ
ェライト結晶粒度番号(大きい方がフェライト結晶粒が
細かく、フェライト−パーライト組織を主体とするミク
ロ組織が微細である)を測定し、室温にて引張試験とシ
ャルピー衝撃試験を実施し、降伏強度、引張強度,降伏
比および衝撃値を求めた。それらの結果を表3に示す。
【0044】
【表2】
【0045】
【表3】
【0046】これより、発明鋼で加熱温度、仕上温度お
よび冷却速度が本発明により規定した熱間成形条件を満
足する発明例では、いずれもフェライト結晶粒度番号が
6.0以上であり、衝撃値が現用のV添加鋼と同等以上
の40J/cm2であり、かつ、降伏比がV添加鋼と同
等以上の0.65以上であることがわかる。
【0047】これらに対して、加熱温度、仕上温度およ
び冷却速度が本発明により規定した熱間成形条件を満足
しても、Alが本発明鋼の範囲未満である比較鋼1やN
が本発明鋼の範囲未満の比較鋼2では、フェライト結晶
粒度番号が小さく、衝撃値40J/cm2および降伏比
0.65に満たない。また、Ni+Moパラメーターが
0.05質量%未満の比較鋼3ではフェライト結晶粒度
番号が6.0以上であっても、降伏比は0.65および
衝撃値が40J/cm2に満たない。
【0048】さらに、発明鋼Gであっても、比較例にあ
るように加熱温度が本発明の請求範囲未満である110
0℃の場合や仕上温度が本発明の請求範囲未満である7
00℃の場合、さらに、冷却速度が本発明の請求範囲未
満である15℃/分の場合は、いずれも、フェライト結
晶粒度が6.0未満であり、衝撃値40J/cm2およ
び降伏比0.65に満たない。
【0049】したがって、本発明鋼を使用し、熱間圧延
等の熱間成形の条件が本発明により規定した条件を満足
する本発明例をもってはじめて、請求した化学成分の範
囲にわたり、本発明が解決しようとする課題、すなわ
ち、Vを添加しないコストの低い成分系で、衝撃値と降
伏比をVを添加した熱間鍛造用非調質鋼と同等以上に向
上できることが確認された。
【0050】以上により本発明は完成に至ったが、次に
本発明の化学成分と熱間成形条件について、その限定理
由を説明する。%はいずれも質量%である。
【0051】C:0.20〜0.60% Cは、強度を確保するために必要な元素であり、0.2
0%以上の添加が必要である。しかし、0.60%を越
える添加は靭性を低下させ、また、機械加工性を劣化さ
せる。したがって、Cの添加量は0.20〜0.60%
の範囲とした。
【0052】Si:0.01〜1.00% Siは、鋼の脱酸に必要な元素であり、0.01%以上
の添加が必要である。しかし、1.00%を越える添加
は靭性を低下させ、また、機械加工性を劣化させる。し
たがって、Siの添加量は0.01〜1.00%の範囲
とした。
【0053】Mn:0.30〜2.50% Mnは、固溶強化や焼入性の向上により強度を確保する
ために必要な元素であり、0.30%以上の添加が必要
である。しかし、2.50%を越える添加はその効果が
飽和するばかりでなく、焼入性が高くなり過ぎてベイナ
イト組織が多くなり降伏比が低下する。したがって、M
nの添加量は0.30〜2.50%の範囲とした。
【0054】P:0.035%以下 Pはオーステナイト粒界に偏析して粒界を脆弱すること
により靭性を低下する元素であり、0.035%を越え
て含むとこのような弊害が顕著となる。したがって、P
の含有量を0.035%以下と限定した。
【0055】Ni:0.01〜0.35% NiはVを含有しない本発明鋼において、Moと共に重
要な元素である。すなわち、Vを添加していない鋼で
は、微量のNiでもMoと複合添加することにより衝撃
値と降伏比を向上する。その効果を発揮するためには
0.01%以上の添加が必要である。しかし、Niは高
価な元素であり、0.35%を越えるとかえってVを添
加した鋼よりコストが高くなる。したがって、Niの添
加量は0.01〜0.35%の範囲とした。
【0056】Cr:0.10〜1.50% CrはMnと同様に固溶強化や焼入性の向上により強度
を確保するために必要な元素であり、0.10%以上の
添加が必要である。しかし、1.50%を越える添加は
その効果が飽和するばかりでなく焼入性が高くなり過ぎ
てベイナイト組織が多くなり降伏比が低下する。したが
って、Crの添加量は0.10〜1.50%の範囲とし
た。
【0057】Mo:0.01〜0.35% MoはVを含有しない本発明鋼において、Niと共に重
要な元素である。すなわち、Vを添加していない鋼で
は、微量のMoでもNiと複合添加することにより降伏
比と衝撃値を向上する。その効果を発揮するためには
0.01%以上の添加が必要である。しかし、Moも高
価な元素であり、0.35%を越えるとかえってVを添
加した鋼よりコストが高くなる。したがって、Moの添
加量は0.01〜0.35%の範囲とした。
【0058】Al:0.020〜0.045% Alは本発明において重要な元素である。すなわち、熱
間鍛造の加熱時にオーステナイトに固溶したAlは、熱
間鍛造後の冷却中にAlNとしてフェライトの析出核と
なり、フェライト−パーライトを主体とするミクロ組織
を微細化することによって衝撃値と降伏比を向上する。
その効果を発揮するためには、少なくとも0.020%
以上の添加が必要である。しかし、その過剰な添加は疲
労強度に対して有害なAl23介在物の生成を助長す
る。これを回避するためには、上限を0.045%に限
定する必要がある。したがって、Alの添加量は0.0
20〜0.045%の範囲とした。
【0059】O:0.0015%以下 Oは、鋼中においては酸化物系介在物として存在し、疲
労強度を損なう元素である。したがって、Oの上限を
0.0015%以下と規定した。
【0060】N:0.0100〜0.0250%NはA
lと共に本発明において重要な元素である。すなわち、
熱間鍛造の加熱時にオーステナイトに固溶したNは、熱
間鍛造後の冷却中にAlNとしてフェライトの析出核と
なり、フェライト−パーライトを主体とするミクロ組織
を微細化することによって、衝撃値と降伏比を向上す
る。その効果を発揮するためには、少なくとも0.01
00%以上の添加が必要である。しかし、その過剰な添
加は凝固時の鋼塊表面での気泡の発生や鋼材の鍛造性の
劣化を招く。これを回避するためには、上限を0.02
50%に限定する必要がある。したがって、Nの添加量
は0.0100〜0.0250%の範囲とした。
【0061】Ni+Moパラメーター:0.05%以上 Ni含有量とMo含有量を加えたNi+Moパラメータ
ーは、本発明鋼において、重要なパラメーターである。
すなわち、NiおよびMoは、該当するそれぞれの項で
記したように、それぞれ、降伏比と衝撃値を向上させる
元素であり、後述する熱間成形条件で「熱間鍛造前の
鋼」のAlNの大きさを制御し、熱間鍛造後のミクロ組
織の微細化を図った上で、V添加鋼レベルの降伏比と衝
撃値を確保するには、Ni+Moパラメーターを0.0
5%以上とする必要がある。したがって、Ni+Moパ
ラメーターは0.05%以上とした。
【0062】熱間圧延等の熱間成型時において、 ・加熱温度=1250℃以上 ・仕上温度= 800℃以上 ・冷却速度= 30℃/分以上 熱間鍛造後のミクロ組織を微細化し降伏比と衝撃値の向
上を図るためには、熱間鍛造後の加熱時において、炭窒
化物をオーステナイト中に固溶し、冷却中に析出する炭
窒化物の密度を高める必要がある。V無添加、Al,N
調整鋼においては、AlNはV炭窒化物よりオーステナ
イトへの固溶温度が高いので、熱間鍛造時の加熱時にA
lNをオーステナイト中に固溶するために、予め、「熱
間鍛造前の鋼」において、AlNの粒径を小さくし、オ
ーステナイト中に固溶し易くしておく必要がある。
【0063】そこで、熱間鍛造前の熱間圧延等の熱間成
形工程において、鋼塊中に存在する凝固中に大きく成長
した種々の炭窒化物をオーステナイト中に固溶させるた
めにも熱間成型時の加熱温度を1250℃以上とするこ
とが必要であり、熱間圧延等の熱間成形後冷却速度を制
限する前の温度の高い領域に長時間留めてAlNを大き
く成長させないためにも仕上温度を800℃以上とする
ことが必要であり、熱間圧延等の熱間成形後の冷却時に
AlNを大きく成長させないためにも、冷却速度を30
℃/分以上とすることが必要である。したがって、熱間
圧延等の熱間成型時において、加熱温度を1250℃以
上、仕上温度を800℃以上、冷却速度を30℃/分以
上と規定した。
【0064】Nb:0.005〜0.050% NbはCおよびNと炭窒化物を形成し、ミクロ組織を微
細化する効果が大きく、さらに、衝撃値や降伏比を向上
させる必要がある場合には添加する必要がある。その効
果を発揮するためには、少なくとも0.005%以上の
添加が必要である。しかし、その過剰な添加は粗大な炭
窒化物を形成し、衝撃値や降伏比の向上に寄与しないば
かりでなく、鋼材のコストも上がる。これを回避するた
めには、上限を0.050%に限定する必要がある。し
たがって、Nbの添加量は0.005〜0.050%の
範囲とした。
【0065】Ti:0.010〜0.035% TiはNbと同様に、CおよびNと炭窒化物を形成し、
ミクロ組織を微細化する効果が大きく、さらに、衝撃値
や降伏比を向上させる必要がある場合には添加する必要
がある。その効果を発揮するためには、少なくとも0.
010%以上の添加が必要である。しかし、その過剰な
添加は粗大な炭窒化物を形成し、衝撃値や降伏比の向上
に寄与しないばかりでなく,疲労強度を低下させるTi
Nを多量に発生し、鋼材のコストも上がる。これを回避
するためには、上限を0.035%に限定する必要があ
る。したがって、Tiの添加量は0.010〜0.03
5%の範囲とした。
【0066】S:0.005〜0.100% Sは被削性を向上させる元素である。その効果を発揮す
るためには、少なくとも0.005%以上の添加が必要
である。しかし、その過剰な添加は、疲労強度を低下さ
せる要因となる。これを回避するためには上限を0.1
00%に限定する必要がある。したがって、Sの添加量
は0.005〜0.100%の範囲とした。
【0067】Pb:0.01〜0.09% Pbは被削性を向上させる元素である。その効果を発揮
するためには、少なくとも0.01%以上の添加が必要
である。しかし、その過剰な添加は、疲労強度を低下さ
せる。また、0.10%以上ではPbの取扱い上、集塵
装置、方法等の法的な規制を受ける。これを回避するた
めには、上限を0.09%に限定する必要がある。した
がって、Pbの添加量は0.01〜0.09%の範囲と
した。
【0068】Bi:0.04〜0.20% Biは被削性を向上させる元素である。その効果を発揮
するためには、少なくとも0.04%以上の添加が必要
である。しかし、その過剰な添加は、靭性を低下させ
る。これを回避するためには、上限を0.20%に限定
する必要がある。したがって、Biの添加量は0.04
〜0.20%の範囲とした。
【0069】Te:0.002〜0.030% Teは被削性を向上させる元素である。その効果を発揮
するためには、少なくとも0.002%以上の添加が必
要である。しかし、その過剰な添加は、熱間脆性を生ず
る。これを回避するためには、上限を0.030%に限
定する必要がある。したがって、Teの添加量は0.0
02〜0.030%の範囲とした。
【0070】Zr:0.01〜0.20% Zrは被削性を向上させる元素である。その効果を発揮
するためには、少なくとも0.01%以上の添加が必要
である。しかし、その過剰な添加は、靭性を低下させ
る。これを回避するためには、上限を0.20%に限定
する必要がある。したがって、Zrの添加量は0.01
〜0.20%の範囲とした。
【0071】Ca:0.0001〜0.0100% Caは被削性を向上させる元素である。その効果を発揮
するためには、少なくとも0.0001%以上の添加が
必要である。しかし、その過剰な添加は、靭性を低下さ
せる。これを回避するためには、上限を0.0100%
に限定する必要がある。したがって、Caの添加量は
0.0001〜0.0100%の範囲とした。
【0072】Sb:0.015〜0.100% Sbは被削性を向上させる元素である。その効果を発揮
するためには、少なくとも0.015%以上の添加が必
要である。しかし、その過剰な添加は、靭性を低下させ
る。これを回避するためには、上限を0.100%に限
定する必要がある。したがって、Sbの添加量は0.0
15〜0.100%の範囲とした。
【0073】
【実施例】次に、具体的な鍛造部品における実施例を挙
げて、本発明を更に詳細に説明する。表4には以上の知
見を基にした発明鋼と比較鋼およびV添加鋼である現用
鋼の化学成分を示す。ここで、比較鋼1はAlとNが本
発明の範囲より外れ、比較鋼2はNi+Moパラメータ
ーが本発明の範囲より外れる。これらの鋼のうち、発明
鋼については、新たに電炉にて溶製して連続鋳造により
ブルーム鋳片とし、比較鋼および現用鋼については、既
存製品のブルーム鋳片を使用した。
【0074】
【表4】
【0075】次に、これらのブルーム鋳片を加熱温度1
300℃、仕上温度800〜900℃、冷却速度15〜
70℃/分で直径130mmに熱間圧延した。これらの
圧延材を高周波加熱後、図11に示すクランクシャフト
に成形し、その後、ベルトコンベア上にて室温まで放冷
した。このクランクシャフトの図11に示す位置より、
JIS4号引張試験片およびJIS3号シャルピー衝撃
試験片を採取し、室温にて引張試験とシャルピー衝撃試
験を実施し、降伏強度、引張強度、降伏比および衝撃値
を求めた。それらの結果を圧延条件と共に表5に示す。
【0076】
【表5】
【0077】これより、発明鋼を使用し、熱間圧延条件
が本発明の範囲である加熱温度1250℃以上、仕上温
度800℃以上、冷却速度30℃/分以上である発明例
の降伏比は0.66および衝撃値は32J/cm2であ
り、Vを添加した現用鋼の降伏比の0.65および衝撃
値の30J/cm2と同等以上である。これに対して、
比較鋼1および2では熱間圧延条件が本発明の範囲にあ
っても、それらの衝撃値および降伏比は共にVを添加し
た現用鋼より低い。また、本発明成分鋼であっても、熱
間圧延条件のうち冷却速度が15℃/分と本発明の範囲
である30℃/分以上を外れる比較例では、その衝撃値
および降伏比は共にVを添加した現用鋼より低い。
【0078】さらに、これらのクランクシャフト本体に
ついて実施した実体ねじり疲労試験の結果を図12に示
す。これより、発明鋼を使用した発明例ではVを添加し
た現用鋼と同等の疲労強度を有するが、比較例では、い
ずれも、現用鋼の疲労限以下のトルクで破損した。
【0079】以上のように、本発明鋼を使用し、熱間圧
延条件が本発明の範囲にあれば、実部品においてもVを
添加した現用鋼と同等以上の機械的性質と疲労強度を有
することが確認された。
【0080】
【発明の効果】発明の効果としては、本発明により、鋼
の化学成分と熱間圧延等の熱間成形条件を調整すること
により、Vを含有しない低コストな成分の鋼でも、Vを
添加した熱間鍛造用非調質鋼と同等以上の機械的性質お
よび疲労強度を付与することができる。したがって、熱
間鍛造品を使用する産業界におけるコストの低減に貢献
し、さらに、省工程、省エネルギーに寄与する非調質鋼
の採用を促進することにより、業界を越えて広く地球環
境保全に貢献することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】熱間圧延等の熱間成形方法を模した実験条件を
示す。
【図2】熱間鍛造を模した実験条件を示す。
【図3】熱間鍛造後の鋼のフェライト結晶粒度番号とA
lおよびN含有量の関係を示すグラフである。
【図4】「熱間鍛造前の鋼」の平均炭窒化物粒径と60
0℃までの平均冷却速度を示すグラフである。
【図5】熱間鍛造後の鋼のフェライト結晶粒度番号と6
00℃までの平均冷却速度を示すグラフである。
【図6】従来技術と本発明における炭窒化物固溶、析出
挙動の説明図である。
【図7】衝撃値とフェライト結晶粒度番号との関係を示
すグラフである。
【図8】降伏比とフェライト結晶粒度番号との関係を示
すグラフである。
【図9】衝撃値とNi+Mo含有量との関係を示すグラ
フである。
【図10】降伏比とNi+Mo含有量との関係を示すグ
ラフである。
【図11】クランクシャフトの概略図を示す。
【図12】クランクシャフトの実体ねじり疲労試験結果
を示すグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4K032 AA01 AA03 AA05 AA06 AA08 AA11 AA12 AA16 AA17 AA19 AA21 AA22 AA23 AA26 AA27 AA28 AA29 AA31 AA34 AA35 AA39 CA03 CC03 CC04 CD01

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 質量パーセントで、 C=0.20〜0.60%、 Si=0.01〜1.00%、 Mn=0.30〜2.50%、 P=0.035%以下、 Ni=0.01〜0.35%、 Cr=0.10〜1.50%、 Mo=0.01〜0.35%、 Al=0.020〜0.045%、 O=0.0015%以下、 N=0.0100〜0.0250%、 を含有し、さらに、Ni+Moで示されるパラメーター
    が0.05%以上であり、残部Feおよび不可避的不純
    物元素からなる鋼を1250℃以上に加熱し、仕上温度
    800℃以上で熱間成形を終了後、30℃/分以上の冷
    却速度で600℃以下まで冷却して得られることを特徴
    とするVを含有しないフェライト−パーライト組織を主
    体とした熱間鍛造用非調質鋼。
  2. 【請求項2】 さらに、質量パーセントで、 Nb=0.005〜0.050%、 Ti=0.010〜0.035%、 のうちから1種または2種を含有している請求項1記載
    のVを含有しないフェライト−パーライト組織を主体と
    した熱間鍛造用非調質鋼。
  3. 【請求項3】 さらに、被削性を向上する元素として質
    量%で、 S=0.005〜0.100%、 Pb=0.01〜0.09%、 Bi=0.04〜0.20%、 Te=0.002〜0.030%、 Zr=0.01〜0.20%、 Ca=0.0001〜0.0100%、 Sb=0.015〜0.100%、 のうちから1種または2種以上を含有している請求項1
    又は請求項2に記載のVを含有しないフェライト−パー
    ライト組織を主体とした熱間鍛造用非調質鋼。
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