JP2002020398A - リン酸化糖とその製造方法 - Google Patents

リン酸化糖とその製造方法

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JP2002020398A
JP2002020398A JP2001144025A JP2001144025A JP2002020398A JP 2002020398 A JP2002020398 A JP 2002020398A JP 2001144025 A JP2001144025 A JP 2001144025A JP 2001144025 A JP2001144025 A JP 2001144025A JP 2002020398 A JP2002020398 A JP 2002020398A
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Hiroshi Kamasaka
寛 釜阪
Shigetaka Okada
茂孝 岡田
Kaname Kusaka
要 日下
Kazuya Yamamoto
一也 山本
Kenji Yoshikawa
憲司 芳川
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Ezaki Glico Co Ltd
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Ezaki Glico Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 カルシウム、マグネシウム、あるいは鉄など
のミネラルと反応してミネラルとの化合物または錯体を
形成することにより、これらのミネラルを不溶化させな
い能力のあるリン酸化糖を提供すること、および、この
リン酸化糖を肥料、飼料、食品、飲料、口腔用組成物、
洗浄剤組成物、またはそれらの添加用組成物として広く
提供すること。 【解決手段】 グルコース2個以上からなるグルカンに
1個以上のリン酸基が結合しているリン酸化糖が提供さ
れる。リン酸化糖にタンパク質あるいはペプチドを結合
させたリン酸化糖誘導体、およびリン酸化糖あるいはそ
れらの誘導体とアルカリ土類金属または鉄とを結合させ
た物質、およびそれらの製造方法もまた提供される。本
発明により、上記リン酸化糖またはそれらの誘導体を含
む肥料、飼料、食品、飲料、口腔用組成物、洗浄剤用組
成物、またはそれらの添加用組成物が提供される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、リン酸化された糖
(以下、リン酸化糖と称する)に関する。さらに本発明
は、リン酸化糖とタンパク質またはペプチドとの複合体
であるリン酸化糖誘導体、もしくはリン酸化糖あるいは
リン酸化糖誘導体とアルカリ土類金属あるいは鉄との結
合体であるリン酸化糖誘導体に関する。これらのリン酸
化糖あるいはリン酸化糖誘導体は、カルシウムなどのア
ルカリ土類金属または鉄の沈殿阻害効果(以下、可溶化
という)、あるいはカルシウムの吸収促進作用を有して
いる。従って、本発明は、食品、飲料、飼料、あるいは
肥料に含まれるまたは含有させたカルシウムなどのアル
カリ土類金属、または鉄の生体への吸収を促進させるこ
とによって、ヒトや動物の健康を増進して各種の疾患を
予防する原料、飲食用組成物、食品添加用組成物、ある
いは飼料の原料または組成物として有用である。本発明
はまた、植物へのカルシウムの吸収を促進して、植物あ
るいは果実の日持ちを向上させる肥料の原料や組成物に
関する。さらに、本発明は、虫歯の予防効果を有してお
り、詳細には食品、飲料、飼料はもとより、練り歯磨
き、マウスウオッシュ、トローチなどの口腔用組成物に
も添加され得る。本発明は、種々のスケール、特にカル
シウム系およびマグネシウム系スケールの発生を防止ま
たは抑制し得るスケール防止剤として使用され得る。
【0002】
【従来の技術】食品から摂取すべき栄養素の中で、ミネ
ラルは、骨、神経、および筋肉の機能を維持するために
欠くことができない。しかし、このミネラルは現在の食
生活においては不足しがちで、このため健康上への影響
が問題となっている。
【0003】例えば、カルシウムの平均摂取量は栄養所
要量に達していない。所要量が600mgと高く設定さ
れているのは、以下に示すような理由で体内でのカルシ
ウム吸収率が極めて低いからである。このため、吸収率
を高めることが重要である。カルシウムはアルカリ性領
域において無機リン酸と結合して不溶性の沈澱(リン酸
カルシウム)を形成することが知られている。腸内の環
境は微アルカリ性であり、かつ最近の加工食品には無機
リン酸が多く含まれている。従って、摂取されたカルシ
ウムは、リン酸カルシウムとなり沈殿を生じる。このた
め腸管からのカルシウムの吸収が妨げられる。
【0004】カルシウムを腸内環境下において腸管から
効率よく吸収させることは、重要な課題である。特に、
成長期の子供や妊婦は、より多くのカルシウムを摂取す
る必要がある。また、高齢になるに従って腸管の機能が
低下し、カルシウムの吸収力が低下する結果発症する骨
粗鬆症も深刻な問題である。カルシウムを多く含む食品
には、牛乳、ヨーグルト、チーズなどの乳製品、および
いわし、えびなどの魚介類の干物、佃煮があるが、嗜好
の問題や咀嚼力の低下から摂取されにくい場合も多い。
【0005】鉄分の摂取については、2価鉄は酸化され
て3価鉄に変化しやすい。酸化型の鉄は、中性からアル
カリ性域で凝集して沈澱を形成するため生体で吸収され
難くなる。また、鉄はそれが含まれる食品によってその
吸収性が大きく異なるために、偏食しがちな現代人の摂
取量は十分とは言えない。特に、女性は鉄の需要が高い
ので、摂取量が少ないことは問題である。
【0006】マグネシウムについても、マグネシウム塩
はカルシウム塩と同様、不溶性であるため、その生体内
への吸収率は比較的低く、特に成長期の子供や妊婦にお
いて、摂取量が不足することは問題である。さらに、マ
グネシウムも、鉄と同様に食事内容の影響を受けやす
い。
【0007】これらのミネラルは、特に成長期の子供や
妊婦において不足することが多く、これらをより多く摂
取する必要がある。さらに今日、ダイエットや偏食の問
題が大きく、嗜好食品においても、カルシウムと同様に
鉄やマグネシウムの有効な生体への吸収を考慮した食品
が期待され、これらの吸収を促進する摂取方法を開発す
ることは重要である。
【0008】以上のような目的でカルシウム、マグネシ
ウム、鉄などを飲料類に添加した場合に、保存中に沈澱
が発生して有効な成分が損失することが問題となってい
る。また、カルシウムの過剰投与は、タンパク質の利用
性低下(五島ら、栄養と食糧、32巻、1〜11頁、1979
年)あるいはミネラルの利用性低下(内藤ら、日本栄養
食糧学会誌、39巻、433〜439頁、1986年)を引き起こす
ことが知られている。
【0009】畜産業界では、生産性向上のため、ブロイ
ラー、豚などは急激な成長が求められるため、骨の発育
が追いつかずに脚弱、奇形などの問題が起こっている。
カルシウムは特に、骨、卵殻質改善、牛乳のカルシウム
強化、鰻の骨曲がり防止などの目的で補給されている
が、カルシウムの利用率が悪いことが大きな問題となっ
ている。
【0010】植物にとってもカルシウムは重要な要素で
あり、EDTA−カルシウムなどのキレートカルシウム
の投与によって、細胞壁の強化あるいはエチレンガスの
発生抑制などの作用による老化抑制効果および日持ち性
の向上が知られている(K.Tanakaら、J.Japan.Soc.Hor
t.Sci.,61巻、183〜190頁、1992年)。しかし、EDT
A−カルシウムは毒性を有するため、毒性のない安全で
有効なキレート剤の開発が望まれている。
【0011】カルシウムが腸内環境下において不溶化し
ないようにすることにより、腸管から効率よく吸収させ
ることを目的として、カルシウムと化合物を形成する能
力のある物質が開発され利用されている。例えば、カゼ
インホスホペプチド(CPP)を飲料または食品に添加
する技術(特開平3−240470号公報、特開平5−
284939号公報)、クエン酸カルシウム・リンゴ酸
カルシウム複合体のカルシウム可溶化効果(特開昭56
−97248号公報)、ペクチン酸カルシウムの骨強度
増強作用(特開平6−7116号公報)などが知られて
いる。これらの化合物は、一部食品にも既に利用されて
いる。しかし、用途によっては使用に制限があり、必ず
しも満足のいくものではない。
【0012】例えば、カゼインホスホペプチドはカルシ
ウムの吸収効果が大きく、比較的よく食品に利用されて
いる。このペプチドは、乳汁に含まれる乳タンパク質を
構成する。しかし、乳汁中に占めるその含量が少なく、
分画が容易でないために、大変高価である。さらに、精
製が不十分な製品では、苦味のあるペプチドの混入が多
いため、味覚上好ましくない。
【0013】酸性多糖または酸性蛋白質もまたカルシウ
ムと化合物を形成する能力を有することが知られてい
る。これらの多糖またはタンパク質は高分子であり、食
品に添加した際に粘度上昇を引き起こすため、その用途
は制限される。さらに、リンゴ酸、酒石酸などの有機酸
は、安価ではあるが、食品にこれらを添加した際に官能
的に好ましくない味質を示す。これらはまた酸であるこ
とから、歯のエナメル質の脱灰を引き起こすことがあ
り、歯を健康に保つ上で問題がある。
【0014】歯石および歯垢は、歯肉炎、歯周炎、ある
いはう蝕の原因になることが知られている。歯石形成の
詳細については必ずしも明らかにされていないが、プラ
ークを構成する細菌、唾液糖タンパク質などの有機基質
に、唾液および浸出液から供給されるカルシウムまたは
リンが沈着し、結晶化する石灰化現象と考えられる。既
存の歯石防止剤としては、ピロリン酸ナトリウムあるい
はトリポリリン酸ナトリウムに関する、三宅ら(日歯周
誌、第30巻、3号、860〜867頁)の提案がある。う蝕
は、ミュータンス菌(6715株)が砂糖を栄養源として、
酵素グルコシルトランスフェラーゼ(以下GTaseと
略する)の作用により、非水溶性のグルカンをつくるこ
とから始まる。このグルカンが歯の表面を覆うために、
歯垢が生じる。この歯垢の内部でミュータンス菌が酸発
酵を起こすと、歯が溶け出して虫歯となる。非う蝕の糖
としては、ミュ一タンス菌の栄養源にならないいくつか
のオリゴ糖(S.Hamadaら、J.Jpn.Soc.Starch Sci.、31
巻、83-91頁、1984年)が既に提案されている。さら
に、抗う蝕剤として茶の成分であるポリフェノールが報
告され利用されている(S.Sakanakaら、Fragnance Jour
nal、11巻、42-49頁、1990年)。しかし、ポリフェノー
ルの利用もまた味覚の問題があり、用途は制限されてい
る。歯石と歯垢との両方に効果を持つ物質はいまだ開発
されていない。
【0015】一般的に、オリゴ糖の性質として低カロリ
ーおよび整腸作用が多く報告されているが、リン酸化糖
に関する報告はない。
【0016】糊化した澱粉は、高い粘性を有する。これ
は、澱粉中のアミロペクチンが、房状構造が多数連なっ
た非常に長い分子であることに起因する。糊化した澱粉
は、高い粘性を有するため、澱粉を原料としてマルトー
スあるいはシクロデキストリンなどを製造する場合に、
取り扱いが困難であるという問題がある。例えば、一定
濃度以上の糊化した澱粉をパイプを用いて輸送する場合
には、パイプが詰まることがある。
【0017】このように、既存の澱粉が有する性質(溶
解性の低さ、老化性、および高粘度)は、食品およびそ
の他の産業において、澱粉の利用を制限した。そこで、
酵素処理、化学処理、または物理的処理を行って澱粉を
低分子化させることにより、溶解性および耐老化性を向
上させる研究が行われ、ある程度は、老化を抑制できる
ようになった。しかし、過剰な分子量低下を抑えること
は困難であり、本来高分子である澱粉の持つ固有の性質
を失うという問題が生じている。
【0018】各種工業用水系でのスケール生成は、高温
水系、非高温水系を問わず深刻な問題である。例えば、
水系が加熱されると、溶存しているカルシウム、マグネ
シウムのような金属イオンが不溶性の化合物に変化しや
すく、水系と接触している伝熱面上などにスケールとし
て析出する。この傾向は、ボイラー、海水淡水化装置
系、地熱熱水の利用装置系などの高温水系の場合顕著で
あり、熱効率の低下、水路の閉塞などの障害を引き起こ
す。
【0019】植物が貯蔵する澱粉の多くには、澱粉を構
成するグルコースに一部リン酸基が工ステル結合してい
る。澱粉中のリン酸含有量としては微量であるが、芋類
の澱粉には比較的多く、中でも馬鈴薯澱粉はリン酸基を
多く含んでおり、リン酸含有量の非常に高い品種も存在
している(矢木敏博ら、澱粉化学、20巻、51頁、1973
年)。馬鈴薯澱粉中では、これを構成するグルコース残
基の3位および6位にリン酸基が比較的多くエステル結
合していることが知られている(Y.Takedaら、Carbohyd
rate Research、102巻、321-327頁、1982年)。このよ
うな澱粉をアミラーゼなどの澱粉分解酵素を用いて分解
する場合、澱粉構造中のリン酸基がエステル結合したグ
ルコース残基の近傍には酵素が作用できない。従って、
糖化終了時点で、リン酸化糖は未分解で残ることが知ら
れる。このため、リン酸化糖は、オリゴ糖、麦芽糖、グ
ルコースなどを生産する澱粉糖化産業において、リン酸
化糖の組成を知らないままに廃棄物として処分されてい
ることもまた知られていた。
【0020】澱粉糖化産業においては、糖化した液から
糖化に用いた酵素および残存するリン酸化糖を除去する
ことを目的として、糖液をイオン交換樹脂に通す工程が
用いられている。
【0021】この工程において、イオン交換樹脂に吸着
したリン酸化糖は、樹脂の再生を目的とした水酸化ナト
リウム溶液によるイオン交換樹脂の洗浄の際に樹脂から
溶出される。このリン酸化糖を含む洗浄後の液は、廃液
として処分されてきた。この廃液は、強アルカリ性であ
るため、その中に含まれるリン酸化糖が分解されてリン
酸と中性糖になる、あるいは糖の還元末端が酸化される
などの反応が起こるため、廃液中のリン酸化糖の残存率
は低かった。
【0022】他方、リン酸を化学的に結合させた澱粉
(以下、化工澱粉という)もまた知られている。リン酸
化澱粉を食品に用いる場合、食品添加物の規格に従う
と、食品添加物として認可されるためには、結合リンと
して0.2〜3%であって、しかも澱粉と結合していな
い遊離の無機リン含量が全リンの20%以下であること
が要求される。
【0023】他方、リン酸化糖または化工澱粉とカルシ
ウムなどのアルカリ土類金属または鉄との化合物または
錯体の形成に関する研究、リン酸化糖によるカルシウム
などのアルカリ土類金属や鉄の生体における吸収促進に
関する研究、およびリン酸化糖による洗浄剤および歯石
防止剤としての研究は、これまでに全くなされていな
い。
【0024】
【発明が解決しようとする課題】カルシウム、マグネシ
ウム、あるいは鉄などのミネラルと反応してミネラルと
の化合物または錯体を形成することにより、これらのミ
ネラルを不溶化させない能力のあるリン酸化糖を提供す
ること、および、このリン酸化糖を肥料、飼料、食品、
飲料、口腔用組成物、洗浄剤組成物、またはそれらの添
加用組成物として広く提供することである。
【0025】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、リン酸化
糖に着目し、かかる状況下において鋭意研究を重ねた結
果、本発明を完成した。
【0026】本発明のリン酸化糖は、分子内に少なくと
も1個のリン酸基を有する。上記糖は、グルカン、マン
ナン、デキストラン、寒天、シクロデキストリン、フコ
イダン、ジェランガム、ローカストビーンガム、グアー
ガム、タマリンドガム、およびキサンタンガムからなる
群から選択される。
【0027】好ましい実施態様では、本発明のリン酸化
糖は、上記糖がグルカンであり、このグルカン1分子あ
たり少なくとも1個のリン酸を有する。
【0028】さらに別の好ましい実施態様では、本発明
のリン酸化糖は、上記糖がグルカンであり、このグルカ
ンが、α−1,4結合した3〜5個のグルコースからな
り、そしてこのグルカンに1個のリン酸基が結合してい
る。
【0029】さらに別の好ましい実施態様では、本発明
のリン酸化糖は、上記糖がグルカンであり、このグルカ
ンが、α−1,4結合した2〜8個のグルコースからな
り、そしてこのグルカンに2個のリン酸基が結合してい
る。
【0030】さらに別の好ましい実施態様では、本発明
のリン酸化糖は、上記糖がグルカンであり、このグルカ
ンが、α−1,4結合したグルコースを主鎖とし、α−
1,6結合および/またはα−1,4結合したグルコー
スを側鎖とする。
【0031】さらに本発明は、タンパク質あるいはペプ
チドとを結合したリン酸化糖に関する。
【0032】また、本発明は、リン酸化糖またはリン酸
化糖誘導体に、アルカリ土類金属または鉄と結合したリ
ン酸化誘導体に関する。
【0033】本発明のリン酸化糖の製造方法は、公知の
糖類をリン酸化する方法が用いられ得る。
【0034】好ましい実施態様では、糖がグルカンの場
合には、リン酸基を有する澱粉または化工澱粉を分解し
て得られ得る。
【0035】好適な実施態様では、リン酸基を有する澱
粉または化工澱粉に、澱粉分解酵素、糖転移酵素、また
はα−グルコシダーゼ、あるいはそれらの1種以上の組
み合わせ(但し、α−グルコシダーゼ1種のみを除く)
を作用させる。
【0036】好ましい実施態様では、上記澱粉分解酵素
は、α−アミラーゼ、β−アミラーゼ、グルコアミラー
ゼ、イソアミラーゼ、プルラナーゼ、またはネオプルラ
ナーゼの1種以上の組み合わせからなるものである。好
ましい実施態様では、上記糖転移酵素は、シクロデキス
トリングルカノトランスフェラーゼである。
【0037】好ましい実施態様では、上記製造方法は、
本発明のリン酸化糖に糖転移酵素を作用させる。上記糖
転移酵素がシクロデキストリングルカノトランスフェラ
ーゼである。
【0038】本発明のリン酸化糖の誘導体は、リン酸化
糖またはリン酸化糖誘導体にアルカリ土類金属の塩また
は鉄の塩を作用させて製造される。
【0039】本発明によれば、上記リン酸化糖またはそ
れらの誘導体を含む、肥料、飼料、食品、飲料、口腔用
組成物、洗浄剤用組成物、またはそれらの添加用組成物
が提供される。
【0040】本発明によれば、上記リン酸化糖またはそ
れらの誘導体と、リン酸化糖とが結合している物質を含
む、肥料、飼料、食品、飲料、口腔用組成物、洗浄剤用
組成物、またはそれらの添加用組成物もまた提供され
る。
【0041】本発明によれば、リン酸化糖体またはその
誘導体を含む、肥料、飼料、食品、飲料、口腔用組成
物、洗浄剤用組成物、またはそれらの添加用組成物もま
た提供される。
【0042】
【発明の実施の形態】以下に、本発明について詳細に記
述する。
【0043】本発明においてリン酸化糖とは、分子内に
少なくとも1個のリン酸基を有するリン酸化された糖を
いう。また本願において中性糖とは、リン酸基が結合し
ていない糖をいう。
【0044】本発明のリン酸化糖の製造原料である糖と
しては、グルカン、マンナン、デキストラン、寒天、シ
クロデキストリン、フコイダン、ジェランガム、ローカ
ストビーンガム、グアーガム、タマリンドガム、および
キサンタンガムが挙げられる。以下、グルカンの場合に
ついて説明する。一般の粗製植物澱粉、好ましくは馬鈴
薯の粗製澱粉などのリン酸基が多く結合した澱粉が適し
ているが、精製品でもよい。化工澱粉もまた、好適に用
いられ得る。さらに、リン酸基を化学的に結合させた各
種糖質を用いることもまた可能である。馬鈴薯澱粉中で
は、これを構成するグルコースの3位および6位にリン
酸基が比較的多くエステル結合している。リン酸基は主
にアミロペクチンに存在する。
【0045】澱粉などの酵素的分解には、澱粉分解酵素
であるα−アミラーゼ(EC3.2.1.1)、β−アミラー
ゼ(EC3.2.1.2)、グルコアミラーゼ(EC3.2.1.
3)、イソアミラーゼ(EC3.2.1.68)、プルラナーゼ
(EC3.2.1.41)、およびネオプルラナーゼ(Kuriki
ら、Journal of Bacteriology、170巻、1554頁-1559
頁、1988年)、ならびに糖転移酵素であるシクロデキス
トリングルカノトランスフェラーゼ(EC2.4.1.19;以
下CGTaseと略する)をそれらのうち1種以上作用
させ、または、それら1種以上とα−グルコシダーゼ
(EC3.2.1.20)を併用する。
【0046】イソアミラーゼあるいはプルラナーゼで分
解することにより、澱粉中のα−1,6分枝構造を切る
ことによって、分枝構造を有しないリン酸化糖を得るこ
とができるし、これらの酵素を用いなければ、α−1,
6分枝構造を有するリン酸化糖を得ることもできる。ま
た、グルコアミラーゼで分解することにより、非還元末
端に結合したリン酸化されていないグルコースを順次遊
離させることができる。このような酵素処理を行うこと
で、精製後のリン酸化糖の分子量あたりのリン酸基数を
増減させることが可能となる。
【0047】すなわち、高いリン酸含量のリン酸化糖が
必要であれば、多い酵素量で長時間反応させればよく、
それほど高いリン酸含量のリン酸化糖が必要でなけれ
ば、少ない酵素量で短時間で反応させればよい。
【0048】酵素による分解は複数種の酵素を同時に反
応させることにより、同時に進行させ得る。簡単に言え
ば、原料となる澱粉を、水、または酵素が作用できるp
Hに調整した緩衝液に溶解する。この反応液に、液化型
α−アミラーゼ、プルラナーゼ、グルコアミラーゼなど
を同時に加えて、加熱を行うことにより反応させる。こ
の方法を用いると、澱粉を糊化させながら、中性糖を遊
離すること、リン酸化糖の非還元末端に結合したリン酸
化されていないグルコースを遊離させること、あるいは
リン酸化糖構造中の原料に由来するα−1,6分枝構造
を切断することができる。この方法により、2段階の反
応ではなく、1段階の反応でリン酸含量を高めたリン酸
化糖が得られる。
【0049】複数種の酵素を個別の工程で作用させるこ
とにより2段階以上の酵素反応をさせる場合において
は、作用させる酵素の順序は特定されない。しかし、澱
粉の濃度が高い場合、最初に液化型アミラーゼを含めた
酵素を作用させるのが好ましい。最初にイソアミラーゼ
あるいはプルラナーゼを作用させるとアミロース含量が
増える。アミロースはアミロペクチンに比べて老化およ
び沈澱しやすいため、原料が老化、沈澱してしまう。そ
して他の酵素による作用を受けなくなる。
【0050】使用する澱粉分解酵素、糖転移酵素、およ
びα−グルコシダーゼの由来は特に問わない。例えば、
α−アミラーゼの由来としては、バチルス(Bacillus)
属菌やアスペルギルス(Aspergillus)属菌由来の澱粉
分解酵素製剤が好適に使用され得る。また、酵素の反応
条件は、酵素が作用し得る温度およびpHであればよ
い。例えば、温度25℃〜70℃、pH4〜8が好適に
用いられる。
【0051】まず原料となる澱粉を、水、または酵素の
作用できるpHに調整した緩衝液に溶解する。この溶液
に、液化型α−アミラーゼを加え、加熱して反応させる
ことにより、澱粉を糊化させつつ液化する。その後、温
度20〜80℃にて適当な時間保持する。作用させる液
化型α−アミラーゼ量は、澱粉を液化できる量であれ
ば、少量でも過剰でも良い。好適な量としては、20〜
50,000Uである。また、この時の保持時間は、澱
粉がその後の工程中において老化を起こさない程度まで
液化されるならば、その長さは問わない。好ましくは、
20〜80℃で30分間保持される。
【0052】液化終了後、特に酵素を失活させる必要は
ないが、100℃で10分保持するなど常法により酵素
を失活させてもよい。さらに、遠心分離あるいは膜濾過
などの常法により不溶物を分離除去してもよい。その
後、リン酸化糖を分画してもよいが、リン酸含量を高め
たリン酸化糖を得るには、さらに以下の操作を行う。
【0053】簡単に言えば、原料を液化させた後、これ
に、グルコアミラーゼ、イソアミラーゼ、プルラナー
ゼ、およびα−グルコシダーゼをそれぞれ同時にあるい
は適当な順序で添加して糖化させ、例えば温度40〜6
0℃で30分〜40時間作用させて、原料から、中性糖
およびリン酸化糖の非還元末端に結合したリン酸化され
ていないグルコースを遊離させ得、そしてリン酸化糖構
造中の原料に由来するα−1,6分枝構造を切断し得
る。このグルコアミラーゼ、イソアミラーゼ、プルラナ
ーゼを組み合わせて使用する場合、その組み合わせおよ
び添加順序は問わない。また、酵素の添加量および保持
時間は、リン酸化糖に求められるリン酸含量などに応じ
て決定され得る。好ましくは、グルコアミラーゼは50
〜700U、イソアミラーゼおよびプルラナーゼはそれ
ぞれ2〜100U、α−グルコシダーゼは50〜700
U添加され得る。酵素は固定化しても好適に用いられ得
る。
【0054】各酵素の反応終了後においては、特に酵素
を失活させる必要はないが、100℃で10分保持する
など常法により酵素を失活させてもよい。さらに、遠心
分離あるいは膜濾過などの常法により不溶物を分離除去
してもよい。
【0055】リン酸化糖を含有する糖混合物からリン酸
化糖を精製するために、リン酸化糖が中性糖とは異なり
イオン性の物質であることから、陰イオン交換樹脂が用
いられ得る。樹脂の種類は、特に限定するものではない
が、キトパールBCW2500タイプ(富士紡績製)、
アンバーライトlRAタイプ(オルガノ製)、DEAE
−セルロース(ワットマン製)、DEAE−セファデッ
クス、QAE‐セファデックス(ファルマシア製)、Q
AE−セルロース(バイオラッド製)などが好適に用い
られ得る。適当なpHに調整した緩衝液を用いて、樹脂
を平衡化する。例えば10〜50mM程度の酢酸緩衝液
(pH4〜5)などの条件が好適に用いられ得る。平衡
化した樹脂をカラムに詰め、リン酸化糖を含有する糖混
合物をチャージする。中性糖を洗浄除去した後、吸着し
たリン酸化糖をアルカリ性の溶液または塩溶液を用いて
溶出する。
【0056】リン酸化糖の溶出を溶出液のイオン強度を
上昇させることによって行う場合、用いる塩の種類は特
に問わない。例えば、塩化ナトリウム、重炭酸アンモニ
ウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸アンモニウ
ムのような塩が好適に用いられ得る。
【0057】リン酸化糖の溶出を溶出液のpHをアルカ
リに変化させることによって行う場合、用いるアルカリ
試薬の種類は特に問わない。例えば、アンモニア、炭酸
ナトリウム、または水酸化ナトリウムが用いられ得る。
しかし、強アルカリ条件下では、リン酸基が糖から離脱
し、あるいは糖の還元末端が酸化される。従って、好ま
しくは、リン酸化糖の溶出は、弱酸性から弱アルカリ性
の範囲のpHで行い、さらに好ましくはpH3〜pH8
の範囲で行う。
【0058】この場合、徐々に溶出液の塩濃度またはp
Hを高くしたり、あるいは段階的に塩濃度またはpHを
上昇させてリン酸化糖を溶出することにより、リン酸化
糖1分子当たりに結合しているリン酸基の個数に応じて
リン酸化糖の成分を分画することが可能となる。
【0059】リン酸化糖を含有する糖混合物からリン酸
化糖を精製するには、陰イオン交換樹脂の代わりに活性
炭もまた用いられ得る。用いる活性炭の種類は特に問わ
ないが、好ましくは、カラムに充填可能な粒状活性炭が
用いられる。グルコースを除く中性糖の吸着能が生じる
条件となるように、緩衝液、酸、アルカリ、塩溶液、お
よび蒸留水を用いて、活性炭を調製する。例えば粒径が
均一で、脱気を施した活性炭を、カラムに充填し、蒸留
水で洗浄したものなどが好適に用いられ得る。カラムに
試料を供して中性糖を吸着させることにより、リン酸化
糖を素通り画分に得ることができる。
【0060】リン酸化糖を含有する糖混合物からリン酸
化糖を精製するには、炭素数1〜3のアルコールを添加
してリン酸化糖を沈澱させる方法もまた、用いられ得
る。簡単に言えば、試料溶液にアルコールを添加するこ
とにより、リン酸化糖のみが沈澱として得られ得る。1
0%以上の糖濃度であれば容積比で3倍量以上のアルコ
ールを添加することが望ましい。
【0061】アルコールに加えて、金属塩、好ましくは
カルシウム塩または鉄塩の存在下で、本発明のリン酸化
糖はリン酸化糖誘導体を形成し、沈澱が生じやすくな
る。このため、金属塩の存在下では、先に示したアルコ
ールのみによる沈澱化に比べ、少量のアルコールでもリ
ン酸化糖の回収が容易となる。好ましくはアルカリ条件
下で実施する。用いる塩の種類は特に限定するものでは
ないが、例えば、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、
または塩化第一鉄が、溶解性もよく、好適に用いられ得
る。アルコールを添加することで生じた沈澱の採取は、
一般に使用される方法、例えば、デカンテーション、濾
過、遠心分離などにより行われる。リン酸化糖と金属塩
との化合物であるリン酸化糖誘導体の沈澱は、上述のよ
うなアルコール沈澱で得られる。必要ならば、回収した
沈澱を水あるいは適当な溶液に再溶解し、アルコールを
再度添加する操作を繰返し行ってもよい。この操作によ
り、中性糖および過剰の塩などの不純物が除去され得
る。塩など不純物の除去には限外濾過膜もまた用いられ
得る。
【0062】金属塩を添加し、沈殿物として得られたリ
ン酸化糖誘導体から、金属塩を除去してリン酸化糖を製
造し得る。金属体の除去は(脱塩)は定法により行われ
得る。脱塩は、例えば卓上脱塩装置マイクロアシライザ
ーG3(旭化成(株)製)を用いると容易に行われ得
る。
【0063】このようにして得られたリン酸化糖の溶
液、リン酸化糖、またはリン酸化糖誘導体は、通常実施
される乾燥方法、例えば熱風乾燥、流動層乾燥、真空乾
燥などの方法を用いて、濃縮あるいは粉末にされ得る。
必要に応じてアルコールを除去することにより、飲食に
供し得るリン酸化糖あるいはリン酸化糖誘導体、または
施肥、洗浄に供し得るリン酸化糖またはリン酸化糖誘導
体が得られ得る。
【0064】化工澱粉を用いる場合、モノエステル型は
一般に乾式法で製造され、ジエステル型は湿式法で製造
され得る。結合させるリン酸基数は条件によって変動し
得る。食品添加物規格に基づくと、結合リン酸基が重量
比で3%以下程度であることが食品としては好ましい。
しかし、飼料、肥料、または洗浄剤に用いる場合にはこ
の限りではない。天然に存在する澱粉に比べて化工澱粉
ではリン酸基が多く結合しており、酵素作用産物として
得られるリン酸化糖の重合度は大きく、そしてその結合
リン酸含有量は高い。従って、化工澱粉では、先に示し
たアミラーゼなどの酵素処理によって、結合リン酸基数
がリン酸化糖1分子当たりに1個のものから複数個のも
のまでが生成される。それゆえ化工澱粉より生産された
リン酸化糖のカルシウム、鉄、マグネシウムとの化合物
形成能は、結合リン酸基数の上昇につれて高くなる。
【0065】得られたリン酸化糖の構造は以下のように
分析できる。
【0066】まず、リン酸化糖からリン酸基を除去す
る。例えばリン酸化糖溶液と10mM塩化マグネシウ
ム、0.3mM塩化亜鉛、および0.05%アジ化ナト
リウムを含む60mM炭酸ナトリウム緩衝液(pH9.
4)とを混合し、これにアルカリホスファターゼ(E
C.3.1.3.1;E.coli由来;シグマ社製)を添加して、
適当な温度で適当な時間(例えば40℃で18時間)反
応させる。限外濾過膜を用いてアルカリホスファターゼ
を除去することにより反応を停止し、リン酸基が除去さ
れた糖(以下、脱リン酸化糖と言う)を成分とする反応
液(以下反応液Aという)を得る。
【0067】得られた反応液Aに対し、例えば200m
M酢酸緩衝液(pH4.8)に溶解したβ−アミラーゼ
(さつまいも由来;シグマ社製)を添加して、適当な温
度で適当な時間(例えば37℃で2時間)反応させる
(以下、この液を反応液Bという)。同様に、反応液A
に60mM酢酸緩衝液(pH4.5)に溶解したグルコ
アミラーゼ(Rhizopus由来;東洋紡績製)を添加して、
適当な温度で適当な時間(例えば35℃で18時間)反
応させる(以下、この液を反応液Cという)。
【0068】反応液A〜Cを分析して生成物を確認す
る。これらの反応液内の生成物は、陰イオン交換樹脂カ
ラムCarboPac PA-100(φ4×250mm、ダイオネッ
クス社製)による高速液体クロマトグラフィーまたはシ
リカゲルを用いた薄層クロマトグラフィーを用いて分析
し、各種重合度の標準マルトオリゴ糖と比較することに
より確認され得る。高速液体クロマトグラフィーを用い
た脱リン酸化糖の溶出は、100mMの水酸化ナトリウ
ムを基本溶液として1M酢酸ナトリウム濃度を上昇させ
ることによって行なわれ得る。検出はパルスドアンペロ
メトリー(ダイオネックス社製)を用いて行われ得る。
薄層クロマトグラフィーによる脱リン酸化糖の分析は、
脱リン酸化糖をアセトニトリル/水=80/20で多重
展開した後、硫酸/メタノール=1/1の溶液を噴霧
し、130℃で3分間保持することにより行なわれ得
る。
【0069】反応液Aを分析すれば、リン酸化糖の鎖長
が確認できる。反応液Bを分析したときにマルトースの
み、あるいはマルトースとマルトトリオース(およびわ
ずかにグルコース)が検出されれば、この脱リン酸化糖
はグルコースがα−1,4結合したグルカンであること
が確認できる。さらに反応液Cを分析したときにグルコ
ースのみが検出されれば、この脱リン酸化糖はα−結合
したグルコースからなることが確認できる。
【0070】糖の平均鎖長(以下グルコースを1単位と
してDPで表す。)は、脱リン酸化糖を構成する各重合
度の糖含量から求められ得る。全リン酸化糖中の全糖量
はフェノール硫酸法により定量し、結合リン酸基数は湿
式灰化後、無機リン酸として定量され得る(澱粉関連糖
質実験法、生物化学実験法19、中村道徳ら、31頁、1986
年、学会出版センター)。1分子当たりの結合リン酸基
数は、湿式灰化後定量された無機リン酸量と、DPより
下式を用いて算出される。
【0071】
【数1】
【0072】例えば、馬鈴薯澱粉にα−アミラーゼにつ
づいてグルコアミラーゼ、イソアミラーゼあるいはプル
ラナーゼを作用させることにより、グルコースがα−
1,4結合したリン酸化糖(重合度2以上8以下)が得
られる。得られるリン酸化糖は、前述の陰イオン交換樹
脂を用いる精製法によって、グルコースがα−1,4結
合したグルカンに1分子あたり1個のリン酸基が結合し
たものと、グルコースがα−1,4結合したグルカンに
1分子あたり2個以上のリン酸基が結合したものとの2
種のリン酸化糖のグループに区別され得る。
【0073】上記のようにグルコアミラーゼを作用させ
て得られるリン酸化糖は、リン酸基がグルコースの6位
に結合していれば、その直前まで非還元末端側から切断
され得る。従って、このリン酸化糖は、6位に結合した
グルコースを非還元末端に有するオリゴ糖あるいは少な
くとも非還元末端側から2個目のグルコースの6位に結
合している構造になる。リン酸基がグルコースの3位に
結合していれば、非還元末端側から2個目のグルコース
の3位に結合している構造になる。これは、桧作ら(Bi
ochmica et Biophysica Acta、749巻、302〜311頁、198
3年)のグルコアミラーゼの特性から明らかとなってい
る。
【0074】このようなグルコースがα−1,4結合し
たグルカンに1分子あたり1個のリン酸基が結合したリ
ン酸化糖にCGTaseを作用させると、さらにカルシ
ウム可溶化効果の高いリン酸化糖が得られ得る。
【0075】これらのリン酸化糖は、これまでに製造さ
れたことがなく、本発明によって初めて分画され、その
構造が明らかとなったものである。また、グルコースが
α−1,4結合したグルカンに、1分子あたり2個以上
のリン酸基が結合したものはこれまでその存在も知られ
ていなかった。
【0076】このようにして分画したリン酸化糖の構造
を分析した結果、馬鈴薯澱粉から各種糖液を生産する時
に処分されてきた廃液に存在することもまた判明した。
澱粉糖化産業においては、このようなリン酸化糖は陰イ
オン交換樹脂によって吸着されるが、このリン酸化糖
は、目的産物ではなく、陰イオン交換樹脂の再生時に強
アルカリ性の液にて溶出されるために分解してしまって
いる。
【0077】以上のように調製されたリン酸化糖は、以
下のような性質を有する。
【0078】(1)糖質に結合しているリン酸基が、カ
ルシウムなどのアルカリ土類金属および鉄との親和性が
高く、それら金属類の沈澱を防ぐことができる。
【0079】(2)カルシウムなどのアルカリ土類金属
および鉄の生体への吸収を促進する効果を有する。
【0080】(3)虫歯の原因であるミュータンス菌に
資化されない非う蝕性の糖であり、グルカンの生成を行
わない。
【0081】(4)pHの緩衝能があり、炭酸カルシウ
ムの存在下で相乗作用が生じて、緩衝能力が高まる。
【0082】(5)生体内酵素では消化され難く、そし
てカロリーに成りにくい難消化性糖である。
【0083】(6)澱粉の老化を防ぐ効果を有する。
【0084】(7)無味無臭である。
【0085】これらの効果は、馬鈴薯由来の澱粉から得
たリン酸化糖に限らず、例えば、酵母由来のリン酸化さ
れたマンナンによっても提供される。デキストラン、寒
天、シクロデキストリン、フコイダン、ジェランガム、
ローカストビーンガム、グアーガム、タマリンドガム、
あるいはキサンタンガムのリン酸化糖もまた同様の効果
を有する。さらに、糖質の種類によらずリン酸化されて
いれば、以上の性質を有する糖質を提供できる。ただ
し、リン酸基を化学的に結合させた糖質は、先に述べた
ように食品添加物規格の使用制限を受けるが、食用以外
はその限りではない。
【0086】本発明のリン酸化糖は、タンパク質あるい
はペプチドと複合体を形成し得、リン酸化糖の誘導体と
し得る。糖質のタンパク質とのメイラード反応を利用し
た複合体の作製は古くから行われてきた。このメイラー
ド反応は、通常の食品調理中にも起こる反応であり、反
応産物は生体に安全である。その反応は、糖質の還元性
末端がタンパク質のアミノ基に脱水縮合することによっ
て起こる。多糖の場合はタンパク質1分子に糖1〜2分
子が結合し、単糖の場合はほとんどのタンパク質のアミ
ノ基に糖が結合することが可能である(A. Katoら、Ame
rican ChemicalSociety.、16章、213〜229頁。1991
年)。また、その機能として、タンパク質の熱安定性お
よびpH安定性の向上、乳化特性の付与、あるいは水に
不溶性のタンパク質の可溶化などが報告されている(A.
Katoら、J. Agric. Food Chem.、39巻、1053〜1056
頁。1991年)。最近、グルコース−6−リン酸をタンパ
ク質に結合させることにより、カルシウム可溶化効果が
得られることもまた判った(T.Aokiら、Bioskci. Biote
ch. Biochem.、58巻、9号、1727〜1728頁、1994年)。
しかし、単糖は反応性が高く、タンパク質の変性もまた
起こるので、その効果および安定性は満足のいくもので
はない。また、本発明のリン酸化糖を用いたタンパク質
との誘導体に関する報告も全く行われていない。
【0087】本発明のリン酸化糖のタンパク質との誘導
体を用いた場合、タンパク質の変性がグルコース−6−
リン酸を用いた場合よりも極めて少なく、安定的に長時
間、カルシウムを可溶化することが明らかとなった。こ
れは、特に、オリゴ糖の場合、単糖に比べて反応が緩や
かに進み、タンパク質へのダメージが少ないためと思わ
れる。タンパク質に容易に有機リガンドを結合させ得る
方法として優れた方法である。用いるタンパク質は特に
問わないが、安価に入手でき、食品として安全なものが
好ましい。このようなタンパク質としては、例えば、卵
白アルブミン、カゼイン、小麦タンパク質、大豆タンパ
ク質などが挙げられる。それらを加水分解したペプチド
もまた好適に用いられ得る。
【0088】本発明のリン酸化糖により、肥料、飼料ま
たは食品の摂取におけるカルシウムの吸収を促進し得
る。またリン酸化糖がカルシウムその他のアルカリ土類
金属や鉄とも化合物または錯体を形成し、それらの生体
への吸収を促進することが可能となる。アルカリ土類金
属としては、カルシウムの他に、マグネシウム、亜鉛、
セレンが挙げられる。従って、骨粗鬆症などのカルシウ
ム不足からくる疾患の予防も期待できる。さらに今日、
ダイエットや偏食の問題が大きく、嗜好食品においても
カルシウムと同様に鉄およびマグネシウムの有効な生体
への吸収を考慮した食品が期待され、これらの吸収を促
進する摂取方法を開発することは重要である。本発明の
リン酸化糖またはリン酸化糖誘導体は、安全であり、難
消化性であり、かつ低カロリーである。このリン酸化糖
はまた、多くのオリゴ糖に報告されているようにビフィ
ズス薗増殖効果および整腸作用も期待できる。
【0089】さらに、金属を可溶化させる効果が生体に
安全な領域において行われるため、金属が沈着したこと
が原因とされる汚れに対して効果的かつ安全な洗浄剤、
もしくはカルシウムが歯に沈着することによって発生す
る歯石の発生防止剤として、本発明のリン酸化糖を用い
ることが可能である。また、本発明のリン酸化糖のカル
シウムおよびリンが沈着し結晶化する石灰化現象を抑制
する性質は、歯石の発生を防止する。さらに、上記リン
酸化糖はまた、う蝕の原因であるミュータンス菌の栄養
源にならず、非水溶性のグルカンを生成しない糖質であ
る。従って、歯垢が生じず、ミュータンス菌の酸発酵も
起こさない。さらに、本発明のリン酸化糖は緩衝作用を
有し、pHの低下を防ぐ効果をも有する。従って、リン
酸化糖は、食品または口腔組成物において、風味に影響
を与えることなく、歯垢内の発酵産物である乳酸による
pHの低下を防ぐ効果を有する。リン酸化糖は、練り歯
磨き、マウスウオッシュ、トローチなどの口腔用組成物
などに添加され得る。また本発明により、リン酸化糖が
カルシウムその他のアルカリ土類金属、あるいは鉄と複
合体を形成し、生体への吸収を促進することが可能とな
ると同様に、アルカリ土壌およびアルカリ条件下におけ
る植物へのカルシウムなどの微量金属の吸収を促すこと
もまた可能となる。例えば、本発明により、切り花、果
樹、果実の老化抑制および日持ち向上に効果のある、安
全なカルシウム吸収促進剤を提供できる。金属を吸着す
る性質は、金属類の沈着を防止するスケール防止剤や洗
浄剤としても有効である。
【0090】以上により、本発明のリン酸化糖あるいは
それらの誘導体は、以下のような用途に好適に用いられ
得る。
【0091】本発明のリン酸化糖は、ほとんど全ての飲
食用組成物または食品添加物用組成物に使用することが
可能である。この飲食用組成物とは、ヒトの食品、動物
あるいは養魚用の飼料、ペットフードを総称する。すな
わち、コーヒー、紅茶、日本茶、ウーロン茶、ジュー
ス、加工乳、スポーツドリンクなどの液体および粉末の
飲料類、パン、クッキー、クラッカー、ビスケット、ケ
ーキ、ピザ、パイなどのベーカリー類、スパゲティー、
マカロニなどのパスタ類、うどん、そば、ラーメンなど
の麺類、キャラメル、ガム、チョコレートなどの菓子
類、おかき、ポテトチップス、スナックなどのスナック
菓子類、アイスクリーム、シャーベットなどの冷菓類、
クリーム、チーズ、粉乳、練乳、乳飲料などの乳製品、
ゼリー、プリン、ムース、ヨーグルトなどの洋菓子類、
饅頭、ういろ、もち、おはぎなどの和菓子類、醤油、た
れ、麺類のつゆ、ソース、だしの素、シチューの素、ス
ープの素、複合調味料、カレーの素、マヨネーズ、ケチ
ャップなどの調味料類、カレー、シチュー、スープ、ど
んぶりなどのレトルトもしくは缶詰食品、ハム、ハンバ
ーグ、ミートボール、コロッケ、餃子、ピラフ、おにぎ
りなどの冷凍食品および冷蔵食品、ちくわ、蒲鉾などの
水産加工食品、弁当のご飯、寿司などの米飯類にも効果
的に利用できる。さらに、カルシウムの吸収のよさを利
用して、乳児用ミルク、離乳食、ベビーフード、ペット
フード、動物用飼料、スポーツ食品、栄養補助食品、健
康食品などに使用され得る。
【0092】本発明のリン酸化糖は、カルシウムの沈澱
を防ぎ、植物体に速やかに吸収されることから、液体あ
るいは粉末の肥料、果実、切り花などの植物の日持ち向
上剤として使用され得る。
【0093】本発明のリン酸化糖は、高温水系、非高温
水系を問わず種々のスケール、ことにカルシウム系やマ
グネシウム系スケールの発生を防止または抑制し得るス
ケール防止剤として使用され得る。さらに必要により、
他の公知の薬剤を併用してもよい。
【0094】本発明のリン酸化糖は、歯磨き剤、マウス
ウオッシュ、トローチ、うがい薬などに使用され得る。
【0095】本発明のリン酸化糖は、カルシウム、鉄、
マグネシウムなどが含まれる飲み薬、入浴剤などの薬剤
にも使用され得る。
【0096】
【作用】本発明は、これまで生理機能の全く知られてい
なかったリン酸化糖を製造し、その構造や作用について
明らかにしたものである。このリン酸化糖の生理機能と
は、生体に摂取される必要なミネラル(カルシウムおよ
びマグネシウムなどのアルカリ土類金属または鉄)を、
リン酸化糖が、それらミネラルを不溶化させることなく
腸まで運搬し、これらのミネラルの吸収を促進させる効
果を意味する。リン酸化糖の構造を分析した結果、馬鈴
薯澱粉からグルコースを工業生産する時の廃液に存在す
るリン酸化糖の構造に等しいものが含まれることもまた
判明した。本発明は、工業上の廃棄物に新たな機能を見
いだしたものである。そして、資源の有効利用を考慮
し、リン酸化糖の原料としての再利用をも可能とした。
【0097】
【実施例】本実施例のリン酸化糖の構造は以下のように
分析した。
【0098】まず、リン酸化糖よりリン酸基を除去し
た。100μlの3%リン酸化糖溶液に100μlの1
0mM塩化マグネシウムと0.3mM塩化亜鉛、0.0
5%アジ化ナトリウムを含む60mM炭酸ナトリウム緩
衝液(pH9.4)を混合し、これに100μlの30
U/mlのアルカリホスファターゼ(EC.3.1.3.1;
E.coli由来;シグマ社製)を添加して、40℃で18時
間反応させた。限外濾過膜を用いてアルカリホスファタ
ーゼを除去することにより反応を停止し、リン酸基除去
済の糖(以下、脱リン酸化糖と言う)を成分とする反応
液(以下反応液Aという)を得た。
【0099】得られた反応液A10μlに対し、10μ
lの200mM酢酸緩衝液(pH4.8)に溶解した
5,000U/mlのβ−アミラーゼ(さつまいも由
来;シグマ社製)を添加して、37℃で2時間保持した
(以下、この液を反応液Bという)。同様に、反応液A
10μlに10μlの60mM酢酸緩衝液(pH4.
5)に溶解した300U/mlのグルコアミラーゼ(Rh
izopus由来;東洋紡績製)を添加して、35℃で18時
間保持した(以下、この液を反応液Cという)。
【0100】反応液A〜Cを分析して生成物を確認し
た。これらの反応液の分析は、陰イオン交換樹脂カラム
CarboPac PA-100(φ4×250mm、ダイオネックス
社製)による高速液体クロマトグラフィーまたはシリカ
ゲルを用いた薄層クロマトグラフィーによって、各種重
合度の標準マルトオリゴ糖と比較することにより確認し
た。高速液体クロマトグラフィーを用いた脱リン酸化糖
の溶出は、100mMの水酸化ナトリウムを基本溶液と
して1M酢酸ナトリウム濃度を上昇させることによって
行なわれる。検出はパルスドアンペロメトリー(ダイオ
ネックス社製)によった。薄層クロマトグラフィーによ
る脱リン酸化糖の分析は、脱リン酸化糖をアセトニトリ
ル/水=80/20で多重展開した後、硫酸/メタノー
ル=1/1の溶液を噴霧し、130℃で3分間保持する
ことにより行なった。
【0101】反応液Aを分析することによりリン酸化糖
の鎖長を確認した。反応液Bを分析したとき、マルトー
スのみ、あるいはマルトースとマルトトリオース(およ
びわずかにグルコース)が検出された。従って、この脱
リン酸化糖はグルコースがα−1,4結合したグルカン
であることを確認した。さらに反応液Cを分析したと
き、グルコースのみが検出された。従って、この脱リン
酸化糖はα−結合したグルコースからなることを確認し
た。
【0102】糖の平均鎖長(以下グルコースを1単位と
してDPで表す。)は、脱リン酸化糖を構成する各重合
度の糖含量から求めた。全リン酸化糖中の全糖量はフェ
ノール硫酸法により定量し、結合リン酸基数は湿式灰化
後、無機リン酸として定量される(澱粉関連糖質実験
法、生物化学実験法19、中村道徳ら、31頁、1986年、学
会出版センター)。1分子当たりの結合リン酸基数は、
湿式灰化後定量された無機リン酸量と、DPより下式を
用いて算出した。
【0103】
【数2】
【0104】(実施例1)馬鈴薯澱粉の1%溶液を、5
mlの6mM塩化ナトリウムおよび2mM塩化カルシウ
ムを含む溶液に溶解しつつ100℃まで迅速に温度上昇
させて糊化した後、α−アミラーゼ(フクタミラーゼ;
上田化学製)を35U作用させて、50℃で30分間保
持した。この反応液を少量分取して0.2%糖溶液と
し、0.01Mのヨウ素−ヨウ化カリウム溶液を1/1
0量添加しヨード呈色が陰性であることを確認後、プル
ラナーゼ(林原生物化学研究所製)2Uとグルコアミラ
ーゼ(東洋紡績製)6Uとを同時に40℃で20時間作
用させた。反応を停止し、この溶液を、遠心分離後、上
清を20mM酢酸緩衝液(pH4.5)で平衡化した陰
イオン交換樹脂(キトパールBCW2501;富士紡績
製)に供した。十分に同緩衝液で洗浄して中性糖を除去
し、続いて、0.5M塩化ナトリウムを含む同緩衝液で
溶出した。各溶出画分をエバポレーターを用いて濃縮し
てから脱塩後、凍結乾燥することにより、リン酸化糖を
得た。
【0105】(実施例2)実施例1により得たリン酸化
糖を20mM酢酸緩衝液(pH4.5)で平衡化した陰
イオン交換樹脂カラム(キトパールBCW2501)に
再び供した。十分にカラムを同緩衝液で洗浄して中性糖
を除去した。まず0.15M塩化ナトリウムを含む同緩
衝液で、次に0.5M塩化ナトリウムを含む同緩衝液で
溶出する画分を集めた。上記の構造決定法に基づいて分
析した結果、これらの画分を脱塩し凍結乾燥すること
で、0.15M塩化ナトリウム溶出画分からはグルコー
スが3個以上5個以下α−1,4結合したグルカンにリ
ン酸基が1個結合しているリン酸化糖(PO−1画分)
が、0.5M塩化ナトリウム溶出画分からはグルコース
が2個以上8個以下α−1,4結合したグルカンにリン
酸基が2個以上結合しているリン酸化糖(PO−2画
分)が得られた。
【0106】このリン酸化糖のリン酸基のグルコースへ
の結合位置の決定は、桧作ら(Staerke, 22巻、338〜
343頁、1970年)の方法で6位の位置にあるか否かが決
定できる。簡単に言えば、リン酸化糖は加水分解後に生
じたグルコース−6−リン酸を酵素を用いて定量した。
グルコース−6−リン酸は酸に安定であり、生成した量
をグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼで定量し
た。この方法でPO−1画分およびPO−2画分を分析
した結果、PO−1画分では、約75%のリン酸基が6
位に結合し、残りが3位または2位に結合していると考
えられる。PO−2画分では、リン酸基は6位にはほと
んど結合していないと考えられる。
【0107】(実施例3)馬鈴薯澱粉1%溶液を、5m
lの6mM塩化ナトリウムおよび2mM塩化カルシウム
を含む溶液に溶解し100℃まで迅速に温度上昇させて
糊化した後、α−アミラーゼ(フクタミラーゼ)を35
U作用させて、50℃で30分間保持した。沸騰浴中で
5分間保持して反応を停止し、この溶液を、遠心分離
後、上清を実施例1と同様に陰イオン交換樹脂カラムで
リン酸化糖を回収して、脱塩し、凍結乾燥することで、
リン酸化糖を得た。
【0108】(実施例4)10%化工澱粉(結合リン酸
含量4%;日澱化学製)500mlを分子量1万の限外
濾過膜処理(ミリポア製;ペリコンラボカセット使用)
し脱塩した後、α−アミラーゼ(フクタミラーゼ)25
00Uおよびグルコアミラーゼ(グルクザイムNL4.
2;天野製薬製)100Uを添加し50℃で180分反
応させた後、沸騰浴中で5分間保持して反応を停止し
た。これをすぐに冷却し、3倍量エタノールを添加する
ことによって生じた沈澱を遠心分離で回収した。つづい
て、100gの活性炭を添加して中性糖を吸着除去し、
膜濾過後、凍結乾燥することでリン酸化糖を得た。
【0109】(実施例5)5gの化工澱粉(結合リン酸
含量4%)を100mlの1N塩酸溶液に溶解し、10
0℃で15分間加熱処理した。これをすぐに冷却し、1
N水酸化ナトリウム溶液で中性にpHを調節した後脱塩
した。続いて、50gの活性炭を添加して中性糖を吸着
除去し、膜濾過した後凍結乾燥することでリン酸化糖を
得た。
【0110】(実施例6)リン酸化糖のカルシウム、
鉄、またはマグネシウムとの化合物形成能を、ゲル濾過
法によっても確認した。実施例1のリン酸化糖10%溶
液100μlに、100mM塩化カルシウム溶液100
μlを添加し、20mMトリス塩酸緩衝液(pH7.
4)を用いて平衡化したゲル濾過(セファデックスG−
10;ファルマシア社製、φ1.2×10cmカラム)
に供した。その結果、リン酸化糖とカルシウムのピーク
が一致し、同時に溶出したので,そのリン酸化糖とカル
シウムとの化合物を分取した。また、100mM塩化カ
ルシウム溶液100μlも同カラムに供した。これらの
溶出パターンを、図1に示した。塩化第一鉄や、塩化マ
グネシウムについても同様にカラムに供し、リン酸化糖
の影響を調べた。これらを、図2、図3に示した。
【0111】ここで、図1は、以下の3種類の溶液によ
るゲル濾過溶出パターンを示す:実施例1の10%リン
酸化糖100μlのみの溶液(溶出液をリン酸化糖濃度
で測定;図中□で表す);10%濃度リン酸化糖100
μlと共に供した場合の100mM塩化カルシウム10
0μlの溶液(溶出液をカルシウム濃度で測定;図中●
で表す);および100mM塩化カルシウム100μl
のみの溶液(溶出液をカルシウム濃度で測定;図中○で
表す)。横軸に溶出時間、左の縦軸にリン酸化糖濃度を
示し、そして右の縦軸に溶出したカルシウム濃度を示
す。
【0112】図2は、以下の3種類の溶液によるゲル濾
過溶出パターンを示す:実施例1の10%リン酸化糖1
00μlのみの溶液(溶出液をリン酸化糖濃度で測定;
図中□で表す);10%濃度リン酸化糖100μlと共
に供した場合の100mM塩化第一鉄100μlの溶液
(溶出液を鉄濃度で測定;図中●で表す);および10
0mM塩化第一鉄100μlのみの溶液(溶出液を鉄濃
度で測定;図中○で表す)。横軸に溶出時間、左の縦軸
にリン酸化糖濃度を示し、そして右の縦軸に溶出した鉄
濃度を示す。
【0113】図3は、以下の3種類の溶液によるゲル濾
過溶出パターンを示す:実施例1の10%リン酸化糖1
00μlのみの溶液(溶出液をリン酸化糖濃度で測定;
図中□で表す);10%リン酸化糖100μlと共に供
した場合の100mM塩化マグネシウム100μlの溶
液(溶出液をマグネシウム濃度で測定;図中●で表
す);および100mM塩化マグネシウム100μlの
みの溶液(溶出液をマグネシウム濃度で測定;図中○で
表す)。横軸に溶出時間、左の縦軸にリン酸化糖濃度を
示し、そして右の縦軸に溶出したマグネシウム塩濃度を
示す。
【0114】これらより、リン酸化糖と金属塩とを同時
に供した場合、金属塩はリン酸化糖と同じ溶出時間で溶
出することが判った。金属塩とリン酸化糖とを同時に供
した場合の溶出時間は、塩のみを供した場合の溶出時間
とは明らかに異なっていた。従って、本実施例により、
リン酸化糖のカルシウム、鉄、およびマグネシウムとの
化合物形成について確認できた。
【0115】(実施例7)5mlの10mM酢酸緩衝液
(pH5.5)中に溶解した1%馬鈴薯澱粉に、CGT
ase(コンチザイム;天野製薬製)20Uおよびイソ
アミラーゼ(林原生物化学研究所製)30Uを添加し、
40℃で14時間反応させた後、沸騰浴中で5分間保持
して反応を停止した。この溶液を遠心分離して得られた
上清に100mM酢酸緩衝液を添加して、pH4.5に
調整後、同緩衝液で平衡化した陰イオン交換樹脂(キト
パールBCW2501)カラムに供した。これを同緩衝
液で十分に洗浄して中性糖を除去し、0.5M塩化ナト
リウムを含む同緩衝液で溶出した。脱塩し、凍結乾燥す
ることにより、リン酸化糖を得た。
【0116】(実施例8)実施例2のPO−1画分を用
いてリン酸化糖のタンパク質との誘導体を作製した。タ
ンパク質として鶏卵由来オボアルブミン(シグマ社製)
1mgと、実施例2のPO−1画分1mgとを混合し、
70%の湿度下で50℃で一定期間保存した。この時の
pHは8に調整した。0、2、4、8、12、16、2
0、および30日目にサンプリングした。グルコースお
よびグルコース−6−リン酸もまた、同様にして実施し
た。サンプリング後、これらを1mlの蒸留水に溶解
し、遠心分離して沈澱を除去した後、メイラード反応の
進行度として420nmでの着色度を測定した。その結
果を図4に示した。
【0117】図4は、420nmでの着色度を測定する
ことによる、以下の糖のタンパク質とのメイラード反応
の結果を示す;実施例2のPO−1画分(420nmの
吸光度で測定;図中◇で表す);グルコース−6−リン
酸(図中○で表す);グルコース(図中△で表す);お
よびコントロールとしてのタンパク質のみ(図中■で表
す)。横軸に反応時間、そして縦軸に420nmでの吸
光度を示す。
【0118】グルコース−6−リン酸を用いた場合は、
反応は急速に進み、4日程度でピークに達し、次第に沈
澱してしまうため溶液の着色度は一挙に低下した。それ
に比べて、PO−1画分を用いた場合は緩やかに進み、
さらに、グルコースはさらにゆるやかに進んだ。
【0119】また、メイラード反応の進行度としてアミ
ノ基の減少をTNBS法(京都大学農学部食品工学教室
編食品工学実験書、養賢堂、620〜621頁、1982年)を用
いて測定した。この結果を図5に示す。
【0120】図5は、アミノ基の減少をTNBS法を用
いて測定することによる、以下の糖のタンパク質とのメ
イラード反応の進行度を示す:実施例2のPO−1画分
(アミノ基の減少をTNBS法で測定;図中◇で表
す);グルコース−6−リン酸(図中○で表す);グル
コース(図中△で表す);およびコントロールとしての
タンパク質のみ(図中■で表す)。横軸に反応時間、そ
して縦軸に残存アミノ基率を示す。
【0121】図5によっても、図4と同様の結果が得ら
れた。
【0122】(実施例9)さらに、オボアルブミンとP
O−1とのメイラード反応について、PO−1の濃度を
変えて実施した。簡単に言えば、オボアルブミン1mg
に対してPO−1を4、2、1、0.5、0.25、
0.125、0.0625、0.03125、0mgを
それぞれ実施例8の方法で7日間保存した。保存後、カ
ルシウム可溶化効果を検証した。この結果を図6に示
し、横軸に反応時に添加したPO−1量を採り、左の縦
軸に可溶性カルシウムの百分率(図中では溶性カルシウ
ム率と表示。以下の図もまた同様である)を示した。こ
こで、図中、□は1時間後の、◇は2時間後の、そして
○は4時間後のPO−1の溶性カルシウム率を示した。
ただし、図6では0mgのPO−1添加量0mgの値は
示されていない。上記と同様にオボアルブミンの反応に
よって減少したアミノ基の量について、右の縦軸に残存
量を百分率で示した(図中▲はTNBS%を示す)。ア
ミノ基の量が減少し、反応が進むにつれて、カルシウム
可溶化効果が現れた。また、反応が進むにつれてタンパ
ク質の分子量は上昇しているのが、図7のSDS−電気
泳動写真からよく判る。SDS−電気泳動はLaemmliら
(Nature、227巻、3831〜3839頁、1970年)の方法で実
施した。図中、両端のレーンは分子量マーカーを示す。
それぞれのレーンについて、添加PO−1量は以下の通
りである:レーン1、0mg;レーン2、0.0625
mg;レーン3、0.125mg;レーン4、0.25
mg;レーン5、0.5mg;レーン6、1mg;レー
ン7、2mg;およびレーン8、4mg。図6および図
7からオボアルブミン1mgに対して、PO−1を1m
g反応させるのが最も効果的であり、結合PO−1量も
これ以上増加しないことが判った。
【0123】(実施例10)10%の実施例1のリン酸
化糖25μlに、10U/mlのCGTase(コンチ
ザイム)5μlを添加し、37℃で15時間反応させ
た。その結果、実施例2のPO−1画分からPO−2に
似た位置の画分(以下、PO−2様画分という)が生成
することが判った。このPO−2様画分は、馬鈴薯澱粉
から得た実施例2のPO−2画分とは異なる。これを以
下に説明する。
【0124】実施例2のPO−2は、グルコースの6位
に結合したリン酸基はほとんどなく、2〜8の重合度の
オリゴ糖にリン酸基が2個結合した構造である。しか
し、実施例10におけるCGTaseによるPO−1の
転移反応で生じた物質は、PO−1のうち重合度が4ま
たは5のオリゴ糖が転移反応のために(重合度3のリン
酸化糖は転移しない)消失あるいは減少し、さらに重合
度の高い、2個以上のリン酸基を有するリン酸化糖に変
化している。これは上記の構造決定法に基づいて分析し
た結果、判明した。ただし、新たに生じたこの物質(P
O−2に似た位置に検出される液体クロマトグラフィー
でのピーク)は、ホスファターゼによる脱リン酸化が同
様の条件では生じ難く、ホスファターゼに抵抗性のある
物質に変化している。それでも、重合度が10程度まで
の中性糖が検出され、実施例2で得たPO−2とは異な
る物質であることが確認された。
【0125】(実施例11)酵母よりリン酸基の結合し
たマンナンをJeanesらの方法(Arch. Biochem. Biophy
s.、92巻、343頁−350頁、1961年)で調製した。5gの
リン酸化マンナン(結合リン酸含量4%)を得た。
【0126】(実施例12)得られたリン酸化糖のカル
シウムとの化合物形成によるカルシウム可溶化効果につ
いて調べた。
【0127】カルシウム可溶化効果は、山本らの方法を
改変して無機リン酸との沈澱形成阻害効果を調べること
により確認した(Biosci.Biotech.Biochem.、56巻、90
〜93頁、1992年)。
【0128】簡単に言えば、6mMアジ化ナトリウムお
よび80mM塩化カリウムを含む20mMリン酸緩衝液
(pH7.4)500μlと試験溶液または蒸留水10
0μlを充分に混合し、次に10mM塩化カルシウム溶
液400μlを添加して、30℃で0.5、1、2、お
よび4時間振盪後、遠心分離(10,000rpm、1
分間)して上澄液のカルシウム濃度を原子吸光分析法で
測定した。
【0129】試験溶液として実施例1によって得られた
リン酸化糖を用いたものを図8に、実施例2によって得
られた重合度3〜5のグルカンにリン酸基が1個結合し
ているリン酸化糖、および重合度2〜8のグルカンにリ
ン酸基が2個以上結合しているリン酸化糖を用いたもの
を図9に、実施例4において得られたリン酸化糖を用い
たものを図10に、カゼインホスホペプチド(CPPII
I;明治製菓製)、ペクチンおよびアルギン酸ナトリウ
ムを用いたものを図11に、グルコース−1,6−二リ
ン酸、グルコース−6−リン酸、フラクトース−1,6
−二リン酸、およびフラクトース−6−リン酸を用いた
ものを図12に示す。全図とも横軸に振盪時間、縦軸に
可溶カルシウム率を示す。
【0130】図8では、実施例1において得られた1%
リン酸化糖(図中●で表す)および5%リン酸化糖(図
中○で表す)をそれぞれ100μlと、6mMアジ化ナ
トリウムおよび80mM塩化カリウムを含む20mMリ
ン酸緩衝液(pH7.4)500μlとを充分に混合
し、次に塩化カルシウム10mM溶液を400μlを添
加して、30℃にて0.5、1、2、および4時間振盪
した後、遠心分離(10,000rpm、1分間)して
上澄液のカルシウム濃度を原子吸光分析法で測定した。
【0131】図9では、実施例2において得られたグル
コースが3個以上5個以下α−1,4結合したグルカン
にリン酸基が1個結合しているリン酸化糖(図中●で表
す)およびグルコースが2個以上8個以下α−1,4結
合したグルカンにリン酸基が2個以上結合しているリン
酸化糖(図中○で表す)各々5%の濃度に調整したもの
を100μlと、6mMアジ化ナトリウムおよび80m
M塩化カリウムを含む20mMリン酸緩衝液(pH7.
4)500μlとを充分に混合し、次に10mM塩化カ
ルシウム溶液400μlを添加して、30℃にて0.
5、1、2、および4時間振盪後、遠心分離(10,0
00rpm、1分間)して上澄液のカルシウム濃度を原
子吸光分析法で測定した。
【0132】図10では、実施例4において得られたリ
ン酸化糖を5%の濃度に調整したもの100μlと、6
mMアジ化ナトリウムおよび80mM塩化カリウムを含
む20mMリン酸緩衝液(pH7.4)500μlとを
充分に混合し、次に10mM塩化カルシウム溶液400
μlを添加して、30℃にて0.5、1、2、および4
時間振盪語、遠心分離(10,000rpm、1分間)
して上澄液のカルシウム濃度を原子吸光分析法で測定し
た。
【0133】図11では、アルギン酸ナトリウム(図中
□で表す)、ペクチン(図中●で表す)、CPPIII
(明治製菓製)(図中○で表す)をそれぞれ5%濃度に
調整したもの100μlと、6mMアジ化ナトリウムお
よび80mM塩化カリウムを含む20mMリン酸緩衝液
(pH7.4)500μlとを充分に混合し、次に10
mM塩化カルシウム溶液400μlを添加して、30℃
にて0.5、1、2、および4時間振盪後、遠心分離
(10,000rpm、1分間)して上澄液のカルシウ
ム濃度を原子吸光分析法で測定した。
【0134】図12では、フラクトース−1,6−二リ
ン酸(図中△で表す)、グルコース−6−リン酸(図中
□で表す)、フラクトース−6−リン酸(図中○で表
す)、グルコース−1,6−二リン酸(図中●で表す)
それぞれを5%濃度に調整したもの100μl、および
6mMアジ化ナトリウム、80mM塩化カリウムを含む
20mMリン酸緩衝液(pH7.4)500μlを充分
に混合し、次に10mM塩化カルシウム溶液400μl
を添加して、30℃にて0.5、1、2、および4時間
振盪後、遠心分離(10,000rpm、1分間)して
上澄液のカルシウム濃度を原子吸光分析法で測定した。
【0135】これらの結果、リン酸化糖は、カルシウム
と化合物もしくは錯体を形成し、腸内環境と同じ微アル
カリ性においてもリン酸カルシウムとなってカルシウム
が不溶化するのを阻害する効果を有することが明らかと
なった。さらに、この効果は、リン酸化糖1分子当たり
2個以上のリン酸基を有しているリン酸化糖および実施
例4において調製したリン酸化糖において、特に優れて
いることが明らかとなった。
【0136】(実施例13)さらに、種々の物質のカル
シウム可溶化効果がどの程度の濃度において現れるかに
ついての試験を行った。試験溶液を0.1%、0.07
5%、0.05%、0.025%、0.01%、0.0
05%の各濃度に調整したものを100μl、および6
mMアジ化ナトリウム、80mM塩化カリウムを含む2
0mMリン酸緩衝液(pH7.4)500μlとを充分
に混合し、次に10mM塩化カルシウム溶液400μl
を添加して、30℃にて2時間振盪後、遠心分離(1
0,000rpm、1分間)して上澄液のカルシウム濃
度を原子吸光分析法で測定した。試験溶液として,実施
例2によって得られた重合度2〜8のグルカンにリン酸
基が2個以上結合しているリン酸化糖を用いたものを図
13に、実施例4において得られたリン酸化糖を用いた
ものを図14に、カゼインホスホペプチド(CPPII
I;明治製菓製)(図中□で表す)またはアルギン酸ナ
トリウム(図中○で表す)を用いたものを図15に示す
(アルギン酸ナトリウム、カゼインホスホペプチド(C
PPIII〔明治製菓製〕)。横軸はそれぞれの濃度につ
いて、10を底とする対数を採っている。縦軸に溶性カ
ルシウム率を示す。
【0137】(実施例14)上記に加えて、グルコース
−1,6−二リン酸、フラクトース−1,6−二リン
酸、グルコース−6−リン酸におけるカルシウムの可溶
化効果がどの程度の濃度において現れるかについての試
験を行った。試験溶液をそれぞれ10mM、7.5m
M、5mM、2.5mM、1mM、0.5mMの各濃度
に調整したもの100μl、および6mMアジ化ナトリ
ウム、80mM塩化カリウムを含む20mMリン酸緩衝
液(pH7.4)500μlを充分に混合し、次に10
mM塩化カルシウム溶液を400μlを添加して、30
℃にて2時間振盪後、遠心分離(10,000rpm、
1分間)して上澄液のカルシウム濃度を原子吸光分析法
で測定した結果を図16に示す。
【0138】図16では、フラクトース−1,6−二リ
ン酸(図中□で表す)、グルコース−6−リン酸(図中
△で表す)、グルコース−1,6−二リン酸(図中○で
表す)それぞれを10、7.5、5、2.5、1、0.
5mMの各濃度に調整したもの100μlと、6mMア
ジ化ナトリウムおよび80mM塩化カリウムを含む20
mMリン酸緩衝液(pH7.4)500μlとを充分に
混合し、次に10mM塩化カルシウム溶液400μlを
添加して、30℃にて0.5、1、2、4時間振盪後、
遠心分離(10,000rpm、1分間)して上澄液の
カルシウム濃度を原子吸光分析法で測定した。横軸はそ
れぞれの濃度について、10を底とする対数を採ってい
る。縦軸に溶性カルシウム率を示す。
【0139】実施例12、13および14により、本発
明のリン酸化糖のカルシウム可溶化効果は、カゼインホ
スホペプチドやアルギン酸などのカルシウム可溶化効果
と同程度であることが判った。
【0140】(実施例15)実施例8のリン酸化糖のタ
ンパク質との誘導体のカルシウム可溶化効果もまた検証
した。その結果を図17、18、および19に示した。
全図とも横軸に反応時間、縦軸に溶性カルシウム率を示
す。
【0141】図17では、図4に示した実施例2のPO
−1画分のタンパク質とのメイラード反応産物の1%の
濃度に調整したもの100μlと、6mMアジ化ナトリ
ウム、80mM塩化カリウムを含む20mMリン酸緩衝
液(pH7.4)500μlを充分に混合し、次に10
mM塩化カルシウム溶液400μlを添加して、30℃
にて0.5(図中△で表す)、1(図中□で表す)、お
よび4(図中●で表す)時間振盪後、遠心分離(10,
000rpm、1分間)して上澄液のカルシウム濃度を
原子吸光分析法で測定した。
【0142】図18では、図4に示したグルコース−6
−リン酸のタンパク質とのメイラード反応産物の1%の
濃度に調整したもの100μl、および6mMアジ化ナ
トリウム、80mM塩化カリウムを含む20mMリン酸
緩衝液(pH7.4)500μlを充分に混合し、次に
10mM塩化カルシウム溶液400μlを添加して、3
0℃にて0.5(図中△で表す)、1(図中□で表
す)、および4(図中●で表す)時間振盪後、遠心分離
(10,000rpm、1分間)して上澄液のカルシウ
ム濃度を原子吸光分析法で測定した。
【0143】図19では、図4に示したグルコースのタ
ンパク質とのメイラード反応産物の1%の濃度に調整し
たもの100μl、および6mMアジ化ナトリウム、8
0mM塩化カリウムを含む20mMリン酸緩衝液(pH
7.4)500μlを充分に混合し、次に10mM塩化
カルシウム溶液400μlを添加して、30℃にて0.
5(図中△で表す)、1(図中□で表す)、および4
(図中●で表す)時間振盪後、遠心分離(10,000
rpm、1分間)して上澄液のカルシウム濃度を原子吸
光分析法で測定した。
【0144】実施例2のPO−1画分のリン酸化糖は、
それ自体では、カルシウム可溶化効果が弱かったが、タ
ンパク質に複数個結合することで強い可溶化効果が得ら
れた。グルコース−6−リン酸のタンパク質との誘導体
の可溶化効果は2時間以降消失するが、本発明のリン酸
化糖誘導体は安定的に可溶化効果が現れることもまた判
った。グルコースのタンパク質との誘導体ではカルシウ
ム可溶化効果は起こらなかった。従って、カルシウム可
溶化効果にはリン酸基の結合した糖類を用いることが必
要であることが判った。
【0145】(実施例16)10%の実施例1のリン酸
化糖25μlに、60mMの酢酸緩衝液に溶解した10
U/mlのCGTase5μlを添加し、37℃で15
時間反応させた結果、実施例2のPO−1画分からPO
−2様画分が生成することが判った。この実施例10の
リン酸化糖のカルシウム可溶化効果を検証した。その結
果を図20に示した。横軸に反応時間、縦軸に溶性カル
シウム率を示す。図20では、以下のCGTaseを用
いている:Bacillus. Thermophilic由来(図中□で表
す);Bacillus Circulans由来(図中◆で表す);Baci
llus Megaterium由来(図中○で表す);市販のBacillu
s Macerans(図中△で表す);Alkaline CGTase(T. Ko
metaniら、Biosci. Biotech. Biochem.、58巻、517−52
0頁、1994年)(図中■で表す);およびコントロール
として60mM酢酸緩衝液(図中●で表す)。そして、
リン酸化糖を1%の濃度に調製したもの100μlと、
6mMアジ化ナトリウムおよび80mM塩化カリウムを
含む20mMリン酸緩衝液(pH7.4)500μlと
を充分に混合し、次に10mM塩化カルシウム溶液40
0μlを添加して、30℃にて0.5、1、2、および
4時間振盪後、遠心分離(10,000rpm、1分
間)して上澄液のカルシウム濃度を原子吸光分析法で測
定した。
【0146】このPO−2様画分によってもカルシウム
の可溶化効果は上昇した。このPO−2様画分は、分子
内に2個以上のリン酸基が存在しているためにカルシウ
ムの可溶化効果が上昇したと思われる。
【0147】(実施例17)実施例11のマンノースか
らなるリン酸化糖のカルシウム可溶化効果もまた検証し
た。その結果を図21に示した。横軸に反応時間、縦軸
に溶性カルシウム率を示す。それらリン酸化糖を1%の
濃度に調整したもの100μlと、6mMアジ化ナトリ
ウムおよび80mM塩化カリウムを含む20mMリン酸
緩衝液(pH7.4)500μlとを充分に混合し、次
に10mM塩化カルシウム溶液400μlを添加して、
30℃にて0.5、1、2、4時間振盪後、遠心分離
(10,000rpm、1分間)して上澄液のカルシウ
ム濃度を原子吸光分析法で測定した。本実施例により、
構成糖に関係なくカルシウム可溶化効果は現れることが
判った。
【0148】(実施例18)0.5、1、5、10mM
の各金属塩化物溶液200μlに対し、1%の実施例1
のリン酸化糖100μlを添加して混合した後に、50
0μlエタノールを添加して生成する沈澱の有無を目視
により比較した。その結果を以下の表1に示す。これに
500μlエタノールをさらに添加して同様に比較し
た。その結果を以下の表2に示す。
【0149】また、塩化カルシウム(図中○で表す)ま
たは塩化第一鉄(図中●で表す)を添加したときのリン
酸化糖の回収率を図22に示した。横軸に各金属塩濃
度、縦軸に沈殿としてのリン酸化糖回収率を示す。
【0150】
【表1】
【0151】
【表2】
【0152】(実施例19)鉄のキレート力については
川上ら(Biosci. Biotech. Biochem.、57巻、1376-1377
頁、1993年)の方法で試験した。即ち、100mMの塩
化第一鉄、塩化第二鉄溶液25μlに、実施例1のリン
酸化糖を最終溶液中で0、0.0125、0.025、
0.125、0.25、0.5、1%のリン酸化糖濃度
となるように加える。その後、200mM炭酸ナトリウ
ム溶液でpHを7に調整し、さらに蒸留水を加え1ml
溶液とした。その溶液を24、48時間、37℃で振盪
後、遠心分離して上澄溶液の鉄濃度を原子吸光分析法で
求めた。その結果を図23、図24に示した。両図とも
横軸にリン酸化糖濃度、縦軸に初発の添加鉄量に対する
可溶性鉄量の百分率を示す。
【0153】図23では、100mM塩化第一鉄25μ
lにリン酸化糖を最終溶液中で0、0.0125、0.
025、0.125、0.25、0.5、1%となるよ
うに添加し、200mM炭酸水素ナトリウム溶液でpH
7に調整後1ml溶液とした。その溶液を24時間(図
中○で表す)、48時間(図中●で表す)、37℃で振
盪後、遠心分離して上澄液の鉄濃度を原子吸光分析法で
求めた。
【0154】図24では、100mMの塩化第二鉄25
μlにリン酸化糖を最終溶液中で0、0.0125、
0.025、0.125、0.25、0.5、1%とな
るように添加し、200mMの炭酸水素ナトリウム溶液
でpH7に調製後1ml溶液とした。その溶液を24時
間(図中□で表す)、48時間(図中■で表す)、37
℃で振盪後、遠心分離して上澄液の鉄濃度を原子吸光分
析法で求めた。
【0155】本実施例により、リン酸化糖は、約0.1
%の濃度で鉄イオンを可溶化する効果があることが判っ
た。 (実施例20)虫歯の原因であるミュータンス菌による
酸生成の有無を確認した。用いたミュータンス菌は、S.
mutans 6715株を用いた。菌株をBrain Heart Infusion
(DIFCO社製)で、24時間、37℃で静置培養後、同
条件で、1リットル本培養した。遠心分離で菌体を集菌
後、100mMのリン酸緩衝液(pH7.0)10ml
に懸濁した(菌濃度0.2g/ml)。この溶液1.5
mlと20mMの試験糖溶液1.5mlとを混合し、3
7℃で静置して、一定時間ごとに溶液のpHを測定し
た。用いた試験糖溶液は、実施例1のリン酸化糖(図中
◇で表す)、シュークロース(図中△で表す)、マルト
トライオース(図中□で示す)、およびグルコース(図
中○で表す)である。その結果を図25に示した。横軸
に反応時間、縦軸にpHの変化を示す。
【0156】本実施例により、リン酸化糖を用いた場
合、溶液のpHがシュークロースやグルコースのように
低下せず、酸が生成されないことが判った。すなわち、
本発明のリン酸化糖はミュータンス菌に資化されないこ
とが判った。
【0157】(実施例21)リン酸化糖が、虫歯の原因
であるミュータンス菌によって生産される酵素GTas
eの基質として用いられて、グルカンを生成し得るかど
うかを確認した。用いたGTaseは、Streptococcus
mutans 6715株由来の酵素を用いた。150μMデキス
トランT−10(ファルマシア製)を200μlと10
0UのGTase100μlとを混合した後、500m
Mリン酸緩衝液(pH6.5)を200μlと500μ
lの試験糖溶液を添加し十分に混合した(全量1m
l)。15時間、37℃で反応後遠心分離で沈澱を集
め、蒸留水で沈澱を2〜3回洗浄後、500μlの蒸留
水に懸濁して、糖濃度をフェノール硫酸法で測定した。
試験糖溶液は、実施例1のリン酸化糖を用い、反応溶液
の終濃度で10、5、1、および0%に調製した。一
方、コントロールとして5%シュークロース溶液を用い
て、同様の試験も実施した。その結果を以下の表3に示
した。
【0158】
【表3】
【0159】本実施例により、リン酸化糖は、それ自体
GTaseの基質にはならず、グルカンを生成しないこ
とが判った。
【0160】(実施例22)完全に加熱糊化した4%可
溶性澱粉水溶液を4℃に保存すると、可溶性澱粉は速や
かに老化し、糊液は白濁する。この系を用いて、澱粉の
老化抑制効果を次のように検証した。可溶性澱粉を終濃
度で4%になるように蒸留水に溶解後、実施例1のリン
酸化糖(図中□で表す)を4%添加した。その溶液を4
℃で保存して経時的に660nmでの白濁度を測定し、
老化による沈澱の生成度を検証した。比較に澱粉老化防
止効果があるといわれる日食化工(株)製のフジオリゴ
#360(マルトトライオース60%以上)(図中△で
表す)を用いた。また、ブランクとして蒸留水(図中●
で表す)を用いた。その結果を図26に示した。横軸に
反応時間、縦軸に白濁度(600nmでの吸光度)を示
す。
【0161】本実施例により、リン酸化糖は、フジオリ
ゴに比較しても澱粉の老化による濁度の生成が小さく、
老化を抑制する効果が確認できた。
【0162】(実施例23)リン酸化糖の緩衝作用を次
のように調べた。実施例1の1%リン酸化糖溶液30m
l(図中○で表す)に対して、0.1N乳酸を1分間に
0.4mlの割合で滴下して行き、pHの低下を経時的
に測定した。コントロールとして蒸留水30ml(図中
◆で表す)に対して乳酸を滴下していった。その結果を
図27に示した。横軸に添加乳酸量、縦軸にpHの変化
を示す。
【0163】本実施例により、コントロールでは0.4
mlの乳酸添加ですみやかにpHが3.5まで低下する
のに対し、リン酸化糖に緩衝作用があり、pHの急激な
変化を防止することが判った。
【0164】(実施例24)ラットを用いたカルシウム
の出納実験は次のように行った。4週齢のSprague-Dawl
ey系ラットを日本クレア(株)より購入し、個別ゲージ
にて、室温23.1±1.0℃、湿度55±7%、12
時間ごとの明暗サイクルの環境で飼育した。初めの1週
間をAIN−76精製飼料で予備飼育した後、各群の体
重が同じになるように3群(各6匹)に分けた。各群の
試験食として、実施例1のリン酸化糖食群、実施例4の
リン酸化糖食群、無添加のコントロール群に分けて5週
間飼育した。食餌組成は以下の表4に示す。それぞれの
飼料は、大豆タンパク質(20%)をタンパク源とした
カルシウム0.35%、リン0.70%を含む精製飼料
に、実施例1、実施例4のリン酸化糖を、対カルシウム
重量比にして10倍量添加した(炭水化物の一部代替)
ものを用いた。
【0165】
【表4】
【0166】ラットの体重は、1週間に一度、飼料摂取
量は2〜3日に一度測定した。カルシウムの出納の測定
および尿と糞便の回収は、実験終了前3日間に行った。
群間の体重増加に差はなく、約360g程度であった。
カルシウムの出納実験結果より得た吸収率を図28に示
した。横軸にラット群、縦軸にカルシウム吸収率を示
す。また、体内保留率を図29に示した。横軸にラット
群、縦軸にカルシウム体内保留率を示す。
【0167】図28において、カルシウムの出納実験結
果より得た吸収率は、採取した糞便を乾燥重量を測定し
た後、一定量を灰化して1N塩酸での抽出溶液を原子吸
光分析でカルシウム量を求め、次式で計算したものであ
る。
【0168】
【数3】
【0169】図29において、採取した糞便は乾燥重量
を測定した後、一定量を灰化して1N塩酸での抽出溶液
と尿のカルシウム量を原子吸光分析で求め、カルシウム
の体内保留率は、次式で計算したものである。
【0170】
【数4】
【0171】本実施例により、カルシウムの吸収率はリ
ン酸化糖の投与によって上昇する傾向にあり、カルシウ
ムの吸収促進効果が観察された。さらに、体内保留率も
改善される傾向にあった。
【0172】(実施例24)リン酸化糖の消化性試験
は、平山らの糖質消化性の簡易評価法(澱粉科学、37
巻、第4号、259-262頁、1990年)に従って行った。簡
単に言えば、ラットの小腸アセトン粉末(シグマ社製)
に、蒸留水を添加して100mg/mlの懸濁液とし
た。超音波処理(SONIFIER cell disruptor:1% dut
ycycle 50,1分×3回)の後、遠心分離した上清を酵
素液とした。その酵素液50μlと試験糖溶液50μl
とを混合して37℃で0、5、10、30分、1、2、
4、および22時間処理した。沸騰浴中で5分間処理し
て反応停止後、グルコースオキシダーゼ法(A. Dahlqvi
st、Anal. Biochem.、7巻、18-25頁、1964年)に従っ
て生じたグルコースを定量し、消化性を検証した。試験
糖液として、0.5%実施例1のリン酸化糖(図中●で
表す)、実施例2のPO−2画分(図中■で表す)、グ
ルコース−6−リン酸(図中△で表す)、パラチノース
(図中◇で表す)、マルトトライオース(図中□で表
す)の溶液を用いた。その結果を図30に示した。横軸
に処理時間、縦軸に生成グルコース濃度を示す。
【0173】本実施例により、パラチノース、マルトト
ライオースに比べて、リン酸化糖は難消化性であること
が判った。
【0174】(実施例25)実施例1で得たリン酸化糖
を用いて、カーネーションの日持ち効果を調べた。カー
ネーション(コーラル種)の切り花各々6本を、20℃
の室内(12時間明暗サイクル)で、以下の各水溶液3
00mlにそれぞれ生け、経過日数後の健全花数を調査
した。本実施例で用いた水溶液の組成を以下の表5に示
す。水としては脱イオン水を用いた。
【0175】
【表5】
【0176】調査は3、6、13日後に実施し、そのと
きに各水溶液を新しいものに取り替えた。結果を以下の
表6に示す。
【0177】
【表6】
【0178】リン酸化糖およびカルシウムの共存下で
は、13日後もほとんどの切り花が健全であり、効果が
確認された。図31に6日後の切り花の状態を示す。最
も健全なものと最も劣悪なものの2本を除いて撮影し
た。
【0179】(実施例26)実施例1で得たリン酸化糖
を用いて、このリン酸化糖のかいわれ大根の生長への効
果を調べた。かいわれ大根(ウタネ(株)製)の種20
粒を、20℃の室内(12時間明暗サイクル)で、以下
の水溶液30mlを添加した脱脂綿を敷いたシャーレ上
に蒔き、9日後に脱脂綿上から根部分を切り取ることに
より採取し、生長状態を観察した。リンを含有する肥料
としてハイポネックス(村上物産(株))の1000倍
希釈溶液を用いた。溶液は乾燥しないようにシャーレご
と透明な密閉容器に置いた。本実施例で用いた水溶液の
組成を以下の表7に示す。水としては脱イオン水を用い
た。
【0180】
【表7】
【0181】採取したかいわれ大根は、伸長および重量
を測定した。この測定結果を以下の表8に示す。
【0182】
【表8】
【0183】上記表8に示されるように、ハイポネック
スとカルシウムのみとの組み合わせよりも、これにリン
酸化糖を加えたものにおいて、良好な生長が観察され、
効果が確認された。
【0184】(実施例27)様々な糖質について化学的
にリン酸化を試みた。グルコースまたはグルコース以外
の構成糖からなる多糖であるキサンタンガム、タマリン
ドガム、グアーガム、ローカストビーンガム、ジェラン
ガム、フコイダン、寒天、デキストラン、およびマンナ
ン、あるいは、環状オリゴ糖であるα−シクロデキスト
リンについて、リン酸化澱粉の製造法である澱粉科学ハ
ンドブック(二國二郎監修、朝倉書店、510〜511頁、19
77年)の方法でリン酸化を試みた。反応後、約40ml
の脱イオン水に溶解した。各溶液の不溶物を遠心分離
(8000rpm、20分)で除去後、透析で塩類を完
全除去し、凍結乾燥した。各粉末試料を用いて、実施例
12の方法でカルシウム可溶化効果を検証した。試料濃
度は終濃度で0.5%とした。この結果を以下の表9に
示す。この表には、振盪2時間後の添加カルシウムに対
する可溶性カルシウムの率を示した。
【0185】
【表9】
【0186】未処理の糖質にはカルシウム可溶化効果が
認められなかったが、処理後は表9に示したように効果
が確認された。
【0187】
【発明の効果】本発明のリン酸化糖は、カルシウム、マ
グネシウムおよび鉄を必要とする成長期の子供、妊婦、
あるいは病中病後の患者の食する食品、同様に動物、植
物の配合飼料および肥料に適する。肥料、飼料、または
食品として希釈せずにそのまま用いても、カルシウムお
よびマグネシウムのようなアルカリ土類金属、および鉄
などの吸収促進効果を発揮する。本発明のリン酸化糖
は、天然物を由来とするために生体に有害となることは
ない。本発明のリン酸化糖は、難消化性であり、かつ低
カロリーである。従って、このリン酸化糖はまた、多く
のオリゴ糖に報告されているようにビフィズス薗増殖効
果および整腸作用も期待できる。本発明のリン酸化糖は
また、生体に対して安全な洗浄剤および歯石防止剤とし
ても好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で得られたリン酸化糖溶液および塩化
カルシウム溶液のゲル濾過溶出パターンを示すグラフで
ある。
【図2】実施例1で得られたリン酸化糖溶液および塩化
第一鉄溶液のゲル濾過溶出パターンを示すグラフであ
る。
【図3】実施例1で得られたリン酸化糖溶液および塩化
マグネシウム溶液のゲル濾過溶出パターンを示すグラフ
である。
【図4】420nmでの着色度の測定により、実施例2
で得られたリン酸化糖を含む種々の糖のタンパク質との
メイラード反応の進行度を示すグラフである。
【図5】アミノ基の減少をTNBS法を用いて測定する
ことにより、実施例2で得られたリン酸化糖を含む種々
の糖のタンパク質とのメイラード反応の進行度を示すグ
ラフである。
【図6】実施例9におけるメイラード反応の結果得られ
るリン酸化糖のタンパク質との誘導体のカルシウム可溶
化効果を示すグラフである。
【図7】実施例9のメイラード反応におけるタンパク質
の分子量の変化を示す電気泳動写真である。
【図8】実施例1において得られたリン酸化糖のカルシ
ウム可溶化効果を示すグラフである。
【図9】実施例2において得られた重合度3〜5のグル
カンにリン酸基が1つ結合しているリン酸化糖および重
合度が2〜8のグルカンにリン酸基が2個以上結合して
いるリン酸化糖のカルシウム可溶化効果を示すグラフで
ある。
【図10】実施例4において得られたリン酸化糖のカル
シウム可溶化効果を示すグラフである。
【図11】アルギン酸ナトリウム、ペクチン、およびC
PPのカルシウム可溶化効果を示すグラフである。
【図12】フラクトース−1,6−二リン酸、グルコー
ス−6−リン酸、フラクトース−6−リン酸、およびグ
ルコース−1,6−二リン酸のカルシウム可溶化効果を
示すグラフである。
【図13】実施例2で得られた重合度2〜8のグルカン
にリン酸基が2個以上結合しているリン酸化糖の種々の
濃度でのカルシウム可溶化効果を示すグラフである。
【図14】実施例4において得られたリン酸化糖の種々
の濃度でのカルシウム可溶化効果を示すグラフである。
【図15】アルギン酸ナトリウムおよびカゼインホスホ
ペプチドの種々の濃度でのカルシウム可溶化効果を示す
グラフである。
【図16】フラクトース−1,6−二リン酸、グルコー
ス−6−リン酸、およびグルコース−1,6−二リン酸
の種々の濃度でのカルシウム可溶化効果を示すグラフで
ある。
【図17】実施例2で得られたリン酸化糖のタンパク質
との誘導体のカルシウム可溶化効果を示すグラフであ
る。
【図18】グルコース−6−リン酸のタンパク質との誘
導体のカルシウム可溶化効果を示すグラフである。
【図19】グルコースのタンパク質との誘導体のカルシ
ウム可溶化効果を示すグラフである。
【図20】実施例10のリン酸化糖のカルシウム可溶化
効果を示すグラフである。
【図21】酵母より調製したマンノースを構成糖とする
リン酸化糖のカルシウム可溶化効果を示すグラフであ
る。
【図22】実施例1のリン酸化糖の塩化カルシウムまた
は塩化第一鉄の添加による回収率を示すグラフである。
【図23】実施例1のリン酸化糖の塩化第一鉄による鉄
イオン可溶化効果を示すグラフである。
【図24】実施例1のリン酸化糖の塩化第二鉄による鉄
イオン可溶化効果を示すグラフである。
【図25】実施例1のリン酸化糖を含む種々の糖のミュ
ータンス菌による酸生成の結果を示すグラフである。
【図26】実施例1のリン酸化糖の澱粉の老化抑制効果
を示すグラフである。
【図27】実施例1のリン酸化糖の緩衝作用を示すグラ
フである。
【図28】本発明のリン酸化糖のラットのカルシウム吸
収率を示すグラフである。
【図29】本発明のリン酸化糖のラットのカルシウム体
内保留率を示すグラフである。
【図30】本発明のリン酸化糖の消化性試験の結果を示
すグラフである。
【図31】本発明のリン酸化糖を処理した切り花の状態
を示す生物生態写真である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C05B 15/00 C11D 3/382 4H003 C07H 1/02 C12P 19/14 4H061 C11D 3/382 19/16 C12P 19/14 19/18 19/16 19/22 19/18 A23L 2/00 F 19/22 K (72)発明者 芳川 憲司 大阪府高槻市西五百住町10−5 Fターム(参考) 4B017 LC03 LC07 LK01 LK11 LK13 LK15 LK23 LL09 LP06 4B018 LB08 LE05 MD03 MD06 MD20 MD27 MD34 MD90 ME05 MF12 4B064 AF04 CA21 CB07 CD01 CD19 CD20 DA01 DA10 DA16 DA19 4C057 AA20 BB04 GG03 4C083 AC90 AD21 CC41 FF01 4H003 EB41 EB44 FA07 FA29 4H061 AA01 AA02 BB45 HH07

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 リン酸化された糖であって、該糖がグル
    カンであり、該グルカンが、α−1,4結合した3〜5
    個のグルコースからなり、そして該グルカンに1個のリ
    ン酸基が結合しており、該リン酸基は、該グルカンの非
    還元末端のグルコースの6位、または、該グルカンの非
    還元末端側から2個目のグルコースの3位に結合してい
    る、リン酸化糖。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載のリン酸化糖とタンパク
    質あるいはペプチドとを結合させた、リン酸化糖誘導
    体。
  3. 【請求項3】 請求項1に記載のリン酸化糖あるいは請
    求項2に記載のリン酸化誘導体とアルカリ土類金属また
    は鉄とを結合させた、リン酸化糖誘導体。
  4. 【請求項4】 リン酸基を有する澱粉または化工澱粉
    に、澱粉分解酵素、あるいは、澱粉分解酵素および糖転
    移酵素の組み合わせを作用させる工程を包含し、ここで
    該澱粉分解酵素が、i)αアミラーゼおよびネオプルラ
    ナーゼからなる群から選択されるエンド型澱粉分解酵
    素、ii)βアミラーゼおよびグルコアミラーゼからな
    る群から選択されるエキソ型澱粉分解酵素、およびii
    i)イソアミラーゼおよびプルラナーゼからなる群から
    選択される枝切り酵素の組み合わせを含む、請求項1に
    記載のリン酸化糖の製造方法。
  5. 【請求項5】 前記糖転移酵素がシクロデキストリング
    ルカノトランスフェラーゼである、請求項4に記載のリ
    ン酸化糖の製造方法。
  6. 【請求項6】 請求項1に記載のリン酸化糖に糖転移酵
    素を作用させる、リン酸化糖の製造方法。
  7. 【請求項7】 前記糖転移酵素がシクロデキストリング
    ルカノトランスフェラーゼである、請求項6に記載のリ
    ン酸化糖の製造方法。
  8. 【請求項8】 請求項6に記載の方法により得られた、
    リン酸化糖。
  9. 【請求項9】 リン酸化糖にアルカリ土類金属の塩また
    は鉄の塩を作用させる、請求項3に記載のリン酸化糖誘
    導体の製造方法。
  10. 【請求項10】 請求項1または8に記載のリン酸化
    糖、あるいは請求項2または3に記載のリン酸化誘導体
    を含む、肥料、飼料、食品、飲料、口腔用組成物、洗浄
    剤用組成物、またはそれらの添加用組成物。
  11. 【請求項11】 請求項1または8に記載のリン酸化
    糖、あるいは請求項2あるいは3に記載のリン酸化誘導
    体と、リン酸化糖とが結合している物質を含む、肥料、
    飼料、食品、飲料、口腔用組成物、洗浄剤用組成物、ま
    たはそれらの添加用組成物。
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