JP2002012950A - 高靭性9%Ni鋼 - Google Patents
高靭性9%Ni鋼Info
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- JP2002012950A JP2002012950A JP2000194007A JP2000194007A JP2002012950A JP 2002012950 A JP2002012950 A JP 2002012950A JP 2000194007 A JP2000194007 A JP 2000194007A JP 2000194007 A JP2000194007 A JP 2000194007A JP 2002012950 A JP2002012950 A JP 2002012950A
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Abstract
(57)【要約】
【課題】 液化天然ガス貯槽用タンクなどで使用される
9%Ni鋼において、その靭性を改善する技術を提供す
る。 【解決手段】重量%として、C:0.02〜0.10
%、Si:0.1〜0.5%、Mn:0.2〜1.0
%、P≦0.01%、S:0.0005〜0.003%
Ni:7.5〜10.0%、Al:0.01〜0.08
%、N:0.002〜0.006%、Ca:0.000
5〜0.0050%、さらに、Mo:0.05〜0.5
%、Cr:0.05〜0.5%の1種または2種を含有
でき、残部が鉄および不可避的不純物を含み、かつ鋼中
に平均粒子径が0.5μm以下のCaO、カルシウムア
ルミネートおよびCaSが合計して1平方mm2 当たり
40×103 個以上分散して存在することを特徴とする
高靭性9%Ni鋼。
9%Ni鋼において、その靭性を改善する技術を提供す
る。 【解決手段】重量%として、C:0.02〜0.10
%、Si:0.1〜0.5%、Mn:0.2〜1.0
%、P≦0.01%、S:0.0005〜0.003%
Ni:7.5〜10.0%、Al:0.01〜0.08
%、N:0.002〜0.006%、Ca:0.000
5〜0.0050%、さらに、Mo:0.05〜0.5
%、Cr:0.05〜0.5%の1種または2種を含有
でき、残部が鉄および不可避的不純物を含み、かつ鋼中
に平均粒子径が0.5μm以下のCaO、カルシウムア
ルミネートおよびCaSが合計して1平方mm2 当たり
40×103 個以上分散して存在することを特徴とする
高靭性9%Ni鋼。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、液化天然ガス(L
NGと略す)タンクなどに使用される9%Ni鋼におい
て、その靭性を改善する技術を提供する。
NGと略す)タンクなどに使用される9%Ni鋼におい
て、その靭性を改善する技術を提供する。
【0002】
【従来の技術】クリーンなエネルギーとして、LNGの
需要が増大しており、近年LNG貯蔵用タンクの建設が
積極的に推進されている。そこで、タンク建造に使用さ
れる9%Ni鋼においてもその需要が増大するばかりで
なく、構造物としての安全性を確保する必要から、より
低温靭性の優れた鋼材が求められている。一方、近年、
9%Ni鋼においても、従来の造塊分塊法から連続鋳造
法を用いた生産性の高い鋼板製造がなされるようになっ
てきている。しかしながら、それに伴ない、中心偏析や
介在物による低温靭性の低下が懸念されるようになって
きた。中心偏析については、熱間圧延前に偏析元素を拡
散させる付加的な均熱拡散処理工程を採用したり、不純
物元素を極めて低いレベルに低減したりして回避する方
法が知られているが、大幅なコストの増加を招いてしま
う。そのため、熱間圧延に先立つスラブ加熱温度を高温
にすることで、拡散効果を図ることも考えられている
が、このようなスラブ加熱温度の高温化は結晶粒の粗大
化を招き、偏析部以外での靭性が逆に低下する。また、
9%Ni鋼においては、極めてわずかな介在物であって
も靭性阻害要因となる。これの要因は、次工程である加
熱、圧延および熱処理で改善できることが困難である可
能性が高い。
需要が増大しており、近年LNG貯蔵用タンクの建設が
積極的に推進されている。そこで、タンク建造に使用さ
れる9%Ni鋼においてもその需要が増大するばかりで
なく、構造物としての安全性を確保する必要から、より
低温靭性の優れた鋼材が求められている。一方、近年、
9%Ni鋼においても、従来の造塊分塊法から連続鋳造
法を用いた生産性の高い鋼板製造がなされるようになっ
てきている。しかしながら、それに伴ない、中心偏析や
介在物による低温靭性の低下が懸念されるようになって
きた。中心偏析については、熱間圧延前に偏析元素を拡
散させる付加的な均熱拡散処理工程を採用したり、不純
物元素を極めて低いレベルに低減したりして回避する方
法が知られているが、大幅なコストの増加を招いてしま
う。そのため、熱間圧延に先立つスラブ加熱温度を高温
にすることで、拡散効果を図ることも考えられている
が、このようなスラブ加熱温度の高温化は結晶粒の粗大
化を招き、偏析部以外での靭性が逆に低下する。また、
9%Ni鋼においては、極めてわずかな介在物であって
も靭性阻害要因となる。これの要因は、次工程である加
熱、圧延および熱処理で改善できることが困難である可
能性が高い。
【0003】9%Ni鋼においては、従来からその低温
靭性の向上を図るために様々な方面から研究開発が行わ
れている。9%Ni鋼は、焼戻し感受性が高く、不純物
元素および熱処理条件により靭性が著しく変化すること
が知られている。従って、従来開示されている技術の多
くは、脆化要因となる元素の低減や、圧延や熱処理方法
など厚板製造工程での条件の改善に関するものである。
例えば、圧延を工夫することで靭性を向上せしめる技術
として、特開平2−9649号公報に開示されているよ
うに、スラブを900〜1000℃に加熱した後、85
0℃以下で累積下率40〜70%で仕上げ温度が700
〜800℃として熱間圧延を実施し、その後、空冷以上
の冷却速度で冷却し、焼入れおよび焼き戻すことを特徴
とする高アレスト含Ni鋼の製造方法などがある。さら
に、熱処理法による靭性の改善できる例として、特開昭
47−233317号公報に記載のごとく、中間焼入れ
処理後、Ac1 点変態点以下の温度で焼き戻すことを特
徴とする9%Ni鋼の靭性向上法、あるいは、特開昭5
8−73717号公報、特開昭62−205227号公
報等で開示されているように、AC3 変態点以上に加熱
して冷却し、ついで、中間焼入れ処理後、焼戻すことを
特徴とする熱処理法などがある。
靭性の向上を図るために様々な方面から研究開発が行わ
れている。9%Ni鋼は、焼戻し感受性が高く、不純物
元素および熱処理条件により靭性が著しく変化すること
が知られている。従って、従来開示されている技術の多
くは、脆化要因となる元素の低減や、圧延や熱処理方法
など厚板製造工程での条件の改善に関するものである。
例えば、圧延を工夫することで靭性を向上せしめる技術
として、特開平2−9649号公報に開示されているよ
うに、スラブを900〜1000℃に加熱した後、85
0℃以下で累積下率40〜70%で仕上げ温度が700
〜800℃として熱間圧延を実施し、その後、空冷以上
の冷却速度で冷却し、焼入れおよび焼き戻すことを特徴
とする高アレスト含Ni鋼の製造方法などがある。さら
に、熱処理法による靭性の改善できる例として、特開昭
47−233317号公報に記載のごとく、中間焼入れ
処理後、Ac1 点変態点以下の温度で焼き戻すことを特
徴とする9%Ni鋼の靭性向上法、あるいは、特開昭5
8−73717号公報、特開昭62−205227号公
報等で開示されているように、AC3 変態点以上に加熱
して冷却し、ついで、中間焼入れ処理後、焼戻すことを
特徴とする熱処理法などがある。
【0004】一方、9%Ni鋼における各元素の影響も
調査されている。例えば、特開平4−371520号公
報で開示されているように、Si:0.10%以下でか
つMo:0.04〜0.5%を含有し、加熱および圧延
後焼入れ処理、中間焼入れ処理および焼戻し処理を行う
ことを特徴とする板厚40mm以上の母材および溶接熱
影響部靭性の優れた厚肉9%Ni鋼の製造方法などがあ
る。これらは、いずれも低温靭性の向上においてPなど
の不純物元素の阻害要因を低減する効果が認められた
が、例えば、連続鋳造時に発生する中心偏析部や、介在
物などによる靭性低下に対しては、あまり顕著な効果が
期待できない。
調査されている。例えば、特開平4−371520号公
報で開示されているように、Si:0.10%以下でか
つMo:0.04〜0.5%を含有し、加熱および圧延
後焼入れ処理、中間焼入れ処理および焼戻し処理を行う
ことを特徴とする板厚40mm以上の母材および溶接熱
影響部靭性の優れた厚肉9%Ni鋼の製造方法などがあ
る。これらは、いずれも低温靭性の向上においてPなど
の不純物元素の阻害要因を低減する効果が認められた
が、例えば、連続鋳造時に発生する中心偏析部や、介在
物などによる靭性低下に対しては、あまり顕著な効果が
期待できない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、このように
9%Ni鋼において、生産性の高い製造工程を付与する
場合におきる靭性低下を阻止し、優れた材質を有する鋼
を提供するものである。
9%Ni鋼において、生産性の高い製造工程を付与する
場合におきる靭性低下を阻止し、優れた材質を有する鋼
を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明の趣旨は、 (1)重量%として、 C:0.02〜0.10% Si:0.1〜0.5% Mn:0.2〜1.0% P≦0.01% S:0.0005〜0.003% Ni:7.5〜10.0% Al:0.01〜0.08% N:0.002〜0.006% Ca:0.0005〜0.0050% を含有し、残部が鉄および不可避的不純物を含み、かつ
鋼中に平均粒子径が0.5μm以下のCaO、カルシウ
ムアルミネートおよびCaSが合計して1平方mm2 当
たり40×103 個以上分散して存在することを特徴と
する高靭性9%Ni鋼。 (2)重量%として、 Mo:0.05〜0.5% Cr:0.05〜0.5% の1種または2種以上を含有することを特徴とする
(1)記載の高靭性9%Ni鋼。
鋼中に平均粒子径が0.5μm以下のCaO、カルシウ
ムアルミネートおよびCaSが合計して1平方mm2 当
たり40×103 個以上分散して存在することを特徴と
する高靭性9%Ni鋼。 (2)重量%として、 Mo:0.05〜0.5% Cr:0.05〜0.5% の1種または2種以上を含有することを特徴とする
(1)記載の高靭性9%Ni鋼。
【0007】
【発明の実施の形態】一般に、9%Ni鋼の中の介在物
として、Al2 O3 やMnSが知られている。特に、製
鋼工程で脱酸生成物として生成するAl2 O3 は、クラ
スター化し靭性を阻害することがあり、9%Ni鋼に対
し極めて有害である。また、MnSは主に中心偏析部に
存在し、圧延中に伸展してやはり靭性を阻害する。
として、Al2 O3 やMnSが知られている。特に、製
鋼工程で脱酸生成物として生成するAl2 O3 は、クラ
スター化し靭性を阻害することがあり、9%Ni鋼に対
し極めて有害である。また、MnSは主に中心偏析部に
存在し、圧延中に伸展してやはり靭性を阻害する。
【0008】このような介在物対策として、従来からC
a添加処理が開発されてきた。Ca添加の作用して、 1) Al脱酸鋼にCaを添加すると、脱酸生成物がAl
2 O3 から低融点のカルシウムアルミネートに変化する
ために、精練工程で液体介在物として球状化し、浮上分
離が容易になり、Al2 O3 が低減する、 2) Ca添加により、CaSを生成し、MnSが低減す
る、 ことが知られている。
a添加処理が開発されてきた。Ca添加の作用して、 1) Al脱酸鋼にCaを添加すると、脱酸生成物がAl
2 O3 から低融点のカルシウムアルミネートに変化する
ために、精練工程で液体介在物として球状化し、浮上分
離が容易になり、Al2 O3 が低減する、 2) Ca添加により、CaSを生成し、MnSが低減す
る、 ことが知られている。
【0009】発明者らは、このような従来知られたCa
添加を9%Ni鋼に適用した結果、Al、CaおよびS
添加量を狭い範囲に制御することで、微細なCaOおよ
びカルシウムアルミネートが鋼中に存在すると同時に、
微細なCaSも生成することを見出した。Al脱酸鋼に
Caを添加すると、その相互の添加量により、種々のカ
ルシウムアルミネートが生成する。精練工程で良く知ら
れているように2)で述べたものは、最も融点が低いカル
シウムアルミネートであるが、それ以外にも融点がさら
に高温であるものも存在する。今回知見したカルシウム
アルミネートは、現時点では恐らくこの融点が高いもの
であると推定している。その結果、それらの微細な介在
物が次工程であるスラブ加熱温度段階あるいは熱処理段
階でγ粒のピン止め効果として極めて有効であることを
見出すと同時に、介在物として靭性を低下させるMnS
の生成を抑え、従来、偏析拡散として付加工程として行
ってきたスラブの均熱拡散処理を廃止し、高いスラブ加
熱温度で加熱し、通常の圧延工程を経ても靭性が低下し
ないことが明らかにした。
添加を9%Ni鋼に適用した結果、Al、CaおよびS
添加量を狭い範囲に制御することで、微細なCaOおよ
びカルシウムアルミネートが鋼中に存在すると同時に、
微細なCaSも生成することを見出した。Al脱酸鋼に
Caを添加すると、その相互の添加量により、種々のカ
ルシウムアルミネートが生成する。精練工程で良く知ら
れているように2)で述べたものは、最も融点が低いカル
シウムアルミネートであるが、それ以外にも融点がさら
に高温であるものも存在する。今回知見したカルシウム
アルミネートは、現時点では恐らくこの融点が高いもの
であると推定している。その結果、それらの微細な介在
物が次工程であるスラブ加熱温度段階あるいは熱処理段
階でγ粒のピン止め効果として極めて有効であることを
見出すと同時に、介在物として靭性を低下させるMnS
の生成を抑え、従来、偏析拡散として付加工程として行
ってきたスラブの均熱拡散処理を廃止し、高いスラブ加
熱温度で加熱し、通常の圧延工程を経ても靭性が低下し
ないことが明らかにした。
【0010】以下、本発明について、詳細に述べる。本
発明の出発材としては、電気炉、転炉等の通常工業的に
用いられる溶解炉で溶製し、連続鋳造工程を経て、スラ
ブを製造する。次に本発明における成分の限定理由につ
いて述べる。
発明の出発材としては、電気炉、転炉等の通常工業的に
用いられる溶解炉で溶製し、連続鋳造工程を経て、スラ
ブを製造する。次に本発明における成分の限定理由につ
いて述べる。
【0011】C:強度を付与するのに必要な元素であり、
0.02%以上の添加が必要であるが、0.10%を越えて添加
すると、靭性の低下を招くので、その上限を0.10%とす
る。 Si:強度上昇および脱酸に寄与するので、0.10%以上添
加されるが、過剰の添加は、焼戻し感受性を増加させる
ので、その上限を0.5 %とする。 Mn:強度上昇に寄与するために、0.2 %以上添加する必
要があるが、過剰の添加は、焼戻し脆化感受性の増大を
招き、靭性を低下させるので、その上限を1.0%とす
る。 P:焼戻し脆化感受性に対し有害な元素であり、その上
限を0.01%とする。 S:CaS の生成に対し、必要な元素であり、0.0005%以
上添加する必要があるが、0.003%を越えて添加するとMn
S の増加を招くのでその上限を0.003%とする。 Ni:靭性の改善および強度確保に必要な元素であり、L
NG用鋼材としての靭性を確保するためには、7.5 %以
上の添加を必要とするが、10%を越える添加はその効果
が飽和し、コスト増加を招くのでその上限を10.0%とす
る。 Al:脱酸材として0.01%以上の添加が必要であるが、0.
08%を越えて添加すると、狙いとするCaOの生成量が
減少するために、その上限を0.08%とする。 N:AlNとして結晶粒の細粒化に寄与するために、0.
002 %以上の添加が必要であるが、過剰な添加は、粗大
なAlNの生成を招き靭性を阻害するのでその上限を0.
006 %とする。 Ca:本発明にとって重要な元素であり、Caを含む酸化
物が生成されるためには0.0005%以上の添加が必要であ
るが、0.005 %を越えて添加されるとカルシウムアルミ
ネートがほとんど液体介在物となってしまう傾向があ
り、好ましい微細分散した介在物が生成しない。そのた
めに、上限を0.0050%とする。以上のような成分系を有
するスラブ及び鋼(鋼板等)には、脱酸生成物として、
カルシウムアルミネートやCaOの脱酸生成物やCaS
などの硫化物が存在している。
0.02%以上の添加が必要であるが、0.10%を越えて添加
すると、靭性の低下を招くので、その上限を0.10%とす
る。 Si:強度上昇および脱酸に寄与するので、0.10%以上添
加されるが、過剰の添加は、焼戻し感受性を増加させる
ので、その上限を0.5 %とする。 Mn:強度上昇に寄与するために、0.2 %以上添加する必
要があるが、過剰の添加は、焼戻し脆化感受性の増大を
招き、靭性を低下させるので、その上限を1.0%とす
る。 P:焼戻し脆化感受性に対し有害な元素であり、その上
限を0.01%とする。 S:CaS の生成に対し、必要な元素であり、0.0005%以
上添加する必要があるが、0.003%を越えて添加するとMn
S の増加を招くのでその上限を0.003%とする。 Ni:靭性の改善および強度確保に必要な元素であり、L
NG用鋼材としての靭性を確保するためには、7.5 %以
上の添加を必要とするが、10%を越える添加はその効果
が飽和し、コスト増加を招くのでその上限を10.0%とす
る。 Al:脱酸材として0.01%以上の添加が必要であるが、0.
08%を越えて添加すると、狙いとするCaOの生成量が
減少するために、その上限を0.08%とする。 N:AlNとして結晶粒の細粒化に寄与するために、0.
002 %以上の添加が必要であるが、過剰な添加は、粗大
なAlNの生成を招き靭性を阻害するのでその上限を0.
006 %とする。 Ca:本発明にとって重要な元素であり、Caを含む酸化
物が生成されるためには0.0005%以上の添加が必要であ
るが、0.005 %を越えて添加されるとカルシウムアルミ
ネートがほとんど液体介在物となってしまう傾向があ
り、好ましい微細分散した介在物が生成しない。そのた
めに、上限を0.0050%とする。以上のような成分系を有
するスラブ及び鋼(鋼板等)には、脱酸生成物として、
カルシウムアルミネートやCaOの脱酸生成物やCaS
などの硫化物が存在している。
【0012】図1は、0.05C-0.15Si-0.65Mn-0.003P-0.0
01S-9.15Ni-0.014Alなる組成を含有する板厚20mmの
9%Ni鋼において、800℃から焼入れした後、横軸
に示す温度で焼戻した時の−196℃におけるシャルピ
ー値(靭性)を縦軸に表したものを示す。なお、それぞ
れは、含有する介在物(CaO、カルシウムアルミネー
ト及びCaS)個数を変化させてある。これから明らか
なように、1mm2 当たりの個数が15×103 より小
さい場合、550℃以下で焼き戻した時の靭性低下が顕
著になるが、個数が40×103 以上大きな場合、50
0℃焼戻しでも靭性は著しく高い値を示す。この図1か
ら、顕著な効果を表す下限条件としては、介在物個数が
1mm2 あたり、40×103 個以上必要であるとし
た。図中の数字は、1mm2 面積当たりの介在物(Ca
O、カルシウムアルミネート及びCaS)個数を示す。
なお、介在物平均粒径は、0.08〜0.28μmであ
った。
01S-9.15Ni-0.014Alなる組成を含有する板厚20mmの
9%Ni鋼において、800℃から焼入れした後、横軸
に示す温度で焼戻した時の−196℃におけるシャルピ
ー値(靭性)を縦軸に表したものを示す。なお、それぞ
れは、含有する介在物(CaO、カルシウムアルミネー
ト及びCaS)個数を変化させてある。これから明らか
なように、1mm2 当たりの個数が15×103 より小
さい場合、550℃以下で焼き戻した時の靭性低下が顕
著になるが、個数が40×103 以上大きな場合、50
0℃焼戻しでも靭性は著しく高い値を示す。この図1か
ら、顕著な効果を表す下限条件としては、介在物個数が
1mm2 あたり、40×103 個以上必要であるとし
た。図中の数字は、1mm2 面積当たりの介在物(Ca
O、カルシウムアルミネート及びCaS)個数を示す。
なお、介在物平均粒径は、0.08〜0.28μmであ
った。
【0013】このような条件を満足するためには、各介
在物の粒子が或る程度小さくないと多量に分散できな
い。検討によれば、その介在物の平均粒子径が0.5μ
m以下であれば、所定の個数を確保できる可能性がある
が、これより介在物径が大きくなると、靭性を阻害する
ので、結局介在物の平均粒子として0.5μm以下を上
限値とする。
在物の粒子が或る程度小さくないと多量に分散できな
い。検討によれば、その介在物の平均粒子径が0.5μ
m以下であれば、所定の個数を確保できる可能性がある
が、これより介在物径が大きくなると、靭性を阻害する
ので、結局介在物の平均粒子として0.5μm以下を上
限値とする。
【0014】なお、本発明で規定した介在物の分散状態
は、抽出レプリカを作成した後、透過型電子顕微鏡(T
EM)にて10000〜50000倍程度の倍率で測定
される。その場合の介在物の同定は、1000μm2 程
度の視野において、判別した介在物において、TEM付
属のエネルギー分散型X線分光法(EDS)による組成
分析により実施され、場合によっては、電子線回折によ
り結晶構造を解析しても良い。
は、抽出レプリカを作成した後、透過型電子顕微鏡(T
EM)にて10000〜50000倍程度の倍率で測定
される。その場合の介在物の同定は、1000μm2 程
度の視野において、判別した介在物において、TEM付
属のエネルギー分散型X線分光法(EDS)による組成
分析により実施され、場合によっては、電子線回折によ
り結晶構造を解析しても良い。
【0015】このようにして得られた介在物について、
観察合計が20個以上について、その平均粒径として、
円相当径を平均化し、平均粒子径とし、観察視野数から
計算できる総観察面積に対して、観察された個数の総量
を計算し、1mm2 に換算することで、1平方mm2 当
たりの粒子数を求めた。
観察合計が20個以上について、その平均粒径として、
円相当径を平均化し、平均粒子径とし、観察視野数から
計算できる総観察面積に対して、観察された個数の総量
を計算し、1mm2 に換算することで、1平方mm2 当
たりの粒子数を求めた。
【0016】さらに、本発明では、MoおよびCrを選
択的に添加することができる。 Mo:強度を改善する元素であると同時に、焼戻し脆化
を抑制することができるために、0.05%以上添加し
ても良いが、過剰な添加は過度の強度上昇を招き、かつ
溶接部の靭性を低下させるのでその上限を0.5%とす
る。 Cr:強度を改善する元素であるが、0.05%の添加
でその効果を発揮するが、0.5%を越えて添加すると
溶接部の靭性を阻害するので、その上限を0.5%とす
る。
択的に添加することができる。 Mo:強度を改善する元素であると同時に、焼戻し脆化
を抑制することができるために、0.05%以上添加し
ても良いが、過剰な添加は過度の強度上昇を招き、かつ
溶接部の靭性を低下させるのでその上限を0.5%とす
る。 Cr:強度を改善する元素であるが、0.05%の添加
でその効果を発揮するが、0.5%を越えて添加すると
溶接部の靭性を阻害するので、その上限を0.5%とす
る。
【0017】以上のように製造されたスラブは、通常の
熱間圧延工程を経て所定の板厚を有する鋼板として圧延
される。この時、偏析拡散の意味から通常の温度以上の
スラブ加熱温度を選択しても結晶粒の粗大化が起こら
ず、靭性の低下が小さい。この場合、現在まで開示され
ている靭性を向上させる圧延方法や、圧延後の加速冷却
を適用しても何ら発明の効果を妨げるものではない。ま
た、その後の熱処理については、通常実施される焼入れ
および焼戻し処理だけでなく、靭性を向上させると言わ
れる焼入れ、中間焼入れおよび焼戻し処理を適用しても
何ら差し支えない。
熱間圧延工程を経て所定の板厚を有する鋼板として圧延
される。この時、偏析拡散の意味から通常の温度以上の
スラブ加熱温度を選択しても結晶粒の粗大化が起こら
ず、靭性の低下が小さい。この場合、現在まで開示され
ている靭性を向上させる圧延方法や、圧延後の加速冷却
を適用しても何ら発明の効果を妨げるものではない。ま
た、その後の熱処理については、通常実施される焼入れ
および焼戻し処理だけでなく、靭性を向上させると言わ
れる焼入れ、中間焼入れおよび焼戻し処理を適用しても
何ら差し支えない。
【0018】
【実施例】次に、本発明の実施例を示す。第1表は実験
に供した鋼の化学成分を示したもの、第2表はそれを用
いて鋼板を製造した時の製造条件と母材の衝撃特性を示
したものである。第2表より、本発明範囲内の供試鋼
(鋼:A,B,C,D )を用いた鋼(番号:1〜7)は、すべ
ての製造条件において、−196 ℃におけるシャルピー吸
収エネルギーが200J以上の高い値を示している。そ
れに対し、本発明範囲を逸脱している鋼はすべて200
J未満の低い吸収エネルギーを示す。すなわち、鋼8、
9は本発明範囲の中で、C量が上限を越えている例であ
る。同じように、鋼10は、Siが、鋼11はMnが、
さらに鋼12はPがそれぞれ本発明範囲の上限を越えて
いる例である。さらに、鋼13はSが本発明の下限に満
たない量が添加されている例であり、その結果介在物の
個数が、35×103個/mm2 と少ない。鋼14はA
lが、本発明の上限を越えて添加されたもので、介在物
の平均粒子径も1.33μmと大きくしかも個数も5×
103 個/mm 2 と少ない。鋼15はNiが下限に満た
ない例である。最後に、鋼16はCaの範囲がその下限
に達していない例であり、やはり介在物平均粒径および
個数が3.75μmおよび0.5×103 個/mm2 と
本発明範囲に達していない。
に供した鋼の化学成分を示したもの、第2表はそれを用
いて鋼板を製造した時の製造条件と母材の衝撃特性を示
したものである。第2表より、本発明範囲内の供試鋼
(鋼:A,B,C,D )を用いた鋼(番号:1〜7)は、すべ
ての製造条件において、−196 ℃におけるシャルピー吸
収エネルギーが200J以上の高い値を示している。そ
れに対し、本発明範囲を逸脱している鋼はすべて200
J未満の低い吸収エネルギーを示す。すなわち、鋼8、
9は本発明範囲の中で、C量が上限を越えている例であ
る。同じように、鋼10は、Siが、鋼11はMnが、
さらに鋼12はPがそれぞれ本発明範囲の上限を越えて
いる例である。さらに、鋼13はSが本発明の下限に満
たない量が添加されている例であり、その結果介在物の
個数が、35×103個/mm2 と少ない。鋼14はA
lが、本発明の上限を越えて添加されたもので、介在物
の平均粒子径も1.33μmと大きくしかも個数も5×
103 個/mm 2 と少ない。鋼15はNiが下限に満た
ない例である。最後に、鋼16はCaの範囲がその下限
に達していない例であり、やはり介在物平均粒径および
個数が3.75μmおよび0.5×103 個/mm2 と
本発明範囲に達していない。
【0019】
【表1】
【0020】
【表2】
【0021】
【発明の効果】本発明により、高生産性な9%Ni鋼の
製造が可能になり、本鋼板を適用することで、LNGタ
ンクなどの脆性破壊に対する抵抗性が飛躍的に高まり、
地震時などの構造物の安全性が向上する。
製造が可能になり、本鋼板を適用することで、LNGタ
ンクなどの脆性破壊に対する抵抗性が飛躍的に高まり、
地震時などの構造物の安全性が向上する。
【図1】第1図は、焼戻し後の靭性に及ぼす介在物個数
の影響を示す説明図。
の影響を示す説明図。
Claims (2)
- 【請求項1】重量%として、C:0.02〜0.10%
Si:0.1〜0.5%Mn:0.2〜1.0%P≦
0.01%S:0.0005〜0.003%Ni:7.
5〜10.0%Al:0.01〜0.08%N:0.0
02〜0.006%Ca:0.0005〜0.0050
%を含有し、残部が鉄および不可避的不純物を含み、か
つ鋼中に平均粒子径が0.5μm以下のCaO、カルシ
ウムアルミネートおよびCaSが合計して1平方mm2
当たり40×103 個以上分散して存在することを特徴
とする高靭性9%Ni鋼。 - 【請求項2】重量%として、Mo:0.05〜0.5%
Cr:0.05〜0.5%の1種または2種以上を含有
することを特徴とする請求項1記載の高靭性9%Ni
鋼。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2000194007A JP2002012950A (ja) | 2000-06-28 | 2000-06-28 | 高靭性9%Ni鋼 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2000194007A JP2002012950A (ja) | 2000-06-28 | 2000-06-28 | 高靭性9%Ni鋼 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2002012950A true JP2002012950A (ja) | 2002-01-15 |
Family
ID=18692904
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2000194007A Withdrawn JP2002012950A (ja) | 2000-06-28 | 2000-06-28 | 高靭性9%Ni鋼 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2002012950A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2023016219A1 (zh) * | 2021-08-10 | 2023-02-16 | 攀钢集团攀枝花钢铁研究院有限公司 | 一种高强韧冷作模具钢及其制备方法 |
-
2000
- 2000-06-28 JP JP2000194007A patent/JP2002012950A/ja not_active Withdrawn
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2023016219A1 (zh) * | 2021-08-10 | 2023-02-16 | 攀钢集团攀枝花钢铁研究院有限公司 | 一种高强韧冷作模具钢及其制备方法 |
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Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A300 | Withdrawal of application because of no request for examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A300 Effective date: 20070904 |