JP2002007990A - Icカード用アンテナコイルとその製造方法 - Google Patents

Icカード用アンテナコイルとその製造方法

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JP2002007990A
JP2002007990A JP2000188592A JP2000188592A JP2002007990A JP 2002007990 A JP2002007990 A JP 2002007990A JP 2000188592 A JP2000188592 A JP 2000188592A JP 2000188592 A JP2000188592 A JP 2000188592A JP 2002007990 A JP2002007990 A JP 2002007990A
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circuit pattern
pattern layer
antenna coil
card
foil
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Hiroyuki Sakamoto
浩行 坂本
Hidenori Yasukawa
秀範 安川
Hiroshi Tada
裕志 多田
Tadashi Kubota
正 窪田
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Toyo Aluminum KK
Original Assignee
Toyo Aluminum KK
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 表面抵抗値が安定な回路パターン層を備える
とともに、寸法安定性と平滑性が良好な基材を備えたI
Cカード用アンテナコイルを低い製造コストでかつ高い
生産効率で提供する。 【解決手段】 ICカード用アンテナコイル1は、温度
150℃で30分間保持したときの熱収縮率が0.3%
以下の樹脂を含み、厚みが15μm以上50μm以下の
樹脂フィルム基材11と、基材の表面の上に形成され
た、純度が97.5質量%以上99.7質量%以下のア
ルミニウムを含み、厚みが7μm以上60μm以下のア
ルミニウム箔からなる回路パターン層12とを備える。
樹脂フィルム基材11の表面の上に、エポキシ樹脂を含
有するポリウレタン系接着剤層12を用いてアルミニウ
ム箔を固着し、レジストインク層をマスクとして用いて
アルミニウム箔をエッチングすることによって回路パタ
ーン層13を形成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、ICカード用ア
ンテナコイルとその製造方法に関し、特にICカードに
用いるアンテナコイルで回路パターン層がアルミニウム
箔から形成されたICカード用アンテナコイルとその製
造方法に関するものである。なお、ここでアルミニウム
箔とは、純アルミニウム箔に限定されるものではなく、
アルミニウム合金箔も含む。
【0002】
【従来の技術と発明が解決しようとする課題】近年、I
Cカードは、めざましい発展を遂げ、テレフォンカー
ド、クレジットカード、プリペイドカード、キャッシュ
カード、IDカード、カードキー等に使用され始めてい
る。これらの従来のICカードの基材としては、ポリイ
ミドフィルム、汎用ポリエチレンテレフタレート(PE
T)フィルム等の樹脂フィルムが用いられてきた。この
樹脂フィルムの両面に銅箔を積層した後、エッチング処
理を施すことにより、銅からなる回路パターン層を基材
の表面上に形成することにより、ICカード用のアンテ
ナコイルが構成されていた。
【0003】しかしながら、回路パターン層を形成する
ための銅箔のエッチング処理は時間がかかる。そのた
め、生産効率が悪いという問題がある。また、銅箔のエ
ッチング処理後においては、銅箔の表面に酸化反応が起
こりやすく、回路パターン層の表面の抵抗値が不安定に
なるという問題もあった。
【0004】さらに、ICカード用アンテナコイルの基
材として用いられるポリイミドフィルムは、高価な上、
吸湿性が高く、ICカードの使用中においてアンテナコ
イルの電気的特性に変化を生じさせ、誤動作の原因とな
っていた。ICカード用アンテナコイルの基材として汎
用PETフィルムを用いると、回路パターン層の表面上
にICチップを実装したとき等において基材が加熱され
ることにより収縮が起こるという問題があった。このた
め、汎用PETフィルムの基材上に形成された回路パタ
ーン層の寸法精度が不安定になり、また基材の平滑性が
悪化するという問題があった。
【0005】上記のような樹脂をICカード用アンテナ
コイルの基材に用い、その基材の両面に銅箔を積層させ
る場合、基材の両面のそれぞれに形成された銅箔からな
る回路パターン層の間で電気的な導通を図る必要があ
る。このために、銅箔の回路パターン層の間にスルーホ
ールのめっき層が形成されたり、銀ぺーストの印刷が行
なわれる。このような工程は、ICカード用アンテナコ
イルの製造コストの上昇を招き、その生産効率も悪くす
るという問題があった。
【0006】そこで、この発明の目的は、回路パターン
層の表面抵抗値が安定であるとともに、使用中に誤動作
を生じさせることなく、ICチップを実装するとき等の
熱処理工程において収縮を防止することができ、寸法安
定性と平滑性が良好な基材を備えたICカード用アンテ
ナコイルを提供することである。
【0007】また、この発明のもう1つの目的は、上記
の特徴を備えたICカード用アンテナコイルを低い製造
コストで高い生産効率で製造することが可能なICカー
ド用アンテナコイルの製造方法を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】この発明に従ったICカ
ード用アンテナコイルは、基材と、回路パターン層とを
備える。基材は、温度150℃で30分間保持したとき
の熱収縮率が0.3%以下の樹脂を含み、厚みが15μ
m以上50μm以下である。回路パターン層は、基材の
表面の上に形成された、純度が97.5質量%以上9
9.7質量%以下のアルミニウムを含み、かつ厚みが7
μm以上60μm以下である。
【0009】この発明に従ったICカード用アンテナコ
イルにおいては、基材が、上記のように限定された熱収
縮率を有する樹脂を含むので、ICチップを実装したと
き等の熱処理工程において収縮を効果的に防止すること
ができ、回路パターン層の寸法精度を安定に保持し、基
材の平滑性を良好に保つことができる。また、回路パタ
ーン層が、上記のように限定された純度のアルミニウム
を含むので、表面の電気的抵抗値を経時的に安定に保つ
ことができる。したがって、経時安定性の高いICカー
ド用アンテナコイルを得ることができる。
【0010】好ましくは、この発明のICカード用アン
テナコイルの基材として用いられる樹脂は、低収縮性ポ
リエチレンテレフタレート(PET)および低収縮性ポ
リエチレンナフタレート(PEN)からなる群より選ば
れた少なくとも1種である。
【0011】また、好ましくは、この発明のICカード
用アンテナコイルにおいて、回路パターン層は、基材の
一方表面の上に形成された第1の回路パターン層と、基
材の他方表面の上に形成された第2の回路パターン層と
を含む。この場合、第1の回路パターン層の少なくとも
一部が第2の回路パターン層の少なくとも一部に接触し
ているのが好ましい。これにより、第1と第2の回路パ
ターン層の電気的導通を図ることができる。第1と第2
の回路パターン層の接触は、クリンピング加工によって
容易に行なうことができる。
【0012】好ましくは、この発明のICカード用アン
テナコイルは、回路パターン層と基材との間に介在して
両者を接合する接着層をさらに備える。この場合、接着
層は、エポキシ樹脂を含有するポリウレタン系接着剤を
含むのが好ましい。
【0013】この発明に従ったICカード用アンテナコ
イルの製造方法は、次の工程を備える。
【0014】(a) 温度150℃で30分間保持した
ときの熱収縮率が0.3%以下の樹脂を含み、厚みが1
5μm以上50μm以下の基材の表面の上に、エポキシ
樹脂を含有するポリウレタン系接着剤を用いて、純度が
97.5質量%以上99.7質量%以下のアルミニウム
を含み、かつ厚みが7μm以上60μm以下の箔を固着
する工程。
【0015】(b) 箔の上に所定のパターンを有する
レジストインク層を印刷する工程。 (c) レジストインク層をマスクとして用いて箔をエ
ッチングすることによってアルミニウムを含む回路パタ
ーン層を形成する工程。
【0016】(d) 箔をエッチングした後、レジスト
インク層を除去する工程。 この発明の製造方法においては、上記のように限定され
た厚みを有し、かつ限定された純度のアルミニウムを含
む箔を用いて回路パターン層を形成するので、その形成
のためのエッチング処理時間を短縮することができる。
このため、ICカード用アンテナコイルの製造において
生産効率を高めることが可能になる。
【0017】好ましくは、この発明のICカード用アン
テナコイルの製造方法において、箔を固着する工程は、
基材の一方表面と他方表面の上に箔を固着することを含
む。また、好ましくは、回路パターン層を形成する工程
は、基材の一方表面の上に第1の回路パターン層と、基
材の他方表面の上に第2の回路パターン層とを形成する
ことを含む。
【0018】また、好ましくは、この発明のICカード
用アンテナコイルの製造方法は、クリンピング加工によ
って、第1の回路パターン層の少なくとも一部を第2の
回路パターン層の少なくとも一部に接触させる工程をさ
らに備える。この場合、基材の両面に形成された第1と
第2の回路パターン層の電気的導通を図るために、クリ
ンピング加工によって第1と第2の回路パターン層の少
なくとも一部同士を接触させることができるので、簡単
な工程で導通を達成することができる。このため、従来
の製造方法に比べて製造コストの低減を図ることがで
き、また生産効率を高めることが可能になる。
【0019】
【発明の実施の形態】図1はこの発明の1つの実施の形
態に従ったICカード用アンテナコイルの平面図、図2
は図1のII−II線の方向から見た部分断面図であ
る。
【0020】図1と図2に示すように、ICカード用ア
ンテナコイル1は、樹脂フィルム基材11と、樹脂フィ
ルム基材11の両面に形成された接着剤層12と、接着
剤層12の表面上に所定のパターンに従って形成された
アルミニウム箔からなる回路パターン層13とから構成
されている。回路パターン層13は、図1に示すように
基材の表面上に渦巻状のパターンで形成されている。こ
の回路パターン層13の端部には、ICチップを搭載す
るための領域13cと13dが形成されている。図1に
おいて点線で示される回路パターン層は、基材11の裏
面に配置される。基材11の表面に形成された回路パタ
ーン層13は、基材11の裏面に形成された回路パター
ン層13に、圧着部13aと13bのそれぞれで互いに
電気的に導通するように接触している。この接触はクリ
ンピング加工によって基材11と接着剤層12を部分的
に破壊することにより達成されている。
【0021】上記の1つの実施の形態において回路パタ
ーン層13に使用されるアルミニウム箔は、厚みが7μ
m以上60μm以下で、アルミニウムの純度が97.5
質量%以上99.7質量%以下であるのが好ましく、よ
り好ましくは厚みが15μm以上50μm以下、アルミ
ニウムの純度が98.0質量%以上99.5質量%以下
である。
【0022】アルミニウム箔の厚みが7μm未満の場合
には、ピンホールが多く発生するとともに製造工程にお
いて破断するおそれがある。一方、アルミニウム箔の厚
みが60μmを超える場合には、回路パターン層13を
形成するためのエッチング処理に時間がかかるととも
に、材料コストの上昇を招く。
【0023】アルミニウムの純度が97.5質量%未満
の場合には、アルミニウム箔に含まれる不純物が多くな
り、回路パターン層13の電気抵抗が高くなるととも
に、耐食性が極端に悪くなり、僅かな水分でも腐食が進
行する場合がある。一方、アルミニウムの純度が99.
7質量%を超える場合には、アルミニウム箔の耐食性が
過度に向上するため、エッチング処理に時間がかかる。
【0024】具体的には、回路パターン層13の材料と
しては、たとえばJIS(AA)の記号では1030、
1N30、1050、1100、8021、8079等
の純アルミニウム箔またはアルミニウム合金箔を採用す
ることができる。
【0025】本発明においてアルミニウムの純度とは、
鉄(Fe)、シリコン(Si)、銅(Cu)、マンガン
(Mn)、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、ガリ
ウム(Ga)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Z
r)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)という主要な
不純物元素の合計の質量%を100質量%から差し引い
た値である。本発明のアルミニウム箔においては、鉄の
含有量が0.2〜1.3質量%、シリコンの含有量が
0.05〜1.0質量%、銅の含有量が0.3質量%以
下であるのが好ましい。
【0026】また、アルミニウム箔の強度の観点では、
上記の組成範囲が好ましく、引張り強度は70MPa〜
120MPa、伸びは5%以上が好ましい。アルミニウ
ム箔の引張り強度が70MPa未満、または伸びが5%
未満の場合には、製造工程中に撓みや皺が生じ、回路パ
ターン層の寸法精度が悪くなるおそれがある。用いられ
るアルミニウム箔は、軟質箔または半硬質箔が好まし
く、箔に圧延した後に250〜550℃程度の温度で焼
鈍するのが好ましい。引張り強度が120MPaを超え
る硬質のアルミニウム箔を用いると、圧延油の残りや柔
軟性(巻取り性)の点で問題があり好ましくない。
【0027】本発明のICカード用アンテナコイルの基
材として用いられる樹脂フィルムは、低収縮性ポリエチ
レンテレフタレート(PET)フィルム、低収縮性ポリ
エチレンナフタレート(PEN)フィルム等から選ばれ
る少なくとも1種であるのが好ましい。この樹脂フィル
ムの厚みは15〜50μmの範囲内であるのが好まし
く、より好ましくは20〜40μmの範囲内である。基
材の厚みが15μm未満では、回路パターン層を形成す
るアルミニウム箔との積層体の剛性が不足するため、各
製造工程での作業性に問題が生じる。一方、基材の厚み
が50μmを超える場合には、後述するクリンピング処
理を確実に行なうことができないおそれがある。
【0028】基材に用いられる樹脂フィルムの熱収縮率
は、温度150℃で30分間保持したときに0.3%以
下である必要がある。この熱収縮率が0.3%を超える
場合には、基材の上に形成される回路パターン層の寸法
精度が劣化するという問題がある。
【0029】なお、この発明で用いられる熱収縮率と
は、線収縮率のことであり、次の式によって算出される
ものである。
【0030】
【数1】
【0031】上記の式においてLは温度150℃で30
分間保持したときの樹脂フィルムの長さ、L0は樹脂フ
ィルムの元の長さである。
【0032】回路パターン層を形成するためのアルミニ
ウム箔と、基材としての樹脂フィルムとの間の接着は、
エポキシ樹脂を含有するポリウレタン(PU)系接着剤
を用いたドライラミネーションによるのが好ましい。エ
ポキシ樹脂を含有するポリウレタン系接着剤としては東
洋モートン社製AD506、AD503、AD76−P
1等を採用することができ、硬化剤としては同社製CA
T−10を接着剤:硬化剤=2〜12:1の比率で配合
して使用すればよい。通常のエポキシ樹脂を含有しない
ポリウレタン系接着剤を用いた場合には、回路パターン
層を形成するためのエッチング処理中や、ICチップを
実装するときにデラミネーション(剥離)が生じやすく
なる。これは、エポキシ樹脂を含有しないポリウレタン
系接着剤が耐薬品性や耐熱性に劣るからである。
【0033】基材としての樹脂フィルムの上に回路パタ
ーン層を形成するためのアルミニウム箔を接着させるた
めには、エポキシ樹脂を含有するポリウレタン系接着剤
を乾燥後において重量で1〜15g/m2程度塗布する
のが好ましい。この塗布量が1g/m2未満では、アル
ミニウム箔の接着力が不足し、15g/m2を超える場
合には、後述するクリンピング加工を阻害するととも
に、製造コストの上昇を招く。
【0034】次に、この発明のICカード用アンテナコ
イルの製造方法の1つの実施の形態について説明する。
図3〜図6はこの発明に従ったICカード用アンテナコ
イルの製造工程を示す部分断面図である。なお、図3〜
図6は、図1のII−II線の方向から見た部分断面を
示している。
【0035】図3に示すように、樹脂フィルム基材11
の両面に接着剤層12を形成し、この接着剤層12によ
って樹脂フィルム基材11の両面にアルミニウム箔13
0を固着する。このようにして、アルミニウム箔130
と樹脂フィルム基材11との積層体を準備する。
【0036】図4に示すように、アンテナコイルの仕様
に従った所定の渦巻状パターンを有するようにレジスト
インク層14をアルミニウム箔130の表面上に印刷す
る。印刷後、レジストインク層14の硬化処理を行な
う。
【0037】図5に示すように、レジストインク層14
をマスクとして用いてアルミニウム箔130をエッチン
グすることにより、回路パターン層13を形成する。
【0038】その後、図6に示すように、レジストイン
ク層14を剥離する。最後に、回路パターン層13の所
定領域に凹凸のある金属板と金属突起を用いてクリンピ
ング加工を施すことにより、図2に示すように回路パタ
ーン層を接触部または圧着部13aを形成する。このよ
うにして本発明のICカード用アンテナコイル1が完成
する。
【0039】この発明の製造方法において用いられるレ
ジストインクは特に限定されないが、分子中に少なくと
も1個のカルボキシル基を有するアクリルモノマーとア
ルカリ可溶性樹脂とを主成分とする紫外線硬化型レジス
トインクを用いるのが好ましい。このレジストインク
は、グラビア印刷が可能であり、耐酸性を有し、かつア
ルカリによって容易に剥離除去することが可能であるの
で、連続大量生産に適している。このレジストインクを
用いてアルミニウム箔に所定の回路パターンでグラビア
印刷を施し、紫外線を照射して硬化させた後、通常の方
法に従って、たとえば塩化第二鉄等によるアルミニウム
箔の酸エッチング、水酸化ナトリウム等のアルカリによ
るレジストインク層の剥離除去を行なうことによって、
回路パターン層を形成することができる。
【0040】分子中に少なくとも1個のカルボキシル基
を有するアクリルモノマーとしては、たとえば、2−ア
クリロイルオキシエチルフタル酸、2−アクリロイルオ
キシエチルコハク酸、2−アクリロイルオキシエチルヘ
キサヒドロフタル酸、2−アクリロイルオキシプロピル
フタル酸、2−アクリロイルオキシプロピルテトラヒド
ロフタル酸、2−アクリロイルオキシプロピルヘキサヒ
ドロフタル酸等が挙げられ、これらのうち、単独のアク
リルモノマー、またはいくつかのアクリルモノマーを混
合したものを使用することができる。上記のアルカリ可
溶性樹脂としては、たとえば、スチレン−マレイン酸樹
脂、スチレン−アクリル樹脂、ロジン−マレイン酸樹脂
等が挙げられる。
【0041】レジストインクには、上記の成分の他に、
アルカリ剥離性を阻害しない程度に通常の単官能アクリ
ルモノマー、多官能アクリルモノマー、プレポリマーを
添加することができ、光重合開始剤、顔料、添加剤、溶
剤等を適宜添加して作製することができる。光重合開始
剤としては、ベンゾフェノンおよびその誘導体、ベンジ
ル、ベンゾイン、およびそのアルキルエーテル、チオキ
サントンおよびその誘導体、ルシリンPTO、チバスペ
シャリティケミカルズ製イルガキュア、フラッテリ・ラ
ンベルティ製エサキュア等が挙げられる。顔料として
は、パターンが見やすいように着色顔料を添加する他、
シリカ、タルク、クレー、硫酸バリウム、炭酸カルシウ
ム等の体質顔料を併用することができる。特にシリカ
は、紫外線硬化型レジストインクを付けたまま、アルミ
ニウム箔を巻き取る場合には、ブロッキング防止に効果
がある。添加剤としては、2−ターシャリーブチルハイ
ドロキノン等の重合禁止剤、シリコン、フッ素化合物、
アクリル重合物等の消泡剤、レベリング剤があり、必要
に応じて適宜添加する。溶剤としては酢酸エチル、エタ
ノール、変性アルコール、イソプロピルアルコール、ト
ルエン、MEK等が挙げられ、これらのうち、溶剤を単
独、または混合して用いることができる。溶剤は、グラ
ビア印刷の後、熱風乾燥等でレジストインク層から蒸発
させることが好ましい。
【0042】回路パターン層を形成した後に、所定の位
置に常温でクリンピング加工を施し、表側と裏側のアル
ミニウム箔の一部を電気的に接触させてアンテナコイル
を形成することができる。ここで、クリンピング加工と
は、たとえば、ドリル、ヤスリ、超音波等により基材と
しての樹脂フィルムと接着剤層を破壊し、回路パターン
層を形成するアルミニウム箔の一部同士を物理的に接触
させることをいう。具体的には、凹凸のある金属板上に
樹脂フィルムとアルミニウム箔とからなる積層体を接触
させ、金属突起を押し当てることにより、基材としての
樹脂フィルムと接着剤層とが部分的に破壊し、アルミニ
ウム箔の表面同士が接触可能となり、電気的導通を得る
ことができる。実際にクリンピング加工を施した樹脂フ
ィルムとアルミニウム箔の積層体の部分断面の拡大写真
を図7と図8に示す。図7は倍率48倍の顕微鏡写真、
図8は倍率160倍の顕微鏡写真である。また、図9と
図10は、それぞれ図7と図8の写真に対応してその断
面構造を模式的に示す図である。図9と図10に示すよ
うに、樹脂フィルム基材11と接着剤層12の両側に延
在する回路パターン層13を形成するアルミニウム箔の
一部表面同士が圧着部13aにおいて互いに接触してい
る。
【0043】本発明に従ったICカード用アンテナコイ
ルの構成と製造方法について説明したが、ICカードと
して製品化するには次のような工程がさらに行なわれ
る。図1に示されるICカード用アンテナコイル1にお
いてICチップが回路パターン層13の領域13cと1
3dにICチップを実装する。さらに、アルミニウム箔
と樹脂フィルムとの積層体の表面に白色PET等の隠蔽
層をホットメルト法等により積層することができる。こ
の隠蔽層は、白色に制限されることはなく、公知の色顔
料や体質顔料、アルミニウムフレーク等の金属顔料およ
び公知の樹脂、ワニス、ビヒクル等を使用することがで
きる。もちろん、印刷層、磁気記録層、磁気遮蔽層、オ
ーバーコート層、蒸着層等の公知のICカードに採用さ
れている構成要素を必要に応じて積層させることもでき
る。
【0044】
【実施例】以下の表1に示す厚みと材質の樹脂フィルム
からなる基材の両面に、回路パターン層を形成するため
に表1に示す厚みと材質の箔を、表1に示す材質の接着
剤を用いてドライラミネーション法により接着して積層
体を作製した。このようにして得られた積層体の両面
に、以下に示す組成のレジストインクとヘリオクリッシ
ョグラビア版を用いて図1に示すような印刷パターンを
印刷した。印刷後、照射線量が480W/cm2の紫外
線ランプで15秒間照射し、レジストインクを硬化させ
ることによりレジストインク層を形成した。
【0045】インクの組成は以下のとおりである。 ベッカサイトJ−896(大日本インキ化学工業社製ロ
ジン−マレイン酸樹脂):21重量部 2−アクリロイロヘキシエチルヘキサヒドロフタル酸:
25重量部 ユニディックV−5510(大日本インキ化学工業社製
プレポリマー、モノマーの混合物):8重量部 イルガキュア184:3重量部 酢酸エチル:28重量部 変性アルコール:12重量部 フタロシアニンブルー:1重量部 シリカ:2重量部 上記のようにしてレジストインク層が形成された積層体
を35%の塩化第二鉄水溶液に温度40℃で5分間浸漬
することによりアルミニウム箔のエッチングを行ない、
所定のパターンに従った回路パターン層を形成した。そ
の後、その積層体を1%の水酸化ナトリウム水溶液に温
度20℃で10秒間浸漬することにより、レジストイン
ク層を剥離した。そして、温度70℃の温風で積層体を
乾燥することにより、図6に示すような積層体を作製し
た。
【0046】このようにして得られた積層体の所定の位
置に、凹凸のある金属板と金属突起を用いてクリンピン
グ加工を施すことにより、図2に示されるようなICカ
ード用アンテナコイルを作製した。
【0047】得られた各試料のアンテナコイルを温度1
50℃の恒温器内に30分間保持した後、取出して室温
まで放冷した。その後、アンテナコイルの外観を目視に
よって観察し、また基材の長さを測定することにより熱
収縮率を測定し、寸法精度の評価を行なった。その評価
結果を表1に示す。
【0048】
【表1】
【0049】本発明に従った試料No.1と2のアンテ
ナコイルでは、熱収縮率が小さく、外観は良好であっ
た。これに対して、試料No.3と4のアンテナコイル
では、熱収縮率がTD(traverse direc
tion:延伸方向に垂直な方向)では小さい値を示し
たが、MD(machine direction:延
伸方向)において高い値を示し、回路パターン層の寸法
精度が劣化していることがわかった。また、試料No.
7のアンテナコイルでは、基材の材質としてキャストポ
リプロピレン(CPP)が用いられたため、温度150
℃で30分間保持されることにより、溶融してしまっ
た。試料No.8においては、基材としてポリイミドフ
ィルムを用い、接着剤としてエポキシ樹脂を含有しない
ポリウレタン系接着剤(PU)を用い、回路パターン層
の材料として銅箔を用いたものであるが、室温放置中に
反りが発生し、外観の良いものではなかった。
【0050】なお、表1において外観の評価は、外観が
良好であるものを〇印、皺、撓みが発生したものを△
印、変形が生じ使用に耐えないものを×印で示してい
る。
【0051】また、表1における試料No.1、2、
5、6、8のアンテナコイルを用いて、クリンピング加
工された部分の導通特性を評価した。
【0052】試料No.1と2と5においては、クリン
ピング部の導通抵抗の初期値が0.04Ωに対して、1
80℃の温度で1分間+温度150℃で1時間の高温保
存試験と、温度120℃で5分間、圧力5kg/cm2
のヒートプレス試験の2つの試験を行なったが、導通抵
抗は0.04Ωを維持した。一方、試料No.6におい
ては、クリンピング部の導通抵抗の初期値が0.04Ω
に対して、高温保存試験では導通抵抗は0.04Ωを維
持したが、ヒートプレス試験ではクリンピング部が導通
を示さなくなった。試料No.8においては、クリンピ
ング部の導通抵抗の初期値が0.04Ωに対して、上記
2つの試験のいずれでもクリンピング部が導通を示さな
くなった。
【0053】以上に開示された実施の形態や実施例はす
べての点で例示的に示されるものであり、制限的なもの
ではないと考慮されるべきである。本発明の範囲は、以
上の実施の形態や実施例ではなく、特許請求の範囲によ
って示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内
でのすべての修正や変更を含むものである。
【0054】
【発明の効果】以上のように、この発明のICカード用
アンテナコイルは、低コストで大量に生産することがで
き、優れた寸法精度、耐熱性、経時安定性を兼ね備えて
いるので、信頼性が高く、長期間安定した性能を発揮す
ることが可能なICカード用の部品として提供すること
ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の1つの実施の形態に従ったICカ
ード用アンテナコイルを示す平面図である。
【図2】 図1のII−II線の方向から見た部分断面
図である。
【図3】 この発明の1つの実施の形態に従ったICカ
ード用アンテナコイルの第1の製造工程を示す部分断面
図である。
【図4】 この発明の1つの実施の形態に従ったICカ
ード用アンテナコイルの第2の製造工程を示す部分断面
図である。
【図5】 この発明の1つの実施の形態に従ったICカ
ード用アンテナコイルの第3の製造工程を示す部分断面
図である。
【図6】 この発明の1つの実施の形態に従ったICカ
ード用アンテナコイルの第4の製造工程を示す部分断面
図である。
【図7】 この発明のICカード用アンテナコイルにお
いて基材としての樹脂フィルムの両側に配置されたアル
ミニウム箔の一部分同士が接触している様子を示す断面
の顕微鏡写真である。
【図8】 図7に示す断面の一部をさらに拡大して示す
顕微鏡写真である。
【図9】 図7に対応して示す断面の模式図である。
【図10】 図8に対応して示す断面の模式図である。
【符号の説明】
1:ICカード用アンテナコイル、11:樹脂フィルム
基材、12:接着剤層、13:回路パターン層、14:
レジストインク層、130:アルミニウム箔。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 多田 裕志 大阪府大阪市中央区久太郎町三丁目6番8 号 東洋アルミニウム株式会社内 (72)発明者 窪田 正 大阪府大阪市中央区久太郎町三丁目6番8 号 東洋アルミニウム株式会社内 Fターム(参考) 2C005 MA14 MA19 MA39 MB01 MB02 MB07 MB08 NA09 NB26 PA04 PA19 PA20 RA16 5B035 AA04 BA05 BB09 CA01 CA23 5J047 AA06 AA19 AB11 FC06

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 温度150℃で30分間保持したときの
    熱収縮率が0.3%以下の樹脂を含み、厚みが15μm
    以上50μm以下の基材と、 前記基材の表面の上に形成された、純度が97.5質量
    %以上99.7質量%以下のアルミニウムを含み、かつ
    厚みが7μm以上60μm以下の回路パターン層とを備
    えた、ICカード用アンテナコイル。
  2. 【請求項2】 前記樹脂は、低収縮性ポリエチレンテレ
    フタレートおよび低収縮性ポリエチレンナフタレートか
    らなる群より選ばれた少なくとも1種である、請求項1
    に記載のICカード用アンテナコイル。
  3. 【請求項3】 前記回路パターン層は、前記基材の一方
    表面の上に形成された第1の回路パターン層と、前記基
    材の他方表面の上に形成された第2の回路パターン層と
    を含む、請求項1または請求項2に記載のICカード用
    アンテナコイル。
  4. 【請求項4】 前記第1の回路パターン層の少なくとも
    一部が前記第2の回路パターン層の少なくとも一部に接
    触している、請求項3に記載のICカード用アンテナコ
    イル。
  5. 【請求項5】 前記回路パターン層と前記基材との間に
    介在して両者を接合する接着層をさらに備える、請求項
    1から請求項4までのいずれかに記載のICカード用ア
    ンテナコイル。
  6. 【請求項6】 前記接着層は、エポキシ樹脂を含有する
    ポリウレタン系接着剤を含む、請求項5に記載のICカ
    ード用アンテナコイル。
  7. 【請求項7】 温度150℃で30分間保持したときの
    熱収縮率が0.3%以下の樹脂を含み、厚みが15μm
    以上50μm以下の基材の表面の上に、エポキシ樹脂を
    含有するポリウレタン系接着剤を用いて、純度が97.
    5質量%以上99.7質量%以下のアルミニウムを含
    み、かつ厚みが7μm以上60μm以下の箔を固着する
    工程と、 前記箔の上に所定のパターンを有するレジストインク層
    を印刷する工程と、 前記レジストインク層をマスクとして用いて前記箔をエ
    ッチングすることによって前記アルミニウムを含む回路
    パターン層を形成する工程と、 前記箔をエッチングした後、前記レジストインク層を除
    去する工程とを備えた、ICカード用アンテナコイルの
    製造方法。
  8. 【請求項8】 前記箔を固着する工程は、前記基材の一
    方表面と他方表面の上に前記箔を固着することを含み、
    前記回路パターン層を形成する工程は、前記基材の一方
    表面の上に第1の回路パターン層と、前記基材の他方表
    面の上に第2の回路パターン層とを形成することを含
    む、請求項7に記載のICカード用アンテナコイルの製
    造方法。
  9. 【請求項9】 クリンピング加工によって、前記第1の
    回路パターン層の少なくとも一部を前記第2の回路パタ
    ーン層の少なくとも一部に接触させる工程をさらに備え
    る、請求項8に記載のICカード用アンテナコイルの製
    造方法。
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