JP2002005909A - 中ぐり車軸の超音波探傷の媒質回収装置及びその中ぐり車軸の超音波探傷装置 - Google Patents

中ぐり車軸の超音波探傷の媒質回収装置及びその中ぐり車軸の超音波探傷装置

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JP2002005909A
JP2002005909A JP2000184048A JP2000184048A JP2002005909A JP 2002005909 A JP2002005909 A JP 2002005909A JP 2000184048 A JP2000184048 A JP 2000184048A JP 2000184048 A JP2000184048 A JP 2000184048A JP 2002005909 A JP2002005909 A JP 2002005909A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 一端が封じられ他端が開放された鉄道車両の
車軸の内部から、超音波探傷のため注入された油などの
超音波の伝播媒質を、確実に回収する。 【解決手段】 本願発明に係る中ぐり車軸の超音波探傷
の媒質回収装置は、車軸の内周面に密接すると共に車軸
内部を摺動することによって、上記媒質を車軸の外部へ
掻き出すことが可能な、掻き出し部材1を備え、掻き出
し部材1を境にして、車軸の上記一端側が、車軸の他端
側に対して気密になることを防ぐ、空気抜きを備える。
このため、車軸内に発生する負圧の低減を抑え、媒質の
残留を著しく低減した。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本願発明は、中ぐり車軸の超
音波探傷の媒質回収装置及びその中ぐり車軸の超音波探
傷装置に関する。
【0002】
【従来の技術】新幹線を始めとする最近の高速鉄道車両
は、車両の軽量化のために、内部が中空の車軸、即ち、
中ぐり車軸が用いられている。そして所定距離の走行
後、車両は、軌道上にて交番検査が行われる。この交番
検査において、超音波探触子が設けられた探触子保持体
を備えた超音波探傷装置を用い、その探触子保持体を車
軸内部で走査することによって、車軸の探傷が行われて
いる。
【0003】上記の探傷作業中、探触子と車軸との隙間
を埋め超音波の伝播を良くする接触媒質(以下伝播媒体
或いは単に媒質という。)として、油が車軸内へ供給さ
れる。車軸内に油が溜まった状態では、軸箱部(車軸の
軸受けを構成するベアリングケース)内に、探傷用の油
が流れ込み、ベアリングの劣化が早まる。このため、探
傷作業が終了した後、車軸内に溜まった油を回収する作
業が必要であった。この回収作業では、作業者が、車軸
内面を掃くためのゴムが先端に設けられた手掻き棒を車
軸内部に挿入し、手作業で車軸内の油を掻き出すもので
あった。回収作業は、熟練した者が行っても、車軸1本
について約1分を所要し、1車両について、車軸が4本
あるため4分要する。従って、例えば車両を16両編成
とした場合、1つの列車について、伝播媒質を回収する
作業だけで、単純に64分かかることになる。
【0004】また、手作業のため、掻き出しによる油の
回収むらを生じることが避けられなかった。更に、手掻
き棒は、2メートル程度の長さを必要とするため、交番
検査という限られたスペースの中での作業は、困難を伴
う場合が多々がある。例えば、ホームに阻まれたり、検
査車両が乗っている軌道と、隣接する軌道が有る場合、
当該隣接線上の、他の車両との接触(触車)を防止する
対策に迫られる。
【0005】一方、交番検査において、車軸の探傷検査
の効率を図るために、例えば、特開平6−265528
号公報に見られる提案がなされている。これは、中ぐり
車軸の自動探傷装置であり、超音波探触子と、探触子保
持体と、探触子回転手段と、適宜位置長さを有するフレ
キシブルチューブと、このチューブ巻取り手段と、回転
位置検出器とを備えてなり、上記探触子保持体は、超音
波探触子を回転自在に保持すると共に、超音波探触子と
共に、中ぐり車軸の中ぐり部分内部に挿通することが可
能な形状を有するものであり、上記チューブ巻き取り手
段は、車軸外部において、フレキシブルチューブの後端
側に設けられ、フレキシブルチューブを巻き取り或いは
巻き解くことにより、中ぐり車軸内部の超音波探触子及
び探触子保持体を車軸の軸方向に移動させることが可能
なるものであり、上記回転手段は、フレキシブルチュー
ブを介して、少なくとも超音波探触子を中ぐり車軸内部
において回転させることが可能なるものであり、上記回
転位置検出器は、コンピュータ等とのデータのやり取り
により、超音波探触子の探傷位置を自動制御するもので
ある。この装置は、その効果として、車軸内部の探傷を
自動化し、車軸の検査を行う作業者が、手作業で探触子
の走査を行う手間を排除すると共に、比較的狭いスペー
スにおいても、探傷を効率よく行え、また探傷を精度よ
く行うことを可能とするものである。上記と同種の探傷
装置は、他に特開平6−118066号や、特開平6−
118067号、特開平7−167840号の各公報中
にも、掲げられている。
【0006】本願発明者は、上記の自動探傷装置に着目
し、その探触子保持体の外周面に適当なパッキンを設け
て、媒質の回収を試みたが、十分な回収が行えなかっ
た。そこで、本願発明者は、媒質を確実に回収するため
に、探触子保持体の先端側に、探触子保持体と別体に形
成され周囲にゴムパッキンを備えた円盤を接続し、探触
子保持体の移動に伴ってこの円盤を摺動させ、そのゴム
パッキンにて、車軸内の、媒質を掻き取り、その回収を
図ろうと考えた。ところが、その実現に際し、以下のよ
うな問題が生じた。
【0007】車両の走行状態において、中空の車軸は、
その両端が栓にて塞がれている。上記の装置にて車軸の
探傷を行うに際しては、検査時間の短縮のため、また、
超音波の媒質を流失しないように、車軸の一端は栓にて
封じられたままとされ、車軸の他端のみが開放された状
態とされる。そして、開放された車軸の他端から、超音
波の伝播媒質である油が車軸内に注入されると共に、こ
の他端から探触子保持体が車軸内に挿入され、車軸の探
傷が行われることとなる。この探触子保持体を、車軸の
上記一端側から開放された他端側へ移動することによっ
て、上記のゴムパッキンにより車軸内の、媒質を掻き取
るのであるが、ゴムパッキンは、媒質を掻き取るため
に、上記の通り、車軸内部の形状に対応した横断面形状
を有するものであり、車軸内部において、ゴムパッキン
を境として、上記(封栓された)一端側は、(開放され
た)他端側に対して気密になる。
【0008】このため、上記一端側から開放された他端
側へゴムパッキンが移動するに際して、ゴムパッキンと
(封栓された)車軸の一端側との間が、真空或いは真空
に近い状態となり(ゴムパッキンを境として上記車軸の
一端側に、開放された他端側に対する負圧が発生し)、
媒質である油が、ゴムパッキンを越えて、上記車軸の一
端側へ吸引されてしまう。従って、伝播媒質である油
が、車軸内に残留して、うまく掻き出すことができない
のであった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本願発明は、上記の課
題の解決にて、超音波の伝播媒質の回収率の向上を図る
ものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】本願の第1の発明に係る
中ぐり車軸の超音波探傷の媒質回収装置は、一端が封じ
られ他端が開放された中空の車軸内部を探傷する超音波
探傷装置に取り付けられ、油などの超音波の伝播媒質を
回収するものについて、次の構成を採る。車軸の内周面
に密接すると共に車軸内部を摺動することによって、上
記媒質を車軸の外部へ掻き出すことが可能な、掻き出し
部材1を備える。そして、掻き出し部材1を境にして、
車軸の上記一端側が、車軸の他端側に対して気密になる
ことを防ぐ、空気抜きを備える。
【0011】このような構成を採ることによって、本第
1の発明に係る中ぐり車軸の超音波探傷の媒質回収装置
では、超音波探傷装置を利用することによって、超音波
の媒質を回収可能とした。特に、空気抜きを設けること
によって、中ぐり車軸の上記一端側から他端側に向けて
掻き出し部材を摺動する際に、掻き出し部材と車軸の上
記一端との間に空気が入り、これによって、掻き出し部
材1を境に車軸の上記一端側に車軸の他端側に対する負
圧が発生することを低減した。従って、掻き出し部材
を、車軸の上記一端側から他端側に向けて摺動して媒質
を掻き出す際に、媒質が負圧によって吸引され、掻き出
し部材を越えて車軸の上記一端側へ入り込む(逆行す
る)というようなことが無くなった。このため、確実
に、媒質を回収することが可能となった。また、負圧の
低減にて掻き出し部材の摺動に掛かる負荷を軽減し、掻
き出し部材の摺動も、大きな駆動力を要することなく、
極めて円滑に行える。
【0012】本願の第2の発明に係る中ぐり車軸の超音
波探傷装置では、一端が封じられ他端が開放された鉄道
車両の中空の車軸内部に油などの超音波の伝播媒質を収
容し、車軸内にて超音波探触子5を備えた探触子保持体
50を摺動することにより車軸の探傷を行うものについ
て、探触子保持体50の先端側に、車軸の内周面に密着
する掻き出し部材1を備える。そして、掻き出し部材1
と車軸の上記一端との間に、空気を供給することが可能
な通気路3を備える。
【0013】このような構成を採る、本願の第2の発明
に係る中ぐり車軸の超音波探傷装置は、探触子保持体5
0に掻き出し部材1が設けられ、車軸内での探触子保持
体50の摺動動作を利用して、掻き出し部材1の摺動を
行うことができる。その上、探触子保持体50の移動に
伴い、中ぐり車軸の上記一端側から他端側に掻き出し部
材が摺動した際、掻き出し部材1と車軸の上記一端との
間に空気が入り、掻き出し部材1と車軸の上記一端との
間に負圧が発生することを抑えた。従って、掻き出し部
材1を車軸の上記一端側から他端側に向けて摺動して媒
質を掻き出す際に、媒質が負圧によって吸引され、掻き
出し部材1を越えて車軸の上記一端側へ入り込むという
ようなことが無くなった。このため、取りこぼしなく確
実に、媒質を回収することが可能となった。また、負圧
の低減にて探触子保持体や掻き出し部材1の摺動に掛か
る負荷を軽減し、掻き出し部材1の摺動も、大きな駆動
力を要することなく、極めて円滑に行える。
【0014】本願の第3の発明に係る中ぐり車軸の超音
波探傷装置では、上記本願第2の発明に係る中ぐり車軸
の超音波探傷装置において、掻き出し部材1が、伸縮可
能なロッド2を介して探触子保持体50に設けられ、掻
き出し部材1と探触子保持体50との間に、媒質の収容
部を形成するものである。上記の通気路3は、掻き出し
部材の先端面から、掻き出し部材1及びロッド2夫々の
内部を経て、車軸内部について、掻き出し部材1の後方
側と前方側との通気を確保するものである。
【0015】このような構成を採ることにより、本願の
第3の発明に係る中ぐり車軸の超音波探傷装置では、上
記本願の第2の発明に係る中ぐり車軸の超音波探傷装置
において、探触子保持体50の探傷の走査と共に、その
超音波の伝播媒質の回収を行うことを可能とし、探傷か
ら媒質の回収までの時間を短縮して、車軸検査の効率を
著しく向上した。特に、ロッド2は伸縮可能であるた
め、上記車軸の一端付近にて探触子保持体50を走査す
るに際は縮んだ状態にすることによって走査の邪魔にな
らない。しかも、探触子保持体50と掻き出し部材1と
の間に溜まる媒質は、探触子保持体50に追従して掻き
出し部材1が、車軸の他端側へ移動するに伴い増加する
が、このように溜まって行く媒質の増加に応じて、ロッ
ド2の伸長により対処することができるのである。
【0016】
【発明の実施の形態】以下、図面に基づき本願発明の実
施の形態を説明する。図1乃至図7へ、本願発明の一実
施の形態を示す。図1は、本願発明の一実施の形態に係
る超音波探傷装置100の使用状態を示す説明図であ
る。図2は、この超音波探傷装置100の要部縦断面図
である。図3は、この超音波探傷装置100の媒質回収
装置4の縮んだ状態を示す縦断面図である。図4(A)
はこの媒質回収装置4の正面図であり、図4(B)は図
3のX−X略断面図である。図5は媒質回収装置4の伸
長状態を示す縦断面図である。図6は、媒質回収装置4
の説明図である。図7(A)〜(D)は、媒質回収装置
4の動作を示す説明図である。尚、上記の各図におい
て、必要なハッチングは、図面の煩雑を避けるため、省
略している。
【0017】本願発明に係る中ぐり車軸の超音波探傷装
置100(以下探傷装置100という。)は、一端aが
栓dにて封じられ他端bが開放された鉄道車両の中空の
車軸mについて、車軸m内部cに油などの超音波の伝播
媒質nを収容し、車軸m内にて超音波探触子5(以下探
触子5という。)を備えた探触子保持体50を摺動する
ことにより車軸mの探傷を行うものであり、次の構成を
採る。即ち、超音波探傷装置100は、探傷検査装置6
と、媒質回収装置4とを備える。探傷検査装置6は、上
記の探触子5を備えた探触子保持体50と、探触子保持
体50の車軸内部での移動を行う走査部8と、探触子保
持体50のデータ処理及び走査部8の制御を行う処理部
7とを備える。媒質回収装置4は、探触子保持体50の
先端に取り付け可能な接続部40と、接続部40に設け
られ探触子保持体50よりも前方F側に伸びる伸縮可能
なロッド2と、ロッド2の先端に設けられ且つ車軸mの
内周面に対応した横断面形状を有する掻き出し部材1
と、空気抜きとを備える。掻き出し部材1の側部には、
ゴムパッキンなどの弾性体でできたスクレーパ10が設
けられている。ロッド2先端は、掻き出し部材1の後端
面1bの中央に接続されている。上記の空気抜きは、先
端面1aの中央に前方開口部30を、ロッド2の側部に
後方開口部31を有し、掻き出し部材1とロッド2の内
部を通って、両開口部30,31間を連絡する通気路3
である。尚、探傷する車軸Mの内部cにおいて、栓にて
封じられた一端a側を前方Fとし、開放された他端b側
を後方Bとする。超音波探傷装置や媒質回収装置の各構
成部材の前後(先端・後端等)の特定は、これに基づ
く。以下各部の構成について、順に説明する。
【0018】先ず、探傷検査装置6各部の構成について
説明する。図1及び図2へ示す通り、探触子保持体50
は、中ぐり車軸mの中ぐり部分内部cに挿通することが
可能な形状を有し、車軸m内に挿入されるものである。
上記探触子保持体50は、基体52と、探触子5を保持
する回転ヘッド51とを備える。回転ヘッド51は、基
体52の先端に軸止され、基体52に対して、車軸mの
周方向(ラジアル方向)に回動することが可能である。
探触子5は、斜角探傷用のプローブであり、超音波の送
信と受信とを行う。探触子保持体50について、具体的
に説明すると、図2へ示す通り、上記の回転ヘッド51
は、軸53を介して基体52内に設けられたロータリー
コネクタ54に回動自在に軸止されている。このロータ
リーコネクタ54は、回転ヘッド51の探触子5と、探
傷器70との信号の伝達を担うものである。55はロー
タリエンコーダを示している。尚、図示はしないが、探
触子保持体50は、車軸内に媒質を供給する手段を備え
る。
【0019】走査部8は、先端側が探触子保持体50に
接続されたフレキシブルチューブ80(以下チューブ8
0という。)と、チューブ80の後端側に設けられたチ
ューブ巻取り装置81と、車軸固定部84と、ヘッド回
転装置82と、位置検出器83と、プーリ85とを備え
る。走査部8において、探触子保持体50と、チューブ
80以外は、車軸mの外部に配置される。チューブ80
は、車軸mの上記他端bから探触子保持体50を車軸内
に挿入した際、車軸mの上記一端aまで、探触子保持体
50を入り込ませることが可能な、長さを備えたもので
ある。車軸固定部84は、車軸mの開放された端部bに
固定されるものであり、チューブ80を通すものであ
る。巻き取り装置81は、探触子保持体50の軸方向
(前後方向F,B)についての移動装置であり、巻き動
作によってチューブ80を巻き取ることにて探触子保持
体50を後方Bに移動させ、巻きを解く動作によってチ
ューブ80を延ばして探触子保持体50を前方Fに移動
させる。上記ヘッド回転装置82は、チューブ80を介
してチューブ80先端の探触子保持体50へ回転力を供
給し、回転ヘッド51を回転させる。上記の、巻き取り
装置81による探触子保持体50の軸方向への移動と、
ヘッド回転装置82による回転ヘッド51の回転とによ
って、探触子5を、軸内周面についてスパイラル状に探
傷走査させることができる。上記の位置検出器83は、
チューブ80の動作を監視することによって、探触子5
の位置を検出するものである。プーリ85は、チューブ
80に接し、その前後でチューブ80の伸びる向きを変
えるものである。このようなプーリ85を介することに
よって、車軸mに対して、巻き取り装置81を、作業の
邪魔にならない、所望の位置に置くことができる。尚、
図1においてs,sは、車軸mに嵌められている車輪を
示している。
【0020】処理部7は、探傷器70と、コンピュータ
71と、必要に応じてプリンタなどの印刷装置72を備
える。探傷器70は、探傷条件の設定や調整を行うこと
が可能なものであり、更に、探触子5が取得した探傷デ
ータを保持し、必要に応じて、得られた探傷図形を表示
することが可能なものである。走査部8のチューブ80
自身は、内部に探触子5から送られてくる情報を伝達す
るための配線がなされており、巻き取り装置81を経て
探傷器70やコンピュータ71に探傷データを送る。位
置検出器83から、探触子5の位置についての情報を得
て、上記のコンピュータ71により、走査部8各部の自
動制御を行うことが可能である。このように処理部7に
よって、探触子保持部50の動作を自動制御することが
可能である。
【0021】次に媒質回収装置4について説明する。媒
質回収装置4は、既述の通り、探触子保持体50の先端
に取り付け可能な接続部40と、接続部40に設けられ
探触子保持体50よりも前方F側に伸びる伸縮可能なロ
ッド2と、ロッド2の先端に設けられ且つ車軸mの内周
面に密接する掻き出し部材1と、掻き出し部材1の前後
の通気を確保する空気抜きとを備える。空気抜きは、ロ
ッド2の後方側から前方側へ空気を通すことが可能なも
のである。掻き出し部材1の側部には、車軸m内周面と
密着可能な、ゴムパッキンなどの弾性体でできたスクレ
ーパ10が設けられている。ロッド2先端は、掻き出し
部材1の後端面1bの中央に接続されている。ロッド2
は、中空の筒状体である。上記の空気抜きは、中空のロ
ッド2内部を通じて、掻き出し部材1前方F側へ空気を
通す通気路3である。通気路3は、先端面1aの中央に
前方開口部30を、ロッド2の側部に後方開口部31を
有し、掻き出し部材1とロッド2の内部を通って、両開
口部30,31間を連絡するものである。更にロッド2
の介在にて、掻き出し部材1と探触子保持体50との間
の、間隔が確保される。図2へ示すように、媒質回収装
置4の接続部40は、探傷ヘッド51の前方のカバーの
一部を担うものである。即ち、螺子を外すことによって
既存の探傷ヘッド51の前方カバーを取り外し、この接
続部40を螺子止めにて取り付けることができる。この
ようにして、既存の探傷装置100に媒質回収装置4を
設けることできる。図3及び図5へ示すように、接続部
40の中心部には、軸受け41が設けられ、この軸受け
41に、ロッド2の基端側(後端)が固定され、接続部
40に対して、ロッド2は回動自在になっている。
【0022】上記のロッド2には、通気路3の後方B側
において通気路3を延長する通気路延長部32と、この
通気路延長部32をロッド2よりも上方に維持する振り
子機構部21が設けられている。通気路延長部32を、
振り子機構部21にて、常時ロッド2よりも上方に位置
せしめることにより、ロッド2が溜まった媒質に没して
も、車軸m内部cの上方の空気と、通気路3との連絡を
確保することができるのである。ロッド2について、更
に詳しく説明する。ロッド2は、図5へ示すように、筒
状の前部シャフト2aと、前部シャフト2aの後部に接
続され中部シャフト2bと、中部シャフト2bの後部に
接続された後部シャフト2cと、後部シャフト2cの後
部に設けられた振り子機構部21とを備える。各シャフ
ト2a〜2cは中空であり、夫々の内部が上記の通気路
3を担うものである。後部シャフト2cの後端側開口部
が、上記の後方開口部31である。図3に示すように、
上記の前部シャフト2aは、中部シャフト2bの内部に
収容することが可能であり、同様に、中部シャフト2b
は、後部シャフト2cの内部に収容することが可能であ
る。このよう各シャフト2a〜2cを畳むことによっ
て、ロッド2を縮めた状態にすることができる。媒質回
収装置4は、力が加わっていないときロッド2をこのよ
うに縮んだ状態にする付勢手段を備える。このような付
勢手段を備えることによって、媒質回収装置4を使用し
ないとき、ロッド2を縮めておくことができ、触車など
の危険性を排除し、また、可搬性を向上する点で便利で
ある。この付勢手段には、ロッド2を縮める方向に付勢
することが可能な弾性体を採用する。具体的には、シャ
フト2aと振り子機構部21とに、引き発条22(縮む
方向に力を発揮する発条)を固定して実施することが可
能である。引き発条22には、コンストンバネと呼ばれ
るぜんまいバネを用いるのが好ましい。但し、押し発条
など上記以外の弾性体を用いて、ロッド2を縮める方向
に付勢することも可能である(図示しない)。
【0023】中部シャフト2b及び後部シャフト2cの
夫々の先端側開口部には、パッキン22a、22bが嵌
められており、前部シャフト2a外周面と中部シャフト
2bの先端内周面との間、及び、中部シャフト2b外周
面と後部シャフト2cの先端内周面との間は、夫々液密
になっている。また、前部シャフト2aの後端の外周
面、及び中部シャフト2bの後端の外周面には、ロッド
2伸長時、夫々、パッキン22a、22bの後端と当接
する当たり20a,20bが設けられている。この当た
り20a,20bについても、パッキンを採用するのが
好ましい。シャフト2a〜2cのうち、他のシャフト2
a,2bを収容することが可能な後部シャフト2cが最
も外径の大きいものである。但し、この後部シャフト2
cの外径は、掻き出し部材1の外径及び探傷ヘッド50
(接続部40)の外径よりも小さい。これにて、掻き出
し部材1と探傷ヘッド50との間に、媒質を収容するこ
とが可能な空間が確保される。既述の振り子機構部21
は、シャフト2cと接続部40との間に介され、シャフ
ト2cと接続部40とを接続する。図3及び図5におい
て、42は、振り子機構部21を接続部40の軸受け4
1に接続する接続軸を示している。この振り子機構部2
1は、シャフト2cに遊嵌されており、シャフト2cに
対し回動可能に設けられている。振り子機構部21は、
その上部にシャフト2cよりも上方に突出する通気路延
長部32を備えると共に、その下部にシャフト2cより
も下方に垂下する垂下部21aを備える。垂下部21a
は内部に錘21bを備えることによって、振り子機構部
21の下部を上部より重たいものとしており、シャフト
2cの回動の如何にかかわらず、通気路延長部32を常
時ロッド2よりも、上方に保つ。
【0024】前部シャフト2aの先端は、上記掻き出し
部材1の中央に接続されている。車軸mは円筒状である
ので、このような車軸mの内周面に対応して、掻き出し
部材1は、円形の横断面形状を有する。詳しくは、図3
及び図4(A)へ示すように、掻き出し部材1は、円盤
状の基板11と、基板11周囲に設けられた既述のスク
レーパ10と、基板11の中心に設けられた前後に貫通
する貫通孔12と、貫通孔12に設けられた軸受け部1
5とを備える。この軸受け部15に前部シャフト2aの
先端が接続され、掻き出し部材1は、ロッド2aに対し
て回動可能となっている。貫通孔12は、中空のロッド
2の内部に連絡し、ロッド2(シャフト2a〜2c)の
内部と共に、通気路3を構成している。即ち、貫通孔1
2の下記出し部材1先端面1aの開口部が、通気路3
の、前記前方開口部30をなしている。この実施の形態
では、基板11周面に溝11aを設けておき、スクレー
パ10の中心部をアルミ製のスペーサ13にて挟持して
螺子14止めし、この状態で、スペーサ13を溝11a
に嵌合することにより、スクレーパ10の基板11への
固定を図っている。スクレーパ10は、ゴムパッキンを
用いるのが適当であり、特に、耐油性、耐磨耗性に優れ
るニトリルゴムを成分とするものが好ましい。
【0025】スクレーパ10の外径は、車軸mの内径よ
りも大きい。例えば、車軸の内径を60mmとすると、
スクレーパ10の外径は約62mmと、約1〜5mm程
度大きいものとする。このようにして、スクレーパ10
と車軸mの内周との密着性を高めている。スクレーパ1
0と車軸m内周面との摩擦抵抗の力は、上記の引き発条
22の引き力よりも大きい。カスクレーパ10が、車軸
m内周面と接触して、車軸m内を掻くのである。このカ
スクレーパ10について、ショア硬さAについて硬度3
0〜80程度とするのが好ましく、特に硬度60のもの
は、ムラがなく高い回収率で、媒質の回収を行うことが
できる。硬度90とすると、硬過ぎて、スクレーパ10
の車軸m内周面に対する密着性(シール性能)が低下
し、回収にムラが生じた。
【0026】掻き出し部材1はフロート構造を備える。
このフロート構造とは、基板11に対して、スクレーパ
10を摺動可能としたものである。具体的には、フロー
ト構造は、上記のスペーサ13と溝11aとの嵌め合い
を余裕があるものとし、スクレーパ10を、スペーサ1
3と共に、基板11に対し移動することを可能としたも
のである。但し、このように、スクレーパ10が移動し
ても、スペーサ13は溝11a内から脱落するものでは
ない。探触子保持体50、ロッド2及び掻き出し部材1
の夫々の中心は一致する。しかし、探触子保持体50
は、車軸内を移動する必要から車軸内径よりも小さく形
成されており、車軸内に置かれた際に、探触子保持体5
0の中心は、車軸の中心よりも下方に位置することとな
る。このため掻き出し部材1の中心が、通常、車軸mの
中心よりも下方に位置することとなるので、車軸m内
で、スクレーパ10と車軸mの内周と間の密着が維持で
きず、隙間ができる。しかし、上記のフロート構造の採
用にて、このような事態を回避することができる。従っ
て、フロート構造は、基板11に対して、スクレーパ1
0を少なくとも上方に向けて摺動することが可能であれ
ばよい。但し、スクレーパ10を他の方向にも摺動可能
としておけば、より効果的である。
【0027】上記の通り、媒質回収装置4は、探触子保
持体50に接続されることによって、探傷検査装置6が
備える既述の走査部8にて、探触子保持体50と共に移
動のコントロールを行うことができるのである。
【0028】媒質回収装置4の回収動作について、図6
及び図7を用いて説明する。図7(A)へ示すように、
探傷開始前、チューブ80を伸ばすことによって、探触
子保持体50を前方Fへ移動し、探触子保持体50を車
軸mの封ぜられた一端a側に配置する。このとき、ロッ
ド2は縮んだ状態となっている。探傷開始時、探触子保
持体50から媒質nが車軸内に放出され、このときロッ
ド2は、図7(B)へ示すように、探触子保持体50の
後方B側への移動に伴って伸び、更に探触子保持体50
の移動が進むことによって、図7(C)に示す通り、ロ
ッド2は完全に伸びた状態となる。この掻き出し部材1
と探触子保持体50との間に媒質nが収容される。そし
て、図7(D)へ示すように、探触子保持体50の移動
と共に、この媒質nを後方Bへ移動させることができ
る。図示はしないが、最終的に、車軸固定部84(図
1、図2)を車軸mから外し、開放された他端bより、
探触子保持体50及び媒質回収装置4を車軸m外部へ出
す。これにて媒質nも車軸m外部へ排出される。
【0029】上記の図や7(B)〜(D)へ示す過程
で、掻き出し部材1の後方Bへの移動に伴って、図6へ
示すように、掻き出し部材1より後方Bにある空気e
が、吸引され、通気路延長部32から通気路3内に入
り、掻き出し部材1の前方F側に供給される。このよう
にして、媒質回収装置4は、掻き出し部材1と車軸mの
封ぜられた一端aとの間に、負圧を発生させないのであ
る。上記において、探触子保持体50は、その下部にて
媒質をプールする構成の一部を担っているが、外気との
通気は、その上部にて確保している(図7では、このよ
うな探触子保持体50と車軸mとの間の隙間が省略され
ている)。
【0030】上記の実施の形態では、ロッド2は前後3
本のシャフト2a〜2cを継ぐことによって構成した
が、このような本数に限定するものではなく、必要に応
じて上記の本数を変更することが可能である。この場
合、1本のロッドで構成するものとして、伸縮しないも
のとして実施することも可能である。但し、媒質の収容
能力や、探傷範囲を確保する上で、ロッド2を伸縮可能
とするのが好ましい。
【0031】また、上記の実施例と異なり、ロッド2に
通気路延長部32を付設するものとせず、探触子保持体
50の内部に、外気や探触子保持体50の後方B側の空
気と連絡して通気を確保する通気路延長部を備えるもの
としても実施可能である(図示しない)。
【0032】表1に、A)従来法(手掻き棒)による媒
質nである油の回収率(%)と、B)本願発明に係る媒
質回収装置4の回収率(%)とを示す。表1において、
かっこ内の数値は、平均値(%)を示している。
【0033】
【表1】 処理対象 アクリルパイプ モデル軸 実車軸 A)従来法 94.3 86.2 〜96.8 〜98.4 (95.4) (93.2) B)本願発明 98.5 99.1 99.2〜 〜99.3 〜99.3 〜99.3 (99.1) (99.2) (99.3)
【0034】上記の通り、実際の車軸においても、本願
発明の装置によるものが、従来法に比して、著しく回収
率が向上しているのが分かる。また、アクリルパイプ
や、モデル軸を、実際の車軸に代えて、処理対象として
も同様に回収率の大きな向上が見られた。
【0035】
【発明の効果】本願第1の発明の実施によって、一端が
封じられ他端が開放された鉄道車両の車軸の内部に超音
波探傷のため注入された油などの超音波の伝播媒質につ
いて、既存の超音波探傷装置を利用して、超音波の伝播
媒質の回収を可能として、その回収率を著しく向上し
た。従って、媒質回収のために、別途の手段を講ずる必
要がなく、作業の能率向上と共に、手間、コストの面で
有利である。特に、従来のように、超音波探傷のため注
入された油が、軸箱部内に入り込んで、ベアリングの劣
化を早めるといった事態の発生を低減した。また、車軸
内での負圧の発生を抑えることによって、上記の効果を
得るため、掻き出し部材に掛かる負荷も軽減され、迅速
で円滑な回収作業を可能にした。また、従来の手掻き棒
を使用する必要がなくなり、隣接軌道を走行する車両と
の触車による事故を回避でき、作業の安全性を著しく向
上した。また、従来の手掻き棒による手作業では、触車
事故はもとより、油回収時に、飛散した油により、床や
衣服が汚れ、時には、作業者が転倒する危険性があった
が、このような危険性も回避され、この点においても、
作業の安全性を著しく向上した。
【0036】本願第2の発明の実施によって、超音波探
傷装置のみにて、上記本願第1の発明が奏する上記の効
果を得ることを可能とした。
【0037】本願第3の発明の実施によって、探傷走査
と共に自動的に、超音波媒質の回収を可能とし、この際
に、上記本願第2及び本願第3の発明が奏する効果を得
ることを可能とした。従って、熟練した作業者を要する
ことなく、媒質の回収をより確実に行えるものとした。
更に、自動化により作業の迅速・効率・安全性がより向
上した。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願発明の一実施の形態に係る超音波探傷装置
100の使用状態を示す説明図である。
【図2】上記超音波探傷装置100の要部縦断面図であ
る。
【図3】上記超音波探傷装置100の媒質回収装置4の
縮んだ状態を示す縦断面図である。
【図4】(A)はこの媒質回収装置4の正面図であり、
(B)は図3のX−X略断面図である。
【図5】媒質回収装置4の伸長状態を示す縦断面図であ
る。
【図6】媒質回収装置4の説明図である。
【図7】(A)(B)(C)(D)の夫々は、媒質回収
装置4の動作を示す説明図である。
【符号の説明】
1 掻き出し部材 2 ロッド 3 通気路 5 探触子 50 探触子保持体
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 渡辺 清文 東京都渋谷区代々木2丁目2番2号 東日 本旅客鉄道株式会社内 (72)発明者 川田 一光 大阪府東大阪市角田1丁目9番29号 日本 クラウトクレーマー株式会社大阪事業所内 Fターム(参考) 2G047 AA07 AC08 AD09 BC07 DB18 GA19 GE03

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 一端が封じられ他端が開放された中空の
    車軸内部を探傷する超音波探傷装置に取り付けられ、油
    などの超音波の伝播媒質を回収する中ぐり車軸の超音波
    探傷の媒質回収装置において、 車軸の内周面に密接すると共に車軸内部を摺動すること
    によって、上記媒質を車軸の外部へ掻き出すことが可能
    な、掻き出し部材(1) を備え、 掻き出し部材(1) を境にして、車軸の上記一端側が、車
    軸の他端側に対して気密になることを防ぐ、空気抜きを
    備えたものであることを特徴とする中ぐり車軸の超音波
    探傷の媒質回収装置。
  2. 【請求項2】 一端が封じられ他端が開放された鉄道車
    両の中空の車軸内部に油などの超音波の伝播媒質を収容
    し、車軸内にて超音波探触子(5) を備えた探触子保持体
    (50)を摺動することにより車軸の探傷を行う中ぐり車軸
    の超音波探傷装置において、 探触子保持体(50)は、その先端側に、車軸の内周面に密
    接する掻き出し部材(1) を備えるものであり、 掻き出し部材(1) と車軸の上記一端との間に、空気を供
    給することが可能な通気路(3) を備えたものであること
    を特徴とする中ぐり車軸の超音波探傷装置。
  3. 【請求項3】 掻き出し部材(1) は、伸縮可能なロッド
    (2) を介して探触子保持体(50)に設けられ、掻き出し部
    材(1) と探触子保持体(50)との間に、媒質の収容部を形
    成するものであり、 上記の通気路(3) は、掻き出し部材の先端面から、掻き
    出し部材(1) 及びロッド(2) 夫々の内部を経て、車軸内
    部について、掻き出し部材(1) の後方側と前方側との通
    気を確保するものであることを特徴とする請求項2記載
    の中ぐり車軸の超音波探傷装置。
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