JP2002005365A - 多流路形ロータリジョイント - Google Patents

多流路形ロータリジョイント

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JP2002005365A JP2000183839A JP2000183839A JP2002005365A JP 2002005365 A JP2002005365 A JP 2002005365A JP 2000183839 A JP2000183839 A JP 2000183839A JP 2000183839 A JP2000183839 A JP 2000183839A JP 2002005365 A JP2002005365 A JP 2002005365A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 狭いスペースにも良好に設置することがで
き、他の流体の混在を避ける必要のある流体をも良好に
流動させ得る実用的な多流路形ロータリジョイントを提
供する。 【解決手段】 第1ジョイント構成部材1と第2ジョイ
ント構成材2とを相対回転自在に連結する。両ジョイン
ト構成部材1,2の相対回転軸線方向における対向端面
部間に、相対回転軸線を中心として同心状に並列するメ
カニカルシール4a,4b,4c,4dにより区画形成
されるシール領域5b,5c,5d,5eを設ける。両
ジョイント構成部材1,2に、ドレン領域として使用す
るシール領域5cを除く各シール領域5b,5d,5e
を各別に通過する複数の流路3b,3cを設けると共
に、最小径のメカニカルシール4aの内周側領域5aを
通過する電線挿通路55を設ける。一方のジョイント構
成部材1に、ドレン領域5cに開口するドレン路51を
設ける。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、CMP装置(CM
P(Chemical MechanicalPoli
shing)法による半導体ウエハの表面研摩処理装
置)等における相対回転部材間で複数の異種流体又は同
種流体を混在させることなく各別のルートで流動させる
ための多流路形ロータリジョイントに関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】例えば、CMP装置による半導体ウエハ
の表面研摩処理にあっては、ターンテーブルとトップリ
ングとを、その間に半導体ウエハを挟圧させた状態で、
別個独立して回転させるが、かかる場合に、回転側部材
(トップリング又はターンテーブル)とこれを支持する
固定側部材(CMP装置本体)との間で、ウエハ研磨
液,ウエハ加圧用空気,ウエハ洗浄水(純水),エアー
ブロ−用空気等の供給や半導体ウエハ,定盤等の真空吸
着又は研磨残渣液の吸引排出等を行うことがある。そこ
で、CMP装置にあっては、一般に、かかる回転側部材
と固定側部材との間に複数の流路を有するロータリジョ
イントを設けて、相対回転する両部材間において上記し
た複数の異種流体又は同種流体を各別のルート(流路)
で流動させるようにしているのが普通である。
【0003】而して、このような相対回転部材間に設け
られる多流路形ロータリジョイントとしては、従来か
ら、固定側部材に取り付けられる第1ジョイント構成部
材と回転側部材に取り付けられる第2ジョイント構成部
材とを相対回転自在に連結し、両ジョイント構成部材の
対向周面部間に、相対回転軸線方向に並列する複数のメ
カニカルシールを設けると共に、両ジョイント構成部材
に、隣接するメカニカルシール間に形成されるシール領
域を貫通する複数の流路を設けたもの(以下「従来ジョ
イント」という)が、知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、メカニカル
シールは、両ジョイント構成部材の一方に固定された固
定密封環と他方に軸線方向移動自在に保持された可動密
封環とがコイルスプリングにより押圧接触された状態で
相対回転するように構成されたものであるから、両密封
環の設置スペースに加えて可動密封環の移動スペース及
びコイルスプリングの設置スペースが必要となり、軸線
方向(両ジョイント構成部材の相対回転軸線方向)にお
いて大きな設置スペースを必要とするものである。
【0005】したがって、複数のメカニカルシールを軸
線方向に並列させる構成をなす従来ジョイントでは軸線
方向寸法が長大となり、この軸線方向寸法は流路数が多
くなるに従い増大することになる。
【0006】また、メカニカルシールによるシール機能
が良好に発揮されるためには、固定密封環と可動密封環
とが適正に接触する必要があり、両ジョイント構成部材
間における振動や軸触れの発生を確実に防止しておく必
要がある。したがって、両ジョイント構成部材を相対回
転自在に連結するベアリングを、少なくとも、メカニカ
ルシール群の両側に設けておくことが必要となり、ベア
リング設置スペースを確保するためにロータリジョイン
トの軸線方向寸法は更に長大化する。勿論、メカニカル
シール数が多くなれば、ベアリングをメカニカルシール
群の両側に配置しておくだけでは軸触れ等を確実に防止
することができず、メカニカルシール群の中間部分にも
ベアリングを配置する必要が生じることになる。
【0007】一方、CMP装置等にあっては、ロータリ
ジョイントが配置される相対回転部材間のスペースは、
相対回転部材の一方(トップリング等の回転側部材)を
他方(CMP装置本体等の固定側部材)に回転自在に支
持させておく構造上、両部材の相対回転軸線方向に直交
する方向(径方向)に大きくすることはできても、相対
回転軸線方向には一定以上に大きくすることができない
ことが多い。
【0008】したがって、従来ジョイントでは、このよ
うな相対回転軸線方向のスペースに制限がある機器であ
って多くの流体ルートを必要とするCMP装置等には使
用することができない。また、かかるスペースに制限が
ない機器においても、多くの流体ルートを必要とする場
合には、機器全体が必要以上に大型化する。
【0009】また、従来ジョイントでは、1つのメカニ
カルシールを2つの流路間をシールする手段として兼用
させることにより、軸線方向寸法の短尺化を図ることが
できるが、このようにすると、流路内の圧力変動等によ
り一方の流路から他方の流路へと流体が漏れることがあ
る。かかる場合、漏れが僅かであっても、他方の流路を
流れる流体がウエハ処理用の純水等であるときは、一方
の流路を流れる流体の混入により、ウエハに悪影響を及
ぼす虞れがある。したがって、従来ジョイントでは、こ
のような他流路からの流体混入を避ける必要がある流体
を扱う場合には、軸線方向寸法の短尺化を有効に図る術
はないし、仮にメカニカルシールを上記した如く兼用し
たとしても、短尺化できる範囲は僅かである。
【0010】本発明は、このような点に鑑みてなされた
もので、1つの流路を設ける場合と同等の軸線方向寸法
で流路数に可及的に多く設けることができ、狭いスペー
スにも良好に設置することができ、他の流体の混在を避
ける必要のある流体をも良好に流動させ得る実用的な多
流路形ロータリジョイントを提供することを目的とする
ものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記の目的を
達成すべく、第1ジョイント構成部材と第2ジョイント
構成材とを相対回転自在に連結し、両ジョイント構成部
材の相対回転軸線方向における対向端面部間に、相対回
転軸線を中心として同心状に並列する3つ以上のメカニ
カルシールにより区画形成される3つ以上のシール領域
を設け、少なくとも一つのシール領域をドレン領域とし
て、これを除く各シール領域を各別に通過する複数の流
路を両ジョイント構成部材に設けると共に、一方のジョ
イント構成部材に、ドレン領域に開口するドレン路を設
けたことを特徴とする多流路形ロータリジョイントを提
案する。なお、上記したシール領域(ドレン領域として
使用するものを含む)には、径方向に隣接するメカニカ
ルシール間の環状領域で形成されるものの他、最小径の
メカニカルシールの内周側領域で形成されるものを含め
ることができる。
【0012】かかる多流路形ロータリジョイントにあっ
て、相対回転部材間で電気的な接続を必要とする機器に
使用する場合には、両ジョイント構成部材に、最小径の
メカニカルシールの内周側領域を通過する電線挿通路を
設けておくことが好ましい。当該内周側領域は、電線挿
通路の一部として使用しない場合においては、流路の一
部を構成するシール領域として、又はドレン領域として
使用することができる。また、軸線方向寸法の更なる短
尺化や両ジョイント構成部材を連結するベアリングのメ
ンテナンスの容易化を図ると共に、ベアリング潤滑オイ
ルの流路への混入を確実に防止するためには、両ジョイ
ント構成部材の対向周面部間に、これらを相対回転自在
に連結する1つのベアリングを介装すると共にこのベア
リングと最大径のメカニカルシールの外周側との間に配
したオイルシールを介装し、当該メカニカルシールとオ
イルシールとの間の環状領域をドレン領域として、一方
のジョイント構成部材に当該ドレン領域に開口するドレ
ン路を設けておくことが好ましい。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図1
〜図4に基づいて具体的に説明する。
【0014】この実施の形態における本発明に係る多流
路形ロータリジョイントは、図1及び図2に示す如く、
CMP装置の相対回転部材間、つまりターンテーブル等
の回転側部材Aとこれを回転自在に支持するCMP装置
本体等の固定側部材Bとの間に配置されるものであり、
固定側部材Bに取り付けられる第1ジョイント構成部材
1と、回転側部材Aに取り付けられる第2ジョイント構
成部材2と、両ジョイント構成部材1,2に設けられた
複数の流路3…と、各流路3の相対回転部分をシールす
る複数のメカニカルシール4…と、第1ジョイント構成
部材1に設けられたドレン路51,52と、を具備す
る。
【0015】第1ジョイント構成部材1は、図1に示す
如く、円筒状の周壁6と厚肉円板状の底壁7と薄肉円板
状の取付板8とからなり、底壁7及びその下位の取付板
8の外周側部分に挿通させた適当数のボルト9…(1つ
のみ図示)を周壁6の下端部に螺着させることにより有
底円筒構造体に組み立てられている。
【0016】第2ジョイント構成部材2は、図2に示す
如く、円柱状のシャフト10と円筒状のスリーブ11と
からなり、シャフト10にスリーブ11を嵌合させると
共に適当数のボルト12a…(1つのみ図示)により取
付けることにより、シャフト10の下端部をスリーブ1
1から下方に若干突出させた状態で一体構造物に組み立
てられている。なお、スリーブ11の上端部には、回転
側部材Aに取り付けるための環状フランジ11aが一体
形成されている。
【0017】両ジョイント構成部材1,2は、図1及び
図2に示す如く、第1ジョイント構成部材1の底壁7の
上端面部7aと第2ジョイント構成部材2のシャフト1
0の下端面部10aとを近接対向させた状態で、第1ジ
ョイント構成部材1の周壁6と第2ジョイント構成部材
2のスリーブ11との対向周面部間に介装した1つのベ
アリング12により相対回転自在に連結されている。さ
らに、周壁6とスリーブ11との対向周面部間には、ベ
アリング12の近傍下位に配して、オイルシール13が
介装されている。このオイルシール13は、周壁6内周
部に嵌合保持されてスリーブ11の外周部に押圧接触さ
れたゴム等の弾性材製のシールリング13aと、シール
リング13aに埋設された補強金属材13bと、シール
リング内周部のスリーブ11への接触力を確保するため
のガータスプリング13cとからなる。
【0018】各ジョイント構成部材1,2の中心部には
貫通孔53,54が形成されている。両貫通孔53,5
4は、両ジョイント構成部材1,2の軸線(相対回転軸
線)上を貫通する電線挿通孔55として機能する。すな
わち、この電線挿通孔55は、回転側部材Aと固定側部
材Bとの間での送電や各種の電気的制御を行うための電
線(図示せず)を挿通させるためのであり、必要に応じ
て、両貫通孔53,54間にはロータリコネクタが配設
される。
【0019】メカニカルシール4…は、図1及び図2に
示す如く、ジョイント構成部材1,2の軸線(ジョイン
ト構成部材1,2の相対回転軸線)を中心とする同心状
をなして、両ジョイント構成部材1,2の軸線方向にお
ける対向端面部間つまり底壁7の上端面部7aとシャフ
ト10の下端面部10aとの間に並列配置されていて、
両ジョイント構成部材1,2の対向端面部7a,10a
間を同心状をなす複数のシール領域5…に区画してい
る。この例では、両ジョイント構成部材1,2の対向端
面部7a,10a間に、図1及び図2に示す如く、径の
異なる5つのメカニカルシール4…を同心状に配置し
て、最小径のメカニカルシール4の内周側領域及び径方
向に隣接するメカニカルシール4,4間の環状領域で形
成される5つのシール領域5…及び最大径のメカニカル
シール4とオイルシール13との間の環状領域で形成さ
れるドレン領域5fが設けられている。なお、以下の説
明において、各メカニカルシール4を他のメカニカルシ
ール4…と区別する必要があるときは、最小径のものか
ら順に「第1メカニカルシール4a」「第2メカニカル
シール4b」「第3メカニカルシール4c」「第4メカ
ニカルシール4d」及び「第5メカニカルシール4e」
ということとする。また、各シール領域5を他のシール
領域5と区別する必要があるときは、第1メカニカルシ
ール4aの内周側領域で形成されるものから順に「第1
シール領域5a」「第2シール領域5b」「第3シール
領域5c」「第4シール領域5d」及び「第5シール領
域5e」ということとする。
【0020】而して、両ジョイント構成部材1,2に
は、図1及び図2に示す如く、第1及び第3シール領域
5a,5cを除くシール領域5…を各別に通過する3つ
の流路3…(以下、「第1流路3a」「第2流路3b」
及び「第3流路3c」という)が形成されている。すな
わち、第1流路3aは、第1及び第2メカニカルシール
4a,4b間の第2シール領域5bと第1ジョイント構
成部材1の底壁7及び第2ジョイント構成部材2のシャ
フト10に形成されて第2シール領域5bに開口する貫
通孔31a,32aとで一連に構成されたものであり、
第2流路3bは、第3及び第4メカニカルシール4c,
4d間の第4シール領域5dと底壁7及びシャフト10
に形成されて第4シール領域5dに開口する貫通孔31
b,32bとで一連に構成されたものであり、また第3
流路3cは、第4及び第5メカニカルシール4d,4e
間の第5シール領域5eと底壁7及びシャフト10に形
成されて第5シール領域5eに開口する貫通孔31c,
32cとで一連に構成されたものである。この例では、
第1流路3aが、他の流体との混合や金属汚染を回避す
べき流体、例えば半導体ウエハの処理(表面研磨等)に
使用される純水,研磨液等の処理流体を流動させる通路
として使用されている。また、第2及び第3流路3b,
3cは、このような条件(金属汚染等の回避)が格別要
求されない加圧空気,上水等の非処理流体(又は相互混
入による影響のない同種流体)を流動させる通路として
使用されている。なお、貫通孔31a,31b,31c
は、後述するスプリング嵌挿用の凹部25…に連通しな
いように配置されている。
【0021】最小径の第1メカニカルシール4aの内周
領域で形成される第1シール領域5aは、電線挿通孔5
5が貫通しており、貫通孔53,54と共に電線挿通孔
55を構成する。
【0022】第2及び第3メカニカルシール4b,4c
間の環状領域で形成される第3シール領域5cはドレン
領域として使用され、第1ジョイント構成部材1の底壁
7には、図2に示す如く、ドレン領域5cに開口するド
レン路51が形成されている。また、底壁7には、図2
に示す如く、オイルシール13下のドレン領域5fに開
口するドレン路52が形成されている。
【0023】各メカニカルシール4は、図1〜図4に示
す如く、第1ジョイント構成部材1の底壁7の上端面部
7aに軸線方向(上下方向)に移動可能に保持された可
動密封環14と、これに直対向して第2ジョイント構成
部材2のシャフト10の下端面部10aに固定された固
定密封環15と、可動密封環14を固定密封環15へと
押圧接触されるべく附勢する複数のコイルスプリング1
6…(1つのみ図示)と、を具備するものであり、両密
封環14,15の対向端面たる密封端面14a,15a
の相対回転摺接作用によりシール機能を発揮する端面接
触形のものに構成されている。
【0024】各可動密封環14は、図1〜図4に示す如
く、第1メカニカルシール4aにおいては底壁7の上端
面部7aの中心部に形成した円形凹部17に嵌合保持さ
れており、これを除く各メカニカルシール4においては
底壁7の上端面部7aに形成した環状溝18に嵌合保持
されている。なお、第2及び第3メカニカルシール4
b,4cの可動密封環14,14は共通の環状溝18に
近接状態で嵌合保持されており、第2メカニカルシール
4bの可動密封環14は当該共通の環状溝18の内径側
壁面に外嵌保持されると共に第3メカニカルシール4c
の可動密封環14は当該共通の環状溝18の外径側壁面
に内嵌保持されている。
【0025】各メカニカルシール4の可動密封環14
は、その上下方向移動を許容する状態で、Oリング19
により底壁7との間を二次されると共にドライブピン2
0により底壁7との間の相対回転を阻止されている。す
なわち、Oリング19は、図1〜図4に示す如く、第2
メカニカルシール4bにおいては可動密封環14の内周
面と環状溝18の内径側壁面との間を二次シールしてお
り、これ以外の各メカニカルシール4においては可動密
封環14の外周面と円形凹部17の側壁面又は環状溝1
8の外径側壁面との間を二次シールしている。また、ド
ライブピン20は、図1〜図4に示す如く、円形凹部1
7又は環状溝18の底壁面に突設されていて、第2メカ
ニカルシール4bにおいては可動密封環14の外周部に
形成した凹溝14bに係合されており、これ以外の各メ
カニカルシール4においては可動密封環14の内周部に
形成した凹溝14cに係合されている。
【0026】各固定密封環15は、図1〜図4に示す如
く、第1メカニカルシール4aにおいてはシャフト10
の下端面部10aの中心に形成した円形凹部21に嵌合
固定されており、第5メカニカルシール4eにおいては
シャフト10の下端面部10aの外周面に嵌合固定され
ており、またこれら除く各メカニカルシール4において
はシャフト10の下端面部10aに形成した環状溝22
に嵌合固定されている。各固定密封環15とシャフト1
0との嵌合部分には、両者10,15間を二次シールす
るOリング23が介装されている。また、各固定密封環
15は、その上端部に形成した凹部にスリーブ11の下
端面又は円形凹部21若しくは環状溝22の底壁面に突
設したドライブピン24を係合させることにより、シャ
フト10に対する相対回転を阻止されている。
【0027】各メカニカルシール4におけるコイルスプ
リング16…は、円形凹部17又は環状溝18の底壁面
に周方向に所定ピッチで穿設された複数の凹部25…
(1つのみ図示)に嵌挿されていて、可動密封環14を
上方へと押圧附勢して固定密封環15に圧接させる。
【0028】また、この例では、各固定密封環15の下
端面たる密封端面15aは、ジョイント構成部材1,2
の軸線(相対回転軸線)に直交する平滑な円環状面に構
成されており、各可動密封環14の上端面たる密封端面
14aは微小幅Wの円環状をなすナイフエッジ形状とさ
れていて、対向する固定密封環15の密封端面15aに
ほぼ線接触しうるようになっている(図4参照)。
【0029】ところで、流路3…、例えば第1流路3a
を通過する処理液が固形成分や凝固成分を含有する研磨
液等のスラリ流体である場合、密封端面14a,15a
間にスラリ流体が侵入して、これに含まれている固形成
分や凝固成分が付着,堆積し、密封端面14a,15a
の適正な接触状態が損なわれる虞れがあるが、上述した
如く、一方の密封端面14aを微小幅Wのナイフエッジ
形状としておくことによって、このような固形成分等の
付着,堆積を効果的に防止することができる。すなわ
ち、密封端面14a,15a間に侵入,付着した固形成
分等をナイフエッジ状の密封端面14aによって削り取
る如くして排除する(この機能を、以下「付着物排除機
能」という)のである。また、密封端面幅Wを微小とし
て、密封端面14a,15aの接触面積を小さくしてお
くことにより、ドライ条件下(例えば、研磨処理後に第
1流路3aに残存する処理液を真空吸引により排出させ
るような場合や第2又は第3流路3b,3cに加圧空気
等の気体を流動させる場合)においても密封端面14
a,15aの接触による摩耗や発熱を効果的に抑制する
(この機能を、以下「摩耗抑制機能」という)ことがで
きる。このような付着物排除機能及び摩耗抑制機能を効
果的に発揮させるためには、密封端面幅Wを1〜5mm
に設定しておくことが好ましい。W>5mmであると、
密封端面14aによる固形分排除機能が充分に発揮され
ないし、密封端面14a,15aの接触による摩耗を効
果的に防止できない。また、W<1mmであると、密封
端面14aの強度上の問題の他、密封端面14aによる
削り取り力が過大となって、密封端面14a,15a間
に形成される潤滑膜までも破壊され、密封端面14a,
15aが焼き付く虞れがあると共に、密封端面14a,
15aの接触圧が必要以上に高くなるため密封端面14
a,15aの接触による摩耗が効果的に抑制されず、摩
耗粉の発生が多くなる。したがって、密封端面幅Wは、
シール条件(密封すべき流体の性状,圧力等)に応じ
て、上記した範囲(1mm≦W≦5mm)で適当に設定
しておくことが好ましい。
【0030】また、各メカニカルシール4を、密封端面
14a,15aの相対回転摺接作用により、その相対回
転摺接部分の内周側領域と外周側領域とをシールする端
面接触形のものに構成してあるが、この例では、更に図
4に例示する如く、バランス比κが0≦κ≦0.5とな
るバランスシールに構成して、正圧,負圧の切り換えや
上記内外周領域間の圧力バランスの逆転(両領域の圧力
が高低逆転する場合)等にも十分に対応できるように工
夫してある。
【0031】図4に示す第1メカニカルシール4aを例
として説明すると、各メカニカルシール4におけるバラ
ンス比κは、設計上、密封端面14a,15aの相対回
転摺接部分の内外径D1,D2(密封端面14aの内外径
であり、(D2−D1)/2=Wである)と可動密封環1
4の二次シール部分の径(Oリング19に接触する可動
密封環部分の外径であり、以下「バランス径」という)
0とで決定され、κ=((D1 2 −(D0 2 )/
((D2 2 −(D1 2 )とされる。すなわち、図4
に示す如く、密封端面14a,15aの相対回転摺接部
分の内周側領域(第1シール領域)5a及び外周側領域
(第2シール領域)5bにおける圧力をPa,Pb(P
a<Pb)とし、コイルスプリング16…による附勢力
(スプリング圧)をFとすると、当該相対回転摺接部分
に作用する見掛け上の面圧(推力)Pは、P=(π/
4)((D1 2 −(D0 2 )(Pb−Pa)/(π
/4)((D2 2 −(D1 2 )+(π/4)((D
2 2 −(D1 2 )F/(π/4)((D2 2
(D1 2 )=(((D1 2 −(D0 2 )/((D
2 2 −(D1 2 ))(Pb−Pa)+Fで与えられ
ることになり、この式における第1項の係数((D1
2 −(D0 2 )/((D2 2 −(D1 2 )がバラ
ンス比κである。このように、バランス比κは、密封端
面14aの内外径D1 ,D2 及びバランス径D0 によっ
て必然的に決定されるものであり、バランス比κを0≦
κ≦0.5に設定しておくことにより、当該メカニカル
シール4aによって区画される両領域5a,5b間の差
圧(Pb−Pa)が大小変動,正負変動した場合(例え
ば、圧力Paが大気圧力で一定となる第1シール領域5
aとの関係において、第2シール領域5bが正圧モード
(処理液の流動時)と負圧モード(処理液の真空吸引排
出時)とに切り換えられた場合)にも上記推力Pが大き
く変化せず、密封端面14a,15aの接触圧を適正に
維持することができ、両領域5a,5b間のシールを良
好に行うことができる。この例では、ナイフエッジ形状
をなす密封端面14aの内径D1若しくは外径D2又は平
均径((D1+D2)/2)とバランス径D0とを一致又
は略一致させることによりκ=0又はκ≒0に設定して
ある。
【0032】ところで、当該ロータリジョイントの各部
材の構成材は、当該部材に要求される機能,機械的強度
に応じて選択される他、各流路3を流動する流体の性
状,使用目的に応じて選択しておくことが必要であり、
一般に、当該流体に対して不活性なものを選択しておく
ことが好ましい。流体に対して不活性な構成材は、当該
流体の性状や使用条件(金属汚染の回避等)との関係に
おいて決定されるものであり、例えば、当該流体が半導
体ウエハの処理に使用する研磨液,洗浄液等のように金
属汚染を回避すべきものである場合には、流体との接触
により金属成分を溶出したり金属粉を発生したりするこ
とがないセラミックスやプラスチックが該当する。ま
た、当該流体が砥粒等の固形成分を含有するスラリ流体
である場合には、含有固形成分との接触により発塵しな
いセラミックス,プラスチックであり、高温流体である
場合には耐熱性を有するセラミックス,プラスチックで
あり、腐食性流体である場合には、耐食性ないし耐薬品
性を有するセラミックス,プラスチックが該当する。
【0033】したがって、各メカニカルシール4におけ
る密封環14,15については、一般に、密封環14,
15の摺動接触による摩耗粉等を発生し難い炭化珪素,
酸化アルミニウム等のセラミックスで構成しておくこと
が好ましい。勿論、使用条件によっては、後述のエンジ
ニアリングプラスチックで構成しておくことも可能であ
る。この例では、各メカニカルシール4の密封環14,
15は、すべて炭化珪素で構成されている。
【0034】また、密封環14,15以外の流体接触部
分(当該流体侵入して接触する虞れのある部分を含む)
については、当該流体の性状,使用目的に応じて、砥粒
等の固形成分との接触によりパーティクルを発生させる
ことがなく且つ加工による寸法安定性,耐熱性等に優れ
たPEEK,PES,PC等のエンジニアリングプラス
チックや耐食性,耐薬品性に優れたPTFE,PFA,
FEP,PVDF等の弗素樹脂で構成しておくことが好
ましい。そして、流路3における流体接触部分を、選定
された材料(以下「選定材料」という)で構成しておく態
様としては、流路3が形成される部材全体又は部分を選
定材料で構成しておく場合と、流体接触部分のみ(例え
ば、流路3の内壁面等)をコーティング,パイプ圧入等
の手段による選定材料層で構成しておく場合とに大別さ
れる。この例では、流路3…が形成される底壁7及びシ
ャフト10を、金属汚染等を生じないPP(ポリプロピ
レン樹脂)等の合成樹脂で構成してある。そして、底壁
7及びシャフト10がかかる合成樹脂で構成されること
によるジョイント構成部材1,2の機械的強度不足を、
周壁6,取付板8及びスリーブ11を金属製のものとす
ることによって防止している。この例では、特に、ジョ
イント全体の軽量化を図るために周壁6及び取付板8を
アルミニウム合金製とし、回転体であるシャフト10の
強度維持及び回転側部材Aへの取付強度等を図るために
スリーブ11は鋼製(SUS316等)としてある。
【0035】以上のように構成された多流路形ロータリ
ジョイントにあっては、複数の流体を独立した流路3…
により良好に流動させることができる。特に、第1流路
3aにあっては、他の流路3b,3cからの流体侵入が
確実に防止されることから、純水等の処理液を他流体の
混入による汚染を生じることなく良好に流動させること
ができ、当該処理液によるウエハ処理を良好に行うこと
ができる。すなわち、第1流路3aのシール領域5bと
これに隣合う第2流路3bのシール領域5dとの間には
ドレン領域(第3シール領域)5cが介在しているか
ら、シール領域5dからシール領域5b側への流体漏れ
が生じた場合にも、その漏洩流体はドレン領域5cに開
口するドレン路51から排出されて、第2シール領域5
bに侵入することがない。また、第1流路3aのシール
領域5bには、ドレン領域5cの他、第1シール領域5
aが隣接するが、この第1シール領域5aは電線挿通路
55の一部を構成する大気領域であるから、第1メカニ
カルシール4aが上記したバランスシールに構成されて
いることとも相俟って、第1流路3aを流動する処理液
が第1シール領域5a側から汚染されるようなことはな
い。
【0036】また、第2及び第3流路3b,3cにあっ
ては、相互に混入することがあっても影響のない非処理
流体(又は同種流体)を流動させることから、隣接する
シール領域5d,5e間において流体漏れが生じたとし
ても問題はない。また、オイルシール13下のドレン領
域5fにベアリング12の潤滑オイルが漏洩した場合、
これがドレン領域5fに隣接する第3流路3cのシール
領域5eに侵入する虞れがあるが、かかる漏洩オイルは
ドレン領域5fに開口するドレン路52から排出され
て、シール領域5eに侵入することがない。このような
シール領域5eとこれに隣接する領域5d,5fとの間
における流体漏れは、これらの領域間をシールするメカ
ニカルシール4d,4eをバランスシールとしておくこ
とにより、より確実に防止される。
【0037】このように、多流路形ロータリジョイント
にあっては、ジョイント構成部材1,2間に流路3…を
構成するためのシール領域5b,5d,5e及び流路3
…への流体混入を避けるためのドレン領域5c,5f並
びに電線挿通路55を構成するための領域5aを設け、
これらの領域5a,5b,5c,5d,5e,5f間を
シールするために多数のメカニカルシール4…を設けた
ものであるが、メカニカルシール4…をジョイントの径
方向に同心状に配置したことから、軸線方向寸法を極め
て小さくすることができる。すなわち、軸線方向寸法
を、従来ジョイントにおいて1つのメカニカルシールを
設けた場合と同等に設定することができ、これはメカニ
カルシールの設置数に拘わらず一定である。したがっ
て、多くの流体ルートを必要とするCMP装置等であっ
て、相対回転部材(回転側部材A及び固定側部材B)間
の回転軸線方向におけるロータリジョイント設置スペー
スが小さな機器にも、好適に使用することができる。し
かも、軸線方向寸法が小さいために、上記した如く、両
ジョイント構成部材1,2を1つのベアリング12によ
り軸触れ等を生じない適正状態に確実に連結することが
できるから、ベアリング12による軸線方向寸法の増大
を招くことがなく、ベアリング12を含めたジョイント
全体のメンテナンスを容易に行うことができる。
【0038】なお、本発明は上記した実施の形態に限定
されるものではなく、本発明の基本原理を逸脱しない範
囲において、適宜に改良,変更することができる。例え
ば、流路を構成するためのシール領域及びシール領域間
の流体侵入を防止するためのドレン領域の数,配置は、
流動させようとする流体の性状,使用目的等に応じて任
意に設定することができる。
【0039】
【発明の効果】以上の説明から理解されるように、本発
明の多流路形ロータリジョイントにあっては、軸線方向
寸法を長大化させることなく、複数の異種流体又は同種
流体を混在させることなく各別の流路により相対回転部
材間において良好に流動させることができる。しかも、
隣合う流路のシール領域間にドレン領域を設けておくこ
とにより、ウエハ処理用の純水等のように他の流体との
接触,混合を避ける必要のある流体についても、これを
良好に流動させることができる。したがって、本発明に
よれば、相対回転部材間の回転軸線方向におけるロータ
リジョイント設置スペースが小さく且つ多数の流体ルー
トを必要とするCMP装置等においても好適に使用する
ことができ、極めて機能性,実用性に富むロータリジョ
イントを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る多流路形ロータリジョイントを示
す断面図である。
【図2】図1と異なる位置で切断した断面図である。
【図3】図1の要部の拡大図である。
【図4】図2の要部の拡大詳細図である。
【符号の説明】
1…第1ジョイント構成部材、2…第2ジョイント構成
部材、3…流路、3a…第1流路、3b…第2流路、3
c…第3流路、4…メカニカルシール、4a…第1メカ
ニカルシール、4b…第2メカニカルシール、4c…第
3メカニカルシール、4d…第4メカニカルシール、4
e…第5メカニカルシール、5…シール領域、5a…第
1シール領域(電線挿通路)、5b…第2シール領域、
5c…第3シール領域(ドレン領域)、5d…第4シー
ル領域、5e…第5シール領域、5f…ドレン領域、7
a…底壁の上端面部(両ジョイント構成部材の対向端面
部)、10a…シャフトの下端面部(両ジョイント構成
部材の対向端面部)。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 3C058 AA12 AB04 AC04 AC05 BB04 CB06 CB09 DA12 DA17 3H104 JA04 JB01 JC01 JC08 JD09 LF01 MA03 MA10

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 第1ジョイント構成部材と第2ジョイン
    ト構成材とを相対回転自在に連結し、 両ジョイント構成部材の相対回転軸線方向における対向
    端面部間に、相対回転軸線を中心として同心状に並列す
    る3つ以上のメカニカルシールにより区画形成される3
    つ以上のシール領域を設け、 少なくとも一つのシール領域をドレン領域として、これ
    を除く各シール領域を各別に通過する複数の流路を両ジ
    ョイント構成部材に設けると共に、 一方のジョイント構成部材に、ドレン領域に開口するド
    レン路を設けたことを特徴とする多流路形ロータリジョ
    イント。
  2. 【請求項2】 両ジョイント構成部材に、最小径のメカ
    ニカルシールの内周側領域を通過する電線挿通路を設け
    たことを特徴とする、請求項1に記載する多流路形ロー
    タリジョイント。
  3. 【請求項3】 両ジョイント構成部材の対向周面部間
    に、これらを相対回転自在に連結する1つのベアリング
    を介装すると共にこのベアリングと最大径のメカニカル
    シールの外周側との間に配したオイルシールを介装し、
    当該メカニカルシールとオイルシールとの間の環状領域
    をドレン領域として、一方のジョイント構成部材に当該
    ドレン領域に開口するドレン路を設けたことを特徴とす
    る、請求項1又は請求項2に記載する多流路形ロータリ
    ジョイント。
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