JP2001515873A - T細胞活性化の調節におけるまたはそれに関する改良 - Google Patents

T細胞活性化の調節におけるまたはそれに関する改良

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Abstract

(57)【要約】 細胞表面に存在する異なる密度の白血球刺激分子に対し、応答性の異なる白血球を生産する方法を開示する。該白血球は、細胞上の白血球刺激分子と白血球表面に存在する白血球活性化分子との間の相互作用によって活性化されるものである。この方法は、外因性作用因子に対し濃度感受性である態様において白血球活性化分子の発現を誘導する核酸配列により白血球を形質転換すること、および該白血球がさらされる外因性因子の濃度を変化させることを含む。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、とりわけ、標的抗原に対する白血球の感受性を変化させる方法に関
する。
【0002】
【発明の背景】
抗体分子とは異なって、T細胞は、微小血管の壁を通って活発にかつ効率的に
移動することができ、それらの細胞溶解作用を発揮する前に固体腫瘍の核に入り
込むことができる。自己由来の腫瘍応答性T細胞のエクスビボ(ex vivo)増殖 および再注入が、癌治療に対する実験的アプローチとして研究されている。しか
しながら、末梢血から循環するT細胞は腫瘍抗原に対する特異性に欠け(1)、
十分な数の腫瘍浸潤リンパ球を得ることは非実用的または不可能であることが多
い(2)。これらの問題を克服するために、抗体の特異性をT細胞の効率的な移
動特性およびエフェクター作用と組合せることができる新たなアプローチが開発
されている。いくつかの報告によると、T細胞を本来の抗原へと向かわせるため
の手段として一本鎖抗体ドメイン(scFv)をTCR/CD3/ζ複合体の種
々のシグナリング部分に結合させるよう、キメラ受容体をコードする遺伝子で培
養T細胞を形質転換できる可能性が示されている(3−6)。しかしながら、こ
の「T体」アプローチが長期間臨床的に成功するかどうかは、明らかに、多くの
問題に対する解決策を見出すことにかかっている。
【0003】 おそらく最も重要な課題は、真に腫瘍特異的な「癌抗原」がほとんどないため
(7)、腫瘍応答性T体による治療の成功は、低レベルの標的抗原を発現する正
常な組織に顕著な付帯的損傷をもたらし得るということである。したがって、T
細胞が、一時的または永久的にそれらの標的抗原に対してアネルギー性となり得
るよう、あるいは標的細胞膜における種々の表面密度の抗原に対して差別的に感
受性となり得るよう、戦略を開発するのが望ましい。
【0004】 真核細胞において導入遺伝子の発現を調節するために種々の戦略が開発されて
いる(8)が、テトラサイクリンにより調節可能な系(TRS)は、哺乳類の細
胞においてほとんどまたは全く毒性を生じさせないテトラサイクリン濃度に応じ
て導入遺伝子の発現を実質的に調節することにより、これらの系の多くに関する
問題を回避している(9、10)。
【0005】 MillerおよびWhelan(1997 Hum. Gene Therapy 8,803-815)は、最近、遺伝子
治療に関する調節可能なベクターの開発に向けての進展を論評している。これら
のベクターの中にも、TRSを用いるものが記載されている。
【0006】 もともとGossenおよびBujard(1992 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89,5547-55
51)によって記述されたTRSでは、テトラサイクリンリプレッサータンパク質
をヘルペス・シンプレックス・ウイルス(HSV)VP16−活性化ドメインに
融合させてキメラのテトラサイクリン抑制性トランス活性化(tTA)ポリペプ
チドを生成させ、これがtetオペレーター配列からなるDNAに結合してオペ
レーター下流のコード配列の転写活性をもたらす。テトラサイクリンまたはその
類似体(ドキシサイクリン、アンヒドロテトラサイクリン、ミノサイクリンおよ
びオキシテトラサイクリンなど)の存在はこの転写活性を阻害する。これらの化
合物が、tTAポリペプチドに結合してそのコンホメーションを変化させ、該ポ
リペプチドがtetオペレーター配列に結合するのを妨げるからである。
【0007】 元のTRSの変異体も開示されており(WO96/01313)、そこにおい
てtetリプレッサータンパク質の変異体形は、テトラサイクリンまたはその類
似体の存在下でDNAに結合する一方、不在下では結合しない。よって、これら
の系では、tetオペレーターに結合した遺伝子の発現はテトラサイクリンまた
はその類似体の存在下で積極的に調節される。
【0008】 しかしながら、TRSの使用に関していくつかの難題および/または不確実な
点がある。たとえば、Cooke他(1997 J. Gen. Virol. 78,381-392)は、TRS が、ヒトのT細胞系Jurkat E6−1におけるnef遺伝子発現の調節に使用で きないことを見出した。さらに、HSV VP16ドメインは有害な「押え込み
」作用を伴うため、従来、高レベルの調節を得ることができなかった。最近の論
評(MillerおよびWhelan、1997 Hum. Gene Ther. 8,803-815)によると、TRS
は「すべての細胞系に適用可能とは言えない」(Ackland-BerglundおよびLeib 1
995 Bio Techniques 18,196-200、ならびにHowe他、 1995 J. Biol. Chem. 270,
14168-14174の研究を引用)。
【0009】
【発明の概要】
第1の局面において、本発明は、細胞表面に存在する異なる密度の白血球刺激
分子に対して反応性が異なる(差別的な)白血球を生産する方法を提供する。こ
こで、白血球は、細胞上の白血球刺激分子と白血球の表面上に存在する白血球活
性化分子との間の相互作用によって活性化されるものである。本発明によるこの
方法は、外因性作用因子に対し濃度感受性である態様において白血球活性化分子
の発現を誘導する核酸配列で白血球を形質転換すること、および白血球がさらさ
れる外因性作用因子の濃度を変化させることを含む。典型的には、外因性作用因
子は以下に説明するように「調節薬剤」であり、白血球活性化分子の発現を誘導
する核酸配列は、薬剤により調節可能なプロモーターに作動可能に結合されてい
る。
【0010】 外因性作用因子は、白血球活性化分子の発現に、好ましくは選択的、特異的な
態様で、影響を及ぼす任意の作用因子であり得る。外因性作用因子は、ヒトの患
者に薬理学的な態様で投与できるものが好ましく、たとえば、当該作用因子は、
患者に何らかの顕著な毒性作用をもたらす濃度よりも低い濃度で白血球活性化分
子の発現に適当な作用を及ぼすものである。たとえば、白血球活性化分子は、以
下に十分述べるように、調節可能な態様で(たとえばtet O配列およびte
t感受性トランスアクチベーターを用いて)発現されるのが好ましい。この具体
例において、外因性作用因子はテトラサイクインまたはその類似体とすることが
できる。
【0011】 白血球活性化分子を外因性作用因子に対し濃度感受性である態様で発現させる
便利な方法は、好適な「調節薬剤」を外因性作用因子として選択し、白血球活性
化分子をコードする配列を、薬剤により調節可能なプロモーターの制御下に配置
することである。該プロモーターの活性は、薬剤の濃度によって直接的または間
接的に制御される。「薬剤により調節可能なプロモーター」という用語は、核酸
の部分(たとえばエンハンサーまたはより好ましくはプロモーター)であって、
細胞に対して外因性の物質(「調節薬剤」)の存在に応答して核酸のコード領域
の発現を調節する部分を示すことを意図する。調節薬剤は、当該核酸が存在する
細胞に対して致命的でない濃度において、薬剤により調節可能なプロモーターの
活性の変化を引き起こすものである。調節薬剤の作用は、薬剤により調節可能な
プロモーターに対して実質的に特異的であることが好ましく、それにより、この
薬剤を患者に投与する必要がある場合、他の組織または細胞型に対し広範囲な作
用が引き起こされることがなくなる。このような特異性は、合成した調節薬剤の
使用、およびヒトまたは動物の対象に通常存在しない、薬剤により調節可能な対
応のプロモーターの使用により、非常に容易に与えられる。薬剤により調節可能
なプロモーターは、直接的に薬剤により調節可能であるか、またはより典型的に
は、間接的に薬剤により調節可能であり得る。間接的に薬剤により調節可能なプ
ロモーターを含む系の一例は、薬剤により調節可能なオペレーターがプロモータ
ーに対して調節作用を及ぼし、この作用が調節薬剤の濃度に依存するという系で
ある。
【0012】 薬剤により調節可能なプロモーターおよび対応する調節薬剤の適当な種々のも
のが知られており(たとえば、MillerおよびWhelan, Hum. Gene Ther. 8,803-81
5を参照)、それらは、グルココルチコイドステロイド類、性ホルモンステロイ ド類、リポ多糖類(LPS)およびイソプロピルチオガラクトシド(IPTG)
によって調節されるプロモーターを含む。対応の薬剤の適当な濃度は、当業者に
明らかである。一般的な指針として、細胞をステロイド類の存在下においてイン
ビトロで培養するとき、ステロイド剤の好ましい濃度は1nMから1mMである
。このステロイド剤をインビボでヒトまたは動物の対象に投与するとき、約0.
05と10.0μg/kgの間の血清濃度を達成するようにその用量を調節する
のが望ましい。細胞をIPTGの存在下で培養するとき、その用量は1μMから
100mMの範囲にあるのが好ましく、100μMから1mMの範囲にあるのが
より好ましい。細胞をLPSの存在下で培養するとき、用量は0.1nMから1
mMの範囲にあるのが好都合であり、100μMから1mMの範囲内にあるのが
より望ましい。
【0013】 本発明の方法を適用するにあたって特に有用な別の系は、テトラサイクリンに
より調節可能な系(TRS)である。これは広範囲にわたって研究されており、
その変形例もいくつか開発されており、TRSを非常に適合性の高いものにして
いる。たとえば、テトラサイクリンの不在下では、野生型細菌性tetリプレッ
サータンパク質が、細菌性テトラサイクリン耐性遺伝子の負の調節をもたらす。
テトラサイクリンはリプレッサータンパク質に結合し、それがtetオペレータ
ーDNA配列に結合するのを抑制し、よって耐性遺伝子の発現が可能となる。逆
に、tetリプレッサーの部分を含むキメラポリペプチドおよびHSV VP1
6トランス活性化ドメインは、コード配列の正の調節(転写活性)を引き起こす
。他のトランス活性化ドメインも当業者に知られており(たとえばGAL4のア
ミノ酸残基753−881、CTF/NF1のアミノ酸残基399−499、お
よびITF1またはITF2からのもの)、これらは、キメラのテトラサイクリ
ン感受性ポリペプチドを形成するのに用いられ得ると考えられる。
【0014】 野生型tetリプレッサータンパク質の一部を含む従来技術(たとえば上記に
引用したGossenおよびBujard(1992年))に記載のキメラポリペプチドに加えて
、tetリプレッサータンパク質の変異形を含む他のポリペプチドも知られてお
り(WO96/01313に開示)、これはテトラサイクリンの存在下でtet
オペレーター配列に結合する一方、テトラサイクリンの不在下では該配列に結合
しない。
【0015】 かくして、本発明の方法は、いくつかの具体例において、テトラサイクリンの
存在がテトラサイクリンオペレーター(tetO)に結合されたコード配列(す
なわち免疫原性ポリペプチドをコードする配列)の発現を阻害する役割を果たす
ものであり、他の具体例において、テトラサイクリンの存在がtotOに結合さ
れた配列の発現を促進する役割を果たすものである。
【0016】 当業者には、多くのテトラサイクリン類似体が知られており、それらが本発明
の方法においてテトラサイクリンに容易に取って代わり得るものであることがわ
かる。確かに、ある特定の類似体が実際にテトラサイクリンより好ましいことも
ある。それらが(テトラサイクリン感受性ポリペプチドに対して)より高い結合
アフィニティーを有し得るので、より低い濃度で調節作用を発揮することができ
るからである。テトラサイクリン類似体は、テトラサイクリンに構造的に関連し
、少なくとも約106-1、好ましくは109-1、またはそれより大きいKaで tetリプレッサーに結合する分子をいうものとして理解され得る。好ましい類
似体はドキシサイクリンおよびアンヒドロテトラサイクリンである。その他の類
似体は、ミノサイクリン、オキシテトラサイクリン、クロロテトラサイクリン、
エピオキシテトラサイクリンおよびシアノテトラサイクリンを含む。テトラサイ
クリンの他の類似体については、HlavkaおよびBoothe(Handbook of Experiment
al Pharmacology 78、Blackwoodら(eds.)、Springer verlag(1985年)中の「
The Tetracyclines」)により述べられている。
【0017】 tetオペレーター(tetO)配列は現在、当業者によく知られている。検
討のため、読者はProtein-Nucleic Acid Interaction中のHillenおよびWissmann
(1989年)「Topics in Molecular and Structural Biology」 SaengerおよびHe
inemann編,(Macmillan, London), Vol. 10, pp143-162)を参照されたい。典 型的に、白血球活性化分子をコードする核酸配列は、複数のtetO配列(一般
的に5から10のこのようなtetO配列が直接的な繰返しで用いられる)の下
流に配置される。
【0018】 好都合にtetO配列は、「最小限の」(すなわちエンハンサーのない)真核
プロモーター(たとえば[GossenおよびBujard 1992 Proc. Natl. Acad. Sci.
USA 89, 5547]に先に記載された最小限のCMV前初期プロモーター)に実質的
に近接して(すなわち100bp以内、好ましくは50bp以内で)融合され、
それにより、トランス活性化テトラサイクリン感受性ポリペプチドのtetO配
列への結合は、tetOに結合されたコード配列の発現を促進させる。
【0019】 白血球活性化分子および/または薬剤により調節可能なプロモーターをコード
する配列の導入のため特に適当な構造はよく知られており、先に開示されている
(たとえばBaron他 1995 Nucl. Acids Res 23、3605-3606、およびSchultze他 1996 Nature Biotechnology 14、499-503頁)。特に好ましい構造(テトラサ イクリンまたはその類似体が調節薬剤である場合)は、tetO結合配列の発現
を非常に高レベルで調節できることがわかっており、これは、同時係属中のUK
特許出願番号9718873.4において開示され、また、Mohamadi他(1997 G
ene Therapy 4, 991-997; 1998 Gene Therapy 5, 76-84)およびAlvarez-Vallin
a他(J. Immunol, 5889-5895)により開示される。
【0020】 この方法は、白血球活性化分子の発現の調節により、相対的に低い密度の白血
球刺激分子を発現する標的でない細胞に比べて相対的に高い密度の白血球刺激分
子を発現する標的分子の方に、白血球を優先的に反応させることを可能にするも
のが望ましい。
【0021】 白血球は単球、マクロファージまたはリンパ球であるのが好ましく、Tリンパ
球が最も好ましい。Tリンパ球(またはT細胞)について、白血球刺激分子は「
外来の」抗原または腫瘍結合抗原(たとえばCEA)であるのが都合よく、一方
白血球活性化分子は、T細胞受容体(TCR)CD3複合体の鎖の少なくとも1
つの細胞内(細胞質)シグナルドメイン、またはCD28、CD4もしくはCD
8などの共同刺激性分子の細胞内シグナルドメインを含むことが好ましい。
【0022】 多くの腫瘍結合抗原が、腫瘍細胞に対して固有のものではなく、それらは腫瘍
細胞表面上に相対的に高密度で発現されるが、患者の腫瘍でないある特定の種類
の細胞表面上にもより低い密度で発現され得る。したがって、腫瘍細胞に対し腫
瘍結合抗原を介して、細胞傷害性剤の目標を定めようとするか、または免疫応答
を誘導させようとする治療法の多くは、しばしば腫瘍でない細胞に付帯的損傷を
もたらす。
【0023】 本発明は、治療効果の目標を、たとえば高密度の腫瘍結合抗原を発現する細胞
に特異的に定める方法を提供する。白血球(治療効果を配達または媒介する)の
表面上における白血球活性化分子の発現を調節することができ、それにより、白
血球が活性化される相互作用のしきい値レベルに到達するのに必要な白血球刺激
分子(たとえば腫瘍結合抗原)の密度を変える。
【0024】 たとえば、腫瘍結合抗原に対し特異的な結合活性を有するキメラTCR分子の
テトラサイクリン感受性の発現を誘導する核酸配列で、Tリンパ球を形質転換す
ることができる。患者に投与されるテトラサイクリン(またはその類似体)の量
の調整は、腫瘍細胞上の腫瘍結合抗原の密度がT細胞の活性化を引起こすのに十
分となる一方、腫瘍でない細胞上の腫瘍結合抗原の密度が非常に低くなり、付帯
的損傷が最小になるよう、行うことができる。患者におけるテトラサイクリン濃
度の望ましい調整は、試行錯誤により、臨床的な徴候またはマーカーの分析によ
り、行なうことができる。白血球活性化分子の発現を調節するのに用いられ得る
他の調節可能な系は、たとえばMiller & Whelan(1997 Hum. Gene Ther. 8, 803
-815)によって開示されている。
【0025】 したがって、白血球刺激分子が腫瘍結合抗原である特定の具体例において、こ
れは、腫瘍標的細胞上に相対的に高い密度で発現される一方、腫瘍でなく標的で
ない細胞上に相対的に低い密度で発現され、それにより、本発明の第1の局面の
方法を実行することによって、腫瘍標的細胞を優先的に認識かつ攻撃することが
でき、しかも腫瘍でない細胞を実質的に攻撃しない、白血球が得られる。
【0026】 この白血球活性化分子は、膜によって結合されることが好都合であり、典型的
には細胞内(細胞質)ドメイン、トランスメンブラン・ドメイン、および細胞外
ドメインを含む。細胞外ドメインは、白血球刺激分子に対して結合特異性を有す
ることが望ましい。白血球刺激および/または白血球活性化分子は、単量体また
は多量体(たとえば二量体、三量体など)であり得る。
【0027】 有利には、白血球活性化分子はキメラのポリペプチドである。たとえば、白血
球は、TCR分子の少なくとも1つの機能的ドメイン(好ましくは細胞質のシグ
ナルドメイン)を含むTCR分子またはキメラTCR分子の、薬剤により調節可
能な発現を誘導する配列で、形質転換され得る。白血球活性化分子がキメラのT
CRである場合、トランスメンブラン・ドメイン(T細胞表面上に該分子を固定
するのに必要な)は、野生型TCR分子からのものでもよく、あるいは真核細胞
表面上に存在する任意の他の分子からのトランスメンブラン(TM)・ドメイン
を含んでもよく、あるいは「人工的」な天然由来でないトランスメンブラン・ド
メインであってもよい。好ましくは、TMドメインはポリペプチドの免疫グロブ
リン族のメンバーからのものである。
【0028】 好ましい具体例において、細胞外ドメインは、抗体またはその抗原結合フラグ
メント(scFv、Fabなど)からなるか、あるいはそれらから誘導される。
特定の具体例において、白血球活性化分子は、腫瘍結合抗原である白血球刺激分
子に対して結合アフィニティー(たとえばPardollによる引用文献7に記述)を 有する細胞外ドメインからなる。
【0029】 本発明のその他の具体例(たとえばBリンパ球の抗原密度特異的活性に関する
もの)は、当業者に明らかである。
【0030】 第2の局面において、本発明は、外因性の作用因子に対し濃度感受性である態
様において白血球活性化分子を発現する核酸配列で形質転換された白血球を提供
する。この白血球は、白血球活性化分子と細胞表面上に存在する白血球刺激分子
との間の相互作用によって活性化され、そこにおいて、この白血球は、白血球刺
激分子の異なる密度に対して異なる応答性を示し(差別的に応答性であり)、白
血球刺激分子の密度が相対的に高い標的細胞と、白血球刺激分子の密度が相対的
に低い標的でない細胞とを識別する。この白血球は、典型的には本発明の第1の
局面の方法によって処理されたものである。
【0031】 第3の局面において、本発明は、治療方法に用いるための組成物を提供する。
この組成物は、上述した本発明の第2の局面による複数の白血球、および生理学
的に許容される希釈剤を含む。本発明はさらに、第4の局面において、このよう
な組成物を製造する方法を提供する。この方法は、白血球の試料を得る(好まし
くは治療される対象から得る)こと、外因性の作用因子に対し濃度感受性である
態様において白血球活性化分子の発現を誘導する核酸配列で該白血球を形質転換
すること、および、該白血球を生理学的に許容される希釈剤(たとえば生理食塩
水、リン酸塩緩衝生理食塩水、組織培養培地など)と混合することを含む。
【0032】 本発明はさらに、第5の局面において、ヒトまたは動物の対象を治療する方法
を提供する。この方法は、前述の組成物を調製すること、該組成物を該対象に投
与すること、および、必要であれば、投与された白血球中の白血球活性化分子の
発現レベルを変化させるように、外因性物質を該対象に投与することを含む。
【0033】 本発明のさまざまな局面は、多くの分野に適用できるが、特に腫瘍および他の
腫瘍性疾患の治療におけるまたはそれに関する分野に適用できる。
【0034】 典型的には、関連の核酸配列はインビトロで細胞に導入される。核酸配列を真
核細胞へ導入する方法は数多く知られており、それらはトランスフェクション、
形質導入(トランスダクション)、電気穿孔、および細胞融合などを含む。これ
らの方法はいずれも本発明において用いることができ、一般にトランスフォーメ
ーション(形質転換)と呼ばれ得る。
【0035】 同様に、形質転換された白血球を対象に導入する方法も周知である。これは対
象の血流中に注入または注射することにより行なうのが好都合である。典型的に
は、105から108の間(好ましくは106から107の間)の細胞が対象の血流
に導入される。対象への外来細胞の導入により、その細胞上で外来抗原に対する
免疫応答が創り出される可能性が高く、よって一般に、白血球は、受容体である
対象と組織適合する。最も好都合には、細胞は、対象(たとえば末梢血液または
骨髄から)から元々得られるオートロガス細胞であり、インビトロで関連の核酸
配列によって形質転換され、その後対象に再導入される。典型的には、この方法
のインビトロの段階は、一般に、うまく形質転換されたそれらの細胞を選択する
ための選択プロセス、および/または形質転換された細胞の数を増やすための増
殖段階を含む。細胞の選択および増殖の方法は当業者に周知であり、本発明の本
質部分を構成するものではない。
【0036】 白血球活性化分子が対象内で免疫原性であり得る可能性もある。この発明が、
潜在的に免疫原性の白血球活性化分子の発現を調節することを伴う場合、以下に
より詳細に説明する理由により、細胞が対象に導入された後、該分子の発現を遅
らせることが望ましい。したがって、細胞は通常、免疫原性ポリペプチドの発現
が十分に抑制されるインビトロでの条件から、白血球活性化分子の発現がもはや
ダウンレギュレーションされない対象におけるインビボの条件に移される。一方
、本発明は、十分に抑制された状態から十分に発現される状態に細胞を移すため
、大事な期間(典型的には2〜10日間、好ましくは4日またはそれ以上)をと
るようにする。
【0037】 細胞は、調節薬剤(たとえばテトラサイクリンまたはその類似体)の適当な(
非毒性の)濃度にさらすことにより、インビトロで白血球活性化分子が十分に抑
制される状態とすることができ、調節薬剤のない対象に導入されるとき、最終的
に、白血球活性化分子が発現される状態に入る。これに代えて、上述したように
、TRSおよびその変異体、ならびに当業者に入手可能な、薬剤により調節可能
な別のプロモーター系の可変性によって、白血球を、調節薬剤の不在下において
インビトロで十分に抑制された状態に維持してもよく、その後、適当な用量の調
節薬剤を受け入れる対象に導入して、(適当な遅延の後)白血球活性化分子を発
現させることができる。
【0038】 一般的に、必須ではないが、調節薬剤の存在によって白血球活性化分子の発現
を阻害することが好ましく、これは、その後、調節薬剤への暴露から細胞を取除
くことにより、通常、白血球活性化分子の発現の誘発前に、より長い遅滞期また
は遅延が得られるからである。
【0039】 導入された白血球による腫瘍の攻撃の効率は、細胞がその表面に標的物を発現
するように仕向けることによって向上させることができる(たとえば、Eshar他 1993 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90, 720)、 Hwu他 1993 J. Exp. Med. 1
78, 361、Stancovski他 1993 J. Immunol. 151, 6577、およびBrocker他 1996
Eur. J. Immunol. 26, 1770参照)。一旦腫瘍内に入ると、白血球は、その治療
効果(たとえば細胞傷害性作用、またはマクロファージおよびリンパ球の補給)
を発揮することができる。
【0040】 血液が運ぶ白血球により接近可能な固体腫瘍はいずれも、本発明の方法により
治療することが可能となり得る。また対象に導入される白血球は、腫瘍細胞の表
面に発現されるマーカーに白血球がねらいを定めるような細胞表面成分を含むと
好都合である。これらは、たとえば、キメラ「T体」ターゲッティング成分であ
り、当業者に知られている(上記で引用したEshar他、Hwu他、Stancovski他、お
よびBrocker他の開示を参照)。
【0041】 しかしながら、導入された白血球の腫瘍へのターゲッティングにはいくらか時
間がかかる。したがって、この時間中の免疫原性ポリペプチドの発現は、回避さ
れるのが好ましい。というのも、免疫原性ポリペプチドの発現が、(a)悪性で
ない細胞に対する付帯的損傷および/または(b)免疫原性タンパク質と対象の
免疫系(特に循環抗体)の成分との相互作用を引き起こし得るからである。後者
の点は、白血球の投与を繰返し行なう必要がある場合とくに問題である。という
のは、これが、投与された白血球と相互作用する傾向にあり、当該白血球が標的
の腫瘍に届くのを阻害するであろう免疫原性ポリペプチドに対して、免疫応答を
効率的に誘導する可能性が高いからである。これらの問題は、本発明の方法によ
って克服することができる。この方法では、潜在的に免疫原性の白血球活性化分
子は、重要な時間遅延の後、高レベルで発現されることが許容されるだけである
ことが望ましい。この点により、投与される白血球は標的の腫瘍に入り込むよう
になり、よって免疫系による妨害を防ぎ、悪性でない細胞に対する付帯的損傷を
最小限にすることができる。したがって、本発明の方法は、白血球活性化分子に
対して既に免疫応答を形成しており、また、たとえば白血球活性化分子と反応す
る循環抗体または白血球活性化分子に特異的な免疫コンピテント記憶細胞を有し
得る対象において行うことができる。
【0042】 この方法において採用される薬剤調節可能なプロモーター系の成分を変えるこ
とによって(たとえば特定のエピトープを除去するように何らかのDNA結合タ
ンパク質を変更することによって)それらの免疫原性を減じることが望ましい場
合もある。好都合には、存在していれば、DNA結合タンパク質は、核局在化シ
グナル(NLS)を含み、それによって対象の免疫系に現われ得る量を最小限に
する。有用な他の技術は、WO96/01313に開示されている。
【0043】 もちろん、本発明によって得られる別の利点は、白血球がさらされる外因性作
用因子の濃度を制御することにより、白血球における白血球活性化分子の発現レ
ベルを制御できるという能力である。これは、白血球の活性化を引起こすのに必
要な白血球刺激分子の密度も制御する。本発明者らは、白血球における白血球活
性化分子の量を制御することによって、その活性化のために、細胞上の白血球刺
激分子の、あるしきい値密度を白血球が要求するよう仕向けることができ、その
細胞が十分な密度の白血球刺激分子を持たない場合、それは白血球を活性化させ
ず、該細胞は白血球によって攻撃されない、ということを見出した。逆に、細胞
がしきい値密度を超える密度の白血球刺激分子を有する場合、該細胞に遭遇する
白血球は活性化され、該細胞を攻撃する。
【0044】 ほとんどの具体例において、調節薬剤は、対象に投与されるとき認容されるも
のである。したがって、必要であれば、白血球活性化分子の発現を抑制するよう
形質転換細胞がインビトロで調節薬剤にさらされる場合、形質転換細胞の導入前
、導入中、または導入後に調節薬剤を患者に投与してもよい。これは、遅延イン
ターバルを延ばすために望ましいことであり得る他、白血球活性化分子の発現を
調節するように細胞を調節薬剤の中間濃度にさらすために望ましいことであり得
る。また、患者が白血球活性化分子の発現に対して有害な作用をこうむる場合、
調節薬剤を十分な用量で投与し、白血球活性化分子のさらなる発現を防ぐことも
できる。
【0045】 調節薬剤を(必要に応じて)対象に投与する方法は当業者に周知であり、これ
は、(任意の形態の)経口投与、除放性ペレット、および拡散ポンプの植え込み
を含む他、より通常的な方法、たとえば注射、注入、吸入または経口摂取を含む
。一例として、テトラサイクリンまたはテトラサイクリン類似体が対象に投与さ
れる場合、その用量は0.05から1.0μg/mlの間の血清濃度を達成する
ように都合よく調整される。
【0046】 この方法において、白血球の活性化に必要な白血球刺激分子のしきい値密度は
、白血球がさらされる外因性作用因子(すなわち調節薬剤)の濃度に依存する。
したがって、外因性作用因子の濃度を所望のレベルに調整することにより、対象
に導入される形質転換された白血球が、相対的に高い密度の白血球刺激分子(た
とえば腫瘍結合抗原)を発現する標的細胞(たとえば腫瘍細胞)と、相対的に低
い密度の白血球刺激細胞を発現する標的でない細胞(腫瘍でない細胞)とを区別
するように仕向けることができる。この方法では、標的細胞のみが白血球を活性
化させるので、標的でない細胞への「付帯的損傷」は最小限になる。
【0047】 本発明を、例を挙げかつ添付の図面を参照して、さらに説明する。
【0048】
【発明の具体例の詳細な説明】
例1 本発明者らは、ヒトT細胞系における表面分子の発現を一時的に調節するため
の手段として、テトラサイクリンにより制御されるトランスアクチベーター系の
有用性を評価した。トランスアクチベーターおよび発現遺伝子ユニットの両方を
含むベクターを用いて、キメラTCR(chTCR)分子の発現が効率よく調節
され得る安定して形質転換されたJurkat T細胞系を生成させることができた。 使用されるテトラサイクリン類似体およびその濃度に依存して、chTCRの誘
発は、より大きくまたはより小さく可逆的に抑制することができる。さらに、本
発明者は、完全に抑制されたT細胞がキメラ受容体を介してIL−2を生産する
ように活性化され得ないことを明らかにし、このことは、再誘導T細胞の可逆的
な機能的不活性化が可能であるということを示している。
【0049】 遺伝子発現を基底レベルに抑制するための時間経過は、薬剤の除去後、遺伝子
発現が最高レベルに到達するための時間経過より顕著に短く、また、プロモータ
ー活性の回復における遅延は、抑制に用いられたドキシサイクリン(テトラサイ
クリン類似体)の濃度に依存してかなり変化した。これらのデータとT細胞によ
って媒介される免疫治療における現在の認識との関連について論じる。
【0050】 材料および方法 試薬: 使用したmAbは、それぞれヒトCD3εおよびCD28分子に特異
的なSPvT3b(マウスIgG2a)(11)およびYTH913.12(ラ
ットIgG2b)(Serotec Ltd., Oxford, UK)を含んだ。直接染色のために、
次のFITC抱合抗体を用いた。UCHT−1(抗CD3ε、マウスIgG1 S
erotec、マウスλ軽鎖に対するヤギポリクローナル抗血清(Southern Biotechno
logy Associates, Inc. Birmingham AL)、およびマウスIgGに対するヤギポ リクローナル抗血清(γ鎖特異的)(Sigma Chemical Co., St. Louis, MO)。 ウシ血清アルブミン(BSA)を、4−ヒドロキシ−5−ヨード−3−ニトロフ
ェニルアセチル(NIP)(Cambridge Research Biochemicals, Northwich, UK
)と、モル比10:1(NIP10−BSA)で抱合した(12)。テトラサイク
リン塩酸塩(Sigma)を培養培地中に0.5mg/mlの濃度で溶解した。ドキ シサイクリン塩酸塩(「Dox」)(Sigma)を0.02NのHCl中に1mg /mlの濃度で溶解し、さらに培養培地で希釈した。この抗生物質溶液は、使用
当日に新しく調製し、適当な濃度に希釈した。
【0051】 ベクターの構築: ヒトCMV前初期(CMV IE)プロモーター/エンハ
ンサーから転写されたtTAトランスアクチベーター遺伝子を含むプラスミドp
UHD15−1、およびtTA−応答性プロモーター(TRP、ヒトCMV前初
期最小プロモーター[PhCMV*−1]に融合された七量体化tetO配列( TetO)7)を含むpUHD10−3は、H. Bujard(9)から好意により提 供されたものである。プラスミドpCSは、 CMV IEプロモーター、多重 クローニング部位およびSV40ポリアデニル化シグナルを含む1308bpの
SalIフラグメントをpCEP4バックボーン(Invitrogen, San Diego, CA )から取出すことにより構築した。pCSからの6723bp NruI−Cl
aI消化フラグメントをクレノウ(Cambio, Cambridge, UK)で平滑末端にし、 この部位をクレノウおよび子ウシ腸アルカリホスファターゼ(CIP, Boehringer
Mannheim GmbH, Germany)で処理した後、プラスミドpUHD15−1のXho
I部に挿入した。得られたプラスミドは、tTAとハイグロマイシン転写ユニッ
トの両方を対向する方向で含み、pCRAZYと呼んだ。
【0052】 キメラNIP特異的scFv−TCRζ分子を、前述のように構築し(12)
、プラスミドpUHD10−3中へクローン化した。これを行なうために、pU
HD10−3からのHindIII部位をHindIIIによる開裂によって取出し、
その後クレノウ補填および平滑末端連結を行い、pLAV5を得た。pLAV6
構築のため、プラスミドpVACl.aNIP.TCRζ(引用文献11に記載
)から誘導される1342bpのEcoR I−Xba Iフラグメントは、ヒ トVH1リーダー配列およびキメラNIP特異的TCRζ分子を含むものであり
、これをpLAV5のEcoR I−Xba Iポリリンカー部位へクローン化 した。ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター部分配列を含む91bpのE
coR I−Hind IIIフラグメントを、EcoRIおよびHindIIIで消 化することによりpLAV6から取出し、クレノウ補填および平滑末端連結を行
って、プラスミドpLAV7を得た。ベクター構築物、Hind III−Bgl I
I−EcoRV−Cla Iに固有の制限部位を含むポリリンカー(5826:5
’−CATCGATCGAACTGATATCAGCAGATCTCAGAAG
CTTAAT−3’配列ID No.1)および5827:5’−ATTAAG
CTTCTGAGATCTGCTGATATCAGTTCGATCGATGAC
GT−3’配列ID No.2)を、pLAV7のSsp I−AatII部位 中に連結し、pLAV8を得た。TRPの制御下で、tTAトランスアクチベー
ター遺伝子とキメラNIP特異的scFv−TCRζ遺伝子の両方を有する単体
プラスミドをアンチセンス配向(tTA転写ユニットに対して)で構築するため
に、プラスミドpCRAZYをXmnIで消化し、この部位にBgl IIリンカ ー(New England Biolabs, Inc., Beverly, MA)を導入した。Bgl IIおよび Hind IIIでの消化後、9386bpのフラグメントをpLAV8のBgl I
I−Hind III部位に挿入した。得られたプラスミドをpLAV12と呼んだ (図1A)。
【0053】 細胞培養およびトランスフェクション: JurkatT細胞系(クローンE6−1
)を、10%のウシ胎児血清(FCS)、2mMのL−グルタミン、100U/
mlのペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシンおよび25mMのH
EPES緩衝液(すべてGIBCO−BRL(Gaitersburg, MD)からのもの) で補足されたRPMI1640(完全培地(CM)と呼ぶ)中に維持した。安定
な細胞系を生成させるため、前述のように(13)、Jurkat細胞を、電気穿孔法
により、250mVおよび960μFで、線状にされたプラスミドDNA(10
μg)で形質転換した。形質導入体を、0.4mg/mlのハイグロマイシンB
(Calbiochem, San Diego, CA)で補足されたCM中において選択した。安定な 細胞系は、3〜4週間後に樹立され、FACSによってchTCRの発現につい
て分析された。chTCRζ発現細胞の個体群を選択するため、線状化pLAV
12AまたはpCEP4.aNIP.TCRζにより誘導されたプラスミドフラ
グメントで形質転換された安定なJurkat細胞を、FACS分類した(下記参照)
。得られた個体群を、限界希釈により2回クローン化し、フローサイトメトリー
によってタンパク質の発現についてスクリーニングした。
【0054】 フローサイトメトリーおよびセルソート: 細胞表面タンパク質の発現を、(
14)に記載の標準直接免疫蛍光によってFITC抱合抗体の飽和量を用いて行
った。死んだ細胞は、ヨウ化プロピジウムと前方光散乱の組合せを用い、分析か
ら排除した。すべての実験において、適当なFITCアイソタイプに合致する、
関連性のないAbを用いた。試料は、FACScan(登録商標)装置(Becton
Dickinson, Mountain View, CA)を用いて分析した。各試料について最低20 ,000の細胞を分析した。その後、CELLQuestソフトウェア(バージ
ョン1.2)(Becton Dickinson)を用いてデータの再解析を行なった。さらに
、マウスλ光鎖に対するFITC抱合ヤギ抗血清で染色した細胞を、セルソータ
ー(FACScalibur,Becton Dickinson)において無菌条件下で分類した。
【0055】 IL−2放出アッセイ: 細胞を、5×105/mlの濃度でCM中48時間 、指定された濃度のテトラサイクリンまたはドキシサイクリンの不在下もしくは
存在下で予め培養した。その後、細胞を洗浄し、計数し、プラスチック固定化N
IP10−BSA抱合体(iNIP10−BSA)またはプラスチック固定化抗
CD3ε mAb(ianti-CD3)を用いて、新鮮なCM単独において、または
薬剤(12)の存在下において、3連で刺激した(105/ウェル)。プレート は、5%のCO2中、37℃でインキュベートした。20時間後、上澄み液を採 取し、ELISAキット(Genzyme Diagnostics, Cambridge, MA)を用いてIL
−2活性について検定した。
【0056】 結果 tet調節可能なベクターの設計 chTCRの発現がT細胞において薬理学的に調節され得るかどうかを判断す
るため、本発明者らはプラスミドpLAV12およびpCEP4.aNIP.T
CRζ(図1、およびAlvarez-Vallina他、1997 J.Immunol 159, 5889)を構築 した。図1Aおよび1Bは、実験に用いられる典型的なプラスミドフラグメント
の概略地図であり、宿主ゲノムへの統合の後予測される構造、それぞれ(A)p
LAV12および(B)pCEP4.aNIP.TCRζを示す。転写の方向は
矢印で示す。
【0057】 両者の構造物とも、すでに説明された(12)キメラTCR分子をコードし、
これは、ヒトTCRζ鎖(16)の細胞質領域およびトランスメンブランに融合
されるハプテン特異的(NIP)mAb B1.8(15)の抗原結合部位を含
む。pLAV12(図1A)は、テトラサイクリンにより調節可能な構造物であ
り、構造的CMV IEプロモーターの制御下にあるtTA遺伝子およびtTA
応答プロモーターの制御下で挿入されたchTCRをコードする遺伝子とともに
、TRSのすべての要素を含む。TRP活性の潜在的なシス調節の増強を減じる
ための試みにおいて、ベクターに存在する他のエンハンサーおよびプロモーター
要素の接近のため、tTA応答カセットを、pUC誘導ColE1複製起点およ
びβ−ラクタマーゼ遺伝子を含む2500bpのフラグメントによって他の転写
ユニットから分離した(図1A)。対照構造物において、pCEP4.aNIP
.TCRζ、chTCR分子は、構造的CMV IEプロモーター(図1B)の
制御下に置かれた。
【0058】 これらの構造物は両者とも、構成的プロモーターによって転写されるハイグロ
マイシン耐性マーカー遺伝子をコードする。形質転換T細胞においてこれらのD
NA構築物が設計された構成で安定に統合されるのを促進するため、プラスミド
pLAV12からの線状化Avr II-Sap I 9975bpDNAフラグメント(図 1A)およびプラスミドpCEP4.aNIP.TCRζから誘導された線状化
Avr II-EcoRV7551bpフラグメント(図1B)(両者ともEBV複製起点お
よびEBNA−1遺伝子(図1)を欠く)が、Jurkat細胞を形質転換するために
用いられた。
【0059】 キメラscFv遺伝子構造物のtTA依存性発現 pLAV12およびpCEP4.aNIP.TCRζの線状化フラグメントで
JurkatE6−1細胞を形質転換した。chTCRのより高い発現について選択す
るために、安定に形質転換されたハイグロマイシン耐性細胞を、 FITC標識 ヤギ抗マウスλ軽鎖抗血清で染色した後、FACS分類した。分離されたpLA
V12形質導入体(JLAV12S)およびpCEP4.aNIP.TCRζ形
質導入体(JN3S細胞)のほとんどは、chTCRを発現したが、発現の絶対
レベルにおいてかなりの不均一性が見られた(図2A、2B)。
【0060】 図2は、テトラサイクリン類似体によるchTCR遺伝子発現の調節を確認す
る典型的結果を示す。図2Aでは、安定な形質転換された非クローン化JLAV
12S(左手側)およびJN3SJurkat(右手側)細胞の個体群を、テトラサイ
クリンのない培地中で(CM、パネルの上列)または1μg/mlのTet(破
線)もしくはDox(実線)の存在下で(パネルの下列)48時間培養し、マウ
スλ軽鎖に対するFITC抱合ヤギ抗血清での染色後、chTCRの表面発現を
調べた。図2Bは、Doxを1μg/mlで添加した後のJLAV12S細胞に
おけるchTCR遺伝子発現の不活性化の時間経過を、0時間(左上)、8時間
(右上)、12時間(左下)または24時間(右下)について示している。図2
Aおよび2Bの両方において、陰性の対照(マウスIgGに対するFITC抱合
ヤギ抗血清)は重ね合わせている(塗りつぶした部分)。蛍光チャンネル数がx
軸に沿ってプロットされ、y軸は対応の細胞数を表わす。
【0061】 pLAV12形質導入体(JLAV12S)の選択された個体群をその後限界
希釈によってクローン化し、chTCRを低いレベル(2E11)および中間レ
ベル(IF5)で発現する2つのサブクローン(図3)を、さらなる研究のため
に選択した。
【0062】 キメラscFv−TCRζ遺伝子発現の調節 chTCRの発現がテトラサイクリンによって抑制され得るかどうかを判断す
るため、JLAV12SおよびJN3S細胞(5×105/ml)を1μg/m lのテトラサイクリン(Tet)またはその類似体ドキシサイクリン(Dox)
の存在下で48時間インキュベートした。この濃度で、表面chTCRの大部分
(90%)がJLAV12S細胞においてダウンレギュレーションされたが、J
N3S細胞においては影響を受けなかった(図2A)。また、抗CD3ε mA
bを用いる表面染色によって、TCR/CD3複合体の量が両方の細胞個体群に
おいて一定なままであることがわかった(図示せず)。トリパンブルー染色を用
いて検定したこの濃度では、細胞生存能力における変化は観察されなかった(デ
ータは示さず)。
【0063】 遺伝子発現の不活性化の時間経過を研究するため、1μg/mlで抗生物質を
添加した後、JLAV12S細胞を異なる時間において分析した(図2B)。薬
剤にさらして8時間以内でわずかな減少が観察され、24時間以内で最大の抑制
が達成され、このときchTCRの発現は、テトラサイクリンの不在下において
同時点で観察されるレベルの10パーセント未満に落ちた(図2B)。1E5ク
ローンおよび2E11クローンにおいても同様の結果が見られ、chTCRのレ
ベルは、その最大発現の約10%(1E5)および20%(2E11)まで減少
した(図3)。遺伝子抑制の時間経過は、すべての分析された個体群において両
方の抗生物質(TetまたはDox)に対し非常に類似していた。留意すべき重
要なことは、テトラサイクリンがchTCRの発現をダウンレギュレーションし
なかった細胞の百分率は<0.5%であり、JLAV12S細胞の全個体群にお
ける全体の調節には影響を与えなかった(図2A)ことである。
【0064】 遺伝子抑制の用量−応答曲線を、異なる濃度のTetまたはDoxを用いて測
定した。48時間の処理後、細胞を採取し、chTCRの発現をFACS分析に
よって研究した。典型的結果を図3に示す。
【0065】 安定的に形質転換されたクローン化されていない(JLAV2S(左手欄))
およびクローン化された(1F5(中央欄)および2E11(右手欄))Jurkat
細胞個体群を、異なる濃度(上列0ng/ml、2番目の列0.1ng/ml、
3番目の列1ng/ml、および1番下の列10ng/ml)のTet(破線)
またはDox(実線)の存在下で48時間培養し、scFv−TCRζ分子の表
面発現を調べた。陰性の対照(マウスIgGに対するFITC抱合ヤギ抗血清)
は重ね合わせている(塗りつぶした部分)。蛍光チャンネル数はx軸に沿ってプ
ロットされ、y軸は対応の細胞数を表わす。
【0066】 図3を参照して、両方のクローン個体群(1E5および2E11)において、
chTCRの発現は100pg/ml(0.1ng/ml)のDoxで最大に抑
制され、より高い濃度において抑制レベルにさらなる増加は見られなかった。T
RPの部分活性を1pg/mlから100pg/mlの濃度範囲のDoxにおい
て観察した(データは図示せず)。JLAV12S細胞においては、1ng/m
lに等しいかそれより高いDox濃度で最大抑制が観察された。テトラサイクリ
ンについては、分析した細胞系のすべてにおいて10ng/mlに等しいかそれ
より高い濃度で最大抑制が起こった。chTCR遺伝子の誘発は100pg/m
lから1ng/mlのテトラサイクリン濃度で部分的にのみ抑制された。
【0067】 テトラサイクリンの投与を中止した後の、TRP駆動遺伝子発現回復の動力学
を研究するため、安定的な形質転換されたクローン化されていないJLAV12
S細胞を、異なる濃度のDox(1ng/mlから1μg/ml)の存在下で4
8時間培養した。3回の洗浄後、細胞を新しいプレートでテトラサイクリンのな
いCM中においてインキュベート(5×105/ml)し、chTCRの表面発 現を、マウスλ軽鎖に対するFITC抱合ヤギ抗血清での染色後、24〜48時
間毎に調べた。その結果を図4に示す。また、同様の実験を1F5細胞を用いて
行なった(データは示さず)。
【0068】 100%の値は、マウス軽鎖に対するFITC抱合ヤギ抗血清での染色後にお
ける、対照未処理細胞の蛍光のメジアンに対応する。数値は、各細胞個体群から
のテトラサイクリンで処理された細胞に発現したキメラTCRζ分子を、対照未
処理細胞におけるキメラTCRζ分子の量(100%とする)と比較した百分率
である。図4を参照して、細胞を1μg/mlのDoxで処理した後(黒丸)、
薬剤除去後192時間ではchTCR発現の回復ははっきりせず、216時間後
に細胞表面上で初めて検出され、発現が完全に回復したのは288時間後であっ
た。一方、TRPは薬剤の除去後24時間だけ抑制を維持し、細胞を1μg/m
lのTetで予め処理したとき、72時間後にchTCR発現は最高レベルに到
達した(データは図示せず)。より低い濃度のTet(図示せず)またはDox
(1ng/ml−白四角、10ng/ml−黒四角、100ng/ml−白丸)
で細胞を処理した結果、TRPの活性はより早く回復した。
【0069】 例2 機能研究 この研究に使用されるchTCRが、可溶性のまたはプラスチック固定化され
たそのコグネイト抗原(BSAに抱合されたNIP)の特異的認識を媒介でき、
形質転換されたT細胞によるIL−2の生産をもたらすということは以前から示
されている(12)。本研究において、本発明者らは、chTCR発現細胞(J
N3S、JLAV12S、1F5および2E11)をプラスチック固定化NIP 10 −BSA抱合体で刺激すると、IL−2分泌(データは図示せず)が誘発され
ることを一貫して見出した。IL−2の生産レベルは、形質導入細胞の種々の個
体群間で変化するが、概して、マイクロタイターウェルに固定化された抗CD3
εmAbによる標準化刺激に応答して同じ細胞個体群で観察されるものと同様で
あった(図示せず)。
【0070】 高濃度のテトラサイクリンがT細胞活性化のプロセスを妨害することは示され
ている(17)として、本発明者らは、TetおよびDoxの濃度を増していく
ことが、抗CD3εにより誘発されるJurkat細胞のIL−2の分泌に与える効果
を研究した。IL−2の分泌は、100ng/mlまたはそれより低いドキシサ
イクリン濃度では影響を受けなかったが、1μg/mlのドキシサイクリン濃度
では25%阻害された(図示せず)。1μg/mlに等しいかそれより低い濃度
のテトラサイクリンは、抗CD3εにより誘発されるIL−2の分泌に影響を与
えなかったが、これは未処理の細胞において観察されたものと同様であった(図
示せず)。これらの結果は、ヒトT細胞に対する免疫調節効果が最初に現れるし
きい値より1000倍以上低い濃度のドキシサイクリンで、最大のTRP抑制を
誘発することが可能であることを示している。
【0071】 本発明者らは次に、テトラサイクリンによって媒介されるchTCRの抑制が
、形質転換されたJurkat細胞において抗原非応答性の可逆的状態を誘発し得るか
どうか検討した。JLAV12S細胞およびJN3S細胞を、DoxおよびTe
tの濃度を増加させて48時間予めインキュベートし、次いで固定化NIP−B
SAで刺激し、それに続いてそれらのIL−2生産を測定した。完全なTRP抑
制の状態において、JLAV12S細胞は、表面chTCRの90%がダウンレ
ギュレーションされ(図3参照)、iNIP10−BSA抱合体での刺激に対し
て完全に非応答性であった(図5A参照)。
【0072】 図5Aおよび5Bは、TetまたはDoxの不在下または存在下において、i
NIP10−BSAで刺激された形質転換JLAV12S細胞(5A)またはJ
N3S細胞(5B)によるIL−2生産を(pg/mlで)示す棒グラフである
。細胞は、薬剤の不在下または存在下(示された濃度(ng/ml))で48時
間予めインキュベートされ、洗浄され、新鮮なCM単独(塗りつぶした棒)中に
おいて、または示された濃度のTet(影をつけた棒)もしくはDox(白い棒
)の存在下で、プラスチック固定化NIP10−BSA抱合体(50μg/ml
)で刺激された(105/ウェル)。2つの同様の実験のうち1つを示す。
【0073】 chTCRの約75%のダウンレギュレーションに伴ってIL−2の生産は低
くなる一方、chTCR発現レベルがテトラサイクリンの不在下で観察されるも
のの約50%であった場合、阻害作用は見られなかった(図5A)。これらの結
果は、完全TRP抑制の状況にあるJLAV12S細胞によって発現される表面
chTCR分子の数が、最適なT細胞機能に必要な活性化しきい値に到達するに
は十分でないことを示している。一方、JN3S細胞がiNIP10−BSA抱
合体で刺激されると、1μg/ml未満の濃度のテトラサイクリンおよびドキシ
サイクリンの阻害作用は見られなかった(図5B)。
【0074】 この例は、白血球の表面における白血球活性化分子の発現を調節することによ
り、標的細胞の表面に存在する異なる密度の白血球刺激分子(抗原など)に対し
、当該白血球の感受性を異ならしめることが可能である、ということを示してい
る。
【0075】 例3 Jurkat E6−1 T細胞を線状化pLAV12により安定に形質転換し、上
述のように、高レベルのテトラサイクリン抑制性発現を有するクローン(1D9
および2D6)を選択した。この系は受容体密度の研究に最適である。なぜなら
これは、細胞内シグナルを生成させかつ細胞応答性を調節し得るTCR連動状態
なしで、chTCR発現の転写的調節を可能にするからである(21)。適当な
範囲のテトラサイクリン濃度を用いると、chTCR発現レベルの微妙な変化は
、容易に誘導することができ、しかも、固定されたテトラサイクリン濃度で連続
培養することによって、ある特定のレベルに安定に維持することができる(図6
Aおよび6B)。
【0076】 図6Aは、マウスλ軽鎖に対するFITC抱合抗血清での染色後に、さまざま
な濃度のテトラサイクリンの存在下で48時間培養された1D9(白丸)細胞お
よび2D6(黒丸)細胞の平均蛍光強度値を示す。
【0077】 図6Bは、テトラサイクリンのない培地(「未処理」と示された曲線)または
0.1〜10ng/mlの範囲(「未処理」および「対照」のグラフ間の塗りつ
ぶされていない曲線部分)におけるさまざまな濃度のテトラサイクリンの存在下
において、48時間培養された1D9細胞(上のパネル)および2D6細胞(下
のパネル)のFACSプロファイルを示している。陰性の対照(マウスIgGに
対するFITC抱合ヤギ抗血清)は重ね合わせている(グラフの左端の塗りつぶ
された部分)。
【0078】 クローン1D9および2D6は、プラスチック固定化NIP10−BSA抱合
体(iNIP10−BSA)により、それらのchTCRの抗原媒介連結の際に
IL−2を分泌するよう、活性化できることがわかった。マイクロタイタープレ
ートをNIP10−BSAでコーティングし、次のように検査した。
【0079】 組織培養処理される丸底の96ウェルプレートのウェルを、100μg/ml
から出発してNIP10−BSAの10倍希釈を連続して3段階行ないそれぞれ得
られる希釈物100μlで、受動的にコーティングした。ウェルに結合されたN
IP10−BSAの相対量を、可溶性B1.8scFv抗体フラグメント(15)
を用いてELISAにより算定した。この結合は、マウスλ鎖に対するヤギ抗血
清およびペルオキシダーゼ抱合抗ヤギ/ヒツジmAb GT−34を用いて検出
した。その結果を図7Aにグラフで示す。
【0080】 本発明者らはこの後、NIP10−BSAによりコーティングされたプレートが
1D9細胞および2D6細胞におけるIL−2の生産を刺激する能力について調
べた。約5×104の細胞を、さまざまな量のNIP10−BSA抱合体でコーテ ィングされた丸底96−ウェルプレート中のテトラサイクリンを含まない培地に
おいて、刺激した。データは3つのうち1つの典型的な実験からのものであり、
図7Bに示す。IL−2測定値の標準誤差は15%未満であった。図7Bでは、
1D9細胞についてのデータを白丸で示し、2D6細胞についてのデータを黒四
角で示している。
【0081】 図7Cおよび7Dは、クローン1D9(白丸)および2D6(黒四角)をさま
ざまな量のiNIP10−BSaに24時間さらした実験の結果を示す。図7C
には、生存能力を維持する細胞の数を示している(これはBoehmeおよびLenardo
1993 Leukemia(Baltimore)7,845 に記述された細胞蛍光測定法で測定された )。細胞損失の割合は、100×[1−(抗原性の刺激を受ける生存能力を有す
る細胞の数/何の処置も受けない生存能力を有する細胞の数)]として計算した
【0082】 図7Dは、Vermes他(1995 J. Immunol. Methods 180, 39)に記述されるよう
に、アポトーシス細胞に結合するアネキシン(Annexin)Vによって測定した、 アポトーシスの評価を示す。膜の完全性を失った細胞を区別するために、分析の
前に最終濃度が10μg/mlになるまでヨウ化プロピジウムを加えた。
【0083】 本発明者らは、細胞をある範囲のさまざまな濃度のiNIP10−BSAにさ
らすと(図7A)、低密度から中間密度の抗原密度でIL−2の最適な分泌が見
られ、抗原密度がこのレベルを超えて増加するとその分泌が低下することを見出
した(図7B)。高い抗原密度でのIL−2分泌の抑制は、細胞の生存能力に対
する明らかな用量−応答作用と関連性があった(図7C)。アネキシンV染色に
よって、この細胞生存能力の消失の根底にあるメカニズムがアポトーシスである
ことが明らかになり、両方のクローンは、アポトーシスに対して類似する用量−
応答を示すことが明らかになった(図7D)。
【0084】 chTCR受容体密度と、標的抗原の濃度と、T細胞応答との間の関係をさら
に探るため、さまざまな濃度のテトラサイクリン中に維持された(したがってさ
まざまな密度のchTCRを発現する)1D9細胞によるIL−2の分泌を、さ
まざまな濃度のiNIP10−BSAの存在下で測定した。典型的な実験からの
データを図8のグラフに示す。これはいくつかの興味深い特徴を明らかにしてい
る。
【0085】 予想したとおり、細胞が高密度のchTCRを発現する場合、それを下回ると
きは最大のIL−2応答を誘導することが不可能な抗原のしきい値濃度が存在す
る。同様に、それを下回ると、たとえ細胞を非常に高い濃度の抗原にさらしたと
してもIL−2の分泌を誘導することが不可能な、低いしきい値のchTCR受
容体密度が存在する。これら2つの極値の間には、IL−2分泌の刺激に必要な
しきい値抗原濃度がchTCR発現レベルの増加につれて漸進的に低下していく
、中間の範囲のchTCR密度が存在する。所定の抗原濃度で、IL−2応答の
強度は、chTCRの細胞表面密度が該しきい値レベルを超えて増加すると、最
大レベルまで増加する。受容体の密度が、最大IL−2生産を与えるレベルを超
えてさらに増加すると、T細胞応答は次第に落込み、それに伴ってT細胞の生存
能力が失われ、おそらく結果としてchTCRを介する過剰なシグナル変換がも
たらされる。IL−2応答の受容体に依存する抑制は、TCR発現の最も高いレ
ベルにおいてさえ、低い抗原濃度では見られなかった。また、図8は、T細胞を
最適に刺激することが可能なある所定の抗原濃度に対し、対応する狭い範囲の受
容体密度が存在し、それは、最適なT細胞応答の誘導と相関関係があるというこ
とを示している。この「理想の」受容体密度は、抗原濃度が低いと高い。一方、
それを下回ると抗原濃度に関係なく最大のIL−2応答を引き出すことができな
くなる臨界最小受容体密度に達するまで、抗原濃度が増加すると、「理想の」受
容体密度は減少する。別の興味深い特徴は、高い抗原濃度でのchTCR密度と
T細胞応答の抑制との関係である。グラフは、chTCR密度が低下すると、そ
れは、T細胞応答が広範囲の高い抗原濃度にわたって最適のままである範囲に入
るということを示している。抗原により媒介されるこの応答の抑制は、これらの
中間密度では達成されず、それは抗原濃度が達成可能な最も高い濃度であっても
達成されない。これらのデータは、T細胞の活性化に必要な抗原しきい値濃度を
TCR密度が決めているということを確かなものにするとともに、過剰のTCR
誘発がT細胞応答を抑制するということをさらに明らかにしている(Critchfiel
d他、1994 Science 263, 1139)。しかしながら、この研究の最も重要な発見は 、周囲の抗原濃度に最適に応答するようにTCR密度が正しく合わせられた場合
にのみ、最適なT細胞の活性化が可能になることが明らかになったという点であ
る。したがって、このデータは、免疫応答の過程においてT細胞が受容体密度の
成熟を経験するという仮説に対して強力な支えとなる。
【0086】 T細胞生物学の研究に対する関心および関連性に加えて、本発明者の知見は、
T細胞の標的を癌抗原に定めるための手段として、1本鎖抗体ドメインがTCR
/CD3/ζ複合体の種々のシグナル部分に結合される、キメラ受容体を発現す
るT細胞の養子免疫伝達(Eshar他 1993、Brocker他 1996、ともに上記で引用
)を用いる、治療戦略の開発に関わってくる。このアプローチに対する主な理論
的異論として、通常の組織よりも豊富に癌細胞に発現されるにもかかわらず、癌
抗原の多くは真に腫瘍特異的ではないということである。しかしながら、本発明
者らのデータが示唆するところにより、キメラTCRの発現レベルを固定するこ
とができるはずであり、それによって、工作されたT細胞は、高密度の標的抗原
を発現する癌細胞によって(同じ抗原を低い密度で発現する通常の細胞によって
ではなく)最適に活性化される。
【0087】 例4 この例において、発明者らは、テトラサイクリンにより調節可能なキメラTC
R分子を発現し、NIPハプテンでコーティングされた標的(HeLa S3)
細胞によって刺激される、T細胞の能力を調査した。
【0088】 Jurkat E6−1細胞を、10%FCS、3mMのL−グルタミン、抗生物質
、25mMのHEPES緩衝液(すべてGIBCO-BRL, Gaitersburg, MDより)、お
よび0.4mg/mlのハイグロマイシンB(上述のCalibiochem, San Diego,
CA)で補足されたRPMI1640中に維持した。ヒーラS3細胞(ATCC
CCL−2.2)を、10%FCS、2mMのL−グルタミンおよび抗生物質(
GIBCO)で補足されたDMEM中に維持した。
【0089】 標的細胞のハプテン修飾 ヒーラS3細胞をPBS中で入念に洗浄し、計数し、107/mlの濃度に調 整した。乾燥ジメチルホルムアミド中50mg/mlの新鮮なNIP−CAP−
Osu[アクプリン酸で隔てられた3−ニトロ−4−ヒドロキシ−5−ヨードフ
ェニル酢酸のスクシンイミドエステル]溶液(Genosys Biotechnoligies Inc.,
Cambridge, UK)を、さまざまな量で細胞懸濁液に加え、その最終的な濃度範囲 を1〜10μg/mlとした。これらの細胞を37℃で1時間インキュベートし
、その後10%FCSで補足された冷PBS15mlで3回洗浄した。
【0090】 フローサイトメトリー chTCR分子の発現は、マウスλ鎖に対するFITC抱合ヤギ抗血清を用い
て標準直接免疫蛍光法によりモニターした(Southern Biotechnology Associate
s, Inc., Birmingham, AL)。ハプテンにより修飾されたヒーラS3細胞に結合 されたNIPの相対量を、飽和量の可溶性B1.8scFv抗体フラグメントお
よびマウスλ鎖に対するFITC抱合ヤギ抗血清(Southern Biotechnology Ass
ociates, Inc., Birmingham, AL)を用いて間接的免疫蛍光法により算定した。 最低20,000個の細胞をFACScan(Becton Dickinson)により分析し
た。
【0091】 T細胞の刺激 Jurkat 1D9細胞(5×105/ml)を、テトラサイクリン塩酸塩(Sigma
Chemical CO., St Louis, MO)の不在下または存在下において48時間予めイン
キュベートし、chTCRの表面発現をFACS分析によって調べた。各アッセ
イにおいて、種々のchTCR密度を発現する、5×104のエフェクターJurka
t1D9細胞を、種々のレベルのNIP修飾細胞表面タンパク質を発現する標的 ヒーラS3細胞とともに、培地単独において、あるいは抑制のために本来用いら
れるのと同じ濃度のテトラサイクリンの存在下において、さまざまなエフェクタ
ー:標的(E:T)比で、共培養した。これらの細胞を、丸底96ウェルプレー
ト(Corning, NY, USA)において、37℃、5%CO2、最終容量200μlに おいて、2連で培養し、20時間後、細胞フリーの上澄み液を採取し、ELIS
Aキット(Genzyme Diagnostic, Cambridge, MA)を用いてIL−2の活性につ き検定した。
【0092】 結果 ヒーラS3細胞をさまざまな濃度のNIP−CAP−Osuで標識することに
より、ハプテンにより修飾された細胞表面タンパク質をさまざまなレベルで発現
する、生存能を有する細胞の個体群が、均一なパターンで生成された(図9)。
【0093】 図9には、さまざまなヒーラ細胞個体群のGACSプロファイルを示している
。この最も左端のプロファイル(「con」と印される)は、NIP−CAP−
Osu標識を何ら持たない負の対照細胞である。プロファイル1〜4は、それぞ
れ1、2.5、5または10μg/mlのハプテンで標識されたヒーラS3細胞
のFACS分析により得られたものである。
【0094】 既に述べたように、この研究において分析されたchTCRは、溶液中または
プラスチックへの固定化のいずれにおいても、そのコグネイト抗原(BSAに抱
合されたNIP)の特異的認識を媒介することができ、形質転換されたT細胞に
よるIL−2の生産をもたらす。この例で一貫してわかったことは、テトラサイ
クリンにより処理されていないchTCR発現1D9細胞は、NIPにより修飾
された刺激因子であるHela S3細胞とのインキュベーションの後、特異的
に誘発され、用量に依存する態様でIL−2を生産し得るということである(図
10A〜10C参照)。興味深いことに、IL−2分泌のレベルは、プラスチッ
ク固定化NIP−BSA抱合体に応答して同じ細胞個体群で観察されるものより
も、高かった。このことは、さらなる相乗的なまたは共同刺激性のシグナルが存
在することを示唆する。標識されていないヒーラS3細胞は、Jurkat1D9細胞
を活性化せず(図示せず)、NIPに対する応答の特異性を示した。形質導入さ
れていない親Jurkat細胞は、NIP標識された(図10)または標識されていな
い(図示せず)ヒーラS3細胞によりIL−2を分泌するよう、刺激することが
できなかった。10ng/mlのテトラサイクリンの存在下で24〜48時間イ
ンキュベートされたJurkat1D9細胞は、表面chTCR発現の大部分をダウン
レギュレーションし(1)、その結果、それらの細胞は、E:T比が高くとも、
細胞結合ハプテンによる刺激に非応答性であった(図10)。
【0095】 考察 本発明者らは、ヒトT細胞系に発現する外来遺伝子の薬理学的調節のため、T
RSの要素すべてを含む単一のベクターを用いてきた。TRSは、通常構成的プ
ロモーターによって駆動されるtTA遺伝子と、tTA応答性プロモーター(9
)のすぐ下流にある必要な遺伝子とを含む。TRSをT細胞へ適用しやすくする
ために、本発明者らは、構成的プロモーターの制御下で、ハイグロマイシン選択
可能マーカー遺伝子とともにTRSの両要素をコードする自己充足型プラスミド
ベクターを構築した。この新規なベクターは、本来の2プラスミドに基づくTR
S系(9)での協働トランスフェクションにつきものである効率の損失を克服し
、等しい複製数のtTAおよびレポーター遺伝子ユニットを、同じ染色体の遺伝
子座に直接的なシス立体配置で組込むことを確実にする。
【0096】 この安定した発現系を組込み遺伝子治療法のためのモデルとして用い、本発明
者らは、scFv−TCRζキメラ分子がヒトT細胞系において機能的に発現さ
れ得ること、および、その発現が薬理学的に下方に調節され得、遺伝子修飾され
たT細胞において標的抗原に対する応答性の損失につながることを実証した。テ
トラサイクリンの不在下において、chTCRの発現レベルは、キメラ遺伝子が
強いCMV IEエンハンサー/プロモーターによって駆動されるときに観察さ
れるものに匹敵するものであった。遺伝子発現の効率的なテトラサイクリン依存
的抑制は、研究されたT細胞形質導入体すべてにおいて見られた。使用される用
量および類似体に応じて、chTCRの発現は、より大きいまたはより小さい程
度に抑制できた。このことは、TRSが、T細胞に適用可能であり、VP16ド
メインの明らかに有害な押え込み作用を伴うことなく、トランスアクチベーター
発現の機能的レベルを達成するということを示している。
【0097】 テトラサイクリンより100倍高い効力を示すドキシサイクリンを用いたTR
Sに関する従来の研究では、種々のテトラサイクリン類似体について効力が変化
することが示されている(18)。本発明の系においては、10ng/mlの濃
度のテトラサイクリンで最大の抑制が起こった一方、ドキシサイクリンは100
pg/mlから1ng/mlの範囲にわたってTRPの完全な抑制を引起こした
【0098】 TetまたはDoxにさらされたときのchTCR発現の低下に対する時間経
過は短く、このことは、野生型TCRζ鎖のように、キメラTCRζ鎖が急速な
代謝回転を示すということを示唆している(19)。この点に関し、Jurkat細胞
におけるζ鎖の代謝回転は本来のT細胞におけるものと同様であることに注目す
ると興味深い(19)。遺伝子発現の急速な抑制とは対照的に、ドキシサイクリ
ン除去後のその回復は非常に遅かった。chTCR遺伝子発現の回復の開始まで
の遅延は、抑制に用いられるドキシサイクリンの濃度に直接比例して変化した。
このように持続される抑制、およびテトラサイクリン類似体の除去時に起こる遺
伝子発現の比較的遅い回復は、他の細胞型においても見られ、新たなT細胞免疫
治療法および新たな免疫回避戦略の開発において重要となり得る。
【0099】 キメラTCRの発現は、抗原への暴露に対するIL−2分泌によって明らかに
されるとおり、NIP−BSA抱合体に応答性を与えた。ドキシサイクリンは、
ヒトT細胞に対して他の免疫調節作用を有さない濃度において、さらに感染症の
治療(20)にドキシサイクリンを用いるとき臨床的にもたらされる組織での濃
度よりずっと低い濃度において、この抗原応答性を完全に排除することがわかっ
た。かくして、これらの結果が示すことは、TRSベクターを使用することによ
り、自己免疫病が引き起こされる場合に備えて、再注入される遺伝子組み換えT
細胞をその標的抗原に対して非応答性になるようにする手段を提供できるという
ことである。同様に、工作されたT細胞をそれらの投与前にドキシサイクリンで
処理することにより、所定の時間の間、導入遺伝子の発現を消すことが可能にな
り、これによって、低いレベルの標的抗原を発現し得る正常な組織に対して付帯
的損傷を限定することができる。
【0100】 興味深いことに、抑制が、標的抗原に対する応答性を完全に排除するのに十分
なときでも、TetまたはDoxにより処理されたJurkatT細胞においてchT
CRの発現がいくらか残留することが、FACS分析によって常に検出可能であ
った。これは、細胞が高濃度の多価抗原にさらされた実験系を用いる場合でさえ
も、「オフ」状態で発現されるchTCR分子の数は、効率的なT細胞活性化(
21)を達成するのに十分でないことを示している。TCR分子の発現を所定の
レベルで容易に調節できる能力は、T細胞活性化プロセスの化学量論の研究に関
連し得る。治療的レベルに関し、このことは、標的細胞膜上の異なる表面密度の
抗原に対しT細胞が異なる感受性を示すようにすることができる可能性を示して
いる。
【0101】 トランス遺伝子発現の完全な抑制は、本研究において完全には達成されなかっ
た。使用されるベクターおよび/または細胞型特異的因子の特性は、非誘発状態
において見られる転写の基底レベルに寄与し得る(22、23)。さらに、tT
Aタンパク質の潜在的な免疫原性も考慮する必要がある。本発明者らが使用した
ベクターにおいて、トランスアクチベーターは、テトラサイクリンの存在と関係
なく一定の発現を確実にする構成的プロモーターによって駆動されており、した
がって抑制状態においても、遺伝子修飾されたT細胞に対する免疫応答を誘導す
る可能性がある。しかしながら、エンハンサーのないテトラサイクリン応答性ベ
クターの新世代についてはこの限りではなく、その場合、テトラサイクリンはt
TAタンパク質がTRPに結合するのを防ぎ、よって、自動調節回路によりそれ
自体の発現およびレポーター遺伝子の発現を抑制する(18、24)。この構成
は、トランス遺伝子発現の抑制を向上させ(予備実験において無視できるレベル
まで)、多量のtTAタンパク質が完全抑制状態において顕著に減少するのを確
実にする(24)。
【0102】 要約すると、本発明者らは、単一のテトラサイクリン応答性ベクターを用いる
ことにより、JurkatT細胞においてテトラサイクリンにより抑制可能なキメラT
CR遺伝子の発現が達成されることを明らかにし、さらに、このことが、工作さ
れたT細胞の標的抗原に対する応答性を薬理学的に調節するための便利な方法を
もたらすことを示した。
【0103】
【引用文献】
本明細書中で引用されたすべての刊行物をここに引用により援用する。 1. Mule et al, 1984 Science 225:1487. 2. Rosenberg et al, 1986 Science 233:1318. 3. Eshhar et al, 1993 Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 90: 720. 4. Hwu et al, 1993 J. Exp. Med. 178. 361. 5. Stancovski et al. 1993 J. Immunol. 151: 6577. 6. Brocker et al. 1996 Eur. J. Immunol. 26:1770. 7. Pardoll 1994 Cancer. Curr. Opin. Immunol. 6:705. 8. Yarranton 1992 Curr. Opin. Biotechnol. 3:506. 9. Gossen & Bujard 1992 Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 89:5547. 10. Gossen et al. 1993 Trends Biol. Sci. 18:471. 11. Spits et al. 1985 Eur. J. Immunol. 15:88. 12. Alvarez-Vallina & Hawkins 1996 Eur. J. Immunol. 26: 2304. 13. Patten et al. 1992 J. Immunol. 150:2281. 14. Alvarez-Vallina et al. 1993 J. Immunol.l50: 8. 15. Hawkins et al. 1992 J. Mol. Biol. 226: 889. 16. Weissman et al. 1988 Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 85: 9709. 17. Kloppenburg et al. 1995 Clin. Exp. Immunol. 102:635-641, 18. Hofmann et al. 1996 Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 93: 5185-5190. 19. Ono et al. 1995 immunity 2:639-644. 20. Houin et al. 1983 Br. J. Clin. Pharmac. 16:245. 21. Valitutti et al. 1995 Nature. 375:148. 22. Shockett & Schatz 1996 Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 93:5173. 23. Ackland-Berlund & Leib 1995 BioTechniques. 18:196. 24. Shockett et al. 1995 Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 92:6522
【0104】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】 AおよびBは、前掲の例で述べられた核酸構造の概略図である。
【図2A】 典型的なFACSデータを表わす図である。
【図2B】 典型的なFACSデータを表わす図である。
【図3の1】 典型的なFACSデータを表わす図である。
【図3の2】 典型的なFACSデータを表わす図である。
【図4】 時間に対するキメラポリペプチドの発現を(対照細胞における発
現の百分率として)示すグラフである。
【図5】 AおよびBは、さまざまな濃度のテトラサイクリンまたはテトラ
サイクリン類似体、ドキシサイクリンにさらされたTリンパ球によるIL−2生
産(ピコグラム/ml)のレベルを示す棒グラフである。
【図6A】 外因性作用因子の濃度によって調節されるキメラTCR白血球
活性化分子の発現を示す、[テトラサイクリン](ng/ml)に対する平均蛍
光強度のグラフである。
【図6B】 2つの白血球クローンのFACSプロファイルを示す図である
【図7A】 マイクロタイタープレートをコーティングするのに用いられる
NIP10−BSAの濃度(ng/ml)に対するOD(450nm)のグラフで
ある。
【図7B】 マイクロタイタープレートをコーティングするのに用いられる
NIP10−BSAの濃度(ng/ml)に対する、IL−2生産(pg/ml)
により測定されたT細胞活性化のグラフである。
【図7C】 マイクロタイタープレートをコーティングするのに用いられる
NIP10−BSAの濃度(ng/ml)に対する生存細胞(%)のグラフである
【図7D】 マイクロタイタープレートをコーティングするのに用いられる
NIP10−BSAの濃度(ng/ml)に対するアネキシンV結合(%)のグラ
フである。
【図8A】 種々の標的抗原(NIP10−BSA)密度および種々のchT
CR密度(平均蛍光強度、MFIによって測定)でのIL−2生産(pg/ml
)のカルトグラム地図である。
【図8B】 種々の標的抗原(NIP10−BSA)密度および種々のchT
CR密度(平均蛍光強度、MFIによって測定)でのIL−2生産(pg/ml
)のカルトグラム地図である。
【図9】 NIP含有ハプテンによる標識がある場合(1−4)とない場合
(「con」)のヒーラS3細胞のFACSプロファイルを示す図である(抗N
IP抗体scFvフラグメント(B1.8)、およびマウスλ鎖に対するFIT
C抱合ヤギ抗血清での染色が続く)。
【図10】 A、BおよびCは、異なるエフェクタ:標的比で、1、5また
は10μg/ml(それぞれA、BおよびC)のNIP含有ハプテンでコーティ
ングされたヒーラS3標的細胞により刺激を行った後、NIP応答性T細胞によ
るIL−2の生産(pg/ml)を示す連続した3つのパネルである(最後部の
棒は、テトラサイクリン抑制のないT細胞についての結果を示し、中央の棒は、
テトラサイクリンにより誘導される抑制を用いて得られた結果を示し、最前列の
棒は、NIP特異的キメラT細胞受容体を発現しない負の対照細胞の非応答性を
示す)。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) // A61K 38/00 C12N 15/00 ZNAA 39/395 A61K 37/02 (31)優先権主張番号 60/076,448 (32)優先日 平成10年3月2日(1998.3.2) (33)優先権主張国 米国(US) (81)指定国 EP(AT,BE,CH,CY, DE,DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,I T,LU,MC,NL,PT,SE),AU,CA,J P,US Fターム(参考) 4B024 AA01 AA20 GA11 HA17 4B065 AA93Y AB01 AC14 BA02 CA44 4C084 AA02 AA13 BA03 CA26 MA67 NA14 ZB262 4C085 AA35 BB01 CC03 CC12 CC21 DD62 EE01 4C087 AA01 AA02 BB43 NA14 ZB26

Claims (18)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 細胞の表面に存在する異なる密度の白血球刺激分子に対して
    反応性が異なる白血球であって、前記細胞上の前記白血球刺激分子と前記白血球
    の表面に存在する白血球活性化分子との間の相互作用によって活性化される白血
    球を生産する方法であって、 外因性作用因子に対し濃度感受性である態様において前記白血球活性化分子の
    発現を誘導する核酸配列により、白血球を形質転換すること、および 前記白血球がさらされる外因性作用因子の濃度を変化させることを含む、方法
  2. 【請求項2】 前記核酸配列は、薬剤により調節可能なプロモーターに作動
    可能に結合されている、請求項1に記載の方法。
  3. 【請求項3】 前記白血球活性化分子の発現の調節は、相対的に低い密度の
    白血球刺激分子を発現する標的でない細胞と比べて、相対的に高い密度の白血球
    刺激分子を発現する標的細胞に、前記白血球が優先的に反応するのを可能にする
    ものである、請求項1または2に記載の方法。
  4. 【請求項4】 前記白血球刺激分子は、腫瘍でなく標的でない細胞において
    よりも腫瘍標的細胞において、より高い密度で発現される腫瘍結合抗原である、
    請求項1、2または3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 【請求項5】 前記白血球刺激分子は癌胎児性抗原である、請求項1〜4の
    いずれか1項に記載の方法。
  6. 【請求項6】 前記白血球はTリンパ球である、請求項1〜5のいずれか1
    項に記載の方法。
  7. 【請求項7】 前記白血球活性化分子はキメラのポリペプチドである、請求
    項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
  8. 【請求項8】 前記白血球活性化分子は、細胞内シグナルドメイン、白血球
    細胞膜に該分子を保持しているトランスメンブラン・ドメイン、および細胞外ド
    メインを含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
  9. 【請求項9】 前記白血球活性化分子は、CD3複合体の鎖の少なくとも1
    つの細胞内シグナルドメイン、または共刺激性分子の細胞内シグナルドメインを
    含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
  10. 【請求項10】 前記白血球活性化分子は、前記白血球刺激分子に特異的な
    結合を有するドメインを含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
  11. 【請求項11】 前記外因性作用因子は、テトラサイクリンまたはその類似
    体(本明細書中に定義される)である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の
    方法。
  12. 【請求項12】 外因性作用因子に対し濃度感受性である態様において白血
    球活性化分子を発現する核酸配列で形質転換された白血球であって、 前記白血球活性化分子と細胞の表面に存在する白血球刺激分子との間の相互作
    用により活性化されるものであり、 異なる密度の白血球刺激分子に対し、反応性が異なるものであり、かつ、 白血球刺激分子の密度が相対的に高い標的細胞と、白血球刺激分子の密度が相
    対的に低い標的でない細胞とを識別するものである、白血球。
  13. 【請求項13】 請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法によって生産
    されるものである、請求項12に記載の白血球。
  14. 【請求項14】 Bリンパ球またはTリンパ球である、請求項12または1
    3に記載の白血球。
  15. 【請求項15】 生理学的に許容される希釈剤中に請求項12、13または
    14のいずれか1項に記載の複数の白血球を含む、治療方法に用いるための組成
    物。
  16. 【請求項16】 請求項15に記載の組成物を製造する方法であって、 治療される対象から白血球の試料を得ること、 外因性作用因子に対し濃度感受性である態様において白血球活性化分子の発現
    を誘導する核酸配列で前記白血球を形質転換すること、および 前記形質転換された白血球を生理学的に許容される希釈剤と混合することを含
    む、方法。
  17. 【請求項17】 ヒトまたは動物の対象を治療する方法であって、 請求項15に記載の組成物を調製すること、 前記対象に前記組成物を投与すること、および 必要に応じて、前記投与された白血球中の白血球活性化分子の発現レベルを変
    化させるよう、前記対象に外因性作用因子を投与することを含む、方法。
  18. 【請求項18】 ヒトの対象において不要な細胞を排除するための組成物の
    製造における、請求項12に記載の白血球の使用。
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