JP2001514624A - 多座イミン類およびそれらの金属錯体類 - Google Patents

多座イミン類およびそれらの金属錯体類

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Abstract

(57)【要約】 新規な中性の水溶性金属錯体、特に、ランタニド金属類、イットリウム、インジウムまたはガリウムを含有するものであり、それらの製造方法、それらの製造に関連するリガンド、それらを含有する医療用製剤、および診断方法におけるそれらの使用が開示されている。化合物は、式(I): [式中、Aは、N,CR1,P,P=O,シス、シス、シス-1,3,5-三置換-シクロヘキサンまたはN,N',N"-三置換-トリアザ9〜14員マクロ環状環であり、L1,L2,L3は、C1 〜4アルキレン、C4 〜6シクロアルキレンまたはC4 〜6o-アリーレンから独立して選択されるリンカー基であり、Y1,Y2,Y3は、-NH2,B(=O)OZ,-N=CR-B(=O)OZ,-NR-CR2-B(=O)OZ,-N[CR2-B(=O)Q]2および-O-CR2-B(=O)OZ(ここで、BはCもしくはPR2であり、各Qは独立して-OZもしくは-NR2であり、そしてZはHもしくは対イオンである。)から独立して選択され、各RおよびR1基はH、C1 〜5アルキル、C1 〜5アルコキシアルキル、C1 〜5ヒドロキシアルキル、C1 〜5アミノアルキル、C5 〜10アリールまたはC1 〜6フルオロアルキルから独立して選択され、R2はOH、C1 〜6アルキル、C1 〜6アルコキシアルキル、C1 〜6フルオロアルキル、C1 〜10アルコキシまたはC5 〜10アリールであり、但し、Y1,Y2およびY3のうちの少なくとも一つは-N=CR-B(=O)OZである。]によって表される。

Description

【発明の詳細な説明】 多座イミン類およびそれらの金属錯体類 本発明は、金属のイオン類、特にガドリニウム、サマリウムまたはイッテルビ ウムのようなランタン系金属ならびにイットリウムのような類似の化学現象を示 すことが知られている金属類、さらに主族(main group)金属であるインジウムお よびガリウムのような金属のイオン類を錯体化する新規なリガンドに関する。 式: のイミンおよびカルボキシレートドナーを有するα−イミンカルボン酸は、単一 金属中心に5−員のキレート環(すなわち、単核金属錯体)を形成する金属イオ ンのための二座リガンドとして機能することが知られている。金属錯体は、遷移 金属であるモリブデン、鉄、ルテニウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、銅 、パラジウムおよび白金とさらに主族金属のアルミニウムおよび亜鉛で調製され てきた[M.Yamaguchi等Inorg.Chem.,35,143(1996)]。 四座N22ジイミンジカルボン酸類似体が調製され、これは単一金属中心をキ レート化するのと対照的に、コバルトまたはイリジウムの二核金属錯体を形成す る二個の遷移金属中心を橋かけすることが示されている[K.Severin等,Z.Nat urforsch.B,50,265,(1995)]。 M=Co,Ir リンカー=-CH2CH2-またはp-フェニレン 多座シッフ塩基リガンドおよびそれらのランタニド金属との錯体は公知である 。例えば、Orvig等[Inorg.Chem.,27,3929(1988)]は七座N43リガンドを潜在的 に調製し、それらのランタニド金属との金属錯体を研究した。 リガンドがN43七座ドナーとして作用する式Ln(リガンド)のH3hatren 、H3datrenのおよびH3tracのランタニド(Ln)錯体は不安定であることが判 明しており、配位されたドナー原子の加水分解または溶媒置換により容易な分解 を受ける。Orvig等は中性イッテルビウム錯体Yb(trac)のX線結晶構造を後に報 告した[J.Am.Chem.Soc.,113,2528(1991)]。この七座錯体は、厳密な無水条件下 でのみ明白に特性化できる。水の存在下におけるこれらの錯体の急激な加水分解 により、Orvig等はこの種のランタニド錯体は非常に不安定なのでMRIコントラス ト剤として有用であるという結論に導いた。次の研究は、ソルボリシスの容易性 がイミン結合の存在に帰するので、C=Nイミン結合の代わりに飽和したCH− NH結合をもつ類似のリガンド系を開発することに焦点を当てた。 インビトロおよびインビボの双方で加水分解的開裂を受ける放射性金属(99mTc )配位イミンの可能性は以前に注目されていた[G.F.Morgan等,J.Nuc1.Med.,32,50 0(1991)]。研究したリガンドは四座N3OリガンドMRP20だった。 今、イミンC=N結合を組み入れる新規な種類の三脚(tripoda1)キレート剤が 、中性のpHにおいて水の存在下で比較的安定なランタニド錯体およびその他の 金属との錯体を形成することが見出された。 第一局面において、本発明は式: [式中、AはN、CRI、P、P=O、シス、シス、シス−1,3,5−三置換− シクロヘキサンまたはN,N',N"−三置換−トリアザ9〜14員マクロ環状環 であり;L1、L2、L3はリンカー基であり、C1 〜4アルキレン、C4 〜6シクロ アルキレンまたはC4 〜6o−アリーレンから独立して選択され;Y1、Y2、Y3は −NH2、−B(=O)OZ、−N=CR−B(=O)OZ、−NR−CR2−B(=O)OZ、−N[CR2−B(=O)Q ]2および−O−CR2−B(=O)OZ(式中、BはCまたはPR2であり、Qは独立して−OZ または−NR2であり、そしてZはHまたは対イオンである。)から独立して選択さ れ;各RおよびR1基はH,C1 〜5アルキル、C1 〜5アルコキシアルキル、C1 〜5ヒド ロキシアルキル、C1 〜5アミノアルキル、C5 〜10アリールまたはC1 〜6フルオロア ルキルから独立して選択され;R2はOH,C1 〜6アルキル、C1 〜6アルコキシアルキ ル、C1 〜6フルオロアルキル、C1 〜10アルコキシまたはC 5 〜10 アリールである;但し、Y1、Y2およびY3のうちの少なくとも1個は−N= CR−B(=O)OZである。]を有するリガンドを提供する。 Aは好ましくはNまたはCR1であり、L1、L2およびL3は好ましくはC1 〜3ア ルキレン、最も好ましくはC1 〜2アルキレンである。N,N',N”−三置換−ト リアザ9〜14員マクロ環状環は好ましくは9〜12員環であり、最も好ましく は1,4,7−三置換−1,4,7−トリアザシクロノナンである。ランタニド 金属類およびイットリウムの場合、Y1、Y2およびY3は好ましくは−O−CR2−B (=O)OZ、−N[CR2−B(=O)Q]2および−N=CR−B(=O)OZから選択される。最も好適な リガンドは、AがNであり、L1、L2およびL3がすべて−CH2CH2−であり、B がCである。好ましくはZはHまたはアルカリ金属またはC1 〜10テトラアルキル もしくはテトラアリールアンモニウムまたはホスホニウムイオンである。 本発明のリガンドは、ランタニド金属類もしくはイットリウムのような同様の 化学現象もつ金属から適切に選択されるか、またはその他適切に選択されるイン ジウムおよびガリウムのような主族金属の金属錯体を調製するのに使用できる。 金属イオンが常磁性または放射性であるとき、当該金属錯体は、特にヒトのイン ビボ診断映像のために使用できる。したがって、常磁性金属錯体はMRIコントラ スト剤として有用であり、放射性金属錯体はインビボ映像または放射線療法のた めの放射性医薬品として有用である。当該金属錯体は、金属原子がX線に対して 不伝導性、すなわち放射線不透過性であるという事実を使用するX線コントラス ト剤としてインビボ診断映像のためにも有用であり得る。 AがNであり、L1、L2、およびL3の各々がエチレンでありそしてY1、Y2 およびY3の各々が−N=CR−C(=O)OZであるとき、金属錯体は式(1): を有し得る。 本発明の金属錯体は、同じかまたは異なることのできる1個またはそれ以上の 金属イオンを含むことができる。多核錯体は利点のある特性を有し得る。例えば 、一定の金属クラスターは超常磁性特性を有し、それ故、MRIコントラスト剤と して特に有用である。本発明の金属錯体は1〜6個の金属原子を有し得る。MRI またはX線コントラスト用途のために、錯体は、好ましくは1〜4個の金属原子 を有する。放射性医薬品用途のためには、錯体は、好ましくは単一金属原子を有 する。すなわち、単核である。金属錯体の金属が放射性金属であるとき、それは ポジトロンエミッター(例えば、68Ga、132La、150Tb、155Dyもしくは161Er)ま たはγ−エミッター(例えば、111In、113mInもしくは67Ga)のいずれかである ことができる。MRIに使用するための適切な金属イオンは、常磁性ランタニド金 属イオンであるガドリニウム(III)、サマリウム(III)、エルビウム(III) 、テルビウム(III)、イッテルビウム(III)、ジスポロシウム(III)、ホル ミウム(III)、ネオジム(III)およびプラセオジム(III)がある。好適な常 磁性金属イオンはガドリニウム(III)およびサマリウム(III)である。診断映 像のために最も好適な放射性金属はγ−エミッター、特に111In、113mInおよび6 7 Gaである。一定のα−エミッターまたはβ−エミッター放射性核種の金属錯体 は、ガンのような種々の疾病の放射線療法のための放射性医薬品として有用であ り得る。β−エミッターは、90Y、114In、115mIn、140La、149Pm、153Sm、159Gd 、161Tb、165Dy、166Ho、169Er、175Ybおよび177Luから適切に選択され得る。放 射線療法用途のために好適なβ−エミッターは、90Y、153Sm、159Gd、165Dy、16 9 Er、166Ho、175Ybおよび177Luである。放射線療法のために最も好適なβ−エミ ッターは、90Y、153Smおよび166Hoである。X線コントラスト映像のために適切 な金属には、ガドリニウム、ジスポロジウム、ホルミウムおよびプラセオジムが ある。本発明のリガンドは鉱石から金属を抽出するのにも使用できる。ランタニ ドおよび関連金属についてのリガンドの親和力は選択的錯体形成の基礎を提供す る。抽出しようとする金属(単独または複数)は中性またはアルカリ性条件下で 錯体化されることができ、必要に応じ、分離・精製し、次いで、金属錯体の酸− 選択性を使用して、酸性条件下でリガンドが除かれる(下記参照)。 本発明のリガンドは、式R(C=O)B(=O)OZのα−ケト酸と式A(L1Y1)(L2Y2)(L3Y3) (ここで、Y1、Y2およびY3のうちの少なくとも1個は有機溶媒中でNH2である)の 適切なモノ−、ジ−もしくはトリ−一級アミンとの縮合により調製され得る。生 成した水は、場合により、例えば、ベンゼン中で共沸蒸留または乾燥剤の添加に よりその場で除去され得る。次いで、単離したリガンドを関心の金属イオンを用 いて第2工程で反応させて所望の金属錯体を得ることができる。または、関心の 金属イオンの存在下で上記の縮合反応を都合良く行うことができ、この場合、金 属錯体は一工程処理でその場で直接形成する(いわゆる、金属テンプレート合成 :metal template synthesis)。このようにして金属錯体を調製する場合、遊離 リガンドは、問題の金属に対してより積極的な競合性リガンドを使用して当該金 属から元のリガンドを置換することにより得ることができる(すなわち、トラン キレーション)。この置換性リガンドは、クラウンエーテル、多座マクロ環状リ ガンド、例えば、DOTAもしくはシアン化物、スルフィド(硫化水素で処理す ることにより)またはその他の当業者に適切な公知の置換性リガンドから適当に 選択され得る。 金属イオンの電荷およびリガンドのイオン化の程度に依存して、本発明の金属 錯体は荷電したまたは中性(すなわち、非イオン性)のいずれかであることがで きる。中性金属錯体は、錯体上の電荷の不存在が、当該錯体が過度に親水性置換 基を有しないなら、細胞膜や血液脳関門のような脂質膜を通過するのに足る脂肪 親和性であるということを意味するので好ましい。したがって、このような錯体 は、脳または脊髄映像に特に有用である。中性の脂肪親和性の金属錯体は細胞膜 を通過することもでき、それ故、診断映像のための血液細胞標識化や放射線滑膜 切除のような相互空洞形成療法ならびに脳映像を含むその他のある範囲の用途に 有用であり得る。置換基R、R1およびR2を適切に変化させることにより所望の 生体内分布特性を最適化するために金属錯体の脂質親和性を調整することができ る。 本発明の金属錯体は、中性条件(pH7.0±0.5)またはアルカリ条件( pH8.0〜14)に比較してより低いpH(例えば、pH4〜5.5)におい てより速い加水分解を受けることが見出されている。NMRの検討によると、加水 分解が対応するアルデヒドまたはケトンの発生と同時に金属に配位したC=Nイ ミン結合の不可逆的開裂をもたらすことが示されている。2個以上の配位イミン 結合が存在する場合、加水分解は、段階的な方式で、第1のイミン結合加水分解 よりもより速い第2および第3イミン結合の加水分解が起こると思われる。金属 加水分解生成物はリガンド中のイミン結合の数と金属の種類とに依存する。1ま たは2個しかイミン結合がない場合、生成物は部分的に加水分解されたリガンド の金属錯体であることが予期される。ランタニドアミン錯体は水性溶液中で不安 定であり、それ故、3個のイミン結合を持つランタニドおよび同様の金属錯体に ついては、最終生成物は遊離(すなわち、錯体化されていない)金属イオンであ ると思われる。 生物系の選択される領域ではpHがより低いことがある。これらの領域には、 pHが4.5である多形核白血球(PMN)のリソソーム;炎症性滑液(リソソーム 酵素に富んでいる);慢性低酸素領域(標準の組織よりもpHが0.6〜0.8 単位低いことがあり、時々pH5.8程度の低さ)または腫瘍のようなその他の 脈管形成部位、炎症もしくは血栓部位等がある。これは、金属錯体が生物系にお いてより低いpHの領域に金属イオンを選択的に送達するのに有用であり得るこ とを意味する。したがって、金属錯体は、より低いpHの部位に関心の金属イオ ンを運搬し、そこで比較的速い加水分解が金属イオンの選択的トラップまたは放 出をもたらすであろう。錯体化されていない金属イオンまたは配位イミン結合の 加水分解からもたらされる親水性がより高い金属錯体は細胞膜を一層通過しにく くなり、それ故、関心の低pH領域において限局化されることになるであろう。 もっと中性(典型的にはpH7.0〜7.4)の哺乳類の体(またはその他の生 物系)のその他の領域において、金属錯体は殆どが無傷のままであり、それ故、 金属イオンは遊離したままであり、濃度勾配方向に移動し、クリアランスを受け る。この選択的な目標化はインビボでの診断映像または放射線療法のいずれかの ために放射性金属の選択的放出に有用であることができる。PMNのリソソームの pHが比較的低い(約pH4.5)ことが知られているので、本発明の金属錯体 はPMN細胞膜を通過でき、リソソーム中のより低いpH環境中で比較的速い加水 分解を受ける。これは、その他の血液細胞(特に、大部分の血液細胞を形成 する赤血球)がリソソームを有しないので、その他の血液細胞の存在下でPMN細 胞を選択的に標識する方法を提供できる。白血球はインビボの感染または炎症部 位で濃縮することが知られているので、標識したPMN細胞は感染または炎症の診 断映像のために使用できる。PMN細胞の標識化はインビトロでの細胞調製または 全血液試料のいずれかで行うことができ、あるいは、金属錯体の静脈内投与に続 いて、インビボで血流中において直接細胞の標識化を充分に選択ができる。 選択的低pH金属送達のための好適なキレート剤はα−イミノカルボキシレー ト誘導体である。何故なら、この種のリガンドの金属錯体が約pH5未満で加水 分解速度の顕著な上昇を示すからである。カルボン酸のpKaは、pHの範囲が 4〜5において最初のプロトン付加の部位が配位されたカルボキシレート置換基 であるようなものであると思われる。これは、金属−配位Y基が水や遊離ピルビ ン酸のような競合性ドナー基により置換されるという効果のために、配位された Y基の金属ドナー能力を弱める。次いで、配位されていないイミンの加水分解が 続く。R基の変動が加水分解速度に大きく影響を与え得ることも見いだされた( 実施例8および9参照)。R=MeおよびEt誘導体は、双方とも、中性のpH 条件で有利に遅い加水分解速度を与えるが、R=Etについて、R=Meのとき よりも加水分解はわずかに速く進行することが見いだされた。グリコレート(R =H)誘導体は、緩衝化されていない(中性)溶液中において3分未満で完全な 加水分解を受け、NMRスペクトルをとるのに十分でないほど速く加水分解する ことが判明した。R=i−Prのとき、加水分解速度に著しい増加がある。これ は、多分、アーム間の立体的反発のためであろう。これにより、R基を変化させ ることにより、本発明の金属錯体の加水分解速度についての制御が達成できるこ とが示される。この情報を使用して、所望の用途に当該金属錯体の特性を調整で きる。 加水分解(および多分加水分解速度)に対する感受性も、いかに多くのY1、 Y2およびY3基が−N=CR−B(=O)OZであるかに依存して調節できるものと考えら れる。配位イミン結合の数が多いほど、加水分解の予想される容易性が高い。 式(1)のランタニド(III)[Ln(III)]錯体が完全な加水分解を受けるとき、最 終生成物は遊離水和ランタニド金属(III)イオンである。MRIコントラスト剤用 途に必要なヒトの投与量では、遊離ランタニド(III)イオンはインビボで毒性 作用 を示す。しかし、本発明は、Y1、Y2、Y3部分のうちわずかーまたは二個のみ がイミン結合を含有する場合のリガンドも提供する。イミンを含有しないY基は 加水分解を受けると予期されず、故に、このような基は、イミン結合を含有しな いY基(1個またはそれ以上)が加水分解されるとき、残留金属キレート化能力 のための手段を提供する。したがって、例えば、錯体5(図式5)は、加水分解 されたリガンドが八座であるので、加水分解に続いてランタニド金属(III)イ オンを保持すると期待され得る。したがって、有意なヒト投与量が含まれる場合 のMRIおよびその他の用途のためには、ランタニド金属錯体がわずか1個または 2個のみしかイミン結合を有しないことが好ましく、最も好ましくは1個しかイ ミン結合を有しない。さらに、錯体5は水分子の配位のための配位部位を与えず 、したがって、比較的に弱いMRI強化を与えることが期待される。しかし、低い pHの領域では、金属錯体5は加水分解し、リガンドにより与えられる減少数の ドナー部位を有する生成物を与え、それ故、水分子の配位をもたらす。生成物錯 体は、したがって、かなり多くのMRI強化特性を示すことが予期される。これら の特性は、人体内の低いpH領域に対するMRI強化の選択的送達および場合によ り、トラップの可能性を許容する。 本発明の金属錯体がヒトの用途のために意図されるとき、当該錯体は経口、髄 腔内または(好ましくは)静脈内のいずれかで投与されることができる。滑液に 対する本剤の投与の特殊なケースでは、熟達した医者により、滑液中(関節内注 入)に本剤を直接注入できる。ヒト用途のこのような薬剤は、場合により、予充 填済み滅菌注射器中の単位投与形態で供給される。金属が放射性金属の場合、予 充填済み注射器は作業者を放射線量から保護する注射器シールドを備えている。 金属錯体は、キットの形態でも供給され得る。キットは、好ましくは、滅菌され 、リガンドまたは典型的には凍結乾燥形態のリガンドのその場製造のための試薬 のいずれかを含有する。このキットは関心の金属イオンで再構成され所望の金属 錯体を与える。これらのキットまたは予充填注射器は、場合により、緩衝剤、薬 学的に許容できる可溶化剤(例えば、シクロデキストリン、プルロニック、ツイ ーンのような界面活性剤または燐脂質)、薬学的に許容できる安定剤もしくは抗 酸化剤(例えば、アスコルビン酸、ゲンチシン酸もしくはパラアミノ安息香酸) また は塩化ナトリウムもしくはマンニトールのような凍結乾燥用の増量剤(bulking a gent)のような別の成分を含有できる。 下記の実施例は本発明を例証する。実施例1および4〜6は本発明のリガンド の合成を与える。実施例2は種々の置換基(R)を持つイットリウム錯体の製造 法を与える。実施例3はインジウム錯体の合成を与える。実施例7は不斉リガン ドおよびその金属錯体の合成を与える。実施例8および9は異なるpH値におけ る加水分解の速度差の証拠を与え、その速度がリポソームの存在により本質的に 影響を受けないことを示す。実施例10は、金属錯体がリポソームを浸透できる (すなわち、生体膜を通過できる適切な性質を有する)ことを示す。実施例10 は、リポソーム内にトラップされた金属の量がpHが低くなるにつれて増加する ことも示す。実施例11は、金属錯体が有用なMRI緩和特性(relaxivity propert ies)を有することを示す。これらの実施例は、本発明の金属錯体が水溶性であり 、脂質膜を通過でき、血液や細胞質中に見いだされるような中性pHよりもリソ ソームの内部に関連する酸性pHにおいてイットリウム(III)がより速く放出 することを示す。これらの結果は、リソソームの細胞のようなより低いpHであ る生物系の領域へ金属イオンの選択的送達およびトラップに対してこれらの錯体 が潜在的利用性を有することを示す。 図1は、(2−アミノエチル)ビス(3−アザ−4−カルボキシ−3−ペンテ ニル)アミンのインジウム錯体のX線結晶構造を示す。 図2は、トリス(3−アザ−4−カルボキシ−3−ペンテニル)アミンのサマ リウム錯体のX線結晶構造を示す。 図3は、Aが1,4,7−トリアザシクロノナンである場合のリガンドのイット リウム錯体のX線結晶構造を示す。 実施例1:トリス(3−アザ−4−カルボキシ−3−ペンテニル)アミンの合成 ピルビン酸ナトリウムを室温においてメタノール中で一部溶解した。トリス( 2−アミノエチル)アミン(tren、0.33当量)を加え、得られた混合物を2 時間還流し、淡黄色の溶液を得た。この溶液を冷却し、過剰のエーテルを加える と、白色沈殿としてトリス(3−アザ−4−カルボキシ−3−ペンテニル)アミ ンを 得た。 実施例2:トリス(3−アザ−4−カルボキシ−3−ペンテニル)アミンのラン タニド(Ln)錯体および類似体の合成方法A ピルビン酸ナトリウム(330mg、3ミリモル)を室温においてメタノール (40cm3)中で一部溶解した。得られた溶液を撹拌し、1ミリモルの適切な 金属(III)塩化物を加え、次いで、トリス(2−アミノエチル)アミン(tren 、146mg、1ミリモル)をゆっくりと(1分間)加えた。trenを加えている 間、時々Ln(OH)3の沈殿が形成するが、これは常に素速く再溶解した。次いで、 得られた無色の澄明溶液を2時間加熱して還流した。次いで、この溶液を冷却し 、過剰のEt2O(250cm3)を加え、白色沈殿を得た。これを重力下で濾過し た。得られた沈殿を、濾過して痕跡のメタノールを除きながら、さらにEt2O(1 00cm3)で洗浄した。得られた白色固体を減圧下で乾燥した。マイクロピペッ ト中に形成したSephadex LH-20カラムにより前記生成物のメタノール濃縮溶液を 溶離し、重力下で溶液を通過させることによりNaC1不純物の除去を行った。錯体 −NaC1混合物の収率は以下の通りであった。 金属: Y Yb Gd Sm Pr Lu La Sr 収率(%)87-99 97 95 92 91 96 87-91 32 Y(III)錯体: R=H,Et,i-PrおよびPhに相当するリガンドの対応Y(III)錯体類似体(図式1 参照)を適切なa−ケトンカルボキシレートナトリウム塩を使用して同じ方法を 使用して合成した。D2O中の特定したリガンドのY(III)錯体についての1H NMRデータを以下に示す。 R=Et、トリス(3−アザ−4−カルボキシ−3−ヘキセニル)アミン:(pH=7.0緩 衝化した)、δ=3.61(t,2H),2.96(t,2H),2.30(q,2H),0,76(t,3H)ppm R=i-Pr、トリス(3−アザ−4−カルボキシ−5−メチル−3−ヘキセニル) アミン:(pH=7.0緩衝化した)、δ=3.64(t,2H),2.97(t,2H),2.84(septet,1H),0.9 9(d,6H)ppm R=Ph、トリス(3−アザ−4−カルボキシ−4−フェニル−3−ブテニル)ア ミン:(緩衝下していない)、δ=7.46(m,3H),7.27(m,2H),3.78(br s,2H),2.99(br s,3H)ppm方法B 実施例1から単離したリガンドを実施例2の金属とメタノール中で反応させ、 上記方法Aで記載したのと同じ金属錯体を殆ど定量的収率で得た。Sm(III) 錯体のX線結晶構造を図2に示す。 実施例3:(2−アミノエチル)ビス(3−アザ−4−カルボキシ−3−ペンテニ ル)アミンのインジウム錯体の製造 InCl3、trenおよびピルビン酸ナトリウムを使用して実施例2の方法にしたが った。 Et2Oを添加しないでインジウム(III)金属錯体を結晶化させ、収率は72% だった。In(III)錯体のX線結晶構造は、三本のtrenアームの内の二本のみがシ ッフ塩基縮合を受けたことを示す(図1参照)。 実施例4:トリス(2−アミノプロピル)アミン[C3-tren]の合成 これはこの三脚アミンの新規な合成である(図式2参照)。 (i)トリス(2−シアノエチル)アミンの合成 撹拌下、30℃の28%アンモニア水溶液(61g,1モル)に、滴下すると その時第2相が僅かしか存在しないかまたは全く存在しないような速度で、アク リロニトリル(110g,2モル)を滴加した。2時間30℃で撹拌を継続し、 次いで、水(350cm3)およびさらにアクリロニトリル(110g,2モル )を加えた。得られた混合物を52時間75℃で撹拌した。次いで、水および過 剰のアクリロニトリルを減圧下で除去した。残留液体を放置して結晶化させた。 熱エタノールから再結晶をし、無色透明の針状結晶を得た。収率:73% (ii)トリス(2−アミノプロピル)アミンの合成 トリス(2−シアノエチル)アミン(2.80g,15.9ミリモル)をBH3.THF中 に溶解させ、窒素雰囲気下48時間還流した。この溶液にメタノール(約20c m3)を激しく撹拌しながら、もはやガスが発生しなくなるまで滴加した。得ら れた溶液を真空下で蒸発させて乾燥し、得られた白色沈殿を6M塩酸(250c m3)中で溶液が澄明になるまで還流した。減圧下で塩酸を除去し、得られた固 体を最低量の水に溶解させた。この溶液を2分割した。各部を塩基性イオン交換 カラム(DOWEXイオン交換樹脂、20〜50メッシュ)に付し、アミンを水中( 約250cm3)に溶離した。減圧下、水を除去し澄明な油状物としてトリス( 3−アミノプロピル)アミン(1.78g,59%)を得た。 実施例5:リン含有リガンドの合成 BがPのとき、アシルホスホネート塩よりリガンドを調製できる(図式1参照) 。要求されるアシルホスホネートはKaraman等の方法[R.Karaman,A.Goldblum,E.B reuer,H.Leader,J.Chem.Soc.Perkin Trans.1,1989,765-774]により調製できる 。例えば、トリメチルホスファイトと適切に選択した酸クロリドRCOClとの5℃ における反応により、高収率でジメチルアシルホスホネートを得る。ジメチルア シルホスホネートとヨウ化ナトリウムとの乾燥アセトン中(または乾燥MeCN中Li Br)の反応により、高収率でメチルアシルホスホネート一塩を得る。 次いで、3当量のメチルアシルホスホネート一塩と1当量のトリス(2−アミノ エチル)アミンおよび1当量の選択した金属とをメタノール中2時間還流下で反 応させることにより金属トリ−イミノ−トリ−ホスホネート錯体を形成する。次 いで、エーテルを添加して得られた生成物を沈殿化し、Sephadex LH-20カラム中 で溶離させることにより精製することができる。 実施例6:[9]aneN3に基づくマクロ環状イミノカルボキシレート錯体の合成 (i)1,4,7−トリス(シアノメチル)−1,4,7−トリチザシクロノナンの 合成 [9]aneN3.3HBr(3.0g、8.07ミリモル)、クロロアセトニトリル(1.9 g、25.2ミリモル)、およびトリエチルアミン(10g、0.099モル) を150cm3のエタノール中で窒素雰囲気下24時間還流した。冷却後、ロー タリーエバポレーターにより溶媒を除去し、赤色油状物を得、これをCHCl3(1 00cm3)に溶解させ、水洗(3×100cm3)した。有機相を集め、MgSO4 で乾燥させ、濾過し、ロータリーエバポレーターにより乾燥させた。得られた黄 色油状物を真空下乾燥させ、淡黄色の固体を得た(1.052g、4.27ミリ モル)。収率:53% (ii)1,4,7−トリス(アミノエチル)−1,4,7−トリアザシクロノナ ンの合成 1,4,7−トリス(シアノメチル)−1,4,7−トリアザシクロノナン(0. 320g、1.23ミリモル)およびTHF(40cm3)中のBH3.THF 1M溶液を窒 素雰囲気下48時間還流した。冷却後、水(5cm3)を加えることにより過剰 のボランを破壊し、次いで、得られた容器を真空下乾燥した。得られた白色固体 を50cm3のHCl 7M中に溶解させ、還流下40時間加熱した。冷却後、得られ た溶液を真空下で乾燥させ、白色固体を得た。この固体を最低量の水に溶解させ 、1M水酸化ナトリウム溶液で活性化させたDOwex 1×8-200カラム(1 0g)中に得られた溶液を通した。減圧下で溶媒を除去し、無色の油状物を得た (0.270g、1.045ミリモル)。収率:85% (iii)Ln(III)錯体[Ln(L)](Ln=Y,Sm,La,Yb)の合成 Y(III)錯体の合成は典型的である。すなわち、 1,4,7−トリス(アミノエチル)−1,4,7−トリアザシクロノナン(39 .8mg、0.154ミリモル)、ピルビン酸ナトリウム(50.9mg、0. 462ミリモル)および硝酸イットリウム(56.2mg、0.154ミリモル )を2時間メタノール中(30cm3)で加熱して還流した。冷却後、溶媒量を 減少させ、ジエチルエーテルを加えると、淡黄色固体を得た。この固体を濾過し て除き、真空下で乾燥させた。LH-20 Sephadexカラム中に得られた固体の濃縮メ タノール性溶液を通過させることによりイットリウム錯体から硝酸ナトリウムを 除去した。ジエチルエーテルを加えて、白色固体を得た(61.2mg、0.1 1ミリモル)。収率:71.4%。室温で錯体のメタノール溶液中にジエチルエ ーテル蒸気を拡散させることによりX線分析に適した単結晶を得た。 マススペクトル(エレクトロスプレー)m/z=577(M+[C21H33N6O6Y+Na+]) Ln=Y,Sm,La,Ybの錯体についてこの手順を成功裡に完了し、そのすべてが単結 晶X線回折を特徴とした。これらの構造はすべての錯体が異性体構造であり、Ln 中心に9配位が観察された(図3)。その他のランタニド金属イオンは、同様な方 式でこれらのマクロ環状イミノカルボキシレートリガンドに結合することが期待 できる。 実施例7:不斉錯体の合成および応用 図式5はこのような不斉三脚リガンドがどうしたら合成できるか例証する。 (i)1の合成 乾燥THF(50cm3)中にBOC-ON(4.92g、20ミリモル)を溶解した。 この溶液を30分にわたって急速撹拌下のトリス(2−アミノエチル)アミン( 2.92g、20ミリモル)の0℃乾燥THF(300cm3)溶液に滴加した。得 られた反応混合物を273Kで4時間撹拌した。減圧下、溶媒を除去すると、濃 厚な黄色油状物が残った。この油状物を沸騰エーテル中に再溶解させ、10時間 冷却し、第2の黄色油状物が分離し、これを廃棄した。減圧下、上澄み溶液から 溶媒を除去し、第3の黄色油状物(impure 1)を得た。収率:67% 二重保護誘導体N(CH2CH2NH2)(CH2CH2NHBOC)2を同じ方法を使用して合成できたが 、しかし、2当量のBOC-ONを使用した。 (ii)4の合成 CHCl3(50cm3)中の2−ブロモエチルアセテート(7.01g、42ミリ モル)の溶液にトリス(2−アミノエチル)アミン(1.02g、7.0ミリモ ル)を加えた。得られた混合物を室温で2時間撹拌し、白色沈殿を与えた。この 反応混合物を濾過した。1H NMR分析により、白色沈殿が水素添加trenの臭化物塩 であることが明らかになった。減圧下、濾液から溶媒を除去し、褐色油状物を得 た。真空下、60℃で蒸留することにより未反応2−ブロモエチルアセテートを 除去すると、残留濃厚油状物4が残った。収率:41% (iii)2および3の合成 上述した通りの4の合成方法を2の合成に使用するのにも適切に適合させるこ とができる。H2O中のMeOH/6M HCl混合液中36時間撹拌することによりリガンド 2を脱保護化できる。次いで、減圧下、溶媒を除去する。次いで、得られ る化合物をMeOHに溶解させ、1当量のLnCl3.6(H2O)および1当量の2−ケトカル ボン酸のNa+塩を加える。次いで、この溶液にMeOH中のNaOHをちょうどアルカリ 性になるまで加え、得られた溶液を2時間還流する。過剰のエーテルの添加によ り錯体3が沈殿し得る。 実施例8:加水分解速度の検討 実施例2のY(III)、R=Me錯体の試料20mgをイミダゾール緩衝剤(pH=7 .0)を含有するD2O中に溶解させ、室温に放置した。この溶液の1H NMRスペク トルを2日にわたって一定時間間隔(t時間)で測定した(図式6参照)。この時 間の間、2.91ppm(A)および3.51ppm(B)に三重項ピークの強度が減少し、2.63ppm( C)および2.92ppm(D)に新たなピークが出現し、これは錯体の加水分解が起こり水 素添加trenを得たことと一致する。これらのピークの相対積分を取ると、時間の 関数として解離をモニターできる。この実験を酢酸/酢酸カリウム緩衝剤(pH =4.7)で繰り返した。 このデーターにより、試料の総加水分解が数時間で終了するとき、リガンドの 分解およびそれに続くイットリウムイオンの放出はpHの値が低いとき最も早く 起こることが示されている。中性のpHで錯体はもっと長く保持され、21時間 後まだ分解が完全でない。リポソームの存在下でこれらと殆ど同じ速度で錯体の 加水分解が観察された。 R=Meの別の例としてR=Etまたはi-Prで実験を繰り返し、次の結果を得た。実施例9:トリス(3-アザ-4-カルボキシ-4-フェニル-3-ブテニル)アミン(R=Ph の場合の式(1)、)のY(III)錯体の加水分解 d4-MeOH(0.1cm3)中にY(III)(R=Ph)錯体/NaCl(7mg)を溶解させ た。等モル量のY(III)(R=Me)錯体/NaClもd4-MeOH(0.1cm3)中に溶解さ せた。次いで、両試料をNMR管に入れ、イミダゾールpH=7.0緩衝剤を含有 するD2O(0.48cm3)を同時に各試料に加えた。錯体の加水分解をモニター するために2日間にわたって一定の時間間隔で双方の試料のNMRスペクトルを取 った。2日間中2試料の温度を293Kに維持した。下記の表に結果を要約する 。 R=Me誘導体に比較してR=Ph誘導体の方が速く加水分解されることが分かる。こ れは、R=Phのとき三脚アーム間の追加の立体混雑によるものである。 少量のd4-MeOHはD2O中の[R=Ph].3NaClの溶解を助け、加水分解速度を有 意には変化させない。残念なことに、R=Me、Etおよびi-Pr誘導体について既に得 られたデータと直接比較できる大量の[R=Ph].3NaClを溶解させることがまだでき ない。しかし、R=Me誘導体と比較することにより、R=Ph誘導体の加水分解速度は R=Et誘導体とi-Pr誘導体との間にあることが明かである。したがって、相対加水 分解速度は、 H>>i-Pr>Ph>Et>Meである。 実施例10:脂質膜透過性の検討 (a)リポソームの製造 Fry等の方法[D.W.Fry,C.White,D.J.Goldman,Anal.Biochem.,90,809(1978)]に よりリポソームの1cm3試料を調製した。 例えば、ジパルミトイルホスファチジルコリンC16:0(13mg)、コレステロ ール(1mg)およびステアリルアミン(1mg)をガラス容器中に入れた。2 個のガラスビーズを入れ、この容器を(ゴム製隔膜および金属製オーバーシール 上をクリンプ止めして)封をした。上記の混合物を激しく撹拌し、澄明な無色の 溶液を得た。この溶液を窒素ガス流下60℃で蒸発させて乾燥し、容器の側部に 白色固体(脂質)を得、これを、使用するまで封をした容器中に−20℃で保存 することができた。 (b)ICP によるリポソーム透過性の検討 50mgのY(III)、R=Me錯体/NaCl混合物を、イミダゾール緩衝剤(pH=7 .04)を含有する1cm3の脱ガス水中に溶解した。これを固体脂質(上述し たとおりにして調製した)の入った容器に加えた。この混合物を、容器の側部に もはや脂質が付着しなくなるまで激しく撹拌し、形成した脂質が一定の寸法(顕 微鏡で観察して)の球形のリポソームを形成し、次いで、錯体のいくらかを包み 込む間の5分間超音波処理をした。次いで容器を正確に3時間室温に放置し、錯 体の一部を加水分解させた。4本の1cm3注射器の胴部をガラスウールで栓を し、0.9%塩水中でSephadex G50を充填した。これらの注射器胴部を試験管中 に吊し、200rpmで2分間遠心分離し、その後、Sephadexの頂部は0. 9cm3目盛まで下降し、注射器胴部の側部から離れた。次いで、これらのカラ ムを各々0.3cm3の脱ガスしたイミダゾール緩衝剤で洗浄し、再度、2分間 2000rpmで遠心分離をし、次いで、0.25cm3のリポソームを各カラ ムに加え、2分間2000rpmで遠心分離をした。これは、上澄みにある錯体 を除去する作用があった一方、リポソーム内のリポソーム錯体はカラムを通過し た。次いで、リポソームを110分間室温に放置し、内部錯体を拡散放出させた 。この時間経過後、リポソームを別のSephadexカラム中を前記と同様通過させ、 上澄みの錯体を除去した。次いで、リポソームに0.05cm3のTriron X-100 を加え、溶液が澄明になり、リポソームが分解されるまで試料を数時間放置した 。この溶液を、10%HNO3中100cm3にし、ICPによりイットリウムについて 分析した。酢酸塩pH=4.93およびpH=3.91緩衝剤を用いてこの実験 を繰り返し、pH=3.91緩衝剤中に錯体を一夜放置し総加水分解させたコン トロールについても行った。 中性pHの場合、3時間加水分解後大部分イットリウムが錯体の形態であるこ とが予期することができる一方、酸性pH値では、その時間経過後錯体は大部分 加水分解されイットリウムが遊離する。コントロールの場合、錯体のすべてが加 水分解され、100%遊離三価のイットリウムカチオンを残す。これらの結果は 、中性の錯体化されたイットリウムはリポソームから外に容易に拡散するが、遊 離の荷電したイットリウムが内部にトラップされることを示す。 イミダゾールpH=7.04緩衝剤中の250mgの錯体を10分間のみ加水 分解のために放置した5cm3のリポソームを作成する、この実験のバリエーシ ョン実験を行った。上澄みの錯体を前述と同様にして除去し、そしてこの錯体を リポソームから拡散させた。一定の時間間隔で、この1cm3部分を採取し、上 澄みのイットリウムを除去し、前述したようにしてICPによりリポソームをイッ トリウムについて分析した。 検出されたイットリウムはすべての場合に実験誤差範囲内で非常に類似してお り、前のpH実験中で検出されたのと一致した。これは、リポソームから外の錯 体の拡散が非常に迅速で20分以内に当量に達することを示す。 (c)NMR による脂質透過性の検討 イミダゾール緩衝剤(pH=6.80)を含有するD2O中に100mgのR=Meイッ トリウム錯体/NaCl混合物を溶解した。これを、上記実施例5(b)に記載した 通りにしてリポソームの内部に配合した。錯体は10分の条件下の最初の加水分 解時間を与え、次いで、錯体をリポソームの外に拡散させながらさらに90分の 加水分解をした。充分に明瞭なNMRスペクトルを得るために、リポソーム部分よ りもむしろ上澄み部分において観察する必要がある。前記したように、リポソー ムをSephadex G50中を通過させたが、次いで廃棄した。次いで、このSephadex中 に上澄み錯体をトラップした。各注射器中のSephadexを0.2cm3ジューテロ 化緩衝剤溶液を一度通過させて洗浄し、次いで、2分間2000rpmで遠心分 離し、次いで、そのフラクションも廃棄した。次いで、さらに0.3cm3のジ ューテロ化バッファーを(2分スピン、2000rpm)により洗浄し、このフ ラクション(澄明、無色の液体)を採取し、1H NMRにより分析した。 このNMR分析は、イミダゾール、水、エタノール(リポソーム製造由来)およ び錯体のみのピーク[d=3.65(t,2H),3.02(t,2H),1.97(s,3H)]を示した。これは、 錯体が無傷の脂質膜を通過できることをさらに立証する。 実施例11:トリス(3-アザ-4-カルボキシ-3-ペンテニル)アミン(R=Hの場合の式 (1))(以下、[Gd(L)])のGd(III)錯体の緩和 [Gd(L)].3NaC1の試料を秤量し、[Gd(L)]が加水分解しない溶媒であるd4-MeOH の0.10cm3中に溶解した。同様にして各々異なる量の[Gd(L)].3NaC1を含有 する5試料をさらに作成した。NMR管に最初の試料を移し、0.48cm3のD2O と混合した。4.707ppmにおけるHODピークの横緩和時間(T1)をBruker 300MHz NMR 分光器を用い37℃の180-J-90パルスシーケンスを使用して測定した。残りの5 試料についてこれを繰り返した。すべての場合で、D2Oを加えることとT1測定を 終了することとの間の遅延は30分未満であり、これは錯体の加水分解が最短で ある時間間隔である。精製[Gd(L)]([Gd(L)].3NaClをSephadex LH-20カラムによ り溶離することにより精製)使用して同様にして最終試料を作成した。結果を以 下に要約する。 濃度に対する1/T1をプロットすると概ね直線となる。このグラフの勾配を取る ことにより[Gd(L)]の緩和を計算する。したがって、37℃で300MHzの[Gd (L)]の緩和は(4.3±0.6)s-1mM-1である。 我々は以前一定範囲のアダクト[Ln(L)]/NaClを調製した。これらをSephadexカ ラムに通過させると、Na+のない種[Ln(L)]の結晶化をもたらし、その単結晶X線 構造は[Ln=Y(IIII),'Yb(III)について]H2Oの存在しない多核集合体の形成を示す 。もしこれらの集合体がH2O溶液中で存在する場合、H2O分子によって占め られる1または2配位部位を持つモノマーよりもより低い緩和を示すことが期待 され得る。しかし、1/T1グラフにより、精製[Gd(L)]に相当する点は[Gd(L)].3Na Clの線に非常に接近してあることが示される。これは、H2O中でこれらの錯体、 特に[Gd(Ln)]および[Gd(Ln)].3NaClのすべては溶解し、同数の配位したH2O分子 をもつ同種のものを与えることを示唆する。2個のH2O分子は、H2Oから再結晶し た[Ln(L)]の単結晶X線構造が[Ln(L)(OH2)2](Ln=Gd,Sm)のタイプの9配位構造を 示すのでこれらの錯体に結合することを我々は確認した。これらの構造は、我々 の刊行物J.Chem.Soc.,Dalton Tralns.,1997,3655に要約されている。 300MHzにおける[Gd(L)]の緩和は、10または20MHzで通常測定されるその他のMR I試薬の緩和値と正確に比較できない。しかし、緩和は通常磁場強度の増加に伴 って減少するので1、[Gd(L)]の緩和はDTPA-およびDOTA-系MRI試薬よりも大きい 。これは、[Gd(DTPA)]2や[Gd(DOTA)]-に比較して[Gd(L)]に結合された配位H2O分 子の数が多いことに帰することができる。 1 S.Aime,A.S.Batsanov,M.Botta,J.A.K.Howard,D.Parker,K. Senanayake,G.Williams,Inorg.Chem.,1994,33,4693-4706 図式1 図式6 図式2 図式3 図式4 図式5
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C07F 5/00 C07F 5/00 J // A61K 51/00 A61K 49/02 C 43/00 (81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE, DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,IT,L U,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF ,CG,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE, SN,TD,TG),AP(GH,GM,KE,LS,M W,SD,SZ,UG,ZW),EA(AM,AZ,BY ,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),AL,AM ,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BR,BY, CA,CH,CN,CU,CZ,DE,DK,EE,E S,FI,GB,GE,GH,GM,GW,HU,ID ,IL,IS,JP,KE,KG,KP,KR,KZ, LC,LK,LR,LS,LT,LU,LV,MD,M G,MK,MN,MW,MX,NO,NZ,PL,PT ,RO,RU,SD,SE,SG,SI,SK,SL, TJ,TM,TR,TT,UA,UG,US,UZ,V N,YU,ZW (72)発明者 ドーブル,ダニエル・マーティン・ジョン イギリス国ビー93・9エヌエイチ,ウエス ト・ミッドランズ,ソリハル,ノウル,チ ャンテリー・ヒース・クレセント

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 1. 式: [式中、Aは、N,CR1,P,P=O,シス、シス、シス-1,3,5-三置換-シクロヘキサン またはN,N',N"-三置換-トリアザ9〜14員マクロ環状環であり、L1,L2,L3は、C1 4 アルキレン、C4 〜6シクロアルキレンまたはC4 〜6o-アリーレンから独立して選 択されるリンカー基であり、Y1,Y2,Y3は、-NH2,B(=O)OZ,-N=CR-B(=O)OZ,-N R-CR2-B(=O)OZ,-N[CR2-B(=O)Q]2および-O-CR2-B(=O)OZ(ここで、BはCもしく はPR2であり、各Qは独立して-OZもしくは-NR2であり、そしてZはHもしくは対 イオンである。)から独立して選択され、各RおよびR1基はH、C1 〜5アルキル 、C1 〜5アルコキシアルキル、C1 〜5ヒドロキシアルキル、C1 〜5アミノアルキル 、C5 〜10アリールまたはC1 〜6フルオロアルキルから独立して選択され、R2はOH ,C1 〜6アルキル、C1 〜6アルコキシアルキル、C1 〜6フルオロアルキル、C1 〜10 アルコキシまたはC5 〜10アリールであり、但し、Y1,Y2およびY3のうちの少なく とも一つは-N=CR-B(=O)OZである。]を有するリガンド。 2. AがNまたはCR1であり、L1,L2およびL3はすべて同じであり、C1 〜3アル キレンであり、Y1,Y2およびY3はすべて-N=CR-B(=O)OZである請求の範囲第1項に 記載のリガンド。 3. AがNであり、L1,L2およびL3はすべて-CH2CH2-でありBはCである請求 の範囲第2項に記載のリガンド。 4. 請求の範囲第1項〜第3項のいずれかに記載のリガンドからなる金属錯体 。 5. 金属錯体が中性である請求の範囲第4項に記載の金属錯体。 6. 式(1)(式中、Mは金属である。)を有する請求の範囲第3項に記載の金属錯体。 7. 金属がランタニド金属、インジウムもしくはガリウムである請求の範囲第 4項〜第6項のいずれかに記載の金属錯体。 8. 金属が放射性である請求の範囲第4項〜第7項のいずれかに記載の金属錯 体。 9. 金属が90Y、153Sm、111Inまたは169Ybである請求の範囲第8項に記載の金 属錯体。 10.金属が常磁性である請求の範囲第4項〜第7項のいずかに記載の金属錯体 。 11.金属がガドリニウムである請求の範囲第10項に記載の金属錯体。
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