JP2001512339A - 深層強膜切除術用インプラント - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 本発明は、緑内障の外科治療中に房水を排出するための深層強膜切除術用インプラントに関する。本発明のインプラントは、架橋ヒアルロン酸から製造され、少なくとも５つの面をもつ実質的に多面体の形状、好ましくは５面または６面をもつ多面体の形状を有している。好ましい実施態様ではインプラントは、台形底面をもつ実質的に角柱、好ましくは直角柱の形状を有している。

Description

【発明の詳細な説明】 深層強膜切除術用インプラント 本発明は、深層強膜切除術用インプラントに関する。本発明のインプラントの 特徴はその構成材料及びその形状にある。 深層強膜切除術という手術方法が緑内障の新しい治療方法として提案された。 実際、緑内障の薬物治療が不可能であるときは、眼内圧を低下させるために外科 手術を行う必要がある。 最も頻用されている手術方法はトラベクロトミー(線維柱帯切開術)である。ト ラベクロトミーでは、房水を前房から結膜下間隙に排出するために線維柱帯に穿 孔を設ける。この場合、排出された房水が結膜下に蓄積するので、通常は結膜の 下方に濾過胞が形成される。この手術方法では合併症の発生が少なくない。合併 症としては例えば、早発性または遅発性の低眼圧、浅前房、更に進むと前房の陥 凹、及び、コロイド隆起、などがある。最も激しい合併症の１つは、濾過胞の二 次破壊であり、その場合には内眼球炎が生じることもある。 前房の穿孔を回避するために、別の緑内障手術方法が提案された。これらの手 術方法の１つが緑内障の深層（いわゆる非穿 孔性）強膜切除術であり、本発明はこの技術の範囲に属する。この手術方法では 、強膜をシュレーム管まで切開する。その結果、房水が線維柱帯を通過して流出 する。この房水の流出を促進するために、切開部（深層強膜床）に円柱状のコラ ーゲンインプラントを（インプラントの前端をシュレーム管に向き合わせて）配 置することが提案された。このようなインプラントは芯として作用することによ って（眼内流体を毛細管作用で運搬することによって）房水の流出を助ける。上 記のような原理に基づくこの技術（コラーゲンインプラントの設置を伴う深層強 膜切除術）の実施に関しては、Ｏｐｈｔａｌｍｏｌｏｇｉｅ １９９５；９：６ ６６−６７０に記載されている。しかしながら、このインプラントの形態及びイ ンプラントの構成材料を考察すると、このインプラントが将来的に有望であると は考えられない。実際、円柱状の形態は解剖学的に眼に最も適応する形態ではな く、また、使用される材料、即ち動物起原のコラーゲンもクロイツフェルド−ヤ コブ症候群に伴う問題などの観点から好ましい材料ではない。 出願人はここに、深層（非穿孔性）強膜切除術という外科的技術の範囲内で、 従来技術の円柱状形態のコラーゲンインプラ ントに有利に代替し得るインプラントを提案する。本発明のインプラントは、そ の構成材料の特性及びその幾何学的形状の双方の効果によって、外科手術で形成 された間隙に長期間維持され、（前房の穿孔を要せずに）房水を前房から有効に 流出させ得る。インプラントは実際的なドレーンを形成する。 本発明のインプラント、即ち深層強膜切除術で房水を排出するために設置され るインプラントは、架橋ヒアルロン酸から製造され、少なくとも５つの面をもつ 実質的に多面体の形状を有している。インプラントは好ましくは、５面または６ 面の実質的に多面体の形状を有している。 従って少なくとも５つの頂点をもつこのような多面体インプラントは、形成さ れた間隙にひとたび配置されると比較的固定している。このインプラントが更に 間隙の容積に適応した体積を有していることは勿論である。インプラントを間隙 に挿入し、芯として機能させ、実際的なドレーンとして機能させ得る。 当業者は、本発明のインプラントの形状に関して使用した“実質的に”という 修飾副詞の意味を、インプラントの構成材料の固有特性から十分に理解されるで あろう。 本発明のインプラントは好ましくは、少なくとも５つの面を もつ実質的に凸状多面体の形状を有しており、この凸状多面体は、少なくとも３ つの辺をもつ少なくとも１つの実質的に平面状の底面（底面は最大面または最大 面の１つを構成している）を有し且つ小さい厚みを有している。本発明のインプ ラントの厚みは、底面とこの底面に対向する頂点または対向する面との間の最大 距離を意味すると理解されたい。通常は０．２〜２ｍｍの範囲の小さい値のイン プラントの厚みは、（少なくとも３つの辺をもつ）底面の最も長い辺の長さの１ ／１２〜１／４（好ましくは１／１０〜１／８）が有利である。 少なくとも３つの辺をもつ多角形によって規定される（実質的に平面状の）底 面は好ましくは三角形または四辺形、より特定的には台形（好ましくは等脚台形 ）から成る。 しかしながら（インプラント構成材料の固有特性から考えると）”実質的に” 平面状の底面がやや凹状に弯曲しているのが有利であり、このようなインプラン トはひとたび配置されると、眼弯曲に随従する。従ってこの有利な変形実施態様 によれば、インプラントの表面がやや凹状である。 本発明の有利な変形実施態様の範囲内で、インプラントは実質的に、 −台形または三角形の底面をもつ好ましくは直角柱の形状を有しているか（こ のような角柱の底面の台形は好ましくは等脚台形である）、または、 −平行六面体、有利には直角平行六面体、好ましくは直方体の形状を有してい る。 他の変形実施態様によれば、本発明の多面体インプラントが他の形状を有して いてもよいこと、特に、長方形もしくは正方形の底面をもつ角錐及び角錐台の形 状、任意の底面をもつ角柱、特に直角柱の形状、などでもよいことは明らかであ る。 一般的には、本発明のインプラントの底面（または少なくとも面の１つ；デス メー膜及び強膜の内壁に沿って配置される面）がやや凹状に弯曲しているのが有 利であることをここで再確認しておく。 更に、同じく一般的には、本発明のインプラントを構成する多面体の頂角は鈍 角であるのが有利である。これは、インプラントによって起こり得る外傷の問題 に対して有利である。 次に、本発明のインプラントの構成材料の固有特性を考察する。材料は、固体 インプラントを形成するように十分に架橋した架橋ヒアルロン酸である。 ヒアルロン酸は、臍帯、硝子体液、滑液、コンジローム、皮膚、結合組織（関 節、腱）のような動物組織に見出される高分子量のグリコサミノグリカンまたは ムコ多糖である。この酸は上記のような動物組織（特にコンジローム及び臍帯） から抽出によって天然に得られたものでもよい。また、細菌発酵によって得られ たものでもよい。この酸は高い吸水性を有している。この酸は、平衡状態の含水 量が９９％を上回る高度に吸水性の材料である。このような材料は本発明のイン プラントに望まれる排液機能を確保する。 この酸の化学構造は、Ｎ−アセチル−Ｄ−グルコサミンとＤ−グルクロン酸と の二糖モノマーを有しているポリマーの構造である。このアミンとこの酸とはβ １→３グルコシド結合によって結合されている。二糖モノマーはβ１→４グルコ シド結合によって互いに結合され、分枝鎖のない非架橋多糖鎖を形成している。 しかしながらこの鎖はモノマーの処に官能基、特にヒドロキシル官能基を有し ており、このため、化学的に架橋して多少とも緻密な網状構造を形成し得る。 本文及び請求の範囲の記載で使用されたヒアルロン酸なる用 語は、ヒアルロン酸自体とその塩、特にヒアルロネート塩との双方を意味する上 位概念用語である。従って本発明のインプラントは、架橋ヒアルロン酸及びヒア ルロン酸の架橋塩とから選択されたポリマーを基材とする。好ましくは、架槁ヒ アルロン酸ナトリウムを基材とする。使用されるヒアルロン酸ナトリウムは好ま しくは細菌由来である。 本発明の範囲内で、ヒアルロン酸は十分な架橋速度で架橋した固体の形態で使 用される。反応性官能基を有する架橋剤を使用してヒアルロン酸のヒドロキシル 官能基による架橋を惹起するのが好ましい。架橋剤の使用量は、（反応媒体中に 存在する）架橋剤の反応性官能基の総数と（反応媒体中に存在する）ヒアルロン 酸分子の二糖反復単位の総数との比が０．２〜１の範囲になるような量である。 最小度の架橋によって、最小の機械的強度をもつ固体の形成という所望の効果 が確保される。 架橋の最大度を超過しないのが有利である。実際、大量の架橋剤の使用は本発 明のインプラントを変質させる。 本発明のインプラントの製造に使用され得る架橋剤としては、そのヒドロキシ ル官能基を介してヒアルロン酸を架橋させる公 知の任意の架橋剤、少なくとも二官能架橋剤、特にポリエポキシドまたはその誘 導体がある。このような架橋剤としては特に、エピクロロヒドリン、ジビニルス ルホン、１，４−ビス（２，３−エポキシプロポキシ）ブタン（または、１，４ −ビス（グリシジルオキシ）ブタンまたは１，４−ブタンジオールジグリシジル エーテル＝ＢＤＤＥ）、１，２−ビス（２，３−エポキシプロポキシ）エチレン 、１−（２，３−エポキシプロピル）−２，３−エポキシシクロヘキサンを使用 し得る。ヒアルロン酸を架橋させるために好適な多数の架橋剤が特に米国特許第 ４，７１６，１５４号に記載されている。 本発明のインプラントを裁断できる架橋ヒアルロン酸を得るために複数の架橋 剤を使用することも本発明の範囲から除外されない。 有利な変形実施態様によれば、架橋ヒアルロン酸を製造するために、エポキシ 官能基を反応性官能基として含む架橋剤を使用する。 一般に、当業者はヒアルロン酸（またはその塩の１つ）を架橋させる方法に精 通している。 本発明の特徴は、深層強膜切除術用インプラントとして好適 な少なくとも５つの面をもつ多面体インプラントを製造するために架橋ヒアルロ ン酸を使用することである。このインプラントはその構成材料によって高度に吸 水性であり、前房から房水を有効に排出させる。 架橋ヒアルロン酸から製造された少なくとも５つの面をもつ多面体の形状の本 発明のインプラントに少なくとも一種類の有効成分を任意に混入し得る。有効成 分は特に、抗生物質及び／または抗有糸分裂物質から成り得る。本発明のインプ ラントの内部に（１種または複数の）有効成分を混入させることに特に難しくは ない。一般にはインプラントの水和段階中に有効成分を混入させる。 最後に、架橋ヒアルロン酸のブロックから適当な形状を裁断することによって 本発明のインプラントが得られる。ブロックは通常は小さい厚みを有しているの で、むしろシートと呼ぶほうが適当である。本発明のインプラントを適正な切開 部に配置することも特に難しくはない。この切開部はインプラント設置用の間隙 または空洞を生じるように予め設ける。 本発明の特徴はまた、架橋ヒアルロン酸から製造された少なくとも５つの面（ 好ましくは５面または６面）をもつ実質的に 多面体のブロックを、房水を排出するために深層強膜切除術用インプラントとし て使用することである。実際、本発明の目的はまた、 −少なくとも５つの面をもつ実質的に多面体の形状、好ましくは５面または６ 面をもつ実質的に多面体の形状を有している深層強膜切除術用インプラント、即 ち、房水排出用インプラントを製造するために架橋ヒアルロン酸を使用すること 、及び、−深層強膜切除術を非穿孔性緑内障手術の一環として実施し、上記材料 から成る上記形状のインプラントを設置すること、である。 請求の範囲に記載の本発明を非限定的に説明するために、本発明のインプラン トの製造例を以下に記載する。 以下のプロコトルを使用する。 −１．００ｇのヒアルロン酸ナトリウム（分子量２×１０⁶Ｄａ）を７．８０ｇ の０．２５Ｍの水酸化ナトリウム水溶液に溶解させる； −０．１９２ｇのＢＤＤＥ（架橋剤：１，４−ブタンジオールジグリシジルエ ーテル）を溶液に添加する； −均質混合後、５０℃の水浴中で２時間維持する； −得られた固体ゲルを脱イオン水中で平衡するまで水和させる； −Ｓｏｘｈｌｅｔ装置で脱イオン水で連続抽出することによってゲルを精製す る； −精製したゲルをｐＨ７．２のリン酸塩緩衝液中で平衡させる； −ゲルから０．４ｍｍ厚みのシートを裁断する； −最後に、台形断面（それぞれ３ｍｍ及び０．５ｍｍの底辺と５ｍｍの高さと をもつ等脚台形）を有している穿孔器でシートをくり抜く。この場合、台形底面 をもつ実質的に直角柱の形状の０．５〜１ｍｍの範囲の厚みをもつインプラント が得られる。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 ジヤレ，バレリー フランス国、エフ―74960・メテ、リユ・ ドウ・ラ・キヤリエール、２ (72)発明者 ボス，ジル フランス国、エフ―74330・ラ・バルム・ ドウ・スイランジ、ルート・ドウ・カラ ス、124 (72)発明者 ビラン，フランク フランス国、エフ―74000・アヌシー、リ ユ・アンリ・ボルドー、19

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １．架橋ヒアルロン酸から製造され、少なくとも５つの面をもつ実質的に多面体 の形状、好ましくは５面または６面をもつ実質的に多面体の形状を有することを 特徴とする房水を排出するための深層強膜切除術用インプラント。 ２．実質的に凸状多面体の形状を有しており、前記凸状多面体が少なくとも３つ の辺をもつ実質的に平面状の少なくとも１つの底面を有し且つ小さい厚みを有し ており、前記底面と前記底面に対向する頂点または前記底面に対向する面との間 の最大距離に対応する前記厚みが好ましくは前記底面の最も長い辺の長さの１／ １２〜１／４の範囲であることを特徴とする請求項１に記載のインプラント。 ３．前記底面が三角形または台形であることを特徴とする請求項２に記載のイン プラント。 ４．前記底面がやや凹状に弯曲しており、その結果として、インプラントは、ひ とたび設置されると、眼弯曲に随従することを特徴とする請求項２または３に記 載のインプラント。 ５．台形底面をもつ好ましくは実質的に直角柱の形状を有する ことを特徴とする請求項１から４のいずれか一項に記載のインプラント。 ６．頂点が鈍角であることを特徴とする請求項１から５のいずれか一項に記載の インプラント。 ７．前記ヒアルロン酸が、反応性官能基を有する架橋剤を用いてヒドロキシル官 能基を介して架橋されており、前記架橋剤が、前記架橋剤の反応性官能基の総数 とヒアルロン酸分子の二糖反復単位の総数との比が０．２〜１の範囲となるよう な量で使用されることを特徴とする請求項１から６のいずれか一項に記載のイン プラント。 ８．前記架橋剤の前記反応性官能基がエポキシ官能基であることを特徴とする請 求項７に記載のインプラント。 ９．前記架橋ヒアルロン酸に少なくとも１種類の有効成分が混入されていること を特徴とする請求項１から８のいずれか一項に記載のインプラント。