JP2001501596A - バイオコンジュゲートおよび生物学的活性剤の送達 - Google Patents

バイオコンジュゲートおよび生物学的活性剤の送達

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Abstract

(57)【要約】 本発明は、バイオコンジュゲート、ならびに好ましくは細胞、組織または器官における部位−特異的な放出にターゲット化される(targeted)バイオアクティブ(bioactive)剤の送達に関する。より詳細には、本発明は、生物学的活性剤および有機コバルト錯体を含むバイオコンジュゲートに関する。該生物学的活性剤は、該有機コバルト錯体のコバルト原子に直接的または間接的に共有結合している。該生物学的活性剤は、当該生物学的活性剤と有機コバルト錯体中のコバルト原子との間の共有結合の開裂によって該バイオコンジュゲートから放出される。該開裂は、細胞の求核性試薬または酵素作用による通常の置換えの結果として起こり得るが、好ましくは、外部シグナルの適用によって所定の放出部位で選択的に起こす。該外部シグナルは光または光励起、すなわち光分解とし得、あるいは超音波、すなわち音波分解とし得る。さらに、該光分解を放出部位を取り囲む磁場の存在下で起こす場合には、取り囲む健全組織への該生物学的活性剤の放出は最小限にとどめられる。

Description

【発明の詳細な説明】 バイオコンジュゲートおよび生物学的活性剤の送達 本発明は、米国立衛生研究所(NIH,Bethesda,Maryland)に授与された研究奨 学金番号ES05728下、一部政府援助でなされたものである。合衆国政府は本願発 明におけるある種の権利を有する。発明の背景 本発明は、バイオコンジュゲート、ならびに好ましくは細胞、組織または器官 における部位−特異的な放出にターゲット化(targeted)される生物学的活性剤 (bioactive agent)の送達に関する。より詳細には、本発明は、生物学的活性 剤および有機コバルト錯体を含むバイオコンジュゲートに関する。該生物学的活 性剤は、該有機コバルト錯体のコバルト原子に直接的または間接的に共有結合し ている。該生物学的活性剤は、当該生物学的活性剤と有機コバルト錯体中のコバ ルト原子との間の共有結合の開裂によって該バイオコンジュゲートから放出され る。該開裂は、細胞の求核性試薬または酵素作用による通常の置換えの結果とし て起こり得るが、好ましくは、外部シグナルの適用によって所定の放出部位で選 択的に起こす。該外部シグナルは光または光励起、すなわち光分解とし得、ある いは超音波、すなわち音波分解とし得る。さらに、該光分解を放出部位を取り囲 む磁場の存在下で起こす場合には、取り囲む健全組織への該生物学的活性剤の放 出は最小限にとどめられる。 本明細書中にて用いる刊行物および他の資料は本発明の背景を説明するための ものであって、特に、実施に関するさらなる詳細が記載されている場合には、出 典明示して本明細書の一部とみなし、簡便のために以下の明細書中では著者と年 月によって参照し、添付する著書目録では著者によってアルファベット順に掲載 する。 研究の実体の焦点は、それによって医薬剤を目的の解剖学的位置;すなわち治 療の必要がある部位に選択的に送達することができる系の開発である。このこと に関して達成されてきた大きな進歩にも拘わらず、種々の疾病または健康危険性 の治療、例えば癌の治療のための多くの医薬送達系は、患者に実質的な危険性を 与えている。癌の治療に関しては、悪性細胞を攻撃してそれを破壊するか、また は少なくともその増殖を制限するのに有効な薬物は、良性細胞をも攻撃する傾向 を有する。したがつて、該悪性腫瘍の位置にその作用の位置を制限し、いずれの 特定の時間においても、有効であるが過剰ではない量のかかる薬物を用いること を保証することが多いに望まれる。 細胞毒性剤をターゲット化部位に濃縮することが望まれるが、これらの細胞毒 性剤を投与する最新癌治療プロトコールは、典型的には、患者を注意深くモニタ ーしつつ繰返して静脈内投与することを要求している。該薬物は、しばしば、組 合せて用いて、新生物細胞に対して多切子面攻撃(multi−faceted assault)を発 揮する。用量は、生命を脅かす心筋症、髄毒性、肝臓毒性または腎臓毒性に通じ 得る急性(および時として慢性)の毒性を生成するであろう量のすぐ下の量に選 択されている。脱毛症(毛髪損失)、ムコシティス(mucositis)、口内炎および 悪心は他の一般的なものであるが、これらの用量においては一般的には生命を脅 かすことのない副作用である。これらの化合物の多くは強力な発疱薬であるため 、局在化された管外遊出(血液から取り囲む組織への薬物の損失)が起こる場合 には組織壊死が起こるであろう。これらの効果は、有効になる前にその薬物の特 定化された濃度を血液が一般的に達成するために起こる。血液は治療すべき宿主 の身体全体に輸送されるため、医薬剤についても同様である。この技術に従えば 、薬物を治療部位に濃縮するというより、むしろ身体全体への薬物の分布さえ供 される。さらに、かかる全身治療法は、薬物が最も必要とされる部位における薬 物の濃度を制限するほか、非健全または罹患細胞の治療と同時に健全細胞も細胞 毒性剤に暴露する。 悪性腫瘍を有する器官の位置に直接注射することによってかかる薬物を投与す る以前の試みは、その位置からの該薬物の移動、およびその結果としての管外遊 出による広範な組織壊死のために、部分的にしか有効でない。かかる分散は全体 的に防げず、その結果、投与して目的の結果を達成するためには過剰量の薬物を 要する。注意深い臨床モニターによって広範な傷害または生存組織の損失を防げ るであろうが、当該医薬剤の活性化前に治療部位に標準的な生物系を介して活性 に輸送される医薬物−担体系を提供することは、当該薬物の使用を最適化するの みならず、副作用の軽減および/または健全細胞の破壊の最小限化においても非 常に望ましいであろう。外科手術および/または放射線療法への補助剤として慣 用的な細胞毒性化学療法剤を用いる乳房、膀胱、前立腺および肺の充実性腫瘍へ の細胞毒性剤の直接注射は、患者の生命の延命において限定した成功をおさめて いる。このことは、部分的には、ターゲット化されるものを超える組織または器 官系に対する急性または慢性の毒性によって課された用量限定によるものである 。 それは細胞毒性または抗新生物薬物の投与に関するため、投与の様式に、投与 量サイズおよび投与の頻度の限定に、ならびに副作用に関する心配の有効な解決 は、癌治療に対して確実に恩恵となるであろう。 転写または翻訳レベルで遺伝子発現を特異的に妨害するオリゴヌクレオチドは 、ウイルス、新生物または他の疾患に関連する有害な蛋白質の合成を制御するた めの治療剤として用いる潜在性を有する。二本鎖DNAのストレッチの主溝を配 列−特異的な様式で認識しそれに結合して三重らせんを形成する一本鎖オリゴヌ クレオチドを選択することは可能である(Le Doanらによる1987;MoserおよびDer vanによる1987)。ある種の遺伝子のプロモーター領域をターゲット化する三重ら せん形成オリゴヌクレオチドを用いて、無細胞転写アッセイにおけるRNA合成 が物理学的にブロックされている(Cooneyらによる1988;Postelらによる1992;S koogらによる1993;Randoらによる1994)。同様にして、イン・ビトロ(in vitro) 翻訳アッセイを用いて、アンチセンス・オリゴヌクレオチドがmRNAターゲッ トに結合し、かつ、蛋白質合成を妨害できることが実証されている(Uhlmannおよ びPeymanによる1990;CohenおよびHoganによる1994)。 アンチセンス・オリゴヌクレオチドは遺伝子発現の選択的阻害において大きな 効率を示しているが(SteinおよびCohenによる1988;Szczylikらによる1991;Gra yらによる1993)、かかるアンチセンス・オリゴヌクレオチドの治療適用はそ の低い生理学的安定性、遅い細胞取込みおよび組織特異性の欠如によって最近制 限されている。不安定障害は、ヌクレアーゼに対してより耐性である骨格-修飾 オリゴヌクレオチドの使用によって大きく克服されている。メチルホスホナート 、蛋白質−核酸コンジュゲート、およびホスホロチオアートはすべて、対応する 天然オリゴヌクレオチドよりも良好に酵素分解に耐性であると考えられている(C hangおよびMillerによる1991;Wickstromらによる1992;Letsingerによる1993; Zonによる1993)。 アンチセンス・オリゴヌクレオチドの細胞取込みに関する問題は、解決するこ とがより困難である。飲作用および関連するプロセスをあてにする内因的取込み 経路は、一般的に、遺伝子発現を抑制するために要する量のアンチセンス・オリ ゴヌクレオチドを送達するために不十分な能力しか有していない(Vlassovらによ る1994)。膜透過性を改善するために疎水性修飾も試みられているが、かかる誘 導化戦略は短いオリゴヌクレオチドについてのみ最も有用である(Vlassovらによ る1994)。アンチセンス構築物とカチオン性リポソームまたはイムノリポソーム との(GaoおよびHuangによる1991;Bennettらによる1992;MaおよびWeiによる1996) およびポリルシン(polylsine)との(Trubetskoyらによる1992;Bunnellらによ る1992)複合体は顕著に向上した細胞内送達を有するが、それらはそれら自体の 新たな欠点をも同時に導入する。したがって、両方法とも幾分かの担体細胞毒性 を示し、他のプロトコールと同様に、両戦略ともいずれの組織または細胞ターゲ ティングも許容しない。要するに、細胞内送達および組織特異性には、ヒト疾患 の治療におけるアンチセンス薬物の完成に対して大きな障害がいまだ存在してい る。 細胞にオリゴヌクレオチドを送達するためのほかの技術には:(a)増殖因子受 容体に対するアンチセンスDNAを送達するための葉酸−PEG−リポソーム構 築物の使用の使用(Wangらによる1995);(b)c−mycアンチセンスDNAを送 達するための葉酸−ポリリシン構築物の使用(Ginobbiらによる1997);(c)アシ アログリコプロテイン受容体を介して細胞にDNAを送達するためのポリリシン に連結したチロシル(グルタミル)−グルタミン酸(YEE(GalNAcAH)3)のトリ ス(N−アセチルガラクトサミンアミノヘキシルグリコシド)アミドの使用(Merwi nらによる1994);ならびに(d)水溶性ブロックポリカチオンの使用(Kabanovらに よる1995)が含まれる。 医薬活性剤を担体または分子に結合することができることはかなり長い間知ら れてきている。“プロドラッグ”なる語は、しばしば、投与目的で他の分子に活 性剤を結合したかかる系に関連する。該薬物は、該プロドラッグ状態では通常不 活性であり、結合が後に開裂するとそれが有効となり得る部位で薬物を放出する 。しかしながら、かかる系は、部位特異性が1となるなど、種々の理由により目 的とし得るほど有用ではない。また、該薬物をその担体から放出させるためには 、活性薬物をその担体または分子から分離するための幾つかの剤または事象が存 在することを要し、かつ、それ自体も宿主から宿主で変動し得、有効に実行し得 ない特異的な酵素、pH条件、時間放出などの存在のごとき因子にたより得る。 たとえば、栄養分子の貫膜輸送は極めて重要な細胞機能である。実践者は薬剤 療法、ペプチド療法および遺伝子移入を包含する医学および生物学科学の多くの 領域に対する貫膜輸送の重要性を認識しているため、かかるプロセスの理解およ び適用に指向した重要な研究努力が払われてきている。したがって、例えば、核 酸の貫膜送達は、蛋白質担体、抗体担体、リポソーム送達系、エレクトロポレイ ション、直接注射、細胞融合、生体担体、浸透圧衝撃およびリン酸カルシウム媒 介形質転換の使用を介して促進されてきた。しかしながら、これらの技術の多く は、貫膜輸送が可能である細胞のタイプおよび外因性分子種の首尾よい貫膜輸送 に使用する条件の両方によって制限される。さらに、これらの公知技術の多くは 、生物活性を損失することなく膜を通過して輸送できる外因性分子のタイプおよ びサイズにおいても制限される。 広い適用性を有する外因性分子の貫膜送達用の1の方法は、受容体−媒介エン ドサイトーシス活性の機構に基く。多くの他の方法とは異なり、受容体−媒介エ ンドサイトーシス活性はイン・ビボ(in vivo)およびイン・ビトロ(in vitro )の両方で首尾よく用いることができる。受容体−媒介エンドサイトーシスには 、膜の陥入を介する、膜により結合した領域の内部への膜受容体に結合したリガ ン ドの移動が含まれる。該プロセスは、受容体−特異的リガンドの受容体への結合 によって開始または活性化される。多くの受容体−媒介エンドサイトーシス系が 特徴付けされており、これにはガラクトース、マンノース、マンノース6−リン 酸、トランスフェリン、アシアログリコプロテイン、トランスコバラミン(ビタ ミンB12)、α−2−マクログロブリン、インスリンならびに上皮増殖因子(EG F)のごとき他のペプチド増殖因子を認識するものが含まれる。 受容体−媒介エンドサイトーシス活性は蛋白質および核酸のごとき外因性分子 を細胞に送達するために使用されている。一般的には、特異化したリガンドを目 的の外因性分子(すなわち、外因性化合物)に共有、イオンまたは水素結合によっ て化学的にコンジュゲートさせて、ターゲット受容体によってコンジュゲート中 でいまだ認識される部分(リガンド部分)を有するコンジュゲート分子を形成する 。この技術を用い、光毒性剤ソラレンがインスリンにコンジュゲートされ、イン スリン受容体のエンドサイトーシス経路によって内在化されており(Gasparroに よる1986);DNAプラスミドに非共有的に複合化したアシアロオロソムコイド −ポリ−L−リシンの肝細胞特異的貫膜送達のために、ガラクトース末端アシア ログリコプロテインに対する肝細胞特異的受容体が用いられており(Wuによる198 7);EGFに共有結合したポリヌクレオチドを細胞内部へ送達するために、上皮 増殖因子に対する細胞受容体が用いられており(Myersによる1988);脊椎動物宿 主の循環系へのビタミンB12と複合化した薬物、ホルモン、生物学的活性ペプチ ドまたは免疫原の送達を媒介し、経口投与を介して腸へ送達するために、有機金 属ビタミンB12−内因子複合体に対する腸に位置する細胞受容体が用いられてお り(Russell−Jonesらによる1995);低密リポ蛋白質を細胞に送達するために、マ ンノース−6−リン酸受容体が用いられており(MurrayおよびNevilleによる1980 );インスリン受容体を欠く細胞にインスリンを送達するために、コレラ毒結合サ ブユニット受容体が用いられており(RothおよびMaddoxによる1983);適当なHC G受容体を有する細胞にHCGにカップリングしたリシン(ricin)a−鎖を送 達して該細胞を殺すために、ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン受容体が用いられてお り(OeltmannおよびHeathによる1979);マイトマイシンCを肉腫細胞に送 達するために(Tanakaらによる1996)、またはドキソルビシンを多剤耐性細胞に送 達するために(Fritzerらによる1996)、トランスフェリン受容体が用いられてお り;ヒポキサンチン−グアニンホスホリボシル・トランスフェラーゼ(HGPR T)をビオチニル化することによって当該HGPRTをHGPRT欠失細胞に送 達させてその増殖を復帰させるために、ビオチン受容体が用いられており(Lowら による1995);ならびに、アンチセンスDNAをsrc−形質転換繊維芽細胞に 送達するために、葉酸受容体が用いられている(Lowらによる1995)。 Russell−Jonesらによる(1995)は、送達したい医薬剤と修飾ビタミンB12との 間に共有結合を形成させて、コンジュゲート分子を形成することを含む系を記載 している。該コンジュゲートは経口投与し、次いで腸管腔から循環へと輸送され る。重要なことは、該医薬剤と該ビタミンとが、酸加水分解しやすいアミド結合 を介して結合されていることである。Russell−Jonesらは、経口投与を介して薬 物を血流に導入することを容易ならしめるために、多くの生物学的に活性な医薬 剤をB12に結合し得ることを見出した。重要なことは、それによって薬物−B12 結合を選択的に開裂し得、あるいは一旦活性化された活性医薬剤の位置を制御し 得る方法は全く記載されていなかった。その代わりに、Russell−Jonesらは、薬 物をその活性形態で放出するための薬物−B12結合の生化学的分解にたよってい る。重要なことは、この方法では、薬物が循環系内のどこでもその活性形態で放 出され得、癌組織へのB12の有効な輸送の重要性が減じられることである。さら に、この方法で形成したコンジュゲートはB12分子のコリン環の構造の修飾を要 し、その修飾は受容体相互作用に対して重大な影響を及ぼし得る。 かくして、医薬、ペプチドおよびオリゴヌクレオチドを包含する生物学的活性 剤を送達するために用いることができる薬物送達系に対する要望が存在する。ま た、望ましい治療効果が作用する細胞、組織または器官における生物学的活性剤 の部位−特異的放出に用いることができる薬剤送達系に対する要望も存在する。発明の概要 本発明は、バイオコンジュゲート、ならびに好ましくは細胞、組織または器官 における部位−特異的放出にターゲット化される生物学的活性剤の送達に関する 。より詳細には、本発明は、生物学的活性剤および有機コバルト錯体を含むバイ オコンジュゲートに関する。該生物学的活性剤は有機コバルト錯体のコバルト原 子に直接的または間接的に共有結合している。該生物学的活性剤は、記載したご とく、当該生物学的活性剤と有機コバルト錯体中のコバルト原子との間の共有結 合の開裂によって該バイオコンジュゲートから放出される。 生物学的活性剤は、栄養または治療作用のために細胞、組織または器官に送達 することが望まれるいずれかの剤である。本発明によれば、生物学的活性剤には 、限定されるものではないが、栄養物、医薬、薬物、ペプチドおよびオリゴヌク レオチドが含まれる。 有機コバルト錯体は、多不飽和複素環系の部分として、コバルト原子に結合す る4−5の窒素および/または酸素、硫黄ほかのごときカルコゲンを有するコバ ルト原子を含むいずれかの有機錯体である。本発明によれば、適当な有機コバル ト錯体には、限定されるものではないが、コバラミン、Co[SALEN]、オル ガノ(ピリジン)ビス(ジメチルグリオキシマト)コバルト、コリノイド、それらの 誘導体およびそれらのアナログが含まれる。有機コバルト錯体は、非置換であっ ても、または当該有機コバルト錯体の基本性質を改変しないであろう慣用的な有 機官能基で置換されていてもよい。有機コバルト錯体の基本性質とは、本明細書 に記載するごとくコバルト−生物学的活性剤の結合が容易に開裂可能なように、 生物学的活性剤がコバルトに直接的または間接的に共有結合されていることであ る。該有機コバルト錯体は、ターゲティング分子に直接的または間接的に共有結 合することもできる。ターゲティング分子とは、本明細書に記載するごとく、そ れに対して目的の細胞、組織または器官が要求性を有する分子、または受容体で ある。 本発明によるバイオコンジュゲートは、臨床的治療を必要とする対象に投与す る。該バイオコンジュゲートは、有機コバルト錯体の結果として、ターゲット化 細胞、組織または器官の部位に濃縮する。一例として、化学療法剤を含有するバ イオコンジュゲートを患者に投与すると、該バイオコンジュゲートは新生物細胞 に濃縮してそこで開裂によって当該バイオコンジュゲートから活性化学療法剤を 放出する。同様にして、他の医薬、薬物、ペプチドまたはオリゴヌクレオチドを バイオコンジュゲートの一部分として対象に投与すると、それは目的の細胞、組 織または器官に濃縮する。医薬、薬物、ペプチドまたはオリゴヌクレオチドは開 裂によって放出される。1の具体例において、該開裂は、細胞求核性分子または 酵素作用による通常の置換えの結果として生じ得る。第2の具体例において、該 開裂は、外部シグナルによって放出部位で選択的に起こさせる。該外部シグナル は光または光励起、すなわち光分解とし得、あるいは超音波、すなわち音波分解 とし得る。さらに、放出部位を取り囲む磁場の存在下にて光分解を起こす場合に は、取り囲む健全組織への細胞毒性剤のごとき薬物の放出を最小限にとどめるこ とができる。図面の簡単な説明 図1はメチルコバラミン(B12)の構造および吸収スペクトルを示す。 図2はエチル−Co[SALEN](コバルト−ビス−[サリチリデン]−エチレ ンジアミン)の構造および吸収スペクトルを示す。 図3Aは無気性音波分解(pH7.38、100mMHepes、飽和Ar)の 関数としての水性CH3−CblIIIの一連吸収スペクトルを示す。 図3Bは有機緩衝液不存在下の有気性音波分解後の吸収スペクトルにおける変 化を示す。 図4AはpH7.4、100mM Hepes、飽和Arの無気性音波分解の関 数としての水性化合物3(実施例6)の一連吸収スペクトルを示す。 図4Bはリン酸緩衝液を含む化合物3(実施例6)溶液の有気性音波分解後の 吸収スペクトルにおける変化を示す。 図5はHCT−116セルラインについての、細胞生存率に対するクロラムブ シル・バイオコンジュゲートの効果を示す。結果はクロラムブシル(■)、光分解 を施したクロラムブシル・バイオコンジュゲート(○)、光分解を施していないク ロラムブシル・バイオコンジュゲート(▲)、ならびに光分解を施したクロラムブ シル・バイオコンジュゲート+10当量のヒドロキシコバラミン(▽)について示 す。 図6はHL−60セルラインについての、細胞生存率に対するクロラムブシル ・バイオコンジュゲートの効果を示す。結果は、クロラムブシル(■)、光分解を 施していないクロラムブシル・バイオコンジュゲート(▲)、ならびに光分解を施 していないクロラムブシル・バイオコンジュゲート+10当量のヒドロキシコバ ラミン(▽)について示す。 図7はB−16セルラインについての、細胞生存率に対するクロラムブシル・ バイオコンジュゲートの効果を示す。結果は、クロラムブシル(■)、光分解を施 したクロラムブシル・バイオコンジュゲート(○)、光分解を施していないクロラ ムブシル・バイオコンジュゲート(▲)、ならびに光分解を施したクロラムブシル ・バイオコンジュゲート+10当量のヒドロキシコバラミン(▽)について示す。 図8はMeth−Aセルラインについての、細胞生存率に対するクロラムブシ ル・バイオコンジュゲートの効果を示す。結果は、クロラムブシル(■)、光分解 を施したクロラムブシル・バイオコンジュゲート(○)、光分解を施していないク ロラムブシル・バイオコンジュゲート(▲)、ならびに光分解を施したクロラムブ シル・バイオコンジュゲート+10当量のヒドロキシコバラミン(▽)について示 す。 図9はRD−995セルラインについての、細胞生存率に対するクロラムブシ ル・バイオコンジュゲートの効果を示す。結果は、クロラムブシル(■)、光分解 を施したクロラムブシル・バイオコンジュゲート(○)、光分解を施していないク ロラムブシル・バイオコンジュゲート(▲)、ならびに光分解を施したクロラムブ シル・バイオコンジュゲート+10当量のヒドロキシコバラミン(▽)について示 す。発明の詳細な説明 本発明はバイオコンジュゲート、ならびに好ましくは細胞、組織または器官に おける部位−特異的な放出にターゲット化される生物学的活性剤の送達に関する 。 より詳細には、本発明は、生物学的活性剤および有機コバルト錯体を含むバイオ コンジュゲートに関する。該生物学的活性剤は、該有機コバルト錯体のコバルト 原子に直接的または間接的に共有結合している。該生物学的活性剤は、当該生物 学的活性剤と該有機コバルト錯体中のコバルト原子との間の共有結合の開裂によ って該バイオコンジュゲートから放出される。該開裂は、細胞の求核性試薬また は酵素作用による通常の置換えの結果として起こり得るが、好ましくは、外部シ グナルの適用によって所定の放出部位で選択的に起こさせる。該外部シグナルは 光または光励起、すなわち光分解とし得、あるいは超音波、すなわち音波分解と し得る。さらに、該光分解を放出部位を取り囲む磁場の存在下で起こす場合には 、取り囲む健全組織への該生物学的活性剤の放出は最小限にとどめられる。 本発明によるバイオコンジュゲートは、臨床的治療を必要とする対象に投与す る。バイオコンジュゲートは、有機コバルト錯体の結果として、ターゲット化さ れる細胞、組織または器官の部位に濃縮する。生物学的活性剤は開裂によって該 バイオコンジュゲートから放出される。1の具体例において、開裂は細胞求核性 分子または酵素作用による通常の置換えの結果として起こり得る。第2の具体例 において、開裂は外部シグナルによって放出部位で選択的に起こさせる。該外部 シグナルは光または光励起、すなわち光分解とし得、あるいは超音波、すなわち 音波分解とし得る。さらに、該光分解を放出部位を取り囲む磁場の存在下で起こ す場合には、取り囲む健全組織への細胞毒性剤のごとき薬物の放出が最小限にと どめられる。 1の例として、該バイオコンジュゲートは化学療法剤を含有し、癌に罹った患 者に投与する。この例においては、当該バイオコンジュゲートが新生物細胞に濃 縮するように、治療有効量のバイオコンジュゲートを患者に静脈内投与する。化 学療法剤は、天然手段(例えば、細胞求核性分子または酵素作用)によってか、 または好ましくは外部シグナル(例えば、光または超音波)によって、バイオコ ンジュゲートから放出される。 第2の例として、該バイオコンジュゲートは細胞毒性剤を含有し、乾癬に罹っ た患者に投与する。この例においては、治療有効量のバイオコンジュゲートを発 病皮膚部位に投与する。細胞毒性剤は天然手段によってか、または好ましくは外 部シグナルによって放出される。 第3の例として、バイオコンジュゲートはジフテリア毒の酵素ドメイン(Nicho lsらによる1997)を含有し、癌に罹った患者に投与する。この例においては、当 該バイオコンジュゲートが新生物細胞に濃縮するように、治療有効量のバイオコ ンジュゲートを患者に静脈内投与する。ジフテリア毒の酵素ドメインは、天然手 段(例えば、細胞求核性分子または酵素作用)によってか、または好ましくは外 部シグナル(例えば、光または超音波)によってバイオコンジュゲートから放出さ れ、癌細胞を殺すように進行する。 第4の例として、バイオコンジュゲートはB型肝炎ウイルスに対するアンチセ ンス・オリゴヌクレオチド(Yaoらによる1996;MadonおよびBlumによる1996)を含 有し、B型肝炎に罹った対象に投与する。この例においては、当該バイオコンジ ュゲートが肝臓に濃縮するように、治療有効量のバイオコンジュゲートを患者に 静脈内投与する。該アンチセンス・オリゴヌクレオチドは、天然手段(例えば、 細胞求核性分子または酵素作用)によってか、または好ましくは外部シグナル( 例えば、光または超音波)によってバイオコンジュゲートから放出され、B型肝 炎ウイルスの遺伝子発現および複製を阻害するように進行する。 本発明は以下の定義を用いる: 生物学的活性剤:治療効果を含む、細胞機能を修飾するか、そうではなくて変 調するために細胞、組織または器官に送達されることが望まれるいずれかの剤。 本発明によれば、生物学的活性剤には、限定されるものではないが、医薬活性化 合物または診断化合物が含まれる。生物学的活性剤には、限定されるものではな いが、ペプチド、オリゴペプチド、蛋白質、アポ蛋白質、糖蛋白質、抗原および それに対する抗体または抗体フラグメント、受容体および他の膜蛋白質、レトロ −インバーソ(retro−inverso)オリゴペプチド、その中で少なくとも1の非−ペ プチド結合がペプチド結合に置換わっている蛋白質アナログ、酵素、補酵素、酵 素インヒビター、アミノ酸およびそれらの誘導体、ホルモン、脂質、リン脂質、 リポソーム、リシンまたはリシン・フラグメント;アフラトキシン、ジゴキシン 、ザントトキシン(xanthotoxin)、ルブラトキシンのごとき毒素;セファロスポ リン、ペニシリンおよびエリスロマイシンのごとき抗生物質;アスピリン、イブ プロフェンおよびアセトアミノフェンのごとき鎮痛薬;テオフィリンおよびアル ブテロール(albuterol)のごとき気管支拡張薬;プロプラノロール、メトプロロ ール、アテノロール、ラベトロール、チモロール、ペンブトロールおよびピンド ロールのごときβ−ブロッカー;前記したものならびにシプロフロキサシン、シ ノキサシンおよびノルフロキサシンのごとき抗微生物剤;クロニジン、メチルド ーパ、プラゾシン、ベラパミル、ニフェジピン、アプトプリルおよびエナラプリ ルのごとき抗高血圧剤;抗不整脈薬、強心配糖体、抗狭心症薬および血管拡張神 経薬を含む心血管作動薬;刺激剤、向精神薬、抗繰薬および抗鬱薬を含む中枢神 経系剤;抗ウイルス剤;クロルフェニルミン(chlorphenirmine)およびブロムフェ ニルアミン(brompheniramine)のごとき抗ヒスタミン薬;クロラムブシル、カル ボプラチン、ブスルファン、ドキソルビシン、エトポシド、トポテカン(TPT)の 誘導体(deratives)のごとき化学療法剤;ジアゼパム、クロルジアゼポキシド、 オキサゼパム、アルプラゾラムおよびトリアゾラムのごとき精神安定剤;フルオ キセチン、アミトリプチリン、ノルトリプチリンおよびイミプラミンのごとき抗 鬱薬;ニザチジン、シメチジン、ファモチジンおよびラニチジンのごときH−2 アンタゴニスト;抗癲癇剤;抗悪心剤;プロスタグランジン;筋弛緩剤;抗炎症 物質;刺激剤;充血除去薬;制吐薬;利尿薬;鎮痙薬;抗喘息薬;抗パーキンソ ン病薬;去痰薬;抑咳薬、粘液溶解剤;ビタミン;ならびにミネラルおよび栄養 添加剤が含まれる。他の分子には、ヌクレオチド;オリゴヌクレオチド;ポリヌ クレオチド;ならびにそれらの技術的に認められているおよび生物学的に機能的 なアナログおよび誘導体が含まれ、例えば、ホスホロチオエート結合を有するメ チル化ポリヌクレオチドおよびヌクレオチド・アナログ;プラスミド、コスミド 、人工染色体、他の核酸ベクター;少なくとも1の内因性核酸に実質的に相補的 なものまたは選択したウイルスもしくはレトロウイルスのゲノムの少なくとも一 部分と反対のセンスの配列を有するものを含むアンチセンス・ポリヌクレオチド ;プロモーター; エンハンサー;インヒビター;遺伝子の転写および翻訳を調節する他のリガンド が含まれる。加えて、生物学的活性剤は、有機コバルト錯体とコンジュゲートを 形成することができるいずれの他の生物学的に活性な分子とすることもできる。 該生物学的活性剤は、さらに、有機コバルト錯体のコバルト原子と共有結合を供 するが、当該生物学的活性剤の生物学的活性に悪影響を及ぼさないスペーサーも 含み得る。 バイオコンジュゲート:生物学的活性剤と、中で該生物学的活性剤がコバルト 原子に直接的に共有結合しているか、またはコバルト原子にスペーサーを介して 間接的に共有結合している有機コバルト錯体とを含むコンジュゲート。 非−反応性原子:受容体−媒介エンドサイトーシスの間のリガンド交換の条件 下で生物学的活性剤の転移または破壊に至らないであろうが、その代わりに生物 学的活性剤(または生物学的活性剤およびスペーサー)の元の形態を復元し、そ れによって活性生物学的活性剤をマスク解除するであろう該生物学的活性剤中の 原子。該非−反応性原子は炭素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、セレン原 子またはケイ素原子とし得る。(例えば、アルキル、アシルまたはアリール基か らの)炭素原子が特に好ましい。かかる非−反応性原子は、コバルトとスペーサ ーとの間に共有結合を形成することにも用いられる。 有機コバルト錯体:不飽和多複素環系の一部分としてそれに結合する4または 5のカルコゲンを有するコバルト原子を含有する有機錯体。本発明によれば、適 当な有機コバルト錯体には、限定されるものではないが、コバラミン(補酵素B1 2 )、Co[SALEN](コバラミン・アナログである)、オルガノ(ピリジン)−ビ ス(ジメチルグリオキシマト)コバルト、(Brownらによる1996によって開示されて いるごとき)コリノイド、および前記いずれかのものの誘導体またはアナログ、 ならびに医薬上許容される塩が含まれる。有機コバルト錯体は、非置換であって も、または当該有機コバルト錯体の基本性質を改変しないであろう慣用的な有機 官能基で置換されていてもよい。該有機コバルト錯体の基本性質とは、本明細書 中に記載するごとく、コバルト−生物学的活性剤の結合が容易に開裂可能なよう に該生物学的活性剤がコバルトに共有結合されていることである。有機コバルト 錯体上に見出し得る置換基の例には、アミノ、ニトロ、ハロゲン(ブロミン、ク ロリン)、スルフィト、C2-6−アルケンおよびC2-6アルキンが含まれる。例え ば、有機コバルト錯体は、コリン環のニトロおよび/またはハロ(例えば、ブロ モ)誘導体を有するか、または環外のオレフィンもしくはアルケン基との伸長し たコンジュゲーションを有して形成することができる。他の誘導体には、コバラ ミンラクトン、コバラミンラクタム(cobalamin lactame)、およびその中で(例 えば、コバラミン、グリーン・コリノイドなどの)ベンズイミダゾール環が例え ば1またはそれを超えるハロゲン(ブロミン、クロリン)、ヒドロキシ、またはC1-6 アルキルで置換されたものが含まれる。かかる置換基は、本明細書中に記載 するごとく、バイオコンジュゲートの開裂に用いられるべきλmaxを上昇するの に有用である。さらなる誘導体には、ビタミンB12のコバラミンのアニリド、エ チルアミド、モノ−、ジ−もしくはトリ−カルボン酸またはプロピオンアミド誘 導体が含まれる。1の具体例において、該有機コバルト錯体は、トランスコバラ ミンによって結合し、トランスコバラミンを含む受容体−媒介プロセスによって 細胞に輸送されるコバルトを含有するいずれもの有機錯体である。第2の具体例 において、該有機コバルト錯体は、ターゲティング分子に直接的または(スペー サーを介して)間接的に共有結合していてもよく、ここに該ターゲティング分子 はその受容体によって結合され、該錯体は受容体−媒介プロセスによって細胞に 輸送される。Co[SALEN]およびその誘導体またはアナログは一般式: によって表し得、 式中、置換基は含まれていてもまたは省かれてもよく、当該分子の物理学的特性 、例えば水溶性、安定性またはλmax--当該錯体が吸収する波長、を変調する。 したがって、該置換基は以下のとおりである:RはH、水溶性および/もしくは 安定性を上昇する基またはターゲティング分子の結合用の基であって、W、W' 、X、X'、Y、Y'、ZおよびZ'は独立して、H、水溶性および/もしくは安 定性を上昇する基、ターゲティング分子の結合用の基、またはエネルギーの修飾 吸収用の基であり、あるいはWおよびXは一緒になり、W'およびX'は一緒にな って4-6員の環状または複素環となり、あるいはYおよびZは一緒になり、Y' およびZ'は一緒になって4-6員の環状または複素環芳香環となる。水溶性を向 上させるための基の例には、いずれかの置換基のアミノ、C1-6アルコール、C1 -6 カルボキシル、またはR以外の置換基のSO3-が含まれる。ターゲティング分 子の結合用の基の例には、いずれかの置換基のアミノ、C1-6アルコールおよび C1-6カルボキシルが含まれる。吸収を修飾するための基の例には、R以外の置 換基のCH2OH、CO2H、SO3-、アミノおよびニトロが含まれる。かかる基 は本明細書中に記載するバイオコンジュゲートの開裂に用いるべき光の波長を上 昇させるのに有用であり、一方、ターゲティング分子はバイオコンジュゲートを 目的の細胞に選択的にターゲティングするのに有用である。したがって、本出願 の文脈で使用する場合、有機コバルト錯体なる語は、特別に定義されていなけれ ば、そのすべての具体例におけるB12を包含し、補酵素B12、Co[SALEN] および他のB12またはB12-様分子、本明細書中に定義する有機コバルト錯体、 ならびにそれらのいずれの誘導体およびアナログをも含む。 スペーサー:2のコンポーネントを一緒に共有結合する原子または分子。本発 明においては、スペーサーは、生物学的活性剤を有機コバルト錯体のコバルト原 子に共有結合するために、またはターゲティング分子を有機コバルト錯体に共有 結合するために用いることができる原子および分子を含むことを意図する。該ス ペーサーは、有機コバルト錯体またはターゲティング分子とその適当な受容体と の結合を妨害してはならない。適当なスペーサーの例には、限定されるものでは ないが、ポリメチレン[−(CH2)n、ここにnは1−10である]、[生物学的活 性剤がOに、CoがC=Oに結合した]エステル、カーボネート、エーテル、ア セタールまたは1またはそれを超えるこれらのユニットのいずれかの組合せが含 まれる。当業者であれば、本発明により用いることができる他のスペーサーを容 易に認識するであろう。 これらのスペーサーの幾つかは“自己−破壊性”リンカー基として有用である 。すなわち、結合の幾つかまたはすべてが断片化反応で消費される。このことは 、光分解または音波分解によるC−Co結合の開裂後に、さらなる開裂が幾つか の結合を離し、前者リンカーの原子よりなる小さな不飽和の(および、典型的に は揮発性の)分子の形成に至る。このことを以下に図示する: 最も典型的な科学モデルは、第1の結合から離れた2つの結合である第2の結合 の続いての開裂である。したがって、大部分の自己−破壊性リンカーは、その小 さなガス状分子としての追出が好ましい2−原子ユニットを含むであろう。もう 1つの設計特徴は、第2の開裂工程後に生成する新たなラジカル種、特に安定し た種のラジカルを有することである。自己−破壊性リンカーの例を以下に示す: ターゲティング分子:受容体によって結合され、受容体−媒介プロセスによっ て細胞に輸送される分子。適当なターゲティング分子の例には、限定されるもの ではないが、グルコース、ガラクトース、マンノース、マンノース6−リン酸、 トランスフェリン、アシアログリコプロテイン、α−2−マクログロブリン、イ ンスリン、ペプチド増殖因子、コバラミン、葉酸もしくは誘導体、ビオチンもし くは誘導体、YEE(GalNAcAH)3もしくは誘導体、アルブミン、テキサフィリン( texaphyrin)、メタロテキサフィリン、ポルフィリン、いずれかのビタミン、い ずれかの補酵素、抗体、抗体フラグメント(例えば、Fab)ならびに一本鎖抗体可 変領域(svFv)が含まれる。当業者であれば、細胞受容体に結合し、受容体−媒介 プロセスによって細胞に輸送される他のターゲティング分子(リガンド)を容易に 認識するであろう。本発明は、かかるすべてのターゲティング分子を含むことを 意図する。 本発明は、コバラミンおよびコバラミン・アナログまたは誘導体の細胞特性、 ならびに他のターゲティング分子の細胞特性を利用する。例えば、実験により、 消化器官による生理学量のビタミンB12の吸収には、それが内因子(IF)とし て知られている天然発生する輸送蛋白質と錯形成することが必要であることが示 されている(Castleによる1953;FoxおよびCastle、AllenおよびMajerusによる19 72b)。この蛋白質は、基底部の壁細胞によって胃の管腔に放出される。内因子に 結合すると、そのB12−IF錯体は小腸の末端回腸上に位置するIFに対する膜 結合受容体と相互作用する。次いで、受容体−IF−B12錯体は、受容体−媒介 エンドサイトーシス(RME)のプロセスによって内在化される。AllenおよびMaj erusは、B12を化学的に修飾し、それを樹脂にカップリングし、B12−樹脂を用 いてIFをアフィニティー精製することが可能であることを実証した(Allenおよ びMajerusによる1972a)。この知見は、内因子と特異的に相互作用するその能力 をなお保持し、したがって能動輸送系の一部となりつつ、(AllenおよびMajerus による1972aによって用いられた樹脂のごとき)大きな巨大分子をB12にカップ リングすることの可能性を示唆している。内因子と相互作用するB12の能力を保 持するように分子をB12にカップリングすることによって、経口投 与したB12についての天然取込み機構を用いて種々の蛋白質、薬物または他の医 薬上活性な分子を胃腸管腔から循環へと送達できることが見出された。B12は同 様な輸送機構を介して癌組織に天然に濃縮されることが見出されている。 哺乳動物においては、B12はトランスコバラミン蛋白質TC−I、TC−II およびTC−IIIによって血液で輸送されている。血中のB12の主要な形態は メチルコバラミンであって、B12の最も大きな保存は肝臓中のアデノシルコバラ ミンである。癌細胞を含む迅速に分裂する細胞は、DNA合成の間のチミジン生 産のために補酵素B12を必要とする。腫瘍に罹った幾人かの患者においては主要 コバラミン輸送蛋白質TC−IおよびTC−IIにおける50倍に上る上昇が認 められたことが、Carme1による(1975)によって報告されている。Waxmanらによる (1972)は、血中で循環する腫瘍特異的B12結合蛋白質の知見を報告している。各 例において、TC輸送蛋白質におけるこれらの上昇、およびB12の対応する全身 的な枯渇は、メガロブラストーシス、顆粒球増殖、またはいずれかの他の病原性 B12枯渇の結果ではなかった。 受容体−媒介エンドサイトーシスの第2の例において、エンドサイトーシス活 性を媒介する葉酸受容体が細菌細胞中に以前に同定されており(Kumarらによる19 87)、生物学的に活性な材料の送達に用いられている(Lowらによる1995)。葉酸、 フォリン酸、プテロポリグルタミン酸、ならびにテトラヒドロプテリン、ジヒド ロ葉酸、テトラヒドロ葉酸およびそれらのデアザおよびジデアザ・アナログのご とき葉酸受容体−結合プテリジンは、本発明によるターゲティング分子として有 用である。“デアザ・”および“ジデアザ・”アナログなる語は、天然発生する葉 酸構造中の1または2の窒素原子の代わりに炭素原子を有する当該技術分野で認 識されているアナログをいう。例えば、デアザ・アナログには、1−デアザ、3 −デアザ、5−デアザ、8−デアザおよび10−デアザ・アナログが含まれる。 ジデアザ・アナログには、例えば1,5−ジデアザ、5,10−ジデアザ、8,1 0−ジデアザおよび5,8−ジデアザ・アナログが含まれる。前記の葉酸誘導体 は、葉酸−受容体と結合するその能力を反映して慣用的に”葉酸”と呼ばれてお り、外因性分子と錯形成した場合のかかるリガンドは、貫−膜輸送を向上させる のに 有効である。本発明の錯体形成リガンドとして有用な他の葉酸は、葉酸受容体結 合アナログ、アミノプテリン、アメトプテリン(メトトレキサート)、N10−メチ ル葉酸、2−デアミノ−ヒドロキシ葉酸、および1−デアザメトプテリンまたは 3−デアザメトプテリンのごときデアザ・アナログ、ならびに3',5'−ジクロ ロ−4−アミノ−4−デオキシ−N10−メチルプテロイル−グルタミン酸(ジク ロロメトトレキサート)である。葉酸受容体に結合して錯体の受容体−媒介エン ドサイトーシス輸送を開始することができる他の適当なリガンドには、葉酸受容 体に対する抗イディオタイプ抗体が含まれる。葉酸受容体に対する抗イディオタ イプ抗体との錯体中の外因性分子を用いて、当該錯体の貫膜輸送をトリガーする 。かかる分子は標的分子として本発明により用いる。 受容体−媒介エンドサイトーシスのさらなる例において、ビオチン受容体を用 いてエンドサイトーシス活性を媒介する(Lowらによる1995)。ビオシチン、ビオ チン・スルフォキシド、オキシビオチンおよび他のビオチン受容体−結合化合物 のごときビオチン・アナログとは、適当なターゲティング分子としても用いて本 発明による外因性分子の貫膜輸送を促進することができるリガンドである。ビオ チン受容体に結合して当該錯体の受容体−媒介エンドサイトーシス輸送を開始す ることができる他の化合物も考慮される。これらのものには、例えば、ビオチン 受容体に対する抗−イディオタイプ抗体のごとき他の受容体−結合リガンドが含 まれ得る。ビオチン受容体に対する抗−イディオタイプ抗体と錯形成する外因性 分子を用いて、当該錯体の貫膜輸送をトリガーすることができる。かかる分子は 、本発明によりターゲティング分子として用いる。 ターゲティング分子の他の例には、グルコース、ガラクトース、マンノース、 マンノース6−リン酸、(例えばインスリン、成長ホルモンなどの)ホルモン、( 例えば、TGF−β、EGF、インスリン−様増殖因子などの)増殖因子または サイトカイン、YEE(Ga1NAcAH)3もしくは誘導体、コバラミン、α−2マクロ グロブリン、アシアログリコプロテイン、アルブミン、テキサフイリン、メタロ テキサフィリン、抗体、抗体フラグメント(例えば、Fab)、一本鎖抗体可変領域( scFv)、トランスフェリン、いずれかのビタミンおよびいずれかの補酵素が含ま れる。 前記したごとく、本発明のバイオコンジュゲートは有機コバルト錯体のコバル ト原子に共有結合を介して直接的または間接的にコンジュゲートした生物学的活 性剤を含む。該生物学的活性剤は当該生物学的活性剤中の非−反応性原子を介し てコバルト原子に直接的にコンジュゲートしているか、またはスペーサーの使用 を介してコバルト原子に間接的にコンジュゲートしている。したがって、米国特 許第5,428,023号下で形成されたコンジュゲートに対して、アキシアル位のコバ ルト原子に対する生物学的活性剤の結合は、血液から細胞への受容体−媒介エン ドサイトーシスを妨害しない。 バイオコンジュゲートの異常に弱いコバルト−非反応性原子結合(例えば、C −Co結合)は、有機コバルト錯体からの生物学的活性剤の制御されたイン・ビ ボ(in vivo)放出につき容易にアドレス可能なトリガーを供する。バイオコンジ ュゲート中のCo−非反応性原子結合の結合解離エネルギー(BDE)は30−5 0kcal/molの範囲内(例えば、Co−C結合については30−40kcal/mol範 囲)であり、知られている最も弱い共有結合の中に入るが、なお該結合は水溶液 中では比較的安定である。 一般的な戦略では、ヒドロキシコバラミンのNaBH4での処理の際に生じる 非常に求核性のCo(I)中間体と反応し得る求電子部位を当該抗癌剤が有するよ うな抗癌剤の修飾を用いるであろう。この構造修飾は活性部位(ファーマコフォ ア)から十分に遠くに離されて、目的の生物活性のいずれの妨害をも排除される であろう。クロラムブシルの場合に用いるアプローチは典型的である:クロラム ブシルのカルボン酸基を酸塩化物またはブロモエチルエステルのいずれかに変換 し、そのいずれかをコブ(I)アラミンと有効にカップリングすることができる。 例えば、還元CblIは、例えばヒドロオキソ−コブ(III)アラミンのNa BH4または亜鉛末還元によって調製する。上記反応図式においては、薬物は本 明細書中に記載したごとき細胞毒性剤、他の薬物、または他の生物学的活性剤と することができる。他の反応図式においては、コバルト原子への結合について非 反応性原子と特定化されるような炭素原子または他の原子を含有し、生物学的活 性剤とさらに反応する反応性基、例えば−OHまたは−CNをも含むスペーサー を導入する。他の反応性基、例えば−NH2、−SH、−COOHほかも生物学 的活性剤へのカップリングに用いることができる。幾つかの場合(例えば、クロ ラムブシル、ドキソルビシン)においては、放出される小さな有機分子が親薬物 ではなく、むしろ備えられた幾つかの修飾を保持していてカップリングが可能な ことを特に記載しておくことは重要である。他の場合(例えば、トポテカン)にお いては、放出された薬物の構造は親分子に対応していてもよい。 本発明による代表的なバイオコンジュゲートの合成のより特別の詳細は以下の 通りであり、いずれの適当な生物学的活性剤によっても置換えることができる“ 薬物”およびいずれの適当な有機コバルト錯体によっても置換えることができる コバラミンを用いている。この合成においては、すべての手順はアルゴン下で行 う。ヒドロオキソコブ(III)アラミンを25℃の水性CH3OH(1:1 v /v) に溶解する。2−10倍過剰のNaBH4を添加する。溶液は赤色から茶色まで ゆっくりと色が変化し、徐々に緑色(CblI)に変化する。ほぼ15分後に、 例えばアルキルクロリド、アシルクロリドまたはアリールクロリドとして、(同 一の脱酸素化溶媒中に溶解した)求電子性薬物リガンドを添加する。厳密な無気 性条件を維持し、反応混合物を25℃にて温和に撹拌する。CbIがアルキル− 、アシル−またはアリール−CblIIIに変換されるに従って、色が黒色から赤 色に徐々に変化する。約1.5時間後に、希塩酸でその溶液をpH3.0まで酸性 化する。40℃未満のロータリーエバポレイションにより、減圧下にてメタノー ルを除去する。得られた水溶液を等容量の水で希釈し、Dowex AG−50−X2(200− 400メッシュ)カチオン交換カラムに負荷する。該カラムを水および0.1MのN aOAc、pH6.4で順次洗浄する。薬物−コブ(III)アラミンを含有す る画分は赤色に見え、これを適当に収集する。非反応ヒドロキシコブ(III) アラミンはカラム上に保持される。薬物−コブ(III)アラミンの合した画分 をフェノールで抽出し、ロータリーエバポレイションによって濃縮する。薬物− コブ(III)アラミンは、しばしば濃縮化した水溶液にアセトンを添加するこ とにより結晶化することができる。アルキル−、アシル−またはアリール−コバ ラミン・コンジュゲートの特徴付けは、NMR、質量分析(FAB、Clまたは 電子スプレー)およびIR法によって行う。 メトトレキサート−含有バイオコンジュゲートは、以下の方法によって合成す ることができる。 前記の手法を用いる方法においては、下記の反応図式Iに従って、メトトレキ サート(MTX)をその対応するアシル塩化物に変換し、次いでコバラミンおよび /またはCo(III)[SALEN]および/または他の開示した有機コバルト錯 体と反応させて、メトトレキサート−コバラミンおよびメトトレキサート−Co (III)[SALEN]を得る。別法2においては、保護アミノ基を有するアシル塩 化物からのC−Co結合を最初に形成させる。次いで、後記の反応図式IIに従 って、該アミノ基を脱保護し、続いてアミノベンゾイルプテリンへのアミド結合 を形成する。 アミノプテリン−含有バイオコンジュゲートは以下の方法によって合成するこ とができる。メトトレキサートのデス−メチル誘導体(アミノプテリン)を以下の 反応式によって示すごとくコバルトにカップリングする。ここにおいて、イミニ ウムイオンはCo(I)と直接的に反応するか、またはイミニウムイオンをアミノ ニトリルに変換し、次いで徐々にマスク解除してイミニウムイオンを出現するか のいずれかである。 トポテカン−含有バイオコンジュゲートは、以下の方法によって合成すること ができる。トポテカン(TPT)またはカンプトテシン(CPT)の細胞毒活性は、 トポイソメラーゼ I−DNA“開裂可能な錯体”を止める(freeze)するその能 力から生じる(Pommierらによる1995)。幾つかの腫瘍のタイプは大きく上昇した トポIのレベルを示す(Giovanellaらによる1989)ため、このタイプのトポイソメ ラーゼ毒はこれらの癌の治療においてより高い治療指数を有するようである。し かしながら、ターゲティング送達アプローチと結合して用いていれば、カンプト テシン誘導体での治療をより一般的にすることができたであろう。 以下の方法に従って、トポテカンをコバラミン、Co[SALEN]および他の 有機コバルト錯体にコンジュゲートする。カンプトテシンは同様の方法でコン ジュゲートする。10aおよび10bの調製には、8a、bについて前記に論じ たものと同様の化学が含まれる。トポテカン(5)のフェニルクロロホルマート( 25)の選択的生成およびCo(I)のアシル化により10aを得る。18に対し て25を暴露するか、または以前に論じたクロロホルマート19で5を処理して 10bを得る。コンジュゲート10c、dは5から直接的に調製することができ ないため、幾分より長い経路を要するであろう。しかしながら、天然産物カンプ トテシンから5への変換の確立された合成経路を適当な時点で修飾してコバルト 錯体を結合させることができる。フェノール性中間体26を調製するための最初 の3工程は知られている(Mulliezらによる1994)。次いで、ホルムアルデヒド/ ジメチルアミンでのマンニッヒ型置換によって5を得る。メチルアミンを用いて 対応する第二級アミン27を得る。この時点で、10cを得るためのメチレンを 介したCoへの結合は、第2のイン・サイチュ(in situ)生成したイミニウム塩 のCo(I)トラッピングを介して可能である。別法として、23でのN−アルキ ル化により10dを得る。10aおよび10bの開裂は、断片経路を介して直接 的にか、または他の生成物を介して間接的にかで5を供する。水素引抜きでの1 0cの開裂により5を得る。10dの開裂により、ジメチルアミノ基の代わりに エチルメチルアミノ基を有する生成物5を得る。 ブスルファン−含有バイオコンジュゲートは、以下の方法によって合成するこ ことができる。ブスルファンは、慢性骨髄性白血球(CML)に対して治療上用い るアルキル化剤である。有機コバルト錯体に対してブスルファンを結合させる好 ましいポイントは、1のアルカンスルホナートユニット上である。エステルのス ルホナート部分の構造における僅かな変化は、DNAを架橋形成する放出された 薬物の能力に大きな影響を及ぼさないであろう。7aの開裂につづく水素引抜き により、混合エタンスルホナート/メタンスルホナート2bを得る。酸化的条件 下で炭素ラジカルをトラップして、混合ビス(スルホナート)2cを生成し、これ は反応能力を有する架橋形成剤でもある。7bの開裂は、水素引抜き後の親薬物 2aの放出を生じる。 以下の反応図式に従って、ビス−メチルスルホン酸ブスルファンを、コバラミ ン、Co[SALEN]および他の有機コバルト錯体にコンジュゲートする。7a の調製については、市販のブロモエタンスルホン酸のナトリウム塩(11)が出 発点として作用する。五塩化リンと共に加熱して、対応するスルホニルクロリド 12を蒸留可能な液体として得る。Co(I)で処理すると、臭素の優先的な置換 に通じて13が得られ、これを1,4−ブタンジオールおよび塩化メシルで順次 処理することによって7aに変換する。最後の三工程の順序は変えることができ ;例えば、過剰量のブタンジオールで12を処理し、続いて塩化メシルで処理す ると混合ビス(スルホナート)14が得られる。次いで、Co(I)によって第一級 ブロミドを選択的に置換して7aを得る。コンジュゲート7bの場合には、(リ ンゴ酸ジエステルから容易に入手可能である)2-ブロモブタン-1,4-ジオール をCo(I)で処理して付加物15を得る。ビス(メシル化)により7bを得る。別 法として、7bはハライドの選択的置換によって16(X=BrまたはI)から調 製することもできる。 クロラムブシル含有バイオコンジュゲートは以下の方法によって合成すること ができる。クロラムブシルは、恐らくより塩基性の低いアニリン窒素の結果とし て、弱いアルキル化能力を有する比較的安定なナイトロジェンマスタードである 。 方法1:この手法においては、反応配列Iに従って、クロラムブシルを酸塩化 物に変換し、続いてコブ(I)アラミンまたはCo(I)[SALEN]と反応させ る。有機コバルト錯体に対するアシル結合が血清求核試薬に向けて不安定すぎる 状況では、2の別法バイオコンジュゲート手法を用いることができる。 方法2:この手法には、反応配列IIに従って、標準的なヘル−フォルハルト −ゼリンスキー(Hell−Vollhardt−Zelinski)条件下にてカルボキシル基に隣接 する炭素原子を臭素化して、α−位でCo錯体を結合させ得ることが含まれる。 図式IIにおいては、C−CoをC−Hで置換えてクロラムブシルを得る。反応 物の化学量論、温度および希釈条件を操作して、クロロエチル基のうちの1の、 またはSN2攻撃によるC1の置換えの競合を回避することができる。 方法3:反応配列IIIに従って、BOC−保護 p−アミノフェニルアセト アルデヒドをCo基にコンジュゲートし、続いて活性ナイトロジェンマスタード 生成物を形成する。 クロラムブシル、エチルエステル含有バイオコンジュゲートは、以下の方法に よって合成することができる。クロラムブシルの場合のごとく、薬物をカルボキ シル基を介してコンジュゲートさせる場合には、ヒドロキシルエチルテーテル( tether)を介して該薬物をコバラミンに結合させることが望ましい。このことは 、ともに以下に図示する2つの慣用的な経路のうちの1つによって行い得る。ま ず、2−ヒドロキシエチル−コブ(III)アラミンは、コブ(I)アラミンお よびブロモエタノールから容易に調製することができる。エステル化は、標準的 な条件下、すなわち、ジクロロメタンまたはトルエン中、ジシクロヘキシルカル ボジイミド(DOC)(またはEDCIのごとき水溶性誘導体)ならびに触媒量の 4−N,N−ジメチルアミノピリジン(DMAP)およびその塩酸塩(DMAP−H Cl)存在下にて、カルボン酸(クロラムブシル)とアルコール(2−ヒドロキシエ チルコブ(III)アラミン)とを反応させることによって行う。別法として、 該エステル結合コンジュゲートは、まず、クロラムブシルの2−ブロモエチルエ ステルを形成させ、次いで該エステルとコブ(I)アラミンとを反応させて同生 成物を得ることによっても調製することができる。反応図式(I、II)を以下に 示す。この様式の結合では、反応図式IIIに従って、バイオコンジュゲートか らの開裂がクロラムブシルのエチルエステルの放出に通じる。 エトポシド−含有バイオコンジュゲートは、以下の方法によって合成すること ができる。エトポシドは、種々の腫瘍、特に小細胞肺癌および生殖細胞腫瘍(DeJ ongらによる1995)に対して広く使用されている天然生成物エピポドフィロトキシ ンの半合成誘導体である。卵巣癌および乳癌の難治性症例の治療においてもそれ はかなり有望であることが示されている。エトポシドはトポイソメラーゼIIの毒 として機能すると考えられている。 以下の反応図式に従って、エトポシドをコバラミン、Co[SALEN]および 他の有機コバルト錯体にコンジュゲートする。バイオコンジュゲート8aおよび 8bは、エトポシド(3)の遊離フェノールの対応するクロロホルマート17への 変換が必要である。Co(I)での直接的なアシル化により、アシルCo(III) 誘導体8aが得られ、一方、以前に記載したヒドロキシエチルCo(III)誘導 体18で処理するとカーボナート8bが得られる。この誘導体は、18から誘導 したクロロホルマート19で3をアシル化することを介しても入手可能である。 アセタール修飾コンジュゲート8cの調製はより能力をためすものとなり得る。 3のエチレンアセタールは加水分解し、次いでアルデヒド20aまたはジメチル アセタール20bを用いてアセタールを再形成することができる(Keller−Jusl らによる1971)。化合物20aは18の注意深い、選択的な酸化を介しても入手 することができ、一方、20bは市販のブロモアセトアルデヒドジメチルアセタ ールを用いたCo(I)誘導体のアルキル化を介して入手可能である。加えて、グ ルコースのアセタールを形成することができ、21の第二級アルコールをグリコ シル化することもできる。断片経路を介して8aまたは8bのいずれかを開裂す ると直接3が得られ、あるいは結果として3まで加水分解し得る生成物が得られ る。8cのホモリシス後にH・をトラップすれば、3が得られるであろう。 ドキソルビシン−含有バイオコンジュゲートは、以下の方法によって合成する ことができる。ドキソルビシン(4)は最も広く用いられているアントラサイクリ ン系抗生物質であって、広範なスペクトルの充実性癌および血液性腫瘍に対して 臨床的に有用である。エトポシドの様に、ドキソルビシンはトポイソメラーゼI Iを標的とすると考えられており、最終的には増殖拘束および非アポトーシス性 (nonapoptotic)細胞死に通じる(Fornariらによる1996;Lingらによる1996)。ド キソルビシンの臨床有用性はその非特異的毒性、特に心臓毒性によって制限され ている。従って、それは選択的送達用の特に良好な候補であると考えられる。こ のことは、免疫コンジュゲートの一部としてのリポソームーベースの方法(Huら による1996;Longmanらによる1995;Hosadaらによる1995)、またはプロドラッグ・ アプローチ(Svenssonらによる1995)においてそれが頻繁に使用されていることに よって確認される。 以下の反応図式に従って、ドキソルビシンを、コバラミン、Co[SALEN] および他の有機コバルト錯体にコンジュゲートさせた。バイオコンジュゲート9 aの合成については、ダウノサミンアミノ基とアシル−Co(III)錯体22と の縮合を行う。この反応により、4−ヨードブチルアルデヒドと5−ヨード−2 −ペンタノンを用いる公表経路と類似して2−ピロリン環が形成する(9b)。ア シル性第三級アミン誘導体9bは、アセトアルデヒドで最初に還元的にアミノ化 し、次いで18から誘導したメシラート23で得られた第二級アミンをアルキル 化することを介して4から入手可能である。別法として、4をクロロホルマート 19で処理してカルバマート9cを得ることもできる。別の結合点が望しい場合 には、23から入手可能な24のごとき単純なコバラミンアルキルヒドラジドを 用い、9dのごときヒドラゾン−結合誘導体を用いることができる。これらのバ イオコンジュゲートの開裂を以下の反応図式に示す。 カルボプラチン含有バイオコンジュゲートは以下の反応図式に示すごとく合成 することができる。 ペプチド含有バイオコンジュゲートは以下の方法によって合成することができ る:(1)クロラムブシル酸塩化物でのCoのアシル化と類似して、ペプチドのC −末端カルボキシル基を活性化し、それを用いてCo(I)をアシル化することが できる。(2)他のクロラムブシル経路と類似して、C−末端カルボキシル基をブ ロモエタノールでエステル化し、次いで該臭素をCo(I)で置換えることができ る。(3)トポテカン・バイオコンジュゲートの合成と類似して、該ペプチドのN −末端アミノ基をCH2=OおよびCo(I)で処理してCo(III)−CH2−N H−ペプチド結合を形成させることができる。(4)Co(III)−アミノ酸錯体 を調製することができ、残余のペプチドとのカップリング工程において用いるこ とができる。これらの方法には、N−またはC−末端のいずれかにおけるか、ま たは側鎖を介してのCoの結合が含まれる。ペプチド鎖からコバルト錯体をさら に離して置くことが望ましい場合には、より長いリンカーをこれらのいずれかの 経路で用いることができる。 オリゴヌクレオチドまたは核酸−含有バイオコンジュゲートは以下の方法によ って合成することができる。両方法において、リン酸エステルを用いて、ヌクレ オチドの末端およびヒドロキシエチル−Co基を結合させる。この結合は、Co −CH2CH2−OHおよびNucl−OPO3 2−を直接的にカップリングさせる か、またはNucl−OPO3 2−をBr−CH2CH2−OHでエステル化し、次 いで前記のごとくBrをCo(I)で置換えるかのいずれかによって行うことがで きる。 非対称置換Co[SALEN]錯体は、5−アミノ−サリチルアルデヒドおよび 2,5−ジヒドロキシベンズアルデヒドのグリコラートエーテルから調製するこ とができる。市販の5−ニトロサリチルアルデヒドから調製するアミノ基は、E DCI−触媒アミド形成によって、ターゲティング分子用の結合(結合ドメイン 、BD)として機能する。他の分子は溶解性を向上させるために結合したカルボ ン酸ユニットを有する。これらの2分子とエチレンジアミンおよび酢酸Co(I I)とをカップリングさせて3錯体の混合物を得る:2の対称錯体とそれらが混 ぜ合わさったもの。SALENのいずれかの末端に結合したBD−ユニットを欠 いているものはあまり好ましくないが、これらはすべて有用である。 結合ドメインに関して2の可能性:コバラミン誘導体およびペプチドを示す。 前者の場合においては、公知のカルボン酸を用いてコバラミンをSALENのア ミノ基に結合させる。このバイオコンジュゲートも、細胞に入るためにコバラミ ン−ベースの受容体−媒介エンドサイトーシスをなお用いるが、薬物はコバラミ ンの代わりにSALENを介して結合する。後者の場合では、SALEN上のア ミノ基に結合したカルボキシル末端を有する、腫瘍細胞の細胞表面受容体に結合 することが知られているペプチド(例えば、上皮細胞増殖因子のフラグメント) を用いる。別法として、葉酸のグルタミン酸カルボキシル基の1を用いて、葉酸 −ベースのバイオコンジュゲートを得ることもできる。アミド結合を介して結合 ドメインに結合することに加えて、ターゲティング分子がアルデヒド(BD−C HO+SALEN−NH2+NaBH4)を含む場合には還元的アミノ化を用いる こともでき、あるいは他の部分上のカルボキシル基を用いてアミドまたはエステ ル結合を形成することもでできる。ほかの多くのアプローチ(例えばエーテル形 成、ウィティッヒ反応によるオレフィン化、ジエステルまたはジアミド・リンカ ーを介した結合ほか)も可能である。SALENリガンドの拡大ベンゼノイド系を以下に示す。 その合成の出発時点としては、いずれの市販のナフタレンジオールを用いるこ ともできる。そのジオールはホルミル化反応を起こして、以下に示す分子が得ら れる。次いで、これらの分子を酢酸Co(II)および種々のジアミンとカップリ ングさせて拡大Co[SALEN]錯体を得る。第2環上のOH基は非反応のまま 残すことができ、それを用いて結合ドメインを結合することができ、あるいは、 ポリアミン、ポリカルボン酸または炭水化物基のごとき極性基の結合を介してそ れを修飾して水溶性を向上させることができる。 キノリンおよびイソキノリンの修飾を行っても、ピリジン−縮合SALENが 得られる。 同様の系列に沿って、単環複素環ヒドロキシアルデヒドから誘導したSALE Nを生成することができ、その例を以下に示す。 “グリーン・コリノイド”含有バイオコンジュゲート(Brownらによる1996)は、 以下のごとく合成することができる。“グリーン・コリノイド”はコバラミンと 類似して還元することができ、その還元コリノイドはヨードメタンと反応してメ チルCo(III)コリノイドを形成するであろう。メチルCo(III)コリノイ ドは天然コバラミンと同様の挙動を示すため、前記した求電子性薬物誘導体と同 様のコンジュゲーション手法を行うことができる。 本発明のバイオコンジュゲートは、当該バイオコンジュゲートから生物学的活 性剤のターゲット化した、選択的な放出をすることができる改善された特性を有 する。生物学的活性剤は開裂によってバイオコンジュゲートから放出される。1 の具体例において、該開裂は、細胞の求核性分子または酵素作用による通常の置 換えの結果として起こり得る。第2の具体例において、該開裂は外部シグナルに よって放出部位で選択的に引起こさせる。該外部シグナルは光または光励起、す なわち光分解であっても、超音波、すなわち音波分解であってもよい。さらに、 該光分解を放出部位を取り囲む磁場の存在下で起こす場合には、取り囲む健全組 織への細胞毒性剤のごとき薬物の放出は最小限にとどめられる。 目的の細胞、組織または器官で、例えば腫瘍もしくは他の癌細胞の部位で生物 学的活性剤を放出させることが望ましいが、かかる強力な剤の負の副作用から隣 接組織を保護することも望まれる。該生物学的活性剤は、好ましくは光または超 音波のごときの外部シグナルの適用によってターゲット化部位でバイオコンジュ ゲートから放出される。本発明のバイオコンジュゲートの光分解はCo−C結合 の開裂を介して起こって、Co(II)および生物学的活性剤のラジカル(R・)よ りなる溶媒−かご化ラジカル対を生成する。Lottらによる(1995)は、アルキルコ ブ(III)アラミン光分解が磁場依存性再結合を起こし得ることを実証してい る。100−3000ガウスの磁場適用を用いて、当該コンジュゲートからの薬 物放出が望ましくない取り囲む組織におけるラジカル対再結合を、かかる取り囲 む健全組織における光化学−トリガー化薬物放出において少なくとも2倍低下す るまで向上することができる。 本発明のバイオコンジュゲートの音波分解は、水溶液中のCo非−反応性原子 結合の開裂を介して起こり、無気性条件下では生物学的活性剤およびCo(II) (例えば、コブ(II)アラミン(CblII))を、あるいは有気性条件下では生 物学的活性剤およびアコCo−(III)(例えば、アココブ(III)アラミン (H2O−CblIII))を生成する。いずれかの事象において、超音波の焦点化適 用からの音波分解により、Co非−反応性原子結合開裂および有機コバルト錯体 からの生物学的活性剤の不可逆的放出を生じる。 本発明のバイオコンジュゲートは以下のごとく自然開裂し得る。バイオコンジ ュゲートは血清求核性分子によるごとく天然手段によって開裂し得る。細胞内に 入ると、コバラミン−薬物バイオコンジュゲート(本明細書中では一例としての み使用し、本発明を限定するものではない)は種々の機構によって開裂し得る。 標準的なB12リガンド交換機構は薬物の置換えを許容する。別法として、細胞の 求核性分子はCo−C結合の炭素原子またはコバルト原子のいずれかで攻撃する ことができる。シアン化物は、シアノコブ[III]アラミンと前方のC−Co結 合がC−H結合で置換わっている遊離薬物とに通じる、コバルトで攻撃する求核 性分子の最も一般的な例である。(システインまたはグルタチオン中に見出され るごとき)チオールは炭素で攻撃して、還元コブ[III]アラミンと前方のチオ ール基を取込む遊離薬物とに至る(例えば、R−Co[III]+R'−SH+塩基 →R−S−R'+Co[I]+塩基−H.)。水酸化物および他の塩基性剤も、典型 的にこれは新たな二重結合の取込みを介してリガンドの構造を改変する脱離プロ セスを介して起こるが、Co[III]錯体から有機リガンドを開裂することがで きる。加えて、細胞中に存在するB12代謝酵素は、Co−原子からの生物学的活 性剤の 開裂を生じ得る。 本発明のバイオコンジュゲートは、以下のごとく光活性化または光分解によっ て開裂させることができる。有機コバルト錯体からの生物学的活性剤の光化学放 出は、400−800nmの可視光線を適用することによってトリガー化するこ とができる。より長い波長の可視光線(600−800nm)、より好ましくは赤 色光(600−750nm)を要する有機コバルト錯体を用いることが好ましい。 バイオコンジュゲートから生物学的活性剤を放出させるために光分解を用いる場 合には、コバルト原子に結合した生物学的活性剤の非−反応性原子またはスペー サーの原子は炭素原子であることが特に好ましい。 ビタミンB12補因子は2種の形態で天然発生する:補酵素B12としても知られ ているアデノシルコブ(III)アラミン(AdoCblIII)およびメチルコブ (III)アラミン(CH3CbIII)。コリン環から5'−デオキシアデノシルま たはメチルリガンドへの顕著に弱いC−Co結合は最も通常でない化学をコバラ ミンに付与している。AdoCblIIIおよびCH3CblIII中のC−Co結合 エネルギーは、各々、31および37kcal/moleほど低いと概算される。このこ とはC−Co結合を知られている最も弱い共有結合のうちの1とし、可視光線に よる結合の光開裂を可能としている。AdoCblIIIの光開裂の最初の生成物 は、一対のラジカル対{CH2−Ado:CblII}である。ブラケット{:}は ラジカル対が一対(同一親分子に由来する)であって、溶媒相互作用によって極近 隣に保持されていることを示す。AdoCblIIIのピコ秒レーザーフラッシュ 光分解実験により、これが、光分解後にkrec≒1×109-1の対再結合速度定 数を有する可逆的プロセスであることが示された。最近のナノ秒レーザーフラッ シュ光分解実験においては、溶媒中で起こり拡散によって制限されるより遅いラ ジカル対再結合が探られている。 コバラミンのコリン環のπ−π*電子遷移は、図1によって示されるごとく5 25nmの長波長吸収極大を作り出す。この波長におけるアルキルコバラミンの 照射は0.1−0.3の光分解量子数量を有するC−Co結合の開裂に至る。本発 明によるバイオコンジュゲートのイン・ビボ(in vivo)光分解は、ヘモグロビ ン がこの波長付近に強い吸収を有するため、好ましくはファイバーオプティックス ・プローブで光を伝達することによって行う。光不安定なC−Co結合を維持し つつコバラミンの吸収スペクトルでの潜在的な問題を回避するために、補酵素B12 の5−配位結合アナログであるCo[SALEN]を用いることができる。アル キル−Co[SALEN]錯体は、図2により示されるごとく700nmを超えて の有意な吸収と共に650nm付近に吸収極大を有する。ヒト組織は610nm より上方でますます透過性となるため、このことは光活性可能な薬物放出につい て明瞭な利点である。600nmより上方に吸収極大を有する他の合成または天 然発生B12誘導体が利用可能であり、あるいは利用可能とすることができる。例 えば、約624nmに吸収極大を有するグリーンコバルト・コリノイドがBrownら (1996)によって報告されている。ヒト組織は約600−800nmの間の波長で 約5.7cmまでの深さまで透過性となる。より長い波長を使用することにより 、対象の身体の限定された部分のより選択的な照射が可能であり、その結果、小 さなターゲット領域中で放出させることができる。 本発明のバイオコンジュゲートは、以下のとおり磁場存在下の光活性化または 光分解によって開裂させることができる。磁場を使用することにより、生物学的 活性剤の放出が目的部位にさらに限定される。例えば、抗新生物剤の健全組織へ の毒性のため、活性の部位以外の細胞への傷害を限定することがいずれの有効な 部位特異的送達系にも課せられる。光ホモリシス開裂反応においては、壊れた共 有結合中の電子が、共有結合への参加からスピン対形成↑↓(一重項状態)を始め る。ラジカル対の短寿命の間、時間にわたり電子スピンがランダム化するまでに スピンはそれらの元の向きR↑+R'↓を保持している。スピンが対形成する時 間の間に、ラジカルは再結合し出発物質に復帰することができる。これらの対形 成ラジカルスピンのいずれかが三重項スピン状態(R↑+R'↑)まで項間交差(I SC)する場合には、それらのスピンが一旦再度対形成するまでもはや再結合で きない。バイオコンジュゲートから生物学的活性剤を放出させるためにはその状 態が好ましい。しかしながら、健全組織においては、該コンジュゲートの開裂が 防がれるか、少なくとも最小限にとどめることが望ましい。その事象においては 、ト リプレット状態のエネルギーレベルの間のギャップを増加させ、したがって健全 組織における元のバイオコンジュゲートの再結合を促進する外部磁場を導入する ことによってISCの比率を改変することが望ましい。 再結合速度は、光化学量子収率における正味低下および少なくとも2倍の健全 組織への薬物放出における低下に通じる、健全組織への100−3000ガウス の範囲の磁場の適用によって上昇させることができる。約300−1000ガウ スの適用が最適と考えられる(Grissomによる(1995)を参照されたし)。 本発明のバイオコンジュゲートは、以下のように超音波または音波分解によっ て開裂することができる。いずれの非−反応性原子をバイオコンジュゲート中の コバルト原子に結合させることもでき、音波分解によって開裂することができる が、該原子は炭素原子であることが好ましい。ビタミンB12補因子は2の形態で 天然に発生する:補酵素B12としても知られているアデノシルコブ(III)ア ラミン、(AdoCblIII)およびメチルコブ(III)アラミン、(CH3Cb lIII)。コリン環から5'−デオキシアデノシルまたはメチルリガンドへの顕著 に弱いC−Co結合は、最も特異な化学をコバラミンに付与する。AdoCblIII およびCH3CblIIIにおけるC−Co結合エネルギーは、各々、31およ び37kcal/moleも低いと概算される。このことは、C−Co結合を知られてい る最も弱い共有結合の1とし、約20kHz−500MHz、好ましくは20k Hz−100MHz、より好ましくは20kHz−10MHzの範囲の超音波の 適用によって当該結合を音波分解し得るものとしている。 水溶液の音波分解は、式: に従って高濃度のヒドロキシルラジカルおよび水素原子を生成する。これらの反 応性酸化種および還元種は水溶液中の大部分の反応の開始に寄与している。超音 波照射および音化学はしばしば高-エネルギープロセスとして説明されないが、 音波分解の間、液体中の泡の発達、成長および内破は顕微鏡スケールの極めて優 れた反応環境を作り出す。キャビテーション泡の崩壊は>500気圧および>5 0 00℃の温度を生成する。形成したラジカルは泡の崩壊にかかわらず生きている 。イン・ビボ(in vivo)のヒドロキシル・ラジカルの形成は、ヒト組織における 遊離ラジカルを酸化させる潜在的に有害な効果であるため、幾つかの研究の焦点 である。しかしながら、かかるラジカルには、臨床経験が診断超音波が良性の手 法であることを実証しているごとく、許容し得ない健康危険性は存在しない。イ ン・ビボ(in vivo)の音波分解によってこれらのラジカルを形成する能力は、 B12、Co[SALEN]または他の適当なコバラミンもしくはコバラミン様基質 とのコンジュゲーションからの活性新生物剤および他の薬物のトリガー化放出に 機構を供する。 薬物-B12コンジュゲートの音波分解においては(ここでは例としてのみ用い、 本発明を限定することを意図するものではない)、C−Co結合が水溶液中で開 裂して、無気性条件下では薬物とコブ(II)アラミン(CblII)を、あるいは 有気性条件下では薬物とアココブ(III)アラミン(H2O−CblIII)とを生 成する。該開裂はC−Co結合の直接的な破壊ではない。むしろ、無気性条件下 では、音波分解によるC−Co結合開裂の優勢な経路は、H・による薬物−Cb lIIIから不安定な薬物−CblIIへの還元に続く閉殻薬物とCblIIへの解離 を介する。HO・と薬物−CblIIとの反応はH2O−CblIII、ならびにコリ ン環の分解に通じる。有気性条件下では、音波分解によるC−Co結合開裂の経 路は薬物およびCblIIを生成する薬物−CblIIIの還元を介するが、O2がC blIIをH2O−CblIIIに酸化する。いずれかの事象において、超音波の焦点 化適応からの音波分解は、C−Co結合開裂およびコバラミンからの薬物の不可 逆的放出を生じる。したがって、音波分解−トリガー化放出は有気性条件および 低酸素条件下で同様に発生し得る。 本発明は癌、肝炎、乾癬および他の局所疾病(を含むがそれらには限定されな い)の治療、ならびに遺伝子療法およびペプチド療法に有用である。本発明によ るバイオコンジュゲートは、静脈内、非経口、経口、筋肉内、膣内投与を含む、 またはエアゾールとしていずれの経路によっても投与することができる。送達の 様式は達成することが望まれる生物効果に大きく依存するであろう。当業者であ れば、本発明による特定の治療のための最良の投与経路が容易に分かるであろう 。適当な投与量は投与の経路および示した治療に依存し、最新の治療プロトコー ルからの補外によるごとく、当業者によって容易に決定し得る。バイオコンジュ ゲートの有機コバルト錯体がコバラミンまたは誘導体もしくはアナログである場 合には、当該バイオコンジュゲートの投与の前にビタミンB12のボーラスを経口 投与して、当該バイオコンジュゲートの投与の他から生じ得る潜在的な肝細胞毒 性を低下または排除することが好ましい。B12の経口用量は、コバラミンで腸肝 シャトル系を飽和し、肝細胞を負荷するであろう。好ましくは0.1mg〜10 0mg、より好ましくは1.0mg〜10mgのビタミンB12を、コバラミン含 有バイオコンジュゲートを投与する前に投与することが好ましい。加えて、ビタ ミンB12は、バイオコンジュゲートを選択的開裂させて開裂しなかったすべての バイオコンジュゲートを洗浄した後に、好ましくは静脈内投与することもでき、 したがって、潜在的な全身的効果をさらに低下させることができる。塩類溶液中 の好ましくは0.1mg〜100mg、より好ましくは10mg〜100mgの ビタミンB12を4−5時間にわたって静脈内投与することが好ましい。最後に、 コバラミン−ベースのバイオコンジュゲートを投与する前に、亜酸化窒素を対象 に投与して、メチルコバラミンのごとき種々の形態のコバラミンの体内保存を枯 渇させることができる。亜酸化窒素の投与は、コバラミン−ベースのバイオコン ジュゲートの投与の前のコバラミンのより大きな体内不足を奏する効果を有する 。 有効成分として本発明による化合物を含有する医薬組成物は、慣用的な医薬混 合技術に従って調製することができる。例えば、Remington's Pharmaceutical S ciences,第17版(1985,Mack Publishing Co.,Easton,PA)を参照されたし。 典型的には、作動量の有効成分を医薬上許容し得る担体と混合するであろう。該 担体は、例えば静脈内、経口、非経口、クモ膜下、皮内またはエアゾールによる ごとき、投与に望まれる調製物の形態に依存する広範な種々の形態を採り得る。 経口投与については、該化合物をカプセル剤、丸薬、錠剤、トローチ剤、溶解 剤、粉末剤、懸濁剤または乳液剤のごとき固形または液体の調製物に処方化する ことができる。該組成物を経口投与量形態に調製することにおいては、いずれの 通常の医薬媒体も用いることができ、例えば、(例えば懸濁剤、エリクシルおよ び溶液剤のごとき)経口液体調製物の場合においては水、グリコール、油剤、ア ルコール、賦香剤、保存料、着色剤、懸濁化剤などを;あるいは、(例えば、粉 末剤、カプセル剤および錠剤のごとき)経口固体調製物の場合においてはデンプ ン、砂糖、希釈剤、顆粒化剤、潤沢剤、結合剤、崩壊剤などのごとき担体を用い ることができる。投与におけるその簡便性のため、錠剤およびカプセル剤が、最 も有利な経口投与量ユニット形を表し、その場合においては固形医薬担体が明ら かに用いられる。望むなら、錠剤は、標準的な技術によって、糖衣または腸溶剤 皮とすることができる。活性剤は胃腸管通過するために安定でなければならない 。必要な場合には、安定通過用の適当な剤を用いることができ、それには文献に 記載されているリン脂質またはレシチン誘導体、ならびにリポソーム、(マイク ロスフェアおよびマクロスフェアを包含する)微粒子が含まれ得る。 非経口投与については、該化合物を医薬担体に溶解して、溶液または懸濁液の いずれかとして投与することができる。適当な担体の例は水、塩類溶液、デキス トロース溶液、フルクトース溶液、エタノールまたは動物、植物もしくは合成起 源の油剤である。該担体には、他の成分、例えば保存料、懸濁化剤、可溶化剤、 緩衝液などのような他の成分も含ませることができる。該化合物を脳室内または 鞘内投与する場合には、それを脳脊髄液に溶解することもできる。 癌(肉腫、癌腫または白血病)の治療においては、より端的な外科手術摘出お よび放射線療法の方法と典型的には協調して用いる全身アジュバント化学療法の タイプの間で相違を作ることができる。2の広いクラスの化学療法アジュバント が存在する:(1)身体の生理学を改変することを目的とする内分泌および抗血 管原性治療剤;および(2)典型的には全身投与してトランスフォームした細胞 を殺すかまたはその増殖を阻害する細胞毒性化学療法剤。 細胞毒性剤または抗新生物剤は多くの薬物クラスによって表される。アルキル 化剤は、核酸塩基およびリン酸、アミン、スルフヒドリル、ヒドロキシル、カル ボキシルおよびイミダゾール基のごとき種々の求核性の生物学的に重要な基と共 有結合(アルキラーテ)を容易に形成する非常に反応性の求核性のカルボレイショ ンスニウム・イオン(carborationsnium ion)を生成する化学反応を行う。これ らの剤は、他の機能の中で、細胞増殖、有糸分裂活性、分化および機能に関する 基本的な機構を乱す細胞毒性作用を有する。クロラムブシル、修飾ブスルファン 、シクロホスファミド、イフォスファミドおよびシスプラチンならびにその構造 アナログは代表的なアルキル化剤である。 葉酸アナログ(例えば、メトトレキサート)およびピリミジン・アナログ(例 えば、フルオロウラシルおよびフルオロデオキシウリジン)のごとき代謝拮抗物 質は、新生物細胞破壊につながる代謝経路をブロックまたは妨害することによっ て細胞毒性活性を発揮する。メトトレキサートは、上皮細胞の増殖を阻害するこ とにより乾癬の治療に有用であることも知られている。 他の強力な細胞毒性クラスは、パクリダキセル(paclidaxel)またはアルカロ イド・カンプトテシン、ビンクリスチン(vincristine)およびビンブラスチン (vinblastine)のごとき有糸分裂阻害剤である。 また、ドキソルビシンおよびダウノルビシンのごときある種の抗生物質、(四 環アグリコン・グリコシド)は、DNAにインターカレイションし、核酸合成を 阻害する。 本発明によれば、癌治療用のバイオコンジュゲートは、好ましくはアルキル化 剤、代謝拮抗物質および有糸分裂阻害剤よりなる群から選択される化学療法剤を 用いて形成する。例えば、メトトレキサートは代謝拮抗物質であり;クロラムブ シル、シスプラチンおよび修飾ブスルファンはアルキル化剤であって、カンプト テシンおよびその誘導体はアルカロイドである。これらの細胞毒性剤から形成さ れるバイオコンジュゲートは、有効であることが知られている特定のクラスの癌 、例えば腸、肺、腎臓、乳房、前立腺、黒色腫、鼻咽腔の癌、T−細胞白血病、 骨髄性白血病、リンパ球性白血病などの治療用に静脈内投与することができる。 血流に静脈送達する場合であってバイオコンジュゲートがコバラミンを含有する 場合には、B12に対する癌細胞の天然の親和性によって当該バイオコンジュゲー トがこれらの組織または細胞部位にターゲット化されるであろう。別法として、 該バイオコンジュゲートは、有機コバルト錯体上に(前記したごとき)適当なタ ー ゲティング分子を取込むことによって、目的の癌細胞への化学療法剤の送達につ き選択的となるよう設計することもできる。 本発明によれば、充実性癌は、一例として薬物−B12バイオコンジュゲートを 用いて、以下のように治療する。この例は如何なる場合においても本発明を限定 することを意図するものではなく、当業者であれば、充実性癌の治療に用いるこ とができる本発明の他のバイオコンジュゲートを容易に決定し得るであろう。該 薬物−B12バイオコンジュゲートは、転移性の癌細胞がコバラミンに対して顕著 な要求性を有する場合には、癌患者に好ましくは静脈内投与して該転移性癌をタ ーゲット化させる。該癌細胞に移動するコバラミンのこの傾向は、心臓毒性、骨 髄毒性、肝細胞毒性、ならびに抗新生物剤の有効投与のサイズおよび頻度を制限 する同様の副作用を顕著に減じる。さらに、非−ターゲット化細胞に対する毒性 に関連する問題も最小限にとどまる。送達は、短時間にわたる局在化領域におけ る薬物放出の高度の空間的および時間的制御を供する光分解または音波分解の機 構によるバイオコンジュゲートからの抗新生物剤の放出のトリガーによってさら に向上する。光分解と磁場の適用は、該バイオコンジュゲートの再結合によりさ らに健全細胞を保護するように作用し、特定の癌細胞−含有部位(群)への活性 剤の放出を制限するようにも作用する。 化学療法は初期腫瘍塊の外科手術摘出後の転移細胞をターゲティングすること に一般的に保有されるが、腫瘍部位に生物学的活性剤のトリガー化引き金放出が 引込まれることにより、初期腫瘍、ならびに制限され知られている領域に広がる 転移性新生物が治療される。該バイオコンジュゲートの投与量、治療期間、光活 性化の程度、ならびに他の治療指標は、癌のタイプ、投与する抗新生物剤、用い る特定のコバラミン、患者の症状、ならびにケースバイケース・ベースで決定さ れる変動性および最良であるほかの因子に基いて、当業者によって決定され得る 。 本発明によれば、白血病は、一例として薬物−B12バイオコンジュゲートを用 いて以下のとおり治療する。この例は如何なる場合においても本発明を限定する ことを意図するものではなく、当業者であれば、白血病の治療に用いることがで きる本発明の他のバイオコンジュゲートを容易に決定することができるであろう 。 少なくとも2の形態の白血病、慢性骨髄性白血病(CML)および急性前骨髄性 白血病(APL)は、血中の不飽和B12結合能力の3−から36−倍の上昇を生 じる高レベルのB12結合蛋白質を生成する。B12結合蛋白質の濃度の上昇は、未 熟血球の迅速な代謝回転と一致し、白血病症状に寄与するトランスフォーム造血 細胞へのブスルファンから誘導したビス−アルキル化剤のごとき抗白血病剤の送 達をターゲットする機会を供する。本発明のバイオコンジュゲートは、当該コン ジュゲートからそれに対して活性剤を放出し得る細胞部位に対してかかるアルキ ル化剤の有効な投与のための手段を供する。このターゲット化された送達および 放出は、最新の化学療法がしばしば不完全な緩解しか供しないCMLおよびAP Lの治療において顕著な進歩を供する。 本発明は乾癬の治療にも有用である。乾癬は、光分解的に誘導する開裂によっ て活性化される代謝拮抗物質の皮内または経口制御送達に対する第一のターゲッ トである。生命を脅かすものではないが、乾癬は乾癬性関節炎およびリューマチ 性関節炎に関連する重篤な剥離を経験する患者の生命の質を顕著に減じ得る。メ トトレキサートおよび5−フルオロウラシルのごとき代謝拮抗物質は、皮膚増殖 の重篤な症例を制御するのに有効である。有効な経口療法は低用量にもかかわら ず肝細胞毒性によって制限され、累積的な肝臓障害の危険性は患者寿命の間の大 部分の重篤な症状発現のみのためにかかる療法を指定することを要する。皮膚へ のかかる剤の送達により、その生活が重篤な乾癬によって左右される患者の生命 の外観および生理学的な質が改善される。 本発明は、さらにペプチド療法にも有用である。ペプチド療法の一例は、例え ば抗新生物剤としてのような細胞毒性剤である。この例においては、ジフテリア 毒素(DT)の酵素ドメインを含有するバイオコンジュゲートを充実性癌または 白血病につき前記のごとく対象に投与する。DTペプチドのターゲット化放出は 蛋白質合成および結果としての細胞死の阻害を生じる。 本発明は遺伝子療法にも有用である。遺伝子療法の一例は、ウイルス遺伝子発 現およびウイルス複製を阻害するためのアンチセンス・オリゴヌクレオチドの送 達である。この例においては、B型肝炎ウイルスに対するアンチセンス・オリゴ ヌクレオチドを含有するバイオコンジュゲートを、B型肝炎感染症に罹った患者 に投与する。肝臓におけるバイオコンジュゲートの蓄積およびアンチセンス・オ リゴヌクレオチドの放出により、B型肝炎ウイルス遺伝子の発現および複製が阻 害される。 本発明を以下の実施例に参照してさらに説明するが、それは説明目的で供され るものであって、如何なる場合においても本発明を限定することを意図するもの ではない。当該技術分野でよく知られている標準的な技術または以下に詳細に記 載する技術を用いた。 実施例1 12およびCo[SALEN]バイオコンジュゲートの光分解 メチルコブ(III)アラミンまたはCH3CblIIIの典型的な無気性連続波光分 解のプロトコルは次のようである。200μM CH3CblIIIおよび50mM K+HepesのpH7.3の水溶液を1cmの石英セルに入れる。無気性条件 下で光分解すべきサンプルを、光分解の直前に凍結脱気解凍サイクルを繰り返す か、またはArで40分間パージするかのいずれかに付し、密封する。Ar+ポ ンプ色素レーザーを用い、所望の波長にて連続波可視光照射を行なう。セル表面 上への入射光を中間密度フィルターで12mWcm-2に減光する。光束をシュウ 酸第二鉄カリウム光量計によっておよびサイエンテック(Scientech)表面読取り サーモパイルによって測定する。該セルを25〜37℃にてサーモスタット付き セルホルダーに置く。磁場の関数での量子収率測定に関しては、セルを7.5c m直径の円筒状極付きのGMW Associates電磁石のギャップに置く 。横行ホールプローブおよびデジタルテスラメータによって観察されたように、 セルの領域内の磁場は2%以内の誤差で均一で長期間安定性は0.5%よりも良 好である。ダイオードアレイ分光光度計を用い、(光分解する光源のフルーエン スに依存して)10秒間ないし2分間の可変時間間隔で総計3τ1/2の間、30 0〜600nmからの吸収スペクトルを1秒以内に記録する。解析中の露光を最 小限に保つ。CH3CblIIIの濃度を350または502nmにおける実測吸光 度を用 い、ChenおよびChanceの方法(1993)によって決定する。[CH3CblIII ]対時間(t)プロットは、全ての場合で0次のようである。 光分解波長の選択: CH3CblIIIおよびエチルCo[SALEN]の吸収ス ペクトルを図1および2に示す。CH3CblIIIに関して、C−Co結合の開裂 を引き起こすπ‐π*電子遷移は377nmおよび528nmに極大を持つ。B1 2 光分解を対象としたかなりの予備的な研究はアルゴンイオン(Ar+)レーザー からの514nm光で行なわれてきた。これは長波長極大吸収に近く、CH3C blIIIに約0.3の量子収率を与える。 血液および組織の吸収は、コブ(III)アラミン励起のためのこの最適波長にお いて著しい。血液は514nm付近に低(部分的)透過率ウィンドウを有する。 この吸収は、514nm光の20W/cm2ビームの光路に置かれた全ウシ血を急 速に熱分解するのに充分である。 従って、C−Co結合の開裂を引き起こすπ‐π*電子遷移が最小または妨害 しない波長において最大であるコンジュゲーションに対するコバラミンを提供す ることは有益であろう。約610nmより上で血液は部分的に透明になり、50 %を超える透過率の喪失はほとんどが赤血球からの光散乱によるものである。6 30nm光の20W/cm2ビームの光路に置かれたヘパリン化ウシ血は、長い露 光時間にわたってほんの少しの発熱を示すだけである。610〜800nmにお いて組織の高い透過率も示される。 これは組織および血液が比較的透明な吸収波長を有するコンジュゲーションの ための有機コバルト錯体の使用を示唆する。図2は、エチルCo[SALEN]錯 体が650nm付近に700nmを超えて著しい吸収を持つ吸収極大を有するこ とを示す。Ar+ポンプ色素レーザーまたはクリプトンイオン(Kr+)レーザー は、610nmの領域の高強度フォトン源に適し得る。Ar+ポンプ色素レーザ ーは、しばしば、ヘマトポルフィリンを用いた光力学的セラピーに用いられる。 また、633nmに主要線を有する安価なHe-Neレーザーも使用できるであ ろう。しかしながら、そのようなレーザーは典型的には50mWの最大出力に制 限される。 600〜700nm領域に45%までのエネルギー変換効率を達成し得るレー ザー色素が存在する。これは、6W Ar+ポンプレーザーが610〜750nm の領域においてほぼ3Wの空間的コヒーレントな単色光を発生できることを意味 する。正確な波長を選んで、連続波量子収率を最適化し、依然として妥当な程度 の組織浸透を維持し得る。アルキル-Co[SALEN]錯体を用いた試験におい て、ローダミン6‐G色素で作動するAr+ポンプ色素レーザーからの690n m光が充分であることが見出された。最適化は、動物および/または該バイオコ ンジュゲートの臨床試験につき選ばれた特異的コバラミンに依存して決定し得る 。加えて、望ましい波長の赤色光を発光する高出力ダイオードレーザーが商業的 に入手可能である。これらのダイオードレーザーは該バイオコンジュゲートの開 裂をトリガーするのに有用な光スペクトルの狭い領域に100ワットまでの光出 力を供給する利点を有している。 実施例2 12およびCo[SALEN]バイオコンジュゲートの音波分解 47kHzで作動するブランソン(Branson)超音波バス(model 3200)を用 い音波分解を行なった。デンプンの存在下、ヨウ化物をヨウ素にまで酸化するこ とによって高強度超音波の焦点上の反応容器の正確な配置を決定し[Mason,1991 ]、バス温を恒温サーキュレータによって21℃に維持した。典型的には、有気 性音波分解を試験管またはエーレンマイヤーフラスコ中で行ない、一方、無気性 音波分解は、枝および石英セルの付いた密閉反応容器中で行なった。音波分解に 先駆けてArで30分間スパージング(sparging)することによって、無気性条 件を作り出した。いくつかの実験において、規定通り、100mMホスフェート (有気性実験)または100mM N‐(2‐ヒドロキシエチル)ピペラジン‐ N‐2‐エタンスルホナート(Hepes)(無気性実験)の使用によってpHを 緩衝した。全ての手順を光の不存在下で行なって、Co−C結合の光分解開裂を 防止した。吸収スペクトルをダイオードアレイ分光光度計(HP 8452A) 上で記録した。全光学測定につき該溶液を1cm光路の石英セルに移し、1sの 測定時 間の間にわずかな光分解が起きることを確実にするように注意した。 メチルコブ(III)アラミンの音波分解: 無気性音波分解(pH7.38、10 0mM Hepes、飽和Ar)の関数としてのCH3‐CblIII水溶液の連続 吸収スペクトルを図3Aに示す。音波分解時間の関数で、340、374および 520nmにおける吸光度は直線的に減少し、316および420nmにおける 吸光度は直線的に増加し、これによって、該反応は基質濃度において0次である ことが示される。336、390および585nmにおける等吸収点は、CH3 ‐CblIIIの無気性光分解により得られたそれらに一致する。音波分解の条件 下、さらなる等吸収点が、光分解の過程で典型的に観察される486nmにおい てよりも、476nmに現れる。等吸収点におけるこの僅かなシフトは490n m付近に吸収極大を有する微量生成物によってもたらされる。これは分光学的に 観察するのに充分な寿命(pH6においてt1/2=22分)を有するコブ(I)アラ ミンであろう。374nmにおける吸収バンドはC−Co結合に特徴的であり、 その消滅は明らかに軸炭素リガンドの置換を示している。 有気性条件下、分子酸素はH・をスカベンジし、式: O2+H・→・OOH を通じてCH3‐CblIIIの還元を防止している。引抜き可能な水素原子を持っ た有機バッファーの不存在下では、HO・を通じた反応が実行可能なプロセスと して残っている。 図3Bは有機バッファーの不存在下での有気性音波分解後の吸収スペクトルの 変化を示す。340および374nmにおける吸光度の減少は音波分解時間の増 加に対して直線的であり、これは該反応が基質濃度において0次であることを示 している。しかし、520nmにおける吸光度の予期せぬ増加は、分子酸素がコ ブ(II)アラミンをコブ(III)アラミンへ再酸化するならば、予期されるごとく、 コバラミン音波分解の安定生成物はヒドロキソコブ(III)アラミンではないこと を示している。同一の条件下での有気性光分解は374nmにおける吸光度の予 期した減少を示したが、520nmにおける変化は示さなかった。この差異は、 HO・が該アルキルリガンドをCoIIIから置換できることを示しているが、( おそ らく、二次的生成物HOO・または・O2 -による)他のHO・反応も起きて、コ リン環を酸化することを示唆する。同様の吸収スペクトルが100mMリン酸バ ッファーを含有する好気化水溶液の音波分解から得られる。 同様の結果は、CH3‐CblIIIとH・およびHO・との反応において、これ らのラジカル種がパルス放射線分解によって発生した場合に観察される[Blackbu rn et al.,1972]。還元性種H・は反応して図3Aに示すごとき同一のスペクト ル変化を生じる。多数の酸化性種(HOO・および・O2)はCH3 -CblIIIと 反応してCo−C結合を開裂し得る。しかし、これらの種も該コリン環の不可逆 的分解を引き起こし、それは図3Bに示されるものと同様のスペクトル変化から 証拠付けられた。該コリン環の不可逆的酸化に関する前例が一重項酸素によるア ルキルコバラミンの光酸化分解に存在する[Krautler and Stepanek,1985]。 100mM Hepesまたは100mM t-ブチルアルコールを含有する溶液 の有気性音波分解は、比較できる時間にわたり吸収スペクトルに変化を生じない 。これは、分子酸素が該H・反応経路を抑制し、t-ブチルアルコールがHO・反 応経路を抑制するからである。HepesはHO・のスカベンジャーであると以 前に報告されていなかったにもかかわらず、多くの報告はホルメートのごとき有 機溶質分子がHO・の反応を阻害し得ることを示している[Weissler,1962]。こ れらの条件下でいずれのスペクトル変化も不存在であることは、Co−C結合の 直接的な音波分解は重要な反応経路ではないことを示唆している。 実施例3 HCIヒト腫瘍細胞系に対する生物学的試験 該バイオコンジュゲートの有効性を、バイオコンジュゲートを含有する標的補 酵素B12抗新生物性剤の効果を評価するための在来のプロトコールを用い、腫瘍 細胞系に対して試験する。試験した代表的な細胞系は、HCT116(ヒト結腸 腫瘍)、A549(ヒト肺)、ACHN(ヒト腎臓)、MCF7(ヒト乳房)、ヒト前 立腺、SK5−mel(ヒト・メラノーマ)、KB(ヒト上咽頭)、CCRF− CEM(ヒトT-細胞白血病)、HL−60(ヒト前骨髄球白血病)、RD−995( マウス線維肉腫)、B-16(マウス・メラノーマ)、およびMeth−A(マウス 癌)を含む。薬物スクリーニングを96ウェルプレート中の比色細胞生存度アッ セイを用いて行なう。 さらに、選択されたバイオコンジュゲートを14Cまたは3Hで放射能ラベル化 してヒト腫瘍細胞による取込みのレベルを評価する。前記したごとく、先行技術 は、いくつかの腫瘍および白血病細胞が血清中に高レベルのB12結合タンパク質 を生じ、B12を50倍までの高濃度にて隔離することを報告している。 腫瘍細胞系試験プロトコール: 本明細書に記載した手順またはその改変の下 で合成した薬物バイオコンジュゲートを5桁以上希釈する(約0.005ないし5 0μg/mL)。該細胞を該プレートに接種して4時間後、該細胞を等張バッファ ー化溶液に溶解した適切な薬物で処理する。光分解でトリガーした薬物放出のな い対照実験において、正規の基礎的癌スクリーンにおけるごとく、該薬物を該細 胞上に3日間放置する。トリガーした薬物放出のウェルにおいて、選択したウェ ルに強度および時間を変えて、レーザー出力を集中する。あるいは、発光ダイオ ード(LED)のマトリックスを用いる。標準哺乳動物組織培養条件下、適切に CO2をバランスした雰囲気下で該細胞をインキュベートする。3日後、該細胞 を再フィードし、比色色素の臭化3-[4,5-ジメチルチアゾール−2-イル]-2, 5-ジフェニルテトラゾリウム(MTT)を添加する。該MTTのパープルホル マザン生成物への還元を96ウェルプレートリーダーで定量する。該パープルホ ルマザン色素の濃度を生存細胞の数と相関付ける。所与の用量比率および光分解 露光での細胞生存の減少は細胞死の定量的評価および薬物送達効率を与える。該 プレートの部分を偶発的な照射漏れにより光分解条件に暴露しないように注意す る。これは光分解に対して不透明なマスク(Fischer cat#07-200-565)と共に96 ウェルプレートを用いることによって達成される。 薬物−B12および薬物−Co[SALEN]バイオコンジュゲートの取り込み: 培養した腫瘍細胞による薬物−B12および薬物-Co[SALEN]バイオコン ジュゲートの取り込みを、合成の間中、該薬物またはコバラミンを放射能ラ ベル化することによってモニターする。3H-ラベル化5-フルオロウラシル、メ トトレキサートおよびクロラムブシルをDuPont/NEN(New England Nuc lear)から購入する。これらの薬物バイオコンジュゲートは、(コブ(I)アラミ ンおよび14CH3Iから合成した)14C-ラベル化メチルコブ(III)アラミンと同 様に、種々の腫瘍細胞系による受容体媒介取込みの指標を供する。この実験にお いては、3日間のインキュベーション期間の終わりにMTTを添加しないこと以 外は前セクションに記載したごとく、該細胞を該放射能ラベル化薬物に暴露する 。白血病細胞以外の全ての細胞系はマイクロタイタープレートウェルの底部に付 着しつつ増殖するので、該増殖培地を吸引して、取込まれていない放射能ラベル 化薬物を除去し、次いで、新鮮な培地で数回洗浄する。該ラベル化細胞を該ウェ ルの底部から分離し、放射能をシンチレーション計測によって定量する。非付着 白血病細胞の増殖が丸底マイクロタイタープレート中で起り、遠心は該細胞を沈 降させ、該細胞の可溶化およびシンチレーション計数によって取込まれた放射能 ラベル化薬物の定量の前に新鮮な増殖培地で洗浄することを可能とする。 実施例4 Co[SALEN]の合成 N,N’-ビス(サリチリデン)エチレンジアミンの合成 70℃のエタノール(100mL)中のサリチルアルデヒド(12.21g/1 0.62mL)の攪拌溶液に、エチレンジアミン(3.01g/3.33mL)を添 加した。黄色結晶性物質が即座に生じ、該反応混合物を攪拌しながら室温まで放 冷した。該溶液を濾過し、該結晶を冷エタノールで洗浄した。エタノール層を合 わせて、約20mLまで濃縮し、0℃にて一晩放置した。得られた結晶を減圧濾 過によって収集し、水で洗浄した。収集した固体を真空乾燥して13.15g( 98%)のN,N-ビス(サリチリデン)エチレンジアミンを、126℃(文献 値(24)127〜128℃)の融点を持つ黄色板状物として得た。 N,'- ビス(サリチリデン)エチレンジアミンコバルト(II)(Co[SALEN]) の合成 ジメチルホルムアミド(25ml)中の上記生成物(2.68g)の熱(100℃) 脱酸素溶液に、カニューレニードルを通して酢酸コバルト(II)四水和物(2.49 g)の水溶液(10mL)を添加した。生じた赤色沈殿物を減圧濾過によって収集 し、冷ジメチルホルムアミドで洗浄し、真空乾燥して2.6g(80%)のN,N '-ビス(サリチリデン)エチレンジアミンコバルト(II)を赤色結晶として得た。 実施例5 修飾Co[SALEN]の合成 Co[SALEN]のジグリコラートエーテルを、サリチルアルデヒドの代り に2,5‐ジヒドロキシベンズアルデヒドのグリコラートエーテルを用い、実施 例4に記載したごとく調製する。非対称置換(グリコラートエーテル/アミン)錯 体を、サリチルアルデヒドの代りに2,5‐ジヒドロキシベンズアルデヒドおよ び5‐アミノサリチルアルデヒドのグリコラートエーテル混合物を用い、実施例 4に記載したごとく調製する。 実施例6 クロラムブシル−コバラミンバイオコンジュゲートの合成 1‐ブロモ‐2‐[4‐(4'‐[ビス‐(2‐クロロエチル)アミノ]フェニル) ブチロキシ]エタンの合成 25mLの新たに蒸留したCH2Cl2、0.343gジシクロヘキシルカルボ ジイミド(1.66mmol)、0.305g 4‐ジメチルアミノピリジン(2.5 mmol)および0.263g塩化4‐ジメチルアミノ‐ピリジニウム(1.66 mmol)を、攪拌棒、還流冷却管およびAr流入口を備え、火炎乾燥した50 mL丸底フラスコに添加した[Boden and Keck,1985]。該溶液をアルゴンでパー ジし、還流した。還流しつつ、5mL CH2Cl2中の0.304gクロラムブシ ル(1.0mmol)および0.125g 2‐ブロモエタノール(1.0mmol )の(アルゴン下で30分間パージした)溶液を、カニューレを通して、該還流 溶液に30分間にわたって移した。添加が完成した後、該反応混合物を室温にて 2時間攪拌した。沈殿したジシクロヘキシル尿素を濾過によって除去し、該溶液 をロータリーエバポレーションによって濃縮した。得られた残渣をCH2Cl2に 溶かし、濾過し、フラッシュシリカカラムクロマトグラフィーによって精製した 。所望の生成物を1:9酢酸エチル:ヘキサン(v/v)を用い溶出して0.37 4gの黄色油状物質を91%の収率で得た(エステル2)。 2‐[4‐(4'‐[ビス‐(2‐クロロエチル)アミノ]フェニル)ブチロキシ]エ チルコブ(III)アラミン(3)の合成 200mgのヒドロキソコブ(III)アラミン(0.15mmol)を10mL水 に溶解し、攪拌しながらArでパージした[Brown and Peck,1988]。排出ガスを 、順次、(1)0.025g NaBH4(0.66mmol)を含有するフラスコ;(2) 5mL水を含有するフラスコ;(3)5mLのCH3OH中の0.226gエス テル2(0.55mmol)を含有するフラスコに導いた。1時間脱気した後、 該水をフラスコ(2)からNaBH4を含有するフラスコ(1)にカニューレを 通して移し、かき混ぜて溶解を促進した。この溶液をカニューレを通して該コバ ラミン水溶液に移した。還元を20分間進行させ、その後、該クロラムブシルブ ロモエチルエステルを該溶液に添加した。該反応混合物をさらに5分間攪拌し、 次いで、0.2mLアセトンを添加して過剰ホウ水素化物を破壊した。該溶液を ロータリーエバポレーションによって約2mLまで濃縮し、得られた溶液をAm berlite XAD−2樹脂の2.5×30cmカラムに加えた。該カラム を1L H2Oで洗浄して脱塩し、該コバラミンを50%アセトニトリル水溶液( v/v)で溶出した。該溶出液をロータリーエバポレーションによって約2mL まで濃縮し、得られた溶液をSP−SephadexC25(Na+型)の1× 40cmカラムに加えた。水での溶出で主要赤色バンドを取出し、それを最小体 積に濃縮した。かき混ぜてもうっすらと濁りが残るまでアセトンを添加した。該 溶液を0℃にて1時間放置し、過剰アセトンを添加してさらなる結晶化を促進し た。該結晶を減圧濾過によって収集し、真空乾燥した。3を53%の収率で赤色 結晶(122.5mg)として得た。 MS(FAB+)C681121416CoPCl2 計算値 1541;実測値 1541。 4‐[4'‐(ビス‐[2‐クロロエチル]アミノ)フェニル]ブチロイルコブ(III) アラミン(4)をクロラムブシルの酸塩化物で出発し、それを上記のヒドロキソ コブ(III)アラミンと反応する同様の方法で合成した。 2-[4‐(4'‐[ビス‐(2‐クロロエチル)アミノ]フェニル)ブチロキシ]エ チル−Co[SALEN]および4‐[4'‐(ビス‐[2‐クロロエチル]アミノ)フ ェニル]ブチロイル−Co[SALEN]を、ヒドロキソコブ(III)アラミンの代り にCo[SALEN]を用いた同様の方法で合成した。 2-[4‐(4'‐[ビス‐(2‐クロロエチル)アミノ]フェニル)ブチロキシ]エ チル−(Co[SALEN]−フォラート)および4‐[4'‐(ビス‐[2‐クロロ エチル]アミノ)フェニル]ブチロイル−(Co[SALEN]−フォーラート)を 、 ヒドロキソコブ(III)アラミンの代りにCo[SALEN]−フォーラートを用い た同様の方法で合成した。 2-[4‐(4'‐[ビス‐(2‐クロロエチル)アミノ]フェニル)ブチロキシ]エ チル−(グリーン・コリノイド)および4‐[4'‐(ビス‐[2‐クロロエチル] アミノ)フェニル]ブチロイル−(グリーン・コリノイド)を、ヒドロキソコブ(III )アラミンの代りに(ヨウ化メチルをBrownらのグリーン・コリノイド(1996 )と、それをNABH4で還元した後に、反応させることによって調製した)C H3‐Co(III)コリノイドを用いた同様の方法で合成した。 実施例7 2‐[4‐(4'‐[ビス‐(2‐クロロエチル)アミノ]フェニル)ブチロキシ] エチルコブ(III)アラミン(3)の音波分解 実施例2に記載したごとく、(実施例6で調製した)化合物3の完全音波分解に よって放出された生成物を逆相HPLC(Rainin Microsorb C-18)によって単 離した。該音波分解生成物の溶出および分離を、増加する勾配を持ったアセトニ トリル(A):0.05Mリン酸(B)で行なった:初期条件 5%A:95% B、10分間で30%Aおよび70%Bまで直線的に増加、2分間維持、引き続 いて10分間かけて70%Aおよび30%Bまで直線的増加[Rinchik et al.,1 993]。該溶媒を各画分から蒸発させ、該生成物をCH2Cl2で抽出し、1Hおよ び13CNMRによって特性評価した。 pH7.4、100mM Hepes、飽和Arにおける無気性音波分解の関数 としての水溶液3の連続吸収スペクトルを図4Aに示す。音波分解時間の関数で 、374および520nmにおける吸光度は直線的に減少し、316および42 0nmにおける吸光度は直線的に増加し、それによって、該反応が基質濃度に対 して0次であることが示される。336、390、486および585nmにお ける等吸収点はCH3‐CblIIIの無気性光分解により得られたそれらに一致す る。374nmの吸収バンドはCo−C結合に特徴的であり、その消滅は、該ア キシアル炭素リガンドの置換を明らかに示している。 図4Bは、リン酸バッファーを含有する溶液3の有気性音波分解後の吸収スペ クトルの変化を示す。別の安定生成物を有気性条件下で得る。分子酸素の存在の ため、NMRによって、放出された生成物は2‐[4‐(4'‐[ビス‐(2‐クロ ロエチル)アミノ]フェニル)ブチロキシ]エタン‐1‐アールであると示された。 374nmにおける吸光度の減少は増加する超音波時間に対して直線的であり、 これは該反応が基質濃度に対して0次であることを示している。 CH3−CblIIIのCo−C結合を水溶液中で音波分解によって開裂して、無 気性条件下で該アルカンおよびコブ(II)アラミンを生成するか、または有気性条 件下で該アルデヒドおよびヒドロキソコブ(III)アラミンを生成し得る。直接C o−C結合開裂を引き起こす光分解および熱分解とは異なり、音波分解によるC o−C結合開裂の主経路は、CH3−CblIIIを不安定な19e‐CH3−Cb lII-種へのH・媒介還元、引き続く閉殻アルカンおよびCblIIIへの解離によ るか、またはヒドロキソコブ(III)アラミンの生成および該コリン環の分解を引 き起こすHO・とCH3−CblIIIとの反応による。 音波分解およびパルス放射能分解[Blackburn et al.,1972]の条件下でのア ルキルコブ(III)アラミンの反応の間には類似点があるが、高価な装置を必要と しない。音波分解の間の激しいキャビテーションは該Co−C結合を破壊して、 CH3-CblIIIの光分解に類似する解離性経路によって{R・・CblIII}ラ ジカル対を生成するのに充分なエネルギーを有するが[Endicott and Netzel,19 79;Chagovetz and Grissom,1993;Natarajan and Grissom,1996]、アルキルコ ブ(III) アラミンは崩壊する泡の極端な環境中に見出されるほど充分に揮発性ではない。 従って、Co−CおよびH−OH間の結合解離エネルギーの差が80kcal/ molより大きいにもかかわらず、音波分解による直接Co−C結合開裂は不可 能である。 該Co−C結合の無気性音波分解は不可逆的である。なぜならば閉殻アルキル が生じるからである。有気性条件下、O2とのH・反応の速度はCH3とのH・の 反応と同じ桁であり、それによって、該閉殻アルカンCH4がCH3−CblIII 音波分解の最終生成物の一つであるはずであることが示唆される[Buxton et al. ,1988;Baulch et al.,1992]。対照的に、無気性光分解による、CH3-CblI II のCo−C結合開裂は、{R・・CblIII}ラジカル対から可逆的である。 要約すると、化学的還元体を使用することなく、かつ電気化学的な、光化学的 なまたはパルス放射能分解装置を使用することなく、コブ(III)アラミンおよび 閉殼アルカンを生成する能力はin vivoで薬物−コバルアミン錯体の活性化を促 進するための有用な方法であろう。 実施例8 バイオコンジュゲート活性のin vitroアッセイ用の物質および方法 培地の調製 全ての培地をSigmaから購入し、該培地を補足するために用いられた物質をAtr anta Biologicalsから購入した。該HL‐60細胞培養をα‐MEM培地中で増 殖させた。接種に先駆けて、試薬の添加によって最終培地濃度を7.5%w/v炭 酸水素ナトリウム、10%ウシ胎児血清、100ug/mLペニシリンおよびス トレプトマイシンおよび50単位/mLマイスタチンにすることによって該培地 を完成させた。炭酸水素ナトリウムを有するマッコイ培地(McCoy's media)を HCT−116細胞培養に用いた。それを8%ウシ新生児血清および2%ウシ胎 児血清を用いた同一の方法で完成した。完成した培地は数週間4℃にて貯蔵し得 るであろう。該培地を細胞で接種する前に37℃に暖めた。保存培養の調製および維持 保存細胞培養はATCC細胞系から出発した。原ATCC細胞系を10%DM SO中で等分割し、液体窒素中に貯蔵した。40mLの保存培養を増殖させ、Co rningから購入したコラーゲン処理し、滅菌した75mLの培養フラスコ中で維 持した。該培養を37℃にて5%CO2環境中でインキュベートして7.1のpH に維持した。インキュベーター内の湿度を該インキュベーターの底に水の入った 平皿を置くことによって維持して該培地中の高張を防止した。 該保存培養内の細胞濃度を制御し、いくつかの方法で細胞濃度を評価した。細 胞代謝および該培地中に蓄積される代謝副生成物の結果、該培地はより紫色にな り、続いてオレンジ色になった。該細胞も40×および100×の倍率にて顕微 鏡で目視観察した。正常HCT−116細胞は、丸く、平たく見え、該培養フラ スコの壁に強く付着した。該細胞が該フラスコ底部をほぼ覆ったとき、該細胞濃 度を減らした。正常HL−60細胞は丸く見えるが、充分に識別され、該培地に 容易に懸濁した。細胞の形態変化はしばしば細菌または真菌の汚染を示した。細 胞濃度の正確な測定のために、Coulter Cell CounterTMを採用した。保存培養を 100,000細胞/mLより多く増殖しないようにした。両方の細胞系は約24 時間の倍加時間を有することが観察された。アッセイ調製 該アッセイをCorningから購入した、コラーゲン処理し、滅菌した96ウェル プレート中で行なった。HL−60細胞を丸底ウェル(Corning Catalog #25850 )中で増殖させ、HCT−116細胞を平底ウェル(Corning Catalog #25860) 中で増殖させた。細胞濃度をCoulter Cell CounterTMによって測定した。細胞を 大量に希釈し、各ウェルごとに200μLで該プレートに負荷した。該アッセイ を約25,000HL−60細胞/ウェルおよび約40,000HCT−116細 胞/ウェルを用いて行なった。 HL−60細胞は懸濁して増殖するので、該細胞濃度を測定し、直接希釈した 。しかしながら、HCT−116細胞は該フラスコの壁に付着し、トリプシンの 処理によって懸濁させなければならない。0.025mg/mLトリプシン溶液を 使用直前に解凍した。大きな培地を吸引によって除去し、2mLの該冷トリプシ ン溶液を該フラスコに添加した。該フラスコを周期的に振盪して該細胞の懸濁を 促進した。該トリプシン溶液への細胞暴露を5分間未満に制限するように注意し た。何故ならば、延長した暴露は細胞膜にダメージを与えるからである。顕微鏡 で観察して該細胞が懸濁したとき、8mLの培地を添加して該トリプシンを不活 性化した。得られた懸濁液中の該細胞濃度を測定し、該懸濁を適切に希釈し、該 96ウェルプレートに負荷した。一旦、該プレート置き、SFUまたはその誘導 体の一つで処理する前に、該細胞を3時間付着させた。細胞増殖および細胞生存度のMTT決定 HL−60細胞を処理し、インキュベータ中に24時間置いた。プレートを遠 心し、細胞ペレットを乱さないように、注意して上清を吸引した。培地の200 μLアリコートを即座に添加した。該細胞を48時間増殖させた。HCT−11 6細胞を処理し、72時間乱さずに増殖させた。(HL−60細胞の場合は遠心 後に)該培地を吸引によって除去する。100mLのマッコイ培地および11μ LのMTT色素を添加した。該細胞を37℃にて3時間インキュベートした。こ の時間中、生存細胞は、アルコールデヒドロゲナーゼの作用によって該MTT色 素をパープルホルマザンに還元する。該細胞を100μLの60%エタノール中 の1.2M HCl溶液の添加によって溶菌し、それによって、該還元色素を溶液 中に放出した。BIO−RADマイクロプレートリーダー(Model 450)TMを用 い、各ウェルにつき405nmにおける吸光度を測定した。 実施例9 クロラムブシル−コバラミン・バイオコンジュゲートのin vitro活性 培地中のバイオコンジュゲートの温度安定性 クロラムブシル・バイオコンジュゲート3および4(実施例6にて調製)が温 度不安定性を有することが観察された。従って、おそらく細胞に入いる前または 光分解による放出前に、アッセイ中に熱分解すると予想される。37℃にて水、 無細胞培地、およびHCT−116細胞が約100,000細胞/mlの濃度まで 増殖した濾過培地中で紫外線−可視ダイオード配置分光光度計(HP8452) によって両バイオコンジュゲートの熱分解をモニターした。総計8時間、1時間 毎にスペクトルを取った。次いで、高圧水銀ランプを用いた20分間の光分解に よって完全なバイオコンジュゲートの存在を測定した。光分解がスペクトルに対 して影響がないならば、全てのバイオコンジュゲートは、分解したと推定された 。3および4活性のin vitroアッセイ HCT−116、HL−60、B−16、Meth−AおよびRD−995細 胞系に対して、両バイオコンジュゲートをアッセイした。本明細書で修飾された 実施例8に記載と同一手法でアッセイを行った。B−16、RD−995および Meth−A細胞系は、全て、ユタ大学のR.Daynes博士によって提供さ れたBalb/c由来の癌系である。前記した5%ウシ胎児血清および他の培地 成分を補足したRPMI培地中で、これらの細胞系を増殖させた。HCT−11 6細胞の場合のごとく、B−16およびRD−995細胞系を共にトリプシンに 懸濁させた。Meth−A細胞はフラスコ壁に緩く付着し、フラスコへ付着しか つ溶液に懸濁して増殖する。これらの細胞は、培地でフラスコ壁を継続的に洗浄 することによって完全に懸濁できた。 ウェル当り25,000細胞で行ったHL−60アッセイを除いて、ウェル当 り約40,000細胞の細胞濃度にてアッセイを行った。HCT−116、B− 16およびRD−995細胞を平底96−ウェルプレート中でアッセイし、一方 、HL−60およびMeth−A細胞は、丸底プレート中でアッセイした。バイ オコンジュゲートに先立ってアンコンジュゲーテッド・クロラムブシルを試験し た。非光分解および光分解条件の両者においてバイオコンジュゲートで細胞を処 理した。細胞を3日間インキュベートし(HL−60細胞の場合には24時間後 に培地を吸引し置き換えた)、MTTアッセイによって、得られた生存率を測定 した。 この実験について、MTTアッセイを多少変更した。72時間後に培養基を吸 引した。吸引前にMeth−AおよびHL−60細胞を遠心した。次いで、前記 のごとく100μlマッコイ培地および11μl MTT溶液を添加した。4時 間の最後に、(HL−60およびMeth−A細胞の場合には、遠心に続いて) 培養基を2度目の吸引に付し、100μlのDMSOを添加した。DMSOは細 胞 を溶解し、溶液中にMTT染料を放出した。前記のごとく、450nmでの各ウ ェルの吸光度を測定した。先に用いられたHCl/エタノール溶液は、得られた 溶液から蛋白質を沈殿させる傾向を有し、増大した吸光度測定を誤って与えるか もしれない。DMSOの置換えは、この問題を回避する。 アッセイ中に、クロラムブシルおよびバイオコンジュゲートの濃度を0.04 μMから400μMまで変化させた。光分解を回避するためにかすかな赤色光下 、細胞をバイオコンジュゲートで処理した。インキュベーションの間、箔で96 ウェルプレートを包むことによって非光分解条件を維持した。平底の透明ウェル を有する黒色プレート(Coster社カタログ番号:3603)において、光分解を 行った。これらのプレートは、滅菌、コラーゲン処理され、光学的に透明なプラ スチックで作られている。これらのプレート中の細胞の増殖は、通常の透明なプ ラスチックプレートにおける増殖と全く違いを示さなかった。高強度の緑色LE Dのアレイ(Hewlett Packard社カタログ番号:782−6124)によって光 分解が達成された。アレイは、1個のLEDが各ウェルに配列された1枚の黒色 プレートから構成した。LEDは、垂直の列としてオンおよびオフができた。各 アッセイにおいて、細胞の2列を増殖対照として処理しなかった。これらの列の うち1つは、LEDによって光分解せず光分解の予期せぬ効果を示した;照射は 非処理対照細胞に対していかなる効果も示さなかった。該アレイおよびアッセイ プレート間に空プレートを置いて、細胞の加熱を回避した。10分間の照射は、 無細胞培地中のバイオコンジュゲートの完全な光分解を生じさせた。アッセイ中 10分間細胞を照射した。薬剤処理に続く照射時間を経時的アッセイによって測 定した。その細胞系におけるクロラムブシルのIC50に等しい濃度にて、全プレ ートをバイオコンジュゲートの1つで処理した。処置1.5時間後および次いで 1時間毎に列を別々に照射した。 処置1時間後の照射は、全ての細胞系において大きな生物学的抱合活性を示し た。さらに、処置1時間後照射してアッセイを行った。Meth−A細胞系の場 合には、丸底プレートから光分解用黒色プレートに細胞を移し、次いで丸底プレ ートに戻した。これらの光分解条件下、HL−60細胞系は試験できなかった。結果および考察 両バイオコンジュゲートは、37℃の水および無細胞培地で共に有意な熱分解 を示した。8時間の最後に、光分解はスペクトルに対して影響はなく、これは全 てのバイオコンジュゲートが分解したことを示した。HCT−116細胞培地に おいて、両バイオコンジュゲートは、速い初期分解を示し、その後有意に安定化 した。コバラミン結合蛋白質であるハプトコリンは、数オーダーの大きさで、ア ルキルコバラミンを安定化させることが知られている。この蛋白質は、添加され たウシ血清からの無細胞培地中に存在する。しかしながら、血清中のこの蛋白質 のほとんどは、コバラミンで飽和し、従ってバイオコンジュゲートへの結合は、 阻害されるかもしれない。いくつかのタイプの腫瘍細胞が多量のコバラミン結合 蛋白質、とりわけハプトコリンを分泌することが知られている。従って、細胞が 増殖していた培地は、より高濃度のアポーハプトコリンを有する。バイオコンジ ュゲートの初期の速い分解は、培地中ハプトコリンの飽和後の残量を表す。結合 したバイオコンジュゲートは、ハプトコリンによって有意に安定化され、とりわ け培地中の有意な濃度の他のコバラミンの存在において、ハプトコリン錯体は溶 液中の動的様式にて会合し、解離する。従って、ハプトコリンに結合しない場合 、バイオコンジュゲートは依然として分解に対して影響を受けやすい。ハプトコ リンは数オーダーの大きさでバイオコンジュゲートを安定化するが、アッセイ中 ゆっくりした分解が依然として見られる。しかしながら、このアッセイは、バイ オコンジュゲートが安定化されるので、取り込みおよび光分解の間にかなりの量 が依然として無傷であることを示す。 試験された各細胞系における化合物3について、経時的光分解および活性アッ セイのデータを図5−9にまとめた。化合物4について、同様の結果が見られた 。一般に、両バイオコンジュゲートは、経時的光分解アッセイにおいて、同様の 取り込みおよび光分解挙動を示した。最大光分解誘導毒性は、いずれかのバイオ コンジュゲートでの処理後1時間で見られた。全ての場合、バイオコンジュゲー トの光分解は、アンコンジュゲーテッド・クロラムブチルのそれを超えて増大し た 毒性を示した。図5は、化学療法剤であるクロラムブシルが、HCT−116細 胞系に関して約2μMのLD50を有するが、バイオコンジュゲートは、100μ M付近の濃度では実質的な毒性を示さないことを示す。バイオコンジュゲートで 処理された細胞を投与後12時間に赤色光で短時間照射に付した場合、LD50は 25から0.08μMの率まで減少する。10倍過剰なビタミンB12を添加して 、細胞表面の受容体を飽和させた場合、バイオコンジュゲートは細胞内に取り込 まれず、光分解は、細胞培養基中の活性クロラムブシルの放出をトリガーする。 放出されたクロラムブシルは、その時、受動拡散によって細胞に入り、クロラム ブシル標準の値と精密に一致して2μMのLD50が観察される。 図6は、細胞系HL−60において、アンコンジュゲーテッド・クロラムブシ ル標準が0.5μMのLD50を示すが、バイオコンジュゲートは少なくとも2倍 強い0.2μMのLD50であることを示す。白血病細胞系に対するMC−121 の細胞傷害性は、ビタミンB12の10当量の添加によって、コンジュゲートの細 胞内取り込みがアウト−競合される(out−competed)場合、毒性を 持たない場合に比較して依然として劇的な結果になる。Meth−A細胞で同様 の結果を得た。HL−60およびMeth−A細胞は、高い代謝回転率を有し、 Meth−Aの場合には、他の細胞系より、より迅速に細胞分裂する。これらの 細胞は、事実、他の細胞系よりも速い速度でコバラミンを代謝することもでき、 従って光分解なしにかなりの濃度でクロラムブチルを放出する。しかしながら、 これが現実的となるには、クロラムブシル部位の有意な加水分解前に、コバラミ ン代謝が生じなければならない。HL−60細胞は、ビタミンB12を他のコバラ ミン型に効率よく転化できることが報告されており(通常のリンパ球より迅速に) (QuadrosおよびJacobsenによる1995)、従って、コンジュゲーテッド・クロラム ブチルを効率よく放出できるであろう。しかしながら、他の細胞系においては、 光分解条件でない場合、バイオコンジュゲートは本質的に毒性がなく、それはこ れらのバイオコンジュゲートが正常な体細胞または健康な造血細胞において毒性 がないかもしれないという有望な指標である。非光分解または光分解条件の両者 におけるバイオコンジュゲートのIC50値を表1にまとめる。 表 1 IC50値(μM) 本発明の方法および組成物は、種々の具体例の形に組み込むことができ、本明 細書に開示したのは少しだけであると認識される。他の具体例が存在し、本発明 の範囲からはずれないことは、当業者に明らかであろう。従って、前記の具体例 を示すが、制限として解釈されるべきではない。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) A61K 31/714 A61K 31/714 38/00 48/00 48/00 A61P 17/06 A61P 17/06 35/00 35/00 35/02 35/02 C07D 475/08 C07D 475/08 491/22 491/22 C07F 15/06 C12N 15/09 C12N 15/00 A // C07F 15/06 A61K 37/02 (81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE, DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,IT,L U,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF ,CG,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE, SN,TD,TG),AP(GH,KE,LS,MW,S D,SZ,UG,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG ,KZ,MD,RU,TJ,TM),AL,AM,AT ,AU,AZ,BB,BG,BR,BY,CA,CH, CN,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,GB,G E,HU,IS,JP,KE,KG,KP,KR,KZ ,LK,LR,LS,LT,LU,LV,MD,MG, MK,MN,MW,MX,NO,NZ,PL,PT,R O,RU,SD,SE,SG,SI,SK,SL,TJ ,TM,TR,TT,UA,UG,US,UZ,VN, YU (72)発明者 ウエスト,フレデリック・ジー アメリカ合衆国84105ユタ州ソルト・レイ ク・シティ、サウス・1500・イースト998 番 (72)発明者 ハワード,ダブリュー・アレン・ジュニア アメリカ合衆国48130ミシガン州デクスタ ー、メルボルン・アベニュー・ナンバー 1407、2250番

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 1.生物学的活性剤(bioactive)が当該生物学的活性剤分子中の非−反応性 原子を介して、コバルト原子に共有結合によりコンジュゲートしたことを 特徴とする生物学的活性剤および有機コバルト錯体のバイオコンジュゲー ト(bioconjugate)。 2.該非−反応性原子が、炭素原子、窒素原子、酸素原子、イオウ原子、セレ ン原子およびケイ素原子よりなる群から選択される請求項1記載のバイオ コンジュゲート。 3.該非−反応性原子が炭素原子である請求項1記載のバイオコンジュゲート 。 4.受容体−媒介エンドサイトーシス中のリガンド交換の条件下、非−反応性 炭素原子が生物学的活性剤の転位または破壊に通じないであろうアルキル 、アシルまたはアリール基からの炭素原子である請求項3記載のバイオコ ンジュゲート。 5.該生物学的活性剤が、有機コバルト錯体のコバルト原子に直接的に共有結 合した請求項1ないし4のいずれか1記載のバイオコンジュゲート。 6.該生物学的活性剤が、スペーサーを介して有機コバルト錯体のコバルト原 子に間接的に共有結合した請求項1ないし4のいずれか1記載のバイオコ ンジュゲート。 7.該スペーサーが、自己−破壊性リンカーである請求項6記載のバイオコン ジュゲート。 8.該生物学的活性剤が、診断化合物である請求項1ないし6のいずれか1記 載のバイオコンジュゲート。 9.該生物学的活性剤が、医薬上活性な化合物である請求項1ないし6のいず れか1記載のバイオコンジュゲート。 10.該医薬上活性な化合物が、抗癌剤である請求項9記載のバイオコンジュゲ ート。 11.該生物学的活性剤が、ペプチドまたはペプチド・アナログである請求項1 ないし6のいずれか1記載のバイオコンジュゲート。 12.該生物学的活性剤が、蛋白質または蛋白質アナログである請求項1ないし 6のいずれか1記載のバイオコンジュゲート。 13.該生物学的活性剤が、核酸または核酸アナログである請求項1ないし6の いずれか1記載のバイオコンジュゲート。 14.該核酸または核酸アナログがポリヌクレオチドである請求項13記載のバ イオコンジュゲート。 15.該核酸または核酸アナログがオリゴヌクレオチドである請求項14記載の バイオコンジュゲート。 16.該核酸がアンチセンスDNAまたはRNAである請求項13記載のバイオ コンジュゲート。 17.該有機コバルト錯体がコバラミン、コバラミン誘導体またはコバラミン・ アナログである請求項1ないし16のいずれか1記載のバイオコンジュゲ ート。 18.該有機コバルト錯体が次の式: [式中、置換基は含まれていてもまたは省略されてもよく、当該分子の物理学的 特性、例えば、水溶性、安定性またはλmax、--当該錯体が吸収する波長を変調 することができる] を有する化合物である請求項1ないし16のいずれか1記載のバイオコンジュゲ ート。 19.該ターゲティング分子が、グルコース、ガラクトース、マンノース、マン ノース6-リン酸、トランスフェリン、コバラミン、アシアログリコプロ テイン、α-2-マクログロブリン、インスリン、ペプチド増殖因子、葉酸 または誘導体、ビオチンまたは誘導体、YEE(GalNAcAH)3また は誘導体、アルブミン、テキサフィリン、メタロテキサフィリン、ビタミ ン、補酵素、抗体、抗体フラグメントおよび一本鎖抗体可変領域(scF v)よりなる群から選択される請求項18記載のバイオコンジュゲート。 20.該有機コバルト錯体が、オルガノ(ピリジン)ビス(ジメチルグリオキシマ ト)コバルト、コリノイド、その誘導体およびそのアナログよりなる群か ら選択される請求項1ないし16のいずれか1記載のバイオコンジュゲー ト。 21.請求項1ないし20のいずれか1記載のバイオコンジュゲートとして、有 効量の生物学的活性剤を対象に投与することを特徴とする対象のターゲッ ト化組織部位の細胞に生物学的活性剤を投与する方法。 22.該ターゲット化組織部位の該細胞が、該バイオコンジュゲートの有機コバ ルト錯体部分に対して親和性を有する請求項20記載の方法。 23.該標ターゲット化組織部位の該細胞が、該バイオコンジュゲートの有機コ バルト錯体部分のターゲッティング分子に対して親和性を有する請求項2 0記載の方法。 24.該バイオコンジュゲートが静脈内投与される請求項21ないし23のいず れか1記載の方法。 25.該バイオコンジュゲートが非経口投与される請求項21ないし23のいず れか1記載の方法。 26.該バイオコンジュゲートが経口投与される請求項21ないし23のいずれ か1記載の方法。 27.該バイオコンジュゲートが筋肉内投与される請求項21ないし23のいず れか1記載の方法。 28.該バイオコンジュゲートがクモ膜下投与される請求項21ないし23のい ずれか1記載の方法。 29.該バイオコンジュゲートがエアロゾルとして投与される請求項21ないし 23のいずれか1記載の方法。 30.該バイオコンジュゲートが該ターゲット化組織部位の該細胞内へ能動輸送 され、有機コバルト錯体から生物学的活性剤の開裂によって活性化するま で不活性型で蓄積する請求項17ないし28のいずれか1記載の方法。 31.開裂が細胞内置換の結果として生じる請求項30記載の方法。 32.開裂が細胞内B12代謝酵素の結果として起こる請求項30記載の方法。 33.開裂が外部シグナルによってひき起こされる請求項30記載の方法。 34.該外部シグナルがターゲット化組織部位に適用される請求項33記載の方 法。 35.該外部シグナルが、該バイオコンジュゲートの光分解をひき起こす波長の 可視光である請求項33または34記載の方法。 36.該可視光が400ないし800nmの波長を有する請求項35記載の方法 。 37.該可視光が600ないし800nmの波長を有する請求項35記載の方法 。 38.該可視光が600ないし750nmの波長を有する請求項38記載の方法 。 39.該可視光がファイバーオプティックスによって送達される請求項35ない し38のいずれか1記載の方法。 40.ターゲット化組織部位の外側で光分解されたバイオコンジュゲートの再結 合を促進し、それにより、健全組織に利用できる生物学的活性剤の量を減 少させるのに役立つ磁場に、該ターゲット化組織部位を取り囲む領域を付 す請求項35ないし39のいずれか1記載の方法。 41.該外部シグナルが該バイオコンジュゲートの音波分解をひき起こす周波数 の超音波である請求項33または34記載の方法。 42.該超音波が約20kHzないし500MHzの範囲の周波数を有する請求 項41記載の方法。 43.該超音波が約20kHzないし100MHzの範囲の周波数を有する請求 項41記載の方法。 44.該超音波が約20kHzないし10MHzの範囲の周波数を有する請求項 41記載の方法。 45.該ターゲット化組織部位が新生物組織であって、該生物学的活性剤が抗癌 剤である請求項21ないし44のいずれか1記載の方法。 46.該新生物組織が肉腫の組織である請求項45記載の方法。 47.該新生物組織が癌腫の組織である請求項45記載の方法。 48.該新生物組織が白血病の組織である請求項45記載の方法。 49.該ターゲット化組織部位が乾癬に罹った組織であって、該生物学的活性剤 が細胞毒性剤または抗代謝物質である請求項21ないし44のいずれか1 記載の方法。 50.該ターゲット化組織部位が遺伝子療法の適用のための組織であって、該生 物学的活性剤がオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドである請求項 21ないし44のいずれか1記載の方法。 51.該オリゴヌクレオチドが、アンチセンスDNAまたはRNAである請求項 50記載の方法。 52.該ターゲット化組織部位がペプチド療法の適用のための組織であって、該 生物学的活性剤がペプチドまたは蛋白質である請求項21ないし44のい ずれか1記載の方法。 53.該バイオコンジュゲートの投与に先立って、ビタミンB12のボーラスが投 与される請求項21ないし52のいずれか1記載の方法。 54.バイオコンジュゲートの開裂後にビタミンB12を静脈内投与して非開裂の バイオコンジュゲートを洗浄する請求項21ないし52のいずれか1記載 の方法。 55.最初に、亜酸化窒素を投与してビタミンB12の体内貯蔵を涸渇させる請求 項21ないし54のいずれか1記載の方法。
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