JP2001355080A - 耐糸さび性に優れたアルミニウム合金展伸材 - Google Patents

耐糸さび性に優れたアルミニウム合金展伸材

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JP2001355080A
JP2001355080A JP2000176883A JP2000176883A JP2001355080A JP 2001355080 A JP2001355080 A JP 2001355080A JP 2000176883 A JP2000176883 A JP 2000176883A JP 2000176883 A JP2000176883 A JP 2000176883A JP 2001355080 A JP2001355080 A JP 2001355080A
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phosphate
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Hidekazu Ido
秀和 井戸
Tsugumoto Ikeda
貢基 池田
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Kobe Steel Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 リン酸塩処理性を向上させ、耐糸さび性を
向上させたAl合金展伸材を提供することを目的とする。 【解決手段】 リン酸塩処理および塗装処理されるア
ルミニウム合金展伸材表面に、金属スズおよび/ または
酸化スズの粒子を付着させたことである。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、塗装後に使用され
た際の、耐糸錆性などの耐食性や外観性 (美観や鮮映性
など) に優れたアルミニウム合金展伸材 (以下、アルミ
ニウムを単にAlと言う) に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、排気ガス等による地球環境問題に
対して、自動車などの輸送機の車体の軽量化による燃費
の向上が追求されている。このため、これら輸送機の車
体に対し、従来から使用されている鋼材に代わって、板
材、形材、鍛造材などの各種Al合金展伸材 (以下、単に
Al合金材とも言う) の適用が増加しつつある。
【0003】Al合金は、鋼に比して、その比重が1/3 で
あるという特性がある。このため、車体重量を増加させ
ずに、安全基準への対応や車体性能を向上させることが
可能となる。中でも、高強度で成形性に優れたAA乃至JI
S 5000系や、成形性や焼付硬化性に優れたAA乃至JIS 60
00系 (以下、単に5000系乃至6000系と言う) などのAl合
金展伸材が、自動車のドア、ボンネット、フード等の外
板や内板等のパネル材や、サイドメンバーなどの車体メ
ンバー類やフレーム類、ドアビームやバンパー補強材な
どのエネルギー吸収材、或いはアーム類などの足廻り部
材等に採用されている。
【0004】この内、自動車車体にAl合金材が使用され
る場合、オールアルミ車などの一部を除いて、大部分の
自動車車体は従来からの鋼板などの鋼材とAl合金材とが
複合化されて用いられる。
【0005】通常、自動車の製造ラインにおいて、成
形、組み立て後の車体は、リン酸亜鉛などのリン酸塩処
理などの塗装下地処理を施された後、カチオン電着塗装
処理や中塗り、上塗りなどの塗装を施される。そして、
この製造ラインにおける各工程条件は基本的に、これま
で使用されている鋼材の条件に見合ったものとなってい
る。したがって、前記した通り、鋼材と複合化されて使
用されるAl合金材は、鋼材とともに、言い換えると、鋼
材と基本的に同じ条件で表面に前記塗装下地処理および
塗装処理が施されることになる。
【0006】しかし、Al合金材の場合、鋼材よりもリン
酸亜鉛処理性が劣るため、特に、前記したように、鋼材
と基本的に同じ条件でリン酸亜鉛処理された場合、Al合
金材表面に、均一で適当量のリン酸亜鉛の皮膜が確保さ
れにくいという問題がある。仮に、このリン酸塩処理性
が悪いと、その後に塗装により形成される塗膜の密着性
が低下する。そしてこの結果、塗装後に糸錆状の腐食や
塗膜のふくれが生じ、自動車としての耐食性や外観性を
低下させる可能性がある。
【0007】このため、Al合金材のリン酸塩処理性を改
善するために、従来からリン酸塩処理浴の側を改善する
ことが行われている。例えば、その代表例としては、リ
ン酸塩処理浴に、数百ppm 程度の高濃度のフリーフッ素
(F) イオンをフッ化物などにより添加することが行われ
ている。この方法は、フリーフッ素(F) イオンにより、
Al合金材表面のAlの溶解を促進させ、同時に、リン酸塩
処理浴中のAlイオンによるAl合金材や鋼材表面へのリン
酸塩析出の妨害を抑制するものである。
【0008】また、この系を改良したものとして、特開
平10-306382 号公報には、鉄のキレート化合物を0.005
〜0.075g/l含有させたAl合金材用リン酸塩処理剤なども
提案されている。
【0009】この他、Al合金材側のリン酸塩処理性を改
善する技術も種々提案されている。例えば、特開昭61-1
57693 公報には、Al合金材表面に亜鉛めっきを形成して
リン酸塩処理性を改善する技術が開示されている。ま
た、特開平07-224387 号公報には、遊離フッ化物イオン
を含む亜鉛浴を一定条件で接触させ、Al合金材表面に亜
鉛置換めっきを形成して、亜鉛めっき鋼材と同等のリン
酸塩処理性を確保する技術が開示されている。
【0010】また、Al合金板の表面の酸化皮膜を改質す
ることも種々行われている。例えば、特開平05-70970号
公報には、Mg含有Al合金材表面の酸化皮膜の厚さを70オ
ングストローム以下で、かつ酸化皮膜中のMg濃度を20原
子% 以下にすることが開示されている。そして、特開平
02-250944 号公報には、Mg含有Al合金材表面の酸化皮膜
を一旦除去し、熱処理により、厚さ50〜150 オングスト
ロームで、かつ酸化皮膜中のMg/Al 比を0.6 〜5 の範囲
としてリン酸塩処理性を改善する技術が開示されてい
る。更に、特開平08-92773号公報には、Al合金材表面の
酸化皮膜を酸性溶液中で除去して、リン酸塩処理性を改
善する技術が開示されている。
【0011】また、特開平6-287672号公報では、Al合金
板に0.01〜5wt%のCuを含有させるとともに、Al合金板表
面にCuを0.1 〜10wt% 優先析出させ、析出したCuをリン
酸塩処理の際のカソード反応点として働かせて、リン酸
塩処理性を改善することが開示されている。
【0012】また、特開平6-240467号、特開平5-33165
号などの公報では、Al合金板表面にAlに対して貴なFe、
Ni、Cu、Cr、Mn等の金属を析出させることにより、これ
ら析出金属をリン酸塩反応 (化学反応) におけるカソー
ドとして、アノードからのAlの溶解を促進する一方で、
Al合金板表面へのリン酸塩の析出を促進し、リン酸塩処
理性を改善することが開示されている。
【0013】更に、特開平10-121262 号、特開平10-140
371 号、特開平10-265965 号、特開平10-287985 号、特
開平11-189882 号、特開平11-293474 号、などの公報で
は、Cu、Fe、Ti、Mg、Al等の金属粒子、金属酸化物等の
金属無機化合物粒子をAl合金板表面に物理的に擦りつけ
て、Al合金板表面に埋め込ませ、これらの金属酸化物を
核としてAl合金板表面へのリン酸塩の析出を促進し、リ
ン酸塩処理性を改善することが開示されている。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】前記リン酸塩処理浴の
側を改善する技術として、フリーフッ素(F) イオンの添
加によって、Al合金材のリン酸塩処理性自体は改善され
る。しかし、Al合金材表面へのリン酸塩皮膜の形成は、
Al合金材表面からのAlイオンの溶出によって促進される
ため、Al合金材のリン酸塩処理性がよくなるほど、Al合
金材表面からのAlイオンの溶出量が多くなる。そして、
このAlイオンの溶出が多くなると、肝心の鋼材の方のリ
ン酸塩処理性を阻害するという新たな問題を生じる。更
に、有害なフッ素イオンを多量に使用するという問題が
あり、また、これらを含む廃液の処理の問題がある。
【0015】そして、特に、6000系Al合金材の場合は、
Al合金材表面にSiが濃縮するため、表面のリン酸塩処理
性の低下が著しく、前記したリン酸塩浴の改善だけで
は、不十分である。かといって、前記Al合金材の側の改
善技術も、6000系Al合金材の場合は、Al合金材表面にSi
が濃縮するため、他の5000系Al合金材などの場合に比し
て、効果は一様に薄くなってしまう。
【0016】例えば、前記Al合金材表面の酸化皮膜を制
御する技術も、Mg量が多い5000系Al合金材などの場合に
は有効であるものの、6000系Al合金材の場合は、前記し
た通り、Al合金材表面にSiが濃縮するため、効果は少な
くなる。
【0017】そして、Zn、Cuなどのリン酸塩処理性改善
元素を添加乃至成分量を調整する技術は、これら成分調
整した6000系Al合金材においても、依然リン酸塩処理性
は低く、塗装後に糸錆状の腐食や塗膜のふくれが生じる
ことを完全には防止できない。
【0018】また、Al合金材表面に亜鉛めっきや亜鉛置
換めっきを形成する技術は、6000系Al合金材において
も、リン酸塩処理性の向上効果があるものの、めっき層
を安定的に形成する技術が難しく、めっき形成作業が煩
雑になるとともに、製造コストが上昇するという問題が
ある。
【0019】また、前記Al合金板表面にCuを析出させる
技術は、Al合金板に0.01〜5wt%のCuを含有させる必要が
有り、Al合金板自体にCuを含有する乃至リン酸塩処理後
にAl合金板表面にCuが残留すると、却って塗装後の耐蝕
性の内、特に耐糸さび性を劣化させるという問題があ
る。
【0020】更に、Al合金板表面にAlに対して貴なCu、
Fe、Ni、Cr等の金属を析出させることにより、これら析
出金属をカソードとして、Al合金板表面へのリン酸塩の
析出を促進させる技術は、確かに、Al合金板表面へのリ
ン酸塩皮膜量は多くなる。しかし、前記析出金属が塗装
後もAl合金板表面に残留し、却って、この析出金属が起
点となって、塗装後の耐糸さび性を劣化させるという問
題がある。
【0021】また、金属粒子をAl合金板表面に物理的に
擦りつけて、Al合金板表面に埋め込み付着させ、これら
の金属粒子を核としてAl合金板表面へのリン酸塩の析出
を促進させる技術は、金属が塗装後もAl合金板表面に残
留し、却って、この析出金属が起点となって、塗装後の
耐糸さび性を劣化させるという問題がある。
【0022】更にまた、金属酸化物等の金属無機化合物
粒子をAl合金板表面に物理的に擦りつけて、Al合金板表
面に埋め込み付着させ、これらの金属無機化合物粒子を
核としてAl合金板表面へのリン酸塩の析出を促進させる
技術は、前記金属粒子ほどには、リン酸塩の析出を促進
せず、リン酸塩処理性の向上効果が少ない。このため、
このリン酸塩処理性の向上効果を出すためには、ナイロ
ンブラシ等の手段で、金属無機化合物粒子をAl合金板表
面に物理的に擦りつける埋め込み工程が必須となってい
る。しかし、この工程をAl合金板の製造工程に付加する
ことは、安定的にAl合金板表面に埋め込み付着させるこ
とが難しく、製造工程の効率を低下させるなどの、実操
業上の問題も無視できない。
【0023】例え、埋め込み付着させる粒子が微細であ
るとしても、ミクロン単位の大きさがある場合は、特
に、板材の場合、表面処理の前に施されるプレス成形加
工の際の摩擦係数を、付着させた粒子が高めるために、
Al合金板の成形加工性を劣化させることとなる。また、
更に、この比較的大きな金属酸化物粒子が塗装後もAl合
金板表面に残留して塗膜の密着性を低下させ、却って、
この金属酸化物粒子が起点となって、塗装後の耐糸さび
性を劣化させるという問題もある。
【0024】なお、通常製造されたAl合金板は、一定期
間在庫乃至保管された上で、前記自動車材用などとして
加工し使用されるが、特に、前記在庫乃至保管される期
間が長くなるほど、長期保管後のAl合金板をリン酸亜鉛
などの化成処理をした場合、リン酸塩などの化成処理性
が低下し、化成処理ムラや、著しい場合には塗装後の耐
糸錆び性が低下する現象が生じる。
【0025】そして、この現象に対しては、前記Alの酸
化皮膜中のMgの酸化物の規制などの酸化皮膜制御技術だ
けではなく、リン酸塩処理浴に前記フッ素を高濃度に添
加する技術、リン酸塩処理性改善元素を添加乃至成分量
を調整する技術、或いは前記金属粒子、金属酸化物等の
金属無機化合物粒子をAl合金板表面に物理的に擦りつけ
て、Al合金板表面に埋め込ませる方法でも、同様に完全
に防止することはできない。
【0026】本発明はこの様な事情に着目してなされた
ものであって、その目的は、Al合金展伸材を鋼材と同じ
条件で表面にリン酸亜鉛処理および塗装処理を施す場合
でも、リン酸塩処理におけるリン酸塩皮膜のAl合金展伸
材表面への付着量とつきまわり性を向上させ、最終的に
塗装されて使用されるAl合金展伸材の、耐糸さび性を向
上させようとするものである。
【0027】
【課題を解決するための手段】この目的を達成するため
に、本発明耐糸さび性に優れたAl合金展伸材の請求項1
の要旨は、リン酸塩処理および塗装処理されるアルミニ
ウム合金展伸材であって、展伸材表面に、金属スズおよ
び/ または酸化スズの粒子を付着させたことである。
【0028】本発明者らは、前記従来の金属乃至金属無
機化合物粒子のうち、金属スズおよび/ または酸化スズ
の粒子が、リン酸塩処理性を向上させ、Al合金展伸材の
耐糸さび性を向上させることを知見した。即ち、他の金
属乃至金属無機化合物 (酸化物、水酸化物、塩化物など
の) 粒子に比べて、粒子をAl合金展伸材表面に物理的に
擦りつけ埋め込まずとも、簡便にリン酸塩処理性を向上
させ、Al合金展伸材の耐糸さび性を向上させ得ることを
知見した。
【0029】この効果を発揮させるためには、請求項2
の本発明要旨のように、前記金属スズおよび/ または酸
化スズ粒子のAl合金板表面への総付着量が0.01g/m2〜1.
0g/m 2 の範囲であることが好ましい。
【0030】また、本発明は、優れたリン酸塩処理性向
上効果と、Al合金展伸材の耐糸さび性向上を有するため
に、請求項3 の本発明要旨のように、Al合金展伸材の中
でも、5000系など他のAl合金系に比べて、比較的リン酸
塩処理性の低い、Al-Mg-Si系(6000 系)Al 合金展伸材に
適用されて好適である。
【0031】更に、請求項4 の本発明要旨のように、Al
合金展伸材にとって、リン酸塩処理性が低くなる方向に
働く、鋼材とともに同一のラインでリン酸塩処理された
場合に適用されて好適である。
【0032】そして、請求項5 の本発明のように、鋼材
とともに同一のラインでリン酸塩処理されることが多い
自動車材用であるAl合金展伸材に適用されて好適であ
る。
【0033】
【発明の実施の形態】金属スズおよび/ または酸化スズ
の粒子の作用および付着方法を以下に説明する。金属ス
ズおよび/ または酸化スズ粒子は、II価乃至IV価の硫酸
スズ、などのスズ化合物を溶解した水溶液から析出させ
る。
【0034】スズ化合物を溶解した水溶液の作製は、水
溶液のpHを1 〜4 の酸性あるいはpHを9 以上のアルカリ
性に調整する。水溶液のpHを中性領域とした場合には、
スズ化合物が溶液中で沈殿するため、Al合金展伸材表面
へ金属スズおよび/ または酸化スズ粒子が析出および付
着しにくくなる。
【0035】そして、スズ化合物の水溶液中にAl合金展
伸材を浸漬する、あるいは、これらの水溶液をAl合金展
伸材にスプレー、噴霧、塗布などの適宜の手段で付着さ
せる。これらスズ化合物の水溶液は、Al合金展伸材表面
への濡れ性が良く、前記各手段でAl合金展伸材表面に、
単に接触させることにより、簡便で安価、かつ効率的に
金属スズおよび/ または酸化スズ粒子を付着させること
が可能である。
【0036】金属スズ粒子は、スズ化合物水溶液中のス
ズ塩の、Alによる還元作用によってAl合金展伸材表面に
生じる。
【0037】他方、酸化スズ粒子 (IV価) は、水溶液中
のスズのIV価のイオン(Sn4+ ) あるいはII価のイオン
(Sn2+) が空気酸化されて生じたSn4+がAl表面で反応
し、次式1 、3Sn4+ +4Al+6H2O →3SnO2 +4Al3++6H2のよ
うに生成する。
【0038】また、金属スズは両性金属であるので、リ
ン酸塩処理に先立つアルカリ脱脂液や、あるいは経時変
化による酸化などで、次式2 、2Sn+2H2O+O2 →2SnO2 +2
H2のように、一旦、Al合金展伸材表面生成した金属スズ
から、部分的に酸化スズ (IV価) が生成する。
【0039】特に、Al合金展伸材表面に金属スズおよび
/ または酸化スズ粒子が付着してからリン酸塩処理され
るまでには、前記した通り、かなりの時間を要する。こ
のため、Al合金展伸材がリン酸塩処理される時点では、
Al合金展伸材表面には、実際問題としては、金属スズお
よび金属スズが酸化した酸化スズ粒子が混在して付着し
ていることが多い。
【0040】ただ、本発明では、Al合金展伸材表面に付
着しているのが、金属スズ粒子あるいは酸化スズ粒子が
単独でも、金属スズと酸化スズ粒子との混在であって
も、Al合金展伸材表面の、リン酸塩処理性向上効果や耐
糸さび性向上効果に変わりは無い。
【0041】Al合金展伸材表面の金属スズ粒子は、リン
酸塩処理浴中でカソードとして働き、反応性を高めて、
Al合金展伸材表面へのリン酸塩析出を促進する。また、
Al合金展伸材表面の酸化スズ粒子は、リン酸塩処理時に
リン酸塩析出の析出核として働き、リン酸塩処理性を高
めて、Al合金展伸材表面へのリン酸塩析出を促進する。
【0042】そして、スズ化合物の水溶液から析出させ
た、金属スズおよび/ または酸化スズ粒子は、ナノメー
ター単位の微細な粒子である。しかも、これらの粒子
は、他の金属粒子や、他の金属無機化合物 (酸化物、水
酸化物、塩化物など) のミクロンオーダーの粒子に比べ
て、極めて微細である。
【0043】したがって、前記他の粒子のように、粒子
をAl合金展伸材表面に物理的に擦りつけ埋め込まずと
も、Al合金展伸材表面に均一に分散析出する。この結
果、水酸化物であることを含めて、Al合金展伸材表面の
リン酸塩処理性を向上させ、Al合金展伸材の耐糸さび性
を向上させることができる。
【0044】また、金属スズおよび/ または酸化スズ粒
子は微細であるので、Al合金板の成形加工性を劣化させ
ることが無い。更にまた、微細であるので、粒子が塗装
後にAl合金板表面に残留しても、塗装後の耐糸さび性を
劣化させることもない。
【0045】金属スズおよび/ または酸化スズ粒子のAl
合金板表面の総付着量は、前記効果を発揮させる為に、
0.01g/m2以上であることが好ましい。0.01g/m2未満であ
ると、Al合金展伸材表面のリン酸塩処理性を向上させ、
Al合金展伸材の耐糸さび性を向上させることができにく
くなる。一方、総付着量が1.0g/m2 を越えると、リン酸
塩処理時のアノード反応が減少するので、リン酸塩処理
性を向上効果が却って無くなる。金属スズおよび/ また
は酸化スズ粒子のAl合金板表面の総付着量は、0.01g/m2
〜1.0g/m2 が好ましい。
【0046】(適用Al合金)次に、本発明で用いるAl合金
について説明する。Al合金自体は、通常、この種用途に
汎用される、AA乃至JIS 3000系、5000系、6000系、7000
系等の耐力の比較的高い汎用 (規格)Al 合金を、常法の
圧延や押出工程による加工後、人工時効処理したT5や加
工後更に溶体化処理した後に人工時効硬化処理 (過時効
処理も含む) したT6等の調質処理材が、強度、耐食性、
加工性の点で好ましい。
【0047】ただ, 前記した通り、本発明の効果からし
て、5000系Al合金に比してリン酸塩処理性に劣る6000系
Al合金に適用されることが好ましい。また、6000系 (Al
-Mg-Si系)Al 合金の中でも、特に、前記自動車車体のパ
ネル材、フレーム材、メンバー材などとして要求され
る、プレス成形性や曲げ加工性、或いは、塗装焼付後に
150N/mm2以上、好ましくは200N/mm2以上の耐力となる人
工時効硬化性に優れることが好ましい。
【0048】この特性を満足するための、Al-Mg-Si系Al
合金としての、好ましい化学成分組成は、基本的にSi:
0.6〜1.5% (質量% 、以下同じ) 、Mg:0.2〜1.0%、を含
有する6000系Al合金である。この化学成分組成と前記特
性を満足する6000系Al合金としては、6016、6111、602
2、6061、6N01等のT4、T6調質材が例示される。
【0049】しかし、これらの6000系Al合金の各成分規
格通りにならずとも、前記基本的な特性を有してさえい
れば、更なる特性の向上や他の特性を付加するための、
適宜成分組成の変更は許容される。この点、上記元素の
成分範囲の変更や、より具体的な用途および要求特性に
応じて、その他、Cu、Fe、Ni、V 、Mn、Cr、Zr、Sc、Ag
などの他の元素を特性を阻害しない範囲や量、或いは規
格量以下含むことは適宜許容される。
【0050】(Al合金材の製造方法)本発明におけるAl合
金材自体は常法により製造が可能である。例えば、前記
Al合金成分範囲内に溶解調整されたAl合金溶湯を、例え
ば、連続鋳造圧延法、半連続鋳造法(DC鋳造法)等の通
常の溶解鋳造法を適宜選択して鋳造する。次いで、この
Al合金鋳塊に均質化熱処理を施した後、熱間圧延および
冷間圧延 (必要により中間焼鈍) 、または押出、或いは
鍛造などの塑性加工方法により、板材、型材、線棒な
ど、所望Al合金材の形状に塑性加工される。そして、塑
性加工された圧延材あるいは押出材は、圧延あるいは押
出ままか、必要によりT4 (溶体化処理および焼入れ処理
後自然時効硬化) 、T6 (溶体化処理および焼入れ処理後
人工時効硬化処理) 、T7 (溶体化処理および焼入れ処理
後過剰時効硬化処理) などの調質処理が行われ、前記し
た所望の機械的性質とされる。
【0051】
【実施例】次に、本発明の実施例を説明する。表1 に示
すAA 6016 および JIS 5182 系Al合金組成のAl合金圧延
板より供試材(70mm 幅×150mm 長さ) を採取し、共通し
て、80℃×60秒間5%リン酸ナトリウム水溶液に浸漬する
前処理後、更に、表2 に示す、pH、濃度、浴温×時間の
条件で、スズ化合物の水溶液に浸漬する処理を行った。
そして、本発明の金属スズおよび/ または酸化スズ粒子
を供試材表面に析出させ、その後の供試材を、共通して
水洗浄および100 ℃×60秒乾燥後、更に、Al合金展伸材
が製造後一定期間を経た上でリン酸塩処理される場合を
想定して、Al合金圧延板製造後室内で 3カ月放置したも
のを供試材として準備した。
【0052】比較のために、亜鉛めっき、鉄めっきを施
した比較例を準備した。なお、亜鉛めっきはジンケート
処理により、鉄めっきは塩化鉄 (III価) とロッシェル
塩の水酸化ナトリウムによるアルカリ水溶液に接触させ
て作成した。また、塩化鉄、塩化ニッケル、酢酸ニッケル、塩化
銅、硫酸鉄、塩化アルミ などの他の金属化合物を溶解した
水溶液に浸漬した比較例も、表2 に示す条件の他は発明
例と同様の条件で準備した。
【0053】次に、これら準備した供試材の表面に析
出、付着した粒子の形態を、XPS(X 線回折分析) により
同定し、発明例、比較例とも、各々表3 に示す金属化合
物であることを確認した。また、処理した供試材を、各
々30℃の30% 硝酸溶液に30秒浸漬して、表面に析出、付
着した粒子を除去し、この浸漬前後の供試材の重量差か
ら、供試材の表面に析出、付着した各粒子の付着量 (皮
膜重量、g/m2) を求めた。これらの結果を表3 に示す。
【0054】更に、これら放置後の供試材を、リン酸チ
タンを0.1%含むコロイド分散液に、室温で20秒間浸漬す
る処理を行い、供試材表面にリン酸チタンを吸着被覆し
た。次いで、Al合金展伸材を鋼材と同じ条件でリン酸亜
鉛処理することを想定して、フリーフッ素量を特別に50
ppm と少なくしたリン酸亜鉛浴 (リン酸亜鉛0.1%、43
℃) に2 分間浸漬するリン酸亜鉛処理を、各例とも同じ
条件で行った。そして、各々の供試材のリン酸亜鉛付着
性を評価した。これらの結果も表3 に示す。
【0055】供試材のリン酸亜鉛付着性評価は、供試材
表面のリン酸亜鉛の皮膜重量の測定により行った。より
具体的には、リン酸亜鉛処理した供試材を、各々30℃の
30%硝酸溶液に30秒浸漬して、表面のリン酸亜鉛を除去
し、この浸漬前後の供試材の重量差から、供試材の表面
に付着したリン酸亜鉛皮膜重量(g/m2)を求めた。
【0056】そして、更にこのリン酸亜鉛皮膜を設けた
供試材に、カチオン電着塗装およびスプレー塗装により
2 コート2 ベークの塗装皮膜を設け、これら塗膜を設け
た供試材に対し、耐糸さび性評価試験を行った。これら
の結果も表3 に示す。なお、2 コート2 ベークの塗装皮
膜は、中塗り塗装として、30μm 厚さのポリエステルメ
ラミン系塗装皮膜を設けて、140 ℃×20分の焼き付けを
行い、更に上塗り塗装として、30μm 厚さのポリエステ
ルメラミン系塗装皮膜を設けて、180 ℃×20分の焼き付
けを行った。
【0057】また、耐糸さび性評価試験は、塗装試験片
に一片が7cm のクロスカットを施した後、5%の塩水を24
時間噴霧した後、40℃、85RHの恒温恒湿の雰囲気に1000
時間放置し、その後発生した糸さびの最大長さL(クロス
カットより垂直方向の距離)を測定した。
【0058】更に、塗装試験片の塗膜密着性を、塗装試
験片を40℃の純水中に240 時間浸漬後に、カッターを用
いて、2mm 間隔の10×10マスの碁盤目状で、素材に達す
る深さのキズを入れて、テープ剥離試験を行い、塗膜残
存数を測定して評価した。
【0059】表3 から明らかな通り、金属スズおよび/
または酸化スズ粒子をAl合金板表面に付着および析出さ
せた発明例No.2〜10は、特にリン酸塩処理が劣る6000系
の6016Al合金板であっても、また、Al合金展伸材が製造
後一定期間を経た上でリン酸塩処理された場合でも、リ
ン酸亜鉛の付着量が多く、かつ、最大糸さび長さも短
い。
【0060】また、発明例No.2〜10の結果は、亜鉛めっ
き、鉄めっきを施した比較例No.11、12と比較しても遜
色がなく、塗装後の耐糸錆性や塗膜密着性が優れてお
り、塗装されたAl合金展伸材の耐食性および外観性に優
れていることを示している。更に、これらの効果を、亜
鉛めっき処理や鉄めっき処理に比して、簡単な処理で達
成することができる。このため、Al合金展伸材の製造コ
ストを著しく上昇させることなく、亜鉛めっき処理や鉄
めっき処理と同等の塗装後の耐糸錆性や塗膜密着性の向
上効果が達成できる。
【0061】なお、発明例No.1は、特にリン酸塩処理が
劣る6000系の6016Al合金板を対象とし、金属スズおよび
酸化スズ粒子の付着量が、本発明の好ましい範囲0.01〜
1.0g/m2 を下限に外れて少ない。このため、発明例No.1
は、同じ条件で処理した、5000系の5182Al合金板を対象
とした発明例No.2に比して、リン酸亜鉛付着量が少な
く、かつ、最大糸さび長さも長い。したがって、金属ス
ズおよび酸化スズ粒子の付着量の前記好ましい範囲の意
義が明らかである。
【0062】一方、これに対し、塩化鉄、塩化ニッケル、酢
酸ニッケル、塩化銅、硫酸鉄、塩化アルミなど本発明以外の各
金属化合物や酸化物が付着した比較例No.13 〜20は、特
に、リン酸塩処理性が劣る6000系Al合金板において、ま
た、Al合金展伸材が製造後一定期間を経た上でリン酸塩
処理された場合に、リン酸亜鉛の付着量が少なく、か
つ、最大糸さび長さも長く、塗装後の耐糸錆性や塗膜密
着性が、発明例と比較しても劣っている。
【0063】これら実施例の結果から、Al合金展伸材表
面のリン酸塩処理性および塗装後の耐糸さび性や塗膜密
着性向上の観点からの、本発明における表面処理の、臨
界的的な意義が裏付けられる。また、更に、本発明のAl
合金展伸材が特に自動車などの輸送機用材として好適に
用いることができることが分かる。
【0064】
【表1】
【0065】
【表2】
【0066】
【表3】
【0067】
【発明の効果】本発明によれば、Al合金展伸材を鋼材と
同じ条件で表面にリン酸亜鉛処理および塗装処理を施す
場合でも、リン酸塩処理におけるリン酸塩皮膜のAl合金
展伸材表面への付着量とつきまわり性を向上させ、耐糸
さび性や塗膜密着性を向上させたAl合金展伸材を提供す
ることが可能となる。したがって、Al合金展伸材の自動
車などの用途への拡大を図れる点で、工業的な価値が大
きい。

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 リン酸塩処理および塗装処理されるアル
    ミニウム合金展伸材であって、表面に金属スズおよび/
    または酸化スズの粒子を付着させたことを特徴とする耐
    糸さび性に優れたアルミニウム合金展伸材。
  2. 【請求項2】 前記金属スズおよび/ または酸化スズ粒
    子のAl合金板表面の総付着量が0.01g/m2〜1.0g/m2 であ
    る請求項1に記載の耐糸さび性に優れたアルミニウム合
    金展伸材。
  3. 【請求項3】 前記アルミニウム合金展伸材がAl-Mg-Si
    系アルミニウム合金である請求項1または2に記載の耐
    糸さび性に優れたアルミニウム合金展伸材。
  4. 【請求項4】 前記アルミニウム合金展伸材が、鋼材と
    ともに同一のラインでリン酸塩処理された後に塗装され
    る請求項1乃至3のいずれか1項に記載の耐糸さび性に
    優れたアルミニウム合金展伸材。
  5. 【請求項5】 前記アルミニウム合金展伸材が自動車材
    用である請求項1乃至4のいずれか1項に記載の耐糸さ
    び性に優れたアルミニウム合金展伸材。
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