JP2001262364A - 耐糸さび性に優れたアルミニウム合金展伸材 - Google Patents

耐糸さび性に優れたアルミニウム合金展伸材

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JP2001262364A
JP2001262364A JP2000073626A JP2000073626A JP2001262364A JP 2001262364 A JP2001262364 A JP 2001262364A JP 2000073626 A JP2000073626 A JP 2000073626A JP 2000073626 A JP2000073626 A JP 2000073626A JP 2001262364 A JP2001262364 A JP 2001262364A
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zeta potential
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titanium phosphate
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Mariko Sakata
真理子 坂田
Fumihiro Sato
文博 佐藤
Kazumi Yanagisawa
佳寿美 柳澤
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 リン酸塩処理におけるリン酸塩皮膜のAl合
金材表面への付着量とつきまわり性を向上させ、最終的
に塗装されて使用されるAl合金材の、耐糸さび性を向上
させることを目的とする。 【解決手段】 リン酸塩処理および塗装処理される前
に、リン酸チタンのコロイド分散液により処理されて、
表面にリン酸チタンが吸着被覆されるAl-Mg-Si系アルミ
ニウム合金展伸材であって、前記リン酸チタン表面のゼ
ータ電位と、前記アルミニウム合金展伸材表面のゼータ
電位との差の絶対値が30mV以上であるように、予め表面
が調整されていることである。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、塗装後に使用され
た際の、耐糸錆性などの耐食性や外観性 (美観や鮮映性
など) に優れたアルミニウム合金展伸材 (以下、アルミ
ニウムを単にAlと言う) に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、排気ガス等による地球環境問題に
対して、自動車などの輸送機車体の軽量化による燃費の
向上が追求されている。このため、これら輸送機の車体
に対し、従来から使用されている鋼材に代わって、板
材、形材、鍛造材などの各種Al合金展伸材 (以下、単に
Al合金材とも言う) の適用が増加しつつある。
【0003】Al合金は、鋼に比して、その比重が1/3 で
あること、優れたエネルギー吸収性を有するという特性
がある。このため、車体重量を増加させずに、安全基準
への対応や車体性能を向上させることが可能となる。中
でも、高強度で成形性に優れたAA乃至JIS 5000系や、成
形性や焼付硬化性に優れたAA乃至JIS 6000系 (以下、単
に5000系乃至6000系と言う) などのAl合金展伸材が、自
動車のドア、ボンネット、フード等の外板や内板等のパ
ネル材や、サイドメンバーなどの車体メンバー類やフレ
ーム類、ドアビームやバンパー補強材などのエネルギー
吸収材、或いはアーム類などの足廻り部材等に採用され
ている。
【0004】この内、自動車車体にAl合金材が使用され
る場合、オールアルミ車などの一部を除いて、大部分の
自動車車体では従来からの鋼板などの鋼材とAl合金材と
が複合化されて用いられる。
【0005】通常、自動車の製造ラインにおいて、成
形、組み立て後の車体は、リン酸亜鉛などのリン酸塩処
理などの塗装下地処理を施された後、カチオン電着塗装
処理や中塗り、上塗りなどの塗装を施される。そして、
この製造ラインにおける各工程条件は基本的に、これま
で使用されている鋼材の条件に見合ったものとなってい
る。したがって、前記した通り、鋼材と複合化されて使
用されるAl合金材は、鋼材とともに、言い換えると、鋼
材と基本的に同じ条件で表面に前記塗装下地処理および
塗装処理が施されることになる。
【0006】しかし、Al合金材の場合、鋼材よりもリン
酸亜鉛処理性が劣るため、特に、前記したように、鋼材
と基本的に同じ条件でリン酸亜鉛処理された場合、Al合
金材表面に、均一で適当量のリン酸亜鉛の皮膜が確保さ
れにくいという問題がある。仮に、このリン酸塩処理性
が悪いと、その後に塗装により形成される塗膜の密着性
が低下する。そしてこの結果、塗装後に糸錆状の腐食や
塗膜のふくれが生じ、自動車としての耐食性や外観性を
低下させる可能性がある。
【0007】このため、Al合金材のリン酸塩処理性を改
善するために、従来からリン酸塩処理浴の側を改善する
ことが行われている。例えば、その代表例としては、リ
ン酸塩処理浴に数十〜数百ppm 程度の高濃度のフリーフ
ッ素(F) イオンを添加することが行われている。
【0008】この他、Al合金材側のリン酸塩処理性を改
善して、塗装後の前記耐食性や外観性を向上させる技術
が種々提案されている。例えば、特開平04-41646号や特
開平07-3371 号公報には、6000系Al合金について、Zn、
Cuなどのリン酸塩処理性改善元素を添加してリン酸塩処
理性を改善する技術が開示されている。また、特開平08
-277434 号公報には、Znなどのリン酸塩処理性改善元素
を添加およびCuをリン酸塩処理性を阻害する元素として
逆に規制してリン酸塩処理性を改善する技術が開示され
ている。更に、特開平08-92773号公報には、Al合金材表
面の酸化皮膜を酸性溶液中で除去して、リン酸塩処理性
を改善する技術が開示されている。
【0009】また、Al合金板の表面を改質することも種
々行われている。例えば、特開平6-287672号公報では、
Al合金板に0.01〜5wt%のCuを含有させるとともに、Al合
金板表面にCuを0.1 〜10wt% 優先析出させ、析出したCu
をリン酸塩処理の際のカソード反応点として働かせて、
リン酸塩処理性を改善することが開示されている。
【0010】更に、Al合金板表面のAlの酸化皮膜に着目
し、酸化皮膜の厚さを50〜150 Å或いは70Å以下程度と
するとともに、リン酸塩処理性を阻害するAlの酸化皮膜
中のMgの酸化物(MgO) を規制してリン酸塩処理性を改善
することが、特開平2-250944号や特開平5-70970 号、或
いは特開平8-92773 号などの公報に開示されている。
【0011】また、特開平6-240467号、特開平5-33165
号などの公報では、Al合金板表面にAlに対して貴なFe、
Ni、Cu、Cr、Mn等の金属を析出させることにより、これ
ら析出金属をリン酸塩反応 (化学反応) におけるカソー
ドとして、アノードからのAlの溶解を促進する一方で、
Al合金板表面へのリン酸塩の析出を促進し、リン酸塩処
理性を改善することが開示されている。
【0012】更に、特開平10-121262 号などの公報で
は、Cu、Fe等の金属酸化物粒子をAl合金板表面に物理的
に擦りつけて付着させ、これらの金属酸化物を核として
Al合金板表面へのリン酸塩の析出を促進し、リン酸塩処
理性を改善することが開示されている。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】前記リン酸塩処理浴の
側を改善する技術として、フリーフッ素(F) イオンの添
加によって、Al合金材のリン酸塩処理性自体は改善され
る。しかし、Al合金材表面へのリン酸塩皮膜の形成は、
Al合金材表面からのAlイオンの溶出によって促進される
ため、Al合金材のリン酸塩処理性がよくなるほど、Al合
金材表面からのAlイオンの溶出量が多くなる。そして、
このAlイオンの溶出が多くなると、鋼材の方のリン酸塩
処理性を阻害するという新たな問題を生じる。更に、有
害なフッ素イオンを多量に使用するという問題があり、
また、これらを含む廃液の処理の問題がある。
【0014】また、前記Al合金材側のリン酸塩処理性を
改善する技術として、Zn、Cuなどのリン酸塩処理性改善
元素を添加乃至成分量を調整してリン酸塩処理性を改善
する技術は、これら成分調整した6000系Al合金において
も、依然リン酸塩処理性は低く、塗装後に糸錆状の腐食
や塗膜のふくれが生じることを完全には防止できない。
【0015】更に、前記Al合金材表面の酸化皮膜を酸性
溶液中で除去して、リン酸塩処理性を改善する技術も、
リン酸塩処理性は同様に低く、塗装後に糸錆状の腐食や
塗膜のふくれが生じることを完全には防止できない。
【0016】そして、前記Al合金板表面にCuを析出させ
る技術は、Al合金板に0.01〜5wt%のCuを含有させる必要
が有り、Al合金板自体にCuを含有する乃至リン酸塩処理
後にAl合金板表面にCuが残留すると、却って塗装後の耐
蝕性の内、特に耐糸さび性を劣化させるという問題があ
る。
【0017】また、前記Al合金板表面のAlの酸化皮膜の
制御技術では、リン酸塩処理性を阻害するAlの酸化皮膜
中のMgの酸化物(MgO) を規制しても、必ずしも、リン酸
塩処理性を改善することができない場合がある。
【0018】特に、通常製造されたAl合金板は、一定期
間在庫乃至保管された上で、前記自動車材用などとして
加工し使用されるが、特に、前記在庫乃至保管される期
間が長くなるほど、長期保管後のAl合金板をリン酸亜鉛
などの化成処理をした場合、化成処理性が低下し、化成
処理ムラや、著しい場合には塗装後の耐糸錆び性が低下
する現象が生じる。そして、この現象に対しては、前記
Alの酸化皮膜中のMgの酸化物の規制だけではなく、リン
酸塩処理浴に前記フッ素を高濃度に添加する技術、リン
酸塩処理性改善元素を添加乃至成分量を調整する技術、
或いはAl合金材表面の酸化皮膜を酸性溶液中で除去する
方法でも、同様に完全に防止することはできない。
【0019】更に、Al合金板表面にAlに対して貴なCu、
Fe、Ni、Cr等の金属を析出させることにより、これら析
出金属をカソードとして、Al合金板表面へのリン酸塩の
析出を促進させる技術は、確かに、Al合金板表面へのリ
ン酸塩皮膜量は多くなる。しかし、前記析出金属が塗装
後もAl合金板表面に残留し、却って、この析出金属が起
点となって、塗装後の耐糸さび性を劣化させるという問
題がある。
【0020】また、Cu、Fe等の金属酸化物粒子をAl合金
板表面に擦りつけて付着させ、これらの金属酸化物を核
としてAl合金板表面へのリン酸塩の析出を促進させる技
術は、付着させる粒子が微細であるとしても、必然的に
ミクロン単位の大きさがあるために、特に、板材の場
合、表面処理の前に施されるプレス成形加工の際の摩擦
係数を、付着させた粒子が高めるために、Al合金板の成
形加工性を劣化させることとなる。また、更に、この比
較的大きな金属酸化物粒子が塗装後もAl合金板表面に残
留して塗膜の密着性を低下させ、却って、この金属酸化
物粒子が起点となって、塗装後の耐糸さび性を劣化させ
る可能性があるという問題もある。
【0021】本発明はこの様な事情に着目してなされた
ものであって、その目的は、リン酸塩処理に先立って行
われる、リン酸チタンのコロイド分散液による処理にお
けるリン酸チタンのAl合金材表面への吸着付着量を増加
させて、Al合金材を鋼材と同じ条件で表面にリン酸亜鉛
処理および塗装処理を施す場合でも、続くリン酸塩処理
におけるリン酸塩皮膜のAl合金材表面への付着量とつき
まわり性を向上させ、最終的に塗装されて使用されるAl
合金材の、耐糸さび性を向上させようとするものであ
る。
【0022】
【課題を解決するための手段】この目的を達成するため
に、本発明耐糸さび性に優れたAl合金展伸材の要旨は、
リン酸塩処理および塗装処理される前に、リン酸チタン
のコロイド分散液により処理されて、表面にリン酸チタ
ンが吸着被覆されるAl-Mg-Si系アルミニウム合金展伸材
であって、前記リン酸チタン表面のゼータ電位と、前記
アルミニウム合金展伸材表面のゼータ電位との差の絶対
値が30mV以上、好ましくは40mV以上 (請求項2 に対応)
であるように、予め表面が調整されていることである。
【0023】但し、ゼータ電位の測定値に再現性を持た
せるために、リン酸チタン表面およびアルミニウム合金
展伸材表面のゼータ電位の測定は、10mMol/dm3 (ミリモ
ル/リットル) 濃度のNaCl水溶液 (pH8.5 〜10.0、液温
20℃) 中にて行い、アルミニウム合金展伸材表面のゼー
タ電位の測定は市販ラテックス粒子をモニター粒子とし
て行う。
【0024】本発明で規定するゼータ電位 (ζ) 自体
は、コロイド科学の分野などで、例えばコロイド粒子な
どの溶液中にある物質 (固体) 表面の帯電状態を表すも
のとして、「ゼータ電位 微粒子界面の物理化学」( サ
イエンティスト社、1995年1 月31日発行) 等により公知
である。より具体的には、紙パルプ、写真、塗料、油
脂、セメント等の分野で、個々のコロイド溶液の凝集や
分散状態を、コロイド粒子のゼータ電位を測定して、こ
れら溶液の種々の特性を評価することが行われている。
【0025】なお、本発明のリン酸チタン表面のゼータ
電位は、市販のゼータ電位測定装置を用いて測定するこ
とができる。また、金属材表面のゼータ電位は、後述す
る通り、金属材表面の絶縁の必要性を除き、市販のゼー
タ電位測定装置を用いて測定することができる。
【0026】しかして、本発明者らは、このようにして
測定したAl合金材表面のゼータ電位について、リン酸チ
タンのコロイド分散液によるAl合金材の処理性、即ち、
Al合金材表面へのリン酸チタンの付着性が、リン酸チタ
ン表面のゼータ電位と、Al合金材表面のゼータ電位とに
関係していることを知見した。
【0027】Al合金材表面へのリン酸チタンの付着性
(リン酸チタンのコロイド分散液によるAl合金材の処理
性) は、Al合金材表面の電荷とリン酸チタン表面の電荷
との静電気的な吸着反応である。したがって、この静電
気的な吸着反応が、Al合金材表面とリン酸チタン表面の
ゼータ電位の相対的な関係と良く対応していることに基
づくものと推考される。
【0028】図1 に5052Al合金板と 6016Al 合金板の表
面の測定ゼータ電位を示す。また、図1 には直接測定が
可能なリン酸チタン表面のゼータ電位も示す。なお、図
1 はpHの変化 (横軸) に対応した、リン酸チタン表面お
よび各々のAl合金板の表面のゼータ電位の変化を示して
いる。
【0029】なお、5052系Al合金板は5000系Al合金の中
でも成形性が良く、自動車パネル材として汎用されてい
る。また、6016系Al合金板は6000系Al合金の中でも成形
性が良く、自動車パネル材として汎用されている各々代
表的なAl合金である。そして、試験に用いたAl合金板は
常法の圧延工程と条件により製造したもので、各々のAl
合金分野のAl合金板を代表するものである。
【0030】図1 において、通常、自動車車体の表面処
理に用いられる、リン酸チタンのコロイド分散液のpHで
あるpH9 の付近について見ると、リン酸チタン表面のゼ
ータ電位が−60mVであるのに対し、5052Al合金板表面の
ゼータ電位は−10mV、6016Al合金板の表面のゼータ電位
は−40mVである。これによると、5052Al合金板表面のゼ
ータ電位の、リン酸チタン表面のゼータ電位との絶対値
の差は50mVであるのに対し、6016Al合金板の表面のゼー
タ電位の、リン酸チタン表面のゼータ電位との絶対値の
差は20mVしかない。つまり、リン酸チタン表面のゼータ
電位との絶対値の差は、5052Al合金板表面のゼータ電位
の方が、6016Al合金板表面のゼータ電位よりも大きい。
【0031】この結果は、実際に、Al合金材表面をリン
酸チタンのコロイド分散液 (pH9)にて処理試験した際
の、Al合金材表面へのリン酸チタンの付着性と良く対応
している。即ち、実際の処理試験の結果も、5052など50
00系Al合金板の方が、6016など6000系Al合金板よりもリ
ン酸チタンの付着性が良い。そして、その後のリン酸亜
鉛処理試験においても、5000系Al合金板の方が6000系Al
合金板よりもリン酸亜鉛の付着性が良く、更に、その後
の耐糸さび性腐食試験の結果でも、5000系Al合金板の方
が6000系Al合金板よりも耐糸さび性に優れる。
【0032】即ち、この傾向は、常法の圧延や押出工程
と熱処理条件 (T4、T6等) により製造した6000系 (Al-M
g-Si系) Al合金展伸材全般について言うことができる。
そして、6000系 (Al-Mg-Si系) Al合金展伸材の、リン酸
チタンのコロイド分散液にて処理した際の、リン酸チタ
ンの付着性が低い理由は、6000系Al合金展伸材表面のゼ
ータ電位と、リン酸チタン表面のゼータ電位とが比較的
近く、絶対値の差も小さいためである。この結果、Al合
金材表面に付着しようとするリン酸チタンと6000系Al合
金展伸材表面とは静電反発が働き、リン酸チタンが付着
しにくい方向に働く、ことによるものと推考される。
【0033】したがって、図1 の結果から、リン酸チタ
ンが6000系Al合金展伸材表面に吸着付着する際に、リン
酸チタン表面のゼータ電位−60mV(pH9) に対し、6000系
Al合金展伸材表面のゼータ電位がプラス側に高くなり、
その絶対値の差が大きくなれば、静電吸着が働き、リン
酸チタンが6000系Al合金展伸材表面により良く付着する
方向に働くことが分かる。
【0034】言い換えると、リン酸チタン表面のゼータ
電位に対し、6000系Al合金展伸材表面のゼータ電位がプ
ラス側に高くなるように、表面を調整すれば、リン酸チ
タンの付着性や処理性が向上することも分かる。
【0035】
【発明の実施の形態】(6000系Al合金展伸材表面のゼー
タ電位)前記した通り、常法の圧延や押出工程と熱処理
条件 (T4、T6等) により製造した6000系 (Al-Mg-Si系)
Al合金展伸材表面のゼータ電位は、必然的に、リン酸チ
タン表面のゼータ電位と比較的近くなる。
【0036】したがって、本発明においては、常法によ
り製造したAl-Mg-Si系Al合金展伸材表面のゼータ電位
を、リン酸チタン表面のゼータ電位に対し、絶対値で40
mV以上高くなるように、予め表面を調整した後、表面に
リン酸チタンを吸着被覆させるものとする。Al-Mg-Si系
Al合金展伸材表面のゼータ電位が、リン酸チタン表面の
ゼータ電位に対し、絶対値で30mV未満であると、常法に
より製造したAl-Mg-Si系Al合金展伸材と同じとなり、リ
ン酸チタンの吸着被覆性が低下する。
【0037】Al合金展伸材表面のゼータ電位の調整手段
としては、まず、Al合金展伸材表面のゼータ電位をプラ
ス側に上げる (シフトさせる) ような粒子を、予め付着
することが、処理の簡便さと再現性のために好ましく例
示される (請求項3 に対応)。
【0038】Al合金展伸材表面に、ゼータ電位がプラス
側に上げるような粒子を、予め付着することにより、Al
合金展伸材表面のゼータ電位が、リン酸チタン表面のゼ
ータ電位と比較的近くなっていても、付着粒子の表面の
ゼータ電位が、リン酸チタン表面のゼータ電位−60mV(p
H9) に対し、逆のプラスのゼータ電位であるので、リン
酸チタンと粒子との間に静電吸着が働き、リン酸チタン
が6000系Al合金展伸材表面により良く付着する。
【0039】このような粒子としては、Ni、Fe、Mn、C
o、Cdから選択される一種または二種以上の金属水酸化
物、および/ または、Ti、Ni、Co、Cd、Beから選択され
る一種または二種以上の金属酸化物が、好ましく例示さ
れる (請求項3 に対応) 。これらの粒子は表面のゼータ
電位が、リン酸チタン表面のゼータ電位−60mV(pH9) に
対し、逆のプラスのゼータ電位であるので、リン酸チタ
ンと粒子との間に静電吸着が働き、リン酸チタンの付着
性を向上させ、更に、この結果、続くリン酸塩処理性を
向上させ、Al合金展伸材の塗装後の耐糸さび性を向上さ
せる。
【0040】更に、これらの粒子は、ナノメーター単位
の微細な粒子であり、溶液中でコロイド化するため、こ
れらコロイド溶液で、Al-Mg-Si系Al合金展伸材表面を処
理 (浸漬、塗布、噴霧等) することにより、簡便で安
価、かつ効率的に付着させることが可能である。そし
て、これらの粒子は、前記のようにナノメーター単位の
微細であるので、後述する他の粒子のように、Al合金板
の成形加工性を劣化させることがない。また、粒子が塗
装後にAl合金板表面に残留しても、塗装後の耐糸さび性
を劣化させることもない。
【0041】これに対し、前記従来技術で用いられるよ
うな、Fe、Ni、Cu、Cr、Mn、Zn等の表面析出金属、或い
はCu、Fe、Mn、Cr、Zn等の金属酸化物などの粒子は、そ
の表面のゼータ電位が、リン酸チタン表面のゼータ電位
と比較的近いマイナスの値を示すために、リン酸チタン
との静電反発により、リン酸チタンのAl合金展伸材表面
への付着性向上に寄与しないか、低下させる。また、付
着させるのが、前記金属酸化物粒子の場合、微細である
としても、必然的にミクロン単位の大きさがある。この
ため、前記した通り、特に、板材用途の場合、表面処理
の前に施されるプレス成形加工の際の摩擦係数を、付着
させた金属酸化物粒子が高めるために、Al合金板の成形
加工性を劣化させることとなる。
【0042】また、これら金属酸化物粒子が塗装後もAl
合金板表面に残留した場合、塗膜の密着性を低下させ、
却って、これらの粒子が起点となって、塗装後の耐糸さ
び性を劣化させる可能性がある。更に、前記析出金属の
場合には、ナノメーター単位の微細な粒子であるもの
の、塗装後も析出金属がAl合金板表面に残留すると、却
って、この析出金属が起点となって、塗装後の耐糸さび
性を劣化させる可能性が大きい。
【0043】Al合金展伸材表面のゼータ電位の調整手段
としては、次に、Al合金展伸材表面の酸化皮膜のゼータ
電位が、前記リン酸チタンのゼータ電位よりも、絶対値
が40mV以上高くなるように調整することが好ましい例と
して、例示される (請求項4に対応) 。
【0044】前記常法で製造されるAl-Mg-Si系Al合金展
伸材表面の酸化皮膜の組成は、主として、Alの酸化物
(Al2O3)、Mgの酸化物 (MgO)、AlとMgの複合酸化物 (MgA
l2O4)、或いは[Al2O3・XH2O] で表される結合水を有す
るAlの酸化物や水酸化Al[Al(OH)3] などの水酸基を有す
る化合物より構成される。
【0045】これら酸化皮膜の組成物の内、Alの酸化物
表面のゼータ電位はプラスである。したがって、酸化皮
膜の組成がAlの酸化物主体であると、リン酸チタンと粒
子との間に静電吸着が働き、リン酸チタンの付着性を向
上させ、更に、この結果、続くリン酸塩処理性を向上さ
せ、Al合金展伸材の塗装後の耐糸さび性を向上させる。
【0046】これに対し、水酸基を有する水酸化Al、[A
l2O3・XH2O] で表される結合水を有するAlの酸化物、Mg
の酸化物 (MgO)、AlとMgの複合酸化物 (MgAl2O4)の表面
のゼータ電位は、リン酸チタンのゼータ電位に近いマイ
ナスの値となっている。このため、リン酸チタンとの静
電反発により、リン酸チタンのAl合金展伸材表面への付
着性向上に寄与しないか、低下させる。
【0047】したがって、酸化皮膜の組成をAlの酸化物
(Al2O3)主体とし、他のMgの酸化物(MgO)、AlとMgの複
合酸化物 (MgAl2O4)、或いは[Al2O3・XH2O] で表される
結合水を有するAlの酸化物や水酸化アルミニウム[Al(O
H)3] などの水酸基を有する化合物を減らせば、Al-Mg-S
i系Al合金展伸材表面の酸化皮膜のゼータ電位を、リン
酸チタンのゼータ電位よりも、絶対値が40mV以上高くな
るように調整することが可能となる。
【0048】これら酸化皮膜の組成の調整は、塑性加工
や熱処理等によって行うことも可能である。しかし、最
も効果的な調整方法は、最終の溶体化処理および焼入処
理後の、酸あるいはアルカリ、市販の洗浄剤、更にはこ
れらを組み合わせた洗浄液による、エンチングを伴う洗
浄工程である。この洗浄工程は、元々冷間圧延などの塑
性加工や溶体化処理によりAl合金材表面に付着している
油や汚れを除去する目的で行われるものである。これに
対し、本発明では、この目的とともに、前記した通り、
酸化皮膜の組成をAlの酸化物 (Al2O3)主体とし、リン酸
チタンのゼータ電位に近いマイナスの値を示す、前記他
化合物を減らすように、エンチングを伴う洗浄を行う。
【0049】なお、最終の溶体化処理および焼入処理後
のAl-Mg-Si系Al合金展伸材において、既に、表面のゼー
タ電位が、リン酸チタンのゼータ電位よりも、絶対値で
40mV以上高くなるようになっている場合には、油や汚れ
の除去のためには別として、前記エッチングを伴う洗浄
は不要である。
【0050】また、当初、表面のゼータ電位が、リン酸
チタンのゼータ電位よりも、絶対値で40mV以上高くなる
ようになっている場合でも、リン酸塩処理されるまで
に、Al-Mg-Si系Al合金展伸材が長期保管されたような場
合には、酸化物組成の変化により (水酸基の増加によ
り) 、表面のゼータ電位の、リン酸チタンのゼータ電位
との絶対値の差が40mV未満となっている可能性もある。
このような場合には、前記表面のゼータ電位がプラスで
あるような粒子の被覆、或いは、前記エッチングを伴う
洗浄を行って、本発明範囲内に調節する。
【0051】(金属材表面のゼータ電位測定方法)図2
(a)、(b) に、金属材表面のゼータ電位測定装置の一例
を、正面図 (一部断面) で示す。なお、図2(a)はゼータ
電位測定用のセルユニットの全体を示し、図2(b)は図5
(a)の要部を拡大した正面図 (一部断面) を示す。
【0052】図2(a)において、金属材表面のゼータ電位
測定用のセルは、基本的に、石英セル1a、樹脂製のセル
1bと、これらのセルに刻設された流路2(モニター粒子B
を分散させた塩化物水溶液C を収容する) とからなり、
図示しないセルホルダー内に収容および支持されてい
る。この他、ゼータ電位測定装置は、このセルに取り付
けられ前記モニター粒子を帯電させるための白金電極5
a、5bと、前記水溶液に対し、石英セル1aセルの金属材
を接触、固定させるための、伝熱シート6 、恒温ブロッ
ク7 、押さえネジ8 等の公知の固定手段と、図示しない
水溶液中とモニター粒子の移動速度の変化を検出するレ
ーザー等の検出手段とを有する。
【0053】なお、石英セル1aには、底部の一部が開放
して、金属材X の表面と接触するように、水溶液C の
(水平) 流路2aが設けられている。また、流路2aは、端
部で(垂直) 流路2b、2cと連通しており、流路2b、2c
は、更に各々、水溶液C のセルへの導入口3 、導出口4
連通している。
【0054】したがって、石英セル1aの底部から、水溶
液C の( 水平) 流路2aに、金属材Xを固定手段8 等によ
って押し当てることによって、水溶液C と金属材X の水
溶液C 側の表面との接触が確保される。
【0055】そして、この装置では、図2(b)に示すよう
に、金属材X の水溶液C と接触する側の表面の一部を絶
縁する手段として、金属材X の水溶液C と接触する側
に、前記図3(b)に示した、樹脂やゴムなどの絶縁性のス
ペーサーE を設けている。このスペーサーE は、導電性
の金属材X の水溶液C 接触側表面に、水溶液C と接する
隙間 (窓)Dを有しており、この隙間D の部分を除いて、
金属材X の水溶液C と接触する側の表面の一部を絶縁し
ている。
【0056】これによって、白金電極5a、5bにより、セ
ルと水溶液C を荷電しても、導電性の金属材X は帯電し
にくくなり、水溶液C 中のモニター粒子B の表面が、測
定に充分な量、帯電することが可能となる。金属材X の
水溶液C と接触する側の表面の一部を絶縁しないと、導
電性の金属材 (板)Xの方が専ら帯電してしまう。このた
め、肝心のモニター粒子B の表面の方が帯電しない乃至
しにくく、金属材X の表面のゼータ電位を測定すること
ができないという問題が生じる。
【0057】なお、リン酸チタン表面のゼータ電位は、
前記絶縁せずとも、前記モニター粒子をリン酸チタン粒
子に置き換えれば測定可能である。
【0058】この際、モニター粒子を分散させる水溶液
としては、従来のゼータ電位測定方法と同様に、誘電率
を一定にするために一定量でかつ微量の塩化物を含むこ
とが必要である。この塩化物としては、それ自身に化学
吸着能の無い、NaClを用い、その濃度は、10mMol/dm3
する。
【0059】また、モニター粒子としては、従来のゼー
タ電位測定方法に使用されている、粒径300 〜700nm の
レベルの市販の、ポリスチレン等のラテックス粒子 (ヒ
ドロキシプロピルセルロースでコーティングしたもの)
とする。なお、モニター粒子の水溶液中への添加 (分
散) 量は、レーザーによる移動速度の検出感度から定ま
り、市販のゼータ電位測定測定装置毎に最適量が異なる
とともに定まっており、本発明でもこれに従う。
【0060】この装置を用いた、金属材の表面のゼータ
電位( ζ電位) の測定方法を、以下に、より具体的に説
明する。まず、石英セル1aに刻設された (水平) 流路2a
に接触して金属材を設置、固定済みの図5(a)、(b) の装
置において、流路2a内に、導入口3 および流路2bを通じ
て、モニター粒子B を分散させた塩化物水溶液C を収容
する。
【0061】そして、白金電極5a (+) 、5b (−) によ
り、セルと水溶液C を荷電して、水溶液C 中のモニター
粒子B の表面のみを帯電させる。この際の帯電量は、モ
ニター粒子B の移動速度の変化がレーザー等で検出可能
な量以上となるようにし、また、水溶液C の電気分解に
より生じた気泡による液の流れが生じて、モニター粒子
B の移動速度への外乱とならないような量とすることが
好ましい。
【0062】この帯電によって、水溶液C 中のモニター
粒子B は、流路2a内を、白金電極5a(+) から白金電極5
b (−) の方向 (図5 の左から右) に移動する。この帯
電したモニター粒子B の移動の際に、通常の (金属材X
と絶縁されている部分の) 水溶液C 中と、金属材X とが
接触している水溶液C 中 (前記隙間D の部分に対応する
水溶液中) との、モニター粒子B の移動速度をレーザー
により測定する。
【0063】これらのモニター粒子B の移動速度からの
金属材X 表面のゼータ電位の求め方を説明する。金属材
X 表面のゼータ電位を、再現性良く正確に求めるために
は、通常のコロイド粒子表面のゼータ電位の測定にも用
いる、電気浸透流 (溶液側の流速) の因子 (影響) を考
慮する。
【0064】即ち、セル壁間の溶液に電場をかけると、
帯電した金属材X の表面 (壁面) の影響で溶液に電気浸
透流と呼ばれる溶液の流れが生じる。この電気浸透流
は、溶液中のモニター粒子の移動速度に影響する。
【0065】今、金属材X の壁面からZ だけ離れたモニ
ター粒子の観測される (見かけの)移動速度をU obs (Z)
、金属材が接触 (存在) していない場合の溶液中のモ
ニター粒子の観測される移動速度をUp、金属材X の壁面
B からZ だけ離れた位置での前記電気浸透流の速度をU
osm (Z) とすると、これらの間には、次式2 、U obs(Z)
=U osm (Z) +Up、書き換えると、U osm (Z)=U obs (Z)
−Up、の関係が成り立つ。
【0066】ここで、金属材X の表面 (壁面) はZ=0 で
あるので、金属材X の表面の電気浸透流の速度U
osm (0) は、任意の位置での前記電気浸透流の速度U
osm (Z) から、公知の流体力学的な外挿法 (例えば森、
岡本の式) によって求めることができる。
【0067】したがって、金属材X 表面のゼータ電位
(ζZ=0)は、このU osm (0) を、コロイド粒子表面A の
ゼータ電位ζを求める公知の次式1 、U osm (0)= (εE
ζZ)/(4πη) で求められる (但し、コロイド粒子の場
合はε; 溶液の誘電率、E;溶液の電場、ζ; コロイド粒
子A 表面のゼータ電位、η; 溶液の粘度で、金属材X の
場合はε; 溶液の誘電率、E;溶液の電場、ζZ ; 金属材
X 表面のゼータ電位、η; 溶液の粘度) のU に代入し
て、式1 のζZ として求めることができる。
【0068】この際、測定されるゼータ電位は、まず、
雰囲気乃至浴液中のpHにより大きく影響を受けて、測定
値が大きく変化する。したがって、リン酸チタン表面の
ゼータ電位と、Al合金展伸材表面のゼータ電位の測定の
際にも、塩溶液のpHを、表面処理されるリン酸チタン分
散液のpHと同じとする。これによって、リン酸チタン表
面のゼータ電位と、Al合金展伸材表面のゼータ電位との
差の比較が、表面処理されるリン酸チタン分散液のpHと
同じpHとなり、リン酸チタンの処理性と良く対応する。
【0069】(Al酸化皮膜の厚さ)なお、本発明におい
て、Al合金材表面の酸化皮膜の厚さは20〜150 Åの範囲
とすることが好ましい。酸化皮膜の厚さが20Å未満とな
った場合にはリン酸亜鉛などのリン酸処理におけるリン
酸塩皮膜の付着性が低下する。また、一方、Al酸化皮膜
の厚さが150 Åを越えた場合には、却ってリン酸塩処理
時にAl酸化皮膜が溶解 (エッチング) しにくくなり、Al
生地の溶解も促進されず、リン酸皮膜の付着性が低下す
る。このリン酸皮膜の付着性が低下すると、皮膜の付着
量が低下し、塗装後の耐糸さび性を低下させる。なお、
Al合金材表面のAl酸化皮膜の膜厚は、X線光電子分光法
(XPS) により、比較的簡単に、かつ精度良く測定するこ
とができる。
【0070】(適用Al合金)次に、本発明Al合金材に適用
するAl合金を説明する。本発明に適用するAl合金は、前
記した通り、常法の圧延や押出工程と熱処理条件により
製造した場合に、Al合金展伸材表面のゼータ電位が、必
然的に、リン酸チタン表面のゼータ電位と比較的近くな
り、リン酸チタンが付着しにくく、リン酸塩処理性が比
較的低い6000系 (Al-Mg-Si系)Al 合金とする。
【0071】但し、6000系 (Al-Mg-Si系)Al 合金の中で
も、特に、前記自動車車体のパネル材、フレーム材、メ
ンバー材などとして要求される、プレス成形性や曲げ加
工性、或いは、塗装焼付後に150N/mm2以上、好ましくは
200N/mm2以上の耐力となる人工時効硬化性に優れること
が好ましい。
【0072】この特性を満足するための、Al-Mg-Si系Al
合金としての、好ましい化学成分組成は、基本的にSi:
0.6〜1.5% (質量% 、以下同じ) 、Mg:0.2〜1.0%を含有
する6000系Al合金である (請求項6 に対応) 。この化学
成分組成と前記特性を満足する6000系Al合金としては、
6016、6111、6022、6061、6N01等のT4、T6調質材が例示
される。
【0073】しかし、これらの6000系Al合金の各成分規
格通りにならずとも、前記基本的な特性を有してさえい
れば、更なる特性の向上や他の特性を付加するための、
適宜成分組成の変更は許容される。この点、上記元素の
成分範囲の変更や、より具体的な用途および要求特性に
応じて、その他、Fe、Ni、V 、Mn、Cr、Zr、Sc、Agなど
の他の元素を特性を阻害しない範囲や量、或いは規格量
以下含むことは適宜許容される。
【0074】(Al合金材の製造方法)本発明におけるAl合
金材自体は常法により製造が可能である。例えば、前記
Al合金成分範囲内に溶解調整されたAl合金溶湯を、例え
ば、連続鋳造圧延法、半連続鋳造法(DC鋳造法)等の通
常の溶解鋳造法を適宜選択して鋳造する。次いで、この
Al合金鋳塊に均質化熱処理を施した後、熱間圧延および
冷間圧延 (必要により中間焼鈍) 、または押出、或いは
鍛造などの塑性加工方法により、板材、形形材、線棒な
ど、所望Al合金材の形状に塑性加工される。そして、塑
性加工された圧延材あるいは押出材は、圧延あるいは押
出ままか、必要によりT4 (溶体化処理および焼入れ処理
後自然時効硬化) 、T6 (溶体化処理および焼入れ処理後
人工時効硬化処理) 、T7 (溶体化処理および焼入れ処理
後過剰時効硬化処理) などの調質処理が行われ、前記し
た所望の機械的性質とされる。
【0075】
【実施例】(実施例1)次に、本発明の実施例を説明す
る。表1 に示す6000系Al合金組成の鋳塊をDC鋳造法によ
り溶製後、470 ℃×8 時間の範囲で均質化熱処理を施
し、厚さ2.5mm まで熱間圧延した。次に厚さ1.0mm まで
冷間圧延し、その後、硝石炉を用いて560℃で溶体化処
理後直ちに水冷して焼入れ処理を行うT4調質処理を行
い、Al合金圧延板を作成した。
【0076】更に、この6000系Al合金圧延板より供試材
を採取し、表2 に示す通り、共通して、80℃×60秒間5%
リン酸ナトリウム水溶液に浸漬する処理後、更に、表2
に示す浴温×時間で各水溶液乃至懸濁液に浸漬する処理
を行った。そして、処理後の供試材を続いて、共通して
洗浄および表2 に示す各温度で60秒乾燥後、これも表2
に示すように、防錆油の塗布条件と、その後の放置条件
を変えて、供試材表面の状態 (酸化皮膜の組成など) を
調整して、供試材表面のゼータ電位の制御を行った。
【0077】この制御を行った供試材表面のゼータ電位
を、前記図3(b)で説明した方法により行った。但し、測
定水溶液は10ミリモル/リットル濃度のNaCl水溶液 (pH
9.0、液温20℃) 中にて行い、アルミニウム合金展伸材
表面のゼータ電位の測定は市販ラテックス粒子をモニタ
ー粒子として行った。そして、供試材表面のゼータ電位
とリン酸チタン表面のゼータ電位-60mV との差の絶対値
(ΔE 、mV) を求めた。また、この制御を行った供試材
表面 (酸化皮膜の組成など) をFTIR分析し、表面 (酸化
皮膜) の組成の特徴を定性的に把握した。これらの結果
を表3 に示す。
【0078】なお、これら発明例および比較例の前記洗
浄後の供試材断面について、X 線光電子分光法により、
供試材表面のAl酸化皮膜の厚さを測定した結果、いずれ
も、酸化皮膜の厚さは20〜150 Åの範囲であった。
【0079】次に、これら供試材を、リン酸チタンを0.
1%含むコロイド分散液に、室温で20秒間浸漬する処理を
行い、供試材表面にリン酸チタンを吸着被覆した。次い
で、フリーフッ素を150ppm含むリン酸亜鉛浴 (リン酸亜
鉛0.1%、43℃) に2 分間浸漬するリン酸亜鉛処理を、各
例とも同じ条件で行った。そして、各々の供試材へのリ
ン酸チタンの付着量をリン酸チタン処理後、リン酸亜鉛
の被覆率をリン酸亜鉛処理後に測定した。これらの結果
を表3 に示す。
【0080】なお、供試材表面のリン酸チタンの付着量
の測定は、XPS (X線光電子分光法)により行った。但
し、リン酸チタンの化学式はNa4TiO (PO4)・7H2Oである
が、本発明で扱う低濃度レベルでは、XPS でもTiは検出
限界であるので、測定可能なNaの濃度を測定し、リン酸
チタンの付着量とした。
【0081】また、供試材表面のリン酸亜鉛の被覆率の
測定は、1000倍のSEM 観察により、各々の供試材表面の
単位面積 (200 μm ×200 μm=0.04mm2)当たりの、リン
酸亜鉛結晶が被覆している供試材表面の面積率 (被覆
率) を求める方法により行った。但し、表3 には、比較
例No.7の被覆率を1.0 とした場合の比で、リン酸亜鉛の
被覆率を示している。
【0082】そして、更にこのリン酸亜鉛皮膜を設けた
供試材に、カチオン電着塗装およびスプレー塗装により
2 コート2 ベークの塗装皮膜を設け、これら塗膜を設け
た供試材に対し、耐糸さび性評価試験を行った。これら
の結果も表3 に示す。なお、2 コート2 ベークの塗装皮
膜は、中塗り塗装として、30μm 厚さのポリエステルメ
ラミン系塗装皮膜を設けて、140 ℃×20分の焼き付けを
行い、更に上塗り塗装として、30μm 厚さのポリエステ
ルメラミン系塗装皮膜を設けて、180 ℃×20分の焼き付
けを行った。
【0083】また、耐糸さび性評価試験は、塗装試験片
に一片が7cm のクロスカットを施した後、35℃の3%HCl
水溶液に2 分間浸漬した後、40℃、85RHの恒温恒湿の雰
囲気に1500時間放置し、その後発生した糸さびの最大長
さL(クロスカットより垂直方向の距離) を測定した。耐
糸さび性評価は、表3 の比較例No.11 のAl合金塗装試験
片に発生した糸さびの最大長さL を1 とし、これとの比
較で、◎:L≦0.1 、○:0.1<L ≦0.5 、△:0.5<L <1
、×:L≧1 と評価した。なお、この耐糸さび性評価試
験は、例えば5%NaCl溶液などに浸漬して同様の条件で試
験を行うような他の耐糸さび性評価試験に比して、HCl
水溶液に浸漬しているなどの点で、より厳しい試験条件
となっている。
【0084】因みに、表1 の6000系Al合金材は、塗装焼
付後に150N/mm2以上の耐力を有していた。
【0085】表3 から明らかな通り、Al合金材 (供試
材) 表面のゼータ電位が、リン酸チタン表面のゼータ電
位-60mV に対し、絶対値で30mV以上の差がつくように、
酸化皮膜を調整した発明例No.1〜6 は、リン酸チタンの
付着量が20at% 以上で、この結果、リン酸亜鉛の被覆率
比が1.2 以上 (比較例No.7を1.0 とした場合) で、か
つ、塗装後の耐糸錆性が顕著に優れている。そして、こ
の結果は塗装されたAl合金材が耐食性および外観性に優
れていることを示している。
【0086】これは、発明例No.1〜6 が、ゼータ電位調
節処理後の乾燥を低温で行う、あるいは防錆油を塗布し
て放置する等の酸化抑制の処置を含め、酸化皮膜組成
を、OH基が少ない組成、水酸化鉄(FeOOH) やNi(OH)2
生成させた組成、Al2O3 やMg(OH)2 の微粒子を付着させ
た組成としたことにより、Al合金材 (供試材) 表面のゼ
ータ電位が、リン酸チタン表面のゼータ電位-60mV に対
し、絶対値で30mV以上の差がついた結果である。
【0087】一方、これに対し、比較例No.7、8 、9 、
10、11、12は、酸化皮膜組成を、水酸化鉄(FeOOH) やNi
(OH)2 を生成させた組成、Al2O3 の微粒子を付着させた
組成とするなど、酸化皮膜を調整しても、Al合金材 (供
試材) 表面のゼータ電位が、リン酸チタン表面のゼータ
電位-60mV に対し、絶対値で30mV以上の差がついていな
い。また、ゼータ電位調節処理後の乾燥を高温で行う、
あるいは防錆油を塗布しないで長時間(2ヵ月) 放置する
等、酸化抑制の処置がされていないために、酸化皮膜組
成も、OH基が多い組成となっている。このために、Al合
金材 (供試材)表面のゼータ電位が、リン酸チタン表面
のゼータ電位-60mV に対し、絶対値で30mV以上の差がつ
いていない。この結果、発明例に比して、リン酸チタン
の付着量が19at% 以下と少なく、リン酸亜鉛の被覆率比
も1.0 以下と低い。そして、塗装後の耐糸錆性が発明例
と比較しても劣っている。
【0088】なお、防錆油を塗布しない2 カ月間の室温
での放置では、水酸基を有する水酸化Alの他に、結合水
を有するAlの酸化物、Mgの酸化物 (MgO)、AlとMgの複合
酸化物 (MgAl2O4)等の、リン酸チタンのゼータ電位に近
いマイナスの値となる酸化物や水酸化物が酸化皮膜中に
生成増加しているものと推考される。
【0089】そして、これら実施例の結果から、本発明
における、特に6000系Al合金材表面の、リン酸チタン処
理性やリン酸塩処理性および塗装後の耐糸さび性向上の
観点からの、ゼータ電位特定の臨界的的な意義が裏付け
られる。また、更に、本発明のAl合金材が特に自動車な
どの輸送機用材として好適に用いることができることが
分かる。
【0090】
【表1】
【0091】
【表2】
【0092】
【表3】
【0093】
【発明の効果】本発明によれば、リン酸塩処理に先立っ
て行われる、リン酸チタンのコロイド分散液による処理
におけるリン酸チタンのAl合金材表面への吸着付着量を
増加させて、Al合金材を鋼材と同じ条件で表面にリン酸
亜鉛処理および塗装処理を施す場合でも、続くリン酸塩
処理におけるリン酸塩皮膜のAl合金材表面への付着量と
つきまわり性を向上させ、最終的に塗装されて使用され
るAl合金材の、耐糸さび性を向上させることが可能とな
る。したがって、Al合金材の自動車、車両、船舶などの
輸送機材用への用途の拡大を図ることができる点で、多
大な工業的な価値を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】リン酸チタンの分散液中の6016Al合金板と、比
較のための5052Al合金板の表面のゼータ電位を示す説明
図である。
【図2】Al合金板の表面のゼータ電位測定装置を示す説
明図である。
【符号の説明】
1:セル、2: 流路、3:導入口、4:導出口、5:白金電極、
6:伝熱シート、7:恒温ブロック、8:押さえネジ、X:金属
板、B:モニター粒子、C:水溶液、
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 柳澤 佳寿美 神戸市西区高塚台1丁目5番5号 株式会 社神戸製鋼所神戸総合技術研究所内 Fターム(参考) 4K026 AA09 AA22 BA04 BB01 BB07 BB08 CA16 CA24 DA01 EA11

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 リン酸塩処理および塗装処理される前
    に、リン酸チタンのコロイド分散液により処理されて、
    表面にリン酸チタンが吸着被覆されるAl-Mg-Si系アルミ
    ニウム合金展伸材であって、前記リン酸チタン表面と前
    記アルミニウム合金展伸材表面との、下記条件で測定し
    たゼータ電位の差の絶対値が30mV以上であるように、予
    め表面が調整されていることを特徴とする耐糸さび性に
    優れたアルミニウム合金展伸材。但し、リン酸チタン表
    面およびアルミニウム合金展伸材表面のゼータ電位の測
    定は、10mMol/dm3 濃度のNaCl水溶液 (pH8.5 〜10.0、
    液温20℃) 中にて行い、アルミニウム合金展伸材表面の
    ゼータ電位の測定は市販ラテックス粒子をモニター粒子
    として行う。
  2. 【請求項2】 前記ゼータ電位の差の絶対値が40mV以上
    である請求項1に記載の耐糸さび性に優れたアルミニウ
    ム合金展伸材。
  3. 【請求項3】 前記アルミニウム合金展伸材表面のゼー
    タ電位をプラス側に上げるような粒子を、前記アルミニ
    ウム合金展伸材表面に、予め付着した請求項1または2
    に記載の耐糸さび性に優れたアルミニウム合金展伸材。
  4. 【請求項4】 前記粒子が、Ni、Fe、Mn、Co、Cdから選
    択される一種または二種以上の金属水酸化物、および/
    または、Ni、Co、Cd、Beから選択される一種または二種
    以上の金属酸化物である請求項1乃至3のいずれか1項
    に記載の耐糸さび性に優れたアルミニウム合金展伸材。
  5. 【請求項5】 前記アルミニウム合金展伸材表面の酸化
    皮膜のゼータ電位が、前記リン酸チタン表面のゼータ電
    位との差の絶対値が30mV以上高くなるように調整されて
    いる請求項1乃至4のいずれか1項に記載の耐糸さび性
    に優れたアルミニウム合金展伸材。
  6. 【請求項6】 前記Al-Mg-Si系アルミニウム合金展伸材
    が、Si:0.6〜1.5% (質量% 、以下同じ) 、Mg:0.2〜1.0%
    を含む、JIS 6000系Al合金である請求項1乃至5のいず
    れか1項に記載の耐糸さび性に優れたアルミニウム合金
    展伸材。
  7. 【請求項7】 前記アルミニウム合金展伸材が、鋼材と
    ともに同一のラインでリン酸塩処理された後に塗装され
    る請求項1乃至6のいずれか1項に記載の耐糸さび性に
    優れたアルミニウム合金展伸材。
  8. 【請求項8】 前記アルミニウム合金展伸材が自動車材
    用である請求項1乃至7の何れか1項に記載の耐糸さび
    性に優れたアルミニウム合金展伸材。
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