JP2001355045A - 耐摩耗性に優れたレール - Google Patents
耐摩耗性に優れたレールInfo
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Abstract
イト粒径をある一定値以下に制御し、更にレール鋼の炭
素量を増加させることにより、摩耗面のフェライト粒径
の微細化を促進させ、耐摩耗性の向上を図り、レールの
高寿命化を達成する。 【解決手段】 鋼レールの頭部表面が1mm以上摩耗し
たときの摩耗面の少なくとも一部が、セメンタイトもし
くは炭化物を含む微細フェライト組織を呈し、かつ前記
微細フェライト組織の任意断面における平均フェライト
粒径が400nm以下であることを特徴とする耐摩耗性
に優れたレール。
Description
ルに要求される耐摩耗性を向上させたレールに関するも
のである。
率化の手段として、列車速度の向上や列車積載質量の増
加が図られている。このような鉄道輸送の効率化はレー
ル使用環境の過酷化を意味し、レール材質の一層の改善
が要求されるに至っている。具体的には、曲線区間に敷
設されたレールでは、G.C.(ゲージ・コーナー)部
や頭側部の摩耗が急激に増加し、レールの使用寿命の点
で問題視されるようになった。
の進歩により、共析炭素鋼を用いた微細パーライト組織
を呈した下記に示すような高強度(高硬度)レールが発
明され、重荷重鉄道の曲線区間のレール寿命を飛躍的に
改善してきた。 頭部がソルバイト組織、または、微細なパーライト
組織の超大荷重用の熱処理レール(特公昭54−254
90号公報)。 圧延終了後あるいは、再加熱したレール頭部をオー
ステナイト域温度から850〜500℃間を1〜4℃/s
ecで加速冷却する、130kgf/mm2 以上の高強度レール
の製造法(特公昭63−23244号公報)。これらの
レールの特徴は、共析炭素含有鋼(炭素量:0.7〜
0.8%)による微細パーライト組織を呈する高強度レ
ールであり、その目的は、パーライト組織中のラメラ間
隔を微細化し、レール頭部の硬さを向上させることによ
り耐摩耗性を向上させるところにあった。
荷重鉄道では、より一層の鉄道輸送の高効率化のため
に、貨物の高積載化を強力に進めており、特に急曲線区
間では、レール頭部の硬さを向上させた上記開発のパー
ライト組織のレールを使用しても、G.C.部や頭側部
の耐摩耗性が十分に確保できず、摩耗によるレール寿命
の低下が問題となってきた。
の非常に厳しい実軌道において、レールの摩耗特性を調
査した結果、レール頭部の耐摩耗性は敷設前のレール頭
部の硬さのみでは十分に評価できず、敷設前の頭部硬さ
が高いレールにおいても、レール鋼の成分系の違い等に
よっては摩耗が促進され、耐摩耗性が低下することが明
らかとなった。
おいて、レール鋼の摩耗特性を決定付けている因子を明
らかにし、レール耐摩耗性を向上させることが新たな課
題となっていた。すなわち本発明は、重荷重鉄道のレー
ルに要求される耐摩耗性を向上させることを目的とした
レールを提供するものである。
するものであって、その要旨とするところは次の通りで
ある。 (1) 鋼レールの頭部表面が1mm以上摩耗したとき
の摩耗面の少なくとも一部が、セメンタイトもしくは炭
化物を含む微細フェライト組織を呈し、かつ前記微細フ
ェライト組織の任意断面における平均フェライト粒径が
400nm以下であることを特徴とする耐摩耗性に優れ
たレール。 (2) 上記レールは、質量%でさらに、C:0.85
超〜2.00%を含有させることができる。 (3) また上記(1)、(2)のレールには、質量%
でさらに、下記〜の成分を選択的に含有させること
ができる。 Si:0.10〜3.00%、 Mn:0.10
〜3.00%の1種または2種、 Cr:0.05〜3.00%、 Mo:0.01
〜1.00%の1種または2種、 V :0.01〜0.50%、 Nb:0.00
2〜0.050%の1種または2種、 B :0.0001〜0.2000%、 Co:
0.10〜2.00%、 Cu:0.05〜1.00
%の1種または2種、 Ni:0.05〜2.00%。 Ti:0.0050〜0.0500%、Mg:0.
0010〜0.0300%、Ca:0.0010〜0.
0150%の1種または2種以上 を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる。
する。本発明者らは、敷設環境の厳しい重荷重鉄道の実
軌道において、レール鋼の摩耗特性を支配している因子
を調査した。その結果、レール頭部の耐摩耗性は、摩耗
量がまだ小さい状態(最大摩耗量1mm未満の初期摩耗
状態)においては、敷設前のレール頭部の硬さとよい相
関があるものの、摩耗量がさらに増加すると、敷設前の
レール頭部の硬さとの相関が少なくなることを確認し
た。
支配している因子を明らかにするため、まず長期間上記
のような実軌道で使用され、十分に摩耗したレール頭部
の摩耗面の微視組織を観察した。その結果、レール頭部
の摩耗面では摩耗する前のレールの組織形態は全く存在
せず、微細に破砕された硬質の炭化物やセメンタイト組
織と微細なフェライト組織(粒)からなる組織形態であ
ることを確認した。
ルの摩耗の関係を調査した。その結果、レール頭部の摩
耗面のフェライト粒径と摩耗量には直線的な相関があ
り、摩耗面のフェライト粒径の小さいレールは摩耗量が
少なく、レールの耐摩耗性はレール頭部の摩耗面のフェ
ライト粒径の微細化によって向上することを見出した。
るために必要なレール頭部の摩耗面のフェライト粒径を
確認した。その結果、重荷重鉄道の実軌道において、レ
ールの耐摩耗性を確保するには、ある一定値以下の平均
的なフェライト粒径の微細化が必要であり、摩耗面の平
均フェライト粒径がこの値以下になると耐摩耗性が著し
く向上することを発見した。
フェライト粒径の微細化を促進させている因子を実験に
より解析した。その結果、レール頭部の摩耗面のフェラ
イト粒径は、敷設する前のレール組織中の硬質な炭化物
やセメンタイト組織の密度、すなわちレール鋼の炭素量
とよい相関があり、鋼の炭素量を増加することにより、
レール頭部の摩耗面のフェライト粒径の微細化が促進
し、より一層耐摩耗性が向上することを見出した。
ール鋼の摩耗面の平均的なフェライト粒径がある一定値
以下になるとレールの耐摩耗性が向上し、さらに、レー
ル鋼の炭素量を増加することにより、摩耗面のフェライ
ト粒径の微細化が促進され、より一層耐摩耗性が向上す
ることを知見した。
明する。 (1)摩耗面における平均フェライト粒径測定時のレー
ル頭部表面の摩耗量の規定:まず、摩耗面における平均
フェライト粒径測定時のレール頭部表面の摩耗量を1m
m以上に規定した理由を説明する。レール頭部表面の摩
耗量の最大値が1mm未満では初期摩耗の状態であり、
摩耗面のフェライト粒の微細化が十分に進行しておら
ず、最終的なレールの摩耗寿命を決定づける平均フェラ
イト粒径が測定できないからである。
レールの頭部断面表面位置での呼称を示す。レール頭部
において1は頭頂部、2は頭部コーナー部であり、頭部
コーナー部2の一方は車輪と主に接触するゲージコーナ
ー(G.C.)部である。請求項において、レールの摩
耗量は、図1に示すレール頭部断面において、頭頂部お
よび頭部コーナー部のレール外郭表面に対して法線方向
の摩耗減量(摩耗深さ)を示すものである。
値の規定:次に、摩耗面の平均フェライト粒径を400
nm以下に限定した理由について説明する。摩耗面の平
均フェライト粒径が400nmを超えると、ころがり面
の摩耗現象(塑性変形や凝着現象に伴うせん断剥離)に
対する抵抗性が低下し、敷設環境の厳しい重荷重鉄道に
おいて、耐摩耗性を向上させることが困難になるためで
ある。
0nm以下であれば、耐摩耗性がさらに安定し、より望
ましい。摩耗面の平均フェライト粒径については下限値
を特に規定しないが、レール頭部表面に表面損傷を誘発
する過剰な塑性変形領域が生成せず、フェライト粒の微
細化のみが安定的に進展した場合には、摩耗面の平均フ
ェライト粒径の最小値は事実上30nmが下限となる。
なお、レール頭部の摩耗面の平均フェライト粒径を限定
している部分は、図1の斜線部で示す頭頂部1、頭部コ
ーナー部2のレール外郭表面から深さ100μmの範囲
である。
は、図1の斜線部で示す頭頂部1、頭部コーナー部2の
レール外郭表面直下の100μmの範囲から、薄膜を採
取し、X線および電子線回折法により測定することがで
きる。X線回折によるフェライト粒径の測定方法として
は、 W.H.Hall らが Acta.Metall.,No.1,P22(1953)で示
しているホールの方法が最も簡便で有効である。また、
電子線回折によるフェライト粒径の測定方法としては、
透過電子顕微鏡を用いて制限視野回折を行う。さらに、
フェライトの回折スポットを用いて結像させて、暗視野
像で明るいコントラストを呈している部分の粒径を測定
し、その平均値を取ることが望ましい。
む微細なフェライト組織の透過電子顕微鏡組織の一例を
示す。図2の(a)は明視野像である。微細な黒いヒゲ
状の部分は、炭化物またはセメンタイト組織である。ま
た白または黒ずんだ部分は、微細なフェライト粒の集合
体である。図2の(b)は明視野像(a)と同一視野に
おいて制限視野回折を行い、フェライトの回折スポット
を用いて結像させた暗視野像の模式図である。白抜きで
示した部分はフェライト粒である。
しては、図2(b)に示すように長径と短径の平均値を
用い、また平均フェライト粒径は、暗視野中のフェライ
ト粒一つ一つについて長径と短径の値から粒径を算定
し、その平均値を算出したものである。なお、いずれの
回折方法においても、ころがり面直下において限られた
領域のフェライト粒径の測定を行うため、測定値に大き
なばらつきが発生しやすい。そこで、正確にフェライト
粒径を測定するには、ころがり面になるべく近い部位を
10視野以上観察し、その平均的な値を代表値とするこ
とが望ましい。
においてレールの化学成分を上記のように限定した理由
について説明する。成分含有量は質量%である。Cは、
炭化物形成元素であり、従来のレール鋼では、0.60
〜0.85%が添加されている。しかし、C量が0.8
5%以下では、金属組織中の硬質な炭化物やセメンタイ
トの密度の確保が困難となり、摩耗面のフェライト粒径
の微細化が図れず、耐摩耗性を十分に確保することがで
きない。また、2.00%を超えると、金属組織中の硬
質な炭化物やセメンタイト相の密度が著しく増加し、金
属組織の延性が低下し、レール頭表面にスポーリング等
の表面剥離損傷が多く発生するため、C量を0.85超
〜2.00%に限定した。
は、摩耗面での基地組織の強化、炭化物やセメンタイト
の強化や炭化物密度の増加によるフェライト粒径微細
化、溶接部熱影響部の軟化や脆化を防止する目的で、S
i,Mn,Cr,Mo,V,Nb,B,Co,Cu,N
i,Ti,Mg,Caの元素を必要に応じて添加する。
織の強度を確保し、硬質な炭化物やセメンタイト相が分
散した基地組織の強度を確保するにより耐摩耗性の向上
を図る。Cr,Moは焼入れ性を高め、基地フェライト
組織を強化し、さらに、セメンタイトの強化や炭化物密
度の増加を図り、摩耗面のフェライト粒の微細化促進に
より耐摩耗性の向上を図る。V,Nbは独自の炭化物を
形成し、摩耗面のフェライト粒の微細化促進により耐摩
耗性の向上を図る。また、レール溶接熱時の熱影響部の
軟化抵抗を高めることが主な添加目的である。
タイトの生成を促進させ、摩耗面のフェライト粒の微細
化促進により耐摩耗性の向上を図る。Co,Cuは、主
に基地フェライト組織の固溶強化により耐摩耗性の向上
を図る。Niは、主に基地フェライト組織の固溶強化に
より耐摩耗性の向上を図り、またレール溶接熱時の熱影
響部の軟化抵抗を高める。Ti,Mg,Caは、レール
溶接熱時にオーステナイト域まで加熱される熱影響部の
組織を微細化し、溶接継ぎ手部の脆化を防止することが
主な添加目的である。それらの成分の個々について、以
下に詳細に説明する。
また固溶強化により基地フェライト組織の硬さを高め、
硬質な炭化物やセメンタイト相が分散した基地組織の強
度を確保する元素であるが、0.10%未満ではその効
果が期待できず、レール頭表面に塑性変形起因のフレー
キング損傷が多く発生し易くなる。また、3.00%を
超えると、レールの延性や靭性が劣化し、レール頭表面
にスポーリング等の表面剥離損傷が多く発生すること
や、レール熱間圧延時に表面疵が発生しやすくなるた
め、Si量を0.10〜3.00%に限定した。
ライト組織の硬さを高め、硬質な炭化物やセメンタイト
相が分散した基地組織の強度を確保するのに不可欠な元
素である。さらに、セメンタイトに固溶し、セメnンタ
イト自体を強化し、摩耗面でのフェライト粒の微細化を
促進する元素であるが、0.10%未満ではこれらの効
果が少なく、レール頭表面に塑性変形起因のフレーキン
グ損傷が多く発生し易くなる。さらに、セメンタイトの
強化が不足し、フェライト粒の微細化が図れず、耐摩耗
性の向上が困難となる。また3.00%を超えると、セ
メンタイトの強化が過剰となり、レール頭表面にスポー
リング等の表面剥離損傷が多く発生するため、Mn量を
0.10〜3.00%に限定した。
組織を強化し、さらに独自の炭化物を形成し、その一部
がセメンタイトに固溶し、セメンタイト自身を強化する
ことにより、摩耗面でのフェライト粒の微細化を促進す
る元素であるが、0.05%未満ではその効果が少な
く、炭化物量の減少やセメンタイトの強化不足により、
フェライト粒の微細化が図れず、耐摩耗性の向上が困難
となる。また3.00%を超えると、炭化物密度が上昇
し、さらにセメンタイトの強化が過剰となり、レール頭
表面にスポーリング等の表面剥離損傷が多く発生するた
め、Cr量を0.05〜3.00%に限定した。
地フェライト組織を強化し、さらに独自の炭化物を形成
し、炭化物密度の増加により摩耗面のフェライト粒の微
細化を促進する元素であるが、0.01%未満ではその
効果が少なく、炭化物量が減少してフェライト粒の微細
化が促進せず、耐摩耗性の向上が困難となる。また1.
00%を超えると炭化物密度が上昇し、レール頭表面に
スポーリング等の表面剥離損傷が多く発生するため、M
o量を0.01〜1.00%に限定した。
の増加により摩耗面のフェライト粒の微細化を図る元素
である。さらに、レール溶接熱影響部では、焼戻し時に
V炭化物が生成し、析出強化により軟化を防止する元素
であるが、0.01%未満ではその効果が十分に期待で
きず、フェライト粒の微細化による耐摩耗性の向上が困
難となり、溶接熱影響部の軟化も抑制できない。また
0.50%を超えて添加してもそれ以上の効果が期待で
きず、鋼のコスト増加を招くことから、V量を0.01
〜0.50%に限定した。
し、炭化物密度の増加により摩耗面のフェライト粒の微
細化を図る元素である。さらに、レール溶接熱影響部で
は、焼戻し時にNb炭化物が生成し、析出強化により軟
化を防止する元素であるが、その効果は0.002%未
満では期待できず、フェライト粒の微細化による耐摩耗
性の向上が困難となり、溶接熱影響部の軟化が抑制でき
ない。また0.050%を超える過剰な添加を行うと、
Nbの金属間化合物や粗大析出物が生成して靭性を低下
させることや、それ以上の効果が期待できず、鋼のコス
ト増加を招くことから、Nb量を0.002〜0.05
0%に限定した。
タイトの核生成サイトとして作用し、セメンタイトの生
成を促進させ、炭化物密度の増加により、摩耗面のフェ
ライト粒の微細化を図る元素である。しかし、0.00
01%未満ではその効果は弱く、また0.2000%を
超えて添加すると粗大な鉄炭ほう化物が生成し、レール
の延性や靭性を劣化させるため、B量を0.0001〜
0.2000%に限定した。
織の硬さを高め、耐摩耗性を向上させる元素であるが、
0.10%未満ではその効果が期待できず、また2.0
0%を超える過剰な添加を行ってもその効果が飽和域に
達してしまうため、Co量を0.10〜2.00%に限
定した。
フェライト組織の硬さを高め、耐摩耗性を向上させる元
素であるが、その効果は0.05%未満では期待でき
ず、また1.00%を超えると赤熱脆化を生じることか
ら、Cu量を0.05〜1.00%に限定した。
フェライト組織の硬さを高め、耐摩耗性を向上させる元
素である。さらに、溶接熱影響部においては、Tiと複
合でNi3 Tiの金属間化合物が微細に析出し、析出強
化により軟化を抑制する元素であるが、0.05%未満
ではその効果が著しく小さく、また2.00%を超える
添加を行ってもその効果が飽和してしまうため、Ni量
を0.05〜2.00%に限定した。
Ti炭化物、Ti窒化物が溶解しないことを利用して、
オーステナイト域まで加熱される熱影響部の組織の微細
化を図り、溶接継ぎ手部の脆化を防止するのに有効な成
分である。しかし0.0050%未満ではその効果が少
なく、0.0500%を超えて添加すると粗大なTi炭
化物、Ti窒化物が生成して、レール使用中の疲労損傷
の起点となり、き裂を発生させるため、Ti量を0.0
050〜0.050%に限定した。
微細な酸化物を形成し、レール溶接熱時にオーステナイ
ト域まで加熱される熱影響部の組織を微細化し、溶接継
ぎ手部の脆化を防止するのに有効な成分である。しかし
0.0010%未満ではその効果は弱く、0.0300
%を超えて添加するとMgの粗大酸化物が生成して、レ
ール延性や靭性を劣化させるため、Mg量を0.001
0〜0.0300%に限定した。
等と結合して微細な酸化物を形成し、レール溶接熱時に
オーステナイト域まで加熱される熱影響部の組織を微細
化し、溶接継ぎ手部の脆化を防止するのに有効な成分で
ある。しかし0.0010%未満ではその効果は弱く、
0.0150%を超えて添加すると、Caの粗大酸化物
が生成してレール延性や靭性を劣化させるため、Ca量
を0.0010〜0.0150%に限定した。
鋼は、転炉、電気炉などの通常使用される溶解炉で溶製
を行い、この溶鋼を造塊・分塊法あるいは連続鋳造法、
さらに熱間圧延を経てレールとして製造される。次に、
この熱間圧延した高温度の熱を保有するレール、あるい
は熱処理する目的で高温に再加熱されたレールに、焼入
れ焼戻し、恒温保定、エアーやミストなどによる加速冷
却を施すことにより、レール頭部に所定の金属組織を安
定的に生成させることが可能となる。
しないが、レールとして必要とされる延性を確保し、摩
耗面のフェライト粒の微細化の促進を図るには、炭化物
密度が高い、セメンタイトとフェライトがラメラ構造を
成すパーライト組織、炭化物を多量に含んだ球状化炭化
物組織、ラメラ構造中に炭化物を含んだ球状化パーライ
ト組織、ラス構造中に微細な炭化物が分散した焼戻しマ
ルテンサイト組織であることが望ましい。
は、上記の組織中に粗大なフェライト組織(初析フェラ
イト組織)や粗大なセメンタイト組織(初析セメンタイ
ト組織)が微量に生成することがある。しかし、これら
の組織が微量に生成してもレールの耐摩耗性、延性、靱
性、および強度に大きな影響を及ぼさないため、本レー
ルの組織としては若干の初析フェライト組織および初析
セメンタイト組織の混在も含んでいる。
1に本発明レール鋼の化学成分、図3に示すころがり摩
耗疲労損傷試験での最大摩耗量、表面損傷発生の有無、
試験後摩耗面の平均フェライト粒径について示す。ま
た、表2に比較レール鋼の化学成分、図3に示すころが
り摩耗疲労損傷試験での最大摩耗量、表面損傷発生の有
無、試験後摩耗面の平均フェライト粒径について示す。
なお、ころがり摩耗疲労損傷試験での最大摩耗量は、図
1に示すレール頭部断面において、レール外郭表面に対
して法線方向の摩耗減量(摩耗深さ)の最大値を示すも
のである。
号:E)の、ころがり摩耗疲労損傷試験後の摩耗面の透
過電子顕微鏡組織であり、(a)は明視野像、(b)は
暗視野像の模式図である。図5は、表1に示す本発明レ
ール鋼と表2に示す比較レール鋼(符号:M〜O)のこ
ろがり摩耗疲労損傷試験での、最大摩耗量と試験後摩耗
面の平均フェライト粒径の関係を表わしたものである。
図3において、3はレール移動用スライダーであり、こ
の上にレール4が設置される。7はモーター6で回転す
る車輪5の左右の動きおよび荷重を制御する荷重負荷装
置である。試験は左右に移動するレール4上に車輪5が
転動する。
る。 ・本発明レール鋼(12本) 符号A〜L 本発明の化学成分範囲内で、頭部表面を1mm以上摩耗
させた摩耗面の平均フェライト粒径が400nm以下で
あることを特徴とする耐摩耗性に優れたレール。 ・比較レール鋼(7本) 符号M〜O:化学成分が本発明の範囲外の共析炭素含有
鋼によるレール(3本)。 符号P〜S:化学成分が本発明の範囲外の過共析炭素含
有鋼によるレール(4本)。
おりとした。 試験機:転動疲労試験機 試験片形状 レール:136ポンドレール×2m 車 輪:AARタイプ(直径920mm) 荷重条件(重荷重鉄道再現) ラジアル荷重:196000N(20トン) スラスト荷重: 9800N( 1トン) 潤滑条件 ドライ 繰り返し数 1000万回または表面損傷発生まで。 摩耗量 図1に示すレール頭部断面において、レール外郭表面に
対して法線方向の摩耗減量(摩耗深さ)を測定。
ール鋼は比較レール鋼と比べて、レール鋼の摩耗面の平
均的なフェライト粒径をある一定値以下に制御し、さら
に、鋼の炭素量を増加させることにより、図5に示すよ
うに摩耗量が減少し、比較レール鋼と比べて耐摩耗性を
向上させることができた。
道において耐摩耗性に優れたレールを提供することがで
きる。
平均フェライト粒径測定位置を示した図。
組織の透過電子顕微鏡組織の一例を示した図であり、
(a)は明視野像、(b)は暗視野像の模式図。
労損傷試験後の、摩耗面の透過電子顕微鏡組織を示した
図であり、(a)は明視野像、(b)は暗視野像の模式
図。
O)のころがり摩耗疲労損傷試験での、最大摩耗量と試
験後摩耗面の平均フェライト粒径の関係を示した図。
Claims (9)
- 【請求項1】 鋼レールの頭部表面が1mm以上摩耗し
たときの摩耗面の少なくとも一部が、セメンタイトもし
くは炭化物を含む微細フェライト組織を呈し、かつ前記
微細フェライト組織の任意断面における平均フェライト
粒径が400nm以下であることを特徴とする耐摩耗性
に優れたレール。 - 【請求項2】 質量%で、 C :0.85超〜2.00% を含有する鋼レールの頭部表面が1mm以上摩耗したと
きの摩耗面の少なくとも一部が、セメンタイトもしくは
炭化物を含む微細フェライト組織を呈し、かつ前記微細
フェライト組織の任意断面における平均フェライト粒径
が400nm以下であることを特徴とする耐摩耗性に優
れたレール。 - 【請求項3】 質量%で、 C :0.85超〜2.00% および、 Si:0.10〜3.00%、 Mn:0.10〜3.00% の1種または2種を含有し、残部Feおよび不可避的不
純物からなる鋼レールの頭部表面が1mm以上摩耗した
ときの摩耗面の少なくとも一部が、セメンタイトもしく
は炭化物を含む微細フェライト組織を呈し、かつ前記微
細フェライト組織の任意断面における平均フェライト粒
径が400nm以下であることを特徴とする耐摩耗性に
優れたレール。 - 【請求項4】 質量%で、さらに、 Cr:0.05〜3.00%、 Mo:0.01〜1.00% の1種または2種を含有することを特徴とする請求項3
記載の耐摩耗性に優れたレール。 - 【請求項5】 質量%で、さらに、 V :0.01〜0.50%、 Nb:0.002〜0.050% の1種または2種を含有することを特徴とする請求項3
または4記載の耐摩耗性に優れたレール。 - 【請求項6】 質量%で、さらに、 B :0.0001〜0.2000% を含有することを特徴とする請求項3ないし5のいずれ
か1項に記載の耐摩耗性に優れたレール。 - 【請求項7】 質量%で、さらに、 Co:0.10〜2.00%、 Cu:0.05〜1.00% の1種または2種を含有することを特徴とする請求項3
ないし6のいずれか1項に記載の耐摩耗性に優れたレー
ル。 - 【請求項8】 質量%で、さらに、 Ni:0.05〜2.00% を含有することを特徴とする請求項3ないし7のいずれ
か1項に記載の耐摩耗性に優れたレール。 - 【請求項9】 質量%で、さらに、 Ti:0.0050〜0.0500%、 Mg:0.0010〜0.0300%、 Ca:0.0010〜0.0150% の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求
項3ないし8のいずれか1項に記載の耐摩耗性に優れた
レール。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2000175906A JP2001355045A (ja) | 2000-06-12 | 2000-06-12 | 耐摩耗性に優れたレール |
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JPWO2006057430A1 (ja) * | 2004-11-24 | 2008-06-05 | 独立行政法人物質・材料研究機構 | 高強度成形品の製造方法及びそれにより得られる高強度成形品及び高強度小ねじ |
CN113088809A (zh) * | 2021-02-26 | 2021-07-09 | 舞阳钢铁有限责任公司 | 一种btw耐磨钢钢板及其生产方法 |
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- 2000-06-12 JP JP2000175906A patent/JP2001355045A/ja active Pending
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JP5146869B2 (ja) * | 2004-11-24 | 2013-02-20 | 独立行政法人物質・材料研究機構 | 高強度成形品の製造方法及びそれにより得られる高強度成形品及び高強度小ねじ |
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