JP2001354557A - トラニラストまたはその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する安定な水溶液製剤 - Google Patents

トラニラストまたはその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する安定な水溶液製剤

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 トラニラストまたはその薬理学的に許容され
る塩を有効成分として含有する安定な水溶液製剤を提供
する。 【解決手段】 トラニラストまたはその薬理学的に許容
される塩と塩基性物質及びポリビニルピロリドンを含有
する水溶液中にメチルセルロースまたはヒドロキシプロ
ピルメチルセルロースの少なくとも1種を添加すること
によって、ポリビニルピロリドンのみ単独に添加する場
合よりも主剤の析出を防止することができ、また界面活
性剤を使用せずに透明で安定なトラニラスト水溶液製剤
を提供することができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はトラニラストまたは
その薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する
安定な水溶液製剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】トラニラストは肥満細胞、各種炎症細胞
からのケミカルメディエーターの遊離抑制の作用機序を
有し、アレルギー性疾患の治療に用いられている薬物で
ある。しかし、アレルギー性鼻炎、アレルギー性眼疾患
等に使用のための点鼻液や点眼液等などの液剤とする場
合、このトラニラストは極めて水に溶けにくいため困難
であった。そこで、トラニラストに溶解補助剤としてポ
リビニルピロリドン及び必要に応じ塩基性物質を添加す
ることにより得られた、透明な水溶液製剤(特開平1−
294620)が提示されている。しかし、この水溶液
製剤は冷所保管または凍結融解等の物理的刺激を加える
ことで主剤の析出がみられるため、必ずしも満足のでき
るものではなかった。そこでさらに、HLB10〜16
の非イオン性界面活性剤又は両性界面活性剤を含有させ
ることで溶解性を向上させたトラニラスト水溶液(特公
平7−116029)が提示されている。しかし、界面
活性剤は特に点眼剤として使用する場合、角膜への刺激
性が考えられるので、できるだけ少ない方が好ましいと
考えられる。また、ポリビニルピロリドン等の特別な溶
解補助剤を使用せずに、モノエタノールアミン、トロメ
タモール等の有機アミンを配合した水溶液製剤(特開平
11−302162)が提示されているが、これらの有
機アミンの類の中には細胞毒性を有するものがあるた
め、特に点眼剤として使用する場合には問題となる可能
性がある。
【0003】このように水に極めて溶けにくいトラニラ
ストを水溶液製剤として提供することは困難であり、上
述の如くまだ少なく、処方の開発が望まれていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、斯かる実情
に鑑み、トラニラストまたはその薬理学的に許容される
塩を有効成分として含有し、刺激の発現の可能性がある
界面活性剤等を含有していない、より簡便な処方の水溶
液製剤を提供しようとするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らはトラニラス
トの溶液につき鋭意検討したところ、トラニラストまた
はその薬理学的に許容される塩と塩基性物質及びポリビ
ニルピロリドンを含有する水溶液中に、メチルセルロー
スまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースの少なく
とも一種を添加することによって、ポリビニルピロリド
ンのみ単独に添加する場合よりも主剤の析出を防止する
ことができ、また刺激の発現の可能性がある界面活性剤
等を使用せずに透明で安定なトラニラスト水溶液製剤を
提供することができる事を見いだした。
【0006】上記手段によれば、メチルセルロース、も
しくはヒドロキシプロピルメチルセルロースの少なくと
も一種を加えることで、特に点眼剤として使用する場合
角膜への影響が考えられる界面活性剤等も全く加えるこ
となく優れた安定性を有するトラニラスト水溶液製剤を
製造することができる。
【0007】本発明の水溶液製剤はトラニラスト又はそ
の薬理学的に許容される塩を有効成分に、塩基性物質、
ポリビニルピロリドンを必須成分として含有し、さら
に、メチルセルロースもしくはヒドロキシプロピルメチ
ルセルロースの少なくとも一種、を添加することを特徴
とする水溶液製剤である。
【0008】本発明の水溶液製剤に用いられるポリビニ
ルピロリドンとしては、重量平均分子量1〜4万、好ま
しくは約2.5〜4万のものがあげられる。
【0009】使用するポリビニルピロリドンの濃度は、
トラニラストの濃度の4倍以上が好ましく、トラニラス
トの濃度の6倍以上がさらに好ましい。
【0010】メチルセルロースとしては重量平均分子量
1万〜10万、好ましくは約2万のものがあげられる。
【0011】使用するメチルセルロースの濃度は0.0
01〜2%が好ましく、0.005〜0.5%がさらに
好ましい。
【0012】ヒドロキシプロピルメチルセルロースとし
ては重量平均分子量10万〜100万、好ましくは約1
0万のものがあげられる。
【0013】使用するヒドロキシプロピルメチルセルロ
ースの濃度は0.01〜2%が好ましく、0.04〜
0.4%がさらに好ましい。
【0014】クレーム中に記載の界面活性剤とは、医薬
品添加物として一般的に利用される狭義の界面活性剤を
表す。一般的に界面活性剤とは、界面活性物質の中でも
少量で表面又は界面の諸性質を著しく変化させる物質で
あり、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、
両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤があげられる。
【0015】本発明の水溶液のpH調整は塩基性物質ま
たは緩衝剤の添加量を調節することによって行うが、緩
衝剤としての作用も有する塩基性物質の場合、単独に配
合しても他の緩衝剤と複合的に配合してもよい。
【0016】塩基性物質としては、水酸化ナトリウム、
リン酸三ナトリウム、ホウ砂、クエン酸ナトリウムなど
のような塩基あるいは弱酸のアルカリ金属塩があげられ
る。中でもリン酸三ナトリウム、ホウ砂などは緩衝剤と
しての作用効果も有するため、特に好ましい。
【0017】緩衝剤としては、通常の製剤学上使用され
る酢酸、リン酸、ホウ酸、酒石酸、クエン酸およびこれ
らの塩があげられる。
【0018】点眼液に適用する場合、塩基性物質または
緩衝剤としてホウ砂を用い、更に別の緩衝剤としてホウ
酸を用いる組み合せが最も好ましい。
【0019】本発明の水溶液製剤を点眼剤、点鼻剤ある
いは注射剤などに調製する場合、それぞれの製剤に最も
好適な等張化剤、安定化剤、保存剤、抗酸化剤、粘稠剤
などのような添加剤を添加することができる。これらの
添加剤は通常の製剤学上使用されるもので、トラニラス
トに影響を与えないものであればいかなるものも使用す
ることができる。
【0020】等張化剤としては、例えばリン酸ナトリウ
ムなどのような塩類、ブドウ糖などのような糖類、グリ
セリン、ソルビトール、ポリエチレングリコールなどの
ような多価アルコール類があげられる。
【0021】安定化剤としては、エデト酸ナトリウム、
クエン酸ナトリウム、縮合リン酸ナトリウムなどのよう
なキレート剤があげられる。
【0022】保存剤としては、パラオキシ安息香酸エス
テル類、フェノール、クレゾール、クロロクレゾールな
どのフェノール類、フェニルエチルアルコール、プロピ
レングリコールなどのアルコール類、安息香酸、サリチ
ル酸、ソルビン酸、デヒドロ酢酸、亜硫酸などの酸類お
よびそれらの塩類などがあげられる。
【0023】粘稠剤としては、カルボキシメチルセルロ
ースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビ
ニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウムなどがあげ
られる。
【0024】このような添加剤は必要に応じ、通常の製
剤学上使用される範囲内において適宜選択して配合する
ことができる。
【0025】本発明の水溶液製剤は、有効成分のトラニ
ラストを約0.1〜2%もの高含量で含有するにもかか
わらず、きわめて安定で室温遮光下で約4週間保存後も
含量の変化は認められない。 また、pHおよび浸透圧に
おいて調製後と室温遮光下1週間保存後に全く変化は認
められず、液状観察において、室温遮光下2ヶ月保存後
も浮遊物、沈澱物、結晶などの析出、白濁化などは全く
認められない。
【0026】本発明の水溶液製剤の調製は、常法により
行うことができ、製剤の種類により多少異なるが、一般
的には以下のようにして調製される。
【0027】すなわち、トラニラストまたはその薬理学
的に許容される塩と塩基性物質及びポリビニルピロリド
ンを適量の精製水に加熱溶解し、必要に応じ、保存剤、
安定化剤、緩衝剤、等張化剤などを加えて完全に溶解さ
せて製造する。
【0028】
【発明の実施の形態】本発明の内容を以下の実験例およ
び実施例により更に詳細に説明する。なお、本発明の水
溶液製剤は各実施例の記載に限定されるものではない。
【0029】実験例1 ポリビニルピロリドン(K−25)3.0g、ホウ砂
0.35g、トラニラスト0.5gを60℃に加熱した
注射用水に加え溶解した。これにホウ砂0.4g、ホウ
酸1.3g、エデト酸ナトリウム0.01gを加えた
後、表2の各添加剤を記載の量添加し、必要なものは水
酸化ナトリウムまたは塩酸でpH7.5に調節した後、
全量100mlとした。これを孔径0.22μmのメン
ブランフィルターでろ過した後、ポリプロピレン製茶色
点眼容器に充填した。
【0030】
【表1】 これを、−28℃のフリーザーにて一晩凍結後室温にて
融解し、冷所(約10℃)保存後2週間後の針状結晶の
析出の有無を確認した。結果は以下の通りであった。
【0031】
【表2】
【0032】結果より、メチルセルロースもしくは、ヒ
ドロキシプロピルメチルセルロースを含む水溶液では結
晶の析出は認められず良好な溶解性を示した。
【0033】実験例2 実験例1でトラニラスト水溶液にメチルセルロース、ヒ
ドロキシプロピルメチルセルロースを添加することによ
って結晶の析出防止効果が認められたが、次にメチルセ
ルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースの添加
量について検討した。
【0034】実験例1と同様の処方のトラニラスト水溶
液に対して、メチルセルロースを0.5%、0.25
%、0.05%、もしくは、ヒドロキシプロピルメチル
セルロースを0.35%、0.2%、0.04%を添加
した溶液を調整し、孔径0.22μmのメンブランフィ
ルターでろ過後、ポリプロピレン製茶色点眼容器に充填
した。これを−28℃のフリーザーにて一晩凍結後室温
にて融解し、冷所(約10℃)保存後2週間後の針状結
晶の析出の有無を確認した。
【0035】
【表3】
【0036】結果より、メチルセルロースもしくは、ヒ
ドロキシプロピルメチルセルロースを含む水溶液はいず
れの濃度においても結晶の析出は認められず良好な溶解
性を示した。
【0037】実施例1 トラニラスト0.5%点眼液 処方 トラニラスト 0.5% ホウ酸 1.3% ホウ砂 0.75% ポリビニルピロリドン 3.0% エデト酸ナトリウム 0.01% メチルセルロース 0.01% パラオキシ安息香酸メチル 0.05% パラオキシ安息香酸エチル 0.02% 注射用水 適量
【0038】トラニラスト0.5g、ポリビニルピロリ
ドン(K−25)3.0g、ホウ砂0.35g、を60
℃に加熱した注射用水約50mlに加え溶解し、これに
ホウ砂0.4g、ホウ酸1.3g、エデト酸ナトリウム
0.01g、パラオキシ安息香酸メチル0.05g、パ
ラオキシ安息香酸エチル0.02gを加え溶解した。更
に、メチルセルロース(商品名メトローズSM−4)
0.01gを溶解した後、全量を100mlとし、pH
7.5のトラニラスト0.5%点眼液を得た。
【0039】実施例2 トラニラスト0.5%点眼液 処方 トラニラスト 0.5% ホウ酸 1.3% ホウ砂 0.75% ポリビニルピロリドン 3.0% エデト酸ナトリウム 0.01% ヒドロキシプロピルメチルセルロース 0.35% パラオキシ安息香酸メチル 0.05% パラオキシ安息香酸エチル 0.02% 注射用水 適量
【0040】トラニラスト0.5g、ポリビニルピロリ
ドン(K−25)3.0g、ホウ砂0.35g、を60
℃に加熱した注射用水約50mlに加え溶解し、これに
ホウ砂0.4g、ホウ酸1.3g、エデト酸ナトリウム
0.01g、パラオキシ安息香酸メチル0.05g、パ
ラオキシ安息香酸エチル0.02gを加え溶解した。更
に、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(商品名メト
ローズ65SH−50)0.35gを溶解した後、全量
を100mlとし、pH7.5のトラニラスト0.5%
点眼液を得た。
【0041】尚、本発明のトラニラストまたはその薬理
学的に許容される塩を有効成分として含有する安定な水
溶液製剤は、上述の実施例にのみ限定されるものではな
く、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更
を加え得ることは勿論である。
【0042】
【発明の効果】以上、説明したように本発明の請求項1
〜5記載のトラニラストまたはその薬理学的に許容され
る塩を有効成分として含有する安定な水溶液製剤によれ
ば、刺激の発現の可能性がある界面活性剤を含有してお
らず、かつより簡便な処方によりトラニラスト水溶液製
剤を得られるという優れた効果を奏し得る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) A61P 27/16 A61P 27/16 37/08 37/08

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 トラニラストまたはその薬理学的に許容
    される塩と塩基性物質及びポリビニルピロリドンを含有
    する水溶液中に、メチルセルロースまたはヒドロキシプ
    ロピルメチルセルロースの少なくとも一種を含有し、界
    面活性剤を含有しないことを特徴とする水溶液製剤。
  2. 【請求項2】 ポリビニルピロリドンの濃度がトラニラ
    ストの濃度の4倍以上である請求項1に記載の水溶液製
    剤。
  3. 【請求項3】 メチルセルロースの濃度が0.001〜
    0.5%である請求項2に記載の水溶液製剤。
  4. 【請求項4】 ヒドロキシプロピルメチルセルロースの
    濃度が0.01〜0.4%である請求項2に記載の水溶
    液製剤。
  5. 【請求項5】 メチルセルロースの濃度が0.001〜
    0.5%で、ヒドロキシプロピルメチルセルロースの濃
    度が0.01〜0.4%である請求項2に記載の水溶液
    製剤。
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