JP2001354421A - リチウム二次電池電極活物質用リチウムチタン複合酸化物およびその製造方法 - Google Patents

リチウム二次電池電極活物質用リチウムチタン複合酸化物およびその製造方法

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composite oxide
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Kazuhiko Mukai
和彦 向
Yoshio Ukiyou
良雄 右京
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高温下でのサイクル特性や保存特性等の耐久
性に優れたリチウム二次電池を構成することができる電
極活物質用リチウムチタン複合酸化物を提供する。ま
た、そのリチウムチタン複合酸化物を簡便に製造する方
法を提供する。 【解決手段】 リチウムチタン複合酸化物を、組成式L
xTiy4(0.5≦x≦3、1≦y≦2.5)で表
されるものとし、かつ、その粒子が球換算平均粒径で1
μmより大きく50μm以下であるものとする。またそ
の製造方法を、リチウム化合物と、その粒子が球換算平
均粒径で1μmより大きいアナターゼ型酸化チタンとを
混合して、その混合物を500℃以上1000℃以下の
温度で焼成する方法とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、リチウムイオンの
吸蔵・脱離現象を利用したリチウム二次電池の電極活物
質に使用できるリチウムチタン複合酸化物およびその製
造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】通信機器、情報関連機器の分野では、携
帯電話、ノートパソコン等の小型化に伴い、高エネルギ
ー密度であるという理由から、リチウム二次電池が既に
実用化され、広く普及するに至っている。一方、自動車
の分野でも、大気汚染や二酸化炭素の増加等の環境問題
により、電気自動車の早期実用化が望まれており、この
電気自動車用電源として、リチウム二次電池を用いるこ
とも検討されている。電気自動車用電源等としてリチウ
ム二次電池を用いる場合、高出力、高エネルギー密度で
あることに加え、幅広い温度域で使用でき、かつその寿
命が長いこと、つまり、様々な温度条件の下で充放電を
繰り返しても容量が低下しないといった良好なサイクル
特性を有することが要求される。
【0003】現在リチウム二次電池は、正極活物質にリ
チウムコバルト複合酸化物(LiCoO2)を用い、負
極活物質に黒鉛等の炭素材料を用いたものが主流となっ
ている。ところが、正極活物質および負極活物質ともに
サイクル劣化等を生じる要因を有しており、この主流と
なっているリチウム二次電池であっても、充分に満足す
る耐久性(サイクル特性、保存特性等)を得られていな
いのが現状である。
【0004】また、特開平6−275263号公報に示
されるように、リチウム二次電池用電極活物質として、
リチウムチタン複合酸化物を用いる試みもなされてい
る。リチウムチタン複合酸化物は、比較的良好な耐久性
をもつことから、それを活物質として用いたリチウム二
次電池はより長寿命な二次電池になるものと考えられ
る。したがって、リチウムチタン複合酸化物は、特に電
気自動車用電源として使用されるリチウム二次電池の電
極活物質として、好適な活物質材料となるものと考えら
れる。
【0005】そして、このリチウムチタン複合酸化物を
電極活物質として用いた場合において、リチウム二次電
池の特性をさらに向上させるべく、リチウムチタン複合
酸化物の改良が種々なされている。例えば、特開平9−
309728号公報や特開平10−310428号公報
に示されるように、リチウムチタン複合酸化物の粒子形
状や比表面積を制御することや、特開平8−26417
9号公報に示されるように、リチウムチタン複合酸化物
のチタンサイトを他の1種または2種以上の元素で一部
置換すること等の改良が行われている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上述のように
比較的良好な耐久性をもつリチウムチタン複合酸化物を
電極活物質として用いたリチウム二次電池であっても、
高温下で使用すると、電池反応が活性化するため、活物
質であるリチウムチタン複合酸化物と非水電解液とが反
応し、非水電解液が分解する。その結果、電池の内部抵
抗が増加し、電池容量が低下するという問題が生じてい
る。同様に、上記リチウム二次電池を、充電率を高く保
持した状態で、高温下において保存した場合にも、電池
反応が活性化するため非水電解液が分解し、電池容量が
低下するという問題が生じている。これらは、上述の改
良を施したリチウムチタン複合酸化物を用いた場合でも
同様に生じる問題である。
【0007】これらの問題を解決すべく、本発明者が種
々の実験、検討を行った結果、上記問題は、活物質であ
るリチウムチタン複合酸化物の粒子径が非常に小さいこ
とが原因であることがわかった。一般に、リチウムチタ
ン複合酸化物を正極または負極の活物質として用いた場
合には、正極または負極は、粉末状のリチウムチタン複
合酸化物に導電材および結着剤を混合し、ペースト状の
正極合材または負極合材としたものを、集電体表面に塗
布等することによって形成される。したがって、活物質
であるリチウムチタン複合酸化物粉末の粒子径が小さい
と、非水電解液との反応に関与する表面積が大きくなる
ため、非水電解液の分解反応が進行しやすいと考えられ
る。
【0008】本発明は、上記問題を解決するためになさ
れたものであり、リチウムチタン複合酸化物の粒子径を
大きくすることで、高温下での非水電解液の分解を抑制
し、耐久性、特に高温下でのサイクル特性や保存特性等
の耐久性の優れたリチウム二次電池を構成することがで
きる電極活物質用リチウムチタン複合酸化物を提供する
ことを目的とする。
【0009】また、本発明は、上記耐久性に優れたリチ
ウム二次電池を構成することができる電極活物質用リチ
ウムチタン複合酸化物を、簡便に製造する方法を提供す
ることを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明のリチウムチタン
複合酸化物は、リチウム二次電池用電極活物質として用
いられるリチウムチタン複合酸化物であって、組成式L
xTiy4(0.5≦x≦3、1≦y≦2.5)で表
され、その粒子が球換算平均粒径で1μmより大きく5
0μm以下であることを特徴とする。
【0011】ここで、球換算平均粒径とは、リチウムチ
タン複合酸化物の粒子の形状を、その粒子体積と同体積
の球と仮定して粒子径を計算した場合の平均粒径であ
る。本発明のリチウムチタン複合酸化物は、後に写真で
示すように、丸みを帯びた粒子からなり、その粒子形状
は球形に近いため、球換算平均粒径を用いてその粒子の
平均粒径としたものである。なお、粒子形状が球形に近
いものの場合、球換算平均粒径の簡単な測定方法とし
て、例えば、リチウムチタン複合酸化物の走査型電子顕
微鏡(SEM)写真を利用する方法がある。すなわち、
リチウムチタン複合酸化物のSEM写真を撮影し、その
写真におけるリチウムチタン複合酸化物粒子の最長径と
最短径を測定し、それら2つの値の平均値を球換算平均
粒径として採用することができる。
【0012】リチウムチタン複合酸化物の粒子が、球換
算平均粒径で1μmより大きく50μm以下という大き
い粒子径を有しているため、非水電解液との反応に関与
する表面積が小さくなり、高温における非水電解液の分
解反応が抑制されると考えられる。その結果、高温下で
の充放電や長期保存の場合であっても、電池の内部抵抗
は増加せず、電池容量が維持されるため、高温下でのサ
イクル特性や保存特性等の耐久性に優れたリチウム二次
電池を得ることができる。
【0013】また、リチウムチタン複合酸化物の粒子径
が大きいため、導電性を確保すべき活物質の表面積が小
さくなる。その結果、電極作製時に混合する導電材の量
を低減することができるため、混合スラリーにおいて凝
集した塊ができにくくなり、良好な電極が作製できる。
【0014】したがって、本発明のリチウムチタン複合
酸化物は、その粒子径が大きいことにより、耐久性、特
に高温下での耐久性に優れたリチウム二次電池を構成す
ることができる電極活物質用リチウムチタン複合酸化物
となる。
【0015】さらに、本発明のリチウムチタン複合酸化
物は、高温下で使用した場合であっても、電池の内部抵
抗が増加しないリチウム二次電池を構成することができ
る電極活物質用リチウムチタン複合酸化物となる。
【0016】本発明のリチウムチタン複合酸化物は、そ
の製造方法を特に限定するものではないが、以下の方法
によれば、より簡便に製造することができる。すなわ
ち、本発明のリチウムチタン複合酸化物の製造方法は、
リチウム源となるリチウム化合物と、チタン源となり、
その粒子が球換算平均粒径で1μmより大きく結晶構造
がアナターゼ型である酸化チタンとを混合して混合物を
得る原料混合工程と、前記混合物を500℃以上100
0℃以下の温度で焼成する焼成工程とを含んでなること
を特徴とするものである。
【0017】チタン源となる酸化チタンには、工業的に
製造されているものとして、その結晶構造がアナターゼ
型のものと、ルチル型のものがある。アナターゼ型酸化
チタンは、電極活物質として用いた場合に、ルチル型酸
化チタンと比較して電池容量が大きくなり、また、良好
なサイクル特性、レート特性が得られるという利点があ
る。さらに、その粒子が球換算平均粒径で1μmより大
きいアナターゼ型酸化チタンを用いることにより、得ら
れるリチウムチタン複合酸化物の粒子径を大きくするこ
とができる。
【0018】したがって、本発明のリチウムチタン複合
酸化物の製造方法は、上記耐久性に優れたリチウム二次
電池を構成することができる電極活物質用リチウムチタ
ン複合酸化物を、簡便に製造する方法となる。
【0019】
【発明の実施の形態】以下に、本発明のリチウムチタン
複合酸化物とその製造方法について、それぞれ順に説明
し、その後に、本発明のリチウムチタン複合酸化物の利
用形態であるリチウム二次電池について説明する。
【0020】〈リチウムチタン複合酸化物〉本発明のリ
チウムチタン複合酸化物は、リチウム二次電池用電極活
物質として用いられるリチウムチタン複合酸化物であっ
て、組成式LixTiy4(0.5≦x≦3、1≦y≦
2.5)で表され、その粒子が球換算平均粒径で1μm
より大きく50μm以下であるリチウムチタン複合酸化
物である。
【0021】本発明のリチウムチタン複合酸化物は、組
成式LixTiy4(0.5≦x≦3、1≦y≦2.
5)で表され、その結晶構造はスピネル構造あるいはそ
れに類似する構造となっている。そして、CuKα線を
用いた粉末X線回折によれば、結晶構造中の面間隔が少
なくとも4.84Å、2.53Å、2.09Å、1.4
8Å(各面間隔とも±0.1Å)となる回折面(反射
面)において、回折ピークが存在する。
【0022】この結晶構造をもつ本発明のリチウムチタ
ン複合酸化物は、結晶構造が安定しており、充放電に伴
うリチウムの吸蔵・脱離によっても、その基本となる構
造が崩壊しにくく、サイクル特性の良好なリチウム二次
電池を構成できる活物質材料となる。種々ある組成の中
でも、結晶構造が安定であるという観点から、組成式L
0.8Ti2.24、LiTi24、Li1.33Ti
1.674、Li1.14Ti1.71 4で表されるものが優れて
おり、活物質としてこれらのうちの1種のものを単独で
または2種以上のものを混合して用いることができる。
【0023】本発明のリチウムチタン複合酸化物は、そ
の粒子が球換算平均粒径で1μmより大きく50μm以
下である。リチウムチタン複合酸化物の粒子が球換算平
均粒径で1μm以下であると、高温下において非水電解
液との分解反応が促進され、電池の内部抵抗が増加し、
容量低下の原因となる。反対に、50μmを越えると、
良好な電極の作製が困難となり、また電極合材の塗膜表
面が平滑になりにくくなるため電極間のショートの原因
ともなり得る。特に、混合する導電材の量や充放電に伴
う活物質の膨張・収縮等を考慮すると、その粒子が球換
算平均粒径で5μm以上30μm以下であることが望ま
しい。
【0024】一般に、リチウムチタン複合酸化物は、後
に写真で示すように、単結晶に近い微細な一次粒子が凝
集した二次粒子からなる。したがって、上述の球換算平
均粒径は、通常、この一次粒子が凝集した二次粒子の平
均粒径と考えてよい。ただし、本発明のリチウムチタン
複合酸化物は、一次粒子の粒子径が大きい場合等、一次
粒子が凝集せずに単独で存在する態様のものも含むもの
である。この態様においては、球換算平均粒径は一次粒
子の平均粒径と考えればよい。
【0025】〈リチウムチタン複合酸化物の製造方法〉
本発明のリチウムチタン複合酸化物は、その製造方法を
特に限定するものではないが、以下の方法によれば、よ
り簡便に製造することができる。すなわち、本発明のリ
チウムチタン複合酸化物の製造方法は、リチウム源とな
るリチウム化合物と、チタン源となり、その粒子が球換
算平均粒径で1μmより大きく結晶構造がアナターゼ型
である酸化チタンとを混合して混合物を得る原料混合工
程と、前記混合物を500℃以上1000℃以下の温度
で焼成する焼成工程とからなる方法である。
【0026】(1)原料混合工程 本発明のリチウムチタン複合酸化物の製造方法における
原料混合工程は、リチウム源となるリチウム化合物と、
チタン源となり、その粒子が球換算平均粒径で1μmよ
り大きく結晶構造がアナターゼ型である酸化チタンとを
混合して混合物を得る工程である。
【0027】リチウム源となるリチウム化合物として
は、Li(OH)、Li(OH)・H 2O、Li2
3、LiNO3等を用いることができる。
【0028】また、チタン源となる酸化チタンとして
は、上述したように、ルチル型のものと比較して電気容
量が大きく、また、サイクル特性、レート特性等の良好
な電池特性を得るという理由から、アナターゼ型酸化チ
タンを用いる。ただし、完全にアナターゼ型酸化チタン
のみを得ることは困難であるため、リチウムチタン複合
酸化物の特性に影響の無い量であれば、ルチル型酸化チ
タンが含まれていてもよい。また、粒子径の大きなリチ
ウムチタン複合酸化物を製造するという観点から、平均
粒子径が1μmより大きいアナターゼ型酸化チタンを用
いる。
【0029】リチウム化合物と酸化チタンとの混合は、
通常の混合に用いられている方法で行えばよく、例え
ば、ボールミル、ミキサー等を用いて混合すればよい。
なお、それぞれの原料の混合割合は、製造しようとする
リチウムチタン複合酸化物の組成に応じた割合とすれば
よい。
【0030】(2)焼成工程 焼成工程は、原料混合工程で得られた混合物を500℃
以上1000℃以下の温度で焼成する工程である。焼成
は、酸素気流中あるいは大気中にて行う。また、焼成温
度は、500℃以上1000℃以下とする。焼成の温度
が低すぎると、生成物であるリチウムチタン複合酸化物
が目的とする粒径まで成長することができず、また、高
すぎると副相として生じるルチル型酸化チタン相(Ti
2相)の含有割合が多くなるからである。特に、良好
な電池特性を得るまで粒径を成長させることを考慮すれ
ば、700℃以上900℃以下とすることが望ましい。
なお、焼成時間は焼成が完了するのに充分な時間であれ
ばよく、通常、12時間程度行えばよい。
【0031】副相として生じる酸化チタン相を完全に消
滅させることは困難を伴う。この酸化チタン相は、上記
リチウムチタン複合酸化物の主相と混晶状態で生成され
るため、少量存在するのであれば、活物質として用いた
場合に、サイクル特性等を極度に悪化させるものとはな
らない。したがって、本発明のリチウムチタン複合酸化
物は、この酸化チタンを混晶状態で含有するものであっ
てもよく、また、本明細書中において、「リチウムチタ
ン複合酸化物」とは、それを含むことを意味する。
【0032】〈リチウム二次電池〉リチウム二次電池の
実施形態として、本発明のリチウムチタン複合酸化物を
電極活物質として使用して、リチウム二次電池を構成す
ることができる。なお、本発明のリチウムチタン複合酸
化物は、正極活物質として用いることも、また、負極活
物質として用いることもできる。
【0033】例えば、本発明のリチウムチタン複合酸化
物を正極活物質として用いた場合には、リチウムチタン
複合酸化物は還元電位がLi/Li+に対して約1.5
Vであるため、これより低い電位を有する活物質材料、
例えば、金属リチウム、リチウム合金、黒鉛、コーク
ス、ハードカーボン等の炭素材料等を負極活物質として
用いて電池を構成すればよい。また、本発明のリチウム
チタン複合酸化物を負極活物質として用いた場合には、
これより高い電位を有する活物質材料、例えば、LiC
oO2、LiNiO2等のリチウム遷移金属複合酸化物を
正極活物質として用いて電池を構成すればよい。
【0034】本発明のリチウムチタン複合酸化物を電極
活物質として使用したリチウム二次電池の実施形態の一
例として、本発明のリチウムチタン複合酸化物を負極活
物質として用いた形態のリチウム二次電池について、以
下説明する。
【0035】一般にリチウム二次電池は、リチウムイオ
ンを吸蔵・放出する正極および負極と、この正極と負極
との間に挟装されるセパレータと、正極と負極の間をリ
チウムイオンを移動させる非水電解液とから構成され、
本実施形態の二次電池もこの構成に従うものである。以
下、各構成要素について説明する。
【0036】正極は、正極活物質に導電材および結着剤
を混合し、必要に応じ適当な溶媒を加えて、ペースト状
の正極合材としたものを、アルミニウム等の金属箔製の
集電体表面に塗布、乾燥し、その後プレスによって活物
質密度を高めることによって形成することができる。な
お、正極合材の集電体表面への塗布、乾燥、プレス等は
通常の方法に従えばよい。
【0037】本実施形態においては、正極活物質は、例
えば、既に公知のLiCoO2、LiNiO2等のリチウ
ム遷移金属複合酸化物を用いることができる。また、上
記組成式で表されるものの他、例えば、リチウムサイト
や遷移金属サイトを他の1種または2種以上の元素で一
部置換したもの等を用いてもよい。さらに、これらリチ
ウム遷移金属複合酸化物のうち1種類のものを、または
2種類以上のものを混合して用いることができる。
【0038】正極に用いる導電材は、正極活物質層の電
子伝導性を確保するためのものであり、カーボンブラッ
ク、アセチレンブラック、黒鉛等の炭素物質紛状体の1
種または2種以上を混合したものを用いることができ
る。結着剤は、活物質粒子を繋ぎ止める役割を果たすも
ので、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリ
デン、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、ポリプロピレン、
ポリエチレン等の熱可塑性樹脂を用いることができる。
これら活物質、導電材、結着剤を分散させる溶剤として
は、N−メチル−2−ピロリドン等の有機溶剤を用いる
ことができる。
【0039】負極は、負極活物質に導電材および結着剤
を混合し、必要に応じ適当な溶媒を加えて、ペースト状
の負極合材としたものを、銅等の金属箔製の集電体表面
に塗布、乾燥し、その後プレスによって活物質密度を高
めることによって形成することができる。なお、負極合
材の集電体表面への塗布、乾燥、プレス等は通常の方法
に従えばよい。
【0040】本実施形態においては、負極活物質として
本発明のリチウムチタン複合酸化物を用いる。なお、本
発明のリチウムチタン複合酸化物は、組成により種々の
リチウムチタン複合酸化物があり、そのうちの1種を単
独で用いることもでき、また、2種以上を混合して用い
ることもできる。また、本発明のリチウムチタン複合酸
化物を主たる活物質とした上で、既に公知の黒鉛、ハー
ドカーボン等の炭素材料等の負極活物質材料を副次的に
混合して活物質とすることもできる。
【0041】導電材は、正極同様、カーボンブラック、
アセチレンブラック、黒鉛等の炭素物質紛状体の1種ま
たは2種以上を混合したものを用いることができる。結
着剤も、正極同様、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ
フッ化ビニリデン、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、ポリ
プロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂を用いるこ
とができる。また、溶剤も、正極同様、N−メチル−2
−ピロリドン等の有機溶剤を用いることができる。
【0042】正極と負極の間に挟装されるセパレータ
は、正極と負極とを隔離しつつ電解液を保持してイオン
を通過させるものであり、ポリエチレン、ポリプロピレ
ン等の薄い微多孔膜を用いることができる。
【0043】非水電解液は、有機溶媒に電解質を溶解さ
せたもので、有機溶媒としては、非プロトン性有機溶
媒、例えばエチレンカーボネート、プロピレンカーボネ
ート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、
γブチロラクトン、アセトニトリル、ジメトキシエタ
ン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、塩化メチレン
等の1種またはこれらの2種以上の混合液を用いること
ができる。また、溶解させる電解質としては、溶解させ
ることによりリチウムイオンを生じるLiI、LiCl
4、LiAsF6、LiBF4、LiPF6等を用いるこ
とができる。
【0044】なお上記セパレータおよび非水電解液とい
う構成に代えて、ポリエチレンオキシド等の高分子量ポ
リマーとLiClO4やLiN(CF3SO22等のリチ
ウム塩を使用した高分子固体電解質を用いることもで
き、また、上記非水電解液をポリアクリロニトリル等の
固体高分子マトリックス中にトラップさせたゲル電解質
を用いることもできる。
【0045】以上のものから構成されるリチウム二次電
池であるが、その形状はコイン型、積層型、円筒型等の
種々のものとすることができる。いずれの形状を採る場
合であっても、正極および負極にセパレータを挟装させ
電極体とし、正極および負極から外部に通ずる正極端子
および負極端子までの間をそれぞれ導通させるようにし
て、この電極体を非水電解液とともに電池ケースに密閉
して電池を完成させることができる。
【0046】なお、これまでに説明した本発明のリチウ
ムチタン複合酸化物およびその製造方法、リチウム二次
電池の実施形態は例示にすぎず、本発明のリチウムチタ
ン複合酸化物およびその製造方法、また、本発明のリチ
ウムチタン複合酸化物を電極活物質として使用したリチ
ウム二次電池は、上記実施形態を始めとして、当業者の
知識に基づいて種々の変更、改良を施した形態で実施す
ることができる。
【0047】
【実施例】上記実施形態に基づいて、リチウムチタン複
合酸化物を実施例として製造した。また、これと比較す
べく、その粒子が球換算平均粒径で1μm以下であるリ
チウムチタン複合酸化物を比較例として製造した。そし
て、これら実施例および比較例のリチウムチタン複合酸
化物を負極活物質として用いたリチウム二次電池を作製
し、各二次電池に対して充放電のサイクル試験を行い、
サイクル特性等を評価した。以下に、リチウムチタン複
合酸化物の製造、リチウム二次電池の作製、サイクル特
性等の評価について説明する。
【0048】〈リチウムチタン複合酸化物の製造〉 (1)実施例のリチウムチタン複合酸化物 リチウム源としてLi2CO3を用い、チタン源として、
球換算平均粒径で5μmのアナターゼ型TiO2を用
い、これらをモル比でTiO2:Li2CO3=5:4.
02の割合で混合した。混合にはボールミルを用いた。
得られた混合物を、酸素気流中、800℃で12時間焼
成し、実施例のリチウムチタン複合酸化物を得た。
【0049】原料のアナターゼ型TiO2のX線回折パ
ターンを図1に、また得られたリチウムチタン複合酸化
物のX線回折パターンを図2に示す。図1のパターンに
おいて、●印はルチル型TiO2のピークを示す。図1
のパターンからわかるように、原料のアナターゼ型Ti
2には、ルチル型TiO2が混在していた。一方、図2
のパターンからわかるように、得られたリチウムチタン
複合酸化物にはルチル型TiO2は含まれていなかっ
た。
【0050】また、図3に得られたリチウムチタン複合
酸化物を走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影した写真を
示す。図3より、本実施例のリチウムチタン複合酸化物
の球換算平均粒径は約10μmであった。なお、組成分
析より、本実施例のリチウムチタン複合酸化物の組成
は、組成式Li4Ti512で表されることがわかった。
【0051】(2)比較例1のリチウムチタン複合酸化
物 チタン源としてのアナターゼ型TiO2を、球換算平均
粒径で0.8μmのものを用いたこと以外は、実施例の
場合と同様に合成し、比較例1のリチウムチタン複合酸
化物を得た。なお、X線回折分析を行ったところ、原料
のアナターゼ型TiO2には、ルチル型TiO2のピーク
は見られなかった。また、得られたリチウムチタン複合
酸化物のX線回折パターンでは、図2に示される実施例
の場合と同様のピークが得られたことから、本比較例1
のリチウムチタン複合酸化物にもルチル型TiO2は含
まれていなかった。
【0052】図4に得られたリチウムチタン複合酸化物
を走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影した写真を示す。
図4より、本比較例1のリチウムチタン複合酸化物の球
換算平均粒径は約0.8μmであった。なお、組成分析
より、本比較例1のリチウムチタン複合酸化物の組成
は、組成式Li4Ti512で表されることがわかった。
【0053】(3)比較例2のリチウムチタン複合酸化
物 リチウム源としてLi(OH)を用い、チタン源として
のアナターゼ型TiO 2を、比較例1の場合と同様、球
換算平均粒径で0.8μmのものを用いたこと以外は、
実施例の場合と同様に合成し、比較例2のリチウムチタ
ン複合酸化物を得た。なお、得られたリチウムチタン複
合酸化物のX線回折パターンでは、図2に示される実施
例の場合と同様のピークが得られたことから、本比較例
2のリチウムチタン複合酸化物にもルチル型TiO2
含まれていなかった。
【0054】また、図5に得られたリチウムチタン複合
酸化物を走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影した写真を
示す。図5より、本比較例2のリチウムチタン複合酸化
物の球換算平均粒径は約0.8μmであった。なお、組
成分析より、本比較例2のリチウムチタン複合酸化物の
組成は、組成式Li4Ti512で表されることがわかっ
た。
【0055】(4)比較例3のリチウムチタン複合酸化
物 リチウム源としてLi(OH)を用い、チタン源として
のアナターゼ型TiO 2を、球換算平均粒径で0.8μ
mの板状のものを用いたこと以外は、実施例の場合と同
様に合成し、比較例3のリチウムチタン複合酸化物を得
た。なお、X線回折分析を行ったところ、原料のアナタ
ーゼ型TiO2には、ルチル型TiO2のピークは見ら
れなかった。また、得られたリチウムチタン複合酸化物
のX線回折パターンでは、図2に示される実施例の場合
と同様のピークが得られたことから、本比較例3のリチ
ウムチタン複合酸化物にもルチル型TiO2は含まれて
いなかった。
【0056】図6に得られたリチウムチタン複合酸化物
を走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影した写真を示す。
図6より、本比較例3のリチウムチタン複合酸化物の球
換算平均粒径は0.8μmであり、ちなみに平均長径は
約3μmであった。なお、組成分析より、本比較例3の
リチウムチタン複合酸化物の組成は、組成式Li4Ti5
12で表されることがわかった。
【0057】〈リチウム二次電池の作製〉上記実施例お
よび比較例のリチウムチタン複合酸化物をそれぞれ負極
活物質として用いたリチウム二次電池を作製した。これ
らの二次電池の正極活物質には、組成式LiNi0.85
Co0.1Al0.052で表される層状岩塩構造のリチウム
遷移金属複合酸化物を用いた。この、活物質であるLi
Ni0.85 Co0.1Al0.05285重量部に、導電材と
してアセチレンブラックを10重量部、および結着剤と
してポリフッ化ビニリデンを5重量部混合し、溶剤とし
てN−メチル−2−ピロリドンを添加して、混練してペ
ースト状の正極合材を調整した。そして、この正極合材
を厚さ20μmのアルミニウム箔集電体の両面に塗布
し、乾燥し、ロールプレスを施してシート状の正極とし
た。正極の大きさは54mm×450mmで、正極合材
の乾燥プレス後の塗膜厚は片側当たり100μmとし
た。
【0058】負極は、活物質である上記実施例および比
較例のリチウムチタン複合酸化物をそれぞれ90重量部
に、導電材としてカーボンブラックを7重量部、および
結着剤としてポリフッ化ビニリデンを9重量部混合し、
溶剤としてN−メチル−2−ピロリドンを添加して、混
練してペースト状の各負極合材を調整した。そして、こ
れら負極合材を厚さ10μmの銅箔集電体の両面に塗布
し、乾燥し、ロールプレスを施してシート状の負極とし
た。負極の大きさは56mm×500mmで、負極合材
の乾燥プレス後の塗膜厚は片側当たり130μmとし
た。
【0059】上記正極および負極を、その間に厚さ25
μm、幅58mmのポリエチレン製のセパレータを挟装
して倦回し、ロール状の電極体を形成させた。この電極
体に正極および負極集電用リードを付設し、18650
型電池ケースに収納した。そして、非水電解液を注入し
た後、この電池ケースを密閉してリチウム二次電池を作
製した。なお、非水電解液は、エチレンカーボネートと
ジエチルカーボネートとを体積比3:7に混合した混合
溶媒にLiPF6を1Mの濃度で溶解したものを用い
た。
【0060】なお、以上のようにして作製した、各実施
例および比較例のリチウムチタン複合酸化物を負極活物
質として用いたリチウム二次電池を、以下、「実施例の
リチウム二次電池」等と表す。
【0061】〈リチウム二次電池の特性評価〉上記各実
施例および比較例のリチウム二次電池に対して、高温下
での充放電サイクル試験を行い、各リチウム二次電池の
高温下でのサイクル特性を評価した。この充放電サイク
ル試験の方法を以下に説明する。
【0062】充放電サイクル試験は、リチウム二次電池
が実際に使用される上限温度と目される60℃の高温環
境下で行った。充放電サイクルの条件は、充電終止電圧
2.5Vまで電流密度1mA/cm2 の定電流で充電を
行い、次いで放電終止電圧1.5Vまで電流密度1mA
/cm2 の定電流で方電を行うことを1サイクルとする
ものである。各リチウム二次電池に対して、このサイク
ルを300サイクル繰り返すものとした。そして、各リ
チウム二次電池について、各サイクルごとに、正極活物
質放電容量を測定した。
【0063】図7に各リチウム二次電池の充放電サイク
ル試験における正極活物質放電容量の変化を示す。ま
た、図8に初期放電容量を100とした時の、充放電サ
イクル試験における各リチウム二次電池の容量維持率を
示す。図7、図8からわかるように、負極活物質である
リチウムチタン複合酸化物の球換算平均粒径が1μm以
下の、比較例1〜3の電池は、初期放電容量は大きいも
のの、充放電を繰り返していくと放電容量は急激に低下
し、サイクル劣化が激しかった。このサイクル劣化の原
因の一つに、非水電解液の分解が考えられる。これに対
して、実施例の電池は、放電容量にほとんど変化がなく
高温においても良好なサイクル特性が得られた。したが
って、球換算平均粒径で1μmより大きいリチウムチタ
ン複合酸化物を負極活物質として用いたリチウム二次電
池は、高温下で充放電を繰り返しても容量の低下のない
良好なサイクル特性を発揮することが確認された。
【0064】さらに、各リチウム二次電池について、各
サイクルごとに、直流内部抵抗を以下に示す式により求
めた。 直流内部抵抗=(充電平均電圧−放電平均電
圧)/(評価電流値×2) 本充放電サイクル試験で
は、充電電流値と放電電流値が等しく、かつ定電流充電
−定電流放電方式を採用しているため、充電平均電圧と
放電平均電圧との差を2で割ることで、充電分極と放電
分極の平均値とし、その平均値をさらに評価電流値であ
る充放電の電流値で割ることで、簡易的に電池の内部抵
抗を算出したものである。
【0065】図9に各リチウム二次電池の充放電サイク
ル試験における直流内部抵抗の変化を示す。図9からわ
かるように、比較例1〜3の電池は、充放電を繰り返し
ていくと内部抵抗が増加した。内部抵抗の増加の原因の
一つは、非水電解液の分解が考えられ、この結果は、上
述の放電容量の低下と一致するものである。一方、実施
例の電池は、充放電を繰り返しても内部抵抗はほぼ一定
であった。したがって、球換算平均粒径で1μmより大
きいリチウムチタン複合酸化物を負極活物質として用い
たリチウム二次電池は、高温下で充放電を繰り返して
も、内部抵抗が増加せず充分な耐久性を有することが確
認された。
【0066】
【発明の効果】本発明のリチウムチタン複合酸化物は、
その粒子径が大きいため、高温下での非水電解液の分解
を抑制することができ、本発明のリチウムチタン複合酸
化物を電極活物質に用いたリチウム二次電池は、耐久
性、特に高温下でのサイクル特性や保存特性等の耐久性
の優れたものとなる。
【0067】また、本発明のりチウムチタン複合酸化物
の製造方法によれば、上記耐久性に優れたリチウム二次
電池を構成することができる電極活物質用リチウムチタ
ン複合酸化物を、簡便に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例のリチウムチタン複合酸化物の原料で
あるアナターゼ型TiO2のX線回折パターンを示す図
である。
【図2】 実施例のリチウムチタン複合酸化物のX線回
折パターンを示す図である。
【図3】 実施例のリチウムチタン複合酸化物のSEM
写真である。
【図4】 比較例1のリチウムチタン複合酸化物のSE
M写真である。
【図5】 比較例2のリチウムチタン複合酸化物のSE
M写真である。
【図6】 比較例3のリチウムチタン複合酸化物のSE
M写真である。
【図7】 各リチウム二次電池の充放電サイクル試験に
おける正極活物質放電容量の変化を示す図である。
【図8】 初期放電容量を100とした時の、充放電サ
イクル試験における各リチウム二次電池の容量維持率の
変化を示す図である。
【図9】 各リチウム二次電池の充放電サイクル試験に
おける直流内部抵抗の変化を示す図である。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成12年12月6日(2000.12.
6)
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図3
【補正方法】変更
【補正内容】
【図3】
【手続補正2】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図4
【補正方法】変更
【補正内容】
【図4】
【手続補正3】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図5
【補正方法】変更
【補正内容】
【図5】
【手続補正4】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図6
【補正方法】変更
【補正内容】
【図6】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4G047 CA06 CB04 CC03 CD04 CD07 5H029 AJ05 AJ14 AK03 AL03 AL06 AL07 AL08 AL12 AM02 AM03 AM04 AM05 AM07 CJ02 CJ08 HJ02 HJ05 HJ13 HJ14 5H050 AA07 AA10 AA19 BA16 BA17 CA08 CA09 CB03 CB07 CB08 CB09 CB12 FA17 FA19 GA02 GA10 HA02 HA05 HA13 HA14

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 組成式LixTiy4(0.5≦x≦
    3、1≦y≦2.5)で表され、その粒子が球換算平均
    粒径で1μmより大きく50μm以下である、リチウム
    二次電池電極活物質用リチウムチタン複合酸化物。
  2. 【請求項2】 前記組成式LixTiy4(0.5≦x
    ≦3、1≦y≦2.5)が、Li0.8Ti2.24、Li
    Ti24、Li1.33Ti1.674、Li1.14Ti 1.714
    のいずれかである請求項1に記載のリチウムチタン複合
    酸化物。
  3. 【請求項3】 組成式LixTiy4(0.5≦x≦
    3、1≦y≦2.5)で表され、その粒子が球換算平均
    粒径で1μmより大きく50μm以下である、リチウム
    二次電池電極活物質用リチウムチタン複合酸化物の製造
    方法であって、 リチウム源となるリチウム化合物と、チタン源となる、
    その粒子が球換算平均粒径で1μmより大きく結晶構造
    がアナターゼ型である酸化チタンとを混合して混合物を
    得る原料混合工程と、 前記混合物を500℃以上1000℃以下の温度で焼成
    する焼成工程と、 を含んでなるリチウム二次電池電極活物質用リチウムチ
    タン複合酸化物の製造方法。
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