JP2001348665A - 大気圧プラズマCVDによるアモルファスSiC薄膜 - Google Patents

大気圧プラズマCVDによるアモルファスSiC薄膜

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JP2001348665A
JP2001348665A JP2000168209A JP2000168209A JP2001348665A JP 2001348665 A JP2001348665 A JP 2001348665A JP 2000168209 A JP2000168209 A JP 2000168209A JP 2000168209 A JP2000168209 A JP 2000168209A JP 2001348665 A JP2001348665 A JP 2001348665A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 RFスパッタリング法、減圧下でのプラズマ
CVD法等の従来の成膜方法による成膜速度より10倍
以上の高速成膜が可能な大気圧プラズマCVDによって
基板上に作製したアモルファスSiC薄膜を提供する。 【解決手段】 チャンバー1内に、加熱手段を備えた試
料ステージ4と回転電極2とを配設し、電極との間にギ
ャップを設けて試料ステージに基板3を保持し、チャン
バー内に導入したSi供給反応ガスとC供給反応ガス及
び不活性ガスからなるキャリアガスを含む0.1〜10
atmの原料ガスを、高速に回転させた電極表面で巻き
込んで、ギャップを横切るガス流を形成し、電極に高周
波電力を供給してギャップでプラズマを発生し、反応ガ
スに基づく高密度ラジカルを生成し、試料ステージと電
極とを相対的に移動させながらラジカル反応によって加
熱基板上にSiC薄膜を形成した。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、大気圧プラズマC
VDによる高速成膜法によって基板上に形成したアモル
ファスSiC薄膜に関するものである。
【0002】
【従来の技術】SiCは、高硬度であることや化学的に
安定であるといった、優れた物理的・化学的特性を持っ
た材料である。バンドギャップが大きく、p,n制御が
可能なため、種々の機能デバイスへの応用について活発
な研究が行われている。結晶SiCだけではなくアモル
ファスSi1-xCx(a-Si1-xCx)薄膜や水素化アモルファスSi
1-xCx(a-Si1-xCx:H)薄膜についても、その電気・光学特
性が成膜パラメータによって自由に制御できることか
ら、光電子デバイスや太陽電池、X線リソグラフィー用
マスク、発光ダイオード、カラーセンサ等への応用が試
みられてきた。最近では、単結晶SiC基板上にa-Si
1-xCx:Hの厚膜を形成し、パワーデバイス用基板に応用
しようという試みもある。
【0003】また、SiCは、耐熱変形性、強じん性、
平滑研磨性の観点から、極紫外光・X線用ミラー材料と
しても非常に有望視されており、1m以上の長さを必要
とするSPring-8ミラー用として有力な候補である。加工
の観点から考えると、SPring-8ミラーの作製には、形状
精度0.006μm/m、表面粗さ5ÅPVを達成する
超精密加工が要求される。現在これらを同時に満たすこ
とが可能と考えられる加工法は、プラズマCVM(特開
平9−31670号公報参照)を前加工とした、NC−
EEM(特開平5−96468号公報参照)のみである
ことから、これらの加工法に適したSiC材料を開発す
る必要が生じている。アモルファスSiC(a-SiC)膜
は、多結晶SiC膜と異なって粒界がないため、化学的
エッチング作用を加工原理とするプラズマCVM及びE
EMによって粒界段差が生じず、極めて優れた表面平滑
性の得られる材料といえる。従って、極紫外光・X線用
ミラー材料としては、a-SiCが適していると考えられ
る。これまでa-Si1-xCx薄膜やa-Si1-xCx:H薄膜の形成に
は、RFスパッタリング法、減圧下でのプラズマCVD
法等が用いられているが、成膜速度が遅く、大型ミラー
の作製には大面積の成膜が必要となることから、格段の
成膜速度の高速化が望まれている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明者は、従来から
成膜材料となる反応種の密度を高めれば、高速成膜が可
能であるとの認識のもとに、大気圧下でのプラズマ及び
ラジカルCVDによる成膜法(特開平3−193880
号公報、特開平4−337076号公報参照)の研究、
開発を行ってきた。また、従来のガスフローが少ない準
静的なプラズマCVDに対して、ガスフローを積極的に
利用すべく回転電極を用いた動的なプラズマCVD(特
開平9−104985号公報参照)を提案している。
【0005】本発明が前述の状況に鑑み、解決しようと
するところは、RFスパッタリング法、減圧下でのプラ
ズマCVD法等の従来の成膜方法による成膜速度より1
0倍以上の高速成膜が可能な大気圧プラズマCVDによ
って基板上に作製したアモルファスSiC薄膜を提供す
る点にある。そして、このアモルファスSiC薄膜を、
光電子デバイスや太陽電池、X線リソグラフィー用マス
ク、発光ダイオード、カラーセンサ、パワーデバイス用
の半導体材料として提供しようとするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、前述の課題解
決のために、気密チャンバー内に、加熱手段を備えた試
料ステージと円筒形状の回転電極とを配設し、該回転電
極との間に所定のギャップを設けて前記試料ステージに
基板を保持し、気密チャンバー内に導入したSi供給反
応ガスとC供給反応ガス及び不活性ガスからなるキャリ
アガスを少なくとも含む0.1〜10atmの原料ガス
を、高速に回転させた前記回転電極表面で巻き込んで、
前記ギャップを横切るガス流を形成するとともに、回転
電極に高周波電圧を印加してギャップでプラズマを発生
し、反応ガスに基づく高密度ラジカルを生成し、前記試
料ステージと回転電極とを相対的に移動させながらラジ
カル反応によって加熱基板上にSiC薄膜を形成したこ
とを特徴とする大気圧プラズマCVDによるアモルファ
スSiC薄膜を構成した。
【0007】ここで、物理的、電気的特性に優れたアモ
ルファスSiC薄膜を作製するためには、各種のパラメ
ータを最適に設定する必要がある。そこで、本発明は、
投入電力密度(J/l){「投入電力(W)」÷{「プ
ラズマ発生領域を通過する単位時間当たりのガス量(l
/s)」}という物理量を定義し、この投入電力密度の
範囲を、75〜13000J/lとしたのである。更
に、前記回転電極に供給する高周波電力の周波数を、5
0〜300MHzとした。ここで、通常は導体で形成し
た気密チャンバーが電気的に接地されてアース電位とな
っており、回転電極と基板との間のギャップでプラズマ
が発生維持されるのは、誘電率の違いによる電界集中の
ためである。
【0008】また、前記基板の温度を、300〜500
℃の範囲に設定し、成膜速度を15〜40nm/sの範
囲に設定している。そして、前記原料ガスとして、He
にCH4とSiH4及びH2を混合したものを用いてなる
ことが好ましく、更にHeに対してCH4:0.5〜2
体積%、SiH4:0.01〜0.1体積%、H2:0.
5〜2体積%混合したものを用いてなることがより好ま
しい。
【0009】次に、回転電極を高速で回転させることに
よる作用効果を説明する。回転電極を高速で回転させる
ことよって期待できる効果は、反応ガスの高速度供給
及び使用済みガスの高速度排気による成膜速度の大幅な
向上、回転電極表面の高精度な位置決め及び高精度な
ギャップ制御による大幅なガス利用効率及び成膜精度の
向上、回転電極の十分な冷却効果に基づく大電力の投
入による成膜速度の大幅な向上である。以下それらにつ
いて物理的な見地から説明を行う。
【0010】については、流体力学の立場から簡単に
予測できることである。即ち流体力学として取り扱える
ものは、粘性を有する物質についてであり、ガスもその
一つである。ガスを流す場合、固定された境界上では、
ガスの移動速度は0である。その結果、粘性により境界
面はガスの流れに対する障害物となる。それゆえ、固定
された基板及び回転電極のギャップ間にガスを流す場合
は、どちらも障害物となるのである。しかるに高速で回
転する回転電極表面上のガスの速度は、電極表面と同じ
速度になり、障害物どころかガスを加速する原動力とな
る。以上のように、回転電極を高速で回転すればするほ
ど、ガスの供給は容易になるとともに使用済みガスの排
出も容易になり、中性ラジカルの大量供給をすることが
可能になる。
【0011】についても、と同様に流体力学の立場
から説明することができる。固定された境界の中をガス
を流す場合は、境界条件によってガスの流れは左右され
る。それゆえガスの流れを制御しようと思えば、回転電
極を用い、その表面の空間的位置及び速度を制御すれば
良い。ギャップをガスの平均自由行程から見たプラズマ
の発生可能なギャップに近づければ近づけるほど、分子
運動の立場からいってラジカルの使用効率は高くなるこ
とは当然であるし、成膜精度も向上するのは言うまでも
ない。
【0012】については、本発明に係る成膜方法で成
膜速度を向上させるために必要な条件として、ガスの十
分な供給に見合う十分な電力の供給を意味する。これま
で、大電力の投入を妨げているのは、熱的要因に基づく
電極の損傷である。しかるに、高速回転電極を用いれ
ば、電極がプラズマに曝されている部分はほんの一部分
であり、大部分は冷却されている。それゆえ、大電力を
投入しても電極は損傷を受けずに高能率・高精度の加工
が可能になるのである。
【0013】以上のように、回転電極を用いることによ
り、アモルファスSiC薄膜の成膜速度を従来の方法に
比べ10倍以上に高め得ることができることを、理論的
にも予測し、実験的にも実証している。
【0014】
【発明の実施の形態】次に本発明の詳細を添付図面に示
した実施形態に基づいて更に説明する。図1は本発明の
に係る成膜装置の簡略説明図であり、図中符号1は気密
チャンバ、2は回転電極、3は基板、4は試料ステージ
をそれぞれ示している。
【0015】気密チャンバ1は、ステンレス製の容器で
あり、内部に回転電極2と基板3を保持した試料ステー
ジ4を配置している。回転電極2は、表面にアルミナ溶
射処理を施した直径300mm、長さ100mmのアル
ミニウム合金製の円筒型で、外部に設置された高速回転
モータ5によりマグネットカップリング6を介して回転
させる。基板3は、Xステージ7上に設置されている試
料ステージ4上に真空チャックにより固定し、回転電極
2との間に成膜ギャップを形成している。試料ステージ
4は、内蔵したヒータにより大気圧He雰囲気中で最高
600℃まで加熱することができる。成膜ギャップは、
Zステージ8を上下させることにより制御する。Xステ
ージ7を前後方向に移動させることにより、移動距離に
応じた面積の薄膜を形成できる。電源周波数は150M
Hzで、電力はインピーダンスマッチングユニット9を
介して電極部に供給され、電極−基板間ギャップにプラ
ズマを発生させる。電源周波数として150MHzを用
いることで、従来のプラズマCVD法で主に用いられて
いる13.56MHzに比べて荷電粒子の振動振幅が小
さくなることから、成膜ギャップが小さくても反応ガス
を効率良く分解・活性化(中性ラジカルの生成)するこ
とができる。成膜中に発生するパーティクルは、電極回
転に伴う高速ガス流により成膜ギャップ外へ排出される
が、それらパーティクルはフィルタを介したプロセスガ
スの循環により効率良く回収することが可能となってい
る(後述のガス供給循環系)。
【0016】図2は、成膜装置に原料ガスを供給し、回
収・循環させるためのガス供給循環系を示している。先
ず、反応ガスとしてボンベから高純度のSiH4とCH4
とを集積化超高純度ガスシステムに供給するとともに、
He及びH2を精製装置を介して同じく集積化超高純度
ガスシステムに供給して所定割合で混合し、その原料ガ
スをバルブV0を介して大気圧プラズマCVD装置に供
給する。大気圧プラズマCVD装置にはゲートバルブV
G1を介してターボ分子ポンプが接続されており、気密チ
ャンバー1内を高真空に排気できるようになっている。
また、大気圧プラズマCVD装置にはゲートバルブVG2
を介してパーティクル除去フィルターが接続されてお
り、このフィルターを通過して清純化された原料ガスは
ゲートバルブVG3、ガス循環ポンプ、ゲートバルブVG4
を介して再び大気圧プラズマCVD装置に供給される。
また、ターボ分子ポンプ等の各部分は、バルブV1〜V5
を介して排気ポンプに接続されている。そして、排気ポ
ンプの排気にN2パージを施して排ガス処理装置で最終
処理して排気するようになっている。
【0017】次に、実際にa-Si1-xCx薄膜を作製した結
果を示す。先ず、成膜条件は表1に示している。ここ
で、投入電力密度(J/l)を、図3に基づいて定義す
る。つまり、 投入電力密度(J/l)=「投入電力(W)」÷「プラ
ズマ発生領域を通過する単位時間当たりのガス量(l/
s)」 として定義し、 「プラズマ発生領域を通過する単位時間当たりのガス
量」=「プラズマの横幅」×「電極−基板間ギャップ
G」×「平均流速」「平均流速」=「電極の周速度」÷
2 としている。
【0018】
【表1】
【0019】先ず、洗浄したSi基板を試料ステージに
セットし、成膜ギャップを設置しした後、ドライ真空ポ
ンプ及びターボ分子ポンプにより気密チャンバ内を1×
10 -6torrまで排気した。次に、He(不純物濃度:5
ppb以下)、水素(不純物濃度:1ppb以下)、S
iH4(不純物濃度:1ppm以下)、CH4(不純物濃
度:1ppm以下)をマスフローコントローラにより混
合比を制御してチャンバ内に供給し全圧を大気圧とし
た。この状態で、電極を回転させ、ガスを循環させて、
チャンバないに導入したガスを均一に混ぜ合わせるとと
もに、試料ステージを成膜温度まで加熱した。その後、
成膜ギャップに150MHzの高周波電力を供給してプ
ラズマを発生させ成膜を行った。Si(001)基板の
走査距離は100mmとした。
【0020】本発明の成膜法で得られた薄膜の構造は、
透過電子顕微鏡(JEOL製JEM−2000FX、1
00kV)により観察・評価した。膜厚は、走査電子顕
微鏡(HITACHI製S−800)による膜表面及び
断面の観察と、触針式粗さ計により測定した。また、膜
密度は、精密天秤による膜の重さ測定と、その体積から
求めた。更に、赤外線吸収分光法により膜中元素(S
i、C、H)の結合状態の評価を行った。膜中元素のの
含有量は、オージェ電子分光法によりSiとCの含有率
を測定するとともに、赤外線吸収分光法により得られた
Si−Hn及びC−Hn各ピークを解析することにより結
合水素量を算出して求めた。
【0021】作製した薄膜を透過電子顕微鏡で観察した
結果、透過電子線回折像から、ブロードなハローパター
ンが観察され、明視野像から目立ったコントラストは見
られないことから、薄膜の構造はアモルファスであるこ
とが確認できた。また、オージェ電子分光法及び赤外線
吸収分光法による膜の組成分析結果から、本成膜条件下
でa-Si1-xCx:H薄膜が形成されていることを確認した。
【0022】(成膜速度)円筒型の回転電極を用いてい
ることから、電極−基板間に発生する大気圧プラズマ
は、ギャップの最も小さい位置を中心として電極の周方
向に広がりを持っている。このプラズマの広がりの大き
さ(プラズマ長さ)は20〜30mm程度であり、成膜
条件(投入電力、反応ガス濃度等)によって変化する。
そのため、成膜速度は、プラズマ長さを基板走査速度で
除算した時間と膜厚から求めた。
【0023】反応ガス濃度を一定(SiH4濃度:0.
05%、CH4濃度:1%、H2濃度:1%)として投入
電力を大きくしていくと成膜速度は増加するが、300
W以上で飽和傾向にあることが確認されている。また、
表1の成膜条件の範囲内でSiH4濃度及びCH4濃度を
更に濃くしても、同様の結果がえられた。このことか
ら、1000Wの電力を投入すれば、反応ガスを十分に
分解・活性化できることが予想できる。次に、投入電力
を1000W、SiH4濃度を0.05%で一定として
CH4濃度を濃くしていくと、成膜速度は増加するが、
CH4濃度0.5%以上で飽和する。また、投入電力を
1000W、CH4濃度を1%で一定としてSiH4濃度
を濃くしていくと、SiH4濃度0.1%まだ成膜速度
は単調に増加する。これらの結果から、電力が十分に供
給されていれば、成膜に寄与するSiH4とCH4の分子
数の比は一定の値(SiH4C:H4=1:10)をとる
ことが予測される。更に、SiH4濃度が0の場合、即
ちCH4のみでは、成膜は確認されてなかったことか
ら、プラズマ中あるいは膜成長表面においてSiH4
CH4それぞれの分解生成物同士が反応して形成された
前駆体が巻く成長に寄与していることが推測できる。但
し、SiH4に比べてCH4の分解に大きなエネルギーが
必要であることや、CHnラジカルの基板への付着確率
がSiHnラジカルに比べて小さいことなども関係して
いると考えられ、詳細なメカニズムは現段階では不明で
ある。
【0024】(薄膜の測定結果)図4は、a-Si1-xCx
膜速度の投入電力密度依存性を示したものである。投入
電力密度が500J/l以下では、原料ガスの(C
4、SiH4)の十分な分解・活性化ができないと考えら
れる。投入電力密度が500J/l以上では、投入電力
密度の増加とともに成膜速度が減少する傾向にある。こ
れは、投入電力密度の増加により、プラズマ中での各種
ラジカルの状態や密度、基板表面の温度などが変わって
a-Si1-xCx薄膜の成長メカニズムが変化し、その結果と
してa-Si1-xCx薄膜の構造が変化したことを示している
と考えられる。
【0025】回転速度が1000rpmと2000rp
mについてみると、投入電力密度が大きくなり過ぎると
成膜速度が減少していることが分かる。電極回転数を速
くすると、成膜速度が増加する傾向がある。これは、回
転数が速くなるほど、成膜に寄与する各種ラジカルが多
く基板表面に供給されるためである。
【0026】図5は、a-Si1-xCx薄膜中のSi−C結合
濃度の投入電力密度依存性を示し、赤外線吸収分光法に
より測定される750〜800cm-1付近の吸収ピーク
(の伸縮運動に起因)の強度と、の膜厚から、吸収係数
を求めてグラフ化したものである。投入電力密度を増加
することによって、a-Si1-xCx薄膜中のSi−C結合の
形成が促進されることが分かる。これは、投入電力密度
の増加によって、原料ガスであるCH4やSiH4の分解・
活性化が進むためである。同じ投入電力密度でも、電極
回転数を増加することによってSi−C結合の形成が促
進される傾向にある。
【0027】図6は、a-Si1-xCx薄膜中の結合水素濃度
の投入電力密度依存性を示している。投入電力密度の大
幅な増加によって、Si−Hn結合濃度が減少し、逆にC−
Hn結合濃度が増加している。これは、Si−Hn結合のHが
C−Hnで置換されていることを示していると考えられ
る。投入電力密度の大幅な増加によって、Si−C結合
濃度が増加すること(図5のデータ)を裏付けるデータ
であるといえる。
【0028】図7は、a-Si1-xCx薄膜中の組成比の投入
電力密度依存性を示している。投入電力密度の増加によ
って、膜中のCの割合が多くなっていくことが分かる。
投入電力密度の大幅な増加により、膜中のSi−Hn結合の
HがC−Hnで置換されていること(図6のデータ)に関
連したデータである。原料ガスであるCH4やSiH4の濃
度や比率を変化させれば、組成比も変化すると考えられ
る。
【0029】図8は、a-Si1-xCx薄膜中のSi−C結合
濃度の基板温度依存性を示している。黒丸は電極回転数
5000rpm、投入電力密度510J/lの場合、白
抜き三角は電極回転数2000rpm、投入電力密度5
300J/lの場合、黒四角は電極回転数1000rp
m、投入電力密度5300J/lの場合をそれぞれ示し
ている。基板温度を300℃以上に高くすることによっ
て、膜中の水素濃度が減少し(図9参照)、Si−C結合
の形成が促進されることが分かる。基板温度500℃を
境にして、膜の構造が大きく変化していることが推測で
きる。
【0030】図9は、a-Si1-xCx薄膜中の結合水素濃度
の基板温度依存性を示している。グラフ中の黒丸、白抜
き三角、黒四角は図8と同様である。基板温度の上昇に
よって、膜中の水素濃度が減少している様子がわかる、
Si−Hn結合よりもむしろC−Hn結合が減少している。こ
のことから、膜中に多く存在するC−Hn結合の水素が膜
成長中に脱離し、Si−Hn結合の形成が促進されているも
のと考えられる。図8と同様、500℃を境にして、膜
構造が大きく変化していることが推測できる。
【0031】図10は、a-Si1-xCx薄膜中の組成比の基
板温度依存性を示している。グラフ中の黒丸、白抜き三
角、黒四角は図8と同様である。同じ投入電力密度で
も、電極回転数を増加すると、組成比が変化することが
分かる。これは、おそらく、膜形成ラジカルであるCHn
の基板への付着確率がSiHnに比べて小さい(約1/2
0)ことが原因である。電極回転数が速くなるほどラジ
カルのプラズマ中滞在時間が短くなり、結果としてCHn
の付着量が減少することになる。
【0032】図11は、図4のグラフにおいて電極回転
数にはとらわれずに、各データを投入電力密度のみから
見た場合の、成膜速度の投入電力密度依存性を示してい
る。図12(a)、(b)は、図11のグラフ中のAの
条件でそれぞれ基板温度300℃、500℃で作製した
薄膜を15%KOH水溶液で100時間エッチングした
後の表面SEM写真を示している。これにより、基板温
度が300℃(図12(a)参照)では、多数のエッチ
ピットが観察され、a-Si1-xCx薄膜中にSiの偏析やピ
ンホールが存在していることが分かる。それに対して、
基板温度を500℃(図12(b)参照)に上げた場合
には、前述のエッチピットは殆ど観察されなかった。
【0033】また、図13(a)、(b)は、図11の
グラフ中のBの条件でそれぞれ基板温度300℃、50
0℃で作製した薄膜を15%KOH水溶液で100時間
エッチングした後の表面SEM写真を示している。この
条件では、基板温度が300℃図13(a)参照)の場
合でも、エッチピットの数が図12(a)に示したもの
より遥かに少なく、また基板温度が500℃(図13
(b)参照)には、エッチピットは殆ど観察されなかっ
た。
【0034】
【発明の効果】以上にしてなる本発明によれば、成膜条
件を最適に設定することにより、偏析やピンホール等の
欠陥のないストイキオメトリック(Si:C=1:1)
なアモルファスSiC薄膜の形成を実現できるととも
に、従来の成膜方法による成膜速度より10倍以上の高
速成膜によって作製できるのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る大気圧プラズマCVD装置の概略
図である。
【図2】ガス供給、循環・回収系を示す配置図である。
【図3】回転電極と基板間の部分拡大断面図である。
【図4】a-Si1-xCx成膜速度の投入電力密度依存性を示
したグラフである。
【図5】a-Si1-xCx薄膜中のSi−C結合濃度の投入電
力密度依存性を示したグラフである。
【図6】a-Si1-xCx薄膜中の結合水素濃度の投入電力密
度依存性を示したグラフである。
【図7】a-Si1-xCx薄膜中の組成比の投入電力密度依存
性を示したグラフである。
【図8】a-Si1-xCx薄膜中のSi−C結合濃度の基板温
度依存性を示したグラフである。
【図9】a-Si1-xCx薄膜中の結合水素濃度の基板温度依
存性を示したグラフである。
【図10】a-Si1-xCx薄膜中の組成比の基板温度依存性
を示したグラフである。
【図11】a-Si1-xCx成膜速度の投入電力密度依存性を
示したグラフである。
【図12】図11中のAの条件でのa-Si1-xCx薄膜の1
5%KOH水溶液によるエッチング後の表面SEM写真
であり、(a)は基板温度300℃、(b)は基板温度
500℃の場合をそれぞれ示している。
【図13】図11中のBの条件でのa-Si1-xCx薄膜の1
5%KOH水溶液によるエッチング後の表面SEM写真
であり、(a)は基板温度300℃、(b)は基板温度
500℃の場合をそれぞれ示している。
【符号の説明】
1 気密チャンバ 2 回転電極 3 基板 4 試料ステージ 5 高速回転モータ 6 マグネットカップリング 7 Xステージ 8 Zステージ 9 インピーダンスマッチングユニット
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4G046 MA14 MB03 MC03 MC04 4K030 AA06 AA10 AA16 AA17 BA37 CA04 FA03 GA12 JA06 JA09 JA10 JA12 JA16 JA18 KA23 KA30 5F045 AA08 AB06 AC01 AC17 AD07 AD08 AD09 AE29 AF03 BB09 BB15 DA68 DP02 EB02 EE12 EG03 EH07 EH12 EH16 EM04 EM10

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 気密チャンバー内に、加熱手段を備えた
    試料ステージと円筒形状の回転電極とを配設し、該回転
    電極との間に所定のギャップを設けて前記試料ステージ
    に基板を保持し、気密チャンバー内に導入したSi供給
    反応ガスとC供給反応ガス及び不活性ガスからなるキャ
    リアガスを少なくとも含む0.1〜10atmの原料ガ
    スを、高速に回転させた前記回転電極表面で巻き込ん
    で、前記ギャップを横切るガス流を形成するとともに、
    回転電極に高周波電力を供給してギャップでプラズマを
    発生し、反応ガスに基づく高密度ラジカルを生成し、前
    記試料ステージと回転電極とを相対的に移動させながら
    ラジカル反応によって加熱基板上にSiC薄膜を形成し
    たことを特徴とする大気圧プラズマCVDによるアモル
    ファスSiC薄膜。
  2. 【請求項2】 投入電力密度(J/l){「投入電力
    (W)」÷「プラズマ発生領域を通過する単位時間当た
    りのガス量(l/s)」}が、75〜13000J/l
    の範囲である請求項1記載の大気圧プラズマCVDによ
    るアモルファスSiC薄膜。
  3. 【請求項3】 前記回転電極に供給する高周波電力の周
    波数が、50〜300MHzである請求項1又は2記載
    の大気圧プラズマCVDによるアモルファスSiC薄
    膜。
  4. 【請求項4】 前記基板の温度が、300〜500℃の
    範囲である請求項1〜3何れかに記載の大気圧プラズマ
    CVDによるアモルファスSiC薄膜。
  5. 【請求項5】 成膜速度が15〜40nm/sの範囲で
    ある請求項1〜4何れかに記載の大気圧プラズマCVD
    によるアモルファスSiC薄膜。
  6. 【請求項6】 前記原料ガスとして、HeにCH4とS
    iH4及びH2を混合したものを用いてなる請求項1〜5
    何れかに記載の大気圧プラズマCVDによるアモルファ
    スSiC薄膜。
  7. 【請求項7】 Heに対してCH4:0.5〜2体積
    %、SiH4:0.01〜0.1体積%、H2:0.5〜
    2体積%混合し、たものを用いてなる請求項6記載の大
    気圧プラズマCVDによるアモルファスSiC薄膜。
  8. 【請求項8】 SiH4:CH4=1:10としてなる請
    求項6又は7記載の大気圧プラズマCVDによるアモル
    ファスSiC薄膜。
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