JP2001343090A - 銅又は銅合金管及び耐食性皮膜付き管 - Google Patents

銅又は銅合金管及び耐食性皮膜付き管

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JP2001343090A
JP2001343090A JP2000391222A JP2000391222A JP2001343090A JP 2001343090 A JP2001343090 A JP 2001343090A JP 2000391222 A JP2000391222 A JP 2000391222A JP 2000391222 A JP2000391222 A JP 2000391222A JP 2001343090 A JP2001343090 A JP 2001343090A
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copper
tube
film
copper tube
ceramic film
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Tetsuo Hosoki
哲郎 細木
Chikara Saeki
主税 佐伯
Akinori Tsuchiya
昭則 土屋
Kozo Saeki
公三 佐伯
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Kobe Steel Ltd
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Kobe Steel Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 使用環境の違い等による水質を選ばず、低温
から高温まで、耐孔食性及び耐潰食性等の耐食性を長時
間良好に保つことができ、皮膜との密着性が優れた銅又
は銅合金管及び耐食性皮膜付き管を提供する。 【解決手段】 セラミックス皮膜形成前において、銅又
は銅合金管の表面に残留する残留炭素量が0.15mg
/dm2以下であり、この銅又は銅合金管の表面にセラ
ミックス皮膜が形成される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、給水給湯用及び空
調暖房用等の建築配管、給湯器用熱交換器並びに水を使
用した熱交換器等に使用される耐食性皮膜付き管及びそ
れに使用される銅又は銅合金管に関し、特に、水又は水
溶液等に対する孔食及び潰食等に対する耐食性並びに皮
膜の密着性が優れた耐食性皮膜付き管及びそれに使用さ
れる銅又は銅合金管に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、銅又は銅合金管(以下、銅管又
は銅合金管を総称して銅管という)は耐食性、靱性、展
延性及びろう付性等が優れているため、特に、内部に水
又は水溶液等を流通させる建築配管、給湯用湯沸し器、
熱交換器及び水熱交換器等に使用されている。これは、
低温から高温まで広い温度範囲において水に対する高い
耐食性が要求されているためである。しかしながら、こ
のような耐食性が高い銅を使用しても、特に腐食性が高
い水質では、銅管の使用中にその一部に腐食により貫通
孔が形成され、内部の水等が漏れ出して前記用途として
使用できなくなる事故が発生しやすい。
【0003】これらの事故は主として孔食によって引き
起こされることが多い。孔食は、銅管の内面のごく一部
において、管の肉厚方向に腐食が進行し、点状の孔が形
成される腐食である。孔食は、曲がり部の近傍、流速の
遅くなる部分並びに継目部及びその近傍等の管内を流れ
る水のよどみ部において発生しやすい。これらの部位に
おいては、管内表面に堆積物が形成されやすく、その部
分で酸素濃淡電池が形成され、堆積物の下で孔食が発生
するからである。このような孔食は、水のpH並びに水
の中に含有されるSO4 2-/HCO3 -、残留塩素、溶性
珪酸及び遊離炭酸等の腐食因子の量の影響を受け、その
発生しやすさが異なる。孔食対策としては、水質を変え
ることが考えられる。しかし、実際問題として水質を変
えることは難しく材料面からの対策が求められている。
【0004】また、特に給水給湯用銅管の曲がり部又は
水圧が低い返湯管においては、流速の変化によって溶存
ガスが気化しやすく、気泡と銅管内面との摩擦及び気泡
の破壊による衝撃等の機械的な力によって銅管内面に潰
食が起こりやすい。その対策としては、曲がり部の曲率
及び数の減少等の設計変更並びに流速の制限等が考えら
れているが、これらの対策は実現性に乏しいため、材料
面からの対策が求められている。
【0005】従来、孔食を防止するため、次のような材
料面からの対策が講じられている。通常、銅管の成形後
に、銅管内面には不可避的に銅管加工油の残留により炭
素皮膜が存在する。これは、抽伸潤滑油を使用して銅管
を抽伸した後、その銅管コイルを焼鈍するとき、管内に
残存する抽伸潤滑油が分解して管外に排出される際、こ
の潤滑油の分解が不十分であるか、又は分解された潤滑
油が管外に排出されないうちに焼鈍が終了し、その後銅
管内部に潤滑油が残存したり、炭化物が形成されるため
である。残油及び残炭が多い銅管に通水すると局部電池
が形成されやすく、孔食が発生しやすい。従って、第1
の方法として、残留炭素及び残留油分の除去が挙げられ
る。
【0006】残留炭素及び残留油分は、空気中での加熱
燃焼により除去できるが、同時に銅管が酸化されてしま
い、これを制御することは困難である。従って、例えば
特開平5−126483号公報に記載の熱交換器の製造
方法では、炭素皮膜の残留を防ぐため、製造工程中に銅
管を加熱して炭素皮膜を燃焼させ、わずかに残った残留
炭素分も加熱時に生成された酸化物と一緒に、例えば空
気又は水等を圧送することにより除去する技術が開示さ
れている。また、残留炭素量を低減するために、不活性
ガスにより銅管内部をパージして焼鈍するか又は内部の
ガスを吸引する等の方法もある。
【0007】孔食防止を図った第2の方法としては、管
内面に保護皮膜を形成する方法がある。例えば、銅管内
面を適切な条件で酸化し、管内の残留炭素量を低減さ
せ、且つCuO及び/又はCu2O(以下、銅酸化膜と
いう)の酸化膜を形成する方法(特開平6−49620
号公報)と、銅管内面にSnをめっきしてSn被覆層を
形成する方法(米国特許2282511号)等がある。
【0008】また、第3の方法として、管を形成する銅
を合金化して耐孔食性を向上させる方法がある。例え
ば、特開平6−184669号公報に記載の配管は、銅
にZrを0.005乃至1重量%含有させ、必要に応じ
てP、Sn及びAgのうち、1種又は2種以上を少量含
有させ、更にTi及び/又はR(Yを除く希土類元素)
を少量含有させた銅合金からなり、Zrを含有させるこ
とにより耐孔食性を向上させている(従来例1)。ま
た、神戸製鋼技報Vol.38 No.4(1988)に記載の銅管はC
u−Al−Sn系合金からなり、Al及びSnを微量に
添加することにより銅管の自然電位の上昇を抑制するこ
とができ、燐脱酸銅からなる銅管と比較すると耐孔食性
を向上させることができる(従来例2)。
【0009】また、潰食に対する材料面からの対策とし
ても、孔食に対する対策と同様に、内面にめっき膜が形
成された銅管(特開平8−120456号公報)、合金
化により強度向上及び耐食性向上を図った銅管(特開昭
61−231131号公報)並びに内面に樹脂が被覆さ
れた銅管(特開平9−242983号公報)等が開示さ
れている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、第1の
方法に示す残留炭素量を低下させる方法では、水質中の
腐食因子からの腐食を妨げることは困難であり、孔食及
び潰食の根本的な解決は難しい。また、管内の不活性ガ
スパージ又は吸引等の方法では焼鈍設備の改造が必要に
なったり、長尺コイルにおいては焼鈍時間を長くするこ
とが必要になる等の理由により生産性が低下してしまう
という問題点がある。
【0011】また、第2の方法の管内面に保護皮膜を形
成する方法において、保護皮膜として銅酸化膜を使用す
る場合、形成された銅酸化膜は脆く、更に、耐食性に有
効な膜厚が厚い酸化膜を形成することが難しいため、長
時間に亘り十分な耐食性を保つことが難しい。また、酸
化膜が部分的に剥がれてしまうと局部電池が形成され、
耐食性がかえって低下しやすくなるという問題点があ
る。
【0012】また、保護皮膜としてSn被覆層を形成す
る場合は、Sn被覆層を形成するためのめっきが必要で
あるが、長尺の銅管の内部にめっきをするには無電解め
っきとなる。無電解めっきにおいてはピンホール等の欠
陥が存在しやすい。また、銅管内部に残炭、残油又は酸
化物等が残存しているとSnめっきの密着強度が低下
し、めっきの被覆が部分的に剥がれやすい。めっきの剥
離が部分的に発生すると局部電池の形成により耐食性が
かえって低下する。更に、給湯用銅管等のように、高温
で使用するものでは、めっき層のSnと母材のCuとが
反応し、Snめっき層が脆い金属間化合物に変化してい
くため剥離しやすく、また、Snめっき層の電位が母材
より高くなり銅管の耐食性が低下してしまうという問題
点がある。
【0013】また、第3の方法として、従来例1及び従
来例2等に記載の銅を合金化する方法は、銅の合金化に
よって銅の自然電極電位が変化し、また銅の硬さが大き
くなるため耐食性は改善される。しかしながら、合金化
によって、変形抵抗及び加工硬化係数が大きくなるた
め、製造時の焼鈍回数の増加及び小径管の製造が難しく
なる等の問題が生じ、製造コストの増大を招きやすいと
いう問題点がある。
【0014】更に、樹脂を内面に被覆する方法では、経
時変化による樹脂と銅管との密着性が低下するという問
題点がある。また、内面樹脂被覆銅管のリサイクル等に
ついて予め考慮しておく必要がある。
【0015】このように、腐食の因子としては外的因子
(水質)、有機物の表面付着等による局部的な電位上昇
による腐食電池の形成、水中の溶在酸素の濃淡部位の出
現による腐食電池の形成及び腐食電池を形成したときの
水を触媒とした電子の受け渡しによる金属の溶出(局部
アノードの存在)等が考えられるが、現状ではこのよう
な腐食因子に対して、高い耐腐食性を有する銅又は銅合
金管がない。
【0016】本発明はかかる問題点に鑑みてなされたも
のであって、使用環境の違い等による水質を選ばず、低
温から高温まで、耐孔食性及び耐潰食性等の耐食性を長
時間良好に保つことができ、皮膜との密着性が優れた銅
又は銅合金管及び耐食性皮膜付き管を提供することを目
的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】本発明に係る銅又は銅合
金管は、表面にセラミックス皮膜を形成するための銅又
は銅合金管であって、セラミックス皮膜の形成前におい
て、前記銅又は銅合金管の表面に残留する残留炭素量が
0.15mg/dm2以下であることを特徴とする。
【0018】また、セラミックス皮膜形成前において、
前記銅又は銅合金管の表面に残留する残油量が3mg/
dm2以下であることが好ましい。
【0019】更に、前記銅又は銅合金管に含有される酸
素の含有量が50質量ppm以下であることが好まし
く、水素の含有量は2質量ppm以下であることが好ま
しい。この場合、前記酸素の含有量を[O]とし、水素
の含有量を[H]としたとき、[H]2×[O]が70
以下であることが望ましい。
【0020】更にまた、セラミックス皮膜形成前におい
て、前記銅又は銅合金管の肉厚方向に測定した結晶粒径
が70μm以下であることが好ましい。また、セラミッ
クス皮膜形成前において、前記銅又は銅合金管の表面に
存在する酸化膜の膜厚がCuO換算で0.05μm以下
であることが好ましい。
【0021】更に、セラミックス皮膜形成前において、
前記銅又は銅合金管の管軸方向の平均表面粗さRaが
0.3μm以下であることが好ましい。この場合、平均
表面粗さRaとは、JIS B 0601−1982に
規定されている中心線平均粗さのことである。
【0022】本発明に係る耐食性皮膜付き管は、請求項
1乃至8に記載の銅又は銅合金管の表面にセラミックス
皮膜が形成されていることを特徴とする。この場合、セ
ラミックス皮膜は、例えば、非晶質とすることができ
る。
【0023】なお、銅又は銅合金管の表面とは、内面及
び外面の双方又は一方を含むものである。
【0024】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施例について詳
しく説明する。上述したように、建築用配管又は熱交換
器等に使用する銅管は、温度差又は水質の違いにかかわ
らず長時間使用しても剥がれることなく耐食性及び皮膜
の密着強度等が優れている必要がある。本願発明者等は
このような銅管の腐食及び皮膜の密着強度の問題を解決
するべく鋭意実験研究した結果、セラミックス皮膜は化
学的に安定で水及び水溶液等と反応しないため、この皮
膜を銅管の内面に形成することにより耐食性を向上させ
ることができることを見知した。また、銅管の表面の残
留炭素量、残留油量、酸化膜厚及び平均表面粗さ並びに
銅管の酸素含有量、銅管の水素含有量及び結晶粒径等を
適切に規定することにより、銅管表面に形成されるセラ
ミックス皮膜の密着強度を向上させることができること
を見出した。
【0025】本発明において、銅又は銅合金管の主な用
途は内部に水又は水溶液等を流通させる建築配管、給湯
湯沸し器、熱交換器及び水熱交換器等に使用されるもの
であり、その銅又は銅合金管の表面にセラミックス皮膜
が形成されている。
【0026】また、銅又は銅合金管の材質としては、無
酸素銅、りん脱酸銅、タフピッチ銅、Cu−Fe−P系
合金、Cu−Mn−P系合金、Cu−Sn−P系合金及
びCu−Zn系合金等である。しかし、この他の銅合金
であっても管に加工できるものであれば、全て適用する
ことができる。
【0027】熱交換器に組み込まれる銅管の形状として
は、殆どが平滑管又は内面溝付管である。しかし、本発
明の銅又は銅合金管は外面フィン加工管及びコルゲート
管等の全ての形状のものについて適用可能である。
【0028】以下、本発明の耐食性皮膜付き管に使用さ
れる銅又は銅合金管の数値限定理由について説明する。
【0029】残留炭素量:0.15mg/dm2 以下 セラミックス皮膜形成前の銅管の表面に残留する残留炭
素量が0.15mg/dm2以下であると、銅管の表面
に形成されるセラミック皮膜は十分な密着力が得られ
る。一方、セラミックス皮膜形成前の銅管の表面に残留
する残留炭素量が0.15mg/dm2を超えると、セ
ラミックス皮膜の銅管素地に対する接合強度が低下す
る。このため、銅管の表面に形成されるセラミックス皮
膜は十分な密着力を得ることができない。従って、セラ
ミックス皮膜形成前において、銅管の表面に残留する残
留炭素量は0.15mg/dm2以下とする。なお、前
記残留炭素量は0.12mg/dm2以下であることが
より望ましく、0.1mg/dm2以下であることが更
に望ましい。
【0030】銅管の残留炭素量は、銅管の製造工程で使
用する圧延油、転造油及び抽伸油等の油、焼鈍雰囲気
(雰囲気の酸素含有量及び還元ガスの含有量等)並びに
焼鈍条件(焼鈍温度及び焼鈍時間)によって変化する。
本発明の残留炭素量の達成は、例えば潤滑性が良く、且
つ残留炭素量が少ない油の選定並びに適正な焼鈍雰囲気
及び条件の選定等で可能である。
【0031】残油量:3mg/dm2 以下 セラミックス皮膜形成前の銅管の表面に残留する残油量
が3mg/dm2以下であると、銅管の表面に形成され
るセラミック皮膜の密着力がより一層向上する。一方、
セラミックス皮膜形成前の銅管の表面に残留する残留炭
素量が3mg/dm2を超えると、セラミックス皮膜の
銅管素地に対する接合強度が低下するので、銅管の表面
に形成されるセラミックス皮膜の密着力を十分に得られ
ない虞れがある。従って、セラミックス皮膜形成前にお
いて、銅管の表面に残留する残油量は3mg/dm2
下とすることが好ましい。なお、前記残油量は2.5m
g/dm2以下であることがより望ましく、2mg/d
2以下であることが更に好ましい。銅管の残油量につ
いても、前述の残留炭素量と同様な考え方で制御可能で
ある。
【0032】酸素の含有量:50質量ppm以下 銅管の酸素の含有量が50質量ppmを超えると、銅管
の表面に酸化膜が形成され、銅管の表面に形成されるセ
ラミックス皮膜の密着力が低下する虞れがある。従っ
て、銅管は酸素の含有量が50質量ppm以下であるこ
とが好ましい。なお、銅管の酸素量は40質量ppm以
下であることがより好ましく、30質量ppm以下であ
ることが更に好ましい。
【0033】銅管の酸素含有量及び後述する銅管の水素
含有量は、銅管を製造するために造塊された鋳塊におい
てほぼ決定される。即ち、鋳塊の酸素及び水素含有量が
ほぼそのまま銅管の酸素及び水素含有量となる。本発明
の銅管においては、酸素及び水素含有量をできるだけ少
なくすることが望ましい。しかし、通常大気中で溶解鋳
造が行われるため、酸素及び水素含有量を共に0にする
ことは現実的には難しい。しかしながら、溶解鋳造原
料、溶解鋳造に使用する溶湯被覆材(フラックス及び木
炭等)、鋳型、治具等の乾燥、溶解鋳造時の溶湯表面の
木炭、フラックス等によるカバリング及び溶湯の不活性
ガスの吹込み等により、鋳塊の酸素及び水素含有量を本
発明の規定値に保つことが可能である。
【0034】水素の含有量:2質量ppm以下 銅管の水素の含有量が2質量ppmを超えると、セラミ
ックス皮膜を形成処理するとき、又は銅管を使用中に、
下記化学式1に示すような化学反応が生じ、皮膜と銅管
の素地との界面にボイドが形成され皮膜を剥離させる虞
れがある。従って、銅管は水素の含有量が2質量ppm
以下であることが好ましく、1質量ppm以下であるこ
とがより好ましく、0.7質量ppm以下であることが
更に好ましい。
【0035】
【化1】
【0036】[H]2 ×[O]:70以下 酸素の含有量を[O]とし、水素の含有量を[H]とし
たとき、[H]2×[O]が70以下であると、表面に
セラミックス皮膜等が形成された状態で銅管を高温環境
で使用する場合、又は皮膜を形成する際に加熱処理する
場合に、銅管から発生する水蒸気により皮膜の膨れ等が
発生しない。一方、[H]2×[O]が70を超えると
きに、銅管が高温に曝されると、水素と酸素との反応に
より、水蒸気が発生しやすくなり、セラミックス皮膜の
密着強度が低下する虞れがある。従って、酸素の含有量
を[O]とし、水素の含有量を[H]としたとき、
[H] 2×[O]は70以下であることが好ましく、更
に[H]2×[O]は50以下であることがより好まし
く、[H]2×[O]は30以下であることが更に好ま
しい。
【0037】肉厚方向に測定した結晶粒径:70μm以
セラミックス皮膜形成前の銅管の肉厚方向に測定した結
晶粒径が70μm以下であると、銅管を曲げ加工したと
きに、銅管の表面に肌荒れが生じない。一方、セラミッ
クス皮膜形成前の銅管の肉厚方向に測定した結晶粒径が
70μmを超えると、銅管を曲げ加工したときに、銅管
の表面に肌荒れが生じる。このため、銅管の表面に形成
されるセラミックス皮膜の密着力が劣化し、皮膜が剥離
するか、又は皮膜に割れ等が発生する虞れがある。従っ
て、セラミックス皮膜形成前において、銅管の肉厚方向
に測定した結晶粒径は70μm以下であることが好まし
い。なお、セラミックス皮膜の形成工程において、加熱
処理を含む場合があるが、この加熱温度又は加熱時間に
よっては、二次再結晶等により銅管の結晶粒が加熱前よ
り成長することがある。このとき、結晶粒径が70μm
を超えた場合は、セラミックス皮膜形成後において、曲
げ加工を行うと、結晶粒界に生じる段差の部分でセラミ
ックス皮膜が剥離しやすくなる。このため、セラミック
ス皮膜形成後においても、銅管の肉厚方向に測定した平
均結晶粒径は70μm以下であることが好ましく、50
μm以下であることがより好ましく、30μm以下であ
ることが更に好ましい。
【0038】銅管の結晶粒径は、銅管の組成及び加工熱
処理工程により決定される。熱間押出し温度、冷間圧延
及び冷間抽伸による加工率及び焼鈍温度等を適当に組み
合わせることにより、銅管の結晶粒径を本発明に規定し
た値とすることが可能である。
【0039】管軸方向の平均表面粗さ(JIS B 0
601−1982)Ra:0.3μm以下 セラミックス皮膜形成前の銅管の管軸方向における平均
表面粗さRaは、JIS B 0601−1982に規
定されている中心線平均粗さとした。このRaが0.3
μmを超えると、セラミックス皮膜の膜厚が不均一にな
り、銅管を曲げ加工した場合、又は銅管を使用している
ときに皮膜に膨張若しくは収縮等の変形が生じた場合、
皮膜に応力が集中しやすくなり、皮膜が剥離しやすくな
る。従って、セラミックス皮膜形成前において、管軸方
向の平均表面粗さRaは0.3μm以下とすることが好
ましい。銅管の表面粗さは、抽伸ダイスの表面粗さによ
り決定されるため、本発明に規定した表面粗さを達成で
きる抽伸ダイスを適当に選択すれば良い。なお、サンド
ブラスト等により銅管の表面を少し粗くし、銅管表面に
付着している残留炭素量又は残油量を更に低減させる方
法を使用してもよい。
【0040】酸化膜の膜厚:CuO換算で0.05μm
以下 セラミックス皮膜形成前の銅管の表面に酸化膜が存在す
る場合、即ち、銅管とセラミックス皮膜との間に酸化膜
が存在する場合、セラミックスが酸化膜と銅管素地との
密着性を阻害し、酸化膜と銅管素地との結合力が小さく
なる。このため、酸化膜の上にセラミックス皮膜が形成
された場合、酸化膜と銅管素地との界面で剥離が起こり
やすくなる。この酸化膜の膜厚がCuO換算で0.05
μmを超えると、セラミックス皮膜は十分な密着強度が
得られず、例えば銅管内部に水を流した場合に、セラミ
ックス皮膜の剥離が発生し、剥離部においては局部電池
等が形成され、かえって孔食が発生しやすくなる。従っ
て、セラミックス皮膜形成前において、銅管の表面の酸
化膜の膜厚はCuO換算で0.05μm以下とすること
が好ましい。銅管の酸化膜厚は、銅管の焼鈍雰囲気(雰
囲気の酸素含有量及び還元ガス含有量)及び焼鈍条件
(焼鈍温度及び焼鈍時間)により変化する。従って、焼
鈍雰囲気と焼鈍条件とを適当に組み合わせることによ
り、本発明の酸化膜厚を達成することができる。
【0041】銅の酸化には酸化第2銅(CuO)及び酸
化第1銅(Cu2O)の2種類の形態があり、これらは
銅の価数が異なり夫々2価(Cu2+)及び1価(C
+)である。また、銅合金の場合は、銅の酸化物以外
に合金元素の酸化物が形成されていることもある。この
ような酸化皮膜の測定は、電気化学的手法(カソード還
元法)により行なうことができる。実際の酸化物はCu
O、Cu2O及び添加元素の酸化物等があるが、本発明
においては、それらが全てCuOであったとみなしたと
きの膜厚を酸化膜の膜厚とする。そこで、酸化膜の膜厚
T(Å)、分子量M(CuO:76.9(g))、電流
密度i(mA/cm2)、生成物1分子の還元に対する
電子数n(CuO:2)、生成物の密度ρ(CuO:
6.3(g/cm3))、ファラデー数F(96500
(C/mol))とすると、下記数式1が成り立つ。こ
れにより、CuOの膜厚が算出される。
【0042】
【数1】 T=((M×i×t)/(n×ρ×F))×105
【0043】本発明において、銅管の表面に形成させる
セラミックス皮膜は水及び酸素等の透過・浸透を許さな
いものであるため、セラミックス皮膜形成後は銅管の酸
化膜の厚さは変化しない。しかし、例えば後述の実施例
のように、セラミックス皮膜処理液体を加熱硬化させて
セラミックス皮膜を形成させる場合、加熱雰囲気の酸素
分圧が高いと、処理液中を透過して酸素が銅管の表面に
到達し、銅管の酸化膜が更に成長することがある。セラ
ミックス皮膜形成前に形成されていた酸化膜及びセラミ
ックス皮膜形成中に成長した酸化膜厚の合計値が0.1
μmを超えると、セラミックス皮膜が剥離しやすくなる
ため、これらの酸化膜厚の合計値は0.1μm以下であ
ることが望ましく、より望ましくは0.08μm以下、
更に望ましくは0.06μm以下である。
【0044】なお、この酸化膜はセラミックス皮膜を形
成した銅管を発熱が少ない方法で切断し、切断面を走査
型電子顕微鏡(Scanning electron microscope(SE
M))等で2000倍以上の倍率で観察することがで
き、これにより、酸化膜厚を測定することができる。ま
た、酸化膜の成長が激しい場合には、セラミックス皮膜
と銅管素地との間に隙間又はひび割れが観察されること
がある。
【0045】以下に、本発明において、銅管の表面に形
成されるセラミックス皮膜及びその形成方法について説
明する。
【0046】本発明において、銅管の表面に形成される
セラミックス皮膜としては、銅管の表面に強固に接着
し、水等の液体に対して耐食性及び耐摩耗性を持つ緻密
な材質であると共に、銅管の膨張・収縮に伴ってある程
度追随して変形する性質を持つことが望ましい。
【0047】このような性質を持つセラミックスとし
て、非晶質セラミックスが知られており、例えばSiO
2、ZrO2、SiO2・ZrO2、Al23及びTiO2
の酸化物のうち、いずれか1種又は2種以上を主成分と
する金属アルコキシド系重合体等を採用すれば良い。こ
れらの非晶質セラミックス皮膜を伝熱管内面に形成させ
るには、前記酸化物の内の1種又は2種以上を含む金属
アルコキシド系重合体ポリマーに適宜無機フィラ−を加
えた物をアルコールで適当な濃度に希釈して伝熱管内部
に塗布し(スプレー又は浸漬)、前記伝熱管を還元性又
は非酸化性雰囲気中にて、50乃至500℃の温度に加
熱し、所定時間経過後室温まで冷却することにより、作
製することができる。
【0048】また、所望の特性を満たすものであれば、
金属アルコキシド系に変えてアルカリ金属塩系の重合体
ポリマーを使用することも可能である。このようにして
作製したセラミックスは、以下に示すような多くの優れ
た特性を備えるため、本発明の用途として最適である。 硬さが大きく、冷媒との摩耗により消耗し難い。 表面が滑らかで冷媒の流れを乱さない。 特にフロンのような冷媒と反応せず、長時間冷媒に曝
された状態にあっても変質を起こさない。 銅又は銅合金との接着が強固であり、長時間安定に所
望の特性を保つことができる。 低温から高温まで安定であり、熱交換器の温度が変わ
っても特性を持続できる。 皮膜を非常に薄くしても凹みの形状を長時間維持でき
るので、伝熱性能を損なうことがない。 また、例えば、内面にセラミックス皮膜が形成された
銅管をそのままの状態で溶解炉に投入すると、溶解過程
において、セラミックス皮膜は溶湯表面に分離して、ス
ラグとなるため、リサイクルの観点からも優れている。
この銅溶湯を精錬(脱ガス及びノロ曳き)後鋳造するこ
とにより、銅として再生することが可能である。
【0049】前述の非晶質セラミックス皮膜処理液とし
て、例えば下記化学式2に示すSi−CH3結合及びS
i−O結合を含む構成を有する金属アルコキシド系ポリ
マーを適当な濃度にアルコールで希釈した後、この処理
溶液を銅管内面に塗布する。そして、銅管内面に溶液を
塗布した後、これを適当な条件で熱処理すると、管内面
にSi−CH3結合及びSi−O結合を有する均一な非
晶質セラミックス皮膜が形成される。
【0050】
【化2】
【0051】前記処理液は熱処理による加熱により縮重
合反応を起こして、OH基の酸素の手が切れて他の酸素
又はSiと結合し、下記化学式3に示す構造を有する非
晶質セラミックス皮膜が形成される。
【0052】
【化3】
【0053】上記化学式3に示す構造において、非晶質
皮膜に良好な耐久性と表面滑性とを合わせて持つか否か
は、作製した非晶質セラミックス被覆銅管を分析して、
フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)によるSi
−CH3結合に対するSi−O結合の伸縮ピーク面積比
(Si−O)/(Si−CH3)(以下、ピーク面積比
という)で判定することが可能である。なお、以下の理
由によりピーク面積比の値を8乃至20とすることが望
ましい。
【0054】非晶質セラミックス皮膜のSi−CH3
合に対するSi−O結合のFT−IRによる伸縮ピーク
面積比(Si−O)/(Si−CH3)の大きさは、皮
膜の非晶質構造中におけるメチル基の数に対応する。皮
膜は化学式3に示すように、Si4+にメチル基が結合す
ると、Si4+のネットワークが壊れる。ピーク面積比は
このような皮膜の非晶質構造中における欠陥の多さに対
応し、皮膜の硬さ及び変形能等に影響する。ピーク面積
比が8未満でメチル基が多いと、非晶質構造中の欠陥が
多くなり、セラミックス皮膜の強度が低下する。また、
皮膜が形成されていない場合も発生して耐食性を長期間
安定に保てなくなる。一方、ピーク面積比が20を超
え、メチル基が少ないと、皮膜の非晶質構造中の欠陥が
少なくなって、皮膜の変形能が低下し、銅又は銅合金管
の曲げ加工又は加熱による素地の熱膨張に追従せず、割
れを起こしやすくなる。従って、ピーク面積比は8乃至
20とすることが好ましい。
【0055】
【実施例】以下、本発明の実施例に係る銅又は銅合金管
及び耐食性皮膜付き管について、本発明範囲から外れる
比較例と比較して具体的に説明する。
【0056】第1実施例 作製しようとする平滑管が、CuにPを0.025乃至
0.035質量%含有する銅合金管となるように、電気
銅及びCu−P:15質量%の中間合金を配合し、通常
の溶解鋳造法によりビレットを造塊した。この造塊した
ビレットに熱間押出し、冷間圧延、冷間抽伸及び焼鈍を
施し、直径が15.88mm、肉厚が0.71mm、の
O材調質の銅管コイルを製作した。製作した各銅管にお
ける残留炭素量、残油量、酸素含有量、水素含有量、結
晶粒径、酸化膜厚及び平均表面粗さを測定した。この結
果を表1及び2に示す。なお、各銅管の残留炭素量、残
油量、結晶粒径及び酸化膜厚は抽伸潤滑油、焼鈍温度及
び焼鈍雰囲気等を変えることにより調整した。また、各
銅管の酸素及び水素含有量は溶解鋳造時に、溶湯の表面
を被覆する木炭の量、木炭の赤熱の有無、溶解温度及び
溶解雰囲気の露点を変えることにより調整した。更に、
各銅管の平均表面粗さは抽伸加工時のダイスの表面粗さ
を変えることにより調整した。また、上述の製造方法に
おいて焼鈍を施さないもの、即ち、抽伸しただけの銅管
コイルも作製し、これをH材とした。
【0057】そして、このように製造された銅管の表面
にセラミックス皮膜を形成する。先ず、長さが500m
mの銅管を採取し、この銅管をセラミカG1−50(日
板研究所製)の原液が入っているビーカに浸し、1分間
保持した。次に、この銅管を引き上げて垂直に吊るし
て、温度が25℃、相対湿度が65%の雰囲気中で1時
間保持し乾燥させた。次に、乾燥した銅管を真空炉に入
れ、純度が99.99%のN2で置換した。次に、炉内
の温度を200℃に加熱し、銅管表面に非晶質セラミッ
クス皮膜を形成した。皮膜を形成した銅管の上端及び下
端から100mmずつ切断し、中央部の300mmの銅
管について耐食性及び密着強度等の測定を行った。
【0058】下記表1及び表2に示す残留炭素量(以
下、残炭量ともいう)、残留油量(以下、残油量ともい
う)、酸素含有量、水素含有量、[H]2×[O]の
値、結晶粒径、酸化膜の膜厚及び平均表面粗さについて
は、セラミックス皮膜を形成する前に測定し、測定した
場所の近傍の銅管を採取し、その表面にセラミックス皮
膜を形成した。以下、これらの各測定方法について説明
する。
【0059】先ず、銅管の内面の残留炭素量の測定方法
について説明する。先ず、洗浄フロン(AK−141
b)を使用して銅管を洗浄し、内面に残留している油分
を除去する。次に、硝酸水溶液と塩酸水溶液との混合溶
液を管内に封入し、残留炭素を溶液内に抽出させ、この
溶液をガラス繊維製のろ紙で濾過し、残留炭素を分離す
る。次に、この分離した炭素を空気中で加熱酸化させ、
島津製作所製EMIA−U510により、CO2濃度を
測定し、これを単位面積当たりの残留炭素量に換算し、
残留炭素量を求めた。
【0060】次に、銅管の内面残留油量の測定方法につ
いて説明する。先ず、洗浄フロン(AK−141b)を
使用して銅管を洗浄し、内面に残留している油分を抽出
する。次に、この抽出した油分の量を堀場製作所製の油
分計により測定し、これを単位面積当たりの残留油量に
換算し、残留油量を求めた。
【0061】銅管の酸素含有量については、JIS H
1067に規定された不活性ガス融解赤外線吸収法に
より測定した。また。銅管の水素含有量については、J
ISZ 2614に規定された方法により測定した。更
に、銅管の肉厚方向に測定した結晶粒径については、J
IS H 0501に規定された「伸銅品結晶粒度試験
方法」に従って、光学顕微鏡を使用して50乃至200
倍の倍率で、銅管の管軸方向に平行な断面の写真を撮影
し、接断法により、肉厚方向に引いた線分によって切ら
れる結晶粒数により算出した。
【0062】次に、銅管の内面に形成された酸化膜の膜
厚の測定方法について説明する。酸化膜の膜厚は、一般
的な電気化学的方法であるカソード還元法により算出す
ることができる。酸化膜の膜厚は上述の如く上記数式1
により算出した。
【0063】次に、銅管内面の管軸方向における平均表
面粗さの測定方法について説明する。この平均表面粗さ
はJIS B 0601−1982に規定されている中
心線平均粗さであり、東京精密社製の表面粗さ計(SU
RFCOM 113B型)を使用して銅管の表面の管軸
方向について測定した。
【0064】次に、銅管の平均表面粗さを粗大化する方
法について説明する。表面粗さを粗大化させる方法とし
ては、サンドブラスト処理がある。このサンドブラスト
処理は公知の方法(例えば、特開平11−254590
号公報)でよく、この方法によれば、カーボランダム
(炭化硅素粉)又は金属粒子等を圧搾空気と共に、銅管
内面に強力に吹き付け、その後、銅管を水洗し乾燥させ
ることにより、銅管内の平均表面粗さ粗くすることがで
きる。サンドブラスト処理による銅管の内面の中心線平
均粗さRaの制御は、吹き付ける粒子の粒径及び処理量
(面積当たりの処理頻度)により行なうことができる。
吹き付ける粒子が大きくなる程、又は処理量が多くなる
程管内表面の管軸方向の中心線平均粗さが粗くなる。但
し、この処理により、管内の残留炭素及び残油は除去さ
れ、残炭量及び残油量は減少する。
【0065】本実施例おいては、サンドブラスト処理を
約10秒間行なった。使用する粒子(カーボランダム)
の平均粒径を変えることにより、所望の内面の中心線平
均粗さを有する銅管を作製した。
【0066】そして、供試管について、耐食性及び皮膜
の密着強度について試験を行ない、これを評価した。
【0067】耐食性については、分極測定により評価し
た。この分極測定は、下記水溶液Aに試料を入れ、試料
の分極曲線をアノード/カソード分極法により測定し、
そのカソード分極曲線から標準電極電位に対してカソー
ド側の電位が100mV(vs SCE)分極時の電流
密度を読みとった。この電流密度の値が小さいほど孔食
が発生し難いと判断することができる。
【0068】耐食性の評価は、カソード側に100mV
分極したときの電流密度が1.0μA/cm2以下のもの
を○(優)とし、電流密度が1.0μA/cm2を超え
3.0μA/cm2以下のものを△(良)とし、電流密度
が3.0μA/cm2を超えるものを×(不良)とした。
【0069】なお、水溶液Aは、pHが6.5であり、
シリカ(SiO3 2-):60質量ppm、重炭酸イオン
(HCO3 2-):80質量ppm、塩化物イオン(C
-):30質量ppm及び硫酸イオン(SO4 2-):2
0質量ppmを全てナトリウム塩にて添加したものを使
用した。pHの値は炭酸ガスにより調整した。
【0070】皮膜の密着強度については、テープ法及び
曲げ観察によるものの2種類について測定した。
【0071】テープ法による皮膜の密着強度は、JIS
K 5400に規定されている方法(塗料一般試験
法、8.塗膜の抵抗性に関する試験法に関する試験方法
−8.5付着性−8.5.2基盤目テープ法)に従っ
て、半割りした銅管内面のセラミックス皮膜について測
定した。テープ法による皮膜の密着強度の評価は、10
点のものを○(優)とし、8乃至9点のものを△(良)
とし、7点以下のものを×(不良)とした。
【0072】曲げ観察による皮膜の密着強度は、曲げ半
径が57.15mm、曲げ角度が90°の曲げ加工条件
で、各供試管について手曲げベンダーにより曲げ加工を
施し、そして、供試管を曲げ部と水平に管軸方向に沿っ
て半割し、この曲げ部について、SEMにより、半割し
た管内表面を2000倍の倍率で皮膜の割れ及び剥離等
の有無を観察した。曲げ観察による皮膜の密着強度の評
価は皮膜の割れ及び剥離がないものを○(優)とし、皮
膜に割れはあるが、剥離がないものを△(良)とし、皮
膜の剥離があるものを×(不良)とした。なお、このS
EMによる観察に際しては、供試管の曲げ部の内面及び
外面について、日本電子製JEE−400を使用してカ
ーボン蒸着し導電性を確保した。
【0073】なお、実施例No.1は規定の製造工程を経
た銅管のうち、素材側の各規定項目を満たすものを選
び、規定の方法により管表面にセラミックス皮膜を形成
したものである。
【0074】実施例No.2は規定の製造工程を経た銅管
のうち、素材側の各規定項目を満たすものを選び、規定
の方法により管表面にセラミックス皮膜を形成したもの
である。残炭量が0.13mg/dm2であり、残炭量
は0.15mg/dm2弱であった。
【0075】実施例No.3は規定の製造工程を経た銅管
のうち、素材側の各規定項目を満たすものを選び、規定
の方法により管表面にセラミックス皮膜を形成したもの
である。残油量が2.7mg/dm2であり、残油量は
3mg/dm2弱であった。
【0076】実施例No.4は規定の製造工程を経た銅管
のうち、素材側の各規定項目を満たすものを選び、規定
の方法により管表面にセラミックス皮膜を形成したもの
である。酸素含有量が44質量ppmであり、酸素含有
量は50質量ppm弱であった。
【0077】実施例No.5は規定の製造工程を経た銅管
のうち、素材側の各規定項目を満たすものを選び、規定
の方法により管表面にセラミックス皮膜を形成したもの
である。[H]2×[O]が35であり、[H]2×
[O]は40弱であった。
【0078】実施例No.6は規定の製造工程を経た銅管
のうち、素材側の各規定項目を満たすものを選び、規定
の方法により管表面にセラミックス皮膜を形成したもの
である。供試管の肉厚方向における結晶粒径が60乃至
70μmであり、平均結晶粒径は70μm弱であった。
【0079】実施例No.7は規定の製造工程を経た銅管
のうち、素材側の各規定項目を満たすものを選び、大気
中、200℃の温度で30分間保持し、供試管の表面に
酸化皮膜を形成したものである。酸化膜の膜厚は0.0
43μmである。そして、規定の方法により管表面にセ
ラミックス皮膜を形成したものである。
【0080】実施例No.8は規定の製造工程を経た銅管
のうち、素材側の各規定項目を満たすものを選び、内面
に平均粒径が0.1mmのカーボランダムを使用して上
述のサンドブラスト処理を行ない、規定の方法により管
表面にセラミックス皮膜を形成したものである。このサ
ンドブラスト処理により残炭量及び残油量が減少した。
【0081】実施例No.9は規定の製造工程において、
ポリブテンに脂肪酸エステルを30質量%添加した抽伸
油を使用して銅管を作製し、その後、規定の方法により
管表面にセラミックス皮膜を形成した。残油量は3.7
mg/dm2である。
【0082】実施例No.10は規定の製造工程を経た銅
管のうち、酸素含有量が50質量ppmを超えるものを
選び、規定の方法により管表面にセラミックス皮膜を形
成したものである。
【0083】実施例No.11は規定の製造工程を経た銅
管のうち、[H]2×[O]が70を超えるものを選
び、規定の方法により管表面にセラミックス皮膜を形成
したものである。
【0084】実施例No.12は焼鈍工程における焼鈍時
間を2時間とし、結晶粒径が70μm以上である銅管を
作製し、その後、規定の方法により管表面にセラミック
ス皮膜を形成したものである。
【0085】実施例No.13は規定の製造工程を経た銅
管のうち、大気中で、200℃の温度で1時間保持して
表面に、膜厚が0.24μmである酸化皮膜を形成させ
た銅管を作製し、その後、規定の方法により管表面にセ
ラミックス皮膜を形成したものである。酸化膜の膜厚が
本発明の上限値を超えているので、微量の酸素により、
銅管内の残炭量及び残油量が減少した。
【0086】実施例No.14は規定の製造工程を経た銅
管に対して、平均粒径が2.0mmのカーボランダムを
使用して上述のサンドブラスト処理を行ない、内面の管
軸方向における平均表面粗さが0.3μmを超えるよう
にし、その後、規定の方法により管表面にセラミックス
皮膜を形成したものである。このサンドブラスト処理に
より残炭量及び残油量が減少した。
【0087】実施例No.15は規定の製造工程を経た銅
管のうち、水素含有量が20質量ppmを超えるものを
選び、規定の方法により管表面にセラミックス皮膜を形
成したものである。
【0088】一方、比較例No.23は規定の製造工程の
抽伸工程において、ポリブテンに脂肪酸エステルを10
質量%添加した抽伸油を使用して内面の残留炭素量が本
発明の上限値を超える銅管を作製し、その後、規定の方
法により管表面にセラミックス皮膜を形成したものであ
る。
【0089】
【表1】
【0090】
【表2】
【0091】
【表3】
【0092】上記表3に示すように、本願請求項8に係
る発明の範囲に入る実施例No.1乃至8はテープ法及び
曲げ観察による皮膜の密着強度並びに耐食性が優れてい
た。また、実施例No.9は残油量が本発明の請求項2に
規定する上限値を超えているので、極微細な皮膜欠陥が
発生し、密着強度及び耐食性が若干劣っている。実施例
No.10、11及び15は夫々本発明の請求項3に規定
する酸素含有量、請求項5に規定する[H]2×[O]
及び請求項4に規定する水素含有量の上限値を超えてい
るので、皮膜の膨れによる極微細な欠陥が発生し、密着
強度及び耐食性が若干劣っている。
【0093】実施例No.12及び14は夫々本発明の請
求項6で規定する銅管の結晶粒径及び請求項8で規定す
る銅管の表面粗さの上限値を超えている。しかし、テー
プ法による密着強度評価及び耐食性が良好であった。特
に、実施例No.14は管内の残炭分及び残油分が除去さ
れたことにより、テープ法による皮膜の密着強度が向上
した。しかしながら、銅管を曲げた時に発生する凹凸又
は銅管の表面に存在した凹凸により応力集中が発生し、
皮膜に割れ主体の欠陥が発生した。なお、実施例No.1
2及び14について、銅管を曲げ加工した後に割れ主体
の皮膜欠陥が観察された部位において、本実施例と同様
の耐食性評価を行った。この結果、実施例No.12及び
14はいずれも評価は「△」であった。
【0094】実施例No.13は本発明の請求項7に規定
する銅管表面の酸化膜厚が上限値を超えているので、酸
化膜の割れに伴い皮膜に割れ主体の欠陥が発生した。一
方、比較例No.23は管内表面の残留炭素量が本発明の
上限値を超えているので、テープ法及び曲げ観察による
皮膜の密着強度並びに耐食性が劣っている。
【0095】第2実施例 下記表4及び表5に示す銅管を第1実施例と同様の方法
で製造した。そして、各銅管を予めベンダーで曲げ加工
した。曲げ加工の条件は、第1実施例と同様に曲げ半径
を57.15mm、曲げ角度を90°とした。次に、銅
管の表面に多結晶質セラミックス皮膜を下記に示す方法
により形成した。第2実施例においては、第1実施例と
は異なり、管表面に多結晶質セラミックス皮膜を形成し
た。なお、下記表4及び表5に示す各項目についても、
第1実施例と同様の方法により測定したものである。
【0096】多結晶質セラミックス皮膜の製造方法にお
いては、セラミックスコーティング剤として、主成分が
Al23であるA−1700(日板研究所製)を使用
し、銅管をこの原液が入っているビーカに浸し、1分間
保持した。次に、この銅管を引き上げブロアで表面の余
分な処理液を除去して、温度が25℃、相対湿度が65
%の雰囲気中で1時間保持し乾燥させた。次に、乾燥し
た銅管を真空炉に入れ、純度が99.99%のN2で置
換した。次に、炉内の温度を300℃に加熱し、銅管の
表面に多結晶質セラミックス皮膜を形成した。なお、本
実施例で使用したセラミックスコーティング剤は、多結
晶質セラミックス皮膜を形成することができる酸性金属
塩系のものである。
【0097】上述の如く、作製された供試管について、
皮膜の密着強度(テープ法)及び皮膜の耐食性(分極測
定)について試験を行ない、これを評価した。
【0098】テープ法による皮膜の密着強度は、第1実
施例と同様の方法により行なった。評価についても、第
1実施例と同一の基準で評価した。また、皮膜の耐食性
も、第1実施例と同様の方法により行ない、評価も第1
実施例と同一の基準で評価した。これらの結果を表6に
示す。
【0099】
【表4】
【0100】
【表5】
【0101】
【表6】
【0102】上記表6に示すように、本願請求項8に係
る発明の範囲に入る実施例No.16及び17は皮膜の密
着強度及び耐食性が優れていた。また、実施例No.18
は銅管の水素含有量が本発明の請求項4で規定する上限
値を超えているので、ふくれにより皮膜に極微細な欠陥
が生じたため、皮膜の密着密度及び耐食性が若干低下し
た。一方、比較例No.24は残留炭素量及び残油量が本
発明の上限値を超えているので、皮膜の密着強度及び耐
食性が劣っている。
【0103】第3実施例 下記表7及び表8に示す銅管を第1実施例と同様の方法
で製造した。そして、第1実施例と同様の方法により、
管外面に非晶質セラミックス皮膜を形成した。下記表7
及び表8に示す各項目についても、第1実施例と同様の
方法により測定したものである。
【0104】上述の如く、作製された供試管について、
外面皮膜の耐食性及び外面皮膜の腐食性について試験を
行ない、これを評価した。
【0105】外面皮膜の耐食性試験はJIS K 54
00(耐塩水噴霧性)に規定されている塩水噴霧試験に
準拠して実施した。そして、温度が40℃、相対湿度が
99%の雰囲気において供試管を96時間保持した。試
験にはJIS Z 2371の塩水噴霧試験機を使用
し、これにより管の外面に塩水を噴霧した。評価方法
は、外観検査及びセラミックス皮膜の剥れの有無を倍率
が20倍の投影機を使用して観察した。また、変色及び
緑青の発生の有無を確認した。
【0106】外面皮膜の腐食性試験はJIS H 85
02(めっきの耐食性試験方法)に規定されている二酸
化硫黄試験に準拠して実施し、その後、温度が40℃、
相対湿度が90%の雰囲気において供試管を96時間保
持した。評価方法については、腐食の程度を調査した。
この腐食の程度については、試験後の管外面を目視し、
酸化及び緑青による変色箇所の有無を調査した。そし
て、変色があるものについては、その個所を含む部位を
切出し、光学顕微鏡で断面を観察し、腐食の深さを測定
した。腐食の程度の判定は、酸化及び緑青による変色が
ないものを○とし、軽度な変色があるもの(緑青が発生
していないもの)を△とし、激しい変色があるもの(緑
青を含むもの)を×とした。また、腐食深さの判定は、
管肉厚方向における腐食深さが0.02mm未満である
ものを△とし、管肉厚方向における腐食深さが0.02
mm以上であるものを×とした。なお、腐食深さの判定
において、「○」の評価は試験後の管外面に酸化及び緑
青による変色が観察されず、腐食深さを測定していない
ものを示す。この結果を表9に示す。
【0107】
【表7】
【0108】
【表8】
【0109】
【表9】
【0110】上記表9に示すように実施例No.19及び
20は本発明の請求項8を満足しているので、セラミッ
クス皮膜が所望の特性を有し、塩水噴霧試験及び二酸化
硫黄試験による腐食変色及び緑青の発生は全く見られな
かった。
【0111】また、上述の試験とは別に、銅管を使用し
た場合に生じる皮膜の膨張及び収縮を想定し、銅管内に
水及び温水を切り替えて流通させながら、上述の塩水噴
霧試験及び二酸化硫黄試験を実施した。なお、水及び温
水は5分毎に切り替え、水の温度は20℃、温水の温度
は90℃とした。水の流水量は5リットル/分であり、
水温は20℃であった。各試験後、上述の如く管を観察
した。その結果、いずれの試験においてもセラミックス
皮膜の剥離及び変色は観察されなかった。
【0112】また、実施例No.21は銅管の水素含有量
が本発明の請求項4で規定する上限値を超えているの
で、皮膜に極微細な欠陥が発生した。この欠陥は皮膜の
剥離にまでは至らなかったため、塩水噴霧及び二酸化硫
黄による腐食試験において、銅管素材の外面に極わずか
な酸化変色を生じるのみであった。また、二酸化硫黄試
験における腐食深さ測定では、深さが0.02mmを超
える腐食減肉は認められなかった。
【0113】実施例No.22は残油量、酸素含有量、水
素含有量、[H]2×[O]、結晶粒径、酸化膜厚及び
平均表面粗さが本発明の各請求項で規定する上限値を超
え、請求項1だけを満足するものであり、各試験により
部分的に酸化変色が生じた。しかし、外観検査によれ
ば、皮膜の剥離は確認されなかった。また、二酸化硫黄
試験における腐食深さ測定では、深さが0.02mmを
超える腐食減肉は認められなかった。
【0114】一方、比較例No.25は残炭量及び残油量
が本発明の上限値を超えていたため、塩水噴霧試験によ
り皮膜が剥離した。また、腐食試験により銅が腐食し、
緑青が発生した。緑青の発生部を切出し、その断面を観
察した結果、管肉厚方向における腐食深さが0.02m
mを超える腐食により、肉厚が減じた部分は緑青が発生
した個所の各部に認められた。
【0115】
【発明の効果】以上詳述したように本発明によれば、銅
又は銅合金管の内面に残留する残留炭素量を適切に規定
しているので、表面に形成されるセラミックス皮膜の密
着強度を高くすることができる。また、この銅又は銅合
金管は皮膜の密着強度が高いので、表面に形成されたセ
ラミックス皮膜は、皮膜の剥離又は割れが等が生じにく
くなり、耐食性及び皮膜の密着性が優れた耐食性皮膜付
き管を得ることができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 土屋 昭則 神奈川県秦野市平沢65番地 株式会社神戸 製鋼所秦野工場内 (72)発明者 佐伯 公三 兵庫県神戸市西区高塚台1丁目5番5号 株式会社神戸製鋼所神戸総合技術研究所内 Fターム(参考) 3H111 AA01 BA04 BA05 BA34 CB02 DA08 DA26 DB18 DB27 4K022 AA02 AA33 AA49 BA02 BA15 BA20 BA22 BA26 BA33 CA02 CA03 DA06

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 表面にセラミックス皮膜を形成するため
    の銅又は銅合金管であって、セラミックス皮膜の形成前
    において、前記銅又は銅合金管の表面に残留する残留炭
    素量が0.15mg/dm2以下であることを特徴とす
    る銅又は銅合金管。
  2. 【請求項2】 セラミックス皮膜形成前において、前記
    銅又は銅合金管の表面に残留する残油量が3mg/dm
    2以下であることを特徴とする請求項1に記載の銅又は
    銅合金管。
  3. 【請求項3】 酸素の含有量が50質量ppm以下であ
    ることを特徴とする請求項1又は2に記載の銅又は銅合
    金管。
  4. 【請求項4】 水素の含有量が2質量ppm以下である
    ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載
    の銅又は銅合金管。
  5. 【請求項5】 前記酸素の含有量を[O]とし、水素の
    含有量を[H]としたとき、[H]2×[O]が70以
    下であることを特徴とする請求項3又は4に記載の銅又
    は銅合金管。
  6. 【請求項6】 セラミックス皮膜形成前において、肉厚
    方向に測定した結晶粒径が70μm以下であることを特
    徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の銅又は
    銅合金管。
  7. 【請求項7】 セラミックス皮膜形成前において、表面
    に存在する酸化膜の膜厚がCuO換算で0.05μm以
    下であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1
    項に記載の銅又は銅合金管。
  8. 【請求項8】 セラミックス皮膜形成前において、管軸
    方向の平均表面粗さRaが0.3μm以下であることを
    特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の銅又
    は銅合金管。
  9. 【請求項9】 請求項1乃至8のいずれか1項に記載の
    銅又は銅合金管の表面にセラミックス皮膜が形成されて
    いることを特徴とする耐食性皮膜付き管。
  10. 【請求項10】 前記セラミックス皮膜は非晶質である
    ことを特徴とする請求項9に記載の耐食性皮膜付き管。
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