JP2001328843A - ディスプレイ用ガラス部材およびその製造方法 - Google Patents

ディスプレイ用ガラス部材およびその製造方法

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JP2001328843A
JP2001328843A JP2001068579A JP2001068579A JP2001328843A JP 2001328843 A JP2001328843 A JP 2001328843A JP 2001068579 A JP2001068579 A JP 2001068579A JP 2001068579 A JP2001068579 A JP 2001068579A JP 2001328843 A JP2001328843 A JP 2001328843A
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zirconium
metal
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thin film
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JP2001068579A
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English (en)
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Tetsuya Otsuki
哲也 大槻
Tae Yanagihara
妙 柳原
Yoshiaki Sakashita
好顕 阪下
Terubumi Sato
光史 佐藤
Riichi Nishide
利一 西出
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Nagase and Co Ltd
Teikoku Chemical Industry Co Ltd
Original Assignee
Nagase and Co Ltd
Teikoku Chemical Industry Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】 酸化ジルコニウムを主成分とする金属酸化物
薄膜をガラス基材表面に形成することにより、優れた機
械強度および耐薬品性を有するディスプレイ用ガラス部
材およびその製造方法を提供すること。 【解決手段】 酸化ジルコニウムを主成分とする金属酸
化物薄膜用組成物をガラス基材表面に付与し、結晶化さ
せることにより、容易に金属酸化物薄膜を有するディス
プレイ用ガラス部材が提供される。この組成物はジルコ
ニウム成分とジルコニウム以外の金属成分とを有する。
このジルコニウム成分は、アミノポリカルボン酸とジル
コニウム化合物とから形成されるジルコニウム錯体また
はジルコニウム塩と、アミンとの塩であり、該組成物の
全金属成分のうち、ジルコニウム成分が酸化ジルコニウ
ム換算で70〜98モル%の割合で含有される。このよ
うな組成物を用いることにより、化学的安定性や機械強
度に優れた金属酸化物薄膜を有するディスプレイ用ガラ
ス部材が得られる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ディスプレイ用ガラス
部材およびその製造方法に関する。より詳細には、化学
的安定性、熱安定性、および機械強度に優れた、酸化ジ
ルコニウムを主成分とする金属酸化物薄膜によってその
表面が強化されたディスプレイ用ガラス部材およびその
製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】一般的に、ディスプレイ用ガラス部材と
して、例えばテレビのブラウン管およびパソコンの陰極
線管(CRT)などの蛍光表示管が広く用いられてい
る。蛍光表示管は、ガラス材でなる平底フラスコ状の管
の内側前面に蛍光物質が塗られ、後方には電子銃が備え
られている。前記電子銃はテレビもしくはパソコンから
送られてくる映像信号の強弱に応じて、電子を前面の蛍
光面に向けて周期的に走査しながら撃ち出す。この電子
の当たった前面の蛍光物質が輝き、蛍光表示管の前面に
映像が映し出される。
【0003】近年、家電製品であるテレビは一般家庭に
おける必需品として、ほぼ全ての家庭に備えられるよう
になった。一般家庭においては、日々住居内を清掃する
にあたり、はたき、布製もしくは紙製といった雑巾およ
び掃除機などの清掃器具が用いられる。それら清掃器具
によって清掃された家財道具は、埃が払われ奇麗になる
反面、その表面に細かな擦り傷などの損傷を受け得る環
境下にある。また、テレビにおいてはその設置される状
況によって、落下物による損傷および傾倒といった、テ
レビ自体が破壊され得る環境下にある。さらに、テレビ
の画面は静電気などにより埃が付着しやすく、洗剤など
を含ませた布などで拭かれ得る。洗剤には、アルカリ性
洗剤、酸性洗剤および中性洗剤が存在することから、テ
レビのブラウン管などは種々の化学薬品にも曝される環
境下にある。
【0004】一方、最近のインターネットブームなどに
よって、パソコンもテレビと同様に一般家庭における必
需品となりつつある。住居内の清掃においてはパソコン
もテレビと同様の環境下にあるといえる。さらに、次世
代の画像表示装置といわれる、プラズマディスプレイな
どにおいても同様であると考えられる。
【0005】
【発明の解決すべき課題】本発明は、上記問題の解決を
課題とするものであり、その目的とするところは、酸化
ジルコニウムを主成分とする金属酸化物薄膜をガラス基
材表面に形成することにより、優れた機械強度および耐
薬品性を有するディスプレイ用ガラス部材およびその製
造方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、ガラス基材表
面に、ジルコニウム成分とジルコニウム以外の金属成分
とを含有する金属酸化物薄膜を有するディスプレイ用ガ
ラス部材であって、前記薄膜が:アミノポリカルボン酸
とジルコニウム化合物とから形成されるジルコニウム錯
体またはジルコニウム塩とアミンとの塩であり、前記ジ
ルコニウム以外の金属成分がジルコニウム以外の金属を
含む化合物であり、そして前記組成物の全金属成分のう
ち、前記ジルコニウム成分が酸化ジルコニウム換算で7
0モル%〜98モル%の割合で含有されかつ前記ジルコ
ニウム以外の金属成分が前記金属の酸化物換算で2モル
%〜30モル%の割合で含有される、組成物由来の膜で
あり;酸化ジルコニウムとジルコニウム以外の金属の酸
化物との固溶体でなり;そして、前記ジルコニウム以外
の金属の酸化物が前記固溶体の成分として、2モル%〜
30モル%の割合で含有される、ディスプレイ用ガラス
部材である。このディスプレイ用ガラス部材を用いるこ
とにより、上記課題が解決される。
【0007】好適な実施態様においては、前記ジルコニ
ウム化合物は、ジルコニウムアルコキシド、および有機
酸または無機酸のジルコニウム塩からなる群より選択さ
れる少なくとも1種である。
【0008】好適な実施態様においては、前記組成物
は、前記ジルコニウム成分とジルコニウム以外の金属成
分とを極性溶媒中に含有する液状の組成物である。
【0009】好適な実施態様においては、前記ジルコニ
ウム以外の金属成分は、Y、Mg、Ca、Sc、Ceま
たはSrを含む化合物からなる群より選択される少なく
とも1種である。
【0010】さらに本発明は、ガラス基材表面に、ジル
コニウム成分とジルコニウム以外の金属成分とを含有す
る金属酸化物薄膜を有するディスプレイ用ガラス部材の
製造方法であって、アミノポリカルボン酸とジルコニウ
ム化合物とから形成されるジルコニウム錯体またはジル
コニウム塩とアミンとの塩であり、前記ジルコニウム以
外の金属成分がジルコニウム以外の金属を含む化合物で
あり、そして前記組成物の全金属成分のうち、前記ジル
コニウム成分が酸化ジルコニウム換算で70モル%〜9
8モル%の割合で含有されかつ前記ジルコニウム以外の
金属成分が前記金属の酸化物換算で2モル%〜30モル
%の割合で含有される、組成物をガラス基材の一方また
は両方の面に付与し、塗膜を形成する工程;および、前
記ガラス基材上に形成された塗膜の組成物を結晶化させ
ることにより、ジルコニウム成分とジルコニウム以外の
金属成分とを含有する金属酸化物薄膜を形成する工程;
を包含する、方法である。
【0011】好適な実施態様においては、前記組成物は
スピンコート法、ディップコート法、またはスプレーコ
ート法により前記ガラス基材上に付与される。
【0012】好適な実施態様においては、前記結晶化
は、前記塗膜を有する前記ガラス基材を熱処理、光処
理、または化学的処理することにより行われる。
【0013】
【発明の実施の形態】本発明のディスプレイ用ガラス部
材は、ガラス基材表面に、ジルコニウム成分とジルコニ
ウム以外の金属成分とを含有する金属酸化物薄膜を有す
る。
【0014】ここで、本明細書に用いられる用語「ディ
スプレイ用ガラス部材」とは、ディスプレイにおける画
像表示部品のことをいう。ディスプレイ用ガラス部材と
しては、特には限定されないが、例えばテレビのブラウ
ン管およびパソコンの陰極線管(CRT)が挙げられ
る。ただし、液晶ディスプレイ内のガラス基板は除く。
【0015】本発明に用いられるガラス基材は、画像表
示部品を製造する目的で成形されたガラス材でなる管で
ある。このような管として、例えば、テレビおよびパソ
コンに用いられる蛍光表示管、ならびにプラズマディス
プレイに用いられる電極管(セル)が挙げられる。
【0016】本発明においては、上記ガラス基材の表面
に、金属酸化物薄膜が形成されている。金属酸化物薄膜
が形成されるガラス基材の表面とは、通常は上記管の外
表面のことである。金属酸化物の薄膜の厚みは、好まし
くは10nm〜300nm、より好ましくは40nm〜
140nmである。金属酸化物薄膜の厚みが10nmを
下回ると、得られるガラス基材は、衝撃等に対する強度
が劣り、容易に擦り傷が入るまたは破損しやすいという
問題が起こる恐れがある。他方、金属酸化物薄膜の厚み
が300nmを上回ると、ディスプレイ用ガラス部材の
製造コストが上昇することに加え、ディスプレイ用ガラ
ス部材における透視性を喪失させる恐れがある。
【0017】前記金属酸化物薄膜は、ガラス基材の強度
向上剤である金属酸化物薄膜形成用組成物を用いること
により形成される。
【0018】本発明に用いられる金属酸化物薄膜形成用
組成物に含有されるジルコニウム成分は、上記のよう
に、アミノポリカルボン酸とジルコニウム化合物とから
形成されるジルコニウム錯体またはジルコニウム塩と、
アミンとの塩である。
【0019】上記アミノポリカルボン酸としては、エチ
レンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、
1,2−プロパンジアミン四酢酸、1,3−プロパンジ
アミン四酢酸、N−ヒドロキシエチルエチレンジアミン
三酢酸、N,N'−ジヒドロキシエチルエチレンジアミ
ン二酢酸、2−ヒドロキシ−1,3−プロパンジアミン
四酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、ニトリロ三酢
酸、ニトリロ三プロピオン酸、カルボキシエチルイミノ
二酢酸、カルボキシエチルイミノ二プロピオン酸、イミ
ノ二酢酸、イミノ二プロピオン酸、ヒドロキシエチルイ
ミノ二酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二プロピオン酸、
メトキシエチルイミノ二酢酸、アラニン−N,N−二酢
酸、セリン−N,N−二酢酸、イソセリン−N,N−二
酢酸、アスパラギン酸−N,N−二酢酸、グルタミン酸
−N,N−二酢酸などが挙げられるが、これに限定され
ない。
【0020】上記ジルコニウム化合物としては、ジルコ
ニウムアルコキシド、および有機酸または無機酸のジル
コニウム塩が好ましい。これらのうちジルコニウムアル
コキシドとしては、テトラメトキシジルコニウム、テト
ラエトキシジルコニウム、テトライソプロポキシジルコ
ニウム、テトラ−n−プロポキシジルコニウム、テトラ
イソブトキシジルコニウム、テトラ−n−ブトキシジル
コニウム、テトラ−sec−ブトキシジルコニウム、テ
トラ−t−ブトキシジルコニウムなどが挙げられ、有機
酸または無機酸のジルコニウム塩としては、酢酸ジルコ
ニウム、プロピオン酸ジルコニウム、ジルコニウムアセ
チルアセトナート、ステアリン酸ジルコニウム、オキシ
塩化ジルコニウム八水和物、オキシ硝酸ジルコニウム二
水和物、硫酸ジルコニウム、硫酸ジルコニウム四水和
物、オキシ酢酸ジルコニウムなどが挙げられるが、これ
に限定されない。
【0021】上記アミンとしては、メチルアミン、エチ
ルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチ
ルアミン、イソブチルアミン、sec−ブチルアミン、
t−ブチルアミン、ぺンチルアミン、ヘキシルアミン、
ヘプチルアミン、オクチルアミン、ジメチルアミン、ジ
エチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミ
ン、アミルアミン、ジアミルアミン、ジブチルアミン、
ジ−sec−ブチルアミン、ジ−t−ブチルアミン、エ
チルブチルアミン、エチルプロピルアミン、ジヘキシル
アミン、ジオクチルアミン、ベンジルアミン、アニリ
ン、ジメチルアニリン、フェニルメチルアミン、フェニ
ルエチルアミン、アミノピリジン、ジメチルアミノピリ
ジンなどが挙げられるがこれらに限定されない。これら
は単独で用いてもよく、2以上を組合せて用いてもよ
い。
【0022】本発明に用いられる金属酸化物薄膜形成用
組成物に含有されるジルコニウム以外の金属成分は、ジ
ルコニウム以外の金属を含む化合物(以下、他の金属化
合物という場合がある)である。そのような化合物に含
有される金属としては、イットリウム(Y)、マグネシ
ウム(Mg)、カルシウム(Ca)、スカンジウム(S
c)、セリウム(Ce)、ストロンチウム(Sr)など
がある。このような金属を含むアルコキシド、カルボン
酸塩などが好ましく用いられる。そのような化合物とし
ては、トリメトキシイットリウム、トリエトキシイット
リウム、トリ−イソプロポキシイットリウム、炭酸イッ
トリウム、酢酸イットリウム、シュウ酸イットリウム、
ジメトキシマグネシウム、ジエトキシマグネシウム、ジ
プロポキシマグネシウム、ジイソプロポキシマグネシウ
ム、ジイソブトキシマグネシウム、ジブトキシマグネシ
ウム、酢酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、ジメトキ
シカルシウム、ジエトキシカルシウム、ジイソプロポキ
シカルシウム、ジプロポキシカルシウム、ジイソブトキ
シカルシウム、ジ−sec−ブトキシカルシウム、ジ−
t−ブトキシカルシウム、炭酸カルシウム、酢酸カルシ
ウム、シュウ酸スカンジウム、水酸化スカンジウム、炭
酸セリウム、シュウ酸セリウム、ジメトキシストロンチ
ウム、ジエトキシストロンチウム、ジイソプロポキシス
トロンチウム、ジ−n−ブトキシストロンチウム、炭酸
ストロンチウム、シュウ酸ストロンチウム、硝酸ストロ
ンチウムなどが挙げられるがこれらに限定されない。
【0023】本発明に用いられる組成物は、好ましく
は、上記ジルコニウム成分とジルコニウム以外の金属成
分とを極性溶媒中に含有する液状の組成物である。上記
ジルコニウム成分であるジルコニウム錯体またはジルコ
ニウム塩とアミンとの塩は、上記アミノポリカルボン
酸、ジルコニウム化合物、およびアミンにより形成され
る。上記液状の組成物は、具体的には、上記アミノポリ
カルボン酸、ジルコニウム化合物、およびアミンを極性
溶媒中で加熱することによって得た溶液(ジルコニウム
成分の溶液)と、ジルコニウム以外の金属化合物とを混
合することによって得られる。あるいは、ジルコニウム
以外の金属化合物を、アミノポリカルボン酸とアミンと
ともに極性溶媒中で加熱して得た溶液とジルコニウム成
分の溶液とを混合することも好ましい。あるいは、ジル
コニウム以外の金属化合物とアミノポリカルボン酸との
反応よって、該金属の錯体または塩を形成してこれを単
離し、該錯体または塩とアミンとを極性溶媒中で加熱す
ることにより得た溶液を使用してもよい。必要に応じ
て、これらの溶液には酸化剤が加えられる。
【0024】上記極性溶媒としては、メタノール、エタ
ノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノー
ル、水などが好適に用いられるが、これらに限定されな
い。これらの極性溶媒は、単独で用いてもよく、2種以
上組合せて用いてもよい。このような極性溶媒中に上記
成分を含有する本発明の液状組成物は、好ましくは透明
である。
【0025】本発明に用いられる組成物中には、ジルコ
ニウム成分が、該組成物の全金属成分のうち、70〜9
8モル%(酸化ジルコニウム換算)の割合で、そしてジ
ルコニウム以外の金属成分が2〜30モル%(該金属の
酸化物換算)の割合で含有される。このような割合で上
記成分が含有されると、この組成物由来の金属酸化物薄
膜を調製したときに、該薄膜は酸化ジルコニウムとジル
コニウム以外の金属の酸化物との固溶体で形成され、各
成分は上記の割合で固溶体の成分として薄膜中に含有さ
れることとなる。
【0026】ジルコニウム以外の金属成分の量が過剰で
あると、形成された薄膜中に、ジルコニウム以外の金属
の酸化物が固溶体を形成していない状態で混在するよう
になる。このような薄膜を有するガラス基材は、化学的
安定性、熱安定性、および機械強度に劣る。
【0027】本発明に用いられる組成物には必要に応じ
て、過酸化水素、オゾンなどの酸化剤が添加される。
【0028】本発明のディスプレイ用ガラス部材は、以
下のようにして製造される。
【0029】本発明の方法によりガラス基材表面に金属
酸化物の薄膜を有するディスプレイ用ガラス部材を製造
するには、まず、上記得られた極性溶媒溶液を、ガラス
基材の外表面に付与(塗布)する。
【0030】塗布の方法に制限はなく、当業者が金属酸
化物薄膜を製造するに際して、基材の形態、形状に応じ
て適宜選択して用いる塗布方法、例えば、スピンコート
法、ディップコート法、スプレーコート法等を用いて塗
布される。
【0031】次に、本発明に用いられる組成物が付与さ
れたガラス基材を熱処理、光処理、化学的処理などによ
り処理することにより、該組成物の結晶化が進行する。
そのことにより、ガラス基材表面に酸化ジルコニウムを
主成分とする金属酸化物薄膜が形成される。これらの処
理は単独で行ってもよいし、2以上を組合せて行っても
よい。
【0032】上記熱処理とは、有機物が燃焼する温度以
上の熱を与える処理である。好ましくは、一般的には、
約400℃〜1200℃の熱処理であり、使用する基材
の耐熱温度以下で処理を行う。
【0033】光処理とは、レーザー照射、紫外線照射等
の処理であり、基材の耐熱温度に左右されない処理方法
である。
【0034】化学的処理とは、酸または塩基による処
理、および水蒸気による処理を含み、比較的低い処理温
度で処理する方法である。
【0035】上記結晶化方法は、例示であり、これらに
限定されるものではない。
【0036】その後、当業者によって適宜必要な部品
が、金属酸化物薄膜の形成されたガラス基材に取り付け
られ、ディスプレイ用ガラス部材が完成される。
【0037】このようにして得られる金属酸化物薄膜を
有するディスプレイ用ガラス部材の該薄膜は、主として
酸化ジルコニウムで構成され、ジルコニウム以外の金属
の酸化物が2〜30モル%の割合で含有される固溶体で
なる。このような薄膜は結晶構造が安定化されているた
め、化学的安定性、熱安定性および機械強度などに優れ
る。
【0038】
【実施例】以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく
説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものでは
ない。
【0039】(製造例1) アミノポリカルボン酸とジルコニウム化合物から形成さ
れる金属錯体とアミンとの塩(ジルコニアプレカーサ
ー)の調製 100ml四ツ口フラスコにエタノール53.03gお
よびニトリロ三酢酸4.65gを仕込み、攪拌しながら
ジルコニウム−n−ブトキシド(純度87%)10.7
4gを滴下した。続いて、ブチルアミン3.56gを滴
下し、還流温度で1時間反応を行った。そして 40℃
まで冷却後、30%過酸化水素水3.04gを滴下し、
還流温度で1時間反応を行うことにより表題の塩を含む
赤橙色透明溶液(ジルコニアプレカーサー)を得た。こ
のジルコニアプレカーサー中におけるジルコニウム(Z
r)含量は2.96重量%であった。
【0040】(製造例2) ジルコニウム以外の金属(カルシウム)化合物およびア
ミノポリカルボン酸の錯体とアミンとの塩(カルシアプ
レカーサー(A))の調製 (1)500ml四ツ口フラスコにイオン交換水300
gを入れ、75〜80℃に加熱した。続いて、エチレン
ジアミン四酢酸6.31gを加えた後、酢酸カルシウム
1水和物3.81gをゆっくりと加えた。酢酸カルシウ
ム投入により溶解が進み、しばらくすると無色透明とな
った。75〜80℃で1時間攪拌した後、エタノール2
5gをゆっくりと加え、室温まで放冷した。そして析出
した白色の固体をろ取し、イオン交換水10gおよびエ
タノール5gで順次洗浄し、40℃の送風乾燥機で乾燥
することにより、エチレンジアミン四酢酸カルシウム二
水和物を得た。収量6.03g。 (2)100ml四ツ口フラスコに(1)項で得たエチ
レンジアミン四酢酸カルシウム二水和物5.13gとエ
タノール62.72gとを入れ、攪拌しながらブチルア
ミン2.15gを加えた。そして、還流温度で6時間攪
拌することにより無色透明溶液を得た。このようにして
得られたカルシアプレカーサーのICP発光分析(誘導
結合プラズマ発光分析)を行ったところ、該プレカーサ
ー中におけるカルシウム(Ca)含量は0.80重量%
であった。このカルシアプレカーサーは室温で1年間保
管したが、安定であった。
【0041】(製造例3) マグネシアプレカーサーの調製 100ml四ツ口フラスコに、エタノール58.5g、
ニトリロ三酢酸7.1g、およびマグネシウムエトキシ
ド4.2gを入れ、攪拌しながらジブチルアミン4.8
gを加えた。これを還流温度で4時間攪拌することによ
りマグネシアプレカーサーを得た。このようにして得ら
れたマグネシアプレカーサーのICP発光分析を行った
ところ、該プレカーサー中におけるマグネシウム(M
g)含量は1.27重量%であった。このマグネシアプ
レカーサーは室温で1年間保管したが、安定であった。
【0042】(製造例4) ストロンチアプレカーサーの調製 (1)Sr−EDTA塩の合成 500ml四ツ口フラスコにイオン交換水250gを入
れ、80℃に加熱し、酢酸ストロンチウム0.5水和物
6.5gを攪拌しながら加えて透明な溶液を得た。次い
で、エチレンジアミン四酢酸8.8gを加えて80℃で
1時間攪拌した後、エバポレーターを用いて濃縮し、析
出した結晶を濾取した。このようにして得られた結晶を
エタノールで洗浄後乾燥することにより、11.0gの
エチレンジアミン四酢酸ストロンチウム塩を得た。 (2)ストロンチアプレカーサーの合成 50mlナス型フラスコに、(1)項で得たエチレンジ
アミン四酢酸ストロンチウム塩3.45gおよびメタノ
ール4.0gを入れ、攪拌しながらブチルアミン1.2
3gを加えた。そして、2時間還流することにより透明
溶液を得た。このようにして得られたストロンチアプレ
カーサーのICP発光分析を行ったところ、溶液中にお
けるストロンチウム(Sr)含量は6.26重量%であ
った。このストロンチアプレカーサーは室温で1年間保
管したが、安定であった。
【0043】(比較製造例1) ゾルゲル法ジルコニアゾルの製造 100ml四ツ口フラスコにエタノール80.09gを
入れ、攪拌しながらジルコニウム−n−ブトキシド(8
7%)8.35gを滴下した後、60%硝酸0.52g
とイオン交換水0.39gとの混合物を室温で滴下し
た。そして、室温で2時間かき混ぜることによりジルコ
ニアゾルを得た。ゾル中のジルコニウム(Zr)含量は
1.93重量%であった。この溶液を室温で1日保管す
ると乳白色溶液となり、3日後には沈殿が生じた。
【0044】(比較製造例2) カルシアゾルの製造 30mlナス型フラスコにエタノール7.54g、酢酸
カルシウム1水和物0.149gを入れ、攪拌しながら
60%硝酸0.12gを滴下した。室温で1時間かき混
ぜることにより無色透明なカルシアゾルを得た。ゾル中
のカルシウム(Ca)含量は0.44重量%であった。
【0045】(実施例1)上記製造例1および2で調製
したジルコニアプレカーサーおよびカルシアプレカーサ
ーを、表1に記載の割合で混合して、塗布液を調製し
た。得られた塗布液の状態と、室温で一日保管後の状態
(保存安定性)を評価した。 ○:室温で一日保管後、沈殿を生じなかった。 ×:室温で一日保管後、沈殿を生じた。 この塗布液を石英ガラス基材上にスピンコート法で塗布
し、毎分10℃の昇温速度で100℃から800℃まで
昇温し、800℃で30分間焼成した。これにより基材
が酸化ジルコニウムを主成分とする薄膜でコートされた
ガラス部材を得た。この部材を、以下の項目について評
価した。
【0046】(1)結晶形:X線回折測定 (2)耐酸試験:得られた部材を30℃の1規定の硫酸
水溶液に浸積して、その外観を観察し、以下の基準で評
価した。 ○:膜剥離なし △:膜浮きあり ×:膜剥離あり (3)耐アルカリ試験:得られた部材を30℃の1規定
の水酸化ナトリウム水溶液に浸漬して、その外観を観察
し、以下の基準で評価した。 ○:膜剥離なし △:膜浮きあり ×:膜剥離あり (4)耐摩耗性試験 基材上の薄膜の耐摩耗性をテーバー式摩耗試験により評
価した。摩耗輪はテーバー式のNo.CS−10Fを使
用し、各摩耗輪の供試体にかかる力は、4.90Nとし
た。表1に示す各回転数における膜の外観を目視で評価
した。 ○:膜が残存している △:50%以上膜が剥離している ×:膜が完全に剥離している 上記評価の結果をまとめて、表1に示す。後述の実施例
2〜6の結果も併せて表1に示す。
【0047】(実施例2〜6)上記製造例1で調製した
ジルコニアプレカーサーおよび製造例2〜5で調製した
カルシアプレカーサー、マグネシアプレカーサー、およ
びストロンチアプレカーサーのうちのいずれかを表1に
記載の割合で混合して、塗布液を調製した。以下、実施
例1に準じて操作し、表1に示す基材上に塗布液を塗布
し、表1に示す焼成温度および時間で焼成し、該基材が
酸化ジルコニウムを主成分とする薄膜でコートされた部
材を得た。得られた部材の評価を実施例1と同様に行な
った。
【0048】(比較例1〜3)上記調製したジルコニア
プレカーサー(製造例1)、カルシアプレカーサー
(A)(製造例2)、ジルコニウム溶液(比較用塗布液
1)、およびカルシウム溶液(比較用塗布液2)のいず
れか、あるいは2以上を、表2に記載の割合で混合し
て、塗布液を調製した。以下、実施例1に準じて操作
し、表2に示す基材上に塗布液を塗布し、表2に示す焼
成温度および時間で焼成し、該基材が酸化ジルコニウム
を主成分とする薄膜でコートされた部材を得た。得られ
た部材の評価を実施例1と同様に行なった。
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】
【0051】表1および表2から明らかなように、実施
例1〜6の塗布液は透明であり、1日間保存しても沈殿
を生じない。これに対して、比較例1の塗布液は調製時
点では透明であったが、室温で1日放置すると乳白色に
濁るか沈殿を生じ、安定性に欠けていることがわかる。
【0052】実施例1〜6の塗布液をさらに長期間保存
したところ、1年間保存後も変化が認められないことが
明らかとなっている。
【0053】得られた酸化ジルコニウムを主成分とする
金属酸化物薄膜のX線回折測定の結果、実施例1〜6の
部材上の薄膜は、単一の結晶構造からなるため安定化さ
れているが、比較例2の部材の薄膜には単斜晶が混在し
ており、結晶構造が安定化されていないことがわかる。
【0054】また、耐酸性および耐アルカリ性試験の結
果から、実施例1〜6の部材は、比較的優れた耐酸およ
び耐アルカリ性を有することがわかる。他方、比較例1
のゾルゲル法により作成した薄膜を有する部材、比較例
2の単結晶を含む薄膜を有する部材、および比較例3の
酸化カルシウムを過剰に含有する酸化ジルコニウム薄膜
を有する部材は、耐アルカリ性に欠けることがわかる。
【0055】さらに、耐摩耗性試験の結果、実施例1〜
6の部材は充分な耐摩耗性を有することがわかる。これ
に対して、比較例1のゾルゲル法により作成した薄膜を
有する部材、比較例2の単結晶を含む薄膜を有する部
材、および比較例3の酸化カルシウムを過剰に含有する
酸化ジルコニウム薄膜を有する部材は、耐摩耗性に欠け
ることがわかる。
【0056】(実施例7)実施例1の石英ガラス基材の
代わりに、14インチブラウン管用のガラス基材を用い
て実施例1と同様にして金属酸化物薄膜を形成する。得
られたブラウン管用のガラス基材を実施例1と同様にし
て評価すると、優れた機械強度および耐薬品性を有する
ことが示される。
【0057】
【発明の効果】本発明によれば、優れた機械強度および
耐薬品性を提供する。本発明のディスプレイ用ガラス部
材は、均一な膜が得られるとされているゾルゲル法によ
って作製した酸化ジルコニウムを主成分とする金属酸化
物薄膜部材とも、より化学的安定性、熱安定性、機械強
度が優れている。このことによって、清掃などによって
発生し得る擦り傷、破損および破壊を防止することがで
きる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 阪下 好顕 兵庫県伊丹市千僧5丁目41番地 帝国化学 産業株式会社伊丹工場内 (72)発明者 佐藤 光史 東京都八王子市別所2−29 エストラーセ 長池4−501 (72)発明者 西出 利一 福島県郡山市本町2丁目21番5号 ファー ストパレスIII307号

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ガラス基材表面に、ジルコニウム成分と
    ジルコニウム以外の金属成分とを含有する金属酸化物薄
    膜を有するディスプレイ用ガラス部材であって、 該薄膜が:アミノポリカルボン酸とジルコニウム化合物
    とから形成されるジルコニウム錯体またはジルコニウム
    塩とアミンとの塩であり、該ジルコニウム以外の金属成
    分がジルコニウム以外の金属を含む化合物であり、そし
    て該組成物の全金属成分のうち、該ジルコニウム成分が
    酸化ジルコニウム換算で70モル%〜98モル%の割合
    で含有されかつ該ジルコニウム以外の金属成分が該金属
    の酸化物換算で2モル%〜30モル%の割合で含有され
    る、組成物由来の膜であり;酸化ジルコニウムとジルコ
    ニウム以外の金属の酸化物との固溶体でなり;そして該
    ジルコニウム以外の金属の酸化物が該固溶体の成分とし
    て、2モル%〜30モル%の割合で含有される、 ディスプレイ用ガラス部材。
  2. 【請求項2】 前記ジルコニウム化合物が、ジルコニウ
    ムアルコキシド、および有機酸または無機酸のジルコニ
    ウム塩からなる群より選択される少なくとも1種であ
    る、請求項1に記載のディスプレイ用ガラス部材。
  3. 【請求項3】 前記組成物が、前記ジルコニウム成分と
    ジルコニウム以外の金属成分とを極性溶媒中に含有する
    液状の組成物である、請求項1または2に記載のディス
    プレイ用ガラス部材。
  4. 【請求項4】 前記ジルコニウム以外の金属成分が、
    Y、Mg、Ca、Sc、CeまたはSrを含む化合物か
    らなる群より選択される少なくとも1種である、請求項
    1から3のいずれかに記載のディスプレイ用ガラス部
    材。
  5. 【請求項5】 ガラス基材表面に、ジルコニウム成分と
    ジルコニウム以外の金属成分とを含有する金属酸化物薄
    膜を有するディスプレイ用ガラス部材の製造方法であっ
    て、 アミノポリカルボン酸とジルコニウム化合物とから形成
    されるジルコニウム錯体またはジルコニウム塩とアミン
    との塩であり、該ジルコニウム以外の金属成分がジルコ
    ニウム以外の金属を含む化合物であり、そして該組成物
    の全金属成分のうち、該ジルコニウム成分が酸化ジルコ
    ニウム換算で70モル%〜98モル%の割合で含有され
    かつ該ジルコニウム以外の金属成分が該金属の酸化物換
    算で2モル%〜30モル%の割合で含有される、組成物
    をガラス基材の外表面に付与し、塗膜を形成する工程;
    および該ガラス基材上に形成された塗膜の組成物を結晶
    化させることにより、ジルコニウム成分とジルコニウム
    以外の金属成分とを含有する金属酸化物薄膜を形成する
    工程;を包含する、方法。
  6. 【請求項6】 前記組成物がスピンコート法、ディップ
    コート法、またはスプレーコート法により前記ガラス基
    材上に付与される、請求項5に記載の方法。
  7. 【請求項7】 前記結晶化が、前記塗膜を有する前記ガ
    ラス基材を熱処理、光処理、または化学的処理すること
    により行われる、請求項5または6に記載の方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2010019491A (ja) * 2008-07-10 2010-01-28 Sumitomo Osaka Cement Co Ltd 保護膜付き製品

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