JP2001325900A - 陰極線管用内装塗料 - Google Patents
陰極線管用内装塗料Info
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Abstract
の有するガス吸着能力を活用し、管内の真空度を向上す
る上で最適な陰極線管用内装塗料を提供する。 【解決手段】 リチウムとカリウムの珪酸塩および分散
剤を含有する水分散媒中に、黒鉛粒子および必要に応じ
他の特定金属化合物粒子を懸濁させた陰極線管用内装塗
料において、リチウムに対するカリウムのモル比が1〜
9の範囲にあり、かつリチウムとカリウムの酸化物の合
計に対する二酸化珪素のモル比が2.5〜3.5の範囲に
あることを特徴とする陰極線管用内装塗料。
Description
料に関するものである。さらに詳しくは、排気ベーク時
のガス放出量が少なく、且つ、ガス吸着性の良い導電性
被膜を形成するための陰極線管内装塗料に関するもので
ある。
る。まず、内面に導電性被膜(以下「内装被膜」とい
う)を形成したファンネル部と蛍光スクリーンを施した
パネル部とを接着剤であるフリットガラスを介して組み
合わせた後、約450℃でベーキングし、ファンネル部
とパネル部を一体化した管体とする。次いで、この管体
に電子銃を組み込んだ後、ネック部から真空ポンプへ連
結したチップ管を通して管内を真空排気しながら約40
0℃まで加熱し、管内部の不要ガスを排出する。この工
程を排気ベーク工程という。その後、チップ管を封じ切
り管体を密閉系にした後、バリウム等のゲッター物質を
管体内部へ飛散させ、真空度を更に高めて陰極線管を完
成する。
は管内真空度と密接な関係があり、管内真空度は内装被
膜の性質に左右される。すなわち、陰極線管の真空度が
低く管内に多量の不要ガスが存在するときは、陰極の電
子放出能力が減衰し、最終的に陰極から電子が放出され
なくなる。これは陰極線管稼動時に生ずる電子ビームに
よりこれらの不要ガスがイオン化されて、陰極に悪影響
を与えるからである。また、管内真空度と内装被膜との
関係についていえば、排気ベーク工程で内装被膜から放
出されるガス量が多いときは、排気ベーク工程で排気が
完了せずに、放出ガスが管内に残留して管内真空度を低
下させる原因となる。しかしながら、内装被膜はゲッタ
ー能力を有しているので、管内の不要ガスを吸着して管
内真空度を高める作用も行う。
形成するために用いる陰極線管用内装塗料の組成によっ
て決定される。一般に内装被膜は、内装塗料をスプレ
ー、刷毛塗りまたは流し塗り(フローコート)などの方
法によりファンネル内面に塗布した後、乾燥することに
よって形成される。この時に使用する内装塗料は、接着
剤である珪酸アルカリと分散剤を含有する水媒体中に、
導電材である黒鉛粒子と任意の電気抵抗値に調整するた
めの酸化鉄、酸化チタン、炭化珪素などに代表される金
属酸化物または金属炭化物の粒子を懸濁、分散させたも
のが一般に使用されている。内装塗料の前記組成の内、
珪酸アルカリ化合物はガス放出源であり、黒鉛粒子はガ
スの吸着剤である。珪酸アルカリ化合物がガス放出源と
なる理由は、内装被膜中の珪酸アルカリ化合物を構成す
るアルカリ金属イオンが種々の条件により被膜表面へ移
行し、大気中の炭酸ガス(CO2)および水蒸気(H2
O)と結合して、炭酸水素塩または炭酸塩水和物などを
形成するためである。これらの形成物が排気ベーク工程
の加熱で熱分解することにより、炭酸ガスや水蒸気など
のガスを発生すると考えられる。
膜中の珪酸アルカリに由来するアルカリイオンの移行を
抑制する技術として、ガラス中に2種類以上のアルカリ
金属を混合する「混合アルカリ効果」を応用することが
良く知られている。この「混合アルカリ効果」について
は、例えば、山根 正之「はじめてガラスを作る人のた
めに」(1989年7月10日発行)内田老鶴圃、p85-
86に開示されている。また「混合アルカリ効果」を本願
発明に属する陰極線管の内装被膜に応用する先行技術と
しては、例えば、特開昭52−52362号公報に、珪
酸ナトリウムおよび/または珪酸カリウムと珪酸リチウ
ムからなる珪酸塩結合剤を含有する内装被膜を使用する
ことにより、雰囲気中から吸着するH2O、CO2およ
びその他のガスの量を抑制し、被膜から放出するガス量
を低減する技術が開示されている。ただし、この発明は
ガス放出性の改善に着目しており、不要ガスを吸着する
ことについては考慮していない。
ことについて説明する。その理由については明確にされ
ていないが、真空、42〔12〕(1999) p.70-75 に記載さ
れている橋場らの報告によれば、黒鉛に吸着効果がある
ことは事実である。また、黒鉛の吸着効果を蛍光表示管
に応用した例が、特開昭57−136747号公報に記
載されている。
アルカリ化合物においては、塩を構成するアルカリ金属
の種類とその構成比率、および二酸化珪素と酸化アルカ
リとの比率によって、粘性および造膜性等種々の特性が
大きく変化するため、上記従来技術のように一義的な手
法では、黒鉛の有する吸着能力を最大限に活用すること
ができず、十分な効果を得ることができない。
記のような技術的背景に鑑み、内装被膜のガス放出性と
ガス吸着性の両特性を十分に考慮して、内装被膜からの
放出ガスを抑制し、且つ黒鉛の有するガス吸着能力を最
大限に活用し、管内の真空度を向上させるために最適な
陰極線管用内装塗料を提供することにある。
カリウムからなる珪酸アルカリ化合物および分散剤を含
有する水分散媒中に、黒鉛粒子、または黒鉛粒子と金属
酸化物粒子もしくは金属炭化物粒子とを懸濁させた陰極
線管用内装塗料において、前記分散媒中のリチウムに対
するカリウムのモル比(K/Li)は1〜9の範囲にあ
り、且つ、分散媒中のリチウムとカリウムの含有量をそ
れらの酸化物に換算した酸化アルカリの合計(R2O)
に対する分散媒中の二酸化珪素(SiO2)のモル比
(SiO2/R2O)が2.5〜3.5の範囲にあること
を特徴とする陰極線管用内装塗料を提供するものであ
る。
含まれる珪酸アルカリ化合物を構成するアルカリとし
て、リチウムとカリウムを用いる理由は、前述の「混合
アルカリ効果」を最大限に利用するためである。すなわ
ち、混合アルカリ効果は、混合する異種のアルカリ金属
の質量差が大きいほど有効に作用することから、一般的
に珪酸アルカリ化合物として使用されているリチウム、
ナトリウム、カリウムのアルカリ金属の内、質量の最も
小さいリチウムと最も大きいカリウムの2種類を選定し
た。リチウムとカリウム以外のアルカリ金属の組合せ、
例えば、リチウムとナトリウムやナトリウムとカリウム
の組合せによっても、ある程度の「混合アルカリ効果」
を期待することはできるが、十分な効果を得るために
は、リチウムとカリウムの組合せが好ましい態様であ
る。
ムのモル比(K/Li)を1〜9の範囲としたのは、混
合アルカリ効果の得られる比率内において、黒鉛粒子の
吸着に対し理想的な膜構造を形成するのに適した珪酸ア
ルカリ化合物の粘性を得るためである。なお、ここでい
うモル比「K/Li」は、分散媒中に存在するLiのモ
ル量に対するKのモル量で表し、下記式〔I〕に従って
算出する。
リ化合物中のリチウムの混合比率が低いために十分な混
合アルカリ効果を得ることができない。一方、分散媒中
のK/Liが1より小さいと、リチウムの増粘作用によ
り乾燥時に珪酸アルカリ化合物の粘度が上昇し、被膜表
層に珪酸アルカリ層を形成する。その結果、被膜表層に
形成された珪酸アルカリ層によって黒鉛の吸着面も覆わ
れるために、黒鉛粒子は吸着効果を失う。
有量を金属酸化物に換算した総酸化アルカリ量(R
2O)に対する分散媒中の二酸化珪素量(SiO2)の
モル比(SiO2/R2O)を2.5〜3.5の範囲とし
た理由は、珪酸アルカリの粘性を適当な値に保ちつつ、
表面へ移行するアルカリイオンの総数を低減するためで
ある。なお、ここでいうモル比「SiO2/R2O」
は、分散媒中に存在するR2Oのモル量に対するSiO
2のモル量で表し、下記式〔II〕のように算出する。
の分散媒中のリチウムに対するカリウムのモル比が1よ
り小さい時と同様に、珪酸アルカリの粘度上昇により、
被膜表層に珪酸アルカリ層が形成され、黒鉛粒子が吸着
効果を失う。また、分散媒中のSiO2/R2Oが2.
5より小さいと、二酸化珪素に対するアルカリ金属イオ
ンの総数が多くなり、表面へ移動するアルカリ金属イオ
ンの総数は混合アルカリ効果を利用しない場合と大差の
無い結果になる。
効果」により排気ベーク時のガス発生源となる珪酸アル
カリ化合物の生成を低減し、且つ、珪酸アルカリ化合物
の粘性を制御することにより、黒鉛粒子のガス吸着に対
して理想的な膜構造を形成することができる陰極線管内
装用塗料を提供するものである。また、この塗料を用い
て陰極線管用内装被膜を形成することにより、排気ベー
クに費やす時間を短縮したり、脱ガス温度を低下させる
ことが可能になる。なお、従来と同様の条件で排気ベー
クを行う場合には、管内真空度が向上するので、陰極線
管の長寿命化を図ることができる。
に説明するが、この発明は実施例により限定されるもの
ではない。 (珪酸アルカリ水溶液の調製)この発明に使用する珪酸
アルカリ化合物の水溶液(試料材料)として、以下の4
種類を準備した。 (1)二酸化珪素(SiO2)を22.7重量%および
酸化カリウム(K2O)を9.3重量%含有し、二酸化
珪素と酸化カリウムのモル比(SiO2/K2O)が
3.8である珪酸カリウム水溶液(商品名:スノーテッ
クスK、日産化学(株)製;以下、「珪酸カリウムA」と
記す) (2)二酸化珪素を12.6重量%および酸化カリウム
を19.4重量%含有し、二酸化珪素と酸化カリウムの
モル比が1.0である珪酸カリウム水溶液(内製品;以
下、「珪酸カリウムB」と記す) (3)二酸化珪素を20.6重量%および酸化リチウム
(Li2O)を3.02重量%含有し、二酸化珪素と酸
化リチウムのモル比(SiO2/Li2O)が3.4で
ある珪酸リチウム水溶液(商品名:LSS−35、日産
化学(株)製;以下、「珪酸リチウムA」と記す) (4)二酸化珪素を20.4重量%および酸化リチウム
を1.35重量%含有し、二酸化珪素と酸化リチウムの
モル比が7.5である珪酸リチウム水溶液(商品名:L
SS−75、日産化学(株)製;以下、「珪酸リチウム
B」と記す)
を表1に示す配合割合で攪拌機を用いて調合することに
より、K/LiおよびSiO2/R2Oの異なる珪酸ア
ルカリ化合物の水溶液(有効固形分濃度:20重量%)
を調製した。なお、調合にあたっては、同一名の商品で
あっても製品ロットごとに有効成分や二酸化珪素と酸化
アルカリの比率が若干変化するので、その都度調合量を
計算する必要がある。
ウム水溶液や珪酸リチウム水溶液に所定量の水酸化リチ
ウム(LiOH)水溶液と水酸化カリウム(KOH)水
溶液を添加して調合する方法や、コロイダルシリカ(水
に可溶性の無水珪酸の微粒子)に所定量の水酸化リチウ
ム水溶液と水酸化カリウム水溶液を添加して、加熱攪拌
する調合方法によっても同様の珪酸アルカリ化合物の水
溶液を得ることができる。
μmの黒鉛粒子を5重量部、抵抗調整材として平均粒子
径0.5μmの酸化チタンを10重量部、分散剤として
カルボキシメチルセルロースを1重量部、および媒質の
純水を49重量部用意し、これらの材料に前記の方法で
調製した種々の珪酸アルカリ化合物の水溶液(試料材
料)を35重量部配合し、攪拌機を用いて十分に攪拌し
懸濁液を作製した。次いで、これらの懸濁液をボールミ
ルにより分散処理することにより陰極線管用内装塗料
(評価塗料)とした。
膜の作製およびその評価方法としては、前述の 真空、4
2〔12〕(1999)p.70-75の「ブラウン管内装塗布材料のガ
ス脱離・吸着特性」にも記述されている昇温脱離法(Th
ermal Desorption Spectroscopy:TDS法)を用い
た。その詳細は以下のとおりである。始めに、ステンレ
ス鋼製基板(20mm×60mm)の両面に、作製した
評価塗料を塗布し、室温で自然乾燥した後、450℃で
1hr、大気下においてベーキングを行い被膜を作製し
た。この被膜を真空装置に装着し、真空容器内が3×1
0−5Pa以下になるまで約20hr真空排気を行っ
た。次いで、真空容器内の試料を直接通電により昇温速
度10℃/分で500℃まで加熱しながら、放出される
ガス量を四重極質量分析計で測定し、ガス放出量とし
た。なお、被膜から放出されるガスのほぼ全量はH2O
とCO2であり、これらの総放出量をガス放出量とす
る。次にガス吸着量の測定について説明する。ガス放出
量の測定を行った各試料に対し、室温、0.1Paの圧
力で40分間、CO2ガスを強制吸着させた後、再度真
空容器内を3×10−5Pa以下に達するまで排気し、
ガス放出量の測定と同様に試料を加熱し、試料に吸着さ
せたCO2ガスを放出させ、その総放出量をガス吸着量
とする。
は、リチウムに対するカリウムのモル比(K/Li)が
3.0であり、総酸化アルカリ量に対する二酸化珪素の
モル比(SiO2/R2O)が3.0である試料番号7
(実施例5)のガス放出量およびガス吸着量を基準(1
00)として、他の試料における特性値を示した。な
お、試料番号7のガス放出量は被膜1gあたり0.6P
a・m3、ガス吸着量は被膜1gあたり4×10−3P
a・m3であった。
討する。試料番号1〜4および6〜12のリチウムに対
するカリウムのモル比(K/Li)が9以下で、総酸化
アルカリ量に対する二酸化珪素のモル比(SiO2/R
2O)が2.5〜4.0の範囲の珪酸アルカリ化合物を用
いた試料塗料から得た被膜は、ガス放出量が評価の基準
とした試料番号7のものと大差のない結果である。但
し、試料番号5(比較例2)のようにK/Liが3.0
であってもSiO2/R2Oが2.0と小さい評価塗料
から得た被膜では、ガス放出量が著しく多くなる。ま
た、K/Liが15である試料番号13〜15の各試料
においては、SiO2/R2Oを変化させてもガス放出
量が基準試料(試料番号7)の2〜5倍と著しく高い値
を示している。
る。試料番号9および15のようにSiO2/R2Oが
4の場合は、基準試料に比べガス吸着量は50%または
70%と少ない。また、試料番号1のようにK/Liが
0.5の場合には、SiO2/R2Oが3であっても、
ガス吸着量は基準試料の半分程度と少ない。これに対
し、本件発明の範囲内にある試料番号2〜4,6〜8お
よび10〜12の被膜、すなわちK/Liが1〜9であ
り、且つ、SiO2/R2Oが2.5〜3.5の範囲にあ
る珪酸アルカリ化合物を用いた評価塗料から得た被膜
は、ガス吸着量が基準試料と同程度であり、十分大きい
値である。この違いは試料番号7および9の評価塗料か
ら得た被膜の電子顕微鏡写真である図1および図2の比
較からも明らかである。すなわち、図1に示す試料番号
7の被膜表面には、黒鉛粒子1、酸化チタンの一次粒子
2が確認できる。なお、写真中、扁平なやや大きい粒子
は黒鉛粒子1であり、淡色の多数の小粒子は酸化チタン
粒子2である。また、その他の不定形粒子は珪酸アルカ
リ化合物粒子3である。これに対し、図2に示す試料番
号9の被膜では、表面にガラス化した珪酸アルカリ化合
物の層が形成されており、その中に黒鉛や酸化チタンの
粒子が埋没しているので、吸着剤となる黒鉛粒子を確認
することは困難である。
ムのモル比(K/Li)が1〜9であり、且つ総酸化ア
ルカリ量に対する二酸化珪素のモル比(SiO2/R2
O)が2.5〜3.5の範囲にある珪酸アルカリ化合物を
用いた陰極線管内装塗料により形成された内装被膜は、
放出ガス量が少なく、さらにガスを吸着する能力が高い
ので、陰極線管内装被膜として優れた特性を有している
ことが分かる。
被膜を形成することにより、排気ベークに費やす時間の
短縮(短時間排気)や脱ガス温度の低温化(低温排気)
が可能になる。また、従来と同様の条件で排気ベークを
行う場合には、管内真空度が向上するので、陰極線管の
長寿命化を図ることができる。
る。
る。
Claims (1)
- 【請求項1】 リチウムとカリウムからなるアルカリ金
属の珪酸塩(珪酸アルカリ)および分散剤を含有する水
分散媒中に、黒鉛粒子、または黒鉛粒子と金属酸化物粒
子もしくは金属炭化物粒子とを懸濁させた陰極線管用内
装塗料において、 前記分散媒中のリチウムに対するカリウムのモル比(K
/Li)は1〜9の範囲にあり、 且つ、分散媒中のリチウムとカリウムの含有量をそれら
の酸化物に換算したアルカリ金属酸化物(酸化アルカ
リ)の合計(R2O)に対する分散媒中の二酸化珪素
(SiO2)のモル比(SiO2/R2O)が2.5〜
3.5の範囲にあることを特徴とする陰極線管用内装塗
料。
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