JP2001316475A - ジアルコキシポリシランとその製造方法 - Google Patents

ジアルコキシポリシランとその製造方法

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JP2001316475A
JP2001316475A JP2000135223A JP2000135223A JP2001316475A JP 2001316475 A JP2001316475 A JP 2001316475A JP 2000135223 A JP2000135223 A JP 2000135223A JP 2000135223 A JP2000135223 A JP 2000135223A JP 2001316475 A JP2001316475 A JP 2001316475A
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Masao Motonaga
雅郎 本永
Kou Julian
ジュリアン・コウ
Michiya Fujiki
道也 藤木
Hiroshi Nakajima
寛 中島
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Nippon Telegraph and Telephone Corp
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Nippon Telegraph and Telephone Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 置換基が完全に、かつ容易に導入されるア
ルコキシポリシランの合成方法と、それにより得られ
る、カラム担体や導電性材料として有用なジアルコキシ
ポリシランを提供する。 【解決手段】 ポリパークロロシランとアルコールを
アミンの存在下で反応させる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この出願の発明は、ジアルコ
キシポリシランとその製造方法に関するものである。さ
らに詳しくは、この出願の発明は、分離カラム担体や導
電性材料、熱または光応答性材料等として有用なジアル
コキシポリシランとその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術とその課題】有機シリコン化合物には産業
上有用なものが多く、表面処理剤、撥水・撥油剤、電気
絶縁体、熟媒体、セラミック材の前駆体などは、いずれ
もシリコン(Si)を骨格の一部に含む高分子である。近
年、主鎖骨格がシリコンのみから構成される溶媒に可溶
な置換ポリシランが新しいタイプの機能材料として注目
を集めており、フォトレジストや導電性材料への応用が
研究されている。
【0003】置換ポリシランは、主鎖がシリコンのみか
ら構成される高分子であるため、紫外線照射により主鎖
分解を起こしやすく、低分子量化、シロキサン化が進行
する。この性質を利用してフォトレジストとすることが
報告されているが、反対に非線形光学材料、発光材料な
ど光関連の機能材料や導電性材料としては、寿命が短い
ために不適当とされてきた。しかし、置換ポリシランが
暗所、すなわち主鎖骨格の紫外吸収領域以外の領域では
非常に安定であることから、置換ポリシランの主鎖吸収
帯よりも長波長側での機能を見出すことができれば、発
光現象を直接利用することが可能となると期待できる。
また、側鎖の構造も、置換ポリシランの特性に大きく影
響すると考えられることから、側鎖の構造に関する研究
も進められている。
【0004】また、そのような研究により、加水分解や
加溶媒分解に対して耐性を示す特徴的な置換ポリシラン
構造が明らかになれば、これをもとに、特定の置換ポリ
シランを高速液体クロマトグラフィー(以下HPLC)
やガスクロマトグラフィー(以下GC)用カラム材料と
して用いることが考えられる。
【0005】これまで、エナンチオマーを認識する高分
子材料としては、スパルティン−n−ブチルリチウムを
開始剤として合成したポリ(トリフェニルメチルメタク
リレート)やポリ(ジフェニルピリジルメチルメタクリ
レート)など、主鎖が一方向の螺旋巻き性を持つ炭素骨
格材料が知られている(Journal of American Chemical
Society, 1981, 6971)。これら一方向の螺旋巻き性を
有する炭素骨格高分子はシリカゲルに担持された形態で
エナンチオマーを分離する高速液体クロマトグラフィー
用カラム材として市販されている(ダイセル化学(株)
Chiralpak-OT、Chiralpak-OP)。しかしながら、これら
ポリ(トリフェニルメチルメタクリレート)系材料に
は、主鎖ヘリックス構造を固定する側鎖部が加水分解や
加溶媒分解により脱離するとエナンチオマー認識能も同
時に失われるという欠点がある。また、現在の逆相条件
でも使用できるHPLCのエナンチオマー認識用カラム
材の多くは生体物質由来のもので、アミド結合を有する
アルキル誘導体であるため、加水分解による劣化が起こ
りやすいのが実情である。
【0006】そこで、光学活性置換基を有する置換ポリ
シランをカラム担体として利用することができれば、外
部刺激(酸、アルカリ、加水分解などの化学的変化、
熱、圧力などの物理的変化)に比較的安定で、長期的な
反復使用後も主鎖の一方向ヘリシティに由来するエナン
チオマー認識能が保持される、HPLC用キラル固定相
(以下CSP)、あるいはGC用CSPとしての用途が
開けると考えられる。
【0007】したがって、置換ポリシランの構造、特
性、機能とそれらの相関、特に側鎖の構造とそのポリマ
ー特性に与える影響を理解するために、これまで様々な
研究がなされてきた。しかし、多くの場合、該当するポ
リシランの合成手段がないために、実験的な証明が不可
能であったのが実情である。
【0008】例えば、直鎖状の(SiH2)nは、ポリシラン
類の構造解析や設計において最も基本的なモデル化合物
であるが、未だに合成された例がない。また、アルコキ
シ基に代表される、Siの主鎖に対するヘテロ原子を介
した側鎖の結合については、ハロゲン置換ポリシラン
(Synth.Metals 1992, 52, 51; Res.Soc.Symp.Proc. 19
98, 486, 385)、チオフェン置換ポリシラン、およびピ
ロール置換ポリシラン(Synth.Metals 1999, 98, 161)
における理論的な報告がなされているのみで、それらの
側鎖の影響に関する理論的、あるいは実験的データはほ
とんど報告されていない。
【0009】このような置換ポリシランの合成方法とし
てこれまで知られているのは、ジクロロシランをナトリ
ウム存在下、トルエン還流条件でカップリングするWurt
z反応を応用するというものである。しかし、このよう
な厳しい条件下では、側鎖は飽和アルキル基やアリル基
に限定されてしまい、アルコキシポリシランのようなヘ
テロ原子を介して側鎖が結合しているような置換ポリシ
ラン(以下、含ヘテロ原子置換ポリシラン)は得られな
いのが実情であった。含ヘテロ原子置換ポリシランの合
成について実際に報告された例では、ほとんどの場合、
置換基が側鎖のごく一部にしか導入されず、高いもので
も、50〜80%の導入率が報告されているにすぎない
(J.Organomet. Chem., 1986, 300, 327; Polym.Prep
r., 1987,28(2), 222; Organomet.Chem., 1991,402, C4
5)。
【0010】そこでこの出願の発明は、以上の通りの事
情に鑑みてなされたものであり、従来技術の問題点を解
消し、置換基が完全に、かつ容易に導入される新しい含
ヘテロ原子置換ポリシラン、特にアルコキシポリシラン
の合成方法と、それにより得られる、カラム担体や導電
性材料等として有用なジアルコキシポリシランを提供す
ることを課題としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】この出願の発明は、上記
の課題を解決するものとして、まず第1には、ポリパー
クロロシランとアルコールをアミンの存在下で反応させ
ることを特徴とするジアルコキシポリシランの製造方法
を提供する。
【0012】また、この出願の発明は、第2には、ポリ
パークロロシランと反応するアルコールがキラルアルコ
ールであること、第3には、ポリパークロロシランと反
応するアルコールがアキラルアルコールであることを特
徴とする、上記の製造方法を提供する。
【0013】さらに、第4には、この出願の発明は、上
記のいずれかの製造方法によって得られるジアルコキシ
ポリシランを、第5には、光学活性なジアルコキシポリ
シランをも提供する。
【0014】
【発明の実施の形態】この出願の発明のジアルコキシポ
リシランの製造方法では、例えば既知の方法(Z.anorg.
allg.Chem.,1979, 458, 163; Polyhedron, 1998, 17, 1
791)により、オクタクロロシクロテトラシランを合成
し、その開環によって得られたポリパークロロシラン:
(SiCl2)nを用いることができる。
【0015】オクタクロロシクロテトラシランは、例え
ば、化学式(1)に示すように、ジフェニルジクロロシ
ランをTHF中、Mg/MgBr2触媒下で反応させて
オクタフェニルシクロテトラシランを合成し、さらに塩
酸とトリクロロアルミニウムを触媒として、ベンゼン中
で反応して得られる。
【0016】
【化1】
【0017】このオクタクロロシクロテトラシランを光
照射することにより、ポリパークロロシラン:(SiCl2)n
が得られる。このような ポリパークロロシラン:(SiCl
2)nの分子量については、これまで明らかになっていな
いが、後述するように、この出願の発明のジアルコキシ
ポリシランの製造方法によって得られるジアルコキシポ
リシランの分子量を基に推定することが可能となる。
【0018】この出願の発明のジアルコキシポリシラン
の製造方法では、前記のポリパークロロシラン:(SiC
l2)nを、アルコールと反応させることにより、塩素原子
がアルコキシ基により置換された、ジアルコキシポリシ
ランが得られる。このとき、アルコールの種類はとくに
限定されず、メタノール、エタノール、n−プロパノー
ル、n−ブタノール、n−ペンタノール、n−ヘキサノ
ール等の一級アルコール、iso−プロパノール、se
c−ブタノール、tert−ブタノール、メチルオクタ
ノール、メチルエチルヘキサノールなどの二級あるいは
三級のアルコールから選択される。さらには、アルコー
ルは、ジオールやトリオールであってもよい。好ましく
は、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−
ブタノール、n−ペンタノール、n−ヘキサノール、i
so−プロパノール、sec−ブタノール、tert−
ブタノール、メチルオクタノール、メチルエチルヘキサ
ノールなどのアルキル鎖長の限定されない1価のアルコ
ールである。また、これらのアルコールは、キラルな化
合物であっても、アキラルな化合物であってもよい。さ
らに、この発明におけるアルコールは、前記反応を阻害
することのない各種の置換基を有していてもよい。
【0019】この出願の発明のジアルコキシポリシラン
の製造方法では、(SiCl2)nとアルコールの反応において
HClが生成するため、アミンを添加してHClを沈殿
除去する必要がある。アミンの種類は特に限定されず、
メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、ト
リエチルアミン、アニリン、トルイジン、ピリジンな
ど、様々なものが例示される。
【0020】また、反応温度は、とくに限定されない
が、反応は、発熱を伴うため、冷却しながら行うことが
好ましい。例えば、−100℃〜室温の温度範囲が好ま
しく考慮される。
【0021】反応には溶媒を使用してもよく、反応溶媒
としては、反応温度範囲で液体であり、反応を阻害しな
いものであれば、どのようなものであってもよく、とく
にその種類は限定されない。好ましくは、芳香族炭化水
素であって、ベンゼンまたはトルエン等である。
【0022】この出願の発明のジアルコキシポリシラン
の製造方法では、得られた粗生成物は、未反応の(SiC
l2)nやアルコール、副生成物であるクロロアミン化合
物、未反応のアミン等を含むため、精製する必要があ
る。精製方法は、洗浄、再沈殿、遠心分離、ろ過等、通
常の化学実験操作において一般的に使用される種々の方
法が適用できる。
【0023】以上のような方法によって、直鎖状のアル
コキシ基や、キラルもしくはアキラルなアルコキシ基、
さらに、任意の鎖長のアルコキシ基によって置換された
ポリシランが得られる。これらのジアルコキシポリシラ
ンは、分子量が大きく、ほぼ100%のアルコキシ基導
入率を示し、側鎖のアルコキシ基の構造に応じて、様々
な光学特性を示す。したがって、カラム材や、導電性材
料としての応用が期待される。
【0024】以下、添付した図面に沿って実施例を示
し、この発明の実施の形態についてさらに詳しく説明す
る。もちろん、この発明は以下の例に限定されるもので
はなく、細部については様々な態様が可能であることは
言うまでもない。
【0025】
【実施例】以下の実施例において、高分子の分子量は、
フォトダイオード検出器を備えたShimadzu液体
クロマトグラフィー中で、Shodexカラムによるサ
イズエクスクルージョンクロマトグラフィー(SEC)
(溶媒:THF)により測定した。検出器の検量は、ポ
リスチレン標準を用いて行なった。
【0026】紫外−可視吸収スペクトル(UV−vi
s)は、室温(21℃)にて、JASCO V−570
を用いて濃度ca.2×10-4 mol dm-3で測定した。
【0027】円二色性スペクトル(CD)とUV−vi
sスペクトルの同時測定は、JASCO J−720で
行なった。温度範囲80〜−10℃は、Peltier制御装
置(光路長:1cmセル、サンプル濃度:2×10-4 m
ol dm-3)を、−10〜−70℃は液体窒素冷却クリオ
スタット(光路長:0.5cmセル)を用いて行なっ
た。
【0028】蛍光スペクトルは、日立F−850蛍光光
度計を用いて、室温にて測定した。
【0029】NMRスペクトルは、Varian Un
ity 300NMRスペクトロメーター(溶媒:CDCl3
またはトルエン-d8)を用いて測定した。
【0030】合成、および測定に用いられた器具は、す
べてオーブン中にて乾燥し、空気および水分に敏感な物
質の取り扱いについては、一般的な化学実験操作で用い
られる方法を適用した。
【0031】ポリパークロロシラン:(SiCl2)nは、従来
報告されている方法(Z.anorg.allg.Chem.,1979, 458,
163; Polyhedron, 1998, 17, 1791; Angew.Chem.,1998,
37(10), 1441)により、前記化学式(1)に従って合
成した。
【0032】溶媒およびアルコールは無水のものを購入
し、4Aモレキュラーシーブス上で保存した。実施例1 ポリ[ビス{(S)−2−メチルオクトキ
シ}シリレン](化合物(a))の合成 ポリパークロロシラン:(SiCl2)n(0.520g、5.
253mmol)をシュレンクフラスコに入れ、−80
℃、不活性ガス雰囲気下で、トルエン(30ml)およ
び(S)−2−メチルオクタノール(3.026g、
0.0210mmol、4当量;ジャパンエナジー社
製)とピリジン(1.25g、0.0158mmol、
3当量)の混合液をシリンジで添加した。
【0033】次に容器を遮光し、反応液を攪拌しなが
ら、室温まで加温した。ピリジニウムハイドロクロライ
ドの結晶の析出とSEC/UV分析によって、反応終了
を確認した後、反応液をグラスフィルターによって真空
ろ過して未反応物等を除去し、ガム状の淡黄色の物質と
して、次式の化合物(a)が得られた。(収量:1.2
2g、収率:74%)
【0034】
【化2】
【0035】実施例2〜7 種々のジアルコキシポリシ
ラン(化合物(b)〜(g))の合成 実施例1と同様の方法で、アルコールとして、n−オク
タノール、1−ヘキサノール、(S)−2−メチルブタ
ノール、n−ブタノール、n−プロパノール、エタノー
ルを用いて、ジアルコキシポリシランを合成した。得ら
れた化合物を、それぞれ、化合物(b)、(c)、
(d)、(e)、(f)、(g)とした。
【0036】
【化3】
【0037】比較例1 ポリ[ビス−(S)−2−メチ
ルブチルシリレン](化合物(h))の合成 既知の合成方法(Macromolecules, 1994, 27, 1814)に
基づいてモノマーを合成した。
【0038】モノマーを7当量のナトリウムと0.01
当量の15−クラウン−5の入ったフラスコに添加し
た。溶液を攪拌しながら110℃で還流し、8時間反応
させた後、得られた紫色の溶液をトルエンで希釈し、1
0μmのテフロン(登録商標)フィルターでろ過した。
イソプロパノール−トルエン溶液中で再結晶した後、遠
心分離によって化合物(h)を単離し、80℃にて24
時間乾燥した。(Mw=2,000、収率=6.5%) 表1に、化合物(a)〜(h)の同定結果を示した。
【0039】
【表1】
【0040】化合物(a)の同定結果から示されるよう
に、一級アルコールから得られたジアルコキシシランの
29Si−NMRスペクトルは、いずれも−8〜−9pp
mにシングルピークを有する。このことから、これらの
化合物が、Si(OR)2連鎖から成ることが確認された。ま
た、化合物(a)のように、−67ppmにおけるピー
クを示すものについては、高分子鎖の末端にSi(OR)3
を有することが確認された。
【0041】さらに、これらのポリマーは、いずれも1
HNMRおよび13CNMRスペクトルにおいて、フリー
アルコールのケミカルシフトに良く似たブロードなピー
クを示すことが確認された。また、ポリマー鎖の酸素に
隣接したα−炭素は、フリーアルコールよりも3ppm
程度小さなシフトを示すことがわかった。
【0042】以下に、化合物(a)〜(g)の特性につ
いて詳しく述べる。 <A> ジアルコキシポリシラン(化合物(a)〜
(g))の特性 各ポリマーにおける、収率、分子量、分子量分布、UV
吸収、蛍光発光の分析結果を表2に示す。
【0043】
【表2】
【0044】また、化合物(a)のUVおよび蛍光スペ
クトルを図1に示した。
【0045】室温でのUVスペクトルから、336〜3
47nmにおけるSi主鎖のσ−σ *遷移に基づく吸収
(半値幅20〜30nm)が確認された。また、発光
は、375nm付近で起こることがわかった。したがっ
て、励起光と発光のエネルギー差(ストークスシフト)
は、約30nmであった。
【0046】さらに、化合物(a)の分子量分布を図2
に示した。
【0047】これより、得られた化合物が分子量分布の
比較的狭い、単一の構造を有する化合物で、Wurtz反応
による生成物(例えば化合物(h))のように架橋等が
生じないことが確認された。
【0048】各生成物(化合物(a)〜(g))の分子
量は、再現性にややばらつきが見られるものの、約3,
000〜60,000の範囲であった。とくにアルキル
鎖長の短いアルコールから得られたものでは、分子量は
小さくなる傾向にあった。
【0049】さらに、計算により、例えば化合物(d)
(分子量:62,000)は、重合度300となること
が分かった。この値を目安とすれば、これまで明らかで
なかったパークロロポリシランの分子量を計算すること
ができる。
【0050】以上より、完全にビス置換されたジアルコ
キシポリシランが生成されていることが確認された。
【0051】UVスペクトルから明らかなように、長鎖
長のアルコキシ基を有するジアルコキシポリシランは、
不活性雰囲気下で長期(数ヶ月間)にわたり安定で、水
との反応も遅いが、化合物(d)〜(g)のように短い
アルコキシ基を有するジアルコキシポリシランは、やや
架橋しやすい。これは、Si−ORを保護しているR基
の立体障害が小さいためと考えられる。
【0052】また、従来用いられてきたWurtz反応で
は、シリルラジカルの存在により、側鎖にアルケニル基
を有する可溶性のポリマーを得ることはほとんど不可能
であった。しかし、この出願の発明の方法では、可溶性
の化合物(c)(2つの6−ヘキセニルオキシ基を有す
るポリシラン)が得られることから、従来法よりも優れ
ていると言える。 <B> キラル側鎖を有するジアルコキシポリシランの
光学活性 一つのSi原子に対して二つのエナンチオピュアなキラ
ル(S)−2−メチルオクチル基を有する化合物(a)
の各温度におけるUVおよびCDスペクトルを図3に示
した。
【0053】CDスペクトルより、化合物(a)は、正
のコットン効果を示すことが確認された。これは、UV
スペクトルにおけるシリコン主鎖のσ−σ*遷移と一致
した。
【0054】したがって、キラルな側鎖間の親和性によ
り、ヘリカルな螺旋構造を示すことが示唆された。これ
は、ジアルキル(J.Am.Chem.Soc., 1994, 116, 6017
他)、アルキルーアリル(Macromolecules, 1999, 22,
7707)、およびジアリル(J.Am.Chem.Soc., 1999, 121,
7934他)置換ポリシランについて報告されているもの
と一致する。また、このことは、UVスペクトルの幅が
狭いこと、吸収波長が若干長波長側にシフトしているこ
とからも示されており、主鎖構造が規則的であることを
表している。
【0055】さらに、化合物(a)における非対掌性比
(gabs:CDおよびUVスペクトルのモル吸光度比=
Δε/ε)は、−70℃において1.61×10-4であ
ることが分かった。
【0056】これまでに、ポリ[{(S)−2−メチル
ブチル}(6,9,12−トリオキサテトラデシル)シ
ラン]のgabsが−60℃において2.8×10-4であ
ることは、主鎖が、一重螺旋ポリシランであることを示
すとの報告がある(Chirality, 1998, 10, 667)。この
ことから考えれば、化合物(a)のSi連鎖である主鎖
は、螺旋構造を有しながら、正(P)および負(M)の
両方の旋性を有しており、そのうちの一方が支配的とな
っているものと考えられる。
【0057】同様に、エナンチオピュアなキラル(S)
−2−メチルブチル側鎖を有する化合物(d)では、−
10℃において正のコットン効果を示す化合物(a)と
は対象的に、−10℃において負のコットン効果を示
し、このポリマーにおいても、一方の旋性が支配的とな
っていることが示された。
【0058】
【発明の効果】以上詳しく説明したとおり、この発明に
よって、新しいジアルコキシポリシランの製造方法が提
供される。これにより、緩やかな条件下で、簡便に、ほ
ぼ完全にアルコキシ基が導入されたジアルコキシポリシ
ランを合成することが可能となった。また、この方法に
より得られた可溶性のジアルコキシポリシランは、置換
ポリシランにおける側鎖の影響を理解する上での重要な
指針となり得る。さらには、この発明の方法により、光
学活性を示す置換ポリシランを得ることが可能となるこ
とから、それらの光学材料、導電性材料、あるいはカラ
ム充填材としての応用が期待される。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明のジアルコキシポリシランの製造方法
によって得られたポリ[ビス{(S)−2−メチルオク
トキシ}シラン]のUVおよび蛍光スペクトルを示した
図である。(温度:21℃、溶媒:イソオクタン)
【図2】この発明のジアルコキシポリシランの製造方法
によって得られたポリ[ビス{(S)−2−メチルオク
トキシ}シラン]の分子量分布を示した図である。(S
ECによる。)
【図3】この発明のジアルコキシポリシランの製造方法
によって得られたポリ[ビス{(S)−2−メチルオク
トキシ}シラン]の各温度におけるUVおよびCDスペ
クトルを示した図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 ジュリアン・コウ 東京都千代田区大手町二丁目3番1号 日 本電信電話株式会社内 (72)発明者 藤木 道也 東京都千代田区大手町二丁目3番1号 日 本電信電話株式会社内 (72)発明者 中島 寛 東京都千代田区大手町二丁目3番1号 日 本電信電話株式会社内 Fターム(参考) 4J035 JA01 JB02 JB05 JB10 LA04

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ポリパークロロシランとアルコールをア
    ミンの存在下で反応させることを特徴とするジアルコキ
    シポリシランの製造方法。
  2. 【請求項2】 アルコールがキラルアルコールである請
    求項1のジアルコキシポリシランの製造方法。
  3. 【請求項3】 アルコールがアキラルアルコールである
    請求項1のジアルコキシポリシランの製造方法。
  4. 【請求項4】 請求項1ないし3のいずれかの製造方法
    により得られるジアルコキシポリシラン。
  5. 【請求項5】 請求項4における光学活性なジアルコキ
    シポリシラン。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2004026894A (ja) * 2002-06-21 2004-01-29 Osaka Gas Co Ltd フッ素含有ポリシラン化合物
CN102304229A (zh) * 2011-04-06 2012-01-04 杭州师范大学 光学活性聚烷基芳基硅烷的制备方法

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