JP2001302653A - ラクトンの製造方法 - Google Patents

ラクトンの製造方法

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JP2001302653A JP2000130073A JP2000130073A JP2001302653A JP 2001302653 A JP2001302653 A JP 2001302653A JP 2000130073 A JP2000130073 A JP 2000130073A JP 2000130073 A JP2000130073 A JP 2000130073A JP 2001302653 A JP2001302653 A JP 2001302653A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 無置換のエポキシ環を有するエポキシカルボ
ン酸を用いて、ラクトンを製造できる方法を提供する。 【解決手段】 下記式(1)で表されるエポキシカルボ
ン酸又はその誘導体と、下記式(2)で表される化合物
とを反応させ、下記式(3)で表されるラクトンを製造
する。前記反応は、スルホン酸基を有する酸触媒(固体
酸触媒など)の存在下で行ってもよく、反応系は不均一
であってもよい。酸触媒の割合は、エポキシカルボン酸
又はその誘導体(1)1モルに対して、例えば、0.0
5〜1当量程度である。なお、エポキシカルボン酸又は
その誘導体(1)は、光学活性を有していてもよい。 【化1】 (式中、Aは、C1-3アルキレン基を示し、Bは水素原
子又はアシル基を示す。R1は、水素原子、飽和又は不
飽和の脂肪族炭化水素基を示す)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、機能性材料、医薬
または農薬の中間体などの原料として有用なラクトン
(ヒドロキシラクトン、ヒドロキシラクトンとカルボン
酸とのエステルなど)の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】ヒドロキシラクトン(4−ヒドロキシ−
ジヒドロフラン−2−オンなど)を製造する方法とし
て、種々の方法が知られている。例えば、米国特許49
68817号には、貴金属触媒存在下、グリシドールと
一酸化炭とを反応させることにより、4−ヒドロキシ−
ジヒドロフラン−2−オンを製造する方法が開示されて
いる。しかし、この方法では、高価な貴金属触媒を用い
る必要があるだけでなく、高圧(約3MPa以上)下で
反応させる必要があり、工業的に不利である。
【0003】また、(1)アンゲバンテ・ヘミー・イン
ターナショナルエディション・イングリッシュ(Angew.
Chem. Int. Ed., Eng.)、5巻、994頁(1966
年)には、過酸化水素及びギ酸の共存系により3−ブテ
ン酸を処理し、さらに塩酸を作用させることにより、4
−ヒドロキシ−ジヒドロフラン−2−オンを製造する方
法が開示され、(2)WO98/04543号公報に
は、ラクトースなどの炭水化物を塩基性条件下、過酸化
水素水で処理し、その後酸処理することにより、4−ヒ
ドロキシ−ジヒドロフラン−2−オンを製造する方法、
および前記酸処理により得られる3,4−ジヒドロキシ
ブタン酸をアセトンによりアセトニドに変換し、このケ
タールを塩酸で処理することにより、4−ヒドロキシ−
ジヒドロフラン−2−オンを製造する方法が開示されて
いる。(3)EP761663号公報には、4−クロロ
−3−ヒドロキシブタン酸エチルを塩酸で処理し、水酸
化ナトリウムで中和することにより、4−ヒドロキシ−
ジヒドロフラン−2−オンを製造する方法が開示され、
(4)WO99/33817号公報には、グリシドール
をシアノ化し、加水分解後ラクトン化することにより、
4−ヒドロキシ−ジヒドロフラン−2−オンを製造する
方法などが開示されている。
【0004】しかし、これらの方法は、いずれも溶媒と
して水を用いるため、その留去に多くの時間や熱エネル
ギーを必要とし、工業的に不利である。また、使用した
酸又は塩基は中和して塩にする必要がある。さらに、4
−ヒドロキシ−ジヒドロフラン−2−オンを有機溶剤で
抽出することも考えられるが、4−ヒドロキシ−ジヒド
ロフラン−2−オンは水溶性が高いため、抽出効率が悪
い。従って、前記方法(1)〜(4)では、目的化合物
を効率よく製造できない。さらに、前記(1)及び
(2)の方法では、過酸化物を、(4)の方法ではシア
ノ化合物を用いており、その取り扱いに注意が必要であ
る。
【0005】シンレット(Synlett)、71頁(199
7年)には、カルニチンを熱処理することにより、4−
ヒドロキシ−ジヒドロフラン−2−オンを製造する方法
が記載されている。しかし、この方法では、ジメチルス
ルホキシドのような高沸点の溶媒を用いる必要があり、
生成物の単離が困難である。
【0006】また、ヒドロキシラクトンとカルボン酸と
のエステル、例えば、4−アシロキシ−ジヒドロフラン
−2−オンの製造方法としては、カルニチンのヒドロキ
シル基をエステル化し、さらに環化する方法、4−ヒド
ロキシ−ジヒドロフラン−2−オンのヒドロキシル基を
アシル化する方法などが知られている。しかし、これら
の方法では、エステル化反応と環化反応とを行う必要が
あるだけでなく、カルニチンや4−ヒドロキシ−ジヒド
ロフラン−2−オンを用いているため、上述と同様の問
題が生じる。
【0007】5位に置換基を有する4−アシロキシ−ジ
ヒドロフラン−2−オンを製造する方法として、オキシ
ラニル基に置換基を有するエポキシカルボン酸、すなわ
ち、4−アルキル(または、4,4−ジアルキル)−
3,4−エポキシ−ブタン酸エステルを原料として用い
る方法が知られている。例えば、テトラヘドロンレター
ズ(Tetrahedron Lett.)、30巻、2513頁(19
89年)やジャーナル・オブ・ケミカルソサイエティー
・パーキン・トランザクションI(J. Chem. Soc., Per
kin TransI)、1巻、161頁(1973年)には、
4,4−ジメチル−3,4−エポキシペンタン酸エステ
ルをギ酸で処理することにより、4−ホルミロキシ−
5,5−ジメチル−ジヒドロフラン−2−オンを製造す
る方法が記載されている。しかし、エポキシ環の反応性
は、置換基の有無により大きく異なるため、これらの方
法では、5位に置換基を有しない4−アシロキシ−ジヒ
ドロフラン−2−オンを製造することができず、汎用性
が低い。
【0008】テトラへドロンレターズ、30巻、251
3頁(1989年)には、4,4−ジメチル−3,4−
エポキシペンタン酸エステルを塩酸で処理することによ
り、4−ヒドロキシ−5,5−ジメチルジヒドロフラン
−2−オンを製造する方法が記載されている。しかし、
この方法において、4位が無置換の3,4−エポキシペ
ンタン酸エステルを原料として用いると、3−ヒドロキ
シ−4−クロロペンタン酸エステルが生成し、ラクトン
が得られない。
【0009】なお、テトラへドロンレターズ、47巻、
7171頁(1991年)には、4−エチル−3,4−
エポキシペンタン酸エステルを3%硫酸水溶液で処理す
ることにより、4−ヒドロキシ−5−エチルジヒドロフ
ラン−2−オンを製造する方法が記載されている。しか
し、この方法では、原料であるエポキシペンタン酸エス
テルのエポキシ基がエチル基で置換されているため、5
位に置換基を有しない4−アシロキシ−ジヒドロフラン
−2−オンが得られない。また、3%硫酸水を用いるた
め、目的物を水層から抽出する必要があるものの、目的
物は水溶性が高いため、抽出が困難である。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明の目的
は、ラクトン環のうち、環内エステル基の酸素原子と結
合する炭素原子(ジヒドロフラン−2−オンの5位の炭
素原子など)が無置換であるラクトンを製造できる方法
を提供することにある。
【0011】本発明の他の目的は、ヒドロキシラクトン
とカルボン酸とのエステルを効率よく製造できる方法を
提供することにある。
【0012】本発明のその他の目的は、無置換のエポキ
シ環を有するエポキシカルボン酸又はその誘導体から、
効率よくラクトンを製造できる方法を提供することにあ
る。
【0013】本発明の別の目的は、酸触媒を用いても、
酸触媒を効率よく分離できるラクトンの製造方法を提供
することにある。
【0014】本発明のさらに別の目的は、エポキシカル
ボン酸又はその誘導体の光学活性を保持しつつ、ラクト
ンを製造できる方法を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記課題
を達成するため鋭意検討した結果、無置換のエポキシカ
ルボン酸又はその誘導体を水やカルボン酸などと反応さ
せると、ラクトンを製造できることを見いだし、本発明
を完成した。
【0016】すなわち、本発明のラクトンの製造方法で
は、下記式(1)で表されるエポキシカルボン酸又はそ
の誘導体と、下記式(2)で表される化合物とを反応さ
せ、下記式(3)で表されるラクトンを製造する。
【0017】
【化2】
【0018】(式中、Aは、C1-3アルキレン基を示
し、Bは水素原子又はアシル基を示す。R1は、水素原
子、飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素基を示す) 前記反応は、スルホン酸基を有する酸触媒(固体酸触媒
など)の存在下で行ってもよく、反応系は不均一であっ
てもよい。酸触媒の割合は、エポキシカルボン酸又はそ
の誘導体(1)1モルに対して、例えば、0.05〜1
当量程度である。なお、エポキシカルボン酸又はその誘
導体(1)において、エポキシ環のうち、基Aに結合す
る炭素原子は不斉炭素であってもよく、エポキシカルボ
ン酸又はその誘導体(1)は、光学活性なエポキシカル
ボン酸又はその誘導体(1)であってもよい。
【0019】
【発明の実施の形態】[エポキシカルボン酸又はその誘
導体(1)]エポキシカルボン酸又はその誘導体として
は、前記式(1)で表されるようなエポキシ環に置換基
を有していないエポキシカルボン酸又はその誘導体が使
用できる。本発明では、無置換のエポキシカルボン酸又
はその誘導体と化合物(2)とを反応させることによ
り、ラクトンを製造できる。
【0020】式(1)において、アルキレン基Aは、メ
チレン基、エチレン基、プロピレン基などのC1-3アル
キレン基である。好ましいアルキレン基Aは、メチレン
基、エチレン基など(特に、メチレン基)である。
【0021】R1の炭化水素基には、鎖状脂肪族炭化水
素基(直鎖状又は分岐鎖状炭化水素基など)、脂環族炭
化水素基が含まれる。
【0022】飽和の鎖状炭化水素基としては、メチル
基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル
基、イソブチル基、t−ブチル基などの直鎖状又は分岐
鎖状のC 1-10アルキル基(好ましくはC1-6アルキル
基、特にC1-4アルキル基)が挙げられる。不飽和の鎖
状炭化水素基には、ビニル基、イソプロペニル基、アリ
ル基などの直鎖状又は分岐鎖状のC2-6アルケニル基、
エチニル基、メチルエチニル基などのC2-6アルキニル
基などが含まれる。
【0023】飽和の脂環族炭化水素基としては、例え
ば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプ
チル基、シクロオクチル基などのシクロC3-10アルキル
基などが例示できる。不飽和の脂環族炭化水素基には、
例えば、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、シ
クロヘプテニル基、シクロオクテニル基などのシクロC
4-10アルケニル基が含まれる。
【0024】好ましいR1は、鎖状脂肪族炭化水素基、
特に直鎖状又は分岐鎖状のC1-6アルキル基(例えば、
1-4アルキル基)である。
【0025】好ましいエポキシカルボン酸及びその誘導
体としては、3,4−エポキシブタン酸、4,5−エポ
キシペンタン酸、5,6−エポキシヘキサン酸、又はそ
れらのエステルなどが挙げられ、特に3,4−エポキシ
ブタン酸又はそのエステル(3,4−エポキシブタン酸
メチル、3,4−エポキシブタン酸エチル、3,4−エ
ポキシブタン酸プロピル、3,4−エポキシブタン酸ブ
チルなどの3,4−エポキシブタン酸C1-6アルキルエ
ステル(特に、C1-4アルキルエステル)など)が好ま
しい。
【0026】前記エポキシカルボン酸及びその誘導体
は、ラセミ体であってもよく、光学活性体であってもよ
い。例えば、前記エポキシカルボン酸(又はその誘導
体)において、エポキシ環のうち、基Aに結合する炭素
原子は不斉炭素であってもよく、エポキシカルボン酸
(又はその誘導体)は、この不斉炭素に起因する光学活
性なエポキシカルボン酸(又はその誘導体)であっても
よい。このような光学活性なエポキシカルボン酸(又は
その誘導体)を用いても、光学活性を保持しつつラクト
ンを製造できる。例えば、前記式(3)において、基B
Oが結合する炭素原子が不斉炭素である光学活性なラク
トンを製造できる。
【0027】[化合物(2)]前記式(2)において、
基Bは、水素原子、脂肪族アシル基(ホルミル基、アセ
チル基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、
ブチルカルボニル基、ペンチルカルボニル基などの炭素
数が1〜6程度(好ましくは1〜4程度)の飽和アシル
基;(メタ)アクリロイル基、プロペニルカルボニル
基、ブテニルカルボニル基、ペンテニルカルボニル基な
どの炭素数が3〜6程度の不飽和アシル基など)、芳香
族アシル基(ベンゾイル基、ナフトイル基などの炭素数
が7〜13程度の芳香族アシル基)などである。
【0028】式(2)で表される化合物としては、水、
カルボン酸などが含まれる。カルボン酸としては、蟻
酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキ
サン酸などの炭素数が1〜6程度(好ましくは1〜4程
度)の脂肪族飽和カルボン酸;(メタ)アクリル酸、ブ
テン酸、ペンテン酸、ヘキセン酸などの炭素数が3〜6
程度の脂肪族不飽和カルボン酸;安息香酸、ナフトエ酸
などの芳香族カルボン酸などが挙げられる。なお、化合
物(2)は、単独で又は二種以上組み合わせて用いるこ
とができる。
【0029】化合物(2)の使用量は、エポキシカルボ
ン酸又はその誘導体(1)1モルに対して、例えば、
0.5〜100当量程度、好ましくは0.8〜50当量
程度(例えば、0.8〜10当量程度)、さらに好まし
くは1〜30当量程度(例えば、1〜4当量程度)、特
に1〜15当量程度(例えば、1〜2当量程度)であ
る。なお、本発明では、後述するように、酸触媒(H型
陽イオン交換樹脂など)を用いてもよい。H型陽イオン
交換樹脂は、イオン交換樹脂の性状により、水やカルボ
ン酸を含有している場合がある。本発明では、イオン交
換樹脂に含まれる水やカルボン酸の量は、前記化合物
(2)の使用量に含めない。
【0030】[酸触媒]前記エポキシカルボン酸又はそ
の誘導体(1)と、化合物(2)との反応において、特
定の酸触媒を用いてもよい。特定の酸触媒の存在下で反
応させると、エポキシ環にアルキル基が置換していない
エポキシカルボン酸又はその誘導体(1)を用いても、
効率よくラクトン(3)を製造できる。
【0031】酸触媒としては、ラクトン(3)の生成を
促進する種々の酸、例えば、解離性ハロゲン原子を含ま
ない酸(スルホン酸基を有する酸、硝酸、トリハロ酢酸
(トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸)など)が使用で
きる。好ましい酸触媒は、スルホン酸基を有する酸であ
る。
【0032】スルホン酸基を有する酸には、無機酸類、
有機スルホン酸類、スルホン酸基を有する固体酸(前記
無機酸類及びスルホン酸類を適当な担体(シリカゲル、
アルミナなど)に担持した酸、スルホン酸基を有する高
分子など)が含まれる。
【0033】無機酸類には、硫酸、無水硫酸(三酸化硫
黄)、発煙硫酸、ピロ硫酸などが含まれる。
【0034】有機スルホン酸類としては、芳香族スルホ
ン酸(ベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、
ナフタレンスルホン酸など)、脂肪族スルホン酸(メタ
ンスルホン酸、エタンスルホン酸など)が挙げられる。
【0035】スルホン酸基を有する高分子は、H型陽イ
オン交換樹脂から選択でき、例えば、スルホン酸基を有
するスチレン系樹脂(例えば、スルホン酸基を有するス
チレン−ジビニルベンゼン共重合体)、スルホン酸基を
有するフッ素樹脂(例えば、スルホン酸基を有するポリ
テトラフルオロエチレン(ナフィオン−H(Nafion-H)
(du Pont社製)など))などが挙げられる。なお、ス
ルホン酸基を有する高分子は、一部のスルホン酸基が塩
を形成していてもよい。また、スルホン酸基を有する高
分子は、ポーラス型であってもよく、ゲル型であっても
よい。前記酸触媒は、単独で又は2種以上組み合わせて
使用できる。
【0036】酸触媒は、不均一反応系を形成してもよ
い。不均一反応系を形成する場合、酸触媒としては、イ
オン交換樹脂などの固体酸触媒が使用できる。このよう
な酸触媒を用いると、ラクトン(3)の製造後、濾過等
により簡便に酸触媒を除去でき、作業効率を向上でき
る。
【0037】酸触媒の量は、エポキシカルボン酸(又は
その誘導体)1モルに対して、例えば、0.001〜1
00当量程度、好ましくは0.01〜10当量程度、さ
らに好ましくは0.05〜4当量程度(特に0.05〜
1当量程度)である。
【0038】また、酸触媒の量は、化合物(2)1モル
に対して、例えば、0.001〜1当量程度、好ましく
は0.01〜0.5当量程度、さらに好ましくは0.0
5〜0.3当量程度であってもよい。
【0039】反応温度は、ラクトンの生成速度、原料
(エポキシカルボン酸又はその誘導体)や生成物(ラク
トン)の種類や安定性などに応じて選択でき、例えば、
10〜150℃程度、好ましくは30〜120℃程度の
範囲から選択できる。
【0040】反応は、常圧下又は減圧下(例えば、0.
1〜50kPa程度、好ましくは0.1〜13kPa程
度)で行うことが多い。また、操作上の理由により、加
圧下で反応してもよい。
【0041】エポキシカルボン酸又はその誘導体(1)
と化合物(2)との反応は、溶媒の非存在下で行っても
よく、溶媒の存在下で行ってもよい。溶媒としては、例
えば、ケトン系溶媒(例えば、アセトン、メチルエチル
ケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン
など)、エーテル系溶媒(例えば、ジエチルエーテル、
ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒ
ドロフラン、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタンな
ど)、ニトリル類(例えば、アセトニトリル、ベンゾニ
トリルなど)、スルホキシド系溶媒(例えば、ジメチル
スルホキシドなど)、スルホラン類(スルホランな
ど)、エステル系溶媒(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸
ブチルなど)、アミド系溶媒(例えば、ジメチルホルム
アミドなど)、アルコール系溶媒(メタノール、エタノ
ール、プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノー
ル、s−ブタノール、t−ブタノールなど)、脂肪族炭
化水素系溶媒(ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタ
ン、石油エーテルなど)、芳香族炭化水素系溶媒(ベン
ゼン、トルエン、キシレンなど)、ハロゲン化炭化水素
系溶媒(例えば、塩化メチレン、クロロホルム、ブロモ
ホルム、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、ブ
ロモベンゼンなど)、高沸点溶媒(ポリエチレングリコ
ール、シリコーンオイルなど)が使用できる。溶媒は単
独で又は二種以上混合して使用してもよい。なお、溶媒
は、反応の副生成物(R1OHで表される化合物)と共
沸可能な溶媒であってもよい。
【0042】溶媒の使用量は、特に制限されないが、反
応成分を溶解又は分散可能であり、かつ経済性などを損
なわない程度の量であってもよい。溶媒の使用量は、エ
ポキシカルボン酸(又はその誘導体)(1)及び化合物
(2)の総量100重量部に対して、例えば、0〜10
0,000重量部程度、好ましくは10〜10,000
重量部程度の範囲から選択できる。
【0043】反応は、ヘリウムや窒素などの反応に不活
性なガス雰囲気下で行ってもよく、空気雰囲気下で行っ
てもよい。また、反応は、バッチ式、セミバッチ式、及
び連続式のいずれの方式で行ってもよい。なお、酸触媒
として固体酸(特に、H型陽イオン交換樹脂)を用いる
場合、管型反応器を備えた流通式の反応装置を用いても
よい。
【0044】生成したラクトンは、必要に応じて慣用の
分離精製手段(中和、抽出、蒸留、精留、晶析、再結
晶、カラムクロマトグラフィーを用いた分離など)によ
り精製してもよい。
【0045】このようにして得られたラクトンは、機能
性材料、または医薬もしくは農薬の中間体などの原料と
して使用できる。特に、ラクトン環のうち、環内エステ
ル基の酸素原子と結合する炭素原子(ジヒドロフラン−
2−オンの5位の炭素原子など)が無置換であるため、
高機能性材料(側鎖を有しない線状高分子など)の原料
として有用である。
【0046】
【発明の効果】本発明では、無置換のエポキシ環を有す
るエポキシカルボン酸又はその誘導体を用いてラクトン
を製造しているため、利用価値の高いラクトンを製造で
きる。また、エポキシカルボン酸又はその誘導体をカル
ボン酸と反応させることができるため、ヒドロキシラク
トンとカルボン酸とのエステルを製造できる。特に、酸
触媒の存在下で反応させると、ラクトンを効率よく製造
できる。また、光学活性なエポキシカルボン酸を用いて
も、エポキシカルボン酸の光学活性を保持しつつ、ラク
トンを製造できる。
【0047】
【実施例】以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細
に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定さ
れるものではない。
【0048】なお、実施例で得られた化合物のNMRス
ペクトルは、500MHz 1H−NMR測定装置(ブ
ルッカー(Bruker)社製「AM500」、内部標準=テ
トラメチルシラン(TMS))を用いて測定した。
【0049】また、実施例で得られた化合物の収率
(3,4−エポキシブタン酸エチル基準)は、ガスクロ
マトグラフィー((株)島津製作所製、「GC12
A」)により求めた。なお、ガスクロマトグラフィーの
条件は下記の通りである。
【0050】充填剤:5%シリコンGEXE−60をク
ロモソルブW(AW)(60〜80メッシュ)に担持し
た充填剤 カラム長:2m カラム温度:100℃〜200℃(昇温速度=10℃/
分) 移動層:窒素 検知器:FID 実施例で得られた化合物の旋光度は、旋光計(日本分光
(株)製「DIP−370型旋光計」、測定波長=58
9nm(ナトリウムD線)、溶媒=アセトン、測定温度=
20℃)により求めた。なお、実施例では、予めモレキ
ュラーシーブス4Aで乾燥した酢酸を用いた。
【0051】実施例1(硫酸触媒による4−ヒドロキシ
−ジヒドロフラン−2−オンの製造) 3,4−エポキシブタン酸エチル0.534g、水0.
155g、硫酸0.061gをアセトン5mLに溶解し
た。この溶液をなす型フラスコ(容量25mL)に入
れ、窒素雰囲気下、3時間加熱還流した。
【0052】反応終了後、反応混合物を減圧下で濃縮
し、残渣に2−プロパノール5mLおよび炭酸カリウム
0.086gを加え、不溶物をろ過により除去した。ろ
液を濃縮し、粗4−ヒドロキシ−ジヒドロフラン−2−
オン0.377gを得た。4−ヒドロキシ−ジヒドロフ
ラン−2−オンの収率は86モル%であり、主な副生成
物は5H−フラン−2−オン(収率5モル%)であっ
た。
【0053】4−ヒドロキシ−ジヒドロフラン−2−オ
ンの1H−NMRスペクトル(CDC13):δ 2.5
3(td,J=1.0,17.9Hz,1H),2.7
6(dd,J=17.9,6.1Hz,1H),4.3
0(d,J=10.3Hz,1H),4.42(dd,
J=10.3,4.5Hz,1H),4.6−4.7
(m,1H).
【0054】実施例2(H型陽イオン交換樹脂触媒によ
る4−ヒドロキシ−ジヒドロフラン−2−オンの製造) 硫酸に代えて、H型陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)
製「ダイヤイオンRCP160M」)0.66g用い、
8時間反応させる以外は、実施例1と同様にした。反応
終了後、イオン交換樹脂を濾過により除去し、ろ液を濃
縮することにより粗4−ヒドロキシ−ジヒドロフラン−
2−オン0.367gを得た。4−ヒドロキシ−ジヒド
ロフラン−2−オンの収率は86モル%であり、主な副
生成物は5H−フラン−2−オン(収率5モル%)であ
った。
【0055】実施例3(硫酸触媒による4−アセトキシ
−ジヒドロフラン−2−オンの製造) 3,4−エポキシブタン酸エチル0.488g、酢酸
0.492g、硫酸0.055gをなす型フラスコ(容
量25mL)に入れ、混合物を窒素雰囲気下、60℃で
1.5時間加熱した。
【0056】反応終了後、反応混合物を減圧下で濃縮
し、残渣に2−プロパノール5mLを加えた。さらに氷
冷しながら、炭酸カリウム0.078gを加え、不溶物
をろ過により除去した。ろ液を濃縮し、粗4−アセトキ
シ−ジヒドロフラン−2−オン0.435gを得た。
【0057】4−アセトキシ−ジヒドロフラン−2−オ
ンの収率は58モル%であり、主な副生成物は3−ヒド
ロキシ−γ−ブチロラクトン(収率31モル%)であっ
た。
【0058】4−アセトキシ−ジヒドロフラン−2−オ
ンの1H−NMRスペクトル(CDC13);δ 2.1
0(s,3H),2.62(d,J=18.3Hz,1
H),2.85(dd,J=18.3,6.7Hz,1
H),4.37(d,J=11.0Hz,1H),4.
50(dd,J=11.0,4.8Hz,1H),5.
4(m,1H).
【0059】実施例4(H型陽イオン交換樹脂触媒によ
る4−アセトキシ−ジヒドロフラン−2−オンの製造) H型陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製「ダイヤイオ
ンRCP160M」)0.59gを触媒として用い、反
応温度を90℃、反応時間を4時間とする以外は、実施
例3と同様に反応した。なお、前記H型陽イオン交換樹
脂は、樹脂中の可溶性成分を酢酸で置換してから用い
た。
【0060】反応終了後、イオン交換樹脂をろ過により
除去し、ろ液を濃縮することにより粗4−アセトキシ−
ジヒドロフラン−2−オン0.379gを得た。4−ア
セトキシ−ジヒドロフラン−2−オンの収率は55モル
%であり、主な副生成物は3−ヒドロキシ−γ−ブチロ
ラクトン(収率11モル%)、及び5H−フラン−2−
オン(収率4モル%)であった。
【0061】実施例5(光学活性な4−ヒドロキシ−ジ
ヒドロフラン−2−オンの製造) エポキシブタン酸エステルとして3(S),4−エポキ
シブタン酸エチル(光学純度98%e.e.)を用いる以外
は、実施例2と同様にした。得られた4(S)−ヒドロ
キシ−ジヒドロフラン−2−オンの旋光度は、[α]D
20=−86.4°(濃度c=0.843g/100m
l、メタノール溶液)であった。
【0062】比較例1(触媒の非存在下での4−アセト
キシ−ジヒドロフラン−2−オンの製造) 3,4−エポキシブタン酸エチル0.514g、酢酸
0.251gをアセトン5mLに溶解した。この溶液を
なす型フラスコ(容量20mL)に入れ、窒素雰囲気下
で1時間加熱還流した。この混合物をガスクロマトグラ
フィーで分析したところ、反応は全く進行していなかっ
た。
【0063】比較例2(塩酸触媒) 3,4−エポキシブタン酸エチル0.511g、濃塩酸
0.463gをエタノール5mLに溶解した。この溶液
をなす型フラスコ(容量25mL)に入れ、窒素雰囲気
下、2時間加熱還流した。
【0064】反応終了後、反応混合物を濃縮し、0.5
90gの残渣を得た。この残渣をガスクロマトグラフィ
ーおよび1H−NMRにより分析したところ、残渣に
は、4−クロロ−3−ヒドロキシブタン酸エチルが収率
90モル%で含まれていた。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) // C07B 61/00 300 C07D 307/32 Q

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記式(1)で表されるエポキシカルボ
    ン酸又はその誘導体と、下記式(2)で表される化合物
    とを反応させ、下記式(3)で表されるラクトンを製造
    する方法。 【化1】 (式中、AはC1-3アルキレン基を示し、Bは水素原子
    又はアシル基を示す。R1は、水素原子、飽和又は不飽
    和の脂肪族炭化水素基を示す)
  2. 【請求項2】 スルホン酸基を有する酸触媒の存在下、
    エポキシカルボン酸又はその誘導体(1)と式(2)の
    化合物とを反応させる請求項1記載の製造方法。
  3. 【請求項3】 不均一な反応系で行う請求項2記載の製
    造方法。
  4. 【請求項4】 固体酸触媒を用いる請求項2又は3記載
    の製造方法。
  5. 【請求項5】 酸触媒の割合が、エポキシカルボン酸又
    はその誘導体(1)1モルに対して、0.05〜1当量
    である請求項2〜4のいずれかの項に記載の製造方法。
  6. 【請求項6】 R1が直鎖状又は分岐鎖状のC1-6アルキ
    ル基であり、Aがメチレン基である請求項1〜5のいず
    れかの項に記載の製造方法。
  7. 【請求項7】 エポキシ環のうち、基Aに結合する炭素
    原子が不斉炭素である光学活性なエポキシカルボン酸又
    はその誘導体(1)を用いる請求項1〜6のいずれかの
    項に記載の製造方法。
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