JP2001297917A - 交換結合膜と、この交換結合膜を用いた磁気抵抗効果素子、ならびに前記磁気抵抗効果素子を用いた薄膜磁気ヘッド - Google Patents

交換結合膜と、この交換結合膜を用いた磁気抵抗効果素子、ならびに前記磁気抵抗効果素子を用いた薄膜磁気ヘッド

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Abstract

(57)【要約】 【目的】 従来の磁気抵抗効果素子の構造では、大きな
抵抗変化率及び交換結合磁界を得ることができなかっ
た。 【構成】 反強磁性層4には、膜厚方向の中間領域から
固定磁性層3側に向うにしたがってMnに対する元素X
の原子%の比率が増加する領域と、前記中間領域から前
記固定磁性層3と反対側に向かうにしたがってMnに対
する元素Xの原子%の比率が増加する領域とが存在す
る。また前記反強磁性層4の少なくとも一部の結晶構造
がCuAu−I型の面心正方規則格子であり、前記固定
磁性層3との界面の少なくとも一部が非整合状態となっ
ている。これによって大きな交換結合磁界を得ることが
可能である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、反強磁性層と強磁
性層とから成り、前記反強磁性層と強磁性層との界面に
て発生する交換結合磁界により、前記強磁性層の磁化方
向が一定の方向に固定される交換結合膜に係り、特に大
きい前記交換結合磁界を得られるようにした交換結合膜
およびこの交換結合膜を用いた磁気抵抗効果素子(スピ
ンバルブ型薄膜素子、AMR素子)、ならびに前記磁気
抵抗効果素子を用いた薄膜磁気ヘッドに関する。
【0002】
【従来の技術】スピンバルブ型薄膜素子は、巨大磁気抵
抗効果を利用したGMR(giant magnetoresistive)素
子の1種であり、ハードディスクなどの記録媒体からの
記録磁界を検出するものである。
【0003】このスピンバルブ型薄膜素子は、GMR素
子の中でも比較的構造が単純で、しかも弱い磁界で抵抗
が変化するなど、いくつかの優れた点を有している。
【0004】前記スピンバルブ型薄膜素子は、最も単純
な構造で、反強磁性層、固定磁性層、非磁性中間層およ
びフリー磁性層から成る。
【0005】前記反強磁性層と固定磁性層とは接して形
成され、前記反強磁性層と固定磁性層との界面にて発生
する交換異方性磁界により、前記固定磁性層の磁化方向
は一定方向に単磁区化され固定される。
【0006】フリー磁性層の磁化は、その両側に形成さ
れたバイアス層により、前記固定磁性層の磁化方向と交
叉する方向に揃えられる。
【0007】前記反強磁性層には、Fe−Mn(鉄−マ
ンガン)合金膜、Ni−Mn(ニッケル−マンガン)合
金膜、あるいはPt−Mn(白金−マンガン)合金膜等
が一般的に使用されているが、この中でも特にPt−M
n合金膜はブロッキング温度が高く、しかも耐食性に優
れるなど種々の優れた点を有しており、脚光を浴びてい
る。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】ところで、反強磁性層
にPtMn合金膜を使用した場合、成膜した段階では前
記反強磁性層の結晶構造は、原子の配列順序が不規則な
面心立方格子となっていることがわかっている。
【0009】前記反強磁性層を成膜後、前記反強磁性層
と強磁性層間で適切な大きさの交換結合磁界を発生させ
るには、前記反強磁性層の結晶構造が不規則相としての
面心立方格子から規則相としてのCuAu−I型の面心
正方格子に変態する必要があり、このような変態は熱処
理を施すことによって引き起こされる。
【0010】またPtMn合金は、バルクタイプでは、
PtとMnとのat%が50:50である場合に、Cu
Au−I型の面心正方格子になり易く最も反強磁性の性
質になりやすいことがわかっており、したがって本発明
者らは、スピンバルブ型薄膜素子の反強磁性層として、
PtMn合金膜を使用し、このとき前記PtとMnとの
at%をほぼ50:50にして前記反強磁性層と強磁性
層間で発生する交換結合磁界の大きさを測定してみた。
【0011】しかしながらPtとMnの組成比がバルク
タイプでの理想組成であるにもかかわらず、充分な大き
さの交換結合磁界が得られないことがわかった。
【0012】これは熱処理を施しても前記反強磁性層の
結晶構造が不規則格子から規則格子に充分に変態しない
ことが原因であると考えられる。
【0013】本発明は上記従来の課題を解決するための
ものであり、反強磁性層として、元素X(Xは白金族元
素)とMnとを含有する反強磁性材料を用いた場合、大
きい交換異方性磁界を発生することができるようにした
交換結合膜、およびこの交換結合膜を用いた磁気抵抗効
果素子、ならびに前記磁気抵抗効果素子を用いた薄膜磁
気ヘッドに関する。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明は、反強磁性層と
強磁性層との界面に交換結合磁界が生じる交換結合膜に
おいて、前記反強磁性層は、元素X(ただしXは、P
t,Pd,Ir,Rh,Ru,Osのうち1種または2
種以上の元素である)とMnとを含有する反強磁性材料
で形成され、膜厚方向の中間領域から強磁性層側に向う
にしたがってMnに対する元素Xの原子%の比率が増加
する領域と、前記中間領域から前記強磁性層と反対側に
向かうにしたがってMnに対する元素Xの原子%の比率
が増加する領域とが存在し、前記反強磁性層の少なくと
も一部の結晶構造がCuAu−I型の面心正方規則格子
であることを特徴とするものである。
【0015】上記の本発明における交換結合膜は、強磁
性層及び反強磁性層を成膜し、その後熱処理を施したと
きの構造である。
【0016】本発明における交換結合膜の反強磁性層に
は、膜厚方向の中間領域から強磁性層側に向かうにした
がってMnに対する元素Xの原子%の比率が増加する領
域と、前記中間領域から前記強磁性層と反対側に向かう
にしたがって、Mnに対する元素Xの原子%の比率が増
加する領域とが存在する。さらに前記反強磁性層の一部
の結晶構造が、CuAu−I型の面心正方規則格子とな
っている。
【0017】上記した組成変化(組成変調)を起す領域
が存在するのは、後述する製造方法に起因するものであ
るが、本発明ではこのような組成変調を起す領域が存在
することで、強磁性層との界面では前記強磁性層の結晶
構造等に拘束されることなく、また前記強磁性層との反
対側の面に接する層の結晶構造等に拘束されることな
く、前記反強磁性層は全体的に適切な規則変態を起して
おり、一部の結晶構造が、CuAu−I型の面心正方規
則格子となっているのである。
【0018】本発明のように、熱処理後においてMnに
対する元素Xの原子%の比率が、強磁性層及び強磁性層
と反対側に向かうにしたがって増加する領域が存在し、
さらに前記反強磁性層の結晶構造の少なくとも一部が規
則格子となっている交換結合膜を形成するには、成膜段
階(熱処理前)に如何なる構造の反強磁性層を形成する
かが重要であり、本発明では、例えば以下のように反強
磁性層を成膜している。
【0019】既に述べたように、PtとMnとの組成比
をat%で50:50にすると、結晶構造は規則格子に
なり最も反強磁性の性質を発揮するが、強磁性層との界
面では非整合になりにくいために、熱処理によって不規
則格子から規則格子への変態が充分になされず、結果的
に充分な交換結合磁界を得ることができない。
【0020】一方、Pt量を50at%よりも低くする
と、結晶構造が熱処理によって規則格子に変態しづらく
反強磁性の性質になり難いのと同時に、前記強磁性層と
の界面では、整合状態が強くなることから、交換結合磁
界は非常に低いものとなってしまう。
【0021】またPt量を50at%よりも多くしてい
くと、前記強磁性層との界面では非整合状態になりやす
くなるものの、結晶構造は熱処理によって規則格子に変
態しづらく反強磁性層の性質になり難いために、結果的
に交換結合磁界は非常に低いものとなってしまう。
【0022】そこで上記観点から、反強磁性層を成膜す
る際(熱処理前)に、例えば、強磁性層と接する側に、
Pt量が多くされ、強磁性層との界面で非整合状態を作
り易い組成のPtMn合金膜(第1の反強磁性層と呼
ぶ)を薄い膜厚で形成し、前記第1の反強磁性層に接
し、熱処理を施したときに不規則格子から規則格子に変
態しやすい組成で形成されたPtMn合金膜(第2の反
強磁性層と呼ぶ)を、前記第1の反強磁性層に比べて厚
い膜厚で形成し、さらに前記第2の反強磁性層に接し、
Pt量が多くされた第3の反強磁性層を薄い膜厚で形成
するのである。
【0023】前記成膜段階(熱処理前)における反強磁
性層は、強磁性層との界面で前記強磁性層の結晶構造等
に拘束されず、不規則格子から規則格子に変態しやすい
組成で形成された第2の反強磁性層の部分が、熱処理に
よって適切に変態を起こし、また前記規則化が始まる
と、前記第1の反強磁性層と第2の反強磁性層とが組成
拡散を起こすと考えられ、また第3の反強磁性層と第2
の反強磁性層間でも上記の組成拡散が起こり、これによ
って前記第1の反強磁性層及び第3の反強磁性層の部分
では、Pt量が成膜段階(熱処理前)の組成から変動し
て、不規則格子から規則格子に変態しやすい組成に変化
し、前記第1の反強磁性層及び第3の反強磁性層の部分
でも前記変態が引き起こされると考えられる。
【0024】すなわち上記した製法では、成膜段階(熱
処理前)において、CuAu−I型の面心正方規則格子
になりやすい理想的な組成で形成された第2の反強磁性
層の上下をPt量の多い第1反強磁性層及び第3の反強
磁性層で挟み、これによって熱処理を施すことにより、
前記反強磁性層を不規則格子から規則格子に充分に変態
させることができ、従来よりも大きな交換結合磁界を得
ることが可能になるのである。
【0025】そして、上記のようにして形成された熱処
理後における交換結合膜では、組成変調を起こして、反
強磁性層の膜厚方向の中間領域から強磁性層側に向かう
にしたがって、及び前記中間領域から強磁性層と反対側
に向かうにしたがって元素Xの原子%の比率が増加する
領域が存在する。しかも前記反強磁性層の少なくとも一
部の結晶構造がCuAu−I型の面心正方規則格子とな
っているのである。
【0026】なお成膜段階において、第2の反強磁性層
に接してPt量の多い第3の反強磁性層を形成する理由
は、前記反強磁性層の強磁性層側と反対側の面近傍にお
いて適切な規則変態を促し反強磁性層全体での規則変態
により大きな交換結合磁界を得るためである。
【0027】前記反対側の面には、例えば非磁性の下地
層や保護層、あるいは後で詳述するようにシードレイヤ
等の様々な層が接合されるが、これらの層の結晶構造や
あるいはその他の要因が、反強磁性層の規則変態を阻害
し、交換結合磁界の低下に繋がる恐れがある。このため
本発明では、Pt量が多く格子定数が大きくされた第3
の反強磁性層を、前記反対側の面側に形成しておくこと
で上記した結晶構造の影響等を受けることなく、反強磁
性層の規則変態を促進させ、大きな交換結合磁界を得ら
れるようにしているのである。
【0028】また本発明は、反強磁性層と強磁性層との
界面に交換結合磁界が生じる交換結合膜において、前記
反強磁性層は、元素Xと元素X′(ただしXは、Pt,
Pd,Ir,Rh,Ru,Osのうち1種または2種以
上の元素であり、元素X′は、Ne,Ar,Kr,X
e,Be,B,C,N,Mg,Al,Si,P,Ti,
V,Cr,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Ga,G
e,Zr,Nb,Mo,Ag,Cd,Sn,Hf,T
a,W,Re,Au,Pb、及び希土類元素のうち1種
または2種以上の元素である)とMnとを含有する反強
磁性材料で形成され、膜厚方向の中間領域から強磁性層
側に向うにしたがってMnに対する元素X+X′の原子
%の比率が増加する領域と、前記中間領域から前記強磁
性層と反対側に向かうにしたがってMnに対する元素X
+X′の原子%の比率が増加する領域とが存在し、前記
反強磁性層の少なくとも一部の結晶構造がCuAu−I
型の面心正方規則格子であることを特徴とするものであ
る。
【0029】上記の発明では反強磁性層として元素Xと
元素X′とMnとを含有した反強磁性材料を使用してい
る。この発明においても成膜段階における前記反強磁性
層は、例えば上記した3層膜で形成され、第2の反強磁
性層の元素X+X′の組成比は、第1及び第3の反強磁
性層の元素X+X′の組成比よりも小さく形成される。
そして熱処理を施すと、第2の反強磁性層の部分が規則
変態を開始し、さらに組成拡散を起すことで第1及び第
3の反強磁性層の部分でも規則変態が促進され、反強磁
性層全体が規則変態される。これによって従来よりも大
きな交換結合磁界を得ることが可能なのである。
【0030】熱処理を施した後の状態では、前記反強磁
性層には、膜厚方向の中間領域から強磁性層側に向かう
にしたがってMnに対する元素X+X′の原子%の比率
が増加する領域と、前記中間領域から前記強磁性層と反
対側に向かうにしたがってMnに対する元素X+X′の
原子%の比率が増加する領域とが存在する。さらに前記
反強磁性層の少なくとも一部の結晶構造がCuAu−I
型の面心正方規則格子である。
【0031】また本発明では、前記X―Mn―X′を含
む合金は、元素XとMnとで構成される空間格子の隙間
に元素X′が侵入した侵入型固溶体であり、あるいは、
元素XとMnとで構成される結晶格子の格子点の一部
が、元素X′に置換された置換型固溶体であることが好
ましい。これによって前記X−Mn−X′合金の格子定
数を広げることができ、界面では適切に非整合状態を保
つことが可能になる。
【0032】また本発明では、前記反強磁性層における
強磁性層との界面と反対側となる面に、前記界面と平行
な方向に面心立方晶の(111)面が優先配向したシー
ドレイヤが形成され、前記反強磁性層及び強磁性層の結
晶配向は、前記界面と平行な方向に(111)面が優先
配向することが好ましい。
【0033】前記シードレイヤの形成により反強磁性層
及び強磁性層の結晶配向は前記界面と平行な方向に(1
11)面が優先配向するために結晶粒径が大きくなり、
抵抗変化率を大きくすることが可能である。
【0034】また本発明では、前記反強磁性層とシード
レイヤとの界面の少なくとも一部で前記反強磁性層の格
子定数とシードレイヤの格子定数とが異なっていること
が好ましい。
【0035】また反強磁性層とシードレイヤとの界面の
少なくとも一部は非整合状態となっていることが好まし
い。この構造は、例えば成膜段階において前記反強磁性
層を3層膜で形成し、シードレイヤと接合する部分にP
t量の多い第3の反強磁性層を形成することによって達
成することができる。成膜段階では第3の反強磁性層と
シードレイヤとの界面の少なくとも一部が非整合状態に
されており、したがって熱処理を施しても前記反強磁性
層はシードレイヤとの界面で非整合状態を保ったまま適
切に規則変態を引き起こし、よって従来よりも大きな交
換結合磁界を得ることができるのである。
【0036】また本発明では、前記シードレイヤは、N
iFe合金、あるいはNi−Fe−Y合金(ただしY
は、Cr,Rh,Ta,Hf,Nb,Zr,Tiから選
ばれる1種または2種以上)で形成されることが好まし
い。
【0037】また本発明では、前記シードレイヤは非磁
性であることが好ましい。さらに前記シードレイヤは比
抵抗が高いことが重要である。このようにシードレイヤ
の比抵抗が高くされると、センス電流は前記シードレイ
ヤに分流されにくくなり、抵抗変化率の向上、及びバル
クハウゼンノイズの低減を図ることが可能である。
【0038】また本発明では、前記交換結合膜は、下地
層上に、シードレイヤ、反強磁性層、及び強磁性層の順
に積層され、前記下地層は、Ta,Hf,Nb,Zr,
Ti,Mo,Wのうち1種または2種以上の元素で形成
されていることが好ましい。
【0039】また本発明では、前記反強磁性層における
前記強磁性層との界面の反対側の面には、Ta,Hf,
Nb,Zr,Ti,Mo,Wのうち1種または2種以上
の元素で形成された層が形成されていてもよい。
【0040】さらに本発明では、前記反強磁性層の膜厚
方向の中央付近よりも前記界面と反対側の面寄りに前記
界面と平行な第1の仮想境界を設定し、前記強磁性層寄
りに前記界面と平行な第2の仮想境界を設定したとき
に、前記反対側の面から前記第1の仮想境界までの第1
の領域、及び前記強磁性層との界面から前記第2の仮想
境界までの第3の領域は、前記第1及び第2の仮想境界
間の第2の領域に比べて、前記比率が大きく、前記第1
の仮想境界を挟む領域で前記第2の領域から第1の領域
に向けて、また前記第2の仮想境界を挟む領域では前記
第2の領域から第3の領域に向けて、前記比率が連続的
にあるいは不連続的に増大することが好ましい。
【0041】また本発明では、前記反強磁性層には、膜
厚方向の中間の所定領域から前記強磁性層との界面に向
けて、および前記中間の領域から前記界面と反対側の面
に向けて、前記元素Xあるいは元素X+X′の原子%が
増大する領域が存在することが好ましい。
【0042】また本発明では、前記反強磁性層には、前
記強磁性層との界面に向けて、および前記界面と反対側
の面に向けて、前記元素Xあるいは元素X+X′の原子
%が減少する領域がそれぞれ存在することが好ましい。
【0043】すなわちこの発明の意味するところは、前
記界面近傍で、元素Xあるいは元素X+X′の原子%が
最も大きくなるのではなく、前記界面から前記界面と反
対側の面方向に前記元素Xあるいは元素X+X′の組成
比(原子%)が増加する領域があり、前記元素Xあるい
は元素X+X′の組成比(原子%)が最大になる箇所
は、前記界面から膜厚方向にある距離だけ離れた位置に
存在するのである。
【0044】このように前記界面近傍で前記元素Xある
いは元素X+X′の原子%が最大とならないのは、成膜
後、熱処理を施すことによって、前記反強磁性層と強磁
性層との界面、及び前記反強磁性層の強磁性層と反対側
の面に形成された層と、前記反強磁性層との界面で、組
成拡散を引き起こすからであると考えられ、このため前
記界面近傍での前記元素Xあるいは元素X+X′の原子
%は成膜段階(熱処理前)よりも熱処理後では低下し、
よって前記原子%は、前記反強磁性層の前記界面近傍か
ら膜厚方向に離れた位置で、最大となるのである。この
ように前記原子%が小さくなることで、前記界面近傍で
も適切に不規則格子から規則格子への変態が行なわれ、
大きな交換結合磁界の発生を可能にすることができる。
【0045】また本発明では、前記反強磁性層の、前記
強磁性層との界面近傍、及び前記界面と反対側の面の近
傍では、全元素の組成比を100at%としたときに、
元素Xあるいは元素X+X′の組成比が50(at%)
以上65(at%)以下であることが好ましく、より好
ましくは50(at%)以上60(at%)以下であ
る。
【0046】また本発明では、前記反強磁性層の膜厚方
向の中間には、全元素の組成比を100at%としたと
きに、元素Xあるいは元素X+X′の組成比が、44
(at%)以上57(at%)以下の領域が存在するこ
とが好ましく、より好ましくは、46(at%)以上5
5(at%)以下である。
【0047】後述するように、成膜段階(熱処理前)で
は、前記強磁性層との界面に、例えば元素Xあるいは元
素X+X′の組成比が53(at%)以上65(at
%)以下にされた反強磁性層(第1の反強磁性層)が形
成され、さらに第1の反強磁性層に第2の反強磁性層を
介して元素Xあるいは元素X+X′の組成比が53(a
t%)以上65(at%)以下にされた反強磁性層(第
3の反強磁性層)が形成される。前記第1の反強磁性層
と第3の反強磁性層間に形成される第2の反強磁性層
は、前記元素Xあるいは元素X+X′の組成比が、44
(at%)以上57(at%)以下で形成される。
【0048】上記のような組成比によって第1の反強磁
性層、第2の反強磁性層及び第3の反強磁性層が成膜さ
れると、熱処理を施すことによって、前記第1の反強磁
性層と強磁性層との間、及び第3の反強磁性層と、前記
反強磁性層の強磁性層と反対側の面に形成される層との
間で組成拡散を起すと考えられ、これによって、熱処理
後の前記界面近傍では、元素Xあるいは元素X+X′の
組成比が53(at%)よりも低くなる可能性があり、
よって本発明では熱処理後における前記界面近傍での元
素Xあるいは元素X+X′の組成比の好ましい範囲を、
50(at%)以上65(at%)以下としているので
ある。
【0049】また本発明では、前記反強磁性層の膜厚は
76Å以上であることが好ましい。このように本発明で
は前記反強磁性層の膜厚を薄くしても、従来に比べて大
きな交換結合磁界を発生させることが可能である。
【0050】また、本発明では前記反強磁性層と前記強
磁性層との界面の界面の少なくとも一部で前記反強磁性
層の格子定数と強磁性層の格子定数とが異なっており、
あるいは前記界面の少なくとも一部で前記反強磁性層の
結晶配向と強磁性層の結晶配向が異なっていてもよい。
なお本発明では、シードレイヤが形成されている場合
は、結晶配向は同じとなる。
【0051】また本発明では、前記界面の少なくとも一
部が非整合状態であることが好ましい。このように非整
合状態が存在すると、反強磁性層の規則変態を促進させ
ることができ、大きな交換結合磁界を得ることが可能で
ある。
【0052】結晶配向を異ならせた上記発明では、例え
ば強磁性層の(111)面が前記界面と平行な方向に優
先配向している場合、反強磁性層の(111)面の配向
度は、前記強磁性層の配向度よりも低いか、あるいは無
配向となっている。
【0053】あるいは、反強磁性層の(111)面が、
前記界面と平行な方向に優先配向している場合、前記強
磁性層の(111)面の配向度は、前記反強磁性層の配
向度よりも低いか、あるいは無配向となっている。
【0054】または、前記反強磁性層と強磁性層との界
面に平行な方向への、前記反強磁性層の(111)面の
配向度、及び前記強磁性層の(111)面の配向度は共
に小さくなっているか、あるいは無配向となっており、
前記(111)面以外の結晶面が、前記界面に平行な方
向へ優先配向されて、反強磁性層と強磁性層の結晶配向
が異なっている。
【0055】前記結晶配向は下地層の存否や、組成比、
スパッタ成膜時の電力ガス圧等の諸条件、あるいは膜の
積層順などにより変えることが可能である。
【0056】本発明における交換結合膜は、様々な磁気
抵抗効果素子に適用可能である。本発明は、反強磁性層
と、この反強磁性層と接して形成され、前記反強磁性層
との交換異方性磁界により磁化方向が固定される固定磁
性層と、前記固定磁性層に非磁性中間層を介して形成さ
れたフリー磁性層と、前記フリー磁性層の磁化方向を前
記固定磁性層の磁化方向と交叉する方向へ揃えるバイア
ス層とを有する磁気抵抗効果素子において、前記反強磁
性層とこの反強磁性層と接して形成された固定磁性層と
が、上記した交換結合膜により形成されることを特徴と
するものである。
【0057】また本発明は、反強磁性層と、この反強磁
性層と接して形成され、前記反強磁性層との交換異方性
磁界により磁化方向が固定される固定磁性層と、前記固
定磁性層に非磁性中間層を介して形成されたフリー磁性
層とを有し、前記フリー磁性層の上側または下側に、ト
ラック幅方向に間隔を空けて反強磁性のエクスチェンジ
バイアス層が形成された磁気抵抗効果素子において、前
記エクスチェンジバイアス層とフリー磁性層とが、上記
した交換結合膜により形成されることを特徴とするもの
である。
【0058】また本発明は、フリー磁性層の上下に積層
された非磁性中間層と、一方の前記非磁性中間層の上お
よび他方の非磁性中間層の下に位置する固定磁性層と、
一方の前記固定磁性層の上および他方の固定磁性層の下
に位置して、交換異方性磁界によりそれぞれの固定磁性
層の磁化方向を一定の方向に固定する反強磁性層と、前
記フリー磁性層の磁化方向を前記固定磁性層の磁化方向
と交叉する方向に揃えるバイアス層とを有する磁気抵抗
効果素子において、前記フリー磁性層よりも下側及び/
または上側に形成された前記反強磁性層とこの反強磁性
層と接して形成された固定磁性層とが、上記した交換結
合膜により形成されることを特徴とするものである。
【0059】さらに本発明は、非磁性層を介して重ねら
れた磁気抵抗層と軟磁性層とを有し、前記磁気抵抗層の
上側あるいは下側にトラック幅方向へ間隔を空けて反強
磁性層が形成された磁気抵抗効果素子において、前記反
強磁性層と磁気抵抗層とが、上記した交換結合膜により
形成されることを特徴とするものである。
【0060】また本発明における薄膜磁気ヘッドは、上
記した磁気抵抗効果素子の上下にギャップ層を介してシ
ールド層が形成されていることを特徴とするものであ
る。
【0061】
【発明の実施の形態】図1は本発明の第1実施形態のシ
ングルスピンバルブ型磁気抵抗効果素子の全体構造をA
BS面側から見た断面図である。なお、図1ではX方向
に延びる素子の中央部分のみを破断して示している。
【0062】このシングルスピンバルブ型磁気抵抗効果
素子は、ハードディスク装置に設けられた浮上式スライ
ダのトレーリング側端部などに設けられて、ハードディ
スクなどの記録磁界を検出するものである。なお、ハー
ドディスクなどの磁気記録媒体の移動方向はZ方向であ
り、磁気記録媒体からの洩れ磁界の方向はY方向であ
る。
【0063】図1の最も下に形成されているのはTa,
Hf,Nb,Zr,Ti,Mo,Wのうち1種または2
種以上の元素などの非磁性材料で形成された下地層6で
ある。この下地層6の上にフリー磁性層1、非磁性中間
層2、固定磁性層3、および反強磁性層4が積層されて
いる。そして、前記反強磁性層4の上に、Ta,Hf,
Nb,Zr,Ti,Mo,Wのうち1種または2種以上
の元素などの非磁性材料で形成された保護層7が形成さ
れている。
【0064】また図1に示すように、下地層6から保護
層7までの6層(積層膜)の両側には、ハードバイアス
層5,5が形成され、前記ハードバイアス層5,5の上
には導電層8,8が積層されている。
【0065】本発明では前記フリー磁性層1および固定
磁性層3が、NiFe合金、CoFe合金、Co、Co
NiFe合金などにより形成されている。
【0066】なお図1に示すようにフリー磁性層1は一
層で形成されているが、これが多層構造で形成されても
よい。前記フリー磁性層1が、例えばNiFe合金とC
oとが積層された構造となっていてもよい。
【0067】前記フリー磁性層1と固定磁性層3との間
に介在する非磁性中間層2は、例えばCuで形成されて
いる。なお本発明における磁気抵抗効果素子が、トンネ
ル効果の原理を用いたトンネル型磁気抵抗効果素子(T
MR素子)の場合、前記非磁性中間層2は、例えばAl
23等の絶縁材料で形成される。さらに、ハードバイア
ス層5,5は、例えばCo−Pt(コバルト−白金)合
金やCo−Cr−Pt(コバルト−クロム−白金)合金
などで形成されており、導電層8,8は、Cu(銅)や
W(タングステン)などで形成されている。なお上記し
たトンネル型磁気抵抗効果素子の場合、前記導電層8,
8は、フリー磁性層1の下側と、反強磁性層4の上側に
それぞれ形成されることになる。
【0068】次に本発明における磁気抵抗効果素子の製
造方法について、主に反強磁性層と強磁性層(固定磁性
層)とで形成される交換結合膜を中心にして説明する。
そしてその後、前記製造方法によって形成された磁気抵
抗効果素子の構造についての特徴点について述べること
とする。
【0069】図2に示す積層膜は、図1と同様に、反強
磁性層4が固定磁性層3の上側に形成され、下地層6か
ら保護層7までの積層膜を示す部分模式図である。図2
に示す積層膜の構造は、成膜段階(熱処理前)での状態
である。
【0070】まず図示しない基板上にTa等で形成され
た下地層6を形成する。例えば前記下地層6を50Å
(オングストローム)程度で形成する。
【0071】次に前記下地層6上に、例えばNiFe合
金膜9と前記NiFe合金膜9上にCo膜10を形成す
る。前記NiFe合金膜9とCo膜10とでフリー磁性
層1が構成されている。なお前記Co膜10を非磁性中
間層2と接する側に形成することにより、前記非磁性中
間層2との界面での金属元素等の拡散を防止し、ΔMR
(抵抗変化率)を大きくできる。
【0072】なお前記NiFe合金膜9は、例えば前記
Niを80(at%)、Feを20(at%)で形成す
る。また前記NiFe合金膜9の膜厚を45Å程度、C
o膜を5Å程度で形成する。
【0073】次に前記フリー磁性層1上にCuなどで形
成された非磁性中間層2を形成する。例えば前記非磁性
中間層2の膜厚を25Å程度で形成する。
【0074】次に前記非磁性中間層2上に固定磁性層3
を形成する。この実施例では前記固定磁性層3を3層の
積層構造で形成している。
【0075】例えば前記固定磁性層3を、Co膜11と
Ru膜12とCo膜13とで形成し、後述する反強磁性
層4との界面での交換結合磁界により前記Co膜11と
Co膜13の磁化方向は互いに反平行状態にされる。こ
れは、いわゆるフェリ状態と呼ばれ、この構成により固
定磁性層3の磁化を安定した状態にでき、また前記固定
磁性層3と反強磁性層4との界面で発生する交換結合磁
界を大きくすることができる。
【0076】なお前記Co膜11を例えば20Å程度で
形成し、Ru膜12を8Å程度で形成し、Co膜13を
15Å程度で形成する。
【0077】次に前記固定磁性層3上に反強磁性層4を
形成する。図3に示すように固定磁性層3上に第1の反
強磁性層14を形成し、さらに前記第1の反強磁性層1
4上に第2の反強磁性層15を形成する。
【0078】本発明では前記第1の反強磁性層14及び
第2の反強磁性層15を、元素X(ただしXは、Pt,
Pd,Ir,Rh,Ru,Osのうち1種または2種以
上の元素である)とMnとを含有する反強磁性材料で形
成する。
【0079】これら白金族元素を用いたX−Mn合金
は、耐食性に優れ、またブロッキング温度も高く、さら
に交換結合磁界(Hex)を大きくできるなど反強磁性
材料として優れた特性を有している。特に白金族元素の
うちPtを用いることが好ましく、例えば二元系で形成
されたPtMn合金を使用することができる。
【0080】また本発明では、前記第1の反強磁性層1
4及び第2の反強磁性層15を、元素Xと元素X′(た
だし元素X′は、Ne,Ar,Kr,Xe,Be,B,
C,N,Mg,Al,Si,P,Ti,V,Cr,F
e,Co,Ni,Cu,Zn,Ga,Ge,Zr,N
b,Mo,Ag,Cd,Sn,Hf,Ta,W,Re,
Au,Pb、及び希土類元素のうち1種または2種以上
の元素である)とMnとを含有する反強磁性材料で形成
してもよい。
【0081】なお前記元素X′には、元素XとMnとで
構成される空間格子の隙間に侵入し、または元素XとM
nとで構成される結晶格子の格子点の一部と置換する元
素を用いることが好ましい。ここで固溶体とは、広い範
囲にわたって、均一に成分が混ざり合った固体のことを
指している。
【0082】侵入型固溶体あるいは置換型固溶体とする
ことで、前記X−Mn合金膜の格子定数に比べて、前記
X−Mn−X′合金の格子定数を大きくすることができ
るので、固定磁性層3の格子定数との差を広げることが
でき、前記反強磁性層4と固定磁性層3との界面構造を
非整合状態にしやすくできる。また特に置換型で固溶す
る元素X′を使用する場合は、前記元素X′の組成比が
大きくなりすぎると、反強磁性としての特性が低下し、
固定磁性層3との界面で発生する交換結合磁界が小さく
なってしまう。特に本発明では、侵入型で固溶し、不活
性ガスの希ガス元素(Ne,Ar,Kr,Xeのうち1
種または2種以上)を元素X′として使用することが好
ましいとしている。希ガス元素は不活性ガスなので、希
ガス元素が、膜中に含有されても、反強磁性特性に大き
く影響を与えることがなく、さらに、Arなどは、スパ
ッタガスとして従来からスパッタ装置内に導入されるガ
スであり、ガス圧を適正に調節するのみで、容易に、膜
中にArを侵入させることができる。
【0083】なお、元素X′にガス系の元素を使用した
場合には、膜中に多量の元素X′を含有することは困難
であるが、希ガスの場合においては、膜中に微量侵入さ
せるだけで、熱処理によって発生する交換結合磁界を、
飛躍的に大きくできる。
【0084】なお本発明では、好ましい前記元素X′の
組成範囲は、at%で0.2から10であり、より好ま
しくは、at%で、0.5から5である。また本発明で
は前記元素XはPtであることが好ましく、よってPt
−Mn−X′合金を使用することが好ましい。
【0085】ところで本発明では、前記第1の反強磁性
層14及び第2の反強磁性層15を構成する元素Xある
いは元素X+X′の種類は、同じであっても良く、ある
いは異なっていてもよい。例えば第1の反強磁性層14
として、格子定数を大きくすることが可能なPt−Mn
−X′合金を使用し、第2の反強磁性層15としてPt
Mn合金を使用してもよい。
【0086】また図2に示す積層膜の成膜段階(熱処理
前)において重要な点は、第1の反強磁性層14に占め
る元素Xの組成比(at%)を、第2の反強磁性層15
に占める元素Xの組成比(at%)よりも大きくするこ
とである。あるいは第1の反強磁性層14及び第2の反
強磁性層15が共にX−Mn−X′合金で形成される場
合には、前記第1の反強磁性層14に占める元素X+
X′の組成比(at%)を、第2の反強磁性層15に占
める元素X+X′の組成比(at%)よりも大きくす
る。また第1の反強磁性層14がX−Mn−X′合金
で、第2の反強磁性層15がX−Mn合金で形成される
場合には、第1の反強磁性層14の元素X+X′の組成
比を、第2の反強磁性層15の元素Xの組成比よりも大
きくする。
【0087】前記第1の反強磁性層14の重要な役割
は、第2の反強磁性層15を成膜して熱処理を施した後
に、前記反強磁性層4の不規則格子を規則格子に適正に
変態させるため、前記第1の反強磁性層14の部分で固
定磁性層3の結晶構造等の拘束力を受けにくくし、その
拘束力が第2の反強磁性層15に及ばないようにする点
にある。
【0088】このように前記固定磁性層3との界面で、
前記固定磁性層3の結晶構造等の拘束力を受け難くする
には、第1の反強磁性層14の元素Xあるいは元素X+
X′の組成比を大きくすることが必要である。
【0089】このように元素Xあるいは元素X+X′の
組成比を大きくすると、熱処理を施した際に規則格子を
形成するための理想的な組成からは外れやすくなるが、
固定磁性層3の格子定数との差を広げることができる。
このように格子定数の差が広がることで、第1の反強磁
性層14は固定磁性層3の結晶構造等の拘束力を受け難
くなり、その結果、第2の反強磁性層15も前記の拘束
力を受けることはない。
【0090】なお本発明では前記第1の反強磁性層14
と固定磁性層3との界面の少なくとも一部が非整合状態
となっていることが好ましい。前記界面で非整合状態が
存在すると、特に第1の反強磁性層14は固定磁性層3
側の結晶構造等の影響を受け難くなる。
【0091】既に述べたように、PtMn合金のバルク
タイプでは、PtとMnとのat%が50:50のとき
に最もCuAu−I型の面心正方規則格子になり易く、
反強磁性の性質になり易い状態になっている。一方、P
t量を50at%よりも多くしていくと、反強磁性の性
質が弱まるものの、このようにPt量を50at%より
も多くすると、前記PtMn合金の格子定数は広がり、
固定磁性層3との界面において、非整合状態を作り易く
なる。
【0092】なお前記第1の反強磁性層14の元素Xあ
るいは元素X+X′の組成比は、53at%以上65a
t%以下であることが好ましい。より好ましくは55a
t%以上60at%以下である。これによって後述する
実験結果により、7.9×104(A/m)以上の交換
結合磁界を得ることが可能になっている。
【0093】ただし前記第1の反強磁性層14が如何な
る膜厚で形成されてもよいわけではない。前記第1の反
強磁性層14の膜厚が薄すぎると、前記第1の反強磁性
層14と固定磁性層3との界面での非整合状態が弱まっ
てしまい、これにより熱処理を施しても適切な大きさの
交換結合磁界を得ることができない。また前記第1の反
強磁性層14は、本来、熱処理を施しても不規則格子か
ら規則格子に変態しにくく反強磁性になり難い組成で形
成されているために、前記第1の反強磁性層14の膜厚
が厚くなりすぎると、前記変態が起こり難い領域が多く
なる結果、熱処理によっても不規則格子としてそのまま
残る領域が増え、交換結合磁界は急激に低下してしま
う。
【0094】本発明では前記第1の反強磁性層14の膜
厚を3Å以上30Å以下に設定している。後述する実験
結果により、前記第1の反強磁性層14が上記膜厚範囲
内で形成されると、交換結合磁界(Hex)を大きくで
き、具体的には7.9×10 4(A/m)以上の交換結
合磁界を得ることができる。
【0095】次に前記第1の反強磁性層14を形成後、
前記第1の反強磁性層14上に、前記第1の反強磁性層
14の元素Xあるいは元素X+X′の組成比よりも低い
前記組成比からなる第2の反強磁性層15を形成する。
【0096】このとき、前記第2の反強磁性層15の元
素Xあるいは元素X+X′の組成比を44(at%)以
上57(at%)以下にすることが好ましい。より好ま
しくは、前記組成比を46(at%)以上55(at
%)以下にすることであり、さらに好ましくは、48
(at)以上53(at%)以下である。
【0097】前記第2の反強磁性層15の元素Xあるい
は元素X+X′の組成比は、熱処理を施した際に不規則
格子から規則格子に変態させるのに理想的な組成比に近
いことが好ましく、これによって前記第2の反強磁性層
15を形成した後、熱処理を施すと、前記第2の反強磁
性層15は適切に不規則格子から規則格子に変態するよ
うになっている。
【0098】ところで前記第2の反強磁性層15は如何
なる膜厚で形成されてもよいわけではない。前記第2の
反強磁性層15の膜厚が薄くなると、交換結合磁界(H
ex)が急激に減少することが実験で確認されている。
【0099】本発明では前記第2の反強磁性層15を、
70Å以上で形成することが好ましいとした。これによ
り交換結合磁界を大きくすることができ、具体的には
7.9×104(A/m)以上の交換結合磁界を得るこ
とができる。
【0100】なお本発明では前記第1の反強磁性層14
及び第2の反強磁性層15をスパッタ法で形成すること
が好ましい。
【0101】特に元素X−Mn−X′合金によって、第
1の反強磁性層14あるいは第2の反強磁性層15を形
成するときには、前記X−Mn−X′合金をスパッタ法
で成膜することにより、前記X−Mn−X′合金は非平
衡状態で成膜され、成膜されたX−Mn−X′合金は、
膜中の元素X′が、元素XとMnとで構成される空間格
子の隙間に侵入し、あるいは、元素XとMnとで構成さ
れる結晶格子の格子点の一部が、元素X′に置換され
る。このように、前記元素X′が、X−Mn合金の格子
に侵入型であるいは置換型で固溶することにより、格子
は押し広げられ、反強磁性層4の格子定数は、元素X′
を添加しない場合に比べて大きくなる。
【0102】また本発明では、第1の反強磁性層14及
び第2の反強磁性層15をスパッタ法で形成する場合、
第1の反強磁性層14を、第2の反強磁性層15の成膜
時よりも低いスパッタガス圧で成膜することが好まし
い。これにより、第1の反強磁性層14中に占める元素
Xあるいは元素X+X′の組成比を、第2の反強磁性層
15中に占める元素Xあるいは元素X+X′の組成比よ
りも大きくすることができる。
【0103】本発明では、このように反強磁性層4を第
1の反強磁性層14と第2の反強磁性層15の積層構造
とし、各層を形成するときに、前記第1の反強磁性層1
4の元素Xあるいは元素X+X′の組成比を、第2の反
強磁性層15の元素Xあるいは元素X+X′の組成比よ
りも大きくし、これにより前記第1の反強磁性層14と
固定磁性層3との界面で、前記第1の反強磁性層14が
前記固定磁性層3の結晶構造等の拘束力を受け難くし、
特に前記界面の少なくとも一部を非整合状態にすること
が好ましく、これにしたがって熱処理を施したときに適
切に不規則格子から規則格子への変態を行わせることが
でき、反強磁性層4と固定磁性層3間で大きな交換結合
磁界を得ることが可能になっている。
【0104】なお本発明では、上記したように、成膜段
階で、第1の反強磁性層14と固定磁性層3との界面の
少なくとも一部を非整合状態にすることが好ましいとし
ているが、この非整合状態は、例えば第1の反強磁性層
14と固定磁性層3の格子定数を異ならせることで得る
ことが可能である。この場合、前記界面の少なくとも一
部で双方の格子定数を異ならせればよい。
【0105】あるいは本発明では、第1の反強磁性層1
4と固定磁性層3との界面の少なくとも一部で結晶配向
を異ならせてもよい。このように結晶配向を異ならせる
ことでも、第1の反強磁性層14と固定磁性層3との界
面の少なくとも一部を非整合状態にしやすくできる。
【0106】例えば固定磁性層3の(111)面が膜面
に対し平行な方向に優先配向している場合には、第1の
反強磁性層14の(111)面を、前記固定磁性層3の
(111)面の配向度に比べて小さくし、あるいは無配
向とする。
【0107】あるいは、第1の反強磁性層14の(11
1)面が、前記界面と平行な方向に優先配向している場
合、前記固定磁性層3の(111)面の配向度を、前記
第1の反強磁性層14の配向度よりも小さいか、あるい
は無配向とする。
【0108】または、前記第1の反強磁性層14と固定
磁性層3との界面に平行な方向への、前記第1の反強磁
性層14の(111)面の配向度、及び前記固定磁性層
3の(111)面の配向度を共に小さくするか、あるい
は無配向とする。前記結晶配向度は、下地層の存否や、
組成比、スパッタ成膜時の電力ガス圧等の諸条件、ある
いは膜の積層順などにより変えることができる。
【0109】上記のようにして形成された積層膜に、今
度は熱処理を施す。この熱処理によって反強磁性層4と
固定磁性層3との界面で交換結合磁界が発生し、前記固
定磁性層3の磁化は、所定方向、図1で言うと図示Y方
向(ハイト方向)に単磁区化される。
【0110】上記したように、第1の反強磁性層14と
固定磁性層3との界面では、前記第1の反強磁性層14
は固定磁性層3の結晶構造等に拘束されることなく、さ
らに好ましくは前記界面の少なくとも一部において非整
合状態になっているから、この非整合状態を保ちなが
ら、前記固定磁性層3に第1の反強磁性層14を介して
形成された第2の反強磁性層15が、不規則格子から規
則格子へ変態し始める。前記第2の反強磁性層15は、
上記したように、不規則格子から規則格子に変態しやす
い理想的な組成比に近い反強磁性材料で形成されている
からである。
【0111】このような変態が始まると、第1の反強磁
性層14と第2の反強磁性層15との界面では組成拡散
が起こると考えられる。このような拡散が起こると、第
2の反強磁性層15を構成する各元素が第1の反強磁性
層14側に入り込み、また第1の反強磁性層14を構成
する各元素が第2の反強磁性層15側に入り込むため
に、反強磁性層4は、前記第1の反強磁性層14と第2
の反強磁性層15との境なく、元素が混ざり合った状態
になると考えられる。
【0112】そして上記した組成拡散により、第1の反
強磁性層14と第2の反強磁性層15との界面近傍で
は、元素Xあるいは元素X+X′の組成比(原子%)
が、成膜段階での第1の反強磁性層14の組成比よりも
小さくなるものと考えられる。このため、熱処理によっ
て第2の反強磁性層15の部分が規則化し始めると、そ
れに引きずられて、第1の反強磁性層14の部分でも規
則化が促進され、一方、固定磁性層3との界面では前記
第1の反強磁性層14が前記固定磁性層3の結晶構造等
の拘束を受けることなく、反強磁性層4全体で不規則格
子から規則格子への変態が行なわれ、従来よりも大きな
交換結合磁界を発生させることが可能になるのである。
【0113】上記のようにして形成された積層膜(熱処
理後)の模式図が図3に示されている。なお熱処理後に
おいても下地層6から固定磁性層3までの積層構造には
変化がない。成膜段階(熱処理前:図2)と熱処理後
(図3)とでは反強磁性層3の構造に変化が現われる。
【0114】図3に示す反強磁性層4は、元素X(ただ
しXは、Pt,Pd,Ir,Rh,Ru,Osのうち1
種または2種以上の元素である)とMnとを含有する反
強磁性材料で形成されており、あるいは元素XとX′
(ただし元素X′は、Ne,Ar,Kr,Xe,Be,
B,C,N,Mg,Al,Si,P,Ti,V,Cr,
Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Ga,Ge,Zr,N
b,Mo,Ag,Cd,Sn,Hf,Ta,W,Re,
Au,Pb、及び希土類元素のうち1種または2種以上
の元素である)とMnとを含有する反強磁性材料で形成
される。
【0115】なお前記X−Mn−X′合金は、元素Xと
Mnとで構成される空間格子の隙間に元素X′が侵入し
た侵入型固溶体であり、あるいは、前記元素XとMnと
で構成される結晶格子の格子点の一部が、前記元素X′
に置換された置換型固溶体であることが好ましい。これ
により前記X−Mn−X′合金の格子定数を、X−Mn
合金よりも広げることができ、熱処理後における前記反
強磁性層4と固定磁性層3との界面構造を非整合状態に
しやすくできる。
【0116】そして本発明では前記反強磁性層4には、
前記固定磁性層3に向かうにしたがって、Mnに対する
元素Xあるいは元素X+X′の原子%の比率が増加する
領域が存在する。
【0117】また前記反強磁性層4の少なくとも一部の
結晶構造が、CuAu−I型の面心正方格子(規則格
子)となっている。また前記界面Aの少なくとも一部は
非整合状態になっていることが好ましい。
【0118】上記のように、固定磁性層3に向かうにし
たがって、Mnに対する元素Xあるいは元素X+X′の
原子%の比率が増加する領域が存在する理由は、第1の
反強磁性層14と第2の反強磁性層15は熱処理により
組成拡散を起すが、前記第1の反強磁性層14と第2の
反強磁性層15とが完全に拡散されるわけではなく、す
なわち熱処理後の反強磁性層4全体が全て均一な組成と
なることはないと考えられるからである。
【0119】図2で説明したように、固定磁性層3との
界面側に形成される第1の反強磁性層14の元素Xある
いは元素X+X′の組成比は、前記固定磁性層3に第1
の反強磁性層14を介して形成される第2の反強磁性層
15の元素Xあるいは元素X+X′の組成比に比べて大
きい。
【0120】上記したように、第2の反強磁性層15の
元素Xあるいは元素X+X′の組成比は、熱処理によっ
て規則化を起しやすい50at%近くで形成されるか
ら、Mnの組成比も50at%に近い値で形成されるこ
とになる。一方、第1の反強磁性層14の元素Xあるい
は元素X+X′の組成比は固定磁性層3との界面で、固
定磁性層3の結晶構造等の拘束力を受け難くするため
に、例えば58at%程度で形成されるので、Mnの組
成比は元々少ない量しか含まれていない。
【0121】したがって熱処理を施し第1の反強磁性層
14と第2の反強磁性層15とが組成拡散を起しても、
完全に拡散し合うことはなく、前記反強磁性層4には、
固定磁性層3に向かうにしたがってMnに対する元素X
あるいは元素X+X′の原子%の組成比は増加する。
【0122】また上記した組成拡散によって、元素Xあ
るいは元素X+X′の原子%は、固定磁性層3との界面
A近傍の方が、前記界面Aと反対側の面B近傍よりも大
きくなるものと考えられる。
【0123】また熱処理を施すことによって、反強磁性
層4は不規則格子から規則格子に変態するために、熱処
理後の反強磁性層4では、少なくとも一部の結晶構造
が、CuAu−I型の面心正方格子(規則格子)となっ
ており、さらに前記固定磁性層3との界面の少なくとも
一部は非整合状態となっていることが好ましい。
【0124】なお前記反強磁性層4がPtMn合金で形
成される場合、熱処理を施した後、つまり少なくとも一
部の結晶構造が、規則格子となった前記反強磁性層4の
格子定数a,cの比c/aは、0.93〜0.99の範
囲内であることが好ましい。
【0125】格子定数a,cの比c/aが0.93以下
になると、前記反強磁性層4の結晶構造のほぼ全てが規
則格子となるが、このような状態になると前記固定磁性
層3と反強磁性層4との密着性が低下し、膜剥れなどが
発生し好ましくない。
【0126】また格子定数a,cの比c/aが0.99
以上になると、前記反強磁性層4の結晶構造のほぼ全て
が不規則格子となり、前記反強磁性層4と固定磁性層3
との界面にて発生する交換結合磁界が小さくなって好ま
しくない。
【0127】また本発明では、熱処理後において固定磁
性層3と反強磁性層4との界面の少なくとも一部が非整
合状態にされることが好ましいとしているが、前記界面
の少なくとも一部で前記固定磁性層3と反強磁性層4と
の格子定数が異なっていることによって前記非整合状態
を形成しやすくできる。
【0128】すなわち本発明では熱処理後において、固
定磁性層3に向かうにしたがってMnに対する元素Xあ
るいは元素X+X′の原子%の比率が増加する領域が存
在し、前記反強磁性層4の少なくとも一部の結晶構造
が、CuAu−I型の面心正方規則格子となっており、
しかも前記界面Aの少なくとも一部で前記反強磁性層4
の格子定数と固定磁性層3の格子定数は異なっているも
のであってもよい。この構成によっても従来に比べて大
きい交換結合磁界を得ることが可能である。
【0129】また本発明では、熱処理後において、固定
磁性層3に向かうにしたがってMnに対する元素Xある
いは元素X+X′の原子%の比率が増加する領域が存在
し、前記反強磁性層4の少なくとも一部の結晶構造が、
CuAu−I型の面心正方規則格子となっており、しか
も前記界面Aの少なくとも一部で前記反強磁性層4の結
晶構造と固定磁性層3の結晶構造は異なっているもので
あってもよい。
【0130】例えば固定磁性層3の(111)面が膜面
方向に優先配向している場合には、前記反強磁性層4の
(111)面の配向度は、前記固定磁性層の配向度より
も低いかあるいは無配向になっている。あるいは、反強
磁性層4の(111)面が、前記界面と平行な方向に優
先配向している場合、前記固定磁性層3の(111)面
の配向度は、前記反強磁性層4の配向度よりも低いか、
あるいは無配向になっている。
【0131】または、前記反強磁性層4と固定磁性層3
との界面に平行な方向への、前記反強磁性層4の(11
1)面の配向度、及び前記固定磁性層3の(111)面
の配向度は共に低いか、あるいは無配向となっている。
【0132】このように結晶配向を固定磁性層3と反強
磁性層4とで異ならせることによっても前記固定磁性層
3と反強磁性層4との界面で非整合状態を形成しやす
く、従来に比べて大きい交換結合磁界を得ることが可能
である。
【0133】なお熱処理後の反強磁性層4を構成する組
成元素は、成膜段階(熱処理前)における第1の反強磁
性層14と第2の反強磁性層15(図2参照)を如何な
る組成元素で形成したかに依存し、例えば前記第1の反
強磁性層14と第2の反強磁性層15を共に同じ組成元
素で形成した場合には、熱処理後では、反強磁性層4全
体が同じ組成元素で形成された状態になっている。
【0134】成膜段階(熱処理前)における第1の反強
磁性層14には、固定磁性層3との界面で非整合状態を
保つために格子定数を大きくできる反強磁性材料を使用
することが好ましく、また第2の反強磁性層15には、
熱処理により不規則格子から規則格子への変態をスムー
ズに行わせることが可能な反強磁性材料を使用すること
が好ましい。このため、第1の反強磁性層14と第2の
反強磁性層15とで異なる組成元素で構成された反強磁
性材料を使用してもよい。
【0135】例えば第1の反強磁性層14としてPt−
Mn−Cr合金を使用し、第2の反強磁性層15として
Pt−Mn合金を使用した場合や、あるいは第1の反強
磁性層14としてPt−Mn−Cr合金を使用し、第2
の反強磁性層15としてPdMn合金を使用した場合な
どには、熱処理後において反強磁性層4を構成する元素
Xあるいは元素X+X′の種類は、固定磁性層3との界
面A近傍と、前記界面Aとの反対側の面B近傍とで一部
一致するか、あるいは異なるものとなる。
【0136】上記したように熱処理後において、前記反
強磁性層4には固定磁性層3に向かうにしたがって、M
nに対する元素Xあるいは元素X+X′の原子%の比率
が増加する領域が存在するが、前記界面A近傍におい
て、前記反強磁性層4を構成する全元素の組成比を10
0at%としたとき、元素Xあるいは元素X+X′の組
成比は50(at%)以上65(at%)以下であるこ
とが好ましい。この組成範囲は成膜段階(熱処理前)で
の第1の反強磁性層14の元素Xあるいは元素X+X′
の組成比及び熱処理を施したときの組成拡散に起因する
ものである。
【0137】すなわち上記したように成膜段階におい
て、第1の反強磁性層14の元素Xあるいは元素X+
X′の組成比は53(at%)以上65(at%)以下
であることが好ましい。また熱処理によって前記第1の
反強磁性層14と固定磁性層3間でも組成拡散が起こる
ものと考えられる。このため熱処理によって反強磁性層
4の固定磁性層3との界面近傍では、反強磁性層の元素
Xあるいは元素X+X′の組成比は成膜段階よりも低下
するものと考えられ、したがって前記元素Xあるいは元
素X+X′の組成比は53(at%)よりも小さくなる
ことがある。よって熱処理後における前記界面A近傍で
の元素Xあるいは元素X+X′の好ましい組成範囲を、
上記のように50(at%)以上65(at%)以下と
したのである。なおより好ましい元素Xあるいは元素X
+X′の組成比は50(at%)以上60(at%)以
下である。
【0138】また本発明では、前記界面Aと反対側の面
B近傍での反強磁性層4を構成する全元素の組成比を1
00at%としたときに、元素Xあるいは元素X+X′
の組成比は、44(at%)以上57(at%)以下で
あることが好ましい。前記反対側の面B近傍における元
素Xあるいは元素X+X′の組成比は、成膜段階(熱処
理前)での第2の反強磁性層15の元素Xあるいは元素
X+X′の組成比に起因するものである。
【0139】すなわち上記したように第2の反強磁性層
15の元素Xあるいは元素X+X′の組成比は44(a
t%)以上57(at%)以下であることが好ましいた
め、熱処理後における前記反対側の面B近傍での元素X
あるいは元素X+X′の好ましい組成範囲を、第2の反
強磁性層15と同様に、44(at%)以上57(at
%)以下としたのである。なおより好ましい元素Xある
いは元素X+X′の組成比は46(at%)以上55
(at%)以下である。
【0140】なお本発明では、元素Xあるいは元素X+
X′の組成比が、46at%以上55at%以下となる
領域が、反強磁性層4の全体積に対して、70%以上、
95%以下占めていることが好ましい。上記領域が反強
磁性層4の全体積に対し、上記の率を占めていること
は、前記反強磁性層4が、熱処理によって不規則格子か
ら規則格子に適切に変態したことを意味しており、従来
よりも大きな交換結合磁界を得ることが可能になってい
る。
【0141】次に反強磁性層4の膜厚方向における組成
変調について説明する。本発明では上記のように反強磁
性層4には固定磁性層3に向かうにしたがって、Mnに
対する元素Xあるいは元素X+X′の原子%の比率が増
加する領域が存在するが、これに加えて以下の組成変調
を起していてもよい。
【0142】すなわち本発明では、前記反強磁性層4の
膜厚内で前記界面Aと平行な方向に仮想境界を設定した
とき、前記仮想境界から界面Aまでを第1の領域とし、
前記仮想境界から前記界面と反対側の面までの領域を第
2の領域としたときに、前記仮想境界を挟む領域で、前
記第2の領域から第1の領域に向けて、前記比率が連続
的にあるいは不連続的に増加してもよい。
【0143】例えば前記仮想境界を図3に占めす点線C
であるとする。この点線Cは、成膜段階(熱処理前)に
おいて第1の反強磁性層14と第2の反強磁性層15と
の界面である(図2参照)。
【0144】成膜段階では前記第1の反強磁性層14の
方が第2の反強磁性層15に比べて元素Xあるいは元素
X+X′の組成比は大きくなっている。そして上記のよ
うに熱処理を施すと、前記第1の反強磁性層14と第2
の反強磁性層15との界面の部分で組成拡散が起こるも
のと考えられるので、熱処理後においては、前記固定磁
性層3との界面Aから前記仮想境界(点線C)までの第
1の領域での前記比率は、前記仮想境界(点線C)から
前記界面Aと反対側の面Bまでの第2の領域での前記比
率に比べて大きくなっており、しかも、前記仮想境界を
挟む領域で、前記第2の領域から第1の領域に向けて、
前記比率が連続的にあるいは不連続的に増加するものと
考えられる。特に成膜段階において第1の反強磁性層1
4の元素Xあるいは元素X+X′の組成比が、第2の反
強磁性層15の元素Xあるいは元素X+X′の組成比に
比べてかなり大きい場合には、上記した不連続な増加を
招きやすいものと思われる。
【0145】また本発明では、前記反強磁性層4には、
固定磁性層3側に向かうにしたがって元素Xあるいは元
素X+X′の組成比(原子%)が増加する領域が存在す
ることが好ましい。本発明では上記したように成膜段階
(熱処理前)において、固定磁性層3側に形成される第
1の反強磁性層14の元素Xあるいは元素X+X′の組
成比を、第2の反強磁性層15の元素Xあるいは元素X
+X′の組成比よりも大きくしている。このため熱処理
によって前記第1の反強磁性層14と第2の反強磁性層
15間で組成変調を起しても、前記第1の反強磁性層1
4であった固定磁性層側では、第2の反強磁性層15で
あった部分よりも依然として元素Xあるいは元素X+
X′の組成比(原子%)は大きいものと考えられる。よ
って上記した組成変調を起す箇所があるものと考えられ
る。
【0146】また本発明では、前記反強磁性層4の固定
磁性層3との界面A近傍には、固定磁性層3側に向かう
にしたがって、元素Xあるいは元素X+X′の原子%が
減少する領域が存在することが好ましい。
【0147】反強磁性層4の固定磁性層3との界面A近
傍では前記固定磁性層3側と組成拡散を起すものと考え
られ、この組成拡散が起こると、前記界面A近傍におけ
る元素Xあるいは元素X+X′の組成比は、成膜段階に
おけるその組成比に比べて小さくなってしまう。
【0148】本発明のように、前記反強磁性層4は、前
記界面A近傍において、固定磁性層3側に向かうにした
がって、元素Xあるいは元素X+X′の原子%が減少す
る領域が存在すると、前記界面A近傍で適切な不規則格
子から規則格子への変態が行なわれ、大きな交換結合磁
界を発生させることが可能になっている。
【0149】なお熱処理後の反強磁性層4において、前
記元素Xあるいは元素X+X′の組成比が最大となる箇
所は、固定磁性層3との界面Aから前記界面Aと反対側
の面B方向に、3Å以上30Å以下の範囲内で存在する
ことが好ましい。この範囲は成膜段階(熱処理前)にお
ける第1の反強磁性層14の好ましい膜厚範囲である。
【0150】また本発明では、反強磁性層4の固定磁性
層Aとの界面の反対側の面BにTa等で形成された保護
層7が形成されている。そして熱処理を施すことにより
成膜段階における第2の反強磁性層15と前記保護層7
との間でも組成変調を起すことが考えられる。
【0151】すなわち本発明では、反強磁性層4の固定
磁性層3と反対側の面近傍において、前記反対側の面方
向に元素Xあるいは元素X+X′の組成比(at%)が
減少する領域が存在していてもよい。
【0152】なお本発明では前記反強磁性層4の膜厚は
73Å以上であることが好ましい。図2で説明したよう
に、第1の反強磁性層14は最低でも3Å以上、第2の
反強磁性層15は最低でも70Å以上必要であり、よっ
て反強磁性層4全体では最低でも73Å以上の膜厚が必
要となる。
【0153】このように本発明では前記反強磁性層4を
73Å以上で形成すればよいために、前記反強磁性層4
の膜厚を従来に比べて薄くできる。そして後述するよう
に図3に示す積層膜を薄膜磁気ヘッドとして構成した場
合、狭ギャップ化を図ることが可能である。
【0154】なお本発明では図2で成膜段階(熱処理
前)において反強磁性層4を第1の反強磁性層14と第
2の反強磁性層15の2層構造で構成していたが、これ
以外の製造方法も提供することができる。
【0155】例えば、成膜段階(熱処理前)における反
強磁性層4を単一層で形成した場合でも以下の製造方法
であれば、従来に比べて大きい交換結合磁界を得ること
が可能である。
【0156】すなわち本発明では、元素X(ただしX
は、Pt,Pd,Ir,Rh,Ru,Osのうち1種ま
たは2種以上の元素である)とMnとをターゲットとし
たスパッタ工程で反強磁性層4を形成し、このとき固定
磁性層3から離れるにしたがってスパッタガス圧を徐々
に高くしながら、前記反強磁性層4を形成することで、
元素Xの組成比(原子%)を、前記固定磁性層3と接す
る側から離れるにしたがって減少させるのである。この
際、前記反強磁性層4の成膜時に、前記反強磁性層4と
固定磁性層3との界面の少なくとも一部を非整合状態に
することが好ましい。
【0157】なお前記界面と反対側の面近傍における前
記反強磁性層4を構成する全元素の組成比を100at
%としたときに、構成元素Xの組成比を、44(at
%)以上57(at%)以下にすることが好ましく、よ
り好ましくは46(at%)以上55(at%)以下で
ある。
【0158】上記構成により、反強磁性層4の固定磁性
層3との界面では、前記固定磁性層3の結晶構造等の拘
束力を受けることなく、前記界面付近以外の部分では、
元素Xの組成比(原子%)を、熱処理を施したときに不
規則格子から規則格子に変態させやすい理想的に近い組
成で形成できる。
【0159】したがって前記反強磁性層4の成膜後、熱
処理を施すことにより、反強磁性層4を不規則格子から
規則格子に適切に変態させることができ、しかも前記熱
処理により前記反強磁性層4内で元素の拡散が起こると
考えられるので、この拡散によって前記反強磁性層4全
体で不規則格子から規則格子への変態が適切に起こり、
従来に比べてより大きな交換結合磁界を発生させること
が可能になっている。
【0160】特に前記界面において非整合状態が存在す
る場合には、反強磁性層4が適切に固定磁性層3の結晶
構造等の拘束を受けることなく、反強磁性層4全体の規
則変態を促すことが可能である。
【0161】また前記反強磁性層4の膜厚を73Å以上
で形成することが好ましい。この73Åという数値は、
図2に示す第1の反強磁性層14と第2の反強磁性層1
5とで形成された反強磁性層4の最低膜厚に歩調を合わ
せたものである。
【0162】すなわち図2では第1の反強磁性層14の
膜厚は最低で3Åであり、第2の反強磁性層15の膜厚
は最低で70Åであるから、反強磁性層4の最低膜厚を
73Åとした。
【0163】成膜段階(熱処理前)において反強磁性層
4が単一層で形成される場合においても、固定磁性層3
との界面から前記界面と反対側の面方向に少なくとも約
3Åの膜厚の部分は、その領域内に占める全元素の組成
比を100at%としたとき、元素Xの組成比が53
(at%)以上65(at%)以下であることが好まし
く、より好ましくは55(at%)以上60(at%)
以下である。さらにそれ以外の部分は最低でも70Å以
上の膜厚で、元素Xの組成比が44(at%)以上57
(at%)以下の範囲内あることが好ましく、より好ま
しくは46(at%)以上55(at%)以下である。
これにより図2に示す場合と同様に、7.9×10
4(A/m)以上の交換結合磁界を得ることが可能にな
る。
【0164】また本発明では元素Xと元素X′(ただし
元素X′は、Ne,Ar,Kr,Xe,Be,B,C,
N,Mg,Al,Si,P,Ti,V,Cr,Fe,C
o,Ni,Cu,Zn,Ga,Ge,Zr,Nb,M
o,Ag,Cd,Sn,Hf,Ta,W,Re,Au,
Pb、及び希土類元素のうち1種または2種以上の元素
である)とMnとをターゲットとしたスパッタ工程で反
強磁性層4を形成し、このとき前記固定磁性層3から離
れるにしたがって、スパッタガス圧を徐々に高くしなが
ら前記反強磁性層4を成膜することで、前記元素X+
X′の組成比(原子%)を、前記固定磁性層3と接する
側から離れるにしたがって徐々に減少させてもよい。
【0165】なお前記元素X′には、元素XとMnとで
構成される空間格子の隙間に侵入し、または元素XとM
nとで構成される結晶格子の格子点の一部と置換する元
素を用いることが好ましい。これにより、前記X−Mn
−X′合金の格子定数を、X−Mn合金の格子定数より
も広げることができ、前記固定磁性層3との界面で非整
合状態を保ちやすくできる。
【0166】また本発明では、反強磁性層4と固定磁性
層3との界面の少なくとも一部を非整合状態とすること
が好ましいとしているが、前記非整合状態を形成する方
法としては、前記界面の少なくとも一部で反強磁性層4
と固定磁性層3との格子定数を異ならせることが挙げら
れる。
【0167】このため本発明では、元素XとMnとを含
有する反強磁性材料で形成されたターゲット、あるいは
元素XとX′とMnとを含有する反強磁性材料で形成さ
れたターゲットを用いてスパッタ法により反強磁性層4
を形成するときに、固定磁性層3と接する側から離れる
にしたがって、スパッタガス圧を徐々に高くしながら前
記反強磁性層4を成膜することで、元素Xあるいは元素
X+X′の組成比(原子%)を、前記固定磁性層3と接
する側から離れるにしたがって徐々に減少させ、しかも
前記反強磁性層4の成膜の際に、前記反強磁性層4と固
定磁性層3との界面の少なくとも一部で、前記反強磁性
層4の格子定数と前記固定磁性層3の格子定数を異なら
せてもよい。
【0168】あるいは、元素XとMnとを含有する反強
磁性材料で形成されたターゲット、あるいは元素Xと
X′とMnとを含有する反強磁性材料で形成されたター
ゲットを用いてスパッタ法により反強磁性層4を形成す
るときに、固定磁性層3と接する側から離れるにしたが
って、スパッタガス圧を徐々に高くしながら前記反強磁
性層4を成膜することで、元素Xあるいは元素X+X′
の組成比(原子%)を、前記固定磁性層3と接する側か
ら離れるにしたがって徐々に減少させ、しかも前記反強
磁性層4の成膜の際に、前記反強磁性層4と固定磁性層
3との界面の少なくとも一部で、前記反強磁性層4の結
晶配向と前記固定磁性層3の結晶配向を異ならせてもよ
い。前記結晶配向を異ならせることによっても前記界面
での少なくとも一部を非整合状態にしやすくできる。
【0169】上記のようにして形成された積層膜に熱処
理を施すことによって形成された積層膜は図3と同様の
構造になる。
【0170】すなわち熱処理後における反強磁性層4
は、元素XとMnとを含有する反強磁性材料、あるいは
元素XとX′とMnとを含有する反強磁性材料で形成さ
れ、固定磁性層3に向かうにしたがって、Mnに対する
元素Xあるいは元素X+X′の原子%の比率が増加する
領域が存在し、さらに前記反強磁性層の少なくとも一部
の結晶構造が、CuAu−I型の面心正方規則格子とな
っており、しかも前記界面Aの少なくとも一部は非整合
状態になっているのである。
【0171】次に本発明では、シードレイヤ22を用い
た積層膜の成膜段階(熱処理前)の構成を図4に示す。
また図4に示す積層膜に熱処理を施した前記積層膜の構
造を図5に示す。
【0172】図4、5に示す積層膜は、一例として図6
に示すような反強磁性層4が固定磁性層3の下側に形成
されるシングルスピンバルブ型磁気抵抗効果素子に適用
される。
【0173】まず図4に示すように下地層6上にシード
レイヤ22を形成し、さらに前記シードレイヤ22上に
反強磁性層4を形成する。
【0174】前記下地層6は、Ta,Hf,Nb,Z
r,Ti,Mo,Wのうち少なくとも一種以上の元素で
形成されていることが好ましい。前記下磁層6は、その
上に形成される前記シードレイヤ22の(111)面
を、前記下地層6との界面と平行な方向に優先配向させ
るために設けられたものである。前記下地層6は例えば
50Å程度の膜厚で形成される。
【0175】前記シードレイヤ22は、主として面心立
方晶から成り、前記反強磁性層4との界面と平行な方向
に(111)面が優先配向されている。前記シードレイ
ヤ22は、NiFe合金、あるいはNi−Fe−Y合金
(ただしYは、Cr,Rh,Ta,Hf,Nb,Zr,
Tiから選ばれる少なくとも1種または2種以上)で形
成されることが好ましい。これらの材質で形成されたシ
ードレイヤ22はTa等で形成された下地層6上に形成
されることにより反強磁性層4との界面と平行な方向に
(111)面が優先配向しやすくなる。
【0176】また本発明では前記シードレイヤ22は非
磁性で形成されていることが好ましい。前記シードレイ
ヤ22を非磁性で形成することにより、前記シードレイ
ヤ22の比抵抗を大きくすることができ、導電層から流
れるセンス電流の前記シードレイヤ22への分流を抑制
することが可能である。前記センス電流がシードレイヤ
22に分流しやすくなると、抵抗変化率(ΔMR)の低
下やバルクハウゼンノイズの発生に繋がり好ましくな
い。
【0177】前記シードレイヤ22を非磁性で形成する
には、上記した材質のうちNi−Fe−Y合金(ただし
Yは、Cr,Rh,Ta,Hf,Nb,Zr,Tiから
選ばれる少なくとも1種または2種以上)を選択でき
る。これら材質は、結晶構造が面心立方晶であり、しか
も反強磁性層4との界面と平行な方向に(111)面が
優先配向しやすく好ましい。前記シードレイヤ22は、
例えば30Å程度で形成される。
【0178】次に図4に示すように、前記シードレイヤ
22上に形成される反強磁性層4は、第1の反強磁性層
23、第2の反強磁性層24、及び第3の反強磁性層2
5の積層構造で形成される。
【0179】本発明では、前記第1の反強磁性層23、
第2の反強磁性層24、及び第3の反強磁性層25を、
元素X(ただしXは、Pt,Pd,Ir,Rh,Ru,
Osのうち1種または2種以上の元素である)とMnと
を含有する反強磁性材料で形成することが好ましい。
【0180】また本発明では、各反強磁性層23,2
4,25を元素Xと元素X′合金(ただし元素X′は、
Ne,Ar,Kr,Xe,Be,B,C,N,Mg,A
l,Si,P,Ti,V,Cr,Fe,Co,Ni,C
u,Zn,Ga,Ge,Zr,Nb,Mo,Ag,C
d,Sn,Hf,Ta,W,Re,Au,Pb、及び希
土類元素のうち1種または2種以上の元素である)とM
nとを含有する反強磁性材料で形成してもよい。
【0181】上記の場合、前記X―Mn―X′合金は、
元素XとMnとで構成される空間格子の隙間に元素X′
が侵入した侵入型固溶体であり、あるいは、元素XとM
nとで構成される結晶格子の格子点の一部が、元素X′
に置換された置換型固溶体であることが好ましい。侵入
型固溶体あるいは置換固溶体で形成されたX−Mn−
X′合金は、X−Mn合金に比べて格子定数を広げるこ
とが可能である。
【0182】本発明では、第1及び第3反強磁性層2
3,25を構成する元素Xあるいは元素X+X′の組成
比を、第2の反強磁性層24の元素Xあるいは元素X+
X′の組成比よりも多くしている。
【0183】また前記第1の反強磁性層23と第3の反
強磁性層25との間に形成される第2の反強磁性層24
は、熱処理によって不規則格子から規則格子に変態しや
すい理想的な組成に近い反強磁性材料で形成されてい
る。
【0184】前記第1の反強磁性層23及び第3の反強
磁性層25の元素Xあるいは元素X+X′の組成比を、
第2の反強磁性層24の元素Xあるいは元素X+X′の
組成比よりも大きくするのは、図2で説明したのと同様
であり、熱処理を施したときに、反強磁性層4が不規則
格子から規則格子への変態をしやすくするため、各系面
において、前記固定磁性層3及びシードレイヤ22の結
晶構造等に拘束されないようにする必要があるからであ
る。
【0185】前記第1の反強磁性層23及び第3の反強
磁性層25の元素Xあるいは元素X+X′の組成比は5
3(at%)以上65(at%)以下であることが好ま
しく、より好ましくは55(at%)以上60(at
%)以下である。また前記第1の反強磁性層23及び第
3の反強磁性層25の膜厚は3Å以上30Å以下である
ことが好ましい。例えば図4に示す実施例の場合では、
前記第1及び第3の反強磁性層23,25をそれぞれ1
0Å程度で形成している。
【0186】前記第2の反強磁性層24の元素Xあるい
は元素X+X′の組成比は、44(at%)以上57
(at%)以下で形成される。好ましくは、46(at
%)以上55(at%)以下である。元素Xあるいは元
素X+X′の組成比がこの範囲内で形成されると、熱処
理を施すことによって前記第2の反強磁性層24は不規
則格子から規則格子へ変態しやすくなる。なお前記第2
の反強磁性層24の膜厚は70Å以上であることが好ま
しい。なお図4に示す実施例の場合には、前記第2の反
強磁性層24の膜厚を100Å程度で形成している。
【0187】また上記した各反強磁性層23,24,2
5をスパッタ法で形成することが好ましい。なおこのと
き、第1及び第3の反強磁性層23,25を、第2の反
強磁性層24よりも低いスパッタガス圧で形成すること
が好ましい。これにより、前記第1及び第3の反強磁性
層23,25の元素Xあるいは元素X+X′の組成比
を、第2の反強磁性層24の元素Xあるいは元素X+
X′の組成比よりも大きくすることが可能である。
【0188】あるいは本発明では、成膜段階(熱処理
前)において前記反強磁性層4を上記した3層膜で形成
せず、以下の方法によって前記反強磁性層4を単一層で
形成した場合でも、膜厚方向に元素Xあるいは元素X+
X′の組成比(原子%)を適切に変化させて形成するこ
とが可能である。
【0189】まず元素XとMnとを含有する反強磁性材
料、あるいは元素XとX′とMnとで形成されたターゲ
ットを用いてスパッタによって反強磁性層4を形成する
際に、シードレイヤ22から離れるにしたがって徐々に
スパッタガス圧を高くして反強磁性層4を成膜してい
き、前記反強磁性層4を半分程度成膜した段階で、今度
は前記スパッタガス圧を徐々に低くして残りの反強磁性
層4を成膜するのである。
【0190】この方法によれば、元素Xあるいは元素X
+X′の組成比(原子%)は、シードレイヤ22との界
面から前記反強磁性層4の膜厚の中央付近にかけて徐々
に低くなっていき、前記組成比(原子%)は、前記中央
付近から前記固定磁性層3との界面にかけて徐々に高く
なる。
【0191】このため元素Xあるいは元素X+X′の組
成比(原子%)は、シードレイヤ22及び固定磁性層3
との界面近傍において最も大きく、膜厚のほぼ中央付近
で最も低くなる反強磁性層4を形成することが可能にな
る。
【0192】なお前記固定磁性層3との界面近傍及びシ
ードレイヤ22との界面近傍で、前記反強磁性層4を構
成する全元素の組成比を100at%としたといに、元
素Xあるいは元素X+X′の組成比を、53at%以上
65at%以下にすることが好ましく、より好ましくは
55at%以上60at%以下である。
【0193】また反強磁性層4の膜厚方向の中央付近
で、前記元素Xあるいは元素X+X′の組成比を44
(at%)以上57(at%)以下とすることが好まし
く、より好ましくは46(at%)以上55(at%)
以下である。また前記反強磁性層4の膜厚を76Å以上
で形成することが好ましい。
【0194】図4に示すように前記反強磁性層4上に固
定磁性層3を形成する。図4に示す実施例では図2と同
様に、固定磁性層3が、Co膜11、Ru膜12及びC
o13の3層からなる、いわゆるフェリ状態にされてい
る。なお例えば前記Co膜11の膜厚は20Å程度、R
u膜12の膜厚は8Å程度、Co膜13の膜厚は15Å
程度で形成される。
【0195】熱処理を施すことによって、反強磁性層4
は、シードレイヤ22及び固定磁性層3との界面におい
て、前記シードレイヤ22及び固定磁性層3の結晶構造
等の拘束を受けることなく、結晶構造が不規則格子から
規則格子に適切に変態し、前記固定磁性層3との界面に
おいて交換結合磁界が発生し、前記固定磁性層3の磁化
は図示Y方向(ハイト方向)に単磁区化される。
【0196】本発明では、シードレイヤ22及び固定磁
性層3との界面の少なくとも一部が非整合状態であるこ
とが好ましい。前記非整合状態が存在することで、各界
面ではシードレイヤ22あるいは固定磁性層3の結晶構
造等の拘束を受け難くなり、前記反強磁性層4の規則化
への変態を促すことが可能である。
【0197】本発明では、上記のように前記シードレイ
ヤ22及び固定磁性層3と接する側に、元素Xあるいは
元素X+X′の組成比が多い第1及び第3の反強磁性層
23,25を形成し、しかも前記第1及び第3の反強磁
性層23,25間に、熱処理によって適切に不規則格子
から規則格子に変態しやすい組成で形成された第2の反
強磁性層24を設けているので、熱処理によって前記第
2の反強磁性層24の部分で変態が進むと同時に、第1
及び第3の反強磁性層23,25と第2の反強磁性層2
4間で組成拡散が起こると考えられ、したがって前記第
1及び第3の反強磁性層23,25の部分でも、シード
レイヤ22及び固定磁性層3との界面で適切に非整合状
態を維持しながら、不規則格子から規則格子への変態が
起こり、反強磁性層4全体で適切な変態を起すことがで
きるのである。したがって本発明によれば従来に比べて
適切な前記変態を期待することができ、よって大きい交
換結合磁界を得ることができ、具体的には7.9×10
4(A/m)以上の交換結合磁界を期待することができ
る。
【0198】図4に示すように、前記固定磁性層3上に
例えばCu等で形成された非磁性中間層2を形成し、さ
らに前記非磁性中間層2上にフリー磁性層1を形成す
る。
【0199】前記フリー磁性層1は例えばNi−Fe合
金膜9とCo膜10とで構成されている。また前記非磁
性中間層2は例えば22Å程度で形成され、Ni−Fe
合金膜9は45Å程度で形成され、Co膜10は5Å程
度で形成される。
【0200】そして図4に示すように、前記フリー磁性
層1の上に例えばTa膜で形成された保護層7を形成す
る。前記保護層7の膜厚は例えば30Å程度である。
【0201】本発明では上記したように、反強磁性層4
の下側(固定磁性層3との界面と反対側の面)にシード
レイヤ22を設けている。前記シードレイヤ22は主と
して、面心立方晶からなり、しかも反強磁性層4との界
面と平行な方向に(111)面が優先配向している。
【0202】このために前記シードレイヤ22上に形成
された反強磁性層4からフリー磁性層1までの各層の結
晶配向もまた前記界面と平行な方向に(111)面が優
先配向されやすく、結晶粒径が大きくなる。このように
結晶粒径が大きくなることによって抵抗変化率(ΔM
R)が大きくなり、再生特性を向上させることが可能で
ある。
【0203】また図4に示す実施例では、抵抗変化率の
向上と同時に、交換結合磁界をも大きくすることができ
ることも既に詳述した通りである。前記交換結合磁界が
小さくなりすぎても、抵抗変化率は低下することから、
抵抗変化率の向上という観点からしても、前記交換結合
磁界はある程度必要である。
【0204】図4に示す下地層6から保護層7までの積
層膜を形成した後、熱処理を施す。図5は熱処理後の積
層膜の構造を示している。図5に示す熱処理が施された
後においても、Ta等で形成された下地層6上に形成さ
れたシードレイヤ22は、結晶構造が主として面心立方
晶からなり、反強磁性層4との界面に平行な方向に(1
11)面が優先配向している。
【0205】また前記シードレイヤ22上に形成された
反強磁性層4は、少なくとも一部の結晶構造がCuAu
−I型の面心正方規則格子からなり、しかも前記反強磁
性層4からフリー磁性層1までの各層が前記界面と平行
な方向に(111)面が優先配向し、さらに前記反強磁
性層4とシードレイヤ22との界面I及び前記反強磁性
層4と固定磁性層3との界面Hの少なくとも一部が非整
合状態にされている。
【0206】本発明では上記したように、シードレイヤ
22の形成により、反強磁性層4からフリー磁性層1ま
での各層の結晶配向は前記界面に平行な方向に(11
1)面が優先配向し、結晶粒径が大きくなることによ
り、抵抗変化率(ΔMR)を向上させることができる。
【0207】なお上記したようにシードレイヤ22は、
NiFe合金、あるいはNi−Fe−Y合金(ただしY
は、Cr,Rh,Ta,Hf,Nb,Zr,Tiから選
ばれる少なくとも1種または2種以上)で形成されるこ
とが好ましく、特に非磁性で形成されていることが好ま
しい。前記シードレイヤ22を非磁性で形成することに
より、前記シードレイヤ22の比抵抗を大きくすること
ができ、導電層から流れるセンス電流の前記シードレイ
ヤ22への分流を抑制することが可能である。分流を抑
えることにより、抵抗変化率をより向上させることがで
き、またバルクハウゼンノイズの発生等を抑制すること
ができる。
【0208】また本発明では、反強磁性層4とシードレ
イヤ22との界面I、及び反強磁性層4と固定磁性層3
との界面Hの少なくとも一部は非整合状態にされ、しか
も反強磁性層4の少なくとも一部の結晶構造がCuAu
−I型の面心正方規則格子にされていることから、熱処
理によって前記反強磁性層4が適切に不規則格子から規
則格子に変態したことがわかり、本発明では反強磁性層
4と固定磁性層3間で発生する交換結合磁界を従来より
も大きくすることができ、具体的には7.9×10
4(A/m)以上の交換結合磁界を得ることが可能にな
っている。
【0209】また本発明では、前記界面Iの少なくとも
一部で前記反強磁性層4とシードレイヤ22との格子定
数、及び前記界面Hの少なくとも一部で前記反強磁性層
4と固定磁性層3との格子定数は異なっている構成であ
ってもよい。これによって前記反強磁性層4とシードレ
イヤ22との界面I、及び反強磁性層4と固定磁性層3
との界面Hの少なくとも一部を非整合状態に保つことが
可能である。
【0210】また熱処理を施すと反強磁性層4のうち第
1の反強磁性層23と第2の反強磁性層24との界面
F、及び第3の反強磁性層23と第2の反強磁性層24
との界面Gで組成拡散が発生するために、前記界面F、
Gの有無は明確ではなくなるものと考えられる。
【0211】上記のように前記反強磁性層4は、元素X
(ただしXは、Pt,Pd,Ir,Rh,Ru,Osの
うち1種または2種以上の元素である)とMnとを含有
する反強磁性材料で形成され、あるいは、元素Xと元素
X′(ただし元素X′は、Ne,Ar,Kr,Xe,B
e,B,C,N,Mg,Al,Si,P,Ti,V,C
r,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Ga,Ge,Z
r,Nb,Mo,Ag,Cd,Sn,Hf,Ta,W,
Re,Au,Pb、及び希土類元素のうち1種または2
種以上の元素である)とMnとを含有する反強磁性材料
で形成されることが好ましい。X−Mn−X′合金で反
強磁性層4が形成される場合、X―Mn―X′合金は、
元素XとMnとで構成される空間格子の隙間に元素X′
が侵入した侵入型固溶体であり、あるいは、元素XとM
nとで構成される結晶格子の格子点の一部が、元素X′
に置換された置換型固溶体であることが好ましい。侵入
型固溶体あるいは置換固溶体で形成されたX−Mn−
X′合金は、X−Mn合金に比べて格子定数を広げるこ
とが可能であり、シードレイヤ22及び固定磁性層3と
の界面で適切に非整合状態を維持することができる。
【0212】また熱処理後において、前記反強磁性層4
には、シードレイヤ22に向かうにしたがって、Mnに
対する元素Xあるいは元素X+X′の原子%の比率が、
増加する領域が存在することが好ましい。
【0213】なおこの組成変調の領域の存在は、熱処理
によって適切に規則変態が行なわれたことを意味する。
前記組成変調の領域の存在は、成膜段階(熱処理前;図
4参照)において第3の反強磁性層25の元素Xあるい
は元素X+X′の組成比を、第2の反強磁性層24の元
素Xあるいは元素X+X′の組成比よりも大きくする
か、あるいはスパッタガス圧を変化させて、元素Xある
いは元素X+X′の原子%を、膜厚方向の中央に向かう
にしたがって徐々に小さくしながら反強磁性層4を成膜
することによって得ることができる。この構成により、
前記シードレイヤ22と反強磁性層4との界面Iでは、
前記シードレイヤ22の結晶構造等の拘束力を受けるこ
となく適切に規則化変態していると考えられ、従来に比
べて大きな交換結合磁界を得ることが可能である。
【0214】また上記した組成変調に加えて前記反強磁
性層4には、固定磁性層3に向かうにしたがって、Mn
に対する元素Xあるいは元素X+X′の原子%の比率
が、増加する領域が存在する。これは、成膜段階(熱処
理前;図4参照)において第1の反強磁性層23の元素
Xあるいは元素X+X′の組成比を、第2の反強磁性層
24の元素Xあるいは元素X+X′の組成比よりも大き
くするか、あるいはスパッタガス圧を変化させて、元素
Xあるいは元素X+X′の組成比(原子%)を、膜厚の
中央付近から固定磁性層3側にしたがって徐々に大きく
しながら反強磁性層4を成膜することによって得ること
ができる。
【0215】すなわち図5に示すシードレイヤ22と接
合された反強磁性層4には、膜厚方向の中間領域から固
定磁性層3側に向かうにしたがってMnに対する元素X
あるいは元素X+X′の原子%の比率が増加する領域
と、前記中間領域からシードレイヤ22に向かうにした
がってMnに対する元素Xの原子%の比率が増加する領
域とが存在するのである。
【0216】そして本発明では、シードレイヤ22との
界面I近傍及び固定磁性層3との界面H近傍に占める反
強磁性層4を構成する全元素の組成比を100at%と
したときに、元素Xあるいは元素X+X′の組成比は、
50(at%)以上65(at%)以下であることが好
ましい。この数値範囲は、成膜段階(熱処理前)におけ
る第1及び第3の反強磁性層23,25の適切な組成範
囲(53at%〜65at%)に基づくものである。な
お前記第1及び第3の反強磁性層23,25の組成範囲
の最低値(53at%)よりも熱処理後における反強磁
性層4の組成範囲の最低値(50at%)の方が小さく
なる理由は、熱処理を施すことによって前記反強磁性層
4とシードレイヤ22との界面I、及び前記反強磁性層
4と固定磁性層3との界面Hで組成拡散が発生するため
である。なお前記元素Xあるいは元素X+X′の組成比
は、前記シードレイヤ22の界面I近傍、及び固定磁性
層3との界面H近傍では、50(at%)以上60(a
t%)以下であることがより好ましい。
【0217】また熱処理後における元素X及び元素X+
X′の組成比(原子%)は、膜厚方向の中央付近で44
(at%)以上57(at%)以下であることが好まし
い。この組成範囲は、成膜段階(熱処理前)における第
2の反強磁性層24の元素Xあるいは元素X+X′の適
切な組成範囲(44at%〜57at%)に基づくもの
である。また前記元素Xあるいは元素X+X′の組成比
は、46(at%)以上55(at%)以下であること
がより好ましい。
【0218】また本発明では、前記反強磁性層4の膜厚
内で固定磁性層3及びシードレイヤ22との界面と平行
な方向に2本の仮想境界を設定したとき、前記固定磁性
層3との界面Hから前記界面Hに近い側の第2の仮想境
界までの第3の領域、及び前記シードレイヤ22との界
面Iから前記界面Iに近い側の第1の仮想境界までの第
1の領域では、前記仮想境界間の第2の領域に比べてM
nに対する元素Xあるいは元素X+X′の原子%の比率
が大きく、前記第1の仮想境界を挟む領域で前記第2の
領域から第1の領域に向けて、また前記第2の仮想境界
を挟む領域では前記第2の領域から第3の領域に向け
て、前記比率が連続的にあるいは不連続的に増大するこ
とが好ましい。
【0219】例えば前記第1の仮想境界を図5に占めす
点線G、第2の仮想境界を図5に示す点線Fであるとす
る。この点線F,Gは成膜段階(熱処理前)において第
1の反強磁性層23と第2の反強磁性層24との界面、
及び第2の反強磁性層24と第3の反強磁性層25との
界面であった箇所である。
【0220】成膜段階(熱処理前)では前記第1及び第
3の反強磁性層23,25の方が第2の反強磁性層24
に比べて元素Xあるいは元素X+X′の組成比は大きく
なっている。そして上記のように熱処理を施すと、前記
第1及び第3の反強磁性層23,25と第2の反強磁性
層24との界面の部分で組成拡散が起こるものと考えら
れるので、熱処理後においては、前記固定磁性層3との
界面Hから前記界面Hに近い側の第2の仮想境界(点線
F)までの第3の領域における元素Xあるいは元素X+
X′のMに対する原子%の比率、及びシードレイヤ22
との界面Iから前記界面Iに近い側の第1の仮想境界
(点線G)までの第1の領域における元素Xあるいは元
素X+X′のMnに対する原子%の比率は、前記仮想境
界間の第2の領域での元素Xあるいは元素X+X′のM
nに対する原子%の比率よりも大きくなっており、しか
も前記第2の仮想境界(点線F)で前記第2の領域から
第3の領域にかけて、元素Xあるいは元素X+X′のM
nに対する原子%の比率が連続的にあるいは不連続的に
増加し、同様に前記第1の仮想境界(点線G)で第2の
領域から前記第1の領域にかけて前記比率が連続的にあ
るいは不連続的に増加するものと考えられる。特に成膜
段階において第1及び第3の反強磁性層23,25の元
素Xあるいは元素X+X′の組成比が、第2の反強磁性
層24の元素Xあるいは元素X+X′の組成比に比べて
かなり大きい場合には、上記した不連続な減少を招きや
すいものと思われる。
【0221】また成膜段階(熱処理前)において、第1
及び第3の反強磁性層23,25の元素Xあるいは元素
X+X′の組成比は第2の反強磁性層24の元素Xある
いは元素X+X′の組成比よりも大きいために、熱処理
後において、前記反強磁性層4には、膜厚方向の中間の
所定領域から前記固定磁性層3との界面Hに向けて、及
び前記中間の領域から前記シードレイヤ22との界面I
に向けて、前記元素Xあるいは元素X+X′の組成比
(原子%)が増大する領域が存在すると考えられる。
【0222】なお前記反強磁性層4は熱処理によって、
前記界面Hでは固定磁性層3と、前記界面Iではシード
レイヤ22との間で組成拡散を起すものと考えられ、こ
の組成拡散が起こると、前記界面H近傍及びI近傍での
元素Xあるいは元素X+X′の組成比(原子%)は、成
膜段階におけるそれに比べて小さくなってしまう。
【0223】したがって本発明では、前記反強磁性層4
は、シードレイヤ22との界面I近傍に、前記シードレ
イヤ22側に向かうにしたがって、前記元素Xあるいは
元素X+X′の原子%が減少する領域が存在し、同様
に、固定磁性層3との界面H近傍に、前記固定磁性層3
側に向かうにしたがって、前記元素Xあるいは元素X+
X′の原子%が減少する領域が存在することが好まし
い。
【0224】上記した反強磁性層4と固定磁性層3との
界面H、及び反強磁性層4とシードレイヤ22との界面
Iで組成拡散が起こると、前記界面H,I近傍での元素
Xあるいは元素X+X′の原子%は、成膜段階に比べて
減少するために、前記界面H,I近傍で適切な不規則格
子から規則格子への変態が行なわれ、大きな交換結合磁
界を発生させることが可能になっている。
【0225】なお熱処理後の反強磁性層4において、各
界面に向かうにしたがって元素Xあるいは元素X+X′
の組成比(原子%)が減少する領域は、固定磁性層3と
の界面Hから反強磁性層4の中央方向に3Å以上30Å
以下の範囲内、及びシードレイヤ22との界面Iから反
強磁性層4の中央方向に3Å以上30Å以下の範囲内で
存在することが好ましい。この範囲は成膜段階(熱処理
前)における第1の反強磁性層23及び第3の反強磁性
層25の好ましい膜厚範囲である。
【0226】また前記反強磁性層4の膜厚は76Å以上
であることが好ましい。図4の製造方法で説明したよう
に、第1及び第3の反強磁性層23,25は最低でも3
Å以上、第2の反強磁性層24は最低でも70Å以上必
要であり、よって反強磁性層4全体では最低でも76Å
以上の膜厚が必要となる。
【0227】このように本発明では前記反強磁性層4を
76Å以上で形成すればよいために、前記反強磁性層4
の膜厚を従来に比べて薄くできる。
【0228】図5に示す下地層6から保護層7までの積
層膜の両側には、図1に示すフリー磁性層1の磁化を図
示X方向に揃えるためのハードバイアス層5と導電層8
が形成される。
【0229】上記のように図4に示すシードレイヤ22
が形成された成膜段階(熱処理前)における積層膜は、
反強磁性層4が3層膜で形成されており、このように3
層膜で形成することにより、交換結合磁界を大きくでき
るが、本発明では前記反強磁性層4を均一なX−Mn組
成、あるいはX−Mn−X′組成で形成してもよい。こ
の場合においては、シードレイヤ22と反強磁性層4と
の界面の少なくとも一部を非整合状態にするか、あるい
は前記界面の少なくとも一部で双方の格子定数を異なら
せる必要がある。
【0230】さらに好ましくは、固定磁性層3と反強磁
性層4との界面の少なくとも一部を非整合状態にし、あ
るいは前記界面の少なくとも一部で、前記反強磁性層4
と固定磁性層3との格子定数を異ならせる。
【0231】例えば単一層の反強磁性層4は、Pt52
48合金で形成される。前記PtMn合金で形成された
反強磁性層4であると、シードレイヤ22及び固定磁性
層3との非整合状態が弱くなるから、交換結合磁界は低
下するものの、前記反強磁性層4の少なくとも一部の結
晶構造はCuAu−I型の面心正方規則格子から成り、
前記各層の結晶配向は反強磁性層4と固定磁性層3との
界面と平行な方向に(111)面が優先配向し、前記反
強磁性層4とシードレイヤ22との界面の少なくとも一
部が非整合状態になっているのであり、シードレイヤ2
2の存在により抵抗変化率を向上させることが可能であ
る。
【0232】また前記反強磁性層4とシードレイヤ22
の界面の少なくとも一部で反強磁性層4及びシードレイ
ヤ22の格子定数が異なっていてもよい。
【0233】また本発明では、例えば固定磁性層3側に
形成される第1の反強磁性層23が形成されず、前記反
強磁性層4が第2の反強磁性層24と第3の反強磁性層
25とで構成されていてもよい。この場合には、固定磁
性層3側との界面で、固定磁性層3の結晶構造の拘束力
を受けやすくなり、交換結合磁界は低下するものの、シ
ードレイヤ22との界面が前記シードレイヤ22の結晶
構造の拘束を受け難い状態にしておくことで、反強磁性
層4は不規則格子から規則格子への変態がある程度適切
に行なわれ、交換結合磁界も前記シードレイヤ22との
界面で、前記シードレイヤ22の結晶構造等の拘束を受
ける場合に比べて大きくなり、しかも抵抗変化率はシー
ドレイヤ22の存在により大きくすることができる。な
おこのときの反強磁性層4の組成変調に関しては、図3
で説明したものと同様であり、前記反強磁性層4には前
記シードレイヤ22に向かうにしたがって、Mnに対す
る元素Xあるいは元素X+X′の原子%の比率が増加す
る領域が存在し、また前記反強磁性層4の膜厚の中央付
近よりも前記シードレイヤ22寄りに前記シードレイヤ
22との界面と平行な第1の仮想境界を設定し、前記固
定磁性層3寄りに前記固定磁性層3との界面と平行な第
2の仮想境界を設定したときに、前記シードレイヤ22
との界面から前記第1の仮想境界までの領域は、前記第
1及び第2の仮想境界間の領域に比べて、前記比率が大
きく、前記第1の仮想境界を挟む領域では、前記シード
レイヤ22との界面に向けて、前記比率が連続的にある
いは不連続的に増大することが好ましい。また前記シー
ドレイヤ22と反強磁性層4との界面の少なくとも一部
が非整合状態にされていることが好ましい。
【0234】また前記反強磁性層4には、膜厚内のいず
れかの場所から前記シードレイヤ22側に向けて、前記
元素Xあるいは元素X+X′の原子%が増大する領域が
存在することが好ましく、さらに前記反強磁性層4に
は、前記シードレイヤ22との界面近傍に、前記シード
レイヤ22側に向かうにしたがって、前記元素Xあるい
は元素X+X′の原子%が減少する領域が存在すること
が好ましい。
【0235】また前記シードレイヤ22が形成される場
合、反強磁性層4の材料は、上記したX−Mn合金、あ
るいはX−Mn−X′合金に限定されない。例えば従来
から反強磁性材料として一般的なNi−Mn合金等を使
用することも可能であり、またはMnを含有しない反強
磁性材料であってもよい。このような場合でも本発明に
おけるシードレイヤ22の存在により大きな抵抗変化率
を得ることが可能になる。
【0236】さらに図2に示すように、シードレイヤ2
2が形成されていない場合でも反強磁性層4を、図4に
示すように3層膜で形成してもよい。図2の場合に前記
反強磁性層4を3層膜で形成し、その後熱処理を施すこ
とにより、前記反強磁性層4には、膜厚方向の中間領域
から固定磁性層3側に向かうにしたがってMnに対する
元素Xあるいは元素X+X′の原子%の比率が増加する
領域と、前記中間領域から保護層7に向かうにしたがっ
てMnに対する元素Xあるいは元素X+X′の原子%の
比率が増大する領域とが存在することになる。そして前
記反強磁性層4の少なくとも一部の結晶構造がCuAu
−I型の面心正方規則格子となっている。なおこのとき
固定磁性層3との界面の少なくとも一部が非整合状態に
されているか、あるいは前記界面の少なくとも一部で双
方の格子定数または結晶配向が異なった構成となってい
ることが好ましい。また図2の場合、反強磁性層4の固
定磁性層3と反対側の面には、Ta,Hf,Nb,Z
r,Ti,Mo,Wのうち1種または2種以上の元素な
どの非磁性材料で形成された保護層7が形成され、この
保護層7と反強磁性層4との間で組成拡散が発生し、前
記反強磁性層4には前記保護層7との界面近傍に、前記
元素Xあるいは元素X+X′の原子%が減少する領域が
存在するものと考えられる。
【0237】図2ないし図5に示す積層膜は、様々な磁
気抵抗効果素子に使用可能である。図2、3に示す積層
膜は、図示されているように反強磁性層4が固定磁性層
3の上側に形成されているが、前記反強磁性層4が固定
磁性層3の下側に形成されてもよい。
【0238】この場合、成膜段階において下から第2の
反強磁性層15、第1の反強磁性層14、固定磁性層3
の順で交換結合膜を形成する。前記第1及び第2の反強
磁性層14,15の組成及び膜厚等に関しては、図2で
説明したものと同様である。
【0239】このように反強磁性層4が固定磁性層3の
下側に形成される場合は、例えば図6に示すようなシン
グルスピンバルブ型磁気抵抗効果素子に適用可能であ
る。
【0240】図6に示すシングルスピンバルブ型磁気抵
抗効果素子は、下から下地層6、反強磁性層4、固定磁
性層3、非磁性中間層2、フリー磁性層1及び保護層7
の順で積層膜を形成し、前記積層膜の両側にハードバイ
アス層5,5及び導電層8,8を形成する。
【0241】また図6に示すシングルスピンバルブ型磁
気抵抗効果素子においては、成膜段階において図4で説
明したのと同様に前記反強磁性層4を3層膜で形成する
ことも可能である。
【0242】すなわち下地層6上に、第3の反強磁性層
25、第2の反強磁性層24及び第1の反強磁性層25
を積層する。なお各反強磁性層の材質、組成及び膜厚等
については図4で説明したものと同様である。
【0243】そして熱処理を施すと、各反強磁性層が組
成拡散を起し、熱処理後における反強磁性層4には、膜
厚方向の中間領域から固定磁性層3側に向かうにしたが
ってMnに対する元素Xの原子%の比率が増加する領域
と、前記中間領域から前記下地層6に向かうにしたがっ
てMnに対する元素Xの原子%の比率が増加する領域と
が存在する。そして前記反強磁性層4の少なくとも一部
の結晶構造がCuAu−I型の面心正方規則格子であ
り、好ましくは固定磁性層3との界面の少なくとも一部
が非整合状態にされているか、あるいは前記界面の少な
くとも一部で双方の格子定数が異なった構成となってい
る。
【0244】なお前記反強磁性層4の形成には、上記の
方法以外に、同一のターゲットを用い、スパッタガス圧
を変化させて、元素Xあるいは元素X+X′の原子%
を、膜厚方向に徐々に変化させる方法によって形成して
もよい。
【0245】また図4、5に示すシードレイヤ22を有
する積層膜は、反強磁性層4が固定磁性層3の下側に形
成されているが、前記反強磁性層4が固定磁性層3の上
側に形成されていてもよい。この場合は図1に示すシン
グルスピンバルブ型磁気抵抗効果素子に適用できる。
【0246】すなわち下から、下地層6、フリー磁性層
1、非磁性中間層2、固定磁性層3、反強磁性層4、シ
ードレイヤ22、及び保護層7の順で積層膜を形成し、
前記積層膜の両側にハードバイアス層5,5及び導電層
8,8を形成する。なおこの場合においても前記シード
レイヤ22の結晶構造や材質等は図4、5で説明したも
のと同じである。
【0247】図7及び図8は、本発明の他のシングルス
ピンバルブ型磁気抵抗効果素子の構造を示す断面図であ
る。
【0248】図7では、下から下地層6、反強磁性層
4、固定磁性層3、非磁性中間層2、およびフリー磁性
層1が連続して積層されている。この実施例では、反強
磁性層4が固定磁性層3の下側に形成されている。
【0249】製造方法としては、まず下地層6上に、図
2で説明した第2の反強磁性層15及び第1の反強磁性
層14を積層して反強磁性層4を構成し、前記第1の反
強磁性層14上に固定磁性層3を形成する。あるいは前
記反強磁性層4を図4で説明した3層膜で形成してもよ
い。前記第1の反強磁性層14及び前記第2の反強磁性
層15は、X−Mn合金(ただしXは、Pt,Pd,I
r,Rh,Ru,Osのうちいずれか1種または2種以
上の元素である)、好ましくはPtMn合金、またはX
―Mn―X′合金(ただしX′は、Ne,Ar,Kr,
Xe,Be,B,C,N,Mg,Al,Si,P,T
i,V,Cr,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Ga,
Ge,Zr,Nb,Mo,Ag,Cd,Sn,Hf,T
a,W,Re,Au,Pb、及び希土類元素のうち1種
または2種以上の元素である)で形成する。
【0250】本発明では前記第1の反強磁性層14と固
定磁性層3との界面の少なくとも一部は非整合状態にさ
れていることが好ましい。また前記第2の反強磁性層1
5は、熱処理によって不規則格子から規則格子に変態し
やすい理想的な組成に近い反強磁性材料で形成されてい
る。なお前記第1の反強磁性層14及び第2の反強磁性
層15を構成する元素Xあるいは元素X+X′の組成比
や、各層の膜厚等に関しては図2で説明したものと同じ
である。
【0251】なお前記反強磁性層4の形成には、上記の
方法以外に、同一のターゲットを用い、スパッタガス圧
を変化させて、元素Xあるいは元素X+X′の原子%
を、膜厚方向に徐々に変化させる方法によって形成して
もよい。
【0252】前記反強磁性層4の形成後、熱処理を施
す。前記熱処理によって第2の反強磁性層15では不規
則格子から規則格子に適切に変態をし、また第1の反強
磁性層14と第2の反強磁性層15間で組成拡散が起こ
ることによって、第1の反強磁性層14の部分でも不規
則格子から規則格子への変態が適切に行なわれる。
【0253】熱処理後の元素Xあるいは元素X+X′の
原子%のMnに対する比率は、固定磁性層3側に向かう
にしたがって増加し、また前記反強磁性層4の少なくと
も一部の結晶構造が、CuAu−I型の面心正方規則格
子となっており、しかも前記固定磁性層3との界面の少
なくとも一部が非整合状態になっていることが好まし
い。また前記界面の少なくとも一部で、固定磁性層3及
び反強磁性層4の格子定数が異なり、あるいは前記固定
磁性層3及び反強磁性層4の結晶配向が異なることがよ
い。
【0254】また前記反強磁性層4を熱処理前において
図4に示す3層膜で形成した場合や、あるいは各界面か
ら膜厚方向の中央にかけて元素Xあるいは元素X+X′
の組成比を徐々に小さくして反強磁性層4を形成した場
合、熱処理を施すことによって、前記反強磁性層4に
は、膜厚方向の中間領域から固定磁性層3側に向かうに
したがってMnに対する元素Xの原子%の比率が増加す
る領域と、前記中間領域から前記下地層6に向かうにし
たがってMnに対する元素Xの原子%の比率が増加する
領域とが存在する。そして前記反強磁性層4の少なくと
も一部の結晶構造がCuAu−I型の面心正方規則格子
であり、好ましくは固定磁性層3との界面の少なくとも
一部が非整合状態にされているか、あるいは前記界面の
少なくとも一部で双方の格子定数または結晶配向が異な
った構成となっている。
【0255】そして図7に示すように、フリー磁性層1
の上には、トラック幅方向にトラック幅Twの間隔を空
けてエクスチェンジバイアス層16,16(反強磁性
層)が形成されている。
【0256】なおこのエクスチェンジバイアス層16
は、X−Mn合金(ただしXは、Pt,Pd,Ir,R
h,Ru,Osのうちいずれか1種または2種以上の元
素である)、好ましくはPtMn合金、またはX―Mn
―X′合金(ただしX′は、Ne,Ar,Kr,Xe,
Be,B,C,N,Mg,Al,Si,P,Ti,V,
Cr,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Ga,Ge,Z
r,Nb,Mo,Ag,Cd,Sn,Hf,Ta,W,
Re,Au,Pb、及び希土類元素のうち1種または2
種以上の元素である)で形成されている。
【0257】前記エクスチェンジバイアス層16を形成
するには、まずフリー磁性層1上に第1の反強磁性層1
4を形成し、さらに前記第1の反強磁性層14上に第2
の反強磁性層15を形成する。前記第1の反強磁性層1
4及び前記第2の反強磁性層15は図2に示すものと同
じであり、すなわち前記第1の反強磁性層14は第2の
反強磁性層15の元素Xあるいは元素X+X′の組成比
よりも大きくされ、しかも前記第2の反強磁性層15は
熱処理によって不規則格子から規則格子に変態しやすい
理想的な組成に近い反強磁性材料で形成されている。
【0258】そして熱処理を施すことによって前記フリ
ー磁性層1との界面では固定磁性層3の結晶構造等の拘
束を受けることなく、前記エクスチェンジバイアス層1
6は、不規則格子から規則格子に適切に変態し、前記エ
クスチェンジバイアス層16とフリー磁性層1との界面
で交換結合磁界が発生する。
【0259】熱処理後における前記エクスチェンジバイ
アス層16の元素Xあるいは元素X+X′の原子%のM
nに対する比率は、フリー磁性層1に向かうにしたがっ
て増加する領域が存在し、また前記エクスチェンジバイ
アス層16の少なくとも一部の結晶構造は、CuAu−
I型の面心正方規則格子となっており、しかも好ましく
は前記フリー磁性層1との界面の少なくとも一部は非整
合状態になっている。
【0260】また前記エクスチェンジバイアス層16を
図4で説明した3層膜で形成してもよい。この場合には
熱処理を施すことによって前記エクスチェンジバイアス
層16には、膜厚方向の中間領域からフリー磁性層1側
に向かうにしたがってMnに対する元素Xの原子%の比
率が増加する領域と、前記中間領域から前記フリー磁性
層1と反対側の面に向かうにしたがってMnに対する元
素Xの原子%の比率が増加する領域とが存在する。そし
て前記エクスチェンジバイアス層16の少なくとも一部
の結晶構造がCuAu−I型の面心正方規則格子であ
り、好ましくはフリー磁性層1との界面の少なくとも一
部が非整合状態にされているか、あるいは前記界面の少
なくとも一部で双方の格子定数または結晶配向が異なっ
た構成となっている。
【0261】前記フリー磁性層1の両側端部では、エク
スチェンジバイアス層16間での交換結合磁界により図
示X方向に単磁区化され、フリー磁性層1のトラック幅
Tw領域の磁化は、外部磁界に対して反応する程度に図
示X方向に適性に揃えられている。
【0262】このようにして形成されたシングルスピン
バルブ型磁気抵抗効果素子では、図示Y方向の外部磁界
により、フリー磁性層1のトラック幅Tw領域の磁化が
図示X方向から図示Y方向に変化する。このフリー磁性
層1内での磁化の方向の変動と、固定磁性層3の固定磁
化方向(図示Y方向)との関係で電気抵抗が変化し、こ
の電気抵抗値の変化に基づく電圧変化により、記録媒体
からの洩れ磁界が検出される。
【0263】また図7に示すシングルスピンバルブ型磁
気抵抗効果素子に、図4、5で説明したシードレイヤ2
2を用いることも可能である。
【0264】この場合、前記シードレイヤ22は、反強
磁性層4と下地層6間に用いられる。前記シードレイヤ
22は、結晶構造が主として面心立方晶からなり、しか
も反強磁性層4との界面と平行な方向に(111)面が
優先配向している。前記シードレイヤ22を用いること
で、反強磁性層4からフリー磁性層1までの結晶配向
は、(111)面が優先配向し、結晶粒径が大きくな
る。したがって抵抗変化率を向上させることが可能であ
る。
【0265】なお前記シードレイヤ22の材質や、反強
磁性層4の構成等に関しては、図4,5で説明したもの
と同様である。
【0266】また前記シードレイヤ22を、エクスチェ
ンジバイアス層16上に設けても良い。
【0267】図8は、図7に示すシングルスピンバルブ
型磁気抵抗効果素子を逆積層した形状である。
【0268】図8に示すようにトラック幅方向(図示X
方向)の両側にエクスチェンジバイアス層16,16が
形成され、前記エクスチェンジバイアス層16,16間
は、例えばSiO2やAl23等の絶縁材料で形成され
た絶縁層17によって埋められている。
【0269】前記エクスチェンジバイアス層16及び絶
縁層17上にはフリー磁性層1が形成されている。この
実施例においても前記エクスチェンジバイアス層16は
成膜段階(熱処理前)において第1の反強磁性層14と
第2の反強磁性層15の積層構造で形成されている。
【0270】すなわちまず前記第2の反強磁性層15を
形成後、前記第2の反強磁性層15上に第1の反強磁性
層14を形成し、前記第1及び第2の反強磁性層14,
15の中央付近をエッチング等で除去してエクスチェン
ジバイアス層16,16とし、前記エクスチェンジバイ
アス層16間を絶縁層17で埋めた後、前記エクスチェ
ンジバイアス層16及び絶縁層17上にフリー磁性層1
を形成する。前記エクスチェンジバイアス層16を構成
する第1の反強磁性層14は、第2の反強磁性層15の
元素Xあるいは元素X+X′の組成比に比べて大きくさ
れ、しかも前記第2の反強磁性層15は熱処理によって
不規則格子から規則格子に変態しやすい理想的な組成に
近い反強磁性材料で形成されている。なお前記第1の反
強磁性層14及び第2の反強磁性層15の元素Xあるい
は元素X+X′の組成比や膜厚等に関しては図2で説明
したものと同じである。
【0271】前記フリー磁性層1までを成膜後、熱処理
を施す。前記熱処理によってフリー磁性層1との界面で
は、前記フリー磁性層1の結晶構造等の拘束を受けるこ
となく、エクスチェンジバイアス層16は不規則格子か
ら規則格子に適切に変態し、前記エクスチェンジバイア
ス層16とフリー磁性層1間に交換結合磁界が発生す
る。熱処理後の前記エクスチェンジバイアス層16の元
素Xあるいは元素X+X′の原子%のMnに対する比率
は、フリー磁性層1に向かうにしたがって増加する領域
が存在し、また前記エクスチェンジバイアス層16の少
なくとも一部の結晶構造はCuAu−I型の面心正方規
則格子となっており、しかも好ましくは前記フリー磁性
層1との界面の少なくとも一部は非整合状態になってい
る。前記交換結合磁界により前記フリー磁性層1の両側
端部は、図示X方向に単磁区化され、フリー磁性層1の
トラック幅Tw領域の磁化は、外部磁界に対して反応す
る程度に図示X方向に適性に揃えられている。なお前記
エクスチェンジバイアス層16を図4で説明した反強磁
性層4と同様に3層膜で形成してもよい。この場合には
熱処理を施すことによって前記エクスチェンジバイアス
層16には、膜厚方向の中間領域からフリー磁性層1側
に向かうにしたがってMnに対する元素Xあるいは元素
X+X′の原子%の比率が増加する領域と、前記中間領
域から前記フリー磁性層1と反対側の面に向かうにした
がってMnに対する元素Xの原子%の比率が増加する領
域とが存在する。そして前記エクスチェンジバイアス層
16の少なくとも一部の結晶構造がCuAu−I型の面
心正方規則格子であり、好ましくはフリー磁性層1との
界面の少なくとも一部が非整合状態にされているか、あ
るいは前記界面の少なくとも一部で双方の格子定数また
は結晶配向が異なった構成となっている。
【0272】その後、前記フリー磁性層1上に非磁性中
間層2、固定磁性層3、反強磁性層4及び保護層7を積
層する。
【0273】本発明では成膜段階(熱処理前)におい
て、前記固定磁性層3の上に第1の反強磁性層14を形
成し、さらに前記第1の反強磁性層14の上に第2の反
強磁性層15を形成する。成膜段階において、前記第1
の反強磁性層14は、第2の反強磁性層15に比べて元
素Xあるいは元素X+X′の組成比が多くされ、好まし
くは前記固定磁性層3との界面の少なくとも一部は非整
合状態になっており、しかも前記第2の反強磁性層15
は、熱処理によって不規則格子から規則格子に変態しや
すい理想的な組成に近い反強磁性材料によって形成され
ている。
【0274】前記第1の反強磁性層14及び第2の反強
磁性層15を成膜後、熱処理を施す。前記熱処理を施す
ことによって、前記反強磁性層4は固定磁性層3との界
面において、前記固定磁性層3の結晶構造等の拘束を受
けることなく、不規則格子から規則格子に適切に変態
し、前記反強磁性層4と固定磁性層3との界面に交換結
合磁界が発生する。前記交換結合磁界によって前記固定
磁性層3の磁化は図示Y方向に固定される。
【0275】本発明では、熱処理を施しているときに、
前記反強磁性層4と固定磁性層3との界面で前記固定磁
性層3の結晶構造等の拘束を受けることなく、しかも前
記反強磁性層4は、不規則格子から規則格子に適切に変
態しやすい理想的な組成で形成されているから、前記反
強磁性層4と固定磁性層3間で発生する交換結合磁界は
従来に比べて大きく、具体的には7.9×104(A/
m)以上を期待することができる。また前記反強磁性層
4を成膜段階において図4に示す反強磁性層4と同様に
3層膜で形成しても良く、この場合には熱処理を施すこ
とによって前記反強磁性層4には、膜厚方向の中間領域
から固定磁性層3側に向かうにしたがってMnに対する
元素Xの原子%の比率が増加する領域と、前記中間領域
から前記保護層7側に向かうにしたがってMnに対する
元素Xの原子%の比率が増加する領域とが存在する。そ
して前記反強磁性層4の少なくとも一部の結晶構造がC
uAu−I型の面心正方規則格子であり、好ましくは固
定磁性層3との界面の少なくとも一部が非整合状態にさ
れているか、あるいは前記界面の少なくとも一部で双方
の格子定数または結晶配向が異なった構成となってい
る。
【0276】なおこの実施例においてもシードレイヤ2
2を用いることができる。前記シードレイヤ22は、反
強磁性層4と保護層7間に形成される。前記シードレイ
ヤ22の形成により交換結合磁界を増大させることがで
きる。なお前記シードレイヤ22の材質や反強磁性層4
の構成等に関しては図4、5で説明したものと同様であ
る。
【0277】また前記シードレイヤ22を、図8に示す
ようにエクスチェンジバイアス層16の下側に形成する
ことが好ましい。前記シードレイヤ22の形成により前
記エクスチェンジバイアス層16の結晶配向を整えるこ
とができ、フリー磁性層1との間で適切な交換結合磁界
を発生させることが可能である。
【0278】図9は、本発明におけるデュアルスピンバ
ルブ型磁気抵抗効果素子の構造を示す断面図である。
【0279】図9に示すように、下から下地層6、反強
磁性層4、固定磁性層3、非磁性中間層2、およびフリ
ー磁性層1が連続して積層されている。さらに前記フリ
ー磁性層1の上には、非磁性中間層2、固定磁性層3、
反強磁性層4、および保護層7が連続して積層されてい
る。
【0280】また、下地層6から保護層7までの多層膜
の両側にはハードバイアス層5,5、導電層8,8が積
層されている。なお、各層は図1ないし図7で説明した
材質と同じ材質で形成されている。
【0281】製造方法については図10を参照しながら
説明する。成膜段階において2つの反強磁性層4,4を
第1の反強磁性層14と第2の反強磁性層15の2層構
造にする。前記第1の反強磁性層14は固定磁性層3と
接して形成され、また第2の反強磁性層15は前記第1
の反強磁性層14に接して形成される。前記第1の反強
磁性層14及び第2の反強磁性層15は、上記したX−
Mn合金あるいはX−Mn−X′合金で形成される。
【0282】成膜段階において前記第1の反強磁性層1
4は第2の反強磁性層15の元素Xあるいは元素X+
X′の組成比よりも多くされ、好ましくは固定磁性層3
との界面の少なくとも一部は非整合状態にされており、
また前記第2の反強磁性層は、熱処理によって不規則格
子から規則格子に変態しやすい理想的な組成に近い反強
磁性材料で形成されている。前記第1の反強磁性層14
及び第2の反強磁性層15の元素Xあるいは元素X+
X′の組成比及び各反強磁性層の膜厚等は図2で説明し
たものと同じである。
【0283】成膜後、熱処理を施す。前記熱処理によっ
て、前記反強磁性層4は、固定磁性層3との界面で前記
固定磁性層3の結晶構造等の拘束を受けることなく、不
規則格子から規則格子に適切に変態し、前記界面で発生
する交換結合磁界により前記固定磁性層3の磁化は図示
Y方向に固定される。
【0284】本発明では、成膜段階において固定磁性層
3との界面で前記固定磁性層3の結晶構造等の拘束力を
受けることのない適切な組成で形成された第1の反強磁
性層14と、熱処理によって不規則格子から規則格子に
変態するのに理想的な組成で形成された第2の反強磁性
層15を形成しているので、熱処理によって固定磁性層
3との間で非整合状態を保ちながら適切に不規則格子か
ら規則格子への変態が行なわれ、よって従来よりも大き
な交換結合磁界を得ることが可能である。本発明によれ
ば、7.9×104(A/m)以上の交換結合磁界を期
待することができる。
【0285】熱処理後の状態は図11に示されている。
図11に示す反強磁性層4には、固定磁性層3に向かう
にしたがって、Mnに対する元素Xあるいは元素X+
X′の原子%の比率が増加する領域が存在し、また前記
反強磁性層4の少なくとも一部の結晶構造はCuAu−
I型の面心正方規則格子であり、しかも好ましくは前記
固定磁性層3との界面の少なくとも一部は非整合状態に
されている。なお前記界面の少なくとも一部では前記反
強磁性層4と固定磁性層3との格子定数、あるいは結晶
配向が異なっている方が、非整合状態を維持する観点か
らして好ましい。
【0286】上記のように反強磁性層4に、固定磁性層
3に向かうにしたがってMnに対する元素Xあるいは元
素X+X′の原子%の比率が増加する領域が存在する理
由は、成膜段階において前記反強磁性層4を元素Xある
いは元素X+X′の原子%が大きい第1の反強磁性層1
4と第2の反強磁性層15とを積層して形成したことに
起因する。すなわち熱処理によって前記第1の反強磁性
層14と第2の反強磁性層15は組成拡散を起すが前記
反強磁性層4が均一化した組成になることはなく、前記
第1の反強磁性層14であった部分では、依然として第
2の反強磁性層15であった部分に比べて元素Xあるい
は元素X+X′の組成比が大きい箇所が存在し、Mnに
対する元素Xあるいは元素X+X′の原子%の比率を見
てみると、固定磁性層3に向かうにしたがって前記比率
が増加する領域が発生しているのである。
【0287】また前記反強磁性層4では、固定磁性層3
との界面近傍に、前記固定磁性層3に向かうにしたがっ
て前記反強磁性層4の元素Xあるいは元素X+X′の組
成比が減少する領域が存在するものと考えられる。これ
は熱処理によって前記反強磁性層4と固定磁性層3との
間で組成拡散を起すためである。同様に、前記反強磁性
層4と下地層6あるいは保護層7との間でも前記組成拡
散が発生し、前記下地層6との界面近傍、あるいは前記
保護層7との界面近傍においても、前記界面に向かうに
したがって前記反強磁性層4の元素Xあるいは元素X+
X′の組成比が減少する領域が存在するものと考えられ
る。
【0288】なお前記反強磁性層4の固定磁性層3との
界面や前記界面と反対側の面における元素Xあるいは元
素X+X′の組成比、あるいは前記反強磁性層4の膜厚
等に関しては図3で説明したものと同じである。
【0289】またこの実施例においてもシードレイヤ2
2を形成することができる。製造方法は図12に示され
ている。すなわち図12に示すように下地層6上にシー
ドレイヤ22を形成し、さらに前記シードレイヤ22上
に、3層膜から成る反強磁性層4を形成するのである。
前記反強磁性層4上の膜構成は図10と同様である。
【0290】前記シードレイヤ22上に形成された反強
磁性層4は、シードレイヤ22側の層を第3の反強磁性
層25とし、固定磁性層3側の層を第1の反強磁性層2
3とし、前記第1及び第3の反強磁性層23,25の間
に挟まれる層を第2の反強磁性層24としている。
【0291】図4で説明したのと同様に、第1ないし第
3の反強磁性層をいずれもX−Mn合金あるいはX−M
n−X′合金で形成し、さらに第2の反強磁性層24の
元素Xあるいは元素X+X′の組成比を他の2層の元素
Xあるいは元素X+X′の組成比に比べて少なくする。
さらに上記のように組成比を調整することで前記シード
レイヤ22と第3の反強磁性層25との界面の少なくと
も一部を非整合状態にでき、同様に固定磁性層3と第1
の反強磁性層23との界面の少なくとも一部を非整合状
態にできる。また前記各界面の少なくとも一部で双方の
格子定数を異ならせてもよい。
【0292】前記シードレイヤ22は、前記固定磁性層
3との界面と平行な方向に面心立方晶の(111)面が
優先配向したものであり、このようなシードレイヤ22
上に形成された各層もまた前記界面と平行な方向に(1
11)面が配向するものとなる。また前記シードレイヤ
22の材質については図4と同様であるが、前記シード
レイヤ22は非磁性で高比抵抗材料であることが好まし
い。
【0293】図12に示すようにフリー磁性層1よりも
図示上側に形成される反強磁性層4は2層膜で形成され
る。これは図2で説明した構成と全く同じである。ただ
しフリー磁性層1よりも図示上側に形成される反強磁性
層4を前記フリー磁性層1よりも図示下側に形成される
反強磁性層1と同様に3層膜で形成してもよい。
【0294】図13は熱処理後の状態を示すデュアルス
ピンバルブ型磁気抵抗効果素子の模式図である。
【0295】熱処理を施すと、組成的に規則化を促進し
やすいフリー磁性層1よりも下側の反強磁性層4の第2
の反強磁性層24及びフリー磁性層1よりも上側の反強
磁性層4の第2の反強磁性層15が共に規則化を開始
し、さらに熱処理による組成拡散によりその他の反強磁
性層も非整合状態を保ちながら変態し始め、従来に比べ
て大きな交換結合磁界を得ることが可能になる。
【0296】また上記した組成拡散により、前記フリー
磁性層1よりも下側の反強磁性層4には、固定磁性層3
側、及びシードレイヤ22に向かうにしたがって元素X
あるいは元素X+X′のMnに対する原子%の比率が増
加する領域が存在し、反強磁性層4の少なくとも一部の
結晶構造がCuAu−I型の面心正方晶から成り、さら
に(111)面が膜面に優先配向し、しかも好ましくは
前記シードレイヤ22及び固定磁性層3との界面の少な
くとも一部は非整合状態とされるのである。
【0297】一方、フリー磁性層1よりも上側の反強磁
性層4には、固定磁性層3側に向かうにしたがって元素
Xあるいは元素X+X′のMnに対する原子%の比率が
増加する領域が存在し、反強磁性層4の少なくとも一部
の結晶構造がCuAu−I型の面心正方晶から成り、さ
らに好ましくは固定磁性層3との界面の少なくとも一部
は非整合状態とされるのである。また前記フリー磁性層
1よりも上側に形成された反強磁性層4の結晶配向も
(111)面が膜面に優先配向する。
【0298】またフリー磁性層1の下側の反強磁性層4
では、シードレイヤ22との界面及び固定磁性層3との
界面では組成拡散を起すと考えられ、したがって前記シ
ードレイヤ22との界面近傍、及び固定磁性層3との界
面近傍では、前記各界面に向かうにしたがって反強磁性
層4の元素Xあるいは元素X+X′の原子%が減少する
領域が存在する。この領域の存在は、シードレイヤ22
及び固定磁性層3との界面で前記反強磁性層4が適切に
規則化への変態を起したことを意味し、大きな交換結合
磁界を得ることが可能になるのである。
【0299】一方、フリー磁性層1の上側に形成される
反強磁性層4では、固定磁性層3との界面で組成拡散を
起すと考えられ、したがって前記固定磁性層3との界面
近傍では、前記界面に向かうにしたがって反強磁性層4
の元素Xあるいは元素X+X′の原子%が減少する領域
が存在する。またTaなどで形成された保護層7との間
でも組成拡散を起す可能性がある。このように保護層7
との間でも組成拡散を起した場合には、前記反強磁性層
4には、保護層7との界面近傍において前記保護層7に
向かうにしたがって元素Xあるいは元素X+X′の原子
%が減少する領域が存在する。
【0300】前記シードレイヤ22の形成により、フリ
ー磁性層1より下側の反強磁性層4から前記フリー磁性
層1より上側の反強磁性層4までの各層の結晶配向は
(111)面が膜面に優先配向し、結晶粒径は大きくな
る。そして従来に比べて大きな交換結合磁界、及び抵抗
変化率を得ることができるのである。
【0301】なお前記シードレイヤ22の形成は、図1
2及び図13に示すように、フリー磁性層1よりも下側
の反強磁性層4と下地層6間に形成することが、抵抗変
化率の向上を促進でき効果的である。なお前記シードレ
イヤ22は、フリー磁性層1よりも上側の反強磁性層4
と保護層7間に形成されてもよい。
【0302】図14、15は、本発明のAMR型磁気抵
抗効果素子の構造を示す断面図である。
【0303】図14に示すように、下から軟磁性層(S
AL層)18、非磁性層(SHUNT層)19、および
磁気抵抗層(MR層)20が連続して積層されている。
【0304】例えば前記軟磁性層18は、Fe−Ni−
Nb合金、非磁性層19は、Ta膜、磁気抵抗層20
は、NiFe合金により形成されている。
【0305】前記磁気抵抗層20の上には、トラック幅
Twを開けたトラック幅方向(X方向)の両側の部分に
エクスチェンジバイアス層(反強磁性層)21,21が
形成されている。導電層は図示しないが、例えば前記エ
クスチェンジバイアス層21,21の上に形成される。
【0306】また図15では、トラック幅方向(図示X
方向)にトラック幅Twの間隔を開けて一対のエクスチ
ェンジバイアス層21,21を形成し、前記エクスチェ
ンジバイアス層21,21間をSiO2やAl23等の
絶縁材料で形成された絶縁層26によって埋める。
【0307】そして前記エクスチェンジバイアス層2
1,21及び前記絶縁層26上に、磁気抵抗層(MR
層)20、非磁性層(SHUNT層)19、及び軟磁性
層(SAL層)18を積層する。
【0308】製造方法については、成膜段階(熱処理
前)において、前記エクスチェンジバイアス層21,2
1を第1の反強磁性層14及び第2の反強磁性層15の
2層構造で形成する。
【0309】磁気抵抗層20に接する側に第1の反強磁
性層14を形成し、前記磁気抵抗層20に前記第1の反
強磁性素14を介して、第2の反強磁性層15を形成す
る。
【0310】図2で説明した場合と同様に、前記第1の
反強磁性層14は、第2の反強磁性層15の元素Xある
いは元素X+X′の組成比よりも多くされ、このとき好
ましくは磁気抵抗層20との界面の少なくとも一部は非
整合状態になっており、また前記第2の反強磁性層15
は熱処理によって不規則格子から規則格子に変態しやす
い理想的な組成に近い反強磁性材料によって形成されて
いる。なお前記第1の反強磁性層14及び第2の反強磁
性層15の元素Xあるいは元素X+X′の組成比及び各
反強磁性層の膜厚等に関しては図2に説明したものと同
じである。
【0311】熱処理を施すことによって、前記エクスチ
ェンジバイアス層21,21は前記磁気抵抗層20との
界面で非整合状態を保ちながら、不規則格子から規則格
子に適切に変態し、前記エクスチェンジバイアス層21
と磁気抵抗層20との界面で交換結合磁界が発生する。
【0312】本発明では、成膜段階において磁気抵抗層
20との界面で前記磁気抵抗層20の結晶構造等の拘束
を受けることのない組成で形成された第1の反強磁性層
14と、熱処理によって不規則格子から規則格子に変態
するのに理想的な組成で形成された第2の反強磁性層1
5を形成しているので、熱処理によって磁気抵抗層20
との間で非整合状態を保ちながら適切に不規則格子から
規則格子への変態が行なわれ、よって従来よりも大きな
交換結合磁界を得ることが可能である。本発明によれ
ば、7.9×104(A/m)以上の交換結合磁界を期
待することができる。
【0313】またエクスチェンジバイアス層21は、成
膜段階において図4と同様に3層膜で形成してもよい。
磁気抵抗層20側に第1の反強磁性層23を形成し、さ
らに前記第1の反強磁性層23に第2の反強磁性層2
4、及び第3の反強磁性層25を重ねて形成する。この
とき前記第2の反強磁性層24の元素Xあるいは元素X
+X′の組成比を第1及び第3の反強磁性層23,25
の元素Xあるいは元素X+X′の組成比よりも小さくす
る。また好ましくは前記第1の反強磁性層23と磁気抵
抗層20の界面の少なくとも一部を非整合状態にし、あ
るいは前記界面の少なくとも一部で双方の格子定数また
は結晶配向を異ならせる。
【0314】このようにして形成されたエクスチェンジ
バイアス層21に対し熱処理を施すと、前記第2の反強
磁性層24が規則変態を起し、続いて組成拡散により第
1及び第3の反強磁性層23,25も規則変態を起す。
そして熱処理後の前記エクスチェンジバイアス層21に
は、膜厚方向の中間領域から磁気抵抗層20側に向かう
にしたがってMnに対する元素Xの原子%の比率が増加
する領域と、前記中間領域から前記磁気抵抗層20と反
対側に向かうにしたがってMnに対する元素Xあるいは
元素X+X′の原子%の比率が増加する領域とが存在す
る。
【0315】前記第1ないし第3の反強磁性層23,2
4,25の組成及び膜厚等に関しては図4に説明したも
のと同様であり、熱処理後におけるエクスチェンジバイ
アス層21の組成及び膜厚等に関しては図5に示す反強
磁性層4と同様である。
【0316】またこの実施例においてもシードレイヤ2
2を使用することができる。前記シードレイヤ22は特
に図15の場合に使用することの方が効果がある。すな
わちエクスチェンジバイアス層21,21が磁気抵抗層
20の下側に形成される場合に、前記シードレイヤ22
を前記エクスチェンジバイアス層21の下側に形成す
る。なお図14の場合にもシードレイヤ22を用いても
良い。この場合は、前記エクスチャンジバイアス層21
上にシードレイヤ22を形成する。前記シードレイヤ2
2の形成により、抵抗変化率を向上させることができ
る。前記シードレイヤ22の結晶構造、材質及びエクス
チェンジバイアス層21の材質、組成、膜厚等に関して
は図4、5と同様である。
【0317】上記した図14及び図15に示すAMR素
子では、前記エクスチェンジバイアス層21,21と磁
気抵抗層20との界面で発生する交換結合磁界により、
図14、15に示す磁気抵抗層20のE領域が、図示X
方向に単磁区化される。そしてこれに誘発されて前記磁
気抵抗層20のD領域の磁化が図示X方向に揃えられ
る。また、検出電流が磁気抵抗層20を流れる際に発生
する電流磁界が、軟磁性層18にY方向に印加され、軟
磁性層18がもたらす静磁結合エネルギーにより、磁気
抵抗層20のD領域に横バイアス磁界がY方向に与えら
れる。X方向に単磁区化された磁気抵抗層20のD領域
にこの横バイアス層が与えられることにより、磁気抵抗
層20のD領域の磁界変化に対する抵抗変化(磁気抵抗
効果特性:H―R効果特性)が直線性を有する状態に設
定される。
【0318】記録媒体の移動方向はZ方向であり、図示
Y方向に漏れ磁界が与えられると、磁気抵抗層20のD
領域の抵抗値が変化し、これが電圧変化として検出され
る。
【0319】図16は、図1から図11に示す磁気抵抗
効果素子が形成された読み取りヘッドの構造を記録媒体
との対向面側から見た断面図である。
【0320】符号40は、例えばNiFe合金などで形
成された下部シールド層であり、この下部シールド層4
0の上に下部ギャップ層41が形成されている。また下
部ギャップ層41の上には、図1ないし図15に示す磁
気抵抗効果素子42が形成されており、さらに前記磁気
抵抗効果素子42の上には、上部ギャップ層43が形成
され、前記上部ギャップ層43の上には、NiFe合金
などで形成された上部シールド層44が形成されてい
る。
【0321】前記下部ギャップ層41及び上部ギャップ
層43は、例えばSiO2やAl2 3(アルミナ)など
の絶縁材料によって形成されている。図16に示すよう
に、下部ギャップ層41から上部ギャップ層43までの
長さがギャップ長Glであり、このギャップ長Glが小
さいほど高記録密度化に対応できるものとなっている。
【0322】本発明では上記したように反強磁性層4の
膜厚を小さくしてもなお大きな交換結合磁界を発生させ
ることができる。よって磁気抵抗効果素子の膜厚を従来
に比べて小さくすることができ、狭ギャップ化により高
記録密度化に対応可能な薄膜磁気ヘッドを製造すること
が可能になっている。
【0323】
【実施例】本発明では、まず下記に示す膜構成から成る
積層膜を成膜し、成膜段階(熱処理前)において図2と
同様に反強磁性層4を異なる組成比からなる2層(第1
の反強磁性層14と第2の反強磁性層15)で形成した
場合(実施例)と、図20に示すように前記反強磁性層
30を1層で形成した場合(比較例)のサンプルを用意
し、各サンプルに同じ諸条件の熱処理を与えたときの、
交換結合磁界(Hex)と抵抗変化率(ΔMR)とを測
定した。なお熱処理は、200℃以上で2時間以上の条
件で行った。 (実施例1)膜構成としては、下から、下地層6:Ta
(50)/フリー磁性層1:[Ni80Fe20(45)/
Co(5)]/非磁性中間層2:Cu(25)/固定磁
性層3:[Co(20)/Ru(8)/Co(15)]/
第1の反強磁性層14:Pt58Mn42(10)/第2の
反強磁性層:Pt50Mn50(110)/保護層7:Ta
(30) (比較例1)下地層6:Ta(50)/フリー磁性層
1:[Ni80Fe20(45)/Co(5)]/非磁性中間
層2:Cu(25)/固定磁性層3:[Co(20)/
Ru(8)/Co(15)]/反強磁性層30:Pt58
Mn42(120)/保護層7:Ta(30) (比較例2)下地層6:Ta(50)/フリー磁性層
1:[Ni80Fe20(45)/Co(5)]/非磁性中間
層2:Cu(25)/固定磁性層3:[Co(20)/
Ru(8)/Co(15)]/反強磁性層30:Pt46
Mn54(120)/保護層7:Ta(30) (比較例3)下地層6:Ta(50)/フリー磁性層
1:[Ni80Fe20(45)/Co(5)]/非磁性中間
層2:Cu(25)/固定磁性層3:[Co(20)/
Ru(8)/Co(15)]/反強磁性層30:Pt50
Mn50(120)/保護層7:Ta(30) (比較例4)下地層6:Ta(50)/フリー磁性層
1:[Ni80Fe20(45)/Co(5)]/非磁性中間
層2:Cu(25)/固定磁性層3:[Co(20)/
Ru(8)/Co(15)]/反強磁性層30:Pt52
Mn48(120)/保護層7:Ta(30)なお上記括
弧中の数値は膜厚を表わしており、単位はオングストロ
ームである。またNiFe合金及びPtMn合金の下付
きの数値は組成比を示し、at%である。
【0324】上記のように各サンプルは、反強磁性層以
外の層は同じ層構成で形成されている。また反強磁性層
の膜厚は、全て同じ120Åとした(実施例1の場合は
第1の反強磁性層14と第2の反強磁性層15を総合し
た膜厚)。
【0325】
【表1】
【0326】表1は各サンプルに熱処理を施した後の実
験結果が示されている。[強磁性層との界面]欄に示すよ
うに、実施例1及び比較例1では、固定磁性層3との界
面での界面状態は、非常に強い非整合となっているが、
一方、比較例2、3では、整合状態になりやすくなって
いる。また比較例4では、非整合状態がそれほど強くな
い。
【0327】界面構造を非整合状態にするには、PtM
n合金に占めるPt量を増やす必要性があるが、実施例
1及び比較例1では、固定磁性層との界面に接する反強
磁性層のPt量は58(at%)であるのに対し、比較
例2、3、4では、それよりも少ないPt量であるため
上記のような結果が出たのである。
【0328】次に[交換結合磁界(Hex)]欄を見てみ
ると、実施例1では17.4×10 4(A/m)と非常
に大きい交換結合磁界を生じたのに対し、比較例1、2
では極端に前記交換結合磁界が小さくなる。比較例3、
4は、比較例1、2よりは大きい交換結合磁界を生じる
が、実施例1には満たない。
【0329】大きい交換結合磁界を生じさせるには、ま
ず反強磁性層が、熱処理を施したときに不規則格子から
規則格子に変態しやすい理想的な組成比に近いPtMn
合金で形成されている必要がある。理想的な組成比とは
Pt50Mn50である。
【0330】ただし変態しやすい理想的な組成比で形成
するだけでは足らず、固定磁性層との界面が非整合状態
とされていることも重要である。整合されていると、熱
処理の際に反強磁性層の変態が固定磁性層の結晶構造に
拘束されてしまい適切な変態ができないからである。
【0331】上記の2つの条件を満たしているのは、実
施例1だけである。すなわち成膜段階(熱処理前)にお
いて第1の反強磁性層と固定磁性層との界面は非整合状
態に保たれ、第2の反強磁性層は理想的な組成で形成さ
れているからである。一方比較例1では、固定磁性層と
の界面が非整合状態に保たれているものの、Pt量が多
すぎて理想的な組成から離れ、熱処理を施しても反強磁
性の性質になりにくい。また比較例2では、固定磁性層
の界面が整合状態で、且つPt量が少なすぎて理想的な
組成から離れ、熱処理を施しても反強磁性層の性質にな
りにくい。比較例3では、理想的な組成で形成されてい
るものの、固定磁性層との界面が整合し、熱処理を施し
ても適切に不規則格子から規則格子への変態が起こり難
くなっている。比較例4は、理想的な組成に近く、また
固定磁性層との界面も比較的に非整合状態になりやすく
なっているため、比較例の中では最も大きな交換結合磁
界が発生するものの、実施例1に比べると、Pt量が多
く、また非整合状態が弱いために交換結合磁界が実施例
1に比べて小さくなっている。
【0332】本発明では、成膜段階において、固定磁性
層との界面側には、非整合状態となりやすい組成で形成
された第1の反強磁性層14を形成し、前記固定磁性層
に第1の反強磁性層14を介して理想的な組成で形成さ
れた第2の反強磁性層15を形成しているために、熱処
理を施しても、非整合状態を保ちながら適切に不規則格
子から規則格子への変態を起し、比較例に比べて大きな
交換結合磁界を得ることに成功したのである。また[抵
抗変化率]欄を見ても実施例1が比較例に比べて大きく
なることがわかる。
【0333】次に本発明では、反強磁性層のトータル膜
厚と交換結合磁界(Hex)との関係について調べた
(図17)。実験に用意した成膜段階(熱処理前)にお
けるサンプルは以下の2つであり、実施例2の膜構成は
図2と同じであり、比較例5の膜構成は図20と同じで
ある。 (実施例2)膜構成としては、下から、下地層6:Ta
(50)/フリー磁性層1:[Ni80Fe20(45)/
Co(5)]/非磁性中間層2:Cu(25)/固定磁
性層3:[Co(20)/Ru(8)/Co(15)]/
第1の反強磁性層14:Pt58Mn42(10)/第2の
反強磁性層:Pt50Mn50(X−10)/保護層7:T
a(30) (比較例5)下地層6:Ta(50)/フリー磁性層
1:[Ni80Fe20(45)/Co(5)]/非磁性中間
層2:Cu(25)/固定磁性層3:[Co(20)/
Ru(8)/Co(15)]/反強磁性層30:Pt52
Mn48(X)/保護層7:Ta(30)なお上記括弧中
の数値は膜厚を表わしており、単位はオングストローム
である。またNiFe合金及びPtMn合金の下付きの
数値は組成比を示し、at%である。
【0334】実施例2では、上記の膜構成に示すよう
に、第1の反強磁性層14の膜厚を10Åで固定し、第
2の反強磁性層15の膜厚を増減させている。
【0335】上記の各サンプルに熱処理を施した後、交
換結合磁界(Hex)の大きさを測定した。図17に示
すように、PtMn合金のトータル膜厚が大きくなれば
なるほど、実施例1及び比較例5ともに交換結合磁界は
大きくなることがわかる。
【0336】実施例の場合、PtMn合金のトータル膜
厚を厚くしていくと、換言すれば、第2の反強磁性層1
5の膜厚を大きくしていくと、比較例5に比べ急激に交
換結合磁界は大きくなり、トータル膜厚が80Å以上に
なると、7.9×104(A/m)以上の交換結合磁界
を得ることができるとわかる。
【0337】一方、比較例5の場合、反強磁性層30の
膜厚が120Å程度以上になると、7.9×104(A
/m)以上の交換結合磁界を生じるが、実施例2と同じ
交換結合磁界を得るには、前記反強磁性層30の膜厚を
実施例2に比べて大きくしなければならないことがわか
る。
【0338】ところでこの実験から、実施例2のよう
に、成膜段階において反強磁性層4を第1の反強磁性層
14と第2の反強磁性層15の2層で構成した場合、熱
処理を施したときに不規則格子から規則格子に変態しや
すい理想的な組成に近い反強磁性材料で形成された第2
の反強磁性層15を、所定膜厚以上で形成しなければな
らないことがわかる。
【0339】本発明では図17に示す実験結果から、反
強磁性層のトータル膜厚を80Å以上にすれば7.9×
104(A/m)以上の交換結合磁界を得られることが
わかり、このとき第1の反強磁性層14の膜厚が10Å
であることから、第2の反強磁性層15の膜厚を70Å
以上に規定した。
【0340】次に本発明では、反強磁性層を成膜段階
(熱処理前)において、第1の反強磁性層14と第2の
反強磁性層15の2層で構成した場合における第1の反
強磁性層の膜厚と、交換結合磁界(Hex)との関係に
ついて調べた(図18)。実験に用意したサンプルの膜
構成は、図2と同じである。 (実施例3)膜構成としては、下から、下地層6:Ta
(50)/フリー磁性層1:[Ni80Fe20(45)/
Co(5)]/非磁性中間層2:Cu(25)/固定磁
性層3:[Co(20)/Ru(8)/Co(15)]/
第1の反強磁性層14:Pt58Mn42(X)/第2の反
強磁性層:Pt50Mn50(120−X)/保護層7:T
a(30)なお上記括弧中の数値は膜厚を表わしてお
り、単位はオングストロームである。またNiFe合金
及びPtMn合金の下付きの数値は組成比を示し、at
%である。
【0341】第1の反強磁性層14の膜厚が異なる複数
のサンプルを用意し、各サンプルに熱処理を施して交換
結合磁界(Hex)の大きさを測定した。図18に示す
ように、前記第1の反強磁性層14の膜厚Xが、3Åか
ら30Åの範囲内であると、交換結合磁界は7.9×1
4(A/m)以上になることがわかる。
【0342】前記第1の反強磁性層14は、固定磁性層
3との界面で非整合状態を保つためにPt量が多くされ
ており、実施例では58(at%)である。この組成は
非整合状態を保つには良好な組成といえるが、一方、熱
処理により不規則格子から規則格子に変態しづらく、反
強磁性は帯び難くなっている。このため、前記第1の反
強磁性層14の膜厚が厚くなりすぎると、変態し難い領
域が多くなると考えられ、図18に示す実験結果からも
明らかなように著しい交換結合磁界の減少を招く。
【0343】これに対し、前記第1の反強磁性層14を
3Å以上30Å以下に設定すると、交換結合磁界を大き
くできるのは、熱処理によって第1の反強磁性層14
と、元々変態を起し易い第2の反強磁性層15との間で
組成拡散が発生し、この組成拡散は上記の膜厚範囲内で
あれば第1の反強磁性層14のほぼ全域にわたって起こ
るものと考えられる。そしてこの組成拡散により、第1
の反強磁性層14の領域では成膜段階よりもPt量が減
少し、規則変態が生じ易くなり、大きな交換結合磁界が
発生するものと考えられる。
【0344】このように本発明において大きな交換結合
磁界を生じさせるには、図17で説明したように、熱処
理によって不規則格子から規則格子に変態しやすい理想
的な組成に近い反強磁性材料で形成された第2の反強磁
性層15を70Å以上で形成し、図18で説明したよう
に、成膜段階において固定磁性層との界面で非整合状態
を維持するためにPt量が多くされた第1の反強磁性層
14を3Å以上30Å以下で形成する必要がある。
【0345】この結果、第1の反強磁性層14の膜厚を
3Åとし、第2の反強磁性層15の膜厚を70Åとすれ
ば、交換結合磁界は7.9×104(A/m)以上にな
り、この際の反強磁性層4のトータル膜厚は73Åであ
る。本発明では、この実験結果により、熱処理後におけ
る反強磁性層4の膜厚を73Å以上と設定した。
【0346】このように本発明では、反強磁性層4の膜
厚を73Å以上にすればよいので、従来に比べて反強磁
性層の膜厚を小さくすることが可能になり、狭ギャップ
化を図ることができる。
【0347】次に本発明では、反強磁性層を成膜段階
(熱処理前)において、第1の反強磁性層14と第2の
反強磁性層15の2層で構成した場合における第1の反
強磁性層の組成比と、交換結合磁界(Hex)との関係
について調べた(図19)。実験に用意したサンプルの
膜構成は、図2と同じである。 (実施例4)膜構成としては、下から、下地層6:Ta
(50)/フリー磁性層1:[Ni80Fe20(45)/
Co(5)]/非磁性中間層2:Cu(25)/固定磁
性層3:[Co(20)/Ru(8)/Co(15)]/
第1の反強磁性層14:Pt(X)Mn(100-X)(10)/
第2の反強磁性層:Pt50Mn50(120−X)/保護
層7:Ta(30)なお上記括弧中の数値は膜厚を表わ
しており、単位はオングストロームである。またNiF
e合金及びPtMn合金の下付きの数値は組成比を示
し、at%である。
【0348】第1の反強磁性層14の組成比が異なる複
数のサンプルを用意し、各サンプルのに熱処理を施して
交換結合磁界(Hex)の大きさを測定した。なお熱処
理は、200℃以上で2時間以上の条件で行った。図1
9に示すように、前記第1の反強磁性層14のPt量が
53at%以上65at%以下の範囲内であると、交換
結合磁界は7.9×104(A/m)以上になることが
わかる。
【0349】前記第1の反強磁性層14のPt量が53
at%〜65at%の範囲内で、大きな交換結合磁界を
生じ得る理由は、上記範囲内であると第1の反強磁性層
14と固定磁性層3との界面を適切に非整合状態にする
ことができるからである。
【0350】ただし前記Pt量が65at%以上を越え
ると、交換結合磁界が小さくなることがわかる。これ
は、これほど多くのPtが含有されていると、熱処理に
よって第1の反強磁性層14と第2の反強磁性層15と
の間で組成拡散が起こっても、前記組成拡散により第1
の反強磁性層14の領域でのPt量は変態を適切に起せ
るほど低下せず、よって交換結合磁界が低下するものと
考えられる。
【0351】またPt量を55(at%)以上60(a
t%)以下にすれば、より大きな交換結合磁界を得られ
ることがわかり、具体的には11.85×104(A/
m)以上の交換結合磁界を得ることができる。またPt
量を53at%よりも小さくすると、反強磁性層4の格
子定数が固定磁性層3の格子定数に近づくために、界面
を非整合状態にしにくく、交換結合磁界が小さくなって
しまう。
【0352】次に本発明では、成膜段階(熱処理前)に
おいて別の方法で反強磁性層4を形成したサンプルを用
意し(実施例5)、前記サンプルを熱処理した際に発生
する交換結合磁界(Hex)を測定した。
【0353】前記反強磁性層4以外の各層の材質及び膜
厚は、上記した実施例1ないし3と同じである。この実
験では、前記反強磁性層4を固定磁性層3上に成膜する
際に、PtMn合金で形成されたターゲットを用意し、
スパッタガス圧を低い状態から高い状態に徐々に変化さ
せて前記反強磁性層4を成膜した。前記反強磁性層4の
膜厚方向への組成比を測定してみると、固定磁性層3と
の界面近傍ではPt58Mn42となっており、前記界面か
ら離れるにしたがって徐々にPt量は減少し、前記界面
と反対側の面近傍ではPt48Mn52となっていた。
【0354】比較例5として、反強磁性層30全体の組
成がPt52Mn48からなる積層膜を形成した。なお前記
反強磁性層30以外の各層の材質及び膜厚等は上記した
比較例1ないし4と同じである。
【0355】上記の実施例5と比較例5の各サンプルを
成膜した後、熱処理を施して交換結合磁界を測定した。
その実験結果を表2に示す。なお熱処理は、200℃以
上で2時間以上の条件で行った。
【0356】
【表2】
【0357】表2の[強磁性層との界面]欄に示すよう
に、実施例5の場合は、反強磁性層4と固定磁性層3と
の界面構造は非整合状態が強くなっており、比較例5の
場合も、前記界面構造は非整合状態になりやすいものの
実施例5の場合に比べると弱くなっている。
【0358】また抵抗変化率(ΔMR)には、実施例5
と比較例5にはそれほど大きな差はない。
【0359】実施例5と比較例5の大きな相違点は、実
施例5における交換結合磁界(Hex)は比較例5の交
換結合磁界の約2倍になっている点である。
【0360】このように実施例5において大きな交換結
合磁界を発揮し得るのは、まず固定磁性層との界面近傍
では前記反強磁性層4の組成比はPt58Mn42とPt量
が多くなっており、前記界面において適切に非整合状態
が保たれていること、及び膜厚方向に対し組成変調させ
ることによって、熱処理により不規則格子から規則格子
に変態する理想的な組成に近い領域が膜の大部分を占め
るために、適切な前記変態が行なわれることが理由であ
ると考えられる。
【0361】次に本発明では、いわゆるデュアルスピン
バルブ型磁気抵抗効果素子における反強磁性層4を成膜
段階において第1の反強磁性層14と第2の反強磁性層
15の積層構造とした場合(実施例6)と、前記反強磁
性層を単層で形成した場合(比較例6)での交換結合磁
界(Hex)を測定した。 (実施例6)膜構成としては、下から、第2の反強磁性
層15:Pt50Mn50(83)/第1の反強磁性層1
4:Pt58Mn42(7)/固定磁性層3:[Co(1
5)/Ru(8)/Co(20)]/非磁性中間層2:
Cu(22)/フリー磁性層1:Co(20)/非磁性
中間層2:Cu(22)/固定磁性層3:[Co(2
0)/Ru(8)/Co(15)]/第1の反強磁性層
14:Pt58Mn42(7)/第2の反強磁性層:Pt50
Mn50(83)/保護層7:Ta(10) (比較例6)膜構成としては、下から、反強磁性層3
0:Pt50Mn50(90)/固定磁性層3:[Co(1
5)/Ru(8)/Co(20)]/非磁性中間層2:
Cu(22)/フリー磁性層1:Co(20)/非磁性
中間層2:Cu(22)/固定磁性層3:[Co(2
0)/Ru(8)/Co(15)]/反強磁性層30:
Pt50Mn50(90)/保護層7:Ta(10)なお上
記括弧中の数値は膜厚を表わしており、単位はオングス
トロームである。またNiFe合金及びPtMn合金の
下付きの数値は組成比を示し、at%である。
【0362】上記の実施例6と比較例6の各サンプルを
成膜した後、熱処理を施して交換結合磁界を測定した。
その実験結果を表3に示す。なお熱処理は、200℃以
上で2時間以上の条件で行った。
【0363】
【表3】
【0364】表3の[強磁性層との界面]欄に示すよう
に、実施例6の場合は、反強磁性層4と固定磁性層3と
の界面構造は非整合状態が強くなっており、比較例6の
場合も、前記界面構造は非整合状態になりやすいものの
実施例6の場合に比べると弱くなっている。
【0365】また抵抗変化率(ΔMR)には、実施例6
と比較例6にはそれほど大きな差はない。
【0366】実施例6と比較例6の大きな相違点は、実
施例6における交換結合磁界(Hex)は比較例6に比
べて非常に大きくなっている点である。
【0367】このように実施例6において大きな交換結
合磁界を発揮し得るのは、まず固定磁性層との界面が第
1の反強磁性層14の形成により非整合状態にされてい
ること、及び前記固定磁性層3に第1の反強磁性層14
を介して熱処理により不規則格子から規則格子に変態し
やすい理想的な組成の第2の反強磁性層15が形成され
ており、よって熱処理によって非整合状態を保ちながら
適切な前記変態が行なわれることが理由であると考えら
れる。
【0368】次に本発明では、図4で説明したシードレ
イヤ22を用いた積層膜を4種類形成し、そのうち前記
シードレイヤ22との界面を非整合状態にしたサンプル
(実施例7,8)を2種類用意し、残りの2種類のサン
プル(比較例7,8)を、前記シードレイヤ22との界
面を整合状態にして、各サンプルに熱処理を施した際に
発生する交換結合磁界(Hex)及び抵抗変化率(ΔM
R)等を測定した。実施例7,8における膜構成は図4
と同じであり、比較例7,8における膜構成は、図21
と同じである。 (実施例7)膜構成としては、下から、下地層6:Ta
(50)/シードレイヤ22:Ni80Fe20(30)/
反強磁性層4[第3の反強磁性層25:Pt58Mn
42(10)/第2の反強磁性層24:Pt50Mn50(1
00)/第1の反強磁性層23:Pt58Mn42(1
0)]/固定磁性層3[Co(15)/Ru(8)/Co
(20)]/非磁性中間層2:Cu(22)/フリー磁
性層1[Co(5)/Ni80Fe20(45)]/保護層
7:Ta(30) (実施例8)膜構成としては、下から、下地層6:Ta
(50)/シードレイヤ22:Ni60Fe10Cr30(3
0)/反強磁性層4[第3の反強磁性層25:Pt58
42(10)/第2の反強磁性層24:Pt50Mn
50(100)/第1の反強磁性層23:Pt58Mn
42(10)]/固定磁性層3[Co(15)/Ru(8)
/Co(20)]/非磁性中間層2:Cu(22)/フ
リー磁性層1[Co(5)/Ni80Fe20(45)]/保
護層7:Ta(30) (比較例7)膜構成としては、下から、下地層6:Ta
(50)/シードレイヤ22:Ni80Fe20(30)/
反強磁性層31:Pt50Mn50(120)/固定磁性層
3[Co(15)/Ru(8)/Co(20)]/非磁性
中間層2:Cu(22)/フリー磁性層1[Co(5)
/Ni80Fe20(45)]/保護層7:Ta(30) (比較例8)膜構成としては、下から、下地層6:Ta
(50)/シードレイヤ22:Ni60Fe10Cr30(3
0)/反強磁性層31:Pt50Mn50(120)/固定
磁性層3[Co(15)/Ru(8)/Co(20)]/
非磁性中間層2:Cu(22)/フリー磁性層1[Co
(5)/Ni80Fe20(45)]/保護層7:Ta(3
0)なお上記括弧中の数値は膜厚を表わしており、単位
はオングストロームである。またNiFe合金及びPt
Mn合金の下付きの数値は組成比を示し、at%であ
る。
【0369】上記膜構成で形成された各サンプルを形成
した後、熱処理を施して交換結合磁界(Hex)及び抵
抗変化率(ΔMR)等を測定した。その実験結果を表4
に示す。なお熱処理は、200℃以上で2時間以上の条
件で行った。
【0370】
【表4】
【0371】表4に示すように、まず[シード層の役割]
欄では、実施例7,8及び比較例7,8全て同じであ
り、本発明におけるシードレイヤ22は、主として面心
立方構造から成り、しかも界面と平行な方向に(11
1)面が優先配向されている。このため前記シードレイ
ヤ22上に形成される反強磁性層からフリー磁性層1ま
での各層もまた界面方向に(111)面が優先配向し、
結晶粒径も大きくなる。このため表4に示すように、各
サンプルにおいて大きな抵抗変化率を得ることが可能に
なっている。
【0372】なお実施例7に比べて実施例8の方が抵抗
変化率が大きく、また比較例7に比べて比較例8の方が
抵抗変化率が大きくなるのは、実施例7及び比較例7で
は、シードレイヤ22がNi80Fe20からなる合金で形
成されるために前記シードレイヤ22の比抵抗は低く、
一方、実施例8及び比較例8では、前記シードレイヤ2
2がNi60Fe10Cr30で形成され非磁性でCrを添加
した組成であるために、前記シードレイヤ22の比抵抗
は高くなっているからである。
【0373】実施例7及び比較例7では比抵抗が低いこ
とによりセンス電流が前記シードレイヤ22にも分流す
るのに対し、実施例8及び比較例8ではそのようなこと
がなく、よって実施例8及び比較例8の方が、実施例7
及び比較例7に比べて抵抗変化率が高くなる。
【0374】次に交換結合磁界について説明すると、実
施例7,8の方が比較例7,8に比べて非常に高くなっ
ていることがわかる。これは実施例7,8では、シード
レイヤ22との界面及び固定磁性層3との界面構造が、
第3の反強磁性層25及び第1の反強磁性層23の存在
により非整合状態にされているからである。一方、比較
例7,8では、反強磁性層31が、熱処理によって不規
則格子から規則格子に変態しやすい理想的な組成で形成
されているものの前記シードレイヤ22及び固定磁性層
3の界面が整合されているために、熱処理によって前記
変態が起こり難くなり、交換結合磁界が小さくなってし
まう。
【0375】この実験結果により、抵抗変化率及び交換
結合磁界の双方を満足するには次のことが言える。すな
わちシードレイヤ22を、反強磁性層の固定磁性層3と
の界面と反対側の面に形成し、しかも前記シードレイヤ
22を非磁性で比抵抗の大きい材料で形成することで、
抵抗変化率を高めることができる。また反強磁性層4を
成膜段階において3層膜で形成し、前記3層膜のうち、
固定磁性層3に接する第1の反強磁性層23及びシード
レイヤ22に接する第3の反強磁性層25のPt量を多
くして、前記固定磁性層3及びシードレイヤ22との界
面で非整合状態を保ち、また前記第1及び第3の反強磁
性層23,25間に形成される第2の反強磁性層24
を、熱処理によって不規則格子から規則格子に変態しや
すい理想的な組成で形成するのである。これによって交
換結合磁界(Hex)を向上させることが可能である。
【0376】なお前記第1及び第3の反強磁性層23,
25の膜厚及び組成比の範囲は、上記した図18及び図
19の実験結果と同様に、3Å以上30Å以下であり、
Pt量が53at%以上65at%以下であることが好
ましい。また前記第2の反強磁性層24の膜厚は、図1
7の実験結果と同様に70Å以上であることが好まし
い。
【0377】
【発明の効果】以上詳述したように本発明における交換
結合膜では、反強磁性層は、元素XとMnとを含有する
反強磁性材料、あるいは元素Xと元素X′とMnとを含
有する反強磁性材料で形成され、膜厚方向の中間領域か
ら強磁性層側に向うにしたがってMnに対する元素Xあ
るいは元素X+X′の原子%の比率が増加する領域と、
前記中間領域から前記強磁性層と反対側に向かうにした
がってMnに対する元素Xあるいは元素X+X′の原子
%の比率が増加する領域とが存在し、前記反強磁性層の
少なくとも一部の結晶構造がCuAu−I型の面心正方
規則格子であることを特徴とするものである。
【0378】前記反強磁性層に上記した組成変調を起す
領域の存在、規則格子の存在があると、前記交換結合膜
の交換結合磁界を従来に比べて大きくすることができ
る。
【0379】また本発明では、反強磁性層と強磁性層の
界面の少なくとも一部は非整合状態であることが好まし
い。これによってより適切に反強磁性層の規則変態を促
し、大きな交換結合磁界を得ることが可能になる。
【0380】また本発明では、反強磁性層の強磁性層と
反対側の面にシードレイヤを設けることが好ましい。こ
のとき前記シードレイヤを非磁性で比抵抗の大きい材料
で形成し、しかもより好ましくは前記シードレイヤと反
強磁性層との界面の少なくとも一部を非整合状態にする
ことで、大きな抵抗変化率及び交換結合磁界を得ること
が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態のシングルスピンバルブ
型磁気抵抗効果素子の構造をABS面側から見た断面
図、
【図2】本発明における積層膜の成膜段階(熱処理前)
の構造を示す模式図、
【図3】図2に示す積層膜に熱処理を施した後の前記積
層膜の構造を示す模式図、
【図4】シードレイヤを用いた本発明における積層膜の
成膜段階(熱処理前)の構造を示す模式図、
【図5】図4に示す積層膜に熱処理を施した後の前記積
層膜の構造を示す模式図、
【図6】本発明の第2実施形態のシングルスピンバルブ
型磁気抵抗効果素子の構造をABS面側から見た断面
図、
【図7】本発明の第3実施形態のシングルスピンバルブ
型磁気抵抗効果素子の構造をABS面側から見た断面
図、
【図8】本発明の第4実施形態のシングルスピンバルブ
型磁気抵抗効果素子の構造をABS面側から見た断面
図、
【図9】本発明の第5実施形態のデュアルスピンバルブ
型磁気抵抗効果素子の構造をABS面側から見た断面
図、
【図10】デュアルスピンバルブ型の積層膜の成膜段階
の構造を示す模式図、
【図11】図10に示す積層膜に熱処理を施した後の前
記積層膜の構造を示す模式図、
【図12】シードレイヤを用いたデュアルスピンバルブ
型の積層膜の成膜段階の構造を示す模式図、
【図13】図12に示す積層膜に熱処理を施した後の前
記積層膜の構造を示す模式図、
【図14】本発明の第6実施形態のAMR型磁気抵抗効
果素子の構造をABS面側から見た断面図、
【図15】本発明の第7実施形態のAMR型磁気抵抗効
果素子の構造をABS面側から見た断面図、
【図16】本発明における薄膜磁気ヘッド(再生ヘッ
ド)の構造示す部分断面図、
【図17】反強磁性層を第1の反強磁性層と第2の反強
磁性層で形成した場合の、前記反強磁性層のトータル膜
厚と、交換結合磁界(Hex)との関係を示すグラフ、
【図18】反強磁性層を第1の反強磁性層と第2の反強
磁性層で形成した場合の、前記第1の反強磁性層の膜厚
と、交換結合磁界(Hex)との関係を示すグラフ、
【図19】反強磁性層を第1の反強磁性層と第2の反強
磁性層で形成し、前記第1の反強磁性層をPtxMn
100-xで形成した場合のPt量(X)と交換結合磁界
(Hex)との関係を示すグラフ、
【図20】実験用の従来のシングルスピンバルブ型磁気
抵抗効果素子の構造を示す模式図、
【図21】実験用の従来のシングルスピンバルブ型磁気
抵抗効果素子にシードレイヤを用いた構造を示す模式
図、
【符号の説明】
1 フリー磁性層 2 非磁性中間層 3 固定磁性層 4 反強磁性層 5 ハードバイアス層 6 下地層 7 保護層 8 導電層 14、23 第1の反強磁性層 15、24 第2の反強磁性層 16、21 エクスチェンジバイアス層 17、26 絶縁層 18 軟磁性層(SAL層) 19 非磁性層(SHUNT層) 20 磁気抵抗層(MR層) 22 シードレイヤ 25 第3の反強磁性層 42 磁気抵抗効果素子
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 井出 洋介 東京都大田区雪谷大塚町1番7号 アルプ ス電気株式会社内 (72)発明者 田中 健一 東京都大田区雪谷大塚町1番7号 アルプ ス電気株式会社内 Fターム(参考) 5D034 BA04 BA05 BA21 CA08 DA07 5E049 AA04 AA07 AA09 AC00 AC05 BA12 CB02 DB12 DB14

Claims (26)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 反強磁性層と強磁性層との界面に交換結
    合磁界が生じる交換結合膜において、 前記反強磁性層は、元素X(ただしXは、Pt,Pd,
    Ir,Rh,Ru,Osのうち1種または2種以上の元
    素である)とMnとを含有する反強磁性材料で形成さ
    れ、膜厚方向の中間領域から強磁性層側に向うにしたが
    ってMnに対する元素Xの原子%の比率が増加する領域
    と、前記中間領域から前記強磁性層と反対側に向かうに
    したがってMnに対する元素Xの原子%の比率が増加す
    る領域とが存在し、 前記反強磁性層の少なくとも一部の結晶構造がCuAu
    −I型の面心正方規則格子であることを特徴とする交換
    結合膜。
  2. 【請求項2】 反強磁性層と強磁性層との界面に交換結
    合磁界が生じる交換結合膜において、 前記反強磁性層は、元素Xと元素X′(ただしXは、P
    t,Pd,Ir,Rh,Ru,Osのうち1種または2
    種以上の元素であり、元素X′は、Ne,Ar,Kr,
    Xe,Be,B,C,N,Mg,Al,Si,P,T
    i,V,Cr,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Ga,
    Ge,Zr,Nb,Mo,Ag,Cd,Sn,Hf,T
    a,W,Re,Au,Pb、及び希土類元素のうち1種
    または2種以上の元素である)とMnとを含有する反強
    磁性材料で形成され、膜厚方向の中間領域から強磁性層
    側に向うにしたがってMnに対する元素X+X′の原子
    %の比率が増加する領域と、前記中間領域から前記強磁
    性層と反対側に向かうにしたがってMnに対する元素X
    +X′の原子%の比率が増加する領域とが存在し、 前記反強磁性層の少なくとも一部の結晶構造がCuAu
    −I型の面心正方規則格子であることを特徴とする交換
    結合膜。
  3. 【請求項3】 前記X―Mn―X′を含む合金は、元素
    XとMnとで構成される空間格子の隙間に元素X′が侵
    入した侵入型固溶体であり、あるいは、元素XとMnと
    で構成される結晶格子の格子点の一部が、元素X′に置
    換された置換型固溶体である請求項2記載の交換結合
    膜。
  4. 【請求項4】 前記反強磁性層における強磁性層との界
    面と反対側となる面に、前記界面と平行な方向に面心立
    方晶の(111)面が優先配向したシードレイヤが形成
    され、 前記反強磁性層及び強磁性層の結晶配向は、前記界面と
    平行な方向に(111)面が優先配向している請求項1
    ないし3のいずれかに記載の交換結合膜。
  5. 【請求項5】 前記反強磁性層とシードレイヤとの界面
    の少なくとも一部で前記反強磁性層の格子定数とシード
    レイヤの格子定数とが異なっている請求項4記載の交換
    結合膜。
  6. 【請求項6】 前記シードレイヤと反強磁性層との界面
    の少なくとも一部は非整合状態である請求項4または5
    記載の交換結合膜。
  7. 【請求項7】 前記シードレイヤは、NiFe合金、あ
    るいはNi−Fe−Y合金(ただしYは、Cr,Rh,
    Ta,Hf,Nb,Zr,Tiから選ばれる1種または
    2種以上)で形成される請求項4ないし6のいずれかに
    記載の交換結合膜。
  8. 【請求項8】 前記シードレイヤは非磁性である請求項
    4ないし6のいずれかに記載の交換結合膜。
  9. 【請求項9】 前記交換結合膜は、下地層上に、シード
    レイヤ、反強磁性層、及び強磁性層の順に積層され、前
    記下地層は、Ta,Hf,Nb,Zr,Ti,Mo,W
    のうち1種または2種以上の元素で形成されている請求
    項4ないし7のいずれかに記載の交換結合膜。
  10. 【請求項10】 前記反強磁性層における前記強磁性層
    との界面の反対側の面には、Ta,Hf,Nb,Zr,
    Ti,Mo,Wのうち1種または2種以上の元素で形成
    された層が形成されている請求項1ないし3のいずれか
    に記載の交換結合膜。
  11. 【請求項11】 前記反強磁性層の膜厚方向の中央付近
    よりも前記界面と反対側の面寄りに前記界面と平行な第
    1の仮想境界を設定し、前記強磁性層寄りに前記界面と
    平行な第2の仮想境界を設定したときに、 前記反対側の面から前記第1の仮想境界までの第1の領
    域、及び前記強磁性層との界面から前記第2の仮想境界
    までの第3の領域は、前記第1及び第2の仮想境界間の
    第2の領域に比べて、前記比率が大きく、前記第1の仮
    想境界を挟む領域で前記第2の領域から第1の領域に向
    けて、また前記第2の仮想境界を挟む領域では前記第2
    の領域から第3の領域に向けて、前記比率が連続的にあ
    るいは不連続的に増大する請求項1ないし10のいずれ
    かに記載の交換結合膜。
  12. 【請求項12】 前記反強磁性層には、膜厚方向の中間
    の所定領域から前記強磁性層との界面に向けて、および
    前記中間の領域から前記界面と反対側の面に向けて、前
    記元素Xあるいは元素X+X′の原子%が増大する領域
    が存在する請求項1ないし11のいずれかに記載の交換
    結合膜。
  13. 【請求項13】 前記反強磁性層には、前記強磁性層と
    の界面に向けて、および前記界面と反対側の面に向け
    て、前記元素Xあるいは元素X+X′の原子%が減少す
    る領域がそれぞれ存在する請求項1ないし12のいずれ
    かに記載の交換結合膜。
  14. 【請求項14】 前記反強磁性層の、前記強磁性層との
    界面近傍、及び前記界面と反対側の面の近傍では、全元
    素の組成比を100at%としたときに、元素Xあるい
    は元素X+X′の組成比が50(at%)以上65(a
    t%)以下である請求項1ないし13のいずれかに記載
    の交換結合膜。
  15. 【請求項15】 前記各面の近傍では、元素Xあるいは
    元素X+X′の組成比が50(at%)以上60(at
    %)以下である請求項14記載の交換結合膜。
  16. 【請求項16】 前記反強磁性層の膜厚方向の中間に
    は、全元素の組成比を100at%としたときに、元素
    Xあるいは元素X+X′の組成比が、44(at%)以
    上57(at%)以下の領域が存在する請求項1ないし
    15のいずれかに記載の交換結合膜。
  17. 【請求項17】 前記領域での元素Xあるいは元素X+
    X′の組成比が、46(at%)以上55(at%)以
    下である請求項16記載の交換結合膜。
  18. 【請求項18】 前記反強磁性層の膜厚は76Å以上で
    ある請求項1ないし17のいずれかに記載の交換結合
    膜。
  19. 【請求項19】 前記反強磁性層と前記強磁性層との界
    面の少なくとも一部で前記反強磁性層の格子定数と強磁
    性層の格子定数とが異なっている請求項1ないし19の
    いずれかに記載の交換結合膜。
  20. 【請求項20】 前記反強磁性層と前記強磁性層との界
    面の少なくとも一部で前記反強磁性層の結晶配向と強磁
    性層の結晶配向が異なっている請求項1、2、3、10
    のいずれかに記載の交換結合膜。
  21. 【請求項21】 前記反強磁性層と前記強磁性層との界
    面の少なくとも一部が非整合状態である請求項1ないし
    20のいずれかに記載の交換結合膜。
  22. 【請求項22】 反強磁性層と、この反強磁性層と接し
    て形成され、前記反強磁性層との交換異方性磁界により
    磁化方向が固定される固定磁性層と、前記固定磁性層に
    非磁性中間層を介して形成されたフリー磁性層と、前記
    フリー磁性層の磁化方向を前記固定磁性層の磁化方向と
    交叉する方向へ揃えるバイアス層とを有する磁気抵抗効
    果素子において、 前記反強磁性層とこの反強磁性層と接して形成された固
    定磁性層とが、請求項1ないし請求項21のいずれかに
    記載された交換結合膜により形成されることを特徴とす
    る磁気抵抗効果素子。
  23. 【請求項23】 反強磁性層と、この反強磁性層と接し
    て形成され、前記反強磁性層との交換異方性磁界により
    磁化方向が固定される固定磁性層と、前記固定磁性層に
    非磁性中間層を介して形成されたフリー磁性層とを有
    し、前記フリー磁性層の上側または下側に、トラック幅
    方向に間隔を空けて反強磁性のエクスチェンジバイアス
    層が形成された磁気抵抗効果素子において、 前記エクスチェンジバイアス層とフリー磁性層とが、請
    求項1ないし請求項21のいずれかに記載された交換結
    合膜により形成されることを特徴とする磁気抵抗効果素
    子。
  24. 【請求項24】 フリー磁性層の上下に積層された非磁
    性中間層と、一方の前記非磁性中間層の上および他方の
    非磁性中間層の下に位置する固定磁性層と、一方の前記
    固定磁性層の上および他方の固定磁性層の下に位置し
    て、交換異方性磁界によりそれぞれの固定磁性層の磁化
    方向を一定の方向に固定する反強磁性層と、前記フリー
    磁性層の磁化方向を前記固定磁性層の磁化方向と交叉す
    る方向に揃えるバイアス層とを有する磁気抵抗効果素子
    において、 前記フリー磁性層よりも下側及び/または上側に形成さ
    れた前記反強磁性層とこの反強磁性層と接して形成され
    た固定磁性層とが、請求項1ないし請求項21のいずれ
    かに記載された交換結合膜により形成されることを特徴
    とする磁気抵抗効果素子。
  25. 【請求項25】 非磁性層を介して重ねられた磁気抵抗
    層と軟磁性層とを有し、前記磁気抵抗層の上側あるいは
    下側にトラック幅方向へ間隔を空けて反強磁性層が形成
    された磁気抵抗効果素子において、 前記反強磁性層と磁気抵抗層とが、請求項1ないし請求
    項21のいずれかに記載された交換結合膜により形成さ
    れることを特徴とする磁気抵抗効果素子。
  26. 【請求項26】 請求項22ないし25のいずれかに記
    載された磁気抵抗効果素子の上下にギャップ層を介して
    シールド層が形成されていることを特徴とする薄膜磁気
    ヘッド。
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