JP2001295918A - 車両用無段変速機の制御装置 - Google Patents

車両用無段変速機の制御装置

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JP2001295918A
JP2001295918A JP2000114696A JP2000114696A JP2001295918A JP 2001295918 A JP2001295918 A JP 2001295918A JP 2000114696 A JP2000114696 A JP 2000114696A JP 2000114696 A JP2000114696 A JP 2000114696A JP 2001295918 A JP2001295918 A JP 2001295918A
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air temperature
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atmospheric pressure
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 大気圧センサ或いは吸入空気温度センサの故
障時において、動力伝達部材のすべりがなくしかも動力
損失がそれほど大きくならず燃費のよい車両用無段変速
機の制御装置を提供する。 【解決手段】 吸気温度検出手段異常判定手段84によ
り吸気温度センサ68の異常が判定された場合には、異
常時挟圧力変更手段(異常時接触圧変更手段)86によ
り、伝動ベルト(動力伝達部材)48の挟圧力(接触
圧)が、吸入空気温度範囲の最低値付近に予め定められ
た温度たとえば−25℃に対応する値に変更されること
から、伝動ベルト48のすべりが好適に防止されると同
時に、吸入空気量Q、エンジン回転速度NE 、或いは大
気圧PA などのパラメータに対しては従来通りにエンジ
ン出力トルクTE が変化させられるのでベルト挟圧力が
過度に高くなることがない。したがって、動力損失が大
きくならずよい燃費が得られる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は車両用無段変速機の
制御装置に係り、特に、吸気温度センサや大気圧センサ
の異常に関連してエンジン出力が変化しても、無段変速
機内で動力伝達を行う動力伝達部材の滑りを防止する制
御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】エンジンと駆動輪との間の動力伝達経路
に、入力側回転体および出力側回転体の間に介在させら
れた動力伝達部材の摩擦を介して動力伝達を行う無段変
速機が配設された車両が知られている。この無段変速機
は、たとえば、有効径が可変の入力側可変プーリおよび
出力側可変プーリと、それらの入力側可変プーリおよび
出力側可変プーリに巻き掛けられた伝動ベルトと、それ
ら入力側可変プーリおよび出力側可変プーリのV溝幅を
変化させる入力側アクチュエータおよび出力側アクチュ
エータとを有し、伝動ベルトと可変プーリとの間の摩擦
力を介して動力伝達が行われるとともに、車両の運転状
態に応じて変速比やベルト挟圧力が制御される。
【0003】上記ベルト挟圧力は、伝動ベルトの可変プ
ーリのV溝内壁面に対する押圧力すなわち伝動ベルトと
可変プーリとの間の摩擦力に対応するもので、それ等の
間で滑りが発生するとその滑り部分の摩耗によりベルト
式無段変速機の耐久性(寿命)が低下する一方、ベルト
挟圧力が必要以上に高いと動力損失が大きくなって燃費
などが低下する。このため、伝動ベルトの滑りが生じな
い範囲内で可及的に小さくなるように、エンジンからの
入力トルクすなわち伝達トルクおよびベルト式無段変速
機の変速比などに応じて制御される。また、そのエンジ
ンからの入力トルクに対応するエンジンの出力トルク
は、大気圧やエンジンの吸入空気温度の変化に応じて変
化するので、上記エンジン出力トルクの算出に際して
は、その算出値の精度を高めるために、大気圧補正係数
や吸気温度補正係数を用いて補正されるようになってい
る。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上記大気圧
やエンジンの吸入空気温度を検出するセンサの劣化、接
続配線の断線などのようなセンサの故障(フェイル)が
発生する場合が考えられる。このような場合には、セン
サ故障による異常値がエンジン出力トルク値の補正演算
に用いられることになるので、その補正により却ってエ
ンジン出力トルクの算出値の精度が低下し、前記伝動ベ
ルトの押圧力すなわち挟圧力が過少となって滑りが発生
するとともに摩耗によって耐久性(寿命)が低下する可
能性があった。これに対し、従来技術は、たとえば特開
平8−4797号公報に記載されているように、エンジ
ン回転速度センサの故障時において所与の変速比に対し
て出力側可変プーリの挟圧力を最大圧に一義的に設定す
る技術が開示されているに過ぎず、大気圧センサや吸気
温度センサの故障が発生したときの技術は何ら開示され
ていない。また、たとえ上記のセンサ故障時において所
与の変速比に対して出力側可変プーリの挟圧力を最大圧
に一義的に設定する技術を大気圧センサや吸気温度セン
サの故障時に適用できたとしても、ベルト挟圧力が過度
に高くなって動力損失が大きくなり、燃費などが大幅に
低下する。
【0005】本発明は以上の事情を背景として為された
ものであり、その目的とするところは、大気圧センサ或
いは吸気温度センサなどの大気圧検出手段或いは吸気温
度検出手段の故障時において、動力伝達部材のすべりが
なくしかも動力損失がそれほど大きくならず燃費のよい
車両用無段変速機の制御装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための第1の手段】かかる目的を達成
するために、本第1発明の要旨とするところは、エンジ
ンから駆動輪に至る動力伝達経路に設けられ、入力側回
転体および出力側回転体の間に介在させられた動力伝達
部材のそれら入力側回転体および出力側回転体に対する
接触位置が変更されることにより変速比が無段階に変化
させられる無段変速機において、吸気温度検出手段によ
り検出された前記エンジンの吸入空気温度に関連してそ
の動力伝達部材の接触圧力を調節する形式の車両用無段
変速機の制御装置であって、(a) 前記エンジンの吸入空
気温度を検出する吸気温度検出手段が異常であるか否か
を判定する吸気温度検出手段異常判定手段と、(b) その
吸気温度検出手段異常判定手段により前記吸気温度検出
手段の異常が判定された場合には、前記動力伝達部材の
接触圧を、前記吸気温度範囲の最低値付近に予め定めら
れた温度に対応する値に変更する異常時接触圧変更手段
とを、含むことにある。
【0007】
【第1発明の効果】このようにすれば、吸気温度検出手
段異常判定手段により前記吸気温度検出手段の異常が判
定された場合には、異常時接触圧変更手段により、前記
動力伝達部材の接触圧が、前記吸気温度範囲の最低値付
近に予め定められた温度に対応する値に変更されること
から、動力伝達部材のすべりが好適に防止されると同時
に、吸入空気量、エンジン回転速度、或いは大気圧など
のパラメータに対しては従来通りにエンジン出力トルク
が変化させられるのでベルト挟圧力が過度に高くなるこ
とがない。したがって、動力損失が大きくならずよい燃
費が得られる。
【0008】
【課題を解決するための第2の手段】かかる目的を達成
するために、本第2発明の要旨とするところは、エンジ
ンから駆動輪に至る動力伝達経路に設けられ、入力側回
転体および出力側回転体の間に介在させられた動力伝達
部材のそれら入力側回転体および出力側回転体に対する
接触位置が変更されることにより変速比が無段階に変化
させられる無段変速機において、大気圧検出手段により
検出された大気圧に関連してその動力伝達部材の接触圧
力を調節する形式の車両用無段変速機の制御装置であっ
て、(a) 前記大気圧を検出する大気圧検出手段が異常で
あるか否かを判定する大気圧検出手段異常判定手段と、
(b) その大気圧検出手段異常判定手段により前記大気圧
検出手段の異常が判定された場合には、前記動力伝達部
材の接触圧を、前記大気圧範囲の最高値付近に予め定め
られた圧力に対応する値に変更する異常時接触圧変更手
段とを、含むことにある。
【0009】
【第2発明の効果】このようにすれば、大気圧検出手段
異常判定手段により前記大気圧検出手段の異常が判定さ
れた場合には、異常時接触圧変更手段により、前記動力
伝達部材の接触圧が、前記大気圧範囲の最高値付近に予
め定められた圧力に対応する値に変更されることから、
動力伝達部材のすべりが好適に防止されると同時に、吸
入空気量、エンジン回転速度、或いは吸気温度などのパ
ラメータに対しては従来通りにエンジン出力トルクが変
化させられるのでベルト挟圧力が過度に高くなることが
ない。したがって、動力損失が大きくならずよい燃費が
得られる。
【0010】
【発明の他の態様】ここで、好適には、第1発明および
第2発明において、前記無段変速機は、有効径が可変の
1対の入力側可変プーリおよび出力側可変プーリと、そ
れら入力側可変プーリおよび出力側可変プーリに巻き掛
けられて動力を伝達する伝動ベルトと、それら入力側可
変プーリおよび出力側可変プーリのV溝幅を変化させる
入力側油圧シリンダおよび出力側油圧シリンダとを備え
たベルト式無段変速機であり、前記異常時接触圧変更手
段は、前記伝動ベルトの前記V溝の内壁面に対する接触
圧を変更するために前記出力側の油圧シリンダの推力を
変化させるものである。このようにすれば、ベルト式無
段変速機の伝動ベルトのすべりが好適に防止される。
【0011】また、好適には、第1発明において、前記
エンジンの出力トルクをエンジンの吸入空気量、エンジ
ン回転速度、前記吸気温度検出手段により検出された吸
気温度、或いは前記大気圧検出手段により検出された大
気圧に基づいて算出するエンジン出力トルク算出手段が
設けられ、前記異常時接触圧変更手段は、前記吸気温度
検出手段異常判定手段により吸気温度検出手段の異常が
判定された場合には、前記吸気温度範囲の最低値付近に
予め定められた温度に基づいて前記エンジン出力トルク
算出手段にエンジンの出力トルクを算出させるものであ
る。このようにすれば、吸気温度検出手段の異常時で
も、そのエンジン出力トルク算出手段により算出された
エンジンの出力トルクが無段変速機に入力されたときに
動力伝達部材にすべりが発生しない範囲でその動力伝達
部材の接触圧を必要且つ十分な値とするように、動力伝
達部材の接触圧が制御される。
【0012】また、好適には、第1発明において、前記
エンジンの出力トルクをエンジンの吸入空気量、エンジ
ン回転速度、前記吸気温度検出手段により検出された吸
気温度、或いは前記大気圧検出手段により検出された大
気圧に基づいて算出するエンジン出力トルク算出手段が
設けられ、前記異常時接触圧変更手段は、前記吸気温度
検出手段異常判定手段により吸気温度検出手段の異常が
判定された場合には、上記エンジン出力トルク算出手段
により算出されたエンジンの出力トルクを、前記吸気温
度範囲の最低値付近に予め定められた温度に対応する値
に補正するものである。このようにすれば、エンジン出
力トルク算出手段により算出されたエンジンの出力トル
クが、前記吸気温度範囲の最低値付近に予め定められた
温度に対応する値に補正されるので、吸気温度検出手段
の異常時でも、動力伝達部材にすべりが発生しない範囲
でその動力伝達部材の接触圧を必要且つ十分な値とする
ように、動力伝達部材の接触圧が制御される。
【0013】また、好適には、第1発明において、前記
無段変速機はその動力伝達部材の接触圧力を調節する接
触圧調節アクチュエータを備えたものであり、前記異常
時接触圧変更手段は、前記吸気温度検出手段異常判定手
段により吸気温度検出手段の異常が判定された場合に
は、前記接触圧調節アクチュエータに対する制御操作量
を前記吸気温度範囲の最低値付近に予め定められた温度
に対応する値に変更するものである。このようにすれ
ば、吸気温度範囲の最低値付近に予め定められた温度に
対応する値に変更された制御操作量で接触圧調節アクチ
ュエータが駆動されるので、吸気温度検出手段の異常時
でも、動力伝達部材の接触圧がその動力伝達部材にすべ
りが発生しない範囲で必要且つ十分な値とされる。
【0014】また、好適には、第2発明において、前記
エンジンの出力トルクをエンジンの吸入空気量、エンジ
ン回転速度、前記吸気温度検出手段により検出された吸
気温度、或いは前記大気圧検出手段により検出された大
気圧に基づいて算出するエンジン出力トルク算出手段が
設けられ、前記異常時接触圧変更手段は、前記大気圧検
出手段異常判定手段により大気圧検出手段の異常が判定
された場合には、大気圧範囲の最高値付近に予め定めら
れた大気圧に基づいて前記エンジン出力トルク算出手段
にエンジンの出力トルクを算出させるものである。この
ようにすれば、大気圧検出手段の異常時でも、エンジン
出力トルク算出手段により算出されたエンジンの出力ト
ルクが無段変速機に入力されたときに動力伝達部材にす
べりが発生しない範囲でその動力伝達部材の接触圧を必
要且つ十分な値とするように、動力伝達部材の接触圧が
制御される。
【0015】また、好適には、第2発明において、前記
エンジンの出力トルクをエンジンの吸入空気量、エンジ
ン回転速度、前記吸気温度検出手段により検出された吸
気温度、或いは前記大気圧検出手段により検出された大
気圧に基づいて算出するエンジン出力トルク算出手段が
設けられ、前記異常時接触圧変更手段は、前記大気圧検
出手段異常判定手段により大気圧検出手段の異常が判定
された場合には、上記エンジン出力トルク算出手段によ
り算出されたエンジンの出力トルクを、大気圧範囲の最
高値付近に予め定められた圧力に対応する値に補正する
ものである。このようにすれば、エンジン出力トルク算
出手段により算出されたエンジンの出力トルクが、前記
大気圧範囲の最高値付近に予め定められた圧力に対応す
る値に補正されるので、大気圧検出手段の異常時でも、
動力伝達部材にすべりが発生しない範囲でその動力伝達
部材の接触圧を必要且つ十分な値とするように、動力伝
達部材の接触圧が制御される。
【0016】また、好適には、第2発明において、前記
無段変速機はその動力伝達部材の接触圧力を調節する接
触圧調節アクチュエータを備えたものであり、前記異常
時接触圧変更手段は、前記大気圧検出手段異常判定手段
により大気圧検出手段の異常が判定された場合には、前
記接触圧調節アクチュエータに対する制御操作量を大気
圧範囲の最高値付近に予め定められた温度に対応する値
に変更するものである。このようにすれば、大気圧範囲
の最高値付近に予め定められた圧力に対応する値に変更
された制御操作量で接触圧調節アクチュエータが駆動さ
れるので、大気圧検出手段の異常時でも、動力伝達部材
の接触圧がその動力伝達部材にすべりが発生しない範囲
で必要且つ十分な値とされる。
【0017】
【発明の好適な実施の形態】以下、本発明の実施例を図
面を参照しつつ詳細に説明する。
【0018】図1は、本発明の一実施例の制御装置が適
用された車両用ベルト式無段変速機18を含む動力伝達
装置10の骨子図である。この動力伝達装置10はたと
えば横置き型FF(フロントエンジン・フロントドライ
ブ)駆動車両に好適に採用されるものであり、走行用の
動力源として用いられる内燃機関としてエンジン12を
備えている。エンジン12の出力は、トルクコンバータ
14から前後進切換装置16、ベルト式無段変速機(C
VT)18、減速歯車20を介して差動歯車装置22に
伝達され、左右の駆動輪24L、24Rへ分配されるよ
うになっている。上記ベルト式無段変速機18は、エン
ジン12から左右の駆動輪24L、24Rへ至る動力伝
達経路に設けられている。
【0019】トルクコンバータ14は、エンジン12の
クランク軸に連結されたポンプ翼車14p、およびター
ビン軸34を介して前後進切換装置16に連結されたタ
ービン翼車14tと、一方向クラッチを介して非回転部
材に回転可能に支持された固定翼車14sとを備えてお
り、流体を介して動力伝達を行うようになっている。ま
た、それ等のポンプ翼車14pおよびタービン翼車14
tの間には、それ等を一体的に連結して一体回転させる
ことができるようにするためのロックアップクラッチ2
6が設けられている。
【0020】前後進切換装置16は、ダブルピニオン型
の遊星歯車装置にて構成されており、トルクコンバータ
14のタービン軸34はサンギヤ16sに連結され、無
段変速機18の入力軸36はキャリア16cに連結され
ている。そして、キャリア16cとサンギヤ16sとの
間に配設されたクラッチ38が係合させられると、前後
進切換装置16は一体回転させられてタービン軸34が
入力軸36に直結され、前進方向の駆動力が駆動輪24
R、24Lに伝達される。また、リングギヤ16rとハ
ウジングとの間に配設されたブレーキ40が係合させら
れるとともに上記クラッチ38が開放されると、入力軸
36はタービン軸34に対して逆回転させられ、後進方
向の駆動力が駆動輪24R、24Lに伝達される。
【0021】無段変速機18は、上記入力軸36に設け
られた有効径が可変の入力側可変プーリ42と、出力軸
44に設けられた有効径が可変の出力側可変プーリ46
と、それ等の可変プーリ42、46のV溝に巻き掛けら
れた伝動ベルト48とを備えており、動力伝達部材とし
て機能する伝動ベルト48と可変プーリ42、46のV
溝の内壁面との間の摩擦力を介して動力伝達が行われる
ようになっている。可変プーリ42、46はそれぞれの
V溝幅すなわち伝動ベルト48の掛かり径を変更するた
めの入力側油圧シリンダ42cおよび出力側油圧シリン
ダ46cを備えて構成されており、入力側可変プーリ4
2の油圧シリンダ42cの油圧が変速制御弁50(図3
参照)によって制御されることにより、両可変プーリ4
2、46のV溝幅が変化して伝動ベルト48の掛かり径
(有効径)が変更され、変速比γ(=入力側回転速度N
IN/出力側回転速度NOUT )が連続的に変化させられ
る。
【0022】また、出力側可変プーリ46の油圧シリン
ダ46c内の油圧PB は、可変プーリ46の伝動ベルト
48に対する挟圧力および伝動ベルト48の張力にそれ
ぞれ対応するものであって、伝動ベルト48の張力すな
わち伝動ベルト48の両可変プーリ42、46のV溝内
壁面に対する押圧力に密接に関係しているので、ベルト
張力制御圧、ベルト挟圧力制御圧、ベルト押圧力制御圧
とも称され得るものであり、伝動ベルト48が滑りを生
じないように、油圧制御回路52内の挟圧力制御弁60
により調圧されるようになっている。
【0023】図2は上記油圧制御回路52の一例を示す
図である。オイルタンク56に還流した作動油は、エン
ジン12により駆動される油圧ポンプ54により圧送さ
れ、図示しないライン圧調圧弁により調圧された後、リ
ニアソレノイド弁58および挟圧力制御弁60に元圧と
して供給される。リニアソレノイド弁58は、電子制御
装置66(図3参照)からの励磁電流が連続的に制御さ
れることにより、油圧ポンプ54から供給された作動油
の油圧から、その励磁電流に対応した大きさの制御圧P
S を発生させて挟圧力制御弁60に供給する。挟圧力制
御弁60は、制御圧PS が高くなるに従って上昇させら
れる油圧PB を発生させ、出力側可変プーリ46の油圧
シリンダ46cに供給する。その油圧PB は、その上昇
に伴ってベルト挟圧力すなわち可変プーリ42、46と
伝動ベルト48との間の摩擦力を増大させる。
【0024】リニアソレノイド弁58には、カットバッ
ク弁62のON時にそれから出力される制御圧PS が供
給される油室58aが設けられる一方、カットバック弁
62のOFF時には、その油室58aへの制御圧PS
供給が遮断されて油室58aが大気に開放されるように
なっており、カットバック弁62のON時にはOFF時
よりも制御圧PS の特性が低圧側へ切り換えられるよう
になっている。上記カットバック弁62は、前記トルク
コンバータ14のロックアップクラッチ26のON(係
合)時に、図示しない電磁弁から信号圧PONが供給され
ることによりONに切り換えられるようになっている。
【0025】図3の電子制御装置66には、エンジン1
2のインテークマニホルドなどの吸気管67に吸入され
る吸入空気の温度TA を検出する吸気温度センサ68か
らの吸気温度TA を表す信号、大気圧PA を検出する大
気圧センサ69からの大気圧PA を表す信号、アクセル
ペダル70の開度θACC を検出するアクセル操作量セン
サ71からのアクセル開度θACC を表す信号、エンジン
12の回転速度NE を検出するエンジン回転速度センサ
72からの回転速度NE を表す信号、車速V(具体的に
は出力軸44の回転速度NOUT )を検出する車速センサ
(出力側回転速度センサ)74からの車速Vを表す信
号、入力軸36の入力軸回転速度NINを検出する入力側
回転速度センサ76からの入力軸回転速度NINを表す信
号、動力伝達装置10の作動油温度TOIL を検出する油
温センサ78からの作動油温度TOI L を表す信号、出力
側可変プーリ46の油圧シリンダ46cの内圧PB すな
わち実際のベルト挟圧力制御圧PB を検出する圧力セン
サ80からのその油圧PB を表す信号がそれぞれ供給さ
れるようになっている。
【0026】上記電子制御装置66は、CPU、RO
M、RAM、入出力インターフェースなどから成る所謂
マイクロコンピュータを含んで構成されており、RAM
の一時記憶機能を利用しつつROMに予め記憶されたプ
ログラムに従って信号処理を行うことにより、上記無段
変速機18の変速制御や挟圧力制御を行うものである。
具体的には、変速制御では、たとえば図4に示す予め記
憶された関係(マップ)から実際の運転者の要求出力量
を表すアクセル操作量すなわちアクセル開度θ
AC C (%)および車速V(出力側回転速度NOUT に対
応)に基づいてマップから目標回転速度NIN T を算出
し、実際の入力側回転速度NINがその目標回転速度NIN
T と一致するように、入力側可変プーリ42の油圧シリ
ンダ42cの油圧をフィードバック制御する。上記図4
は、エンジン12をその出力および燃費が最適となる最
適曲線に沿って作動させるために予め求められた関係で
あって、そのγma x は最大変速比で、γmin は最小変速
比である。
【0027】また、上記電子制御装置66は、ベルト挟
圧力制御では、たとえば図5に示すような必要かつ十分
な必要油圧(理想的なベルト挟圧力に対応する目標油
圧)を得るために予め定められた関係(マップ)を示す
基本式すなわち数式(1) からベルト式無段変速機18の
実際の入力トルクTIN或いは伝達トルクに対応するアク
セル操作量θACC および実際の変速比γに基づいてベル
ト挟圧力制御圧(目標値)PB ' を算出し、そのベルト
挟圧力制御圧(目標値)PB ' が得られるように油圧制
御回路52内の挟圧力制御弁60に調圧させる。数式
(1) において、μは伝動ベルト48の摩擦係数、Rは入
力側可変プーリ42のベルト掛かり径、Aはプーリ面
積、αは制御誤差などを考慮した安全率で、1.0より
も大きな値である。上記必要油圧すなわちベルト挟圧力
は伝動ベルト48の摩擦力の大きさに相当するものであ
る。なお、アクセル開度θACC の代わりにエンジン12
のスロットル弁開度、燃料噴射量、吸入空気量などのエ
ンジン負荷値を用いることもできる。 PB ’=(TIN/μ・R・A)×α ・・・(1)
【0028】さらに、上記電子制御装置66は、予め記
憶されたよく知られた関係〔TE =f(Q,NE )〕か
ら実際の吸入空気量Qおよびエンジン回転速度NE に基
づいてエンジン12の出力トルクTE すなわち推定トル
クを算出し、トルクコンバータ14のトルク増幅率を乗
算することにより入力トルクTINを算出する。たとえば
ロックアップクラッチ26の係合時にはトルク増幅率が
1であるのでその出力トルクをベルト式無段変速機18
の入力トルクTINとして決定する。また、このようなエ
ンジン12の推定トルク或いは入力トルクTINの算出に
際して、その算出精度を高めるために実際の吸入空気の
温度TA および大気圧PA に基づいて吸入空気量Qを補
正する。たとえば、吸気温度補正係数kTAおよび大気圧
補正係数kPAを決定し、それら吸気温度補正係数kTA
よび大気圧補正係数kPAを乗算することにより補正後の
吸入空気量Q' (=Q×kTA×kPA)を算出する。上記
吸気温度補正係数kTAおよび大気圧補正係数kPAは吸入
空気量をその質量に対応させるために熱膨張や大気圧に
よる容積変化を補正するためのものであり、たとえば吸
気温度補正係数kTAは常温(25℃)で1となり、それ
よりも高温となるほど1より小さい値となり、低温とな
るほど1より大きい値となる。また、たとえば大気圧補
正係数kPAは1気圧であるときに1となり、それよりも
低気圧或いは高地となるほど1より小さい値となり、そ
れよりも高気圧或いは低地となるほと1より大きい値と
なる。
【0029】図6は、上記電子制御装置66の制御機能
の要部すなわちベルト挟圧力制御を説明する機能ブロッ
ク線図である。図6において、エンジン出力トルク算出
手段82は、予め記憶されたよく知られた関係〔TE
f(Q,NE )〕から吸入空気量Qおよびエンジン回転
速度NE に基づいてエンジン12の出力トルクTE すな
わち推定トルクを算出する。
【0030】吸気温度検出手段異常判定手段84は、吸
気温度センサ68が異常であるか否かをその出力信号の
値或いは変化に基づいて判定する。たとえば、車速Vが
所定値(80km/h)以上且つエンジン回転速度NE が所
定値(3000rpm )以下の状態が所定時間以上継続し
た運転状態における検出温度TA1と、車速Vが所定値
(0km/h)以上且つエンジン12がアイドル回転である
状態が所定時間以上継続した運転状態における検出温度
A2との差分(TA1−TA2)が、所定の判断基準値たと
えば最も低いエンジン温度と最も高い外気温度との差よ
りも小さいこと、或いは差分(TA1−TA2)が所定の判
断基準値たとえば最も高いエンジン温度と最も低い外気
温度との差よりも大きいことに基づいて判定する。上記
検出温度T A1は、外気温度と略等しく、上記検出温度T
A2はエンジン12の温度と略等しいこと、吸気温度セン
サ68の経年変化などによる劣化が発生すると上記差分
が小さくなること、吸気温度センサ68の接続状態が何
らかの原因で良好になったことたとえば当初は接続不良
の状態で調整された後で正常に検出動作するようになっ
たことを利用して異常が判定されるのである。
【0031】異常時挟圧力変更手段86は、上記吸気温
度検出手段異常判定手段84により吸気温度センサ68
の異常が判定された場合には、動力伝達部材として機能
する伝動ベルト48の接触圧を、車両の使用環境として
予定される吸気温度範囲の最低値付近に予め定められた
温度たとえば−25℃に対応する値に変更するために、
たとえばベルト挟圧力制御手段88において用いられる
補正後の吸入空気量Q' (=Q×kTA×kPA)を算出す
るに際して用いられる吸気温度補正係数kTAを、たとえ
ば−25℃に対応する値とする。すなわち、前記吸気温
度検出手段異常判定手段84により吸気温度センサ68
の異常が判定された場合には、吸気温度に関して、伝動
ベルト48のすべりが発生し難い側の安全値とすること
により、エンジン出力トルク算出手段82において算出
されるエンジン出力トルクTE を安全側に大きな値とし
て、油圧シリンダ46cに対する制御操作量を吸気温度
範囲の最低値付近に予め定められた温度に対応する値に
変更し、上記安全値に対応するベルト挟圧力が用いられ
るようにする。
【0032】ベルト挟圧力制御手段88は、上記補正後
の吸入空気量Q' およびエンジン回転速度NE から求め
られたエンジン出力トルクTE に基づいて入力トルクT
INを求めるとともに、たとえば予め定められた関係(マ
ップ)を示す基本式すなわち数式(1) から、ベルト式無
段変速機18の実際の入力トルクTINおよび実際の変速
比γに基づいてベルト挟圧力制御圧(目標値)PB ' を
算出し、そのベルト挟圧力制御圧(目標値)PB ' と実
際のベルト挟圧力制御圧PB とが一致するように油圧制
御回路52内の挟圧力制御弁60に調圧させる。
【0033】図7は、電子制御装置66の制御作動の要
部を説明するフローチャートであって、所定のサイクル
タイムで繰り返し実行されるものである。ステップ(以
下、ステップを省略する)SA1において、各信号を入
力させるためのよく知られた信号入力処理が実行された
後、前記吸気温度検出手段異常判定手段84に対応する
SA2において、吸気温度センサ68が異常であるか否
かがたとえばその出力信号に基づいて判断される。この
SA2の判断が否定される場合は、SA3において、吸
気温度センサ68からの信号から吸気温度TA が算出さ
れるとともに、SA4において、予め記憶された関係か
らその吸気温度TA に基づいて吸気温度補正係数kTA
算出される。
【0034】しかし、上記SA2の判断が肯定される場
合は、前記異常時挟圧力変更手段86に対応するSA5
において、吸気温度TA がその温度範囲の最低値または
その付近のセンサフェイル時の安全値に設定される。た
とえば、吸気温度TA が−25℃に設定される。このた
め、SA4では、予め記憶された関係からセンサフェイ
ル時の安全値に設定された吸気温度TA (−25℃)に
基づいて吸気温度補正係数kTAが算出される。
【0035】次いで、SA6では、上記SA4において
算出された吸気温度補正係数kTAに基づいて吸入空気量
Qが補正されて補正後の吸入空気量Q' (=Q×kTA×
PA)が求められる。この吸入空気量Qの基本値は、た
とえば、図示しない吸気管67内に設けられた負圧セン
サにより検出された負圧とエンジン回転速度NE とエン
ジン12の気筒容積とに基づいて算出される。
【0036】続いて、前記エンジン出力トルク算出手段
82に対応するSA7では、予め記憶されたよく知られ
た関係〔TE =f(Q,NE )〕から補正後の吸入空気
量Q' およびエンジン回転速度NE に基づいてエンジン
12の出力トルクTE が算出される。そして、前記ベル
ト挟圧力制御手段88に対応するSA8では、上記補正
後の吸入空気量Q' およびエンジン回転速度NE から求
められたエンジン出力トルクTE に基づいて実際の入力
トルクTINが求められるとともに、たとえば予め定めら
れた関係(マップ)を示す基本式すなわち数式(1) か
ら、ベルト式無段変速機18の実際の入力トルクTIN
よび実際の変速比γに基づいてベルト挟圧力制御圧(目
標値)PB ' が算出され、そのベルト挟圧力制御圧(目
標値)PB' と実際のベルト挟圧力制御圧PB とが一致
するように油圧制御回路52内の挟圧力制御弁60が調
圧作動させられる。
【0037】上述のように、本実施例によれば、吸気温
度検出手段異常判定手段84(SA2)により吸気温度
センサ68の異常が判定された場合には、異常時挟圧力
変更手段(異常時接触圧変更手段)86(SA4、SA
5、SA6、SA7、SA8)により、伝動ベルト(動
力伝達部材)48の挟圧力(接触圧)が、吸気温度範囲
の最低値付近に予め定められた温度たとえば−25℃に
対応する値に変更されることから、伝動ベルト48のす
べりが好適に防止されると同時に、吸入空気量Q、エン
ジン回転速度NE 、或いは大気圧PA などのパラメータ
に対しては従来通りにエンジン出力トルクTE が変化さ
せられるのでベルト挟圧力が過度に高くなることがな
い。したがって、動力損失が大きくならずよい燃費が得
られる。
【0038】また、本実施例によれば、エンジン12の
出力トルクTE をエンジン12の吸入空気量Q、エンジ
ン回転速度NE 、吸気温度センサ68により検出された
吸気温度TA 、或いは大気圧センサ69により検出され
た大気圧PA に基づいて算出するエンジン出力トルク算
出手段82が設けられ、異常時挟圧力変更手段(異常時
接触圧変更手段)86は、吸気温度検出手段異常判定手
段84により吸気温度センサ68の異常が判定された場
合には、吸気温度範囲の最低値付近に予め定められた温
度に基づいて上記エンジン出力トルク算出手段82にエ
ンジンの出力トルクを算出させるものであることから、
吸気温度センサ68の異常時でも、そのエンジン出力ト
ルク算出手段82により算出されたエンジン12の出力
トルクT E が無段変速機18に入力されたときに伝動ベ
ルト48にすべりが発生しない範囲でその伝動ベルト4
8の接触圧を必要且つ十分な値とするように、伝動ベル
ト48の挟圧力が制御される。
【0039】次に、本発明の他の実施例を説明する。な
お、以下の説明において前述の実施例と共通する部分に
は同一の符号を付して説明を省略する。
【0040】図8は、前記図7の他の実施例の要部であ
って、図7のSA7に替えて用いられるベルト挟圧力制
御トルク(エンジン出力トルクTE )を算出するための
他の算出ルーチンを示している。この実施例では、図7
のSA2およびSA5は削除される。
【0041】図8において、前記エンジン出力トルク算
出手段82に対応するSA71では、ベルト挟圧力制御
トルクであるエンジン12の出力トルクTE が予め記憶
されたよく知られた関係〔TE =f(Q,NE )〕から
補正後の吸入空気量Q' およびエンジン回転速度NE
基づいて算出される。次いで、前記吸気温度検出手段異
常判定手段84に対応するSA72において、SA2と
同様にして吸気温度センサ68が異常であるか否かが判
断される。このSA72の判断が否定される場合はSA
73が実行されないが、肯定される場合は、前記異常時
挟圧力変更手段86に対応するSA73において、エン
ジン12の出力トルクTE にセンサフェイル時の安全係
数(=1.094)が乗算されることにより、センサフ
ェイル時の出力トルクTE が算出される。この安全係数
は、車両の使用環境における吸気温度TA の温度範囲の
最低値またはその付近の値に対応する大きさの出力トル
クTE を得るために予め求められたものである。
【0042】本実施例によれば、SA73により求めら
れたエンジン出力トルクTE に基づいて実際の入力トル
クTINが求められるとともに、たとえば予め定められた
関係(マップ)を示す基本式すなわち数式(1) から、ベ
ルト式無段変速機18の実際の入力トルクTINおよび実
際の変速比γに基づいてベルト挟圧力制御圧(目標値)
B ' が算出され、そのベルト挟圧力制御圧(目標値)
B ' と実際のベルト挟圧力制御圧PB とが一致するよ
うに油圧制御回路52内の挟圧力制御弁60が調圧作動
させられるので、前述の実施例と同様の効果が得られ
る。
【0043】図9は、本発明の他の実施例における電子
制御装置66の制御機能の要部を説明する機能ブロック
線図である。図9は、図6の機能ブロック線図に比較し
て、吸気温度センサ68、吸気温度検出手段異常判定手
段84、異常時挟圧力変更手段86に替えて、大気圧セ
ンサ69、大気圧検出手段異常判定手段90、異常時挟
圧力変更手段92が設けられている点において相違す
る。以下、相違点を中心に説明する。
【0044】大気圧検出手段異常判定手段90は、大気
圧センサ69の特性劣化、リード線の短絡或いは断線な
どの大気圧センサ69の異常をその出力信号の値或いは
変化などに基づいて判定する。異常時挟圧力変更手段9
2は、上記大気圧検出手段異常判定手段90により大気
圧センサ69の異常が判定された場合には、動力伝達部
材として機能する伝動ベルト48の接触圧を、車両の使
用環境として予定される大気圧範囲の最高値付近に予め
定められた大気圧たとえば104kPa(1.06 kgf
/cm 2 )に対応する安全値に変更するために、たとえば
ベルト挟圧力制御手段88において用いられる補正後の
吸入空気量Q' (=Q×kTA×kPA)を算出するに際し
て用いられる大気圧補正係数kPAを、たとえば上記安全
値に対応する値「1.03」とする。すなわち、前記大
気圧検出手段異常判定手段90により大気圧センサ69
の異常が判定された場合には、大気圧に関して、伝動ベ
ルト48のすべりが発生し難い側の安全値とすることに
より、エンジン出力トルク算出手段82において算出さ
れるエンジン出力トルクTE を安全側に大きな値とし
て、油圧シリンダ46cに対する制御操作量を大気圧範
囲の最高値付近に予め定められた温度に対応する値に変
更し、上記安全値に対応するベルト挟圧力が用いられる
ようにする。
【0045】図10は、上記図9の実施例における電子
制御装置66の制御作動の要部を説明するフローチャー
トである。図10において、SB1において各信号を入
力させるためのよく知られた信号入力処理が実行された
後、前記大気圧検出手段異常判定手段90に対応するS
B2において、大気圧センサ69が異常であるか否かが
たとえばその出力信号の値或いは変化に基づいて判断さ
れる。このSB2の判断が否定される場合は、SB3に
おいて大気圧センサ69からの信号から大気圧PA が算
出されるとともに、SB4において予め記憶された関係
からその大気圧PA に基づいて大気圧補正係数kPAが算
出される。
【0046】しかし、上記SB2の判断が肯定される場
合は、前記異常時挟圧力変更手段92に対応するSB5
において、大気圧PA がその変化範囲内の最高値または
その付近のセンサフェイル時の安全値に設定される。た
とえば、大気圧PA が104kPa(1.06 kgf/cm
2 )に設定される。そして、予め記憶された関係からセ
ンサフェイル時の安全値に設定された上記大気圧P
A (104kPa)に基づいて大気圧補正係数kPA(=
1.03)が算出される。
【0047】次いで、SB6では、上記SB4或いはS
B5において算出された大気圧補正係数kPAに基づいて
吸入空気量Qが補正されて補正後の吸入空気量Q' (=
Q×kTA×kPA)が求められる。この吸入空気量Qの基
本値は、たとえば図示しない吸気管67内に設けられた
負圧センサにより検出された負圧とエンジン回転速度N
E とエンジン12の気筒容積とに基づいて算出される。
【0048】続いて、前記エンジン出力トルク算出手段
82に対応するSB7では、予め記憶されたよく知られ
た関係〔TE =f(Q,NE )〕から補正後の吸入空気
量Q' およびエンジン回転速度NE に基づいてエンジン
12の出力トルクTE が算出される。そして、前記ベル
ト挟圧力制御手段88に対応するSB8では、上記補正
後の吸入空気量Q' およびエンジン回転速度NE から求
められたエンジン出力トルクTE に基づいて実際の入力
トルクTINが求められるとともに、たとえば予め定めら
れた関係(マップ)を示す基本式すなわち数式(1) か
ら、ベルト式無段変速機18の実際の入力トルクTIN
よび実際の変速比γに基づいてベルト挟圧力制御圧(目
標値)PB ' が算出され、そのベルト挟圧力制御圧(目
標値)PB' と実際のベルト挟圧力制御圧PB とが一致
するように油圧制御回路52内の挟圧力制御弁60が調
圧作動させられる。
【0049】本実施例において、大気圧検出手段異常判
定手段90(SB2)により大気圧センサ69の異常が
判定された場合には、異常時挟圧力変更手段(異常時接
触圧変更手段)92(SB5、SB6、SB7、SB
8)により、伝動ベルト(動力伝達部材)48の挟圧力
(接触圧)が、大気圧範囲の最高値付近に予め定められ
た圧力に対応する安全値に変更されることから、伝動ベ
ルト48のすべりが好適に防止されると同時に、吸入空
気量Q、エンジン回転速度NE 、或いは吸気温度TA
どのパラメータに対しては従来通りにエンジン出力トル
クが変化させられるのでベルト挟圧力が過度に高くなる
ことがない。したがって、動力損失が大きくならずよい
燃費が得られる。
【0050】また、本実施例によれば、エンジン12の
出力トルクTE をエンジン12の吸入空気量Q、エンジ
ン回転速度NE 、吸気温度センサ68により検出された
吸気温度TA 、或いは大気圧センサ69により検出され
た大気圧PA に基づいて算出するエンジン出力トルク算
出手段82が設けられ、異常時挟圧力変更手段(異常時
接触圧変更手段)92は、大気圧検出手段異常判定手段
90により大気圧センサ69の異常が判定された場合に
は、大気圧範囲の最高値付近に予め定められた安全値に
基づいて上記エンジン出力トルク算出手段82にエンジ
ンの出力トルクを算出させるものであることから、大気
圧センサ69の異常時でも、そのエンジン出力トルク算
出手段82により算出されたエンジン12の出力トルク
INが無段変速機18に入力されたときに伝動ベルト4
8にすべりが発生しない範囲でその伝動ベルト48の接
触圧を必要且つ十分な値とするように、伝動ベルト48
の挟圧力が制御される。
【0051】図11は、前記図10の他の実施例の要部
であって、その図10のSB7に替えて用いられるベル
ト挟圧力制御トルク(エンジン出力トルクTE )を算出
するための他の算出ルーチンを示している。この実施例
では、図10のSB2およびSB5は削除される。
【0052】図11において、前記エンジン出力トルク
算出手段82に対応するSB71では、ベルト挟圧力制
御トルクであるエンジン12の出力トルクTE が予め記
憶されたよく知られた関係〔TE =f(Q,NE )〕か
ら補正後の吸入空気量Q' およびエンジン回転速度NE
に基づいて算出される。次いで、前記大気圧検出手段異
常判定手段90に対応するSB72において、SB2と
同様にして大気圧センサ69が異常であるか否かが判断
される。このSB72の判断が否定される場合はSB7
3が実行されないが、肯定される場合は、前記異常時挟
圧力変更手段92に対応するSB73において、エンジ
ン12の出力トルクTE にセンサフェイル時の安全係数
(=1.03)が乗算されることにより、センサフェイ
ル時の出力トルクTE が算出される。この安全係数は、
車両の使用環境における大気圧P A の範囲の最高値また
はその付近の値に対応する大きさの出力トルクTE を得
るために予め求められたものである。
【0053】本実施例によれば、SB73により求めら
れたエンジン出力トルクTE に基づいて実際の入力トル
クTINが求められるとともに、たとえば予め定められた
関係(マップ)を示す基本式すなわち数式(1) から、ベ
ルト式無段変速機18の実際の入力トルクTINおよび実
際の変速比γに基づいてベルト挟圧力制御圧(目標値)
B ' が算出され、そのベルト挟圧力制御圧(目標値)
B ' と実際のベルト挟圧力制御圧PB とが一致するよ
うに油圧制御回路52内の挟圧力制御弁60が調圧作動
させられるので、前述の実施例と同様の効果が得られ
る。
【0054】以上、本発明の一実施例を図面に基づいて
説明したが、本発明はその他の態様においても適用され
る。
【0055】たとえば、前述の実施例においては、伝動
ベルト48が巻きかけられた1対の可変プーリ42、4
6を備えた所謂ベルト式無段変速機18が用いられてい
たが、トロイダル型無段変速機などの他の無段変速機に
も本発明は適用され得る。要するに、入力側回転体およ
び出力側回転体の間に介在させられた動力伝達部材のそ
の入力側回転体および出力側回転体に対する接触位置が
変更されることにより変速比が無段階に変化させられる
無段変速機であればよいのである。
【0056】また、前述の図6および図8の実施例で
は、吸気温度センサ68の異常時において、車両の使用
環境として予定される吸気温度範囲の最低値付近に予め
定められた温度(たとえば−25℃)が、伝動ベルト4
8の挟圧力(接触圧)を変更するために用いられていた
が、その吸気温度範囲の最低値、その最低値から所定の
余裕値αを差し引いた値、或いはその最低値よりも僅か
に高い値が用いられても本発明の効果が得られる。ま
た、図9および図11の実施例では、大気圧センサ69
の異常時において、車両の使用環境として予定される大
気圧範囲の最高値付近に予め定められた気圧に対応する
大気圧補正係数kPA(たとえば1.03)が、伝動ベル
ト48の挟圧力(接触圧)を変更するために用いられて
いたが、その大気圧範囲の最高値、その最高値から所定
の余裕値αを差し引いた値、或いはその最低値よりも僅
かに高い値が用いられても本発明の効果が得られる。
【0057】また、前述の図7のSA5では、吸気温度
A がフェイル時吸気温度(−25℃)に設定されてい
たが、フェイル時の吸気温度補正係数kTAが設定されて
もよい。この場合には、SA5に続いてSA6が実行さ
れる。また、図10のSB5では、フェイル時の大気圧
補正係数kPAが設定されていたが、フェイル時の大気圧
(安全値)PA が設定されてもよい。この場合にはSB
5に続いてSB4が実行される。
【0058】また、吸気温度センサ68の異常時および
大気圧センサ69の異常時においては、前述の実施例の
SA8およびSB8において、前記安全値に対応する値
となるようにベルト挟圧力制御圧(目標値)PB ' が所
定圧高められたり、或いは油圧制御回路52内のリニヤ
ソレノイド弁58或いは挟圧力制御弁60へ出力される
制御信号或いは油圧信号が所定圧高められるようにして
もよい。
【0059】また、前述の実施例において、吸気温度セ
ンサ68および大気圧センサ69の断線や短絡を検出す
るためによく知られた断線短絡検出回路を設け、前記吸
気温度検出手段異常判定手段84および大気圧検出手段
異常判定手段90はその断線短絡検出回路の出力信号に
従って異常判定を行ってもよい。
【0060】また、前述の実施例においては、吸気温度
検出手段に対応する吸気温度センサ68は吸気管67内
に吸入される吸入空気の温度TA を直接検出するもので
あったが、大気温度を検出するセンサなどであってもよ
い。また、大気圧検出手段に対応する大気圧センサ69
は大気圧PA を直接検出するものであったが、吸気管6
7内の負圧を検出するための負圧センサであってもよ
い。所定のスロットル弁開度以上では大気圧が検出され
るからである。
【0061】また、前述の図7または図8の実施例と、
図10または図11の実施例とが組み合わされて実施さ
れるようにしてもよい。
【0062】以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳
細に説明したが、これはあくまでも一実施形態であり、
本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更,改良を加
えた態様で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例の制御装置が適用された車両
用駆動装置の骨子図である。
【図2】図1の車両用駆動装置における無段変速機を制
御するための油圧制御回路図である。
【図3】図1の実施例の制御装置の電気的構成を簡単に
説明する図である。
【図4】図3の電子制御装置が実行する変速比制御にお
いて目標回転速度を決定するために用いられる予め記憶
された関係を示す図である。
【図5】図3の電子制御装置が実行するベルト挟圧力制
御において、伝動ベルトの挟圧力を必要且つ十分な値に
するための必要油圧を示す図である。
【図6】図3の電子制御装置の制御機能の要部を説明す
る機能ブロック線図である。
【図7】図3の電子制御装置の制御作動の要部を説明す
るフローチャートである。
【図8】本発明の他の実施例の制御作動を示す制御ルー
チンである。
【図9】本発明の他の実施例における電子制御装置の制
御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。
【図10】図9の実施例の制御作動を説明するフローチ
ャートである。
【図11】本発明の他の実施例の制御作動を示す制御ル
ーチンである。
【符号の説明】
12:エンジン(原動機) 18:ベルト式無段変速機(無段変速機) 24L、24R:駆動輪 48:伝動ベルト(動力伝達部材) 68:吸気温度センサ(吸気温度検出手段) 69:大気圧センサ(大気圧検出手段) 84:吸気温度検出手段異常判定手段 86:異常時挟圧力変更手段(異常時接触圧変更手段) 90:大気圧検出手段異常判定手段 92:異常時挟圧力変更手段(異常時接触圧変更手段)
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) // F16H 59:06 F16H 59:06 59:14 59:14 59:62 59:62 Fターム(参考) 3G084 BA32 DA02 DA27 EB09 FA01 FA02 FA05 FA10 FA11 FA20 FA33 3J552 MA07 MA12 MA26 NA01 NB01 PA12 PA59 PB03 SA36 TA01 TB02 TB03 VA18Y VA32Y VA37Z VA48Z VA74W VB01Z VC01Z VC05Z VC07W VC07X VD02Z VE02W VE02X

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 エンジンから駆動輪に至る動力伝達経路
    に設けられ、入力側回転体および出力側回転体の間に介
    在させられた動力伝達部材の該入力側回転体および出力
    側回転体に対する接触位置が変更されることにより変速
    比が無段階に変化させられる無段変速機において、吸気
    温度検出手段により検出された前記エンジンの吸入空気
    温度に関連して該動力伝達部材の接触圧力を調節する形
    式の車両用無段変速機の制御装置であって、 前記エンジンの吸入空気温度を検出する吸気温度検出手
    段が異常であるか否かを判定する吸気温度検出手段異常
    判定手段と、 該吸気温度検出手段異常判定手段により前記吸気温度検
    出手段の異常が判定された場合には、前記動力伝達部材
    の接触圧を、前記吸入空気温度範囲の最低値付近に予め
    定められた温度に対応する値に変更する異常時接触圧変
    更手段とを、含むことを特徴とする車両用無段変速機の
    制御装置。
  2. 【請求項2】 エンジンから駆動輪に至る動力伝達経路
    に設けられ、入力側回転体および出力側回転体の間に介
    在させられた動力伝達部材の該入力側回転体および出力
    側回転体に対する接触位置が変更されることにより変速
    比が無段階に変化させられる無段変速機において、大気
    圧検出手段により検出された大気圧に関連して該動力伝
    達部材の接触圧力を調節する形式の車両用無段変速機の
    制御装置であって、 前記大気圧を検出する大気圧検出手段が異常であるか否
    かを判定する大気圧検出手段異常判定手段と、 該大気圧検出手段異常判定手段により前記大気圧検出手
    段の異常が判定された場合には、前記動力伝達部材の接
    触圧を、前記大気圧範囲の最高値付近に予め定められた
    圧力に対応する値に変更する異常時接触圧変更手段と
    を、含むことを特徴とする車両用無段変速機の制御装
    置。
  3. 【請求項3】 前記無段変速機は、有効径が可変の1対
    の入力側可変プーリおよび出力側可変プーリと、それら
    入力側可変プーリおよび出力側可変プーリに巻き掛けら
    れて動力を伝達する伝動ベルトと、それら入力側可変プ
    ーリおよび出力側可変プーリのV溝幅を変化させる入力
    側油圧シリンダおよび出力側油圧シリンダとを備えたも
    のであり、 前記異常時接触圧変更手段は、前記伝動ベルトの前記V
    溝の内壁面に対する接触圧を変更するために前記出力側
    の油圧シリンダの推力を変化させるものである請求項1
    または2の車両用無段変速機の制御装置。
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