JP2001294615A - 熱可塑性ノルボルネン系樹脂の精製方法、この樹脂を使用した磁気記録媒体用基板およびこの基板を用いた磁気記録媒体 - Google Patents
熱可塑性ノルボルネン系樹脂の精製方法、この樹脂を使用した磁気記録媒体用基板およびこの基板を用いた磁気記録媒体Info
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Abstract
量以下まで除去するための洗浄方法、該方法で洗浄され
た樹脂を使用した磁気記録媒体用基板、該基板を使用し
た磁気記録媒体、並びに該媒体の製造方法を提供するこ
とを目的とする。 【解決手段】 熱可塑性ノルボルネン系樹脂の有機不純
物、イオン性不純物、およびパーティクルを洗浄液によ
り除去する熱可塑性ノルボルネン系樹脂の精製方法であ
って、前記洗浄液が2−プロパノール、または2−プロ
パノールとH2Oの混合溶媒であることを特徴とする精
製方法。該熱可塑性ノルボルネン系樹脂を射出成形して
得られる磁気記録媒体用基板。該基板上に、少なくとも
磁性層、保護層および液体潤滑層が形成されている磁気
記録媒体、およびこれを製造する方法。
Description
板の原料となる熱可塑性ノルボルネン系樹脂の精製方法
に関する。さらに本発明は、コンピュータの外部記憶装
置およびその他のデジタルデータの各種磁気記録装置に
搭載される、前記の精製された樹脂を使用した磁気記録
媒体用基板、並びに、該基板を使用した磁気記録媒体お
よび該記録媒体の製造方法に関する。
量化に伴って、記録密度の向上のために磁気ヘッド浮上
量の低減が図られている。この磁気ヘッド浮上量を低減
するためには平滑性に優れた磁気記録媒体、即ち高い表
面精度を有する磁気記録媒体が要求される。例えば、従
来の非磁性金属基板(Al等)を使用する場合には、高
度な精密加工が要求される。
媒体用基板および磁気記録媒体の製造方法の一例を以下
に示す。
属材料を圧延し、焼鈍した後、規定の寸法に加工が行わ
れたブランク材が用いられる。このブランク材は、内外
径処理を施され、表面精度の向上のためのラッピング加
工が行われる。この後、該ブランク材には、表面硬度を
向上させるなどの目的で、13μmのNi−Pメッキ層
が形成される。このNi−Pメッキ層の表面は、ポリッ
シュで表面粗さがRa=10Åになるように研磨され、
次いで、研磨表面に、ダイヤモンドスラリーを使用し
て、最終ラッピング加工が行われる。得られた基板に
は、コンタクト・スタート・ストップ(CSS)ゾーン
に、例えばバンプハイトが190Å、バンプ密度が30
×30となるようにレーザーゾーンテクスチャーが施さ
れる。次に、この基板を精密洗浄することにより、磁気
記録媒体用基板が得られる。
法により500Åの下地Cr層、300ÅのCo−14
Cr−4Ta磁性層、および80Åのカーボン保護層を
順次形成する。さらに、スパッタ後の表面にテープバニ
ッシュを行い、次にディップコート法またはスピンコー
ト法によりフッ素系潤滑層を20Å形成し、磁気記録媒
体を得ることができる。
板および磁気記録媒体の製造方法は、近年の高密度化の
要求とともに一層複雑化しているのが現状である。さら
に、磁気記録媒体の高機能性を維持したままで、従来以
上に安価な磁気記録媒体を提供することも要求されてい
る。この相反する要求を解決する新規な磁気記録媒体と
して、プラスチックを磁気記録媒体用基板に用いた磁気
記録媒体が提案されている。
技術によって作製し、CSSゾーンも成形時に同時に形
成する方法は、生産性に優れ工業的にも有利であり、そ
の結果、安価な磁気記録媒体を提供することが可能であ
る。
板は、例えば合成樹脂ペレットを射出成形して製造され
るが、金属性基板およびガラス等のセラミック基板と比
較して、成形時に数μmレベルの凹凸状の欠陥が基板上
に生じる。これは、高い表面精度が要求される磁気記録
媒体用基板において問題となる。
板を使用して磁気記録媒体を製造することは、ヘッドと
の読み書きが行えないことや、シーク時にヘッドクラッ
シュを引き起こすことに繋がる。
録媒体用基板を使用して製造された磁気記録媒体は、こ
れを高温高湿から低温低湿の環境下に繰り返し放置する
と、基板膨れ現象を引き起こす。この現象は、環境信頼
性を低下させる。
の材料としては、ポリカーボネート樹脂、ポリメチルメ
タアクリレート樹脂のようなものが使用されるが、これ
ら以外にも、熱可塑性ノルボルネン系樹脂を使用するこ
とができる。熱可塑性ノルボルネン系樹脂は、高耐熱
性、低吸湿性、形状安定性の点で優れた特性を有し、優
れた磁気記録媒体用基板を提供できるが、この樹脂も上
述のような問題を有している。
る実情を鑑みてなされたものであり、熱可塑性ノルボル
ネン系樹脂の洗浄方法を提供することにある。
より洗浄された樹脂を用いて、表面の欠陥が少なく、環
境信頼性に優れたプラスチック製磁気記録媒体用基板を
提供することにある。
ック製磁気記録媒体用基板を用いた磁気記録媒体を提供
することにある。
高温、高湿や低温、低湿でのヒートショック試験におい
ても表面の欠陥が極めて少なく、高精度な表面を保持し
た磁気記録媒体を提供する。
媒体の製造方法を提供することを目的とする。
解決するために鋭意検討を進めた結果、熱可塑性ノルボ
ルネン系樹脂に含まれる不純物を一定量以下まで除去し
た樹脂ペレットを用いて射出成形することで、上記目的
を達成できることを見出し、本発明を完成するに至っ
た。
ネン系樹脂の有機不純物、イオン性不純物、およびパー
ティクルを洗浄液により除去する熱可塑性ノルボルネン
系樹脂の精製方法であって、前記洗浄液が2−プロパノ
ール(以下、IPAとも略記する。)、または2−プロ
パノールとH2Oの混合溶媒であることを特徴とする精
製方法に関する。該精製方法では、前記2−プロパノー
ルとH2Oの混合溶媒が、2−プロパノール:H2O=
1:1から2−プロパノール:H2O=5:1の割合の
混合溶媒であることを特徴とする。さらに、該精製方法
では、有機不純物が、30ppb以下となり、熱可塑性ノ
ルボルネン系樹脂中のイオン性不純物が5ppb以下とな
り、金属不純物が5ppb以下となることが好ましい。ま
た、前記有機不純物は、炭化水素系不純物、酸化防止剤
劣化物および樹脂酸化劣化物であり、これら不純物の量
は、炭化水素系不純物が20ppb以下、酸化防止剤劣化
物が5ppb以下、および樹脂酸化劣化物が5ppb以下とな
ることが好ましい。
ネン系樹脂を射出成形して得られるプラスチック製磁気
記録媒体用基板であって、該熱可塑性ノルボルネン系樹
脂が、先に記載の精製方法により精製された熱可塑性ノ
ルボルネン系樹脂であることを特徴とする磁気記録媒体
用基板に関する。該基板は、基板表面上の1μm以上の
凹凸欠陥が100個/面以下であることが好ましい。
くとも磁性層、保護層および液体潤滑層が形成されてい
る磁気記録媒体であって、前記基板が先に記載のプラス
チック製磁気記録媒体用基板であることを特徴とする磁
気記録媒体に関する。該記録媒体は、磁気記録媒体が、
温度60℃、湿度(RH)80%、温度−40℃、湿度
(RH)10%、またはこれらを組み合せた条件下に放
置された場合、所定の膨れサイズ(径1から2μm、高
さ0.1から1μm)以上の基板上の膨れの発生がゼロ
であることが好ましい。
ルネン系樹脂を精製する工程、精製された熱可塑性ノル
ボルネン系樹脂を射出成形し、プラスチック製磁気ディ
スク用基板を形成する工程、該基板上に、少なくとも磁
性層、保護層及び液体潤滑層を順次形成する成膜工程と
を具備する磁気記録媒体の製造方法において、前記精製
工程が、熱可塑性ノルボルネン系樹脂を洗浄液中で洗浄
する洗浄工程を含み、前記洗浄液が2−プロパノール、
または2−プロパノールとH2Oとの混合溶媒であるこ
とを特徴とする磁気記録媒体の製造方法に関する。該製
造方法では、前記2−プロパノールとH2Oの混合溶媒
が、2−プロパノール:H2O=1:1から2−プロパ
ノール:H2O=5:1の割合の混合溶媒であることを
特徴とする。
る。
る。
樹脂を一定の条件下で洗浄し、精製することにより、熱
可塑性ノルボルネン系樹脂の不純物を除去する洗浄方法
に関する。
気記録媒体用基板に使用されているポリカーボネート樹
脂やポリメチルメタクリレート樹脂ではなく、高耐熱性
であり、低吸湿性であり、さらに剛直構造を有し、形状
安定性に優れた熱可塑性ノルボルネン系樹脂である。こ
の樹脂としては、例えば、ポリオレフィンノルボルネン
系樹脂がある。具体的には、日本ゼオン(株)製のZE
ONEX280R、ZEONEX480など、三井化学
(株)製のAPEL6150、APEL6124など、
JSR(株)製のアートンなどを挙げることができる。
を磁気記録媒体用基板の原料として使用するが、熱可塑
性ノルボルネン系樹脂をそのまま使用すると、上述のよ
うに射出成形して得られる基板は、金属性基板およびガ
ラス等のセラミック基板と比較して、成形時に数μmレ
ベルの凹凸状の欠陥が基板上に生じるという問題点を有
する。
トの純度やその分子量分布に大きく依存していると考え
られる。例えば、熱可塑性ノルボルネン系樹脂は、ペレ
ットの合成時に生じる原料樹脂の酸化劣化物(アルコー
ル、カルボン酸等)や安定剤として添加されるフェノー
ル系酸化防止剤が劣化して生じる酸化防止剤劣化物のよ
うな有機不純物、イオン性不純物、および、ペレットを
合成する際またはペレットの搬送時に周囲の環境から混
入または付着するパーティクルを不純物として含有して
おり、欠陥の生成はこれらの量に大きく依存すると考え
られる。
記の不純物を含有するため、以下に述べるように欠陥を
発生させやすい性質を持つと考えられる。
は非極性な性質を持った樹脂であるが、不純物としてこ
の樹脂に含まれる樹脂の酸化劣化物、フェノール系酸化
防止剤の劣化物(酸化防止剤劣化物)、およびイオン性
不純物は、比較的極性の高い成分である。このため、極
性の高い不純物は、樹脂バルクにおいて内部から表面へ
拡散され、樹脂成分と分離されやすい。この結果、熱可
塑性ノルボルネン系樹脂は成形後に基板表面へ不純物が
集まりやすく、上述のような欠陥を発生させやすい性質
を持っていると考えられる。
ール系酸化防止剤の劣化物は、劣化前よりも低分子化さ
れ、かつ、酸素を含有する極性基(例えば、アルコール
のヒドロキシル基、カルボン酸のカルボキシル基等)を
有すため、これらの劣化物の溶融粘度は樹脂自体のそれ
とは異なる。従って、このような不純物を含有する樹脂
は、樹脂を射出成形するときに、この劣化物部分を核と
して金型内部で、樹脂との流動性の差異に基づく欠陥を
発生させやすいと考えられる。
スチック製磁気記録媒体用基板を使用して製造された磁
気記録媒体は、これを高温高湿から低温低湿の環境下に
繰り返し放置すると、基板膨れ現象を引き起こす。この
現象は、環境信頼性を低下させる。
脂には、一般に、各種の不純物が含まれており、種々の
問題を発生させると考えられる。
物に関する知見を得るために、各種不純物の定量を行っ
た。以下では本発明で使用しうるポリオレフィン熱可塑
性ノルボルネン系樹脂(日本ゼオン(株)製のZEON
EX280R)を例に取り、該樹脂に含まれる各種不純
物を定量した。結果を表1から3に示す。
10gをIPA/超純水(18.3mΩ・cm)=1:
1溶液100mlにて20分間揺動抽出し、抽出液をイ
オンクロマトグラフィで分析した。
gを120℃に加熱し、発生したガスを活性炭に吸着さ
せ、その後吸着物を活性炭からパージおよびトラップ法
(P&T)で脱着し、GC−MSで分析した。
gをIPA/超純水(18.3mΩ・cm)=1:1溶
液100mlにて20分間揺動抽出し、抽出液をイオン
クロマトグラフィで分析した。
4、NO3、Kの各イオンの含有量が多い。また、その他
にもCl、HCOO、NH4などのイオンも含まれる。
ることにより生成されたアルコール、カルボン酸化合物
(樹脂酸化劣化物)、樹脂安定剤として添加されている
酸化防止剤が劣化して生成した酸化防止剤劣化物、およ
び、シロキサン(酸素含有有機ケイ素化合物)が多く含
まれる。また、樹脂を合成する際の原料の未反応物およ
び溶媒残留物(合成原料・溶媒残留物)も含まれてい
る。
が多く含まれる。
成された磁気記録媒体用基板において、上記不純物が基
板表面にどのような影響を与えるかを見るため、熱可塑
性ノルボルネン系樹脂を用いて形成された基板の表面に
形成された欠陥部分を分析した。その結果、表面の欠陥
は以下のような(1)から(3)の3形態に大別され
た。
酸化防止剤の劣化物、Na、S、Si、Caの各イオ
ン、および金属性不純物を成分として含む欠陥である。
化物(アルコール、カルボン酸化合物等)を成分として
含む欠陥である。
物が付着し、それが基板表面へ転写され、凹み欠陥とな
ったものである。金型へ付着した球状の異物は、樹脂が
最終段階まで酸化され、劣化したことにより得られる低
級カルボン酸塩とNa、K、Siのような成分である。
欠陥で150〜500個/面であった。このような表面
状態にある磁気記録媒体用基板を用いて磁気記録媒体を
製造すると、その欠陥部に対応してエラーが発生し、欠
陥のサイズによっては、ヘッドを傷つけ、最終的にはヘ
ッドクラッシュを引き起こす。
物の分析結果と、該樹脂を射出成形して得られた磁気記
録媒体用基板の欠陥部分の分析結果を比べると、成分が
ほぼ一致していることがわかる。このことから、樹脂に
含まれる不純物により、磁気記録媒体用基板の欠陥が形
成されていると予想される。即ち、樹脂に含まれている
不純物成分、特に射出成形時の流動性に影響を与える、
樹脂や酸化防止剤の劣化物が核を形成し、これが基板表
面や金型鏡面へ付着し、基板上に凹凸を形成すると予想
される。
ネン系樹脂の不純物を除けば、該樹脂により形成される
磁気記録媒体用基板の欠陥が減少すると考えられる。
性ノルボルネン系樹脂を使用した磁気記録媒体用基板に
磁気記録層等を積層して得られる磁気記録媒体は、高
温、高湿条件下から低温、低湿条件下を経て常温で放置
されると、基板に膨れが生じる。この膨れは、基板へ吸
収された水分と、基板と磁性層の界面に存在する親水性
不純物(アルコールやカルボン酸化合物、イオン、金属
性不純物等)とが相互作用し、磁気記録媒体表面へ拡散
することによるものであると考えられる。このように、
この膨れ現象は、熱可塑性樹脂に含まれている不純物成
分に起因して起こると考えられることから、樹脂に含ま
れている不純物成分を除去することで、膨れ現象を低減
することができると考えられる。
まれる不純物を除去することが望まれる。
に、イオン性不純物、有機不純物、金属不純物をいう。
イオン性不純物は、Na、SO4、NO3、K、Cl、H
COO、NH4のようなイオンを意味する。有機不純物
は、樹脂が酸化され、劣化して生じるアルコール、カル
ボン酸化合物(樹脂酸化劣化物)、樹脂に含まれる酸化
防止剤(例えば、フェノール系化合物のような芳香族化
合物)が劣化して生じる酸化防止剤劣化物、シロキサン
系有機物、樹脂を合成する際の原料および溶媒の残留
物、ヘキサン(C6H12)、ヘキセン(C6H10)からテ
トラデカン(C14H30)、テトラデセン(C14H28)ま
での炭素数6から14までの脂肪族炭化水素(種々の異
性体を含む)のような炭化水素系不純物などを意味す
る。また、金属不純物とは、Ca、K、Fe、Cr、C
u、Znなどを意味する。
ルボルネン系樹脂の精製方法について説明する。
なる熱可塑性ノルボルネン系樹脂の不純物が、有機不純
物であるアルコール、カルボン酸化合物も含めて比較的
親水性の高いものであることがわかる。従って、該樹脂
を精製する場合、表面張力が高い溶媒または溶液で洗浄
することが効果的であると考えられる。
H2Oの混合溶液を用いて、熱可塑性ノルボルネン系樹
脂を洗浄し、精製することで、樹脂内部まで洗浄液を浸
透させ、効率的に不純物を除去する熱可塑性ノルボルネ
ン系樹脂の精製方法を見出した。
A、またはIPAとH2Oの混合溶媒を使用する。IP
AとH2Oの混合溶媒を使用する場合、IPAとH2Oの
割合は、IPA:H2O=1:1から5:1であること
が好ましく、IPA:H2O=1:1から2:1である
ことがより好ましいが、これに限定されない。H2Oは
純水、例えば超純水を用いることが好ましい。また、I
PAは、できる限り高純度のものを使用することが好ま
しい。
洗浄を効率的に行えるならば、如何なる形状であっても
よいが、ペレット形状であることが好ましい。
を、IPA単独、またはIPAとH 2Oの混合溶媒に浸
漬し、揺動することによって洗浄する。本発明におい
て、「揺動」または「揺動する」とは、攪拌や震盪など
の手段により、洗浄液を熱可塑性ノルボルネン系樹脂内
部に浸透させ、不純物を除去することをいう。本発明で
は、樹脂を洗浄液中で揺動し、さらに浸漬することで洗
浄を行う。具体的には、樹脂および洗浄液を、例えば樹
脂:洗浄液=1:2(重量/容積)の割合で、分液ロー
トのような適切な容器中に入れ、震盪器のような適切な
揺動手段により揺動して洗浄を行う。
しい。また浸漬時間は2時間以上であることが好まし
い。例えば、IPA単独の洗浄液またはIPA:H2O
=1:1の洗浄液を使用する場合、12時間以上である
ことが好ましく、IPA:H2O=2:1の洗浄液を使
用する場合には2時間以上であることが好ましい。
は、引き続き、洗浄液と同成分のリンス液およびH2O
で洗浄される。リンス液およびH2Oでのリンス洗浄
は、各々2回以上行うことが好ましい。H2Oは、超純
水のような溶剤、例えば18mΩ・cm以上の比抵抗値
を有する超純水を用いることができる。次に、得られた
熱可塑性ノルボルネン系樹脂をさらに流水(例えば、超
純水の流水)で5分以上リンスし、乾燥する。
ことができるが、例えば上記の揺動に準じて行うことが
できる。具体的には、洗浄液と同成分のリンス液で樹脂
を2から3分揺動し、静置後、新たなリンス液に入れ替
え、再度リンス洗浄する。次に超純水により樹脂を2回
洗浄し、最後に流水で5分以上洗浄する。また、乾燥
は、洗浄液、リンス液、水等を完全に除去できれば何れ
の手段でも使用することができる。例えば、加熱乾燥、
真空下での加熱乾燥、またはこれらの組み合わせなどを
挙げることができる。具体的には、100℃で24時間
乾燥した後、100℃で8時間真空乾燥することで洗浄
液、リンス液および水を除去することができる。
物、および金属不純物が、一定量以下に除去される必要
がある。イオン性不純物であるNa、SO4、NO3、
K、Cl、HCOO、およびNH4の含有量は、それぞ
れ5ppb以下であることが好ましい。有機不純物の含有
量は、30ppb以下であることが好ましく、例えば、炭
化水素系不純物、酸化防止剤劣化物、および、樹脂酸化
劣化物であるアルコール若しくはカルボン酸化合物のよ
うな不純物の含有量は、それぞれ20ppb以下、5ppb以
下、5ppb以下であることが好ましい。また、金属不純
物であるCa、K、Fe、およびCrの含有量は、それ
ぞれ5ppb以下であることが好ましい。さらに、本発明
の洗浄方法を使用することにより、樹脂に付着している
パーティクルをほぼ完全に除去することができる。
る。
樹脂を使用したプラスチック製磁気記録媒体用基板に関
する。
板では、上述の熱可塑性ノルボルネン系樹脂の精製方法
で精製された樹脂を使用する。
板は、当業者に公知の、射出成形法により成形される。
具体的には、市販の射出成形装置にスタンパーを固定し
た金型を用い、所定の樹脂温度、射出速度、型締圧力を
用い、さらに金型温度として固定側/可動側をそれぞれ
適切な温度に設定して射出成形を行えばよい。例えば、
射出成形の条件として、樹脂温度を350℃、射出速度
を170mm/s、型締圧力を70kg/cm2に設定
することができる。また、金型温度を、例えば固定側/
可動側=130℃/130℃に設定することができる。
このような条件下で、例えば、略φ95mm×1.27
mmtの磁気記録媒体用基板を製造することができる。
上の表面欠陥(凹凸欠陥)が100個/面以下であるこ
とが好ましい。
る。
使用した磁気記録媒体に関する。
精製された熱可塑性ノルボルネン系樹脂を用いて射出成
形により製造された磁気記録媒体用基板を使用する。
す。図1は、本発明の磁気記録媒体の構造断面図であ
る。
熱可塑性ノルボルネン系樹脂を射出成形して得られたプ
ラスチック製基板を基板1として使用する。その上に中
間層2、非磁性下地層3、磁性層4、保護層5及び液体
潤滑層6を順次形成し、磁気記録媒体とする。上記中間
層2、非磁性下地層3、磁性層4、保護層5及び液体潤
滑層6は、従来から使用されている材料を使用すること
ができる。具体的には、中間層2は、例えばNi−Al
よりなる金属層であり、非磁性下地層3は、例えばCr
よりなる下地層であり、磁性層4はCo合金、例えば強
磁性合金であるCo−Cr−Pt、Co−Cr−Taな
どであり、保護層5は、例えばカーボン保護層などであ
り、更に液体潤滑層6はパーフルオロポリエーテル系潤
滑剤のようなフッ素系潤滑剤等である。
たが、この構造は一例であり、磁気記録媒体の目的に応
じて種々の変更が可能である。例えば、本発明では、中
間層2を設けなくてもよい。
する機器に合わせることができ、特に限定されない。例
えば、HDDに使用されるような磁気記録媒体であれば
円盤状の記録媒体であればよい。
温、低湿環境下に放置された場合であっても、膨れ現象
を完全に抑制することができる。本発明の磁気記録媒体
は、媒体の膨れが、媒体あたりゼロであることが好まし
い。本発明では、径が1から2μm以上、高さが0.1
から1μm以上の媒体の膨れが、媒体あたりゼロである
ことが特に好ましい。
る。
である。該製造方法は、熱可塑性ノルボルネン系樹脂を
精製する工程、精製された熱可塑性ノルボルネン系樹脂
を射出成形し、プラスチック製磁気ディスク用基板を形
成する工程、該基板上に、少なくとも磁性層、保護層及
び液体潤滑層を順次形成する成膜工程とを具備する。本
発明の磁気記録媒体の製造方法においては、上記精製工
程が、熱可塑性ノルボルネン系樹脂を洗浄液中で洗浄す
る洗浄工程を含み、前記洗浄液が2−プロパノール、ま
たは2−プロパノールとH2Oとの混合溶媒であること
を特徴とする。
程は、上記第一の発明で説明した通りである。また、プ
ラスチック製磁気ディスク用基板は、上記第二の発明で
説明した射出成形により得られる。
に磁気記録を可能とする層構造を積層する工程(成膜工
程)は、この基板上に中間層2をスパッタ法等で形成
し、次いで、この中間層2上に非磁性下地層3をコート
し、その上に磁性層4及び保護層5を順次形成する。こ
の後、溶媒で希釈した潤滑剤を前記保護層5の表面に塗
布する。本発明では、前記非磁性下地層3はCr層であ
り、前記磁性層4はCo−14Cr−4Ta合金層であ
ることが好ましい。また、保護層5がカーボン保護層で
ある場合、通常のグラファイトを主体としたカーボン保
護層であってもDLC保護層であってもよい。さらに、
液体潤滑層6はパーフルオロポリエーテル系潤滑剤のよ
うなフッ素系潤滑剤等であることが好ましい。
は、これらが例えばCr非磁性下地層、Co−14Cr
−4Ta磁性合金層及びカーボン保護膜である場合、ス
パッタ法によって形成することができる。また、潤滑層
6は、ディップコート法、スピンコート法等により塗布
することができる。
層4、保護層5及び潤滑層5の厚さは通常の磁気記録媒
体で用いられる厚さである。
ではない。例えば、本発明においては、中間層2を設け
なくてもよい。
説明する。
浄するにあたり、洗浄液、洗浄時間について、表4の方
法にて検討を行った。
(株)製のZEONEX280R)2kgを分液ロート
中で、洗浄液である超純水4Lに浸し、洗浄方法1にし
たがって精製した。即ち、前記樹脂および超純水の入っ
た分液ロートを、シェーカー(例えば、日本理化学機械
工業(株)製)にセットし、200mm/sの震盪速度
で2時間震盪し、12時間静置した。
超純水を加え、2から3分震盪し、静置した後超純水を
抜き取った。同様の操作を合計4回繰り返してペレット
をリンスし、さらに流水で5分以上リンスした。次に、
付着している液を100℃で24時間乾燥し、さらに1
00℃で8時間真空乾燥して液を完全に取り除いた。精
製された樹脂ペレットの一部は、後述する特性の評価の
欄で説明する不純物含量の測定に使用した。
し、市販されている最大射出成形圧力70tの射出成形
装置を用いて射出成形して、略φ95mm×1.27m
mtの磁気記録媒体用基板を調製した。射出成形は、上
記射出成型装置にスタンパーを固定した金型を用い、樹
脂温度350℃、射出速度170mm/s、型締圧力7
0kg/cm2、金型温度:固定側/可動側=130℃
/130℃で行った。
Cr層を500Å、Co−14Cr−4Ta磁性層を3
00Å、カーボン保護層を80Åと順次形成し、さらに
スパッタ後の表面にテープパニッシュを行い、フッ素系
潤滑剤(アウジモント製、FOMBLlNZ−DOL
等)をスピンコート法で20Å形成し、磁気記録媒体を
得た。
(株)製のZEONEX280R)と、表4に示した洗
浄液(樹脂と洗浄液の割合は、樹脂:洗浄液=1:2
(重量/容積)である。)を分液ロート中に加え、洗浄
方法2にしたがって精製した。即ち、前記樹脂および洗
浄液の入った分液ロートを、シェーカー(例えば、日本
理化学機械工業(株)製)にセットし、200mm/s
の震盪速度で2時間震盪し、2時間静置した。
と同成分の溶液を加え、2から3分震盪し、静置した
後、溶液を抜き取った。同様の操作を合計2回繰り返し
てペレットをリンスした。次に、18mΩ・cm以上の
超純水で2回上述のリンスのようにペレットをリンスし
た。リンスした樹脂を、さらに流水で5分以上リンスし
た。次に、付着している液を100℃で24時間乾燥
し、さらに100℃で8時間真空乾燥して液を完全に取
り除いた。精製された樹脂ペレットの一部は、後述する
特性の評価の欄で説明する不純物含量の測定に使用し
た。
し、市販されている最大射出成形圧力70tの射出成形
装置を用いて射出成形して、略φ95mm×1.27m
mtの磁気記録媒体用基板を調製した。射出成形は、上
記射出成型装置にスタンパーを固定した金型を用い、樹
脂温度350℃、射出速度170mm/s、型締圧力7
0kg/cm2、金型温度:固定側/可動側=130℃
/130℃で行った。
処理を施し、磁気記録媒体を調製した。
4の洗浄方法3にした以外は実施例3と同様にして、精
製した樹脂ペレットおよび磁気記録媒体用基板を調製し
た。
処理を施し、磁気記録媒体を調製した。
4の洗浄方法4にした以外は実施例3と同様にして、精
製した樹脂ペレットおよび磁気記録媒体用基板を調製し
た。
処理を施し、磁気記録媒体を調製した。
4の洗浄方法5にした以外は実施例3と同様にして、精
製した樹脂ペレットおよび磁気記録媒体用基板を調製し
た。
処理を施し、磁気記録媒体を調製した。
4の洗浄方法6にした以外は実施例3と同様にして、精
製した樹脂ペレットおよび磁気記録媒体用基板を調製し
た。
膜処理を施し、磁気記録媒体を調製した。
ンス洗浄せずに使用し、実施例1で説明したようにして
磁気記録媒体用基板を調製した。
処理を施し、磁気記録媒体を調製した。
9、11および比較例1の樹脂ペレットの不純物量、並
びに、これらの実施例および比較例で作成された磁気記
録媒体用基板の表面欠陥の個数を評価した。
説明した分析方法と同じである。また、表面欠陥の個数
は、光学顕微鏡により計数した。
形された磁気記録媒体用基板上の面内の欠陥個数を表6
に示す。
ットの純度が良くなるにしたがって、成形された磁気記
録媒体用基板の表面欠陥個数も減少する。
から示されるように、これら実施例の洗浄液中で2時間
震盪した後、IPA:H2O=1:1混合液(実施例
5)で12時間以上、IPA:H2O=2:1混合液
(実施例7および9)で2時間以上、IPA(実施例1
1)で12時間以上浸漬することで、基板上の表面の欠
陥個数を100個以下に抑制することができる。
は、熱可塑性ノルボルネン系樹脂ペレットの表面が疎水
性のため、水を弾いてしまい、ペレット内部まで水が浸
透せず、洗浄の効果はほとんどなかった。
IPAとH2Oとの混合溶媒を使用することで、樹脂ペ
レット表面に対する濡れ性が高まり、樹脂内部への洗浄
液が浸透するようになる。加えて、これらの洗浄液を使
用し、一定時間以上揺動および浸漬することで、ペレッ
ト内部まで洗浄液がさらに浸透し、不純物の除去効果が
高まる。特に、主要な欠陥である前述の欠陥1、2およ
び3は、全て樹脂ペレットに含有される樹脂の酸化によ
る劣化物(アルコール、カルボン酸等)や酸化防止剤の
劣化物(フェノール系化合物の劣化物)等の有機系不純
物が核となり成形される欠陥であると考えられることか
ら、本発明の洗浄液を使用することで、これら不純物の
除去を効率的に行うことができる。
おいては、表5に示されるように、有機系不純物に対す
る除去効果は高いものの、金属およびイオン系不純物に
対する除去効果はIPAとH2Oとの混合溶媒系に比較
し、やや低下する。この結果、基板表面の欠陥個数は、
本発明の基準(欠陥個数100個以下)を満たすが、I
PAとH2Oとの混合溶媒系に比較して若干数が増加し
た。
および比較例2で調製した磁気記録媒体の環境信頼性試
験を行った。この試験は、調製した磁気記録媒体を、6
0℃、湿度(RH)80%下に4時間放置し、次いで2
5℃、湿度(RH)10%に戻し、さらに−40℃、湿
度(RH)10%下に4時間放置放置し、最後に25
℃、湿度(RH)10%に戻すという条件で行った。こ
の試験後に、磁気記録媒体表面に発生する所定レベル
(高さ0.1から1μm以上、径1から2μm以上)の
膨れを計数した。膨れの計数は、光学顕微鏡により行っ
た。結果を表7に示す。
よび10で調製された磁気記録媒体は、膨れ個数がゼロ
であった。これらの結果は、実施例5、7および9で示
される洗浄の条件(洗浄液中で2時間震盪した後、IP
A:H2O=1:1混合液で12時間以上、IPA:H2
O=2:1混合液で2時間以上洗浄)が優れた効果を有
することを示す。また、実施例12(IPAのみで洗
浄)の場合には、金属およびイオン系不純物に対する除
去効果がIPAとH2Oとの混合溶媒系に比較してやや
低下するため、若干の欠陥が観測された。
板へ吸収された水分と、基板と磁性層の界面に存在する
親水性不純物(アルコールやカルボン酸化合物、イオ
ン、金属不純物等)とが相互作用し、磁気記録媒体表面
へ拡散することによるものである。しかし、本発明の磁
気記録媒体では、精製された熱可塑性ノルボルネン系樹
脂を使用した磁気記録媒体用基板を用いているため、基
板表面へ存在する不純物も極めて少ない。従って、媒体
の膨れを完全に抑制することができる。このように、本
発明の磁気記録媒体は、環境信頼性においても優れた効
果を有する。
精製方法により、該樹脂に含有される親水性有機不純物
(アルコール、カルボン酸のような樹脂の酸化による劣
化物)、フェノール系の酸化防止剤が劣化することによ
り生じた酸化防止剤劣化物、炭化水素系不純物、イオン
性不純物、金属性不純物等を一定量以下に制御すること
ができる。
明の精製方法で精製された熱可塑性ノルボルネン系樹脂
を射出成形して作製され、基板表面上の凹凸の欠陥が極
めて少ない高精度な表面を有する。
常湿のみでなく、高温、高湿や低温、低湿のヒートショ
ックのような環境信頼性試験においても膨れを発生せ
ず、高精度で高信頼性である。
のような表面欠陥の少ない高精度で高信頼性である磁気
記録媒体を、大量且つ安価に生産することが可能となる
ので、工業的な価値が極めて大きい。
表す構造断面図である。
Claims (10)
- 【請求項1】 熱可塑性ノルボルネン系樹脂の有機不純
物、イオン性不純物、およびパーティクルを洗浄液によ
り除去する洗浄工程を具備した熱可塑性ノルボルネン系
樹脂の精製方法であって、前記洗浄液が2−プロパノー
ル、または2−プロパノールとH2Oの混合溶媒である
ことを特徴とする精製方法。 - 【請求項2】 前記2−プロパノールとH2Oの混合溶
媒が、2−プロパノール:H2O=1:1から2−プロ
パノール:H2O=5:1の割合の混合溶媒であること
を特徴とする請求項1に記載の熱可塑性ノルボルネン系
樹脂の精製方法。 - 【請求項3】 熱可塑性ノルボルネン系樹脂中の前記有
機不純物が30ppb以下となり、前記イオン性不純物が
5ppb以下となり、前記金属不純物が5ppb以下となるこ
とを特徴とする請求項1または2に記載の精製方法。 - 【請求項4】 前記有機不純物が、炭化水素系不純物、
酸化防止剤劣化物および樹脂酸化劣化物であり、これら
不純物の量が、20ppb以下の炭化水素系不純物、5ppb
以下の酸化防止剤劣化物、および5ppb以下の樹脂酸化
劣化物となることを特徴とする請求項3に記載の精製方
法。 - 【請求項5】 熱可塑性ノルボルネン系樹脂を射出成形
して得られるプラスチック製磁気記録媒体用基板であっ
て、該熱可塑性ノルボルネン系樹脂が、請求項1から4
の何れか1項に記載の精製方法により精製された熱可塑
性ノルボルネン系樹脂であることを特徴とする磁気記録
媒体用基板。 - 【請求項6】 基板表面上の1μm以上の凹凸欠陥が1
00個/面以下であることを特徴とする請求項5に記載
の磁気記録媒体用基板。 - 【請求項7】 基板上に、少なくとも磁性層、保護層お
よび液体潤滑層が形成されている磁気記録媒体であっ
て、前記基板が請求項5または6に記載のプラスチック
製磁気記録媒体用基板であることを特徴とする磁気記録
媒体。 - 【請求項8】 前記磁気記録媒体が、温度60℃、湿度
80%、温度−40℃、湿度10%、またはこれらを組
み合せた条件下に放置された場合、径が1から2μm以
上、高さが0.1から1μm以上の基板上の膨れの発生
がゼロであることを特徴とする請求項7に記載の磁気記
録媒体。 - 【請求項9】 熱可塑性ノルボルネン系樹脂を精製する
工程、精製された熱可塑性ノルボルネン系樹脂を射出成
形し、プラスチック製磁気ディスク用基板を形成する工
程、該基板上に、少なくとも磁性層、保護層及び液体潤
滑層を順次形成する成膜工程とを具備する磁気記録媒体
の製造方法において、前記精製工程が、熱可塑性ノルボ
ルネン系樹脂を洗浄液中で洗浄する洗浄工程を含み、前
記洗浄液が2−プロパノール、または2−プロパノール
とH2Oとの混合溶媒であることを特徴とする磁気記録
媒体の製造方法。 - 【請求項10】 前記2−プロパノールとH2Oとの混
合溶媒が、2−プロパノール:H2O=1:1から2−
プロパノール:H2O=5:1の割合の混合溶媒である
ことを特徴とする請求項9に記載の磁気記録媒体の製造
方法。
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