JP2001289848A - 蛍光インターカレータおよび相補性核酸断片の検出方法 - Google Patents

蛍光インターカレータおよび相補性核酸断片の検出方法

Info

Publication number
JP2001289848A
JP2001289848A JP2001024395A JP2001024395A JP2001289848A JP 2001289848 A JP2001289848 A JP 2001289848A JP 2001024395 A JP2001024395 A JP 2001024395A JP 2001024395 A JP2001024395 A JP 2001024395A JP 2001289848 A JP2001289848 A JP 2001289848A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
group
fluorescent
intercalator
nucleic acid
acid fragment
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2001024395A
Other languages
English (en)
Other versions
JP4267208B2 (ja
Inventor
Yoshihiko Makino
快彦 牧野
Masashi Ogawa
雅司 小川
Makoto Takagi
誠 高木
Shigeori Takenaka
繁織 竹中
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Fujifilm Holdings Corp
Original Assignee
Fuji Photo Film Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Fuji Photo Film Co Ltd filed Critical Fuji Photo Film Co Ltd
Priority to JP2001024395A priority Critical patent/JP4267208B2/ja
Publication of JP2001289848A publication Critical patent/JP2001289848A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4267208B2 publication Critical patent/JP4267208B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Lifetime legal-status Critical Current

Links

Abstract

(57)【要約】 【課題】 相補性を有する二本鎖核酸断片あるいは部分
相補性を有する二本鎖核酸断片等の検出において、特に
有効に用いることが可能な新規な水溶性インターカレー
タ蛍光インターカレータ、及び核酸断片の検出方法を提
供すること。 【解決手段】 下記式で表わされる水溶性の蛍光インタ
ーカレータを用いる。 F − La − X [Fは蛍光性基、Xは環状基、そしてLaは連結基であ
って、少なくともXとLaのいずれかは、該インターカ
レータに、水溶性を付与できるか、あるいは水溶性を付
与できる基に変換し得る部位を有する]。Xには、−L
b−Z[Zは非蛍光性基、そしてLbは連結基である]
で表わされる置換基が結合していることが好ましい。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、試料中の核酸断片
などのオリゴヌクレオチドもしくはポリヌクレオチドを
DNAチップと蛍光インターカレータとを用いて蛍光法
により検出する方法に関する。本発明はまた、該蛍光法
を用いる検出方法に有利に使用できる蛍光インターカレ
ータにも関する。
【0002】
【従来の技術】生物学、医学分野での遺伝子解析におい
ては、特定の配列を有する核酸断片を検出する方法とし
て、ハイブリダイゼーション法が用いられている。この
中でも特に、目的とする遺伝子を特異的に検出すること
ができる方法として、サザンハイブリダイゼーション法
(サザンブロッティング法)が、一般的に有用されてい
る。サザンハイブリダイゼーション法では、まず試料D
NAを一種類以上の制限酵素でフラグメントとし、アガ
ロースゲル電気泳動あるいはポリアクリルアミドゲル電
気泳動にかけてその分子量サイズによって分画ごとに分
離する。次に、分離した試料DNA断片を一本鎖に変性
した後、ナイロン・フィルターもしくはニトロセルロー
ス・ペーパーに固定化する。そして、その試料DNA断
片と、この試料DNA断片に相補性を有する放射性同位
元素で標識された一本鎖DNA断片とをハイブリダイズ
させた後、洗浄後のフィルターをオートラジオグラフィ
ーにかけ現像することによって、相補性DNAとハイブ
リダイズする特定の塩基配列を有する試料DNA断片を
検出することができる。
【0003】しかし、上記のサザンハイブリダイゼーシ
ョン法を含めた放射性同位元素を用いる方法は、標識と
して放射性同位元素を用いるため、検出に長時間を要
し、明確なバンドを得難いばかりでなく、放射性物質取
り扱いやコストの点において実用上の問題がある。
【0004】サザンハイブリダイゼーション法では、放
射性同位元素による標識の代わりに蛍光による標識法も
知られている。蛍光を用いる検出方法は、安全性、迅速
さ、及び感度の点で現在のところ最も優れた方法であ
る。例えば、DNAマイクロアレイ上に固定されている
DNA断片と、蛍光物質で標識した試料DNA断片をハ
イブリダイズさせて、試料DNA断片を検出するDNA
マイクロアレイ技術は既に有用されている(蛋白質・核
酸・酵素,Vol.,43,No.13,2004-2011(1998))。蛍光物質
としては、シアニン色素であるCy3(登録商標)やC
y5(登録商標)を使用することができるが、これらは
高価であるばかりでなく、試料DNA断片への取り込み
率が1%程度と低いため、試料DNA断片の充分な標識
ができないという問題点を有する。
【0005】一方、特開平9−288080号公報に
は、出力端子を備えた電極に、試料DNA断片および電
気化学活性縫い込み型インターカレータを接触させ、電
極上に固定されているDNA断片と試料DNA断片とで
形成されるハイブリッドDNAに結合(「結合」とは、
一定の速度で、当該インターカレータのハイブリッドD
NAの塩基対間への挿入、および塩基対間からの離脱が
繰り返されている状態をいう。)した当該インターカレ
ータと電極との間を流れる電流量を測定することによっ
て、試料DNA断片を検出する方法が開示されている。
この方法では、標識した試料DNA断片を調製する必要
がない。特開平9−288080号公報に開示された電
気化学活性縫い込み型インターカレータは、ナフタレン
ジイミド基の両端部に、酸化還元活性を持つフェロセン
分子が結合した構造を有し、二つの塩基対間に一個の割
合で、ナフタレンジイミド部分が二本鎖DNA断片に結
合するため、非塩基対部分の認識も可能である。上記の
電気化学的検出法は、電極表面の処理やハイブリダイゼ
ーションの条件を改良することによって、現在では蛍光
法とほぼ同程度の感度を達成できるようになっている。
【0006】前述したように、蛍光法は高い感度を有す
る点で非常に有用な方法である。そこで、上記の縫い込
み型インターカレータによる検出方法と同様の原理で、
蛍光性の縫い込み型インターカレータが利用できれば、
その有用性は非常に高いと考えられ、開発が行なわれて
いる。
【0007】これまで、蛍光インターカレータとして
は、アクリジン色素が知られている。しかし、このアク
リジン色素は二本鎖DNA断片からの脱離反応が速いと
いう問題点を有する。一方、蛍光インターカレータとし
て、両端部にアクリジン色素が結合した下記式で表され
る、N,N−ビス{3−[4−(3−(6−クロロ−9
−イミノ−2−メトキシアクリジニル)プロピル)−
1,4−ジアザシクロヘキシル]プロピル}ナフタレン
ジイミドも知られている(Bull.Chem.Soc.Jpn.,72,327-
337 (1999))。
【0008】
【化2】
【0009】上記記載のインターカレータを用いると、
ナフタレンジイミド部分がハイブリッド複合体の塩基対
間に結合し、さらに、両端部の二つのアクリジン分子も
それぞれ塩基対間に結合する様式で二本鎖DNA断片と
の複合体を形成するため、高い感度での二本鎖DNA断
片の検出が可能であると考えられる。
【0010】しかしながら、本発明者の検討によると、
水溶液中でのハイブリッド複合体への挿入と脱離とは平
衡関係にあるため、上記の蛍光インターカレータもま
た、蛍光法による測定対象の水溶液中において相当割合
にて脱離状態で存在し、この脱離状態の蛍光インターカ
レータもまた強い蛍光を示すため、充分なS/N比が達
成できないこと(即ち、溶液中の蛍光インターカレータ
から発せられる蛍光の強度に体する蛍光インターカレー
タが挿入されたハイブリッド複合体部分から発せられる
蛍光の強度の相違が充分高くないこと)が判明した。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、相補性を有
する二本鎖核酸断片あるいは部分相補性を有する二本鎖
核酸断片等の検出において、特に有効に用いることが可
能な新規な水溶性型蛍光インターカレータ、および相補
性を有する核酸断片の検出方法を提供することを、その
課題とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明は、下記一般式
(I)で表わされる水溶性の蛍光インターカレータにあ
る:
【化3】F − La − X −−−(I) [但し、Fは蛍光性基、Xは環状基、そしてLaは連結
基であって、少なくともXとLaのいずれかは、該イン
ターカレータに、水溶性を付与できるか、あるいは水溶
性を付与できる基に変換し得る部位を有する]。本発明
の蛍光インターカレータは、その水溶性塩の状態にあっ
てもよい。
【0013】一般式(I)において、Xには、−Lb−
Z[但し、Zは非蛍光性基、そしてLbは連結基であ
る]で表わされる置換基が結合していることが好まし
い。すなわち、下記の一般式(Ia)で現われる蛍光イ
ンターカレータが好ましい。 F−La−X−Lb−Z −−−(Ia)
【0014】本発明はまた、基板に固定されたヌクレオ
チド誘導体もしくはその類縁体からなる一群のプローブ
分子に相補性を示すオリゴヌクレオチド試料あるいはポ
リヌクレオチド試料を蛍光法で検出するための下記の工
程からなる方法:上記プローブ分子に、請求項1に記載
の蛍光インターカレータそして水の存在下にて、相補性
のオリゴヌクレオチド試料あるいはポリヌクレオチド試
料を接触させることにより、プローブ分子と相補性のオ
リゴヌクレオチド試料あるいはポリヌクレオチド試料と
をハイブリダイズさせて、上記蛍光インターカレータの
少なくとも一部分が挿入されたハイブリッド構造体を形
成させる工程、そして基板上のハイブリッド構造体に挿
入された蛍光インターカレータから発せられる蛍光を検
出する工程にもある。
【0015】さらに、本発明は、基板に固定されたヌク
レオチド誘導体もしくはその類縁体からなる一群のプロ
ーブ分子に相補性を示すオリゴヌクレオチド試料あるい
はポリヌクレオチド試料を蛍光法で検出するための下記
の工程からなる方法:上記プローブ分子に、水の存在下
で、相補性のオリゴヌクレオチド試料あるいはポリヌク
レオチド試料を接触させることにより、プローブ分子と
相補性のオリゴヌクレオチド試料あるいはポリヌクレオ
チド試料とをハイブリダイズさせて、基板上にハイブリ
ッド構造体を形成させる工程、請求項1に記載の蛍光イ
ンターカレータを水の存在下にて上記ハイブリッド構造
体と接触させて、該蛍光インターカレータの少なくとも
一部分が挿入されたハイブリッド構造体を形成させる工
程、そして基板上のハイブリッド構造体に挿入された蛍
光インターカレータから発せられる蛍光を検出する工程
にもある。
【0016】本発明の水溶性蛍光インターカレータの好
ましい態様は以下の通りである。 (1)Xが、縮合環を有する芳香族基である。 (2)Xが、ナフタレンジイミド基、アントラキノン
基、もしくはアントラセン基である。 (3)Fが、芳香族基を含む蛍光性基である。 (4)Fが、アクリジン基、インドシアニン基、もしく
はアザインドレニンシアニン基である。 (5)Zが、芳香族基を含まない非蛍光性基である。 (6)Zが、酸素原子、窒素原子及び/又は硫黄原子を
含む非蛍光性基である。 (7)Zが、アミノ基、カルボン酸基、スルホン酸基、
スルフィン酸基、スルフェン酸基、ヒドラジノ基、カル
バモイル基、水酸基、イミノ基、もしくはメルカプト基
である。
【0017】(8)La及び/又はLbが、芳香族基を
含まない連結基である。 (9)La及び/またはLbが、イミノ基、1,4−ピ
ペラジニル基、−O−、−S−、−CONH−、及び/
又は−SO2−を含む連結基である。 (10)LaのFからXまでの最も近い連結路に沿って
数えた主鎖の原子の数が2〜50の範囲にある。 (11)La−X−Lbの、FからZまでの最も近い連
結路に沿って数えた主鎖の原子の数が10〜100の範
囲にある。
【0018】本発明のDNA断片などのオリゴヌクレオ
チド試料あるいはポリヌクレオチド試料を蛍光法で検出
するための方法は、基板表面に一本鎖核酸断片を固定し
てなる核酸分析素子の該表面に、試料一本鎖核酸断片
を、液相かつ本発明の水溶性型蛍光インターカレータの
存在下で接触させる工程を含むことを特徴とする、該一
本鎖核酸断片に対して該相補性を有する核酸断片の検出
方法である。この方法で用いる核酸分析素子は、一般に
DNAチップと呼ばれる分析素子に代表されるものであ
って、「固定」とは、核酸断片の一方の末端部が基板表
面に化学結合している状態のみならず、結合はしていな
いが末端部付近が静電気的な相互作用によって仮固定状
態であるものも含む(Schena,M.et al.,Proc.Natl.Acad.
Sci.USA 93,10614-10619(1996)) 。
【0019】
【発明の実施の形態】本発明の新規な水溶性蛍光インタ
ーカレータ(以下、単に、蛍光インターカレータとい
う)は、下記一般式(I)あるいは(Ia)で示す化合
物である。本発明の蛍光インターカレータは、下記式に
示すように蛍光性基を一方の端部側にのみ有することを
特徴とする。
【0020】
【化4】F − La − X −−−(I) F−La−X−Lb−Z −−−(Ia)
【0021】[但し、Fは蛍光性基、Xは環状基、そし
てLaは連結基であって、少なくともXとLaのいずれ
かは、該インターカレータに、水溶性を付与できるか、
あるいは水溶性を付与できる基に変換し得る部位を有す
る。なお、Zは非蛍光性基、そしてLbは連結基であ
る]。
【0022】上記式中、Xは、本発明の蛍光インターカ
レータのコア部分であり、置換基を有していてもよい一
価もしくは二価の環状基を表す。環状基としては、平面
性を有する環状基であることが好ましく、窒素原子に結
合手を有するナフタレンジイミド基、2位、6位、1位
もしくは5位(好ましくは、2位もしくは6位)に結合
手を有するアントラセン基、アントラセン基と同じ位置
に結合手を有するアントラキノン基、2位もしくは6位
に結合手を有するフルオレン基、2位ともしくは6位に
結合手を有するビフェニレン基、2位もしくは7位に結
合手を有するフェナントレン基、および2位もしくは7
位に結合手を有するピレン基からなる群より選ばれる環
状基であることが好ましく、二つの窒素原子に結合手を
有するナフタレンジイミド基であることが特に好まし
い。置換基としては、ハロゲン原子(F、Cl、Br、
I等)、あるいは炭素原子数が1乃至6のアルキル基で
あることが好ましいが、水素原子であることが好まし
い。炭素原子数が1乃至6のアルキル基としては、メチ
ル基、エチル基、もしくはn−プロピル基であることが
好ましい。
【0023】Xの具体例を下記に示す。*印は、結合手
の位置を示す。
【0024】
【化5】
【0025】Fは、蛍光性基(一つの結合手を有する蛍
光発生基)を表す。蛍光発生基は、特定の波長、例え
ば、波長が400乃至700nmの範囲(好ましくは、
400乃至550nmの範囲)にある励起光の照射によ
って蛍光を発する基であることが好ましい。このような
蛍光発生基となる化合物としては、インドシアニン系化
合物、アザインドレニンシアニン系化合物、アクリジン
系化合物、および溝結合型化合物(groove binder)を
挙げることができる。ここで、溝結合型化合物とは、一
般的に、その分子内に四級カチオン性基を有し、そのカ
チオン性基の存在によって、二本鎖核酸断片のリン酸エ
ステル基のアニオンと強く相互作用する化合物をいう。
溝結合型化合物は、そのコア部分(X)と蛍光性基
(F)とが塩基対を介して積層した状態で二本鎖核酸断
片に結合する。なお、「結合」とは、一定の速度で、蛍
光インターカレータの二本鎖核酸断片の塩基対間への挿
入、および塩基対間からの離脱が繰り返されている状態
をいう。
【0026】下記に、インドシアニン系化合物(I
I)、アザインドレニンシアニン系化合物(III)、
アクリジン系化合物(IV)、および溝結合型化合物
(V)の具体例をこの順に、一つの結合手を有する構造
として示す。結合手の位置を*印で示す。
【0027】
【化6】(II)
【0028】
【化7】(III)
【0029】
【化8】(III)
【0030】
【化9】(III)
【0031】
【化10】(IV)
【0032】
【化11】(V)
【0033】
【化12】(V)
【0034】
【化13】(V)
【0035】上記式中、Aは、酸素原子あるいはイオウ
原子を示す。
【0036】
【化14】(V)
【0037】LaおよびLbは、互いに独立に、蛍光イ
ンターカレータに可溶性を付与する基を含む二価の連結
基であることが好ましく、その直鎖部分が炭素原子数が
3乃至10の炭化水素基に相当する長さを有する基を持
つことが好ましい。ここで、直鎖部分とは、Laに関し
ては、その一方の端部がコア部分(X)と縮合し、かつ
他方の端部がFと縮合する部分、Lbに関しては、その
一方の端部がコア部分(X)と縮合し、かつ他方の端部
がZと縮合する部分をいう。LaとLbは、蛍光インタ
ーカレータの調製の都合上、互いに同一の基であること
が好ましい。なお、Laは、二価の連結基中に、アルキ
レン基と、窒素原子を有する二価の基とを含む連結基で
あることがさらに好ましい。窒素原子を有する二価の基
は、Laの直鎖部分に含むことが好ましい。窒素原子を
有する二価の基としては、イミノ基、1,4−ピペラジ
ニル基、1,3−イミダゾリジニル基、ピロリジニル
基、二価のピラゾリジニル基、あるいは二価のピペリジ
ニル基であることが好ましく、イミノ基、あるいは1,
4−ピペラジニル基であることが特に好ましい。
【0038】窒素原子は、炭素原子数が1乃至3のアル
キル基、炭素原子数が2乃至4のアシル基、炭素原子数
が6乃至20のアリール基および炭素原子数が1乃至3
のアルキル基を有する炭素原子数が7乃至23のアラル
キル基からなる群より選ばれる基で置換されていてもよ
い。炭素原子数が1乃至3のアルキル基としては、メチ
ル基もしくはエチル基であることが好ましく、メチル基
であることが特に好ましい。炭素原子数が2乃至4のア
シル基としては、アセチル基であることが好ましい。炭
素原子数が6乃至20のアリール基としては、フェニル
基もしくはナフチル基であることが好ましく、フェニル
基であることが特に好ましい。炭素原子数が1乃至3の
アルキル基を有する炭素原子数が7乃至23のアラルキ
ル基としては、ベンジル基であることが好ましい。イミ
ノ基の置換基としては、メチル基であることが特に好ま
しい。従って、La(もしくはLb)は、N−メチル−
ジ(n−プロピレニル)イミノ基、1,4−ジ(n−プ
ロピレニル)−ピペラジニル基であることがさらに好ま
しく、N−メチル−ジ(n−プロピレニル)イミノ基で
あることが特に好ましい。
【0039】LaおよびLbは、イミノ基、チオエーテ
ル基、カルボニルオキシ基、チオカルボニルオキシ基も
しくはカルボニル基を含むことがより好ましく、イミノ
基、チオエーテル基もしくはカルボニル基を含むことが
さらに好ましく、イミノ基を含むことが特に好ましい。
【0040】Zは、非蛍光性基を表し、アミノ基、カル
ボン酸基、スルホン酸基、スルフィン酸基、スルフェン
酸基、ヒドラジノ基、カルバモイル基、水酸基、イミノ
基およびメルカプト基からなる群より選ばれる基である
ことが好ましく、アミノ基、カルボン酸基、スルホン酸
基あるいはメルカプト基であることがより好ましく、ア
ミノ基であることが特に好ましい。
【0041】本発明の蛍光インターカレータは、一般的
に、水性溶媒条件下で用いられるため、水溶性であるこ
とが必要とされる。インターカレータに水溶性を付与す
るために、前記記載のように、X、LaあるいはLbに
可溶性を付与する基を含めることも好ましいが、インタ
ーカレータの塩として用いてもよい。塩としては、塩酸
塩、硫酸塩、炭酸塩、リン酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化
水素酸塩等の無機塩との酸付加塩、あるいは酢酸塩、シ
ュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、フ
マル酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、クエン酸塩、酒石酸
塩、メタンスルホン酸塩等の有機酸との付加塩、または
ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウ
ム塩等の無機塩類、あるいはピリジン塩、アンモニウム
塩、トリエチルアミン塩、エタノールアミン塩等の有機
塩類を挙げることができる。
【0042】本発明の蛍光インターカレータは、公知の
方法(特開平9−288080号公報)を利用して簡便
に製造することができる。この方法では、蛍光性基が二
つ導入されたものも得られるが、反応条件を変えて、あ
るいは反応生成物の分離精製を行って本発明の蛍光イン
ターカレータのみを得ることができる。
【0043】本発明の蛍光インターカレータの核酸断片
への結合と蛍光の発生との関係について説明する。図1
の(a)に、蛍光インターカレータの液相での積層状態
を示す。蛍光インターカレータは、一定のイオン強度下
では、二本鎖核酸断片もしくは一本鎖核酸断片が存在し
ない場合には、通常、蛍光物質(F)とコア部分(X)
とが積層した状態をとる。しかし、本発明に係るすべて
の蛍光インターカレータがこの積層状態をとるか否かは
明らかではなく、FとXとの組み合わせに依存するもの
と推定される。図では、蛍光物質(F)およびコア部分
(X)以外の基を省略して示す。蛍光物質(F)とコア
部分(X)とが積層している場合には、液相に励起光を
照射しても消光する現象が認められる。
【0044】一方、二本鎖核酸断片の存在下では、蛍光
インターカレータは、図1の(b)に示すように、蛍光
性基(F)およびコア部分(X)が何れも塩基対間に結
合する態様で、二本鎖核酸断片との複合体を形成する。
このとき、蛍光性基(F)およびコア部分(X)は、そ
れぞれ、塩基対間二つに一個の割合で結合する。形成さ
れた複合体に励起光を照射すると、蛍光インターカレー
タは蛍光を発する。また、(c)に示すように、(X)
のみが二本鎖核酸断片に結合する場合にも蛍光の発生が
認められる。前記記載の蛍光インターカレータの一つで
ある溝結合型化合物は、蛍光性基(F)の平面性が高い
ため、主に、図1の(b)に示す態様で結合していると
推定される。
【0045】核酸断片が存在する場合に発せられる蛍光
量は、核酸断片がまったく存在しない場合(消光状態)
に発せられる蛍光量(バックグランド値)に対して、蛍
光強度の値で15乃至50倍の範囲にある。この蛍光強
度の増強現象は、エンハンス効果と呼ばれる。
【0046】一本鎖核酸断片に対しても、蛍光インター
カレータは複合体を形成し得る。しかし、一本鎖核酸断
片の場合には、二本鎖核酸断片の場合と比べて、核酸断
片からの解離速度が非常に速いために、複合体が形成さ
れても即座に解離が起こる。従って、一本鎖核酸断片
は、蛍光インターカレータの存在下では、実質的にほと
んど検出されないものと考える。実際に、一本鎖核酸断
片と蛍光インターカレータとの複合体の解離速度は、二
本鎖核酸断片との複合体のそれと比較して60乃至12
0倍の範囲にある。二本鎖核酸断片と一本鎖核酸断片で
は、そのエンハンス効果に大きな差が認められるため、
容易に二本鎖核酸断片の検出が可能である。
【0047】二本鎖核酸断片は、液相でかつ基板表面に
区画された一つまたは複数の領域のそれぞれに核酸断片
が固定(好ましくは、核酸断片がその一端で固定)され
てなる核酸分析素子上でハイブリダイゼーションによっ
て作製された二本鎖核酸断片であっても、ハイブリダイ
ゼーション以外の方法によって入手した二本鎖核酸断片
であってもよい。後者の場合には、真核生物の細胞や組
織サンプルから単離されたものを用いることが好まし
い。
【0048】上記記載のように、本発明の蛍光インター
カレータは二本鎖核酸断片を特異的に認識するものであ
る。従って、特定の核酸断片(A)に対して相補性を有
する核酸断片(B)を含む試料を付与すると、(A)と
(B)とのハイブリダイゼーションによって形成される
二本鎖核酸断片を簡便に検出することができる。すなわ
ち、試料中の(B)の検出が可能となる。検出は、二本
鎖核酸断片に結合した蛍光インターカレータの蛍光性基
から発生する蛍光量を測定することによって行う。
【0049】ハイブリダイゼーションによって得られる
二本鎖核酸断片は、非塩基対を部分的に有する二本鎖核
酸断片であってもよい。すなわち、本発明の蛍光インタ
ーカレータによって、部分相補性核酸断片をも検出する
ことができる。部分相補性核酸断片とは、核酸断片
(C)に対して相補性を有する核酸断片を(D)とした
ときに、核酸断片(D)と塩基配列が部分的に同一性
(即ち、部分的に非同一性)を示す核酸断片をいう。こ
のような核酸断片としては、核酸断片(D)に関して塩
基欠損、塩基挿入などの塩基配列の変化を有する核酸断
片を挙げることができる。部分相補性核酸断片の検出方
法は、特に遺伝子診断分野での未知の異常遺伝子の探索
・同定に重要な手法である。詳細が特願平11−159
339号の明細書に記載されている。
【0050】以下、本発明の核酸断片の検出方法を、基
板表面に区画された一つまたは複数の領域のそれぞれに
核酸断片が固定(好ましくは、核酸断片がその一端で固
定)されてなる分析素子を用いて、分析素子上の核酸断
片と試料中の一本鎖の核酸断片とのハイブリダイゼーシ
ョンによって得られる二本鎖核酸断片の検出を対象とし
て説明する。
【0051】基板は、疎水性の板状の基板、あるいは親
水性の低い板状の基板であることが好ましい。また、そ
の表面に凹凸を有した平面性の低いものも好ましく用い
ることができる。基板の材質としては、ガラス、セメン
ト、陶磁器等のセラミックスもしくはニューセラミック
ス、ポリエチレンテレフタレート、酢酸セルロース、ビ
スフェノールAのポリカーボネート、ポリスチレン、ポ
リメチルメタクリレート等のポリマー、シリコン、活性
炭、多孔質ガラス、多孔質セラミックス、多孔質シリコ
ン、多孔質活性炭、織編物、不織布、濾紙、短繊維、メ
ンブレンフィルター等の多孔質物質などを挙げることが
でき、上記記載の各種のプラスチック、ガラスもしくは
シリコンであることが特に好ましい。多孔質物質の細孔
の大きさは、2乃至1000nmの範囲にあることが好
ましく、2乃至500nmの範囲にあることが特に好ま
しい。基板が板状である場合には、その厚さは、100
乃至10000μmの範囲にあることが好ましい。
【0052】核酸断片は、目的によって二通りに分ける
ことができる。遺伝子の発現を調べるためには、cDN
A、cDNAの一部、EST等のポリヌクレオチドを使
用することが好ましい。これらのポリヌクレオチドは、
その機能が未知であってもよいが、一般的にはデータベ
ースに登録された配列を基にしてcDNAのライブラリ
ー、ゲノムのライブラリーあるいは全ゲノムをテンプレ
ートとしてPCR法によって増幅して調製する。PCR
法によって増幅しないものも好ましく使用することがで
きる。また、遺伝子の変異や多型を調べるには、標準と
なる既知の配列をもとにして、変異や多型に対応する種
々のオリゴヌクレオチドを合成し、これを使用すること
が好ましい。さらに、塩基配列分析の場合には、4
n(nは、塩基の長さ)種のオリゴヌクレオチドを合成
したものを使用することが好ましい。核酸断片の塩基配
列は、一般的な塩基配列決定法によって予めその配列が
決定されていることが好ましい。核酸断片は、2乃至5
0量体であることが好ましく、10乃至25量体である
ことが特に好ましい。
【0053】核酸断片の基板への固定方法は、核酸断片
の種類および基板の種類に応じて適当な方法を選択する
ことができる(蛋白質・核酸・酵素,Vol.,43,No.13,200
4-2011(1998))。例えば、核酸断片がcDNAやPCR
産物の場合には、DNAの荷電を利用して、ポリリシ
ン、ポリエチレンイミン、ポリアルキルアミン等の陽イ
オンで表面処理した基板に静電結合させる方法を用いる
ことができる。表面処理がされた基板上に、さらに、電
荷を有する親水性の高分子物質等からなる層や架橋剤か
らなる層を設けてもよい。また、基板によっては、その
基板中に親水性の高分子等を含ませることも可能であ
り、このような処理を施した基板も好ましく用いること
ができる。表面処理を行うことによって、疎水性、ある
いは親水性に乏しい基板と核酸断片との静電的な相互作
用を促進することができる。基板としては、表面処理の
容易さと解析の容易さのため、スライドガラスを用いる
ことが好ましい。
【0054】合成ヌクレオチドを固定する場合には、基
板上で直接合成する方法、あるいは予め末端に共有結合
のための官能基を導入したオリゴマーを合成し、表面処
理した基板に共有結合させる方法を用いることができ
る。官能基としては、アミノ基、アルデヒド基、メルカ
プト基、ビオチン等を挙げることができる。基板として
は、ガラスやシリコンを用いることが好ましく、ガラス
やシリコンの表面処理には、公知のシランカップリング
剤を用いることが好ましい。
【0055】基板上に固定される核酸断片は、後述する
検出対象の試料核酸断片であってもよい。以下、基板に
固定される核酸断片を塩基配列が既知の核酸断片とし、
核酸分析素子に接触させる核酸断片を試料核酸断片とす
る。
【0056】核酸断片の固定は、核酸断片の水性液を基
板上の領域に点着して行うことが好ましい。点着後、所
定の温度(好ましくは、室温)でそのまま数時間放置す
ると核酸断片の一端が基板上の領域に固定される。点着
の条件は、使用する基板の種類、大きさ等によって異な
る。点着は、マニュアル操作によっても行うことができ
るが、DNAチップ作製装置に装備されたスポッター装
置を用いて行うことも好ましい。即ち、基板表面に区画
された一つまたは複数の領域に、スポッター装置を用い
て核酸断片の水性液をスポットすることも好ましい。ス
ポッター装置を用いる場合には、点着される核酸断片
は、基板表面に対して、1乃至10-15モルの範囲にあ
ることが好ましく、そして、重量としては数ng以下で
あることが好ましい。
【0057】点着後は、インキュベーションを行うこと
も好ましい。インキュベート後、未点着のDNA断片を
洗浄して除去することが好ましい。
【0058】上記の工程によって作製された分析素子の
寿命は、cDNAが固定されてなるcDNA分析素子で
数週間、オリゴDNAが固定されてなるオリゴDNA分
析素子ではさらに長期間である。これらの分析素子は、
遺伝子発現のモニタリング、塩基配列の決定、変異解
析、多型解析等に利用される。検出原理は、後述する、
試料核酸断片とのハイブリダーゼーションである。
【0059】核酸断片試料としては、その配列や機能が
未知であるDNA断片試料あるいはRNA断片試料を用
いることが好ましい。試料核酸断片は、遺伝子発現を調
べる目的では、真核生物の細胞や組織サンプルから単離
することが好ましい。試料がゲノムならば、赤血球を除
く任意の組織サンプルから単離することが好ましい。赤
血球を除く任意の組織は、末梢血液リンパ球、皮膚、毛
髪、精液等であることが好ましい。試料がmRNAなら
ば、mRNAが発現される組織サンプルから抽出するこ
とが好ましい。mRNAは、逆転写反応によりcDNA
とすることが好ましい。1回のハイブリダイゼーション
に必要なmRNA量としては、測定条件によって異なる
が、数μg以下を用いることが好ましい。分析素子上の
核酸断片がオリゴDNAである場合には、試料核酸断片
は低分子化しておくことが望ましい。
【0060】ハイブリダイゼーションは、前記記載の本
発明の蛍光インターカレータの存在下にて行うことが好
ましい。蛍光インターカレータは、10nM乃至10m
Mの濃度範囲にて用いることが好ましい。ハイブリダイ
ゼーションは、室温乃至70℃の温度範囲で、そして
0.5乃至20時間の範囲で実施することが好ましい。
ハイブリダイゼーションの終了後、界面活性剤と緩衝液
との混合溶液を用いて洗浄を行い、未反応の試料核酸断
片を除去することが好ましい。界面活性剤としては、ド
デシル硫酸ナトリウム(SDS)を用いることが好まし
い。緩衝液としては、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液、
ホウ酸緩衝液、トリス緩衝液、グッド緩衝液等を用いる
ことができるが、クエン酸緩衝液を用いることが特に好
ましい。
【0061】蛍光量の測定は、ハイブリダイゼーション
後の基板を乾燥させるか、あるいは水性溶媒の存在下
に、従来の蛍光レーザースキャナー法によって行っても
よく、あるいは該基板を乾燥させないように基板をカバ
ーガラスで覆い、冷却CCD(電荷結合素子)法によっ
て行ってもよい。
【0062】
【実施例】[製造例]N−{3−[4−(3−(6−ク
ロロ−9−イミノ−2−メトキシアクリジニル)プロピ
ル)−1,4−ジアザシクロヘキシル]プロピル}−
N’−{3−[4−(3−アミノプロピル)−1,4−
ジアザシクロヘキシル]プロピル}ナフタレンジイミド
の製造
【0063】
【化15】
【0064】冷却還流管を付けた200mLのナス型フ
ラスコに、ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボ
ン酸二水和物(1g、3.7ミリモル)と、N,N’−
ビス(3−アミノプロピル)ピペラジン(20mL、
9.2ミリモル)とを入れ、ここに、THF(15m
L)を加えて溶解させた。8時間還流した後、室温まで
冷却し、反応混合物をエーテル(1L)に注ぎ込んだ。
生じた沈殿物をガラスフィルター(G4)で濾別した。
過剰のN,N’−ビス(3−アミノプロピル)ピペラジ
ンを除去するため、濾別した沈殿物をクロロホルムとメ
タノールとの混合溶媒に溶解させ、再度、エーテルに注
ぎ込んだ。生成した結晶をガラスフィルターにて濾別
し、減圧下で乾燥させた。
【0065】次いで、乾燥した上記結晶(0.52g、
0.8ミリモル)および6,9−ジクロロ−2−メトキ
シアクリジン(0.53g、1.9ミリモル)を200
mLのナス型フラスコに入れ、さらに、フェノール(1
5mL)を加えてこれらの化合物を溶解させた。100
乃至130℃の温度範囲で8時間加熱し、その後室温ま
で冷却し、1Mの水酸化ナトリウム水溶液(50mL)
を加え、クロロホルムで抽出した。有機層を無水硫酸ナ
トリウム上で乾燥し、溶媒を減圧留去した。残留物に、
最小量のクロロホルムを加え、エーテル(1L)に注ぎ
込んだ。生じた結晶をガラスフィルターで濾別し、減圧
下で乾燥させた。得られた結晶をシリカゲルクロマトグ
ラフィーにて精製し、標題化合物を得た(収率:37
%)。
【0066】[実施例] (1)蛍光インターカレータの二本鎖DNAへの結合の
検出 仔牛胸腺DNA(二本鎖DNA、100μM)および硫
酸ナトリウム(5mM)を含む5mMリン酸緩衝液(p
H7.0)に、製造例1で得られた縫い込み型蛍光イン
ターカレータ(2μM)を添加し、仔牛胸腺DNAと蛍
光インターカレータとの複合体をリン酸緩衝液中で形成
させ、この複合体を含むリン酸緩衝液の蛍光スペクトル
(励起光の照射波長は、434nm)を440乃至60
0nmの波長の範囲にて測定した。また、仔牛胸腺DN
Aを入れない場合についても、上記と同様にしてその蛍
光スペクトルを測定した。その結果、仔牛胸腺DNAを
存在させた場合には、存在させない場合に比較して蛍光
強度が大きくなることが分かる。即ち、波長475nm
において、仔牛胸腺DNAを含む場合の蛍光強度は、仔
牛胸腺DNAを含まない場合の蛍光強度に対して約30
倍の値を示した。
【0067】(2)蛍光インターカレータの仔牛胸腺D
NAからの解離速度の測定 上記(1)で用いた仔牛胸腺DNAと蛍光インターカレ
ータとの複合体を含むリン酸緩衝液に、最終濃度が0.
5容量%となるようにSDS(ドデシル硫酸ナトリウ
ム)水溶液を添加した。添加後の該複合体を含むリン酸
緩衝液について、吸光度の経時変化を測定した。この結
果より、仔牛胸腺DNAからの蛍光インターカレータの
解離速度を求めたところ、0.02/秒であった。
【0068】[比較例1]二本鎖の仔牛胸腺DNAの代
わりに、仔牛胸腺DNAを90℃にて20分間加熱処理
して得られた一本鎖DNAを用いる以外は実施例1と同
様にして、蛍光インターカレータの一本鎖DNAへの結
合の検出、および蛍光インターカレータの一本鎖DNA
からの解離速度の測定を行った。その結果、一本鎖DN
Aを含む場合の蛍光強度は、含まない場合の蛍光強度の
約16倍であり、また、一本鎖DNAからの蛍光インタ
ーカレータの解離速度は、1.2/秒であった。
【0069】実施例1および比較例1より、一本鎖DN
Aは、二本鎖DNAと比べて、蛍光インターカレータと
の複合体を形成しにくく、また、一本鎖DNAとインタ
ーカレータとで形成された複合体から、インターカレー
タがより速く解離することが分かる。従って、本発明の
蛍光インターカレータは、二本鎖DNAを特異的に検出
することができる。
【0070】(2)蛍光物質の仔牛胸腺DNAからの解
離速度の測定 仔牛胸腺DNAと蛍光物質との複合体を含むリン酸緩衝
液を用いる以外は実施例1の(2)と同様にして蛍光強
度の経時変化を測定した。この結果より、蛍光物質の仔
牛胸腺DNAからの解離速度を求めたところ、19.0
/秒であった。
【0071】[比較例2]製造例1で得られた型蛍光イ
ンターカレータの代わりに、下記式で表される9−アミ
ノ−6−クロロ−2−メトキシアクリジン(Molecular
Probe,Inc.社製)を用いる以外は実施例1と同様にし
て、仔牛胸腺DNAを含む場合と含まない場合について
それぞれ蛍光強度を求めたところ、前者は後者の約6倍
の蛍光強度を示した。
【0072】
【化16】
【0073】[比較例3]製造例1で得られた型蛍光イ
ンターカレータの代わりに、前述のN,N−ビス{3−
[4−(3−(6−クロロ−9−イミノ−2−メトキシ
アクリジニル)プロピル)−1,4−ジアザシクロヘキ
シル]プロピル}ナフタレンジイミド)を用いる以外は
実施例1と同様にして、仔牛胸腺DNAを含む場合と含
まない場合についてそれぞれ蛍光強度を求めたところ、
前者は後者に対して高いS/N比をもたらすような充分
相違する蛍光強度を示さなかった。
【0074】実施例および比較例より、本発明の蛍光イ
ンターカレータは、9−アミノ−6−クロロ−2−メト
キシアクリジンに比較して、仔牛胸腺DNAと安定な複
合体を形成することが分かる。このことは、本発明の蛍
光インターカレータが、二本鎖DNA断片を高感度に検
出できるものであることを示す。
【0075】
【発明の効果】一本鎖核酸断片に対して一時的に複合体
を形成したとしてもその複合体からの解離速度が大き
く、一本鎖核酸断片とは安定な複合体を形成しにくいこ
とから、二本鎖核酸断片のみを簡便に検出することがで
きるものである。また、本発明の水溶性縫い込み型蛍光
インターカレータは、二本鎖核酸断片に結合する性質を
有する蛍光物質として公知の9−アミノ−6−クロロ−
2−メトキシアクリジンと比較して、二本鎖核酸断片に
特異的に結合するばかりでなく、その結合安定性が大き
いため、従来のインターカレータでは達成できなかった
検出感度を有する。
【0076】さらに、蛍光物質で標識された核酸断片を
使用するこれまでの蛍光法は、核酸断片に充分な量の蛍
光物質を取り込むことが困難であるが(取り込み率が1
%程度)、本発明の蛍光インターカレータは、二本鎖核
酸断片の二つの塩基対間に一つの割合で結合するため、
充分な量の蛍光物質を二本鎖核酸断片に導入することが
できる。従って、本発明の蛍光インターカレータを用い
る検出方法では、相補性を有する試料核酸断片のみなら
ず、部分的に相補性を有する試料核酸断片をも高感度で
簡便に検出することができる。
【0077】本発明の蛍光インターカレータは、二つの
蛍光物質を有する公知の蛍光インターカレータ(Bull.C
hem.Soc.Jpn., 72,327-337 (1999))と比較して、高い
感度(S/N比)を有することが確認されており、相補
性試料核酸断片および部分相補性試料核酸断片の検出に
有効に用いることができる。また、本発明の蛍光インタ
ーカレータは二つの蛍光物質を有する蛍光インターカレ
ータの製造時に同時に得られるものであるため、有効利
用という観点からもメリットを有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の水溶性縫い込み型蛍光インターカレー
タの液相における積層状態を示す模式図である。
【図2】本発明の水溶性縫い込み型蛍光インターカレー
タと二本鎖核酸断片とで形成される複合体を示す模式図
である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 竹中 繁織 福岡県古賀市舞の里4−23−21

Claims (15)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記一般式で表わされる水溶性の蛍光イ
    ンターカレータ: 【化1】F − La − X [但し、Fは蛍光性基、Xは環状基、そしてLaは連結
    基であって、少なくともXとLaのいずれかは、該イン
    ターカレータに、水溶性を付与できるか、あるいは水溶
    性を付与できる基に変換し得る部位を有する]。
  2. 【請求項2】 Xに、−Lb−Z[但し、Zは非蛍光性
    基、そしてLbは連結基である]で表わされる置換基が
    結合している請求項1に記載の蛍光インターカレータ。
  3. 【請求項3】 Xが、縮合環を有する芳香族基である請
    求項1に記載の蛍光インターカレータ。
  4. 【請求項4】 Xが、ナフタレンジイミド基、アントラ
    キノン基、もしくはアントラセン基である請求項3に記
    載の蛍光インターカレータ。
  5. 【請求項5】 Fが、芳香族基を含む蛍光性基である請
    求項1に記載の蛍光インターカレータ。
  6. 【請求項6】 Fが、アクリジン基、インドシアニン
    基、もしくはアザインドレニンシアニン基である請求項
    5に記載の蛍光インターカレータ。
  7. 【請求項7】 Zが、芳香族基を含まない非蛍光性基で
    ある請求項2に記載の蛍光インターカレータ。
  8. 【請求項8】 Zが、酸素原子、窒素原子及び/又は硫
    黄原子を含む非蛍光性基である請求項7に記載の蛍光イ
    ンターカレータ。
  9. 【請求項9】 Zが、アミノ基、カルボン酸基、スルホ
    ン酸基、スルフィン酸基、スルフェン酸基、ヒドラジノ
    基、カルバモイル基、水酸基、イミノ基、もしくはメル
    カプト基である請求項8に記載の蛍光インターカレー
    タ。
  10. 【請求項10】 Laが、芳香族基を含まない連結基で
    ある請求項1に記載の蛍光インターカレータ。
  11. 【請求項11】 Laが、イミノ基、1,4−ピペラジ
    ニル基、−O−、−S−、−CONH−、及び/又は−
    SO2−を含む連結基である請求項1に記載の蛍光イン
    ターカレータ。
  12. 【請求項12】 LaのFからXまでの最も近い連結路
    に沿って数えた主鎖の原子の数が2〜50の範囲にある
    請求項1に記載の蛍光インターカレータ。
  13. 【請求項13】 La−X−Lbの、FからZまでの最
    も近い連結路に沿って数えた主鎖の原子の数が10〜1
    00の範囲にある請求項2に記載の蛍光インターカレー
    タ。
  14. 【請求項14】 基板に固定されたヌクレオチド誘導体
    もしくはその類縁体からなる一群のプローブ分子に相補
    性を示すオリゴヌクレオチド試料あるいはポリヌクレオ
    チド試料を蛍光法で検出するための下記の工程からなる
    方法:上記プローブ分子に、請求項1に記載の蛍光イン
    ターカレータそして水の存在下にて、相補性のオリゴヌ
    クレオチド試料あるいはポリヌクレオチド試料を接触さ
    せることにより、プローブ分子と相補性のオリゴヌクレ
    オチド試料あるいはポリヌクレオチド試料とをハイブリ
    ダイズさせて、上記蛍光インターカレータの少なくとも
    一部分が挿入されたハイブリッド構造体を形成させる工
    程、そして基板上のハイブリッド構造体に挿入された蛍
    光インターカレータから発せられる蛍光を検出する工
    程。
  15. 【請求項15】 基板に固定されたヌクレオチド誘導体
    もしくはその類縁体からなる一群のプローブ分子に相補
    性を示すオリゴヌクレオチド試料あるいはポリヌクレオ
    チド試料を蛍光法で検出するための下記の工程からなる
    方法:上記プローブ分子に、水の存在下で、相補性のオ
    リゴヌクレオチド試料あるいはポリヌクレオチド試料を
    接触させることにより、プローブ分子と相補性のオリゴ
    ヌクレオチド試料あるいはポリヌクレオチド試料とをハ
    イブリダイズさせて、基板上にハイブリッド構造体を形
    成させる工程、 請求項1に記載の蛍光インターカレータを水の存在下に
    て上記ハイブリッド構造体と接触させて、該蛍光インタ
    ーカレータの少なくとも一部分が挿入されたハイブリッ
    ド構造体を形成させる工程、そして基板上のハイブリッ
    ド構造体に挿入された蛍光インターカレータから発せら
    れる蛍光を検出する工程。
JP2001024395A 2000-01-31 2001-01-31 蛍光インターカレータおよび相補性核酸断片の検出方法 Expired - Lifetime JP4267208B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2001024395A JP4267208B2 (ja) 2000-01-31 2001-01-31 蛍光インターカレータおよび相補性核酸断片の検出方法

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2000-22181 2000-01-31
JP2000022181 2000-01-31
JP2001024395A JP4267208B2 (ja) 2000-01-31 2001-01-31 蛍光インターカレータおよび相補性核酸断片の検出方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2001289848A true JP2001289848A (ja) 2001-10-19
JP4267208B2 JP4267208B2 (ja) 2009-05-27

Family

ID=26584498

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2001024395A Expired - Lifetime JP4267208B2 (ja) 2000-01-31 2001-01-31 蛍光インターカレータおよび相補性核酸断片の検出方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4267208B2 (ja)

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2002103053A1 (en) * 2001-06-18 2002-12-27 Eiken Kagaku Kabushiki Kaisha Method of efficiently detecting double-stranded nucleic acid
WO2003079022A1 (fr) * 2002-03-18 2003-09-25 Kyushu Tlo Company, Limited Reactif fluorescent permettant de detecter selectivement un groupe de colorants fluorescents contenant un acide nucleique a double brin et un groupe intercale
WO2005024065A3 (en) * 2003-09-05 2005-08-18 Ebara Corp Cationic dye compound for detecting nucleic acid double strand, and detection method and apparatus using same

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2002103053A1 (en) * 2001-06-18 2002-12-27 Eiken Kagaku Kabushiki Kaisha Method of efficiently detecting double-stranded nucleic acid
WO2003079022A1 (fr) * 2002-03-18 2003-09-25 Kyushu Tlo Company, Limited Reactif fluorescent permettant de detecter selectivement un groupe de colorants fluorescents contenant un acide nucleique a double brin et un groupe intercale
WO2005024065A3 (en) * 2003-09-05 2005-08-18 Ebara Corp Cationic dye compound for detecting nucleic acid double strand, and detection method and apparatus using same

Also Published As

Publication number Publication date
JP4267208B2 (ja) 2009-05-27

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US20060292617A1 (en) Methods and compositions for analysis of microRNA
EP0405913A2 (en) Hydrophobic nucleic acid probe
US6506567B2 (en) Water-soluble flourescent intercalator compound
KR100499278B1 (ko) 로텍산 화합물이 공유결합된 고체 기판 및 이를 이용한바이오칩
JPWO2007058326A1 (ja) 特定の塩基配列の標的核酸類を検出する方法、及び検出のための核酸類セット
JP5111382B2 (ja) 新規なイミンカリックスアレーン誘導体とアミノカリックスアレーン誘導体、その製造方法及び該製造方法によって製造された自己組織化単分子層、該自己組織化単分子層を利用したオリゴ遺伝子の固定化方法及びこれによって製造されたオリゴ遺伝子チップ
KR100786577B1 (ko) 신규한 아미노캘릭스아렌 유도체, 이의 제조방법, 및상기의 제조방법에 의해 제조된 자기조립단분자층, 상기자기조립 단분자층에 자발적인 올리고유전자의 비가역적인분자인식에 의한 올리고유전자 고정화 방법 및 이에 의해제조된 올리고유전자 칩
JP4267208B2 (ja) 蛍光インターカレータおよび相補性核酸断片の検出方法
JP2017193713A (ja) メロシアニン系化合物、これを含む生体分子標識用染料、キット及び造影剤組成物
EP1362894B1 (en) Method for optical measurement of multi-stranded nucleic acid using cyanine dyes
JP2002000299A (ja) 複数の電位を用いる遺伝子の発現解析
JP4320104B2 (ja) 部分相補性核酸断片の検出方法
JP2001165894A (ja) 縫い込み型インターカレータ、核酸断片の検出方法、及び核酸断片の検出キット
JP2001056311A (ja) Dna分析素子、pna分析素子および相補性を有する試料核酸断片の高感度定量法
JP3899372B2 (ja) 多重鎖核酸の光学的測定方法
KR100869916B1 (ko) 신규한 아미노캘릭스아렌 유도체, 이의 제조방법, 및상기의 제조방법에 의해 제조된 자기조립단분자층, 상기자기조립 단분자층에 자발적인 올리고유전자의 비가역적인분자인식에 의한 올리고유전자 고정화 방법 및 이에 의해제조된 올리고유전자 칩
JP2001337089A (ja) Dna断片の固定方法、dnaチップおよび核酸断片の検出方法
JP4291557B2 (ja) 多重鎖核酸の光学的検出法
JP4309037B2 (ja) 酸化還元活性を有する縫い込み型インターカレータ
JP4054499B2 (ja) 固相担体表面へのdna断片の固定方法及びdnaチップ
JP2001183368A (ja) 固相担体表面へのdna断片の固定方法及びdnaチップ
JP4290355B2 (ja) 核酸の検出法
JP3618768B2 (ja) 標的核酸の検出方法、プローブ、2本鎖核酸ハイブリッド内のミスマッチの検出方法及びプローブの製造方法
JP3706636B2 (ja) 核酸ハイブリッド体の検出方法、プローブ、標的核酸の有無の確認方法、および2本鎖核酸ハイブリッド内のミスマッチの検出方法
JP2004325074A (ja) ミスマッチ検出分子及びそれを用いたミスマッチの検出方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20060118

A711 Notification of change in applicant

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A712

Effective date: 20061211

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20080131

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20081114

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20090108

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20090210

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20090218

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 4267208

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120227

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120227

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130227

Year of fee payment: 4

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140227

Year of fee payment: 5

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

EXPY Cancellation because of completion of term