JP3706636B2 - 核酸ハイブリッド体の検出方法、プローブ、標的核酸の有無の確認方法、および2本鎖核酸ハイブリッド内のミスマッチの検出方法 - Google Patents
核酸ハイブリッド体の検出方法、プローブ、標的核酸の有無の確認方法、および2本鎖核酸ハイブリッド内のミスマッチの検出方法 Download PDFInfo
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、ウイルス、微生物、動植物、ヒトなどの核酸(DNAまたはRNA)の所望の塩基配列の検出、同定、もしくは各種塩基配列における変異の有無の検出などに有用な核酸ハイブリッド体の検出方法、プローブ、標的核酸の有無の確認方法、および2本鎖核酸ハイブリッド内のミスマッチの検出方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
核酸の分析技術の発達により種々の変異遺伝子が数多く見つけ出され、遺伝子の変異に基づく各種遺伝病の解明も進みつつある。そのなかには、遺伝子中の塩基が部分的に欠失したものや塩基が点突然変異を起こしたものがあり、それによって蛋白質に変異が生じ、さまざまな症状を引き起こすものがあることが明らかにされてきている。現在のところ、これらの遺伝病は、症状が現れてから、酵素によるアッセイや、抗体を用いた免疫的な方法により発見されることが主流であるが、早期治療という観点から、重篤な症状が現れる前に遺伝子上で変異の有無を早期に発見することの重要性が指摘されている。
【0003】
その有力な方法の一つとして、RFLP(restriction fragment length polymorphism:制限酵素断片長多型)が挙げられる。この方法は、例えばヒトの全遺伝子を制限酵素によって切断して得られるDNA断片をアガロ−スゲル電気泳動で展開し、サザンブロット法を用いてフィルタ−上に固定した後、放射性同位元素等により標識したDNA(またはRNA)からなるプロ−ブとハイブリッドさせ、正常なDNAと検体DNAの切断パタ−ンの相違から、これらの疾患と関連する遺伝子の有無を検出するものである。
【0004】
また、DNA診断は、必ずしもヒトの遺伝子に用いられるだけでなく、感染した細菌の同定においても利用しうる。
【0005】
従来は、分離した細菌の形態学的性状および生化学的性状から、類似性に基づいて菌種を同定する方法が取られていた。この方法では、培養に時間がかかる上に、検査法の違いによって性状の判定が異なったり、どの性状に重点を置くかによって同定の結果が異なる等の問題があった。
【0006】
そこで、近年、特に、細菌感染症における原因細菌の検出や同定の分野において、DNA−DNAハイブリダイゼ−ション法、あるいはDNA−RNAハイブリダイゼ−ション法を用いる試みがなされてきている。この方法は、細菌から核酸(DNAまたはRNA)を抽出し、細菌由来の核酸のうち特定部分に着目して、その部分の塩基配列とホモロジ−の高い塩基配列が、対象とする被検核酸サンプル中に存在するか否かをハイブリダイゼ−ション法によって調べ、サンプル中に問題となる細菌が存在するか否かを判定する方法である。
【0007】
これらの基礎技術であるハイブリダイゼ−ションという方法は、一般的には、次のような工程から構成される。
(1)DNAを切断し、それをゲル電気泳動で展開する工程。
(2)展開した各DNA断片をニトロセルロ−スフィルタ−に吸着させる工程(サザンブロット)。
(3)(2)で得たニトロセルロ−スフィルタ−をプロ−ブと反応させ、ハイブリッド体を形成させる工程。
(4)ハイブリッド体を形成したDNA断片を検出する工程。
【0008】
例えばDNAどうしのハイブリダイゼ−ション反応では、標識を施したプロ−ブDNAと標的DNAとがお互いの相補的な配列の部分で水素結合によりハイブリッド体を形成する。
【0009】
これらのハイブリダイゼ−ション反応に供せられるプロ−ブも時代とともに変化してきている。最も初期の頃は、長いDNA断片をニックトランスレ−ション反応により放射性同位元素で標識することが行なわれてきた。DNA合成機の発達にともない、長いDNAの代わりに合成オリゴヌクレオチドが用いられるようになり、標識物質も、危険な放射性物質からより安全なビオチン−アビジン系、そして、さらに、種々の化学発光系へと推移している。
【0010】
ハイブリダイゼ−ション反応においては、相補的な配列間で正確にハイブリッド体を形成させるためには、反応の温度、イオン強度を最適に選ぶ必要がある。つまり、温度が高すぎると、プロ−ブと相補的配列をもつ核酸とが結合できず、逆に低すぎると、プロ−ブが非特異的に核酸に結合してしまう。さらに、より正確さを期するために、溶液の塩濃度を下げて、或はまた、溶液の温度を上げて、不安定な水素結合を除き、非特異的に結合したプロ−ブやミスマッチしているプロ−ブを洗い流すことが重要となる。従って、適当な反応条件、洗浄条件の設定には、かなりの試行錯誤が必要になる。
【0011】
遺伝子診断では、ハイブリッド体形成反応、及び、洗いの条件設定に、一塩基対レベルのミスマッチをも除去する精度が更に要求される。
【0012】
ハイブリダイゼーション反応において、標的核酸をニトロセルロ−スのような担体に固定させて用いる場合は、反応後、プロ−ブの非特異的結合等を除去するための洗浄が行ないやすいという利点はあるものの、操作が煩雑で検査の自動化を困難にしている。しかも、時間がかかるという欠点を持つため、検体大量処理には向かない。
【0013】
そこで、核酸の固定化なしに溶液中でハイブリッド体を検出する方法によれば、自動化の可能性が開けることが期待されており、種々の試みがなされている。核酸の固定化を行わない方法における最大の課題は、標的核酸に結合しているプロ−ブと、結合していない過剰なプロ−ブをどのようにして区別するか(B/F分離)というところにある。さらに、この場合にも、上述の固定化核酸を用いたハイブリダイゼ−ション反応と同様に、プロ−ブの非特異的吸着やミスマッチを除くための適当な反応条件、洗浄条件設定が重要な課題となる。
【0014】
B/F分離を行わずに標的核酸とプローブとのハイブリッド体を検出するための方法としては、蛍光偏光解消法を用いた検出方法がいくつか提案されている(特開平2−295496号公報、特開平2−75958号公報等参照)。これらの方法は、蛍光標識された一本鎖DNAプロ−ブを、分析検体中のDNAと接触させて二本鎖DNAを形成させ、二本鎖形成前の蛍光偏光と二本鎖形成後の蛍光偏光との変異を測定して検体中のDNAに、プロ−ブの塩基配列に対応する塩基配列が存在するかどうかを検出する方法である。この方法は、一本鎖のプロ−ブに結合させた蛍光物質が、二本鎖になったことによって動きにくくなり、蛍光異方性が増大することがその検出の原理となっている。
【0015】
ところが、これらの方法では、検体中に蛋白質等の夾雑物が含まれていて、それがプロ−ブDNAに非特異的に吸着すると、ハイブリッド体検出のバックグランドを上昇させる原因となるため、あらかじめこれらの夾雑物を完全に除去するという煩雑な作業が必要となる。また、プローブDNAの非特異的吸着、及び、塩基のミスマッチによる擬ハイブリッド体は他の溶液系の場合と同様、それをあらかじめ除去する操作が必要である。さらに、確かにB/F分離は必要ないもののプローブ濃度が標的DNA濃度と同程度であることが蛍光の変異を測定する上で必要となる。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように、ハイブリダイゼ−ション反応を用いた標的核酸の検出法でB/F分離を必要とする場合は、標的核酸を固定した場合も、固定しない溶液系の場合も、B/F分離(過剰なプローブの除去)、非特異吸着やミスマッチの除去などの操作を数多く含み、かなり煩雑である。しかも、これらの操作の最適条件はプロ−ブの長さ、或は、それぞれの塩基配列によって異なるため、それぞれの場合で条件を検討し、設定していく必要がある。特に、ミスマッチしている塩基のプロ−ブ上の位置もハイブリッド体の安定性に影響を与える重要な因子となり、その位置によってはミスマッチしているハイブリッド体を除去できない場合も生じるため、ミスマッチの可能性を考慮して、ハイブリダイゼ−ション反応の条件を個々のケースに応じて設定するという更に煩雑な作業が必要となる。
【0017】
また、上述のB/F分離を必要としない蛍光の変異を測定する方法でも、非特異吸着やミスマッチの発生を防止する、あるいは発生した非特異吸着やミスマッチを除去するための煩雑な処理が必要である。しかも、夾雑物の存在によって測定感度が影響を受けたり、プロ−ブ濃度が標的核酸濃度と同程度であることが必須であるので、十分な量の試料を確保する必要があり、少量しか採れない試料の分析に適用できない場合があるといった問題がある。
【0018】
本発明は、以上のような従来技術における問題に鑑みなされたものであり、B/F分離の必要がなく、より簡易化された工程からなり、良好な測定感度を得ることができるハイブリダイゼーションを利用した標的核酸の検出方法及びそれに用いるプローブを提供することにある。
【0019】
本発明の他の目的は、ミスマッチしているハイブリッド体が存在する場合でも所望のハイブリッド体のみを正確に検出できる標的核酸の検出方法及びそれに用いるプローブを提供することにある。
【0020】
【課題を解決するための手段】
本発明の核酸ハイブリッド体の検出方法は、試料溶液中にプローブを加えてこれらを反応させる過程と、該試料溶液中に標的核酸が存在する場合に得られるプローブと標的核酸とのハイブリッド体の2重らせん構造を検出する過程とを有する核酸ハイブリッド体の検出方法において、2重らせん構造を介した相互作用により検出可能な変化を起こす2種以上の試薬物質を前記試料溶液中に存在させて、標的核酸が存在する場合に形成されるプローブと標的核酸とのハイブリッド体の2重らせん構造を介して起こる前記2種以上の試薬物質間の相互作用に基づく変化を測定して、2重らせん構造を検出することを特徴とするものである。
また、本発明の核酸ハイブリッド体の検出方法は、試料溶液中にプローブを加えてこれらを反応させる過程と、該試料溶液中に標的核酸が存在する場合に得られるプローブと標的核酸とのハイブリッド体の2重らせん構造を検出する過程とを有する核酸ハイブリッド体の検出方法において、2重らせん構造との相互作用により検出可能な変化を起こす試薬物質を前記試料溶液中に存在させ、標的核酸が存在する場合に形成されたプローブと標的核酸とのハイブリッド体の2重らせん構造と該試薬物質との相互作用によって起こる変化を測定することで2重らせん構造を検出することを特徴とするものである。
また、本発明の標的核酸検出用プローブは、標的核酸とのハイブリダイズのための配列を有する標的核酸検出用プローブであって、該プローブに、前記標的核酸のハイブリダイゼーションにより形成される2重らせん構造を介した相互作用により検出可能な変化を起こす2種以上の試薬物質の少なくとも1種が結合されてなることを特徴とするものである。
また、本発明の核酸ハイブリッド体検出用プローブは、標的核酸とのハイブリダイズのための配列を有する標的核酸検出用プローブであって、該プローブに、前記標的核酸とのハイブリダイゼーションにともなって形成される2重らせん構造との相互作用により検出可能な変化を生じる試薬物質が結合されてなることを特徴とするものである。
また、本発明の試料溶液中の標的核酸の有無を確認する方法は、
(a)第1の試薬物質および該標的核酸の塩基配列に対して相補的な塩基配列を有する一本鎖核酸に結合してなる第2の試薬物質であって、該第1の試薬物質と該第2の試薬物質とは、該標的核酸と該一本鎖核酸との間で形成される2本鎖核酸ハイブリッドの2重らせん構造を構成する核酸塩基対のスタッキングを介してそれらの間で電荷が移動するものであるものを用意する工程;
(b)該標的核酸を含んでいる可能性のある試料溶液に、該第1の試薬物質および該一本鎖核酸に結合している第2の試薬物質とを加え、該試料溶液を該標的核酸と該一本鎖核酸との間で2本鎖核酸ハイブリッドが形成される条件下に置く工程;及び
(c)該工程(b)によって該試料溶液中に該標的核酸が存在する場合に形成される該2本鎖核酸ハイブリッドの2重らせん構造を構成する核酸塩基対のスタッキングを介した該第1および第2の試薬物質間での電荷の移動の有無を検出する工程、
とを有することを特徴とするものである。
また、本発明の試料溶液中の標的核酸の有無を確認する方法は、
(a)該標的核酸の塩基配列に対し相補的な塩基配列を有する1本鎖核酸を含むプローブを用意する工程;
(b)該プローブと該標的核酸との間で形成される2本鎖核酸ハイブリッドとの間で、該2本鎖核酸ハイブリッドの2重らせん構造を構成する核酸塩基対のスタッキングを介して電荷が移動する試薬物質を用意する工程;
(c)該プローブ及び該試薬物質を該標的核酸を含んでいる可能性のある試料溶液中に加え、該プローブと該試薬物質との間で2本鎖核酸ハイブリッドが形成される条件下に置く工程;および
(d)該工程(c)によって該試料溶液中に該標的核酸が存在する場合に形成される該2本鎖核酸ハイブリッドの2重らせん構造を構成する核酸塩基対のスタッキングを介した該試薬物質と該2本鎖核酸ハイブリッドとの間での電荷の移動の有無を検出する工程、
を有することを特徴とするものである。
また、本発明の標的核酸の検出用のプローブは、該標的核酸の塩基配列に対し て相補的な塩基配列を有する1本鎖核酸、第1の試薬物質及び第2の試薬物質とを含み、該第1及び第2の試薬物質は共に該1本鎖核酸に結合しており、且つ該第1及び第2の試薬とは、該1本鎖核酸と該標的核酸との間で形成される2本鎖核酸ハイブリッドの2重らせん構造を構成する核酸塩基対のスタッキングを介してそれらの間で電荷が移動するものであることを特徴とするものである。
また、本発明の標的核酸とプローブとの間で形成される2本鎖核酸ハイブリッド内のミスマッチを検出する方法は、
(a)該標的核酸の塩基配列に対して相補的な塩基配列を有する1本鎖核酸、該1本鎖核酸に結合している該第1の試薬物質及び第2の試薬物質とを含み、該第1及び第2の試薬物質は共に該1本鎖核酸に結合しており、且つ該第1及び第2の試薬とは、該1本鎖核酸と該標的核酸との間で形成される2本鎖核酸ハイブリッドの2重らせん構造を構成する核酸塩基対のスタッキングを介してそれらの間で電荷が移動するものであるプローブを用意する工程;
(b)該プローブを該標的核酸を含む試料溶液に加え、該試料溶液を該プローブと該標的核酸との間で2本鎖核酸ハイブリッドが形成される条件下に置く工程;および
(c)該電荷の移動の有無を検出する工程、
を有することを特徴とするものである。
【0021】
本発明の検出方法は、従来の方法とはまったく異なる原理に基づいてハイブリッド体を検出するものである。すなわち、本発明の方法は、ハイブリッド体形成にともなう二重らせん構造の形成を検出するものであり、B/F分離が不要である。さらに、本発明においては、正確な2重らせん構造のみ検出できる条件を設定することで、非特異吸着やミスマッチが生じていてもそのまま所望の核酸ハイブリッド体の形成を検出可能となり、測定精度を向上させることが可能である。なお、本発明は、DNA−DNAハイブリダイゼーション、DNA−RNAハイブリダイゼーションなど核酸が規則的な2重らせん構造を形成する場合に適用される。
【0022】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0023】
ハイブリダイゼ−ションという現象は、これまで単に、互いに相補的な核酸塩基間の水素結合という視点でとらえられていたにすぎない。それは、核酸(DNAやRNA)を固定化させてからハイブリダイゼ−ション反応を行なうことが一般的であったからである。しかし、溶液中でのハイブリダイゼ−ション反応の場合には、核酸がある長さで二本鎖を形成すれば、二重らせん構造をとることが期待される。本発明者らは、核酸が一本鎖の場合と二本鎖(ハイブリッド体)の場合に、その高次構造や化学的性質が異なることに着目し、その検出システムを確立し、本発明を完成した。
【0024】
2重らせん構造では、核酸塩基部分が水素結合により塩基対を形成し、リン酸部分及び糖の部分は外側に向いた形でらせんを巻く。核酸塩基はお互いに積み重なりスタッキングにより安定化してらせん軸の中心に位置する。二重らせん構造としては、A、B、C及びZ型、そして、これらの変形が知られている。それぞれの構造は、塩基配列だけでなく、アニーリングの際に用いるイオン種や塩濃度によって、ピッチ長、らせんの対称性、溝の幅、溝の深さなどが異なり、同じ配列を用いた場合でも条件によって2重らせん構造が変化するといわれている。一般的には、DNAはB型構造をとるといわれ、その場合、ピッチ長は33.8オングストロ−ム、1ピッチ当たりの核酸塩基対数は10塩基といわれている。
【0025】
本発明は、ハイブリッド体の有する2重らせん構造を利用して検出可能な変化を起し得る試薬物質を用い、該試薬物質の化学的変化を測定することで2重らせん構造の形成を検出する方法である。
【0026】
この試薬物質としては、
(a)2重らせん構造自体と反応(相互作用)して変化を起こすもの、
(b)2重らせん構造を介して相互作用する2種以上の試薬物質であって、該相互作用に基づく変化を検出するもの
などが利用できる。
【0027】
(a)の試薬物質を用いる場合は、試料溶液とプローブとを反応させ、試料中に標的核酸が含まれている場合に形成するプローブと標的核酸とのハイブリッド体の有する2重らせん構造を、試薬物質あるいは核酸の構成成分の変化によって検出する。この場合、試薬物質は、試料溶液とプローブの反応系に共存させてもよいし、これらの反応を終了させてから、添加してもよい。この試薬物質の2重らせん構造との反応による変化の検出は、試薬物質の変化自体が測定可能である場合には、この変化を測定することで行い、また試薬物質の変化が検出可能な別の変化を誘導するものであれば、この別の変化を測定することで行う。
【0028】
この方法において、試薬物質を反応に共存させる場合には、試薬物質をプローブに結合させておくことで、また試薬物質として核酸塩基に対するインターカレーターを用いることで、試薬物質と2重らせん構造との反応をより容易なものとすることができるので好ましい。
【0029】
2重らせん構造と相互作用する試薬物質としては、例えば、2重らせん構造を構成している核酸等の物質と反応して、それ自身が、あるいは2重らせん構造側が検出可能な化学変化や構造的変異を起こすものや、反応系に加えた第3の物質と2重らせん構造の存在下で反応して検出可能な変化を起こすものが利用できる。
【0030】
この相互作用としては、例えば、2重らせん構造と試薬物質との間の電荷移動に基づく相互作用などが利用できる。相互作用として、電荷移動を利用する場合には、試薬物質としては、2重らせん構造に対して電子供与体または電子受容体となり得る物質が利用される。この相互作用は、例えばハイブリッド体形成前後における試薬物質、2重らせん構造、または、これらの物質と相互作用しうる第三の物質の化学構造の変化、電子状態の変化、或はまた、変化した物質に由来する信号の変化として検出される。
【0031】
この電荷移動に基づく相互作用としては、後述の(b)の試薬物質の場合と同様に、いわゆるthrough spaceの場合が考えられ、例えば核酸塩基対のスタッキングを介した電荷移動が利用できる。
【0032】
なお、2重らせん構造と試薬物質間での電荷移動が起こりにくい場合には、これらの間に電荷移動を仲介するようなメディエーター、或は、センシタイザーと称される物質を介在させてもよい。
【0033】
本発明においては試薬物質が2重らせん構造と反応できる位置に配置されて、これらの相互作用が生じる必要がある。試薬物質が二重らせん構造と反応可能な位置に配置される方式としては、インターカレーターのように核酸塩基対の間に入り込む場合、二重らせん構造の溝に埋め込まれる場合、更に、二重らせん構造に寄り添う形で配置される場合等が利用できる。いずれの場合も、一本鎖であるプロ−ブと標的核酸とによって形成されたハイブリッド体の2重らせん構造に特異的に配置されることが本発明にとって本質的に必要なことである。
【0034】
これらの中では、後述の(b)の場合と同様に、インターカレーターは、スタッキングを介する電荷移動を利用する場合に最も有利である。
【0035】
二重らせん構造と試薬物質の相互作用の変化を電子受容体の変化としてとらえる方法は、その検出手段に応じていくつかの種類に分類できる。
【0036】
例えば、スピンラベル化剤を用いると、スピン解消法等により、移動してきた電荷をESR等でスペクトル変化としてとらえることができる。また、電荷移動吸収帯のように、新しい吸収スペクトルの出現、或は、変化としてとらえることもできる。電荷移動の結果、溶液が着色、変色するような系は、直接その変化を目でとらえることができ、簡便な系として、さらに有効である。蛍光やリン光のような発光系も利用できる。この場合、蛍光やリン光が新たに生じる反応や、発光していたものが相互作用の結果消失する反応を利用できる。また、電子受容体が電荷移動の結果、別の物質に化学変化し、それを検出するという方法も利用できる。この時、変化した物質に、後から第三の物質を加え、両者の化学反応により化学発光を起こし検出することも可能である。第三の物質として酵素や抗体のような蛋白質を利用する場合には生物発光による検出方法が利用できる。
【0037】
検出方法として、電子受容体の変化の他に、電子供与体の変化で相互作用を検出しても良い。そして、それは基本的には、電子受容体の場合に用いられる方法のほとんどがそのまま適応できる。蛍光物質を電子供与体として用いる場合には、電荷移動に伴って蛍光の量子収率が減少するものを用いて、蛍光消光のような直接の変化を検出することもできるし、生じた変化をさらにいくつかの反応と組み合わせて可視化する方法も利用できる。
【0038】
試薬物質が2重らせん構造に対する電子供与体である場合は、これが光によって活性化されて電子を放出し電荷移動が開始される場合のほか、第三の物質として、電子供与体である試薬物質を刺激して電子を発生させるような物質が存在してもよい。
【0039】
さらに、試薬物質が2重らせん構造に対する電子受容体である場合は、これを活性化して、それに誘起されて電子が電子受容体から引き抜かれてもよい。そして、その開始剤としては、電子供与体の時と同様、光の他、何らかの開始剤であってもよい。
【0040】
また、先に述べたように、第三の物質として、電荷移動を仲介するようなメディエ−タ−、或は、センシタイザ−と称される物質が介在しても良い。そして、これらの物質が二重らせんと相互作用し、直接二重らせんとは結合していない電子供与体、電子受容体に電荷移動を促しても良い。
【0041】
(a)の試薬物質としては、例えば、リボフラビンなどのように2重らせん構造の核酸とのみ結合し、相手から電子を引き抜く作用のある試薬物質が利用できる。リボフラビンの他、N,N’−ジメチル−2,7−ジアザピレニウムイオンのような酸化剤が利用できる。
【0042】
この(a)の試薬物質は、2重らせん構造に特異的な反応による検出可能な変化を起こすものであれば、非結合状態で、あるいはプローブに結合させて用いることができる。
【0043】
先に挙げた(b)の試薬物質を用いる方法は、一本鎖から二本鎖、つまり、二重らせんへの構造変化にともない、二種以上の試薬物質の相互作用により起る変化を測定することでハイブリッド体を検出するものである。ここでいう相互作用としては、電荷移動等を挙げることができる。相互作用として、電荷移動を利用する場合には、二種以上の試薬物質には、少なくとも電子供与体と電子受容体のセットが含まれる。そして、両者の相互作用は、例えばハイブリッド体形成前後における電子受容体、電子供与体、または、これらの物質と相互作用しうる第三の物質の化学構造の変化、電子状態の変化、或はまた、変化した物質に由来する信号の変化として検出される。
【0044】
電子受容体と電子供与体の関係は、両者のエネルギ−状態の関係で決まるものである。従って、本発明においては、電子供与体または電子受容体として一般に定義された物質が、その定義のとおりに用いられるのではなく、2種以上の試薬物質の個々の組合せにおいて、電子供与体及び電子受容体となり得る物質を適宜選択して用いる。例えば、アントラセンは典型的な電子供与体として、その酸化還元電位が測られている一方で、電子受容体としてもその特性が調べられていることはよく知られたことである。
【0045】
電子供与体と電子受容体の相互作用として、いわゆるthrough spaceの場合が考えられ、例えば核酸塩基対のスタッキングを介した電荷移動が利用できる。
【0046】
核酸塩基間のスタッキングを介する場合とは、2重らせん構造と反応できる位置に置かれた電子供与体と電子受容体の距離が本来相互作用できないほど離れている時、電子供与体から放出された電子が、核酸塩基対上に広がる電子雲を介して、電子を次々隣接する核酸塩基対に受け渡され、最終的に電子受容体にまで電子を到達させるというものである。また、逆に、電子受容体が核酸塩基対から電子を引き抜き、それが連鎖的に行われて最終的に電子供与体から電子が奪い取られるという機構も成り立つ。つまり、電荷移動におけるメディエ−タ−が、核酸塩基対ということになる。
【0048】
なお、2重らせん構造を介した電子供与体と電子受容体の間での電荷移動が起こりにくい場合には、これらの間に電荷移動を仲介するようなメディエーター、或は、センシタイザーと称される物質を介在させてもよい。
【0049】
上記のように、本発明においては電子供与体と電子受容体が2重らせん構造と反応できる位置に配置されて、これらの相互作用が生じる必要がある。試薬物質が二重らせん構造と反応可能な位置に配置される方式としては、インターカレーターのように核酸塩基対の間に入り込む場合、二重らせん構造の溝に埋め込まれる場合、更に、二重らせん構造に寄り添う形で配置される場合等が利用できる。いずれの場合も、一本鎖であるプロ−ブと標的核酸とによって形成されたハイブリッド体の2重らせん構造に特異的に配置されることが本発明にとって本質的に必要なことである。
【0050】
これらの中では、インターカレーターは、スタッキングを介する電荷移動を利用する場合に最も有利である。つまり、インターカレーターは、一般には、電子の広がりを持つ平面状の化合物で、核酸塩基対の積み重なりの延長線上に、核酸塩基対間の距離と同じような距離で、核酸塩基対と平行な位置に配向する。例えば、電子供与体としてインターカレーターを用い、2重らせん構造の反対側に電子受容体を配置すれば、電子供与体から放出された電子が、隣接する核酸塩基対に電子が送られ、それがそれぞれの核酸塩基対の電子雲を経由して、一直線に電子受容体に向かって流れ得る。或は、この逆に、電子受容体としてインターカレーターを用い、2重らせん構造を挟んだ反対側に電子受容体を配置すれば、電子受容体上の電子孔により隣接する核酸塩基対から電子を引き抜き、この電子の引き抜きが他の核酸塩基対間に次々と生じて最終的に電子供与体から電子を引き抜き、電荷移動が行われる場合もある。これらの点を考慮すると、スタッキングを介する電荷移動の場合には、電子供与体、電子受容体のうち、少なくともひとつがインターカレーターであることが好ましく、両者が共にインターカレーターである場合には、さらに電荷移動効率を上げることが可能であるのでより好ましい。インターカレーターは二重らせん構造を安定化させ、その融解温度を上昇させることが知られており、電子供与体や電子受容体がインターカレーターであることは、プロ−ブと標的核酸間のハイブリッド体を安定化させるという点でも有利である。
【0051】
二重らせん形成に伴う二種以上の試薬物質の相互作用の変化を電子受容体の変化としてとらえる方法は、その検出手段に応じていくつかの種類に分類できる。
【0052】
例えば、スピンラベル化剤を用いると、スピン解消法等により、移動してきた電荷をESR等でスペクトル変化としてとらえることができる。また、電荷移動吸収帯のように、新しい吸収スペクトルの出現、或は、変化としてとらえることもできる。電荷移動の結果、溶液が着色、変色するような系は、直接その変化を目でとらえることができ、簡便な系として、さらに有効である。蛍光やリン光のような発光系も利用できる。この場合、蛍光やリン光が新たに生じる反応や、発光していたものが相互作用の結果消失する反応を利用できる。また、電子受容体が電荷移動の結果、別の物質に化学変化し、それを検出するという方法も利用できる。この時、変化した物質に、後から第三の物質を加え、両者の化学反応により化学発光を起こし検出することも可能である。第三の物質として酵素や抗体のような蛋白質を利用する場合には生物発光による検出方法が利用できる。
【0053】
検出方法として、電子受容体の変化の他に、電子供与体の変化で相互作用を検出しても良い。そして、それは基本的には、電子受容体の場合に用いられる方法のほとんどがそのまま適応できる。蛍光物質を電子供与体として用いる場合には、電荷移動に伴って蛍光の量子収率が減少するものを用いて、蛍光消光のような直接の変化を検出することもできるし、生じた変化をさらにいくつかの反応と組み合わせて可視化する方法も利用できる。
【0054】
本発明では、電子供与体が光によって活性化されて電子を放出し電荷移動が開始される場合のほか、第三の物質として、電子供与体を刺激して電子を発生させるような物質が存在してもよい。
【0055】
さらに、電子受容体の方を活性化して、それに誘起されて電子が電子受容体から引き抜かれてもよい。そして、その開始剤としては、電子供与体の時と同様、光の他、何らかの開始剤であってもよい。
【0056】
また、先に述べたように、電子供与体、電子受容体の他に、第三の物質として、電荷移動を仲介するようなメディエ−タ−、或は、センシタイザ−と称される物質が介在しても良い。そして、これらの物質が二重らせんと相互作用し、直接二重らせんとは結合していない電子供与体、電子受容体に電荷移動を促しても良い。
【0057】
電子供与体と電子受容体を用いる形態としては、例えば以下のものを挙げることができる。
a)これらの両方を、プローブと標的核酸とのハイブリダイゼーションによる2重らせん構造の形成時に反応系に存在させる。
b)これらの両方を、プローブと標的核酸とのハイブリダイゼーションによる2重らせん構造の形成後に反応系に添加する。
c)これらの一方を、プローブと標的核酸とのハイブリダイゼーションによる2重らせん構造の形成時に反応系に存在させておき、その後に他方を添加する。
【0058】
電子供与体と電子受容体は、非結合状態でこれらを反応系に添加した場合にこれらの相互作用が2重らせん構造に特異的に生じるものであれば、非結合状態でそのまま利用可能である。
【0059】
しかしながら、電子供与体及び電子受容体が、これらの一方または両方が反応系にフリ−に共存している場合に、標的核酸の存在の有無に関係なく、両者間での相互作用が起こってしまい、バックグランドが上昇してS/N比が悪くなるものである場合には、これらの一方または両方をプローブに結合させて用いるのが好ましい。なお、反応系中での濃度を選択することで、このようなバックグランドの上昇が生じないものであれば、これらの濃度を選択すれば、非結合状態で用いることも可能である。電子供与体や電子受容体のプローブへの結合は、必要に応じて例えば(CH2 )n のようなリンカーを介して行い、その際これらの相互作用が最も効率よくなされるようにこれらの位置関係等を配慮する。
【0060】
最も望ましい形態としては、両方がプロ−ブに結合している場合であり、その場合には、相互作用する試薬物質間の位置関係が明確となるため、その相互作用の制御を、プローブでのこれらの位置関係によって行うことができるので有利である。この場合、電子供与体と電子受容体のプローブ上での距離は、用いる電子供与体と電子受容体の種類に応じて適宜選択されるが、例えば、近接効果を利用する場合には、電子供与体と電子受容体の距離は、20〜120オングストロームであることが好ましく、50〜80オングストロームであることがより好ましい。また、2重らせん構造を介した電荷移動を行う場合には、これらの距離は、20〜120オングストロームであることが好ましく、50〜80オングストロームであることがより好ましい。これらをプローブに結合させる場合の位置は、プローブの長さにもよるが、プローブの両端に分けて結合させるのが、結合の容易性の点から有利である。
【0061】
なお、プローブの長さは、標的核酸との良好なハイブリダイゼーションが可能で、安定した2重らせん構造が得られる長さが個々のケースにおいて適宜選択される。電子供与体と電子受容体の両方をプローブに結合させる場合でこれらが近接していると2重らせん構造の存在しない場合でも相互作用を起こし得るものである場合には、両者の距離を考慮してプローブ長は決定されるが、その長さは、例えば、8塩基長以上、好ましくは12塩基長以上とされる。
【0062】
しかしながら、2重らせん構造の安定化には、プローブ長の他に、塩基配列自体、反応系の塩濃度やイオン強度も大きく影響する。G−C塩基対は、A−T塩基対よりも水素結合数が多いため、GCが多い配列ではより安定な2重らせん構造が形成される。また、KClのモル濃度を0.01Mから1Mに上昇させるとDNAの融点温度は30℃上昇するといわれている。また、インターカレーターの存在も安定に大きく寄与する。従って、これらの安定化因子を適宜利用することによって、8塩基長未満のプローブを用いることも可能である。
【0063】
電子供与体の電子受容体は相互作用に基づく変化は、不可逆的なものであることが望ましい。すなわち、検出に供せられる電子供与体、或いは、電子受容体が不可逆的に変化するものであれば、変化を蓄積して検出することも可能であり、その場合感度の点で有利である。
【0064】
【実施例】
以下実施例により本発明を更に詳細に説明する。
実施例1
[1]スピンラベル化剤であるTEMPO(4−ヒドロキシ−2、2、6、6−テトラメチルピペリジン)を結合させた20量体オリゴヌクレオチドプロ−ブの作製
(1)4−アミノヘキシルアミノ−2,2,6,6,−テトラメチルピペリジン−N−オキシル(4−アミノヘキシルアミノ−TEMPO)の合成
4−オキソ−TEMPOの0.5mmoleとヘキサメチレンジアミンニ塩酸塩5mmoleをメタノール30mlに溶解し、これにシアノ化ホウ素ナトリウム0.4mmole、モレキュラーシーブ3Aを加えて室温下24時間攪拌してこれらを反応させた。次に、反応溶液をグラスフィルターで濾過しモレキュラーシーブを除去し、続いて濾液から溶媒を減圧下で除去した。次に得られた残留物に1N塩酸30mlを加えて溶解した後、クロロホルムで抽出した。クロロホルム相を水で洗浄後減圧下でクロロホルムを減圧下で留去した。得られた残留物に水を加え不溶物を濾過して得た濾液を再度減圧下で溶媒を留去し赤色の油状物を得た。
【0065】
(2)オリゴヌクレオチドの合成
標的DNAとしてのM13mp18DNA(一本鎖)と部分的に相補的な塩基配列を有する20量体オリゴヌクレオチドをABI社製381A DNA自動合成基を用いて合成した。5’末端ジメトキシトリチル基は自動合成機上で除去した。その塩基配列は以下のとおりである。
【0066】
5’−GTTGTAAAACGACGGCCAGT−3’
(3)スピンラベルオリゴヌクレオチドプローブの合成
上記(2)の工程で、合成したオリゴヌクレオチド(1μmole)をCPGサポートに結合させたままガスタイトシリンジに移した。以下の反応はシリンジ内で行なった。CPGサポートにカルボニル−N,N’−ジイミダゾール(CDI)50mgを溶解したジオキサン1mlを加え室温下1時間放置した。ジオキサンで洗浄後減圧乾燥し、続いて4−アミノヘキシルアミノ−TEMPOのDMSO溶液(0.2M 0.4ml)を加え55℃で24時間放置した。DMSO、ジオキサン、メタノールの順で洗浄し減圧乾燥した。
【0067】
常法に従って濃アンモニア水によるスピンラベルオリゴヌクレオチドの切り出しと脱保護を行ないRPLCによって精製した。
【0068】
[2]TEMPOプロ−ブとM13mp18DNAとのハイブリッド体の形成反応
上記[1]で作製されたTEMPOが導入されたオリゴヌクレオチドプロ−ブの0.2μMと、M13mp18DNA(宝酒造社製)の0.2μMを1mMリン酸緩衝溶液(pH7.0)/145mM NaCl/5mM KCl中で80℃に加熱し、その後、徐々に冷却して室温まで下げて、プロ−ブ・標的DNA・ハイブリッド体を作製した。次に、この反応液にフルオレセイン(コダック社製)を最終濃度10μMになるように加え、以下に示すESRスペクトルの測定に供した。また、M13mp18DNAを用いずに上記と同様の操作を行い、ESRスペクトルの測定用のサンプル(プローブ単独)を得た。
【0069】
[3]ESRスペクトルの測定
ESR測定は一つのサンプルにつき20分間隔でsweep し、それを100分間にわたって続けた。そして、強度比、および、線幅の時間変化を追った。ESRは日本電子社製、測定には、人工石英の扁平セルを用いた。
【0070】
ESRおよび光照射装置は以下の設定で行なった。
【0071】
【表1】
光照射装置
モノクロメ−タ− 490nm
Power supply 88.5V-89V / 22A
図1にESRシグナル強度比の経時変化、線幅の経時変化を示す。図1からわかるように、プロ−ブ単独の場合には、光照射しても強度比及び線幅に変化は見られなかった。また、フルオレセイン/プロ−ブ/M13mp18の場合にも、光照射しなかった場合には、強度比、線幅に変化は見られなかった。
【0072】
これに対し、フルオレセイン/プロ−ブ/M13mp18DNAに光(490nm)を照射した場合、時間と共にESRの強度比は減少した。また、線幅に変化が観測されなかったことから、ESRでの強度変化が化学変化によるものではないといえる。従って、プロ−ブとM13mp18DNAによって形成された2重らせん構造を介してフルオレセインからプローブに結合させたTEMPOへ電荷が移動した結果、TEMPOのスピンが解消されたことが確認された。つまり、B/F分離なしに、プロ−ブ・標的DNA・ハイブリッド体が検出できたことになる。
実施例2
プロ−ブの塩基配列として下記の配列を用いる以外は、実施例1と同様の実験を行った。
【0073】
5’−GTTGTAAAAGGACGGCCAGT−3’
なお、このプローブの配列は、実施例1で用いたプローブの配列の5’末端から第10番目の塩基をCからGに変換したもので、実施例1のものと1塩基異なり、M13mp18DNAとはミスマッチするようになっている。
【0074】
このミスマッチ配列を有するプロ−ブ0.2μMにM13mp18DNA0.2μMを加え、実施例1と同様な操作でアニ−ルさせ、さらに、フルオレセインを加えて、ESRシグナルの強度比及び線幅の経時変化を調べた。
【0075】
その結果、実施例1で見られた強度変化は観測されず、プロ−ブ単独の場合と同じ強度を保ったままであった。このことは、ミスマッチしたオリゴヌクレオチドプロ−ブとDNAのハイブリッド体の場合には、正確な二本鎖が形成されず、電荷が移動しなかったといえる。
【0076】
実施例3
両末端ラベル(5’−TEMPO,3’- FITC)オリゴヌクレオチドプローブの合成
(1)3’アミノ基結合オリゴヌクレオチドの合成
グレンリサーチ社製の3’−アミノモディファイアーCPG(1μmol)を担体として実施例1で用いた標的DNAのモデルとしてのM13mp18DNAの一本鎖DNAと部分的に相補的な塩基配列を有する20量体オリゴヌクレオチドをABI社製381A DNA自動合成基で合成した。5’末端ジメトキシトリチル基は自動合成機上で除去した。
(2)スピンラベルオリゴヌクレオチドプローブの合成
上記(1)で合成したオリゴヌクレオチド(1μmol)をCPGサポートに結合したままガスタイトシリンジに移した。以下の反応はシリンジ内で行なった。CPGサポートにカルボニル−N,N’−ジイミダゾール(CDI)50mgを溶解したジオキサン1mlを加え室温下1時間放置した。ジオキサンで洗浄後減圧乾燥し、続いて実施例1で示した4−アミノヘキシルアミノ−TEMPOのDMSO溶液(0.2M 0.4ml)を加え55℃で24時間放置した。DMSO、ジオキサン、メタノールの順で洗浄し減圧乾燥した。
【0077】
次に、常法に従って濃アンモニア水によるスピンラベルオリゴヌクレオチドの切り出しと脱保護を行ないRPLCによって精製し、5’末端にTEMPOをラベルしたスピンラベルオリゴヌクレオチドを得た。
(3)両末端ラベルオリゴヌクレオチドプローブの合成
上記(2)で合成したスピンラベルオリゴヌクレオチドの3’末端には3−アミノ−2−ヒドロキシ基が結合しているので、このアミノ基とFITC(フルオレセインイソチオシアネート、Sigma社製)を以下の操作によって結合させた。
【0078】
上記(2)で合成したスピンラベルオリゴヌクレオチド0.2μmol(700μl水溶液)と1M炭酸ナトリウム緩衝液(pH9)100μlを混合し、得られた溶液にFITCの2mgのDMF溶液を加え35℃で24時間反応させた。ファルマシア社製ゲル濾過カラムNAP−25で処理し大過剰のFITCを除去した後RPLCによって精製し、5’末端にTEMPOが結合され、3’末端にFITCが結合されたプローブを得た。
【0079】
(4)ESRスペクトルの測定
上記(3)で得たプロ−ブとM13mp18DNA(それぞれ0.2μM)を定法に従ってアニ−ルさせ、ESRシグナルの強度比及び線幅の変化を実施例1の場合と同様な方法で調べた。プロ−ブ単独、光非照射時のプロ−ブ・標的DNA・ハイブリッド体では、強度の変化が見られなかったのに対し、プロ−ブ・標的DNA・ハイブリッド体にフルオレセインの励起波長である490nmの光をあてた場合にのみシグナルは時間と共に減少し、電荷移動が確認できた(図2)。さらに、スピン解消の度合いはフルオレセインがプロ−ブに結合されていない場合(実施例1)よりも大きく、両末端に電子供与体、電子受容体を結合させた方が効果的に電子移動が起こることが確認された。
【0080】
実施例4
プロ−ブの真ん中にM13mp18DNAとは1塩基異なる塩基配列を持つオリゴヌクレオチド(実施例2と同じ配列)を合成し、実施例3と同様な方法で、その両末端にTEMPOとフルオレセインとを結合させた。
【0081】
このプロ−ブとM13mp18DNA(それぞれ0.2μM)を定法に従ってアニ−ルさせ、ESRシグナルの強度比及び線幅の変化を実施例1の場合と同様な方法で調べた。プロ−ブ・標的DNA・ハイブリッド体にフルオレセインの励起波長である490nmの光をあてた場合にも、プロ−ブ単独、光非照射時のプロ−ブ・標的DNA・ハイブリッド体の場合と同様、ESRシグナルの強度比及び線幅の変化は観測されなかった。
【0082】
実施例5
実施例1と同様な塩基配列を持つ20量体オリゴヌクレオチドをDNA自動合成機により合成した。このオリゴヌクレオチドをプロ−ブとして用い、M13mp18DNAとのハイブリッド体を形成させた。溶液は10mMリン酸緩衝液、プロ−ブは最終濃度3μM、6μM、10μM、20μM、M13mp18DNAの濃度は最終濃度10μMとなるように調製した。さらに、このプロ−ブ・標的DNA・ハイブリッド体にリボフラビンを最終濃度100μMになるように加えた。プロ−ブ/M13mp18DNA/リボフラビン混合液1mlにリボフラビンの励起波長である470nmの光を5分間照射した。
【0083】
そのうちの200μlをヌクレア−ゼP1 で処理し、続いてE.coli アルカリフォスファタ−ゼで消化してプロ−ブ、及び、DNAをヌクレオシドに分解した。この分解物をKasaiらの方法(Gann,75,p841−844,(1984))に従ってHPLCで分離して8−ヒドロキシグアノシン(8−OH−G)の量を定量した。対照実験として、プロ−ブ/リボフラビン溶液及びM13mp18DNA/リボフラビン溶液のそれぞれについても同様な実験を行なった。
【0084】
その結果、図3に示すように、プロ−ブの濃度に依存して8−OH−Gが精製し、その最大値は、プロ−ブと標的DNAの比が1:1の時であることが明らかになった。プロ−ブ/リボフラビン溶液、M13mp18DNA/リボフラビン溶液では8−OH−Gは検出されなかった。つまり、プロ−ブとDNAとがハイブリッド体を形成した時にのみ8−OH−Gが生成したことになる。
【0085】
実施例6
実施例1と同様な塩基配列を持つ20量体オリゴヌクレオチドをDNA自動合成機により合成した。このオリゴヌクレオチドをプロ−ブとして用い、M13mp18DNAとハイブリッド体を形成させた。溶液は10mMリン酸緩衝液、プロ−ブは最終濃度3μM、6μM、10μM、20μM、M13mp18DNAの濃度は最終濃度10μMとなるように調製した。さらに、このプロ−ブ・標的DNA・ハイブリッド体にリボフラビンを最終濃度100μMになるように加えた。プロ−ブ/M13mp18DNA/リボフラビン混合液1mlにリボフラビンの励起波長である470nmの光を5分間照射した。
【0086】
対照実験として、プロ−ブ/リボフラビン溶液及びM13mp18DNA/リボフラビン溶液のそれぞれについても同様な実験を行なった。
【0087】
光照射後の各サンプル100μlにSalmon Testes DNA50μgを加えてマイクロプレ−トに固定し、ElISA法により8−OH−Gの抗体と反応させた。二次抗体としてアルカリフォスファタ−ゼの発色で定量した結果を図4に示す。Salmon Testes DNA50μgをもとに評価すると、プロ−ブ/リボフラビン溶液、M13mp18DNA/リボフラビン溶液ではSalmon Testes DNAと同程度のわずかな発色が認められたのにすぎないのに対して、プロ−ブ/DNA複合体ではそのプロ−ブ濃度に応じた発色が観測された。そして、プロ−ブとDNAとが等モルの時、最大となった。
【0088】
実施例7
実施例1と同様な塩基配列を持つ20量体オリゴヌクレオチドをDNA自動合成機により合成した。このオリゴヌクレオチドをプロ−ブとして用い、M13mp18DNAとハイブリッド体を形成させた。溶液は10mMリン酸緩衝液、プロ−ブは最終濃度3μM、6μM、10μM、20μM、M13mp18DNAの濃度は最終濃度10μMとなるように調製した。さらに、このプロ−ブ/DNAハイブリッド体にリボフラビンを最終濃度100μMになるように加えた。 プロ−ブ/M13mp18DNA/リボフラビン混合液1mlにリボフラビンの励起波長である470nmの光を5分間照射した。
【0089】
対照実験として、プロ−ブ/リボフラビン溶液及びM13mp18DNA/リボフラビン溶液のそれぞれについても同様な実験を行なった。
【0090】
各サンプルについてリボフラビンの吸収強度(450nm)を測定した(図5)。リボフラビンのみ、プロ−ブ/リボフラビン、M13mp18DNA/リボフラビン溶液では、吸収強度は変化せず、1.5ODであるのに対し、プロ−ブ/M13mp18DNA/リボフラビン溶液では吸収強度が減少してリボフラビンが電荷移動の結果他の物質に変化していることが確認できた。
【0091】
【発明の効果】
本発明の標的核酸の検出方法は、B/F分離が必要ないという利点を持つ。その結果、従来法で不可欠であった過剰なプロ−ブの除去、非特異吸着を除くための繁雑な処理、その条件検討等、数多くの操作が不要になった。
【0092】
さらに、正確なハイブリッド体でのみ信号変化が観測されるように試薬物質選択することで、反応系中にミスマッチが発生している場合でも、正確な2重らせん構造を形成しているハイブリッド体のみを検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)は、実施例1において得られたESRシグナル強度比の経時変化を示すグラフである。
(B)は、実施例1において得られたESRシグナル線幅の経時変化を示すグラフである。
なお、□は反応系にプローブ、標的DNA及びフルオレセインを含み、光照射を行った場合を、■は反応系にプローブ、標的DNA及びフルオレセインを含み、光照射を行わなかった場合を、◆は反応系にプローブ及びフルオレセインを含み、光照射を行った場合をそれぞれ表わす。
【図2】実施例3において得られたESRシグナル強度比の経時変化を示すグラフである。□、■及び◆は図1と同様である。
【図3】実施例5において得られた8−ヒドロキシグアノシンの生成量(Gに対する割合)と用いたプローブの量の関係を示すグラフである。
【図4】実施例6において得られた8−ヒドロキシグアノシンの生成量(ELISA法による呈色反応)と用いたプローブの量の関係を示すグラフである。
【図5】実施例7において得られたリボフラビンとプローブ・標的DNA・ハイブリッド体の相互作用を示すグラフである。
Claims (76)
- 試料溶液中にプローブを加えてこれらを反応させる過程と、該試料溶液中に標的核酸が存在する場合に得られるプローブと標的核酸とのハイブリッド体の2重らせん構造を検出する過程とを有する核酸ハイブリッド体の検出方法において、
2重らせん構造を介した電荷移動により検出可能な変化を起こす電子供与体と電子受容体を含む2種以上の試薬物質を前記試料溶液中に存在させて、標的核酸が存在する場合に形成されるプローブと標的核酸とのハイブリッド体の2重らせん構造を構成する塩基対のスタッキングを介して起こる前記2種以上の試薬物質間の電荷移動に基づく変化を測定して、2重らせん構造を検出する
ことを特徴とする核酸ハイブリッド体の検出方法。 - 電子受容体が、電子の受容によってEPR(電子スピン共鳴)スペクトルに変化を起こす物質である請求項1に記載の方法。
- 試薬物質間の相互作用に基づく変化が光学的に検出可能である請求項1に記載の方法。
- 試薬物質間の相互作用に基づく変化が、該電荷の移動があった場合に生じる化学変化した該第1の試薬物質もしくは化学変化した該第2の試薬物質と、第3の物質との化学変化によって検出可能である請求項1に記載の方法。
- 試薬物質が、2重らせん構造を構成する核酸塩基に対するインターカレーターである請求項1に記載の方法。
- 試薬物質間の相互作用が、光照射により開始される請求項3に記載の方法。
- 試薬物質の少なくとも1種がプローブに結合されている請求項1に記載の方法。
- 試薬物質間の相互作用に基づく変化が不可逆的である請求項1に記載の方法。
- 試料溶液中にプローブを加えてこれらを反応させる過程と、該試料溶液中に標的核酸が存在する場合に得られるプローブと標的核酸とのハイブリッド体の2重らせん構造を検出する過程とを有する核酸ハイブリッド体の検出方法において、
2重らせん構造を介した電荷移動により検出可能な変化を起こす少なくとも電子供与体と電子受容体を含む試薬物質を前記試料溶液中に存在させ、標的核酸が存在する場合に形成されたプローブと標的核酸とのハイブリッド体の2重らせん構造を構成する塩基対のスタッキングを介して起こる前記試薬物質との電荷移動によって起こる変化を測定することで2重らせん構造を検出する
ことを特徴とする核酸ハイブリッド体の検出方法。 - 相互作用に基づく変化が光学的に検出可能である請求項9に記載の検出方法。
- 相互作用に基づく変化が、該電荷の移動があった場合に生じる化学変化した該第1の試薬物質もしくは化学変化した該第2の試薬物質と、第3の物質との化学変化によって検出可能である請求項9に記載の検出方法。
- 試薬物質が、2重らせん構造を構成する核酸塩基に対するインターカレーターである請求項9に記載の検出方法。
- 相互作用が、光照射により開始される請求項9に記載の検出方法。
- 試薬物質がプローブに結合されている請求項9に記載の検出方法。
- 相互作用に基づく変化が不可逆的である請求項9に記載の検出方法。
- 標的核酸とのハイブリダイズのための配列を有する標的核酸検出用プローブであって、該プローブに、前記標的核酸のハイブリダイゼーションにより形成される2重らせん構造を介した電荷移動により検出可能な変化を起こす2種以上の試薬物質の少なくとも1種が結合されてなり、
前記2種以上の試薬物質が、少なくとも電子供与体と電子受容体を含み、前記電荷移動が、少なくとも2重らせん構造を構成する塩基対のスタッキングを介したこれらの電子供与体と電子受容体との間での電荷移動である
ことを特徴とする標的核酸検出用プローブ。 - 電子受容体が、電子の受容によってEPR(電子スピン共鳴)スペクトルに変化を起こす物質である請求項16に記載の標的核酸検出用プローブ。
- 試薬物質間の相互作用に基づく変化が光学的に検出可能である請求項16に記載の標的核酸検出用プローブ。
- 試薬物質が、2重らせん構造を構成する核酸塩基に対するインターカレーターである請求項16に記載の核酸ハイブリッド体検出用プローブ。
- 試薬物質間の相互作用が、光照射により開始される請求項16に記載の標的核酸検出用プローブ。
- 試薬物質間の相互作用に基づく変化が不可逆的である請求項16に記載の標的核酸検出用プローブ。
- 標的核酸とのハイブリダイズのための配列を有する標的核酸検出用プローブであって、該プローブに、前記標的核酸とのハイブリダイゼーションにともなって形成される2重らせん構造との相互作用により検出可能な変化を生じる試薬物質が結合されてなり、
前記試薬物質が、2重らせん構造に対する電子供与体または電子受容体であり、前記相互作用が2重らせん構造を構成する塩基対のスタッキングを介した電荷移動に基づくものである
ことを特徴とする核酸ハイブリッド体検出用プローブ。 - 電子受容体が、電子の受容によってEPR(電子スピン共鳴)スペクトルに変化を起こす物質である請求項22に記載のプローブ。
- 相互作用に基づく変化が光学的に検出可能である請求項22に記載のプローブ。
- 相互作用に基づく変化が、該電荷の移動があった場合に生じる化学変化した該第1の試薬物質もしくは化学変化した該第2の試薬物質と、第3の物質との化学変化によって検出可能である請求項22に記載のプローブ。
- 試薬物質が、2重らせん構造を構成する核酸塩基に対するインターカレーターである請求項22に記載のプローブ。
- 相互作用が、光照射により開始される請求項22に記載のプローブ。
- 相互作用に基づく変化が不可逆的である請求項22に記載のプローブ。
- 試料溶液中の標的核酸の有無を確認する方法であって、
(a)第1の試薬物質および該標的核酸の塩基配列に対して相補的な塩基配列を有する一本鎖核酸に結合してなる第2の試薬物質であって、該第1の試薬物質と該第2の試薬物質とは、該標的核酸と該一本鎖核酸との間で形成される2本鎖核酸ハイブリッドの2重らせん構造を構成する核酸塩基対のスタッキングを介してそれらの間で電荷が移動するものであるものを用意する工程;
(b)該標的核酸を含んでいる可能性のある試料溶液に、該第1の試薬物質および該一本鎖核酸に結合している第2の試薬物質とを加え、該試料溶液を該標的核酸と該一本鎖核酸との間で2本鎖核酸ハイブリッドが形成される条件下に置く工程;及び
(c)該工程(b)によって該試料溶液中に該標的核酸が存在する場合に形成される該2本鎖核酸ハイブリッドの2重らせん構造を構成する核酸塩基対のスタッキングを介した該第1および第2の試薬物質間での電荷の移動の有無を検出する工程、
とを有することを特徴とする試料溶液中の標的核酸の有無を確認する方法。 - 該第1もしくは第2の試薬物質が、スピンラベル化剤であり、また該工程(c)における、該第1および第2の試薬物質間の該電荷の移動の有無の検出が、電子スピン共鳴の測定によるスペクトルの変化の有無を測定する工程を含む請求項29に記載の方法。
- 該スピンラベル化剤が、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン(TEMPO)である請求項30に記載の方法。
- 該工程(c)が、該電荷の移動の有無の検出を化学的に行なう工程を有し、該電荷の移動の有無の検出を化学的に行なう工程が、該電荷の移動があった場合に生じる化学変化した該第1の試薬物質もしくは化学変化した該第2の試薬物質と第3の物質とを化学反応せしめる工程と、該第3の物質の化学変化を検出する工程とを含む請求項29に記載の方法。
- 該工程(c)が、該電荷の移動の有無の検出を化学的に行なう工程を有し、該電荷の移動の有無の検出を化学的に行なう工程が、該電荷の移動があった場合に生じる化学変化した該第1の試薬物質もしくは化学変化した該第2の試薬物質と第3の物質とを化学反応せしめる工程と、該第3の物質の化学変化を検出する工程とを含み、該変化を生じた第1の試薬物質もしくは第2の試薬物質と第3の試薬物質との化学反応が、抗原抗体反応である請求項29に記載の方法。
- 該工程(c)が、該電荷の移動の有無の検出を光学的に行なう請求項29に記載の方法。
- 該電荷の移動の有無の光学的な検出が、新たな吸収スペクトルの発現の有無を検出する工程を含む請求項34に記載の方法。
- 該電荷の移動の有無の光学的な検出が、吸収スペクトルの変化を有無を検出する工程を含む請求項34に記載の方法。
- 該第1の試薬物質及び該第2の試薬物質の少なくとも一方が、該電荷の移動によって検出可能な化学変化を生じるものである請求項29に記載の方法。
- 該第1の試薬物質及び第2の試薬物質の少なくとも一方がインターカレータである請求項29〜37の何れかに記載の方法。
- 該第1の試薬物質と該第2の試薬物質とが共に該1本鎖核酸に結合している請求項29〜38の何れかに記載の方法。
- 該第1および第2の試薬物質は、該標的核酸と該1本鎖核酸との間で形成される2本鎖核酸ハイブリッドが存在しない場合には相互作用しない様に該1本鎖核酸に結合している請求項39に記載の方法。
- 該電荷の移動が光照射によって引き起こされるものである請求項29〜40の何れかに記載の方法。
- 試料溶液中の標的核酸の有無を確認する方法であって、
(a)該標的核酸の塩基配列に対し相補的な塩基配列を有する1本鎖核酸を含むプローブを用意する工程;
(b)該プローブと該標的核酸との間で形成される2本鎖核酸ハイブリッドとの間で、該2本鎖核酸ハイブリッドの2重らせん構造を構成する核酸塩基対のスタッキングを介して電荷が移動する試薬物質を用意する工程;
(c)該プローブ及び該試薬物質を該標的核酸を含んでいる可能性のある試料溶液中に加え、該プローブと該試薬物質との間で2本鎖核酸ハイブリッドが形成される条件下に置く工程;および
(d)該工程(c)によって該試料溶液中に該標的核酸が存在する場合に形成される該2本鎖核酸ハイブリッドの2重らせん構造を構成する核酸塩基対のスタッキングを介した該試薬物質と該2本鎖核酸ハイブリッドとの間での電荷の移動の有無を検出する工程、
を有することを特徴とする試料溶液中の標的核酸の有無を確認する方法。 - 該試薬物質が該1本鎖核酸に結合している請求項42に記載の方法。
- 該工程(d)が、該電荷の移動の有無の検出を化学的に行なう工程を含み、該電荷の移動の有無の検出を化学的に行なう工程が、該電荷の移動があった場合に生じる化学変化した該試薬物質と他の物質とを化学反応せしめる工程と、該他の物質の化学変化を検出する工程とを含む請求項42または43に記載の方法。
- 該工程(d)が、該電荷の移動の有無の検出を化学的に行なう工程を含み、該電荷の移動の有無の検出を化学的に行なう工程が、該電荷の移動があった場合に生じる化学変化した該試薬物質と他の物質とを化学反応せしめる工程と、該他の物質の化学変化を検出する工程とを含み、該化学変化した該試薬物質と他の物質との化学反応が、抗原抗体反応である請求項42または43に記載の方法。
- 該工程(d)が、該電荷の移動の有無の検出を光学的に行なう請求項42または43に記載の方法。
- 該電荷の移動の有無の光学的な検出が、新たな吸収スペクトルの発現の有無を検出する工程を含む請求項46に記載の方法。
- 該電荷の移動の有無の光学的な検出が、吸収スペクトルの変化を有無を検出する工程を含む請求項46に記載の方法。
- 該試薬物質がリボフラビンである請求項42〜48の何れかに記載の方法。
- 該電荷の移動が光照射によって引き起こされるものである請求項42〜49の何れかに記載の方法。
- 該試薬物質がインターカレーターである請求項42〜50のいずれかに記載の方法。
- 標的核酸の検出用のプローブであって、
該プローブは、該標的核酸の塩基配列に対して相補的な塩基配列を有する1本鎖核酸、第1の試薬物質及び第2の試薬物質とを含み、
該第1及び第2の試薬物質は共に該1本鎖核酸に結合しており、且つ
該第1及び第2の試薬とは、該1本鎖核酸と該標的核酸との間で形成される2本鎖核酸ハイブリッドの2重らせん構造を構成する核酸塩基対のスタッキングを介してそれらの間で電荷が移動するものであることを特徴とするプローブ。 - 該第1の試薬物質および第2の試薬物質の少なくとも一方が該電荷の移動によって検出可能な変化を生じるものである請求項52に記載のプローブ。
- 該第1の試薬物質がスピンラベル化剤であって、第2の試薬物質が該スピンラベル化剤への電子供与体であり、該スピンラベル化剤への該電荷の移動を電子スピン共鳴におけるスペクトルの変化として検出可能なものである請求項53に記載のプローブ。
- 該スピンラベル化剤が4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン(TEMPO)である請求項54に記載のプローブ。
- 該電子供与体が、フルオレセインイソチオシアネートである請求項54または55に記載のプローブ。
- 該変化が化学的に検出可能な変化であり、該化学的に検出可能な変化が、該電荷の移動によって変化した第1もしくは第2の試薬物質が、第3の物質と化学的に反応した結果として検出可能な変化をもたらすものである請求項53に記載のプローブ。
- 該変化が、光学的に検出可能な変化である請求項53に記載のプローブ。
- 該光学的に検出可能な変化が、新たな吸収スペクトルの発現である請求項58に記載のプローブ。
- 該光学的に検出可能な変化が、吸収スペクトルの変化である請求項58に記載のプローブ。
- 該第1及び第2の試薬物質の少なくとも一方がインターカレータである請求項52〜60の何れかに記載のプローブ。
- 該第1及び第2の試薬物質は、該2本鎖核酸ハイブリッドが形成されない場合には相互に作用しない様に該1本鎖核酸に結合している請求項52〜61の何れかに記載のプローブ。
- 該電荷の移動が光照射によって生じるものである請求項52〜62の何れかに記載のプローブ。
- 標的核酸とプローブとの間で形成される2本鎖核酸ハイブ
リッド内のミスマッチの有無を検出する方法であって、
(a)該標的核酸の塩基配列に対して相補的な塩基配列を有する1本鎖核酸、該1本鎖核酸に結合している該第1の試薬物質及び第2の試薬物質とを含み、該第1及び第2の試薬物質は共に該1本鎖核酸に結合しており、且つ該第1及び第2の試薬とは、該1本鎖核酸と該標的核酸との間で形成される2本鎖核酸ハイブリッドの2重らせん構造を構成する核酸塩基対のスタッキングを介してそれらの間で電荷が移動するものであるプローブを用意する工程;
(b)該プローブを該標的核酸を含む試料溶液に加え、該試料溶液を該プローブと該標的核酸との間で2本鎖核酸ハイブリッドが形成される条件下に置く工程;および
(c)該電荷の移動の有無を検出する工程、
を有することを特徴とする2本鎖核酸ハイブリッド内のミスマッチの検出方法。 - 該第1の試薬物質及び第2の試薬物質が、該1本鎖核酸の両末端に結合している請求項64に記載の検出方法。
- 該電荷の移動が光照射によって生じるものである請求項64または65に記載の検出方法。
- 該第1及び第2の試薬物質は、該2本鎖核酸ハイブリッドが形成されない場合には、相互作用しない様に該1本鎖核酸に結合している請求項64〜66の何れかに記載の検出方法。
- 該第1の試薬物質及び該第2の試薬物質の少なくとも一方が該電荷の移動によって検出可能な変化を生じるものである請求項64〜67の何れかに記載の検出方法。
- 該第1及び第2の試薬物質の少なくとも一方がインターカレーターである請求項64〜68のいずれかに記載の検出方法。
- 該第1の試薬物質が、スピンラベル化剤であり、該第2の試薬物質が該スピンラベル化剤に対する電子供与体であり、該電荷の移動の有無の検出が、電子スピン共鳴の測定によるスペクトルの変化の有無を測定する工程を含む請求項64〜69の何れかに記載の検出方法。
- 該スピンラベル化剤が4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン(TEMPO)である請求項70に記載の検出方法。
- 該電子供与体が、フルオレセインイソチオシアネートである請求項70または71に記載の検出方法。
- 該変化が化学的に検出可能な変化であり、該化学的に検出可能な変化が、該電荷の移動によって変化した第1もしくは第2の試薬物質が、第3の物質と化学的に反応した結果として検出可能な変化をもたらすものである請求項68に記載の検出方法。
- 該変化が、光学的に検出可能な変化である請求項68に記載の検出方法。
- 該光学的に検出可能な変化が、新たな吸収スペクトルの発現である請求項74に記載の検出方法。
- 該光学的に検出可能な変化が、吸収スペクトルの変化である請求項74に記載の検出方法。
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