JP2001288260A - 交互共重合ポリエステルの製造方法 - Google Patents

交互共重合ポリエステルの製造方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 エステル交換反応によるポリエステル共重合
体のランダム共重合化を起こすことなく、交互共重合ポ
リエステルの一次構造を維持しつつ成型材料として十分
な重合度を有する結晶性で耐熱性の交互共重合ポリエス
テルを製造する方法を提供する。 【解決手段】 ポリマー繰り返し単位の少なくとも90
モル%が、下記式(1) で表される単位からなり、かつ極限粘度[η]が0.1
〜0.5であるポリエステルを結晶化させた後、固相重
合せしめることにより、極限粘度[η]が0.4〜2.
0に高められた結晶性の交互共重合ポリエステルを製造
する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、交互共重合ポリエ
ステルの一次構造を維持しつつ極限粘度[η]が0.4
〜2.0である高分子量の交互共重合ポリエステルを製
造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】PET(ポリエチレンテレフタレー
ト)、PEN(ポリエチレン−2,6−ナフタレート)
に代表されるポリエステルは、その機械的、物理的、化
学的特性が優れているため衣料用・産業用繊維をはじめ
とするその他成型物等に広く利用されている。
【0003】しかしながら、機械特性、耐熱性に優れる
PENの成型品は耐衝撃性が低く、デラミ性を有する、
また、Tgが70℃のPETは耐熱性が低いという問題
がある。
【0004】これを改良する手法として、従来からPE
N、PETなどのポリエステルを溶融重合により共重合
する方法が知られている。しかし、一般にこの方法では
共重合体はエステル交換反応を伴った重縮合であるの
で、ポリエステル共重合体の一次構造はランダム化する
ことが知られている。したがって、PET、PEN本来
の結晶性、融点を著しく低下させ、その結果、成型体の
耐熱性、機械特性が不十分なものとなる。
【0005】このため、本発明者らは、先に、新規な交
互共重合体および溶液重合により該共重合体を製造する
方法を提案した(特願2000−90776号)。しか
し、溶液重合のみでは交互共重合ポリエステルの一次構
造を維持しつつ成型材料として十分な重合度を有する交
互共重合体を得ることが困難である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、エス
テル交換反応によるポリエステル共重合体のランダム共
重合化を起こすことなく、交互共重合ポリエステルの一
次構造を維持しつつ成型材料として十分な重合度を有す
る結晶性の交互共重合ポリエステルを製造するに適した
方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の課
題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、上記式
(1)で表されるポリエステルのプレポリマーを製造
し、これを固相重合せしめることによって、エステル交
換反応によるポリエステル共重合体のランダム共重合化
を起こすことなく、上記式(1)で表されるポリエステ
ルの一次構造を維持しつつ成型材料として十分な重合度
を有するポリエステルを製造可能であることを見出し、
本発明を完成するに至った。
【0008】すなわち、本発明は、ポリマー繰り返し単
位の少なくとも90モル%が、下記式(1)
【0009】
【化3】
【0010】好ましくは、下記式(2)
【0011】
【化4】
【0012】で表される単位からなり、かつ、フェノー
ル/1,1,2,2−テトラクロロエタン混合溶媒(重量
比6/4)を用いて35℃で測定した極限粘度[η]が
0.1〜0.5であるポリエステル(プレポリマー)を
結晶化させた後、これを固相重合せしめることにより、
極限粘度[η]が0.4〜2.0に高められた交互共重
合ポリエステルを得ることを特徴とするポリエステルの
製造方法である。
【0013】そして、上記の方法において、 a)上記式(1)または(2)で表される繰り返し単位
から実質的になるポリエステルのプレポリマーを、不活
性ガス気流下常圧もしくは1mmHg以下の高真空下に
て加熱固相重合することを特徴とする方法、ならびに、 b)固相重合後の上記式(2)で表される繰り返し単位
から実質的になる交互共重合ポリエステルの1H−NM
R測定(23℃、重水素化クロロホルム/重水素化トリ
フルオロ酢酸=3/1(v/v)中)において、上記式
(1)で表されるポリエステルのメチレンプロトンに由
来するシグナルが4.85ppmから4.87ppmの
化学シフトに観測され、このシグナルの積分に対する
4.8ppm、4.9ppm付近の積分の比がそれぞれ
0.1以下であることを特徴とする方法、も、本発明に
包含される。
【0014】
【発明の実施の形態】本発明方法で用られる比較的低分
子量のポリエステル(以下、プレポリマーということが
ある)は、ポリマー繰り返し単位の少なくとも90モル
%、好ましくは95モル%以上、より好ましくは98〜
100モル%が、下記式(1)
【0015】
【化5】
【0016】好ましくは、下記式(2)
【0017】
【化6】
【0018】で表わされるポリエステルであって、ポリ
マーシークエンスにおいてエチレン−2,6−ナフタレ
ート単位とエチレンテレフタレート単位とが交互に規則
正しく配置している線状の共重合体である。
【0019】本発明方法で用いられる上記の交互共重合
ポリエステルは、テレフタル酸クロライドと2,6−ビ
ス(2'−ヒドロキシエチル)ナフタレートで代表され
るヒドロキシアルキル基の炭素数が2〜4の2,6−ビ
ス(2'−ヒドロキアルキル)ナフタレートとを反応さ
せるか、および/または、2,6−ナフタレンジカルボ
ニルクロライドとビス(2−ヒドロキシエチル)テレフ
タレートで代表されるヒドロキシアルキル基の炭素数が
2〜4のビス(2−ヒドロキシアルキル)テレフタレー
トとを反応させる方法により製造することができる。こ
のような反応は、例えば、N−メチル−2−ピロリドン
等の極性有機溶媒中で上記両成分を反応させる溶液重合
法により実施することができる。
【0020】上記ポリエステルのプレポリマーの分子量
は、フェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン混
合溶媒(重量比6/4)を用いて35℃で測定した極限
粘度[η]にして0.1〜0.5であり、好ましくは
[η]=0.2〜0.4である。
【0021】このプレポリマーの極限粘度[η]が0.
1より低い場合は、後述する結晶化処理を行っても固相
重合に供し得る結晶化度のポリマーが得られず、また、
極限粘度が[η]が0.5を超えるものは、溶液重合で
は良好な生産性で製造するのが難しい。
【0022】本発明方法では、上述のようにして得られ
たプレポリマーを平均粒径5mm以下に粉砕し、これを
例えば120℃、真空下にて一晩乾燥後、不活性ガス気
流下常圧または1mmHg以下の高真空状態でポリマー
の結晶化温度(Tc)以上かつ融点(Tm)以下の温度
にて0.5〜1.0時間かけて加熱することにより結晶
化して固相重合用プレポリマーとする。プレポリマーの
結晶化手段としては上記の加熱結晶化が好ましいが、必
要に応じ、溶媒で処理する方法も採用することができ
る。
【0023】本発明方法では、この結晶化プレポリマー
を固相重合槽に供給し、該固相重合槽内で、不活性ガス
気流下常圧または1mmHg以下の高真空状態でポリマ
ーのガラス転移温度(Tg)以上でかつ融点(Tm)よ
り5〜40℃低い温度、好適には150〜200℃に加
熱して、固相重合せしめることによりポリマーの重合度
を高め、最終的には極限粘度[η]が0.4〜2.0、
好ましくは0.5〜1.8の高分子量交互共重合ポリエ
ステルとする。この固相重合においては連続的または段
階的に温度を上昇させながら加熱するのが好ましい。
【0024】固相重合後の上記式(2)で表される繰り
返し単位らなる交互共重合ポリエステルの一次構造は、
23℃、重水素化クロロホルム/重水素化トリフルオロ
酢酸=3/1(v/v)中での1H−NMR測定により
明らかにすることができる。例えば、J.Poly.S
ci(Part A),34,2841(1996)に
は、PETとPENのランダム共重合及びブレンドの1
H−NMR測定による知見が示されており、PETとP
ENのランダム共重合ではメチレンプロトンに由来する
シグナルが3種存在し、それぞれ低磁場側より、2つの
テレフタル酸残基とエステル結合したエチレン、一方が
テレフタル酸で他方がナフタレンジカルボン酸残基とエ
ステル結合したエチレン、2つのナフタレンジカルボン
酸残基とエステル結合したエチレンと帰属されることが
報告されている。本発明方法により製造される交互共重
合ポリエステルでは、一方がテレフタル酸残基で他方が
ナフタレンジカルボン酸残基とエステル結合したエチレ
ンのシグナルが主に観測され、固相重合前後においても
この主なシグナルとランダム共重合に由来する他の2種
のシグナルとの面積比が0.1以下、好ましくは0.0
5以下、より好ましくは0.03以下であり、これによ
って、上記手法を用いた固相重合により交互共重合ポリ
エステルの一次構造を維持しつつ上記式(1)で表され
るポリエステルを高重合度化できる。
【0025】
【発明の効果】以上のような本発明の方法により、エス
テル交換反応によるランダム共重合化を抑制し、かつ、
ポリエステルの一次構造を維持しつつ該ポリエステルの
プレポリマーより高重合度の交互共重合ポリエステルを
安定的に製造することが可能となる。
【0026】そして、本発明方法により得られる交互共
重合ポリエステルは、PETとPENの利点を併せ持
ち、結晶性でかつTm200℃以上、Tg90℃以上の
優れた耐熱性を有する素材であり、溶融成型により、機
械的性質の良好な繊維・フィルム・成型品などとするこ
とができ、特にボトル用として好適である。そして、こ
れらの成型品においてはPENの成型品に見られるよう
なデラミなどの問題は発生しない。
【0027】また、このポリエステルは、安定剤、着色
剤、紫外線吸収剤、離型剤などの各種添加剤、ガラス繊
維などの強化材、さらには無機粒子、有機粒子などの充
填材などを添加し樹脂組成物として使用することもでき
る。
【0028】また、この交互共重合ポリエステルは、安
定剤、着色剤、紫外線吸収剤、離型剤、難燃剤などの各
種添加剤、ガラス繊維や炭素繊維などの強化材、さらに
は無機微粒子、有機微粒子、他の熱可塑性重合体などの
充填材などを添加して樹脂組成物としても有効に使用す
ることができる。
【0029】
【実施例】以下、実施例をあげて本発明を説明するが、
実施例は説明のためのものであって、本発明はこれに限
定されるものではない。なお、例中「部」は特にことわ
らない限り「重量部」を意味するものとする。
【0030】なお、例中に記載した各種の評価項目は次
のようにして求めた。 (1)極限粘度[η]の測定 極限粘度[η]はフェノール/1,1,2,2−テトラク
ロロエタン混合溶液(重量比6/4)中、35℃にて測
定した。 (2)融点、ガラス転移温度の測定 ガラス転移温度(Tg)、結晶化温度(Tc)および融
点(Tm)の測定は、セイコーDSC220示差走査熱
量計を用い、窒素ガス気流下、10℃/minの速度で
昇温して測定を行った。 (3)1H−NMR測定1 H−NMR測定は日本電子JNR−EX270を用
い、重水素化クロロホルム/重水素化トリフルオロ酢酸
=3/1(v/v)混合溶媒中23℃にて測定を行っ
た。
【0031】[参考例1]室温、窒素気流下にてビス
(2−ヒドロキシエチル)テレフタレート5.01部を
乾燥ピリジン3.4mlと乾燥N−メチル−2−ピロリ
ドン50mlとの混合物に溶解し、これに2,6−ナフ
タレンジカルボニルクロライド4.99部の乾燥N−メ
チル−2−ピロリドン60mlに溶解した溶液を滴下
し、室温で0.5時間攪拌した。40℃で0.5時間、
80℃で1.5時間、100℃で1.5時間加熱攪拌し
たのちに反応溶液を室温まで冷却し、これを水3Lに注
いで析出した白色固体を濾別した。これを水500m
l、アセトン300mlで洗浄したのちに120℃で真
空乾燥してポリマー8.0部(収率94%)を得た。こ
のポリマーは[η]=0.21、Tg=104℃、Tc
=150℃、Tm=221℃であり、X線回折および1
H−NMR測定により上記式(2)の繰り返し単位から
なるポリエステルであることを確認した。った。
【0032】[参考例2]室温、窒素気流下にて2,6
−ビス(2'−ヒドロキシエチル)ナフタレート35.
98部を乾燥ピリジン20.0ml、乾燥N−メチル−
2−ピロリドン80mlに溶解し、これにテレフタル酸
クロライド24.02部の乾燥N−メチル−2−ピロリ
ドン260mlに溶解した溶液を滴下し、室温で1.0
時間攪拌した。60℃で1.5時間加熱攪拌したのちに
反応溶液を室温まで冷却し、これを水5Lに注いで析出
した白色固体を濾別した。水1L、アセトン500ml
で洗浄後、120℃で真空乾燥してポリマー49.3部
(収率96%)を得た。このポリマーは[η]=0.2
4、Tg=104℃、Tc=156℃、Tm=225℃
であり、X線回折および1H−NMR測定により上記式
(2)の繰り返し単位からなるポリエステルであること
を確認した。
【0033】[実施例1]参考例1で得られた[η]=
0.21のポリエステル(プレポリマー)を粒径5mm
以下に粉砕後、170℃で高真空下にて1時間加熱結晶
化させて、固相重合用プレポリマーとした。この結晶化
プレポリマー6.5部を固相重合釜に入れ、高真空下に
て、190℃で3時間、次いで195℃で7時間、さら
に200℃で12時間加熱して固相重合を行った。固相
重合後のポリマーは[η]=0.50、Tg=104
℃、Tm=213℃であった。この実施例1の固相重合
におけるポリマーの[η]の経時変化を図1に実線で示
す。
【0034】[実施例2]参考例2で得られた[η]=
0.24のポリエステル(プレポリマー)を粒径5mm
以下に粉砕後、170℃で高真空下にて1時間加熱結晶
化させて、固相重合用プレポリマーとした。この結晶化
プレポリマー45.0部を固相重合釜に入れ、高真空下
にて190℃で39時間加熱して固相重合を行った。固
相重合後のポリマーは[η]=0.46、Tg=103
℃、Tc=190℃、Tm=217℃であった。この実
施例2の固相重合におけるポリマー[η]の経時変化を
図1に破線で示す。
【0035】[実施例3]実施例1および実施例2で得
られた各ポリマーを、重水素化クロロホルム/重水素化
トリフルオロ酢酸=3/1(v/v)混合溶媒中23℃
にて1H−NMR測定を行い、4.7〜4.9ppmに
観測されるメチレンプロトンに由来するシグナルについ
て固相重合前後の変化を追跡した。
【0036】ランダム共重合では低磁場側より2つのテ
レフタル酸残基とエステル結合したエチレン、一方がテ
レフタル酸で他方がナフタレンジカルボン酸残基とエス
テル結合したエチレン、2つのナフタレンジカルボン酸
残基とエステル結合したエチレンと3種のシグナルが帰
属されるが、それぞれの積分比をx、y、zとしてx/
y、z/yの値を算出したところ、実施例1,2ともに
固相重合後のx/y、z/yの値は0.05以下であ
り、固相重合反応においてポリエステルの一次構造が維
持されていることが明らかとなった。算出したx/y、
z/yの値を次の表1に示す。
【0037】
【表1】
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、固相重合(実施例1,2)における上
記交互共重合ポリエステルの極限粘度[η]の経時変化
を示すグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 伊藤 隆 山口県岩国市日の出町2番1号 帝人株式 会社岩国研究センター内 (72)発明者 定延 治朗 山口県岩国市日の出町2番1号 帝人株式 会社岩国研究センター内 Fターム(参考) 4J029 AA03 AB04 AC05 AD01 AD06 AD07 AE01 AE02 AE03 BB06A BC07A CB04A CC06A HA01 HB01 HB05 KC02 KD07 KE12 KF07

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ポリマー繰り返し単位の少なくとも90
    モル%が、下記式(1) 【化1】 で表される単位からなり、かつ、フェノール/1,1,
    2,2−テトラクロロエタン混合溶媒(重量比6/4)
    を用いて35℃で測定した極限粘度[η]が0.1〜
    0.5であるポリエステルを、結晶化させた後、これを
    固相重合せしめることにより、極限粘度[η]が0.4
    〜2.0に高められた交互共重合ポリエステルを得るこ
    とを特徴とするポリエステルの製造方法。
  2. 【請求項2】 上記ポリエステルが、ポリマー繰り返し
    単位の少なくとも90モル%が下記式(2) 【化2】 で表される単位からなるポリマーであることを特徴とす
    る請求項1に記載のポリエステルの製造方法。
  3. 【請求項3】 上記ポリエステルを不活性ガス気流下常
    圧もしくは1mmHg以下の高真空下にて加熱固相重合
    することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の
    ポリエステルの製造方法。
  4. 【請求項4】 固相重合後の交互共重合ポリエステルの
    1H−NMR測定(23℃、重水素化クロロホルム/重
    水素化トリフルオロ酢酸=3/1(v/v)中)におい
    て、上記式(1)で表されるポリエステルのメチレンプ
    ロトンに由来するシグナルが4.85ppmから4.8
    7ppmの化学シフトに観測され、かつ、このシグナル
    の積分に対する4.8ppm、4.9ppm付近の積分
    の比がそれぞれ0.1以下であることを特徴とする請求
    項2に記載のポリエステルの製造方法。
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