JP3704218B2 - 湿熱耐久性の改善されたポリエステル弾性体及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリエステル弾性体及びその製造方法に関し、更に詳しくは、従来のポリエステル弾性体が有していた、耐候性、耐熱性、伸度及び伸張回復性、機械強度等の特性を有するとともに湿熱耐久性の向上したポリエステル弾性体及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、芳香族ポリエステルをハードセグメントとし、脂肪族ポリエーテル又は脂肪族ポリエステルをソフトセグメントとするポリエステルブロック共重合体はいわゆるポリエステル弾性体として種々の用途に使用されている。
【0003】
しかしながら、これらのポリエステル弾性体は耐候性及び耐熱性等が不十分で、例えば最も普通に用いられているポリ(オキシテトラメチレン)グリコールをソフトセグメントとするポリエステル弾性体は安定剤を使用しない限りはその安定性が低く、室温下でも1〜2カ月で使用不可能な状態になるまで劣化するといった欠点がある。
【0004】
また、脂肪族ポリエステルをソフトセグメントとするポリエステル弾性体は、ポリエーテルをソフトセグメントとするポリエステル弾性体と比較して耐候性等に優れているものの湿熱耐久性等に問題があり、しかも安定剤を併用しない場合には耐熱性及び耐候性は必ずしも十分であるとは言えない。
【0005】
上記のような欠点を改良するべく、先に、特開平5−32770号公報において、芳香族ポリエステルをハードセグメントとし、イソフタル酸及び/又はフタル酸、炭素数6〜12の脂肪族ジカルボン酸を主たる酸成分とし、炭素数6〜12のα,ω−ジオールを主たるグリコール成分とするポリエステルをソフトセグメントとするポリエステル弾性体を提案した。しかしながら、該ポリエステル弾性体では、耐熱性や耐候性等の特性は十分であるものの、その弾性体の用途によっては、要求されている湿熱耐久性を十分に達成出来ていなかった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、従来のポリエステル弾性体が有していた、耐候性、耐熱性、伸度及び伸張回復性、機械強度等の特性を有するとともに湿熱耐久性の向上したポリエステル弾性体及びその製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは前掲の特開平に記載されたポリエステル弾性体の湿熱耐久性を向上すべく鋭意検討を重ねた結果、ポリエステル弾性体のカルボキシル末端基濃度と、該ポリエステル弾性体の湿熱耐久性との間に相関関係があることを見出し本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明によれば、
ポリエステル(A)部分とポリエステル(B)部分とから構成されたポリエステル弾性体であって、
該ポリエステル(A)部分が、酸成分としてのイソフタル酸及び/又はフタル酸を主とする芳香族ジカルボン酸成分を全酸成分を基準として60〜90モル%、炭素数6〜12の脂肪族ジカルボン酸を全酸成分を基準として40〜10モル%と、グリコール成分としての炭素数6〜12の脂肪族α,ω−ジオールとから構成され、
該ポリエステル(B)部分が、主たる酸成分としての芳香族ジカルボン酸と、主たるグリコール成分としての炭素数2〜4のα,ω−ジオール及び/又はシクロヘキサンジメタノールとから構成され、且つ、
そのポリエステル弾性体のカルボキシル末端基の濃度が20当量/ton以下であると共に固有粘度が0.4〜2.0の範囲にあることを特徴とする、湿熱耐久性の改善されたポリエステル弾性体を提供することが出来る。
【0009】
また、本発明によれば、
二種類のポリエステルを溶融混練してポリエステル弾性体を製造するに際し、
該二種類のポリエステルとして、下記(A’)と下記ポリエステル(B’)とを用いることを特徴とする、湿熱耐久性の改善されたポリエステル弾性体の製造方法が提供される。
【0010】
ポリエステル(A’):
酸成分としてのイソフタル酸及び/又はフタル酸を主とする芳香族ジカルボン酸成分を全酸成分を基準として60〜90モル%、炭素数6〜12の脂肪族ジカルボン酸を全酸成分を基準として40〜10モル%と、グリコール成分としての炭素数6〜12の脂肪族α,ω−ジオールとから構成され、且つカルボキシル末端基濃度が10当量/ton以下であるポリエステル。
【0011】
ポリエステル(B’):
主たる酸成分としての芳香族ジカルボン酸と、主たるグリコール成分としての炭素数2〜4のα,ω−ジオール及び/又はシクロヘキサンジメタノールとから構成され、且つカルボキシル末端基濃度が30当量/ton以下であるポリエステル。
【0012】
本発明において、ポリエステル(A)部分を構成する酸成分として、イソフタル酸及び/又はフタル酸を主とする芳香族ジカルボン酸成分が全酸成分を基準として60〜90モル%占めていることが必要である。該芳香族ジカルボン酸成分は、ポリエステル(A)部分の湿熱耐久性、耐熱性を低下させることなく、得られるポリエステル弾性体内で、該ポリエステル(A)部分をソフトセグメント部として機能させる為に、結晶性を低下させる目的で上述の量を占めている必要がある。該芳香族ジカルボン酸成分は、イソフタル酸及び/又はフタル酸を主とするが、ここで「主とする」とは、少なくとも60モル%、好ましくは70モル%以上が該成分であることをいう。イソフタル酸及びフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸成分としてはテレフタル酸、2,6―ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸等を含んでいてもよい。
【0013】
また、ポリエステル(A)部分を構成する酸成分である脂肪族ジカルボン酸成分の炭素数は6〜12の範囲にあることが必要である。該炭素数が6未満であるとカルボキシル基間に存在する炭素原子の数が少ないので、得られるポリエステル弾性体が加水分解を受けやすく、また溶融時の熱安定性に劣る。逆に該炭素数が12を越えると該脂肪族ジカルボン酸が高価、入手困難等の問題があり好ましくない。好ましく用いることのできる脂肪族ジカルボン酸としては、例えばアゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸等を挙げることができ、これらは単独で用いても2種以上を併用してもどちらでもよい。
【0014】
該脂肪族ジカルボン酸の共重合量はポリエステル(A)部分の全酸成分を基準として10〜40モル%であることが必要であるが、ジオールの成分及び脂肪族ジカルボン酸の種類などによってその好ましい範囲は選択できる。該共重合量が40モル%を越えると得られる弾性体のガラス転移温度が下がりすぎ、室温で充分な弾性、伸縮性等を発現しない。一方、該共重合量が10モル%以下となると、ソフト成分のガラス転移温度が高く、低温で十分な弾性回復性能が得られないため好ましくない。
【0015】
ポリエステル(A)部分のグリコール成分としては、炭素数が6〜12の脂肪族α,ω−ジオールからなることが必要である。該炭素数が6未満であると、単位重量当たりの反復構造単位数が増えてしまい、湿熱耐久性が劣る。逆に該炭素数が12を越えると反応性に欠けるので好ましくないが、全グリコール成分を基準として10モル%以下の炭素数6〜12以外の脂肪族α,ω−ジオールを含んでいてもよい。
【0016】
一方、ポリエステル弾性体にあってハードセグメントを構成する本発明のポリエステル(B)部分は、主たる酸成分を芳香族ジカルボン酸とし、主たるグリコール成分を炭素数2〜4の脂肪族α,ω−ジオール及び/又は1,4−シクロヘキサンジメタノールとし、該弾性体中で結晶性芳香族ポリエステルセグメントを形成する。ここで、「主たる」とは、70モル%以上、好ましくは80モル%以上が該成分であることを意味する。該ポリエステル(B)部分に用いられる芳香族ジカルボン酸成分としては、例えばテレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸等を挙げることができ、更に炭素数2〜4の脂肪族α,ω−ジオールとしては、エチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、1,4―シクロヘキサンジメタノール等を挙げることができるが、全α,ω−ジオール成分を基準として10モル%以下の範囲で炭素数2〜4以外の脂肪族α,ω−ジオールを含んでいてもよい。
【0017】
該酸成分及びグリコール成分は、それぞれ単独あるいは併用して用いてもよいが、ポリエステル(B)部分は、ポリエステル(B)部分のみから構成されたポリエステル(B’)の融点が180℃以上、好ましくは200℃以上であることが好ましい。ポリエステル(B’)の固有粘度が0.6未満であると得られるポリエステル弾性体の溶融成形性が大幅に低下しやすい。逆に固有粘度が2.0を越えるとポリエステル弾性体の製造時に溶融混練温度を高く設定しなければならず、該ポリエステルの熱劣化の面から好ましくない。
【0018】
上述のことから、ポリエステル(B)部分としては、結晶性がよく結晶化速度も速くなるといった特徴を有する、ポリ(テトラメチレンテレフタレート)、ポリ(テトラメチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート)、及びポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)等を好ましく用いることができる。
【0019】
本発明において、ポリエステル弾性体のカルボキシル末端基濃度は20当量/ton以下であることが必要である。該カルボキシル末端基濃度が20当量/tonを越えると、耐候性、耐熱性、伸度、伸長回復性等には優れるものの、十分な湿熱耐久性を有するものとはならず、例えば、湿熱条件下で処理後の成形品の強度保持率等が十分なものとは言えず湿熱耐久性が要求される用途(電子レンジ用トレー、自動車エンジン回り、ブローブラシ等)において、問題が生じる。
【0020】
本発明において、ポリエステル弾性体の固有粘度は0.4〜2.0の範囲にあることが必要である。該固有粘度が0.4未満の場合には、得られるポリエステル弾性体の溶融粘度が低く、成形性に劣る。逆に固有粘度が2.0を越えると、溶融粘度が高くなりすぎ、ポリエステル弾性体製造時に溶融混練温度を高く設定しなければならず、該ポリエステルの熱劣化の面から好ましくない。該固有粘度は0.6〜1.5の範囲内にあることが更に好ましい。
【0021】
本発明のポリエステル弾性体の融点は、ポリエステル(B)部分単独で構成されたポリエステル(B)部分の融点よりも2℃以上40℃以下低い温度であることが好ましい。該融点の低下が2℃未満の場合には、後述する、エステル交換反応が十分に進行しておらず、得られる反応混合物は、十分な弾性及び伸縮性を示しにくく、一方融点の低下が40℃を越える場合にはエステル交換反応が進行しすぎて、得られるポリマーのポリエステル(B)部分の長さが短くなりすぎ、結晶性が低下すると共に弾性回復性能が不十分となって実質的にランダム共重合体と同等の弾性性能となりやすく、望ましくない。
【0022】
本発明の製造方法においては、ポリエステル(A)部分のみから構成されるポリエステル(A’)とポリエステル(B)部分のみから構成されたポリエステル(B’)とを溶融混合させてポリエステル弾性体を製造するに際し、該ポリエステル(A’)のカルボキシル末端基濃度を10当量/ton以下とすることが必要であり、8当量/ton以下であることが更に好ましい。該カルボキシル末端基の濃度が10当量/tonを越えると、得られるポリエステル弾性体の湿熱耐久性が劣るだけでなく、溶融混合時のエステル交換反応速度が低下し、所望の特性を有するポリエステル弾性体を得ることができない。
【0023】
更に、ポリエステル(B’)のカルボキシル末端基濃度を30当量/ton以下とすることも必要である。該カルボキシル末端基濃度が30当量/tonを越えると、エステル交換反応終了後、得られるポリエステル弾性体の湿熱耐久性が低いものとなってしまう。
【0024】
また、ポリエステル(B’)の固有粘度は0.6〜2.0の範囲にあり、且つ融点が180℃以上、好ましくは200℃以上であることが好ましい。ポリエステル(B’)の固有粘度が0.6未満であると得られるポリエステル弾性体の溶融成形性が大幅に低下しやすい。逆に固有粘度が2.0を越えるとポリエステル弾性体製造時に溶融混練温度を高く設定しなければならず、該ポリエステルの熱劣化の面から好ましくない。
【0025】
弾性体の用途により、ポリエステル(A’)とポリエステル(B’)とを任意の割合で溶融混合してポリエステル弾性体を製造すればよいが、一般に、弾性回復性能を付与するにはポリエステル(A)部分とポリエステル(B)部分とが重量比で(90:10)〜(30:70)の範囲となるように溶融混練すればよい。ポリエステル(B)部分の共重合割合が10重量%未満となると、得られるポリエステル弾性体中のハードセグメント部が少なすぎて、耐熱性、成形加工性、等が低下する。逆に、70重量%を越えると該ポリエステル弾性体の弾性・伸縮性が低下する。特にゴム弾性を望む場合にはポリエステル(A)部分の共重合割合を増やして(85:15)〜(50:50)の範囲に設定するのが好ましい。
【0026】
上記に述べた本発明のポリエステル(A’)とポリエステル(B’)とを触媒の存在下、溶融混合する際の混合装置は、減圧下で溶融混練できる反応槽や反応押し出し機であれば特に問題は無い。
【0027】
上記のようなエステル交換反応の条件は通常230℃〜260℃、減圧下で実施される。230℃より低い温度ではポリエステル(B’)が溶融しにくく、また、これより高い温度では反応の停止が困難なためである。
【0028】
また溶融混合の際には、「反応進行の速度」及び、「反応停止の状態」についてが重要なポイントとなる。前者についてはどのような特性を有する弾性体を得ようとするかによって適宜変更することができるが、そのための反応条件は用いるポリエステル(A’)及びポリエステル(B’)の組成、分子量、共重合量等により異なり、また、撹拌状況、温度、触媒等、種々の因子によっても異なってくるので一義的に定めることは困難である。したがって、実際には使用するポリエステルポリマー、組成、装置等が定まった後、目的とするポリエステル弾性体の得られる反応条件を見い出すこととなる。しかしながら、得られるポリエステル弾性体を溶融成形する際の熱安定性を十分なものとするには、ポリエステル(A’)及びポリエステル(B’)の固有粘度が比較的に高いものを用い、且つエステル交換反応させる時に、ポリエステル(A’)及びポリエステル(B’)の重合度を低下させない反応条件を選択することが好ましい。
【0029】
即ち、エステル交換反応時の反応温度をあまりに高く設定すると熱分解が起こり、反応雰囲気下に水分、グリコール等が存在すると加水分解、グリコールによる弾性体の解重合等が起こり、得られるポリエステル弾性体の固有粘度が低下する。
【0030】
反応後の弾性体を直ちに成形する場合には必ずしも問題とはならないが、例えば一度チップ化したポリマーを再度溶融して成形物となす場合には、再溶融時にエステル交換反応がさらに進行して弾性体の性質が変わるので、エステル交換反応を停止させておくことが好ましい。該交換反応を停止させる方法としては、触媒を失活させる方法が一般的であり、例えばエステル交換反応触媒としてはポリエステルの重縮合反応時に用いる触媒、例えばチタン又はスズ触媒、特にジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジマレート等のスズ系の触媒を好ましく用いることができ、触媒能を失活させる為に、リン酸、亜リン酸、ホスフォン酸、ホスフィン酸及びこれらの誘導体を添加する方法が採用できる。尚、この触媒能を失活させる方法は温度が260℃以上になるとその効果は低減するのでポリエステル(B’)の融点が260℃を越える場合にはあらかじめ溶媒、可塑剤等を用いて低温での反応及び成形が可能となるようにしておくことが望ましい。
【0031】
上述のエステル交換反応は、バッチ式、連続式、いずれの方法を用いてもよく、例えばポリエステル(A’)を所望とする固有粘度となるまで重縮合反応させてから、あらかじめ製造しておいたポリエステル(B’)とエステル交換反応させる方法、ポリエステル(A’)とポリエステル(B’)とを別々に製造し、連続式混練機に供給してエステル交換反応させる方法等を挙げることができる。
【0032】
このとき、該エステル交換反応の反応温度は通常230〜260℃が採用され、常圧下または減圧下で反応を行い、いずれの圧力であっても不活性雰囲気下とするのがよい。該エステル交換反応温度は、230℃より低いとポリエステル(B’)が溶融しにくく、また260℃より高温であると、エステル交換反応を制御することが困難となる。但し、本発明において該エステル交換反応が連続式で行われる場合には、反応生成物が直ちに冷却されるので、所望に応じてエステル交換反応の温度を高く設定してもよい。
【0033】
本発明の製造方法において、ポリエステル弾性体を溶融成形する前に、該共重合ポリエステルチップの含有水分率を0.01%未満にしておくことが好ましい。該含有水分率が0.01%以上であると、該共重合ポリエステルチップの溶融時に著しい加水分解が起こり、十分な弾性及び伸縮性を有する成形体を得ることができない。更に、該含有水分率を調整する為のポリエステル弾性体チップの加熱乾燥処理は、減湿圧空下、あるいは真空下で施すことが乾燥処理時間短縮の点で好ましい。
【0034】
本発明のポリエステル弾性体は、本発明の目的を損なわない範囲であれば、分岐剤、カチオン可染性を付与するためのスルホン酸塩化合物、難燃性を付与する為のリン化合物、及びその他の成分として、ポリアルキレングリコール、ポリエステル、ポリカーボネート等を共重合してもよい。更に、所望に応じて鎖延長剤、充填剤、酸化防止剤、難燃剤、滑剤、顔料、染料、熱安定剤、光安定剤等の一般にポリエステルに使用する添加剤等を含んでいてもよい。
【0035】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれにより何等限定を受けない。尚、実施例中の各値は下記の通り測定した。
【0036】
(1)固有粘度:
オルトクロロフェノール中35℃で測定した溶液粘度から求めた。
【0037】
(2)融点:
示差走査熱量計(TA インスツルメント社製2920型)を用いて、20℃/分で昇温測定した結晶の融解に相当する吸熱ピークの頂点で測定した。
【0038】
(3)カルボキシル末端基濃度:
試料をベンジルアルコールに溶解後、該溶液をクロロホルムに分散させたのち水酸化ナトリウム水溶液で滴定し、滴定に要した水酸化ナトリウムの当量から求めた。なお、指示薬はフェノールレッドを用い、溶液の色が黄から淡橙色となった時点を滴定の終点とした。
【0039】
(4)湿熱耐久性:破断強度保持率(%)
JIS−K7113記載の方法に準拠して測定をおこなった。
【0040】
[参考例1]ポリエステル(A’)の製造:
ジメチルイソフタレート135.8重量部、1,10−デカンジカルボン酸69重量部、1,10−デカンジオール208.8重量部とを触媒としてのジブチルスズジアセテート0.3重量部と共に加熱し、副生するメタノールを除去し、次いで260℃高真空下、常法により重合させて固有粘度0.85、カルボキシル末端基濃度5当量/tonの非晶性ポリエステル(A’)を得た。
【0041】
[参考例2]ポリエステル(B’)の製造:
ジメチルテレフタレートとテトラメチレングリコールとを触媒としてチタニウムテトラブトキサイド(ジメチルテレフタレートを基準として40ミリモル%)を用い、参考例1と同様の操作を行って重縮合反応をおこない固有粘度1.05、融点225℃、カルボキシル末端基濃度が25当量/tonのポリエステル(B’)を得た。
【0042】
[実施例1]
参考例1の操作で得たポリエステル(A’)70重量部と、参考例2の操作で得たポリエステル(B’)30重量部とを溶融混練し、250℃、1mmHg以下の高真空下で45分間エステル交換反応させ、該反応生成物にリン酸(ジブチルスズジアセテートを基準として1.5倍モル)及び鎖延長剤としての2,2’−ビスオキサゾリン(ポリマー量を基準として0.3重量%)を添加した。
【0043】
得られたポリエステル弾性体の固有粘度は1.09、カルボキシル末端基濃度は19当量/ton、融点は190℃であった。
【0044】
このポリエステル弾性体を乾燥後、溶融成形して得られた試験片の引っ張り破断強度は30MPaであった。この試験片を120℃の加圧水中で12時間処理後の引っ張り破断強度は25MPaであり、破断強度保持率は83%であった。
【0045】
[比較例1]
参考例1と同様の操作を行って得た固有粘度1.05、カルボキシル末端基濃度が15当量/tonの非晶性ポリエステル(A’)と、参考例2の操作で得たポリエステル(B’)とを重量比で70:30の割合で溶融混練し、250℃、1mmHg以下の高真空下で80分間エステル交換反応させ、その後リン酸(ジブチルスズジアセテートを基準として1.5倍モル)を添加した。
【0046】
得られたポリエステル弾性体の固有粘度は1.10、カルボキシル末端基濃度は26当量/ton、融点は201℃であった。
【0047】
このポリエステル弾性体の試験片を実施例1と同様にして引っ張り試験を行った結果、30MPaから18MPaまで低下し、破断強度保持率は60%であった。
【0048】
[実施例2]
参考例1と同様の操作を行って得た、固有粘度0.92、カルボキシル末端基濃度7当量/tonの非晶性ポリエステル(A’)と参考例2と同様の操作を行って得た、カルボキシル末端基濃度28当量/tonのポリエステル(B’)とを重量比で70:30の割合で溶融混練、250℃、1mmHg以下の高真空下で45分間エステル交換反応させ、その後リン酸(ジブチルスズジアセテートを基準として1.5倍モル)及び鎖延長剤(ポリマー量を基準として0.3重量%)を添加した。
【0049】
得られたポリエステル弾性体の固有粘度は1.10、カルボキシル末端基濃度は18当量/ton、融点は197℃、成形後の試験片の引っ張り破断強度は29MPaであった。この試験片を120℃の加圧水中で12時間処理後の引っ張り破断強度は27MPaであり、破断強度保持率は93%であった。
【0050】
[実施例3]
参考例1と同様の操作を行って得た、固有粘度0.91、カルボキシル末端基濃度8当量/tonの非晶性ポリエステル(A’)と参考例2と同様の操作を行って得たカルボキシル末端基濃度20当量/tonのポリエステル(B’)とを重量比で70:30の割合で溶融混練し、250℃、1mmHg以下の高真空下で50分間エステル交換反応させ、その後リン酸(ジブチルスズジアセテートを基準として1.5倍モル)及び鎖延長剤としての2,2’−ビスオキサゾリン(ポリマー量を基準として0.3重量%)を添加した。
【0051】
得られたポリエステル弾性体の固有粘度は1.14、カルボキシル末端基濃度は15当量/ton、融点は199℃、試験片の引っ張り破断強度は30MPaであった。この試験片を120℃の加圧水中で12時間処理後の引っ張り破断強度は29MPaであり、破断強度保持率は97%であった。
【0052】
[比較例2]
参考例1と同様の操作を行って得た、固有粘度1.09、カルボキシル末端基濃度が19当量/tonの非晶性ポリエステル(A’)と、参考例2と同様の操作を行って得たカルボキシル末端基濃度40当量/tonのポリエステル(B’)とを重量比で70:30の割合で溶融混練し、250℃、1mmHg以下の高真空下で80分間エステル交換反応させ、その後リン酸(ジブチルスズジアセテートを基準として1.5倍モル)を添加した。
【0053】
得られたポリエステル弾性体の固有粘度は0.99、カルボキシル末端基濃度は35当量/ton、融点は207℃であった。このポリエステル弾性体の試験片を実施例1と同様にして引っ張り試験を行った結果、28MPaから15MPaまで低下し、破断強度保持率は54%であった。
【0054】
上記の実施例の結果から、ポリエステル(A’)及びポリエステル(B’)のカルボキシル末端基濃度が低ければ低いほど、得られるポリエステル弾性体のカルボキシル末端基濃度が低くなり、湿熱耐久性が向上することが判る。
【0055】
更に、ポリエステル(A’)のカルボキシル末端基濃度と、エステル交換反応に必要とする時間とが相関関係にあることも判る。
【0056】
【発明の効果】
本発明によれば、従来のポリエステル弾性体が有する、耐候性、耐熱性、伸度及び伸張回復性、機械強度等の特性を有するとともに湿熱耐久性の改善されたポリエステル弾性体が提供される。
更に、本発明の製造方法によれば、該ポリエステル弾性体を極めて短時間で、効率よく製造することができ、その工業的価値は極めて大きい。
Claims (3)
- ポリエステル(A)部分とポリエステル(B)部分とから構成されたポリエステル弾性体であって、
該ポリエステル(A)部分が、酸成分としてのイソフタル酸及び/又はフタル酸を主とする芳香族ジカルボン酸成分を全酸成分を基準として60〜90モル%、炭素数6〜12の脂肪族ジカルボン酸を全酸成分を基準として40〜10モル%と、グリコール成分としての炭素数6〜12の脂肪族α,ω−ジオールとから構成され、
該ポリエステル(B)部分が、主たる酸成分としての芳香族ジカルボン酸と、主たるグリコール成分としての炭素数2〜4のα,ω−ジオール及び/又はシクロヘキサンジメタノールとから構成され、且つ、
そのポリエステル弾性体のカルボキシル末端基の濃度が20当量/ton以下であると共に固有粘度が0.4〜2.0の範囲にあることを特徴とする、湿熱耐久性の改善されたポリエステル弾性体。 - 固有粘度が0.6〜1.5の範囲にある、請求項1記載のポリエステル弾性体。
- 二種類のポリエステルを溶融混練してポリエステル弾性体を製造するに際し、
該二種類のポリエステルとして、下記(A’)と下記ポリエステル(B’)とを用いることを特徴とする、湿熱耐久性の改善されたポリエステル弾性体の製造方法。
ポリエステル(A’):
酸成分としてのイソフタル酸及び/又はフタル酸を主とする芳香族ジカルボン酸成分を全酸成分を基準として60〜90モル%、炭素数6〜12の脂肪族ジカルボン酸を全酸成分を基準として40〜10モル%と、グリコール成分としての炭素数6〜12の脂肪族α,ω−ジオールとから構成され、且つカルボキシル末端基濃度が10当量/ton以下であるポリエステル。
ポリエステル(B’):
主たる酸成分としての芳香族ジカルボン酸と、主たるグリコール成分としての炭素数2〜4のα,ω−ジオール及び/又はシクロヘキサンジメタノールとから構成され、且つカルボキシル末端基濃度が30当量/ton以下であるポリエステル。
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JP01004297A JP3704218B2 (ja) | 1997-01-23 | 1997-01-23 | 湿熱耐久性の改善されたポリエステル弾性体及びその製造方法 |
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