JP2001286875A - 含ヒ素排水の処理方法 - Google Patents
含ヒ素排水の処理方法Info
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Abstract
去することができ、かつ澱物発生量が少ない含ヒ素排水
の処理方法を提供する。 【解決手段】 2次反応槽3において含ヒ素排水に消石
灰を添加する消石灰添加工程と、この工程で生成した澱
物を分離して得られた中間処理水に、3次反応槽5にお
いて酸性第1鉄塩を添加する酸性第1鉄塩添加工程とを
有する含ヒ素排水の処理方法であって、消石灰添加工程
における消石灰の添加量を、含ヒ素排水中のヒ素に対す
る消石灰中カルシウムのモル比Ca/Asが2〜5とな
るように設定し、酸性第1鉄塩添加工程における中間処
理水のpHを7〜10に設定し、かつこの工程における
酸性第1鉄塩の添加量を、中間処理水中のヒ素に対する
酸性第1鉄塩中の鉄のモル比Fe/Asが5以上となる
ように設定する。
Description
料とする乾式銅製錬で排出される排ガス中の煙灰を除去
する洗浄工程で生じる排水などの含ヒ素排水からヒ素等
の重金属類を除去する処理方法に関し、特にヒ素等を効
率的かつ経済的に除去することができる処理方法に関す
る。
て排出される排ガスには、多量のSO 2や煙灰が含まれ
る。この排ガスは、まず集塵装置に導かれて大部分の煙
灰が除かれ、次に硫酸製造装置の入口に設けられたガス
洗浄装置にて更に排ガス中の煙灰が除去されて硫酸製造
用ガスとされる。ガス洗浄装置は、洗浄水を用いて除塵
を行うことができるようになっており、このガス洗浄装
置としてはベンチュリースクラバーやスプレー塔などが
用いられている。ガス洗浄装置を用いて除塵を行う際に
は、煙灰や排ガスに含まれるヒ素などの重金属類の殆ど
は洗浄水中に除去され、同時に排ガス中に少量含まれる
SO3も洗浄水に吸収されるため、洗浄排水はヒ素など
の重金属類を硫酸とともに含有する硫酸酸性水となる。
このような含ヒ素排水の処理方法としては、例えば消石
灰を添加してヒ素をCa3(AsO4)2やCaHAsO4等
の形で不溶化して沈降分離する方法や、鉄塩を添加して
ヒ素をFe(OH)3等に吸着させる、またはFeAsO4
等の化合物として不溶化し沈降分離する方法、難溶性の
硫化物沈殿を生成させる方法、およびこれらの方法の多
段階処理法などがある。これらの方法、例えば鉄塩添加
法や消石灰添加法などでは、3価のヒ素よりも5価のヒ
素の方が除去効率が高くなるため、3価のヒ素を5価へ
酸化させるため、酸化剤として過酸化水素などを添加す
ることが多い。特に鉄塩添加の場合について述べると、
酸性領域における5価のヒ素除去が最も効率がよい。一
方、3価のヒ素除去には、中性〜アルカリ領域が最適で
あるが、除去効率は5価のヒ素に比して低い。尚、3価
のヒ素除去は、水酸化鉄(Fe(OH)3)への吸着が主
であり、5価のヒ素除去は、主としてヒ酸鉄(FeAs
O4等)の生成によるといわれている。
を使用する方法では、過酸化水素などの酸化剤が高価で
あるため処理コストが嵩む問題がある。特に連続処理の
場合には、通常、排水中の3価のヒ素含有率が経時的に
変化するため、この含有率に対し過剰にならないように
酸化剤添加量を制御するのはむずかしく、酸化剤に要す
る薬剤コストが嵩むことなどによる処理コスト高騰は避
けられなかった。また酸化剤を使用しない場合には、特
に除去しにくい3価のヒ素が排水中に多く含まれる場合
において、鉄塩や消石灰の必要添加量が多くなり、これ
ら薬剤のコストが嵩み、処理コストが高くなる問題があ
った。また上記処理方法において発生する含ヒ素澱物
は、銅などの非鉄金属の製錬工程(熔錬炉、転炉)に導
入し、成分の大部分を、セメント原料などに使用可能な
スラグ中に固定化する処理方法が採られることがある。
この方法を採る場合には、予め澱物を加熱し乾燥させる
ことが必要となるため、重油などの燃料が必要となる。
また澱物は一般に複雑な化合物形態をなすことから、顕
熱はもとより、製錬炉内における分解、反応に多大な吸
熱を伴う。そこで、顕熱と吸熱に見合った熱補償が必要
となり、炉内に粉炭などの補助燃料を多量に装入するこ
とが必要になる。これらの燃料使用量を抑えるため、澱
物発生量はできるだけ少ないことが好ましい。本発明
は、上記事情に鑑みてなされたもので、含ヒ素排水中の
ヒ素を低コストで効率よく除去することができ、かつ澱
物発生量が少ない含ヒ素排水処理方法を提供することを
目的とする。
理方法では、消石灰添加工程における消石灰の添加量
を、含ヒ素排水中のヒ素に対する消石灰中カルシウムの
モル比Ca/Asが2〜5となるように設定し、酸性第
1鉄塩添加工程における中間処理水のpHを7〜10に
設定し、かつこの工程における酸性第1鉄塩の添加量
を、中間処理水中のヒ素に対する酸性第1鉄塩中の鉄の
モル比Fe/Asが5以上となるように設定することを
特徴とする。ここで、酸性第1鉄塩とは、水溶液が酸性
を示す第1鉄塩を指す。一般に、第1鉄には、次のよう
な特徴がある。 第1鉄(Fe2+、FeOH+など)は第2鉄(F
e3+、FeOH2+など)に比べ高pH領域で安定であ
る。 大気雰囲気中において、第2鉄は第1鉄に比べ安定で
ある。すなわち第1鉄は空気により酸化されやすい。 本発明では、これら第1鉄の特徴から、次のような効果
を得ることができる。すなわち本発明では、酸性第1鉄
塩添加工程において、3価のヒ素除去に適した中性〜ア
ルカリ性領域であるpH7〜10において酸性第1鉄塩
を添加する。上記に示すように、第1鉄が高pH領域
である中性〜アルカリ性領域において比較的安定である
ため、添加された酸性第1鉄塩は、第2鉄塩に比べて、
水酸化物などの不溶化物を生成しにくく、第1鉄がイオ
ン化され中間処理水中に溶解した状態が維持されやす
い。これに加えて、上記に示すように、第1鉄は大気
に触れることで酸化されやすいため、中間処理水に添加
されイオン化された第1鉄は、中間処理水が大気に触れ
ることにより徐々に酸化し、最終的に水酸化鉄(Fe
(OH)3など)、ヒ酸鉄(FeAsO3など)等の形態と
なる。このように、上記およびに示す第1鉄の特徴
を利用して、ヒ酸鉄(FeAsO3など)や、3価のヒ
素の吸着対象となる水酸化鉄(Fe(OH)3など)の生
成を遅らせるとともに、最終的には上記ヒ酸鉄、水酸化
鉄などを確実に生成させることができる。このため、本
発明では、第2鉄塩を添加する場合に比較して、ヒ素が
不溶化するまでの処理水中における鉄の分散性を高め、
かつ生成した澱物どうしの凝集を抑え、澱物の粗大化を
抑制できるため、澱物の比表面積を大きくすることがで
きる。よって、澱物表面におけるヒ素が吸着可能な部位
を多くし、澱物に対するヒ素の吸着を促し、総合的なヒ
素除去反応効率を高めることができる。従って、除去が
難しいとされる3価のヒ素が含ヒ素排水に多く含まれて
いる場合でも、このヒ素を3価のままで効率よく除去す
ることができる。また、酸性第1鉄塩添加工程におい
て、pHを7〜10に設定するので、石膏などの硫酸化
物の発生量を低く抑え、澱物発生量を少なくし、澱物処
理コストを抑制することができる。また、酸性第1鉄塩
の添加量を、pHが7〜10となり、かつ中間処理水中
のヒ素に対する酸性第1鉄塩中の鉄のモル比Fe/As
が5以上となるように設定するので、比較的少量の第1
鉄塩で高いヒ素除去効率を得ることができる。従って、
酸性第1鉄塩に要するコストを抑えることができる。ま
た、酸化剤により3価のヒ素を5価に酸化する従来法に
比べ、5価のヒ素の効率的な処理のためにpHを酸性領
域とすることが必要なく、pH調整剤を不要とするとと
もに、石膏などの硫酸化物などの澱物発生量の増大を防
ぐことができ、処理コスト抑制が可能となる。また、消
石灰添加工程において、消石灰の添加量を、含ヒ素排水
中のヒ素に対する消石灰中カルシウムのモル比Ca/A
sが2〜5となるように設定するので、消石灰使用量を
抑え薬剤コストを抑制するとともに、水酸化物などの澱
物発生量を少なくすることができる。また、簡単な工程
によって十分なヒ素除去が可能となることから、処理装
置を簡略化することができ、設備コストを低く抑えるこ
とができる。また本発明では、消石灰添加工程に先だっ
て、含ヒ素排水に炭酸カルシウムを添加し、生成した澱
物を分離することによって、含ヒ素排水が多量の硫酸根
を含む場合でも、この硫酸根を石膏として不溶化し回収
することができる。従って、硫黄の有効な固定・回収が
可能となる。またカルシウム化合物として、消石灰だけ
でなく、より安価な炭酸カルシウムを用いるので、薬剤
コスト低減を図ることができる。
理方法の一実施形態を実施するために用いられる含ヒ素
排水の処理装置を示すものである。ここに示す装置は、
含ヒ素排水が導入される1次反応槽1と、1次反応槽1
中で生成した澱物を沈降分離により除去する1次分離槽
2と、1次分離槽2を経た1次処理水(第1中間処理
水)が導入される2次反応槽3と、2次反応槽3中で生
成した生成した澱物を沈降分離により除去する2次分離
槽4と、2次分離槽4を経た2次処理水(第2中間処理
水)が導入される3次反応槽5と、3次反応槽5中で生
成した澱物を沈降分離により除去する3次分離槽6と、
1次反応槽1に炭酸カルシウムを添加する炭酸カルシウ
ム添加経路7と、2次反応槽3に消石灰を添加する消石
灰添加経路8と、2次分離槽4に凝集剤を添加する凝集
剤添加経路9と、3次反応槽5に酸性第1鉄塩を添加す
る酸性第1鉄塩添加経路10と、3次分離槽6に凝集剤
を添加する凝集剤添加経路11とを備えている。
発明の含ヒ素排水の処理方法の一実施形態を説明する。
本発明において、処理対象となる含ヒ素排水としては、
硫化鉱を原料とする銅の乾式製錬において発生する排ガ
スの除塵を行う際に排出される硫酸系排水を挙げること
ができる。この硫酸系排水は、通常、1000〜800
0mg/Lのヒ素を含む。また上記排ガス中のSO3に
由来する高濃度の硫酸根を含む。またこのほか、銅や鉛
などの重金属類を含むことが多い。硫酸系排水のpH
は、通常1に近い。
排水を導入経路12を通して1次反応槽1に導入すると
ともに、炭酸カルシウム添加経路7を通して炭酸カルシ
ウムを含ヒ素排水中に添加する。これによって、1次反
応槽1内の排水中の硫酸根は大部分が石膏となり不溶化
する。この際、1次反応槽1内のpHは1〜3とするの
が好ましい。以下、この炭酸カルシウムを添加する工程
を炭酸カルシウム添加工程という。この工程で生成した
石膏などの澱物は、1次分離槽2において沈降分離さ
れ、澱物排出経路13を通して系外に排出される。澱物
が分離された1次処理水(第1中間処理水)は、導入経
路14を通して2次反応槽3に導入される。
して消石灰を1次処理水に添加する。これによって1次
処理水中のヒ素の一部は、カルシウム塩(Ca3(AsO
4)2、Ca(AsO2)2など)となり不溶化する。また
ヒ素以外の重金属類(銅、鉛等)の一部も水酸化物など
の形で不溶化する。以下、この消石灰を添加する工程を
消石灰添加工程という。
加量は、2次反応槽3内に導入された1次処理水中のヒ
素に対する消石灰中カルシウムのモル比Ca/Asが2
〜5(好ましくは2〜4、さらに好ましくは2〜3)と
なるように設定される。このCa/Asが上記範囲未満
であると、上記カルシウム塩生成反応が十分に進行せず
ヒ素除去効率が低下し、しかも後述する酸性第1鉄塩添
加工程においてpH調整剤を別途使用することなく酸性
第1鉄塩の添加量Fe/Asを後述の範囲に設定するこ
とが難しくなる。またCa/Asが上記範囲を越える
と、消石灰の薬剤コストが嵩み処理コスト高騰を招く。
さらにはpHが過度に高まり、後述する酸性第1鉄塩添
加工程において、酸性第1鉄塩の添加量が増加し薬剤コ
ストが嵩み、かつ澱物発生量が増大し処理コストが高く
なる。消石灰の添加によって、2次反応槽3内は高pH
(例えばpH11〜13)となる。
降分離され、澱物排出経路15を通して系外に排出され
る。この際、凝集剤添加経路9を通して2次分離槽4内
に凝集剤を添加し、澱物を凝集処理し固液分離効率を高
めることも可能である。凝集剤としては、汎用の無機凝
集剤、高分子凝集剤が使用可能である。澱物が分離され
た2次処理水(第2中間処理水)は導入経路16を通し
て3次反応槽5に導入する。
10を通して酸性第1鉄塩を2次処理水に添加する。酸
性第1鉄塩としては、硫酸第1鉄、塩化第1鉄などが使
用可能である。特に、澱物を製錬工程に導入する場合に
腐食性ガスによる装置の腐蝕が起こりにくい硫酸第1鉄
の使用が好ましい。添加された酸性第1鉄塩に由来する
鉄(II)の一部は、3次反応槽5内の処理水が大気に接
触することにより酸化され、徐々に鉄(III)となる。
以下、この酸性第1鉄塩を添加する工程を酸性第1鉄塩
添加工程という。
て、この酸性第1鉄塩添加工程における酸性第1鉄塩の
添加量は、2次処理水のヒ素に対する酸性第1鉄塩中の
鉄のモル比Fe/Asが5以上となるように設定する。
この比Fe/Asが上記範囲未満であると、上記ヒ酸鉄
生成反応を進行させるのに十分な量の酸性第1鉄塩が供
給されず、上記反応効率が低下しヒ素除去効率が低下す
る。
る酸性第1鉄塩を添加するため、消石灰添加工程で一度
高めたpHを下げる方向に調整することができる。酸性
第1鉄塩の添加量は、3次反応槽5内の2次処理水のp
Hが7〜10(好ましくは8〜10、さらに好ましくは
9〜10)になるように設定する。このpHが上記範囲
未満である場合には、ヒ素の除去効率が低下するため、
上記適正pH範囲と同等の効果を得るには多量の酸性第
1鉄塩が必要となる。また石膏などの硫酸化物などの澱
物発生量が増大し、処理コストが嵩むようになるため好
ましくない。またこのpHが上記範囲を越える場合に
は、ヒ素の除去効率が低下するため、上記適正pH範囲
と同等の効果を得るには多量の酸性第1鉄塩が必要とな
る。
槽6において沈降分離され、澱物排出経路17を通して
系外に排出される。この際、凝集剤添加経路11を通し
て3次分離槽6内に凝集剤を添加し、澱物を凝集処理
し、固液分離効率を高めることも可能である。凝集剤と
しては、無機凝集剤、高分子凝集剤が使用可能である。
澱物が分離された3次処理水は最終処理水として排出経
路18を通して系外に排出する。排出された3次処理水
は、公共水域への放流などにより処理される。また、上
記各工程で排出された澱物は、銅などの非鉄金属の製錬
工程に導入し、澱物の成分の大部分を、セメント原料な
どに使用可能なスラグ中に固定化する処理方法に供する
ことができる。
石灰添加工程における消石灰の添加量を、含ヒ素排水中
のヒ素に対する消石灰中カルシウムのモル比Ca/As
が2〜5となるように設定し、酸性第1鉄塩添加工程に
おける2次処理水(第2中間処理水)のpHを7〜10
に設定し、かつこの工程における酸性第1鉄塩の添加量
を、2次処理水中のヒ素に対する酸性第1鉄塩中の鉄の
モル比Fe/Asが5以上となるように設定する方法で
ある。この処理方法では、酸性第1鉄塩添加工程におい
て、2次処理水(第2中間処理水)のpHが7〜10と
なるように酸性第1鉄塩を添加することにより、酸性第
1鉄塩の添加量は、通常、自動的にFe/Asが5以上
となる値となる。本実施形態の処理方法によって得られ
る効果は以下の通りである。
酸性第1鉄塩をpH7〜10において添加するので、以
下に示す効果を得ることができる。一般に、第1鉄に
は、次のような特徴がある。 第1鉄(Fe2+、FeOH+など)は第2鉄(F
e3+、FeOH2+など)に比べ高pH領域で安定であ
る。 大気雰囲気中において、第2鉄は第1鉄に比べ安定で
ある。すなわち第1鉄は空気により酸化されやすい。 本実施形態の処理方法では、これら第1鉄の特徴から、
次のような効果を得ることができる。すなわちこの処理
方法では、酸性第1鉄塩添加工程において、3価のヒ素
除去に適した中性〜アルカリ性領域であるpH7〜10
において酸性第1鉄塩を添加する。上記に示すよう
に、第1鉄が高pH領域である中性〜アルカリ性領域に
おいて比較的安定であるため、添加された酸性第1鉄塩
は、第2鉄塩に比べて、水酸化物などの不溶化物を生成
しにくく、第1鉄がイオン化され2次処理水中に溶解し
た状態が維持されやすい。これに加えて、上記に示す
ように、第1鉄は大気に触れることで酸化されやすいた
め、2次処理水に添加されイオン化された第1鉄は、2
次処理水が大気に触れることにより徐々に酸化し、最終
的に水酸化鉄(Fe(OH)3など)、ヒ酸鉄(FeAs
O3など)等の形態となる。
上記およびに示す第1鉄の特徴を利用して、ヒ酸鉄
(FeAsO3など)や、3価のヒ素の吸着対象となる
水酸化鉄(Fe(OH)3など)の生成を遅らせるととも
に、最終的には上記ヒ酸鉄、水酸化鉄などを確実に生成
させることができる。このため、第2鉄塩を添加する場
合に比較して、ヒ素が不溶化するまでの処理水中におけ
る鉄の分散性を高め、かつ生成した澱物どうしの凝集を
抑え、澱物の粗大化を抑制できるため、澱物の比表面積
を大きくすることができる。よって、澱物表面における
ヒ素が吸着可能な部位を多くし、澱物に対するヒ素の吸
着を促し、総合的なヒ素除去反応効率を高めることがで
きる。このため、除去が難しいとされる3価のヒ素が含
ヒ素排水に多く含まれている場合でも、このヒ素を3価
のままで効率よく除去することができる。従って、高価
な酸化剤を不要とし薬剤コストを削減するとともに、酸
化剤の添加に必要な貯留タンクや薬注ポンプなどの付帯
設備を不要とし設備コスト削減を図り、処理コストを低
く抑えることができる。これに対し、第2鉄塩を用いる
従来法では、第2鉄が直ちに水酸化第2鉄(Fe(OH)
3)となってしまうため、投入直後から多量の澱物が生
成し、澱物どうしの凝集により澱物が粗大化し、その比
表面積が小さくなる。このため、澱物表面におけるヒ素
が吸着可能な部位が少なくなり、ヒ素除去効率が低くな
る。
pH調整剤としても機能する酸性第1鉄塩を用いるの
で、消石灰添加工程において高くなったpHを、それ以
外のpH調整剤を用いることなく下げ、上記範囲(7〜
10)に設定することができる。このため、酸性第1鉄
塩以外のpH調整剤を不要とし、薬剤コストを削減する
とともに、pH調整剤添加に必要な付帯設備を不要とし
設備コスト削減を図り、処理コストを低く抑えることが
できる。
pHを7〜10に設定するので、石膏などの硫酸化物の
発生量を低く抑え、澱物発生量を少なくし、澱物処理コ
ストを抑制することができる。また澱物発生量を低く抑
えることができるため、澱物の処理方法として上記スラ
グ固定化方法を採る場合においても、製錬工程への導入
に際して、澱物の乾燥や製錬炉内の熱補償に係る燃料コ
ストを削減することができる。さらには、最終処理水で
ある3次処理水のpHを7〜10とすることができるた
め、処理水が高pHとなる従来の消石灰添加法などに比
べ、公共水域への放流などのためpHを中性に調整する
のに必要なpH調整剤量を少くすることができる。この
ためpH調整剤に要する薬剤コストを抑制することがで
きる。
酸性第1鉄塩の添加量を、pHが7〜10となり、かつ
2次処理水中のヒ素に対する酸性第1鉄塩中の鉄のモル
比Fe/Asが5以上となるように設定するので、比較
的少量の第1鉄塩で高いヒ素除去効率を得ることができ
る。従って、酸性第1鉄塩に要するコストを抑えること
ができる。
酸化する従来法に比べ、5価のヒ素の効率的な処理のた
めにpHを酸性領域とすることが必要なく、pH調整剤
を不要とするとともに、石膏などの硫酸化物などの澱物
発生量の増大を防ぐことができ、処理コスト抑制が可能
となる。
の添加量を、含ヒ素排水中のヒ素に対する消石灰中カル
シウムのモル比Ca/Asが2〜5となるように設定す
るので、消石灰使用量を抑え薬剤コストを抑制するとと
もに、水酸化物などの澱物発生量を少なくすることがで
きる。
て、消石灰添加工程に先だって、含ヒ素排水に炭酸カル
シウムを添加するので、含ヒ素排水が多量の硫酸根を含
む場合でも、この硫酸根を石膏として不溶化し回収する
ことができる。従って、再利用可能な硫黄の有効な固定
・回収が可能となる。またカルシウム化合物として、消
石灰だけでなく、より安価な炭酸カルシウムを用いるの
で、薬剤コスト低減を図ることができる。
添加工程、消石灰添加工程、および酸性第1鉄塩添加工
程)によって十分なヒ素除去が可能となることから、処
理装置を簡略化することができ、設備コストを低く抑え
ることができる。
で生成した澱物を分離するのに沈降分離を用いたが、こ
れに限らず、ろ過分離を採用してもよい。
化する。 試験1:消石灰添加の効果 排水サンプル(ヒ素濃度約2000〜3000mgAs
/L)に消石灰を添加し、上澄み中のヒ素濃度、および
澱物発生量を測定した。結果を図2および図3に示す。
図2の横軸は、排水サンプル中のヒ素に対する消石灰中
カルシウムのモル比Ca/Asを示し、縦軸は上澄み中
のヒ素濃度を示す。図3の横軸はCa/Asを示し、縦
軸は消石灰添加量、および澱物発生量を示す。
の範囲では、Ca/Asを高めるほどヒ素除去効率が向
上するが、Ca/Asが5を越える範囲では、澱物量が
増大するのみで、ヒ素除去効率はそれ以上高められない
ことがわかる。
鉄(酸性第1鉄塩)または硫酸第2鉄を図中に示す各p
H条件において添加し上澄み中のヒ素濃度を測定した。
鉄塩の添加量は、排水サンプル中のヒ素に対する鉄塩中
の鉄のモル比Fe/Asが2または5となるように設定
した。結果を図4に示す。図4の横軸は上澄みのpHを
示し、縦軸は上澄みのヒ素濃度を示す。また硫酸第1鉄
を、各pH条件においてFe/Asが2および5となる
ように添加したときの澱物発生量を図5に示す。図5の
横軸は上澄みのpHを示し、縦軸は澱物発生量を示す。
用いた場合の方がヒ素除去効果が高く、しかもFe/A
sを2とした場合よりも5とした場合の方がヒ素除去効
率を高めることができたことがわかる。さらに、ヒ素除
去効果はpHが7〜10の範囲で特に優れていることが
わかる。また図5より、澱物発生量は、pHが低いほど
多くなることがわかる。
量の影響 消石灰添加量を、Ca/Asが1.6〜2.3となる範
囲で変えて処理試験を行った(試験例1〜4)。結果を
表1に示す。
添加量を、Ca/Asが2未満となる値とした試験例
1、2では、酸性第1鉄塩添加の際のpHを7〜10と
したときに、酸性第1鉄塩(硫酸第1鉄)の添加量を、
Fe/Asが5以上となる値とすることができず、ヒ素
除去効率が低く抑えられた。これに対し、Ca/Asを
2以上とした試験例3、4では、酸性第1鉄塩添加でp
Hを7〜10となるように調整すると、自動的にFe/
Asが5以上となり、高いヒ素除去効率が得られること
が確認できた。
い、1次処理水、2次処理水、および3次処理水中のヒ
素濃度を経時的に測定した。結果を図6に示す。図6
(a)、図6(b)、図6(c)において、横軸は時間
を示し、縦軸はそれぞれ1次処理水、2次処理水、およ
び3次処理水中のヒ素濃度を示す。また比較のため、3
次反応槽5において酸性第1鉄塩の添加を行わず、これ
に代えて消石灰を添加する処理試験を行った。3次反応
槽5における消石灰の添加量は、3次処理水のヒ素濃度
が0.1mg/L以下となるように設定した。
g/L以下の良好な3次処理水が得られたことがわか
る。また、3次反応槽5において消石灰を添加する場合
に、澱物発生量が930T/Mであったのに対し、酸性
第1鉄塩の添加を行う場合には、澱物発生量が460T
/Mとなり、澱物発生量を半減させることができた。
水の処理方法にあっては、消石灰添加工程における消石
灰の添加量を、含ヒ素排水中のヒ素に対する消石灰中カ
ルシウムのモル比Ca/Asが2〜5となるように設定
し、酸性第1鉄塩添加工程における中間処理水のpHを
7〜10に設定し、かつこの工程における酸性第1鉄塩
の添加量を、中間処理水中のヒ素に対する酸性第1鉄塩
中の鉄のモル比Fe/Asが5以上となるように設定す
るので、以下に示す効果を得ることができる。 (1 )酸性第1鉄塩添加工程において、酸性第1鉄塩
をpH7〜10において添加するので、ヒ酸鉄(FeA
sO3など)や、3価のヒ素の吸着対象となる水酸化鉄
(Fe(OH)3など)の生成を遅らせるとともに、最終
的には上記ヒ酸鉄、水酸化鉄などを確実に生成させるこ
とができる。このため、第2鉄塩を添加する場合に比較
して、ヒ素が不溶化するまでの処理水中における鉄の分
散性を高め、かつ生成した澱物どうしの凝集を抑え、澱
物の粗大化を抑制できるため、澱物の比表面積を大きく
することができる。よって、澱物表面におけるヒ素が吸
着可能な部位を多くし、澱物に対するヒ素の吸着を促
し、総合的なヒ素除去反応効率を高めることができる。
このため、除去が難しいとされる3価のヒ素が含ヒ素排
水に多く含まれている場合でも、このヒ素を3価のまま
で効率よく除去することができる。従って、高価な酸化
剤を不要とし薬剤コストを削減するとともに、酸化剤の
添加に必要な貯留タンクや薬注ポンプなどの付帯設備を
不要とし設備コスト削減を図り、処理コストを低く抑え
ることができる。 (2 )酸性第1鉄塩添加工程において、pH調整剤と
しても機能する酸性第1鉄塩を用いるので、消石灰添加
工程において高くなったpHを、それ以外のpH調整剤
を用いることなく下げ、上記範囲(7〜10)に設定す
ることができる。このため、酸性第1鉄塩以外のpH調
整剤を不要とし、薬剤コストを削減するとともに、pH
調整剤添加に必要な付帯設備を不要とし設備コスト削減
を図り、処理コストを低く抑えることができる。 (3 )酸性第1鉄塩添加工程において、pHを7〜1
0に設定するので、石膏などの硫酸化物の発生量を低く
抑え、澱物発生量を少なくし、澱物処理コストを抑制す
ることができる。また澱物発生量を低く抑えることがで
きるため、澱物の処理方法として上記スラグ固定化方法
を採る場合においても、製錬工程への導入に際して、澱
物の乾燥や製錬炉内の熱補償に係る燃料コストを削減す
ることができる。 (4 )酸性第1鉄塩添加工程において、酸性第1鉄塩
の添加量を、pHが7〜10となり、かつ中間処理水中
のヒ素に対する酸性第1鉄塩中の鉄のモル比Fe/As
が5以上となるように設定するので、比較的少量の第1
鉄塩で高いヒ素除去効率を得ることができる。従って、
酸性第1鉄塩に要するコストを抑えることができる。 (5 )酸化剤により3価のヒ素を5価に酸化する従来
法に比べ、5価のヒ素の効率的な処理のためにpHを酸
性領域とすることが必要なく、pH調整剤を不要とする
とともに、石膏などの硫酸化物などの澱物発生量の増大
を防ぐことができ、処理コスト抑制が可能となる。 (6 )消石灰添加工程において、消石灰の添加量を、
含ヒ素排水中のヒ素に対する消石灰中カルシウムのモル
比Ca/Asが2〜5となるように設定するので、消石
灰使用量を抑え薬剤コストを抑制するとともに、水酸化
物などの澱物発生量を少なくすることができる。 (7 )簡単な工程によって十分なヒ素除去が可能とな
ることから、処理装置を簡略化することができ、設備コ
ストを低く抑えることができる。
排水に炭酸カルシウムを添加し、生成した澱物を分離す
ることによって、含ヒ素排水が多量の硫酸根を含む場合
でも、この硫酸根を石膏として不溶化し回収することが
できる。従って、硫黄の有効な固定・回収が可能とな
る。またカルシウム化合物として、消石灰だけでなく、
より安価な炭酸カルシウムを用いるので、薬剤コスト低
減を図ることができる。
態を実施するために用いられる処理装置を示す概略構成
図である。
り、横軸は、排水サンプル中のヒ素に対する消石灰中カ
ルシウムのモル比Ca/Asを示し、縦軸は上澄み中の
ヒ素濃度を示す。
り、横軸はCa/Asを示し、縦軸は消石灰添加量、お
よび澱物発生量を示す。
であり、横軸は上澄みのpHを示し、縦軸は上澄みのヒ
素濃度を示す。
であり、横軸は上澄みのpHを示し、縦軸は澱物発生量
を示す。
(a)、(b)、(c)において、横軸は時間を示し、
縦軸はそれぞれ1次処理水、2次処理水、および3次処
理水中のヒ素濃度を示す。
槽、4・・・2次分離槽、5・・・3次反応槽、6・・・3次分
離槽、7・・・炭酸カルシウム添加経路、8・・・消石灰添加
経路、10・・・酸性第1鉄塩添加経路
Claims (2)
- 【請求項1】 含ヒ素排水に消石灰を添加する消石灰
添加工程と、この工程で生成した澱物を分離して得られ
た中間処理水に、酸性第1鉄塩を添加する酸性第1鉄塩
添加工程とを有する含ヒ素排水の処理方法であって、 消石灰添加工程における消石灰の添加量を、含ヒ素排水
中のヒ素に対する消石灰中カルシウムのモル比Ca/A
sが2〜5となるように設定し、 酸性第1鉄塩添加工程における中間処理水のpHを7〜
10に設定し、かつこの工程における酸性第1鉄塩の添
加量を、中間処理水中のヒ素に対する酸性第1鉄塩中の
鉄のモル比Fe/Asが5以上となるように設定するこ
とを特徴とする含ヒ素排水の処理方法。 - 【請求項2】 消石灰添加工程に先だって、含ヒ素排
水に炭酸カルシウムを添加し、生成した澱物を分離する
ことを特徴とする請求項1記載の含ヒ素排水の処理方
法。
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