JP2001280890A - 熱交換器 - Google Patents

熱交換器

Info

Publication number
JP2001280890A
JP2001280890A JP2000095352A JP2000095352A JP2001280890A JP 2001280890 A JP2001280890 A JP 2001280890A JP 2000095352 A JP2000095352 A JP 2000095352A JP 2000095352 A JP2000095352 A JP 2000095352A JP 2001280890 A JP2001280890 A JP 2001280890A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
film
heat exchanger
tube
copper
fin
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2000095352A
Other languages
English (en)
Inventor
Tetsuo Hosoki
哲郎 細木
Chikara Saeki
主税 佐伯
Akinori Tsuchiya
昭則 土屋
Kozo Saeki
公三 佐伯
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kobe Steel Ltd
Original Assignee
Kobe Steel Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kobe Steel Ltd filed Critical Kobe Steel Ltd
Priority to JP2000095352A priority Critical patent/JP2001280890A/ja
Publication of JP2001280890A publication Critical patent/JP2001280890A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Other Surface Treatments For Metallic Materials (AREA)

Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】 特別な耐食性材料を使用することなく、ま
た、耐熱性及びリサイクル性を損なうことなく熱交換器
の耐食性を向上させることができ、熱交換器の設計に際
して耐食性を考慮することによる制約を解消し、低コス
ト化、高効率化及びコンパクト化を図ることができる熱
交換器を提供する。 【解決手段】 熱交換器の表面の少なくとも一部に非晶
質セラミックス皮膜を形成する。例えばSiO2、Zr
2、SiO2・ZrO2、Al23、TiO2等を主成分
とする金属アルコキシド系の重合体の溶液に熱交換器を
浸漬した後、乾燥及び加熱処理を行い、非晶質セラミッ
クス皮膜を形成する。皮膜の厚さは0.1乃至100μ
mとすることが好ましい。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、給湯器、瞬間湯沸
器、風呂釜、ボイラー及び暖房機器等に使用され、プロ
パンガス、LNG、軽油、灯油又は重油等を燃焼させる
ことにより、管内を流通させる水を加熱し温水を得る熱
交換器に関する。
【0002】
【従来の技術】給湯器、風呂釜又は暖房機器等において
使用される熱交換器は、熱交換面積を大きくするために
通常、金属製フィンと金属製管とを有している。図9に
従来の熱交換器の一例を示す。以下図9を参照して、従
来の熱交換器の構成及び動作について、詳細に説明す
る。
【0003】図9に示す熱交換器は、銅又は銅合金板よ
り形成された胴体1と、胴体1の内部に設けられた銅又
は銅合金製のフィン3と、胴体1の外周部表面に螺旋状
に巻き付けられてろう付けされた銅又は銅合金製の缶管
2と、缶管2に連結されフィン3を貫通し、またフィン
3にろう付けされた銅又は銅合金製のフィン管4とを有
し、缶管2の入り側には入水パイプ5が連結され、フィ
ン管4の出側には出湯パイプ9が連結されている。熱交
換部6はフィン3及びフィン管4とから構成され、通
常、フィン管4は熱交換部6内に2段程度配置される。
また、熱交換部6及び胴体1の下方にはバーナー7が配
置されている。
【0004】次に、このように構成された熱交換器の動
作について説明する。先ず、バーナー7により胴体1、
缶管2及び熱交換部6が加熱される。入水パイプ5より
供給された水は、缶管2を通る間に加熱され、その後、
フィン管4に至り、フィン管4を通る間に更に加熱され
る。このようにして段階的に温められ、効率よく熱交換
が行われた水は出湯パイプ9より給湯される。
【0005】このとき、前記熱交換器各部の温度は以下
のようになる。最も高温になる部分は、バーナー7との
距離が最も短くバーナー7に直接加熱される熱交換部6
の最下部であり、この部分における温度は通常250乃
至300℃である。バーナー7から遠ざかるほど温度は
低くなり、熱交換部6の最上部では通常50乃至60℃
になる。胴体1の最下部の温度は通常120乃至150
℃である。
【0006】前述した熱交換器の材料として、熱効率、
耐熱性及びろう付け性の観点から、銅又は銅合金(以
下、銅合金という)が多く使用されている。フィン3と
フィン管4とをろう付けで接合することにより、製造生
産性の向上を図ることができる。
【0007】しかしながら、前述の熱交換器には以下に
示す問題点がある。通常、給湯器及び暖房機器等に使用
されている熱交換器は、プロパンガス、LNG、軽油、
灯油又は重油等水素を含む燃料をバーナーにて燃焼して
高温の空気を発生させ、この空気を熱交換部に導入し、
熱交換部において水と熱交換させている。このとき、バ
ーナーからは高温の空気とともに水蒸気並びにSOX
NOX及びCO2が発生する。一方、熱交換器各部の温度
は、熱交換部により熱交換が行われるため、バーナーと
の距離が離れるに従い低下する。前述の水蒸気並びにS
X、NOX及びCO2を含む空気の温度が約50℃以下
になると、前記空気に含まれる水蒸気が飽和状態となっ
て結露し、熱交換部及び胴体の内外面に付着する。この
結露水には前記SOX、NOX及びCO2が含まれてい
て、これらは銅合金に対する腐食媒体として作用する。
更に、前記結露水は加熱により水分が蒸発するため、前
記腐食媒体の濃度は次第に高くなり腐食性が非常に高く
なる。そのため、結露水が滞留しやすい個所において銅
合金が腐食し、供給水の漏洩や熱交換器の伝熱性能低下
などの給湯機能を低下させる事例が発生し問題になって
いる。
【0008】前記問題点の対策の1つとして、熱交換部
6とバーナー7との距離があまり離れないように設計
し、温度が低くなりすぎることによる結露の発生を防止
する方法がある。しかしながら、熱交換部6をバーナー
7に近づけすぎると、今度は過加熱による材料の高温酸
化を引き起こし、熱交換器の機能低下を引き起こす。そ
のため従来は、熱交換部とバーナーとの適正な距離を選
定し、かつ熱交換部内部の温度差が大きくならないよ
う、熱交換部の大きさを小さくすることで対処してき
た。
【0009】前記問題点に対する別の対策として、熱交
換器表面を保護膜で保護する方法も採用されている。鉛
は前記結露水に含まれるSOXに対して優れた耐食性を
示す金属であるため、熱交換器の表面を保護するため
に、前記銅合金の表面に鉛又は鉛に少量のすずを添加し
た合金の溶融めっき(以下、鉛めっきという)を施す方
法が提案されている。また、結露水中のNOXによる腐
食の対策として、すずに少量のビシマス(Bi)又はア
ンチモン(Sb)を添加した合金の溶融めっき(以下、
すずめっきという)を行う方法が提案されている。
【0010】更に他の対策として、特開昭56−445
95において、銅合金をりん酸又は酸性金属りん酸塩を
バインダーとする無機耐熱塗料で被覆し焼付け硬化させ
て極めて硬質なセラミックス状皮膜を形成させることに
より、前記問題点を解決する方法が提案されている。
【0011】また、熱交換器の外表面にポリフェニレン
サルファイド樹脂を塗装し防食を図る方法も提案されて
いる。
【0012】更に、材料面からの対策として、耐熱性及
び耐食性に優れるチタンやステンレス等を使用する事に
より、前記問題を解決する方法も提案されている。ま
た、同様の対策として、特開平5−141896には、
耐酸性及び耐食性に優れたステンレスを銅合金とクラッ
ドし、その表面全体又は一部をポリフェニレンサルファ
イド樹脂で塗装する方法が開示されている。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前述の
解決策には夫々以下に示す問題点がある。熱交換部6が
小さくなるように設計しても、腐食性が高い結露水の発
生を十分抑えることはできない。また、熱交換において
低温域及び高温域を十分利用することができないため効
率が低下する。更に、この制限により材料の特性を生か
した自由な設計が妨げられ、給湯器や暖房機器等のコン
パクト化を図ることも困難になる。
【0014】銅合金の表面に鉛めっき又はすずめっきを
施す方法では、前記鉛めっき及びすずめっきは融点が低
く高温での使用に耐えられないため、高温での使用を可
能にする処置が必要となる。また近時、工業製品の製造
における環境面への配慮が社会的に求められつつあり、
鉛、ビスマス及びアンチモン等の有害物質の排除が盛ん
に叫ばれるようになったため、これらのめっきの使用は
将来困難になると予想される。更に近時、製品のリサイ
クル性も望まれているが、銅合金を銅合金以外の金属で
被覆すると、リサイクル時に分離が不可能となったり、
また分離が可能であっても余計にコストがかかってしま
い、リサイクル素材としての転用が困難になるという問
題点がある。
【0015】また、りん酸又は酸性金属りん酸塩をバイ
ンダーとする無機耐熱塗料を塗布する方法では、これら
の皮膜は硬質で脆く、高温使用時における銅合金の膨張
に追従できずに皮膜に欠陥が発生するため、完全な対策
に至らず実用化されていない。
【0016】熱交換器の外表面にポリフェニレンサルフ
ァイド樹脂を塗装し防食を図る方法は、前記樹脂が高温
環境下での使用に耐えられず耐久性に問題があるため、
長期間の使用が望めない。
【0017】チタン及びステンレスのような耐食性材料
を使用する方法では、これらの耐食性材料は材料費が高
く、また加工性及びろう付け性も銅合金より劣るため加
工費がかさみ、コスト及び生産性の面で問題がある。
【0018】上述の如く、従来種々の方法が提案されて
きたにもかかわらず、熱交換器における結露水による腐
食に対する有効な対策は見出されていない。
【0019】本発明はかかる問題点に鑑みてなされたも
のであって、特別な耐食性材料を使用することなく、ま
た、耐熱性及びリサイクル性を損なうことなく耐食性を
向上させることができ、熱交換器の設計に際して耐食性
を考慮することによる制約を解消し、熱交換器の高効率
化及びコンパクト化を図ることができる熱交換器を提供
することを目的とする。
【0020】
【課題を解決するための手段】本発明に係る熱交換器
は、銅又は銅合金板により形成した胴体と、前記胴体の
内部に設けられた銅又は銅合金製のフィンと、前記胴体
の外面に接触するように接合された銅又は銅合金製の缶
管と、前記缶管に連結され前記フィンを挿通するように
接合された銅又は銅合金製のフィン管とを有し、前記胴
体の外表面、前記胴体の内表面、前記フィンの表面、前
記缶管の外表面、前記缶管の内表面、前記フィン管の外
表面及び前記フィン管の内表面のうち、少なくとも1つ
に非晶質セラミックス皮膜が形成されていることを特徴
とする。
【0021】また、前記非晶質セラミックス皮膜の厚さ
は0.1乃至100μmであることが好ましい。
【0022】更に、前記非晶質セラミックス皮膜と、こ
のセラミックス皮膜が被覆された銅又は銅合金との間に
存在する酸化膜の厚さが、0.1μm以下であることが
好ましい。
【0023】前記非晶質セラミックス皮膜は、Si
2、ZrO2、SiO2・ZrO2、Al 23及びTiO
2のうちいずれか1種又は2種以上を主成分とする金属
アルコキシド系の重合体であってもよい。
【0024】
【発明の実施の形態】以下、本発明について詳細に説明
する。前述の如く、熱交換器は、使用時の温度、結露の
発生及び前記結露の腐食性の程度にかかわらず、長期間
の使用に耐えうる必要がある。本発明者等はこのような
熱交換器の腐食の問題を解決するべく鋭意研究した結
果、非晶質セラミックスは一般的に結晶質セラミックス
と同等の強度を有しながら、結晶質セラミックスより大
きな延性を有するものであり、これらの非晶質セラミッ
クス皮膜は化学的に安定で強酸水溶液及び強アルカリ水
溶液と反応せず、耐熱性を有することを知見した。そこ
でこれらの皮膜を、熱交換器を構成する銅合金の表面に
形成することにより、使用条件によらず優れた耐食性を
示す熱交換器を得ることができる。
【0025】以下に、本発明の非晶質セラミックス膜の
形成法及び性能について、1例を挙げて具体的に説明す
る。本発明の非晶質セラミックス膜としては、例えば、
Si−CH3結合及びSi−O結合を有するものがあげ
られる。下記の化学式1に示すSi−CH3結合及びS
i−O結合を含む構成を有するアルコシド系の溶液にア
ルコールを加え適当な濃度に調整した後、この処理溶液
を銅合金表面に塗布する。
【0026】
【化1】
【0027】塗布後、熱処理を施すことにより、前記処
理液は縮重合反応を起こして、OH基の酸素の手が切れ
て他の酸素又はSiと結合し、下記の化学式2に示す構
造を有する非晶質のセラミックス膜が形成される。
【0028】
【化2】
【0029】化学式2に示す構造を持つ非晶質セラミッ
クス皮膜において、前記非晶質皮膜の硬度と延性のバラ
ンスを調整するための条件は、フーリエ変換赤外分光光
度計(FT−IR)により得られるSi−CH3結合に
対するSi−O結合の伸縮ピーク面積比(Si−O)/
(Si−CH3)で判定することが可能である。本発明
においては、以下に示す理由よりこの値を8〜20とす
ることが望ましい。
【0030】前記非晶質セラミックス皮膜におけるFT
−IRによるSi−CH3結合に対するSi−O結合の
伸縮ピーク面積比(Si−O)/(Si−CH3)(以
下、ピーク面積比という)の大きさは、この非晶質構造
中のメチル基の数に対応する。化学式2に示すように、
この非晶質構造においてSi4+にメチル基が結合する
と、Si4+のネットワークが壊れる。ピーク面積比は、
このような非晶質構造中の欠陥の多さに対応し、皮膜の
硬さ及び延性に影響する。Si−O結合は共有結合であ
るためその結合力が強く、従って皮膜の硬さを硬くし、
皮膜の耐摩耗性を向上させる。また、Si−CH3結合
はSi4+のネットワークを切断するため、皮膜の延性を
向上させ、銅管の成形又は熱膨張時における皮膜の変形
能を改善するため、皮膜が銅管から剥離しにくくなる。
ピーク面積比が8未満でメチル基が多いと、非晶質構造
中の欠陥が多くなるため膜の強度が低下し、また、皮膜
が形成されない場合も発生して耐食性を長期間安定に保
てなくなる。一方、ピーク面積比が20を超えメチル基
が少ないと、非晶質中の欠陥が少なくなるため皮膜の延
性が低下し、銅合金の熱膨張に追従できずに皮膜の割れ
を起こしやすくなる。従って、ピーク面積比は8乃至2
0とすることが好ましい。
【0031】メチル基は加熱により脱離するため、処理
液塗布後の加熱条件により、Si−CH3結合数及びS
i−O結合数の割合を変化させることができ、これによ
り、非晶質セラミックス皮膜の性質を変化させることが
できる。熱交換器の使用温度や皮膜に付与したい性質を
考慮して、非晶質セラミックス皮膜を形成させる加熱温
度を室温乃至500℃の範囲で選定することができる。
【0032】なお、前記赤外吸光度スペクトルは顕微A
TR赤外分光法により測定することができ、例えば、P
erkin Elmer社製のFT−IR Parag
on1000(MCT(Manetron Conpu
ted Tomography)検出器使用)に、顕微
観察用のAuto Image System及び円錐型
Geクリスタルを組み合わせ、分解能を8cm-1とし、
積算回数100回、分析面積100×100μm2の条
件で測定することができる。図1は測定した非晶質セラ
ミックス皮膜の赤外吸収スペクトルの1例を示す図であ
る。図1において、横軸は波数を、縦軸は吸収強度を示
す。なお、この皮膜は、99.99%N2ガス雰囲気中
にて、昇温速度を60℃/分、加熱温度を500℃、加
熱保持時間を15分、降温速度を10℃/分として加熱
処理を行ったものである。この条件により形成された皮
膜の厚さは7μm、表面粗さ(Ra)は0.2μmであ
った。
【0033】前記赤外吸収スペクトルについて、130
0乃至1200cm-1に現れるSi−CH3伸縮振動に
由来する吸収ピークの面積と、1200乃至900cm
-1に現れるSi−O伸縮振動に由来する吸収ピークの面
積との比をピーク面積比とする。図1においては、Si
−CH3伸縮振動に由来する吸収ピークの面積が48.
837、Si−CH3伸縮振動に由来する吸収ピークの
面積が3.0489となり、従ってピーク面積比は約1
6.0であった。
【0034】以上、Si−CH3結合及びSi−O結合
を有する非晶質セラミックスについて述べたが、ZrO
2、SiO2・ZrO2、Al23、TiO2などを主成分
とする金属アルコキシド系の重合体の場合においても、
FTIRによるピーク強度比、(Zr−O)/(Zr−
CH3)、(Al−O)/(Al−CH3)、(Ti−
O)/(Ti−CH3)を適正な範囲とすることにより
目的とする非晶質セラミックス膜を形成することが可能
になる。また、−CH3の部分がフェニル基など他の官
能基であっても同様な原理で適用が可能である。
【0035】以下、本発明の構成要件である数値限定理
由について説明する。
【0036】非晶質セラミックス皮膜の厚さ:0.1乃
至100μm 皮膜の厚さが0.1μm未満であると、所望の耐食性が
得られず、長期間に亘り耐食性を良好に保つことが難し
い。一方、皮膜の厚さが100μmを越えると、皮膜形
成時に熱交換器を降温する際、非晶質セラミックス皮膜
及び銅合金の間の線膨張係数の違いにより皮膜に割れ又
は剥離を起こす。これは銅合金の膨張係数が約16乃至
18×10-6であるのに対して、本発明の非晶質セラミ
ックス皮膜の線膨張係数は約2乃至12×10-6と小さ
いためである。また、熱交換器使用時の加熱及び冷却の
繰り返しに伴う銅合金の変形に皮膜が追従し難くなり、
皮膜が剥離してしまうことがある。従って、皮膜の厚さ
は0.1乃至100μmとすることが好ましい。より好
ましくは、0.2乃至50μmである。特に、熱交換器
の繰返し使用により応力の集中しやすい部位において
は、皮膜厚さは0.2乃至20μmが好ましく、より好
ましくは0.2乃至10μmである。
【0037】前記熱交換器表面と非晶質セラミックス皮
膜との間に存在する酸化膜の厚さ:0.1μm以下 銅合金と非晶質セラミックス皮膜との間に酸化膜が存在
する場合、酸化膜の脆さ及びこの酸化膜と銅合金との結
合力の弱さに起因して、酸化膜自体の破壊又は酸化膜と
銅合金との界面剥離により非晶質セラミックス皮膜の剥
離が起こり易い。この酸化膜の厚さが0.1μmを超え
ると、非晶質セラミックス皮膜の十分な密着強度が得ら
れず、熱交換器使用中に非晶質セラミックス皮膜の剥離
が発生し、剥離部における局部的な腐食が促進されやす
くなる。従って、銅合金表面と非晶質セラミックス皮膜
との間に存在する酸化膜の厚さは0.1μm以下である
ことが好ましい。
【0038】なお、この酸化膜の膜厚は、非晶質セラミ
ックス皮膜を形成した熱交換器の任意部分を発熱が少な
い方法で切断し、切断面を走査型電子顕微鏡(SEM:
Scanning electron microscope)等で10000倍以上
の倍率で観察することにより測定することができる。ま
た、酸化膜の成長が著しい場合には、非晶質セラミック
ス皮膜と銅管素地との間に隙間又はひび割れが観察され
ることがある。
【0039】また、後述のように、非晶質セラミックス
膜形成後の前記酸化膜の厚さを0.1μm以下にするに
は、非晶質セラミックス膜形成前の銅合金表面に形成さ
れている酸化膜の厚さを、全量がCu2Oとして換算し
た場合の膜厚で200Å以下とすること、及び非晶質セ
ラミックス皮膜の形成雰囲気を制御して酸化を防止する
等の留意が必要である。
【0040】銅の酸化物には酸化第2銅(CuO)及び
酸化第1銅(Cu2O)の2種類の形態があり、夫々銅
の価数が2価(Cu2+)と1価(Cu+)である。ま
た、銅合金の場合は、銅の酸化物以外に合金元素の酸化
物が形成されていることもある。このような酸化皮膜の
膜厚の測定は、電気化学的手法(カソード還元法)によ
り行うことができる。実際の酸化物はCuO、Cu2
及び添加元素の酸化物等を含有しているが、ここでは、
それらが全てCu2Oであったとみなしたときの膜厚を
酸化膜厚さとする。酸化膜の厚さT(Å)、分子量M
(Cu2O:133.2(g/mol))、電流密度i
(mA/cm2)、生成物1分子の還元に対する電子数
n(Cu2O:2)、生成物の密度ρ(Cu2O:6.0
4(g/cm 3))、ファラデー数F(96500(C
/mol))とすると、下記数式1が成り立つ。数式1
により、酸化膜の厚さを求めることができる。
【0041】
【数1】 T=((M×i×t)/(n×ρ×F))×105
【0042】以下に、本発明の効果を更に向上させるた
めの条件を示す。
【0043】皮膜の硬さは、鉛筆引っかき値(JIS
K 5400−1990)で3H乃至10Hの範囲にあ
ることが好ましい。皮膜の硬さが鉛筆引っかき値で3H
未満では皮膜が柔らかく、長期間にわたって皮膜の耐久
性を維持するために必要な強度が得られない。特に銅管
内面の場合、皮膜と銅管内を流通する水との摩擦により
使用時間の増大に伴い皮膜が損耗し、耐食性が低下しや
すくなる。一方、硬さが10Hより大きいと皮膜の変形
能が低下し、加工による素地の変形又は加熱による素地
の熱膨張に皮膜が追従し難くなり、皮膜が剥離してしま
うことがある。従って、皮膜の硬さは鉛筆引っかき値で
3H乃至10Hとすることが好ましい。
【0044】また、本発明の非晶質セラミックス皮膜
は、中心平均表面粗さ(Ra)が0.5μm以下、か
つ、最大表面粗さ(Rmax)は1.0μm以下である
ことが望ましい。この理由を以下に述べる。
【0045】第1に、非晶質セラミックス皮膜の表面粗
さは、銅合金の熱膨張による皮膜の剥離のしやすさに影
響する。皮膜表面のRaが0.5μmを超えるか、又は
Rmaxが1.0μmを超えると、皮膜形状のために皮
膜中に銅合金の熱膨張収縮に伴う応力集中部を生じてし
まい、熱交換器の長期使用中に皮膜が剥離することがあ
る。
【0046】第2に、非晶質セラミックス皮膜の表面粗
さが小さいほど、結露水が流れて速やかに排出されやす
くなり、耐食性に対して有利に働く。
【0047】第3に、銅管内面の非晶質セラミックス皮
膜の表面粗さは、この銅管内に水を流通させたときの皮
膜剥離の起こりやすさに影響する。Raが0.5μmを
超えるか、又はRmaxが1.0μmを超えると、皮膜
表面の凹凸のため、皮膜表面付近に乱流が発生しやすく
なり、この乱流によって皮膜が剥離することがある。従
って、管内面の非晶質セラミックス皮膜の表面粗さは、
Raは0.5μm以下、かつRmaxは1.0μm以下
とすることが好ましい。
【0048】また、非晶質セラミックス皮膜の表面粗さ
は、銅合金の表面粗さの影響を受けるため、前述の皮膜
表面粗さを得るためには、皮膜形成前の銅合金の表面粗
さを、Ra0.5μm以下かつRmax1.0μm以下
としておくことが好ましい。より好ましくは、Ra0.
3μm以下である。銅合金の結晶粒径が大きすぎると、
素材を加工した際に表面に肌荒れを生じ表面粗さを増大
させる。従って、加工を伴う部位に使用する銅合金の結
晶粒度は、70μm以下であることが望ましい。但し、
例えば、液状の処理液を使用して非晶質セラミックス皮
膜を形成する場合等で、非晶質セラミックス皮膜表面の
Raが0.5μm以下、かつRmaxが1.0μm以下
となる場合は、前記銅合金の表面粗さはRaが0.5μ
m以上又はRmaxが1.0μm以上であってもよい。
【0049】本発明において、熱交換器を構成する銅又
は銅合金は、無酸素銅、りん脱酸銅、タフピッチ銅、C
u−Fe−P、Cu−Mn−P、Cu−Ni−Si、C
u−Sn−P及びCu−Zn等であるが、この他の銅合
金でも熱交換器に加工できるものであれば全て適用する
ことができる。なお、銅合金と非晶質セラミックス膜の
接着強度及び銅合金とセラミックス皮膜の界面における
膨れ防止の観点から、銅管の含有する酸素量は30pp
m以下、水素量は2ppm未満であることが望ましい。
【0050】また、通常熱交換器に使用される銅合金管
の形状は、ほとんどが平滑管であるが、本発明は前記平
滑管をはじめ、内面溝付管、コルゲート管等全ての形状
のものにも適用可能である。
【0051】以下に、本発明の非晶質セラミックス皮膜
の形成方法について説明する。本発明においては、例え
ばSiO2、ZrO2、SiO2・ZrO2、Al23、T
iO 2等を主成分とする金属アルコキシド系の重合体に
適宜無機フィラー、金属微粒子又はウィスカー等を加え
たものをアルコールで適当な濃度まで希釈し、この溶液
を溶液槽に満たし、熱交換器を浸漬後、適当な条件で乾
燥及び加熱を行い、その表面に非晶質セラミックス皮膜
を形成させる。浸漬の替わりにスプレー又は塗布を行っ
てもよい。乾燥条件は、例えば室温乃至50℃の大気中
で適当な時間放置すればよい。加熱条件は、真空中又は
不活性ガス雰囲気中で加熱することが好ましい。加熱速
度、加熱温度、加熱時間及び冷却速度等は形成させる非
晶質セラミックスの材質に応じて適当な値を選択するこ
とが必要である。
【0052】なお、本発明において、外表面の非晶質セ
ラミックス皮膜形成は、缶管及びフィン管を所定の構成
に組み立てた後、前記処理法で行うことが望ましい。そ
の理由は、組み立て前に非晶質セラミックス皮膜を形成
させると、その後ろう付けによる組み立てが難しくなる
ためである。
【0053】また、缶管及びフィン管内面に非晶質セラ
ミックス皮膜を形成させる場合は、予め管内面に非晶質
セラミックス皮膜を形成させておいた銅合金管を使用し
て熱交換器を組み立ててもよいし、熱交換器を組み立て
た後、前記溶液槽に浸漬して缶管及びフィン管内面全体
に溶液を行きわたらせ、その後管内の溶液をエアブロー
等の手段により排出し、管内面に溶液膜を形成後、乾燥
及び加熱を行い、非晶質セラミックス皮膜を形成しても
よい。更に、缶管及びフィン管内面の被覆については、
同希釈溶液を銅管内に封入し、前記熱交換器を還元性又
は非酸化性雰囲気中にて50乃至500℃の温度に所定
時間加熱し、室温までに冷却することによって作製する
こともできる。
【0054】また、加熱初期には熱交換器表面と非晶質
セラミックス皮膜の間に酸化皮膜が形成されやすく、皮
膜の密着性を低下させやすいため、前記熱処理は非酸化
性又は還元性雰囲気中で行うことが望ましい。また、加
熱時の昇温速度及び加熱後の冷却速度が大きいと、銅と
セラミックスの線膨張係数の違いにより、皮膜が剥がれ
やすくなるため、特に300℃以上の温度に加熱する場
合には、600℃/分以下の速度で加熱し、その後5乃
至300分保持して、100℃/以下の速度で冷却する
ことが望ましい。このように、熱処理持の雰囲気、昇温
速度、降温速度、加熱保持温度及び加熱保持時間を適切
に規定することにより、熱処理持に熱交換器表面が酸化
されて銅合金表面と非晶質セラミックス皮膜との界面に
酸化膜が形成されることにより皮膜が剥がれやすくなる
ことを防ぎ、セラミックスと銅合金との線膨張率の違い
により皮膜が割れたり剥がれたりすることを防止でき
る。従って、熱交換器表面に優れた密着性及び変形能を
有する非晶質セラミックス皮膜を形成することができ
る。
【0055】なお、本発明の非晶質セラミックス皮膜
は、塗布する処理液の濃度、塗布厚さ又は塗布回数を変
化させることによって膜厚を変えることができる。ま
た、皮膜を形成させた熱交換器表面に再度処理液を塗布
し、加熱することによって膜厚を厚くすることもでき
る。再度の塗装を行う場合には、最初に延性の大きいポ
ーラスな皮膜を形成し、その上に緻密な皮膜が形成され
る処理液を塗布し、全体として延性のある緻密な皮膜と
することも可能である。
【0056】非晶質セラミックス皮膜は、本発明の熱交
換器の表面全体に被覆してもよいし、熱交換器の使用環
境や付加したい特性に応じて、熱交換器の表面の一部に
被覆してもよい。
【0057】非晶質セラミックス皮膜は、緻密で水分を
透過させないため耐食性に優れ、延性があるため熱交換
器の膨張収縮に追随して変形でき、硬さが硬いため水と
の摩耗により消耗し難く、化学的に安定で強酸水溶液及
び強アルカリ水溶液と反応しないため長時間水又は水溶
液中にあっても腐食や変質を起こさず、撥水性を有する
ため結露水が残留しにくく、銅合金との接着が強固であ
るため長時間安定に耐食性を保つことができ、耐熱性が
あるため熱交換器各部の使用温度に関わらず安定した耐
食性を保つことができる。このように、非晶質セラミッ
クス皮膜は多くの優れた特性を備えるため、熱交換器に
被覆してこの熱交換器の耐食性を向上させるための被覆
材料には最適である。また、非晶質セラミックス皮膜を
被覆した熱交換器はリサイクル性も優れている。例え
ば、表面に非晶質セラミックス膜が形成された熱交換器
を溶解炉に投入すると、溶解過程において非晶質セラミ
ックス膜は溶湯表面に分離してスラグとなるため銅溶湯
からの除去が容易である。前記銅溶湯を、精練(脱ガ
ス、ノロ曳き)後鋳造することによって、銅として再生
することが可能となる。
【0058】
【実施例】以下、本発明の実施例に係る熱交換器につい
て、本発明の範囲から外れる比較例と比較して具体的に
説明する。最初に、以下の各実施例において共通する測
定方法及び試験方法について述べる。
【0059】熱交換器外面における結露水に対する耐食
性評価試験は、JIS H8502に示された二酸化硫
黄試験方法に従い、環境温度40℃、湿度90%の条件
で96時間保持して行った。腐食程度の判定方法は、試
験後の熱交換器の外観を観察して酸化及び緑青による変
色個所の有無を調査し、「○」変色個所無し、「△」軽
度な変色有、「×」激しい変色有りで評価した。また、
変色個所が認められた場合はその個所にてサンプルを採
取し、光学顕微鏡での断面観察による腐食深さ測定を行
った。腐食深さによる判定は、深さが0.02mm未満
の場合を△、0.02mm以上の場合を×とした。また
上記変色個所が認められなかった場合は、缶管とフィン
の接触部からサンプルを採取しその断面について同様の
観察を行い、腐食が認められなければ○とした。但し、
変色個所の評価を行うにあたり、加熱サイクル試験によ
る酸化変色個所は評価の対象から除外した。また、非晶
質セラミックス皮膜の膜厚及び非晶質セラミックス皮膜
と銅合金との間に生成する酸化皮膜の膜厚は、各供試体
より取出したサンプルの皮膜断面をSEM観察して測定
した。
【0060】第1試験例 以下に本発明の第1試験例を示す。図2は本試験例の供
試体を示す。この供試体は、図9に示した熱交換器の熱
交換部6に相当し、約76枚のフィン3とフィン管4と
から構成される。図3はフィン3の構成を示す。フィン
3はりん脱酸銅からなり、フィン管4の貫通孔10が6
個設けられている。またフィン管4(JIS H330
0 C1220)はりん脱酸銅からなり、直径φ15.
88mm、肉厚7.1mm、長さ250mmである。前
記フィン3を約76枚一定間隔で配列し、6本のフィン
管4を貫通孔10に夫々貫通させて前記76枚のフィン
3を貫き、前記フィン3と前記フィン管4とをりん銅ろ
う(JIS Z3264BCuP−2)を使用してろう
付けして組み立てられる。図4はフィン3における貫通
孔10の詳細図である。貫通孔10の外縁部にはろうを
差し込む孔部11が設けられている。供試体のろう付け
方法は、前述の如くフィン3を配列してフィン管4をフ
ィン3の貫通孔10に貫通させた後、この孔部11に棒
状のりん銅ろうを差し込んで固定し、供試体を真空炉内
に入れ、真空引き後、純度99.99%の窒素ガスによ
り炉内を置換し、炉内の温度を900℃に昇温して供試
体を加熱し、その温度で30分保持してろう付けを行っ
た。このとき、供試体の温度は700乃至800℃であ
る。
【0061】非晶質セラミックス皮膜は、熱交換器外面
に処理液を塗布後所定温度で加熱する方法により形成し
た。処理液として、日板研究所製セラミカG1−50を
使用した。この処理液を供試体に塗布するために容量3
0Lのポリ容器に満たし、処理液中に供試体を浸漬した
状態で5分間保持した。その後引き上げて余分に付着し
た処理液を除去し、均一に成膜させるためにドライヤー
でエアブローし、温度50℃に加熱した乾燥炉内に供試
体を入れて5分間保持し乾燥させた。その後、供試体を
真空電気炉に入れ、炉内を真空に引いた後、純度99.
99%の窒素ガスで炉内を置換し、炉内の温度を200
℃に昇温して供試体を加熱し、供試体に非晶質セラミッ
クス膜を形成させた。供試体の昇降温条件は、昇温速度
60℃/分(30℃から)、降温速度30℃/分(30
℃まで)とし、保持時間は60分とした。
【0062】さまざまな厚さの皮膜を形成させるため
に、処理液をイソプロピルアルコールで希釈して皮膜を
薄膜化するか、又は塗布、乾燥及び加熱工程から成る皮
膜形成処理を繰り返し行うことにより皮膜を厚膜化し
た。このようにして皮膜を形成した供試体について、図
2の12に示すように供試体のフィン3の一部を採取
し、非晶質セラミックス皮膜厚さ、酸化皮膜厚さの測定
に供し、測定結果をその供試体の代表値とした。
【0063】このようにして、皮膜厚さ0.01乃至1
10μmの範囲で皮膜形成した供試体(実施例1乃至
6)及び皮膜形成させない供試体(比較例1)を1台ず
つ作成した。実施例7として、処理溶液塗布後、大気中
での加熱処理を行った供試体も作製した。
【0064】前述の方法で得た供試体について、実機で
の使用を模擬した皮膜の耐熱衝撃性及び耐繰返し熱応力
性の評価を行った。以下に試験方法について詳細に述べ
る。
【0065】図5は本試験例の試験方法を示す図であ
る。供試体のフィン管4の両端にシリコンホース13を
夫々接続し、常温(25℃)の水道水を6本のフィン管
4に夫々独立に通水した状態で、供試体を下からバーナ
ー7で加熱した。バーナー7の燃料には、一般に硫黄分
を多く含むとされる灯油を使用した。図6はバーナー7
による加熱サイクルのパターンを示す図である。このパ
ターンにより、600サイクルの加熱サイクル試験を行
った。なお、バーナー7と熱交換器の間の距離14は、
5分間加熱したときの供試体の最高温度部位の温度が2
50℃になるように調節した。
【0066】前述の加熱サイクル試験を終了後、二酸化
硫黄試験を行い供試体の腐食を促進させ、その腐食の度
合いを評価した。表1に実施例1乃至7及び比較例1の
評価結果を示す。
【0067】
【表1】
【0068】実施例1は局部的に軽度の変色が認められ
た。これは非晶質セラミック皮膜の皮膜厚さが規定値に
満たないために、所望の耐食性を得ることができず変色
が発生したことによる。実施例2乃至5は期待する非晶
質セラミックス皮膜が得られたため、優れた耐食性を示
した。実施例6は局部的に軽度の変色が認められた。こ
れは非晶質セラミックス皮膜の皮膜厚さが規定値を超え
たために、割れ・剥離など局部的な皮膜の欠陥を生じ、
所望の耐食性を得ることができず変色が発生したことに
よる。実施例7は皮膜形成処理時から全体に軽度の茶褐
色を帯びていたことが認められ、二酸化硫黄試験の結
果、局部的に軽度の変色が認められた。これは皮膜形成
処理を大気中で行ったために、非晶質セラミックス皮膜
と銅合金との間の酸化皮膜が成長してしまい、酸化皮膜
厚さが規定値を超えたために、割れ及び剥離等の局部的
な皮膜の欠陥を生じたため、所望の耐食性を得ることが
できず変色が発生したことによる。実施例6及び7につ
いて、皮膜表面からのSEM観察の結果、局部的に皮膜
に欠陥が生じている様子が観察された。また、比較例1
には緑青の発生が多く認められた。緑青の発生部位は、
結露水の滞留しやすいフィンとフィン管表面とのすき間
形成部及びその近傍に集中していた。
【0069】第2試験例 本試験例における給湯器用熱交換器の構成は、図9に示
すとおり、従来の熱交換器と同じである。図9に示す熱
交換器は、りん脱酸銅板(JIS H3100C122
0)からなる胴体1と、胴体1の内部に設けられたりん
脱酸銅板(JIS H3100 C1220)からなる
フィン3と、胴体1の外周部表面に螺旋状に巻き付けら
れてろう付けされたりん脱酸銅管(JIS H3300
C1220)からなる缶管2と、缶管2に連結されフ
ィン3にろう付けされたりん脱酸銅管(JIS H33
00 C1220)からなるフィン管4とを有し、缶管
2の入り側には入水パイプ5が連結され、フィン管4の
出側には出湯パイプ9が連結されている。熱交換部6は
フィン3及びフィン管4とから構成され、通常、フィン
管4は熱交換部6内の上部に配置される。また、熱交換
部6及び胴体1の下方にはバーナー7が配置されてい
る。
【0070】図7は本試験例における熱交換部の詳細な
構造を示す図である。熱交換部のフィン3とフィン管4
との接合方法は、第1試験例のろう付け方法と同じ方法
で行った。熱交換器6以外の接合部分15及び16につ
いては、上記の熱交換部6におけるろう付けを終えた
後、管を接続し、手作業によるろう付けによった。熱交
換部6及び他のろう付け作業時に管内が酸化しないよう
に、管内に純度99.99%のN2ガスを充填又は通気
してろう付けを行った。
【0071】全てのろう付け作業終了後、熱交換器外表
面並びに缶管2、フィン管4、入水パイプ5及び出湯パ
イプ9を含む管全長の内面に、非晶質セラミックス皮膜
の形成処理を行った。管内面の皮膜形成処理は、管内に
処理液を封入してシリコン栓で両管端17を封止し、1
分間保持後抜液、通風して残液を排出し、第1試験例と
同じ加熱処理を実施した。加熱処理中に管内に残った大
気が銅管素地を酸化させないように、管内を純度99.
99%のN2ガスで置換後加熱した。また、熱交換器外
面については、第1試験例と同様の方法で非晶質セラミ
ックス皮膜の形成を行った。
【0072】前記方法により、皮膜形成処理を行った熱
交換器及び皮膜形成処理を行わなかった熱交換器を夫々
1台ずつ作製し、これらの熱交換器を使用して実際の給
湯器を2台作製して供試体とし、夫々実施例8及び比較
例2とした。
【0073】給湯器の燃料にはいずれも灯油を用いた。
2台の給湯器について、給湯及び停止の繰返しによるパ
イロット運転を1週間連続して行った。図8は、本試験
例におけるパイロット運転の給湯及び停止サイクルの運
転パターンを示す図である。なお、供試体において、給
湯時の最高温度部位の温度は240乃至260℃であっ
た。
【0074】前述のパイロット運転終了後、夫々の給湯
器から入水・給湯パイプを含む熱交換器を取出し、二酸
化硫黄試験を行った。なお、比較例2は二酸化硫黄試験
前の時点で、熱交換部最下部において酸化変色及び灯油
燃料から出たすすによる黒色変色(すすけ)を起こして
いたが、これは評価の対象にせず二酸化硫黄試験後に発
生した変色のみを評価の対象とした。
【0075】表2に実施例8及び比較例2の評価結果を
示す。実施例8には変色個所が全く認められなかった。
比較例2においては、結露水の滞留しやすいフィンとフ
ィン管表面との間のすき間形成部及びその近傍並びにフ
ィン管表面露出部上面に、緑青の発生が多く認められ
た。実施例8及び比較例2について、この部分をサンプ
リングしてSEMによる断面観察を行った。実施例8に
ついては、皮膜の消失及び欠陥が認められず銅管表面の
減肉も観察されなかったが、比較例2については腐食の
進行が認められた。また、実施例8の銅合金管を全長に
渡って半割し内面を検査した結果、管内面には全く問題
のないことを確認した。
【0076】
【表2】
【0077】第3試験例 本試験例では管の内面の耐食性について評価した。図7
に示す第2試験例と同じ熱交換器を作製し、管内面全長
に渡って第2試験例と同様の皮膜形成処理を行い、実施
例9とした。内面に非晶質セラミックス皮膜を形成させ
なかった熱交換器を比較例3とし、夫々3台ずつ作製し
て孔食促進試験及び潰食促進試験を行い、耐孔食性及び
耐潰食性を評価した。以下に各試験方法について詳細に
述べる。
【0078】耐孔食性の評価は下記の流水試験により実
施した。非晶質セラミックス皮膜を形成させた熱交換器
及び皮膜を形成させていない熱交換器に、下記2種類の
水溶液1及び2を所定の温度で入水パイプ5から0.2
m/sの流速で6ヶ月にわたって循環させた。流水時間
は1日あたり30分とした。試験後の銅管を全長に渡り
半裁して内表面を観察し、緑青の発生の有無及び孔食ピ
ット発生の有無の確認を行った。孔食ピットの確認は実
体顕微鏡により倍率10乃至50倍で観察して行った。
孔食ピットが認められた場合は、その断面を観察して孔
食深さを調査し、0.02mm以上の腐食が観察された
場合を孔食発生と判断した。
【0079】水溶液1 水温:25℃、水質:pH6.5、シリカ(Si
3 2-):60ppm、重炭酸イオン(HCO3 2-):8
0ppm、塩化物イオン(Cl-):30ppm、硫酸
イオン(SO4 2-):20ppm、を全てナトリウム塩
にて添加した。pHは炭酸ガスにて調整した。
【0080】水溶液2 水温:60℃、水質:pH6.5、m/s、シリカ(Si
3 2-):60ppm、重炭酸イオン(HCO3 2-):8
0ppm、塩化物イオン(Cl-):30ppm、硫酸
イオン(SO4 2-):20ppm、次亜塩素酸ナトリウ
ム(R−Cl:残留塩素)5ppm、を全てナトリウム
塩にて添加した。pHは希硫酸にて調整した。
【0081】耐潰食性の評価方法を以下に示す。非晶質
セラミックス皮膜を形成した供試体及び皮膜形成を行っ
ていない供試体に下記の水溶液3を流速4.0m/sで
6ヶ月に渡って循環させた。流水時間は30分/日とし
た。試験後の銅管を全長に渡り半裁して内表面を観察
し、緑青の発生の有無、孔食ピット発生の有無の確認を
行った。孔食ピットの確認は実体顕微鏡により倍率10
乃至50倍で観察して行った。更に、緑青又は酸化によ
る変色発生部及び銅管の曲げ部近傍の断面において、顕
微鏡により腐食深さを測定し、その値が0.02mm以
上の場合潰食が発生しているとした。
【0082】水溶液3 水温:25℃、pH6.5、塩化物イオン(Cl-):1
000ppm。塩化物イオンは塩化ナトリウムにて添加
した。pHは硫酸にて調整した。
【0083】表3に前述の腐食試験の評価結果を示す。
実施例9は、いずれの腐食促進試験条件においても銅管
の管壁に析出物及び沈殿物などによるスケールの付着が
認められず、孔食及び潰食は共に発生していなかった。
内表面の酸化による変色等も軽微であった。
【0084】比較例3は、孔食促進試験ではいずれの水
質においても、管壁の特に下面に前述したスケールが付
着し、スケールが剥離した部分においては緑青の発生が
点在していた。孔食ピットの数及びスケールの付着量
は、熱交換器の下部になるほど顕著であり、スケールの
付着及び堆積による酸素濃淡電池形成により、孔食が発
生及び促進していることが確認された。また、潰食促進
試験では、管内流速が大きいためスケールの付着は孔食
促進試験の場合と比較して少ないが、管内面全面に酸化
と見られる茶褐色の変色が発生しており、特に乱流の発
生しやすい銅管曲げ外側、曲げ直後の内側及びろう付け
個所のろう材による隆起個所に多く認められ、潰食の発
生及び促進が確認できた。
【0085】
【表3】
【0086】
【発明の効果】前述の如く、本発明によれば、給湯器、
風呂釜、ボイラー及び暖房機器等に使用する熱交換器に
おいて、胴体の外表面、胴体の内表面、フィンの表面、
缶管の外表面、缶管の内表面、フィン管の外表面、フィ
ン管の内表面のうち少なくとも1つに非晶質セラミック
ス皮膜を形成することにより、熱交換器運転中に発生す
る酸性結露水による腐食並びに銅管内面に慢性的に起こ
る孔食及び潰食を水質に関係なく抑制し、長期間性能を
低下させずに使用できる熱交換器を提供することができ
る。また、本発明の熱交換器は、その表面に耐熱性が優
れており、良好な硬さと展延性の双方を備えた非晶質セ
ラミックス皮膜が被覆されているので、高温での使用、
水流による磨耗及び下地の銅合金の熱膨張にも耐え、苛
酷な環境においても長期間安定した耐食性を発揮する。
更に、非晶質セラミックス皮膜は銅合金との分離が容易
であるため、リサイクル性も優れている。
【0087】また、本発明の熱交換器に被覆する非晶質
セラミックス皮膜の厚さを、請求項2に記載した範囲に
制御することにより、皮膜の密着性を向上させ熱交換器
の耐食性をより良好にすることができる。更に、非晶質
セラミックス皮膜と下地の銅合金との間に存在する酸化
膜の厚さを、請求項3に記載した範囲にすることによっ
て、皮膜の密着性を向上させ熱交換器の耐食性をより良
好にすることができる。一方、本発明の熱交換器は、従
来と同様の素材及び製造方法で熱交換器を製作し、最後
に皮膜形成処理を施せばよいので、特別な耐食性材料の
使用が不要になり、高生産性で製造コストも低い。ま
た、熱交換器の設計に際して耐食性を特別に考慮する必
要がなくなるため、設計の自由度が増し、例えば潜熱回
収型熱交換器の安価な製造が可能になるなど、熱交換器
の低コスト化、コンパクト化及び高効率化を図ることが
できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】化学式2に示す構造を有する非晶質セラミック
ス皮膜の赤外線吸収スペクトルを示す図である。
【図2】本発明の熱交換器における熱交換部を示す図で
ある。
【図3】本発明の熱交換器におけるフィンの構成を示す
図である。
【図4】本発明の熱交換器におけるフィンのフィン管通
過孔を示す図である。
【図5】本発明の第1試験例における加熱試験方法を示
す図である。
【図6】本発明の第1試験例における加熱試験サイクル
を示す図である。
【図7】本発明の第2試験例における熱交換部の詳細を
示す図である。
【図8】本発明の第2試験例における給湯器の運転パタ
ーンを示す図である。
【図9】従来の熱交換器の構成を示す図である。
【符号の説明】 1;胴体 2;缶管 3;フィン 4;フィン管 5;入水パイプ 6;熱交換部 7;バーナー 9;出湯パイプ 10;フィン管通過孔 11;孔部 12;サンプル採取位置 13;シリコンホース 14;バーナーと熱交換器の間の距離 15;接合部 16;接合部 17;管端 18;Uベンド管
フロントページの続き (72)発明者 土屋 昭則 神奈川県秦野市平沢65番地 株式会社神戸 製鋼所秦野工場内 (72)発明者 佐伯 公三 兵庫県神戸市西区高塚台1丁目5番5号 株式会社神戸製鋼所神戸総合技術研究所内

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 銅又は銅合金板により形成した胴体と、
    前記胴体の内部に設けられた銅又は銅合金製のフィン
    と、前記胴体の外面に接触するように接合された銅又は
    銅合金製の缶管と、前記缶管に連結され前記フィンを挿
    通するように接合された銅又は銅合金製のフィン管とを
    有し、前記胴体の外表面、前記胴体の内表面、前記フィ
    ンの表面、前記缶管の外表面、前記缶管の内表面、前記
    フィン管の外表面及び前記フィン管の内表面のうち、少
    なくとも1つに非晶質セラミックス皮膜が形成されてい
    ることを特徴とする熱交換器。
  2. 【請求項2】 前記非晶質セラミックス皮膜の厚さが
    0.1乃至100μmであることを特徴とする請求項1
    に記載の熱交換器。
  3. 【請求項3】 前記非晶質セラミックス皮膜と、このセ
    ラミックス皮膜が被覆された銅又は銅合金との間に存在
    する酸化膜の厚さが、0.1μm以下であることを特徴
    とする請求項1又は2に記載の熱交換器。
  4. 【請求項4】 前記非晶質セラミックス皮膜が、SiO
    2、ZrO2、SiO 2・ZrO2、Al23及びTiO2
    のうちいずれか1種又は2種以上を主成分とする金属ア
    ルコキシド系の重合体であることを特徴とする請求項1
    乃至3のいずれか1項に記載の熱交換器。
JP2000095352A 2000-03-30 2000-03-30 熱交換器 Pending JP2001280890A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2000095352A JP2001280890A (ja) 2000-03-30 2000-03-30 熱交換器

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2000095352A JP2001280890A (ja) 2000-03-30 2000-03-30 熱交換器

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2001280890A true JP2001280890A (ja) 2001-10-10

Family

ID=18610266

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2000095352A Pending JP2001280890A (ja) 2000-03-30 2000-03-30 熱交換器

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2001280890A (ja)

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2011163623A (ja) * 2010-02-08 2011-08-25 Osaka Gas Co Ltd スケール防止方法
WO2016088329A1 (ja) * 2014-12-02 2016-06-09 株式会社デンソー コーティング構造、熱交換器、および熱交換器の製造方法
CN113396329A (zh) * 2019-01-29 2021-09-14 大金工业株式会社 制冷剂配管的检查方法以及制冷剂配管

Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2011163623A (ja) * 2010-02-08 2011-08-25 Osaka Gas Co Ltd スケール防止方法
WO2016088329A1 (ja) * 2014-12-02 2016-06-09 株式会社デンソー コーティング構造、熱交換器、および熱交換器の製造方法
CN113396329A (zh) * 2019-01-29 2021-09-14 大金工业株式会社 制冷剂配管的检查方法以及制冷剂配管
CN113396329B (zh) * 2019-01-29 2024-02-27 大金工业株式会社 制冷剂配管的检查方法以及制冷剂配管

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US6670050B2 (en) Titanium-based heat exchangers and methods of manufacture
WO2005003407A1 (en) Coated metallic component
JP5144629B2 (ja) オープンラック式気化器の伝熱管およびヘッダー管
TWI787330B (zh) 熱管及熱管的製造方法
JPWO2008117665A1 (ja) 硫化腐食防止方法、耐硫化腐食性高温部材及び伝熱管の補修方法
JP2001280890A (ja) 熱交換器
JP2003239085A (ja) 無機皮膜被覆銅又は銅合金部材、銅又は銅合金部材表面への無機皮膜形成方法、給湯器用熱交換器及びその製造方法
JPH01139749A (ja) 翼部材の表面処理方法
EP0950127B1 (en) Advanced galvanic corrosion protection
FI123631B (en) COOLING ELEMENT
JP2005517815A (ja) チタン合金のための昇温酸化保護コーティングおよびその調製方法
JP4602998B2 (ja) 溶射皮膜形成方法
JP2001140081A (ja) 耐食性皮膜付き銅又は銅合金管
US6578628B1 (en) Article exhibiting increased resistance to galvanic corrosion
JP2001279474A (ja) 耐食性銅又は銅合金管継手
JP2010112668A (ja) 熱交換器用アルミニウムフィン材及びそれを用いた熱交換器
JP2001280891A (ja) 耐食性銅又は銅合金管及びこれを使用した熱交換器
JP2007071526A (ja) 耐食性皮膜付き熱交換器及び潜熱回収型給湯器。
JP2003286583A (ja) 熱交換器用アルミニウム製フィン材およびフィン
JP2001183089A (ja) 曲げ部を有する耐食性銅又は銅合金管及びその製造方法並びにこれを使用した給水給湯器
JP2001343090A (ja) 銅又は銅合金管及び耐食性皮膜付き管
JPH09228070A (ja) 耐食性材料及びその製造方法
JP3917568B2 (ja) 耐熱・耐酸化性溶射皮膜被覆部材およびその製造方法
JP2004170005A (ja) 熱交換器及びその製造方法
JP6955561B2 (ja) セラミック組成物および前記セラミック組成物を熱回収ユニットの一部として含む材料